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特開2023-21026ポリエステルエラストマ樹脂組成物および成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021026
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ポリエステルエラストマ樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230202BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20230202BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C08L67/00
C08G63/91
C08L23/26
C08K5/098
C08K5/13
C08K5/3472
C08K5/3492
C08K5/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119251
(22)【出願日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021125215
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】西山 彰秀
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】中尾 優一
(72)【発明者】
【氏名】植村 裕司
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002BB232
4J002CF101
4J002EG029
4J002EH078
4J002EJ026
4J002EJ036
4J002EU178
4J002EU188
4J002EW067
4J002FD058
4J002FD067
4J002FD076
4J002FD179
4J002GN00
4J002GQ00
4J029AA03
4J029AC03
4J029AE01
4J029BA05
4J029CB06A
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB131
4J029JF321
4J029KE05
4J029KH01
(57)【要約】
【課題】
優れた透明性を示すのみならず、熱による変色を抑制し、外観に優れたポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量%とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)0.2~20質量部および炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)0.05質量部以上0.30質量部未満を含有し、過酸化物分解剤(E)0.05~1.0質量部を含有し、厚さ2mmのシートで測定したヘイズ値が85%以下であり、厚さ2mmのシートを140℃で24時間熱処理した際の色差ΔEが0.1~5.0であることを特徴とするポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量%とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)0.2~20質量部および炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)0.05質量部以上0.30質量部未満を含有し、過酸化物分解剤(E)0.05~1.0質量部を含有し、厚さ2mmのシートで測定したヘイズ値が85%以下であり、厚さ2mmのシートを140℃で24時間熱処理した際の色差ΔEが0.1~5.0であることを特徴とするポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、紫外線吸収剤(F)0.1~5質量部およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)0.1~5質量部を含有することを特徴とする請求項1記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物からなる群から選ばれる1種類以上である請求項2記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)0.01~3質量部を含有する請求項1記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物からなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルエラストマ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート単位のような結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位をソフトセグメントとするポリエステルエラストマは、押出成形性、射出成形性に優れるばかりか、機械的強度が高く、耐衝撃性、弾性回復性、耐屈曲疲労性、柔軟性などのゴム的性質、低温および高温特性、耐水性、耐薬品性などに優れ、さらに熱可塑性で成形加工が容易であるため、自動車部品および電気・電子部品、繊維、フィルムなどの分野に用途を拡大している。
【0003】
このように有用なポリエステルエラストマであるが、溶融時は透明であっても、冷却固化時は白濁して不透明になる。
【0004】
ポリエステルエラストマに透明性を付与する方法として、ポリエーテルポリエステルブロック共重合体に脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩を配合する方法が知られている(例えば特許文献1、2など)。しかし、脂肪族カルボン酸ナトリウム塩を配合した系では、十分な透明性を発生させるために過剰量の添加を必要とし、その結果、脂肪族カルボン酸ナトリウム塩によるポリエステルの主鎖分解による黄変をはじめ、光や熱による変色、脂肪族カルボン酸ナトリウム塩のブリードアウトによる成形品外観不良など、問題も多い。
【0005】
さらに、ポリエステルエラストマにエチレン-メタクリル酸共重合体のアルカリ金属塩などのアイオノマ樹脂を配合する方法も提案されている(例えば特許文献3)。この方法では、アイオノマ樹脂の分子量が大きく、ポリエステルとの相溶性も良好であることから、ブリードアウトが少なく、比較的透明性のある樹脂組成物を得ることが出来る。しかしながら、アイオノマ樹脂を過剰量の添加を必要とし、その結果、過剰量のアイオノマ樹脂由来の光や熱による変色や機械強度の低下、透明性の低下など、問題も多い。
【0006】
ポリエステルエラストマに脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩とエチレン-メタクリル酸共重合体のアルカリ金属塩などのアイオノマ樹脂を配合する方法も知られている(例えば特許文献4)。この方法では、少量の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩や少量のエチレン-メタクリル酸共重合体のアルカリ金属塩などのアイオノマ樹脂を配合し、さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤および過酸化物分解剤からなる酸化防止剤を含有することで、熱による変色を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭59-5142号公報
【特許文献2】特開平6-306263号公報
【特許文献3】特公昭58-24459号公報
【特許文献4】特開平10-182954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4では、ある程度熱による変色を抑制できているが、熱による変色抑制が不十分であり、高い耐熱性や優れた外観(色調)の求められる部材への展開が困難であるなど、問題も多い。
【0009】
本発明の目的は、優れた透明性を保ちつつ、熱による変色を抑制し、外観に優れたポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ポリエステルエラストマ樹脂組成物に含まれる化合物の官能基の構造に注目した。具体的には、酸化防止剤の構造および含有量に注目した。酸化防止剤は熱による変色を抑制できるが、酸化防止剤に1級アミンあるいは2級アミンの構造が含まれていると、それ自身が熱により変色を引き起こしてしまうことを見出した。また、酸化防止剤の含有量も重要であり、特定の含有量であると透明性と色調を抑えつつ、熱による変色を極めて抑制することができることを見出した。
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下の発明を提案するに至った。即ち本発明の様態は、以下の通りである。
(1)結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)90~50質量%とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)0.2~20質量部および炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)0.05質量部以上0.30質量部未満を含有し、過酸化物分解剤(E)0.05~1.0質量部を含有し、厚さ2mmのシートで測定したヘイズ値が85%以下であり、厚さ2mmのシートを140℃で24時間熱処理した際の色差ΔEが0.1~5.0であることを特徴とするポリエステルエラストマ樹脂組成物。
(2)前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、紫外線吸収剤(F)0.1~5質量部およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)0.1~5質量部を含有することを特徴とする(1)記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物。
(3)前記紫外線吸収剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物からなる群から選ばれる1種類以上である(2)記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物。
(4)前記ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)0.01~3質量部を含有する(1)~(3)のいずれか記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物。
(5)(1)~(4)のいずれか記載のポリエステルエラストマ樹脂組成物からなる成形体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた透明性を保ちつつ、熱による変色を抑制し、外観に優れたポリエステルエラストマ樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
【0014】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とする。
【0015】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a)は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルであり、好ましくはテレフタル酸および/またはジメチルテレフタレートと1,4-ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートであるが、この他に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニルなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであっても良い。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
【0016】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。
【0017】
また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
【0018】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)における高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量は10~50質量%、低融点重合体セグメント(b)の共重合量は90~50質量%である。好ましくは、ポリエステルブロック共重合体(A)における高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量は10~40質量%、低融点重合体セグメント(b)の共重合量は90~60質量%である。高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量が10質量%未満であると、結晶性が不十分となり成形性や耐熱性が悪くなる。一方、高融点結晶性重合体セグメント(a)の共重合量が50質量%を越えると、本発明の目的とする透明性が十分に発現しない。
【0019】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、および低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法。あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法。また、あらかじめ高融点結晶性セグメントを作っておき、これに低融点セグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化せしめる方法。高融点結晶性セグメントと低融点重合体セグメントを鎖連結剤でつなぐ方法。さらにポリ(ε-カプロラクトン)を低融点重合体セグメントに用いる場合は、高融点結晶性セグメントにε-カプロラクトンモノマを付加反応させるなど、いずれの方法をとってもよい。
【0020】
本発明の樹脂組成物において、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)を含有することが好ましい。さらに好ましくは、炭素数10~20の脂肪族カルボン酸である。最も好ましくは、炭素数10~15の脂肪族カルボン酸である。炭素数9以下の脂肪族カルボン酸金属塩は、少量の配合で透明性を向上させることができる点で好ましいが、炭素鎖が短いためブリードアウトを引き起こしてしまう場合がある。炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)は、ポリエステルエラストマ樹脂組成物を透明化する作用を持つ透明化剤として使用する。脂肪族カルボン酸とは、直鎖または分岐した脂肪族基にカルボキシル基が付いた化合物であり、結合の一部に、不飽和基、脂環族基、芳香族基あるいは水酸基、リン酸エステル基などのその他の置換基を有していても良い。
【0021】
脂肪族カルボン酸の中で、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸などが好ましく、アルカリ金属塩の中では、ナトリウム塩がポリエステルエラストマに対する溶解性、良結晶核形成性の点で好ましい。
【0022】
炭素数10以上の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(B)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.01~3質量部であることが好ましい。炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)の添加量は、より好ましくは0.05~2質量部、さらに好ましくは0.1~1質量部である。
【0023】
炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)の配合量が3質量部を超えると加工時に発生するガスが多くなり、成形性に影響がでる場合があると考えられる。
【0024】
本発明の樹脂組成物は側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)を含有する。側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)は、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸などのエチレン系不飽和カルボン酸との共重合体を、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、亜鉛イオンなどで中和したもので、これらは、例えばデュポン社から”サーリン”または三井・ダウポリケミカル社から”ハイミラン”として市販されているものである。中でもナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属イオンで中和したものが好ましい。
【0025】
これらの側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して0.2質量部以上20質量部以下である。好ましくは、0.5~15質量部、特に好ましくは1~10質量部配合する。
【0026】
側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)の配合量が0.2質量部未満では、透光性や透明性が不十分であり、20質量部以上では相分離が起こり、機械的な物性と透光性や透明性が低下すると考えられる。
【0027】
側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)は、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)と併用することで、ポリエステルエラストマの透明性を向上させることができる。驚くべきことに、透明性向上方法として、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)のみ含有させたポリエステルエラストマは、熱や時間経過により炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)がブリードアウトしてくるが、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)および側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)を含有したポリエステルエラストマは、熱によるブリードアウトを抑制し、熱変色を小さくすることができる。つまり、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)は、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)と併用することで、ブリードアウトや熱変色を抑制することができる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)および過酸化物分解剤(E)を含有する。炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)は、ポリエステルエラストマ樹脂組成物の熱による変色を抑制する酸化防止剤として使用する。また、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)は核剤として働くため、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)および/または側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)と併用することで透明性が向上する。
【0029】
炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上0.30質量部未満である。好ましくは0.05~0.25質量部、さらに好ましくは0.05~0.20質量部、最も好ましくは0.05~0.15質量部である。
【0030】
過酸化物分解剤(E)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部~1.0質量部である。好ましくは0.05~0.75質量部、さらに好ましくは0.05~0.50質量部、最も好ましくは0.05~0.30質量部である。
【0031】
炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)の配合量は、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)の配合量が0.05質量部未満では熱劣化防止効果に乏しい。炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)の配合量が0.30質量部以上だと熱による変色および初期色調、外観に問題が生じる。過酸化物分解剤(E)の配合量が1.0質量部を超えると、ブリードアウトや熱による変色および初期色調、外観に問題が生じる。
【0032】
炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)は、重合時に加えるのが好ましいが、重合後のポリエステルブロック共重合体に加えても良い。
【0033】
本発明の樹脂組成物の含有する炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)および過酸化物分解剤(E)以外の酸化防止剤を含んでいても構わないが、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)および過酸化物分解剤(E)のみ含有されることが好ましい。
【0034】
炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)としては、例えば、テトラキス〔メチレン-3(3’,5’-ジ-t-4’-ヒドロキシフェノール)プロピオネート〕メタン、2,4,6-トリス(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,1,3-トリ(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(3-t-ブチル-6-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパノイック酸、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸オクタデシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル2,4-ジメチル-6(-1-メチルペンタデシル)フェノール、ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-インデン)トリス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、6,6’-ジ-t-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0035】
過酸化物分解剤(E)としては、リン系過酸化物分解剤および硫黄系過酸化物分解剤が好ましい。リン系過酸化物分解剤の中には、吸湿性を有する過酸化物分解剤もあるため、取り扱いの観点では、硫黄系酸化防止剤がより好ましい。
【0036】
過酸化物分解剤(E)のリン系としては、3,9-ビス(p-ノニルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(オクタデシロキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリ(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリフェノキシフォスフィン、イソデシルフォスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリオレイルフォスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンフォスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(C12~C15アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリオクタデシルホスファイト、テトラフェニルテトラトリデシルペンタエリスリトールテトラフォスファイト、ジエチルエステルオブ3,5-ジ-tert-ブチル-4-ハイドロキシベンジルホスホリックアッシド、フェニルジイソデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(4-フェニルフェノール)ホスファイト、ジフェニルノニルフェニルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ジノニルフェニルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、トリフェニルホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイトが挙げられる。
【0037】
過酸化物分解剤(E)の硫黄系として、ジラウリルチオプロピオネート、ジステアリルテオジプロピオネート、ラウリルスステアリルテオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリルル-3,3’-チオジプロピオネートジラウリル-3,3-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミシスチルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジステアリル-β,β’-チオジブチレート、3,3’チオジプロピオン酸、ペンタエリスリトールテトラ(β-ラウリルチオプロピオン酸エステル)、ビス[3,3’-ビス(4’ハイドロキシ-3’-tert-ブチルフェニル)ブチリックアッシド]グリコールエステル、チオジエチレン-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートがあげられる。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、厚さ2mmのシートで測定したヘイズ値が85%以下である。ヘイズ値が85%を越えると、透明性が十分ではない。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、色調値bが10以下であることが好ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、厚さ2mmのシートを用いて後述の熱変色性試験(140℃で24時間熱処理)を行った際の色差ΔEが、0.1~5.0である。
【0041】
本発明の樹脂組成物は耐候性を必要とする場合は、紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)を添加することが好ましい。
【0042】
紫外線吸収剤(F)は、紫外領域に吸収をもつ物質で、紫外線が高分子鎖に作用するよりも前に、紫外線吸収剤自身が紫外線を吸収し、熱等の無害なものに変換し、高分子鎖自身の劣化を防ぐ役割として使用する。アミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)は、紫外線によって生じたラジカルを補足する役割として使用する。しかしながら、アミンの級数が1級あるいは2級の場合、耐候性は改善されるものの、熱による変色が生じてしまう。
【0043】
紫外線吸収剤(F)とアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)は光による変色を抑制する機構が異なるため、組み合わせることで、相乗効果が生じる。また、紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)の添加は核剤として働くため、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)および/または側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)と併用することで透明性が向上する。
【0044】
例えば、本発明に用いられるポリエステル系熱可塑性エラストマに配合することができる紫外線吸収剤(F)として、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、p-t-ブチルフェニルサリシレート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミル-フェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2’-ヒドロキシ-3’、5’-ビス(α,α-ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンアゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,5-ビス-〔5’-t-ブチルベンゾキサゾリル-(2)〕-チオフェン、2-〔2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-i-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシベンゾフェノン、サリチル酸フェニルなどを挙げることができる。
【0045】
紫外線吸収剤(F)は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物からなる群から選ばれる1種類以上であることが好ましい。中でも、外観性を向上させるには、可視光領域波長である360mm以上の波長領域に吸光度が少ない紫外線吸収剤が好ましい。
【0046】
アミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)として、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、セバシン酸モノ(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、コハク酸ジメチル・1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチル-マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6,-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2-〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕-2-ブチルプロパン二酸ビス〔1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル〕などを挙げることができる。
【0047】
アミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)の中でも、窒素原子に結合している原子が全て炭素原子である構造が好ましい。
【0048】
紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)の配合量は、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、それぞれ0.1~5質量部が好ましい。より好ましくは、0.1~2.5質量部、特に好ましくは0.1~1.0質量部である。
【0049】
本発明の樹脂組成物は、紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)以外の光安定剤を含んでいても構わないが、紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)のみ含有されることが好ましい。
【0050】
本発明の樹脂組成物には、その他各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、本発明以外の樹脂、難燃剤、無機フィラー、安定剤、及び老化防止剤をポリエステルブロック共重合体への添加剤として広く用いられているものを本発明の特徴(厚さ2mmのシートで測定したヘイズ値が85%以下であり、厚さ2mmのシートを140℃で24時間熱処理した際の色差ΔEが、0~5.0である)を損なわない範囲で添加することができる。
【0051】
また、その他の添加剤として、着色顔料、無機、有機系の充填剤、カップリング剤、タック性向上剤、クエンチャー、金属不活性化剤等の安定剤、多官能グリシジル基含有スチレン系ポリマ等を添加することもできる。
【0052】
本発明の樹脂組成物は、ポリエーテルエステルブロック共重合体(A)、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩(B)、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体(C)、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D)および過酸化物分解剤(E)、紫外線吸収剤(F)、アミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)の合計で、80質量%以上を占めることが好ましい。(A)、(C)、(D)、(E)あるいは(A)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)あるいは(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)の合計で、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0053】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルブロック共重合体、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、過酸化物分解剤と他の添加物を一緒に配合した原料をスクリュー型押出機に供給し溶融混練する方法、またスクリュー型押出機に、まずポリエステルブロック共重合体を供給して溶融し、さらに他の供給口より、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸アルカリ金属塩、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン系共重合体、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、過酸化物分解剤と他の添加物を供給混練する方法など、適宜採用することができる。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、通常の溶融成形法、例えば射出成形法や押出成形法により成形して各種用途に使用される。繊維、フィルム、シート、チューブなどとしても使用される。また、優れた透明性、耐変色性により、自動車内装部品や、電化製品などとしても使用される。
【実施例0055】
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。なお、実施例中の%および部とは、断りのない場合すべて質量基準である。また、実施例中に示される物性は次のように測定した。
【0056】
・融点
差動走査熱量計(TAインスツルメント社製DSC Q1000)を使用して、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温速度で加熱した時の融解ピークの頂上温度を測定した。
【0057】
・表面硬度(ショアDスケ-ル)
JIS K-7215に従って測定した。
【0058】
・全光線透過率およびヘイズ値
日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。試験片の表面粗さは、KEYENCE社製VK-9700を用いて測定したところ、0.46μmであった。その試験片を用いて、ASTM D1003に従い、東洋精機製作所社製DIRECT READING HAZEMETERを用いて測定した。
【0059】
・色調値bおよび色味変化(色差ΔE)測定
日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。その試験片を用いて、JIS Z8722に従い、スガ試験機社製のSM-Tカラーメーター(光源:C、視野角:2度視野)を用いて、白色板で押さえて、L*、a*、b*を測定した。b*の値を、色調値bとした。後述の熱変性試験や耐候性試験の前後で、L*、a*、b*を測定し、色差ΔEを算出した。
ΔEの算出式は、ΔE=〔(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2である。
【0060】
・熱変色性試験
先に示した条件で作製した125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を、エスペック社製GPH(H)-202型ギアオーブンを用いて、140℃で24時間熱処理を行い、試験片の色調について目視観察および前記SM-Tカラーメーターで色差ΔEを算出した。
【0061】
・耐候性試験
先に示した条件で作製した125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を、スガ試験機社製S80HBサンシャインウェザーメーターを用いて、150時間処理を行い(ブラックパネル温度:63℃、雨なし、照度:255w/m)、処理後の試験片の色調について目視観察および前記SM-Tカラーメーターで色差ΔEを算出した。
【0062】
参考例
ポリエステルブロック共重合体(A-1)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸278部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール686部、さらに1,4-ブタンジオール316部、チタンテトラブトキシド0.1部を共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して“IRGANOX”1330(炭素および酸素からなるBASF社製ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、1級あるいは2級アミンを含まないヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-1)0.10質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0063】
ポリエステルブロック共重合体(A-2)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸278部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール686部、さらに1,4-ブタンジオール316部、チタンテトラブトキシド0.1部を共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して“IRGANOX”1330(炭素および酸素からなるBASF社製ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、1級あるいは2級アミンを含まないヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-1)0.25質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0064】
ポリエステルブロック共重合体(A-3)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸374部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール610部、さらに、1,4-ブタンジオール335部、チタンテトラブトキシド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して“IRGANOX”1330(炭素および酸素からなるBASF社製ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、1級あるいは2級アミンを含まないヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-1)0.10質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0065】
ポリエステルブロック共重合体(A-4)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸テレフタル酸374部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約1400のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール610部、さらに1,4-ブタンジオール335部、チタンテトラブトキシド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して”IRGANOX”1098(BASF社製2級アミンを含む(炭素および酸素からならない)ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-3)0.05質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0066】
ポリエステルブロック共重合体(A-5)の製造
結晶性芳香族ポリエステルからなる高融点結晶性重合体セグメントとなるテレフタル酸234部、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメントとなる数平均分子量約2000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール754部、さらに、1,4-ブタンジオール228部、チタンテトラブトキシド0.2部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190~225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。ポリエステルブロック共重合体成分100質量部に対して”IRGANOX”1330(IR1330、炭素および酸素からなるBASF社製ヒンダードフェノール系ラジカル補足剤、1級あるいは2級アミンを含まないヒンダードフェノール系ラジカル補足剤)(D-1)0.50質量部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で3時間30分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
【0067】
表1にA-1、A-2、A-3、A-4、A-5の組成と使用したヒンダードフェノール系ラジカル補足剤の量および物性を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
参考例に示したポリエステルブロック共重合体(A-1)、(A-2)、(A-3)、(A-4)、(A-5)には、重合時に、(D-1)あるいは(D-3)のラジカル補足剤(D)が含有されているが、以下に示す実施例では、重合時に添加したラジカル補足剤(D)を除いたポリエステルブロック共重合成分(A)100質量部に対しての配合比を示している。
【0070】
実施例1~5
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A-1)、(A-2)、(A-3)に炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(BASF社製”IRGANOX”1010)(D-2)、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(日東化成工業株式会社製NS-3A(ラウリン酸ナトリウム))(B-1)あるいは(日東化成工業株式会社製ナトリウムステアレート(ステアリン酸ナトリウム))(B-2)、側鎖にカルボン酸ナトリウム塩基を有するエチレン系共重合体(DuPont社製“サーリン”AD8610)(C-1)あるいは(三井・ダウポリケミカル株式会社製“ハイミラン”1707)(C-2)、リン系過酸化物分解剤(株式会社ADEKA社製“アデカスタブ“PEP-8)(E-1)あるいは硫黄系過酸化物分解剤(第一工業製薬株式会社”ラスミット“LG)(E-2)を表2に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのシリンダー径を有する二軸押出機を用いて、溶融混練したのちペレット化した。このペレットを80℃で3時間乾燥後、日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた厚さ2mmのシートを用いて全光線透過率、ヘイズ値を測定するとともに、ブリードアウトの有無を確認および表面硬度、色調値bを測定した。さらに、先に示した熱変色性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0071】
なお、表2中の(D-1)および(D-3)は、前述の参考例で示したとおり、ポリエステルブロック共重合体(A)に重合時に含有されているラジカル補足剤(D)を意味する。ポリエステルブロック共重合体(A)の重合後に加えられたD-2と区別するために、カッコ書きとした。
【0072】
比較例1~4
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A-3)、(A-4)あるいは(A-5)に、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(日東化成工業株式会社製NS-3A(ラウリン酸ナトリウム))(B-1)あるいは(日東化成工業株式会社製ナトリウムステアレート(ステアリン酸ナトリウム))(B-2)、側鎖にカルボン酸ナトリウム塩基を有するエチレン系共重合体(DuPont社製“サーリン”AD8610)(C-1)あるいは(三井・ダウポリケミカル株式会社製“ハイミラン”1707)(C-2)、リン系過酸化物分解剤(株式会社ADEKA社製“アデカスタブ“PEP-8)(E-1)あるいは硫黄系過酸化物分解剤(第一工業製薬株式会社”ラスミット“LG)(E-2)を表2に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのシリンダー径を有する二軸押出機を用いて、溶融混練したのちペレット化した。このペレットを80℃で3時間乾燥後、日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた厚さ2mmのシートを用いて全光線透過率、ヘイズ値を測定するとともに、ブリードアウトの有無を確認および表面硬度、色調値bを測定した。さらに、先に示した熱変色性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表2、3の実施例1~5から明らかなように結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント90~50質量%とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)に、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)および/または炭素数10以上の脂肪族カルボン酸金属塩(B)、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)と過酸化物分解剤(E)を本発明の範囲内で配合した樹脂組成物は透明性、外観、耐熱変色性に優れる。
【0076】
比較例1より、ポリエステルブロック共重合体(A)に2級アミンを含有するヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D-3)を少量でも含有すると、大きな熱変色がみられた。また、比較例2から、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D-1)を含有しても、含有量が0.30質量部以上だと、熱変色がみられた。また、比較例3より、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)を3質量部以上含有するとブリードアウトが見られた。また、比較例4より、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(B)を本発明の範囲内で配合しても側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)を含まないと、熱処理後にブリードアウトが見られた。
【0077】
実施例6~10
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A-1)、(A-2)、(A-3)に、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(日東化成工業株式会社製NS-3A(ラウリン酸ナトリウム))(B-1)あるいは(日東化成工業株式会社製ナトリウムステアレート(ステアリン酸ナトリウム))(B-2)、側鎖にカルボン酸ナトリウム塩基を有するエチレン系共重合体(DuPont社製“サーリン”AD8610)(C-1)あるいは(三井・ダウポリケミカル株式会社製“ハイミラン”1707)(C-2)、リン系過酸化物分解剤(株式会社ADEKA社製“アデカスタブ“PEP-8)(E-1)あるいは硫黄系過酸化物分解剤(第一工業製薬株式会社”ラスミット“LG)(E-2)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASF社製”Tinuvin”234)(F-1)、トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製”Tinuvin”1557)(F-2)、シアノクレート系紫外線吸収剤(BASF社製”Uvinul”3030)(F-3)、アミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(BASF社製”Tinuvin”144)(G-1)を表4に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのシリンダー径を有する二軸押出機を用いて、溶融混練したのちペレット化した。このペレットを80℃で3時間乾燥後、日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた厚さ2mmのシートを用いて全光線透過率、ヘイズ値を測定するとともに、ブリードアウトの有無を確認および表面硬度、色調値bを測定した。さらに、先に示した熱変色性試験および耐候性試験を実施した。結果を表5に示す。
【0078】
なお、表4中の(D-1)および(D-3)は、前述の参考例で示したとおり、ポリエステルブロック共重合体(A)に重合時に含有されているラジカル補足剤(D)を意味する。
【0079】
比較例5~7
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A-1)、(A-4)あるいは(A-5)に、炭素数10以上の脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩(日東化成工業株式会社製NS-3A(ラウリン酸ナトリウム))(B-1)あるいは(日東化成工業株式会社製ナトリウムステアレート(ステアリン酸ナトリウム))(B-2)、側鎖にカルボン酸ナトリウム塩基を有するエチレン系共重合体(DuPont社製“サーリン”AD8610)(C-1)、過酸化物分解剤(株式会社ADEKA社製“アデカスタブ“PEP-8)(E-1)あるいは(第一工業製薬株式会社”ラスミット“LG)(E-2)、トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製”Tinuvin”1557)(F-2)、アミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(BASF社製”Tinuvin”144)(G-1)、あるいはアミンの級数が2級アミンであるヒンダードアミン系化合物(BASF社製”Chimasorb”994)(G-2)を表4に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのシリンダー径を有する二軸押出機を用いて、溶融混練したのちペレット化した。このペレットを80℃で3時間乾燥後、日精樹脂工業社製の電気式射出成型機(NEX-1000)を用いて、220℃(金型温度:40℃)の条件で、125mm×75mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた厚さ2mmのシートを用いて全光線透過率、ヘイズ値を測定するとともに、ブリードアウトの有無を確認および表面硬度、色調値bを測定した。さらに、先に示した熱変色性試験および耐候性試験を実施した。結果を表5に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
表4、5の実施例6~10から明らかなように、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント10~50質量%と、脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント90~50質量%とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)に、側鎖にカルボン酸金属塩基を有するエチレン共重合体(C)および/または炭素数10以上の脂肪族カルボン酸金属塩(B)、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤(D)と過酸化物分解剤(E)、紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)を本発明の範囲内で配合した樹脂組成物は透明性、外観、耐熱変色性、耐候特性に優れる。
【0083】
比較例5より、ポリエステルブロック共重合体(A)にアミンの級数が2級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G-2)を含有すると、熱変色がみられた。比較例6より、ポリエステルブロック共重合体(A)に紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)を本発明の範囲内で配合しても、2級アミン含有の炭素および酸素からならないヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D-3)を少量でも含有すると、大きな熱変色がみられた。比較例7から、ポリエステルブロック共重合体(A)100質量部に対して、紫外線吸収剤(F)およびアミンの級数が3級アミンであるヒンダードアミン系化合物(G)を本発明の範囲内で配合し、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D-1)を配合しても、炭素および酸素からなるヒンダードフェノール系ラジカル補足剤(D-1)の含有量が0.30質量部以上だと、熱変色がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の樹脂組成物は、従来のポリエステルエラストマ樹脂組成物に比べて、透明性や外観に優れるのみならず、熱による耐変色性に優れるため、柔軟で透明性が望まれる成形品用成形材料として有用である。例えば、自動車内装用途、電子電気用用途などに使用が期待される。