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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023021435
(43)【公開日】2023-02-10
(54)【発明の名称】締結構造体
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/24 20060101AFI20230202BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F16B39/24 L
F16B39/24 M
F16B43/00 A
F16B43/00 B
F16B43/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202011
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2020188588の分割
【原出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】515221303
【氏名又は名称】株式会社峰生
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】前田 健智
(57)【要約】
【課題】適切な緩み止め効果を得ることができる締結構造体を提供することを目的とする。
【解決手段】締結構造体S1は、雄ねじ部3bを有するボルト3と、雌ねじ部を有するナット(凹部付きナット4)と、ボルト3の雄ねじ部3bに挿入して使用するばね座金7と、ばね座金7と接するようにボルト3の雄ねじ部3bに挿入して使用する平座金(保持穴付き平座金6)と、を備える。ばね座金7は、平座金(保持穴付き平座金6)と接する側の面に、少なくとも1つの突出部8を有する。平座金(保持穴付き平座金6)は、突出部8が侵入する少なくとも1つの保持穴6aを有する。保持穴6aは、締結時に突出部8を保持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじ部を有するボルトと、
雌ねじ部を有するナットと、
前記ボルトの前記雄ねじ部に挿入して使用するばね座金と、
前記ばね座金と接するように前記ボルトの前記雄ねじ部に挿入して使用する平座金と、を備え、
前記ばね座金は、前記平座金と接する側の面に、少なくとも1つの突出部を有し、
前記平座金は、前記突出部が侵入する少なくとも1つの保持穴を有し、
前記保持穴は、締結時に前記突出部を保持する、締結構造体。
【請求項2】
前記保持穴の数は、前記突出部の数よりも多い、請求項1に記載の締結構造体。
【請求項3】
前記保持穴は、前記平座金を上下に貫通する、請求項1または2に記載の締結構造体。
【請求項4】
雄ねじ部を有するボルトと、
雌ねじ部を有するナットと、
前記ボルトの前記雄ねじ部に挿入して使用するばね座金と、を備え、
前記ばね座金は、前記ナットと接する側の面に、少なくとも1つの略半球型の突起を有し、
前記ナットは、前記ばね座金と接する側の面に、前記ナットを締める方向に緩やかな斜面を、前記ナットを緩める方向に急な斜面を有する凹部を有している、締結構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締結部材を締結する締結構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機械や構造物などの被締結部材をボルトとナットを用いて締結するにあたり、使用時の振動などに起因するナットの緩みを防止するために、ばね座金(スプリングワッシャ)が挿入されている。特許文献1に記載のばね座金は、環状のばね座金の上面と下面に鋸歯が形成されており、締結時に鋸歯をナットと被締結部材の表面に食い込ませることで、使用時のナットの緩みを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-199316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のばね座金は、鋸歯をナットや被締結部材に食い込ませる構成のため、ナットや被締結部材の材質によっては所望の深さまで鋸歯が食い込まなかったり、締結時にナットや被締結部材の表面を傷つけてしまったりすることで、期待した緩み止め効果が得られない場合があるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、適切な緩み止め効果を得ることができる締結構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の締結構造体は、雄ねじ部を有するボルトと、雌ねじ部を有するナットと、前記ボルトの前記雄ねじ部に挿入して使用するばね座金と、前記ばね座金と接するように前記ボルトの前記雄ねじ部に挿入して使用する平座金と、を備え、前記ばね座金は、前記平座金と接する側の面に、少なくとも1つの突出部を有し、前記平座金は、前記突出部が侵入する少なくとも1つの保持穴を有し、前記保持穴は、締結時に前記突出部を保持する。
【0007】
本発明の他の締結構造体は、雄ねじ部を有するボルトと、雌ねじ部を有するナットと、前記ボルトの前記雄ねじ部に挿入して使用するばね座金と、を備え、前記ばね座金は、前記ナットと接する側の面に、少なくとも1つの略半球型の突起を有し、前記ナットは、前記ばね座金と接する側の面に、前記ナットを締める方向に緩やかな斜面を、前記ナットを緩める方向に急な斜面を有する凹部を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、適切な緩み止め効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態の締結構造体により被締結部材を締結する説明図
図2】本発明の一実施の形態の締結後の締結構造体の(a)平面図(b)側面図(c)断面図
図3】本発明の一実施の形態の締結構造体を構成する保持穴付き平座金の(a)平面図(b)側面図(c)断面図
図4】本発明の一実施の形態の締結構造体を構成するばね座金の(a)平面図(b)側面図(c)底面図
図5】本発明の一実施の形態の締結構造体を構成する凹部付きナットの(a)側面図(b)底面図
図6】本発明の第2の実施の形態の締結構造体で被締結部材を締結する説明図
図7】本発明の第3の実施の形態の締結構造体で被締結部材を締結する説明図
図8】本発明の第3の実施の形態の締結構造体を構成する保持穴付きナットの(a)平面図(b)断面図
図9】本発明の第4の実施の形態の締結構造体で被締結部材を締結する説明図
図10】本発明の第4の実施の形態の締結構造体を構成するばね座金の(a)平面図(b)側面図
図11】本発明の第4の実施の形態の締結構造体を構成する凹部付きナットの(a)側面図(b)底面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、締結構造体、ボルト、ナット、ばね座金、平座金の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
まず図1図5を参照して、締結構造体S1の構造と、締結構造体S1で被締結部材を締結する方法について説明する。図2(c)は、締結完了後の締結構造体S1の図2(a)におけるc-c断面である。ここでは、被締結部材である平板1と平板2を、頭部3aと雄ねじ部3bを有するボルト3と雌ねじ部4aを有する凹部付きナット4を用いて締結する例で説明する。
【0012】
図1図3において、まず、平ワッシャ5を装着したボルト3の雄ねじ部3bを、平板1に形成された締結穴と平板2に形成された締結穴に順に挿入させる。次いで、保持穴付き平座金6を、平板2の締結穴から突出したボルト3の雄ねじ部3bに装着する。保持穴付き平座金6には、上下に貫通する複数(図3(a)の例では6個)の保持穴6aが所定の位置に形成されている。
【0013】
図1図4において、次いで、ばね座金7を、所定の姿勢でボルト3の雄ねじ部3bに装着する。ばね座金7において、保持穴付き平座金6と接する側の面7a(図1における下面)には、複数(図4の例では2個)の突出部8が設けられている。ばね座金7は、突出部8が保持穴付き平座金6の保持穴6aにそれぞれ侵入するようにボルト3の雄ねじ部3bに装着される。
【0014】
このように、ばね座金7は、保持穴付き平座金6と接する側の面7a(平座金と接する側の面)に、少なくとも1つの突出部8を有している。また、保持穴付き平座金6は、突出部8が侵入する少なくとも1つの保持穴6aを有している。そして、保持穴付き平座金6は、ばね座金7の保持穴付き平座金6と接する側の面7aに接するようにボルト3の雄ねじ部3bに挿入して使用される。なお、突出部8は2個に限定されることはなく、1個でも、3個以上であってもよい。また、保持穴6aは締結時に突出部8が保持できるならば、必ずしも上下に貫通している必要はない。
【0015】
図4(b)、図4(c)において、ばね座金7には、2個の円柱状の突出部8が設けられている。2個の突出部8は、ばね座金7の中心に対して180度回転した位置関係にある。図3(a)において、保持穴付き平座金6には、6個の保持穴6aが形成されている。図3(c)は、図3(a)におけるd-d断面である。6個の保持穴6aは、保持穴付き平座金6の中心に対して60度ずつ回転した位置関係にある。保持穴付き平座金6とばね座金7は、2個の突出部8が180度回転した位置関係にあるいずれかの保持穴6aに侵入されるようにボルト3の雄ねじ部3bに装着する。すなわち、保持穴付き平座金6とばね座金7は、相対的に60度回転する毎に、突出部8と保持穴6aの位置が一致する。
【0016】
図1図4において、ばね座金7は、環状の一部を切断し、切断した切り口7cの一方側の端部(図4(b)では右側)を上方に持ち上げた(ねじられた)形状をしている。この形状により、締結時にばね作用が得られる。ばね座金7において、保持穴付き平座金6と接する側の面7aとは反対側の凹部付きナット4と接する側の面7bの切り口7c付近には、上方に突出する爪部9が設けられている。すなわち、爪部9は、ばね座金7の一部を切断した切り口7c付近を上方に持ち上げた箇所に設けられている。爪部9は、ナットを締める方向a(図4(b)では右側)に緩やかな斜面9aを有し、ナットを緩める方向b(図4(b)では左側)に急な斜面9bを有している。
【0017】
図1図5において、ばね座金7のボルト3の雄ねじ部3bへの挿入が終了すると、次いで凹部付きナット4の雌ねじ部4aをボルト3の雄ねじ部3bへ装着し、ナットを締める方向aに凹部付きナット4を回転させながら、凹部付きナット4をボルト3の頭部3aに向かって進ませる。図5(a)、図5(b)において、凹部付きナット4のばね座金7と接する側の面4bには、複数(ここでは6個)の凹部4cが形成されている。6個の凹部4cは、凹部付きナット4の中心に対して60度ずつ回転した位置関係にある。凹部4cは、ナットを締める方向aに緩やかな斜面4dを有し、ナットを緩める方向bに急な斜面4eを有している。
【0018】
図1図2において、ナットを締める方向aに凹部付きナット4を回転させながらボルト3の頭部3aに向かって進めると、やがて、ばね座金7の爪部9が凹部付きナット4のばね座金7と接する側の面4bに当接するようになる。さらに回転させると、凹部4cの緩やかな斜面4dが爪部9の緩やかな斜面9aに沿って円周に沿って進み、爪部9が次の凹部4cに乗り移る。このように、凹部付きナット4をナットを締める方向aに回転させた際に凹部付きナット4の凹部4cとばね座金7の爪部9とが相互に当接する側の面(緩やかな斜面4dと緩やかな斜面9a)は、凹部4cが爪部9を容易に乗り越えられるように緩やかな斜面となっている。
【0019】
爪部9がいくつかの凹部4cを乗り越え、爪部9がいずれかの凹部4cに侵入した状態で、凹部付きナット4の締結が完了する。すなわち、凹部付きナット4の締結が完了した状態で、ばね座金7の爪部9の少なくとも一部が凹部付きナット4の凹部4cに侵入している。また、ばね座金7の突出部8が保持穴付き平座金6の保持穴6aに侵入している。
【0020】
図1図2において、凹部付きナット4をナットを緩める方向bに回転させると凹部付きナット4の凹部4cとばね座金7の爪部9とが相互に当接する側の面(急な斜面4eと急な斜面9b)は、凹部4cが爪部9を容易には乗り越えられないように急な斜面となっている。そのため、振動などに起因して凹部付きナット4がナットを緩める方向bに回転する力が発生しても、爪部9の急な斜面9bが凹部4cの急な斜面4eに当接して回転を阻止することで、凹部付きナット4の緩みを適切に防止することができる。
【0021】
また、ばね座金7の突出部8が保持穴付き平座金6の保持穴6aに侵入していることから、ばね座金7が保持穴付き平座金6(平座金)との間で滑って凹部付きナット4が緩むことを防止することができる。また、ばね座金7の突出部8によって、被締結部材である平板2の表面を傷つけることもない。
【0022】
上記説明したように、本実施の形態のばね座金7は、凹部付きナット4と接する側の面7bにおけるばね座金7の一部を切断した切り口7c付近に、ナットを締める方向aに緩やかな斜面9aを、ナットを緩める方向bに急な斜面9bを有する爪部9を有し、凹部付きナット4は、ばね座金7と接する側の面4bに、ナットを締める方向aに緩やかな斜面4dを、ナットを緩める方向bに急な斜面4eを有する凹部4cを有している。そして、雄ねじ部3bを有するボルト3と、雌ねじ部4aを有する凹部付きナット4と、ボルト3の雄ねじ部3bに挿入して使用するばね座金7は、締結構造体S1を構成する。これによって、適切な緩み止め効果を得ることができる。
【0023】
次に図6を参照して、第2の実施の形態の締結構造体S2について説明する。第2の実施の形態の締結構造体S2は、凹部付きボルト10の頭部10aに凹部10dを有するところが、図1に示す締結構造体S1と異なる。以下、締結構造体S1と同じ部分には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図6において、凹部付きボルト10は、頭部10aと雄ねじ部10bを有している。頭部10aのばね座金7と接する側の面10cには、凹部10dが形成されている。凹部付きボルト10の頭部10aの凹部10dは、締結構造体S1の凹部付きナット4の凹部4cと同様に、ボルトを締める方向に緩やかな斜面を、ボルトを緩める方向に急な斜面を有している。
【0024】
次に図6を参照して、締結構造体S2で被締結部材を締結する方法について説明する。まず、爪部9が凹部付きボルト10の頭部10aの凹部10dに挿入される向きで、ばね座金7を凹部付きボルト10の雄ねじ部10bに装着する。すなわち、ばね座金7は、凹部付きボルト10の頭部10aと接する側の面に爪部9を有する。次いで、ばね座金7の突出部8が保持穴付き平座金6の保持穴6aに挿入されるように、保持穴付き平座金6を凹部付きボルト10の雄ねじ部10bに装着する。
【0025】
次いで、平板2に形成された締結穴と平板1に形成された締結穴を、順に凹部付きボルト10の雄ねじ部10bに挿入させる。次いで、平ワッシャ5を凹部付きボルト10の雄ねじ部10bに装着した後、ナット11の雌ねじ部を凹部付きボルト10の雄ねじ部10bに装着し、ナットを締める方向に回転させて締結させる。これにより、ナット11の締結が完了した状態で、爪部9の少なくとも一部が凹部10dに侵入する。
【0026】
上記説明したように、締結構造体S2は、10a頭部と10b雄ねじ部を有する凹部付きボルト10と、雌ねじ部を有するナット11と、凹部付きボルト10の雄ねじ部10bに挿入して使用するばね座金7と、を備え、ばね座金7は、凹部付きボルト10の頭部10aと接する側の面におけるばね座金7の一部を切断した切り口7c付近に、ボルトを締める方向に緩やかな斜面9aを、ボルトを緩める方向に急な斜面9bを有する爪部9を有し、凹部付きボルト10の頭部10aは、ばね座金7と接する側の面10cに、ボルトを締める方向に緩やかな斜面を、ボルトを緩める方向に急な斜面を有する凹部10dを有している。これによって、適切な緩み止め効果を得ることができる。
【0027】
次に図7図8を参照して、第3の実施の形態の締結構造体S3について説明する。第3の実施の形態の締結構造体S3は、保持穴付き平座金6に代わって保持穴付きナット12を有するところが、図1に示す締結構造体S1と異なる。すなわち、締結構造体S3は、保持穴付きナット12と凹部付きナット4によって被締結部材を締結するダブルナット構造である。以下、締結構造体S1と同じ部分には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。また、図8(b)は、図8(a)におけるe-e断面である。
【0028】
図7図8において、保持穴付きナット12において、ばね座金7と接する側の面12a(図7における上面)には、ばね座金7の突出部8が侵入する複数(図8(a)の例では6個)の保持穴12bが、ばね座金7の突出部8の位置に対応して形成されている。保持穴付きナット12の中心には、ボルト3の雄ねじ部3bに噛み合う雌ねじ部12cが形成されている。
【0029】
次に図7を参照して、締結構造体S3で被締結部材を締結する方法について説明する。まず、平ワッシャ5を装着したボルト3の雄ねじ部3bを、平板1に形成された締結穴と平板2に形成された締結穴に順に挿入させる。次いで、別の平ワッシャ5を、平板2の締結穴から突出したボルト3の雄ねじ部3bに装着する。次いで保持穴付きナット12をばね座金7と接する側の面12aを上方(別の平ワッシャ5とは反対)に向けた姿勢で雌ねじ部12cをボルト3の雄ねじ部3bへ装着し、ナットを締める方向に回転させて所定の強さで被締結部材に締結する。
【0030】
次いで、ばね座金7をボルト3の雄ねじ部3bに装着し、ばね座金7の突出部8を保持穴付きナット12の保持穴12bに挿入させる。次いで、凹部付きナット4の雌ねじ部4aをボルト3の雄ねじ部3bへ装着し、ナットを締める方向に回転させて所定の強さで被締結部材に締結する。これにより、ばね座金7の爪部9がいずれかの凹部4cに侵入した状態で、凹部付きナット4の締結が完了する。
【0031】
上記説明したように、締結構造体S3は、雄ねじ部3bを有するボルト3と、雌ねじ部4aを有する凹部付きナット4(第1のナット)と、雌ねじ部12cを有する保持穴付きナット12(第2のナット)と、ボルト3の雄ねじ部3bに挿入し、凹部付きナット4(第1のナット)と保持穴付きナット12(第2のナット)の間に挟んで使用するばね座金7と、を備えている。そして、ばね座金7は、保持穴付きナット12(第2のナット)と接する側の面7aに、少なくとも1つの突出部8を有している。また、保持穴付きナット12(第2のナット)は、突出部8が侵入する少なくとも1つの保持穴12bを有している。これによって、保持穴付きナット12と凹部付きナット4が振動などで緩むことを防止して、適切な緩み止め効果を得ることができる。
【0032】
次に図9図11を参照して、第4の実施の形態の締結構造体S4について説明する。締結構造体S4は、ばね座金13が突出部8に代わって略半球型の突起14を有し、凹部付きナット15がばね座金13の突起14に対応する凹部15aを有しているところが、図1に示す締結構造体S1と異なる。以下、締結構造体S1と同じ部分には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0033】
図9図10において、ばね座金13は、環状の一部を切断した切り口13aの一端を上方にねじった側とは反対側の面が、凹部付きナット15と接する側の面13bとなる。ばね座金13の、凹部付きナット15と接する側の面13b(図9における上面)には、複数(図10の例では2個)の略半球型の突起14が設けられている。ばね座金13は、突起14が凹部付きナット15の凹部15aにそれぞれ侵入するようにボルト3の雄ねじ部3bに装着される。
【0034】
図9図11において、凹部付きナット15のばね座金13と接する側の面15bには、複数(ここでは6個)の凹部15aが形成されている。6個の凹部15aは、凹部付きナット15の中心に対して60度ずつ回転した位置関係にある。凹部15aは、ナットを締める方向に緩やかな斜面15dを有し、ナットを緩める方向に急な斜面15eを有している。凹部付きナット15の中心には、ボルト3の雄ねじ部3bに噛み合う雌ねじ部15cが形成されている。
【0035】
次に図9を参照して、締結構造体S4で被締結部材を締結する方法について説明する。まず、平ワッシャ5を装着したボルト3の雄ねじ部3bを、平板1に形成された締結穴と平板2に形成された締結穴に順に挿入させる。次いで、別の平ワッシャ5を、平板2の締結穴から突出したボルト3の雄ねじ部3bに装着する。次いで、突起14が別の平ワッシャ5とは反対側に位置する向きでばね座金13をボルト3の雄ねじ部3bに装着する。
【0036】
次いで、凹部付きナット15の雌ねじ部15cをボルト3の雄ねじ部3bへ装着し、ナットを締める方向に回転させて所定の強さで被締結部材に締結する。締結の過程でばね座金13の突起14は、凹部付きナット15のいずれかの凹部15aに侵入する。そして、凹部付きナット15の回転により凹部15aの緩やかな斜面15dに沿って突起14が相対的に移動して、次の凹部15aに乗り移る。この過程を繰り返しながら、突起14がいずれかの凹部15aに侵入した状態で、凹部付きナット15の締結が完了する。
【0037】
すなわち凹部付きナット15の締結が完了した状態で、ばね座金13の突起14が凹部付きナット15のいずれかの凹部15aに侵入している。この状態では、ナットが緩む方向に凹部付きナット15が回転しようとすると、ばね座金13の突起14が凹部15aの急な斜面15eに当接して緩む側の回転を阻止するため、凹部付きナット15の緩みを適切に防止することができる。
【0038】
上記説明したように、締結構造体S4は、雄ねじ部3bを有するボルト3と、雌ねじ部15cを有する凹部付きナット15と、ボルト3の雄ねじ部3bに挿入して使用するばね座金13と、を備えている。そして、ばね座金13は、凹部付きナット15と接する側の面13bに、少なくとも1つの突起14を有している。また、凹部付きナット15は、ばね座金13と接する側の面15bに、ナットを締める方向に緩やかな斜面15dを、ナットを緩める方向に急な斜面15eを有する凹部15aを有している。これによって、適切な緩み止め効果を得ることができる。
【0039】
なお、図1図2図5図9図11に示す凹部付きナット4,15、ナット11およびボルト3、凹部付きボルト10の頭部3a、10aの形状は、6角形をしているが、この構成に限定されることはない。例えば、凹部付きナット4,15、ナット11およびボルト3、凹部付きボルト10の頭部3a、10aの形状は、8角形であってもよい。また、図4に示すばね座金7の爪部9の形状は、環状のばね座金7の幅方向の一部に形成されているが、この構成に限定されることはない。例えば、爪部9は、幅方向の全長(内周面から外周面まで)にわたって形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
適切な緩み止め効果を有する締結構造体を提供する。
【符号の説明】
【0041】
S1、S2、S3、S4 締結構造体
3 ボルト
3b、10b 雄ねじ部
4、15 凹部付きナット(第1のナット)
4a、12c、15c 雌ねじ部
4b、10c ばね座金と接する側の面
4c、10d、15a 凹部
4d、9a、15d 緩やかな斜面
4e、9b、15e 急な斜面
6 保持穴付き平座金(平座金)
6a、12b 保持穴
7、13 ばね座金
7a 平座金と接する側の面(第2のナットと接する側の面)
7b、13b ナットと接する側の面
7c、13a 切り口
8 突出部
9 爪部
10 凹部付きボルト
11 ナット
12 保持穴付きナット(第2のナット)
14 突起
a ナットを締める方向
b ナットを緩める方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11