(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002183
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】太陽電池の異常検出システム、異常検出方法、及び異常検出プログラム
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20221227BHJP
【FI】
H02S50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103250
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】西田 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽介
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151JA08
5F151KA07
5F151KA08
(57)【要約】
【課題】低コストで高精度に太陽電池モジュールの異常を検出する。
【解決手段】異常検出システム20のデータ取得部は、少なくとも1つの太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vopを定期的に取得する。異常検出システム20の判定部は、データ取得部により取得された太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vopの時系列変動が規定値以上の場合、太陽電池ストリング5a、5bに異常が発生していると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングの動作電圧を定期的に取得するデータ取得部と、
取得された前記太陽電池ストリングの動作電圧の時系列変動が規定値以上の場合、前記太陽電池ストリングに異常が発生していると判定する判定部と、
を備えることを特徴とする太陽電池の異常検出システム。
【請求項2】
前記太陽電池ストリングの動作電圧の所定期間の平均値、中央値または最頻値を算出する算出部をさらに備え、
前記判定部は、前記太陽電池ストリングの動作電圧の対象期間の平均値、中央値または最頻値が、参照期間の平均値、中央値または最頻値より第1規定値以上低下している場合、前記太陽電池ストリングに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記太陽電池ストリングの動作電圧が1単位期間前の動作電圧より、第2規定値以上低下している場合、前記太陽電池ストリングに含まれる前記太陽電池モジュールのいずれかに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールは、直列接続された複数の太陽電池セルと、それぞれが前記複数の太陽電池セルの一グループをバイパスする複数のバイパスダイオードを含み、
前記第2規定値は、1つの前記バイパスダイオードでバイパスされる一グループの太陽電池セルの両端電圧に応じて決定された値であることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項5】
前記太陽電池ストリングの動作電圧が1単位期間前の動作電圧より、前記第2規定値以上低下している場合、前記データ取得部は、計測された前記太陽電池ストリングのIVカーブを取得し、
前記判定部は、前記太陽電池ストリングの動作電圧が1単位期間前の動作電圧より、前記第2規定値以上低下し、かつ前記IVカーブの形状に段差が発生している場合、前記太陽電池ストリングに含まれる前記太陽電池モジュールのいずれかに異常が発生していると判定することを特徴とする請求項3または4に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項6】
前記判定部は、取得された前記太陽電池ストリングの動作電圧が、前記太陽電池ストリングに含まれる複数の太陽電池モジュールの直列数に応じて決定された設定電圧値より低い場合、取得された前記太陽電池ストリングの動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項7】
前記データ取得部は、前記太陽電池ストリングの動作電流を動作電圧とともに取得し、
前記判定部は、取得された前記太陽電池ストリングの動作電流が設定電流値より低い場合、取得された前記太陽電池ストリングの動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記太陽電池ストリングから出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統に出力する電力変換装置が出力制御中のときの、前記太陽電池ストリングの動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項9】
前記判定部は、前記太陽電池ストリングから出力される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置が定格電力以上の電力を出力しているときの、前記太陽電池ストリングの動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム。
【請求項10】
少なくとも1つの太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングの動作電圧を定期的に取得するステップと、
取得された前記太陽電池ストリングの動作電圧の時系列変動が規定値以上の場合、前記太陽電池ストリングに異常が発生していると判定するステップと、
を有することを特徴とする太陽電池の異常検出方法。
【請求項11】
少なくとも1つの太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングの動作電圧を定期的に取得する処理と、
取得された前記太陽電池ストリングの動作電圧の時系列変動が規定値以上の場合、前記太陽電池ストリングに異常が発生していると判定する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする太陽電池の異常検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電量低下やホットスポットなどの太陽電池の異常検出システム、異常検出方法、及び異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーへの注目が集まる中、太陽光発電システムの普及が拡大している。太陽光発電システムでは使用に伴い太陽電池モジュールに不具合が発生することがある。例えば、ガラス割れ、充填材の剥離や気泡などにより発電量が低下することがある。また、ホットスポットが発生し、変色や電圧異常が発生することがある。
【0003】
太陽電池の故障検知に関して、MPPT(Maximum Power Point Tracking)制御時における太陽電池の出力特性と、MPPT制御の停止時における太陽電池の出力特性とを比較して太陽電池が正常であるか否か診断する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池の電流成分を含む出力特性や動作点電力は、季節、天気、日射量の影響を大きく受ける。太陽電池の発電量が低下している場合、その低下が、太陽電池の故障に起因するものか、環境に起因するものか判断することが難しい。
【0006】
環境データを取得するために、日射計や温度計などのセンサを設置することが考えられるが、コストが上昇する。住宅用の小型の太陽光発電システムでは、日射計や温度計が設置されていないシステムが一般的である。
【0007】
太陽電池モジュールのホットスポットは、専門業者が現地でサーモカメラなどを用いて検知することが一般的であり、コストがかかっていた。
【0008】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、低コストで高精度に太陽電池の異常を検出することができる異常検出システム、異常検出方法、及び異常検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の太陽電池の異常検出システムは、少なくとも1つの太陽電池モジュールを含む太陽電池ストリングの動作電圧を定期的に取得するデータ取得部と、取得された前記太陽電池ストリングの動作電圧の時系列変動が規定値以上の場合、前記太陽電池ストリングに異常が発生していると判定する判定部と、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、低コストで高精度に太陽電池の異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る、マルチストリング型の太陽光発電システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】
図1の太陽電池ストリングの構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る異常検出システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図4(a)-(b)は、ホットスポットが発生している状態のIVカーブと、ホットスポットが発生していない正常な状態のIVカーブの一例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る、太陽電池ストリングの発電量低下診断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態に係る、太陽電池ストリングのホットスポット診断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】HIT245W出力の太陽電池ストリングと、HIT250W出力の太陽電池ストリングの動作電圧Vopの実証データの年間推移を示す図である。
【
図8】
図8(a)-(c)は、HIT245W出力の太陽電池ストリングの別の実証データの1日推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施の形態に係る、マルチストリング型の太陽光発電システム1の全体構成例を示す図である。太陽光発電システム1は、複数の太陽電池ストリング5a、5b及び電力変換装置10を備える。
図1では2並列の太陽電池ストリング5が設置される例を示しているが、3並列以上の太陽電池ストリング5を設置してもよい。
【0014】
図2は、
図1の太陽電池ストリング5の構成例を示す図である。一つの太陽電池ストリング5は、直列接続された複数の太陽電池モジュール51-5nを含む。一つの太陽電池モジュール51は、直列接続された複数の太陽電池セルC1を含む。
【0015】
太陽電池セルC1は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接、直流電力に変換することができる。太陽電池セルとして、ヘテロ接合太陽電池(HIT(Heterojunction with Intrinsic Thin-layer)太陽電池)、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池などを使用することができる。
【0016】
直列接続された複数の太陽電池セルの両端のそれぞれに、バイパスダイオードD1-D3がそれぞれ接続される。
図2では20セルごとに、一つのバイパスダイオードが接続されている。いずれかの太陽電池セルが故障して電流が流れなくなった場合でも、故障した太陽電池セルを含むグループをバイパスダイオードで電流バイパスすることができる。
【0017】
図2では、一つの太陽電池ストリング5を、N(2以上の整数)直列1並列の太陽電池モジュール51-5nで構成する例を示しているが、N直列M(2以上の整数)並列の太陽電池モジュールで構成してもよい。
【0018】
図1に戻る。電力変換装置10は、複数の太陽電池ストリング5a、5bから入力される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を商用電力系統(以下、単に系統2という)または負荷4に出力するパワーコンディショナシステム(PCS)である。電力変換装置10は、複数のDC/DCコンバータ11a、11b、複数のコンバータ制御回路12a、12b、インバータ13、インバータ制御回路14及び制御部15を含む。複数のDC/DCコンバータ11a、11bは、直流バスBdcに対して並列に接続される。
【0019】
DC/DCコンバータ11aは、太陽電池ストリング5aから出力される直流電力の電圧を調整可能なコンバータである。DC/DCコンバータ11aは例えば、昇圧チョッパで構成することができる。昇圧チョッパは、リアクトルとパワーデバイス(例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor))を含む。
【0020】
コンバータ制御回路12aはDC/DCコンバータ11aを制御する。コンバータ制御回路12aは、太陽電池ストリング5aの出力電力が最大になるようDC/DCコンバータ11aをMPPT制御する。具体的にはコンバータ制御回路12aは、太陽電池ストリング5aの出力電圧および出力電流である、DC/DCコンバータ11aの入力電圧および入力電流を計測して太陽電池ストリング5aの発電電力を推定する。
【0021】
なお、DC/DCコンバータ11aの入力電圧を計測するための電圧センサ(不図示)は、昇圧チョッパに含まれるリアクトルの前段に設置される。DC/DCコンバータ11aの入力電流を計測するための電流センサ(不図示)は、当該リアクトルの前段または後段(パワーデバイスの前段)に設置される。
【0022】
コンバータ制御回路12aは、計測した太陽電池ストリング5aの出力電圧と推定した発電電力をもとに、太陽電池ストリング5aの発電電力を最大電力点(最適動作点)にするための電圧指令値を生成する。コンバータ制御回路12aは例えば、山登り法に従い動作点電圧を所定のステップ幅で変化させて最大電力点を探索する。コンバータ制御回路12aは、最大電力点を維持するように電圧指令値を生成する。DC/DCコンバータ11aのパワーデバイスは、生成された電圧指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0023】
コンバータ制御回路12aは、計測した太陽電池ストリング5aの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを定期的(例えば、1分毎)に制御部15に出力する。
【0024】
DC/DCコンバータ11b及びコンバータ制御回路12bの動作は、DC/DCコンバータ11a及びコンバータ制御回路12aと同様である。DC/DCコンバータ11aの出力電流とDC/DCコンバータ11bの出力電流が直流バスBdcで合流する。なお、直流バスBdcには定置型蓄電池または車載蓄電池が接続されていてもよい。その場合、太陽光発電システム1は蓄電システムとのハイブリッドシステムとなる。
【0025】
インバータ13は、直流バスBdcから供給される直流電力を交流電力に変換して分電盤3に出力する。分電盤3には系統2及び負荷4が接続される。負荷4は宅内の負荷の総称である。
【0026】
インバータ制御回路14はインバータ13を制御する。インバータ制御回路14は、直流バスBdcの電圧が目標値を維持するようにインバータ13を制御する。具体的にはインバータ制御回路14は、直流バスBdcの電圧を検出し、検出したバス電圧を目標値に一致させるための電流指令値を生成する。インバータ制御回路14は、直流バスBdcの電圧が目標値より高い場合はインバータ13の出力電力を上げるための電流指令値を生成し、直流バスBdcの電圧が目標値より低い場合はインバータ13の出力電力を下げるための電流指令値を生成する。インバータ13は、生成された電流指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0027】
制御部15は電力変換装置10全体を統括的に制御する。制御部15は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコントローラ、DSP、ROM、RAM、ASIC、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源として、ファームウェアなどのプログラムを利用できる。
【0028】
制御部15は、外部接続管理装置(リモコン設定器とも称される)6と各種情報を送受信することができる。本実施の形態では制御部15は、コンバータ制御回路12a、12bからそれぞれ取得した各太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを外部接続管理装置6に送信する。
【0029】
外部接続管理装置6と電力変換装置10との間は有線(例えば、RS-485規格に準拠したケーブル)で接続されてもよいし、無線(例えば、Wi-Fi(登録商標)、小電力無線)で接続されてもよい。外部接続管理装置6はルータ装置7に接続される。外部接続管理装置6とルータ装置7との間は有線(例えば、LANケーブル)または無線(例えば、Wi-Fi)で接続される。外部接続管理装置6は、電力変換装置10を操作するための操作端末としての機能と、外部のネットワーク8に接続するためのゲートウェイとしての機能を担う。
【0030】
ネットワーク8は、インターネット、専用線、VPN(Virtual Private Network)などの通信路の総称であり、その通信媒体やプロトコルは問わない。通信媒体として例えば、光ファイバ網、ADSL網、CATV網、モバイル通信網、無線LAN、有線LANなどを使用することができる。通信プロトコルとして例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)/IP、イーサネット(登録商標)などを使用することができる。
【0031】
外部接続管理装置6は、制御部15から取得した各太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを、ネットワーク8を介して異常検出システム20に送信する。
【0032】
電力変換装置10及び外部接続管理装置6の少なくとも一方は、内部に不揮発メモリ(例えば、フラッシュメモリ)を有し、当該不揮発メモリに、計測された各太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを保存してもよい。電力変換装置10の制御部15または外部接続管理装置6は、当該不揮発メモリに保存された一定期間分の各太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを異常検出システム20に一括送信してもよい。例えば、1日に1回、1日分の各太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを一括送信してもよい。
【0033】
当該不揮発メモリに保存されている各太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxは、一括送信された後に消去されてもよいし、一定期間(例えば、3年間)、保存されてもよい。
【0034】
異常検出システム20は、太陽電池モジュールの異常を検出するためのシステムである。異常検出システム20は例えば、太陽電池モジュールのメーカ、電力変換装置10のメーカ、またはメーカ系もしくは独立系の保守サービス会社により運営・管理される。異常検出システム20は、保守サービス提供主体の自社施設またはデータセンタに設置された自社サーバ上に構築されてもよいし、クラウドサービス契約に基づき利用するクラウドサーバ上に構築されてもよい。
【0035】
図3は、実施の形態に係る異常検出システム20の構成例を示す図である。異常検出システム20は、処理部21、記憶部22及び通信部23を備える。通信部23は、有線または無線によりネットワーク8に接続するための通信インタフェースである。
【0036】
処理部21は、データ取得部211、算出部212及び判定部213を含む。処理部21の機能はハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源として、CPU、ROM、RAM、GPU、ASIC、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーションなどのプログラムを利用できる。
【0037】
記憶部22は、計測データ保持部221を含む。記憶部22は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記録媒体を含み、各種データを記録する。
【0038】
データ取得部211は、各太陽電池ストリング5a、5bの動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを電力変換装置10から定期的に取得して、計測データ保持部221に保存する。データ取得部211は、管理対象の複数の電力変換装置10からそれぞれ、太陽電池ストリング5の動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを取得する。判定部213は、特定の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの時系列変動が規定値以上の場合、当該太陽電池ストリング5に異常が発生していると判定する。
【0039】
算出部212は、特定の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの所定期間(例えば、一ヶ月)の平均値を算出する。判定部213は、当該太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの対象期間(例えば、当月)の平均値が、参照期間(例えば、前月)の平均値より第1規定値以上低下している場合、当該太陽電池ストリング5に含まれる太陽電池モジュールに発電量低下の異常が発生していると判定する。なお、平均値の代わりに、中央値または最頻値を使用してもよい。
【0040】
第1規定値は例えば、5%に設定される。太陽電池ストリング5及び電力変換装置10が正常に動作していても、太陽電池モジュールの温度変動に伴い動作電圧Vopも変動する。一般的に、太陽電池モジュールの電圧温度係数は-0.25%/℃程度である。前月比で動作電圧Vopが5%以上低下したことは、太陽電池モジュールの温度が前月比で20℃以上低下したことを意味する。前月比で温度が15℃程度変化することはたまに発生するが、20℃以上変化することは極めて稀である。よって、動作電圧Vopの5%以上の変動は温度要因では無く、太陽電池モジュールの故障が原因であると見做すことができる。
【0041】
判定部213は、当該太陽電池ストリング5に含まれる太陽電池モジュールに発電量低下の異常が発生していると判定すると、保守サービス提供主体の図示しない端末装置(例えば、PC、タブレットなど)に、発電量低下の異常が発生していることを示すアラート信号を送信する。保守サービス提供主体の保守員は、当該アラートを認識すると当該太陽電池ストリング5の修理に赴く。
【0042】
なお判定部213は、当該アラート信号を対象の電力変換装置10に送信してもよい。電力変換装置10の制御部15は、必要に応じて、当該太陽電池ストリング5と電力変換装置10との間のスイッチ(不図示)をオフして、当該太陽電池ストリング5の発電を停止させる。
【0043】
また判定部213は、特定の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが1単位期間(例えば、1分)前の動作電圧Vopより、第2規定値以上低下している場合、当該太陽電池ストリング5に含まれる太陽電池モジュールのいずれかにホットスポットによる異常が発生していると判定する。
【0044】
図2に示したように、一つの太陽電池モジュール51には、それぞれが、直列接続された複数の太陽電池セルの一グループをバイパスする複数のバイパスダイオードD1-D3が含まれる。ホットスポットが発生すると、一つのバイパスダイオードでバイパスされる一グループの太陽電池セルの両端電圧に相当する分の電圧が低下する。即ち、ホットスポットが発生すると、ホットスポットになっている太陽電池セルが属する太陽電池セルグループの電圧を取り出すことができなくなる。
【0045】
第2規定値は、一グループの太陽電池セルの両端電圧に応じて決定された値に設定される。例えば、一つの太陽電池モジュール51に3つのバイパスダイオードD1-D3が設置される場合、第2規定値は、(1/4×Vpm)に設定されてもよい。Vpmは、太陽電池モジュールの最大出力時の電圧値であり、カタログスペック値を使用することができる。理論的には動作電圧Vopが(1/3×Vpm)程度低下すれば、ホットスポットが疑われる。本実施の形態では安全サイドにマージンを設け、(1/4×Vpm)以上の低下でホットスポットが発生していると判定する。
【0046】
判定部213は、ホットスポットによる異常をより高精度に判定するために、太陽電池ストリング5のIVカーブの形状を加味して判定してもよい。一般的に、太陽電池モジュールにホットスポットが発生している場合、IVカーブの途中に段差が発生する。
【0047】
図4(a)-(b)は、ホットスポットが発生している状態のIVカーブと、ホットスポットが発生していない正常な状態のIVカーブの一例を示す図である。判定部213は、特定の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが1単位期間前の動作電圧Vopより、第2規定値以上低下している場合、電力変換装置10の制御部15に、当該太陽電池ストリング5のIVカーブデータの取得要求を送信する。
【0048】
電力変換装置10の制御部15は、当該太陽電池ストリング5のIVカーブデータの取得要求を受信すると、当該太陽電池ストリング5のコンバータ制御回路12にIVカーブデータの取得を要求するとともに、インバータ13と分電盤3間のリレー(不図示)をオフして、電力変換装置10と系統2を切り離す。IVカーブデータの取得を要求されたコンバータ制御回路12は、DC/DCコンバータ11の電圧指令値をスイープさせながら電流値を計測する。コンバータ制御回路12は、電圧と電流の組み合わせで規定されるIVカーブデータを制御部15に出力し、制御部15は当該IVカーブデータを異常検出システム20に送信する。
【0049】
判定部213は、取得されたIVカーブの形状に段差が発生している場合、当該太陽電池ストリング5に含まれる太陽電池モジュールのいずれかにホットスポットが発生していると確定診断する。判定部213は、IVカーブの形状に段差があるか否か判定するために、取得されたIVカーブの一定間隔ごとの電圧差ΔVを算出する。
【0050】
図4(b)に示すように、ホットスポットが発生していない正常な状態のIVカーブの場合、電圧差ΔV(即ち、電圧の傾き)が滑らかに拡大していく。例えば、電圧差ΔVが、・・・、-1/4、-1/3、-1/2、-1、-2、-3、・・・と拡大していく。これに対して
図4(a)に示すように、ホットスポットが発生している状態のIVカーブの場合、電圧差ΔVが拡大→縮小→拡大と変化する。例えば、電圧差ΔVが、・・・、-1/4、-1/3、-1/2、-1、-1/3、-1/4、・・・と変化する。
【0051】
判定部213は、電圧差ΔVが拡大→縮小→拡大と変化したことを検出すると、当該IVカーブの形状に段差が発生していると判定する。当該太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが当該段差の高電圧側にあるときは、ホットスポットになっているセルが属するセルグループをバイパスダイオードでバイパスしている状態と推定できる。この状態は比較的安全であり、当該太陽電池ストリング5の発電を停止させる必要性は低い。一方、当該太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが当該段差の低電圧側にあるときは、ホットスポットになっているセルが属するセルグループにも電流が流れている可能性が高い。
【0052】
判定部213は、当該太陽電池ストリング5に含まれる太陽電池モジュールにホットスポットによる異常が発生していると判定すると、ホットスポットによる異常が発生していることを示すアラート信号を対象の電力変換装置10に送信する。その際、判定部213は、当該太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが当該段差の高電圧側にあるときは電力変換装置10にアラートを送信せず、当該段差の低電圧側にあるとき電力変換装置10にアラートを送信してもよい。
【0053】
電力変換装置10の制御部15は当該アラート信号を受信すると、当該太陽電池ストリング5と電力変換装置10との間のスイッチ(不図示)をオフして、当該太陽電池ストリング5の発電を停止させる。判定部213は、当該アラート信号を保守サービス提供主体の端末装置(不図示)にも送信する。保守サービス提供主体の保守員は、当該アラート信号を認識すると当該太陽電池ストリング5の修理に赴く。
【0054】
動作電圧Vopの値が極端に低い値は、データとしての信頼性が低い。早朝、夕方、曇天、雨天などの低日射時のデータは動作電圧Vopの値が不安定になる傾向がある。極端に低い動作電圧Vopの値は、太陽電池モジュールの故障が原因である可能性が低く、低日射あるいは日射変動が大きいことによる電力変換装置10の動作不安定が原因である可能性が高い。
【0055】
判定部213は、データ取得部211により取得された太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが設定電圧値より低い場合、当該動作電圧Vopを異常判定に使用する値から除外する。設定電圧値は、太陽電池ストリング5に含まれる複数の太陽電池モジュールの直列数に応じて決定される。例えば設定電圧値は、(Vpm×(モジュール直列数-1.5))に設定されてもよい。太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが、本来の最大出力電圧より、太陽電池モジュール1.5個分の電圧以上低い場合、動作電圧Vopの値が極端に低いと見做すことができる。
【0056】
JIS8912・JIS8913規格では、放射照度=1SUN(1000W/m2)、温度=25℃の条件下において、太陽電池のエネルギー変換効率が評価される。1SUNの日射があるときの太陽電池モジュールの動作電流Iopは、Ipmに略等しい。Ipmは、太陽電池モジュールの最大出力時の電流値であり、カタログスペック値を使用することができる。
【0057】
判定部213は、データ取得部211により取得された太陽電池ストリング5の動作電流Iopが設定電流値より低い場合、同時に取得された動作電圧Vopを異常判定に使用する値から除外する。例えば設定電流値は、(1/10×Ipm)に設定されてもよい。太陽電池ストリング5の動作電流Iopが(1/10×Ipm)より低い場合、低日射により電力変換装置10が動作していない可能性がある。また動作している場合でも、極端な低電圧で動作している可能性がある。
【0058】
電力変換装置10から系統2への出力制御(出力抑制ともいう)中は、太陽電池ストリング5の動作電圧Vopが上昇して動作電流Iopが低下する傾向にあるため、太陽電池ストリング5の異常判定の精度が低下する。出力制御は、電力会社(一般送配電事業者)からの出力制御指令、完全自家消費のための負荷追随制御、電力変換装置10内の温度抑制制御、系統2の電圧上昇抑制制御、クリップ制御(電力変換装置10の定格に比べて契約電力が低い場合に発動される)などに起因して発動される。
【0059】
電力変換装置10の制御部15は、出力制御中、出力制御中であることを示す情報を外部接続管理装置6に送信する。外部接続管理装置6は、太陽電池ストリング5の動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを異常検出システム20に送信する際、電力変換装置10の出力制御に関する情報も送信する。判定部213は、電力変換装置10が出力制御中のときの太陽電池ストリング5の動作電圧Vopを、異常判定に使用する値から除外する。
【0060】
電力変換装置10の出力電力(交流電力)が電力変換装置10の定格電力以上の場合、太陽電池モジュールを過積載している可能性がある。太陽電池モジュールを過積載している場合、日射量が多いときの異常判定の精度が低下する。
【0061】
電力変換装置10の制御部15は、定格電力以上の電力を出力した場合、定格超過出力を示す情報を外部接続管理装置6に送信する。外部接続管理装置6は、太陽電池ストリング5の動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを異常検出システム20に送信する際、電力変換装置10の定格超過出力に関する情報も送信する。判定部213は、電力変換装置10が定格電力以上の電力を出力しているときの太陽電池ストリング5の動作電圧Vopを、異常判定に使用する値から除外する。
【0062】
図5は、実施の形態に係る、太陽電池ストリング5の発電量低下診断処理の流れを示すフローチャートである。電力変換装置10の制御部15は、太陽電池ストリング5の動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを取得する(S10)。制御部15は、取得した太陽電池ストリング5の動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを外部接続管理装置6を介して異常検出システム20に送信する(S11)。
【0063】
異常検出システム20のデータ取得部211は、太陽電池ストリング5の動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを電力変換装置10から取得する。判定部213は、動作電流Iopと設定電流値(1/10×Ipm)を比較する(S12)。動作電流Iopが設定電流値(1/10×Ipm)より低い場合(S12のY)、判定部213は診断処理を終了する。
【0064】
動作電流Iopが設定電流値(1/10×Ipm)以上の場合(S12のN)、判定部213は、動作電圧Vopと設定電圧値(Vpm×(モジュール直列数-1.5))を比較する(S13)。動作電圧Vopが設定電圧値(Vpm×(モジュール直列数-1.5))より低い場合(S13のY)、判定部213は診断処理を終了する。
【0065】
動作電圧Vopが設定電圧値(Vpm×(モジュール直列数-1.5))以上の場合(S13のN)、判定部213は、電力変換装置10が出力制御中であるか否か判定する(S14)。電力変換装置10が出力制御中である場合(S14のY)、判定部213は診断処理を終了する。
【0066】
電力変換装置10が出力制御中でない場合(S14のN)、判定部213は、電力変換装置10の出力電力が定格電力以上であるか否か判定する(S15)。電力変換装置10の出力電力が定格電力以上である場合(S15のY)、判定部213は診断処理を終了する。
【0067】
電力変換装置10の出力電力が定格電力未満である場合(S15のN)、算出部212は、太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの今月と前月の平均値を算出する(S16)。判定部213は、動作電圧Vopの今月の平均値と、動作電圧Vopの前月の平均値×0.95を比較する(S17)。今月の平均値が前月の平均値×0.95より低い場合(S17のY)、判定部213は、発電量低下の異常が発生していることを示すアラート信号を発出する(S18)。今月の平均値が前月の平均値×0.95より低くない場合(S17のN)、判定部213は、アラート信号を発出せずに診断処理を終了する。以上の診断処理が太陽電池ストリング5ごとに行われる。
【0068】
図6は、実施の形態に係る、太陽電池ストリング5のホットスポット診断処理の流れを示すフローチャートである。ステップS20からステップS25までの処理は、
図5に示した発電量低下診断処理のフローチャートに示したステップS10からステップS15までの処理と同様であるため説明を省略する。
【0069】
電力変換装置10の出力電力が定格電力未満である場合(S25のN)、算出部212は、太陽電池ストリング5の1分前の動作電圧Vopから現在の動作電圧Vopを減算して差分電圧ΔVopを算出する(S26)。判定部213は、差分電圧ΔVopと規定値(1/4×Vpm)を比較する(S27)。差分電圧ΔVopが規定値(1/4×Vpm)以下の場合(S27のN)、判定部213は、アラート信号を発出せずに診断処理を終了する。
【0070】
差分電圧ΔVopが規定値(1/4×Vpm)より大きい場合(S27のY)、判定部213は、電力変換装置10の制御部15に、太陽電池ストリング5のIVカーブの計測データの取得を要求する。データ取得部211は、電力変換装置10の制御部15から太陽電池ストリング5のIVカーブの計測データを取得する(S28)。
【0071】
判定部213は、取得されたIVカーブの形状に段差が発生しており、太陽電池ストリング5の動作点が段差の低電圧側にあるか否か判定する(S29)。IVカーブの形状に段差が発生しており、太陽電池ストリング5の動作点が段差の低電圧側にある場合(S29のY)、判定部213は、ホットスポットによる異常が発生していることを示すアラート信号を発出する(S210)。IVカーブの形状に段差が発生していないか、発生していても動作点が段差の高電圧側にある場合(S29のN)、判定部213は、アラート信号を発出せずに診断処理を終了する。以上の診断処理が太陽電池ストリング5ごとに行われる。
【0072】
図7は、HIT245W出力の太陽電池ストリング5と、HIT250W出力の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの実証データの年間推移を示す図である。この実証実験では、(1)2019年9月5日に、HIT250W出力の太陽電池ストリング5に含まれる太陽電池モジュールの上に複数のポールを設置し、当該太陽電池モジュールに含まれる太陽電池セルの一部にテープを貼り付けて発電量が低下する状況を意図的に作り出している。
【0073】
HIT245W出力の太陽電池ストリング5は正常な状態を保っている。HIT245W出力の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの年間変動を見ると、正常な状態では動作電圧Vopの値は夏季に若干低くなり、冬季に若干高くなることが分かる。一方、HIT250W出力の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの年間変動を見ると、発電量に異常が発生すると、動作電圧Vopが急激に変動することが分かる。(2)2020年8月7日には太陽電池モジュールに変色が確認され、変色が確認された太陽電池モジュールを撤去し、HIT250Wシステムを停止させた。(3)2020年10月26日に太陽電池モジュールを再設置し、HIT250Wシステムを再稼働させた。
【0074】
図8(a)-(c)は、HIT245W出力の太陽電池ストリング5の別の実証データの1日の推移を示す図である。この実証試験では、太陽電池モジュールの上にポールを設置して当該太陽電池モジュールの一部に意図的に影を作り出している。
【0075】
図8(a)は、ポール設置前の動作電圧Vop、動作電流Iopの日中の推移を示す。
図8(b)-(c)は、ポール設置後の動作電圧Vop、動作電流Iopの日中の推移を示す。
図8(b)と
図8(c)は別の日のデータを示している。ポール設置後は日射量の多い時間帯の動作電圧Vopが低下し、異常検出システム20によりホットスポットが検出される。
【0076】
以上説明したように本実施の形態によれば、太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの変動をベースに太陽電池モジュールの異常を検出することにより、低コストで高精度に太陽電池モジュールの異常を検出することができる。日射計や温度計などで検出されたデータを使用しないため、これらのセンサを省略することができ、コストを削減することができる。
【0077】
動作電圧Vopは、動作電流Iopや動作電力Pmaxと異なり、季節、天気、日射量の影響を比較的受けにくいパラメータであり、動作電圧Vopの変動をベースにすることにより、太陽電池モジュールの異常を高精度に検出することができる。また、時々刻々と変化する動作電圧Vopをもとにホットスポットを検出することで、現地調査によりホットスポットを検出する場合と比較して、異常発生による急激な出力低下のリスクを早期に検知することができる。これにより、異常発生による急激な出力低下を未然に防止することができる。
【0078】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0079】
上記実施の形態では電力変換装置10から異常検出システム20に、太陽電池ストリング5の動作電圧Vop、動作電流Iop、動作電力Pmaxを送信する例を説明した。その際、動作電力Pmaxの送信を省略してもよい。さらに、ステップS12、ステップS22の動作電流Iopと設定電流値(1/10×Ipm)との比較判定処理を省略することにより、動作電流Iopの送信も省略してもよい。
【0080】
上記実施の形態ではマルチストリング型の太陽光発電システム1を想定したが、集中型の太陽光発電システム1で使用される太陽電池モジュールの異常検出にも本開示を適用できる。なお、
図8(a)-(c)に示した実証データは、HIT245W出力の太陽電池ストリング5を使用した集中型の太陽光発電システム1で取得されたデータである。また一つの太陽電池ストリング5のみ、または一つの太陽電池モジュールのみを備える太陽光発電システム1で使用される太陽電池モジュールの異常検出にも本開示を適用できる。
【0081】
上記実施の形態では異常検出システム20が外部のサーバ上に構築される例を示したが、異常検出システム20が電力変換装置10内に組み込まれていてもよい。また、電力変換装置10が設置されている宅内のHEMS(Home Energy Management System)コントローラ内に、異常検出システム20が組み込まれていてもよい。
【0082】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0083】
[項目1]
少なくとも1つの太陽電池モジュール(51-5n)を含む太陽電池ストリング(5)の動作電圧を定期的に取得するデータ取得部(211)と、
取得された前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧の時系列変動が規定値以上の場合、前記太陽電池ストリング(5)に異常が発生していると判定する判定部(213)と、
を備えることを特徴とする太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、低コストで高精度に太陽電池の異常を検出することができる。
[項目2]
前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧の所定期間の平均値、中央値または最頻値を算出する算出部(212)をさらに備え、
前記判定部(213)は、前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧の対象期間の平均値、中央値または最頻値が、参照期間の平均値、中央値または最頻値より第1規定値以上低下している場合、前記太陽電池ストリング(5)に異常が発生していると判定することを特徴とする項目1に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、低コストで高精度に太陽電池の発電量低下の異常を検出することができる。
[項目3]
前記判定部(213)は、前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧が1単位期間前の動作電圧より、第2規定値以上低下している場合、前記太陽電池ストリング(5)に含まれる前記太陽電池モジュール(51-5n)のいずれかに異常が発生していると判定することを特徴とする項目1または2に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、低コストで高精度に太陽電池のホットスポットによる異常を検出することができる。
[項目4]
前記太陽電池モジュール(51-5n)は、直列接続された複数の太陽電池セル(C1)と、それぞれが前記複数の太陽電池セル(C1)の一グループをバイパスする複数のバイパスダイオード(D1-D3)を含み、
前記第2規定値は、1つの前記バイパスダイオード(D1)でバイパスされる一グループの太陽電池セル(C1)の両端電圧に応じて決定された値であることを特徴とする項目3に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、ホットスポットの発生を検出するための判定閾値を高精度に決定することができる。
[項目5]
前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧が1単位期間前の動作電圧より、前記第2規定値以上低下している場合、前記データ取得部(211)は、計測された前記太陽電池ストリング(5)のIVカーブを取得し、
前記判定部(213)は、前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧が1単位期間前の動作電圧より、前記第2規定値以上低下し、かつ前記IVカーブの形状に段差が発生している場合、前記太陽電池ストリング(5)に含まれる前記太陽電池モジュール(51-5n)のいずれかに異常が発生していると判定することを特徴とする項目3または4に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、ホットスポットの発生を、より高精度に検出することができる。
[項目6]
前記判定部(213)は、取得された前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧が、前記太陽電池ストリング(5)に含まれる複数の太陽電池モジュール(51-5n)の直列数に応じて決定された設定電圧値より低い場合、取得された前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、信頼性が低いデータを排除することができる。
[項目7]
前記データ取得部(211)は、前記太陽電池ストリング(5)の動作電流を動作電圧とともに取得し、
前記判定部(213)は、取得された前記太陽電池ストリング(5)の動作電流が設定電流値より低い場合、取得された前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、信頼性が低いデータを排除することができる。
[項目8]
前記判定部(213)は、前記太陽電池ストリング(5)から出力される直流電力を交流電力に変換して電力系統(2)に出力する電力変換装置(10)が出力制御中のときの、前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、信頼性が低いデータを排除することができる。
[項目9]
前記判定部(213)は、前記太陽電池ストリング(5)から出力される直流電力を交流電力に変換する電力変換装置(10)が定格電力以上の電力を出力しているときの、前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧を、異常判定に使用する値から除外することを特徴とする項目1から5のいずれか1項に記載の太陽電池の異常検出システム(20)。
これによれば、信頼性が低いデータを排除することができる。
[項目10]
少なくとも1つの太陽電池モジュール(51-5n)を含む太陽電池ストリング(5)の動作電圧を定期的に取得するステップと、
取得された前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧の時系列変動が規定値以上の場合、前記太陽電池ストリング(5)に異常が発生していると判定するステップと、
を有することを特徴とする太陽電池の異常検出方法。
これによれば、低コストで高精度に太陽電池の異常を検出することができる。
[項目11]
少なくとも1つの太陽電池モジュール(51-5n)を含む太陽電池ストリング(5)の動作電圧を定期的に取得する処理と、
取得された前記太陽電池ストリング(5)の動作電圧の時系列変動が規定値以上の場合、前記太陽電池ストリング(5)に異常が発生していると判定する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする太陽電池の異常検出プログラム。
これによれば、低コストで高精度に太陽電池の異常を検出することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 太陽光発電システム、 2 系統、 3 分電盤、 4 負荷、 5a,5b 太陽電池ストリング、 51-5n 太陽電池モジュール、 D1-D3 バイパスダイオード、 C1 太陽電池セル、 10 電力変換装置、 11a,11b DC/DCコンバータ、 12a,12b コンバータ制御回路、 13 インバータ、 14 インバータ制御回路、 15 制御部、 Bdc 直流バス、 6 外部接続管理装置、 7 ルータ装置、 8 ネットワーク、 20 異常検出システム、 21 処理部、 211 データ取得部、 212 算出部、 213 判定部、 22 記憶部、 221 計測データ保持部、 23 通信部。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る、マルチストリング型の太陽光発電システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】
図1の太陽電池ストリングの構成例を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る異常検出システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図4(a)-(b)は、ホットスポットが発生している状態のIVカーブと、ホットスポットが発生していない正常な状態のIVカーブの一例を示す図である。
【
図5】実施の形態に係る、太陽電池ストリングの発電量低下診断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態に係る、太陽電池ストリングのホットスポット診断処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
245W出力の太陽電池ストリングと
、250W出力の太陽電池ストリングの動作電圧Vopの実証データの年間推移を示す図である。
【
図8】
図8(a)-(c)は
、245W出力の太陽電池ストリングの別の実証データの1日推移を示す図である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
太陽電池セルC1は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接、直流電力に変換することができる。太陽電池セルとして、ヘテロ接合太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池などを使用することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
図7は
、245W出力の太陽電池ストリング5と
、250W出力の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの実証データの年間推移を示す図である。この実証実験では、(1)2019年9月5日に
、250W出力の太陽電池ストリング5に含まれる太陽電池モジュールの上に複数のポールを設置し、当該太陽電池モジュールに含まれる太陽電池セルの一部にテープを貼り付けて発電量が低下する状況を意図的に作り出している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
245W出力の太陽電池ストリング5は正常な状態を保っている。245W出力の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの年間変動を見ると、正常な状態では動作電圧Vopの値は夏季に若干低くなり、冬季に若干高くなることが分かる。一方、250W出力の太陽電池ストリング5の動作電圧Vopの年間変動を見ると、発電量に異常が発生すると、動作電圧Vopが急激に変動することが分かる。(2)2020年8月7日には太陽電池モジュールに変色が確認され、変色が確認された太陽電池モジュールを撤去し、250Wシステムを停止させた。(3)2020年10月26日に太陽電池モジュールを再設置し、250Wシステムを再稼働させた。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
図8(a)-(c)は
、245W出力の太陽電池ストリング5の別の実証データの1日の推移を示す図である。この実証試験では、太陽電池モジュールの上にポールを設置して当該太陽電池モジュールの一部に意図的に影を作り出している。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
上記実施の形態ではマルチストリング型の太陽光発電システム1を想定したが、集中型の太陽光発電システム1で使用される太陽電池モジュールの異常検出にも本開示を適用できる。なお、
図8(a)-(c)に示した実証データは
、245W出力の太陽電池ストリング5を使用した集中型の太陽光発電システム1で取得されたデータである。また一つの太陽電池ストリング5のみ、または一つの太陽電池モジュールのみを備える太陽光発電システム1で使用される太陽電池モジュールの異常検出にも本開示を適用できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】