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特開2023-22317生物薬剤フェドバッチ生産能力及び生産物品質を改善するための灌流シード培養の使用
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  • 特開-生物薬剤フェドバッチ生産能力及び生産物品質を改善するための灌流シード培養の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023022317
(43)【公開日】2023-02-14
(54)【発明の名称】生物薬剤フェドバッチ生産能力及び生産物品質を改善するための灌流シード培養の使用
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20230207BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
C12P21/02 C
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022197095
(22)【出願日】2022-12-09
(62)【分割の表示】P 2020000268の分割
【原出願日】2014-12-19
(31)【優先権主張番号】61/919,629
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】398050098
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム シー. ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジウイー ル
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ-ミン フアン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ラシュミ クシルサガル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リル
(57)【要約】
【課題】哺乳動物細胞培養において、目的のタンパク質生産物の生産効率を改善する方法を提供すること。
【解決手段】具体的には、その方法は、工業規模のバイオリアクター細胞培養において、生産されるタンパク質生産物の量を増加させるか、またはタンパク質生産物の生産時間を短縮する。開示する方法は:(a)高い生細胞密度までN-1バイオリアクター培養を培養すること;及び(b)高い生細胞播種密度で生産用バイオリアクター培養を播種することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物細胞培養において、目的のバイオプロダクトを生産する効率を改善する方法に関する。具体的には、その方法は、工業規模で生産されるバイオリアクター細胞培養において、生産されるバイオプロダクトの量を増加させ、且つ/またはバイオプロダクトの生産時間を短縮する。開示する方法は:(a)N-1シードトレイン(増殖段階)バイオリアクター細胞培養で細胞を培養して高い生細胞密度を得ること;及び(b)高い生細胞播種密度で生産用バイオリアクター培養に播種することを含む。
【背景技術】
【0002】
生産用バイオリアクターは、バイオプロダクト生産におけるボトルネックの1つである。従来のバッチまたはフェドバッチ(fed-batch)生産プロセスは、細胞集団が蓄積する非生産的な増殖期、続いて、バイオプロダクトの大部分が生成されるより生産的な静止期から成る。非生産的な増殖期は、期間を長くし、生産プロセスの容量生産性を低下させ、そしてそれは、非効率的な生産用バイオリアクターの利用となり、生産率を低下させる。容量生産性及び生産用バイオリアクターの使用法の改善は、生産段階バイオリアクターからN-1シードトレイン段階(増殖段階)バイオリアクターへと増殖期をシフトすることによって、認められた。(Pohlscheidt et al.,Biotechnology Progress,29(1),222-9(2013);Padawer et al.,Biotechnology Progress,published online(2013)。
しかしながら、N-1シードトレイン段階において高い生細胞密度を得るのは難しい。従来のバッチまたはフェドバッチN-1シードトレイン培養は、高い生細胞密度を維持することができない。したがって、バイオリアクターで細胞を培養するための改良方法が当該技術分野で必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Pohlscheidt et al.,Biotechnology Progress,29(1),222-9(2013)
【非特許文献2】Padawer et al.,Biotechnology Progress,published online(2013)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、N-1シードトレインバイオリアクターにおいて、栄養分補充及び/もしくは廃棄物除去によって、そして/または灌流細胞培養プロセスを用いることによって、N-1シードトレイン段階で高い生細胞密度を得るための方法に関する。N-1シードトレインバイオリアクターでの高い生細胞密度により、生産用バイオリアクターでのより高い生細胞播種密度が可能になる。本発明により、高シード生産用バイオリアクター(high-seed production bioreactor)は、より短い培養期間で同じまたはより高い力価の生産物を送出し、それにより1運転当たりのN-1シードトレインバイオリアクター占有率が増加し、そして1運転当たりの生産用バイオリアクター占有率が低下する。より短い生産期間及びより高い容量生産性(volumetric productivity)は、1運転当たりより多くの生産バッチを与え、そしてバッチまたはフェドバッチ生産用バイオリアクター装置をほとんど変えずに生産能力を増加させる。
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は:(a)N-1培養容器で目的のタンパク質をコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞を培養して、少なくとも25×10生細胞/mlの細胞密度を達成すること;(b)工程(a)から得られた細胞を、少なくとも8.5×10生細胞/mlの播種密度でN培養容器に接種すること;及び(c)目的のタンパク質の生産を可能にする条件下で細胞をN培養容器で培養すること、を含むタンパク質を生産する方法に関する。
【0006】
ある特定の実施形態では、工程(a)の間に、(i)培養の生細胞密度を定期的に測定し;そして(ii)生細胞密度に基づいて決定されるレベルで培養に栄養分を補充する。いくつかの実施形態では、栄養分はアミノ酸、亜鉛、鉄、及び銅を含む。いくつかの実施形態では、亜鉛は、約1.8μM~約1mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加える。いくつかの実施形態では、鉄は、約0.1μM~約10mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加える。いくつかの実施形態では、銅は、約0.008μM~約1mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加える。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、約50mM~約2Mの累積量で、工程(a)の細胞培養に加える。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は:(a)第1のN-1培養容器で目的のタンパク質をコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞を培養して、少なくとも25×10生細胞/mlの細胞密度を達成すること;(b)工程(a)から得られた細胞を、少なくとも8.5×10生細胞/mlの播種密度でN培養容器に接種すること;及び(c)目的のタンパク質の生産を可能にする条件下で細胞をN培養容器で培養すること、を含み、ここで、工程(a)の培養に、生細胞密度に基づいて決定されたレベルで栄養分を補充し、そして工程(a)の培養に加えるアミノ酸の累積量が約50mM~約2Mであることを特徴とする、目的のタンパク質を生産する方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態では、廃棄物は本方法の工程(a)の間に除去される。ある特定の態様では、廃棄物の除去は、ろ過、遠心分離、傾斜細胞沈澱器(inclined cell settler)、交互接線流、接線流、またはそれらの組み合わせによって行う。
【0009】
ある特定の実施形態では、廃棄物は工程(a)の間に除去され、そしてアミノ酸が約75mM~約500mMの累積量で加えられる。ある特定の実施形態では、廃棄物は工程(a)の間に除去され、そしてアミノ酸が約75mM~約800mMの累積量で加えられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、工程(a)での乳酸塩レベルは、15mM未満に維持される。他の実施形態では、工程(a)での乳酸塩レベルは、10mM、1mM、または0.1mM未満に維持される。
【0011】
本方法の工程(a)における細胞は、高い細胞密度まで培養される。いくつかの実施形態では、本方法の工程(a)における細胞は、高い生細胞密度まで培養される。いくつかの実施形態では、少なくとも30×10生細胞/mlの細胞密度は、工程(a)の間に達成される。他の実施形態では、少なくとも35×10生細胞/ml、少なくとも40×10生細胞/ml、少なくとも45×10生細胞/ml、少なくとも50×10生細胞/ml、少なくとも55×10生細胞/ml、少なくとも60×10生細胞/ml、または少なくとも65×10細胞/mlの細胞密度が、工程(a)の間に達成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約10回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約9回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約8回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約7回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約6回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約5回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約4回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約3回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約2回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約1回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1分当たり約1回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1時間当たり約1回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1日当たり約4回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1日当たり約3回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1日当たり約2回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1日当たり約1回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、継続的に測定される。
【0013】
いくつかの実施形態では、工程(a)の細胞培養は灌流細胞培養として行われる。ある特定の実施形態では、灌流細胞培養における灌流量は約0.10nL/細胞/日である。他の実施形態では、灌流細胞培養における灌流量は約0.07nL/細胞/日である。他の実施形態では、灌流細胞培養における灌流量は約0.05nL/細胞/日である。いくつかの実施形態では、灌流細胞培養における灌流は交互接線流である。他の実施形態では、灌流細胞培養における灌流は接線流である。
【0014】
いくつかの実施形態では、工程(a)の細胞培養は約3日~約8日の間維持される。
【0015】
いくつかの実施形態では、工程(b)におけるN培養容器は、約8.5×10生細胞/mlの播種密度で接種される。他の実施形態では、工程(b)におけるN培養容器は、約10×10生細胞/ml、約15×10生細胞/ml、20×10生細胞/ml、25×10生細胞/ml、または30×10生細胞/mlの播種密度で接種される。
【0016】
いくつかの実施形態では、工程(c)の培養はフェドバッチ培養として行われる。他の実施形態では、工程(c)の培養は灌流培養として行われる。
【0017】
いくつかの実施形態では、工程(c)の培養は約8日~約23日間維持される。
【0018】
様々な細胞株を、本発明の方法で使用することができる。本方法のある特定の実施形態では、哺乳動物細胞は:CHO細胞、HEK-293細胞、VERO細胞、NS0細胞、PER.C6細胞、Sp2/0細胞、BHK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、及びCOS細胞から成る群より選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、N培養容器における細胞によって生産される目的のタンパク質を捕集する工程を更に含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質生産物は抗体である。ある特定の実施形態では、目的のタンパク質生産物は、抗体、融合タンパク質、アルファ-シヌクレイン、BART、Lingo、aBDCA2、抗CD40L、STX-100、Tweak、ダクリズマブ、ペグ化インターフェロン、インターフェロン、エタナーセプト、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、Tysabri、Avonex、Rituxan、オクレリズマブ、オビヌツズマブ、またはCD20に結合する任意の他のタンパク質から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、工程(a)におけるN-1培養容器の容積は約50リットル~約20,000リットルである。他の実施形態では、工程(a)におけるN-1培養容器の容積は約100リットル~約4000リットルである。
【0022】
いくつかの実施形態では、工程(b)におけるN培養容器の容積は約200リットル~約20,000リットルである。
【0023】
いくつかの実施形態では、工程(a)及び工程(c)の細胞培養は異なる温度で増殖させる。ある特定の実施形態では、工程(c)の細胞培養は、工程(a)の培養に比べて、より低い温度で増殖させる。いくつかの実施形態では、工程(c)の細胞培養は約30℃で増殖させ、工程(a)の細胞培養は約36℃で増殖させる。
【0024】
いくつかの実施形態では、工程(a)の培養は約6.8~約7.4のpHで増殖させる。他の実施形態では、工程(a)の培養は約6.8~約7.3のpHで増殖させる。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明は、抗体を効率的に生産する方法に関する。
【0026】
また、本発明は、本発明の方法によって生産されるバイオプロダクトにも関する。いくつかの実施形態では、そのバイオプロダクトは抗体または抗体様ポリペプチドである。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)N-1培養容器で目的のタンパク質をコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞を培養して、少なくとも25×10生細胞/mlの細胞密度を達成すること;
(b)工程(a)から得られた細胞を、少なくとも8.5×10生細胞/mlの播種密度でN培養容器に接種すること;及び
(c)目的のタンパク質の生産を可能にする条件下で前記細胞を前記N培養容器で培養すること
を含み、ここで、工程(a)における培養に、生細胞密度に基づいて決定されたレベルで栄養分を補充し、そして工程(a)の培養に加えられるアミノ酸の累積量が約50mM~約2Mであることを特徴とする、目的のタンパク質の生産方法。
(項目2)
工程(a)の間に、前記培養の生細胞密度を定期的に測定する項目1に記載の方法。
(項目3)
前記栄養分が、アミノ酸、亜鉛、鉄、及び銅を含む項目2に記載の方法。
(項目4)
前記哺乳動物細胞が、CHO細胞、HEK-293細胞、VERO細胞、NS0細胞、PER.C6細胞、Sp2/0細胞、BHK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、及びCOS細胞から成る群より選択される項目1~3のいずれか一つに記載の方法。
(項目5)
廃棄物を、工程(a)の間に除去する項目1~4のいずれか一つに記載の方法。
(項目6)
前記廃棄物の除去を、ろ過、遠心分離、傾斜細胞沈澱器、交互接線流、または接線流によって行う項目1~5のいずれか一つに記載の方法。
(項目7)
少なくとも30×10生細胞/mlの細胞密度が、工程(a)の間に達成される項目1~6のいずれか一つに記載の方法。
(項目8)
少なくとも35×10生細胞/mlの細胞密度が、工程(a)の間に達成される項目1~7のいずれか一つに記載の方法。
(項目9)
少なくとも40×10生細胞/mlの細胞密度が、工程(a)の間に達成される項目1~8のいずれか一つに記載の方法。
(項目10)
少なくとも50×10生細胞/mlの細胞密度が、工程(a)の間に達成される項目1~9のいずれか一つに記載の方法。
(項目11)
少なくとも60×10生細胞/mlの細胞密度が、工程(a)の間に達成される項目1~10のいずれか一つに記載の方法。
(項目12)
工程(a)における培養の生細胞密度を、1秒当たり1回測定する項目2~11のいずれか一つに記載の方法。
(項目13)
工程(a)における培養の生細胞密度を、1秒当たり10回測定する項目2~11のいずれか一つに記載の方法。
(項目14)
工程(a)における培養に加えられる亜鉛の累積量が、約1.8μM~約1mMである項目1~13のいずれか一つに記載の方法。
(項目15)
工程(a)における培養に加えられる亜鉛の累積量が、約5μM~約1mMである項目1~14のいずれか一つに記載の方法。
(項目16)
工程(a)における培養に加えられる亜鉛の累積量が、約10μM~約0.5mMである項目1~15のいずれか一つに記載の方法。
(項目17)
工程(a)における培養に加えられる亜鉛の累積量が、約50μM~約0.5mMである項目1~16のいずれか一つに記載の方法。
(項目18)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の存在下で約0.1μM~約10mMまたは鉄キレート剤の非存在下で約2μM~約10mMである項目1~17のいずれか一つに記載の方法。
(項目19)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の存在下で約0.1μM~約5mMである項目1~18のいずれか一つに記載の方法。
(項目20)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の存在下で約1μM~約5mMである項目1~19のいずれか一つに記載の方法。
(項目21)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の存在下で約10μM~約5mMである項目1~20のいずれか一つに記載の方法。
(項目22)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の存在下で約500μM~約1mMである項目1~21のいずれか一つに記載の方法。
(項目23)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の非存在下で約2μM~約5mMである項目1~18のいずれか一つに記載の方法。
(項目24)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の非存在下で約5μM~約5mMである項目1~19及び項目23のいずれか一つに記載の方法。
(項目25)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の非存在下で約10μM~約5mMである項目1~19、項目23及び24のいずれか一つに記載の方法。
(項目26)
工程(a)における培養に加えられる鉄の累積量が、鉄キレート剤の非存在下で約100μM~約1mMである項目1~19及び項目23~25のいずれか一つに記載の方法。(項目27)
工程(a)における培養に加えられる銅の累積量が、少なくとも約0.008μM~約1mMである項目1~26のいずれか一つに記載の方法。
(項目28)
工程(a)における培養に加えられる銅の累積量が、少なくとも約0.05μM~約1mMである項目1~27のいずれか一つに記載の方法。
(項目29)
工程(a)における培養に加えられる銅の累積量が、少なくとも約0.05μM~約0.5mMである項目1~28のいずれか一つに記載の方法。
(項目30)
工程(a)における培養に加えられる銅の累積量が、少なくとも約10μM~約0.5mMである項目1~29のいずれか一つに記載の方法。
(項目31)
工程(a)における培養に加えられる銅の累積量が、少なくとも約100μM~約0.2mMである項目1~30のいずれか一つに記載の方法。
(項目32)
工程(a)のN-1培養容器における培養を灌流する項目1~31のいずれか一つに記載の方法。
(項目33)
前記灌流量が、約0.1nL/細胞/日である項目1~32のいずれか一つに記載の方法。
(項目34)
前記灌流量が、約0.05nL/細胞/日である項目1~32のいずれか一つに記載の方法。
(項目35)
灌流が交互接線流である項目1~34のいずれか一つに記載の方法。
(項目36)
灌流が接線流である項目1~34のいずれか一つに記載の方法。
(項目37)
前記N培養容器における細胞によって生産される目的のタンパク質を捕集する工程を更に含む項目1~36のいずれか一つに記載の方法。
(項目38)
工程(c)の培養をフェドバッチモードで行う項目1~37のいずれか一つに記載の方法。
(項目39)
工程(c)のN培養容器における培養を灌流する項目1~37のいずれか一つに記載の方法。
(項目40)
目的のタンパク質生産物が抗体である項目1~39のいずれか一つに記載の方法。
(項目41)
目的のタンパク質生産物が、抗体、融合タンパク質、アルファ-シヌクレイン、BART、Lingo、aBDCA2、抗CD40L、STX-100、Tweak、ダクリズマブ、ペグ化インターフェロン、インターフェロン、エタナーセプト、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、Tysabri、Avonex、Rituxan、オクレリズマブ、オビヌツズマブ(またはCD20に結合するあらゆるもの)である項目1~40のいずれか一つに記載の方法。
(項目42)
前記N培養容器が約8.5×10生細胞/mlの播種密度で接種される項目1~41のいずれか一つに記載の方法。
(項目43)
前記N培養容器が約10×10生細胞/mlの播種密度で接種される項目1~41のいずれか一つに記載の方法。
(項目44)
前記N培養容器が約15×10生細胞/mlの播種密度で接種される項目1~41のいずれか一つに記載の方法。
(項目45)
前記N培養容器が約20×10生細胞/mlの播種密度で接種される項目1~41のいずれか一つに記載の方法。
(項目46)
前記N培養容器が約25×10生細胞/mlの播種密度で接種される項目1~41のいずれか一つに記載の方法。
(項目47)
前記N培養容器が約30×10生細胞/mlの播種密度で接種される項目1~41のいずれか一つに記載の方法。
(項目48)
工程(a)の培養を約3日~約8日間維持する項目1~47のいずれか一つに記載の方法。
(項目49)
工程(c)の培養を約8日~約23日間維持する項目1~48のいずれか一つに記載の方法。
(項目50)
前記N-1培養容器の体積が約50リットル~約20,000リットルである項目1~49のいずれか一つに記載の方法。
(項目51)
前記N-1培養容器の体積が約50リットル~約10,000リットルである項目1~50のいずれか一つに記載の方法。
(項目52)
前記N-1培養容器の体積が約100リットル~約10,000リットルである項目1~51のいずれか一つに記載の方法。
(項目53)
前記N-1培養容器の体積が約100リットル~約4,000リットルである項目1~52のいずれか一つに記載の方法。
(項目54)
前記N培養容器の体積が約200リットル~約20,000リットルである項目1~53のいずれか一つに記載の方法。
(項目55)
前記N培養容器の体積が約200リットル~約10,000リットルである項目1~54のいずれか一つに記載の方法。
(項目56)
前記N培養容器の体積が約1000リットル~約10,000リットルである項目1~55のいずれか一つに記載の方法。
(項目57)
前記N培養容器の体積が約1000リットル~約5,000リットルである項目1~56のいずれか一つに記載の方法。
(項目58)
工程(a)の培養に加えられるアミノ酸の累積量が、約75mM~約1Mである項目1~57のいずれか一つに記載の方法。
(項目59)
工程(a)の培養に加えられるアミノ酸の累積量が、約75mM~約500mMである項目1~58のいずれか一つに記載の方法。
(項目60)
廃棄物を灌流培養における工程(a)の間に除去し、ここで工程(a)の培養に加えられるアミノ酸の累積量が約75mM~約500mMである項目1~57のいずれか一つに記載の方法。
(項目61)
乳酸塩レベルを工程(a)の培養において15mM未満に維持する項目1~60のいずれか一つに記載の方法。
(項目62)
乳酸塩レベルを工程(a)の培養において10mM未満に維持する項目1~61のいずれか一つに記載の方法。
(項目63)
乳酸塩レベルを工程(a)の培養において1mM未満に維持する項目1~62のいずれか一つに記載の方法。
(項目64)
乳酸塩レベルを工程(a)の培養において0.1mM未満に維持する項目1~63のいずれか一つに記載の方法。
(項目65)
工程(a)の培養のpHを約6.8~約7.4に維持する項目1~64のいずれか一つに記載の方法。
(項目66)
工程(a)の培養のpHを約6.9~約7.3に維持する項目1~65のいずれか一つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】細胞株Aに関するN-1培養における灌流の最適化。プロセス期間を短縮し、CSPRを低下させ、そして灌流培地を濃縮すると、より良好な増殖(A,B)、より低いpCO(C)、及びより低い灌流体積消費(D)が得られる。すべてのデータはN=1であった。(A)中の白丸は細胞生存率を意味している。●=1x培地、0.1 CSPR ■=1x培地、0.05-0.07 CSPR ▲=2x培地、0.05 CSPR。
図2】細胞株Aに関する高シードフェドバッチ生産培養。高シード増殖(A)、代謝(B、C)、及びタンパク質生産(D)は、対応する低シードプロセスのそれを辿っている。すべてのデータは少なくともN=2であった。(A)中の白丸は細胞生存率を意味している。●=低シードプロセス ■=高シードプロセス
図3】細胞株Bに関する高シードフェドバッチ生産培養。高シード増殖(A)、代謝(B、C)、及びタンパク質生産(D)は、対応する低シードプロセスのそれを辿っている。すべてのデータは少なくともN=2であった。(A)中の白丸は細胞生存率を意味している。●=低シードプロセス ■=高シードプロセス
図4】生産能力に関する、設備レイアウト、シードトレイン期間、及び生産用バイオリアクター期間の効果。年間の能力/生産量(1年当たりのバッチ数)は図4Eに示した経験式から算出した。強調されている細胞は、低シード(3日N-1/17日N)及び高シード(5日N-1/12日N)生産体制の生産量に対応している。生産運転(campaign)の長さは365日と仮定し、バイオリアクター所用時間は2日と仮定した。生産バッチに関する年間能力は1(A)、2(B)、及び3(C)のP/S比で示してある。(D)は、P/S比の関数として、細胞株A及びBに関する低シード及び高シードプロセスの年間能力を示している。シードトレイン1つ当たりの生産容器数の増加は、ボトルネックがシードトレインへとシフトするので、収穫逓減をもたらす。
図5】細胞株Cに関するN-1培養における灌流。(A)中の白丸は細胞生存率を意味している。●=2x培地、0.05~0.10 CSPR ■=1x培地、0.10~12 CSPR
図6】細胞株Cに関する高シードフェドバッチ生産培養。高シードは、開始温度の違いに起因して、対応する低シードプロセスと比較して、完全に異なる増殖(A)、代謝(B、C)、及びタンパク質生産(D)プロフィールをもたらす。すべてのデータはN=1であった。(A)中の白丸は細胞生存率を意味している。●=低シードプロセス ■=高シードプロセス
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、栄養分補充及び/または廃棄物除去によって、または任意にN-1シードトレイン段階培養において灌流プロセスを使用することによって、バイオプロダクト細胞培養プロセスの増殖期を、生産段階からN-1シードトレイン段階へとシフトさせることにより、バイオプロダクト細胞培養プロセスの容積生産性及び生産物品質を改善する方法に関する。
【0029】
本発明の方法は、N-1シードトレイン段階において高い生細胞密度を達成し、それにより、高シード生産段階が可能になる。高シード生産段階は、より短い培養期間で、同じかまたはより高い力価のバイオプロダクトを供給することができる。本発明の改善された培養方法は、シードトレイン段階での占有率を増加させ、1運転当たりの生産段階での占有率を低下させる。
【0030】
本発明は:(a)N-1培養容器で目的のバイオプロダクトをコードする遺伝子を含む哺乳動物細胞を培養して、少なくとも25×10生細胞/mlの細胞密度を達成すること;(b)工程(a)から得られた細胞を、少なくとも8.5×10生細胞/mlの播種密度でN培養容器に接種すること;及び(c)目的のタンパク質の生産を可能にする条件下で細胞をN培養容器で培養すること、を含むバイオプロダクトを生産する方法に関する。
【0031】
また、本発明は、本発明の方法によって生産されるバイオプロダクトにも関する。
【0032】
I.定義
文脈から明白でない限り、単数を表す「a」または「an」という用語の実体はその実体の1以上を指すことに注目すべきであり;例えば、「単数形のアミノ酸(an amino acid)」は1以上のアミノ酸を表すと理解される。そのようなものとして、単数を表す「a」(または「an」)、「1以上」、及び「少なくとも1」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。
【0033】
更に、本明細書で用いる「及び/または」は、2つの明示した特徴または構成要素の各々のいずれかまたは両方の具体的開示として理解すべきである。したがって、本明細書において「A及び/またはB」というフレーズで使用される用語「及び/または」は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を包含することが意図されている。同様に、「A、B、及び/またはC」のようなフレーズで使用される用語「及び/または」は、次の実施形態:すなわちA、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の各々を含むことが意図されている。
【0034】
本明細書において「含む」という言い回しで実施形態が記述される場合はいつでも、「から成る」及び/または「から本質的に成る」によって記述される他の類似の実施形態も提供されることが理解されよう。
【0035】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本開示と関連がある分野の当業者により通常理解されるのと同じ意味を有する。例えばthe Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、当業者に、本開示で使用される多くの用語に関する一般的な辞書を提供する。
【0036】
単位、接頭辞、及び符号は、Systeme International de Unites(SI)で認められている形態で表示する。数値範囲は、範囲を示す数値も含まれる。特に記載のない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ配向で、左から右へと表記する。本明細書で提示されている発明の名称は、本開示の様々な実施形態を限定するものではなく、本明細書全体を参照することによって理解される。したがって、直ぐ下で定義される用語は、本明細書全体を参照することにより、更に詳細に定義される。
【0037】
本明細書中で使用される用語「培地(media)」、「複数の培地(medium)」、「細胞培養培地」、「培養培地」、「複数の組織培養培地(tissue culture medium)」、「組織培養培地(tissue culture media)」、及び「増殖培地」は、増殖している培養真核細胞を養う栄養分を含有する溶液を指す。典型的には、これらの溶液は、最小限の増殖及び/または生存のために細胞によって要求される必須アミノ酸及び非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、及び微量元素を提供する。その溶液は、最低限の速度を超えて、成長及び/または生存を高める成分、例えばホルモン及び増殖因子を含むこともできる。その溶液は、細胞の生存及び増殖に最適なpH及び塩濃度となるように配合される。媒体は、タンパク質、加水分解産物または未知組成の成分を含有していない無血清培地である「特定培地(defined medium)」または「既知組成培地(chemically defined medium)」であることもできる。特定培地は、動物由来成分を含有しておらず、すべての成分は公知の化学構造を有する。当業者は、特定培地が組換え糖タンパク質またはタンパク質、例えばホルモン、サイトカイン、インターロイキン及び他のシグナル伝達分子を含むことができるが、それらに限定されない、ことを理解している。
【0038】
本明細書で使用される用語「基本培地配合」または「基本培地」は、補充によって、またはある特定の成分の選択的な除去によって改変されなかった、培養細胞に対して使用される任意の細胞培養培地を指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「培養」、「細胞培養」及び「真核細胞培養」は、細胞集団の生存及び/または増殖に適する条件下で、培地(以下の「培地」の定義を参照されたい)において維持または増殖される表面に付着されたまたは懸濁された真核細胞集団を指す。当業者には明らかとなるように、本明細書で使用されるこれらの用語は、哺乳動物細胞集団及びその集団が懸濁される培地とを含む組み合わせを指すことができる。
【0040】
本明細書で使用される用語「バッチ培養」は、細胞を培養する際に最終的に使用されるすべての成分、例えば培地(以下の「培地」の定義を参照されたい)ならびに細胞それら自体が培養プロセス開始時に提供される細胞培養方法を指す。バッチ培養は典型的にはある時点で停止され、培地における細胞及び/または成分は回収され、そして任意に精製される。
【0041】
本明細書で使用される用語「フェドバッチ培養」は、追加の成分が培養プロセス開始後のある時点で培養に提供される細胞培養方法を指す。フェドバッチ培養は、基本培地を使用して開始することができる。追加の成分が培養プロセス開始後のある時点で培養に提供される培養培地は流加培地である。提供される成分は、典型的には、培養プロセス中に消費された細胞用栄養補給剤を含む。フェドバッチ培養は、典型的には、ある時点で停止され、そして培地中の細胞及び/または成分が回収され、そして任意に精製される。
【0042】
本明細書で使用される用語「灌流培養」は、培養プロセスの開始後に、培養に対して継続的または半継続的に追加の成分を供給する細胞培養方法を指す。提供される成分は、典型的には、培養プロセス中に消費された細胞用栄養補給剤を含む。培地中の細胞及び/または成分の一部は、典型的には、継続的または半継続的に回収され、そして任意に精製される。
【0043】
細胞培養の「増殖期」とは、細胞が一般的に急速に分裂している指数細胞増殖の期間(対数期)を指す。この期間中に、細胞は、ある期間、通常は1~4日の間、細胞増殖が最大化される条件下で、培養される。宿主細胞の増殖サイクルの決定は、想定される特定の宿主細胞について過度の実験なしに決定することができる。「ある期間及び細胞増殖が最大化される条件下で」などは、特定の細胞系にとって、細胞増殖及び分裂に最適であると決定される培養条件を指す。増殖期間中、最適な増殖が特定の細胞系に関して達成されるように、加湿制御された雰囲気中で、一般的には約25~40℃で、必要な添加剤を含有する栄養培地において細胞を培養する。細胞は、約1~7日間、例えば2~6日間、例えば6日間、増殖期において維持される。特定の細胞に関する増殖期の長さは、不要な実験をせずに、決定することができる。例えば、培養が増殖条件下で維持される場合、増殖期の長さは、最大の生細胞密度の約20%~80%の範囲内の生細胞密度まで特定の細胞を複製させることができる十分な期間である。
【0044】
細胞培養の「生産期」または「タンパク質生産期」とは、細胞増殖がプラトーに達した期間を指す。生産期の間、対数の細胞増殖は終わり、バイオプロダクト生産が主になっている。この期間中、連続バイオプロダクト生産を支援し、そして所望のバイオプロダクトを得るために、培地は、一般的に補充される。
【0045】
本明細書で使用される用語「細胞生存率」は、所定の一連の培養条件または実験変動(experimental variation)の下で生存するための、培養時の細胞の能力を指す。また、本明細書で使用される用語「細胞生存率」は、特定の時期の培養において、生きている細胞と死んでいる細胞の総数に対する、その特定の時期に生存している細胞の割合も指す。
【0046】
本明細書で使用される用語「細胞密度」は、培地の所定の体積中に存在する細胞の数を指す。
【0047】
本明細書で使用される用語「バイオリアクター」または「培養容器」は、哺乳動物細胞培養を増殖させるために使用される任意の容器を意味している。バイオリアクターは、哺乳動物細胞の培養に役立つ限りにおいて、あらゆるサイズであり得る。
【0048】
本明細書で使用される用語「バイオリアクター運転」は、細胞培養サイクル中の誘導期、対数期、またはプラトー期の増殖期間のうちの1つ以上を包含し得る。
【0049】
本明細書で使用される用語「第1培養容器」、「N-1培養容器」、「N-1シードトレイン培養容器」、「N-1容器」、「第1バイオリアクター」、「N-1バイオリアクター」、「N-1シードトレインバイオリアクター」は、N培養容器(生産用培養容器)の直前に存在し、そしてN(生産用)培養容器中へのその後の接種のための高い生細胞密度まで細胞培養を増殖させるために使用される培養容器を指す。N-1培養容器で増殖される細胞培養は、N-1培養容器の前のいくつかの容器で、例えばN-4、N-3、及びN-2容器で細胞を培養した後に、得ることができる。
【0050】
本明細書で使用される用語「N培養容器」、「第2培養容器」、「生産用培養容器」、「N容器」、「Nバイオリアクター」、「第2バイオリアクター」、「生産用バイオリアクター」なる用語は、N-1バイオリアクター後のバイオリアクターを指しており、目的のバイオプロダクトの生産で使用される。
【0051】
本明細書で使用される用語「従来の生産プロセス」は、(a)指定された時点でバイオリアクターに対してボーラス供給で栄養培地を加える従来プロセス、または(b)グルコース(もしくは他の単一の栄養分)が消費されるとバイオリアクターに対してグルコース(もしくは別の単一の栄養分)を加える従来プロセスを指す。従来の生産プロセスは、バイオプロダクトの収率が低く且つ/またはバイオプロダクト生産の効率が低い。
【0052】
本明細書で使用される用語「播種」は、細胞培養をバイオリアクターまたは別の容器に提供するプロセスを指す。一実施形態では、細胞は、別のバイオリアクターまたは容器で前もって増殖させた。別の実施形態では、細胞を凍結し、バイオリアクターまたは容器に提供する直前に解凍した。その用語は、任意の数の細胞、例えば1つの細胞を指す。
【0053】
本明細書で使用される用語「力価」は、細胞培養により生産された組換え発現糖タンパク質またはタンパク質の総量を、所定の量の培地体積によって割ったものを指す。力価は、典型的には、培地1ミリリットル当たりの糖タンパク質またはタンパク質のミリグラム数の単位で、または培地1ミリリットル当たりの糖タンパク質またはタンパク質のグラム数の単位で表される。
【0054】
本明細書で使用される用語「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」は、生存するために、増殖するために、またはそうでなければバイオマスを加えるために、培養中の有機体、例えば細胞によって利用される、任意の化合物、分子、または物質を指す。栄養分の例としては、炭水化物(例えば、単糖、例えばグルコース、ガラクトース、マルトースまたはフルクトース、または更に複合糖類)、アミノ酸、ビタミン(例えば、B群ビタミン(例えば、B12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン及びビオチン)、亜鉛、鉄、または銅が挙げられる。ある特定の実施形態では、栄養分を基本培地に補充して、本開示で説明される目的を達成する。「添加物」または「サプリメント」または「栄養分」は、単一の物質、例えば銅、亜鉛、アミノ酸を包含することができ、または複数の物質、例えば亜鉛及びアミノ酸を包含することができる。「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」なる用語は、それらが同時に加えられる必要がないとしても、またそれらが同じ仕方で加えられる必要がないとしても、加えられる成分のすべてを指す。例えば、「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」の1種以上の成分を、原液から単一ボーラスまたは2以上のボーラスとして加えることができ、一方、同じ「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」の他の成分を、流加培地の一部として加えることができる。更に、「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」の任意の1種以上の成分は、細胞培養の開始から、基本培地中に存在することができる。
【0055】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」は、20の標準アミノ酸、すなわち、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸、それらの単一の立体異性体、及びそれらのラセミ混合物のいずれかを指す。また、「アミノ酸」なる用語は、公知の非標準アミノ酸、例えば、4-ヒドロキシプロリン、ε-N,N,N-トリメチルリジン、3―メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリシン、O-ホスホセリン、γ-カルボキシグルタメート、ε-N-アセチルリジン、ω-N-メチルアルギニン、N-アセチルセリン、N,N,N-トリメチルアラニン、N-ホルミルメチオニン、γ-アミノ酪酸、ヒスタミン、ドパミン、サイロキシン、シトルリン、オルニチン、β-シアノアラニン、ホモシステイン、アザセリン、及びS-アデノシルメチオニンも意味することができる。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、グルタミン酸塩、グルタミン、リジン、チロシンまたはバリンである。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、グルタミン酸塩またはグルタミンである。
【0056】
本明細書で使用される用語「栄養培地」、「流加培地」、「供給」、「完全な供給」及び「完全栄養培地」は、互換的に使用することができ、そして細胞を増殖させ、繁殖させ、そして細胞株にバイオマスを加えるために使用される「完全な」培地を含む。栄養培地は、細胞株を増殖且つ繁殖させるのに単独で十分ではない物質または単純培地と区別される。したがって、例えば、他の必要とされる栄養分が存在していないので、グルコースまたは単糖単独では、栄養培地ではなく、細胞株を増殖且つ繁殖させるのに十分ではない。当業者は、細胞は、不完全培地の存在下で増殖し、生存し、そして繁殖し続けることができるが、細胞の増殖速度は不安定になり、そして/または大きく低下することを認めることができる。したがって、いくつかの実施形態では、「栄養培地」なる用語は、少なくとも2日、3日、4日、5日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、または18週の間、安定性及び増殖速度を損なうことなく、または細胞の健康のあらゆる他の指標を低下させずに、細胞株を増殖、繁殖させるのに十分な、そしてバイオマスを細胞株に加えるのに十分な培地を含む。したがって、いくつかの実施形態では、「栄養培地」なる用語は、1種以上の必須の栄養分を欠いていてもよいが、少なくとも2日、3日、4日、5日、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、または18週の間、安定性及び増殖速度を損なうことなく、または細胞の健康のあらゆる他の指標を低下させずに、細胞株を増殖、繁殖させ続けることができ、そしてバイオマスを細胞株に加え続けることができる培地を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、栄養培地は細胞培養培地である。最適な細胞培養培地組成物は、繁殖される細胞培養のタイプに応じて変化する。いくつかの実施形態では、栄養培地は市販の培地である。いくつかの実施形態では、栄養培地は、例えば、無機塩類、炭水化物(例えば、糖、例えばグルコース、ガラクトース、マルトースまたはフルクトース)、アミノ酸、ビタミン(例えばB群ビタミン(例えばB12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン及びビオチン)、脂肪酸及び脂質(例えばコレステロール及びステロイド)、タンパク質及びペプチド(例えばアルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチン及びフェチュイン)、血清(例えばアルブミン、増殖因子及び増殖阻害剤、例えばウシ胎児血清、新生仔ウシ血清及びウマ血清)、微量元素(例えば亜鉛、銅、セレン及びトリカルボン酸中間体)、加水分解産物(プラントまたは動物源に由来する加水分解タンパク質)、及びそれらの組み合わせを含有している。栄養培地の例としては、基本培地(例えばMEM、DMEM、GMEM)、複合培地(RPMI 1640、Iscoves DMEM、Leibovitz L-15、Leibovitz L-15、TC 100)、無血清培地(例えばCHO、Ham F10及び誘導体、Ham F12、DMEM/F12)が挙げられるが、それらに限定されない。栄養培地で見出される一般的なバッファーとしては、PBS、Hanks BSS、Earles塩類、DPBS、HBSS、及びEBSSが挙げられる。哺乳動物細胞を培養するための培地は、当該技術分野において公知であり、例えばSigma-Aldrich Corporation(ミズーリ州セントルイス)、HyClone(ユタ州ローガン)、Invitrogen
Corporation(カリフォルニア州カールズバッド)、Cambrex Corporation(ニュージャージー州E.ラザフォード)、Irvine Scientific(カリフォルニア州サンタアナ)などから市販されている。栄養培地で見出される他の成分としては、アスコルビン酸塩、シトレート、システイン/シスチン、グルタミン、葉酸、グルタチオン、リノール酸、リノレン酸、リポ酸、オレイン酸、パルミチン酸、ピリドキサル/ピリドキシン、リボフラビン、セレン、チアミン、及びトランスフェリンが挙げられる。当業者は、本発明の範囲内に属する栄養培地に対する改変が存在することを認めるだろう。
【0058】
本明細書で使用される用語「バイオプロダクト」は、細胞培養、例えば真核(例えば哺乳動物)細胞培養から生産され、そして単離することができる分子を指す。いくつかの実施形態では、バイオプロダクトなる用語は、50kDa、75kDa、100kDa、125kDa、または150kDaを超える分子量を有する分子を指す。いくつかの実施形態では、その用語の使用は、ポリマー、例えばバイオポリマー、例えば核酸(例えばDNA、RNA)、ポリペプチド(例えばタンパク質)、炭水化物、及び脂質を指す。いくつかの実施形態では、用語「バイオプロダクト」はタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、用語「バイオプロダクト」は組換えタンパク質または融合タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、バイオプロダクトは可溶性タンパク質である。いくつかの実施形態では、バイオプロダクトは、抗体、抗体断片または改変抗体(例えば多価抗体、ドメイン欠失抗体、多重体抗体、ヒンジ改変抗体、安定化抗体、多重特異性抗体、直鎖抗体、scFv、結合ScFv抗体、多価直鎖抗体、Fcのない多価抗体、Fab、多価Fabなど)、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体である。
【0059】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合を介して一緒に連結されたアミノ酸の連続鎖を指す。その用語はあらゆる長さのアミノ酸鎖について言及するために使用されるが、当業者は、その用語は、長い鎖に限定されるものではなく、ペプチド結合を介して一緒に連結された2つのアミノ酸を含む最小の鎖を指し得ることも理解するだろう。単一のポリペプチドが別個の機能性単位であり、別個の機能性単位を形成するために他のポリペプチドと永続的な物理的結合を必要とする場合、本明細書で使用される「ポリペプチド」及び「タンパク質」なる用語は、互換的に使用される。別個の機能性単位が、互いに物理的に結合している1個を超えるポリペプチドから成る場合、本明細書で使用される「タンパク質」なる用語は、物理的に結合され、そして別個の単位として一緒に機能する複数のポリペプチドを指す。本明細書で使用される用語「タンパク質」は、単一の「タンパク質」ならびに複数の「タンパク質」を含むことを意図している。したがって、本明細書で使用される場合、限定するものではないが「ペプチド」、「ポリペプチド」、「アミノ酸鎖」を包含する用語またはアミノ酸の鎖(単数または複数)に言及するために使用される任意の他の用語は、「タンパク質」の定義に包含され、そして用語「タンパク質」は、これらの用語の任意のものに代えてまたは互換的に使用することができる。その用語は、更に、翻訳後の修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解による切断、または非天然アミノ酸による修飾を受けたタンパク質も含む。また、タンパク質は、多量体、例えば二量体、三量体などを形成するポリペプチドも含む。また、タンパク質なる用語は、融合タンパク質、例えば、タンパク質(またはタンパク質の断片)が抗体(または抗体の断片)に結合される遺伝子融合プロセスを介して生成されるタンパク質も含む。本発明の融合タンパク質の例としては、ヒトIgG1及びヒトIgE、ならびにリンフォトキシンβ受容体免疫グロブリンG1由来の連結Fc領域から成るジスルフィド連結二官能性タンパク質が挙げられる。
【0060】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または前記の組み合わせなどの標的を認識し特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味するために使用される。本明細書で使用される場合、その用語は、無傷ポリクローナル抗体、無傷モノクローナル抗体、抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片など)、一本鎖Fv(scFv)変異体、少なくとも2つの無傷抗体から作製される二重特異性抗体などの多重特異性抗体、一価または単一特異性の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、ならびに抗体が所望の生物活性を示す限りにおいて抗原認識部位を含む任意の他の改変免疫グロブリン分子を含む。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる重鎖定常ドメインの同定に基づいて、免疫グロブリンの5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのいずれか、またはそれらのサブクラス(アイソタイプ)(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)であり得る。
【0061】
本明細書で使用される用語「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を指し、無傷抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、直鎖抗体、一本鎖抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される用語「組換え発現ポリペプチド」及び「組換えポリペプチド」は、そのポリペプチドを発現するように遺伝子操作された宿主細胞から発現されるポリペプチドを指す。その組換え発現ポリペプチドは、哺乳動物宿主細胞で通常発現されるポリペプチドと同一または類似であり得る。また、その組換え発現ポリペプチドは、宿主細胞に対して外来であることもでき、すなわち、哺乳動物宿主細胞において通常発現されるポリペプチドに対して異種であることもできる。あるいは、組換え発現ポリペプチドは、ポリペプチドの一部が、哺乳動物宿主細胞において通常発現されるポリペプチドと同一または類似であるアミノ酸配列を含有する一方で、他の部分が宿主細胞に対して外来であるという点で、キメラであり得る。本明細書で使用される場合、用語「組換え発現ポリペプチド」及び「組換えポリペプチド」は、ハイブリドーマによって生産される抗体も含む。
【0063】
本明細書で使用される用語「ハイブリドーマ」は、免疫学的源に由来する不死化細胞と抗体生産細胞との融合によって生成される細胞を指す。得られるハイブリドーマは、抗体を生産する不死化細胞である。ハイブリドーマを生成するために使用される個々の細胞は、任意の哺乳動物源、例えば、限定するものではないがラット、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びヒトに由来し得る。また、その用語は、ヒト細胞とマウス骨髄腫細胞系との間の融合生成物であるヘテロハイブリッド骨髄腫融合体の子孫が後に形質細胞と融合されると生じるトリオーマ細胞株も含む。更に、その用語は、例えばクアドローマなどの、抗体を生産する任意の不死化ハイブリッド細胞株を包含するものである(例えばMilstein et al.,Nature,537:3053(1983)を参照されたい)。
【0064】
II.細胞培養
本発明は、細胞培養によって、バイオプロダクト、例えばタンパク質及び/またはポリペプチドを生産する改善されたシステムを提供する。本発明は、N-1培養容器で目的のバイオプロダクトをコードする遺伝子を含む細胞を培養して、高い生細胞密度(少なくとも25×10生細胞/ml)を達成すること;少なくとも8.5×10生細胞/mlの播種密度で、N-1培養容器からN培養容器中に細胞を接種すること;及び目的のタンパク質の生産を可能にする条件下で細胞をN培養容器で培養することを含む、細胞を培養する方法を提供する。いくつかの実施形態では、工程(a)における培養は、生細胞密度に基づいて決定されたレベルで栄養分を補充する。他の実施形態では、約50mM~約2Mの累積アミノ酸量を工程(a)の培養に加える。
【0065】
典型的な細胞培養プロセスは、ある播種密度での栄養培地への開始細胞の接種に続き、誘導期増殖を含む。誘導期の後に培養の対数期増殖が続き、最終的にプラトー期となる。しかしながら、本発明の改善された細胞培養プロセスは、N-1培養容器(N-1シードトレインバイオリアクター)においてN-1シードトレイン培養で細胞を増殖させて(増殖段階)、高い生細胞密度を得ること、次いで、N-1培養容器から細胞を採取し、そして高い生細胞播種密度でN培養容器(生産用バイオリアクター)に細胞を播種して目的のバイオプロダクトを生産することを含む。
【0066】
細胞培養(バッチ培養、フェドバッチ培養、及び灌流培養)によって、タンパク質またはポリペプチドなどのバイオプロダクトを生産するために哺乳動物細胞を調製する様々な方法は当該技術分野で公知である。発現を達成するのに十分な核酸(典型的には、目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子及び任意の操作可能に連結された遺伝子制御エレメントを含有するベクター)を、任意の数の技術によって、宿主細胞株に導入することができる。典型的には、細胞をスクリーニングして、どの宿主細胞が実際にベクターを取り込んだかを決定し、そして目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現させる。哺乳動物細胞によって発現された目的とする特定のポリペプチドまたはタンパク質を検出する従来の方法としては、免疫組織化学、免疫沈澱、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査、SDS-PAGE、ウエスタンブロット、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術、生物学的活性アッセイ、及びアフィニティークロマトグラフィーが挙げられるが、それらに限定されない。当業者は、発現されたポリペプチドまたはタンパク質を検出する他の適当な技術に気づくであろう。多数の宿主細胞が、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する場合、列挙した技術の一部またはすべてを使用して、どの細胞が、そのポリペプチドまたはタンパク質を最も高いレベルで発現するかを明らかにすることができる。
【0067】
目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞が同定されると、その細胞は、当業者には公知の様々な方法のいずれかによって、培養で繁殖される。目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞は、典型的には、その細胞を所定の温度で、また、細胞の生存、増殖及び生存率に役立つ培地において増殖させることによって繁殖される。
【0068】
本発明では、細胞は、N-1培養容器において繁殖/増殖させて、生産用細胞培養容器に播種するのに十分な体積を得る。
【0069】
N-1培養容器におけるN-1シードトレイン細胞培養
N-1培養容器に播種したら、その細胞培養を、細胞培養の生存、増殖及び生存率に役立つ条件下、初期増殖期に維持する。厳密な条件は、細胞型、細胞が得られる生物、そして発現されるポリペプチドまたはタンパク質の性質と特徴に応じて変わる。
【0070】
初期増殖期における細胞培養の温度は、主に細胞培養が生育可能な状態に維持される温度範囲に基づいて選択する。例えば、初期増殖期の間、CHO細胞は37℃でよく増殖する。一般的に、ほとんどの哺乳動物細胞は約25℃~42℃でよく増殖する。好ましくは、哺乳動物細胞は約35℃~40℃で増殖する。当業者は、実施者による細胞のニーズ及び要求生産量に応じて、細胞を増殖させる適当な一つの温度または複数の温度を選択することができる。
【0071】
本発明の一実施形態では、初期増殖期の温度は、単一で一定の温度に維持する。別の実施形態では、初期増殖期の温度は、温度の範囲内に維持する。例えば、温度は、初期増殖期の間、徐々に上昇または低下させることができる。あるいは、温度は、初期増殖期の間、様々な時点で、不連続な量で上昇または低下させることができる。当業者は、単一の温度または複数の温度を用いるべきか否か、及び温度を徐々にまたは不連続な量で調整するべきか否かを決定することができよう。
【0072】
細胞は、初期増殖期の間、実施者のニーズ及び細胞自体の必要条件に応じて、更に長いまたは短い時間にわたって増殖させることができる。一実施形態では、細胞は、障害なく成長することが可能である場合に細胞が最終的に達するであろう最大生細胞密度の所定のパーセンテージである生細胞密度を達成するのに十分な期間にわたり増殖させる。
【0073】
細胞培養は、細胞に対する酸素付加及び栄養分の分散を増加させるために、初期培養期の間、撹拌または振盪することができる。本発明にしたがって、当業者は、初期増殖期の間、バイオリアクターのある特定の内部条件、例えば、限定するものではないがpH、温度、酸素付加などを制御または調節することは有益であり得ることを理解するであろう。例えば、pHは酸または塩基を適当な量を供給することによって制御することができ、酸素付加は当該技術分野で周知である散布装置で制御することができる。
【0074】
N-1培養容器の培養体積は、任意のサイズであることができるが、しばしば、目的のポリペプチドまたはタンパク質の最終的な細胞増殖及び生産で使用される生産用細胞培養容器/バイオリアクターの培養体積に比べて小さい。細胞は、生産用バイオリアクターに播種する前に、体積を増加させるN-1シードトレインバイオリアクターで、数回、継代させることができる。細胞培養は、撹拌または振盪して、培地の酸素付加及び細胞への栄養分の分散を増やすことができる。あるいはまたは更に、当該技術分野で公知である特別な散布装置を使用して、培養の酸素付加を増加させ且つ制御することができる。本発明にしたがって、当業者は、バイオリアクターのある特定の内部条件、例えば、限定するものではないがpH、温度、酸素付加などを制御または調節することは有益であり得ることを理解するであろう。
【0075】
初期培養容器における細胞培養は、生産用培養容器に播種する前に、所望の密度まで増殖させる。播種前に、細胞のほとんどが生存したままであることが好ましいが、完全またはほとんど完全な生存率は必要ない。いくつかの実施形態では、少なくとも25×10生細胞/ml、少なくとも30×10生細胞/ml、少なくとも35×10生細胞/ml、少なくとも40×10生細胞/ml、少なくとも45×10生細胞/ml、少なくとも50×10生細胞/ml、少なくとも55×10生細胞/ml、少なくとも60×10生細胞/ml、少なくとも65×10生細胞/ml、少なくとも70×10生細胞/ml、少なくとも75×10生細胞/ml、少なくとも80×10生細胞/ml、少なくとも85×10生細胞/ml、少なくとも90×10生細胞/ml、少なくとも95×10生細胞/ml、少なくとも100×10生細胞/ml、少なくとも110×10生細胞/ml、少なくとも110×10生細胞/ml、少なくとも120×10生細胞/ml、少なくとも130×10生細胞/ml、少なくとも135×10生細胞/ml、少なくとも140×10生細胞/ml、少なくとも145×10生細胞/mlまたは少なくとも150×10生細胞/mlの細胞密度が達成される。
【0076】
本発明の一実施形態では、細胞は、例えば低速遠心分離によって、上清から取り出すことができる。次のバイオリアクターに播種する前に、培地を有する取り出された細胞を洗浄して、あらゆる不必要な代謝廃棄物または培地成分を除去することもできる。その培地は、細胞が以前に増殖した培地であり得るか、または本発明の実施者によって選択された異なる培地もしくは洗浄溶液であり得る。
【0077】
当業者は理解できるように、異なる栄養分(異なる濃度の栄養分)が、細胞培養サイクルの異なる増殖期で必要とされ得る。本発明のある特定の実施形態では、増殖細胞培養の特定の条件は、定期的にモニターすることができる。非限定的な例として、温度、pH、細胞密度、細胞生存率、積分生細胞密度、乳酸塩レベル、アンモニウムレベル、容量オスモル濃度、または発現されたポリペプチドもしくはタンパク質の力価をモニターすることは、有益または必要であり得る。多数の技術は、当該技術分野で公知であり、当業者はこれらの条件を測定することができる。例えば、細胞密度は、血球計、クールター計数器、または細胞密度検査(CEDEX)を使用して、測定することができる。生細胞密度は、トリパンブルーによる培養サンプルを染色することによって測定することができる。死細胞のみがトリパンブルーを取り込むので、生細胞密度は、細胞の総数を計数し、染料を取り込んだ細胞の数を細胞の総数で割り、そして逆数をとることによって、決定することができる。HPLCを使用して、ラクテート、アンモニウム、または発現されたポリペプチドもしくはタンパク質のレベルを決定することができる。あるいは、発現されたタンパク質のレベルは、標準的な分子生物学技術、例えばSDS-PAGEゲルのクマシー染色、ウェスタンブロッティング、ブラッドフォードアッセイ、ローリーアッセイ、ビウレットアッセイ、及びUV吸光度によって決定することができる。発現されたポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾、例えばリン酸化及びグリコシル化をモニターすることも有益または必要であり得る。
【0078】
サンプル採集装置、分析装置、加工プログラム、または供給装置の1つ以上を自動化することができる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、バイオプロダクト生産プロセスにおける任意またはすべての工程の間(すなわち、その最中)に、変動性を低下させ、バイオプロダクトの量及び/または品質を最適化または向上させるために、オフライン(off-line)、アットライン(at-line)、オンライン(on-line)またはインライン(in-line)であり得る自動化サンプル採集装置及び/または分析装置を利用することができる。
【0079】
本説明のために、「オフライン」分析とは、サンプルを、生産プロセスから永久に取り出し、そしてより後のポイントで生産プロセスから離して分析するので、結果として、データ分析がプロセス内条件についてリアルタイムまたはリアルタイムに近い情報を伝えない、ことを示そうとしている。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される1つ以上の分析装置はオフラインである。
【0080】
本説明のために、「アットライン」とは、サンプルを、生産プロセスから永久に取り出すが、取り出された時間に極めて接近している時間枠で分析し、それによって、プロセス内条件を自動的に制御または変えるために使用され得るリアルタイムまたはリアルタイムに近い情報を提供する、ことを示そうとしている。「アットライン」分析は、自動化または半自動化方式で行うことができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される分析装置の1つ以上はアットラインである。
【0081】
本説明のために、「オンライン」とは、サンプルを、生産プロセスから分流し、サンプルが取り出された時間に極めて接近している時間枠で分析し、それによって、プロセス内条件を自動的に制御または変えるために使用され得るリアルタイムまたはリアルタイムに近い情報を提供し、そしてここで、そのサンプルは、生産プロセスに戻すことができる(しかし必ずしも戻されるわけではない)、ことを示そうとしている。「オンライン」分析は、自動化または半自動化方式で行うことができる。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される分析装置の1つ以上はオンラインである。
【0082】
本説明のために、「インライン」とは、サンプルを、生産プロセスから取り出さないが、その代わりに、プロセス「サンプル」を、侵襲性または非侵襲性手段によってリアルタイムでモニターし、それにより、プロセス内条件を自動的に制御または変えるために使用され得るリアルタイムまたはリアルタイムに近い情報を提供する、ことを示そうとしている。例えば、分析装置(もしくはそれに接続されるセンサー部分)は、バイオリアクターもしくは精製ユニット中に直接に導入することができ、または分析装置もしくはセンサー部分は、適当なバリアまたは膜によってバイオリアクターもしくは精製ユニットから分離することができる。「インライン」分析は、自動化または半自動化方式で行うことができる。インライン及びオンライン分析は、通常、オフライン及びアットライン分析法と比較して、有意により高い頻度(連続または不連続を含む)で行うことができるので、有利である。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される分析装置の1つ以上はインラインである。
【0083】
いくつかの実施形態では、ある特定の細胞培養条件をモニターするために、分析用に培養の小さいアリコートを取り出す必要がある。当業者は、そのような取り出しは、細胞培養中に汚染を潜在的にもたらす可能性があり、そのような汚染のリスクを最小限に抑えるように適切に注意することを理解するだろう。
【0084】
本発明の方法の例示的な実施形態では、バイオリアクターサンプルからのリアルタイムでの1つ以上のマーカー、例えば細胞生存率の直接(アットライン、インライン、またはオンライン)測定は、自動的で動的なフィードバック制御された、アミノ酸及びグルコースなどのサプリメントの添加及び/またはアンモニウム及び乳酸塩などの廃棄物の除去を実施するために行われる。
【0085】
いくつかの実施形態では、工程(a)でのN-1培養容器における培養の生細胞密度は、1秒当たり約10回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約9回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約8回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約7回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約6回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約5回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約4回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約3回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約2回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約複数回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1分当たり約1回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1時間当たり約1回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1日当たり約4回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1日当たり約3回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1秒当たり約2回測定される。別の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、1日当たり約1回測定される。他の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、連続して測定される。他の実施形態では、培養の生細胞密度は、キャパシタンスを介して測定される。
【0086】
他の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、2秒毎に約1回、3秒毎に約1回、4秒毎に約1回、5秒毎に約1回、10秒毎に約1回、15秒毎に約1回、20秒毎に約1回、30秒毎に約1回、40秒毎に約1回、50秒毎に約1回、毎分約1回、2分毎に約1回、3分毎に約1回、4分毎に約1回、5分毎に約1回、10分毎に約1回、15分毎に約1回、20分毎に約1回、30分毎に約1回、毎時約1回、2時間毎に約1回、5時間毎に約1回、1日当たり約4回、1日当たり約2回、または1日当たり約1回測定される。他の実施形態では、工程(a)における培養の生細胞密度は、連続して測定される。
【0087】
いくつかの実施形態では、廃棄物、例えばアンモニウム及び乳酸塩は、N-1培養容器における本発明の工程(a)の間に除去される。ある特定の態様では、廃棄物の除去は、ろ過、遠心分離、傾斜細胞沈澱器(inclined cell settler)、交互接線流、接線流、またはそれらの組み合わせによって行う。
【0088】
いくつかの実施形態では、工程(a)の細胞培養における乳酸塩レベルは、15mM未満に維持される。他の実施形態では、工程(a)の細胞培養における乳酸塩レベルは、12mM、10mM、8mM、6mM、5mM、4mM、2mM、1mM、0.5mM、0.2mM、0.1mM、または0.05mM未満に維持される。いくつかの実施形態では、工程(a)の細胞培養では乳酸塩は存在していない。
【0089】
いくつかの実施形態では、N-1培養容器における細胞培養は、培養の生細胞密度に基づいて添加剤(またはサプリメントまたは栄養分)が補充される。「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」は、単一の物質、例えば銅、亜鉛、アミノ酸を包含することができ、または複数の物質、例えば亜鉛及びアミノ酸を包含することができる。「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」なる用語は、それらが同時に加えられる必要がないとしても、またそれらが同じ仕方で加えられる必要がないとしても、加えられる成分のすべてを指している。例えば、「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」の1種以上の成分を、原液から単一ボーラスまたは2以上のボーラスとして加えることができ、一方、同じ「添加剤」または「サプリメント」または「栄養分」の他の成分を、流加培地の一部として加えることができる。更に、「添加剤」または「サプリメント」の任意の1種以上の成分は、細胞培養の開始から、基本培地中に存在することができる。栄養分補充は、細胞特異的灌流量(CSPR)に基づいて決定される。
【0090】
いくつかの実施形態では、栄養分はアミノ酸、亜鉛、鉄及び銅を含む。いくつかの実施形態では、亜鉛は、約1.8μM~約1mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。他の実施形態では、亜鉛は、約1.8μM~約0.5mM、約1.8μM~約0.1mM、約1.8μM~約0.05mM、約1.8μM~約0.01mM、約1.8μM~約0.005mM、約5μM~約1mM、約5μM~約0.5mM、約5μM~約0.1mM、約5μM~約0.05mM、約5μM~約0.01mM、約10μM~約1mM、約10μM~約0.5mM、約10μM~約0.1mM、約10μM~約0.05mM、約50μM~約1mM、約50μM~約0.5mM、約50μM~約0.1mM、約100μM~約1mM、約100μM~約0.5mM、約100μM~約0.125mM、約200μM~約1mM、約200μM~約0.5mM、または約500μM~約1mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、鉄は、約0.1μM~約20mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。他の実施形態では、鉄は、約0.5μM~約20mM、0.5μM~約10mM、0.5μM~約5mM、約0.5μM~約1mM、約0.5μM~約0.5mM、約0.5μM~約0.1mM、約0.5μM~約0.01mM、約1μM~約20mM、約1μM~約5mM、約1μM~約1mM、約1μM~約0.5mM、約1μM~約0.1mM、約1μM~約0.01mM、約2μM~約20mM、約2μM~約5mM、約2μM~約1mM、約2μM~約0.5mM、約2μM~約5mM、約2μM~約1mM、約2μM~約0.5mM、約2μM~約0.1mM、約2μM~約0.01mM、5μM~約20mM、5μM~約10mM、約5μM~約5mM、約5μM~約1mM、約5μM~約0.5mM、約5μM~約0.1mM、約5μM~約0.01mM、10μM~約20mM、10μM~約10mM、約10μM~約5mM、約10μM~約1mM、約10μM~約0.5mM、約10μM~約0.1mM、50μM~約20mM、50μM~約10mM、約50μM~約5mM、約50μM~約1mM、約50μM~約0.5mM、約50μM~約0.1mM、100μM~約20mM、100μM~約10mM、約100μM~約5mM、約100μM~約1mM、約100μM~約0.5mM、1mM~約20mM、1mM~約10mM、または約1mM~約5mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。
【0092】
好ましい実施形態では、鉄は、トロポロンのような鉄キレート剤の非存在下で、約2μM~約20mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。いくつかの実施形態では、鉄は、約2μM~約20mM、2μM~約10mM、2μM~約5mM、約2μM~約1mM、約2μM~約0.5mM、約2μM~約0.1mM、約2μM~約0.01mM、5μM~約20mM、5μM~約10mM、約5μM~約5mM、約5μM~約1mM、約5μM~約0.5mM、約5μM~約0.1mM、約5μM~約0.01mM、10μM~約20mM、10μM~約10mM、約10μM~約5mM、約10μM~約1mM、約10μM~約0.5mM、約10μM~約0.1mM、50μM~約20mM、50μM~約10mM、約50μM~約5mM、約50μM~約1mM、約50μM~約0.5mM、約50μM~約0.1mM、100μM~約20mM、100μM~約10mM、約100μM~約5mM、約100μM~約1mM、約100μM~約0.5mM、1mM~約20mM、1mM~約10mM、または約1mM~約5mMの累積量で、鉄キレート剤の非存在下で、工程(a)の細胞培養に加えられる。別の好ましい実施形態では、鉄は、鉄キレート剤の存在下で、約0.1μM~約20mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。他の実施形態では、鉄は、約0.1μM~約20mM、0.1μM~約10mM、0.1μM~約5mM、約0.1μM~約1mM、約0.1μM~約0.5mM、約0.1μM~約0.1mM、約0.1μM~約0.05mM、約0.1μM~約0.01mM、約0.1μM~約0.005mM、約0.1μM~約0.001mM、約1μM~約1mM、約1μM~約5mM、約1μM~約1mM、約1μM~約0.5mM、約1μM~約0.1mM、約1μM~約0.05mM、約1μM~約0.01mM、約1μM~約0.005mM、約10μM~約1mM、約10μM~約5mM、約10μM~約1mM、約10μM~約0.5mM、約10μM~約0.1mM、約10μM~約0.05mM、約50μM~約1mM、約50μM~約10mM、約50μM~約5mM、約50μM~約1mM、約50μM~約0.5mM、約50μM~約0.1mM、約100μM~約1mM、約100μM~約5mM、約100μM~約1mM、約100μM~約0.5mM、約500μM~約1mM、約500μM~約5mM、約500μM~約2.5mM、または約500μM~約1mMの累積量で、鉄キレート剤の存在下で、工程(a)の細胞培養に加えられる。
【0093】
いくつかの実施形態では、銅は、約0.008μM~約1mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。他の実施形態では、銅は、約0.008μM~約0.5mM、約0.008μM~約0.1mM、約0.008μM~約0.05mM、約0.008μM~約0.01mM、約0.008μM~約0.005mM、0.008μM~約0.5μM、0.008μM~約0.1μM、0.008μM~約0.05μM、0.008μM~約0.01μM、0.008μM~約0.005μM、約0.05μM~約1mM、約0.05μM~約0.5mM、約0.05μM~約0.1mM、約0.05μM~約0.05mM、約0.05μM~約0.01mM、0.05μM~約0.005mM、0.05μM~約0.5μM、約1μM~約1mM、約1μM~約0.5mM、約1μM~約0.1mM、約1μM~約0.01mM、約1μM~約0.005mM、10μM~約1mM、約10μM~約0.5mM、約10μM~約0.1mM、約10μM~約0.05mM、50μM~約1mM、約50μM~約0.5mM、約50μM~約0.1mM、100μM~約1mM、約100μM~約0.5mM、約100μM~約0.2mM、または500μM~約1mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、アミノ酸は、約50mM~約2Mの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。別の実施形態では、アミノ酸は、50mMを超える累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。ある特定の実施形態では、1種以上のアミノ酸が、約75mM~約500mMの累積量で、フェドバッチ培養またはバッチ培養における工程(a)の細胞培養に加えられる。ある特定の実施形態では、1種以上のアミノ酸が、約50mM~約1M、約50mM~約500mM、または約50mM~約100mMの累積量で、フェドバッチ培養またはバッチ培養における工程(a)の細胞培養に加えられる。いくつかの実施形態では、1種以上のアミノ酸が、約50mM、55mM、60mM、63mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、300mM、400mM、500mM、750mM、800mM、1M、1.5mM、または2Mの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。いくつかの実施形態では、アンモニアの蓄積が存在する場合、1種以上のアミノ酸の任意の累積量が、灌流培養によってN-1培養容器に添加され得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、廃棄物は工程(a)の間に除去され、そして1種以上のアミノ酸が約50mM~約2Mの累積量で加えられる。他の実施形態では、廃棄物は工程(a)の間に除去され、そして1種以上のアミノ酸が約63mM~約200mM、63mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、200mM、300mM、400mM、500mM、750mM、800mM、1M、1.5mM、または2Mの累積量で加えられる。
【0096】
いくつかの実施形態では、フマル酸塩は、約2μM~約20mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。他の実施形態では、フマル酸塩は、約2μM~約20mM、2μM~約10mM、2μM~約5mM、約2μM~約1mM、約2μM~約0.5mM、約2μM~約0.1mM、約2μM~約0.01mM、5μM~約20mM、5μM~約10mM、約5μM~約5mM、約5μM~約1mM、約5μM~約0.5mM、約5μM~約0.1mM、約5μM~約0.01mM、10μM~約20mM、10μM~約10mM、約10μM~約5mM、約10μM~約1mM、約10μM~約0.5mM、約10μM~約0.1mM、50μM~約20mM、50μM~約10mM、約50μM~約5mM、約50μM~約1mM、約50μM~約0.5mM、約50μM~約0.1mM、100μM~約20mM、100μM~約10mM、約100μM~約5mM、約100μM~約1mM、約100μM~約0.5mM、1mM~約20mM、1mM~約10mM、または約1mM~約5mM、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1.0μM、2.0μM、5.0μM、10μM、20μM、50μM、100μM、200μM、500μM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、10mM、または20mMの累積量で、工程(a)の細胞培養に加えられる。
【0097】
ある特定の実施形態では、工程(a)の培養のpHは約6.8~約7.4に維持される。他の実施形態、工程(a)の培養のpHは約6.9~約7.3に維持される。いくつかの実施形態では、所望のpHは、塩基、例えば水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムを加えることなく、灌流培地pHを滴定することによって維持される。他の実施形態では、所望のpHは、塩基、例えば水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムを加えることによって維持される。
【0098】
N-1培養容器における細胞培養は、バッチ培養、フェドバッチ培養または灌流培養で培養することができる。一実施形態では、N-1培養容器における細胞培養はバッチ培養である。別の実施形態では、N-1培養容器における細胞培養はフェドバッチ培養である。
【0099】
目的のポリペプチドを生産する典型的な手順は、バッチ培養及びフェドバッチ培養を含む。従来のバッチ及びフェドバッチ培養に関する持続的な未解決の問題は、代謝廃棄物の生成であり、それは、細胞増殖、細胞生存率及び発現されるポリペプチドの生産に関して有害効果を有する。特に有害な効果を有する2つの代謝廃棄物は、乳酸塩及びアンモニウムであり、それは、それぞれグルコース及びグルタミン代謝の結果として生じる。グルタミン代謝の結果としてのアンモニウムの酵素生産に加えて、アンモニウムはまた、時間とともに非代謝分解の結果として細胞培養に蓄積する。したがって、ある特定の実施形態では、N-1培養容器における細胞培養は、灌流培養である。いくつかの実施形態では、N-1培養容器における細胞培養のための灌流量は約0.01nL/細胞/日~約0.2nL/細胞/日である。他の実施形態では、N-1培養容器における細胞培養のための灌流量は、約0.01nL/細胞/日~約0.15nL/細胞/日、約0.01nL/細胞/日~約0.1nL/細胞/日、約0.01nL/細胞/日~約0.05nL/細胞/日、約0.05nL/細胞/日~約0.2nL/細胞/日、約0.05nL/細胞/日~約0.15nL/細胞/日、約0.05nL/細胞/日~約0.1nL/細胞/日、約0.1nL/細胞/日~約0.2nL/細胞/日、約0.1nL/細胞/日~約0.15nL/細胞/日、約0.12nL/細胞/日~約0.2nL/細胞/日、約0.12nL/細胞/日~約0.15nL/細胞/日である。他の実施形態では、N-1培養容器における細胞培養のための灌流量は、0.01nL/細胞/日、0.02nL/細胞/日、0.03nL/細胞/日、0.05nL/細胞/日、0.07nL/細胞/日、0.10nL/細胞/日、0.12nL/細胞/日、0.14nL/細胞/日、0.15nL/細胞/日、0.16nL/細胞/日、0.18nL/細胞/日、0.05nL/細胞/日、0.08nL/細胞/日、0.1nL/細胞/日、または0.2nL/細胞/日である。いくつかの実施形態では、灌流培養における灌流は交互接線流である。他の実施形態では、灌流細胞培養における灌流は接線流である。いくつかの実施形態では、灌流細胞培養における灌流は、ろ過装置、例えば中空糸及び開口チャネルフィルターを使用する。
【0100】
典型的には、N-1培養容器の体積は、4000リットル未満、3750リットル未満、3500リットル未満、3250リットル未満、3000リットル未満、2750リットル未満、2500リットル未満、2250リットル未満、2000リットル未満、1750リットル未満、1500リットル未満、1250リットル未満、または1000リットル未満である。いくつかの実施形態では、N-1培養容器は、約50~約20,000リットル、約50~約15,000リットル、約50~約10,000リットル、約50~約3570リットル、約50~約3500リットル、約50~約3000リットル、約50~約2500リットル、約50~約2000リットル、約50~約1500リットル、約50~約1000リットル、約50~500リットル、約100~約10,000リットル、約100~約5000リットルまたは約100~約4000リットルである。ある特定の実施形態では、N-1培養容器は、4000リットル、3750リットル、3500リットル、3250リットル、3000リットル、2750リットル、2500リットル、2250リットル、2000リットル、1750リットル、1500リットル、1250リットル、1000リットル、750リットル、500リットル、250リットル、200リットル、100リットル、または50リットルである。バイオリアクターの内部条件、例えば限定するものではないがpH及び温度は、典型的には、培養期間中制御される。バイオリアクターは、本発明の培養条件下で、培地中に懸濁された哺乳動物細胞培養を保持するのに適している任意の材料、例えばガラス、プラスチックまたは金属から成ることができる。
【0101】
工程(a)のN-1培養容器における細胞培養は、定義された期間、維持することができる。いくつかの実施形態では、工程(a)での細胞培養は、約3~約8日、約3~約7日、約3~約6日、約3~約5日、4~約8日、約4~約7日、約4~約6日、約4~約5日、約5~約8日、約5~約7日、約5~約6日、約6~約8日、約6~約7日、または約7~約8日の間維持される。ある特定の実施形態では、工程(a)での細胞培養は、3日、4日、5日、6日、7日、または8日間維持される。
【0102】
工程(a)からの細胞は、工程(b)で生産用バイオリアクターに播種するために、適当な密度まで希釈することができる。本発明の好ましい実施形態では、細胞は、生産用バイオリアクターで使用される同じ培地中に希釈される。あるいは、細胞は、本発明の実施者のニーズ及び要望に応じて、または、生産用バイオリアクターに播種する前に細胞を短期間保存しなければならない場合に、細胞それら自体の特定の必要条件に適応させるために、別の培地または溶液中に希釈され得る。
【0103】
N培養容器における生産細胞培養
N-1シードトレイン培養容器で増殖される細胞は、採取され、そして、高い生細胞播種密度で、生産細胞培養のためのN培養容器中に播種/接種される。いくつかの実施形態では、N培養容器は、約8.5×10生細胞/ml、約10×10生細胞/ml、15×10生細胞/ml、20×10生細胞/ml、25×10生細胞/ml、または30×10生細胞/mlの播種密度で接種される。
【0104】
当業者は、N培養容器における生産細胞培養は、バッチ培養、フェドバッチ培養または灌流培養であり得ることを認めるだろう。ある特定の実施形態では、生産培養はフェドバッチ培養である。他の実施形態では、生産培養は灌流培養である。
【0105】
したがって、一実施形態では、本発明の方法によるN-1培養容器及び/またはN培養容器における細胞培養は、バッチ培養である。別の実施形態では、本発明の方法によるN-1培養容器及び/またはN培養容器における細胞培養は、フェドバッチ培養である。更なる実施形態では、本発明の方法によるN-1培養容器及び/またはN培養容器における細胞培養は、灌流培養である。いくつかの実施形態では、N-1培養容器における細胞培養は、灌流培養である。
【0106】
他の実施形態では、N-1培養容器における培養はフェドバッチ培養であり、そしてN培養容器における培養はバッチまたはフェドバッチ培養である。別の実施形態では、N-1培養容器における培養は灌流培養であり、そしてN培養容器における培養はフェドバッチまたはバッチ培養である。別の実施形態では、N-1培養容器における培養はバッチまたはフェドバッチ培養であり、そしてN培養容器における培養は灌流培養である。
【0107】
工程(b)のN培養容器における生産細胞培養は、定義された期間維持することができる。いくつかの実施形態では、工程(b)での細胞培養は、約8~約23日、約8~約20日、約8~約15日、約10~約23日、約10~約20日、約10~約15日、約15~約23日、約15~約20日、約12~約23日、または約12~約20日の間維持される。ある特定の実施形態では、工程(b)での細胞培養は、8日、10日、12日、14日、16日、18日、20日、22日または23日の間維持される。
【0108】
典型的には、N培養容器の体積は、約200リットル~約20,000リットル、約200リットル~約15,000リットル、約200リットル~約12,000リットル、約200リットル~約10,000リットル、約200リットル~約8,000リットル、約200リットル~約5,000リットル、約1000リットル~約20,000リットル、約1000リットル~約20,000リットル、約1000リットル~約15,000リットル、約1000リットル~約12,000リットル、約1000リットル~約10,000リットル、約1000リットル~約8,000リットル、または約1000リットル~約5,000リットルである。いくつかの実施形態では、N培養容器の体積は、約200リットル、約500リットル、約800リットル、約1000リットル、約1200リットル、約1500リットル、約2000リットル、約2500リットル、約5000リットル、約7500リットル、約10,000リットル、約12,000リットル、約15000リットル、約18000リットル、または約20,000リットルである。いくつかの実施形態では、N培養容器の体積は約20,000リットル以下である。
【0109】
一実施形態では、本発明の方法による細胞培養は無血清培養である。別の実施形態では、本発明の方法による細胞培養は既知組成培養である。更なる実施形態では、本発明の方法による細胞培養は動物性タンパク質非含有培養である。
【0110】
発現されたポリペプチドの単離または捕集
生産細胞培養で生産される目的のタンパク質はN培養容器から捕集される。一実施形態では、発現されるポリペプチドまたはタンパク質は、培地中に分泌されるので、精製プロセスの第一工程として、例えば遠心分離またはろ過によって、取り出すことができる。
【0111】
あるいは、発現されるポリペプチドは宿主細胞の表面に結合され得る。この実施形態では、培地が取り出され、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する宿主細胞は精製プロセスの第一工程として溶解される。当業者に公知の任意の数の手段によって、例えばガラスビーズによる物理的な粉砕及び高いpH条件への曝露によって、哺乳動物宿主細胞の溶解を達成することができる。
【0112】
ポリペプチドは、標準的方法によって、例えば、限定するものではないが、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲルろ過、遠心分離、もしくは示差溶解度、エタノール沈澱によって、または、タンパク質精製のための任意の他の利用可能な技術によって、単離及び精製され得る(例えば、参照によりすべてが本明細書に組み込まれる、Scopes,Protein Purification Principles and Practice 2nd Edition,Springer-Verlag,New York, 1987;Higgins,S.J.and Hames,B.D.(編),Protein Expression:A Practical Approach, Oxford Univ Press,1999;及びDeutscher,M.P.,Simon,M.I.,Abelson,J.N.(編),Guide to Protein Purification:Methods in Enzymology(Methods in Enzymology Series,Vol 182),Academic Press,1997を参照されたい)。免疫アフィニティークロマトグラフィーについて、特に、タンパク質は、そのタンパク質に対して作製され、そして固定支持体に固定された抗体を含むアフィニティーカラムにタンパク質を結合することにより単離され得る。あるいは、インフルエンザ被膜配列、ポリヒスチジン、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼのようなアフィニティータグを、標準的な組換え技術によってタンパク質に付着させて、適当なアフィニティーカラム上を通過させることによる容易な精製を可能にすることができる。フェニルメチル弗化スルホニル(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチンまたはアプロチニンのようなプロテアーゼ阻害剤は、精製プロセスの間に、ポリペプチドまたはタンパク質の分解を少なくするかまたは排除するために、任意のまたはすべての段階で加えることができる。プロテアーゼ阻害剤は、発現されるポリペプチドまたはタンパク質を単離及び精製するために細胞を溶解しなければならない際に特に望ましい。当業者には、精密な精製技術は、精製されるポリペプチドまたはタンパク質の特徴、ポリペプチドまたはタンパク質が発現される細胞の特徴、そして細胞が増殖された培地の組成に応じて、変わることが理解されよう。
【0113】
III.細胞
細胞培養し易く且つポリペプチドを発現し易い任意の哺乳動物の細胞または細胞型を本発明にしたがって利用することができる。本発明にしたがって使用することができる哺乳動物細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/1,ECACC No:85110503);ヒト網膜細胞芽(PER.C6(オランダ、ライデンにあるCruCell));SV40で形質転換したサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL1651);ヒト胚性腎臓株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞,Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59(1977));幼若ハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO,Urlaub and Chasin, Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL
70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Mather et al.,Annals N.Y. Acad. Sci.,383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒトヘパトーム株(Hep G2)が挙げられる。特に好ましい実施形態では、本発明は、CHO細胞株由来のポリペプチド及びタンパク質の培養及び発現で使用される。
【0114】
好ましい実施形態では、細胞はHEK-293細胞、VERO細胞、NS0細胞、PER.C6細胞、Sp2/0細胞、BHK細胞、MDCK細胞、MDBK細胞、またはCOS細胞から選択される。
【0115】
更に、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する、多くの商業的及び非商業的に利用可能なハイブリドーマ細胞株を本発明にしたがって利用することができる。当業者は、ハイブリドーマ細胞株が、異なる栄養必要量を有することができ且つ/または最適な増殖及びポリペプチドまたはタンパク質の発現について異なる培養条件を要求し得ることを十分に理解するであろうし、そして必要に応じて条件を改変することができるであろう。
【0116】
上記したように、多くの場合、細胞は、高レベルのタンパク質またはポリペプチドを生産するように選択または操作される。しばしば、細胞は、例えば、目的のタンパク質もしくはポリペプチドをコードする遺伝子の導入によって、及び/または目的のポリペプチドをコードする遺伝子(内因性であるか導入されるかにかかわらず)の発現を制御する調節エレメントの導入によって、高レベルのタンパク質を生産するように遺伝子操作される。
【0117】
ある特定のポリペプチドは、細胞増殖、細胞生存率、または細胞のいくつかの他の特徴に関して有害な影響を及ぼす場合があり、その影響により、目的のポリペプチドまたはタンパク質の生産がなんらかの様式で最終的に制限される。特定のポリペプチドを発現するように操作された1つの特定のタイプの細胞の集団の中でも、その細胞集団内での変動性が存在し、その結果、ある特定の個々の細胞が、より良好に増殖し、且つ/または目的のポリペプチドをより多く生産する。本発明のある特定の好ましい実施形態では、細胞株は、細胞を培養するために選択される特定の条件下での堅固な増殖のために、実施者によって経験的に選択される。特に好ましい実施形態では、特定のポリペプチドを発現するように操作された個々の細胞は、細胞増殖、最終細胞密度、細胞生存率パーセント、発現されるポリペプチドの力価、もしくはこれらの任意の組み合わせに基づいて、または実施者によって重要であるとみなされる任意の他の条件に基づいて、大規模生産のために選択される。
【0118】
IV.培地
本発明の細胞培養は、培養される特定の細胞に適する任意の培地で調製される。いくつかの実施形態では、培地は、例えば、無機塩類、炭水化物(例えば、糖類、例えばグルコース、ガラクトース、マルトースまたはフルクトース)、アミノ酸、ビタミン(例えば、B群ビタミン(例えばB12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン及びビオチン)、脂肪酸及び脂質(例えば、コレステロール及びステロイド)、タンパク質及びペプチド(例えば、アルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチン及びフェチュイン)、血清(例えば、アルブミン、増殖因子及び増殖阻害剤、例えばウシ胎児血清、新生仔ウシ血清及びウマ血清を含む組成物)、微量元素(例えば、亜鉛、銅、セレン及びトリカルボン酸中間体)、加水分解産物(プラントまたは動物源に由来する加水分解タンパク質)、及びそれらの組み合わせを含む。市販の培地、例えば、5倍濃縮DMEM/F12(Invitrogen)、CD OptiCHO feed(Invitrogen)、CD EfficientFeed(Invitrogen)、Cell Boost(HyClone)、BalanCD CHO Feed(Irvine Scientific)、BD Recharge(Becton Dickinson)、Cellvento Feed(EMD Millipore)、Ex-細胞CHOZN Feed(Sigma-Aldrich)、CHO Feed Bioreactor Supplement(Sigma-Aldrich)、SheffCHO(Kerry)、Zap-CHO(Invitria)、ActiCHO(PAA/GE Healthcare)、Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地([MEM]、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びDulbecco変法イーグル培地([DMEM]、Sigma)が例示の培養液である。更に、そのすべての開示が参照により本明細書に組み込まれる、Ham and Wallace,(1979)Meth.Enz.,58:44;Barnes and Sato,(1980)Anal.Biochem.,102:255;米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第5,122,469号または第4,560,655号;国際公開番号WO 90/03430;及びWO 87/00195に記載されている培地のいずれかを培養培地として使用することができる。これらの培地のいずれかは、必要に応じて、ホルモン及び/もしくは他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、あるいは上皮増殖因子)、塩類(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマイシン)、微量元素(マイクロモル濃度範囲の最終濃度で通常は存在する無機化合物として定義される)、脂質(例えばリノール酸もしくは他の脂肪酸)及びそれらの適当な担体、及びグルコース、または等価なエネルギー源と一緒に補充することができる。いくつかの実施形態では、栄養培地は、無血清培地、無タンパク質培地、または既知組成培地である。任意の他の必要なサプリメントも、当業者に知られている適当な濃度で包含され得る。
【0119】
一実施形態では、哺乳動物宿主細胞はCHO細胞であり、適当な培地は、基本培地成分、例えばDMEM/HAM F-12をベースとする配合物(DMEMとHAM F12との組成物、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas,Sixth Edition,1988,pages 346-349における培養培地配合物を参照されたい)、ならびに、改変された濃度のいくつかの成分、例えば、アミノ酸、塩類、糖類、及びビタミン、組換えヒトインスリン、加水分解ペプトン、例えばPrimatone HSもしくはPrimatone RL(英国シェフィールド)、またはその同等物;細胞保護剤、例えばPluronic F68もしくはまたはプルロニックポリオールの同等物;ゲンタマイシン;及び微量元素を含有する。
【0120】
本発明は、本明細書に記載の他の培養工程にしたがって使用されるとき、目的の組換え糖タンパク質のグリコシル化を操作し、変質させ、または改変する能力を保持しながら、培養における細胞生存率の低下を最小化または防止する種々の培地配合物を提供する。
【0121】
代謝平衡、細胞増殖及び/もしくは生存率に関して、またはポリペプチドまたはタンパク質に関して、大きな悪影響を及ぼさずに、グリコシル化を操作するのに有用であることが示された本発明の培地配合物は、本明細書に記載の培地サプリメントを含む。当業者は、本発明の培地配合物が、定義された培地及び定義されていない培地の両方を含むことを理解するだろう。
【0122】
V.バイオプロダクト
ポリペプチド
宿主細胞で発現可能なあらゆるポリペプチドを本発明にしたがって生産することができる。ポリペプチドは、宿主細胞に対して内因性である遺伝子から発現され得るか、または遺伝子工学によって宿主細胞中に導入される遺伝子から発現され得る。ポリペプチドは、天然に生じるものであり得るか、または人間の手によって遺伝子操作もしくは選択された配列を有することができる遺伝子操作されたポリペプチドは、天然に個々に生じる他のポリペプチドセグメントから組み立てられ得るか、または天然に生じない1つ以上のセグメントを包含し得る。
【0123】
本発明にしたがって望ましく発現され得るポリペプチドは、しばしば、興味深い生物学的または化学的な活性に基づいて選択される。例えば、本発明は、任意の薬学的または商業的に重要な酵素、受容体、抗体、ホルモン、制御因子、抗原、結合剤などを発現させるために使用することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質生産物は、抗体、融合タンパク質、アルファ-シヌクレイン、BART、Lingo、aBDCA2、抗CD40L、STX-100、Tweak、ダクリズマブ、ペグ化インターフェロン、インターフェロン、エタナーセプト、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、ベバシズマブ、Tysabri、Avonex、Rituxan、オクレリズマブ、オビヌツズマブ(またはCD20に結合するあらゆるもの)である。
【0125】
抗体
医薬品または他の市販の薬剤として現在使用されているかまたは研究中の多数の抗体を想定するならば、抗体の生産は、本発明にしたがう特定の目的である。抗体は、特定の抗原を特異的に結合する能力を有するタンパク質である。宿主細胞において発現され得る任意の抗体は、本発明にしたがって使用することができる。一実施形態では、発現される抗体はモノクローナル抗体である。
【0126】
特定の抗体は、例えば、列挙したアミノ酸配列をコードする合成遺伝子を調製し発現させることによって、または列挙したアミノ酸配列をコードする遺伝子を提供するヒト生殖細胞遺伝子を変異させることによって、作製することができる。更に、これらの抗体は、例えば、以下の方法の1つ以上を使用して、生産され得る。
【0127】
抗体、特にヒト抗体を得るために多くの方法が利用可能である。1つの例示の方法は、タンパク質発現ライブラリー、例えばファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えば米国特許第5,223,409号;Smith(1985)Science 228:1315-1317;WO 92/18619;WO 91/17271;WO 92/20791;WO 92/15679;WO 93/01288;WO 92/01047;WO 92/09690;及びWO 90/02809に記載されている。ファージ上におけるFab’sのディスプレイは、例えば米国特許第5,658,727号;第5,667,988号;及び第5,885,793号に記載されている。
【0128】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、他の方法を使用して抗体を得ることができる。例えば、タンパク質またはそのペプチドは、非ヒト動物、例えば齧歯動物、例えばマウス、ハムスターまたはラットにおける抗原として使用することができる。
【0129】
一実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。ヒトIg遺伝子座の大きい断片を使用して、マウス抗体生産に欠けるマウス株を遺伝子操作することができる。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を生産及び選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13-21、米国特許出願公開第2003-0070185号、WO 96/34096及びWO 96/33735を参照されたい。
【0130】
別の実施形態では、モノクローナル抗体を、非ヒト動物から取得し、次いで改変、例えばヒト化または脱免疫化する。Winterは、本明細書に記載のヒト化抗体の調製に使用できる例示的CDR移植法を記載している(米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体のCDRの全部または一部を、非ヒト抗体の少なくとも一部で置換することができる。一実施形態では、抗原に結合する有用なヒト化抗体に到達するために、そのようなCDRの結合または結合決定基(binding determinant)にとって必要とされるCDRを置換する必要があるのみである。
【0131】
抗原結合に直接関与しないFv可変領域の配列を、ヒトFv可変領域に由来する等価配列で置換することによって、ヒト化抗体を作製することができる。ヒト化抗体を作製する一般的な方法は、Morrison,S.L.(1985)Science 229:1202-1207によって、Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214によって、そして米国特許第5,585,089号;米国特許第5,693,761号;米国特許第5,693,762号;米国特許第5,859,205号;及び米国特許第6,407,213号によって提供される。これらの方法は、重鎖または軽鎖の少なくとも1つに由来する免疫グロブリンFv可変領域の全部または一部をコードする核酸配列を単離し、操作し、そして発現させることを含む。そのような核酸源は、当業者に周知であり、例えば、上記したように、所定の標的に対する抗体を生産するハイブリドーマから、生殖系列の免疫グロブリン遺伝子から、または合成構築物から得ることができる。次いで、ヒト化抗体をコードする組換えDNAを適当な発現ベクター中にクローニングすることができる。一実施形態では、その発現ベクターは、グルタミンシンセターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。(例えばPorter et al.,Biotechnol Prog 26(5):1446-54(2010)を参照されたい)。
【0132】
抗体は、ヒトFc領域、例えば、野生型Fc領域または1つ以上の改変を含むFc領域を含むことができる。一実施形態では、定常領域を、改変、例えば突然変異させて、抗体の性質を変更する(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つ以上を増加または低下させる)。例えば、ヒトIgG1定常領域を、1つ以上の残基、例えば、残基234及び237の1つ以上で変異させることができる。抗体は、重鎖のCH2領域に、例えば、Fc受容体結合及び補体活性化などのエフェクター機能を低下または変化させる変異を有し得る。例えば、抗体は、米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号に記載されているような変異を有し得る。また、抗体は、当該技術分野で開示されているように(例えば、Angal et al.(1993)Mol.Immunol.30:105-08)、免疫グロブリンの2つの重鎖間のジスルフィド結合を安定させる変異、例えばIgG4のヒンジ領域における変異も有し得る。例えば米国特許出願公開第2005-0037000号も参照されたい。
【0133】
他の実施形態では、変更されたグリコシル化パターン(すなわち、本来または天然のグリコシル化パターンから変更されている)を有するように、抗体を改変することができる。ここで「変更された」とは、1つ以上の炭水化物部分を欠失させること、及び/または本来の抗体に付加された1つ以上のグリコシル化部位を有することを意味している。本願で開示されている抗体にグリコシル化部位を付加することは、グリコシル化部位のコンセンサス配列を含有するようにアミノ酸配列を変更することによって達成することができる;そのような技術は当該技術分野で公知である。抗体上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段としては、抗体のアミノ酸残基にグリコシドを化学的または酵素的に結合させることが挙げられる。これらの方法は、例えばWO 87/05330及びAplin and Wriston(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.22:259-306に記載されている。抗体上に存在する任意の炭水化物部分の除去は、当該技術分野で記載されているように((Hakimuddin et al.(1987)Arch.Biochem.Biophys.259:52;Edge et al.(1981)Anal.Biochem.118:131;及びThotakura et
al.(1987)Meth.Enzymol.138:350))化学的または酵素的に達成することができる。サルベージ受容体結合エピトープを提供することによるin
vivoでの半減期を延長させる改変については、例えば米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0134】
抗体は、全長抗体の形態、または抗体の断片の形態、例えばFab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、dAb断片、及びscFv断片であり得る。更なる形態としては、単一の可変領域、例えば、ラクダ由来のドメインまたはラクダ化ドメインを包含するタンパク質が挙げられる。例えば米国特許出願公開第2005-0079574号及びDavies et al.(1996)Protein Eng.9(6):531-7を参照されたい。
【0135】
一実施形態では、抗体は、全長抗体の抗原結合断片、例えばFab、F(ab’)2、Fvまたは一本鎖Fv断片である。典型的には、抗体は全長抗体である。抗体は、モノクローナル抗体または単一特異性抗体であり得る。
【0136】
別の実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、CDR移植抗体、キメラ抗体、変異抗体、親和性成熟抗体、脱免疫抗体、合成抗体、またはそれ以外のin vitro生成抗体、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0137】
抗体の重鎖及び軽鎖は、実質的に全長であり得る。タンパク質は、少なくとも1つの、好ましくは2つの完全な重鎖及び少なくとも1つの、好ましくは2つの完全な軽鎖を含むことができるか、または抗原結合断片(例えばFab、F(ab’)2、Fvもしくは一本鎖Fv断片)を含むことができる。更に他の実施形態では、抗体は、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgEから選択される重鎖定常領域;特に、例えばIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択される重鎖定常領域、更に特にIgG1(例えば、ヒトIgG1)である重鎖定常領域を有する。典型的には、この重鎖定常領域は、ヒトの定常領域、またはヒト定常領域の改変形態である。別の実施形態では、抗体は、例えば、カッパまたはラムダから選択される軽鎖定常領域、特にカッパ(例えば、ヒトカッパ)である軽鎖定常領域を有する。
【0138】
受容体
医薬品及び/または市販の薬剤として有効であるとされてきたポリペプチドの別のクラスは、受容体を含む。受容体は、典型的には、細胞外シグナル伝達リガンドを認識することによって機能する膜貫通糖タンパク質である。受容体は、典型的には、リガンド認識ドメインに加えて、リガンドを結合する際に、標的の細胞内分子をリン酸化することによってシグナル伝達経路を開始するタンパク質キナーゼドメインを有し、細胞内で発育変動または代謝変化をもたらす。一実施形態では、目的の受容体は、(単数または複数の)膜貫通ドメイン及び/または細胞内ドメインを除去するように改変され、前記ドメインの代わりに、Igドメインが任意に付着され得る。一実施形態では、本発明にしたがって生産される受容体は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。RTKファミリーは、多くの細胞型の様々な機能にとって重要である受容体を含む(例えば、参照により本明細書に組み込まれるYarden and Ullrich, Ann.Rev.Biochem.57:433-478,1988;Ullrich and Schlessinger,Cell 61:243-254,1990を参照されたい)。RTKの非限定的な例としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体ファミリーのメンバー、上皮増殖因子受容体(EGF)ファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、免疫グロブリン及びEGF相同性ドメイン-1(TIE-1)受容体及びTIE-2受容体を有するチロシンキナーゼ(参照により本明細書に組み込まれるSato et al.,Nature 376(6535):70-74(1995))、ならびにそのいくつかが血管新生を直接的にまたは間接的に促進することが示唆されているc-Met受容体(Mustonen and Alitalo,J.Cell Biol.129:895-898,1995)が挙げられる。RTKの他の非限定的な例としては、胎児肝臓キナーゼ1(FLK-1)(キナーゼインサートドメイン含有受容体(KDR)と呼ばれることもある(Terman et al.,Oncogene 6:1677-83,1991)または血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR-2))、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR-1)と呼ばれることもあるfins様チロシンキナーゼ-1(Flt-1)(DeVries et al.Science 255;989-991,1992;Shibuya et al.,Oncogene 5:519-524,1990)、ニューロピリン-1、エンドグリン、エンドシアリン、及びAx1が含まれる。当業者であれば、本発明にしたがって発現され得る他の受容体を知っているであろう。
【0139】
増殖因子及び他のシグナル伝達分子
医薬品及び/または市販の薬剤として有効であるとされてきたポリペプチドの別のクラスは、増殖因子及び他のシグナル伝達分子を含む。増殖因子は、典型的には、細胞により分泌され、他の細胞に結合し、他の細胞上にある受容体を活性化し、その受容体細胞において発育変動または代謝変化を惹起させる糖タンパク質である。
【0140】
哺乳動物増殖因子及び他のシグナル伝達分子の非限定的な例としてはサイトカイン;上皮増殖因子(EGF);血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えばaFGF及びbFGF;形質転換増殖因子(TGF)、例えばTGF-アルファ及びTGF-ベータ、例えばTGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、TGF-ベータ4、またはTGF-ベータ5;インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);デス(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えばCD-3、CD-4、CD-8及びCD-19;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えばインターフェロン-アルファ、-ベータ、及び-ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(TL)、例えばIL-1~IL-10;腫瘍壊死因子(TNF)アルファ及びベータ;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体化ホルモン;グルカゴン;抗凝血因子、例えばタンパク質C;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノゲン活性化因子、例えばウロキナーゼまたはヒト尿または組織プラスミノゲン活性化物質(t-PA));ボンベシン;トロンビン、造血増殖因子;エンケファリナーゼ;RANTES(通常はT細胞で発現且つ分泌され活性化を調節する);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-アルファ);ミュラー阻害物質;レラキシンA鎖;レラキシンB鎖;プロレキサシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、または-6(NT-3、NT-4、NT-5またはNT-6)または神経成長因子、例えばNGF-ベータが挙げられる。当業者であれば、本発明にしたがって発現され得る他の増殖因子またはシグナル伝達分子を知っているであろう。
【0141】
凝固因子
いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は凝固因子を含む。本明細書で使用される場合、凝固因子とは、止血障害の対象における出血エピソードの期間を予防または短縮する任意の分子またはその類似化合物を意味している。例えば、本発明のための凝固因子は、全長凝固因子、成熟凝固因子、またはキメラ凝固因子であり得る。換言すれば、それは、凝固活性を有するあらゆる分子を意味している。本明細書で使用されるように、凝固活性とは、フィブリン凝塊の形成において最高点に達する、及び/または出血または出血エピソードの重症度、持続期間または頻度を減らす生化学反応のカスケードに関与する能力を意味している。凝固因子の例は、米国特許第7,404,956号で見出すことができ、それは参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
一実施形態では、凝固因子は、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、第XIII因子またはvon Willebrand因子である。凝固因子は、外因性経路に関与する因子であり得る。凝固因子は、内因性経路に関与する因子であり得る。あるいは、凝固因子は、外因性経路及び内因性経路の両方に関与する因子であり得る。
【0143】
一実施形態では、凝固因子は、ヒト凝固因子、または、例えば非ヒト霊長類、ブタまたは任意の哺乳動物に由来する非ヒト凝固因子であり得る。凝固因子は、キメラ凝固因子であることができ、例えば、凝固因子は、ヒト凝固因子の部分とブタ凝固因子の部分、または第1非ヒト凝固因子とN非ヒト凝固因子の部分を含むことができる。
【0144】
別の実施形態では、凝固因子は、活性化された凝固因子であり得る。あるいは、凝固因子は、凝固因子の不活性型、例えば酵素前駆体であり得る。不活性凝固因子は、免疫グロブリン定常部領域の少なくとも一部に連結した後に活性化することができる。不活性凝固因子は、対象に投与後に活性化することができる。あるいは、不活性凝固因子は、投与前に活性化することができる。
【0145】
ある特定の実施形態では、凝固因子は第VIII因子タンパク質である。本明細書で使用される「第VIII因子タンパク質」または「FVIIIタンパク質」とは、特に明記しない限り、凝固でその正常な役割を担う機能的第VIII因子タンパク質を意味している。したがって、用語FVIIIは、機能的である変異体タンパク質を含む。一実施形態では、FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはネズミのFVIIIタンパク質である。機能的FVIIIタンパク質は、融合タンパク質であることができ、例えば、限定するものではないが、完全または部分的にBドメインが欠失されたFVIII、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分、例えばFcドメイン、または両方を含む融合タンパク質であることができる。無数の機能的FVIII変異体が作製されてきており、本明細書記載の組換えFVIIIタンパク質として使用することができる。そのすべてが参照により本明細書に完全に組み込まれるPCT公開番号WO 2011/069164 A2、WO2012/006623 A2、WO 2012/006635 A2、またはWO 2012/006633 A2を参照されたい。
【0146】
非常に多くの機能的FVIII変異体が知られている。更に、FVIIIにおける何百もの機能しない突然変異は、血友病患者で同定されてきた。全体が参照により本明細書に組み込まれる、例えばCutler et al.,Hum.Mutat.19:274-8(2002)を参照されたい。更に、ヒト由来のFVIIIと他の種との比較により、機能に必要とされる可能性がある保存残基が同定されてきた。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるCameron et al.,Thromb.Haemost.79:317-22(1998);US6,251,632を参照されたい。
【0147】
ある特定の態様では、本発明の組換えFVIIIタンパク質はキメラである。本明細書で使用されるように「キメラタンパク質」または「キメラポリペプチド」とは、異なる供給源由来のアミノ酸の少なくとも2つの広がりを中に含む、タンパク質またはポリペプチド、例えば異種部分を含むFVIIIタンパク質を意味している。一実施形態では、異種性部分は半減期延長部分であり得る。例えば、異種性部分の例としては、免疫グロブリン定常部領域またはその断片、例えばFc領域もしくはFcRn結合パートナー、VWF分子またはその断片、アルブミン、アルブミン結合ポリペプチド、Fc、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド(CTP)のβサブユニット、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合小分子、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質はFVIIIモノマーダイマーハイブリッドである。
【0148】
本発明にとって有用な長時間作用または長期持続FIXポリペプチドは、FIXポリペプチド及びFcRn結合パートナーを含むキメラポリペプチドである。特に明記しない限り、本発明のFIXポリペプチドは、凝固でその正常な役割を担う機能的第IX因子ポリペプチドを含む。したがって、FIXポリペプチドは、機能的である変異体ポリペプチド、及びそのような機能的変異体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、FIXポリペプチドは、ヒト、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、及びネズミのFIXポリペプチドである。FIXの全長ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列は、多くの機能的変異体、例えば断片、変異体及び改変体が知られている。FIXポリペプチドとしては、全長FIX、全長FIXからN末端のMetを引いたもの、全長FIXからシグナル配列を引いたもの、成熟FIX(シグナル配列及びプロペプチドを引いたもの)、そしてN末端に追加のMetを有する成熟FIXが挙げられる。FIXは、組換え手段によって作製することができ(「組換え第IX因子」または「rFIX」)、すなわち、それは、天然ではなく、または血漿由来ではない。
【0149】
また、凝固因子は、FIXタンパク質または任意の変異体、類似体、またはその機能的断片も含むことができる。多くの機能的FIX変異体が公知である。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 02/040544 A3は、4頁の9~30行及び15頁の6~31行で、ヘパリンによる阻害に対する耐性の増加を示す変異体を開示している。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 03/020764 A2は、表2及び3(14~24頁)、そして12頁の1~27行で、低下したT細胞免疫原性を有するFIX変異体を開示している。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 2007/149406 A2は、4頁の1行~19頁の11行で、タンパク質安定性の増加、in vivo及びin vitro半減期の増加、及びプロテアーゼに対する耐性の増加を示す、機能的変異体FIX分子を開示している。また、国際公開番号WO 2007/149406 A2は、19頁の12行~20頁の9行で、キメラ及び他の変異体FIX分子も開示している。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 08/118507 A2は、5頁の14行~6頁の5行で、凝固活性の増加を示すFIX変異体を開示している。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 09/051717 A2は、9頁の11行~20頁の2行で、半減期の増加及び/または回復の増加をもたらす、N結合型及び/またはO結合型グリコシル化部位数の増加を有するFIX変異体を開示している。また、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 09/137254 A2は、2頁の段落[006]~5頁の段落[011]及び16頁の段落[044]~24頁の段落[057]で、グリコシル化部位数が増加している第IX因子変異体も開示している。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 09/130198 A2は、4頁の26行~12頁の6行で、半減期の増加をもたらす、グリコシル化部位数が増加している、機能的変異体FIX分子を開示している。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 09/140015 A2は、11頁の段落[0043]~13頁の段落[0053]で、ポリマー(例えばPEG)の結合のために使用され得る増加した数のCys残基を有する機能的FIX変異体を開示している。2011年7月11日に出願された国際公開番号PCT/US2011/043569及び2012年1月12日にWO 2012/006624として公開されたFIXポリペプチドも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0150】
更に、FIXにおける数百の非機能的変異体が、血友病患者において同定されており、これらの多くは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際公開番号WO 09/137254 A2の11~14頁の表1に開示されている。そのような非機能的変異体は、本発明には含まれないが、どの変異体が、機能的FIXポリペプチドをもたらす可能性が高いかまたは低いかについて、更なるガイダンスを提供する。
【0151】
いくつかの実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、FIXモノマーダイマーハイブリッドである。モノマーダイマーハイブリッドは、2つのポリペプチド鎖、すなわち、FIXポリペプチド及び第1Fc領域を含む1つの鎖、及び第2Fc領域を含む、から本質的に成る、またはから成るもう1つの鎖を含むことができる。ある特定の態様では、FIXモノマーダイマーハイブリッドは、2つのポリペプチド鎖、すなわち、FIXポリペプチドから本質的に成るまたはから成る第1鎖、及び第2Fc領域から本質的に成るまたはから成る第2鎖から本質的に成るまたはから成る。
【0152】
いくつかの実施形態では、凝固因子は第VII因子またはその変異体の成熟形態である。第VII因子(FVII、F7;因子7、凝固第VII因子、血清第VII因子、血清プロトロンビン転換促進因子、SPCA、プロコンベルチン、及びエプタコグアルファとも呼ばれる)は、凝固カスケードの一部であるセリンプロテアーゼである。FVIIは、Glaドメイン、2つのEGFドメイン(EGF-1及びEGF-2)、及び例えばキモトリプシンのようなセリンプロテアーゼのペプチダーゼS1ファミリーのすべてのメンバーのうちで高度に保存されているセリンプロテアーゼドメイン(またはペプチダーゼS1ドメイン)を含む。FVIIは、単鎖チモーゲン、活性化されたチモーゲン様の二本鎖ポリペプチド及び完全に活性化された二本鎖形態として存在する。
【0153】
例示的なFVII変異体としては、比活性が増大した変異体、例えば、その酵素活性(KcatまたはKm)の増大によってFVIIの活性が増している変異体が挙げられる。このような変異体は、当該分野で記載されており、例えばPersson et al.2001.PNAS 98:13583;Petrovan and Ruf.2001.J.Biol.Chem.276:6616;Persson et al.2001
J.Biol.Chem.276:29195;Soejima et al.2001.J.Biol.Chem.276:17229;Soejima et al.2002.J.Biol.Chem.247:49027に記載されている、例えば、分子の変異形態が挙げられる。
【0154】
一実施形態では、FVIIの変異型としては突然変異体が挙げられる。例示の突然変異体としてはV158D-E296V-M298Qが挙げられる。別の実施形態では、FVIIの変異型としては、FVII成熟配列由来のアミノ酸608-619(LQQSRKVGDSPN,170ループに対応する)を、トリプシンの170ループ由来のアミノ酸EASYPGKで置換したものが挙げられる。FIXの高い比活性の変異体も当該技術分野で公知である。例えば、Simioni et al.(2009 N.E.Journal of Medicine 361:1671)はR338L変異体を記載している。Chang et al. (1988 JBC 273:12089)及びPierri et al.(2009 Human Gene Therapy 20:479)はR338A変異体を記載している。他の変異体は、当該技術分野で公知であり、例えば、Zogg and Brandstetter.2009 Structure 17:1669;Sichler etl al.2003.J.Biol.Chem.278:4121;及びSturzebecher et al.1997.FEBS Lett 412:295に記載されているものが挙げられる。これらの引用文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
チモーゲン様形態からの配座変化の際に生じる完全活性化は、その補助因子である組織因子に結合する際に生じる。また、組織因子の非存在下で配座変化をもたらす変異もまた導入され得る。したがって、FVIIaへの言及は、その両方の二本鎖形態:すなわち、チモーゲン様形態(例えば、活性化可能なFVII)、及び完全活性化された二本鎖形態を含む。
【0156】
本発明に有用な凝固因子の例を開示している様々な特許または出願は、参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、凝固因子(FVII、FIX及びFVIII)を含む様々なモノマーダイマーハイブリッド構築物は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるUS 7,404,945、US 7,348,004、US 7,862,820、US 8,329,182、及びUS 7,820,162で開示されている。FVIIIキメラタンパク質の例は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第61/734,954号または第61/670,553号で更に開示されている。FVIIキメラタンパク質の例は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第61/657,688号で開示されている。
【0157】
Gタンパク質共役型受容体
医薬品及び/または市販の薬剤として有効であると示されてきたポリペプチドの別のクラスは、増殖因子及び他のシグナル伝達分子を含む。Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は7つの膜貫通ドメインを有するタンパク質である。リガンドがGPCRに結合すると、信号が、細胞の生物学的または生理学的特性の変化をもたらす細胞内に伝達される。
【0158】
GPCRはGタンパク質及びエフェクター(Gタンパク質によって調節される細胞内酵素及びチャネル)と共に細胞内第二メッセンジャーの状態を細胞外入力に連結するモジュラー信号伝達システムの構成要素である。これらの遺伝子及び遺伝子産物は、疾患の潜在的原因である。
【0159】
GPCRタンパク質スーパーファミリーは、異なる種を由来とする同じ受容体であるオーソログに対して、遺伝子複製(または他のプロセス)によって生じる変異体を表す受容体である、現在250種類を超えるパラログを含む。このスーパーファミリーは次の5つのファミリーへと分けることができる:すなわち、ファミリーI、ロドプシン及びベータ2-アドレナリン作動性受容体を典型とする、現在200を超えるユニークなメンバーによって代表される受容体;ファミリーII:最近になって特性が明らかにされた副甲状腺ホルモン/カルシトニン/セクレチン受容体ファミリー;ファミリーIII:哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体ファミリー;ファミリーIV:キイロタマホコリカビ(D.discoideum)の化学走性及び発生において重要であるcAMP受容体ファミリー;及びファミリーV、STE2などの真菌接合フェロモン受容体。
【0160】
ウイルス
更に、本発明は、ウイルス学分野の当業者に公知の方法による細胞培養を使用してウイルスを生産するための方法も提供する。本発明にしたがって生産されるウイルスは、培養細胞型を感染させる公知のウイルスの範囲から選択することができる。例えば、哺乳動物細胞培養を利用する際には、ウイルスは、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス属、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルス及びアデノウイルスから選択することができる。使用されるウイルスは、野生型ウイルス、弱毒ウイルス、リアソータントウイルス、または組換えウイルスであり得る。更に、細胞をウイルスに感染させるのに使用される実際のビリオンの代わりに、感染性核酸クローンを、ウイルス学分野の当業者に公知の感染性クローントランスフェクション法にしたがって利用することができる。一実施形態では、生産されるウイルスはインフルエンザウイルスである。
【0161】
前記の説明は単に代表例であって、限定することを意図していないことを理解すべきである。本発明を実施するための別の方法と材料、及び追加の用途は、当業者には明らかであって、添付の請求の範囲内に包含されることを意図している。
【0162】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当該技術分野の範囲内にある、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来の技術を使用する。そのような技術は文献で詳細に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press:(1989);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,ed.,Cold Springs Harbor Laboratory,New York (1992),DNA Cloning,D.N.Glover ed.,Volumes I and II(1985);Oligonucleotide Synthesis,M.J.Gait ed.,(1984);Mullis et al.米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization,B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1984);Transcription And Translation,B.D.Hames &
S.J.Higgins eds.(1984);Culture Of Animal Cells,R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,(1987);Immobilized Cells And Enzymes,IRL Press,(1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);the treatise,Methods In Enzymology,Academic Press,Inc.,N.Y.;Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells,J.H.Miller and M.P.Calos eds.,Cold Spring Harbor Laboratory(1987);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology,Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London(1987);Handbook
Of Experimental Immunology,Volumes I-IV,D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,(1986);Manipulating the Mouse Embryo,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1986);及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)を参照されたい。
【0163】
抗体工学の一般的原理は、Antibody Engineering,2nd edition,C.A.K.Borrebaeck,Ed.,Oxford Univ.Press(1995)に記載されている。タンパク質工学の一般的原理は、Protein Engineering,A Practical Approach,Rickwood,D.,et al.,Eds.,IRL Press at Oxford Univ.Press,Oxford,Eng.(1995)に記載されている。抗体及び抗体-ハプテン結合の一般的原理は:Nisonoff,A.,Molecular Immunology,2nd ed.,Sinauer Associates,Sunderland,MA(1984);及びSteward,M.W.,Antibodies,Their Structure and Function,Chapman and Hall,New York,NY(1984)に記載されている。更に、当該技術分野で公知であって詳細に説明されていない免疫学の標準法は、一般的には、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York;Stites et al.(eds),Basic
and Clinical-Immunology(8th ed.),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994)and Mishell and Shiigi(eds),Selected Methods in Cellular Immunology,W.H.Freeman and Co.,New York(1980)にしたがう。
【0164】
免疫学の一般的原理を記載している標準的な文献としては、Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,New York;Klein,J.,Immunology:The Science of Self-Nonself Discrimination,John Wiley
& Sons,New York(1982);Kennett,R.,et al.,eds.,Monoclonal Antibodies,Hybridoma:A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York(1980);Campbell,A.,“Monoclonal Antibody Technology”in Burden,R.,et al.,eds.,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol.13,Elsevere,Amsterdam(1984),Kuby Immunology 4th ed.Ed.Richard A.Goldsby,Thomas J.Kindt and Barbara A.Osborne,H.Freemand & Co.(2000);Roitt,I.,Brostoff,J.and Male D.,Immunology 6th ed.London:Mosby(2001);Abbas A.,Abul,A.and Lichtman,A.,Cellular and Molecular Immunology Ed.5,Elsevier Health Sciences Division(2005);Kontermann
and Dubel,Antibody Engineering,Springer Verlan(2001);Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Press(2001);Lewin,Genes VIII,Prentice Hall(2003);Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988);Dieffenbach and Dveksler,PCR Primer Cold Spring Harbor Press(2003)が挙げられる。
【0165】
上記の文献、ならびに本明細書に記載の文献のすべては、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例0166】
以下の実施例では、低密度バッチN-1、その後の低シードフェドバッチ生産による従来の細胞培養プロセスと比較して、高シードフェドバッチ生産と連結された高密度灌流N-1技術の使用は、タンパク質回収力価を増加させ、生産能力を最大にできることを示すために、3つの異なる組換えタンパク質を生産する3つの異なるCHO細胞株を使用している。
【0167】
高シード生産は、より短期間で同じかまたはより高い回収力価を可能にするので、生産量及び生産能力を向上させた。更に、生産量の増加は、目的の我々のタンパク質の3種すべてについて、望ましい生産物品質属性をもたらした。灌流N-1/高シードフェドバッチ生産の組み合わせによって提供されるプロセス増強は、低シードフェドバッチ生産の生産物品質に匹敵する生産物品質を得ることができるか、または、低シードの生産物品質とは異なる優れた生産物品質をもたらすことができる。
【0168】
実施例1
細胞株及び培養法
細胞株及び培地
3種の異なる組換えタンパク質生産物を生産する3種の異なるCHO細胞株をこれらの実験で使用した。細胞株A及びBはモノクローナル抗体を生産し、細胞株CはFc融合タンパク質を生産する。本研究で使用された既知組成の基本培地及び流加培地は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるHuang et al.,“Maximizing productivity of CHO cell-based fed-batch culture using chemically defined media conditions and typical manufacturing equipment.” Biotechnology Progress 2010,26,(5),1400-10で説明されているものであった。
【0169】
シード培養
3種すべての細胞株を解凍し、前述のようにして増殖させた(参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、Huang et al.,前掲書、及びKshirsagar et al.,“Controlling trisulfide modification in recombinant monoclonal antibody
produced in fed-batch cell culture.”Biotechnology and Bioengineering 2012,109,(10),2523-32)。細胞は、36℃及び5%COの培養器設定で1x濃縮基本培地を使用して、3~4日毎に1Lまたは3Lの振盪フラスコ(Corning、ニューヨーク州)で継代した。
【0170】
次いで、振盪フラスコからの細胞を使用して、生産用バイオリアクターに先行する培養段階のための従来のN-1モードまたは灌流N-1モードでFinesse DeltaV(商標)コントローラ(カリフォルニア州サンノゼ)を備えているベンチスケール5-LガラスApplikon(登録商標)バイオリアクター(カリフォルニア州フォスターシティー)に接種した。両方のシードトレインバイオリアクターモードに関して、温度を36℃に調節し、pHを、1M炭酸ナトリウム(バッチモード)または0.5M水酸化ナトリウム(灌流モード)及びCOスパージングを用いて6.9~7.3に調整し、そして撹拌を200回転/分~400回転/分で変化させた。
【0171】
「従来の」バッチN-1(対照培養)のために、1x濃縮基本培地を使用した。流加は無く、pH調整のための塩基の添加のみだった。溶解酸素は、散布している空気及び酸素を使用して、30%で制御した。N-1バイオリアクターは、2.5Lの作業体積を有し、培養期間は3日であった。N-1段階の終了後、細胞を、0.4×10vc/mLまたは1×10vc/mLの標的播種密度で、従来の低シードフェドバッチ生産用バイオリアクターに分配した。
【0172】
灌流N-1のために、1x及び2x濃縮基本培地を、細胞株及び用途に応じて使用した。本発明者は、タンパク質生産物ではなく細胞を保持するために、0.2μmのフィルターを用いる交互接線流(ATF4(商標)、Refine Technology、ニュージャージー州パインブルック)灌流技術を使用した。灌流培地速度は、細胞株及び培地に応じて、0.05~0.12nL細胞-1-1の細胞特異的灌流量(CSPR)で変化させた。ATF交代速度は1.0~2.5L/分で変化させた。ATFフィルター回収率に等しい体積灌流流量は、バイオキャパシタンスプローブ(Aber,Aberystwyth,UK;参照によってその全体が本明細書に組み込まれるDowd et al.,“Optimization and control of perfusion
cultures using a viable cell probe and cell specific perfusion rates.”Cytotechnology 2003,42,(1),35-45に記載されている)によって、自動制御した。
【0173】
Sartorius Signum(登録商標)スケールによる重量に基づくフィードバック制御を使用して、灌流N-1段階の期間全体にわたって4Lの総作業体積を維持するための新鮮な灌流培地を反応器に送達した。溶存酸素は、ATFユニット内での滞留時間を補償するために空気及び酸素スパージングを使用して50%に制御した。灌流N-1培養期間は5または7日であった。灌流N-1段階の終了後に、細胞を、高シードフェドバッチ生産用バイオリアクターに分配した。
【0174】
フェドバッチ生産培養法
また、フェドバッチ生産用バイオリアクターは、2.5Lの初期作業体積を有する5LのApplikonバイオリアクター中でも実行された。すべての細胞株のためのすべてのフェドバッチ生産用バイオリアクターは、同じ1x濃縮の基本培地及び流加培地を使用した。流加培地の添加は、低シードプロセスでは2日目または3日目で開始し、高シードプロセスでは0日目で開始した。飼料は、24時間毎に投与し;供給体積は、対応するプロセスの生細胞の積分(IVC)に比例した。
【0175】
細胞株A及びBに関して、温度を35℃に調節し、pHを、1M炭酸ナトリウム及びCOスパージングを用いて6.9~7.3に調整し、そして撹拌を300回転/分~400回転/分で変化させた。低シード培養期間は17日であり、高シード培養期間は12日であった。細胞株Aのための高シード生産用バイオリアクターに、10×10vc/mLで播種した;対応する低シード生産用バイオリアクターの播種密度の25倍であった。
【0176】
細胞株Cに関して、低シードプロセスは、温度を35℃に調節した6日間、続いて温度を30℃に調節した8日間から成っていた。高シード細胞株Cプロセスは10×10vc/mLで接種した;対応する低シードプロセスの播種密度の10倍であった。高シードプロセスは12日間実行し、温度は0日目から30℃に調節した。高シード及び低シードの両方のpHを、1M炭酸ナトリウム及びCOスパージングを用いて6.9~7.3に調整し、撹拌を200回転/分~300回転/分で変化させた。
【0177】
オフライン分析法
日々のバイオリアクターサンプリングを実施して、NOVA Bioprofile(登録商標)Flexバイオセンサー(NOVA Biomedical,マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して、代謝パラメーター、例えばグルタミン、グルタミン酸塩、乳酸塩、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、及びカルシウムを測定した。生細胞密度(VCD)及び生存率は、自動Cedex Cell Counter(Innovatis AG、独逸国)によるトリパンブルー排除を使用して測定した。pH及びpCOは、NOVA pHOX Analyzer(NOVA Biomedical、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して測定した。上清サンプルは、滅菌ろ過し、更なる力価及び生産物品質分析のために2~8℃で保存した。IVCは、生細胞密度曲線の下の面積領域から決定し、所望の時間間隔にわたる台形近似の合計を用いて推定する。
【0178】
タンパク質濃度及び生産物品質の分析
細胞株A、B及びCに関するタンパク質濃度は、紫外線検出器及びタンパク質Gアフィニティーカラム(Applied Biosystems、カリフォルニア州)を有するHPLCシステム(Waters、マサチューセッツ州)を使用して測定した。タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを使用して回収細胞培養液について小規模精製を行い、そして対応する生産物品質分析をタンパク質A溶出液について行った。細胞株A及びBによって生産される抗体に関して、タンパク質A溶出液における主なモノマーピークの割合を、非還元性不純物プロファイリング条件下で、LabChip GXII(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して、測定した。イメージングキャピラリー等電点電気泳動法(ICIEF)を使用して抗体電荷不均一性を測定した。親水性相互作用超高性能液体クロマトグラフィー(HILIC-UPLC)を使用して抗体N-グリカンプロフィールを測定した。
【0179】
細胞株Cによって生産されるFc融合タンパク質に関して、HPLC疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を、タンパク質A溶出液に対して行って、組換えタンパク質の活性及び非活性レベルを定量化した。
【0180】
実施例2
細胞株A:N-1灌流最適化
細胞株Aを、灌流N-1最適化のためのモデル系として使用した。灌流N-1の第1反復において、本発明者は、1x濃縮の既知組成基本培地を使用して7日間N-1灌流培養を行った。細胞特異的灌流量(CSPR)は0.1nL細胞-1-1であった。細胞は指数関数的に60×10vc/mLを超えて増殖し、高い生存率を維持した(図1A)。しかしながら、最初の灌流N-1プロセスは、pCOの高蓄積及び灌流培地の高消費に起因して最適以下であった(図1C,D)。
【0181】
本発明者は、最初に、CSPRを低下させることによって灌流される灌流培地の体積を低下させようとした。CSPRを大きく低下させると、培地の消費が低下するが、増殖が阻害されることになり、pCO蓄積は解消されなかった。更に、0.05nL細胞-1-1のCSPRは、最適以下の(弱い)増殖による培養の間、0.07まで増加させなければならなかった。
【0182】
1x濃縮培地を使用している0.05のnL細胞-1-1 CSPRで最適以下の結果を観察した後に、我々の基本培地の2x濃縮バージョンを使用した。より高いN-1播種密度(元の1×10vc/mLの播種密度に代えて2×10vc/mL)と組み合わせたより濃縮された培地により、7日から5日へと培養期間を短縮することができ、そして40x10vc/mLを超える指数増殖のためにより低い0.05nL細胞-1-1CSPRの使用が可能になった。より高度にN-1に播種するために、本発明者は、前の接種物継代の各々の開始播種密度を徐々に増加させた。更に、より短い培養期間により、pCOは100mmHg未満に保たれ、そして2x濃縮培地により、灌流培地のバイオリアクター体積の消費は3未満となった(図1)。灌流N-1段階の5日目及び最終日に、本発明者は、細胞を、高シードフェドバッチ生産用バイオリアクター中に分配した。
【0183】
実施例3
細胞株A:高シードフェドバッチ生産
高シード(10×10vc/mL)フェドバッチ生産培養物を、上記のように既知組成流加培地を使用して、毎日供給した。本発明者は、0日目の高シードプロセスと5日目の低シードプロセスとを合わせると、高シード培養の性能は、VCD、生存率、グルコース消費、乳酸塩生成、及びタンパク質生産において低シード培養の性能を辿る(図2)。高シードプロセスは、低シードプロセスの17日目と比較して、ちょうど12日目で、低シードプロセスと同じ回収力価に到達することができ、抗体を5g/L生成した。更に、タンパク質凝集及び電荷不均一性は、高シード培養条件によって影響を受けなかった(後述の表1を参照されたい)。
【0184】
実施例4
細胞株B:高シードフェドバッチ生産
2x濃縮培地、より高度のN-1播種密度、及びより短い培養期間を用いる細胞株Aの最適化された灌流N-1プロセスを細胞株Bにうまく適用した。灌流N-1段階での増殖は、指数関数的であり、そして細胞株Aのための最適化プロセスのそれに似ており、この場合もまた、5日目で約40×10vc/mLまで増殖した。5日目のN-1段階の終了後に、細胞を、高シード(10×10vc/mL)フェドバッチ生産用バイオリアクター培養へと分配した。細胞株Bに関して、より高度の播種密度は、はるかに高度の増殖をもたらす(図3A)。細胞は増殖に基づいて供給されたので、全体のグルコース消費及び乳酸塩生成は、これもまた増殖に基づいて供給された低シード培養のそれと十分に傾向が同様であった(図3B、C)。細胞株Aのように、細胞株Bのための高シードプロセスは、5日足らずで同量のタンパク質を生成した(図3D)。更に、これらの効率の増加は、凝集、電荷不均一性、及び高シード回収材料のグリコシル化が低シード回収材料のそれと類似していたので、生産物品質を犠牲にして得られたものではなかった(表1)。
【表1】
【0185】
表1では、100%は細胞株A及びBのための低シード生産プロセスに関する平均を表しており、そして高シード生産プロセスに関する値は100%と比較して表した。すべてのデータは、低シードN-グリカンデータ以外は、N=2であった。すべての属性は、タンパク質A溶出液を使用して得た。LabChip GXIIタンパク質プロファイリングで測定された純度、ICIEFで測定された電荷不均一性、及びHILIC-UPLCで測定されたN結合型グリコシル化は、細胞株A及びBに関する低シード回収材料と高シード回収材料との間に大きな違いはない。
【0186】
実施例5
生産能力増大への影響
N-1シードトレイン段階を長くし、そしてより高度に生産用バイオリアクターに播種することによって、生産段階を短縮することができ、そしてシードトレインと生産用バイオリアクター占有率との間のバランスをより多くとることができる。これにより、より少ない時間で、重量基準で同様なまたはより多くの生産物生産量が提供される。これにより、生産用バイオリアクターがボトルネックとなることを解消し、そして生産運転のために割り当てられる時間の中でより多くの運転が可能になるので、同じ制約下でより高度なレベルのタンパク質生産が可能になる。
【0187】
灌流N-1プロセスを実装することによって得られるボトルネック解消の程度は、シード及び生産段階の期間ならびに設備レイアウトに応じて決まる。例えば、1つのシードトレイン(S)容器が1つの生産(P)容器に供給する場合(P/S比=1)、生産容器は、5日灌流N-1/12日フェドバッチ生産シナリオのボトルネックのままであろう(図4A)。1つのシードトレイン容器が2つの生産容器に供給する場合(P/S比=2)、ボトルネックはN-1段階にシフトする(図4B)。P/S比が3まで増加すると、ボトルネックは、シードトレインへますますシフトし、灌流N-1シード培養へ転換する利益は減少する(図4C)。シードトレイン1つ当たりの生産容器の数の関数として生産量をプロットすると、シード培養がバッチまたは灌流であるか否かにかかわらず、シードトレイン1つ当たり複数の生産容器を有することによって得られる利益はプラトーに達することが分かる(図4D)。従来の短いバッチシードトレインでも、3を超えるP/S比でボトルネックになる。バッチの数を最大にするために、3日N-1/17日Nプロセス(低シード)のための最適P/S比は3であり、5日N-1/12日N(高シード)のための最適比は2である。
【0188】
図4の設備レイアウトモデルに基づいて、細胞株A及びBのための灌流N-1/高シードフェドバッチへのシフトの結果としての生産量の増加を算出することができる。Biogen Idec生産設備はP/S=1またはP/S=2であるので、N-1を延長し且つ生産段階を短縮するために灌流N-1を実装して同じ時間でより多くのバッチを得ることができる。これらの仮定と、細胞株A及びBに関する高シードフェドバッチデータとに基づいて、選択する設備に応じて、30%を超えて生産量を潜在的に増加させることができる(表2)。能力のより大きな相対的変化はP/S=1設備を使用して得られ、一方、生産されるタンパク質のより大きな絶対質量はP/S=2を使用して得られる。
【表2】
【0189】
表2の計算のために立てた仮定:生産用バイオリアクター1つ当たり1つのシードトレイン、生産運転期間は1年、1年間の生産運転スロット当たりの最大数のバッチ、バイオリアクター1つ当たりの所要時間2日。
【0190】
実施例6
細胞株C:N-1灌流最適化
灌流N-1は細胞株Cでも実施した。最適化された灌流N-1プロセスは、細胞株Cに関しては、増殖及び生存率が低かったので、効果的に使用することができなかった(図5)。したがって、0.10~0.12nL細胞-1-1のより高いCSPRの灌流培地として、1x濃縮基本培地の元の配合に戻した。これらのパラメーターを使用すると、細胞株C灌流N-1段階は、高い生存率で、6日目で35x10vc/mL超に達した(図5)。6日目に、灌流N-1培養を10×10vc/mLで高シードフェドバッチ生産用バイオリアクターへと分配した。
【0191】
実施例7
細胞株C:高シードフェドバッチ生産及び生産物品質への影響
細胞株Cによって生産される目的のFc融合タンパク質は、ミスフォールディング する傾向があり、それにより不活性型のタンパク質が蓄積することになる。より低い温度ではタンパク質の折畳みにとって熱力学的により有利であるので(Onuchic,J.N.;Luthey-Schulten,Z.;Wolynes,P.G.,Theory
of protein folding:the energy landscape
perspective.Annual review of physical chemistry 1997,48,545-600で考察されている)、ミスフォールディングを軽減するための通常のタンパク質発現技術では、培養温度を低下させる(Rodriguez et al.,“Enhanced production of monomeric interferon-beta by CHO cells through the control of culture conditions.” Biotechnology Progress 2005,21,(1),22-30;及びGasser et al.,“Protein folding and conformational stress in microbial cells
producing recombinant proteins: a host comparative overview.”Microbial Cell Factories 2008,7,11で考察されており、前記の両文献は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。したがって、低シード細胞株Cプロセスは、培養の間、35℃~30℃の温度変化を用いる。温度変化日における低シードプロセスのVCDは、高シードプロセスの播種密度のそれとほぼ同じVCDであるので、高シードプロセスは、0日目において30℃培養温度で直接接種した。これにより、異なる増殖、代謝、及びタンパク質生産プロフィールがもたらされた(図6)。
【0192】
本発明者は、30℃で細胞株C高シードプロセスを直接培養することによって、低シードプロセスのそれと比較して、より大きな割合で活性種を生産した(以下の表3参照)。0.5μmの中空糸フィルターを使用することにより、より高温の36℃の灌流N-1段階の間に、N-1容器から灌流することができた。したがって、その灌流N-1が高シードフェドバッチ生産へと分配されるとき、不活性種のキャリオーバーはほとんどなかった。次いで、高シード培養は、細胞集団を殺すことなく0日目に開始して、より熱力学的に好ましい温度30℃で、フェドバッチ生産を始めることができた。予想されるように、より低い生産温度では、不活性種の量は低下し、活性種のレベルは増加した。
【表3】
表3について、HIC-HPLCを使用して、活性タンパク質と不活性タンパク質の相対的な割合を測定した。すべてのデータはN=1であった。2つの種を合計すると100%である。活性力価は、活性種から成る総力価の割合と定義される。30℃で細胞株Cを直接に播種すると、活性種の生産が高まり、それに対応して、活性力価の量が増加した。また、低い温度では、不活性種のレベルも低下した。
【0193】
本発明を一般的に説明したが、更なる理解は、本明細書で提供される実施例を参照することにより得ることができる。これらの実施例は、説明することのみを目的とするものであって、限定することを意図していない。
【0194】
本明細書に記載される様々な態様、実施形態、及びオプションのすべては、任意の及びすべてのバリエーションで組み込むことができる。
【0195】
個々の刊行物または特許出願が参照により組み込まれるように具体的且つ個別的に示されるかのごとく、本明細書記載のすべての文書、論文、刊行物、及び特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】