(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023017
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/02 20060101AFI20230209BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20230209BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
E03C1/02
A47K3/28
E03C1/042 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128163
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 賢治
【テーマコード(参考)】
2D060
2D132
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BB09
2D060BC12
2D060BC23
2D060BE02
2D060BE15
2D060BF01
2D132FA14
2D132FB02
2D132FC01
2D132FC04
2D132FD01
2D132FH13
2D132FJ00
2D132FK01
(57)【要約】
【課題】残水を排出する。
【解決手段】吐水装置Aは、吐水部22を有するボディシャワー20と、吐水部22に水を供給する給水路68と、給水路68のうち吐水部22よりも下方の位置に配置され、給水路68内における給水圧の低下によって開弁する残水排出弁70とを備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水部を有するボディシャワーと、
前記吐水部に水を供給する給水路と、
前記給水路のうち前記吐水部よりも下方の位置に配置され、前記給水路内における給水圧の低下によって開弁する残水排出弁とを備えている吐水装置。
【請求項2】
前記給水路が、一対の前記ボディシャワーに個別に連通する2本の分岐配管を有し、
1つの前記残水排出弁が、前記2本の分岐配管の合流位置に配置されている請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
可撓性のシャワーホースを有するハンドシャワーと、
前記ボディシャワーから吐水するモードと、前記ハンドシャワーから吐水するモードとを切り替えるシャワー切替弁とを備え、
前記給水路は、前記シャワー切替弁から前記吐水部に至る流路であり、
前記残水排出弁が、前記給水路のうち最も低い位置に配置されている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記ボディシャワーを回転可能に支持する筐体を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記ボディシャワーが上下方向へ回転する請求項4に記載の吐水装置。
【請求項6】
前記残水排出弁が、前記筐体の内部、及び前記ボディシャワーの内部のいずれか一方に配置されている請求項4及び請求項5のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項7】
一対の前記ボディシャワーが、前記筐体の左右両外側縁部に支持され、
前記残水排出弁が前記筐体の内部に配置されている請求項4から請求項5のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項8】
前記ボディシャワーが、前記筐体の外側縁部に取り付けられている請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項9】
前記筐体は、前記残水排出弁を収容する請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項10】
前記筐体の底面のうち前記筐体の外側縁部の近傍に開口する排水口を備えている請求項9に記載の吐水装置。
【請求項11】
前記筐体の底面に形成され、前記筐体の背面に開口する排水口を備え、
前記筐体は、浴室の壁面に対して前記背面を重ねた状態で固定されるようになっている請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項12】
前記筐体の底板部に、前記残水排出弁から排出された残水を傾斜面によって排水口へ誘導する誘導路が設けられている請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項13】
前記排水口が、前記筐体の底面のうち前記筐体の幅方向における一部のみを開口させ、且つ前記筐体の奥行き方向における一部のみを開口させた形態である請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の吐水装置。
【請求項14】
前記筐体の前記底面は、前記排水口の開口縁から下方へ突出したリブを有している請求項13に記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、装置本体の上端部に混合栓を配置し、装置本体の左右両側縁部に、アーム型シャワーの上端部を回転可能に取り付けたシャワー装置が開示されている。混合栓は、温水と冷水とを混合可能な水栓である。本明細書においては、温水と冷水とを総称して水という。水は、混合栓からアーム型シャワーに供給され、ノズルから吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アーム型シャワーの使用後は、アーム型シャワー内の残水がノズルから排出される。ノズルは、アーム型シャワーの最下端よりも上方に位置するので、少量の水がアーム型シャワー内に残留する。アーム型シャワー内の水は、時間の経過とともに冷えていくため、次回の使用開始時に冷水がノズルから吐出する。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、残水を排出することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の吐水装置は、吐水部を有するボディシャワーと、前記吐水部に水を供給する給水路と、前記給水路のうち前記吐水部よりも下方の位置に配置され、前記給水路内における給水圧の低下によって開弁する残水排出弁とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】吐水装置の内部構造をあらわす部分拡大斜視図
【
図3】ハンドルが初期位置にある状態のシャワー切替弁の正断面図
【
図4】ハンドルが初期位置にある状態のシャワー切替弁の側断面図
【
図5】ハンドルが操作位置にある状態のシャワー切替弁の正断面図
【
図6】ハンドルが操作位置にある状態のシャワー切替弁の側断面図
【
図7】残水排出弁の構造をあらわす部分拡大正断面図
【
図11】ハンドルが初期位置にあるときの連動部材の重心位置をあらわす側面図
【
図12】ハンドルが操作位置にあるときの連動部材の重心位置をあらわす側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示を具体化した実施形態1の吐水装置Aは、
図9に示すように、吐水装置Aの背面Rを浴室の壁面Wに重ね合わせるように配置され、壁面Wに取り付けた状態で使用される。
図9は、吐水装置Aの側縁部を壁面Wと直角に切断した断面図であり、後述する誘導路80と排水口83の構造をあらわす。吐水装置Aの方向に関しては、吐水装置Aを壁面Wに取り付けた状態で定義する。前後の方向は、壁面Wと直交する方向であり、吐水装置Aの正面F側(
図1,2,4,6,8~12におけるX軸の正方向側)を前方、吐水装置Aの背面R側を後方と定義する。前後方向と奥行き方向を同義で用いる。上下の方向については、浴室の天井側(
図1~12におけるZ軸の正方向側)を上方、浴室の床面側を下方と定義する。左右の方向については、浴室内で使用者が吐水装置Aの正面Fと正対したときに、使用者の右側(
図1~3,5,7,8,10におけるY軸の正方向側)を右方、使用者の左側を左方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。
【0009】
<吐水装置Aの概要>
図1に示すように、吐水装置Aは、装置本体10と、1つのハンドシャワー15と、左右一対のボディシャワー20とを備えている。装置本体10は、筐体11と、シャワー切替弁30と、ハンドル52と、残水排出弁70とを有する。筐体11は、全体として直方形をなす。筐体11の正面F視形状は、左右方向の幅寸法に対して上下方向の高さ寸法が大きい長方形をなす。筐体11の前後方向の奥行き寸法は、幅寸法よりも小さい。
【0010】
図2に示すように、筐体11の底面12には水栓接続部13が設けられている。水栓接続部13は、筐体11の底面12における左右方向中央よりも左方に配置されている。水栓接続部13には、水栓本体(図示省略)から延びた給水ホース(図示省略)が接続される。水栓本体は、水の流量調整機能部と、水の温度調整機能部と、蛇口と、水の流路切替弁とを有する。流路切替弁は、蛇口からの吐水モードと、吐水装置Aからの吐水モードとを切り替える。
【0011】
図2に示すように、筐体11の底面12にはシャワー接続部14が設けられている。シャワー接続部14は、筐体11の底面12における左右方向中央よりも右方に配置されている。シャワー接続部14には、ハンドシャワー15のシャワーホース16(
図1参照)の上流端が接続されている。シャワーホース16の下流端にはシャワーヘッド17が接続されている。壁面Wには、シャワーヘッド17を保持するためのヘッド保持部18が取り付けられている。
【0012】
左右一対のボディシャワー20は、左右一対のアーム21(
図1参照)と、左右一対のバランサー26(
図2参照)と、左右一対の制動機構(図示省略)とを有する。アーム21には、複数の吐水部22が設けられている。複数の吐水部22は、アーム21の長さ方向に沿って間隔を空けて配置されている。アーム21内には、アーム21の基端部23から先端部24に亘って通水路(図示省略)が形成されている。複数の吐水部22は、通水路と連通している。
【0013】
アーム21の基端部23は、筐体11の外側面における下端部に支持されている。アーム21は、基端部23を貫通する左右方向の仮想軸25を中心として、
図1に想像線で示す格納位置と、
図1に実線で示す使用位置との間で上下方向へ回転可能である。格納位置にあるアーム21は、アーム21の先端部24を真上に向けた起立姿勢をとり、筐体11の外側面に沿うように配置される。使用位置にあるアーム21は、アーム21を基端部23から斜め上前方へ突出させた姿勢をとる。
【0014】
バランサー26は、仮想軸25を包囲するように配置されたトーションバネからなり、アーム21に回転方向の弾力を付与する。バランサー26の弾性的な回転力によって、アーム21の自重に起因する下向きのモーメントが軽減されている。アーム21を使用位置から格納位置へ変位させるときには、バランサー26の弾性力によって、アーム21に付与する操作力が軽減される。制動機構は、皿バネを有する。制動機構は、皿バネの弾力に起因する摩擦抵抗によって、アーム21の回転動作を制する。制動機構の制動力によって、アーム21を格納位置と使用位置との間の任意の位置に保持することができる。
【0015】
<シャワー切替弁30>
シャワー切替弁30は、上下方向においては筐体11内の下端部に配置され、左右方向においては筐体11の中央部に配置されている。
図2に示すように、筐体11の底板部19の上面には、箱形のブラケット31が固定されている。シャワー切替弁30は、ブラケット31の上面に載置した状態で固定されている。
【0016】
図3~6に示すように、シャワー切替弁30は、軸線を上下方向に向けた筒状の弁箱32と、弁体38と、上下方向に細長い弁棒39とを有する。弁箱32は複数の部品を組み付けて構成されている。弁箱32内には上下方向に延びる弁通路33が形成されている。
図3は、後述するハンドル52が初期位置にある状態において、シャワー切替弁30を壁面Wと平行に切断し、吐水装置Aの正面F側から見た断面図である。
図4は、ハンドル52が初期位置にある状態において、シャワー切替弁30を壁面Wと直角な鉛直面に沿って切断した断面図である。
図5は、ハンドル52が操作位置にある状態において、シャワー切替弁30を壁面Wと平行に切断し、吐水装置Aの正面F側から見た断面図である。
図6は、ハンドル52が操作位置にある状態において、シャワー切替弁30を壁面Wと直角な鉛直面に沿って切断した断面図である。
【0017】
図3,5に示すように、弁箱32には、弁通路33と連通した流入口34が形成されている。流入口34には、水栓接続部13から延びたシャワー用給水管35の下流端が接続されている。弁通路33内には、流入口34よりも上方に位置する上部弁座36と、流入口34よりも下方に位置する下部弁座37とが設けられている。
【0018】
弁体38は、弁通路33内に収容されている。弁体38は、上部弁座36と下部弁座37との間で上下動する。弁棒39は弁体38と一体となって上下動する。弁棒39の下端部は、弁箱32の下方へ延出している。
図4,6に示すように、弁棒39の下端部には、連結部材40がロックナット41によって固定されている。連結部材40には、前後方向に貫通した連結孔42が形成されている。連結部材40は、弁体38側の連結部として機能する。
【0019】
図3,5に示すように、弁箱32には、弁通路33のうち上部弁座36よりも下流側の通路と連通したハンドシャワー用流出口43が形成されている。ハンドシャワー用流出口43には、ハンドシャワー用配管44の上流端が接続されている。ハンドシャワー用配管44の下流端はシャワー接続部14に接続されている。
【0020】
弁箱32には、弁通路33のうち下部弁座37よりも下流側の流路と連通したボディシャワー用流出口45が形成されている。ボディシャワー用流出口45には、屈曲形状のボディシャワー用配管46の上流端が接続されている。
図2に示すように、ボディシャワー用配管46の上流端側の部位は、平面視形状がU字形をなす上部配管47によって構成されている。ボディシャワー用配管46の下流側の部位は、上部配管47の下流端から下方へ延びる下部配管48によって構成されている。
【0021】
図2,7に示すように、ボディシャワー用配管46の下流端には、分岐部49が設けられている。分岐部49は、下部配管48の下方に位置し、筐体11内における下端部に配置されている。分岐部49には、左右一対の分岐配管50の上流端が接続されている。一方の分岐配管50は、分岐部49から右方へ水平に延びている。他方の分岐配管50は、分岐部49から左方へ水平に延びている。各分岐配管50の下流端は、各アーム21の基端部23に接続され、アーム21内の通水路の上流端に連通している。通水路の上流端は、ボディシャワー20が使用位置と格納位置のいずれに位置していても、通水路の最下端に位置する。吐水部22は、通水路の上流端と下流端の間に間隔を空けて配置されている。
【0022】
弁体38が上部弁座36に当接した状態では、流入口34とボディシャワー用流出口45とが連通し、シャワー切替弁30からボディシャワー20への給水が可能となる。この状態を、シャワー切替弁30におけるボディシャワー20への給水モードと定義する。弁体38が下部弁座37に当接した状態では、流入口34とハンドシャワー用流出口43とが連通し、シャワー切替弁30からハンドシャワー15への給水が可能となる。この状態を、シャワー切替弁30におけるハンドシャワー15への給水モードと定義する。弁体38が上下動することによって、シャワー切替弁30が、ボディシャワー20への給水モードとハンドシャワー15への給水モードとの間で切り替わる。
【0023】
<ハンドル52>
図10に示すように、ハンドル52は、回転軸53と、ハンドル本体54と、支持軸62と、ウエイト63と、連結バー64とを備えている。回転軸53は、軸線を左右方向に向けた状態でブラケット31に支持されている。ハンドル52は、回転軸53を支点として、初期位置(
図3,4,11参照)と操作位置(
図5,6,12参照)との間で回転可能である。初期位置と操作位置との間の回転角度は、約45°である。以下のハンドル52の説明における方向については、ハンドル52が初期位置にある状態を基準とする。
【0024】
ハンドル本体54は、ベース部55と、1つの操作部56と、一対の突部59とを有する合成樹脂製の単一部品である。ハンドル52を側方から見た側面視において、ベース部55は、下方に向かって前後寸法が小さくなる逆三角形をなす。操作部56は、ベース部55から斜め下前方へ突出した基部57と、基部57から前方へ水平に延出した指掛け部58とを有する。操作部56は、全体としてベース部55から前方へ突出した形状である。ハンドル52が初期位置と操作位置のいずれの位置にあっても、操作部56は、筐体11の底面12よりも下方に位置している。
【0025】
一対の突部59は、左右方向に間隔を空けてベース部55の上面から上方へ突出している。左右両突部59の前端部には、突部59を左右方向に貫通する軸受孔60が形成されている。左右両軸受孔60には、回転軸53が貫通している。左右両突部59の後端部には、軸受孔60と概ね同じ高さにおいて突部59を左右方向に貫通する支持孔61が形成されている。左右両支持孔61には、支持軸62が貫通している。突部の上端部、即ち軸受孔60及び支持孔61よりも上方の位置には、金属製のウエイト63が埋設されている。前後方向において、ウエイト63は回転軸53よりも後方に配置されている。回転軸53と支持軸62とウエイト63は、操作部56よりも上方に位置する。
【0026】
左右両突部59の間には、前後方向に細長い連結バー64が配置されている。連結バー64の前後両端部には、連結バー64を左右方向に貫通する一対の貫通孔65が形成されている。前側の貫通孔65には回転軸53が貫通している。後側の貫通孔65には支持軸62が貫通している。連結バー64は、ハンドル52側の連結部として機能する。
【0027】
ハンドル52が初期位置から操作位置へ回転すると、操作部56が、ベース部55から前方へ突出する形態から、下方へ突出する形態に変位する。連結バー64は、回転軸53を中心として上動し、回転軸53から斜め上後方へ突出する形態になる。ウエイト63は、前後方向において初期位置よりも回転軸53に近い位置へ変位する。
【0028】
ハンドル52と弁棒39の下端部は、連結部材40と連結バー64を介すことによって連結されている。連結状態では、連結バー64が連結部材40の連結孔42を前後方向に貫通する。連結バー64の上面が連結孔42の上面に当たり、連結バー64が連結部材40を下から支持する。連結部材40と連結バー64は、上下方向への相対変位が可能であるとともに、前後方向への相対変位が可能である。弁体38と弁棒39と連結部材40の自重は、連結バー64を介してハンドル52が支えている。連結部材40と連結バー64が当たる部位は、回転軸53よりも後方である。
【0029】
弁体38と弁棒39と連結部材40とハンドル52とによって、連動部材66が構成されている。シャワー切替弁30がボディシャワー20への給水モードとハンドシャワー15への給水モードとに切り替わるときに、連動部材66は一体的に動く。連動部材66の一体的な動きは、連動部材66が連結された状態を保った状態で、弁体38、弁棒39及び連結部材40に対して、ハンドル52が相対変位する動きを意味する。連動部材66が一体的に動くとき、ハンドル52は回転軸53を支点として回転し、弁体38、弁棒39及び連結部材40は上下方向へ移動する。
【0030】
ハンドル52が初期位置から操作位置へ回転すると、弁体38が上昇して上部弁座36に当接し、下部弁座37が開放されるので、シャワー切替弁30が、ハンドシャワー15への給水モードからボディシャワー20への給水モードに切り替わる。ハンドル52が操作位置から初期位置へ回転すると、弁体38が下降して下部弁座37に当接し、上部弁座36が開放されるので、シャワー切替弁30が、ボディシャワー20への給水モードからハンドシャワー15への給水モードに切り替わる。
【0031】
図11に示すように、ハンドル52が初期位置にあるときに、連動部材66の重心G1は、上下方向において、回転軸53とほぼ同じ高さに位置する。初期位置における連動部材66の重心G1は、前後方向において、回転軸53と、弁体38及び弁棒39の軸線67との間に位置する。
図12に示すように、ハンドル52が操作位置にあるときに、連動部材66の重心G1は、上下方向において、回転軸53及び初期位置における重心G1よりも高い位置にある。操作位置における連動部材66の重心G1は、前後方向において、初期位置における重心G1よりも後方、即ち弁体38及び弁棒39の軸線67よりも後方に位置する。
【0032】
ハンドル52が初期位置と操作位置との間のいずれの位置にあっても、連動部材66の重心G1は回転軸53よりも後方に位置する。連動部材66の自重によるモーメント(つまり、回転トルク)によって、ハンドル52には、常に、操作部56を上方へ変位させる方向、即ち操作位置から初期位置に向かう方向の回転力が作用している。
【0033】
<残水排出弁70及び誘導路80>
残水排出弁70は、ボディシャワー20の使用後に、ボディシャワー20への給水を行うための給水路68内に残留する水を排出するための常開タイプの開閉弁である。給水路68は、シャワー切替弁30のボディシャワー用流出口45と、ボディシャワー用配管46と、分岐配管50と、アーム内の21内の通水路とによって構成されている。分岐部49と分岐配管50は、給水路68のうち最も低い位置に配置されている。残水排出弁70は、分岐部49に取り付けられ、分岐部49の下端と連通している。
【0034】
図7に示すように、残水排出弁70は、軸線を上下方向に向けたハウジング71と、弁ボディ76と、圧縮コイルバネ77とを組み付けて構成されている。
図7は、残水排出弁70を壁面Wと平行に切断し、吐水装置Aの正面F側から見た断面図である。ハウジング71は、軸線を上下方向に向けた筒状部72と、筒状部72の下方に位置する蓋部73と、筒状部72の下端部と蓋部73とを繋ぐ一対の繋ぎ部74とを有する単一部品である。筒状部72の内周には弁シート75が形成されている。弁シート75は、給水路68において最も低い位置よりも、更に低い位置に配置されている。
【0035】
弁ボディ76は、筒状部72内で上下動するようになっている。弁ボディ76が弁シート75に当接することによって、残水排出弁70が閉弁される。弁ボディ76が上方へ移動して弁シート75から離隔すると、残水排出弁70が開弁状態となる。弁ボディ76は、筒状部72内の下端部に配置した圧縮コイルバネ77によって、上方、即ち開弁方向へ付勢されている。弁ボディ76の上面は、ボディシャワー20に水を供給するための給水路68に臨んでいる。給水路68内への給水が行われると、弁ボディ76に給水路68内の給水圧が作用する。
【0036】
弁シート75の下方には、筒状部72の内部空間と筒状部72の下方空間とを連通させる排水孔78が形成されている。排水孔78は、筐体11の底板部19の上面に設けた誘導路80に臨むように開口している。誘導路80のうち残水排出弁70の下方の領域には、底板部19を上下に貫通する着脱口81が形成されている。着脱口81は、残水排出弁70の蓋部73によって閉塞されている。
【0037】
図7~9に示すように、誘導路80は、底板部19の上面に形成した隔壁部82によって区画された溝状の部位である。
図8,9に示すように、底板部19には、筐体11の底面12に開口する左右一対の排水口83が形成されている。誘導路80は、排水孔78の真下位置から、排水口83に至るまで次第に低くなるように傾斜した傾斜面84を有する。一対の排水口83は、左右方向においては、筐体11の左右両端部に配置されている。一対の排水口83は、前後方向においては、底板部19における背面R側の縁部を切り欠いた形状であり、筐体11の背面Rに開口している。底板部19を上から見た平面視において、排水口83の開口面積及び開口形状は、表面張力によって水が排水口83を塞いだ状態にならないよう設定されている。排水口83の開口の左右両縁部及び前縁部には、筐体11の底面12から下方へ壁状に突出するリブ85が形成されている。
【0038】
<吐水装置Aの使用形態>
シャワー切替弁30に水が供給されない止水状態では、弁体38に対して給水圧が作用しないので、連動部材66の自重に起因してハンドル52に作用するモーメント(回転力)によって、ハンドル52が初期位置に保持される。モーメントは、回転軸53を中心として操作部56を上昇させる方向の回転トルクを生む力である。ハンドル52を初期位置から操作位置へ回転させても、ハンドル52は初期位置に戻る。シャワー切替弁30は、ハンドシャワー15への給水モードに保持される。残水排出弁70の弁ボディ76には給水圧が作用しないので、弁ボディ76が圧縮コイルバネ77の付勢によって弁シート75から離隔し、残水排出弁70が開弁状態に保持される。
【0039】
止水状態からボディシャワー20を使用する際には、ハンドル52が初期位置にある状態のままで、水栓本体からシャワー切替弁30への給水を開始する。シャワー切替弁30に供給された水は、ハンドシャワー用配管44とシャワーホース16を経由して、シャワーヘッド17から吐水される。使用者は、シャワーヘッド17からの吐水が身体にかからないようにしながら、水の温度と流量を調整することができる。
【0040】
水の温度と流量を調整した後、ハンドシャワー15からの吐水状態を維持したままで、ハンドル52の操作部56を押し下げて、ハンドル52を初期位置から操作位置へ回転させる。ハンドル52を操作位置へ回転させると、シャワー切替弁30がボディシャワー20への給水モードに切り替わり、水が、給水路68を通ってボディシャワー20の吐水部22から吐出される。止水状態では、後述するようにボディシャワー20への給水路68内の残水が残水排出弁70によって排出されているので、ボディシャワー20への給水を開始したときに、吐水部22から残水が吐出されることはない。
【0041】
ボディシャワー20から吐水している状態では、シャワー切替弁30の弁体38が、上向きの給水圧によって上部弁座36に当接する状態に保持される。操作部56から手を離しても、ハンドル52は操作位置に保持され、シャワー切替弁30はボディシャワー20への給水モードに保持される。給水路68の途中に設けた残水排出弁70においては、弁ボディ76の上面に給水圧が作用するので、残水排出弁70は閉弁状態に保たれる。給水路68内の水は、残水排出弁70から誘導路80へ漏出することなく、ボディシャワー20へ供給される。
【0042】
ボディシャワー20からの吐水を終えるときには、水栓本体を操作してシャワー切替弁30への給水を停止する。シャワー切替弁30への給水を停止すると、シャワー切替弁30から吐水部22に至る給水路68内の給水圧と、残水排出弁70における給水圧が低下する。残水排出弁70においては、弁ボディ76が圧縮コイルバネ77の付勢によって弁シート75から離隔し、残水排出弁70が開弁する。給水路68内の水は、開弁した残水排出弁70から誘導路80へ排出される。シャワー切替弁30においては、弁体38が連動部材66の自重によって下降し、ボディシャワー20への給水モードからハンドシャワー15への給水モードに切り替わる。弁体38の下降に伴って、ハンドル52が操作位置から初期位置へ復帰する。
【0043】
ボディシャワー20を使用している状態から、ハンドシャワー15を使用する際には、操作部56を押し上げてハンドル52を操作位置から初期位置へ回転させる。ハンドル52の回転に伴って、シャワー切替弁30がハンドシャワー15への給水モードに切り替わり、ハンドシャワー15から吐水される。シャワー切替弁30からボディシャワー20に至る給水路68と残水排出弁70においては、給水圧が低下するので、残水排出弁70が開弁し、給水路68内の残水が排水孔78から誘導路80内へ排出される。
【0044】
誘導路80内に排出された残水は、誘導路80の傾斜によって左右の両排水口83に向かって流れていく。残水は排水口83から落下する。排水口83の開口縁には、壁状のリブ85が下向きに突出しているので、残水は、誘導路80の上面(傾斜面84)からリブ85の内側面を伝い、リブ85の下端縁から落下する。残水が筐体11の底面12に回り込むことはない。
【0045】
<実施形態1の吐水装置Aの効果>
吐水装置Aは、吐水部22を有するボディシャワー20と、吐水部22に水を供給する給水路68と、残水排出弁70とを備えている。ボディシャワー20は、アーム21状をなし、装置本体10の筐体11に回転可能に支持されている。残水排出弁70は、給水路68のうち吐水部22よりも下方の位置に配置されている。残水排出弁70は、給水路68内における給水圧の低下によって開弁する。
【0046】
ボディシャワー20の吐水部22からの吐水が終了して、給水路68内の給水圧が低下すると、残水排出弁70が開弁して給水路68内の残水が排出される。残水排出弁70は吐水部22よりも下方に配置されているので、吐水部22から残水排出弁70までの間の水を排出することができる。
【0047】
吐水装置Aは、可撓性のシャワーホース16を有するハンドシャワー15と、シャワー切替弁30とを備えている。シャワー切替弁30は、ボディシャワー20への給水モードと、ハンドシャワー15への給水モードとを切り替える。給水路68は、シャワー切替弁30から吐水部22に至る流路である。残水排出弁70は、給水路68のうち最も低い位置に配置されている。シャワー切替弁30と吐水部22との間における給水路68内の残水を、全て排出することができる。
【0048】
一対のボディシャワー20が、筐体11の左右両外側縁部に支持されている。残水排出弁70は、ボディシャワー20を支持する筐体11の内部に配置されている。残水排出弁70が筐体11の外部に露出しないので、意匠性が良い。残水排出弁70の数が1つだけで済む。
【0049】
給水路68は、一対のボディシャワー20に個別に連通する2本の分岐配管50を有する。1つの残水排出弁70が、2本の分岐配管50の合流位置に配置されている。この構成によれば、2本の分岐配管50内の残水を効率的に排出することができる。
【0050】
吐水装置Aは、残水排出弁70を収容する筐体11と、筐体11の底面12のうち筐体11の外側縁部の近傍に開口する排水口83とを備えている。残水排出弁70から排出された残水は、筐体11の外側縁部の近傍から落下する。残水が、筐体11の幅方向中央部に配置されている水栓本体や、筐体11の幅方向中央部に置かれている洗面器内に落下することを防止できる。
【0051】
ボディシャワー20は、筐体11の外側縁部に取り付けられている。残水排出弁70から排出された残水の落下位置と、吐水部22から排出された残水の落下位置とが、互いに近い位置関係にある。残水の落下位置が分散している場合に比べると、残水の落下状況が気になり難い。
【0052】
吐水装置Aは、残水排出弁70を収容する筐体11を備えている。筐体11は、浴室の壁面Wに対して筐体11の背面Rを重ねた状態で固定される。筐体11の底面12には、筐体11の背面Rに開口する排水口83が形成されている。残水の落下位置が壁面Wに近いので、残水の落下状況が気になり難い。
【0053】
筐体11の底板部19には、残水排出弁70から排出された残水を傾斜面84によって排水口83へ誘導する誘導路80が設けられている。残水排出弁70から排出された残水を確実に排水口83から排出させることができる。筐体11の底面12は、排水口83の開口縁から下方へ突出したリブ85を有している。リブ85によって、残水が排水口83の開口縁から筐体11の底面12へ伝い流れることを防止できる。残水は、確実に落下する。
【0054】
排水口83は、筐体11の底面12のうち筐体11の幅方向における一部のみを開口させた形態である。排水口83は、筐体11の奥行き方向における一部のみを開口させた形態である。残水の落下位置が狭小範囲に限定されるので、残水の落下状況が気になり難い。
【0055】
本実施形態1の吐水装置Aは、可撓性のシャワーホース16を有するハンドシャワー15と、回転可能に支持されたアーム21状のボディシャワー20と、シャワー切替弁30と、ハンドル52とを備えている。シャワー切替弁30は、上下動可能な弁体38を有する。シャワー切替弁30は、ハンドシャワー15への給水モードと、ボディシャワー20への給水モードとに切り替わる。ボディシャワー20への給水モードにおける弁体38は、ハンドシャワー15への給水モードにおける弁体38よりも上方に位置する。ハンドル52は、弁棒39を介して弁体38に連結されている。ハンドル52は、シャワー切替弁30をハンドシャワー15への給水モードに切り替える初期位置と、シャワー切替弁30をボディシャワー20への給水モードへ切り替える操作位置との間で切り替えることができる。
【0056】
シャワー切替弁30に給水され、ハンドル52が操作位置にある状態では、弁体38に作用する給水圧によって、シャワー切替弁30がボディシャワー20への給水モードに保持される。シャワー切替弁30への給水が停止すると、弁体38と弁棒39とハンドル52とを含む連動部材66の自重によって、ハンドル52が初期位置へ復帰する。ボディシャワー20の使用後に止水すると、連動部材66の自重によって、ハンドル52が操作位置から初期位置へ復帰し、シャワー切替弁30がハンドシャワー15への給水モードに切り替わる。ボディシャワー20への給水モードからハンドシャワー15への給水モードへ復帰させるためのハンドル52の操作は、不要である。
【0057】
ハンドル52が操作位置にあり、シャワー切替弁30に給水している状態では、給水圧によって弁体38に作用する押し上げ力よりも、連動部材66の自重によって弁体38に作用する押し下げ力の方が小さい。この構成によれば、弁体38を押し上げるためのバネ力等の外力を用いなくても、給水圧だけでボディシャワー20への給水状態に保持することができる。
【0058】
吐水装置Aは、シャワー切替弁30を内部に収容した装置本体10と、ハンドル52を回転可能に支持する水平方向の回転軸53とを備えている。ハンドル52は、装置本体10よりも下方に位置する操作部56を有する。ハンドル52が初期位置にある状態では、操作部56が、装置本体10の正面F側へ水平に突出する。この構成によれば、ハンドル52が初期位置に復帰したことを、目視によって把握し易い。
【0059】
ハンドル52が初期位置にある状態では、弁棒39とハンドル52との連結部である連結部材40と連結バー64が、水平方向において回転軸53を挟んで操作部56とは反対側、即ち回転軸53よりも後方に位置する。ハンドル52が使用位置にある状態では、操作部56が斜め下向きに突出する。止水状態からボディシャワー20を使用する際に必要な手動のハンドル52操作は、ハンドル52を初期位置から操作位置へ回転させる操作だけである。この操作は、前方へ水平に突出する操作部56を下方へ押し下げる動作なので、操作部56を押し上げる場合に比べると、操作性に優れている。
【0060】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0061】
(1)残水排出弁は、2つの残水排出弁を一対のボディシャワーの内部に配置してもよく、1つの残水排出弁を一方のボディシャワーの内部に配置してもよく、複数の残水排出弁を筐体の内部とボディシャワーの内部とに配置してもよい。
【0062】
(2)2本の分岐配管のうちいずれか一方の分岐配管の途中に、1つの残水排出弁を設けてもよく、2本の分岐配管の両方に残水排出弁を1つずつ設けてもよい。
【0063】
(3)筐体の幅方向における排水口の位置は、筐体の幅方向中央位置でもよく、幅方向中央部と外側縁部との間の位置でもよい。
【0064】
(4)筐体の前後方向における排水口の位置は、筐体の背面よりも正面に近い位置であってもよい。
【0065】
(5)ボディシャワーは1本だけでもよい。
【0066】
(6)残水排出弁は、給水路における最も低い位置よりも高い位置に配置してもよい。
【0067】
(7)排水口は、筐体の全幅に亘って開口する形態でもよい。
【0068】
(8)筐体におけるボディシャワーの取付け位置は、筐体の外側縁部以外の部位でもよい。
【0069】
(9)排水口の開口縁にリブを形成しない形態としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
A…吐水装置、R…筐体の背面、W…壁面、11…筐体、12…筐体の底面、15…ハンドシャワー、16…シャワーホース、20…ボディシャワー、22…吐水部、30…シャワー切替弁、50…分岐配管、68…給水路、70…残水排出弁、80…誘導路、83…排水口、84…傾斜面、85…リブ