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特開2023-23047太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023047
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20230209BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20230209BHJP
【FI】
H01L31/04 460
H01L31/06 455
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128219
(22)【出願日】2021-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 紳平
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA03
5F151AA05
5F151AA08
5F151BA03
5F151BA16
5F151CA14
5F151CB13
5F151CB21
5F151CB27
5F151CB30
5F151DA07
5F151EA07
5F151FA06
5F151GA04
5F151GA11
5F151GA15
5F251AA02
5F251AA03
5F251AA05
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5F251BA03
5F251BA16
5F251CA14
5F251CB13
5F251CB21
5F251CB27
5F251CB30
5F251DA07
5F251EA07
5F251FA06
5F251GA04
5F251GA11
5F251GA15
(57)【要約】
【課題】光電変換効率が高いシースルー型の太陽電池セルを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る太陽電池セル1は、板状の半導体基板2と、前記半導体基板2の受光面側に積層される第1半導体層3と、前記半導体基板2の裏面側に積層される第2半導体層4と、前記第1半導体層3に積層される第1電極パターン5と、前記第2半導体層4に積層される第2電極パターン6と、を備え、表裏に貫通する複数の透光孔7が形成され、前記透光孔7の受光面側の開口径Dfが裏面側の開口径Dbよりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に積層される第1半導体層と、
前記半導体基板の裏面側に積層される第2半導体層と、
前記第1半導体層に積層される第1電極パターンと、
前記第2半導体層に積層される第2電極パターンと、
を備え、
表裏に貫通する複数の透光孔が形成され、
前記透光孔の受光面側の開口径が裏面側の開口径よりも小さい、太陽電池セル。
【請求項2】
前記透光孔の内周面に前記半導体基板が露出している、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項3】
板状の半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に積層される第1半導体層と、
前記半導体基板の裏面側に積層される第2半導体層と、
を有する光電変換体を形成する工程と、
前記光電変換体の裏面にレーザを照射することにより複数の環状溝を形成する工程と、
前記光電変換体の前記環状溝の内側部分を裏面側からエッチングすることにより、受光面側の開口径が裏面側の開口径よりも小さい複数の透光孔を形成する工程と、
前記第1半導体層に積層される第1電極パターン、及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンを形成する工程と、
を備える、太陽電池セル製造方法。
【請求項4】
板状の半導体基板と、
前記半導体基板の受光面側に積層される第1半導体層と、
前記半導体基板の裏面側に積層される第2半導体層と、
を有する光電変換体を形成する工程と、
前記光電変換体を裏面側から異方性エッチングすることにより、受光面側の開口径が裏面側の開口径よりも小さい複数の透光孔を形成する工程と、
前記第1半導体層に積層される第1電極パターン、及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンを形成する工程と、
を備える、太陽電池セル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として、太陽電池の利用が広がっている。一般的な太陽電池は、光を遮断するために、窓等には設置することが控えられる。そこで、光を透過する開口を形成したシースルー型の太陽電池も検討されている。例として、特許文献1には、光の入射によりキャリアを生成するn型半導体の基材にp型半導体の膜を積層することによりキャリアを回収するpn接合を形成した半導体基板に複数の開口を形成し、半導体基板の受光面に開口を避けるようフィンガー電極を配設した太陽電池が開示されている。特許文献1は、比較的安価に半導体基板に開口を形成する方法として、フッ化物を含有する電解液を用いたエッチングを行うことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-299672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池セルの半導体基板にエッチングによって開口を形成すると、開口の内周面においてキャリアの再結合が生じるため、光電変換効率が低下し得る。特に、開口率を大きくしようとすると、開口の内周面におけるキャリアの再結合が顕著となるため、光電変換効率の低下が大きくなる。そこで、本発明は、光電変換効率が高いシースルー型の太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る太陽電池セルは、板状の半導体基板と、前記半導体基板の受光面側に積層される第1半導体層と、前記半導体基板の裏面側に積層される第2半導体層と、前記第1半導体層に積層される第1電極パターンと、前記第2半導体層に積層される第2電極パターンと、を備え、表裏に貫通する複数の透光孔が形成され、前記透光孔の受光面側の開口径が裏面側の開口径よりも小さい。
【0006】
上述の太陽電池セルは、前記透光孔の内周面に前記半導体基板が露出していてもよい。
【0007】
本発明の一態様に係る太陽電池セル製造方法は、板状の半導体基板と、前記半導体基板の受光面側に積層される第1半導体層と、前記半導体基板の裏面側に積層される第2半導体層と、有する光電変換体を形成する工程と、前記光電変換体の裏面にレーザを照射することにより複数の環状溝を形成する工程と、前記光電変換体の前記環状溝の内側部分を裏面側からエッチングすることにより、受光面側の開口径が裏面側の開口径よりも小さい複数の透光孔を形成する工程と、前記第1半導体層に積層される第1電極パターン、及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンを形成する工程と、備える。
【0008】
本発明の別の態様に係る太陽電池セル製造方法は、板状の半導体基板と、前記半導体基板の受光面側に積層される第1半導体層と、前記半導体基板の裏面側に積層される第2半導体層と、有する光電変換体を形成する工程と、前記光電変換体を裏面側から異方性エッチングすることにより、受光面側の開口径が裏面側の開口径よりも小さい複数の透光孔を形成する工程と、前記第1半導体層に積層される第1電極パターン、及び前記第2半導体層に積層される第2電極パターンを形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光電変換効率が高いシースルー型の太陽電池セル及び太陽電池セル製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る太陽電池セルの部分平面図である。
図2図1の太陽電池セルのA-A線部分断面図である。
図3図1の太陽電池セルの製造方法の手順を示すフローチャートである。
図4図3の太陽電池セル製造方法の一工程を説明する部分断面図である。
図5図3の太陽電池セル製造方法の図4の次の工程を説明する部分断面図である。
図6図3の太陽電池セル製造方法の図5の次の工程を説明する部分断面図である。
図7図3の太陽電池セル製造方法の図6の次の工程を説明する部分断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る太陽電池セルの部分断面図である。
図9図8の太陽電池セルの製造方法の手順を示すフローチャートである。
図10図8の太陽電池セル製造方法の一工程を説明する部分断面図である。
図11図8の太陽電池セル製造方法の図10の次の工程を説明する部分断面図である。
図12図8の太陽電池セル製造方法の図11の次の工程を説明する部分断面図である。
図13図8の太陽電池セル製造方法の図11の次の工程を説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の各実施形態について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、簡略化のために、部材の図示、符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の形状及び寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池セル1の部分平面図である。図2は、太陽電池セル1の分断面図である。太陽電池セル1は、板状の半導体基板2と、半導体基板2の受光面側に積層される第1半導体層3と、半導体基板2の裏面側(受光面と反対側)に積層される第2半導体層4と、第1半導体層3に積層される第1電極パターン5と、第2半導体層4に積層される第2電極パターン6と、を備える。太陽電池セル1には、表裏に貫通する複数の透光孔7が形成されている。
【0013】
半導体基板2は、入射光を吸収して光キャリア(電子及び正孔)を生成する光電変換基板として機能する。半導体基板2は、受光面に光の入射率を向上するために、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有してもよい。
【0014】
半導体基板2は、単結晶シリコン又は多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成することができる。また、ガリウムヒ素(GaAs)等の他の半導体材料から形成されてもよい。半導体基板2は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板とすることができる。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。半導体基板2の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0015】
第1半導体層3及び第2半導体層4は、半導体基板2の内部から、互いに極性が異なるキャリアを誘引することにより、異なる極性の電荷を収集する。したがって、半導体基板2、第1半導体層3及び第2半導体層4の積層体は、入射する光を電荷に変換する光電変換体Pを形成する。
【0016】
第1半導体層3及び第2半導体層4は、互いに異なる導電型を有する。例として、半導体基板2がn型である場合、第1半導体層3はp型半導体から形成され、第2半導体層4はn型半導体から形成され得る。第1半導体層3及び第2半導体層4は、例えば所望の導電型を付与するドーパントを含有するアモルファスシリコン材料で形成することができる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えば上述したリン(P)が挙げられる。
【0017】
第1電極パターン5及び第2電極パターン6は、第1半導体層3及び第2半導体層4が引き寄せたキャリアを電荷として取り出す。第1電極パターン5及び第2電極パターン6は、導電性を有する材料から形成され、電気抵抗が小さい金属を主体とすることが好ましい。具体例として、第1電極パターン5及び第2電極パターン6は、例えば金属材料、導電性微粒子及びバインダを含む複合材料等から形成することができる。
【0018】
受光面側の第1電極パターン5は、半導体基板2に光が入射できるよう面積を小さくするために、複数の線状に形成されることが好ましい。また、キャリアの移動距離が大きくなる領域を小さくするために、第1電極パターン5は網状に形成されてもよい。一方、第2電極パターン6は、第1電極パターン5と同じ形状に形成されてもよいが、第2電極パターン6までのキャリアの移動距離及び第2電極パターン6の中での電気抵抗を小さくするために、透光孔7以外の領域の略全面に設けられ得る。
【0019】
透光孔7は、太陽電池セル1の裏面側(受光面と反対側)に光を透過して採光することを可能にする。透光孔7の平面視での形状としては、典型的には円形とされるが、楕円形状、多角形状等、任意の形状とされてもよい。
【0020】
透光孔7の内周面には、半導体基板2が露出している。つまり、透光孔7の内周面には、例えばパッシベーション膜、反射防止膜等の層が積層されていない。このように、太陽電池セル1は、透光孔7の内周面に成膜を行わないため、比較的容易に製造でき、品質のバラツキも小さい。
【0021】
透光孔7の受光面側の開口径Dfは、裏面側の開口径Dbよりも小さい。これにより、太陽電池セル1に対して斜めに光が入射する場合に、パッシベーション性が低い透光孔7の内周面に直接入射する光の光量を抑制できる。したがって、太陽電池セル1は、比較的高い光電変換効率を実現できる。
【0022】
また、透光孔7の内周面は、光の反射特性が第1半導体層3の表面とは大きく異なり得るが、透光孔7の受光面側の開口径Dfが裏面側の開口径Dbよりも小さいことによって、受光面側から太陽電池セル1を目視した場合に透光孔7の内周面が見えにくいため、意匠性が損なわれにくい。また、透光孔7の受光面側の開口径Dfが裏面側の開口径Dbよりも小さいことによって、透光孔7を通して太陽電池セル1の裏面側に透過する光線の輪郭がぼやける。このため、透過光のパターンが気になりにくく、太陽電池セル1の裏面側の居室内の人の作業性を損なわない自然な採光が可能になる。
【0023】
透光孔7の受光面側の開口径Dfとしては、例えば1mm以上10mm以下が好ましく、2mm以上8mm以下がより好ましい。これにより、太陽電池セル1の光電変換効率を大きくしながら、十分な採光が可能となる。
【0024】
透光孔7の受光面側の開口径Dfと裏面側の開口径Dbとの差の光電変換体Pの厚さTに対する比{(Df-Db)/T}の下限としては、0.3が好ましく、0.5がより好ましい。一方、透光孔7の受光面側の開口径Dfと裏面側の開口径Dbとの差の光電変換体Pの厚さTに対する比の上限としては、2.0が好ましく、1.0がより好ましい。透光孔7の受光面側の開口径Dfと裏面側の開口径Dbとの差の光電変換体Pの厚さTに対する比を前記下限以上とすることによって、透光孔7の内周面に光が入射することによる光電変換効率の低下を効果的に抑制できる。また、透光孔7の受光面側の開口径Dfと裏面側の開口径Dbとの差の光電変換体Pの厚さTに対する比を前記上限以下とすることによって、第2半導体層4の面積減少による実質的な有効面積の減少を防止できる。
【0025】
透光孔7は、均等に採光するために、半導体基板2の略全体に分散して形成されることが好ましいが、半導体基板2の強度を確保するために、例えば半導体基板2の周縁部、半導体基板2を横断する帯状領域等に設けられないようにしてもよい。透光孔7は、より均等に採光するとともに、美観を向上できるよう、規則的に配置されることが好ましい。
【0026】
光電変換体Pの受光面における透光孔7の面積率、つまり第1半導体層3の表面の開口率としては、例えば3%以上50%以下、好ましくは5%以上30%以下とすることができる。これにより、十分な光が太陽電池セル1を透過することができ、且つ比較的大きい電力を得ることができる。
【0027】
太陽電池セル1は、本発明に係る太陽電池セル製造方法の一実施形態によって製造することができる。本実施形態の太陽電池セル製造方法は、図3に示すように、光電変換体形成工程(ステップS01)と、透光孔形成工程(ステップS02)と、電極形成工程(ステップS03)と、を備える。
【0028】
ステップS01の光電変換体形成工程では、半導体基板2に第1半導体層3及び第2半導体層4を積層することにより、図4に示すような光電変換体Pを形成する。つまり、光電変換体形成工程は、半導体基板2の表面に第1半導体層3を積層する第1半導体層積層工程と、半導体基板2の裏面に第2半導体層4を積層する第2半導体層積層工程と、を順不同に含む。第1半導体層3及び第2半導体層4は、例えばCVD等の成膜技術によって形成することができる。
【0029】
ステップS02の光電変換体形成工程では、光電変換体Pを裏面側から異方性エッチングすることにより、複数の透光孔7を形成する。つまり、光電変換体形成工程は、マスク積層工程と、異方性エッチング工程と、マスク除去工程と、をこの順番に有する。
【0030】
マスク積層工程では、図5に示すように、光電変換体Pの受光面側の全面に第1エッチングマスクM1を積層し、光電変換体Pの裏面側に予定される透光孔7の裏面側の開口径Dbと等しい径の開口を有する第2エッチングマスクM2を積層する。エッチングマスクM1,M2は、例えば印刷レジストの印刷及び乾燥、フォトレジストの感光による現像等により所望の平面形状に積層することができる。
【0031】
異方性エッチング工程では、第2エッチングマスクM2の開口部から異方性エッチング液を光電変換体Pに接触させることによって、図6に示すように、光電変換体Pを形成する材料を部分的に除去する。異方性エッチング液は、結晶面に沿って材料を除去する。これにより、受光面側の開口径Dfが裏面側の開口径Dbよりも小さい透光孔7を形成することができる。エッチング液としては、例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液を用いることができる。
【0032】
マスク除去工程では、エッチングマスクM1,M2を除去することにより、図7に示すように複数の透光孔7を有する光電変換体Pを得る。エッチングマスクM1,M2は、その材質に応じて選択される周知の剥離液を用いて除去することができる。
【0033】
ステップS03の電極形成工程では、第1半導体層3に積層される第1電極パターン5、及び第2半導体層4に積層される第2電極パターン6を形成する。これによって、図2に示す太陽電池セル1が得られる。電極形成工程は、光電変換体Pの表面に第1電極パターン5を形成する第1電極パターン形成工程と、光電変換体Pの裏面に第2電極パターン6を形成する第2電極パターン形成工程と、を順不同に有し得る。
【0034】
第1電極パターン5及び第2電極パターン6は、例えば銀ペースト等の印刷及び焼成によって形成することができる。また、第1電極パターン5及び第2電極パターン6は、例えばサブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の周知の回路形成技術を用いて形成してもよい。
【0035】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第1実施形態に係る太陽電池セル1Aの部分平面図である。図2は、太陽電池セル1Aの分断面図である。図8の太陽電池セル1Aについて、図2の太陽電池セル1と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
太陽電池セル1Aは、板状の半導体基板2と、半導体基板2の受光面側に積層される第1半導体層3と、半導体基板2の裏面側に積層される第2半導体層4と、第1半導体層3に積層される第1電極パターン5と、第2半導体層4に積層される第2電極パターン6と、を備える。太陽電池セル1Aには、表裏に貫通する複数の透光孔7Aが形成されている。図8の太陽電池セル1Aは、透光孔7Aの形状が図2の太陽電池セル1Aの透光孔7の形状と異なるだけである。
【0037】
透光孔7Aは、内径が階段状に変化している。より詳しくは、透光孔7Aは、内径が受光面側の開口径Dfと略等しい部分と、内径が裏面側の開口径Dbと略等しい部分と、からなる。透光孔7Aは、内径が受光面側の開口径Dfと略等しい部分への光の入射は抑制できないが、内径が裏面側の開口径Dbと略等しい部分への光の入射をより確実の抑制できる。
【0038】
太陽電池セル1Aは、本発明に係る太陽電池セル製造方法の一実施形態によって製造することができる。本実施形態の太陽電池セル製造方法は、図9に示すように、光電変換体形成工程(ステップS11)と、環状溝形成工程(ステップS12)と、透光孔貫通工程(ステップS13)と、電極形成工程(ステップS14)と、を備える。
【0039】
図9のステップS11の光電変換体形成工程では、図3のステップS01の光電変換体形成工程と同様に、半導体基板2に第1半導体層3及び第2半導体層4を積層することによって光電変換体Pを形成する。
【0040】
ステップS12の環状溝形成工程では、光電変換体Pの裏面にレーザを照射することにより、図10に示すように、複数の環状溝Gを形成する。各環状溝Gの外周部は、透光孔7Aの裏面側の開口に対応する。
【0041】
ステップS13の透光孔貫通工程では、光電変換体Pの環状溝Gの内側部分を裏面側から等方性エッチングすることにより、受光面側の開口径Dfが裏面側の開口径Dbよりも小さい複数の透光孔7Aを形成する。透光孔貫通工程は、マスク積層工程と、等方性エッチング工程と、マスク除去工程と、を有する。
【0042】
マスク積層工程では、図11に示すように、光電変換体Pの受光面側の全面に第1エッチングマスクM1を積層し、光電変換体Pの裏面側に予定される透光孔7Aの受光面側の開口径Dfと等しい径の開口を有する第2エッチングマスクM2Aを積層する。
【0043】
等方性エッチング工程では、第2エッチングマスクM2の開口部からエッチング液を光電変換体Pに接触させることによって、図12に示すように、光電変換体Pを形成する材料を部分的に除去する。
【0044】
マスク除去工程では、エッチングマスクM1,M2Aを除去することにより、図13に示すように、複数の透光孔7Aを有する光電変換体Pを得る。
【0045】
図9のステップS14の電極形成工程では、図3のステップS03の電極形成工程と同様に、第1半導体層3に積層される第1電極パターン5、及び第2半導体層4に積層される第2電極パターン6を形成する。これによって、図8に示す太陽電池セル1Aが得られる。
【0046】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。本発明に係る太陽電池セルは、例えば反射防止膜、パッシベーション層等、さらなる構成要素を備えてもよい。具体例として、本発明に係る太陽電池セルは、第1電極パターンと第1半導体層の間、及び第2電極パターンと第2半導体層の間を接続するさらなる導電層等を設けてもよい。
【0047】
本発明に係る太陽電池セルにおいて、透光孔は、例えば樽型状等、部分的に裏面側の開口径よりも大きい内径を有する形状とされてもよい。
【0048】
本発明に係る太陽電池セル製造方法において、レーザの照射によって環状溝を形成してから異方性エッチングを行うことにより、透光孔を形成してもよい。この場合に得られる本発明に係る太陽電池セルの透光孔は、断面形状が略一定である部分と、断面積が漸減又は漸増する部分とを有する。また、環状溝を形成してから異方性エッチングを行う場合、光電変換体の裏面全体にエッチングマスクを形成した後にレーザを照射して環状溝と同時にエッチングマスクの開口を形成してもよい。このようにすれば、段差部を有せず、略当断面の裏面側部分と受光面に向かって縮径する表面側部分とからなる透光孔を形成できる。
【符号の説明】
【0049】
1,1A 太陽電池セル
2 半導体基板
3 第1半導体層
4 第2半導体層
5 第1電極パターン
6 第2電極パターン
7,7A 透光孔
G 環状溝
M1 第1エッチングマスク
M2 第2エッチングマスク
P 光電変換体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13