(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002328
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221227BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20221227BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20221227BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/0432
H01M8/04701
H01M8/04537
H01M8/04746
H01M8/04029
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103509
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 理
(72)【発明者】
【氏名】赤塚 拓也
(72)【発明者】
【氏名】飯山 繁
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA07
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA20
5H127BA56
5H127BB02
5H127CC07
5H127DA15
5H127DA17
5H127DB12
5H127DB66
5H127DB74
5H127DB88
5H127DC75
5H127DC88
5H127EE24
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックのアノードから排出されるアノードオフガスの流れを調整するのに有利な技術を提供する。
【解決手段】
燃料電池システム1aは、燃料電池スタック3と、ガス経路23と、タンク5と、パージ経路24とを備える。ガス経路23は、アノード3aから排出されたアノードオフガスを流通させる経路である。タンク5は、アノードオフガスが貯留される第一室51と、大気に対して通気可能な第二室52と、連通路53とを有する。タンク5には、水が貯留される。パージ経路24は、第一室51に貯留されたアノードオフガスをタンク5の外部へ導く。第一室51及び第二室52における水位は連通路53の上方に位置している。パージ経路24は、燃料電池システム1aが停止しているときの第一室51における水位L3よりも下方において第一室51に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックのアノードから排出されるアノードオフガスを流通させるガス経路と、
前記アノードオフガスが貯留される第一室と、大気に対して通気可能な第二室と、前記第一室と前記第二室とを通水可能に連通させる連通路とを有し、水が貯留されるタンクと、
前記第一室に貯留された前記アノードオフガスを前記タンクの外部へ導くパージ経路と、を備え、
前記第一室及び前記第二室における前記水の水位は、前記連通路の上方に位置し、
前記ガス経路は、前記燃料電池システムが停止しているときの前記第一室における前記水の水位よりも上方において前記第一室に接続されており、
前記パージ経路は、前記燃料電池システムが停止しているときの前記第一室における前記水の水位よりも下方において前記第一室に接続されている、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池スタックと前記タンクとの間で水を循環させて前記燃料電池スタックを冷却する冷却水経路と、
前記冷却水経路に配置された第一ポンプと、を備えた、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記タンクは、前記連通路の上方に配置されており、前記第一室及び前記第二室が隣り合った状態で前記第一室と前記第二室とを隔てる仕切りを有する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記タンクは、前記第一室を有する第一タンクと、前記第一タンクから離れて配置され、前記第二室を有する第二タンクと、前記第一タンクと前記第二タンクとを接続する、前記連通路をなす配管とを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第二室を加熱する加熱器と、
前記第二室における前記水の温度及び前記第二室に接する壁面の温度からなる群より選択される少なくとも1つの温度を測定する温度測定器と、
前記温度測定器によって測定された前記温度が所定温度以下であるときに、前記加熱器を発熱させて前記水を不凍状態に保つ第一制御器と、を備えた、
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記燃料電池システムが停止しているときの前記第一室における前記水の水位より上方において前記第一室に接続され、前記燃料電池スタックの前記アノードに向かって前記アノードオフガスを流通させる循環経路と、
前記循環経路に配置され、前記アノードオフガスを前記アノードに向かって送り出す第二ポンプと、
前記燃料電池スタックの発電出力に基づいて前記第二ポンプの操作量を調整する第二制御器と、を備えた、
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池スタック、燃料極ガス供給管、空気極ガス供給管、燃料極ガス排出管、空気極ガス排出管、及び複数の電磁弁を備えた燃料電池発電装置が記載されている。燃料極ガス供給管、空気極ガス供給管、燃料極ガス排出管、及び空気極ガス排出管のそれぞれは電磁弁を備え、これらの電磁弁は発電運転時には開放状態に保たれ、発電停止時には閉止状態に保たれる。発電運転時には、燃料電池スタックの燃料極から排出されるガスは、燃料極ガス排出管を通って排出されるものと理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、燃料電池システムにおいて燃料電池スタックのアノードから排出されるアノードオフガスの流れを調整するのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、
燃料電池システムであって、
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックのアノードから排出されるアノードオフガスを流通させるガス経路と、
前記アノードオフガスが貯留される第一室と、大気に対して通気可能な第二室と、前記第一室と前記第二室とを通水可能に連通させる連通路とを有し、水が貯留されるタンクと、
前記第一室に貯留された前記アノードオフガスを前記タンクの外部へ導くパージ経路と、を備え、
前記第一室及び前記第二室における前記水の水位は、前記連通路の上方に位置し、
前記ガス経路は、前記燃料電池システムが停止しているときの前記第一室における前記水の水位よりも上方において前記第一室に接続されており、
前記パージ経路は、前記燃料電池システムが停止しているときの前記第一室における前記水の水位よりも下方において前記第一室に接続されている、
燃料電池システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る技術は、燃料電池システムにおいて燃料電池スタックのアノードから排出されるアノードオフガスの流れを調整するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態1における燃料電池システムの構成を模式的に示す図
【
図2】実施の形態2における燃料電池システムの構成を模式的に示す図
【
図3】実施の形態3における燃料電池システムの構成を模式的に示す図
【
図4A】実施の形態4における燃料電池システムの構成を模式的に示す図
【
図4B】水を不凍状態に保つための処理を示すフローチャート
【
図5A】実施の形態5における燃料電池システムの構成を模式的に示す図
【
図5B】アノードオフガスの循環のための処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、燃料電池システムにおいて、水素を含む燃料ガス及び酸化剤ガスが燃料電池スタックに供給され、電気化学反応により発電がなされていた。当該業界では、燃料電池スタックのアノードから排出されるアノードオフガスをパージするための経路を設ける設計が一般的であった。例えば、特許文献1における燃料極ガス排出管は電磁弁を備えており、電磁弁の開閉によって燃料極から排出されるガスの流れが調整されていると理解される。そうした状況下において、発明者らは、アノードオフガスの経路に電磁弁等の弁を配置することには、燃料電池システムの製造コストの増加、弁の使用に伴う消費エネルギーの増加、及び弁の保守の必要性等の課題が存在することを発見した。そこで、このような課題を解決するために本開示の主題を構成するに至った。
【0009】
そこで、本開示は、燃料電池システムにおいて燃料電池のアノードから排出されるアノードオフガスの流れを電磁弁等の弁を用いることなく調整するのに有利な技術を提供する。
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
添付図面及び以下の説明は、当事者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、
図1を用いて、実施の形態1を説明する。
【0013】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態1における燃料電池システム1aの構成を模式的に示す図である。
図1に示す通り、燃料電池システム1aは、燃料電池スタック3と、ガス経路23と、タンク5と、パージ経路24とを備えている。燃料電池システム1aは、例えば、酸化剤ガス供給器11、燃料ガス供給器12、第一供給経路20、カソードオフガス経路21、及び第二供給路22をさらに備えている。
【0014】
燃料電池スタック3は、例えば、アノード3a、カソード3b、及び電解質膜3cを備えている。燃料電池スタック3は、例えば、電解質膜3cの厚み方向に複数の単セルが積層され、かつ、各単セルが電気的に直列に接続された構造を有している。各単セルにおいて、電解質膜3cは、電解質膜3cの厚み方向においてアノード3aとカソード3bとの間に配置されている。アノード3aに燃料ガスが供給され、かつ、カソード3bに酸化剤ガスが供給されることよって燃料電池スタック3において発電がなされる。燃料電池スタック3における燃料電池は、特定の燃料電池に限定されない。燃料電池スタック3における燃料電池は、例えば固体高分子形燃料電池である。燃料電池スタック3における燃料電池は、固体酸化物形燃料電池であってもよい。
【0015】
酸化剤ガス供給器11は、所定の圧力で燃料電池スタック3に酸化剤ガスを供給する。酸化剤ガスは、例えば、酸素を含む空気である。
【0016】
燃料ガス供給器12は、所定の圧力で燃料電池スタック3に燃料ガスを供給する。燃料ガスは、例えば、体積基準で水素を最も多く含有している。
【0017】
第一供給路20は、酸化剤ガス供給器11と燃料電池スタック3とを接続している。酸化剤ガスは、第一供給路20を通って燃料電池スタック3に供給される。
【0018】
第二供給路22は、燃料ガス供給器12と燃料電池スタック3とを接続している。燃料ガスは、第二供給路22を通って燃料電池スタック3に供給される。
【0019】
カソードオフガス経路21は、カソード3bから排出されたカソードオフガスを流通させる経路である。カソードオフガスは、例えば、カソードオフガス経路21を通って燃料電池システム1aの外部に導かれる。
【0020】
ガス経路23は、アノード3aから排出されたアノードオフガスを流通させる経路である。
【0021】
タンク5は、第一室51と、第二室52と、連通路53とを有する。タンク5には水が貯留される。第一室51には、アノードオフガスが貯留される。第一室51は、タンク5の内部に存在している。ガス経路23は、燃料電池システム1aが停止しているときの第一室51における水位L3よりも上方において第一室51に接続されている。第二室52は、大気に対して通気可能である。第二室52は、タンク5の内部に存在している。第二室52は、例えば、燃料電池システム1aにおけるタンク5の外部空間と通気可能に連通している。燃料電池システム1aにおけるタンク5の外部空間は大気に連通している。このため、第二室52には空気が存在している。連通路53は、第一室51と第二室52とを通水可能に連通させる。
【0022】
タンク5に貯留される水の第一室51及び第二室52における水位は、連通路53の上方に位置している。このため、第一室51に貯留されたアノードオフガスが第二室52に移動することが防止される。加えて、第二室52に存在する空気が第一室51に移動することが防止される。
【0023】
図1に示す通り、タンク5は、例えば、仕切り55を有する。仕切り55は、連通路53の上方に配置されており、第一室51及び第二室52が隣り合った状態で第一室51と第二室52とを隔てている。
【0024】
パージ経路24は、第一室51に貯留されたアノードオフガスをタンク5の外部へ導く経路である。パージ経路24は、燃料電池システム1aが停止しているときの第一室51における水位L3よりも下方において第一室51に接続されている。パージ経路24は、例えば、アノードオフガスをタンク5の外部へ導く。
【0025】
[1-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム1aについて、以下、その動作及び作用を説明する。
【0026】
燃料電池システム1aが運転しているとき、所定の圧力で燃料ガスが燃料電池スタック3に供給される。燃料ガスがアノード3aを通過するときにアノード3aの内部の流路の抵抗によって燃料ガスの圧力が下がり、アノード3aから排出されるアノードオフガスの圧力はA[kPa]になる。A[kPa]は、大気圧より高い。A[kPa]の圧力を有するアノードオフガスは、ガス経路23を通ってタンク5の内部の第一室51に導かれる。これにより、タンク5に貯留された水の第一室51における水面にはA[kPa]の圧力がかかる。一方、第二室52は大気に対して通気可能であるので、第二室52の圧力は大気圧又は大気圧に近い圧力に保たれる。連通路53は、第一室51と第二室52とを通水可能に連通させているので、アノードオフガスの圧力によって押された第一室51における水は、第二室52に向かって移動する。これにより、
図1に示す通り、第一室51の水位はL3からL1へ下がり、第二室52の水位はL4からL2へ上がる。その結果、第一室51におけるアノードオフガスは、パージ経路24に導かれ、タンク5の外部に排出される。アノードオフガスは、例えば、パージ経路24を通って燃料電池システム1aの外部にパージされる。
【0027】
燃料電池システム1aが停止するとき、ガス経路23及び第一室51におけるアノードオフガスの圧力はA[kPa]からB[kPa]に低下する。B[kPa]は、大気圧より高く、かつ、A[kPa]より低い。これにより、第一室51における水面にかかる圧力が低下し、第一室51における水位はL1からL3に上昇する。水位L3は、第一室51に接しているパージ経路24の入口の上方に位置している。一方、第二室52における水位はL2からL4に低下する。これにより、パージ経路24の内部と第一室51のガスで満たされた空間とが水によって封止される。
【0028】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施形態において、燃料電池システム1aは、燃料電池スタック3と、ガス経路23と、タンク5と、パージ経路24とを備えている。ガス経路23は、アノード3aから排出されたアノードオフガスを流通させる経路である。タンク5は、アノードオフガスが貯留される第一室51と、大気に対して通気可能な第二室52と、第一室51と第二室52とを通水可能に連通させる連通路53とを有する。タンク5には、水が貯留される。パージ経路24は、第一室51に貯留されたアノードオフガスをタンク5の外部へ導く。第一室51及び第二室52における水の水位は、連通路53の上方に位置している。ガス経路23は、燃料電池システム1aが停止しているときの第一室51における水位L3よりも上方において第一室51に接続されている。パージ経路24は、燃料電池システム1aが停止しているときの第一室51における水位L3よりも下方において第一室51に接続されている。
【0029】
これにより、燃料電池システム1aが運転しているときには、アノードオフガスの圧力が高くなり、第一室51における水位が下がる。このため、第一室51に貯留されたアノードオフガスがパージ経路24に導かれ、タンク5の外部に排出される。一方、燃料電池システム1aが停止しているときには、アノードオフガスの圧力が低くなり、第一室51における水位がパージ経路24の入口よりも上方に位置する。このように、第一室51における水位の変動によりパージ経路24の開閉状態を切り替えることができ、燃料電池スタック3のアノード3aから排出されるアノードオフガスの流れを電磁弁等の弁を用いることなく調整できる。
【0030】
本実施形態のように、タンク5は、仕切り55を有していてもよい。仕切り55は、連通路53の上方に配置されており、第一室51及び第二室52が隣り合った状態で第一室51と第二室52とを隔てている。これにより、タンク5が単一の容器で構成されていても、単一の容器の内部の空間を第一室51及び第二室52として使用でき、タンク5を小型化しやすい。
【0031】
以下、他の実施の形態について説明する。先の実施の形態と後の実施の形態とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。各実施の形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。技術的に矛盾しない限り、各実施の形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0032】
(実施の形態2)
以下、
図2を用いて、実施の形態2を説明する。
【0033】
[2-1.構成]
図2は、実施の形態2における燃料電池システム1bの構成を模式的に示す図である。燃料電池システム1bは、冷却水経路25と、第一ポンプ60とをさらに備えている。冷却水経路25は、燃料電池スタック3とタンク5との間で水を循環させて燃料電池スタック3を冷却する経路である。第一ポンプ60は、冷却水経路25に配置されている。冷却水経路25の一部は、熱交換器の一部を構成していてもよい。
【0034】
[2-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム1bについて、以下、その動作及び作用を説明する。燃料電池システム1bが運転しているときに、燃料電池スタック3における発電に伴い熱が発生する。第一ポンプ60が作動することにより、第一ポンプ60から水が送り出されて燃料電池スタック3とタンク5との間で水が循環する。これにより、燃料電池スタック3が冷却され、燃料電池スタック3が所望の温度に保たれる。
【0035】
[2-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、燃料電池システム1bは、冷却水経路25と、第一ポンプ60とを備えている。これにより、タンク5に貯留される水を用いて燃料電池スタック3を冷却できる。このため、アノードオフガスの流れの調整及び燃料電池スタック3の冷却を実現するための水に関する構成が集約され、燃料電池システム1bが小型化されやすい。
【0036】
(実施の形態3)
以下、
図3を用いて、実施の形態3を説明する。
【0037】
[3-1.構成]
図3は、実施の形態3における燃料電池システム1cの構成を模式的に示す図である。燃料電池システム1cにおいて、タンク5は、第一タンク5aと、第二タンク5bと、配管5cとを有する。第一タンク5aは、第一室51を有する。第一室51は、第一タンク5aの内部に存在している。第二タンク5bは、第一タンク5aから離れて配置されている。第二タンク5bは、第二室52を有する。第二室52は、第二タンク5bの内部に存在している。配管5cは、第一タンク5aと第二タンク5bとを接続している。配管5cは、例えば、第一タンク5aの底部と第二タンク5bの底部とを接続している。配管5cは、連通路53をなしている。
【0038】
燃料電池システム1cは、例えば、冷却水経路25と、第一ポンプ60とを備えている。冷却水経路25は、第一タンク5aに接続されており、燃料電池スタック3と第一タンク5aとの間で水を循環させる。
【0039】
[3-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム1cについて、以下、その動作及び作用を説明する。燃料電池システム1cが運転しているときに、アノードオフガスの圧力によって押された第一タンク5aの内部の第一室51における水は、第二タンク5bの内部の第二室52に向かって移動する。加えて、第一ポンプ60が作動することにより、第一ポンプ60から水が送り出されて燃料電池スタック3と第一タンク5aとの間で水が循環する。
【0040】
[3-3.効果等]
以上のように、本実施の形態の燃料電池システム1cにおいて、タンク5は、第一タンク5aと、第二タンク5bと、配管5cとを有する。これにより、仮に、第一タンク5aの内部の第一室51における水面が乱れても、この水面の乱れの影響が第二タンク5bの内部の第二室52に及びにくい。このため、第一室51に貯留されたアノードオフガスが第二室52に存在する空気と混合されにくい。その結果、爆燃を生じさせるような混合ガスが発生することを防止できる。
【0041】
(実施の形態4)
以下、
図4A及び
図4Bを用いて、実施の形態4を説明する。
【0042】
[4-1.構成]
図4Aは、実施の形態4における燃料電池システム1dの構成を模式的に示す図である。燃料電池システム1dにおいて、タンク5は、第一タンク5aと、第二タンク5bと、配管5cとを有する。
【0043】
燃料電池システム1dは、例えば、冷却水経路25と、第一ポンプ60とを備えている。冷却水経路25は、第一タンク5aに接続されており、燃料電池スタック3と第一タンク5aとの間で水を循環させる。
【0044】
燃料電池システム1dは、加熱器56と、温度測定器57と、第一制御器71とを備えている。加熱器56は、第二室52を加熱する。加熱器56は、例えば、第二タンク5bに取り付けられている。加熱器56は、例えば、抵抗加熱式の電気ヒータである。温度測定器57は、第二室52における水の温度及び第二室52に接する壁面の温度からなる群より選択される少なくとも1つの温度を測定する。第二室52に接する壁面の温度は、第二室52を内部に有する容器の内壁面の温度であってもよいし、その容器の外壁面の温度であってもよい。温度測定器57は、例えば、熱電対又はサーミスタを備えた温度センサである。第一制御器71は、温度測定器57によって測定された温度が所定温度以下であるときに、加熱器56を発熱させて第二室52に貯留された水を不凍状態に保つ。所定温度は、例えば3℃である。第一制御器71は、例えば、加熱器56の発熱を制御するためのプログラムが実行可能に格納されたデジタルコンピュータである。第一制御器71は、例えば、加熱器56が停止しており、かつ、温度測定器57によって測定された温度が3℃以下である場合に、加熱器56の発熱を開始する。一方、第一制御器71は、例えば、加熱器56が発熱しており、かつ、温度測定器57によって測定された温度が20℃以上である場合に、加熱器56の発熱を停止する。
【0045】
[4-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム1dについて、以下、その動作及び作用を説明する。
図4Bは、燃料電池システム1dにおいて水を不凍状態に保つための処理を示すフローチャートである。
図4Bに示す通り、所定の条件が成立すると、ステップS101において、温度測定器57は、第二室52における水の温度及び第二室52に接する壁面の温度からなる群より選択される少なくとも1つの温度T
52を測定する。次に、ステップS102において、第一制御器71は、温度T
52が所定温度T
P以下であるか否かを判断する。T
Pは、例えば3℃である。ステップS102における判断が肯定的である場合、ステップS103に進み、第一制御器71は加熱器56を発熱させる。加熱器56が既に発熱している場合には、第一制御器71は加熱器56の発熱状態を継続させる。その後、所定時間経過後にステップS101に戻る。これにより、第二室52に貯留された水が不凍状態に保たれる。一方、ステップS102における判断が否定的である場合、ステップS104に進み、第一制御器71は、温度T
52が上限温度T
Q以上であるか否かを判断する。T
Qは、例えば20℃である。ステップS104における判断が肯定的である場合、ステップS105に進み、第一制御器71は加熱器56の発熱を停止する。一方、ステップS104における判断が否定的である場合、ステップS101に戻る。加熱器56の発熱が既に停止している場合、ステップS104及びスキップS105の処理はスキップされてもよい。その後、ステップS106に進み、第一制御器71は、水を不凍状態に保つための処理の継続が不要かどうか判断する。例えば、第一制御器71は、現在の日時を示す情報に基づきこの処理の継続が不要か否かを判断する。ステップS106における判断結果が肯定的な場合には一連の処理が終了する、一方、ステップS106における判断結果が否定的な場合には、ステップS101に戻る。
【0046】
[4-3.効果等]
以上のように、本実施の形態の燃料電池システム1dは、加熱器56と、温度測定器57と、第一制御器71とを備えている。このため、第二室52に貯留された水の温度が低いときに加熱器56によって第二室52に貯留された水が加熱され、その水の温度が上昇する。これにより、第二室52に貯留された水の凍結が防止される。このため、例えば、燃料電池システム1dの運転が停止するときに、第二室52における水位が低下し、かつ、第一室51における水位が上昇するような水位の変動が水の凍結によって妨げられることを防止できる。その結果、水の凍結が生じうる環境で燃料電池システム1dが使用される場合でも、アノードオフガスの流れを電磁弁等の弁を用いることなく調整できる。
【0047】
(実施の形態5)
以下、
図5A及び
図5Bを用いて、実施の形態5を説明する。
【0048】
[5-1.構成]
図5Aは、実施の形態5における燃料電池システム1eの構成を模式的に示す図である。燃料電池システム1eは、循環経路26と、第二ポンプ65と、第二制御器72とを備えている。循環経路26は、燃料電池システム1eが停止しているときの第一室51における水位L3より上方において第一室51に接続され、燃料電池スタック1eのアノード3aに向かってアノードオフガスを流通させる。循環経路26は、例えば、第二供給路22に接続されており、循環経路26を通過したアノードオフガスは、第二供給路22における燃料ガスと混合されてアノード3aに供給される。第二ポンプ65は、循環経路26に配置されている。第二ポンプ65は、アノードオフガスをアノード3aに向かって送り出す。第二制御器72は、燃料電池スタック3の発電出力に基づいて第二ポンプ65の操作量を調整する。第二制御器72は、例えば、第二ポンプ65の操作量を調整するためのプログラムが実行可能に格納されたデジタルコンピュータである。
【0049】
[5-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム1eについて、以下、その動作及び作用を説明する。燃料電池システム1eが運転しているときに、第二ポンプ65の作動により第一室51に貯留されたアノードオフガスが循環経路26を通ってアノード3aに向かって送られる。
【0050】
図5Bは、燃料電池システム1eにおけるアノードオフガスの循環のための処理を示すフローチャートである。
図5Bに示す通り、所定の条件が成立すると、ステップS301において、第二制御器72は、燃料電池スタック3の発電出力P
Oを取得する。発電出力P
Oは、例えば、燃料電池スタック3から外部への電流の大きさを測定することによって取得できる。所定の条件は、例えば、燃料電池システム1eの運転が開始したことである。次に、ステップS302において、第二制御器72は、発電出力P
Oに基づいて第二ポンプ65の操作量V
Aを調整する。操作量V
Aは、例えば第二ポンプ65の回転数である。例えば、第二制御器72は、発電出力P
Oの値と操作量V
Aとの関係が予め定められたテーブル等を参照して操作量V
Aを決定し、決定された操作量V
Aに応じた制御信号を第二ポンプ65に向かって送信する。例えば、第二制御器72は、発電出力P
Oが大きいほど第二ポンプ65の回転数が大きくなるように操作量V
Aを調整する。その後、所定時間経過後に、ステップS303に進み、第二制御器72は、燃料電池システム1eが停止しているか否かを判断する。この判断の結果が肯定的な場合、一連の処理が終了する。この判断の結果が否定的な場合、ステップS301に戻り、発電出力P
Oの取得及び操作量V
Aの調整が繰り返される。
【0051】
[5-3.効果等]
以上のように、本実施の形態の燃料電池システム1eは、循環経路26と、第二ポンプ65と、第二制御器72とを備えている。アノードオフガスには、未反応の燃料ガスが含まれる。燃料電池システム1eによれば、循環経路26及び第二ポンプ65によってアノードオフガスが循環し、アノードオフガスに含まれる未反応の燃料ガスをアノード3aにおいて有効に利用できる。第二制御器72は、燃料電池スタック3の発電出力に基づいて第二ポンプ65の操作量を調整する。このため、燃料電池スタック3における発電状態に合わせて循環経路26におけるアノードオフガスの流量を調整できる。
【0052】
(他の実施形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1、2、3、4、及び5を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1及び2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0053】
実施の形態1から5において、パージ経路24は、燃料電池システム1aの外部にアノードオフガスを導く構成を説明した。パージ経路24は、タンク5の外部にアノードオフガスを導く経路であればよい。したがって、パージ経路24は、例えば、炭化水素ガスから燃料ガスを生成するためのバーナーにアノードオフガスを導くように構成されていてもよい。
【0054】
実施の形態1から5において、第二室52は、大気に対して通気可能であればよい。第二室52には、燃料電池システムが停止しているときに閉じられる弁が取り付けられていてもよい。この場合、燃料電池システムが停止しているときにタンク5から水が蒸発してタンク5の水位が低下することを防止できる。その結果、連通路53において第一室51と第二室52とが通気可能に連通することを防止できる。
【0055】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、運転中において燃料電池スタックから排出されるアノードオフガスのパージと停止中において燃料電池スタックへの空気侵入の防止とを両立する必要がある燃料電池システムに適用可能である。具体的には、ガス改質装置又は電気化学式水素純化器によって生成された燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1a、1b、1c、1d、1e 燃料電池システム
3 燃料電池スタック
3a アノード
5 タンク
5a 第一タンク
5b 第二タンク
5c 配管
23 ガス経路
24 パージ経路
25 冷却水経路
51 第一室
52 第二室
53 連通路
56 加熱器
57 温度測定器
60 第一ポンプ
65 第二ポンプ
71 第一制御器
72 第二制御器