(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023023740
(43)【公開日】2023-02-16
(54)【発明の名称】エレベータ換気システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20230209BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230209BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20230209BHJP
【FI】
F24F7/06 H
F24F7/007 B
F24F11/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021129536
(22)【出願日】2021-08-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】萩平 隆司
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L058BE08
3L260AA20
3L260AB15
3L260BA12
3L260CA04
3L260CA17
3L260FC03
(57)【要約】
【課題】エレベータカゴ内とエレベータシャフト内とを適切に換気することができるエレベータ換気システムを提供する。
【解決手段】エレベータカゴ2が昇降するエレベータシャフト3内の換気を行うシャフト用換気部4と、エレベータカゴ2内の空気をエレベータシャフト3内に排気する形態でエレベータカゴ2内の換気を行うカゴ用換気部5とを備え、カゴ用換気部5は、カゴ通常換気状態と、カゴ通常換気状態より換気量が多いカゴ増量換気状態とに切り替え自在に構成され、シャフト用換気部4は、カゴ用換気部5がカゴ通常換気状態に切り替わるに伴ってシャフト通常換気状態に切り替わり、カゴ用換気部5がカゴ増量換気状態に切り替わるに伴ってシャフト通常換気状態より換気量が多いシャフト増量換気状態に切り替わるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータカゴが昇降するエレベータシャフト内の換気を行うシャフト用換気部と、
前記エレベータカゴ内の空気を前記エレベータシャフト内に排気する形態で前記エレベータカゴ内の換気を行うカゴ用換気部とを備え、
前記カゴ用換気部は、カゴ通常換気状態と、前記カゴ通常換気状態より換気量が多いカゴ増量換気状態とに切り替え自在に構成され、
前記シャフト用換気部は、前記カゴ用換気部が前記カゴ通常換気状態に切り替わるに伴ってシャフト通常換気状態に切り替わり、前記カゴ用換気部が前記カゴ増量換気状態に切り替わるに伴って前記シャフト通常換気状態より換気量が多いシャフト増量換気状態に切り替わるように構成されているエレベータ換気システム。
【請求項2】
前記エレベータカゴ内の空気質汚染要因を検知する検知部を備え、
前記カゴ用換気部は、前記検知部が検知するのに伴って前記カゴ通常換気状態から前記カゴ増量換気状態に切り替わるように構成されている請求項1に記載のエレベータ換気システム。
【請求項3】
前記カゴ用換気部は、前記検知部が検知してから設定条件を満たすまでは前記カゴ増量換気状態を維持し、前記設定条件を満たした場合に前記カゴ増量換気状態から前記カゴ通常換気状態に切り替わるように構成されている請求項2に記載のエレベータ換気システム。
【請求項4】
前記検知部は、感染者が前記エレベータカゴに乗ったことを検知するように構成されている請求項2又は3に記載のエレベータ換気システム。
【請求項5】
前記カゴ用換気部は、前記エレベータシャフト内の空気を給気用フィルターを通して前記エレベータカゴ内に給気する給気部と、前記エレベータカゴ内の空気を排気用フィルターを通して前記エレベータシャフト内に排気する排気部とを備え、前記カゴ増量換気状態に切り替えられている状態では、前記給気部の前記給気用フィルターを通して給気すると共に、前記排気部の前記排気用フィルターを通して排気するように構成されている請求項1から4の何れか一項に記載のエレベータ換気システム。
【請求項6】
前記カゴ用換気部は、排気用フィルターを通さずに排気する第1排気部と、前記排気用フィルターを通して排気する第2排気部とを備え、前記カゴ通常換気状態に切り替えられている状態では前記第1排気部を通して排気し、前記カゴ増量換気状態に切り替えられている状態では前記第2排気部を通して排気するように構成されている請求項1から5の何れか一項に記載のエレベータ換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータカゴ内の空気をエレベータシャフト内に排気する形態でエレベータカゴ内の換気を行うカゴ用換気部を備えたエレベータ換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベータカゴ(カゴ12)が昇降するエレベータシャフト内の換気を行うシャフト用換気部(HEPAフィルタ付の排気ファン14等)と、エレベータカゴ内の空気をエレベータシャフト内に排気する形態でエレベータカゴ内の空気を換気するカゴ用換気部(FFU9及び通気口13)とを備えているエレベータ換気システムが示されている。
【0003】
また、特許文献2には、空気清浄装置6によってエレベータカゴ(乗りかご10)内で空気を循環させてエレベータカゴ内の空気の清浄化を行っているカゴ清浄化システムが示されている。このカゴ清浄化システムでは、通常は、空気清浄装置6のファンの回転数を低(通常運転)として循環する空気量が少なくしておき、エレベータカゴに感染者が乗った場合に、空気清浄装置6のファンの回転数を高(清浄運転)として循環する空気量を多くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-255260号公報
【特許文献2】特開2014-240313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のエレベータ換気システムにおいて、エレベータカゴに空気質汚染要因が存在する場合(例えば、感染者がエレベータカゴに乗った場合)等のように、エレベータカゴ内の換気を迅速に行いたい場合がある。そこで、特許文献2のシステムを参考にし、特許文献1に記載のエレベータ換気システムにおいて、通常は、FFUのファンの回転数を低として換気量を少なくしておき、エレベータカゴ内に空気質汚染要因が存在する場合に、FFUの回転数を高として換気量を多くすることが考えられる。このように、空気質汚染要因がエレベータカゴ内にある場合のように、エレベータカゴ内の迅速な換気が必要な場合に、カゴ用換気部による換気量を多くしてエレベータカゴ内の換気を迅速に行うことが考えられる。
【0006】
しかしながら、上述のようにカゴ用換気部による換気量を多くした場合、エレベータカゴからエレベータシャフト内に排気される空気量が多くなり、エレベータシャフト内の換気が十分に行えず、エレベータシャフト内が汚染され易くなるという問題が生じる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、エレベータカゴ内とエレベータシャフト内とを適切に換気することができるエレベータ換気システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、エレベータカゴが昇降するエレベータシャフト内の換気を行うシャフト用換気部と、
前記エレベータカゴ内の空気を前記エレベータシャフト内に排気する形態で前記エレベータカゴ内の換気を行うカゴ用換気部とを備え、
前記カゴ用換気部は、カゴ通常換気状態と、前記カゴ通常換気状態より換気量が多いカゴ増量換気状態とに切り替え自在に構成され、
前記シャフト用換気部は、前記カゴ用換気部が前記カゴ通常換気状態に切り替わるに伴ってシャフト通常換気状態に切り替わり、前記カゴ用換気部が前記カゴ増量換気状態に切り替わるに伴って前記シャフト通常換気状態より換気量が多いシャフト増量換気状態に切り替わるように構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、エレベータカゴ内の空気が汚染される虞がある場合(空気質汚染要因がエレベータカゴに乗った場合等)にカゴ用換気部をカゴ通常換気状態からカゴ増量換気状態に切り替えてエレベータカゴ内に対する換気量を多くすることでエレベータカゴ内の換気を迅速に行うことができる。そして、このようにカゴ用換気部をカゴ増量換気状態に切り替えることで、エレベータカゴからエレベータシャフト内に排気される空気量が多くなり、エレベータシャフト内が汚染され易くなるが、このカゴ用換気部の切り替えに応じて、シャフト用換気部もシャフト通常換気状態からシャフト増量換気状態に切り替わりエレベータシャフト内に対する換気量が多くなるため、エレベータシャフト内の換気を適切に行うことができる。従って、エレベータカゴ内とエレベータシャフト内との換気を適切に行うことができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記エレベータカゴ内の空気質汚染要因を検知する検知部を備え、
前記カゴ用換気部は、前記検知部が検知するのに伴って前記カゴ通常換気状態から前記カゴ増量換気状態に切り替わるように構成されている点にある。
【0011】
本構成によれば、汚染質や汚染源などの空気質汚染要因がエレベータカゴ内に存在する場合は、そのことが検知部によって検知され、カゴ用換気部がカゴ増量換気状態に切り替わり、エレベータカゴ内を迅速に換気することができるため、エレベータカゴ内の人や者に汚染質が付着して伝播拡散することを防止できるとともに、エレベータホール等の共用部に汚染空気が漏洩するのを防止できる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記カゴ用換気部は、前記検知部が検知してから設定条件を満たすまでは前記カゴ増量換気状態を維持し、前記設定条件を満たした場合に前記カゴ増量換気状態から前記カゴ通常換気状態に切り替わるように構成されている点にある。
【0013】
本構成によれば、設定条件として、例えば、空気質汚染要因がエレベータカゴから降りる、又は、空気質汚染要因がエレベータカゴから降りてから設定時間が経過する等を設定することで、空気質汚染要因がエレベータに乗っている間や空気質汚染要因がエレベータから降りてから暫くは、カゴ用換気部のカゴ増量換気状態が維持されるため、空気質汚染要因が乗っているエレベータカゴ内や空気質汚染要因が降りた後のエレベータカゴ内を迅速に換気することができる。このように、空気質汚染要因がエレベータカゴに乗ってから予め設定された状態になるまではカゴ増量換気状態が維持されるため、エレベータカゴに乗った人や物に汚染質が付着して伝播拡散することを一層防止できるとともに、エレベータホール等の共用部に汚染空気が漏洩するのを一層防止できる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記検知部は、感染者が前記エレベータカゴに乗ったことを検知するように構成されている点にある。
【0015】
本構成によれば、感染者がエレベータカゴに乗った場合には病原体によってエレベータカゴ内の空気質が汚染される虞があるが、感染者がエレベータカゴ内に乗った場合には、そのことが検知部によって検知され、カゴ用換気部がカゴ増量換気状態に切り替わり、汚染源となる感染者が乗っているエレベータカゴ内を迅速に換気することができるため、感染者と同じエレベータカゴに乗っている人に感染が広がるのを防止できる。
【0016】
本発明の第5特徴構成は、前記カゴ用換気部は、前記エレベータシャフト内の空気を給気用フィルターを通して前記エレベータカゴ内に給気する給気部と、前記エレベータカゴ内の空気を排気用フィルターを通して前記エレベータシャフト内に排気する排気部とを備え、前記カゴ増量換気状態に切り替えられている状態では、前記給気部の前記給気用フィルターを通して給気すると共に、前記排気部の前記排気用フィルターを通して排気するように構成されている点にある。
【0017】
本構成によれば、カゴ増量換気状態では、エレベータカゴ内に給気用フィルターを通して給気されると共に、エレベータシャフト内に排気用フィルターを通して排気されるため、エレベータカゴ内及びエレベータシャフト内の空気の清浄度を高めることができ、例えば、エレベータカゴ内の空気及びエレベータシャフト内に排気された空気から汚染が広がるのを防止できる。
【0018】
本発明の第6特徴構成は、前記カゴ用換気部は、排気用フィルターを通さずに排気する第1排気部と、前記排気用フィルターを通して排気する第2排気部とを備え、前記カゴ通常換気状態に切り替えられている状態では前記第1排気部を通して排気し、前記カゴ増量換気状態に切り替えられている状態では前記第2排気部を通して排気するように構成されている点にある。
【0019】
本構成によれば、カゴ用換気部がカゴ増量換気状態に切り替えられている状態では、第2排気部によって排気用フィルターを通した排気が行われるため、エレベータシャフト内の空気の汚染を防止することができ、カゴ用換気部が通常換気状態に切り替えられている状態では、第1排気部によって排気用フィルターを通さない排気が行われるため、排気用フィルターが汚染され難くなり、排気用フィルターの交換頻度を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】通常換気状態の空気の流れを示すエレベータ換気システムの側面図
【
図2】増量換気状態の空気の流れを示すエレベータ換気システムの側面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るエレベータ換気システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、エレベータ換気システム1は、エレベータカゴ2が昇降するエレベータシャフト3内の換気を行うシャフト用換気部4と、エレベータカゴ2内の空気をエレベータシャフト3内に排気する形態でエレベータカゴ2内の換気を行うカゴ用換気部5とを備えている。
本実施形態では、エレベータ換気システム1は、感染者(空気質汚染要因の一例であり、汚染源の一例)がエレベータカゴ2に乗る可能性が高い病院等の建物7に備えられている。尚、感染者を、飛沫感染や空気感染によって感染が拡大する感染症に感染している者や、このような感染症の感染が疑われる者としている。
【0022】
建物7の各フロアに設けられているエレベータホール8には、エレベータカゴ2に対して乗り降りするためのホール開口部9が形成されていると共に、そのホール開口部9に対して開閉自在に乗場ドア10が備えられている。また、エレベータカゴ2には、乗り降りするためのカゴ開口部11が形成されていると共に、そのカゴ開口部11に対して開閉自在にカゴドア12が備えられている。
【0023】
〔シャフト用換気部4〕
シャフト用換気部4には、エレベータホール8内の空気をエレベータシャフト3内に給気するシャフト用給気部14と、エレベータシャフト3内から外部に排気するシャフト用排気部15とが備えられている。シャフト用換気部4は、シャフト用給気部14によってエレベータホール8の空気をエレベータシャフト3内に給気すると共に、シャフト用排気部15によってエレベータシャフト3内の空気を屋外等の外部に排気する形態で、エレベータシャフト3内を換気するように構成されている。
【0024】
シャフト用排気部15は、シャフト用ファンを内装した送風機16とシャフト用フィルター17とを備えている。シャフト用排気部15は、送風機16のシャフト用ファンの回転によってエレベータシャフト3内の空気を吸引してシャフト用フィルター17を通して外部に排気するように構成されている。
【0025】
シャフト用給気部14は、ホール開口部9によって構成されている。説明を加えると、ホール開口部9は、通常は乗場ドア10によって閉じられているものの乗場ドア10とエレベータホール8の壁との間に形成されている隙間等によって通気可能となっておりシャフト用排気部15の送風機16の作動によってエレベータシャフト3内の空気が強制排気されてエレベータシャフト3内がエレベータホール8に対して負圧になることで、エレベータホール8内の空気がホール開口部9を通ってエレベータシャフト3内に給気されるように構成されている。
【0026】
シャフト用換気部4は、シャフト通常換気状態と、シャフト通常換気状態より換気量が多いシャフト増量換気状態とに切り替え可能に構成されている。本実施形態では、シャフト用換気部4は、送風機16のシャフト用ファンの回転数を通常回転速度とすることでシャフト通常換気状態に切り替わり、送風機16のシャフト用ファンの回転速度を通常回転速度より早い増量回転速度とすることでシャフト増量換気状態に切り替わるように構成されている。
例えば、シャフト通常換気状態は、1時間の換気量をエレベータシャフト3の容積と同程度とし、エレベータシャフト3内を1時間で1回(1回/h)換気できる換気量としている。また、シャフト増量換気状態は、1時間の換気量をエレベータシャフト3の容積の12倍程度とし、エレベータシャフト3内を1時間で12回(12回/h)換気できる換気量としている。
また、本実施形態では、シャフト用フィルター17として、ウイルスや細菌に対して捕集効果を有するフィルターを用いており、具体的にはHEPAフィルターを用いている。
【0027】
シャフト用排気部15は、最上階のホール開口部9より上方側に設置されており、例えば、エレベータシャフト3の上端部に設けられた機械室等に設置されている。
シャフト用換気部4は、シャフト用フィルター17を通してエレベータシャフト内の空気を外部に排気するように構成されているため、エレベータシャフト3内から排気される空気によって外部が汚染されることが防止されている。また、シャフト用換気部4は、エレベータシャフト3内をエレベータホール8に対して負圧にすることで、エレベータホール8内の空気がエレベータシャフト3内に給気されるように構成されているため、エレベータシャフト3内からエレベータホール8内に空気が流出し難くなっており、エレベータシャフト3内の空気によってエレベータホール8が汚染されることが抑制されている。
【0028】
〔カゴ用換気部5〕
カゴ用換気部5は、エレベータカゴ2に備えられており、カゴ用換気部5には、エレベータシャフト3内の空気をエレベータカゴ2内に給気するカゴ用給気部19と、エレベータカゴ2内からエレベータシャフト3内に排気するカゴ用排気部20とが備えられている。カゴ用換気部5は、カゴ用給気部19によってエレベータシャフト3内の空気をエレベータカゴ2内に給気すると共に、カゴ用排気部20によってエレベータカゴ2内の空気をエレベータシャフト3内に排気する形態で、エレベータカゴ2内を換気するように構成されている。
本実施形態では、カゴ用給気部19として、第1給気部19Aと第2給気部19Bとが備えられ、カゴ用排気部20として、第1排気部20Aと第2排気部20Bとが備えられている。
【0029】
第1排気部20Aは、第1排気用ファン22を備えているが、フィルターは備えていない。
図1に示すように、第1排気部20Aは、第1排気用ファン22の回転によってエレベータカゴ2内の空気を吸引し、フィルターを通さずにエレベータシャフト3内に排気するように構成されている。第1排気部20Aは、エレベータカゴ2内の空気を直接吸引し、エレベータシャフト3内に直接排気するようにエレベータカゴ2に設置されており、ダクトを用いずにエレベータカゴ2内の空気を吸引してエレベータシャフト3内に排気する。
【0030】
第1給気部19Aは、カゴ開口部11によって構成されている。カゴ開口部11は、通常はカゴドア12によって閉じられているもののカゴドア12とエレベータカゴ2の壁との間に形成されている隙間等によって通気可能となっており、第1排気部20Aの第1排気用ファン22の作動によってエレベータカゴ2内の空気が強制排気されてエレベータカゴ2内がエレベータシャフト3内に対して負圧になることでエレベータシャフト3内の空気がカゴ開口部11を通ってエレベータカゴ2内に給気されるように構成されている。ちなみに、エレベータカゴ2がエレベータホール8に対して停止しており、乗場ドア10及びカゴドア12が開いている状態では、エレベータホール8内の空気がホール開口部9及びカゴ開口部11を通ってエレベータカゴ2内に自然に給気される。
【0031】
第2排気部20Bは、第2排気用ファン23と排気用フィルター24とを一体化させた状態で備えている。
図2に示すように、第2排気部20Bは、第2排気用ファン23の回転によってエレベータカゴ2内の空気を吸引し、排気用フィルター24を通してエレベータシャフト3内に排気するように構成されている。また、第2排気部20Bは、エレベータカゴ2内の空気を直接吸引し、エレベータシャフト3内に直接排気するようにエレベータカゴ2に設置されており、ダクトを用いずにエレベータカゴ2内の空気を吸引してエレベータシャフト3内に排気する。
【0032】
第2給気部19Bは、給気用ファン25と給気用フィルター26とを一体化させた状態で備えている。第2給気部19Bは、給気用ファン25の回転によってエレベータシャフト3内の空気を吸引し、給気用フィルター26を通してエレベータカゴ2内に給気するように構成されている。また、第2給気部19Bは、エレベータシャフト3内の空気を直接吸引し、エレベータカゴ2内に直接給気するようにエレベータカゴ2に設置されており、ダクトを用いずにエレベータシャフト3内の空気を吸引してエレベータカゴ2内に給気する。
【0033】
このように、カゴ用換気部5は、エレベータシャフト3内の空気を給気用フィルター26を通してエレベータカゴ2内に給気する第2給気部19B(給気部)と、エレベータカゴ2内の空気を排気用フィルター24を通してエレベータシャフト3内に排気する第2排気部20B(排気部)とを備えている。また、カゴ用換気部5は、排気用フィルター24を通さずに排気する第1排気部20Aと、排気用フィルター24を通して排気する第2排気部20Bとを備えている。
【0034】
図1及び
図2に示すように、カゴ用換気部5は、カゴ通常換気状態と、カゴ通常換気状態より換気量が多いカゴ増量換気状態とに切り替え可能に構成されている。
図1に示すように、カゴ用換気部5は、カゴ通常換気状態では、第1給気部19Aによってエレベータシャフト3内の空気をエレベータカゴ2内に給気すると共に、第1排気部20Aによってエレベータカゴ2内の空気をエレベータシャフト3内に排気する形態で、エレベータカゴ2内を換気するように構成されている。そして、第1給気部19Aや第1排気部20Aにはフィルターが備えられていないため、カゴ用換気部5は、カゴ通常換気状態に切り替えられている状態では、フィルターを通さずに給気すると共にフィルターを通さずに排気する。
【0035】
また、
図2に示すように、カゴ用換気部5は、カゴ増量換気状態では、第2給気部19Bによってエレベータシャフト3内の空気をエレベータカゴ2内に給気すると共に、第2排気部20Bによってエレベータカゴ2内の空気をエレベータシャフト3内に排気する形態で、エレベータカゴ2内を換気するように構成されている。そして、第2給気部19Bには給気用フィルター26が備えられており、第2排気部20Bには排気用フィルター24が備えられているため、カゴ用換気部5は、カゴ増量換気状態に切り替えられている状態では、第2給気部19Bの給気用フィルター26を通して給気すると共に第2排気部20Bの排気用フィルター24を通して排気する。
【0036】
本実施形態では、第2給気部19Bによる強制給気量及び第2排気部20Bによる強制排気量を、第1排気部20Aによる強制排気量より多くしている。そのため、カゴ用換気部5は、第1排気部20Aの第1排気用ファン22を作動させて第1給気部19A及び第1排気部20Aによって換気を行うことによってカゴ通常換気状態に切り替わり、第2給気部19Bの給気用ファン25及び第2排気部20Bの第2排気用ファン23を作動させて第2給気部19B及び第2排気部20Bによって換気を行うことによってカゴ増量換気状態に切り替わるように構成されている。ちなみに、第2給気部19Bによる強制給気量と第2排気部20Bによる強制排気量とは同じに設定されている。
【0037】
例えば、カゴ通常換気状態は、1時間の換気量をエレベータカゴ2の容積の2倍程度とし、エレベータカゴ2内を1時間で2回(2回/h)換気できる換気量としている。また、カゴ増量換気状態は、1時間の換気量をエレベータカゴ2の容積の12倍程度とし、エレベータカゴ2内を1時間で12回(12回/h)換気できる換気量としている。
尚、第2給気部19B、第1排気部20A、第2排気部20Bの夫々は、通気を遮断可能な開閉弁(図示せず)が備えられている。そして、カゴ通常換気状態では、第1排気部20Aの開閉弁が開けられると共に 第2給気部19B及び第2排気部20Bの開閉弁が閉じられ、カゴ増量換気状態では、第1排気部20Aの開閉弁が閉じられると共に、第2給気部19B及び第2排気部20Bの開閉弁が開けられる。
また、本実施形態では、排気用フィルター24や及び給気用フィルター26として、ウイルスや細菌に対して捕集効果を有するフィルターを用いており、具体的にはHEPAフィルターを用いている。
【0038】
図2に示すように、第2給気部19Bは、エレベータカゴ2の天井又は側壁の天井近く等のエレベータカゴ2の上部に設置されており、第2排気部20Bは、エレベータカゴ2の床又は側壁の床近く等のエレベータカゴ2の下部に設置されている。本実施形態では、第2給気部19Bはエレベータカゴ2の天井に設置されており、第2排気部20Bはエレベータカゴ2の側壁の下端部に設置されている。
そのため、カゴ用換気部5がカゴ増量換気状態に切り替えられている状態では、エレベータカゴ2内には天井から床に向けて空気が流れるダウンフローが形成されており、感染者の咳やくしゃみにより生じた飛沫が飛散し難くなっている。
また、カゴ用換気部5がカゴ増量換気状態に切り替えられている状態では、エレベータシャフト3内からエレベータカゴ2内への給気を給気用フィルター26を通して行うことで、エレベータシャフト3内の空気を清浄化してエレベータカゴ2内に供給していると共に、エレベータカゴ2内からエレベータシャフト3内への排気を排気用フィルター24を通して行うことで、エレベータカゴ2内から排気される空気によってエレベータシャフト3内が汚染されることを防止している。
【0039】
図1に示すように、第1排気部20Aは、エレベータカゴ2の天井又は側壁の天井近く等のエレベータカゴ2の上部に設置されている。本実施形態では、第1排気部20Aは、エレベータカゴ2の天井に設置されている。そのため、カゴ用換気部5がカゴ通常換気状態に切り替えられている状態では、エレベータカゴ2内の上部に溜まった熱気等をエレベータシャフト3内に排気し易くなっている。
【0040】
図3に示すように、エレベータ換気システム1は、エレベータカゴ2内の空気質汚染要因を検知する検知部28を備えている。そして、カゴ用換気部5は、検知部28が検知するのに伴ってカゴ通常換気状態からカゴ増量換気状態に切り替わるように構成されている。また、カゴ用換気部5は、検知部28が検知してから設定条件を満たすまではカゴ増量状態を維持し、設定条件を満たした場合にカゴ増量換気状態からカゴ通常換気状態に切り替わるように構成されている。また、シャフト用換気部4は、カゴ用換気部5がカゴ通常換気状態に切り替わるに伴ってシャフト通常換気状態に切り替わり、カゴ用換気部5がカゴ増量換気状態に切り替わるに伴ってシャフト増量換気状態に切り替わるように構成されている。尚、
図1は、シャフト用換気部4をシャフト通常換気状態とすると共にカゴ用換気部5をカゴ通常換気状態とした通常換気状態を示している。
図2は、シャフト用換気部4をシャフト増量換気状態とすると共にカゴ用換気部5をカゴ増量換気状態とした増量換気状態を示している。
【0041】
本実施形態では、エレベータカゴ2内の空気質汚染要因を、エレベータカゴ2に乗った感染者としており、検知部28は、感染者がエレベータカゴ2に乗ったことを検知するように構成されている。具体的には、検知部28を、感染者がエレベータカゴ2に乗った場合に感染者又は感染者と同乗した者に操作される乗車スイッチSとしている。つまり、感染者がエレベータカゴ2に乗った場合に乗車スイッチSが操作されたことを、検知部28によって感染者がエレベータカゴ2に乗ったことを検知したとしている。ちなみに、乗車スイッチSとしては、手をかざすことで操作可能な非接触スイッチを用いている。
【0042】
〔制御装置H〕
次に、シャフト用換気部4の換気状態やカゴ用換気部5の換気状態を切り替える制御について説明する。
図3に示すように、エレベータ換気システム1は、シャフト用換気部4及びカゴ用換気部5を制御する制御装置Hを備えている。
【0043】
制御装置Hは、通常運転制御と増量運転制御とを実行する。制御装置Hは、通常運転制御では、シャフト用換気部4をシャフト通常換気状態とし、カゴ用換気部5をカゴ通常換気状態とするように、シャフト用換気部4及びカゴ用換気部5を制御する。また、制御装置Hは、増量運転制御では、シャフト用換気部4をシャフト増量換気状態とし、カゴ用換気部5をカゴ増量換気状態とするように、シャフト用換気部4及びカゴ用換気部5を制御する。
【0044】
そして、制御装置Hは、エレベータカゴ2に感染者が乗ったことを検知部28が検知するのに伴って通常運転制御から増量運転制御に切り替える。また、制御装置Hは、検知部28が検知してから設定条件を満たすまでは増量運転制御を維持し、設定条件を満たした場合に増量運転制御から通常運転制御に切り替える。
【0045】
本実施形態では、設定条件を、検知部28が感染者を検知してから予め設定された設定時間が経過したことを条件としている。設定時間としては、感染者がエレベータカゴ2に乗っていると想定される乗車時間に、エレベータカゴ2内の換気が完了するまでに要する換気時間を加えた時間としている。乗車時間としては、エレベータカゴ2に乗った者がエレベータカゴ2から降りるまでに要する時間の平均時間や、エレベータカゴ2が最下階から最上階に移動するのに要する移動時間等とすることができる。換気時間としては、エレベータカゴ2内を設定回数換気するのに要する時間に基づいて設定され、例えば1時間に12回換気する場合において1回換気するのに要する時間であれば5分が設定される。
【0046】
また、設定条件を、上述のような設定時間が経過したことを条件とした場合、感染者がエレベータカゴ2から降りた後に設定時間が経過する前に別の感染者がエレベータカゴ2に乗ることが考えられる。このような場合でも、エレベータカゴ2の換気が適切に行えるように、制御装置Hは、感染者がエレベータカゴ2に乗ったことを検知部28が検知してから設定条件を満たすまでに、別の感染者がエレベータカゴ2に乗ったことを検知部28が検知した場合は、前回の検知部28の検知から経過した時間をリセットするリセット処理を実行する。
【0047】
以下、
図4に示すフローチャートに基づいて制御装置Hの制御について説明を加える。
制御装置Hは、感染者がエレベータカゴ2に乗っていない場合のような通常状態では通常運転制御を実行している(ステップ♯1)。そして、制御装置Hは、通常運転制御を実行している状態で、エレベータカゴ2に感染者が乗ったことを検知部28が検知するまでは通常運転制御を維持し(ステップ♯2のNoの場合)、エレベータカゴ2に感染者が乗ったことを検知部28が検知するのに伴って通常運転制御から増量運転制御に切り替える(ステップ♯2のYesの場合、ステップ♯3)。
【0048】
また、制御装置Hは、増量運転制御を実行している状態で、予め設定された設定条件を満たしておらず、感染者がエレベータカゴ2に乗っている、或いは、感染者がエレベータカゴ2から降りた後の換気を行っている途中と判断した場合は増量運転制御を維持し(ステップ♯4のNoの場合)、予め設定された設定条件を満たし、感染者がエレベータカゴ2から降りると共に感染者がエレベータカゴ2から降りた後の換気が完了したと判断した場合は、増量運転制御から通常運転制御に切り替える(ステップ♯4のYesの場合、ステップ♯5)。
更に、制御装置Hは、増量運転制御を実行している状態で、設定条件を満たす前に感染者がエレベータカゴ2に乗ったことを検知部28が検知した場合は上述したリセット処理を実行する(ステップ♯4のNoの場合、ステップ♯6のYesの場合、ステップ♯7)。
【0049】
このように、本実施形態のエレベータ換気システム1では、感染者がエレベータカゴ2に乗った場合に、カゴ用換気部5をカゴ通常換気状態からカゴ増量換気状態に切り替えてエレベータカゴ2内に対する換気量を多くするため、エレベータカゴ2内の換気を迅速に行うことができる。そして、カゴ用換気部5をカゴ増量換気状態に切り替えることで、エレベータカゴ2からエレベータシャフト3内に排気される空気量が多くなり、エレベータシャフト3内が汚染され易くなるが、このカゴ用換気部5の切り替えに応じて、シャフト用換気部4もシャフト通常換気状態からシャフト増量換気状態に切り替えることで、エレベータシャフト3内に対する換気量を多くするため、エレベータシャフト3内の換気も適切に行うことができる。
【0050】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0051】
(1)上記実施形態では、エレベータカゴ2に乗った感染者を検知する検知部28として、エレベータカゴ2に乗った者が操作する乗車スイッチSとする構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、エレベータカゴ2に乗った感染者を検知する検知部28を、感染者の体温を検出する体温計とする、又は、感染者が発する信号を受信する受信部とする等、乗車スイッチ以外を検知部28としてもよい。ちなみに、検知部28を体温計とした場合は、体温計によってエレベータカゴ2に乗った者の体温を計測し、体温計が設定体温(例えば37度)以上を計測したことを、エレベータカゴ2に乗った感染者を検知したとしてもよい。また、検知部28を受信部とする場合では、感染者に予めRFIDタグ等の信号を発する発信源を所持させておき、感染者がエレベータカゴ2に乗った場合に発信源が発する信号を受信部が受信するようにして、受信部が信号を受信したことを、エレベータカゴ2に乗った感染者を検知したとしてもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、エレベータカゴ2内の空気質汚染要因を、エレベータカゴ2に乗った感染者(汚染源)とする例を説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、エレベータカゴ2内の空気質汚染要因を、花粉、臭気、二酸化炭素等の汚染質としてもよい。ちなみに、検知部28として、汚染質を検知する検知部28を設けた場合、検知部28によって検知される汚染質の量や濃度が設定値以上になった場合に、検知部28によって汚染質を検知したと判定するようにしてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、設定条件として、検知部28が感染者を検知してから設定時間が経過したことを条件とする例を説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、感染者がエレベータカゴ2から降りる場合に降車スイッチを操作するようにして、設定条件を、降車スイッチが操作されてから換気時間が経過したことを条件とするようにしてもよい。また、設定条件を、検知部28によって感染者が検知されなくなったことを条件としてもよい。
【0054】
(4)上記実施形態では、第2給気部19Bと第2排気部20Bとの双方にフィルターを備える構成を例として説明した。しかし、場合によっては、第2給気部19Bと第2排気部20Bとのうちの何れか一方にのみフィルターを備える構成としてもよく、第2給気部19Bと第2排気部20Bとの双方にフィルターを備えない構成としてもよい。
【0055】
(5)上記実施形態では、カゴ通常換気状態では第1給気部19Aと第1排気部20Aとで換気を用い、カゴ増量換気状態では第2給気部19Bと第2排気部20Bとを換気を行う構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、第2給気部19Bによる強制給気量及び第2排気部20Bによる強制排気量を変更することでカゴ通常換気状態やカゴ増量換気状態に切り替えるようにして、カゴ通常換気状態とカゴ増量換気状態との何れの状態でも第2給気部19Bと第2排気部20Bとで換気を行うようにしてもよい。
【0056】
(6)上記実施形態では、エレベータ換気システム1を病院に設置する例を説明した。しかし、エレベータ換気システム1を、エレベータホール8をクリーンルームの一部とした製造施設に設置する等、エレベータ換気システム1を設置する場所は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 エレベータ換気システム
2 エレベータカゴ
3 エレベータシャフト
4 シャフト用換気部
5 カゴ用換気部
19B 第2給気部(給気部)
20A 第1排気部
20B 第2排気部(排気部)
26 給気用フィルター
28 検知部