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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023025843
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】輻射パネル及び輻射冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20230216BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20230216BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20230216BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
F24F5/00 Z
F24F5/00 101B
F24F13/02 D
F24F13/06 A
E04B2/74 541M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131230
(22)【出願日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】307018405
【氏名又は名称】株式会社エコ・パワー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515178281
【氏名又は名称】株式会社九州日栄
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 正
(72)【発明者】
【氏名】水野 高伸
【テーマコード(参考)】
3L054
3L080
【Fターム(参考)】
3L054BE10
3L080AA01
3L080AA09
3L080AC01
3L080BA01
(57)【要約】
【課題】熱輻射部材に対して気体保有熱の伝達を促進する輻射パネル及び輻射冷暖房システムを提供する。
【解決手段】輻射パネルは、気体流路を形成する流路形成部材と、制限部材と、を備える。流路形成部材は、熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板と、気体流路を表面板と協働して形成する包囲部材と、を有する。制限部材は、表面板との間に隙間をあけて気体流路に設けられ、気体流路の断面積を制限する部材であり、気体流路の内部を気体が流れる方向に沿って所定の間隔で複数が設けられている。輻射パネルは、表面板と制限部材との間の隙間を通過する気体の流速を上昇させることができ、気体が保有する冷熱又は温熱を表面板に伝達するのを促進させる。輻射冷暖房システムは、上記の輻射パネルと、気体の温度を調節する温度調節機器と、温度が調節された気体を気体流路に導く分配ダクトと、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板と、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する包囲部材と、を有する流路形成部材と、
前記表面板との間に隙間をあけて前記気体流路に設けられ、前記気体流路の断面積を制限する制限部材と、を備え、
前記制限部材は、前記気体流路の内部を前記気体が流れる方向に沿って所定の間隔で複数が設けられている、
輻射パネル。
【請求項2】
前記制限部材は、前記表面板に交差する方向に延びて前記隙間を残して前記気体流路の断面積を塞ぐ閉塞板と、前記閉塞板から前記気体が流れる方向に向けて前記表面板に沿って延びる平行板と、を含む、
請求項1に記載の輻射パネル。
【請求項3】
前記閉塞板は、所定の流量の前記気体が通過可能な通過孔が形成されている、
請求項2に記載の輻射パネル。
【請求項4】
前記気体流路は、前記気体が流れる流れ方向に細長く形成されており、
前記包囲部材は、前記表面板に接続されて前記流れ方向に延びる側面板を有しており、
前記流路形成部材の複数が、前記側面板同士を共有して又は前記側面板同士が隣接して、前記流れ方向に対して交差する方向に配列されている、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の輻射パネル。
【請求項5】
前記気体が前記気体流路から流出する流出口に設けられ、前記流出口から流出した前記気体が前記気体流路の外側の前記表面板に沿う流れとなるように前記気体の流れの向きを変える輪郭を有する方向変換部材を備える、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の輻射パネル。
【請求項6】
前記気体流路の外側の前記表面板に設けられ、前記気体流路の外側の前記表面板に沿って流れてきた前記気体の流れの向きを前記表面板から離れる方向に変える輪郭を有する気流案内板を備える、
請求項5に記載の輻射パネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の輻射パネルと、
前記気体の温度を調節する温度調節機器と、
前記温度調節機器で温度が調節された前記気体を前記気体流路に導く分配ダクトと、を備える、
輻射冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は輻射パネル及び輻射冷暖房システムに関し、特に気体が保有する熱の熱輻射部材への伝達を促進する輻射パネル及び輻射冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと快適性とを両立する冷暖房方式として、輻射熱で冷暖房を行う輻射冷暖房システムが採用されることが増加してきている。輻射冷暖房システムは、冷暖房対象空間に面する部材(例えば天井など)を、冷房時は冷やし暖房時は暖めて、冷却又は加熱した部材からの輻射熱により対象空間の冷暖房を行うシステムである。輻射冷暖房システムに用いられる部材として、対象空間に面する表面板の裏側に、温度調節した空気を流す流路を複数設け、この流路を流れる空気の熱を表面板に伝達させて、表面板から冷熱又は温熱を輻射する仕切パネルがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-252375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輻射による冷暖房では、冷熱又は温熱を輻射する部材に、気体が保有する冷熱又は温熱をより多く伝達させることができれば、冷暖房をより効果的に行うことができ、省エネルギーにも資することとなる。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、冷熱又は温熱を輻射する部材に対して気体が保有する冷熱又は温熱を伝達することを促進する輻射パネル及び輻射冷暖房システムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る輻射パネルは、熱輻射エネルギーの射出又は入射を行う表面板と、気体が流れる気体流路を前記表面板と協働して形成する包囲部材と、を有する流路形成部材と、前記表面板との間に隙間をあけて前記気体流路に設けられ、前記気体流路の断面積を制限する制限部材と、を備え、前記制限部材は、前記気体流路の内部を前記気体が流れる方向に沿って所定の間隔で複数が設けられている。
【0007】
このように構成すると、表面板と制限部材との間の隙間を通過する気体の流速を上昇させることができ、気体が保有する冷熱又は温熱を表面板に伝達するのを促進させることができる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る輻射パネルは、上記本開示の第1の態様に係る輻射パネルにおいて、前記制限部材は、前記表面板に交差する方向に延びて前記隙間を残して前記気体流路の断面積を塞ぐ閉塞板と、前記閉塞板から前記気体が流れる方向に向けて前記表面板に沿って延びる平行板と、を含む。
【0009】
このように構成すると、表面板と制限部材との間の隙間が平行板の長さにわたって形成されることとなり、隙間を通過する気体の流れを安定させることができる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る輻射パネルは、上記本開示の第2の態様に係る輻射パネルにおいて、前記閉塞板は、所定の流量の前記気体が通過可能な通過孔が形成されている。
【0011】
このように構成すると、制限部材を挟んだ上流側と下流側との圧力差を縮小させることができ、平行板の末端付近での気体の渦の発生を抑制することができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る輻射パネルは、上記本開示の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る輻射パネルにおいて、前記気体流路は、前記気体が流れる流れ方向に細長く形成されており、前記包囲部材は、前記表面板に接続されて前記流れ方向に延びる側面板を有しており、前記流路形成部材の複数が、前記側面板同士を共有して又は前記側面板同士が隣接して、前記流れ方向に対して交差する方向に配列されている。
【0013】
このように構成すると、気体が保有する冷熱又は温熱を効率的に伝達させる表面板の面積を拡大させることができる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る輻射パネルは、上記本開示の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る輻射パネルにおいて、前記気体が前記気体流路から流出する流出口に設けられ、前記流出口から流出した前記気体が前記気体流路の外側の前記表面板に沿う流れとなるように前記気体の流れの向きを変える輪郭を有する方向変換部材を備える。
【0015】
このように構成すると、気体流路を通過後の気体に残存している冷熱又は温熱を、気体流路の外側から表面板に伝達させることができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る輻射パネルは、上記本開示の第5の態様に係る輻射パネルにおいて、前記気体流路の外側の前記表面板に設けられ、前記気体流路の外側の前記表面板に沿って流れてきた前記気体の流れの向きを前記表面板から離れる方向に変える輪郭を有する気流案内板を備える。
【0017】
このように構成すると、表面板から冷熱又は温熱を輻射する空間に向けて気体を強制対流させることができ、当該空間の冷房又は暖房を補助することができる。
【0018】
また、本開示の第7の態様に係る輻射冷暖房システムは、上記本開示の第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る輻射パネルと、前記気体の温度を調節する温度調節機器と、前記温度調節機器で温度が調節された前記気体を前記気体流路に導く分配ダクトと、を備える。
【0019】
このように構成すると、気体が保有する冷熱又は温熱を表面板に伝達し、表面板から熱輻射が行われることで、冷房又は暖房を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、表面板と制限部材との間の隙間を通過する気体の流速を上昇させることができ、気体が保有する冷熱又は温熱を表面板に伝達するのを促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施の形態に係る輻射パネルの分解斜視図である。
図2】(A)は本開示の実施の形態に係る輻射パネルを構成する第1蓋の斜視図、(B)は第1蓋の部分正面図である。
図3】(A)は本開示の実施の形態に係る輻射パネルを構成する第2蓋の斜視図、(B)は第2蓋の部分正面図である。
図4】(A)は本開示の実施の形態に係る輻射パネルを構成する流路形成部材の部分斜視図、(B)は流路形成部材の部分正面図である。
図5】(A)は本開示の実施の形態に係る輻射パネルを構成する伝熱促進エレメントの部分斜視図、(B)は伝熱促進エレメントが有する制限部材の斜視図、(C)は伝熱促進エレメントが取り付けられた流路形成部材の部分側面断面図である。
図6】(A)は本開示の実施の形態に係る輻射パネルの斜視図、(B)は輻射パネルの側面図である。
図7】本開示の実施の形態に係る輻射パネルが有する変換部材の斜視図である。
図8】本開示の実施の形態に係る輻射パネルが有する案内板の斜視図である。
図9】本開示の実施の形態に係る輻射パネルに取り付けられる分配ダクトの斜視図である。
図10】本開示の実施の形態に係る輻射冷暖房システムの模式的系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
まず図1を参照して、一実施の形態に係る輻射パネル10を説明する。図1は、輻射パネル10の分解斜視図である。輻射パネル10は、温度が調節された空気(以下「温調空気A」という。)を内部に通過させて、冷却又は加熱された輻射パネル10から冷熱又は温熱を輻射することで、周囲の冷暖房を行うためのものである。ここで、輻射パネル10を冷却して冷熱を輻射する際は、周囲よりも温度が低い輻射パネル10が、周囲から吸熱することで清涼感が得られるのであるが、便宜上、輻射パネル10が冷熱を輻射すると表現することとする。また、冷暖房を行うとは、状況に応じて冷房又は暖房のいずれかを行うことをいう。冷暖房を行う輻射パネル10は、典型的には、冷房及び暖房のいずれをも行うことができる。輻射パネル10は、本実施の形態では、建物(工場、多目的ホール、事務室等)の天井に設置されるものとして説明する。輻射パネル10は、主要構成部材として、第1蓋11と、第2蓋15と、伝熱促進エレメント20とを備えている。以下、適宜図1を併せて参照して輻射パネル10の構成を説明する。
【0024】
図2(A)は第1蓋11の斜視図、図2(B)は第1蓋11の部分正面図である。第1蓋11は、輻射パネル10の外装の約半分を構成する部材である。第1蓋11は、薄板状の部材が折り返し加工されて形成されている。第1蓋11は、典型的には鋼板で構成されているが、他の金属板や、成型性に富み熱放射による伝熱性に優れた他の材料(金属以外の材料)で構成されていてもよい。また、第1蓋11を構成する材料には、亜鉛めっき等の表面処理が施されていてもよい。第1蓋11は、薄板状部材の折り返し加工によって、第1側面板13と、小突起14とが形成されている。第1側面板13は、本実施の形態では、薄板状部材を90度に曲げ、この曲げた位置から所定の長さのところで180度折り返し、先程90度に曲げた位置で薄板状部材が存在する側とは逆側に90度曲げることにより、形成されている。このように折り返し加工しているので、第1側面板13は、本実施の形態では、薄板状部材が2枚重なった状態になっている。小突起14は、第1側面板13よりも高さが短いが、第1側面板13と同様の折り返し加工によって形成されている。第1蓋11には、第1側面板13及び小突起14がそれぞれ複数形成されており、第1側面板13及び小突起14は交互に形成されている。第1側面板13及び小突起14は、薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向に沿って、相互に平行に延びている。第1側面板13及び小突起14が突き出ている側とは反対側の第1蓋11の面は、面一になっている。この面一になっている第1蓋11の面の部分を、表面板12ということとする。上述の折り返し加工により、本実施の形態では、表面板12と第1側面板13及び小突起14とが一体に形成されている。表面板12は、熱輻射エネルギーの射出(暖房時)又は入射(冷房時)を行うことができるようになっている。
【0025】
図3(A)は第2蓋15の斜視図、図3(B)は第2蓋15の部分正面図である。以下、第1蓋11の構成に言及しているときは適宜図2を参照することとする。第2蓋15は、輻射パネル10の外装の残りの約半分を構成する部材である。第2蓋15は、薄板状の部材が折り返し加工されて形成されている。第2蓋15は、典型的には第1蓋11と同じ材料で構成されているが、第1蓋11と異なる材料で構成されていてもよい。第2蓋15は、第1蓋11が採用可能な材料を採用することができる。第2蓋15は、薄板状部材の折り返し加工によって、第2側面板17が形成されている。第2蓋15には、第1蓋11における小突起14と同様の構成は形成されていない。第2側面板17は、本実施の形態では、第1側面板13と同じ要領で形成され、高さも第1側面板13と同じ所定の長さに形成されている。第2蓋15には、第2側面板17が複数形成されている。各第2側面板17は、薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向に沿って平行に延びている。隣接する第2側面板17の間隔は、第1蓋11における隣接する第1側面板13の間隔と同じ(換言すれば、第1側面板13と小突起14との間隔の2倍)になっている。第2側面板17が突き出ている側とは反対側の面は、面一になっている。この面一になっている第2蓋15の面の部分を、対向板16ということとする。薄板状部材の折り返し加工により、本実施の形態では、対向板16と第2側面板17とが一体に形成されている。本実施の形態では、対向板16に、流入口18が形成されている。流入口18は、気体(温調空気A)が通過する開口である。流入口18は、本実施の形態では、第2側面板17が延びる方向における対向板16の中央に形成されている。また、流入口18は、隣接する第2側面板17の間隔1箇所につき1つが形成されている。したがって、流入口18は、第2側面板17の数から1を引いた数の分だけ形成されている。
【0026】
図4(A)及び図4(B)に示すように、輻射パネル10の外装は、第1蓋11と第2蓋15とが組み合わせられることで構成されている。第1蓋11及び第2蓋15は、表面板12と対向板16との間に第1側面板13及び第2側面板17が挟まれるように組み合わせられている。このとき、各第2側面板17が各小突起14の一方の側面に接するように組み合わせられている。このように第1蓋11及び第2蓋15が組み合わせられることで、表面板12と対向板16との間に、第1側面板13及び第2側面板17によって区分けされた空間が複数形成されることとなる。この、表面板12と、第1側面板13と、対向板16と、第2側面板17とに囲まれた空間は、気体の一形態である温調空気Aが流れる気体流路Rとなる。したがって、第1側面板13と、第2側面板17と、第1側面板13と第2側面板17との間にある表面板12及び対向板16の各部分とは、流路形成部材19を構成している。また、流路形成部材19の表面板12以外の部分(第1側面板13、小突起14、対向板16、第2側面板17)が、包囲部材に相当する。本実施の形態では、第1蓋11と第2蓋15とを組み合わせることによって、複数の気体流路Rが形成されている。気体流路Rは、第1蓋11及び第2蓋15を成形したときに薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向に細長く形成されている。以下、説明の便宜上、薄板状部材を折り曲げた際の折り曲げ線が延びる方向を、軸線方向Xということがある。また、気体流路Rについて、軸線方向Xの距離を「長さ」と、軸線方向Xに直交し表面板12に平行な方向の距離を「幅」と、軸線方向X及び表面板12に直交する方向の距離を「高さ」と、いうことがある。これらの用語を用いて気体流路Rを表現し直すと、輻射パネル10内には、軸線方向Xに細長い気体流路Rの複数が、幅方向に配列されているということができる。前述した第1側面板13及び第2側面板17の所定の長さは、気体流路Rの高さとなるように決定すればよい。また、1つの流入口18は、2つの気体流路Rにまたがって、軸線方向Xの中央に形成されていると表現することができる。
【0027】
各気体流路Rは、第1側面板13及び第2側面板17が、隣接する気体流路Rに対して区画する区画板の機能を果たしている。本実施の形態では、幅方向両端の気体流路Rを除く気体流路Rは、隣接する気体流路Rと、第1側面板13又は第2側面板17を区画板として共有している。第1側面板13は、本実施の形態では、表面板12と一体に形成されているため、表面板12に接続されているといえる。また、第2側面板17は、本実施の形態では、表面板12とは別体に形成されているが、表面板12に接触しているため、表面板12に接続されているといえる。このように、表面板12に接続されていることには、一体に形成されている他、分離したものが接触していることを含む。このため、区画板として機能する第1側面板13及び第2側面板17は、側面板に相当する。気体流路Rは、本実施の形態では、軸線方向Xに直交する断面が矩形に形成されている。輻射パネル10及びその中の気体流路Rのサイズは、輻射パネル10を設置する場所や用途に応じて適宜決定することができる。気体流路Rは、典型的には、長さと幅との比(長さ/幅)が、5以上に構成されており、10や20程度でもよく、30~85程度としてもよく、本実施の形態では概ね40~45としている。
【0028】
各気体流路Rは、前述のように軸線方向Xの中央に流入口18が形成されている一方で、軸線方向Xの両端に流出口29が形成されている。流入口18は、温調空気Aが気体流路Rに流入する開口である。流出口29は、気体流路Rから温調空気Aが流出する開口である。流出口29は、本実施の形態では、組み合わせられた第1蓋11及び第2蓋15の軸線方向Xの両端が、塞がれずに開口されていることで形成されている。各気体流路Rにつき、軸線方向Xの中央に流入口18が形成され、軸線方向Xの両端に流出口29が形成されていることで、流入口18と流出口29とは、本実施の形態では、第1蓋11(第2蓋15)の長さの半分だけ離れている。
【0029】
図5(A)は伝熱促進エレメント20の部分斜視図、図5(B)は伝熱促進エレメント20が有する制限部材22の斜視図、図5(C)は伝熱促進エレメント20が取り付けられた流路形成部材19の部分側面断面図である。伝熱促進エレメント20(以下、単に「エレメント20」という。)は、気体流路Rに装着されるものである。図1中では、第1蓋11及び第2蓋15によって形成される気体流路R(流入口18から1つの流出口29までで1つの気体流路R)の数だけ、エレメント20を配列して示している。図5(A)では、複数のエレメント20を各気体流路Rに設置した状態で、流路形成部材19を非表示にした状態を示している。エレメント20は、台座21と、制限部材22とを有している。台座21は、複数の制限部材22を所定の位置関係で位置決めするための部材である。台座21は、薄板状の部材が、1つの気体流路Rにおける対向板16の大きさに加工されることで形成されている。つまり、台座21は、概ね、幅方向には第1蓋11の第1側面板13と小突起14との間隔に相当する寸法に、長さ方向には流入口18と流出口29との間に相当する寸法に、形成されている。台座21は、エレメント20が気体流路Rに装着されたときに、対向板16に設置される。以下、台座21及び制限部材22を含むエレメント20について、第1蓋11、第2蓋15、及び気体流路Rとの関係に言及しているときは、特に断りがある場合を除き、エレメント20が気体流路Rに装着されている状態を前提とする。台座21は、樹脂や金属等の種々の材料を使用することができるが、本実施の形態では輻射面とはしない対向板16への熱伝達を抑制するため、断熱性に優れた材料を用いることが好ましい。
【0030】
制限部材22は、気体流路Rを軸線方向Xに流れてきた温調空気Aが通過可能な流路面積(気体流路Rの断面積)を制限する部材である。制限部材22は、閉塞板23と、平行板24とを有している。閉塞板23は、薄板状の部材で構成されており、気体流路Rの軸線方向Xに交差する断面を概ね塞ぐ、制限部材22の主要な部材である。閉塞板23は、台座21に取り付けられており、台座21から表面板12の方に向けて延びているが、表面板12に接触していない。閉塞板23は、高さ方向で見て、台座21の側よりも表面板12の側の方が、温調空気Aが流れる方向の下流側に位置するように、傾斜している。以下、気体流路Rにおいて温調空気Aが流れる方向を単に「流れ方向」という場合がある。流れ方向は、本実施の形態では、軸線方向Xに平行である。閉塞板23は、流れ方向下流側の台座21の面とのなす角が、概ね45度~75度となるように傾斜しているとよく、本実施の形態では約60度となるように傾斜している。閉塞板23は、幅方向については、理想的には両側の第1側面板13及び第2側面板17に接する寸法に形成されているとよい。しかしながら、エレメント20を第2蓋15に取り付けてこれに第1蓋11を合わせる際の施工性(組み立てやすさ)を考慮して、閉塞板23は、第1側面板13及び/又は第2側面板17との間に極力小さな隙間が形成されていてもよい。
【0031】
平行板24は、薄板状の部材で構成されており、閉塞板23における表面板12の側の末端から流れ方向下流側に延びている。平行板24は、典型的には閉塞板23と同じ材料で形成されている。典型的には、1枚の薄板状の部材が曲げられて、折り曲げ線を境に閉塞板23と平行板24とに区別可能とされるように構成されている。つまり、制限部材22は、説明の便宜上、閉塞板23と平行板とに区別されているが、典型的には閉塞板23と平行板とが一体に構成されている。しかしながら、閉塞板23及び平行板24は、相互に分離独立した部材から構成されていて両者が事後的に接合されるものであってもよい。平行板24は、本実施の形態では、表面板12と平行に延びている。平行板24と表面板12との間には、隙間26が形成されている。隙間26は、温調空気Aが通過可能な流路となっており、通過する温調空気Aの流速を上昇させる役割を果たしている。隙間26を通過する温調空気Aの流速は、概ね3m/s~5m/sとなるようにするとよく、7m/s程度としてもよい。隙間26は、このような流速を温調空気Aに与えるようにする観点から寸法を決定するとよく、例えば5mm~10mm程度とするとよく、約7mm~8mmとしてもよい。なお、平行板24の軸線方向Xの長さは、本実施の形態では、約35mm~40mmとしている。
【0032】
閉塞板23には、温調空気Aが通過可能な通過孔25が形成されている。通過孔25は、平行板24の流れ方向下流側で、平行板24の裏側に回り込むような温調空気Aの渦の発生を抑制するために、制限部材22の表裏両面の差圧を軽減する役割を果たす。通過孔25は、本実施の形態では、閉塞板23に対し、幅方向には中央で、高さ方向には中央よりも台座21寄りの位置に形成されているが、この位置に限られない。例えば、通過孔25が、台座21と接するように形成されていてもよい。通過孔25は、所定の流量の温調空気Aが通過することができる大きさ及び形状に形成されている。ここでいう所定の流量は、平行板24の流れ方向下流側部分のまわりに温調空気Aの渦が実質的に生じない程度に、制限部材22の両側の差圧を縮小できる流量である。通過孔25は、本実施の形態では、直径が約5mmの円形に形成されている。本実施の形態では、通過孔25の直径は、閉塞板23の幅の約0.2倍(約1/5)の大きさに形成されている。なお、通過孔25は、制限部材22の流れ方向下流側における温調空気Aの渦の発生を抑制するという目的を達成できる範囲で、大きさを適宜変更することができ、形状も適宜変更することができる。例えば、通過孔25の大きさを、3mm~10mm(8mm等も含む)、あるいは閉塞板23の幅の0.1~0.5倍(0.3倍等も含む)としてもよく、通過孔25の形状を、楕円形、あるいは四角形や六角形や八角形等の多角形としてもよい。
【0033】
1つのエレメント20は、制限部材22の複数が、台座21に、軸線方向Xに所定の間隔をあけて取り付けられることで構成されている。このとき、台座21に取り付けられた各制限部材22は、閉塞板23に対して平行板24が延びる向きが揃うように配列されている。エレメント20は、各制限部材22において閉塞板23が流入口18の側で平行板24が流出口29の側となるように、気体流路Rに取り付けられている。換言すれば、気体流路Rを流れる温調空気Aの流れ方向上流側に閉塞板23が位置し、下流側に平行板24が位置する向きで、エレメント20が配置されている。台座21に取り付けられた各制限部材22の間の所定の間隔は、温調空気Aの流速を概ね3m/s~5m/s(場合によっては7m/s程度)とすることができる隙間26を、軸線方向Xにできるだけ多く形成することができるようにする観点から決定するとよい。本実施の形態では、各制限部材22の間の所定の間隔を、約100mmとしている。なお、所定の間隔は、各制限部材22の基準点(例えば、流れ方向最下流の位置となる平行板24の末端位置)の間の間隔である。
【0034】
輻射パネル10は、上述した第1蓋11及び第2蓋15並びに及びエレメント20を、以下のように組み立てることで、構成することができる。まず、第2蓋15を、第2側面板17が対向板16よりも上になるようにして、作業台(作業床)の上に載置する。次に、第2側面板17と第2側面板17との間の対向板16の上にエレメント20を取り付ける。エレメント20は、隣接する第2側面板17の間のスペース1箇所につき、幅方向に2列収まり、長さ方向には流入口18を境として2段収まるので、合計4つが取り付けられることとなる。このとき、隣接する第2側面板17の間の1箇所のスペースに取り付けられた4つエレメント20のすべてが、閉塞板23から延びる平行板24がその閉塞板23よりも流出口29の側に位置するように(流れ方向下流側になるように)、向きを揃える。また、幅方向に並べて配置した2つのエレメント20を、それぞれ近接する方の第2側面板17に寄せる。このように寄せることで、幅方向に並べて配置した2つのエレメント20の間には、第1側面板13が入るスペースができる。エレメント20の台座21を第2蓋15の対向板16に取り付ける際は、対向板16の天地を逆にしてもエレメント20が落下しないようにするために、溶接や接着等により行われる。1箇所のスペースにつき4つのエレメント20の取り付けは、第2蓋15全体に行う。次に、エレメント20が取り付けられた第2蓋15に、第1蓋11を被せる。このとき、幅方向に隣接した2つのエレメント20の間のスペースの各所に第1側面板13を入れ、小突起14が第2側面板17に接するようにして、第1蓋11を設置する。上述の要領で第2蓋15、エレメント20、第1蓋11を組み立てると、各第1側面板13と第2側面板17との間に、流入口18を挟むようにして2つの気体流路Rが形成され、2つの気体流路Rのそれぞれに1つずつのエレメント20が設けられることとなる。このようにして構成された輻射パネル10は、本実施の形態では、軸線方向Xの両端面が開口していると共に、対向板16の軸線方向X中央部が開口している。輻射パネル10の軸線方向X両端面の開口は、流出口29になる。対向板16の軸線方向X中央部の開口は、流入口18になる。なお、輻射パネル10を構成する各部材の材料は、軽量化を図る観点から、金属の場合はアルミニウム板や鋼板、伝熱に寄与しない部分は樹脂を用いた、複合としてもよい。輻射パネル10を冷暖房対象空間の天井に設置するときは、表面板12が下側(冷暖房対象空間側)を向くように設置することとなるため、上述の組立て時とは上下が逆になる。また、輻射パネル10を冷暖房対象空間の天井に設置するときは、以下に示す部材をさらに付加してもよい。
【0035】
図6(A)は輻射パネル10の斜視図、図6(B)は輻射パネル10の側面図である。図6(A)及び図6(B)では、変換部材31及び案内板38をも示している。変換部材31及び案内板38は、図1では、輻射パネル10の主要構成のみを示すために省略していたものである。なお、便宜上、図6(A)及び図6(B)には分配ダクト51も示しているが、本実施の形態では、分配ダクト51は輻射パネル10の構成要素ではなく、典型的には設備工事で取り付けられるものである。しかしながら、分配ダクト51を輻射パネル10の構成要素としてもよい。変換部材31は、気体流路Rを流れて流出口29から出た温調空気Aの流れの向きを、気体流路Rの外側の表面板12に沿って流れる方向に変える部材であり、方向変換部材に相当する。本実施の形態では、流路形成部材19の軸線方向Xの両端に流出口29が形成されているので、変換部材31が2つ設けられている。案内板38は、変換部材31によって方向が変えられて表面板12に沿って流れてきた温調空気Aを、表面板12から離れる方向に流れの向きを変える部材であり、気流案内板に相当する。案内板38は、本実施の形態では、1つが、気体流路Rの外側の表面板12の、軸線方向Xの中央の位置に、設けられている。分配ダクト51は、温調空気Aを、流入口18を介して、流路形成部材19の各気体流路Rに分配するものである。分配ダクト51は、本実施の形態では、1つが、流入口18全体を覆うように、対向板16に設けられている。
【0036】
図7は変換部材31の斜視図である。変換部材31は、底板32と、側板33と、載置板34と、カバー35とを有している。底板32は、細長い矩形の薄板状の部材を湾曲して形成された部材である。底板32は、曲げる前の矩形の状態で短い方の両辺を、円弧状に曲げて形成されている。底板32は、長手方向の長さが、流路形成部材19の幅方向の長さと同じになっている。側板33は、底板32の湾曲した短辺に取り付けられている。側板33は、底板32の長手方向の両端に、合計2つが取り付けられている。側板33は、薄板状の部材が扇形に形成されたものである。側板33の扇形の円弧は、底板32の湾曲と同じ曲率となっている。つまり、側板33の扇形の円弧は、表面板12に沿って流れる温調空気Aの状態(流速や流れ方向等)に影響を与える。側板33は、扇形の中心角が、120度~150度であることが好ましく、130度~140度であることがより好ましく、本実施の形態では約135度になっている。載置板34は、細長い矩形の薄板状の部材であり、長手方向の両端が、それぞれ、底板32の長手方向の両端に取り付けられた側板33に固定されている。載置板34は、細長い矩形の短辺が、側板33の扇形の2つある半径のうちの一方の半径上に沿うように取り付けられている。また、載置板34は、底板32から離れた位置に設けられている。載置板34に対して、長手方向に直交する方向の一方の側には開口36が形成されており、他方の側には放出口37が形成されている。放出口37は、幅(長手方向に直交する方向の距離)が、側板33の扇形の半径よりも大きくなっている。開口36は、放出口37よりも幅が狭い。載置板34は、変換部材31が流路形成部材19に取り付けられたときに、表面板12が接することとなる。このとき、開口36側の載置板34の長辺に、流出口29との境界を形成する表面板12の辺が揃うこととなる。カバー35は、変換部材31が流路形成部材19に取り付けられたときに、流路形成部材19の流出口29を覆う部材である。カバー35は、底板32の長手方向に相当する長さを有する細長い直方体から、2つの隣接する側面を除去した形状となっている。カバー35は、細長い直方体から除去した2つの側面のうち、一方の側面は載置板34及び開口36に面し、他方の側面は流路形成部材19を受け入れる方(側板33の扇形の中心側)に面して、底板32及び側板33に取り付けられている。カバー35は、細長い直方体の両端面が、両方の側板33と面一になっている。
【0037】
図8は案内板38の斜視図である。案内板38は、本実施の形態では、複合板39が2つ合わさって構成されている。1つの複合板39は、薄板状の部材が以下のように曲げ加工されることで形成されている。複合板39は、側面視(薄板状の部材厚さが表れる面を見た状態)において、長さの約半分までは直線状であり、残りの約半分は1/4円弧状に湾曲しており、円弧状の先に短い直線状部分が形成されている。換言すれば、複合板39は、側面視において、1/4円弧の一方の端部に比較的長い(全長の約半分)直線状部分が続いており、他方の端部に短い直線状部分が続いている。短い直線状部分は、表面板12に面で接触させるために設けられており、5mm~20mm程度としてもよく、10mm~15mm程度であってもよい。複合板39の奥行きは、表面板12の幅(軸線方向Xに直交する方向の長さ)と同じになっている。このように構成された複合板39の2つを、比較的長い直線状部分同士を面で接触させることで、案内板38が構成される。このとき、各複合板39の1/4円弧の部分が背中合わせになって相互に離れていく向きで、2つの複合板39が配置されるようになっている。
【0038】
図9は分配ダクト51の斜視図である。分配ダクト51は、本実施の形態では、細長い直方体状の本体部52と、本体部52に温調空気Aを導く導入部56とを有している。本体部52は、長手方向の長さが、対向板16の幅(軸線方向Xに直交する方向の長さ)と同じになっている。本体部52に関し、以下、対向板16の幅と同じ長さの辺を有する4つの面を側面という場合があり、この4つの側面に交差する2つの面を端面という場合がある。本体部52は、4つの側面のうちの1つに供給口53が形成されており、供給口53が形成されている面に対向する側面に導入部56が取り付けられている。供給口53は、当該側面に対して同じ形状及び大きさで2つ形成されている。供給口53の1つ当たりは、当該側面を短辺方向で仮想的に二等分した細長い矩形に対して一回り小さい矩形に形成されている。2つの供給口53は、長辺同士が隣接している。供給口53は、長手方向の大きさが、流路形成部材19に形成された複数の流入口18を包含できる大きさになっている。本体部52の内部には、邪魔板54が設けられている。邪魔板54は、供給口53が形成された側面と比較して、長辺方向には短く、短辺方向には同じ長さとなっている。邪魔板54は、典型的には、供給口53が形成された側面と導入部56が取り付けられた側面との中間で、長手方向の両端において本体部52から離れた位置に、供給口53が形成された側面と平行の向きで、本体部52に取り付けられている。長手方向の両端における邪魔板54と本体部52との間には、連通口55が形成されている。連通口55は、温調空気Aが通過可能な開口である。導入部56は、当該側面の長手方向の中間に設けられている。導入部56は、本実施の形態では、短い丸ダクトで構成されている。導入部56の丸ダクトが取り付けられている本体部52側面は、丸ダクトの内側の部分が開口している。これにより、導入部56から本体部52内に温調空気Aが入ることができるようになっている。このように構成された分配ダクト51は、導入部56から本体部52に導入された温調空気Aが、邪魔板54に衝突して長手方向両端部に向かって流れ、連通口55を通って供給口53の側の本体部52に入った後、供給口53から流出するようになっている。分配ダクト51は、邪魔板54の長手方向両端に連通口55が形成されていることで、本体部52の内部がループダクトのように機能することとなり、供給口53から流出する温調空気Aをどの場所でも均一に近い圧力とすることができる。
【0039】
次に図10を参照して、これまで説明した輻射パネル10を備える輻射冷暖房システム100を説明する。図10は、輻射冷暖房システム100の模式的系統図である。輻射冷暖房システム100は、輻射パネル10のほか、空調機40と、給気ダクト45とを備えている。輻射冷暖房システム100は、建物内や乗物内などに設置することができる。以下の説明では、輻射冷暖房システム100が建物に適用される場合を想定して説明する。
【0040】
空調機40は、温調空気Aの温度を調節する機器であり、温度調節機器に相当する。空調機40は、コイル41と、ファン42とを有している。コイル41は、空調機40に導入された温調空気Aを冷却又は加熱するものである。コイル41は、熱源機(不図示)で温度が調節された冷水又は温水を内部に流すチューブを有している。コイル41のチューブには、多数のフィンが設けられている。コイル41は、多数のフィンの間に温調空気Aを通過させて、冷水又は温水と温調空気Aとの間で熱交換させることにより、冷水又は温水の熱を温調空気Aに伝達させるように構成されている。ファン42は、コイル41で温度が調節された温調空気Aを輻射パネル10に向けて圧送するものである。なお、空調機40は、温調空気Aの温度を調節することができれば足り、温調空気Aの湿度を調節するための構成は有しなくてよい。しかしながら、空調機40から供給された温調空気Aに含まれる水分が結露するおそれがある場合は、結露を発生させないようにするため、空調機40が温調空気Aの湿度を調節するための構成を有することが好ましい。
【0041】
給気ダクト45は、空調機40で温度が調節された温調空気Aを分配ダクト51に導くものである。給気ダクト45は、一端が空調機40の吐出側に接続されており、他端が分配ダクト51の導入部56に接続されている。給気ダクト45は、角ダクトを用いてもスパイラルダクトを用いてもよく、そのサイズは温調空気Aの設計風量を考慮して適宜決定すればよい。給気ダクト45は、典型的には保温材が巻き付けられる。しかしながら、吸気ダクトの外面が周囲環境の露点温度以下にならない場合は、保温材の施工を省略するとよい。空調機40の吸い込み側には、本実施の形態では、吸込ダクト46が接続されている。吸込ダクト46は、空調機40において温調空気Aとなる空気を空調機40に取り込むためのダクトである。吸込ダクト46は、空調機40に接続された端部とは反対側の端部が、冷暖房対象空間の空気を取り込むように冷暖房対象空間に開口していてもよく、すべて外気を取り込むように外壁に設けられたガラリ(不図示)に接続されていてもよい。吸込ダクト46の他端が冷暖房対象空間に開口している場合、所定の割合で外気を空調機40に取り込むことができるように外気ダクトを別途設けてもよい。吸込ダクト46も、角ダクトを用いてもスパイラルダクトを用いてもよく、そのサイズも適宜決定することができる。
【0042】
引き続き図1図10を参照して、輻射冷暖房システム100の作用を説明する。輻射パネル10の作用は、輻射冷暖房システム100の作用の一環として説明する。輻射冷暖房システム100を作動させる際、まず、空調機40を起動する。すると、吸込ダクト46を介して、空気が空調機40に導入される。空調機40に導入された空気は、コイル41を通過する際、冷房時は冷やされ、暖房時は温められ、温度が調節された温調空気Aとなる。コイル41を通過して温度が調節された温調空気Aは、ファン42によって、空調機40から吐出される。空調機40から吐出された温調空気Aは、給気ダクト45を流れた後に分配ダクト51に到達する。分配ダクト51(図9参照)に到達した温調空気Aは、導入部56から分配ダクト51の内部に流入する。導入部56から分配ダクト51内に流入した温調空気Aは、邪魔板54に衝突し、長手方向両端の連通口55に向かって、2つの流れに分かれて邪魔板54に沿って流れる。連通口55に到達した温調空気Aは、連通口55を通って反対側の本体部52内に入り、供給口53を通って分配ダクト51から流出する。供給口53から流出した温調空気Aは、対向板16(図6(B)参照)に形成された流入口18から、流路形成部材19の内部の各気体流路R(図4(A)参照)に流入する。
【0043】
各気体流路Rに流入した温調空気Aは、流出口29に向かって気体流路Rを流れる。この、気体流路R内の温調空気Aが、流入口18から流出口29へ向かう方向を「流れ方向」ということとする。流れ方向は、軸線方向Xに平行である。温調空気Aは、気体流路Rを流れ方向に流れる際、表面板12や第1側面板13及び第2側面板17に接する部分を介して、表面板12や第1側面板13及び第2側面板17に、温調空気Aが保有している冷熱又は温熱を伝達する。また、温調空気Aは、気体流路Rを流れ方向に流れる際、制限部材22(図5(C)参照)に出会う。制限部材22に到達した温調空気Aは、閉塞板23に行く手を阻まれて、主として隙間26に集まる。このとき、閉塞板23が、隙間26の側に近づくほど流れ方向下流側に位置するように傾斜しているので、温調空気Aが閉塞板23に当たったときの圧力損失が軽減される。温調空気Aは、隙間26を通過する際、流路断面積が減少しているので、流速が上昇する。隙間26を通過する際の温調空気Aの流速は、概ね3m/s~5m/sとなっている。温調空気Aが概ね3m/s~5m/sの速度で隙間26を通過することで、表面板12に沿って存在する速度境界層が除去され、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱が効率よく表面板12に伝達される。また、隙間26は、平行板24によって軸線方向Xにある程度の長さ(本実施の形態では約35mm~40mm)が確保されているので、隙間26を流れる温調空気Aの流れを安定させることができる。なお、平行板24の下流側において、隙間26を通過した温調空気Aが平行板24の裏側に回り込むように流れて渦が生じる可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、閉塞板23に通過孔25が形成されているので、制限部材22の表裏両面の差圧を軽減することができ、渦の発生を抑制することができる。気体流路Rを流れる温調空気Aは、流入口18から流出口29に至るまでに複数の制限部材22に出会い、その都度上述のように作用して、表面板12の広範囲に、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を効率よく伝達することができる。表面板12は、温調空気Aからの熱伝達、並びに第1側面板13及び第2側面板17からの熱伝導によって、冷房時は冷やされ、暖房時は温められる。
【0044】
温調空気Aからの熱伝達等により冷やされ又は温められた表面板12は、表面から冷熱又は温熱を輻射して、表面板12に面した冷暖房対象空間の冷房又は暖房を行う。なお、冷房時は、冷房対象空間に存在する物体の熱が表面板12に吸収されることで納涼感を得られるのであるが、本明細書では、便宜上、表面板12から冷熱が輻射されると表現している。輻射冷暖房システム100では、表面板12を冷却又は加熱する熱媒体が温調空気Aであるので、冷水又は温水を熱媒体とする場合に比べて、結露の発生を抑制することができ、漏水を回避することができる。仮に、熱媒体を冷水として輻射冷房を行う場合、輻射面の結露を防止するために冷水の温度を23℃以上(露点より高い温度)とすることが考えられるが、23℃一定の冷水を流した場合、負荷の変動があったときに迅速に追従することが困難となる。この点、本実施の形態に係る輻射冷暖房システム100は、熱媒体が温調空気Aであるので、負荷変動時の追従性に優れている。
【0045】
各気体流路Rを流れて流出口29に到達した温調空気Aは、流出口29を介して流路形成部材19から出て、変換部材31(図6(B)参照)に流入する。変換部材31に流入した温調空気Aは、底板32の内側の円弧に沿って流れて向きを変え、放出口37を通って変換部材31から流出する。変換部材31から流出した温調空気Aは、表面板12の外側(気体流路Rの外側)を、表面板12に沿って(表面板12の近傍を維持しながら)、気体流路Rを流れている温調空気Aが流れる方向と逆向きに流れる。表面板12の外側を表面板12に沿って流れる温調空気Aは、案内板38に到達すると、各複合板39に沿って流れる。これにより、温調空気Aは、表面板12から離れる方向に向きを変えて流れることとなり、冷暖房対象空間に拡散され、対流による冷暖房対象空間の冷房又は暖房に寄与することとなる。冷暖房対象空間に拡散された温調空気Aは、本実施の形態では、ドアガラリ(不図示)や通気口(不図示)等を介して冷暖房対象空間から流出し、周囲環境に拡散する。本実施の形態では、冷暖房に利用した温調空気Aを空調機40に直接戻していないため、周囲環境に拡散した分の空気が、別途、吸込ダクト46を介して空調機40に導入され、以降、上述の作用を繰り返す。
【0046】
以上で説明したように、本実施の形態に係る輻射パネル10によれば、気体流路R内を流れ方向に流れる温調空気Aが、制限部材22に当たって隙間26を通過する際に流速が上昇する。これにより、表面板12付近の速度境界層を除去することができ、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を、表面板12に効率よく伝達することができる。また、本実施の形態に係る輻射冷暖房システム100によれば、上述の輻射パネル10を備えるので、表面板12から熱輻射が行われることで、冷暖房対象空間を効率よく冷房又は暖房することができる。
【0047】
以上の説明では、輻射パネル10が、建物の天井に設置されるものとして説明したが、天井に設置することに代えて、又は天井に設置することに加えて、床面や壁面に設置することとしてもよい。また、輻射パネル10は、建物に限らず、車両(バス、乗用車、列車等)を含む、人が留まる空間の天井及び/又は床面及び/又は壁面に設置することもできる。
【0048】
以上の説明では、第1蓋11及び第2蓋15が、それぞれ、1枚の薄板状部材を折り曲げ加工して、折り返し構造に形成されているとしたが、複数の部材から構成されていてもよい。例えば、第1蓋11は、1つの矩形の板状部材からなる表面板12に、別体の第1側面板13及び小突起14を溶接して形成されていてもよい。第2蓋15も同様である。しかしながら、第1蓋11及び/又は第2蓋15を折り返し構造にすることで、耐荷重を向上させることができ、輻射パネル10を床面に設置した場合に特に有用となる。また、第1蓋11及び/又は第2蓋15を折り返し構造にすることで、特に輻射パネル10を車両に設置した場合に、流路形成部材19に構造体の役割を与えることができる。
【0049】
以上の説明では、隣接する気体流路R同士で、第1側面板13及び第2側面板17を区画板として共有していることとした。しかしながら、各気体流路Rが独自に区画板を有していて当該区画板同士を密接させることで、複数の気体流路Rを配列することとしてもよい。
【0050】
以上の説明では、輻射パネル10が、方向変換部材(変換部材31)及び気流案内板(案内板38)を備えていることとしたが、状況に応じて両方又は一方を省略してもよい。例えば、輻射パネル10を床面に設置する場合に、方向変換部材及び気流案内板の両方を省略するとよい。
【0051】
以上の説明では、分配ダクト51が、導入部56を長手方向中央部に設け、本体部52の中に邪魔板54を設けることとしたが、導入部56の数及び配置や、邪魔板54の有無は、適宜変更することができる。
【0052】
以上の説明では、輻射パネル10を通過した温調空気Aを冷暖房対象空間に供給して対流空調に利用することとしたが、流出口29から流出した温調空気Aを、冷暖房対象空間に放出せずに収集して、空調機40へ戻すように構成してもよい。この場合、変換部材31及び案内板38を省略するとよい。
【符号の説明】
【0053】
10 輻射パネル
12 表面板
13 第1側面板
14 小突起
16 対向板
17 第2側面板
19 流路形成部材
22 制限部材
23 閉塞板
24 平行板
25 通過孔
26 隙間
29 流出口
31 変換部材(方向変換部材)
38 案内板(気流案内板)
40 空調機(温度調節機器)
51 分配ダクト
100 輻射冷暖房システム
A 温調空気
R 気体流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10