(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026157
(43)【公開日】2023-02-24
(54)【発明の名称】直動案内装置及び加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 5/52 20060101AFI20230216BHJP
B23Q 5/40 20060101ALI20230216BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20230216BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
B23Q5/52 G
B23Q5/40 Z
F16H25/22 J
F16H25/24 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021131876
(22)【出願日】2021-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松丸 盛一
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA21
3J062AB22
3J062AC07
3J062CD04
3J062CD22
3J062CD75
3J062CD79
(57)【要約】
【課題】ナット部材301の移動範囲を広くする。
【解決手段】ナット部材301は、ボールねじ302に螺合され、ボールねじ302が回転することでボールねじ302に沿って所定方向に往復移動する。ナット部材301は、ボールねじ302と螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴が形成されている。雌ねじ穴には、フレーム303に設けられた所定方向両側の壁部303a、303bのうち、少なくとも片側の壁部303aと当接することでナット部材301の所定方向片側への移動を規制する規制ボルト307がねじ止め固定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配置されたボールねじと、
前記ボールねじの所定方向両端側部分を支持するフレームと、
前記ボールねじに螺合され、前記ボールねじが回転することで前記ボールねじに沿って前記所定方向に往復移動する移動部材と、を備え、
前記移動部材は、前記ボールねじと螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴が形成されており、前記雌ねじ穴には、前記フレームに設けられた前記所定方向両側の壁部のうち、少なくとも片側の壁部と当接することで前記移動部材の前記所定方向片側への移動を規制する規制部材がねじ止め固定されている
ことを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記フレームの所定方向他側の壁部と前記移動部材の間に固定され、前記移動部材と当接することで前記移動部材の前記所定方向他側への移動を規制するフレーム側規制部材を備え、
前記規制部材は、前記雌ねじ穴に固定された状態で前記移動部材の前記所定方向片側面からの突出量が、前記フレーム側規制部材の所定方向の厚さよりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記規制部材は、前記雌ねじ穴に螺合可能なボルトである
ことを特徴とする請求項2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記規制部材は、前記雌ねじ穴に固定された状態で前記移動部材の前記所定方向両側面からそれぞれ突出し、前記所定方向片側から突出した部分が前記フレームに設けられた前記所定方向片側の壁部と当接することで前記移動部材の前記所定方向片側への移動を規制し、前記所定方向他側から突出した部分が前記フレームに設けられた前記所定方向他側の壁部と当接することで前記移動部材の前記所定方向他側への移動を規制する
ことを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項5】
工具を把持する主軸と、
工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記主軸と前記保持部とを所定方向に相対移動させる移動手段と、を備え、
前記移動手段は、請求項1ないし4の何れか1項に記載の直動案内装置である
ことを特徴とする加工装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記主軸と前記保持部とをZ軸方向に相対移動させる
ことを特徴とする請求項5に記載の加工装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記主軸と前記保持部とをY軸方向に相対移動させる
ことを特徴とする請求項5に記載の加工装置。
【請求項8】
工具を把持する主軸と、
工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記主軸をZ軸方向に往復移動させるZ軸移動機構と、を備え、
前記Z軸移動機構は、
Z軸方向に配置されたボールねじと、
前記ボールねじのZ軸方向両端側部分を支持するフレームと、
前記ボールねじに螺合され、前記ボールねじが回転することで前記ボールねじに沿ってZ軸方向に往復移動する移動部材であって、前記主軸が支持される移動部材と、を備え、
前記移動部材は、前記ボールねじと螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴が形成されており、前記雌ねじ穴には、前記フレームに設けられた前記Z軸方向両側の壁部のうち、少なくとも片側の壁部と当接することで前記移動部材の前記Z軸方向片側への移動を規制する規制部材がねじ止め固定されている
ことを特徴とする加工装置。
【請求項9】
工具を把持する主軸と、
工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、
前記保持部をY軸方向に往復移動させるY軸移動機構と、を備え、
前記Y軸移動機構は、
Y軸方向に配置されたY軸ボールねじと、
前記Y軸ボールねじのY軸方向両端側部分を支持するY軸フレームと、
前記Y軸ボールねじに螺合され、前記Y軸ボールねじが回転することで前記Y軸ボールねじに沿ってY軸方向に往復移動するY軸移動部材であって、前記保持部が支持されるY軸移動部材と、を備え、
前記Y軸移動部材は、前記Y軸ボールねじと螺合する位置までグリスを注入可能なY軸雌ねじ穴が形成されており、前記Y軸雌ねじ穴には、前記Y軸フレームに設けられた前記Y軸方向両側の壁部のうち、少なくとも片側の壁部と当接することで前記Y軸移動部材の前記Y軸方向片側への移動を規制するY軸規制部材がねじ止め固定されている
ことを特徴とする加工装置。
【請求項10】
前記主軸をZ軸方向に相対移動させるZ軸移動機構を備え、
前記Z軸移動機構は、
Z軸方向に配置されたZ軸ボールねじと、
前記Z軸ボールねじのZ軸方向両端側部分を支持するZ軸フレームと、
前記Z軸ボールねじに螺合され、前記Z軸ボールねじが回転することで前記Z軸ボールねじに沿って前記Z軸方向に往復移動するZ軸移動部材であって、前記主軸が支持されるZ軸移動部材と、を備え、
前記Z軸移動部材は、前記Z軸ボールねじと螺合する位置までグリスを注入可能なZ軸雌ねじ穴が形成されており、前記Z軸雌ねじ穴には、前記Z軸フレームに設けられた前記Z軸方向両側の壁部のうち、少なくとも片側の壁部と当接することで前記Z軸移動部材の前記Z軸方向片側への移動を規制するZ軸規制部材がねじ止め固定されている
ことを特徴とする請求項9に記載の加工装置。
【請求項11】
前記保持部は、加工対象物を両側から挟むように配置された一対のアーム部と、前記一対のアーム部の一端部同士を連結すると共に、前記一対のアーム部と一体に形成された連結部と、を備え、前記一対のアーム部の他端側が連結されておらず、加工対象物の一部が前記一対のアーム部の他端部同士の間から露出するように、加工対象物を保持する
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の加工装置。
【請求項12】
前記保持部をX軸と平行な軸を中心に回転可能な回転装置を備え、
前記回転装置は、加工対象物を加工する際に、前記一対のアーム部の他端部同士の間から露出した加工対象物の一部がY軸方向他側に向いた状態となるように、前記保持部を回転させることが可能である
ことを特徴とする請求項11に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動部材を所定方向に往復移動させる直動案内装置、及び、加工対象物を加工可能な加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置として、工具が取り付けられた主軸を回転させて加工対象物(ワーク)に切削加工などを行う装置が従来から知られている。このような加工装置の主軸などを移動させる装置として直動案内装置を用いる場合がある。直動案内装置としては、レール上を往復移動するスライダの移動範囲を規制すべく、レールにストッパを固定した構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、直動案内装置として、特許文献1に記載のように、移動部材としてのスライダの移動範囲を規制するためにストッパをレール側に設ける場合、レール側にストッパを固定するために、ストッパの寸法をある程度確保する必要がある。そして、このようなストッパを移動方向両側のそれぞれでレール側に固定すると、ストッパの寸法が大きい分、スライダの移動範囲を広くしにくい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の直動案内装置は、所定方向に配置されたボールねじと、前記ボールねじの所定方向両端側部分を支持するフレームと、前記ボールねじに螺合され、前記ボールねじが回転することで前記ボールねじに沿って前記所定方向に往復移動する移動部材と、を備え、前記移動部材は、前記ボールねじと螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴が形成されており、前記雌ねじ穴には、前記フレームに設けられた前記所定方向両側の壁部のうち、少なくとも片側の壁部と当接することで前記移動部材の前記所定方向片側への移動を規制する規制部材がねじ止め固定されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の加工装置は、工具を把持する主軸と、工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、前記主軸をZ軸方向に往復移動させるZ軸移動機構と、を備え、前記Z軸移動機構は、Z軸方向に配置されたボールねじと、前記ボールねじのZ軸方向両端側部分を支持するフレームと、前記ボールねじに螺合され、前記ボールねじが回転することで前記ボールねじに沿ってZ軸方向に往復移動する移動部材であって、前記主軸が支持される移動部材と、を備え、前記移動部材は、前記ボールねじと螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴が形成されており、前記雌ねじ穴には、前記フレームに設けられた前記Z軸方向両側の壁部のうち、少なくとも片側の壁部と当接することで前記移動部材の前記Z軸方向片側への移動を規制する規制部材がねじ止め固定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の加工装置は、工具を把持する主軸と、工具により加工する加工対象物を保持する保持部と、前記保持部をY軸方向に往復移動させるY軸移動機構と、を備え、前記Y軸移動機構は、Y軸方向に配置されたY軸ボールねじと、前記Y軸ボールねじのY軸方向両端側部分を支持するY軸フレームと、前記Y軸ボールねじに螺合され、前記Y軸ボールねじが回転することで前記Y軸ボールねじに沿ってY軸方向に往復移動するY軸移動部材であって、前記保持部が支持されるY軸移動部材と、を備え、前記Y軸移動部材は、前記Y軸ボールねじと螺合する位置までグリスを注入可能なY軸雌ねじ穴が形成されており、前記Y軸雌ねじ穴には、前記Y軸フレームに設けられた前記Y軸方向両側の壁部のうち、少なくとも片側の壁部と当接することで前記Y軸移動部材の前記Y軸方向片側への移動を規制するY軸規制部材がねじ止め固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動部材の移動範囲を広くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)比較例に係る直動案内装置の概略構成図、(b)第1の実施形態に係る直動案内装置の概略構成図。
【
図2】第2の実施形態に係る加工装置の外観斜視図。
【
図4】第2の実施形態において、ワークを水平方向に対して90°傾けた状態を示す斜視図。
【
図5】第2の実施形態に係る第1移動機構を上方から見た斜視図。
【
図6】第2の実施形態に係る第1移動機構を下方から見た斜視図。
【
図7】第2の実施形態に係る第1移動機構をZ軸方向に沿って切断した断面図。
【
図8】第2の実施形態に係る第1移動機構をナット部材の位置でZ軸方向に直交する方向に沿って切断した断面図。
【
図9】第2の実施形態に係る第3移動機構の斜視図。
【
図10】第3の実施形態に係る第1移動機構を上方から見た斜視図。
【
図11】第3の実施形態に係る第1移動機構を下方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、
図1(a)、(b)を用いて説明する。
図1(a)は、比較例の直動案内装置300Aを、
図1(b)は本実施形態の直動案内装置300を示している。直動案内装置300、300Aは、移動部材としてのナット部材301がボールねじ302に沿って移動させるものである。このような直動案内装置300、300Aは、後述する加工装置に適用可能であるが、加工装置以外の他の装置にも適用可能である。即ち、直動案内装置300、300Aは、ナット部材301に移動させたい部材を固定するなどして、ボールねじ302に沿ってこの部材を直線方向に移動させる装置に適用可能である。以下、具体的に説明する。
【0011】
まず、
図1(a)に示す比較例の直動案内装置300Aは、ボールねじ302と、フレーム303と、移動部材としてのナット部材301とを備える。ボールねじ302は、所定方向(図の左右方向)に配置されている。フレーム303は、ボールねじ302の所定方向両端側部分を支持する。ナット部材301は、ボールねじ302に螺合され、ボールねじ302が回転することでボールねじ302に沿って所定方向に往復移動する。
【0012】
図1(a)に示す比較例の場合、フレーム303の所定方向両端側にストッパ304、305が設けられている。そして、ナット部材301がストッパ304、305と当接することで、ナット部材301の移動範囲が規制されるようになっている。即ち、ナット部材301が所定方向片側に移動し、ナット部材301が片側のストッパ304に当接することで、ナット部材301がそれ以上所定方向片側に移動することが規制される。同様に、ナット部材301が所定方向他側に移動し、ナット部材301が他側のストッパ305に当接することで、ナット部材301がそれ以上所定方向他側に移動することが規制される。
【0013】
このようなストッパ304、305は、ボルト306によりフレーム303に固定されている。したがって、このボルト306が貫通する分、ストッパ304、305の所定方向に関する厚さを大きくする必要がある。このため、両方のストッパ304、305をフレーム303に設けた場合、ナット部材301の移動範囲が狭くなり易い。
【0014】
次に、
図1(b)に示す本実施形態の直動案内装置300は、比較例の直動案内装置300Aと同様に、ボールねじ302と、フレーム303と、移動部材としてのナット部材301とを備える。但し、本実施形態の直動案内装置300は、比較例と異なり、片側のストッパ304を省略し、ストッパ304の代わりに、雄ねじ形状をした規制部材としての規制ボルト307を有する。そして、ナット部材301の所定方向片側の移動は、規制ボルト307とフレーム303の片側に設けられた壁部303aとが当接することで規制するようにしている。
【0015】
ここで、ボールねじ302に螺合されるナット部材301には、通常、ボールねじ302と螺合する位置までグリスを注入可能な穴が形成されている。そして、一般的には、この穴を雌ねじ穴としており、グリス注入時にはグリスニップルをこの雌ねじ穴に螺合固定して、ナット部材301とボールねじ302との間にグリスを注入するようにしている。本実施形態では、この雌ねじ穴を利用して、規制ボルト307をナット部材301に固定するようにしている。即ち、雌ねじ穴には、フレーム303に設けられた所定方向両側の壁部303a、303bのうち、少なくとも片側の壁部303aと当接することでナット部材301の所定方向片側への移動を規制する規制ボルト307がねじ止め固定されている。規制ボルト307は、頭部307aと雄ねじ部とを有し、雄ねじ部がナット部材301に形成されたグリスニップル用の雌ねじ穴に螺合可能となっている。
【0016】
本実施形態の場合、ナット部材301の雌ねじ穴は、所定方向片側に向けて開口するように形成されているため、規制ボルト307を雌ねじ穴に固定すると、頭部307aがナット部材301の所定方向片側面から突出した状態となる。そして、ナット部材301の所定方向片側の移動を規制する場合、この頭部307aが片側の壁部303aに当接する。
【0017】
一方、ナット部材301の所定方向他側の移動は、比較例と同様に、ナット部材301が他側のストッパ305に当接することで規制される。即ち、本実施形態の場合も、フレーム側規制部材としてのストッパ305が、フレーム303の所定方向他側の壁部303bとナット部材301との間に固定され、ナット部材301と当接することでナット部材301の所定方向他側への移動を規制する。
【0018】
本実施形態の場合、規制ボルト307は、雌ねじ穴に固定された状態でナット部材301の所定方向片側面からの突出量が、ストッパ305の所定方向の厚さよりも小さい。上述のように、規制ボルト307は、雄ねじ部がナット部材301の雌ねじ穴に螺合固定され、頭部307aがナット部材301の所定方向片側面から突出する。したがって、頭部307aの厚さがナット部材301の所定方向片側面からの突出量となる。ストッパ305は、ボルト306により固定されるため、その分、厚さを確保する必要があるが、頭部307aは、スパナなどの工具により締め付けられる分の厚さだけを確保すれば良いだけである。したがって、上述のように、規制ボルト307のナット部材301の所定方向片側面からの突出量、即ち、頭部307aの厚さを、ストッパ305の所定方向の厚さよりも小さくすることができる。
【0019】
本実施形態では、このようにナット部材301の所定方向片側の移動の規制を、規制ボルト307が片側の壁部303aと当接することで行っている。このため、フレーム303の片側にストッパ304を固定する比較例よりも、ナット部材301の移動範囲を広くできる。また、規制ボルト307は、ナット部材301に予め形成されているグリスニップル用の雌ねじ穴に螺合固定するため、規制ボルト307を固定するための新たなナット部材301への加工は不要である。このため、低コストでナット部材301の移動範囲を広くできる。なお、規制ボルト307は、雌ねじ穴にねじ止め固定されているため、適宜取り外し可能である。このため、例えば、グリス注入を行う場合には、規制ボルト307を取り外し、グリス注入が終わったら、再度、規制ボルト307を雌ねじ穴に取り付けることができる。
【0020】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、
図2ないし
図9を用いて説明する。まず、本実施形態の加工装置100の全体構成について、
図2ないし
図4を用いて説明する。
【0021】
[加工装置]
図2は、本実施形態に係る加工装置100の外観斜視図である。加工装置100は、
図2に示すように、外装カバー101内に加工装置本体を収容している。即ち、外装カバー101は、後述する主軸や工具マガジンなどが内部に配置され、工具による加工空間を形成する。外装カバー101は、加工空間にアクセス可能な開閉ドア102を有しており、開閉ドア102を開けることで、ワークの交換や手動による工具の交換が可能となっている。また、ワークの加工中には、開閉ドア102を閉めるようにしている。開閉ドア102の開閉は、不図示のセンサにより検知される。
【0022】
開閉ドア102には、透光性の窓103が設けられている。開閉ドア102は、窓103が設けられていない部分に、開閉ロッド104が接続される。透光性の窓103の下部にトレイ105が設けられている。
【0023】
図3に示すように、加工装置100は、移動機構支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30と、加工対象物としてのワークWを支持する支持機構40と、支持機構40を回転可能な回転手段としての第1回転機構(回動装置)50及び第2回転機構60と、工具マガジン70と、電装ユニット80とを備える。第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30により、後述する主軸11と保持装置41とを、X、Y、Zの3軸方向に相対移動させる移動装置200を構成する。
【0024】
フレーム1は、内部に空洞を有する架台2上に載置されており、
図3に示すように、第1フレーム部3と、第1フレーム部3の端部から直角に折り曲げられた第2フレーム部4とから構成される。本実施形態では、第1フレーム部3は、鉛直方向に沿って配置されており、第2フレーム部4は、水平方向に沿って配置されている。
【0025】
移動手段及びZ軸移動機構としての第1移動機構10は、第2移動機構20を介してフレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向(鉛直方向、第1方向)に主軸11を移動可能である。主軸11には、工具12が工具ホルダを介して着脱自在に取り付けられている。主軸11は、モータ13により回転駆動される。第1移動機構10は、モータ14と、Z軸方向に配置された案内軸(
図3では不図示、後述するボールねじ312(
図5など参照))とを有し、モータ14の駆動により主軸11を案内軸に沿ってZ軸方向に往復移動(昇降)させる。主軸11は、Z軸支持部材(
図3では不図示、後述するナット部材311(
図5など参照))を介して案内軸に移動可能に支持されている。案内軸やZ軸支持部材は、カバー17により覆われている。
【0026】
X軸移動機構としての第2移動機構20は、フレーム1の第1フレーム部3の第1の面3aに支持されており、Z軸方向に直交するX軸方向(水平方向、第2方向)に第1移動機構10と共に主軸11を移動可能である。第2移動機構20は、モータ21と、X軸方向に配置された案内軸(不図示)とを有し、モータ21の駆動により第1移動機構10を案内軸に沿ってX軸方向に往復移動させる。
【0027】
移動手段及びY軸移動機構としての第3移動機構30は、フレーム1の第2フレーム部4の第2の面4aに支持されており、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向(水平方向、第3方向)に支持機構40を移動可能である。第3移動機構30は、モータ(不図示)と、Y軸方向に配置された案内軸(
図3では不図示、後述するボールねじ332(
図9参照))とを有し、モータの駆動により支持機構40を案内軸に沿ってY軸方向に往復移動させる。
【0028】
また、第3移動機構30は、第2回転機構60を支持する支持板部31を備えており、支持板部31が案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。後述するように、支持板部31は、ナット部材331(
図9参照)に固定され、ナット部材331を介して案内軸に沿ってY軸方向に往復移動する。
図3に示すように、架台2のY軸方向の支持機構40側は開口している。そして、第3移動機構30は、詳しくは後述するように、第2回転機構60及び第1回転機構50と共に支持機構40をY軸方向に移動可能である。
【0029】
支持機構40は、例えば、歯科用補綴物など工具12により切削加工される加工対象物としてのワークWを支持する。このような支持機構40は、ワークWを保持する保持部としての保持装置41と、両端部が第1回転機構50の回転部51、52にそれぞれ連結され、保持装置41を介してワークWを支持する支持部42とを有する。
【0030】
回動装置としての第1回転機構50は、支持機構40をZ軸方向に直交する回転軸としてのa軸を中心として回転可能である。本実施形態では、a軸は、X軸方向と平行としている。このような第1回転機構50は、回転部51、52を回転自在に支持する支持フレーム53と、回転部51を回転駆動するモータとを有する。支持フレーム53は、支持機構40の周囲を囲むように略コの字型に形成され、モータ及び片側(駆動側)の回転部51を支持する第1支持部53aと、他側(従動側)の回転部52を支持する第2支持部53bと、第1支持部53aと第2支持部53bとを連結する連結部53cとから構成される。
【0031】
第1支持部53aに支持された回転部51と、第2支持部53bに支持された回転部52は、a軸方向に互いに対向するように、且つ、a軸を回転軸として回転可能に配置されている。そして、支持機構40のa軸方向両端部が、それぞれ両側の回転部に支持されている。これにより、第1回転機構50は、支持機構40を、a軸(X軸)を中心として回転可能に支持する。
【0032】
第1回転機構50は、少なくとも180°回転可能であり、支持機構40に支持されたワークWの表裏を反転可能である。本実施形態では、第1回転機構50は、支持機構40をa軸を中心として360°回転させることができる。なお、a軸の延長線が支持機構40に支持されたワークWの厚さ方向の中心を通るため、回転中心軸であるa軸から表面までの距離とa軸から裏面までの距離は同じである。したがって、ワークWの表裏が反転しても、ワークWの厚さ方向の中心と工具12との位置関係は変わらない。
【0033】
第2回転機構60は、支持機構40をZ軸方向及びa軸に直交する別の回転軸としてのb軸を中心として回転可能である。本実施形態では、b軸は、Y軸方向と平行としている。このような第2回転機構60は、第1回転機構50の支持フレーム53が取り付けられる回転部と、回転部を回転駆動するモータとを有する。回転部は、支持フレーム53の連結部53cが取り付けられ、モータに回転駆動されることにより支持フレーム53を、b軸を中心として回転可能である。したがって、第2回転機構60は、第1回転機構50と共に支持機構40を、b軸(Y軸)を中心として回転可能に支持する。
【0034】
工具保持部としての工具マガジン70は、複数の工具を格納可能であり、第1回転機構50に隣接して配置され、支持部材に支持され、この支持部材は第3移動機構30の支持板部31に支持されている。このため、工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40などと共にY軸方向に移動可能である。但し、支持機構40がa軸を中心に回転しても、工具マガジン70は回転せず、支持機構40がb軸を中心に回転しても、工具マガジン70は回転しない。即ち、工具マガジン70は、支持機構40がa軸及びb軸を中心に回転しても所定の姿勢を維持するように、支持板部31に支持されている。工具マガジン70は、第3移動機構30により支持機構40など共にY軸方向に移動可能である。
【0035】
工具マガジン70には、それぞれ工具ホルダ12aと一体に形成された複数種類の工具が保持された状態でY軸方向に沿って複数列並べて配置されている。そして、主軸11に取り付ける工具を交換可能としている。なお、工具ホルダ12aは、主軸11に保持される部分で、工具と一体に形成されていても良いし、別体に形成されていても良い。なお、本実施形態では、工具12をチャック付の工具ホルダ12aに取り付けた上で、主軸11の工具保持用のチャック部が工具ホルダ12aを介して保持する2重チャックの構成となっている。但し、主軸11に直接、工具を取り付けても良い。工具の交換は、作業者が行っても良いし、加工装置100により自動で行っても良い。本実施形態では、自動で工具の交換を行うべく、主軸11による工具の把持と解放を自動で行えるようにしている。
【0036】
工具の交換を自動で行う場合には、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の工具が入っていない空きスペースを主軸11の下方に移動させる。言い換えれば、主軸11を工具マガジン70に対してXY平面上で相対移動させる。そして、第1移動機構10により主軸11を下降させ(Z軸方向に移動させ)、主軸11に設けられたチャックなどの着脱装置を動作させることで、主軸11に取り付けられている工具12を外して工具マガジン70の空きスペースに配置する。次いで、第1移動機構10により主軸11を上昇させると共に、第2移動機構20及び第3移動機構30により工具マガジン70の交換したい工具12が配置されている位置を主軸11の下方に移動させる。そして、再度、第1移動機構10により主軸11を下降させ、着脱装置を動作させることで、主軸11に交換したい工具12を装着する。なお、工具12は、例えば、ドリルやエンドミルである。
【0037】
なお、本実施形態では、工具格納や取り出しの前後で、主軸11に把持された工具12の先端を検出可能な先端検出手段としてのタッチセンサ96に工具12の先端を接触させることで、主軸11に工具12が把持されているか否かを確認する動作を行う。このとき、ワークのZ方向の中心(a軸)と工具先端を合わせる。タッチセンサ96は、
図3に示すように、工具マガジン70に隣接した位置に設けられている。特に、本実施形態では、従動側の回転部52を支持する第2支持部53bに配置されている。
【0038】
電装ユニット80は、フレーム1の内側に取り付けられている。即ち、電装ユニット80は、第1フレーム部3の第1の面3aの反対側で、第2フレーム部4の第2の面4aの反対側に配置されている。このような電装ユニット80は、加工装置100を制御するもので、主軸や各軸のモータの駆動を制御する制御基板や、それぞれ対応するモータのロータリーエンコーダの信号からモータに出力するパルスを演算し、それぞれ対応するモータの回転を適切に制御する複数の制御部を有する。
【0039】
また、本実施形態の加工装置100は、コンピュータ制御により自動加工を行うNC加工装置である。具体的には、パーソナルコンピュータなどの外部端末を用いてCAD/CAMシステムにより加工データを作成し、このデータに基づいて数値制御によりワークWの加工を行う。このために、加工装置100には、加工装置100に指令を行うパーソナルコンピュータなどの外部端末が接続される。なお、加工装置100自体に、数値制御が可能なCPUやメモリを搭載したコンピュータが設けられていても良い。後述する制御手段は加工装置、加工装置に接続されたコンピュータのどちらに設けられてもよい。
【0040】
例えば、加工装置100により歯科用補綴物の作成を行う場合、3次元計測器で計測した歯科用補綴物のデータをCAD/CAMシステムに転送し、CAD/CAMシステムにより加工データを作成する。そして、この加工データに基づいて、加工装置100を制御してワークWを工具12により切削加工することで、歯科用補綴物を作成する。
【0041】
ここで、例えば、ワークWが歯科用補綴物の場合、前歯の歯と歯の間の形状によっては、ディスク状のワークWの表面又は裏面から加工する場合にアンダーカットになり、表面又は裏面のみの加工だけでは当該箇所に削り残りが発生する。この場合、後工程において、作業者が手作業により削り残りを除去するか、加工装置100において削り残りを除去している。
【0042】
加工装置100において当該箇所の除去を行う場合は、
図4に示すように、ディスク状のワークWを全周で固定するのではなく、一部を開放させた略C型形状でクランプし、a軸(X軸方向)を中心に90°回転させた位置に移動し、ディスクを立てた状態で真上から加工することで、削り残りを無くす。即ち、第1回転機構50によりワークWをXY平面と平行な位置(本実施形態では水平位置)から90°回転させる。この角度は90°の状態からわずかに±数度回転させて、加工を行う場合もある。
【0043】
[保持装置]
図4に示すように、本実施形態の保持装置41は、略C型形状を有する。即ち、ワークWを保持する保持装置41は、一対のアーム部41aと、連結部41bとを備える。一対のアーム部41aは、ワークWを両側から挟むように配置されている。連結部41bは、一対のアーム部41aの一端部同士を連結すると共に、一対のアーム部41aと一体に形成されている。一方、一対のアーム部41aの他端側は、連結されておらず、これにより、保持装置41は、略C型形状に形成されている。このような保持装置41は、ワークWの一部が一対のアーム部41aの他端部同士の間から露出するように、ワークを保持する。
【0044】
[第1移動機構]
次に、Z軸移動機構としての第1移動機構10について、
図5ないし
図8を用いて説明する。本実施形態の第1移動機構10は、
図1(b)に示した直動案内装置300と同様の構成を有する。第1移動機構10は、主軸11と保持装置41をZ軸方向(所定方向)に相対移動させる機構であり、本実施形態では、主軸11をZ軸方向に往復移動させる。このために、第1移動機構10は、
図5及び
図6に示すように、主軸11を支持する可動部11aが固定された移動部材としてのナット部材(Z軸移動部材)311と、ボールねじ(Z軸ボールねじ)312と、フレーム(Z軸フレーム)313とを有する。
【0045】
ボールねじ312は、Z軸方向に配置され、Z軸方向上端部にはモータ14が接続されている。フレーム313は、ボールねじ312のZ軸方向両端側部分を支持する。ナット部材311は、ボールねじ312に螺合され、ボールねじ312がモータ14の駆動により回転することでボールねじ312に沿ってZ軸方向に往復移動する。ナット部材311には、可動部11aを介して主軸11が支持される。
【0046】
また、フレーム313は、
図7に示すように、Z軸方向両側の壁部313a、313b及び底板部313cを有する。Z軸方向両側の壁部313a、313bのうち、片側(下側)の壁部313aは、底板部313cの下端部に設けられ、ボールねじ312の片側の端部を回転自在に支持する。一方、他側(上側)の壁部313bは、底板部313cの中間部よりも上側部分に設けられ、ボールねじ312の他側の端部寄り部分を回転自在に支持する。ボールねじ312の他側の端部は壁部313bを貫通している。更に、底板部313cの上端部には、固定アングル313dを介してモータ14が固定されており、固定アングル313dと壁部313bとの間でモータ14の駆動軸とボールねじ312とが接続されている。
【0047】
第1移動機構10の場合も、
図1(b)の直動案内装置300と同様に、フレーム313のZ軸方向他側(上側)の壁部313bとナット部材311の間に、フレーム側規制部材としてのストッパ315が固定されている。ストッパ315は、ナット部材311と当接することでナット部材311のZ軸方向他側への移動を規制する。このようなストッパ315は、
図7に示すように、フレーム313に対してボルト316により固定されている。
【0048】
また、第1移動機構10の場合も、ナット部材311のZ軸方向片側面に雄ねじ形状をした規制部材としての規制ボルト(Z軸規制部材)317が固定されている。即ち、
図7及び
図8に示すように、ナット部材311のZ軸方向片側面には、ボールねじ312と螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴(Z軸雌ねじ穴)318が形成されている。
図8は、雌ねじ穴318からボールねじ312とナット部材311が螺合する位置まで形成されたグリス供給経路319が形成された部分で切断した断面図である。一般的に、雌ねじ穴318にグリスニップルが螺合固定され、グリスニップルを介してグリスが供給されると、グリス供給経路319を介してグリスがボールねじ312とナット部材311が螺合する位置まで供給される。グリス供給後は、グリスニップルを外しても移動機構の動作に影響はない。このため、本実施形態では、雌ねじ穴318に規制ボルト317をねじ止め固定している。
【0049】
規制ボルト317は、フレーム313に設けられたZ軸方向両側の壁部のうち、少なくとも片側(下側)の壁部313aと当接することでナット部材311のZ軸方向片側への移動を規制する。このような規制ボルト317も、
図1(b)の構成と同様に、頭部317aがナット部材311のZ軸方向片側面から突出した状態となる。そして、ナット部材311のZ軸方向片側の移動を規制する場合、この頭部317aが片側の壁部313aに当接する。また、規制ボルト317のナット部材311のZ軸方向片側面からの突出量、即ち、頭部317aの厚さは、ストッパ315のZ軸方向の厚さよりも小さい。
【0050】
このような第1移動機構10の場合も、
図1(b)と同様に、ナット部材311のZ軸方向片側の移動の規制を、規制ボルト317が片側の壁部313aと当接することで行っている。このため、ナット部材311の移動範囲、即ち、主軸11の移動範囲を広くできる。なお、
図5及び
図6に示すように、ナット部材311に検知片401を、この検知片401が通過可能なZ軸方向両側の位置には、検知片401の通過を検知するリミットセンサ402、403が設けられている。リミットセンサ402、403は、フレーム313或いはカバー17側に固定された、フォトインタラプタなどの光学センサである。
【0051】
ナット部材311のZ軸方向片側の規制位置にリミットセンサ402が、ナット部材311のZ軸方向他側の規制位置にリミットセンサ403が配置されている。これにより、ナット部材311が規制ボルト317と壁部313aとの当接により移動が規制されると、検知片401がリミットセンサ402に到達し、ナット部材311がZ軸方向片側の規制位置に到達したことが検知される。一方、ナット部材311が壁部313bとの当接により移動が規制されると、検知片401がリミットセンサ403に到達し、ナット部材311がZ軸方向他側の規制位置に到達したことが検知される。
【0052】
また、規制ボルト317は、ナット部材311に予め形成されているグリスニップル用の雌ねじ穴318に螺合固定するため、規制ボルト317を固定するための新たなナット部材311への加工は不要である。このため、低コストでナット部材311、即ち、主軸11の移動範囲を広くできる。
【0053】
なお、上述の例では、ナット部材311のZ軸方向下側に規制ボルト317を設け、ナット部材311の下側への移動範囲を広げたが、規制ボルト317をナット部材311の上側に設けてナット部材311の上側への移動範囲を広げるようにしても良い。また、雌ねじ穴318は、グリス注入時にグリスニップルが螺合固定されずに、直接、グリスが注入される場合もある。更に、雌ねじ穴318は、実際の使用状態でグリス注入に使用されず、グリスがボールねじ312に直接塗布される場合があるが、この場合でも、雌ねじ穴318はグリス注入用として形成されたものに変わりはない。
【0054】
[第3移動機構]
次に、Y軸移動機構としての第3移動機構30について、
図9を用いて説明する。本実施形態の第3移動機構30は、
図1(b)に示した直動案内装置300、上述の第1移動機構10と同様の構成を有する。第3移動機構30は、主軸11と保持装置41をY軸方向(所定方向)に相対移動させる機構であり、本実施形態では、保持装置41を支持する支持機構40をY軸方向に往復移動させる。このために、第3移動機構30は、支持機構40を支持する可動部40aが固定された移動部材としてのナット部材(Y軸移動部材)331と、ボールねじ(Y軸ボールねじ)332と、フレーム(Y軸フレーム)333とを有する。
【0055】
ボールねじ332は、Y軸方向に配置され、Y軸方向奥側の端部(
図9の左端部、他端部)にはモータ40bが接続されている。フレーム333は、ボールねじ332のY軸方向両端側部分を支持する。ナット部材331は、ボールねじ332に螺合され、ボールねじ332がモータ40bの駆動により回転することでボールねじ332に沿ってY軸方向に往復移動する。ナット部材331には、可動部40a及び第2回転機構60を介して支持機構40が接続される。
【0056】
また、フレーム333は、Y軸方向両側の壁部333a、333bを有する。Y軸方向両側の壁部333a、333bのうち、片側(右側)の壁部333aは、ボールねじ332の片側の端部を回転自在に支持する。一方、他側(左側)の壁部333bは、ボールねじ332の他側の端部寄り部分を回転自在に支持する。ボールねじ332の他側の端部は壁部333bを貫通している。また、壁部333bの更に他側には、固定アングル334dを介してモータ40bが固定されており、固定アングル334dと壁部333bとの間でモータ40bの駆動軸とボールねじ332とが接続されている。
【0057】
第3移動機構30の場合も、上述の第1移動機構10と同様に、フレーム333のY軸方向他側(左側)の壁部333bとナット部材331の間に、フレーム側規制部材としてのストッパ335が固定されている。ストッパ335は、ナット部材331と当接することでナット部材331のY軸方向他側への移動を規制する。また、第3移動機構30の場合も、上述の第1移動機構10と同様に、ナット部材331のY軸方向片側面に雄ねじ形状をした規制部材としての規制ボルト(Y軸規制部材)337が固定されている。ナット部材331のY軸方向片側面には、第1移動機構10のナット部材311と同様に、ボールねじ312と螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴(Y軸雌ねじ穴)が形成されており、規制ボルト337はこの雌ねじ穴にねじ止め固定されている。
【0058】
規制ボルト337は、フレーム333に設けられたY軸方向両側の壁部のうち、少なくとも片側(右側)の壁部333aと当接することでナット部材331のY軸方向片側への移動を規制する。このような規制ボルト337も、ナット部材331のY軸方向片側面からの突出量、即ち、頭部の厚さは、ストッパ335のY軸方向の厚さよりも小さい。
【0059】
このような第3移動機構30の場合も、ナット部材331のY軸方向片側の移動の規制を、規制ボルト337が片側の壁部333aと当接することで行っている。このため、ナット部材331の移動範囲、即ち、保持装置41の移動範囲を広くできる。また、規制ボルト337は、ナット部材331に予め形成されているグリスニップル用の雌ねじ穴に螺合固定するため、規制ボルト337を固定するための新たなナット部材331への加工は不要である。このため、低コストでナット部材331、即ち、保持装置41の移動範囲を広くできる。
【0060】
ここで、本実施形態のY軸方向片側は、
図3の左手前側に保持装置41が突出する方向である。即ち、保持装置41が架台2から離れる方向に突出する方向である。上述のように、第3移動機構30の場合は、ナット部材331のY軸方向片側の移動の規制を、規制ボルト337が片側の壁部333aと当接することで行っている。したがって、保持装置41のY軸方向片側への移動範囲が広くなっている。
【0061】
上述のように、保持装置41は、回転装置としての第1回転機構50により、X軸と平行なa軸を中心に回動可能である。そして、本実施形態の加工装置100は、保持装置41に保持されたワークWを180°回転させて、即ち、反転させて、ワークWの裏面を加工可能となっている。保持装置41は、略C型形状を有し、ワークWの一部が一対のアーム部41aの他端部同士の間から露出するように、ワークを保持する。
【0062】
一対のアーム部41aの他端部同士の間から露出するワークWの一部は、ワークWの表面を上側に向けた状態ではY軸方向片側(
図3の左手前側)に向いた状態となり、ワークWを反転させて裏面を上側に向けた状態ではY軸方向他側(
図3の右奥側)に向いた状態となる。即ち、第1回転機構50は、ワークWを加工する際に、一対のアーム部41aの他端部同士の間から露出したワークWの一部がY軸方向他側に向いた状態となるように、保持装置41を回転させることが可能である。この状態で、Y軸方向他側にあるワークWの一部を加工しようとした場合、保持装置41をY軸方向片側に大きく移動させられるようにすることが好ましい。
【0063】
本実施形態では、上述のように、ナット部材331のY軸方向片側の移動の規制を、規制ボルト337が片側の壁部333aと当接することで行うようにして、保持装置41のY軸方向片側への移動範囲を広くしている。このため、上述のようにワークWを反転させて一対のアーム部41aの他端部同士の間から露出したワークWの一部を加工する際に、このワークWの一部を主軸11の下方まで移動させ易く、この加工作業を容易に行うことができる。
【0064】
<第3の実施形態>
第3の実施形態について、
図10及び
図11を用いて説明する。上述の第2の実施形態の第1移動機構10では、所定方向片側に規制部材としての規制ボルト317を設け、所定方向他側の移動の規制はストッパ315により行った構成について説明した。これに対して本実施形態では、ナット部材311に設ける規制部材350をナット部材311の所定方向両側に突出させる構成とし、ストッパ315も省略するようにしている。その他の構成及び作用は、上述の第2の実施形態と同様であるため、同様の構成には同一の符号を付して、説明及び図示を省略又は簡略にし、以下、第2の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0065】
本実施形態の第1移動機構10Aは、
図10及び
図11に示すように、ナット部材311に規制部材350を設けている。規制部材350は、長手方向がZ軸方向(所定方向)となるような板状部材であり、Z軸方向の長さがナット部材311のZ軸方向の長さよりも長い。また、規制部材350は、Z軸方向に直交する方向に貫通する貫通孔を有する。
【0066】
一方、ナット部材311は、第2の実施形態と異なり、Z軸方向に直交する側に開口するように、ボールねじ312と螺合する位置までグリスを注入可能な雌ねじ穴が形成されている。規制部材350のこの雌ねじ部に固定する際には、貫通孔を雌ねじ穴に合わせた状態で貫通孔にボルトの雄ねじ部を挿通し、この雄ねじ部を雌ねじ穴にねじ止め固定する。なお、規制部材350と一体に雄ねじ部を形成し、この雄ねじ部を雌ねじ穴にねじ止め固定しても良い。
【0067】
規制部材350は、雌ねじ穴に固定された状態でナット部材311のZ軸方向両側面(所定方向両側面)からそれぞれ突出する。そして、規制部材350のZ軸方向片側から突出した部分がフレーム313に設けられた前記所定方向片側の壁部313aと当接することでナット部材311のZ軸方向片側への移動が規制される。また、規制部材350のZ軸方向他側から突出した部分がフレーム313に設けられたZ軸方向他側の壁部313bと当接することでナット部材311のZ軸方向他側への移動が規制される。
【0068】
このような本実施形態の場合、フレーム313のZ軸方向両側のストッパを省略し、一つの規制部材350によりナット部材311のZ軸方向両側の移動範囲を規制するようにしている。したがって、規制部材350のナット部材311のZ軸方向両側からの突出量を小さくすれば、ナット部材311の移動範囲をより広くできる。また、規制部材350の長さを調整することにより、ナット部材311からの突出量を適宜調整することができ、ナット部材311の移動範囲の設定を容易に行える。
【0069】
<他の実施形態>
上述の第2の実施形態では、第1移動機構10及び第3移動機構30に、第1の実施形態で示したような直動案内装置300と同様の構成を適用したが、直動案内装置300と同様の構成は、X軸移動機構としての第2移動機構20にも適用しても良い。また、直動案内装置300と同様の構成は、第1移動機構10、第2移動機構20及び第3移動機構30のうち、少なくとも1つの移動機構に適用するようにしても良い。例えば、第3移動機構30のみに適用するようにしても良い。
【0070】
また、第3の実施形態の第1移動機構10Aの構成は、第1の実施形態に示した直動案内装置300に適用しても良い。また、第1移動機構10Aの構成は、第2移動機構20や第3移動機構30に適用しても良い。
【符号の説明】
【0071】
10、10A・・・第1移動機構(移動手段、Z軸移動機構)
11・・・主軸
30・・・第3移動機構(移動手段、Y軸移動機構)
41・・・保持装置(保持部)
41a・・・アーム部
41b・・・連結部
50・・・第1回転機構(回転装置)
100・・・加工装置
300・・・直動案内装置
301、311、331・・・ナット部材(移動部材)
302、312、332・・・ボールねじ
303、313、333・・フレーム
303a、303b、313a、313b、333a、333b・・・壁部
305、315、335・・・ストッパ(フレーム側規制部材)
307、317、337・・・規制ボルト(規制部材)
350・・・規制部材