(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002623
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ガラスパネルユニット、ガラスパネルユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20221227BHJP
E06B 3/677 20060101ALI20221227BHJP
E06B 3/66 20060101ALI20221227BHJP
E06B 3/663 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
C03C27/06 101D
C03C27/06 101E
C03C27/06 101J
E06B3/677
E06B3/66 Z
E06B3/663 F
E06B3/663 G
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163346
(22)【出願日】2022-10-11
(62)【分割の表示】P 2021528274の分割
【原出願日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2019112361
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019226731
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020073141
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕之
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 英一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和也
(72)【発明者】
【氏名】石橋 将
(72)【発明者】
【氏名】野中 正貴
(72)【発明者】
【氏名】清水 丈司
(72)【発明者】
【氏名】石川 治彦
(57)【要約】
【課題】真空空間内にガスが残りにくくすることができる、ガラスパネルユニットを提供する。
【解決手段】ガラスパネルユニット10であって、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40と、真空空間50と、ガス吸着体60とを備える。第2ガラス板30は、第1ガラス板20に対向する。枠体40は、第1ガラス板20と第2ガラス板30とを気密に接合する。真空空間50は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40とで囲まれる。ガス吸着体60は、真空空間50内に配置される。ガス吸着体60は、少なくとも、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、の混合物である複合ゲッタ材を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する枠体と、
前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれた真空空間と、
前記真空空間内に配置されたガス吸着体と、を備え、
前記ガス吸着体は、少なくとも、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、を含有する混合物である複合ゲッタ材を有している、
ガラスパネルユニット。
【請求項2】
前記セリウム化合物の割合は、前記複合ゲッタ材の全質量に対して、50質量%以下である、
請求項1に記載のガラスパネルユニット。
【請求項3】
前記ガス吸着体は、前記ゼオライトを前記セリウム化合物よりも多く有する、
請求項1又は2に記載のガラスパネルユニット。
【請求項4】
前記ゼオライトは、銅イオン交換ゼオライトを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のガラスパネルユニット。
【請求項5】
前記セリウム化合物が酸化セリウム(IV)であり、
前記セリウム化合物からなる粒子は、平均粒子径10nm以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のガラスパネルユニット。
【請求項6】
前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板に排気口を備えない、
請求項1~5のいずれか1項に記載のガラスパネルユニット。
【請求項7】
加工工程と、組立工程と、接合工程と、排気工程とを含み、
前記加工工程は、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、を含有する混合物である複合ゲッタ材を得る複合ゲッタ材作製工程を含み、
前記組立工程は、組立て品を用意する工程であり、
前記組立て品は、
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間にある枠状の周壁と、
前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記周壁とで囲まれた内部空間と、
前記内部空間内に配置され、かつ前記複合ゲッタ材を含有するガス吸着体と、
前記内部空間と外部空間とをつなぐ排気口とを備え、
前記接合工程は、前記周壁を溶融させて前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合させる工程であり、
前記排気工程は、前記排気口を介して前記内部空間を排気して真空空間とする工程である、
ガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項8】
前記加工工程は、前記複合ゲッタ材と溶媒とを混合してゲッタペーストを得る混合工程をさらに含む、
請求項7に記載のガラスパネルユニットの製造方法。
【請求項9】
前記周壁は、有機バインダ及び有機溶剤のうちの一方または両方を含有する、
請求項7又は8に記載のガラスパネルユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラスパネルユニット、ガラスパネルユニットの製造方法に関する。詳細には、断熱用ガラスパネルユニット、断熱用ガラスパネルユニットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラスパネルユニットの製造方法が開示されている。この方法では、第1基板と、第2基板と、ガス吸着体と、ガラス粉末及びバインダを含むガラス接着剤と、を含むガラス複合物を加熱することにより前記バインダを除去している。そして、バインダとして樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/056416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように加熱によりバインダを除去しても、第1基板と第2基板とガラス接着剤の溶融物とで囲まれた内部空間を排気してなる減圧空間(真空空間)に、バインダや有機溶剤に由来するガス、ガラス接着剤に含まれる気泡から放出されるガスが残ってしまう可能性がある。また、第1基板及び第2基板に付着した有機汚染物質からもガスが放出される可能性がある。しかも、このガスをガス吸着体が十分に吸着できない可能性もある。
【0005】
本開示の課題は、真空空間内にガスが残りにくくすることができる、ガラスパネルユニット、ガラスパネルユニットの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガラスパネルユニットは、第1ガラス板と、第2ガラス板と、枠体と、真空空間と、ガス吸着体と、を備える。前記第2ガラス板は、前記第1ガラス板に対向する。前記枠体は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合する。前記真空空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記枠体とで囲まれている。前記ガス吸着体は、前記真空空間内に配置されている。前記ガス吸着体は、少なくとも、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、を含有する混合物である複合ゲッタ材を有している。
【0007】
本開示の他の一態様に係るガラスパネルユニットの製造方法は、加工工程と、組立工程と、接合工程と、排気工程とを含む。前記加工工程は、複合ゲッタ材作製工程を含む。前記複合ゲッタ材作製工程は、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、を含有する混合物である複合ゲッタ材を得る。前記組立工程は、組立て品を用意する工程である。前記組立て品は、第1ガラス板と、第2ガラス板と、枠状の周壁と、内部空間と、ガス吸着体と、排気口とを備える。前記第2ガラス板は、前記第1ガラス板に対向する。前記枠状の周壁は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間にある。前記内部空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記周壁とで囲まれている。前記ガス吸着体は、前記内部空間内に配置され、かつ前記複合ゲッタ材を含有する。前記排気口は、前記内部空間と外部空間とをつなぐ。前記接合工程は、前記周壁を溶融させて前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合させる工程である。前記排気工程は、前記排気口を介して前記内部空間を排気して真空空間とする工程である。
【0008】
本開示の他の一態様に係るガラスパネルユニットの製造方法は、加工工程と、組立工程と、接合工程と、排気工程とを含む。前記加工工程は、ゲッタペースト作製工程を含む。前記ゲッタペースト作製工程は、ゼオライトからなる粒子を含有する第1のゲッタペーストと、セリウム化合物からなる粒子を含有する第2のゲッタペーストと、をそれぞれ得る。前記組立工程は、組立て品を用意する工程である。前記組立て品は、第1ガラス板と、第2ガラス板と、枠状の周壁と、内部空間と、第1のガス吸着体と、第2のガス吸着体と、排気口と、を備える。前記第2ガラス板は、前記第1ガラス板に対向する。前記枠状の周壁は、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間にある。前記内部空間は、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記周壁とで囲まれている。前記第1のガス吸着体は、前記内部空間内に配置され、かつ前記第1のゲッタペーストから形成される。前記第2のガス吸着体は、前記内部空間内に配置され、かつ前記第2のゲッタペーストから形成されている。前記排気口は、前記内部空間と外部空間とをつなぐ。前記接合工程は、前記周壁を溶融させて前記第1ガラス板と前記第2ガラス板とを気密に接合させる工程である。前記排気工程は、前記排気口を介して前記内部空間を排気して真空空間とする工程である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、真空空間内にガスが残りにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの中間体である組立て品を示す平面図である。
図1Bは、
図1AのA-A線断面図である。
【
図2】
図2は、同上のガラスパネルユニットを示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図9】
図9Aは、第2実施形態に係るガラスパネルユニットを示す平面図である。
図9Bは、
図9AのB-B線断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るガラスパネルユニットの中間体である組立て品を示す平面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図15】
図15Aは、第3実施形態に係るガラスパネルユニットの中間体である組立て品を示す説明図である。
図15Bは、第3実施形態に係るガラスパネルユニットの中間体である組立て品を示す説明図である。
【
図16】
図16は、第4実施形態に係るガラスパネルユニットの製造方法の説明図である。
【
図17】
図17は、酸化セリウム(IV)粉末を加熱したときに、酸化セリウム(IV)粉末から脱離した酸素の量に相当する強度(検出強度)と、温度との関係を示すグラフである。
【
図18】
図18Aは、銅イオン交換ゼオライト粉末を使用した複合ゲッタ材における酸化セリウム(IV)の添加量と、ガラスパネルユニットの熱コンダクタンスとの関係を示すプロット図である。
図18Bは、水素イオン交換ゼオライト粉末を使用した複合ゲッタ材における酸化セリウム(IV)の添加量と、ガラスパネルユニットの熱コンダクタンスとの関係を示すプロット図である。
【
図19】
図19は、複合ゲッタ材における酸化セリウム(IV)の濃度と、ガラスパネルユニットの熱コンダクタンスとの関係を示すプロット図である。
【
図20】
図20は、酸化セリウム(IV)粉末を加熱したときに、酸化セリウム(IV)から脱離した酸素の放出量と、温度との関係を示すグラフである。
【
図21】
図21は、ゲッタ材における酸化セリウム(IV)の量と、ガラスパネルユニットの熱コンダクタンスとの関係を示すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本開示に至った経緯を説明する。
【0012】
ガラスパネルユニットは、2つのガラス板の間に真空空間を形成することで、断熱性を有する。このようなガラスパネルユニットの断熱性は、2つのガラス板の間に真空空間があっても、この真空空間にガスが残ることで低下してしまうと考えられる。このため、真空空間内にガスが残る量を減らすため、ガス吸着体が真空空間内に設けられている(特許文献1参照)。
【0013】
しかし、ガス吸着体はガス吸着性を有する成分(ガス吸着成分)を1種類だけ含有していることが多い。このようなガス吸着体を用いた場合、ガス吸着成分に吸着されなかったガスは残留ガスとして真空空間内に存在してしまう可能性がある。
【0014】
また、単純に2種以上のガス吸着成分を組み合わせただけでは、真空空間という低圧の環境下でガスの残留を抑えることは困難と考えられた。言い換えると、真空空間内のガス吸着に適したガス吸着成分を2種以上選択することは容易でないと考えられた。
【0015】
そこで、発明者らは、鋭意研究の結果、真空空間内に、水蒸気、二酸化炭素、酸素、窒素、及びメタン等の各種ガス成分が存在し、中でも水蒸気及び二酸化炭素が占める割合が高いことを見出した。その一方で、窒素やメタンはガス吸着体に吸着されにくく、ガス吸着体の量を増やしても残留してしまっていることを突き止めた。このため、窒素やメタン等も含めて十分に吸着できるガス吸着体を用いることが必須である。しかし、窒素やメタンは吸着されにくい種類のガスであり、一般的なガス吸着体で十分に吸着させることは難しく、特にガス吸着体を10Pa以下の真空空間で用いる場合にはさらに十分な吸着をさせることが難しくなる。
【0016】
また、一般に、例えばゼオライトのようなガス吸着体がガスを吸着できるようにするためには、吸着サイトにすでに吸着されているガスを事前に脱離させておかなければならない。しかし、窒素やメタンのような吸着されにくいガスですら吸着することが可能なガス吸着体は、強力なガス吸着力を持つということであり、ガス脱離の活性化エネルギーが高くなる。すなわち、例えば大気中にガス吸着材が放置されていた場合、すでに窒素やメタン以外のガスを強く吸着してしまっているため、これらのガスを脱離させるためには多大なエネルギーが必要になる。特に、350℃以下でガスを脱離させるときにこの傾向は顕著になる。また、ガス吸着体を用いた結果、窒素やメタンの分圧合計を10Pa以下にする必要がある場合など、低い平衡圧を保つためにはさらに強力な吸着力が必要になり、この傾向はさらに顕著となる。
【0017】
このため、例えば真空空間が形成されたガラスパネルユニットの製造プロセスを低温化させると、ガラスパネルユニットの製造プロセス中でガス吸着体からガスを十分に脱離させることが困難になる。よって、ガス吸着体の吸着サイトを十分に空けることができず、窒素やメタン等を十分吸着させることが困難になる。すなわち、ガス吸着体によって十分な量の窒素やメタンが吸着されることができる状態を、350℃以下の低温プロセスで実現することは、これまでは原理的に困難であった。
【0018】
これらの課題を解決するため、本開示に至った。
【0019】
なお、以下では、ゼオライトからなる粒子を「ゼオライト粒子」という場合がある。またセリウム化合物からなる粒子を「セリウム化合物粒子」という場合がある。ゼオライト粒子は、ほとんどの構成成分がゼオライトであるが、不可避的に含まれる不純物を成分として含んでいてもよい。同様に、セリウム化合物粒子は、ほとんどの構成成分がセリウム化合物であるが、不可避的に含まれる不純物を構成成分として含んでいてもよい。
【0020】
<第1実施形態>
次に、本実施形態に係るガラスパネルユニット10の製造方法の概要を説明する。
【0021】
ガラスパネルユニット10の製造方法は、加工工程と、組立工程(
図3~
図5参照)と、接合工程(第1溶融工程、
図6参照)と、排気工程(
図6参照)とを含む。加工工程は、少なくとも、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、を含有する複合ゲッタ材を得る複合ゲッタ材作製工程を含む。組立工程は、組立て品100を用意する工程である。組立て品100は、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、枠状の周壁410と、内部空間500と、ガス吸着体60と、排気口700とを備える(
図1A及び
図1B参照)。第2ガラス板300は、第1ガラス板200に対向する。周壁410は、第1ガラス板200と第2ガラス板300との間にある。内部空間500は、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、周壁410とで囲まれる。ガス吸着体60は、内部空間500内に配置され、かつ上記の複合ゲッタ材を含有する。排気口700は、内部空間500と外部空間とをつなぐ。接合工程は、周壁410を溶融させて第1ガラス板200と第2ガラス板300とを気密に接合させる工程である。排気工程は、排気口700を介して内部空間500を排気して真空空間50とする工程である。
【0022】
上記の製造方法によれば、ガス吸着体60が、少なくとも、ゼオライトからなる粒子(ゼオライト粒子)と、セリウム化合物からなる粒子(セリウム化合物粒子)と、を含有することで、真空空間50内において、セリウム化合物粒子が吸着しやすいCO2などのガスを吸着する。よって、ゼオライトの吸着サイトがCO2で埋まってしまうことを防ぎ、ゼオライトでしか吸着できない窒素やメタン等を吸着するに十分な吸着サイトを確保することができる。このため、ゼオライト及びセリウム化合物のうち、一方だけでは吸着されにくい窒素やメタンガスを十分に吸着できるようになり、これらのガスが真空空間50内に残りにくくなる。すなわち、真空空間50内の残留ガスが少なくなる。
【0023】
なお、「ゲッタ材」とは、所定の大きさより小さい分子を吸着する性質を有する材料を意味する。本実施形態においては、ゼオライト粒子及び複数のゼオライト粒子の集合体(粉末)はゲッタ材である。またセリウム化合物粒子及び複数のセリウム化合物粒子の集合体(粉末)もゲッタ材である。「複合ゲッタ材」とは、複数種のゲッタ材を含有するゲッタ材である。本実施形態において、複合ゲッタ材は、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子の両方を含んでいる。また複合ゲッタ材は、ゼオライト粒子及びセリウム化合物粒子以外の他のゲッタ材を含んでいてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係るガラスパネルユニット10の製造方法(以下、製造方法という場合がある)を、
図1~
図8を参照して詳細に説明する。この製造方法は、
図2のようなガラスパネルユニット10を製造する方法である。なお、本実施形態では、方向D1は第1ガラス板200の厚み方向と平行な方向であり、方向D2は、方向D1と直交する方向であり、方向D3は方向D1及び方向D2と直交する方向である。また方向D1は第1方向であってもよく、方向D2は第2方向であってもよく、方向D3は第3方向であってもよい。
【0025】
製造方法は、準備工程と、除去工程とを含む。
【0026】
準備工程は、
図7に示す仕掛り品110を用意する工程である。仕掛り品110は、
図1A及び
図1Bに示す組立て品100から形成される。すなわち、仕掛り品110はガラスパネルユニット10(
図2参照)を作製するための中間生成物であり、組立て品100は仕掛り品110を作製するための中間生成物である。
【0027】
準備工程は、加工工程と、組立工程(
図3~
図5参照)と、接合工程(第1溶融工程、
図6参照)と、排気工程(
図6参照)と、封止工程(第2溶融工程、
図6及び
図7参照)とを含む。
【0028】
加工工程は、複合ゲッタペーストを用意する工程である。この複合ゲッタペーストは、少なくとも、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、溶媒(例えば、水)とを含有する。そして、ガス吸着体60は複合ゲッタペーストの乾燥物である。これにより、第2溶融工程後にセリウム化合物が酸素を僅かに放出しても、この酸素をゼオライトが吸着する。このため、内部空間500を排気した減圧空間(後述の真空空間50)中に含まれる酸素の量を低減できる。セリウム化合物は減圧空間中の二酸化炭素に対して高い吸着性を有するため、減圧空間に含まれる二酸化炭素の量を低減できる。また、このように減圧空間に含まれる二酸化炭素の量を低減できると、ゼオライトの窒素やメタン等を吸着可能な吸着サイトが二酸化炭素で埋まってしまうことを防ぐことができる。その結果、セリウム化合物では吸着が難しい窒素及びメタンをゼオライトが十分に吸着することができる。したがって、減圧空間内にゼオライトとセリウム化合物とが存在することで、いずれか単体の場合よりも二酸化炭素だけでなく、窒素及びメタン等の炭化水素量も減らすことができ、減圧空間内の残留ガスが少なくなる。
【0029】
なお、本実施形態では後述する熱接着剤(第1熱接着剤及び第2熱接着剤)の融点等を特に限定しないが、酸化セリウム粒子と銅イオン交換ゼオライト粒子を混合する効果は、熱接着剤の融点が400℃以下のときに顕著になり、350℃以下のときにさらに顕著になる。または、排気工程の温度が350℃以下のときに特に顕著になる。これは、350℃を超えると、排気工程などの熱処理時に銅イオン交換ゼオライトが吸着しているガスを比較的脱離させやすくすることができるからである。すなわち、熱接着剤の融点が350℃以下の条件又は排気工程での温度が350℃以下の条件であっても、減圧空間内の残留ガスを少なくすることができる。
【0030】
なお、酸化セリウム粒子とは、セリウム化合物として酸化セリウムを含む粒子であり、銅イオン交換ゼオライト粒子とは、ゼオライトとして銅イオン交換ゼオライトを含む粒子である。
【0031】
加工工程は、加熱工程と、複合ゲッタ材作製工程と、混合工程とを含む。なお、この加工工程における加熱工程を省略しても、ゼオライト粒子にセリウム化合物粒子を混合する効果は得られる。このため、必ずしもゼオライト粒子またはセリウム化合物粒子に対して加熱工程を実施しなくてもよい。
【0032】
加熱工程は、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とのうちの一方又は両方を加熱する工程である。ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子との両方を加熱する場合、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とを分けて加熱してもよく、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子との混合物を加熱してもよい。また、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とのうち一方を加熱する場合、残りの成分を加熱しなくてもよい。具体的には、ゼオライト粒子だけ加熱してセリウム化合物粒子を加熱しなくてもよく、あるいはセリウム化合物粒子だけ加熱してゼオライト粒子を加熱しなくてもよい。加熱工程の温度は、排気工程の温度(後述の排気温度Te)よりも高いことが好ましく、第1溶融工程の温度(後述の第1溶融温度Tm1)よりも高いことがより好ましく、第2溶融工程の温度(後述の第2溶融温度Tm2)よりも高いことが特に好ましい。この場合、組立て品100を作製する前に、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とのうち一方又は両方が吸着していたガス成分を脱離させることができる。特にセリウム化合物粒子を加熱すると、セリウム化合物粒子から酸素を脱離させることができる。これにより、内部空間500にセリウム化合物が酸素を放出する量を抑えることができ、しかもセリウム化合物粒子が有するガス吸着性を向上させることができる場合がある。
【0033】
また、加熱工程において、ゼオライト粒子のみ、またはゼオライト粒子とセリウム化合物粒子との両方を加熱すると、ゼオライト粒子及びセリウム化合物粒子の各々に吸着されていた酸素を加熱工程によって脱離させることができる。これにより、接合工程以降で酸素を脱離させる量を減らすことができるため、排気工程を低温化でき、その結果、第1溶融工程、及び第2溶融工程を低温化させることができる。したがって、ガラスパネルユニット10の製造コストを削減することができる。
【0034】
ゼオライトは、複数のゼオライト構造を有する多孔質の成分である。このため、ゼオライト粒子は複数の細孔を有する。そして、この細孔内に、ガスが吸着される。ゼオライトが吸着するガスとして、例えば、水蒸気、二酸化炭素、酸素、窒素、及びメタン等の炭化水素等が挙げられる。中でも、ゼオライトは、セリウム化合物が吸着しにくい窒素及び炭化水素等のガス(特に窒素)を減圧空間内で吸着することができる。ゼオライト構造は、下記一般式(1)の組成を有する。
Me2/XO・Al2O3・mSiO2・nH2O …(1)
ここで、Meは細孔内に存在するx価のカチオンである。mはシリカ/アルミナ比であり、2以上の整数である。nは0以上の整数である。式(1)の組成中、各Alで1価の負電荷が生じている。このため、Meが2価以上のカチオンである場合、ゼオライト粒子の細孔内で正電荷が生じる。また、Meが1価のカチオンである場合、細孔内は電気的に中性となる。
【0035】
ゼオライト構造では、Meは1価のカチオンであってもよい。Meは2価以上のカチオンであってもよい。Meは1価のカチオンと、2価以上のカチオンを組み合わせていてもよい。1価のカチオンとして、例えば、Li+、Na+、及びK+等のアルカリ金属イオン;プロトン;並びにアンモニウムイオン(NH4+)、Ag+等が挙げられる。2価以上のカチオンとして、Ca2+、Mg2+、及びBa2+等のアルカリ土類金属イオン;並びにCu2+、Au2+、Fe2+、Zn2+及びNi2+等の遷移金属イオンが挙げられる。
【0036】
ゼオライト構造として、例えば、A型ゼオライト構造、X型ゼオライト構造、Y型ゼオライト構造、及びZSM-5構造等が挙げられる。ゼオライトは、上記の構造以外の任意のゼオライト構造を含有してもよい。
【0037】
一般式(1)中の水(H2O)は、結晶水としてゼオライトに含まれている。このような水は、例えば、ゼオライト粒子の細孔内に含まれている。ゼオライトを加熱すると、この結晶水だけでなく、加熱前に吸着していた酸素等のガス成分をゼオライトから脱離させることができる。これにより、ゼオライトが有するガス吸着性を向上させることができる。なお、結晶水が完全に脱離すると、一般式(1)中のnは0になる。
【0038】
加熱工程で得られるゼオライトは、酸素が脱離し、かつ窒素、一酸化炭素及び水分等のうち少なくとも1種の成分(以下、吸着成分という場合がある)を吸着していることが好ましい。すなわち、加熱工程で得られるゼオライト粒子の吸着容量は吸着成分で飽和していることが好ましい。この場合、吸着成分が排気工程等の加熱時にゼオライトから脱離することにより、ゼオライトのガス吸着性を回復させることができる。なお、加熱工程後のゼオライト粒子が水と混合されると、このゼオライトに、窒素又は一酸化炭素が吸着されていても、その一部は水分に置換されると考えられる。
【0039】
ゼオライトは、銅イオン交換ゼオライトを含有することが好ましい。この銅イオン交換ゼオライトは、一般式(1)中のMeが銅イオンである成分である。ここで、銅イオン交換ゼオライトは、ゼオライト構造に銅イオンを保持させた成分である。このため、「銅イオン交換ゼオライト」は、ゼオライト構造に銅イオンを保持させる前の成分まで限定しない。また、ゼオライトの結晶構造はZSM-5等のMFI型、Y型、USY型、モルデナイト型、フェリエライト型、L型等であることがより好ましい。特に、銅イオン交換されたZSM-5型ゼオライト(Cu-ZSM5)は、室温においても低圧下で窒素やメタン等を強く吸着することができるためより望ましい。なお、ゼオライトのシリカ/アルミナ比のモル比は5以上であることが望ましく、ZSM-5型のシリカ/アルミナのモル比は10以上45以下が望ましく、20以上40以下がさらに望ましいが、特にこれに限るものではない。
【0040】
セリウム化合物は、セリウムを含有する化合物であって、減圧空間内の二酸化炭素を少なくとも吸着する性質を有する。このため、減圧空間でのゼオライト粒子による二酸化炭素吸着能力が十分ではなくても、この二酸化炭素をセリウム化合物粒子が吸着できる。セリウム化合物は、例えば、酸化セリウム(IV)(CeO2)や酸化セリウム(III)(Ce2O3)等のセリウム酸化物、水酸化セリウム、炭酸セリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する。中でも、セリウム化合物粒子は酸化セリウム(IV)を含有することが好ましい。また、セリウム化合物粒子は、Cu、Feなどの金属、ScやYなどの希土類を含んでいてもよい。また、LaやNd、Gdなどの希土類を含むセリウム化合物粒子や、AuやPt、Pdなどの貴金属が担持されたセリウム化合物粒子であってもよい。また、セリウム化合物(特に、酸化セリウムの場合)粒子の細孔分布はピークが1nm以上10nm以下であることが望ましい。
【0041】
セリウム化合物が酸化セリウムの場合、酸化セリウム粒子は、30℃/minで昇温したときの昇温脱離ガス分析において、酸素放出量が最大点となる温度を持つ酸素放出カーブを示すことが好ましい。この酸素放出カーブは、酸素放出カーブの最大点が200℃以下であることが好ましい。または、酸素放出カーブは、酸素放出カーブの最大点が250℃以上であり、かつ酸素放出カーブの酸素放出開始温度が250℃以上であることが好ましい。
【0042】
セリウム化合物粒子が加熱により還元されて酸素が放出されると、この酸素がゼオライトの吸着サイトに吸着し、ゼオライトのガス吸着性能が低下しやすい。特にCu-ZSM5は酸化銅が還元されることで強いガス吸着力を持つようになるため、周囲から酸素を与えられる環境下では吸着能力を得られにくい。また、酸化セリウムが還元されやすい状態であると、セリウムがゼオライト中のシリカと反応することでゼオライトの構造が変化し、ゼオライトの吸着能力が低下する可能性もある。セリウム化合物は、酸素の放出開始温度が高いほど、酸素の脱離エネルギーが高くて、酸素の脱離が起こりにくく、ゼオライトのガス吸着性能の低下が抑制される。
【0043】
そこで、本実施形態では、酸化セリウム粒子は、30℃/minで昇温したときの昇温脱離ガス分析において、酸素放出量が最大点となる温度を持つ酸素放出カーブを示すことが好ましい。この酸素放出カーブは、酸素放出カーブの最大点が200℃以下であることが好ましい。または、酸素放出カーブは、酸素放出カーブの最大点が250℃以上であり、かつ最大点の酸素放出開始温度が250℃以上であることが好ましい。これにより、セリウム化合物粒子からの酸素の脱離が起こりにくく、ゼオライト粒子のガス吸着性能の低下が抑制される。すなわち、セリウム化合物粒子としては、250℃以上にピークがある酸素放出カーブを持つ場合、250℃以上から酸素放出が始まる酸化セリウム粒子を使用することが好ましい。
【0044】
本実施形態では、セリウム化合物は、O2が脱離し始める温度がプロセス温度以上であることが好ましい。プロセス温度とは、後述の排気行程で使用される排気温度Teであり、例えば、250℃である。またセリウム化合物は、O2が脱離し始める温度がシールの融解温度以上であることがさらに好ましい。シールの融解温度は後述の第2封着材の第2軟化点であり、例えば、265℃である。さらに、セリウム化合物は、O2が脱離し始める温度が300℃以上、より好ましくは500℃以上、特に550℃以上が好ましい。
【0045】
なお、セリウム化合物からのO2が脱離し始める温度は、セリウム化合物粒子の細孔径分布及びセリウム化合物の担持金属、添加物濃度などにより変わる。また、担持物質によっては、担持物質自体から酸素を放出する場合もあるため、これらも含めてセリウム化合物の種類を考える必要がある。
【0046】
また昇温脱離ガス分析は、真空加熱/昇温により発生したガスを温度毎にモニターできる装置を用いた質量分析法であり、TDS(Thermal Desorption Spectrometry)と呼ばれる。
【0047】
複合ゲッタ材作製工程は、加熱工程後または未加熱のゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とを用いて複合ゲッタ材を得る工程である。複合ゲッタ材作製工程の際、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とを混合する。本実施の形態において、複合ゲッタ材は、ゼオライト粒子を含む第1のゲッタ材と、セリウム化合物粒子を含む第2のゲッタ材と、を含有している。複合ゲッタ材は、第1のゲッタ材と第2のゲッタ材以外のゲッタ材を含有していてもよい。複合ゲッタ材は、第1のゲッタ材と第2のゲッタ材の複合した粉体(粉末)の焼結体も含む。その他単一のゲッタ材を合わせて焼結体に形成したものでもよい。
【0048】
ゼオライト粒子の平均粒子径及びセリウム化合物粒子の平均粒子径は、それぞれ、0.001μm~30μmの範囲が好ましいが、特に、この範囲に限定されない。ゼオライト粒子の平均粒子径及びセリウム化合物粒子の平均粒子径が上記範囲であれば、混合しやすく、またガス吸着性能に優れる。特に、ゼオライト粒子の平均粒子径及びセリウム化合物粒子の平均粒子径は、それぞれ、0.3μm以上2μm以下の範囲とするのが好ましい。
【0049】
複合ゲッタ材に含まれるセリウム化合物の割合は、複合ゲッタ材の質量に対して、50質量%以下であることが好ましい。この場合、セリウム化合物から酸素が脱離する量を少なくできるため、この酸素が第2溶融工程後の内部空間500(真空空間50)内に残りにくくなる。複合ゲッタ材を占めるセリウム化合物粒子の割合は、ゼオライト粒子の割合よりも小さいことが好ましい。すなわち、ゼオライト粒子の割合は、セリウム化合物粒子の割合よりも大きいことが好ましい。ゼオライト粒子の割合が大きくなるほど、セリウム化合物粒子が吸着しにくい窒素及び炭化水素は、ゼオライト粒子で吸着されて減圧空間に残りにくくなる。しかも、第2溶融工程以降でセリウム化合物粒子から脱離した酸素により、ゼオライト粒子の吸着容量を飽和させにくくできる。セリウム化合物粒子の割合は、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。セリウム化合物粒子の割合の下限は特に限定されないが、セリウム化合物粒子の割合は、例えば、0質量%よりも大きく、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が特に好ましい。
【0050】
なお、加熱工程を行う場合であって、加熱工程中にゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とが混合されている場合、ゲッタ材作製工程は加熱工程と同時に行われる。ゲッタ材作製工程の後、混合工程が行われる。
【0051】
本実施形態において、複合ゲッタ材は、その目的から、ゼオライト粒子および酸化セリウム粒子は、互いに担持されている必要はない。このため、ゼオライト粒子および酸化セリウム粒子の平均粒子径が少なくとも10nm以上であることが望ましい。これは、ゼオライト粒子または酸化セリウム粒子の細孔の内部に粒子が拡散し、ゼオライト粒子および酸化セリウム粒子の性能を悪化させないようにするためである。また、より望ましくは、ゼオライト粒子および酸化セリウム粒子の平均粒子径は20nm以上であることが望ましく、さらに望ましくは50nm以上であることが望ましい。このことによって、ゼオライト粒子に酸化セリウム微粒子が付着すること、または酸化セリウムにゼオライト微粒子が付着することを抑制し、表面積を大きく保つことができる。例えば、平均粒子径が50nm以上のCu-ZSM5粉末と、平均粒子径が20nm以上の酸化セリウム粉末とを混合したものであることが望ましい。なお、本開示において、平均粒子径は、TEMまたはSEM等を用いて顕微鏡法で観察した球相当径で考えればよい。
【0052】
混合工程は、複合ゲッタ材と溶媒とを混合してゲッタペーストを得る工程である。溶媒として水を用いる場合、このゲッタペーストでは水が複合ゲッタ材を覆うようにして存在する。これにより、ゲッタペーストの状態で、複合ゲッタ材は空気と接しにくくなる。すなわち、複合ゲッタ材は空気(特に空気中の酸素)等を吸着しにくくなる。したがって、ゲッタペーストの保存が容易となり、ガラスパネルユニット10を製造する際の煩雑性を軽減できる。ゲッタペーストにおける水の含有量は、任意に選択できる。溶媒は水を使用できる。また溶媒は水を主成分とする溶液を使用できる。例えば、溶媒は、不純物としての有機物やカルシウム、ナトリウムなどの成分が混合された水であってもよい。また溶媒は、50質量%以下のエタノール等の有機溶媒が混合された水であってもよい。また溶媒は、エタノール又はブチルカルビトールアセテート、ターピネオールなどの有機溶媒及びこれらの混合物であってもよい。また、ポリカーボネート、ポリイソブチルメタアクリレートなどの一般的な有機バインダを加えてもよい。例えば粘性の高い有機溶媒や有機バインダを用いることで、固形分の沈降を抑制し、塗布性能が向上するなどの効果が得られる。さらに、銅イオン交換型ゼオライト粒子と酸化セリウム粒子を水で混合したペーストの場合、長期間にわたってペーストとして保存したときに性能がわずかに劣化することが確認された。これは、水溶媒中では酸化セリウムと銅イオン交換ゼオライトの間でわずかに反応が起こるためであると考えられる。このため、長期間の保存が必要な場合など、条件によっては有機溶媒の方が有利な面もある。また、セリウム化合物粒子は、有機溶媒や有機バインダが分解することで放出される二酸化炭素も吸着するため、セリウム化合物粒子とゼオライト粒子と溶媒との混合の効果はより大きく得られる。ただし、ある程度早めに塗布することを前提に、可能な限り純水、超純水、イオン交換水、蒸留水等を用いることが、溶媒によるゼオライト粒子の吸着能力への悪影響を抑制するために、より望ましい。混合工程の後、組立工程が行われる。
【0053】
組立工程は、組立て品100を用意する工程である。
【0054】
組立て品100は、
図1A及び
図1Bに示すように、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、周壁410と、仕切り420と、を備える。また、組立て品100は、第1及び第2ガラス板200,300と周壁410とで囲まれた内部空間500を有する。さらに、組立て品100は、内部空間500内に、ガス吸着体60と、複数のピラー(スペーサ)70と、を備える。さらに、組立て品100は、排気口700を備える。
【0055】
第1ガラス板(第1ガラス基板)200は、後述の第1ガラス板20の基礎となる部材であり、第1ガラス板20と同じ材料で形成されている。第2ガラス板(第2ガラス基板)300は、後述の第2ガラス板30の基礎となる部材であり、第2ガラス板30と同じ材料で形成されている。第1及び第2ガラス板200,300は同じ平面形状である。本実施形態では、第1ガラス板200は、後述の第1ガラス板20を少なくとも1つ形成可能な大きさを有し、第2ガラス板300は、後述の第2ガラス板30を少なくとも1つ形成可能な大きさを有する。
【0056】
第1及び第2ガラス板200,300はいずれも多角形(本実施形態では長方形)の平板状である。
【0057】
第1ガラス板200は、本体210と、低放射膜220とを含む。
【0058】
低放射膜220は、内部空間500内にあり、本体210を覆う。低放射膜220は、本体210に接している。低放射膜220は、赤外線反射膜とも呼ばれ、透光性を有するものの、赤外線を反射する。このため、低放射膜220は、ガラスパネルユニット10の断熱性を向上させることができる。低放射膜220は、例えば、金属製の薄膜である。低放射膜220は、例えば、銀を含有する。低放射膜220の一例は、Low-E膜である。
【0059】
第1ガラス板200は、上記の通り、本体210を含む。本体210は、第1面211と第2面212とを有する。第1面211は、平坦な面であって、低放射膜220に覆われる。第2面212は、第1面211と平行で、かつ平坦な面であって、方向D1において内部空間500と反対側にある。本体210は、第1ガラス板200の主な形状を構成するため、矩形の平板状である。本体210の材料は、例えば、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、物理強化ガラスである。
【0060】
第2ガラス板300は、本体310を含む。本体310は、第1面311と第2面312とを有する。第1面311は、平坦な面であって、低放射膜220と対向する。第2面312は、第1面311と平行で、かつ平坦な面であって、方向D1において内部空間500と反対側にある。本体310は、第2ガラス板300の主な形状を構成するため、矩形の平板状である。本体310は、本体210と同形状である。第2ガラス板300は、本実施形態では、本体310のみからなるが、本体310に加えて低放射膜220と同様の低放射膜を備えてもよい。第2ガラス板300が低放射膜を備える場合、この低放射膜は、内部空間500内で、本体310を覆い、かつ本体310に接する。本体310の材料は、例えば、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、物理強化ガラスである。
【0061】
周壁410は、第1封着材(第1熱接着剤)を含む。周壁410は、第1ガラス板200と第2ガラス板300との間に配置される。周壁410は、
図1Aに示すように、枠状である。特に、周壁410は、矩形の枠状である。周壁410は、第1及び第2ガラス板200,300の外周に沿って形成されている。これにより、組立て品100では、周壁410と第1ガラス板200と第2ガラス板300とで囲まれた内部空間500が形成される。
【0062】
第1熱接着剤は、例えば、ガラスフリットを含む。ガラスフリットの例としては、低融点ガラスフリットが挙げられる。低融点ガラスフリットの例としては、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット、バナジウム系ガラスフリットが挙げられる。また、第1熱接着剤は、ガラスフリットに限定されず、例えば、低融点金属、又はホットメルト接着材を含むことができる。第1熱接着剤は、有機バインダ及び有機溶剤のうちの一方または両方をさらに含んでもよい。この場合、封止工程(第2溶融工程)後に有機バインダ及び有機溶剤のうちの一方または両方に由来するガスが真空空間50に放出されても、このガスをガス吸着体60が吸着することにより、真空空間50内にガスが残りにくくなる。
【0063】
有機バインダは、例えば樹脂を含む。この樹脂として、例えば、ポリイソブチルメタアクリレート、エチルセルロース、脂肪族ポリカーボネート、アクリル樹脂、及びブチラール樹脂が挙げられる。有機バインダは、上記の樹脂に限らず、任意の成分を含むことができる。有機バインダを構成する樹脂は、低分子量で分解しやすい樹脂であることが好ましい。
【0064】
有機溶剤として、例えば、酢酸ブチルカルビトール、及び酢酸エチルカルビトール等のエステル類が挙げられる。しかし、有機溶剤は、上記の成分に限らず、テルペン系溶剤などの一般的なスクリーン印刷に用いられる溶剤、及びディスペンス塗布に用いられる溶剤のうち少なくとも1種を含んでもよい。
【0065】
周壁410が樹脂をさらに含有する場合、組立工程の後、この樹脂に由来するガスが内部空間500内に放出されても、樹脂に由来するガスは、排気工程によって排気される。排気工程後、樹脂に由来するガスが残留ガスとして真空空間50内に存在しても、この残留ガスをガス吸着体60が吸着することができる。
【0066】
仕切り420は、内部空間500内に配置される。仕切り420は、内部空間500を、第1空間510と、第2空間(通気空間)520とに仕切る。このため、第1空間510は排気工程で排気される空間であり、第2空間520は第1空間510の排気に使用される空間である。仕切り420は、第1空間510が第2空間520よりも大きくなるように、第2ガラス板300の中央よりも第2ガラス板300の長さ方向(
図1Aにおける左右方向)の第1端側(
図1Aにおける右端側)に形成される。仕切り420は、第2ガラス板300の幅方向(
図1Aにおける上下方向)に沿うようにして内部空間500内に配置される。ただし、仕切り420の長さ方向の両端は、周壁410と接していない。本実施形態では、第2ガラス板300の幅方向は方向D2と平行であり、第2ガラス板300の長さ方向は方向D3と平行である。
【0067】
仕切り420は、その本体を構成する本体部(仕切り本体部)421と、遮断部422とを備える。遮断部422は、第1遮断部4221と、第2遮断部4222とを備える。本体部421は、方向D2に沿う直線状である。この方向D2は、例えば、第2ガラス板300の幅方向である。また、方向D2において、本体部421の両端は、周壁410と接触していない。本体部421の両端のうち、一端から第2空間520に向かって延びるようにして第1遮断部4221が形成され、他端から第2空間520に向かって延びるようにして第2遮断部4222が形成されている。本体部421の一端は第1端(
図1Aにおける上端側)であってもよく、他端(
図1Aにおける下端側)は第2端であってもよい。
【0068】
仕切り420は、第2封着材(第2熱接着剤)を含む。第2熱接着剤は、例えば、ガラスフリットである。ガラスフリットの例としては、低融点ガラスフリットが挙げられる。低融点ガラスフリットの例としては、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット、バナジウム系ガラスフリットが挙げられる。また、第2熱接着剤は、ガラスフリットに限定されず、例えば、低融点金属、またはホットメルト接着材であってもよい。なお、本実施形態では、第1熱接着剤と第2熱接着剤とは同じものを使用している。つまり、第1封着材と第2封着材とは、同じ材料である。
【0069】
通気路600は、
図1Aに示すように、内部空間500内で第1空間510と第2空間520とをつなぐ。通気路600は、第1通気路610と、第2通気路620と、を含む。第1通気路610は、仕切り420の第1端(
図1Aの上端)と周壁410との間に介在する隙間である。第2通気路620は、仕切り420の第2端(
図1Aの下端)と周壁410との間に介在する隙間である。
【0070】
排気口700は、第2空間520と外部空間とをつなぐ孔である。排気口700は、第2空間520および通気路600(第1通気路610及び第2通気路620)を介して第1空間510を排気するために用いられる。したがって、通気路600と第2空間520と排気口700とは、第1空間510を排気するための排気路を構成する。排気口700は、第2空間520と外部空間とをつなぐように第2ガラス板300に形成されている。具体的には、排気口700は、第2ガラス板300の角部分にある。
【0071】
ガス吸着体60及び複数のスペーサ70は第1空間510内に配置されている。特に、ガス吸着体60は、第2ガラス板300の長さ方向の第2端側(
図1Aにおける左端側)に、第2ガラス板300の幅方向に沿って形成されている。つまり、ガス吸着体60は、第1空間510(真空空間50)の端に配置される。このようにすれば、ガス吸着体60を目立たなくすることができる。また、ガス吸着体60は、仕切り420および通気路600から離れた位置にある。そのため、第1空間510の排気時に、ガス吸着体60が排気を妨げる可能性を低くできる。
【0072】
組立工程は、組立て品100を得るために、第1ガラス板200、第2ガラス板300、周壁410、仕切り420、内部空間500、通気路600、排気口700、ガス吸着体60、及び複数のスペーサ70を形成する工程である。組立工程は、第1~第6工程を有する。なお、第2~第5工程の順番は、適宜変更してもよい。
【0073】
第1工程は、第1ガラス板200及び第2ガラス板300を形成する工程(基板形成工程)である。例えば、第1工程では、第1ガラス板200及び第2ガラス板300を作製し、必要に応じて、第1ガラス板200及び第2ガラス板300を洗浄する。
【0074】
第2工程は、排気口700を形成する工程である。第2工程では、第2ガラス板300に、排気口700を形成する。また、第2工程では、必要に応じて、第2ガラス板300を洗浄する。
【0075】
第3工程は、スペーサ70を形成する工程(スペーサ形成工程)である(
図3参照)。第3工程では、複数のスペーサ70を予め形成しておき、チップマウンタなどを利用して、複数のスペーサ70を、第2ガラス板300の所定位置に配置する。複数のスペーサ70は、組立て品100が仕掛り品110となった状態で、第1及び第2ガラス板200,300間の間隔を所定間隔に維持するために用いられる。このようなスペーサ70を構成する材料として、例えば、金属、ガラス、及び樹脂が挙げられる。スペーサ70は、これらの材料のうち、1種又は複数種含むことができる。
【0076】
本実施形態の第3工程では、上記の通り、スペーサ70を予め形成して第2ガラス板300に配置しているが、周知の薄膜形成技術を利用して複数のスペーサ70を第2ガラス板300に形成してもよい。また、スペーサ70が樹脂を含む場合、複数のスペーサ70は、上記の形成方法と異なる方法として、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して形成されていてもよい。この場合、複数のスペーサ70は、光硬化性材料などを用いて形成することができる。
【0077】
なお、スペーサ70の大きさ、スペーサ70の数、スペーサ70の間隔、スペーサ70の配置パターンは、適宜選択することができる。各スペーサ70は、上記所定間隔とほぼ等しい高さを有する円柱状である。例えば、スペーサ70は、直径が1mm、高さが100μmである。なお、各スペーサ70は、角柱状や球状などの所望の形状であってもよい。
【0078】
第4工程は、ガス吸着体60を形成する工程(ガス吸着体形成工程)である(
図3参照)。第4工程では、ディスペンサなどを利用して、加工工程のゲッタペーストを第2ガラス板300上に塗布する。そして、塗布後のゲッタペーストを乾燥することにより、ガス吸着体60が形成される。すなわち、第4工程は、ゲッタペーストを乾燥する乾燥工程を含む。ゲッタペーストを乾燥することにより、複合ゲッタ材のガス吸着性を回復させることができる。また、ゲッタペーストを塗布することにより、ガス吸着体60を小さくできる。したがって、第1空間510が狭くてもガス吸着体60を配置できる。
【0079】
第5工程は、周壁410、及び仕切り420を配置する工程(封着材配置工程)である(
図3参照)。第5工程では、ディスペンサなどを利用して、第1封着材を第2ガラス板300上に塗布し、その後第1封着材を乾燥させて周壁410を形成する。また、ディスペンサなどを利用して、第2封着材を第2ガラス板300上に塗布し、その後第2封着材を乾燥させて仕切り420を形成する。
【0080】
第1工程から第5工程が終了することで、
図3に示されるような、第2ガラス板300が得られる。この第2ガラス板300には、周壁410、仕切り420、通気路600、排気口700、ガス吸着体60及び複数のスペーサ70が形成されている。
【0081】
第6工程は、第1ガラス板200と第2ガラス板300とを配置する工程(配置工程)である。第6工程では、
図4に示すように、第1ガラス板200と第2ガラス板300とは、互いに平行かつ対向するように配置される。
【0082】
上述した組立工程によって、
図5に示す組立て品100が得られる。そして、組立工程の後には、
図6に示すような、第1溶融工程(接合工程)と、排気工程と、第2溶融工程(封止工程)とが実行される。
【0083】
第1溶融工程は、周壁410を一旦溶融させて周壁410で第1ガラス板200と、第2ガラス板300とを気密に接合する工程である。具体的には、第1ガラス板200及び第2ガラス板300は、溶融炉内に配置され、第1溶融温度Tm1で所定時間(第1溶融時間)tm1だけ加熱される(
図6参照)。本実施形態では、第1封着材と第2封着材とが、上記の通り、同じ材料であるため、第1封着材の軟化点(第1軟化点)は、第2封着材の軟化点(第2軟化点)と同じである。このため、第1溶融温度Tm1は、第1及び第2軟化点以上に設定される。第1溶融温度Tm1が第1及び第2軟化点以上であっても、排気工程は第1溶融工程後に開始されるため(
図6参照)、第1溶融工程では仕切り420は通気路600を塞がない。すなわち、第1溶融工程では通気路600を確保している。第1溶融工程において、例えば、第1及び第2軟化点が265℃である場合、第1溶融温度Tm1は、285℃に設定される。また、第1溶融時間tm1は、例えば、15分である。
【0084】
本実施形態において、第1軟化点が第2軟化点と同じである態様は、第1軟化点が第2軟化点と厳密に同じである態様だけでなく、第1軟化点が第2軟化点と略同じである態様も含む。
【0085】
第1溶融温度Tm1で周壁410を加熱することにより、仕切り420の変形を抑制しながらも、周壁410を軟化させることができる。これにより、周壁410によって第1ガラス板200と第2ガラス板300とを気密に接合しやすくなる。
【0086】
排気工程は、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510を排気して第1空間510を真空空間50とする工程である。排気は、例えば、真空ポンプを用いて行われる。真空ポンプは、
図5に示されるように、排気管810と、シールヘッド820と、により組立て品100に接続される。排気管810は、例えば、排気管810の内部と排気口700とが連通するように第2ガラス板300に接合される。そして、排気管810にシールヘッド820が取り付けられ、これによって、真空ポンプの吸気口が排気口700に接続される。第1溶融工程と排気工程と第2溶融工程とは、組立て品100を溶融炉内に配置したまま行われる。そのため、排気管810は、少なくとも第1溶融工程の前に、第2ガラス板300に接合される。
【0087】
排気工程では、第2溶融工程の開始前までに、排気温度Te以上で所定時間(排気時間)te以上、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510を排気する(
図6参照)。排気温度Teは、第2封着材の第2軟化点(例えば265℃)より低く設定される。例えば、排気温度Teは、250℃である。このようにすれば、排気工程でも仕切り420は変形しない。排気工程の際、ガス吸着体60中の少なくとも水分が気化して第1空間510内に放出され、第1空間510は、通気路600、第2空間520、及び、排気口700を通じて排出される。ガス吸着体60から放出された水分が排気されることで、複合ゲッタ材のガス吸着性をさらに回復させることができる。排気時間teは、所望の真空度(例えば、0.1Pa以下の真空度)の真空空間50が得られるように設定される。例えば、排気時間teは、120分に設定される。
【0088】
第2溶融工程は、仕切り420を変形させて少なくとも通気路600を塞ぐことで隔壁42を形成して仕掛り品110を得る工程である。つまり、第2溶融工程では、仕切り420を変形させて、通気路600を塞ぐ。言い換えると、変形した仕切り420により第1空間510が塞がれて、第1空間510と第2空間520とが分離される。これにより、真空空間50を囲む枠体40が形成される(
図7参照)。本実施形態では、仕切り420の長さ方向の両端(第1及び第2遮断部4221、4222)が周壁410に接して一体となるように、仕切り420を変形させている。これによって、
図7に示すように、内部空間500を第1空間510(真空空間50)と第2空間520とに気密に分離する隔壁42が形成される。より詳細には、第2封着材の第2軟化点以上の所定温度(第2溶融温度)Tm2で仕切り420を一旦溶融させることで、仕切り420を変形させる。具体的には、第1ガラス板200及び第2ガラス板300は、溶融炉内で、第2溶融温度Tm2で所定時間(第2溶融時間)tm2だけ加熱される(
図6参照)。第2溶融温度Tm2及び第2溶融時間tm2は、仕切り420が軟化し、通気路600が塞がれるように設定される。第2溶融温度Tm2の下限は、第2軟化点(例えば265℃)である。第2溶融温度Tm2は、例えば、290℃に設定される。また、第2溶融時間tm2は、例えば、30分である。本実施形態の封止工程は第2溶融工程であるが、封止工程は、要するに、真空空間50を、真空空間50以外の空間から空間的に分離する工程である。真空空間50以外の空間は、本実施形態では、第2空間520に相当する。
【0089】
本実施形態では、
図6に示すように、排気工程は、第1溶融工程の後に開始され、第2溶融工程の終了とともに終了している。このため、第2溶融工程の際に、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510が排気されている。そのため、組立て品100の内外の圧力差が生じ、この圧力差によって、第1及び第2ガラス板200,300が互いに接近するように移動させられる。これにより、第2溶融工程では、第2溶融温度Tm2で、通気路600と第2空間520と排気口700とを介して第1空間510を排気しながら、仕切り420を変形させて通気路600を塞ぐ隔壁42を形成する。
【0090】
また、
図6に示す第2溶融工程では、第2溶融時間tm2が経過した後、溶融炉内の温度を室温まで等速で冷却する。そして、シールヘッド820を取り外すことで、第2溶融工程及び排気工程を終了する。
【0091】
上述の準備工程によって、
図7示す仕掛り品110が得られる。仕掛り品110は、
図7に示すように、第1ガラス板200と、第2ガラス板300と、周壁41と、隔壁42と、を備える。また、仕掛り品110は、真空空間50と、第2空間520とを有する。さらに、仕掛り品110は、真空空間50内に、ガス吸着体60と、複数のピラー(スペーサ)70と、を備える。さらに、仕掛り品110は、排気口700を備える。
【0092】
第1及び第2ガラス板200,300はいずれも矩形の平板状である。第1及び第2ガラス板200,300は同じ平面形状である。
【0093】
隔壁42は、真空空間50を第2空間520から(空間的に)分離する。言い換えれば、仕掛り品110の第2空間520は排気口700を介して外部空間と(空間的に)繋がっているため、隔壁42は、真空空間50と外部空間とを分離する。そして、隔壁42と周壁410とが一体となって、真空空間50を囲む枠体40を構成する。枠体40は、真空空間50を完全に囲むとともに、第1ガラス板200と第2ガラス板300とを気密に接合する。
【0094】
ガス吸着体60は、真空空間50内に配置される。具体的には、ガス吸着体60は、長尺の平板状であり、第2ガラス板300に配置されている。ガス吸着体60は、不要なガス(残留ガス等)を吸着するために用いられる。不要なガスは、例えば、枠体40となる熱接着剤(第1熱接着剤、及び第2熱接着剤)が加熱される際に、熱接着剤から放出されるガスである。
【0095】
複数のスペーサ70は、真空空間50内に配置されている。複数のスペーサ70は、第1及び第2ガラス板200,300間の距離を所望の値に維持するために使用される。
【0096】
真空空間50は、上記の通り、第2空間520及び排気口700を介して第1空間510を排気することで形成される。換言すれば、真空空間50は、真空度が所定値以下の第1空間510である。所定値は、たとえば、0.1Paである。真空空間50は、第1ガラス板200と第2ガラス板300と枠体40とで完全に密閉されているから、第2空間520及び排気口700から分離されている。
【0097】
除去工程は、準備工程の後に実行される。除去工程は、
図8に示すように、仕掛り品110から第2空間520を有する部分11を除去することで、真空空間50を有する部分であるガラスパネルユニット10を得る工程である。
【0098】
ガラスパネルユニット10は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、を備える。第1ガラス板20は、第1ガラス板200のうち第1空間510(真空空間50)に対応する部分であり、第2ガラス板30は、第2ガラス板300のうち第1空間510(真空空間50)に対応する部分である。
【0099】
一方、不要な部分11は、第1ガラス板200のうち第2空間520に対応する部分230と、第2ガラス板300のうち第2空間520に対応する部分320と、を含む。なお、ガラスパネルユニット10の製造コストを考慮すれば、不要な部分11は小さいほうが好ましい。
【0100】
除去工程では、具体的には、溶融炉から取り出された仕掛り品110は、隔壁42に沿って切断され、真空空間50を有する部分(ガラスパネルユニット)10と、第2空間520を有する部分(不要な部分)11と、に分割される。なお、仕掛り品110を切断する部分(切断線)の形状は、ガラスパネルユニット10の形状によって定まる。ガラスパネルユニット10は矩形状であるから、切断線は隔壁42の長さ方向に沿った直線となっている。
【0101】
上述の、準備工程及び除去工程を経て、
図2に示すガラスパネルユニット10が得られる。
【0102】
図2は、本実施形態のガラスパネルユニット(ガラスパネルユニットの完成品)10を示す。ガラスパネルユニット10は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40と、を備える。また、ガラスパネルユニット10は、第1及び第2ガラス板20,30と枠体40とで囲まれた真空空間50を有する。さらに、ガラスパネルユニット10は、真空空間50内に、ガス吸着体60と、複数のピラー(スペーサ)70と、を備える。ガラスパネルユニット10は、第1及び第2ガラス板20、30に排気口700を備えない。
【0103】
第1及び第2ガラス板20,30はいずれも矩形の平板状である。第1及び第2ガラス板20,30は同じ平面形状である。
【0104】
本実施形態の第1ガラス板20は、除去工程により第1ガラス板200の不要な部分230が除去されたものである。このため、第1ガラス板20は、第1ガラス板200と同様の構成を有する。すなわち、第1ガラス板20は、その主な形状を構成する本体と、低放射膜220とを含む。この本体は、真空空間50内で低放射膜220により覆われる。第1ガラス板20は、矩形の平板状である。
【0105】
本実施形態の第2ガラス板30は、除去工程により第2ガラス板300の不要な部分320が除去されたものである。このため、第2ガラス板30は、第2ガラス板300と同様の構成を有する。すなわち、第2ガラス板30は、その主な形状を構成する本体を備える。第2ガラス板30は、本実施形態では、その本体のみからなるが、この本体に加えて低放射膜220と同様の低放射膜を備えてもよい。第2ガラス板30が低放射膜を備える場合、この低放射膜は、真空空間50内で、第2ガラス板30の本体を覆い、かつこの本体に接する。
【0106】
枠体40は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30との間にあり、第1ガラス板20と第2ガラス板30とを気密に接合する。これによって、真空空間50は、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40とで囲まれている。枠体40は、第1及び第2ガラス板20,30と同様の多角形(本実施形態では四角形)の枠状である。枠体40は、第1及び第2ガラス板20,30の外周に沿って形成されている。
【0107】
複数のスペーサ70は、真空空間50内に配置されている。複数のスペーサ70は、第1及び第2ガラス板20,30間の距離を所望の値に維持するために使用される。
【0108】
ガス吸着体60は、複合ゲッタ材を含んでいる。すなわち、ガス吸着体60は、第1のゲッタ材であるゼオライト粒子と、第2のゲッタ材であるセリウム化合物粒子との両方を有している。この場合、ガス吸着体60は、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とを含む粒子の混合物(粉末)で構成されている。
【0109】
<第2実施形態>
次に本実施形態に係るガラスパネルユニット10Aの製造方法(以下、単に製造方法という場合がある)を、
図9A~
図14を参照して説明する。下記において、第1実施形態と重複する構成は、図面に同じ符号を付して説明を省略することがある。なお、本実施形態では、方向D1は第1ガラス板20の厚み方向と平行な方向であり、方向D2は、方向D1と直交する方向であり、方向D3は方向D1及び方向D2と直交する方向である。
【0110】
本実施形態の製造方法は、
図9A及び
図9Bのようなガラスパネルユニット10Aを製造する方法である。
【0111】
ガラスパネルユニット10Aは、第1ガラス板20と、第2ガラス板30と、枠体40と、孔封止材43と、ガス吸着体60と、を備える。また、ガラスパネルユニット10Aは、第1及び第2ガラス板20,30と枠体40とで囲まれた真空空間50を有する。さらに、ガラスパネルユニット10Aは、真空空間50内に、複数のピラー(スペーサ)70と、堰部材47と、を備える。
【0112】
第1及び第2ガラス板20,30はいずれも矩形の平板状である。第1及び第2ガラス板20,30は同じ平面形状である。
【0113】
第1ガラス板20は、本体21と、低放射膜220と、排気口700と、を含む。低放射膜220は、真空空間50内にあり、本体21を覆う。排気口700は、孔封止材43により封止されている。低放射膜220は、本体21と接触している。本体21は、第1ガラス板20の主な形状を構成するため、矩形の平板状である。本体21の材料として、例えば、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、及び物理強化ガラスが挙げられる。本体21は、第1ガラス板20と同形状である。
【0114】
第2ガラス板30は、本体31を備える。本体31は、第2ガラス板30の主な形状を構成するため、矩形の平板状である。第2ガラス板30は、本実施形態では、本体31のみからなるが、この本体31に加えて低放射膜220と同様の低放射膜を備えてもよい。第2ガラス板30が低放射膜を備える場合、この低放射膜は、真空空間50内で、本体31を覆い、かつ本体31に接する。本体31の材料として、例えば、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、及び物理強化ガラスが挙げられる。
【0115】
堰部材47は、
図9Aに示すように、一部が切り欠かれた環状(例えば、C字状)の形状を有する。堰部材47は、平面視において、排気口700の周縁に沿うようにして配置されている。これにより、堰部材47は、その内周側にある空間内に孔封止材43を留めることができる。このため、孔封止材43は排気口700を封止できる。
【0116】
本実施形態では、加工工程と、組立工程(
図10~
図11参照)と、接合工程(溶融工程、
図12参照)と、排気工程(
図12~
図13参照)と、封止工程(
図12、及び
図14参照)を実行することで、上述のガラスパネルユニット10Aが得られる。但し、本実施形態の製造方法は、第1実施形態の除去工程を含まない。
【0117】
加工工程は、第1実施形態と同様、ゲッタペーストを用意する工程である。加工工程は、加熱工程と、複合ゲッタ材作製工程と、混合工程とを含む。加熱工程の温度は、封止工程の温度(後述の封止温度Ts)よりも高いことが好ましく、溶融工程の温度(後述の溶融温度Tm)よりも高いことがより好ましい。ただし、加熱工程は省略することもできる。
【0118】
組立工程は、
図11のような組立て品101を用意する工程である。組立て品101は、
図10及び
図11のように、第1及び第2ガラス板20,30と、周壁410と、を備える。また、組立て品101は、第1及び第2ガラス板20,30と周壁410とで囲まれた内部空間500を有する。更に、組立て品101は、内部空間500内に、ガス吸着体60と、複数のピラー(スペーサ)70と、堰部材47と、を備える。さらに組立て品101は、排気口700を備える。組立て品101では、内部空間500が排気されていなく、周壁410と堰部材47とが溶融硬化されていなく、排気口700が封止されていない。
【0119】
堰部材47は、封着材(熱接着剤)を含む。堰部材47は、第2ガラス板30上で、かつ内部空間500内に形成されている。堰部材47は、排気口700の外周に沿うようにして、一部が切り欠かれた環状(たとえばC字状)の形状を有する。堰部材47は、周壁410から離間されているものの、周壁410に近づけて形成されている。すなわち、堰部材47は、内部空間500の端に形成されている。堰部材47は、周壁410と同じ封着材を含む。この堰部材47を形成することにより、封止工程で孔封止材43の押し込み後の形状を安定化させる効果があるが、堰部材47はなくてもよい。
【0120】
組立工程は、組立て品101を得るために、第1ガラス板20、第2ガラス板30、ガス吸着体60、周壁410、堰部材47、内部空間500、排気口700、及び複数のスペーサ70を形成する工程である。組立工程は、第1~第6工程を有する。なお、第4~第5工程の順番は、適宜変更してもよい。
【0121】
第1工程は、第1ガラス板20及び第2ガラス板30を形成する工程(ガラス板形成工程)である。例えば、第1工程では、第1ガラス板20及び第2ガラス板30を板状に作製する。また、第1工程では、必要に応じて、第1ガラス板20及び第2ガラス板30を洗浄する。
【0122】
第2工程は、排気口700を形成する工程である。第2工程では、例えば、第1ガラス板20に、排気口700を形成する。また、第2工程では、必要に応じて、第1ガラス板20を洗浄する。
【0123】
第3工程は、スペーサ70を形成する工程(スペーサ形成工程)である。第3工程では、複数のスペーサ70を予め形成しておき、チップマウンタなどを利用して、複数のスペーサ70を、第2ガラス板30の所定位置に配置する。なお、複数のスペーサ70は、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用して形成されていてもよい。この場合、複数のスペーサ70は、光硬化性材料などを用いて形成される。あるいは、複数のスペーサ70は、周知の薄膜形成技術を利用して形成されていてもよい。また、複数のスペーサ70は、樹脂フィルムをパンチングまたはレーザー加工して形成されていてもよい。
【0124】
第4工程は、周壁410、及び堰部材47を配置する工程(封着材配置工程)である。第4工程では、ディスペンサなどを利用して、第2ガラス板30の外周に沿って封着材を第2ガラス板30上に塗布して枠状の封着材を形成し、その後枠状の封着材を乾燥させて周壁410を形成する(
図10参照)。また、ディスペンサなどを利用して、周壁410に近い位置で周壁410から離間させながら封着材を第2ガラス板30上に塗布して一部が切り欠かれた環状の封着材を形成し、その後環状の封着材を乾燥させて堰部材47を形成する(
図10参照)。なお、第4工程では、枠状の封着材と環状の封着材とを乾燥させるとともに、仮焼成してもよい。例えば、枠状の封着材と環状の封着材とが形成された第2ガラス板30を480℃で20分間加熱する。この場合、第1ガラス板20を第2ガラス板30と一緒に加熱してもよい。つまり、第1ガラス板20を第2ガラス板30と同じ条件(480℃で20分間)で加熱してもよい。これにより、第1ガラス板20と第2ガラス板30との反りの差を低減できる。
【0125】
第5工程は、ガス吸着体60を形成する工程(ガス吸着体形成工程)である。第5工程では、ディスペンサなどを利用して、加工工程のゲッタペーストを第2ガラス板30上に塗布する。そして、塗布後のゲッタペーストを乾燥することにより、ガス吸着体60が形成される。すなわち、第5工程は、ゲッタペーストを乾燥する乾燥工程を含む。
【0126】
第1工程から第5工程が終了することで、周壁410、堰部材47、ガス吸着体60及び複数のスペーサ70が形成された第2ガラス板30が得られる。本実施形態では、第1工程~第5工程が終了してから第6工程が行われる。
【0127】
第6工程は、第1ガラス板20と第2ガラス板30とを配置する工程(配置工程)である。第6工程では、
図10に示すように、第1ガラス板20と第2ガラス板30とは、互いに平行かつ対向するように配置される。
【0128】
上述した組立工程によって、
図11に示す組立て品101が得られる。そして、組立工程の後には、
図12に示すような、溶融工程(接合工程)と、排気工程と、封止工程とが実行される。
【0129】
溶融工程は、第1所定温度(溶融温度)Tmで、周壁410を溶融させ、溶融後の周壁410で第1ガラス板20と、第2ガラス板30とを気密に接合する工程である。具体的には、組立て品101は、焼成炉内に配置される。その後組立て品101は、溶融温度Tmで第1所定時間(溶融時間)tmだけ加熱される(
図12参照)。また、溶融工程では、堰部材47も溶融され、溶融後の堰部材47は第1ガラス板20と、第2ガラス板30とを気密に接合する。溶融温度Tmは、封着材の軟化点以上に選択される。溶融温度Tmは、好ましくは、500℃以下であり、より好ましくは、350℃以下であり、さらにより好ましくは、300℃以下である。また、第1ガラス板20と、第2ガラス板30とのうち少なくとも一方のガラス板が強化ガラスを含む場合、溶融温度Tmは、好ましくは、300℃以下に選択される。封着材の軟化点は、例えば、265℃である。なお、溶融時間tmは、例えば、第1及び第2ガラス板20,30の大きさ、及び周壁410の大きさに応じて任意に選択される。
【0130】
また、本実施形態では、溶融工程後、封止工程を実行するために焼成炉内の温度が下げられる。これにより、周壁410は硬化して枠体40となり、堰部材47は硬化する。これにより、仕掛り品111が得られる。
【0131】
排気工程は、排気口700を介して内部空間500を排気して真空空間50とする工程である。排気は、例えば、真空ポンプを用いて行われる。真空ポンプは、
図13に示されるように、減圧機構71により仕掛り品111に接続される。減圧機構71は、排気ヘッド75と、接続部753と、押圧機構73と、を備える。接続部753は、排気ヘッド75と、真空ポンプとをつなぐ。排気ヘッド75は、その内部と、内部空間500とを排気口700を介してつなぐようして仕掛り品111に押し当てられる。具体的には、排気ヘッド75は、第1ガラス板20のうち排気口700の開口を囲む部分に、気密に押し当てられる。そして、排気ヘッド75内の空気が、接続部753を通じて吸引(
図13中の白抜き矢印参照)されると、排気口700を通じて、内部空間500が排気される。押圧機構73は、排気ヘッド75の内部に設けられている。押圧機構73は、減圧機構71によって真空空間50を維持した状態で、排気口700に挿入された孔封止材43を、第2ガラス板30に向けて押し込むように構成されている。排気工程中、排気口700に、排気口700の内径よりも小さい径の孔封止材43とプレート46が挿入される(
図13参照)。プレート46は、孔封止材43と押圧機構73との間に介在している。この状態で、孔封止材43とプレート46は、押圧機構73により、第2ガラス板30に向けて弾性的に押し込まれる。
【0132】
孔封止材43は、例えばガラスフリットを用いて形成された固形の封止材である。孔封止材43は、ブロック状の形状を有するが、上下に貫通した筒状の形状を有することも好ましい。また、孔封止材43は、ガラスフリット以外に、周壁410と同様の有機バインダをさらに含有してもよい。この場合、封止工程後、孔封止材43等からガスが真空空間50に放出されても、このガスをガス吸着体60が吸着することにより、真空空間50内にガスが残りにくくなる。
【0133】
本実施形態では、排気工程は、
図12に示すように、溶融工程の途中から開始される。したがって、溶融工程においても、排気口700を介して内部空間500が排気される。そのため、溶融工程において組立て品101の内外の圧力差が生じ、この圧力差によって、第1及び第2ガラス板20,30が互いに接近するように移動させられる。これによって、第1及び第2ガラス板20,30に反りがある場合でも、周壁410によって第1ガラス板20と第2ガラス板30とを気密に接合しやすくなる。また、排気工程が溶融工程の途中から開始されることで、溶融工程中に周壁410及び堰部材47から放出された不要なガス等が排気される。このため、
図9Bのような真空空間50内に周壁410及び堰部材47に由来する不要なガスを残留させにくくできる。
【0134】
封止工程は、排気口700内に挿入された孔封止材43を局所加熱して溶融させ、溶融後の孔封止材43で排気口700を封止する工程である。封止工程中、
図12に示すように、排気工程は継続して実行される。また封止工程の温度は、溶融工程の温度(溶融温度)Tm以下の第2所定温度(封止温度)Tsに保持される。具体的には、封止工程の温度は、溶融温度Tmよりも低い封止温度Tsに保持される。封止工程では、封止温度Tsよりも高い温度で孔封止材43だけが局所加熱されて溶融する。封止温度Tsは、例えば、250℃である。また、封止工程では第2所定時間(封止時間)tsだけ孔封止材43が局所加熱される。封止時間tsは、孔封止材43の大きさに応じて任意に選択される。本実施形態の封止工程は、要するに、真空空間50を、真空空間50以外の空間から空間的に分離する工程である。真空空間50以外の空間は、本実施形態では、仕掛り品111の外部空間に相当する。
【0135】
本実施形態では、封止工程は、
図14に示すように、加熱機構72を用いて実行される。加熱機構72は、仕掛り品111に対して排気ヘッド75とは反対側に配置される。加熱機構72は、排気口700に挿入された孔封止材43を、非接触で加熱するように構成されている。この場合、孔封止材43は加熱機構72により局所加熱されているため、仕掛り品111の温度は封止温度Tsに保持されている。
【0136】
加熱機構72は、照射器720を含む。照射器720は、第2ガラス板30を介して、孔封止材43に赤外線(近赤外線)を照射し、孔封止材43を加熱するように構成されている。
【0137】
封止工程中、加熱機構72と押圧機構73の両方を実行させることで、真空空間50が維持されたまま、排気口700が孔封止材43により封止される。この場合、孔封止材43を溶融させ、溶融した孔封止材43が堰部材47の内周側にある空間内に留められる。その後、溶融した孔封止材43が硬化することで、排気口700は封止される。
【0138】
つまり、封止工程では、加熱機構72によって孔封止材43が加熱溶融され、かつ、押圧機構73がプレート46を介して及ぼす付勢力によって、孔封止材43が第2ガラス板30に向けて押し付けられる。孔封止材43は、真空空間50内において堰部材47の内周面に当たるまで変形する。堰部材47に設けられた切欠き部分は、変形した孔封止材43によって封止される。
【0139】
排気口700を封止することで、排気ヘッド75を取り外しても、真空空間50を維持させることができる。排気ヘッド75を取り外すにあたって、溶融した孔封止材43を、除熱によって硬化させる。排気口700を孔封止材43で封止させた後、排気工程を停止させる。これにより、
図9A及び
図9Bのようなガラスパネルユニット10Aが得られる。
【0140】
<複合ゲッタ材の用途>
上記説明では、複合ゲッタ材が第1及び第2実施形態のガラスパネルユニット10、10Aの各々に用いられた例を挙げたが、本開示の複合ゲッタ材は、MEMS機器やディスプレイ等の電子機器にも使用することができる。もちろん、複合ゲッタ材を含有するゲッタペーストもMEMS機器やディスプレイ等の電子機器に使用することができる。
【0141】
<第3実施形態>
本実施形態に係るガラスパネルユニット10の製造方法は、第1実施形態に対して、加工工程のゲッタペースト作製工程と、ガス吸着体の構成と、が異なる。下記において、第1実施形態と重複する構成は、図面に同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0142】
本実施形態では、ゲッタペースト作製工程において、第1のゲッタ材であるゼオライト粒子と、第2のゲッタ材であるセリウム化合物とを混合せずに、別々に得る。すなわち、第1実施形態では、複合ゲッタ材作製工程は、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子との両方を含有する複合ゲッタを作製するものであるが、本実施形態では、ゼオライト粒子を含有する第1のゲッタペーストと、セリウム化合物を含有する第2のゲッタペーストと、を別々に形成するゲッタペースト作製工程を備える。すなわち、第1のゲッタペーストには、第2のゲッタ材(セリウム化合物粒子)を含有しない。第2のゲッタペーストには第1のゲッタ材(ゼオライト粒子)を含有しない。
【0143】
また本実施形態では、第1実施形態におけるガス吸着体60の代わりに、
図15A及び
図15Bに示すように、第1のガス吸着体61と、第2のガス吸着体62、とを備える。第1のガス吸着体61は、第1のゲッタ材を含有している。すなわち、第1のガス吸着体61は、ゼオライト粒子を含有している。第2のガス吸着体62は、第2のゲッタ材を含有している。すなわち、第2のガス吸着体62は、セリウム化合物粒子を含有している。
【0144】
図15Aでは、第2のガス吸着体62は、第2ガラス板300の長さ方向の第2端側(
図15Aにおける左端側)に、第2ガラス板300の幅方向(方向D2)に沿って形成されている。第1のガス吸着体61は、第2ガラス板300の幅方向の一端側に、第2ガラス板300の長さ方向(方向D3)に沿って形成されている。第1及び第2ガラス板200,300が、方向D2よりも方向D3の方が長い長方形の場合、第1のガス吸着体61は、第2のガス吸着体62よりも長く形成される。これにより、内部空間500内には、ゼオライトがセリウム化合物よりも多く配置される。
【0145】
図15Bでは、第1のガス吸着体61及び第2のガス吸着体62は、両方とも、第2ガラス板300の長さ方向の第2端側(
図15Bにおける左端側)に、第2ガラス板300の幅方向(方向D2)に沿って形成されている。すなわち、第1のガス吸着体61及び第2のガス吸着体62は、平行に配置されている。これにより、ガラスパネルユニット10のデザイン性がよくなる場合がある。第1のガス吸着体61及び第2のガス吸着体62は、
図15A及び
図15Bに示す場合に限られず、どのように形状や位置に形成してもよい。
【0146】
本実施形態では、混合工程及び組立工程における第4工程以外は、第1実施形態と同様にしてガラスパネルユニット10を製造する。
【0147】
本実施形態では、混合工程により、ゲッタ材と溶媒とを混合してゲッタペーストを得る。この場合、第1のゲッタ材と溶媒とを混合した第1のゲッタペーストと、第2のゲッタ材と溶媒とを混合した第2のゲッタペーストと、を得る。第1のゲッタペーストの溶媒と、第2のゲッタペーストの溶媒とは、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0148】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、組立工程における第4工程により、第1のガス吸着体61及び第2のガス吸着体62を形成する。この場合、ディスペンサなどを利用して、第1のゲッタペーストと、第2のゲッタペーストとを、各々、第2ガラス板300上に塗布する。そして、塗布後のゲッタペーストを乾燥することにより、第1のガス吸着体61と、第2のガス吸着体62とが、各々、形成される。
【0149】
第1実施形態のように、ゼオライトとセリウム化合物とを含有するガス吸着体60よりも、本実施形態のように、ゼオライトを含有する第1のガス吸着体61と、セリウム化合物を含有する第2のガス吸着体62とを別々に形成するほうが、ゼオライト(特に、Cu-ZSM5)がセリウム化合物(特に、CeO2)からの酸素脱離の影響を受けにくい。したがって、第1のガス吸着体61による高い吸着能力が得られる場合がある。
【0150】
<第4実施形態>
本実施形態に係るガラスパネルユニット10の製造方法は、第1実施形態に対して、加工工程のゲッタ材作製工程と、ガス吸着体の構成と、が異なる。下記において、第1実施形態と重複する構成は、図面に同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0151】
本実施形態では、ゲッタペースト作製工程において、第1のゲッタ材である銅イオン交換ゼオライトからなる粒子を含有する第1のゲッタペーストと、第2のゲッタ材であるセリウム化合物かなる粒子を含有する第2のゲッタペーストと、を得る。すなわち、第1実施形態では、複合ゲッタ材は、ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子との両方を含有するものであるが、本実施形態では、銅イオン交換ゼオライト粒子を含有する第1のゲッタペーストと、セリウム化合物粒子を含有する第2のゲッタペーストと、を別々に形成する。すなわち、第1のゲッタペーストには、第2のゲッタ材(セリウム化合物粒子)を含有しない。第2のゲッタペーストには第1のゲッタ材(銅イオン交換ゼオライト粒子)を含有しない。
【0152】
また本実施形態では、第1実施形態におけるガス吸着体60として、
図16に示すように、第1のガス吸着体601と、第2のガス吸着体602、とを備える。第1のガス吸着体601は、第1のゲッタ材を含有している。すなわち、第1のガス吸着体601は、銅イオン交換ゼオライト粒子を含有している。第2のガス吸着体602は、第2のゲッタ材を含有している。すなわち、第2のガス吸着体602は、セリウム化合物粒子を含有している。
【0153】
このように本実施形態においては、ガス吸着体60は、少なくとも2種類のゲッタ材(第1のゲッタ材と第2のゲッタ材)を有している。前記2種類のゲッタ材は、各々、銅イオン交換ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とを含有する。すなわち、第1のゲッタ材は銅イオン交換ゼオライト粒子を含有している。また第2のゲッタ材はセリウム化合物粒子を含有している。第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とは、真空空間50内において、別々に配置されている。これにより、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とは、異なる位置に配置されている。
【0154】
ここで、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とが別々に配置されている状態には、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とが表面同士で接触している場合を含む。この場合、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とが全面にわたって接触していてもよいし、一部の表面同士が接触していてもよい。例えば、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とが重なった状態で配置されている場合は、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とは、第1ガラス板200及び第2ガラス板300に対する垂直方向(方向D1)の位置が異なる。したがって、銅イオン交換ゼオライト粉体とセリウム化合物粒子が、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602の境界のみでの接触となるため、別々に配置に含まれる。
【0155】
また第1のガス吸着体601と、第2のガス吸着体602とは、離れて配置されていてもよい。第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とが、離れて配置された状態とは、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とが、接触しない状態で配置されている状態である。例えば、第1ガラス板200に第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602のいずれか一方が配置され、他方が第2ガラス板300に配置されており、第1ガラス板200または第2ガラス板300に垂直な方向(
図16の方向D1)から見たときに、第1のガス吸着体601と第2のガス吸着体602とが重なって見える場合も、第1ガラス板200及び第2ガラス板300に対する垂直方向(方向D1)の位置が異なるため、離れて配置に含まれる。
【0156】
ただし、可能な限り銅イオン交換ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子の接触部が少なくなるように配置される方が、セリウム化合物粒子からの酸素脱離の影響を小さくできるため、より望ましい。
【0157】
図16では、第1のガス吸着体601は、第2ガラス板300の長さ方向の第2端側(
図16における左端側)に、第2ガラス板300の幅方向(方向D2)に沿って形成されている。第2のガス吸着体602は点状に複数形成されている。すなわち、複数の点状の第2のガス吸着体602が、第2ガラス板300の表面(第1空間510に向く面)の全面にわたって形成されている。各第2のガス吸着体602は、スペーサ70よりも小さく形成されている。また複数の第2のガス吸着体602は、スペーサ70及び第1のガス吸着体601とは、離れて配置されている。すなわち、複数の第2のガス吸着体602は、隣り合うスペーサ70の間、又はスペーサ70と第1のガス吸着体601との間に配置されている。
【0158】
本実施形態では、混合工程及び組立工程における第4工程以外は、第1実施形態と同様にしてガラスパネルユニット10を製造する。
【0159】
本実施形態では、第1のガス吸着体601は第1のゲッタペーストにより形成される。第1のゲッタペーストは、第1実施形態と同様に、混合工程により、ゲッタ材と溶媒とを混合してゲッタペーストを得る。この場合、第1のゲッタ材と溶媒とを混合する。一方、第2のガス吸着体602は、ゲッタ材を含むパウダーで構成されている。すなわち、第2のガス吸着体602は、複数のセリウム化合物粒子を含むパウダーで構成される。第2のガス吸着体602は、例えば、酸化セリウムパウダーで形成することができる。酸化セリウムパウダーとしては、例えば、Strem Chemicals, Inc.製の酸化セリウムナノパウダー(後述の製造例18、19で使用したものと同様、市販品、型式50-1400)が挙げられる。この酸化セリウムパウダーは、酸化セリウム化合物粒子としてのナノ粒子(粒径1~100nm)の集合体である。このように第2のガス吸着体602として、酸化セリウム粒子のナノパウダーを用いることで、第2のガス吸着体602を散布した際に目視されにくくすることができ、ガラスパネルユニット10の透明性が損なわれにくい。またナノパウダーで構成される第2のガス吸着体602は、大きな塊(バルク)で構成される第2のガス吸着体602に比べて、表面積を稼ぐ(大きくする)ことができる。したがって、仮に、ナノパウダーの担持物質がなくても、第2のガス吸着体602の吸着能力を高くすることができる。
【0160】
そして、本実施形態では、第1実施形態と同様に、組立工程における第4工程により、第1のガス吸着体601及び第2のガス吸着体602を形成する。この場合、第2のガス吸着体602は、酸化セリウム粒子のナノパウダーを第2ガラス板300上の全体に散布して形成される。また第1のガス吸着体601は、ディスペンサなどを利用して、第1のゲッタペーストを第2ガラス板300上に塗布し、塗布後の第1のゲッタペーストを乾燥することにより形成される。
【0161】
第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態では、第2ガラス板300上の外周付近にガス吸着体60を形成しているため、ゲッタペーストを塗布できる量は限られ、よって、ガス吸着体60を大きく形成することが難しい場合がある。一方、本実施形態においては、酸化セリウム粒子のナノパウダーのみで第2のガス吸着体602を形成した場合、酸化セリウム粒子のナノパウダーを第2ガラス板300上の全体に散布することにより、狭い空間でも第2のガス吸着体602を形成することができる。したがって、スペースを効率的に活用できる。
【0162】
またゼオライト粒子はガスを吸着することで色が変わるため、ゼオライト粒子を含む第1のガス吸着体601の変色により、ガラスパネルユニット10の内部(真空空間50)の真空度を確認しやすくなる。一方、ゼオライト粒子と酸化セリウム粒子とを混合してガス吸着体60が形成されると、ガス吸着体60の色の変化を確認することが難しくなる。本実施形態では、銅イオン交換ゼオライト粒子とセリウム化合物粒子とが別々に配置されるため、銅イオン交換ゼオライト粒子の色の変化が確認可能となり、真空空間50の真空度を確認しやすくなる。
【0163】
また本実施形態では、ゼオライト粒子を含有する第1のガス吸着体601と、セリウム化合物粒子を含有する第2のガス吸着体602とを別々に形成するので、ゼオライト(特に、Cu-ZSM5)粒子がセリウム化合物(特に、CeO2)粒子からの酸素脱離の影響を受けにくくなる。したがって、第1のガス吸着体61による高い吸着能力が得られる場合がある。
【実施例0164】
以下、本開示を実施例によって具体的に説明する。
【0165】
<酸化セリウム(IV)の分析>
チャンバ内に未加熱の酸化セリウム(IV)粉末を配置させた。この配置後、チャンバ内を排気させて真空空間にさせた。その後、チャンバ内の温度を30℃/minの昇温速度で昇温させながら、各温度で、酸化セリウム(IV)粉末から脱離する酸素の量を昇温脱離ガス分析法にて定量した。その結果を酸素放出カーブとして
図17に示す。なお、
図17の縦軸に示す「強度」は、酸素の検出強度(酸素イオン電流値)の常用対数を示す。
図17の結果から、200℃以上の温度で、酸化セリウム(IV)粉末から多くの酸素が脱離することが分かった。
【0166】
<製造例A>
本開示の製造例Aを、下記の製造例1~製造例6にて説明する。
【0167】
<<製造例1~製造例6>>
各製造例は、下記に示す部材を用いて行われた。
・第1ガラス板(ガラス板のサイズ;幅×長さ×厚さ=300mm×300mm×3mm、Low-Eガラス放射率=0.04)、
・第2ガラス板(ガラス板のサイズ;幅×長さ×厚さ=300mm×300mm×3mm)、
・スペーサ(サイズ;直径×高さ=0.5mm×0.1mm、樹脂製)、
・ガラスフリット;バナジウム系ガラスフリット(軟化点;265℃)。
【0168】
[製造例1]
まず、酸化セリウム(IV)粉末(2質量部)と銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(98質量部)とを混合して複合ゲッタ材を作製した。そして、100質量部の複合ゲッタ材と、400質量部の水とを均一に混合してゲッタペーストを作製した。次に、排気口を有する第2ガラス板の一表面に、複合ゲッタ材の量が50mgとなるようにして、スパチュラーでゲッタペーストを塗布した。この塗布後、第2ガラス板上のゲッタペーストを乾燥させてガス吸着体を作製した。ガス吸着体の作製後、第2ガラス板の一表面に、封着材からなる周壁と、封着材からなる仕切りと、通気路と、複数のスペーサとをさらに形成した。周壁と仕切りとを形成する際、88質量部のガラスフリットと、2質量部の有機バインダと、10質量部の有機溶剤を混合することで封着材を作製し、この封着材を第2ガラス板に塗布した後、乾燥させた。封着材を作製する際、有機バインダとして脂肪族ポリカーボネートを、有機溶剤として酢酸エチルカルビトールとを用いた。また、スペーサを形成する際、隣り合うスペーサ同士の間隔が20mmとなるようにして複数のスペーサをチップマウンタで第2ガラス板に配置した。
【0169】
次に、第2ガラス板と対向するようにして第1ガラス板を配置させた。これにより、第1ガラス板と第2ガラス板との間に内部空間が形成された組み立て品が得られた。
【0170】
続いて、真空ポンプと排気口とを排気管及びシールヘッドにより接続してから、組み立て品を溶融炉内に配置した。この配置後、組み立て品を285℃(第1溶融温度)で15分間加熱することで、周壁を一旦溶融させた。この溶融時に通気路は塞がれていなかった。
【0171】
周壁の溶融後、溶融炉内の温度を排気温度である250℃まで降温させた。そして、真空ポンプを作動させることにより、内部空間を250℃で120分間排気させた。
【0172】
その後、真空ポンプを作動させたまま、溶融炉内の温度を第2溶融温度である290℃まで昇温させ、この温度で15分間組み立て品を加熱した。この加熱により仕切りを変形させて通気路を塞ぐ隔壁を形成した。
【0173】
隔壁の形成後、溶融炉内の温度を室温まで降温させた。この降温後、真空ポンプを停止してシールヘッドを脱着させた。シールヘッドの脱着後、切断により不要な部分を取り除くことで、ガラスパネルユニットを作製した。
【0174】
[製造例2]
酸化セリウム(IV)粉末(10質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(90質量部)とを用いた以外は製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0175】
[製造例3]
酸化セリウム(IV)粉末(20質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(80質量部)とを用いた以外は製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0176】
[製造例4]
酸化セリウム(IV)粉末(50質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末調整例2の熱処理物(50質量部)とを用いた以外は製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0177】
[製造例5]
酸化セリウム(IV)粉末の量を100質量部にして、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末を用いなかった以外は、製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0178】
[製造例6]
銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末の量を100質量部にして、酸化セリウム(IV)粉末を用いなかった以外は、製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0179】
{評価}
<熱コンダクタンス>
各製造例のガラスパネルユニットの熱コンダクタンスを下記の手順で評価した。測定装置の高温部と低温部とがガラスパネルユニットにより仕切られた状態で、第1ガラス板の外面に第1温度計を配置し、第2ガラス板の外面に第2温度計及びセンサとを配置した。この配置後、ガラスパネルユニットを介して加温部から冷却部に伝えられた熱の流束をセンサで検出し、第1温度計で第1ガラス板の表面温度を測定し、第2温度計で第2ガラス板の表面温度を測定した。
【0180】
そして、熱流束と、第1ガラス板の表面温度と、第2ガラス板の表面温度と、を下記式(1)に導入することで、ガラスパネルユニットの熱コンダクタンスを算出した。
Q=C(T1-T2) ・・・(1)
式(1)中、Qは熱流束(W/m2)を示し、T1は第1ガラス板の表面温度(K)を示し、T2は第2ガラス板の表面温度(K)を示し、Cは熱コンダクタンス(W/m2K)を示す。
【0181】
図18Aに各製造例の熱コンダクタンスと、酸化セリウム(IV)(CeO
2)の添加量との関係を示す。
図18Aの結果から、製造例1~4の熱コンダクタンスは、製造例5~6の熱コンダクタンスよりも低くなる傾向が得られた。この傾向から、真空空間において、CeO
2が二酸化炭素を吸着すると共に、銅イオン交換ゼオライトはCeO
2から脱離した酸素だけでなく窒素及びメタン等のガスも吸着していると考えられた。これにより、銅イオン交換ゼオライトとCeO
2とを併用することで、真空空間中のガスが残りにくいと考えられた。
【0182】
また、
図18Aの結果から、CeO
2を添加することで熱コンダクタンスが低くなる傾向と、CeO
2の添加量が小さくなるほど熱コンダクタンスが低くなる傾向とが得られた。これらの傾向から、CeO
2から脱離する酸素の量を少なくでき、真空空間中のガスがさらに残りにくいと考えられた。
【0183】
ここで、銅イオン交換ゼオライトの代わりに、水素イオン交換ゼオライト(HZSM-5)を使用した場合について説明する。水素イオン交換ゼオライトとは、水素イオン交換されたZSM-5型ゼオライトである。したがって、水素イオン交換ゼオライトは、ゼオライト構造に水素イオンを保持させた成分である。
【0184】
図18Bは、
図18Aと同様に、複合ゲッタ材におけるCeO
2の添加量と、ガラスパネルユニットの熱コンダクタンスとの関係を示すグラフである。
図18Bの結果が得られるガラスパネルユニットは、複合ゲッタ材が、銅イオン交換ゼオライトの代わりに、水素イオン交換ゼオライトを使用して作製されている。
【0185】
対比製造例2は、製造例2において、酸化セリウム(IV)粉末(10質量部)と、水素イオン交換ゼオライト(HZSM-5)粉末(90質量部)とを用いた以外は製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0186】
対比製造例4は、製造例4において、酸化セリウム(IV)粉末(50質量部)と、水素イオン交換ゼオライト(HZSM-5)粉末(50質量部)とを用いた以外は製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0187】
対比製造例5は、製造例5と同様に酸化セリウム(IV)粉末の量を100質量部にして、水素イオン交換ゼオライト(HZSM-5)粉末を用いなかった以外は、製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0188】
対比製造例6は、製造例6において、水素イオン交換ゼオライト(HZSM-5)粉末の量を100質量部にして、酸化セリウム(IV)粉末を用いなかった以外は、製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0189】
図18Aと
図18Bとを対比すると、
図18Aでは、製造例1~4のプロットにおけるCeO
2の添加量付近で、熱コンダクタンスの極小値が現れている。一方、
図18Bでは、比較製造例2及び4のプロットにおけるCeO
2の添加量付近で、熱コンダクタンスの極小値が現れていない。
【0190】
すなわち、銅イオン交換ゼオライトとCeO2とを混合して併用したゲッタ材は、水素イオン交換ゼオライトとCeO2とを混合して併用したゲッタ材と比較して、特異的な効果がある。すなわち、銅イオン交換ゼオライトとCeO2とを含むゲッタ材は、水素イオン交換ゼオライトとCeO2とを含むゲッタ材よりも、CeO2の添加量が少なくても、熱コンダクタンスが低いガラスパネルユニットが得られる。
【0191】
<製造例B>
酸化セリウム(IV)粉末と銅イオン交換ゼオライト粉末の混合前に、下記の調整例1および調整例2のような処理をした以外は製造例Aと同様である。
【0192】
[調整例1]
チャンバ内に0.2gの銅イオン交換ゼオライト粉末(未加熱)を配置させた。この配置後、チャンバ内を排気させて真空空間にさせながら、銅イオン交換ゼオライト粉末を500℃で4時間加熱した。これにより、未加熱の銅イオン交換ゼオライト粉末が吸着していた成分を脱離させた。その後、チャンバ内を室温まで冷却させた。この冷却後、チャンバ内に窒素ガスを流し込んで、チャンバ内の気圧を大気圧にした。これにより、銅イオン交換ゼオライト粉末の熱処理物を得た。
【0193】
[調整例2]
チャンバ内に0.1gの酸化セリウム(IV)粉末(未加熱)を配置させた。この配置後、チャンバ内を排気させて真空空間にさせながら、酸化セリウム(IV)粉末を500℃で2時間加熱した。これにより、酸化セリウム(IV)粉末から酸素を脱離させた。その後、チャンバ内を室温まで冷却させた。この冷却後、チャンバ内に二酸化炭素ガスを流し込んで、チャンバ内の気圧を大気圧にした。これにより、酸化セリウム(IV)粉末の熱処理物を得た。
【0194】
このようにゼオライト粉末または酸化セリウム(IV)粉末を事前に熱処理することで、複合ゲッタ材の吸着能力の改善および酸化セリウム粉末からの酸素脱離量低減がなされ、より吸着性能の高い複合ゲッタ材が得られた。
【0195】
<製造例C>
製造例7~13は、酸化セリウム(IV)粉末と銅イオン交換ゼオライト粉末の合計量(製造例Aにおける「ゲッタ材の量」)を20mgへ変更した。また製造例10~13は、さらに、酸化セリウム(IV)および銅イオン交換ゼオライト粉末を塗布前に混合せず、同じ真空空間中の別々の離れた位置に配置されるようにした。これら以外は、製造例Aと同様である。
【0196】
[製造例7]
酸化セリウム(IV)粉末(10質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(90質量部)とを用い、合計量を20mgとした以外は製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0197】
[製造例8]
酸化セリウム(IV)粉末(15質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(85質量部)とを用いた以外は製造例7と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0198】
[製造例9]
酸化セリウム(IV)粉末(25質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(75質量部)とを用いた以外は製造例7と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0199】
[製造例10]
酸化セリウム(IV)粉末(10質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(90質量部)とを用い、これらの合計量を20mgとし、酸化セリウム(IV)粉末と水(40質量部)とを混合し、銅イオン交換ゼオライト粉末と水(360質量部)とを混合して2種類のゲッタペーストを作成した。各ゲッタペーストを同一真空空間内にそれぞれ異なる位置に塗布した以外は製造例1と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0200】
[製造例11]
酸化セリウム(IV)粉末(15質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(85質量部)とを用いた以外は製造例10と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0201】
[製造例12]
酸化セリウム(IV)粉末(25質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(75質量部)とを用いた以外は製造例10と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0202】
[製造例13]
酸化セリウム(IV)粉末(50質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(50質量部)とを用いた以外は製造例10と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0203】
{評価}
<熱コンダクタンス>
製造例Aと同様の方法で熱コンダクタンスを測定した。
図19に結果を示す。
【0204】
製造例7、8、9を見ると、酸化セリウムの濃度が10wt%以上25wt%以下において、濃度が上がるとともに熱コンダクタンスが上昇している。一方、製造例10、11、12を見ると、酸化セリウムの濃度10wt%以上25wt%以下において熱コンダクタンスは濃度上昇とともに低下している。これは、CeO2からの脱離酸素がCu-ZSM5に影響することを抑制したためであると考えられる。
【0205】
また、製造例13のように、酸化セリウムの濃度50wt%になると別塗布の場合でも熱コンダクタンスが上昇している。これは、酸化セリウムと銅イオン交換ゼオライトとを別々に塗布しているとはいえ、酸化セリウムと銅イオン交換ゼオライトとが同じ真空空間内にあるので、Cu-ZSM5がCeO2からの酸素脱離の影響を受けてしまうためであると考えられる。またこれに加え、CeO2濃度を上げることで、結果として、通常では吸着が難しい窒素やメタンを吸着できるCu-ZSM5の量が減ってしまったためであると考えられる。
【0206】
なお、20mgのCu-ZSM5単体の場合、熱コンダクタンス値は20W/m2K程度になる。このため、混合塗布の場合でもCeO2混合の効果は大きく得られることが分かる。別塗布の場合、CeO2からの脱離酸素の影響を受けにくいという大きなメリットがある反面、塗布工程の時間が長くなってしまう、ガス吸着体が外観上目立ちやすい、といったデメリットもある。このため、製造工程や製品特性を考慮した上で、混合塗布、別塗布のうち望ましい方を選択すればよい。
【0207】
<製造例D>
酸化セリウム(IV)粉末に異なる還元温度のものを用いることと、酸化セリウム粉末の混合量が異なること以外は、製造例8と同様である。なお、製造例14及び15は、金属担持の酸化セリウム(IV)粉末を使用している。製造例16及び17は、製造例14及び15より金属担持物質の濃度を小さくした酸化セリウム(IV)粉末を使用している。製造例18及び19は、金属担持なしの酸化セリウム(IV)粉末を使用している。
【0208】
[製造例14]
還元温度が200℃の酸化セリウム(IV)粉末(15質量部)を用いた以外は製造例7と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0209】
[製造例15]
還元温度が200℃の酸化セリウム(IV)粉末(50質量部)と、銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)粉末(85質量部)とを用い、合計27mgとした以外は製造例14と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0210】
[製造例16]
還元温度が550℃の酸化セリウム(IV)粉末(15質量部)を用いた以外は製造例14と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0211】
[製造例17]
還元温度が550℃の酸化セリウム(IV)粉末(50質量部)を用いた以外は製造例15と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0212】
[製造例18]
還元温度が650℃を超える酸化セリウム(IV)粉末(15質量部)を用いた以外は製造例14と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0213】
[製造例19]
還元温度が650℃を超える酸化セリウム(IV)粉末(50質量部)を用いた以外は製造例15と同様にしてガラスパネルユニットを作製した。
【0214】
{評価}
<還元温度>
還元温度は昇温脱離ガス分析にて酸素放出の立ち上がりを調べることで決定した。超高真空下において、昇温速度を30℃/minとし、サンプル温度が650℃となるまで測定した。サンプル温度は、サンプルを直径1cmのカーボンシートに挟んだ上で、下から赤外線で加熱し、カーボンシートの上から熱電対を当てることで測定した。測定結果を酸素放出カーブとして
図20に示す。なお、O
2の放出量の測定装置は、電子科学社製の昇温脱離分析装置TDS1200IIを用いた。
図20のグラフの縦軸は、各温度の時点でのO
2のイオン電流値を、単位時間当たりのO
2放出量として記した。なお、縦軸の最大値は8E
-10[A]である。
【0215】
<酸化セリウム増量テスト>
それぞれの製造例について、製造例Aと同様の方法で熱コンダクタンスを測定した。
図21に、15質量部の酸化セリウム粉末を用いた場合の熱コンダクタンスを1として、熱コンダクタンスの比を示した。
【0216】
還元温度が200℃の酸化セリウム粉末の場合、酸化セリウム量を増やすことで熱コンダクタンスが上昇している。また、還元温度が550℃の酸化セリウム粉末の場合、酸化セリウム量を増やすことで熱コンダクタンスはほぼ変化がないものの微増している。一方、還元温度が650℃を超える酸化セリウム粉末の場合、熱コンダクタンス値は低下している。これは、Cu-ZSM5の酸化銅が酸素を放出し始める温度が250℃程度からであり、還元された銅イオンサイトに窒素やメタン等の難吸着性ガスを吸着することと関係している。
【0217】
200℃から還元が始まる製造例14、15の酸化セリウム粉末では、200℃から酸素が放出されてしまうため、Cu-ZSM5の酸化銅の還元を大きく阻害してしまう。550℃で還元される酸化セリウム粉末の場合、単体では250℃で放出される酸素はほとんどないが、Cu-ZSM5の還元作用でわずかに酸素を放出し、やはりCu-ZSM5の酸化銅の還元をわずかに阻害する。650℃より高い温度でも還元されない酸化セリウムの場合、酸素を脱離させるエネルギーが高いため、Cu-ZSM5と混合しても還元されず、Cu-ZSM5に悪影響を与えない。その結果、酸化セリウムを増やすことで純粋にCO2吸着量を増やすことができ、Cu-ZSM5の吸着サイトがCO2で埋まってしまうことを防ぎ、その分だけ窒素やメタンの吸着量を高く保つことができる。このため、Cu-ZSM5に悪影響を与えないためには、還元温度は250℃以上が望ましく、さらには550℃以上であることが特に望ましい。
【0218】
なお、
図20において、酸素放出開始温度(還元が始まる温度)は酸素放出カーブの立ち上がり(傾きが正になる)位置での温度である。また、200℃以下のピーク(最大点)は物理吸着による微量の酸素放出と考えられる。また250℃(または300℃、500℃、550℃)での酸素放出カーブの傾きが負になっている。したがって、酸素放出開始温度は、300℃以上、500℃以上、550℃以上がより望ましい。
【0219】
Cu-ZSM5に悪影響を与えない酸化セリウムが有用な理由は主に3つある。
【0220】
1つ目は、Cu-ZSM5の吸着能力を悪化させないので、トータルの吸着能力が高くなりやすいことである。例えば、還元温度200℃の酸化セリウム粉末を用いた製造例15の熱コンダクタンスは3.8W/m2Kである。還元温度550℃の酸化セリウム粉末を用いた製造例17の熱コンダクタンスは1.3W/m2Kである。還元温度650℃以上の酸化セリウム粉末を用いた製造例19の熱コンダクタンスは1.0W/m2Kである。
【0221】
2つ目は、酸化セリウム濃度の精度条件が緩和される点である。酸化セリウム濃度が少し高くなってしまったために熱コンダクタンスが大幅に悪化するような場合は、濃度調整に精密さが求められる。
【0222】
3つ目は、CO2吸着能力を自由に設計できることである。例えば、真空断熱ガラスに紫外線が照射されると、CO2が多く放出される場合がある。これを見越して酸化セリウム粉末の量のみ多くできれば、ガス吸着体の全体量はそれほど増やさなくてもよい。一方、酸化セリウムがCu-ZSM5に悪影響を与えている場合、濃度を増やせないので、酸化セリウムとCu-ZSM5の両方を同じ比率で増やす必要があり、ガス吸着体の全体量が余計に増えることがある。
【0223】
酸化セリウム粉末の還元温度の調整は、添加物の種類と量、細孔分布、粒子径などに影響を受ける。一般に金属や希土類等の添加、細孔径分布の微細化等で酸化セリウム粉末の二酸化炭素吸着能力は高まるが、反対に還元温度は低下する傾向にある。このため、還元温度が250℃以上となるように、二酸化炭素吸着能力を適切に調整することが望ましい。
【0224】
また、還元温度250℃以下または550℃以下の酸化セリウム粉末を微量のみ、例えば10%以下、さらに望ましくは5%以下のみ混合し、それに加えてさらに還元温度の高い別の酸化セリウム粉末を加える。このことで、よりCu-ZSM5への悪影響を抑制した上で、より自由度高く二酸化炭素吸着能力を設計できる。この場合、還元温度の異なる2種類の酸化セリウム粉末のうち、還元温度の低い酸化セリウム粉末の割合が還元温度の高い酸化セリウム粉末より小さくなっていることが望ましい。
【0225】
(変形例)
本開示の実施形態は、第1~4実施形態に限定されない。第1~4実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、第1~4実施形態の変形例を列挙する。なお、以下の説明において、第1~4実施形態を基本例とする。
【0226】
基本例では、第1及び第2ガラス板200、300のうち、第1ガラス板200だけが低放射膜220を備えているが、変形例では第2ガラス板300も低放射膜を備えてもよい。すなわち、第1及び第2ガラス板200、300の両方が低放射膜を備えてもよい。このため、第1及び第2ガラス板20、30の両方も低放射膜を備えてもよい。
【0227】
基本例では、第1及び第2ガラス板200、300のうち、第1ガラス板200は低放射膜220を備え、第2ガラス板300は低放射膜を備えていない。しかし、変形例では第2ガラス板300が低放射膜を備え、第1ガラス板200が低放射膜220を備えなくてもよい。このため、変形例のガラスパネルユニット10でも、第2ガラス板30が低放射膜を備え、第1ガラス板20が低放射膜220を備えなくてもよい。
【0228】
基本例では、排気工程は第1溶融工程後に開始しているが、変形例では、第1溶融時間tm1が経過した後で、かつ溶融炉内の温度が第1軟化点よりも低ければ、排気工程は第1溶融工程の途中で開始してもよい。
【0229】
基本例では、排気工程は第2溶融工程の終了とともに終了しているが、変形例では、排気工程は、第1溶融工程の後に開始し、第2溶融工程の前に終了してもよい。
【0230】
基本例では、ガラスパネルユニット10は矩形状であるが、変形例では、ガラスパネルユニット10は、円形状や多角形状など所望の形状であってもよい。つまり、第1ガラス板20、及び第2ガラス板30は、矩形状ではなく、円形状や多角形状など所望の形状であってもよい。
【0231】
第1及び第2ガラス板20,30は同じ平面形状および平面サイズを有していなくてもよい。また、第1ガラス板20は、第2ガラス板30と同じ厚みを有していなくてもよい。これらの点は、第1及び第2ガラス板200,300についても同様である。
【0232】
周壁410は、第1及び第2ガラス板200,300と同じ平面形状を有していなくてもよい。
【0233】
周壁410は、芯材等の他の要素をさらに備えていてもよい。
【0234】
また、組立て品100では、周壁410は第1及び第2ガラス板200,300の間にあるだけでこれらを接合していない。しかしながら、組立て品100の段階で、周壁410が第1及び第2ガラス板200,300同士を接合していてもよい。要するに、組立て品100では、周壁410は第1及び第2ガラス板200,300の間にあればよく、これらを接合していることは必須ではない。
【0235】
また、基本例では、仕切り420は、周壁410に接していない。これによって、仕切り420の両端と周壁410との隙間が、通気路610,620を形成している。ただし、仕切り420は、その両端の一方のみが周壁410に連結されていてもよく、この場合、仕切り420と周壁410との間に一つの通気路600が形成されうる。あるいは、仕切り420は、その両端が周壁410に連結されていてもよい。この場合、通気路600は、仕切り420に形成された貫通孔であってもよい。あるいは、通気路600は、仕切り420と第1ガラス板200と間の隙間であってもよい。あるいは、仕切り420は、間隔をあけて配置された2以上の仕切りで形成されていてもよい。この場合、通気路600は、2以上の仕切りの間に介在する隙間であってもよい。
【0236】
基本例では、通気路600は2つの通気路610,620を備えているが、通気路600は、一つの通気路だけで構成されていてもよいし、3以上の通気路で構成されていてもよい。また、通気路600の形状は、特に限定されない。
【0237】
また、基本例では、内部空間500は、一つの第1空間510と一つの第2空間520とに仕切られている。ただし、内部空間500は、仕切り420によって、1以上の第1空間510と1以上の第2空間520とに仕切られていてもよい。内部空間500が2以上の第1空間510を有する場合、1つの仕掛り品110から2以上のガラスパネルユニット10を得ることができる。
【0238】
基本例では、第1空間510を真空空間50としているが、真空空間50の代わりに、減圧空間としてもよい。減圧空間は、減圧状態となった第1空間510である。減圧状態とは、圧力が大気圧より低い状態であればよい。
【0239】
基本例では、堰部材47の形状は、C字状であるが、一部が切り欠かれた多角形の環状であってもよい。また、堰部材はなくてもよい。
【0240】
基本例では、隔壁42又は孔封止材43で真空空間50を外部空間から空間的に分離している。しかし変形例では、排気口700に接続された排気管の途中を溶融切断することで形成される封止部により真空空間50を外部空間から空間的に分離してもよい。すなわち、真空空間50を外部空間から空間的に分離する部材として、隔壁42又は孔封止材43は必須ではない。
【0241】
また、排気口700は第1ガラス板または第2ガラス板に形成されている場合に限定されず、例えば、第1ガラス板200と第2ガラス板300の間にある周壁410に形成されていても良い。また、排気口700からガスを排気する際には、必ずしも排気管を接続する必要はなく、例えば、真空チャンバ内に封止前のガラスパネルユニット10の組立て品100を入れ、真空チャンバ全体を真空排気することで、周壁410の隙間からガラスパネルユニット10内部を排気して真空空間50を形成し、その後、周壁410を加熱することで封止してもよい。
【0242】
(まとめ)
上記基本例及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。
【0243】
第1態様は、ガラスパネルユニット(10;10A)であって、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠体(40)と、真空空間(50)と、ガス吸着体(60)とを備える。第2ガラス板(30)は、第1ガラス板(20)に対向する。枠体(40)は、第1ガラス板(20)と第2ガラス板(30)とを気密に接合する。真空空間(50)は、第1ガラス板(20)と、第2ガラス板(30)と、枠体(40)とで囲まれる。ガス吸着体(60)は、真空空間(50)内に配置される。ガス吸着体(60)は、少なくとも、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、有している。
【0244】
第1態様によれば、ガス吸着体(60)がゼオライトからなる粒子とセリウム化合物からなる粒子とを含有することで、真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。
【0245】
第2態様は、第1態様のガラスパネルユニット(10;10A)であって、前記セリウム化合物の割合は、ガス吸着体(60)が有するゲッタ材の全質量に対して、50質量%以下である。
【0246】
第2態様によれば、セリウム化合物から酸素が脱離する量を少なくできるため、この酸素が封止工程後の真空空間(50)内に残りにくくなる。
【0247】
第3態様は、第1又は第2態様のガラスパネルユニット(10;10A)であって、前記ガス吸着体(60)は、前記ゼオライトを前記セリウム化合物よりも多く含有する。
【0248】
第3態様によれば、セリウム化合物から酸素が脱離する量を少なくできるため、この酸素が封止工程後の真空空間(50)内に残りにくくなる。
【0249】
第4態様は、第1~第3態様のいずれか1つのガラスパネルユニット(10;10A)であって、前記ゼオライトは、銅イオン交換ゼオライトを含む。
【0250】
第4態様によれば、真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。
【0251】
第5態様は、第1~第4態様のいずれか1つのガラスパネルユニット(10;10A)であって、前記セリウム化合物が酸化セリウムであり、前記セリウム化合物からなる粒子は、30℃/minで昇温したときの昇温脱離ガス分析において、酸素放出量が最大点となる温度を持つ酸素放出カーブを示す。前記酸素放出カーブは、前記酸素放出カーブの前記最大点が200℃以下であるか、または、前記酸素放出カーブの前記最大点が250℃以上であり、かつ酸素放出開始温度が250℃以上である。
【0252】
第5態様によれば、前記ゼオライトと前記セリウム化合物とを含有するガス吸着体(60)であっても、前記ゼオライトと前記セリウム化合物の各々のガス吸着性能に影響が生じにくい。
【0253】
第6態様は、第1~第5態様のいずれか1つのガラスパネルユニット(10;10A)であって、ガス吸着体(60)は、前記ゼオライトからなる粒子と、前記セリウム化合物からなる粒子と、の混合物を有している。
【0254】
第6態様によれば、真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。
【0255】
第7態様は、第1~第5態様のいずれか1つのガラスパネルユニット(10;10A)であって、ガス吸着体(60)は、前記ゼオライトからなる粒子を含有する第1のガス吸着体(61、601)と、前記セリウム化合物からなる粒子を含有する第2のガス吸着体(62、602)と、を有している。第1のガス吸着体(61,601)と第2のガス吸着体(62、602)とは、それぞれ、真空空間(50)内に別々に配置されている。
【0256】
第7態様によれば、第1のガス吸着体(61、601)がゼオライトを含有し、第2のガス吸着体(62、602)がセリウム化合物を含有することで、真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。またゼオライトを含有する第1のガス吸着体(61、601)と、セリウム化合物を含有する第2のガス吸着体(62、602)とを別々に形成することで、ゼオライト及びセリウム化合物の各々が互いのガス吸着性能に影響を与えにくくなる。しかも第1のガス吸着体(61、601)と第2のガス吸着体(62、602)との配置位置の自由度が増し、デザイン性に優れる。
【0257】
第8態様は、第7態様のガラスパネルユニット(10;10A)であって、第1のガス吸着体(61、601)と第2のガス吸着体(62、602)とは、離れて配置されている。
【0258】
第8態様によれば、ゼオライト及びセリウム化合物の各々が互いのガス吸着性能に影響を与えにくくなる。
【0259】
第9態様は、第7又は第8の態様のガラスパネルユニット(10;10A)であって、第1のガス吸着体(61,601)及び第2のガス吸着体(62,602)のいずれか一方が、第1ガラス板(20)及び第2ガラス板(30)の少なくとも一方の全面に配置されている。第1のガス吸着体(61,601)及び第2のガス吸着体(62,602)のいずれか他方が、第1ガラス板(20)及び第2ガラス板(30)の少なくとも一方の外周に沿って配置されている。
【0260】
第9態様によれば、第1のガス吸着体(61、601)と第2のガス吸着体(62、602)との配置位置の自由度が増し、デザイン性に優れる。
【0261】
第10態様は、第1~第9態様のガラスパネルユニット(10)であって、第1ガラス板(20)及び第2ガラス板(30)に排気口(700)を備えない。
【0262】
第10態様によれば、ガス吸着体(60)がゼオライトとセリウム化合物とを含有することで、真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。また排気口(700)による外観の低下を低減することができる。
【0263】
第11態様は、複合ゲッタ材であって、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、を含有する。
【0264】
第11態様によれば、複合ゲッタ材が真空空間(50)内に配置された場合、この真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。
【0265】
第12態様は、第11態様の複合ゲッタ材であって、前記セリウム化合物の割合は、前記複合ゲッタ材の質量に対して、50質量%以下である。
【0266】
第12態様によれば、複合ゲッタ材が真空空間(50)内に配置された場合に、セリウム化合物から酸素が脱離する量を少なくできるため、この酸素が真空空間(50)内に残りにくくなる。
【0267】
第13態様は、ゲッタペーストであって、第11又は第12態様の複合ゲッタ材と溶媒との混合物である。
【0268】
第13態様によれば、ゲッタペーストでは溶媒が、前記ゼオライトからなる粒子及び前記セリウム化合物からなる粒子を覆うようにして存在するため、前記ゼオライトからなる粒子及び前記セリウム化合物からなる粒子は空気と接しにくくなる。これにより、前記ゼオライトからなる粒子及び前記セリウム化合物からなる粒子は空気を吸着しにくくなる。したがって、ゲッタペーストの保存が容易になる。また、溶媒が水の場合、アルコールやテルピネオールなどの有機溶媒を用いる場合と比べて、ゼオライト、特に銅イオン交換ゼオライト(Cu-ZSM5)に脱離しにくい有機成分が残留しない。このため、排気工程での温度が低くてもゼオライトから十分にガスを脱離させることができ、高い吸着性能を得られる。
【0269】
第14態様は、ガラスパネルユニット(10;10A)の製造方法であって、加工工程と、組立工程と、接合工程と、排気工程とを含む。前記加工工程は、ゼオライトからなる粒子と、セリウム化合物からなる粒子と、を含有する複合ゲッタ材を得る複合ゲッタ材作製工程を含む。前記組立工程は、組立て品(100;101)を用意する工程である。前記組立て品(100;101)は、第1ガラス板(200;20)と、第2ガラス板(300;30)と、枠状の周壁(410)と、内部空間(500)と、ガス吸着体(60)と、排気口(700)とを備える。第2ガラス板(300;30)は、第1ガラス板(200;20)に対向する。周壁(410)は、第1ガラス板(200;20)と第2ガラス板(300;30)との間にある。内部空間(500)は、第1ガラス板(200;20)と、第2ガラス板(300;30)と、周壁(410)とで囲まれる。ガス吸着体(60)は、内部空間(500)内に配置され、かつ前記複合ゲッタ材を含有する。排気口(700)は、前記内部空間(500)と外部空間とをつなぐ。前記接合工程は、周壁(410)を溶融させて第1ガラス板(200;20)と第2ガラス板(300;30)とを気密に接合させる工程である。前記排気工程は、排気口(700)を介して内部空間(500)を排気して真空空間(50)とする工程である。
【0270】
第14態様によれば、ガス吸着体(60)がゼオライトとセリウム化合物とを含有することで、真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。
【0271】
第15態様は、第14態様のガラスパネルユニット(10;10A)の製造方法であって、前記加工工程は、前記複合ゲッタ材と溶媒とを混合してゲッタペーストを得る混合工程をさらに含む。
【0272】
第15態様によれば、溶媒が前記ゼオライトからなる粒子及び前記セリウム化合物からなる粒子を覆うようにして存在するため、前記ゼオライトからなる粒子及び前記セリウム化合物からなる粒子は空気と接しにくくなる。これにより、ゲッタ材は空気を吸着しにくくなる。したがって、ゲッタペーストの保存が容易となり、ガラスパネルユニット(10;10A)を製造する際の煩雑性を軽減できる。
【0273】
第16態様は、ガラスパネルユニット(10;10A)の製造方法であって、加工工程と、組立工程と、接合工程と、排気工程とを含む。前記加工工程は、ゼオライトからなる粒子を含有する第1のゲッタペーストと、セリウム化合物からなる粒子を含有する第2のゲッタペーストと、をそれぞれ得るゲッタペースト作製工程を含む。前記組立工程は、組立て品(100;101)を用意する工程である。前記組立て品(100;101)は、第1ガラス板(200;20)と、第2ガラス板(300;30)と、枠状の周壁(410)と、内部空間(500)と、第1のガス吸着体(61;601)と、第2のガス吸着体(62;602)と、排気口(700)とを備える。第2ガラス板(300;30)は、第1ガラス板(200;20)に対向する。周壁(410)は、第1ガラス板(200;20)と第2ガラス板(300;30)との間にある。内部空間(500)は、第1ガラス板(200;20)と、第2ガラス板(300;30)と、周壁(410)とで囲まれる。第1のガス吸着体(61;601)は、内部空間(500)内に配置され、かつ前記第1のゲッタペーストから形成される。第2のガス吸着体(62;602)は、内部空間(500)内に配置され、かつ前記第2のゲッタペーストから形成される。排気口(700)は、前記内部空間(500)と外部空間とをつなぐ。前記接合工程は、周壁(410)を溶融させて第1ガラス板(200;20)と第2ガラス板(300;30)とを気密に接合させる工程である。前記排気工程は、排気口(700)を介して内部空間(500)を排気して真空空間(50)とする工程である。
【0274】
第16態様によれば、第1のガス吸着体(61;601)がゼオライトを含有し、第2のガス吸着体(62;602)がセリウム化合物を含有することで、真空空間(50)内にガスが残りにくくすることができる。またゼオライトを含有する第1のガス吸着体(61;601)と、セリウム化合物を含有する第2のガス吸着体(62;602)とを別々に形成することで、ゼオライト及びセリウム化合物の各々が互いのガス吸着性能に影響を与えにくくなる。しかも第1のガス吸着体(61;601)と第2のガス吸着体(62;602)との配置位置の自由度が増し、デザイン性に優れる。
【0275】
第17態様は、第15又は第16態様のガラスパネルユニット(10;10A)の製造方法であって、前記組立工程は、前記各ゲッタペーストを乾燥させて各ガス吸着体(60;61;601;62;602)を得る乾燥工程を含む。
【0276】
第17態様によれば、前記各ゲッタペーストを乾燥させることで各ガス吸着体(60;61;601;62;602)のガス吸着性を回復させることができる。
【0277】
第18態様は、第14~第17態様のいずれか1つのガラスパネルユニット(10;10A)の製造方法であって、周壁(410)は、有機バインダ及び有機溶剤のうちの一方または両方を含有する。
【0278】
第18態様によれば、封止工程後に有機バインダに由来するガスが真空空間(50)に放出されても、このガスをガス吸着体(60)が吸着することにより、真空空間(50)内にガスが残りにくくなる。
【0279】
第19態様は、ゲッタペーストをディスペンサでガラスパネル内側の外周付近に塗布するか、あるいはスプレー塗布機等の装置で散布する。
【0280】
第19態様によれば、ゲッタ材が目立たず外観に優れるガラスパネルを実現できる。