(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002641
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】生体分子解析のための方法、システム、およびアレイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20221227BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20221227BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20221227BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221227BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20221227BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20221227BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20221227BHJP
【FI】
G01N33/543 525U
G01N33/53 D ZNA
G01N37/00 102
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6837 Z
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164795
(22)【出願日】2022-10-13
(62)【分割の表示】P 2020171612の分割
【原出願日】2013-09-30
(31)【優先権主張番号】61/805,884
(32)【優先日】2013-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/707,758
(32)【優先日】2012-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2013/0025190
(32)【優先日】2013-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/765,584
(32)【優先日】2013-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/866,512
(32)【優先日】2013-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/732,221
(32)【優先日】2012-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514199799
【氏名又は名称】ヴィブラント ホールディングス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラジャセカラン ジョン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤラマン ヴァサンス
(72)【発明者】
【氏名】ワン ティアンハオ
(72)【発明者】
【氏名】ベイ カン
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナムルティー ハリー クリシュナン
(57)【要約】
【課題】病原体の検出および特定を含む診断微生物学などの分野において、対象となる試料を解析するためのハイスループット技術を提供する。
【解決手段】ペプチド結合データを得るための方法であって:1平方ミリメートルあたり少なくとも10,000個のペプチド特徴を含むペプチドアレイを得る工程;前記アレイを、少なくとも前記100,000個のペプチド特徴のサブセットに対する複数のリガンドを含む試料と、リガンド結合を促進する条件下で接触させる工程;および前記複数のリガンドと前記ペプチドアレイとの結合を特定するために、前記アレイを画像化する工程を含む、評価方法、評価支持体及びアレイ作製法。
【選択図】
図24
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1平方センチメートルあたり少なくとも100,000個の特徴を含むマイクロアレイを得る工程;
該マイクロアレイを、少なくとも該1平方センチメートルあたり100,000個の特徴のサブセットに対する複数のリガンドを含む試料と、リガンド結合を促進する条件下で接触させる工程;および
該複数のリガンドと該マイクロアレイの該特徴との結合を特定するために、該マイクロアレイを画像化する工程
を含む、特徴結合データを得るための方法。
【請求項2】
特徴の総数が少なくとも約500,000個である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
特徴の総数が少なくとも約1,000,000個である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
特徴の総数が少なくとも約2,000,000個である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
特徴の総数が少なくとも約18,000,000個である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
マイクロアレイが0.2平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
マイクロアレイが1平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マイクロアレイが10平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
マイクロアレイが100平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
マイクロアレイが150平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
試料が100μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
試料が50μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
試料が25μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
試料が10μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
試料が5μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
試料が1.5μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
試料が1μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
試料接触から画像化終了までの経過時間が20分未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
試料接触から画像化終了までの経過時間が5分未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
試料接触から画像化終了までの経過時間が1分に等しいか、またはこれより短い、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
画像化のための経過時間が20秒に等しいか、またはこれより短い、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
画像化のための経過時間が10秒に等しいか、またはこれより短い、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
画像化のための経過時間が1秒に等しいか、またはこれより短い、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
マイクロアレイから得られたデータの変動係数が5パーセント以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
マイクロアレイから得られたデータの変動係数が2パーセント以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
マイクロアレイから得られたデータの変動係数が1パーセント以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
マイクロアレイが1平方センチメートルあたり少なくとも1,000,000個の特徴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
マイクロアレイが1平方センチメートルあたり少なくとも10,000,000個の特徴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
マイクロアレイが1平方センチメートルあたり少なくとも15,000,000個の特徴を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
接触させる工程が、試料中、1,000μg/mlより少ないか、またはこれに等しい複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
接触させる工程が、試料中、10μg/mlより少ないか、またはこれに等しい複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
接触させる工程が、試料中、1μg/mlより少ないか、またはこれに等しい複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
接触させる工程が、試料中、0.1μg/mlより少ないか、またはこれに等しい複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
接触させる工程が、試料中、10ng/mlより少ないか、またはこれに等しい複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
接触させる工程が、試料中、1ng/mlより少ないか、またはこれに等しい複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
接触させる工程が、試料中、5pg/mlより少ないか、またはこれに等しい複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
接触させる工程が、試料中、約1pg/ml~約1,000μg/mlの範囲内の複数のリガンドの濃度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
画像化する工程が、少なくとも1,000個のリガンドとマイクロアレイの特徴との結合を特定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
画像化する工程が、少なくとも100,000個のリガンドとマイクロアレイの特徴との結合を特定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
画像化する工程が、少なくとも1,000,000個のリガンドとマイクロアレイの特徴との結合を特定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
画像化する工程が、少なくとも10,000,000個のリガンドとマイクロアレイの特徴との結合を特定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
画像化する工程が、少なくとも15,000,000個のリガンドとマイクロアレイの特徴との結合を特定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
画像化する工程が、少なくとも100,000,000個のリガンドとマイクロアレイの特徴との結合を特定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
特徴が、タンパク質、DNA結合配列、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド核酸、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド模倣体、ヌクレオチド模倣体、キレート剤、およびバイオマーカーからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
それぞれのチップマウントが複数のマイクロアレイの少なくとも1つを付けるように構成されており、かつアッセイ溶液を含有するウェルの中へ下向きにチップマウントが配置されたときに、少なくとも1つのマイクロアレイがチップマウントから移動しないように構成されている、複数のチップマウント;および
プレートからほぼ垂直に伸びている複数の逆プレートピラーを備えるプレートであって、それぞれの逆プレートピラーが複数のチップマウントの1つと連結されるように構成されており、プレートが上下反転されたときに、それぞれのチップマウントが少なくとも1つの逆プレートピラーから移動しないように、それぞれのチップマウントが複数の逆プレートピラーの少なくとも1つに付けられる、プレート
を備える、マイクロアレイをアッセイするための逆ピラープレート。
【請求項46】
それぞれのチップマウントが少なくとも1つのチップホルダーを含み、それぞれのチップホルダーが1個のマイクロアレイを保持するように構成されている、請求項45に記載の物品。
【請求項47】
チップマウントの数が少なくとも5である、請求項45に記載の物品。
【請求項48】
チップマウントの数が少なくとも90である、請求項45に記載の物品。
【請求項49】
チップマウントの数が少なくとも300である、請求項45に記載の物品。
【請求項50】
チップマウントの数が少なくとも1,500である、請求項45に記載の物品。
【請求項51】
チップマウントの数が24、96、384、および1536からなる群より選択される、請求項45に記載の物品。
【請求項52】
チップマウントが0.1平方センチメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項53】
チップマウントが0.5平方センチメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項54】
チップマウントが1.0平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項55】
チップマウントが2.0平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項56】
逆プレートピラーがピラープレートから5ミリメートルを超えて伸びている、請求項45に記載の物品。
【請求項57】
逆プレートピラーがピラープレートから10ミリメートルを超えて伸びている、請求項45に記載の物品。
【請求項58】
逆プレートピラーがピラープレートから15ミリメートルを超えて伸びている、請求項45に記載の物品。
【請求項59】
プレートが50平方センチメートルより大きな面積を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項60】
プレートが100平方センチメートルより大きな面積を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項61】
プレートが150平方センチメートルより大きな面積を有する、請求項45に記載の物品。
【請求項62】
マイクロアレイが接着剤でチップマウントに付けられている、請求項45に記載の物品。
【請求項63】
接着剤が、エポキシ、可視光線硬化性エポキシ、紫外線硬化性グルー、および熱硬化性グルーエポキシからなる群より選択される、請求項62に記載の物品。
【請求項64】
1個のマイクロアレイが1個のチップホルダーにしっかりとはまるように、それぞれのチップホルダーおよびそれぞれのマイクロアレイがほぼ同一のサイズを有する、請求項46に記載の物品。
【請求項65】
それぞれのチップマウントが1個のマイクロアレイを付けるように構成されている、請求項45に記載の物品。
【請求項66】
それぞれのチップマウントが少なくとも10個のマイクロアレイを付けるように構成されている、請求項45に記載の物品。
【請求項67】
それぞれのチップマウントが少なくとも100個のマイクロアレイを付けるように構成されている、請求項45に記載の物品。
【請求項68】
複数のチップマウントを準備する工程であって、それぞれのチップマウントがマイクロアレイを付けるように構成されており、かつアッセイ溶液を含有するウェルの中へ下向きにチップマウントが配置されたときに、マイクロアレイがチップマウントから移動しないように構成されている、工程;
複数のマイクロアレイをチップマウントに付ける工程;
ピラープレートからほぼ垂直に伸びている複数の逆プレートピラーを備えるピラープレートを準備する工程であって、それぞれのプレートピラーが複数のチップマウントの1つと連結されるように構成されている、工程;
ピラープレートが上下反転されたときに、それぞれのチップマウントが少なくとも1つのプレートピラーから移動しないように、付けられたマイクロアレイを有するチップマウントを複数のプレートピラーの少なくとも1つに付ける工程;および
ピラープレートを上下反転し、それぞれのマイクロアレイを、アッセイ溶液を含有するウェルの中に入れることによって複数のマイクロアレイをアッセイする工程
を含む、チップアレイをアッセイする方法。
【請求項69】
マイクロアレイ表面の、位置が定められた場所に付けられたマイクロアレイの特徴の一様に高い品質を保証する方法であって、以下の工程を含む、方法:
特徴を含むカップリング製剤でコーティングされたマイクロアレイをソフトベークする工程;
ソフトベークされたマイクロアレイの厚さを求める工程;
第1の閾値範囲から外れたソフトベークされたマイクロアレイの厚さに応じて、コートを取り去った後にマイクロアレイをソフトベークする工程をやり直す工程;
フォトマスクで覆って、ソフトベークされたマイクロアレイを露光する工程;
露光されたマイクロアレイをハードベークする工程;および
第2の閾値範囲から外れたハードベークされたマイクロアレイの厚さに応じて、コートを取り去った後にマイクロアレイをソフトベークする工程をやり直す工程。
【請求項70】
マイクロアレイ表面の、位置が定められた場所に付けられたマイクロアレイの特徴の一様に高い品質を保証する方法であって、以下の工程を含む、方法:
特徴を含むカップリング製剤でコーティングされたマイクロアレイをソフトベークする工程;
拡散パターンおよびオーバーレイパターンを備えるフォトマスクで覆って、ソフトベークされたマイクロアレイを露光する工程;
露光されたマイクロアレイをハードベークする工程;ならびに
標準的な拡散パターンまたはオーバーレイパターンと比較したときに、許容範囲から外れたハードベークされたマイクロアレイの拡散パターンまたはオーバーレイパターンに応じて、コートを取り去った後にマイクロアレイをソフトベークする工程をやり直す工程。
【請求項71】
チップアレイからのデータの収集ならびに該データの区分的リアルタイムスキャニングおよびスティッチングのための方法であって、以下の工程を含む、方法:
マイクロアレイ表面の、位置が定められた場所に取り付けられた特徴をそれぞれのマイクロアレイが備える、複数のマイクロアレイ
を備えるチップアレイを準備する、工程、
チップアレイの第1の領域を顕微鏡のスキャンマスクに合わせる工程;
チップアレイの第1の領域をスキャンマスクで覆って顕微鏡によって画像化する工程;および
画像化された第1の領域内の、位置が定められた場所にあるマイクロアレイ表面上のアライメントマークに基づいて、コンピュータプロセッサを使用することによって、チップアレイの画像化された第1の領域を標準配向に回転させる工程。
【請求項72】
チップアレイの第2の領域が第1の領域と部分的に重なるようにチップアレイの第2の領域をスキャンマスクに合わせる工程;
チップアレイの第2の領域をスキャンマスクで覆って顕微鏡によって画像化する工程;および
画像化された第2の領域内の、位置が定められた場所にあるマイクロアレイ表面上のアライメントマークに基づいて、コンピュータプロセッサを使用することによって、チップアレイの画像化された第2の領域を標準配向に回転させる工程
さらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
画像化された第1の領域内および第2の領域内のマイクロアレイ表面に位置する特徴を解析するために第1の領域および第2の領域の回転された画像を合成する工程であって、解析のために、画像化された第1の領域および第2の領域の任意の重複部分が平均される、工程
をさらに含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
第1の領域および第2の領域の回転された画像を画像データベースに保存する工程をさらに含む、請求項72に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2012年9月28日に出願された米国仮特許出願第61/707,758号、2012年11月30日に出願された米国仮特許出願第61/732,221号、2013年3月27日に出願された米国仮特許出願第61/805,884号、2013年2月15日に出願された米国仮特許出願第61/765,584号、2013年8月15日に出願された米国仮特許出願第61/866,512号、および2013年2月7日に出願された国際特許出願番号PCT/US2013/025190の恩典を主張する。これらの開示はその全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
典型的なマイクロアレイシステムは、概して、ガラス、プラスチック、またはシリコンチップのような固体平面上にフォーマットされた生体分子プローブ、例えば、DNA、タンパク質、またはペプチドなどと、試料を扱うために必要とされる機器(自動ロボット工学)、レポーター分子を読み取るために必要とされる機器(スキャナ)、およびデータを解析するために必要とされる機器(生物情報学ツール)からなる。マイクロアレイ技術によって、1平方センチメートルあたり多くのプローブをモニタリングすることが容易になる。複数のプローブを使用する利点には、速度、順応性、包括性、および相対的に安い大量生産コストが含まれるが、これに限定されない。このようなアレイの用途には、病原体の検出および特定を含む診断微生物学、抗菌剤耐性の研究、疫学的菌株分類、癌遺伝子の研究、宿主ゲノム発現を用いた微生物感染の解析、および多型プロファイルが含まれるが、これに限定されない。
【0003】
ゲノミクスの最近の進歩によって、ヒトを含む、いくつかの生物の全ゲノムが配列決定されている。しかしながら、ゲノミクスだけでは、疾患、発生、および他の生物学的現象に関与する細胞プロセスを完全に理解することができない。なぜなら、このようなプロセスはポリペプチドによって直接媒介されることが多いからである。生物のゲノムによって莫大な数のポリペプチドがコードされていることを考えると、ポリペプチドを解析するためのハイスループット技術の開発が最も重要である。
【0004】
別個の分析物検出領域またはプローブを有するペプチドアレイを当業者に周知の技法によって1個の支持体上に組み立てることができる。ペプチドマイクロアレイを作り出すために様々な方法を利用することができる。これらの方法には、(a)化学選択的固定化法;および(b)インサイチューパラレル合成法が含まれ、これはさらに (1)SPOT合成および(2)フォトリソグラフィ合成に分けることができる。
【発明の概要】
【0005】
概要
本発明は、いくつかの態様において、製剤、支持体、およびアレイを含む。本発明はまた、製剤、支持体、およびアレイを製造および使用するための方法を含む。
【0006】
一つの態様において、本発明は、ペプチド結合データを得るための方法であって:1平方ミリメートルあたり少なくとも10,000個のペプチド特徴を含むペプチドアレイを得る工程;前記アレイを、少なくとも前記100,000個のペプチド特徴のサブセットに対する複数のリガンドを含む試料と、リガンド結合を促進する条件下で接触させる工程;および前記複数のリガンドと前記ペプチドアレイとの結合を特定するために、前記アレイを画像化する工程を含む、方法、を含む。
【0007】
前記方法の一部の態様において、特徴の総数は少なくとも約500,000、1,000,000、2,000,000、または18,000,000である。前記方法の他の態様において、前記マイクロアレイは、0.2平方ミリメートル、1平方ミリメートル、10平方ミリメートル、100平方ミリメートル、もしくは150平方ミリメートルより小さいか、またはこれに等しい面積を有する。前記方法のさらに他の態様では、前記試料は、100μL、50μL、10μL、5μL、1.5μL、もしくは1μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する。前記方法の一部の態様において、試料接触から画像化までの経過時間は20分未満、5分未満、または1分未満である。前記方法の一部の態様において、前記アレイから得られたデータの変動係数は、5パーセント、2パーセント、または1パーセント以下である。前記方法の一部の態様において、前記マイクロアレイは1平方センチメートルあたり少なくとも1,000,000個、10,000,000個、15,000,000個の特徴を含む。前記方法の一部の態様において、前記接触させる工程は、前記試料中、約1pg/ml~約1,000μg/mlの範囲内の前記複数のリガンド濃度で行われる。前記方法の一部の態様において、前記画像化は、少なくとも1,000個、100,000個、1,000,000個、10,000,000個、15,000,000個、または100,000,000個のリガンドと前記マイクロアレイの前記特徴との結合を特定する工程を含む。前記方法の一部の態様において、前記特徴は、タンパク質、DNA結合配列、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド核酸、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド模倣体、ヌクレオチド模倣体、キレート剤、およびバイオマーカーからなる群より選択される。
【0008】
一つの態様において、本発明は、マイクロアレイをアッセイするための逆ピラープレートを含み、逆ピラープレートは、それぞれのチップマウントが複数のマイクロアレイの少なくとも1つを付けるように構成されており、かつアッセイ溶液を含有するウェルの中へ下向きにチップマウントが配置されたときに、少なくとも1つのマイクロアレイがチップマウントから移動しないように構成されている複数のチップマウント;およびプレートからほぼ垂直に伸びている複数の逆プレートピラーを備えるプレートであって、それぞれの逆プレートピラーが複数のチップマウントの1つと連結されるように構成されており、前記プレートが上下反転されたときに、それぞれのチップマウントが少なくとも1つの逆プレートピラーから移動しないように、それぞれのチップマウントが複数の逆プレートピラーの少なくとも1つに付けられる、プレート、を備える。
【0009】
一部の態様において、本発明は、チップアレイをアッセイする方法であって:複数のチップマウントを準備する工程であって、それぞれのチップマウントがマイクロアレイを付けるように構成されており、かつアッセイ溶液を含有するウェルの中へ下向きにチップマウントが配置されたときに、マイクロアレイがチップマウントから移動しないように構成されている、工程;複数のマイクロアレイをチップマウントに付ける工程;ピラープレートからほぼ垂直に伸びている複数の逆プレートピラーを備えるピラープレートを準備する工程であって、それぞれのプレートピラーが複数のチップマウントの1つと連結されるように構成されている、工程;ピラープレートが上下反転されたときに、それぞれのチップマウントが少なくとも1つのプレートピラーから移動しないように、付けられたマイクロアレイを有するチップマウントを複数のプレートピラーの少なくとも1つに付ける工程;およびピラープレートを上下反転し、それぞれのマイクロアレイを、アッセイ溶液を含むウェルの中に入れることによって複数のマイクロアレイをアッセイする工程を含む、方法、を含む。
【0010】
一部の態様において、本発明は、マイクロアレイ表面の、位置が定められた場所に取り付けられたマイクロアレイの特徴の一様に高い品質を保証する方法であって:特徴を含むカップリング製剤でコーティングされたマイクロアレイをソフトベークする工程;ソフトベークされたマイクロアレイの厚さを求める工程;第1の閾値範囲から外れたソフトベークされたマイクロアレイの厚さに応じて、コートを取り去った後にマイクロアレイをソフトベークする工程をやり直す工程;ソフトベークされたマイクロアレイをフォトマスクで覆って露光する工程;露光されたマイクロアレイをハードベークする工程;および第2の閾値範囲から外れたハードベークされたマイクロアレイの厚さに応じて、コートを取り去った後にマイクロアレイをソフトベークする工程をやり直す工程を含む、方法、を含む。
【0011】
一部の態様において、本発明は、マイクロアレイ表面の、位置が定められた場所に付けられたマイクロアレイの特徴の一様に高い品質を保証する方法であって:特徴を含むカップリング製剤でコーティングされたマイクロアレイをソフトベークする工程;拡散パターンおよびオーバーレイパターンを備えるフォトマスクで覆って、ソフトベークされたマイクロアレイを露光する工程;露光されたマイクロアレイをハードベークする工程;ならびに標準的な拡散パターンまたはオーバーレイパターンと比較したときに、許容範囲から外れたハードベークされたマイクロアレイの拡散パターンまたはオーバーレイパターンに応じて、コートを取り去った後にマイクロアレイをソフトベークする工程をやり直す工程を含む、方法、を含む。
【0012】
一つの態様において、本発明は、チップアレイからのデータの収集ならびに前記データの区分的リアルタイムスキャニングおよびスティッチングのための方法であって:マイクロアレイ表面の、位置が定められた場所に取り付けられた特徴をそれぞれのマイクロアレイが備える、複数のマイクロアレイ、を備えるチップアレイを準備する工程、チップアレイの第1の領域を顕微鏡のスキャンマスクに合わせる工程、チップアレイの第1の領域をスキャンマスクで覆って顕微鏡によって画像化する工程;および画像化された第1の領域内の、位置が定められた場所にあるマイクロアレイ表面上のアライメントマークに基づいて、コンピュータプロセッサを使用することによって、チップアレイの画像化された第1の領域を標準配向(standard orientation)に回転させる工程を含む、方法、を含む。
【0013】
一部の態様において、前記データ収集方法は、チップアレイの第2の領域が第1の領域と部分的に重なるようにチップアレイの第2の領域をスキャンマスクに合わせる工程;チップアレイの第2の領域をスキャンマスクで覆って顕微鏡によって画像化する工程;および画像化された第2の領域内の、位置が定められた場所にあるマイクロアレイ表面上のアライメントマークに基づいて、コンピュータプロセッサを使用することで、チップアレイの画像化された第2の領域を標準配向に回転させる工程をさらに含む。これらの態様の一部において、前記方法は、画像化された第1の領域内および第2の領域内のマイクロアレイ表面に位置する特徴を解析するために、第1の領域および第2の領域の回転された画像を合成する工程であって、解析のために、画像化された第1の領域および第2の領域の任意の重複部分が平均される、工程、をさらに含む。
【0014】
一部の態様において、データ収集方法は、第1の領域および第2の領域の回転された画像を画像データベースに保存する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の図面に関して、さらによく理解されるようになるだろう。
【0016】
【
図1】一つの態様に従う、チップアレイとロボット装置を用いてアッセイを行うためのフローチャートを示す。
【
図2】一つの態様に従う、チップアレイ解析プロセスの一例を図示したフローチャートを示す。
【
図3】一つの態様に従う、チップアレイのパッキングプロセスにおいて工程を行うためのロボットチップアレイシステムを示す。
【
図4】一つの態様に従う、チップアレイおよびウェルプレートを用いたアッセイにおいて工程を行うためのワークベンチシステムを示す。
【
図5】一つの態様に従う、スキャニングチップアレイおいて工程を行うためのロボットチップアレイシステムを示す。
【
図6】一つの態様に従う、本明細書において提供される診断モデルの一つの態様を図示した流れ図を示す。
【
図7】一つの態様に従う、保護されていないNH
2基を介してペプチドまたはタンパク質をチップ表面に連結するための、1個のチップ上の3-アミノ-トリエトキシシラン(APTES)を介して取り付けられた、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、グリシン(GLY)リンカー鎖、およびtert-ブチルオキシカルボニル(boc)の保護基を含むリンカー分子の構造を示す。
【
図8】一つの態様に従う、
図7からのリンカー分子のアセチル化(CAP)バージョンである対照リンカー分子を示す。
【
図9】一つの態様に従う、脱保護リンカー分子、すなわち、boc基を除去しNH
2基を保護されていない状態にした後(示さず)の
図7のリンカー分子を示す。
【
図10】一つの態様に従う、タンパク質、例えばIL-6、および抗体、例えばp53抗体をチップに付加するための段階的プロセスを示す。
【
図11】一つの態様に従う、タンパク質と、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)カップリングを介してチップ表面に取り付けられたリンカー分子との結合を示す。
【
図12】一つの態様に従う、抗体と、EDCカップリングを介してチップ表面に取り付けられたリンカー分子との結合を示す。
【
図13】一つの態様に従う、ポリジメチルシロキサン(PDMS)フィルムウェルプレートおよびチップを保持するそれぞれのウェルを用いたアッセイにおいて工程を行うプロセスを示す。
【
図14】一つの態様に従う、PDMSフィルムウェルプレートの上面図を示す。
【
図15】一つの態様に従う、PDMSフィルムウェルプレートの側面図を示す。
【
図16】一つの態様に従う、逆ピラーを用いたウェルプレートとチップアレイ、およびアッセイにおける3x3ウェルプレートとのチップアレイの使用の模式図を示す。
【
図17-1】一つの態様に従う、ピラーキャップの上部にある複数のチップからなるチップアレイ構造を示す。ピラーキャップはピラープレートに取り付けられる。
図17Aは、ピラーキャップ上に配置された1個のチップまたは複数のチップを示す。
図17Bは、それぞれのピラーキャップと、24個のピラーからなるピラープレートとの接続を示す。
図17Cは、組み立てられたチップアレイ構造を示す。
【
図18】一つの態様に従う、チップ表面から様々な距離でIL-6タンパク質を配置する異なるリンカー分子を用いてIL-6タンパク質がチップ表面に固定化されているチップを用いたアッセイの結果を示す。
【
図19】一つの態様に従う、負の対照としてアセチル化リンカー分子も含む異なるリンカー分子を用いてIL-6タンパク質がチップ表面に固定化されているチップを用いたアッセイの結果を示す。
【
図20】一つの態様に従う、チップ表面から様々な距離でp53抗体を配置する異なるリンカー分子を用いてp53抗体がチップ表面に固定化されているチップを用いたアッセイの結果を示す。
【
図21】一つの態様に従う、負の対照としてアセチル化リンカー分子も含む異なるリンカー分子を用いてp53抗体がチップ表面に固定化されているチップを用いたアッセイの結果を示す。
【
図22】一つの態様に従う、アセチル化対照リンカー分子に対する最小結合を示す。
【
図23】一つの態様に従う、選択された抗体および/またはタンパク質をチップ表に固定化する異なるリンカー分子を用いたアッセイの一例を示す。
【
図24】一つの態様に従う、ある範囲の抗体濃度にわたるチップの検出範囲(感度)を示す。
【
図25】一つの態様に従う、複数のチップ間のアッセイ結果の再現性を示す。
【
図26】一つの態様に従う、チップアレイ上のチップの理想的なレイアウトおよび実際のレイアウトならびに共焦点顕微鏡によってスキャンされたチップアレイ上の対応する部分を示す。
【
図27】一つの態様に従う、反射光(輝度)ならびに2つのフィルターチャンネル(赤色および緑色)を含む3つの一体化したチャンネルのチップアレイの画像を示す。
【
図28】一つの態様に従う、チップアレイ表面の全体にわたる反射光(輝度)チャンネルのピクセル図および強度プロファイルを示す。
【
図29】一つの態様に従う、チップアレイ上のバックグラウンドノイズを除く強度閾値を計算するためのフローチャートを示す。
【
図30】一つの態様に従う、強度閾値を用いて、チップアレイ上の関心対象の領域(ROI)を特定し、特定されたROIを2つのフィルターチャンネル(赤色および緑色)に適用した結果を示す。
【
図31】一つの態様に従う、特徴が占めるチップ上部分と比較したチップのアライメントマークのサイズを示す。
【
図32】一つの態様に従う、共焦点顕微鏡の1つのスキャニング部分内のチップアレイ上にある異なるチップのアライメントマークの特定を示す。
【
図33】一つの態様に従う、関心対象の領域、例えば、チップを正確に特定し、共焦点顕微鏡(CCDカメラ)によるスキャニングのためにチップの位置を決定するためのアライメントマークを用いたチップアレイの位置合わせを示す。
【
図34】一つの態様に従う、チップ上のアライメントマークの実際の位置および望ましい位置に基づいてチップを平行移動および回転させることによってチップアレイ上のチップの位置を決定するためのフローチャートを示す。
【
図35】一つの態様に従う、チップ上のアライメントマークの位置に基づいたθ角回転によるチップの位置決定を示す。
【
図36】一つの態様に従う、チップアレイの中心のまわりに補正角度を計算して、チップアレイ上のチップ間の位置合わせ不良を補正するためのプロセスフローにおいてチップを実装する第1の工程を示す。
【
図37】一つの態様に従う、チップアレイの中心のまわりに補正角度を計算して、チップアレイ上のチップ間の位置合わせ不良を補正するためのプロセスフローにおけるチップの第1の回転角(θ
1)を求める第2の工程を示す。
【
図38】一つの態様に従う、チップアレイの中心のまわりに補正角度を計算して、チップアレイ上のチップ間の位置合わせ不良を補正するためのプロセスフローにおけるチップの第2の回転角(θ
2)を求める第3の工程を示す。
【
図39】一つの態様に従う、チップアレイの中心のまわりに補正角度を計算して、チップアレイ上のチップ間の位置合わせ不良を補正するためのプロセスフローにおける別のチップの回転角を求める第4の工程を示す。
【
図40】一つの態様に従う、チップアレイ上のチップから得られた特徴データのスティッチングを示す。
【
図41】一つの態様に従う、チップのシグネチャーデータ、例えば、バーコード、アライメントマークを収集してオフセットおよび回転角を確かめるためのフローチャート、アッセイからチップデータを解析するためのフローチャート、ならびにチップアレイ上の複数のチップからアッセイデータをスティッチングするためのフローチャートを示す。
【
図42】一つの態様に従う、チップアレイ上でインライン品質管理を行うためのチップアレイシステムを示す。
【
図43】
図43A~Bは、一部の態様に従う、フォトマスクの拡散およびオーバーレイ試験パターンならびにフォトマスクを用いた紫外光露光およびチップのベーク後の共焦点顕微鏡下でのチップの標準的な強度パターンを示す。
【
図44】
図43A~Dは、一部の態様による、
図38Bに示したようなチップの標準的な強度パターンならびにオーバーレイの場所および拡散量のばらつきを示す。
【
図45A】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
図41Aは、測定された強度を、強度プロファイルに表示されるグレースケールに翻訳するチャートを含む。
【
図45B】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45C】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45D】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45E】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45F】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45G】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45H】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45I】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45J】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図45K】一部の態様に従う、ペプチド配列中のどのアミノ酸が抗体結合に必須であるかを確かめるための抗体結合ペプチドの点変異の強度プロファイルを示す。元々のペプチドアミノ酸配列を、それぞれの強度プロファイルの上部に沿って一文字コードで示し、縦軸には対応するアミノ酸交換(点変異)を示した。
【
図46】一つの態様に従う、エンドオブラインBioQCを示す。
【
図47】一つの態様に従う、シトルリンに対するエンドオブラインBioQCを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
定義
特許請求の範囲および明細書において用いられる用語は、他で特定しない限り、以下で示されるように定義される。
【0018】
本明細書で使用する「ウェーハ」という用語は、集積回路製作において一般的に用いられる半導体材料、例えば、ケイ素またはゲルマニウム結晶の薄片を指す。ウェーハは、様々なサイズ、例えば、ある寸法に沿って25.4mm(1インチ)~300mm(11.8インチ)をとってもよく、厚さは、例えば、275μm~775μmである。
【0019】
本明細書で使用する「フォトレジスト」または「レジスト」または「光活性材料」という用語は、紫外線または遠紫外線に露光されたときに溶液中での溶解度が変わる感光性材料を指す。フォトレジストは、典型的に、2つのタイプ:ポジティブレジスト(positive resist)およびネガティブレジスト(negative resist)に分けられる、有機化合物または無機化合物である。ポジティブレジストは、露光されたフォトレジスト部分がフォトレジスト現像剤に溶けるようになるフォトレジストの一種である。露光されなかったフォトレジスト部分はフォトレジスト現像剤に溶けないままである。ネガティブレジストは、露光されたフォトレジスト部分がフォトレジスト現像剤に溶けなくなるフォトレジストの一種である。露光されなかったフォトレジスト部分はフォトレジスト現像剤によって溶解される。
【0020】
本明細書で使用する「フォトマスク」または「レチクル」または「マスク」という用語は、光を通すことができる光透過性のパターンまたは穴を備えた光不透過性の板を指す。典型的な露光プロセスでは、フォトレジスト上にフォトマスクのパターンが移される。
【0021】
本明細書で使用する「カップリング分子」という用語は、一つの態様では、アミノ基がフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)またはtert-ブチルオキシカルボニル(boc)基で保護されている任意の天然アミノ酸または人工合成アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は任意で側鎖が保護されていてもよい。カップリング分子の例にはboc-Gly-COOH、Fmoc-Trp-COOHが含まれるが、これに限定されない。カップリング分子の他の態様は、カップリングするとポリマーを形成することができる単量体分子およびその組み合わせ、例えば、ヌクレオチド、糖などを含み、以下で説明される。
【0022】
本明細書で使用する「カップリング」または「カップリングプロセス」または「カップリング工程」という用語は、リンカー分子またはカップリング分子などの2つ以上の分子間で結合を形成するプロセスを指す。結合はペプチド結合などの共有結合でもよい。ペプチド結合は、一方のカップリング分子のカルボキシル基が他方のカップリング分子のアミノ基と反応して水分子(H2O)を放出するときに2つの分子間で形成される化学結合でもよい。これは脱水合成反応(縮合反応とも知られる)であり、通常、アミノ酸間で発生する。結果として生じた-C(=O)NH-結合はペプチド結合と呼ばれ、結果として生じた分子はアミドである。
【0023】
本明細書で使用する「ポリペプチド」、「ペプチド」、または「タンパク質」という用語は、結合によって連結されたアミノ酸の鎖またはポリマーについて述べるために同義に用いられる。従って、本明細書で使用する「ペプチド」という用語は、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、およびポリペプチドを含む。「ペプチド」という用語はアミノ酸の任意の特定の数に限定されない。一部の態様において、ペプチドは約2~約50アミノ酸、約5~約40アミノ酸、または約5~約20アミノ酸を含有する。酵素を含むタンパク質またはポリペプチドなどの分子は、自然の中で天然に発生したことを意味する「天然」または「野生型」分子でもよく、天然分子または別の分子、例えば、変異体から作られている、変えられている、得られているか、何らかの点で異なるか、または変わっていることを意味する「変異体」、「変種」、「誘導体」、または「改変」でもよい。「点変異」は、ペプチド配列中のアミノ酸の中の1個のアミノ酸の変異を指す。
【0024】
本明細書で使用する「バイオマーカー」という用語は、DNA、RNA、タンパク質(例えば、キナーゼなどの酵素)、ペプチド、糖、塩、脂肪、脂質、イオンなどを含むが、これに限定されない。
【0025】
本明細書で使用する「リンカー分子」または「スペーサー分子」という用語は、結果として生じたペプチドにいかなる機能も付け加えないが、ペプチドの間隔をあけ、支持体からペプチドを伸ばし、従って、支持体表面と、成長しているペプチドとの間の距離を広げる任意の分子を含む。これにより、一般的に、ペプチドが関与する反応(単分子フォールディング反応および多分子結合反応を含む)の場合、支持体との立体障害が減り、そのため、ペプチド機能の1つまたは複数の態様を測定するアッセイの成績が改善される。
【0026】
本明細書で使用する「現像剤」という用語は、露光された、または露光されなかった材料を選択的に溶解することができる溶液を指す。典型的には、現像剤は、微量の塩基が添加された水をベースとする溶液である。例には、水をベースとする現像剤に溶解したテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが含まれる。現像剤は、市販のフォトレジストが用いられる初回パターンの画定に用いられる。現像剤の使用は以下の実施例1において説明される。
【0027】
本明細書で使用する「保護基」という用語は、後の化学反応における化学選択性を得るために官能基の化学修飾によって分子に導入された基を含む。「化学選択性」とは、化学反応を望ましい経路に向けて、予め選択された産物を別の産物と比較して得ることを指す。例えば、保護基としてbocを使用すると、光マスクおよび光酸発生剤を用いたペプチド合成の化学選択性によって保護基は選択的に除去され、光マスクによって規定された場所における予め決められた直接的なペプチドカップリング反応の発生が可能になる。
【0028】
本明細書で使用する「マイクロアレイ」、「アレイ」、または「チップ」という用語は、タンパク質または特異的DNA結合配列の複数のプローブ分子が別々の場所に、順序づけられたやり方で付けられており、従って、微小アレイを形成している支持体を指す。タンパク質または特異的DNA結合配列は1つまたは複数の異なるタイプのリンカー分子を介してチップの支持体に結合されてもよい。「チップアレイ」とは、複数のチップ、例えば、24個、96個、または384個のチップを有するプレートを指す。
【0029】
本明細書で使用する「プローブ分子」という用語は、タンパク質、DNA結合配列、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド核酸(「PNA」)、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、ペプチド模倣体、ヌクレオチド模倣体、キレート剤、バイオマーカーなどを指すが、これに限定されない。本明細書で使用する「特徴」という用語は、マイクロアレイに取り付けられている特定のプローブ分子を指す。本明細書で使用する「リガンド」という用語は、1つまたは複数の特徴に結合することができる関心対象の分子、薬剤、分析物、または化合物を指す。
【0030】
本明細書で使用する「マイクロアレイシステム」または「チップアレイシステム」という用語は、通常、ガラス、プラスチック、またはシリコンチップのような固体平面上にフォーマットされたプローブ分子と、試料を扱うために必要とされる機器(自動ロボット工学)、レポーター分子を読み取るために必要とされる機器(スキャナ)、およびデータを解析するために必要とされる機器(生物情報学ツール)からなるシステムを指す。
【0031】
本明細書で使用する「パターン領域」または「パターン」または「場所」という用語は、様々な特徴が成長される支持体上の領域を指す。これらのパターンはフォトマスクを用いて定めることができる。
【0032】
本明細書で使用する「誘導体化」という用語は、表面が生体分子合成に適するように表面を化学修飾するプロセスを指す。典型的には、誘導体化は、以下の工程:支持体を親水性にする工程、アミノシラン基を付加する工程、およびリンカー分子を取り付ける工程を含む。
【0033】
本明細書で使用する「キャッピング」または「キャッピングプロセス」または「キャッピング工程」という用語は、取り付けられた分子のさらなる反応を阻止する分子の付加を指す。例えば、ペプチド結合のさらなる形成を阻止するために、典型的に、無水酢酸分子の存在下でアミノ基がアセチル化によってキャッピングされる。
【0034】
本明細書で使用する「拡散」という用語は、高濃度の領域から低濃度の領域へのランダムな運動を介した、例えば、光酸(photoacid)の広がりを指す。
【0035】
本明細書で使用する「色素分子」という用語は、典型的に、支持体に結合することができる有色物質である色素を指す。色素分子は、アレイ上にある特徴と、リガンド、例えば、関心対象の分子との間の結合の検出において有用であり得る。
【0036】
本明細書で使用する「免疫学的結合」および「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子と、その免疫グロブリンが特異性を示す抗原との間で発生するタイプの非共有結合相互作用を指す。
【0037】
本明細書で使用する「生物学的試料」という用語は、関心対象の分析物または任意のリガンドについてアッセイすることができる生物学的な組織または液体に由来する試料を指す。このような試料には、痰、羊水、血液、血球(例えば、白血球)、組織もしくは細針生検試料、尿、腹水、および胸膜液、またはこれに由来する細胞が含まれるが、これに限定されない。生物学的試料はまた、組織切片、例えば、組織学的目的で採取された凍結切片を含んでもよい。試料は典型的にヒト患者から採取されるが、アッセイは、任意の生物(例えば、哺乳動物、細菌、ウイルス、藻類、もしくは酵母)または哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、およびブタに由来する試料中の関心対象の分析物を検出するのに使用することができる。試料は、必要に応じて、適切な緩衝溶液で希釈することによって調製されてもよく、所望であれば濃縮されてもよい。
【0038】
本明細書で使用する「アッセイ」という用語は、物質の複合混合物を含有し得る溶液中にある関心対象の物質の存在または濃度を測定する生化学的試験の一種を指す。
【0039】
本明細書で使用する「抗原」という用語は、対象の免疫系によって免疫応答、例えば、免疫系による抗体の産生を誘発する分子を指す。抗原は外因性でもよく、内因性でもよく、自己抗原でもよい。外因性抗原とは、吸入、摂取、または注射を介して外部から身体に入った抗原である。内因性抗原とは、正常細胞代謝の結果として、またはウイルス感染もしくは細胞内細菌感染の結果として、以前は正常であった細胞内に発生した抗原である。自己抗原は、宿主体内に存在する正常なタンパク質またはタンパク質複合体であるが、免疫応答を刺激することができる抗原である。
【0040】
本明細書で使用する「エピトープ」または「免疫活性領域」という用語は、適応免疫系の成分、例えば、抗体またはT細胞受容体が結合することができる、抗原の別個の分子表面特徴を指す。抗原分子は、特異的な抗体の相互作用点として作用し得る、いくつかの表面特徴を提示し得る。このような別個の分子特徴は全てエピトープを構成し得る。従って、抗原には、いくつかの別個の抗体が結合する能力があり、これらの抗体はそれぞれ特定のエピトープに特異的である。
【0041】
本明細書で使用する「抗体」または「免疫グロブリン分子」という用語は、特定のタイプの免疫系細胞:B細胞によって天然に分泌される分子を指す。抗体には5つの異なる天然アイソタイプ、すなわち、IgA、IgM、IgG、IgD、およびIgEがある。
【0042】
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列の状況でのパーセント「同一性」という用語は、下記の配列比較アルゴリズムの1つ(例えば、当業者が利用可能なBLASTPおよびBLASTNもしくは他のアルゴリズム)を用いて、または目視検査によって測定されたときに、最大限一致するように比較およびアラインメントされたときに同一である特定のパーセントのヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。用途に応じて、パーセント「同一性」は、比較されている配列の領域にわたって、例えば、機能ドメインにわたって存在してもよく、比較しようとする2つの配列の完全長にわたって存在してもよい。
【0043】
配列比較の場合、典型的には、ある配列が参照配列として働き、参照配列と試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列はコンピュータに入力され、必要に応じて、部分配列の座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて参照配列と比較して試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0044】
比較のための最適な配列アラインメントは、例えば、Smith & Waterman Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性手法のための検索、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wisの中のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視検査によって行うことができる(概して、Ausubel et al., 下記を参照されたい)。
【0045】
パーセント配列同一性および配列類似性を求めるのに適したアルゴリズムの一例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載のBLASTアルゴリズムである。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイトから公的に入手することができる。
【0046】
明細書および添付の特許請求の範囲において用いられる、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきり規定されていない限り複数の指示物を含むことに留意しなければならない。
【0047】
組成物
支持体
支持体も本明細書において開示される。一部の態様において、支持体は平面(例えば、2次元)層を含む。一部の態様において、支持体の表面は、分子、例えば、ペプチド、または第1の単量体基本要素を取り付けまたは合成するためのピラーを含む。他の態様において、支持体は、第1の単量体基本要素を結合するための官能基を含む多孔(すなわち、3次元)層を含む。一部の態様において、多孔層はピラーの上部に付加される。一部の態様において、支持体は、平面層に連結された多孔層を含む。他の態様において、支持体は、平面層に連結された複数のピラーを含む。
【0048】
一部の態様において、平面層は、任意の金属またはプラスチックまたはケイ素または酸化ケイ素または窒化ケイ素を含んでもよい。一部の態様において、平面層は上面および下面を有する。一部の態様において、支持層は1,000~2,000オングストローム厚である。一部の態様において、平面層は、約500オングストローム厚、1,000オングストローム厚、2,000オングストローム厚、3,000オングストローム厚、4,000オングストローム厚、5,000オングストローム厚、6,000オングストローム厚、7,000オングストローム厚、8,000オングストローム厚、9,000オングストローム厚、10,000オングストローム厚、11,000オングストローム厚、12,000オングストローム厚より薄いか、もしくは12,000オングストローム厚より厚い(またはその間の任意の整数より薄いか、もしくは厚い)。一部の態様において、金属はクロムである。一部の態様において、金属は、クロム、チタン、アルミニウム、タングステン、金、銀、スズ、鉛、タリウム、インジウム、またはその組み合わせである。一部の態様において、平面層は少なくとも98.5~99%の金属である。一部の態様において、平面層は100%の金属である。一部の態様において、平面層は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、または99%を超える金属である。一部の態様において、平面層は均一な金属層である。
【0049】
一部の態様において、支持体表面は遊離カルボン酸基で誘導体化される。他の態様において、支持体表面は遊離アミン基で誘導体化される。さらに他の態様では、支持の表面は、固相合成のために他の遊離官能基で誘導体化される。遊離アミン基で誘導体化された表面は、アミンを、少なくとも2個の遊離カルボン酸基を有する分子の1個のカルボン酸基と反応させることによって遊離カルボン酸基に変換することができる。例えば、カルボジイミドを用いることによって、最初に1個のカルボン酸基が活性化されて中間体O-アシルイソウレアを形成し、次いで、中間体O-アシルイソウレアはアミド結合のために遊離アミン基とさらに反応し、支持体の表面に取り付けられる。一部の態様において、複数のカルボン酸基を有する分子には、無水コハク酸、ポリエチレングリコール二酸(diacid)、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、およびカルボキシメチルデキストランが含まれるが、これに限定されない。例えば、遊離カルボン酸または遊離アミン基は、ペプチド合成およびタンパク質カップリングの間にアミノ酸、ペプチド、またはタンパク質に結合する。別の例において、遊離官能基は、支持体に他のプローブ分子またはバイオマーカーをカップリングする(「つなぐ(link)」)リンカー分子に結合する。一部の態様において、カップリング分子が少なくとも1つのピラーの表面に取り付けられる。他の態様において、カップリング分子がそれぞれのピラーの表面に取り付けられる。
【0050】
一部の態様において、ポリマーは前記ピラーの少なくとも1つの表面と接触している。他の態様において、ポリマーはそれぞれのピラーの表面と接触している。一部の態様において、ゼラチン状のポリマーが前記ピラーの少なくとも1つの表面と接触している。一部の態様において、固体状の水溶性ポリマーが前記ピラーの少なくとも1つの表面と接触している。
【0051】
一部の態様において、表面を、光活性化合物、カップリング分子、カップリング試薬、ポリマー、および溶媒を含む光活性カップリング製剤と接触させるために、支持体表面は二酸化ケイ素を含み、接触後に、表面の上部に位置しかつ光活性カップリング製剤と接触している、位置が定められた場所に紫外線が当てられる。
【0052】
一部の態様において、支持体表面は、剛性または半剛性を有する材料または材料群である。一部の態様において、支持体表面は実質的に平らでもよいが、一部の態様では、例えば、ウェル、一段高い領域、ピン、ピラー、エッチングされた溝などで、異なる分子または特徴のための合成領域を物理的に分離することが望ましい場合がある。ある特定の態様において、支持体表面は多孔性でもよい。表面材料は、例えば、ケイ素、生体適合性ポリマー、例えば、ポリ(メチル-メタクリレート)(PMMA)およびポリジメチルシロキサン(PDMS)、ガラス、SiO2(例えば、半導体産業において用いられる熱酸化物シリコンウェーハ)、石英、窒化ケイ素、官能化ガラス、金、白金、ならびにアルミニウムを含んでもよい。
【0053】
誘導体化支持体表面には、例えば、アミノ誘導体化ガラス、カルボキシ誘導体化ガラス、およびヒドロキシル誘導体化ガラスが含まれる。さらに、表面は任意で、分子の取り付けもしくは誘導体化、反応性の増加もしくは減少、結合検出、または他の特殊用途のために、第2の表面を設けるための1つまたは複数の層でコーティングされてもよい。支持体表面の材料および/または層は多孔性でも非多孔性でもよい。例えば、支持体の表面は多孔性ケイ素を含む。
【0054】
ピラー支持体
一部の態様において、支持体は、金属を含み上面および下面を有する平面層;ならびに平面層の、位置が定められた場所に機能的に連結された複数のピラーを備える。ここで、それぞれのピラーは、平面層から伸ばされた平らな表面を有し、それぞれのピラーの表面と平面層の上面との間の距離は約1,000~5,000オングストロームであり、複数のピラーは約10,000/cm2を超える密度で存在する。他の態様において、それぞれのピラーの表面と平面層の上面との間の距離は、約1,000オングストローム、2,000オングストローム、3,000オングストローム、3,500オングストローム、4,500オングストローム、5,000オングストロームより短くてもよく、または5,000オングストロームより長くてもよい(またはその間の任意の整数より長くてもよく、短くてもよい)。
【0055】
一部の態様において、それぞれのピラーの表面は平面層の上面と平行である。一部の態様において、それぞれのピラーの表面は平面層の上面と実質的に平行である。
【0056】
一部の態様において、それぞれのピラーの表面と平面層の下面との間の距離は2,000~7,000オングストロームである。他の態様において、それぞれのピラーの表面と平面層の下面との間の距離は、約500オングストローム、1,000オングストローム、2,000オングストローム、3,000オングストローム、4,000オングストローム、5,000オングストローム、6,000オングストローム、7,000オングストローム、8,000オングストローム、9,000オングストローム、10,000オングストローム、11,000オングストローム、12,000オングストロームより短いか、もしくは12,000オングストロームより長い(またはその間の任意の整数より短いか、もしくは長い)。さらに他の態様では、それぞれのピラーの表面と平面層の下面との間の距離は、7,000オングストローム、3,000オングストローム、4,000オングストローム、5,000オングストローム、6,000オングストローム、または7,000オングストローム(またはその間の任意の整数)である。
【0057】
一部の態様において、複数のピラーは、500/cm2、1,000/cm2、2,000/cm2、3,000/cm2、4,000/cm2、5,000/cm2、6,000/cm2、7,000/cm2、8,000/cm2、9,000/cm2、10,000/cm2、11,000/cm2、もしくは12,000/cm2(またはその間の任意の整数)を超える密度で存在する。他の態様において、複数のピラーは10,000/cm2を超える密度で存在する。さらに他の態様では、複数のピラーは約10,000/cm2~約250万/cm2(またはその間の任意の整数)の密度で存在する。一部の態様において、複数のピラーは250万/cm2を超える密度で存在する。
【0058】
一部の態様において、それぞれのピラー表面の表面積は少なくとも1μm2である。他の態様において、それぞれのピラー表面の表面積は、少なくとも0.1μm2、0.5μm2、12μm2、3μm2、4μm2、5μm2、6μm2、7μm2、8μm2、9μm2、10μm2、15μm2、20μm2、25μm2、30μm2、35μm2、40μm2、45μm2、もしくは50μm2(またはその間の任意の整数)でもよい。さらに他の態様では、それぞれのピラー表面の表面積は10,000μm2未満の総面積を有する。さらに他の態様では、それぞれのピラー表面の表面積は、500μm2、1,000μm2、2,000μm2、3,000μm2、4,000μm2、5,000μm2、6,000μm2、7,000μm2、8,000μm2、9,000μm2、10,000μm2、11,000μm2、もしくは12,000μm2(またはその間の任意の整数)より小さい総面積を有する。一部の態様において、それぞれのピラーの表面は形が正方形または長方形である。
【0059】
一部の態様において、それぞれのピラーの中心は他の任意のピラーの中心から少なくとも2,000オングストローム離れている。他の態様において、それぞれのピラーの中心は他の任意のピラーの中心から少なくとも約500オングストローム、1,000オングストローム、2,000オングストローム、3,000オングストローム、もしくは4,000オングストローム(またはその間の任意の整数)離れている。さらに他の態様では、それぞれのピラーの中心は他の任意のピラーの中心から少なくとも約2μm~200μm離れている。
【0060】
一部の態様において、少なくとも1つのピラーまたはそれぞれのピラーはケイ素を含む。他の態様において、少なくとも1つのピラーまたはそれぞれのピラーは二酸化ケイ素または窒化ケイ素を含む。これらの態様の一部において、少なくとも1つのピラーまたはそれぞれのピラーは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、または99%の二酸化ケイ素である。
【0061】
一部の態様において、平面層の金属はクロムである。他の態様において、金属は、クロム、チタン、アルミニウム、タングステン、金、銀、スズ、鉛、タリウム、インジウム、またはその組み合わせである。一部の態様において、平面層は少なくとも98.5~99(重量)%の金属である。他の態様において、平面層は100%の金属である。さらに他の態様では、平面層は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、または99%を超える金属である。一部の態様において、平面層は均一な金属層である。
【0062】
一部の態様において、支持体の前記ピラーの少なくとも1つの表面は誘導体化される。一部の態様において、支持体は、前記ピラーの少なくとも1つの表面に取り付けられたポリマー鎖を含んでもよい。一部の態様において、ポリマー鎖はペプチド鎖を含む。一部の態様において、前記少なくとも1つのピラーの表面への取り付けは共有結合を介したものである。
【0063】
一部の態様において、支持体は二酸化ケイ素層に連結されてもよい。二酸化ケイ素層は約0.5μm~3μm厚でもよい。一部の態様において、支持体は、ウェーハ、例えば、シリコンウェーハに連結されてもよい。シリコンウェーハは約700μm~750μm厚でもよい。
【0064】
多孔層支持体
別の態様において、支持体は、複数のピラーに連結された多孔層を含み、多孔層は、分子を支持体に取り付けるための官能基を含み、平面層の、位置が定められた場所に複数のピラーが連結され、それぞれのピラーは、それぞれのピラーの表面と平面層の上面との間の約1,000~5,000オングストロームの距離だけ平面層から伸ばされた平らな表面を有し、複数のピラーは約10,000/cm2を超える密度で存在する。
【0065】
使用することができる多孔層は、第1のペプチド基本要素を取り付けるために(構成要素ポリマーに固有の、または多孔層に導入された)カルボン酸官能基を有する多孔構造からなる平らな透過性ポリマー材料である。例えば、多孔層は多孔性ケイ素からなってもよく、多孔性ケイ素の表面にはポリマー基本要素を取り付けるための官能基が取り付けられている。別の例において、多孔層は架橋ポリマー材料からなってもよい。一部の態様において、多孔層は、ポリスチレン、サッカロース、デキストラン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロルピロリドン(polyacrylolpyrrolidone)、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、アガロース、セファロース、他の従来のクロマトグラフィー型材料、ならびにその誘導体および混合物を使用することができる。一部の態様において、多孔層構成材料は、ポリ(ビニルアルコール)、デキストラン、アルギン酸ナトリウム、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸)-ナトリウム塩、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、多糖類、およびセルロース誘導体より選択される。好ましくは、多孔層の多孔度は10~80%である。一つの態様において、多孔層の厚さは0.01μm~約1,000μmである。多孔層に含まれる孔径は2nm~約100μmでもよい。
【0066】
別の態様において、多孔層は多孔度が10~80%の多孔性ポリマー材料を含み、反応基が孔表面に化学結合されており、例えば、反応種、例えば、脱保護された単量体基本要素またはポリマー鎖と化学結合することによって、相互作用する用途に適合されている。一つの態様において、反応基は遊離カルボン酸または遊離アミン基である。例えば、カルボン酸基は、ペプチド合成のためにアミノ酸、ペプチド、またはポリペプチドの保護されていないアミン基に結合するように遊離している。
【0067】
リンカー分子
一部の態様において、支持体表面は複数のリンカー分子にカップリングされる。リンカー分子は、本明細書において開示された支持体表面と、第1のカップリング分子、例えば、合成されているペプチドのN末端アミノ酸との間に挿入される分子である。リンカー分子は、必ずしも、結果として生じたペプチドに分子認識機能などの機能をもたらすとは限らず、その代わりに、表面にあるペプチドの機能領域の露出を高めるために、表面と合成されたペプチドとの間の距離を延ばすことができる。
【0068】
一部の態様において、リンカーは、露出させるために約4~約40原子の長さでもよい。リンカー分子は、例えば、アリールアセチレン、2~10個の単量体単位を含有するエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、およびその組み合わせでもよい。ジアミンの例にはエチレンジアミンおよびジアミノプロパンが含まれる。または、リンカーは、合成されている分子(例えば、新生ポリマーまたは様々なカップリング分子)と同じ分子タイプ、例えば、ポリペプチドおよびアミノ酸誘導体のポリマー、例えば、アミノヘキサン酸でもよい。一部の態様において、リンカー分子は、分子の第1の末端にカルボキシル基を有し、分子の第2の末端に保護基を有する分子である。一部の態様において、保護基はboc保護基またはFmoc保護基である。一部の態様において、リンカー分子は、アリール-アセチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、新生ポリペプチド、ジアミン、二酸、ペプチド、またはその組み合わせを含む。
【0069】
リンカー分子の結合されていない部分、すなわちリンカー分子の遊離末端は、除去可能な保護基、例えば、前述のbocまたはFmocによって、ブロックされている、保護されている、または他の方法で反応に利用できないようにされている反応性官能基を有してもよい。保護基は、単量体、ポリマー、またはリンカー分子にある反応性官能基を保護するために単量体、ポリマー、またはリンカー分子に結合されてもよい。使用することができる保護基は、全ての酸不安定保護基および塩基不安定保護基を含む。例えば、ペプチドアミン基は、両方とも酸不安定性であるtert-ブチルオキシカルボニル(boc)またはベンジルオキシカルボニル(CBZ)によって保護されてもよく、塩基不安定性である9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)によって保護されてもよい。
【0070】
使用することができる、さらなる保護基には、アミノ部分を保護するための酸不安定基:tert-アミルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、1-メチルシクロブチルオキシカルボニル、2-(p-ビフェニル)プロピル(2)オキシカルボニル、2-(p-フェニルアゾフェニルイル)プロピル(2)オキシカルボニル、α,α-ジメチル-3,5-ジメチルオキシベンジルオキシ-カルボニル、2-フェニルプロピル(2)オキシカルボニル、4-メチルオキシベンジルオキシカルボニル、フルフリルオキシカルボニル、トリフェニルメチル(トリチル)、p-トルエンスルフェニルアミノカルボニル、ジメチルホスフィノチオイル、ジフェニルホスフィノチオイル、2-ベンゾイル-1-メチルビニル、o-ニトロフェニルスルフェニル、および1-ナフチリデン;アミノ部分を保護するための塩基不安定基:9フルオレニルメチルオキシカルボニル、メチルスルホニルエチルオキシカルボニル、および5-ベンズイソアゾイルメチレンオキシカルボニル;還元されたときに不安定になるアミノ部分を保護するための基:ジチアスクシノイル、p-トルエンスルホニル、およびピペリジノ-オキシカルボニル;酸化されたときに不安定になるアミノ部分を保護するための基:(エチルチオ)カルボニル;多種多様な試薬に対して不安定なアミノ部分を保護するための基、適切な薬剤を基の後にある括弧の中に示した:フタロイル(ヒドラジン)、トリフルオロアセチル(ピペリジン)、およびクロロアセチル(2-アミノチオフェノール);カルボン酸を保護するための酸不安定基:tert-ブチルエステル;ヒドロキシル基を保護するための酸不安定基:ジメチルトリチルが含まれる(Greene, T. W., Protective Groups in Organic Synthesis, Wiley-Interscience, NY, (1981)も参照されたい)。
【0071】
一部の態様において、リンカー分子はシラン-(boc)であり、式中、(boc)はtert-ブチルオキシカルボニル保護基を表す。一部の態様において、リンカー分子はシラン-Gly-PEG(boc)である。一部の態様において、リンカー分子はシラン-Gly-PEG-PEG(boc)である。一部の態様において、リンカー分子はシラン-Gly-(PEG(boc))2である。一部の態様において、リンカー分子はシラン-PEG-Gly(boc)である。一部の態様において、リンカー分子はシラン-Gly-cyc-PEG(boc)であり、式中、Gly-cycは、環式グリシン鎖コンホメーションを有するグリシン鎖を表す。一部の態様において、リンカー分子はシラン-Gly-(PEG(boc))4である。
【0072】
一部の態様において、前記ピラー支持体のそれぞれのピラーの表面に取り付けられるリンカー分子は遊離アミン基または遊離カルボン酸基を含む。他の態様において、ピラー支持体の少なくとも1つのピラーの表面に取り付けられるリンカー分子は遊離アミン基または遊離カルボン酸基を含む。一部の態様において、保護基を有するリンカー分子が、それぞれのピラーの表面に取り付けられる。他の態様において、保護基を有するリンカー分子が少なくとも1つのピラーの表面に取り付けられる。
【0073】
リンカー製剤
リンカー分子を支持体と反応させるのに用いられるリンカー製剤も本明細書において開示される。リンカー製剤は、リンカー分子、ポリマー、溶媒、およびカップリング試薬などの成分を含んでもよい。
【0074】
一部の態様において、リンカー分子は製剤総濃度の約0.5~5重量%である。一部の態様において、リンカー分子は製剤総濃度の約0.1重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.0重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3.0重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4.0重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%、5.0重量%より少ないか、または5.0重量%より多い。
【0075】
一部の態様において、ポリマーは1重量%ポリビニルアルコールおよび2.5重量%ポリビニルピロリドンであり、リンカー分子は1.25重量%ポリエチレンオキシドであり、カップリング試薬は1重量%1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドであり、溶媒は水を含む。一部の態様において、ポリマーは0.5~5重量%ポリビニルアルコールおよび0.5~5重量%ポリビニルピロリドンであり、リンカー分子は0.5~5重量%ポリエチレンオキシドであり、カップリング試薬は0.5~5重量%1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミドであり、溶媒は水を含む。
【0076】
一部の態様において、ポリマーはポリビニルピロリドンおよび/またはポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールの一般構造は以下の通りであり:
式中、nは、1より大きな任意の正の整数である。
【0077】
一部の態様において、ポリマーは製剤総濃度の約0.5~5重量%である。一部の態様において、水溶性ポリマーは製剤総濃度の約0.1重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3.重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.0重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3.0重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4.0重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%、5.0重量%より少ないか、または5.0重量%より多い。
【0078】
一部の態様において、溶媒は、水、有機溶媒、またはその組み合わせである。一部の態様において、有機溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、またはその組み合わせである。一部の態様において、溶媒は製剤総濃度の約80~90重量%である。一部の態様において、溶媒は、製剤総濃度の約70重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%、75重量%、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%、94重量%、95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%より少ないか、または99重量%より多い。
【0079】
一部の態様において、カップリング試薬はカルボジイミドである。一部の態様において、カップリング試薬は水溶性トリアゾールである。一部の態様において、カップリング試薬は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドである。一部の態様において、カップリング試薬は製剤総濃度の約0.5~5重量%である。一部の態様において、カップリング試薬は、製剤総濃度の約0.1重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3.重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%、2.0重量%、2.1重量%、2.2重量%、2.3重量%、2.4重量%、2.5重量%、2.6重量%、2.7重量%、2.8重量%、2.9重量%、3.0重量%、3.1重量%、3.2重量%、3.3重量%、3.4重量%、3.5重量%、3.6重量%、3.7重量%、3.8重量%、3.9重量%、4.0重量%、4.1重量%、4.2重量%、4.3重量%、4.4重量%、4.5重量%、4.6重量%、4.7重量%、4.8重量%、4.9重量%、5.0重量%より少ないか、または5.0重量%より多い。
【0080】
マイクロアレイ
マイクロアレイも本明細書において開示される。マイクロアレイ(「チップ」)の態様は、支持体表面の、位置が定められた場所に取り付けられた支持体および特徴を含む。
【0081】
一部の態様において、マイクロアレイは、位置が定められた場所が2次元面を占める二次元アレイを含む。例えば、それぞれの特徴は、決定可能な配列および意図された長さのペプチド鎖のコレクションを含んでもよい。ここで、独特の特徴の中で、意図された長さを有する前記コレクションの中にあるペプチド鎖の一部分は、約98%のそれぞれのカップリング工程の平均カップリング効率を特徴とする。一部の態様において、それぞれのカップリング工程の平均カップリング効率は少なくとも98.5%である。一部の態様において、それぞれのカップリング工程の平均カップリング効率は少なくとも99%である。一部の態様において、それぞれのカップリング工程の平均カップリング効率は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%である。
【0082】
一部の態様において、支持体表面に取り付けられる特徴は、タンパク質、DNA結合配列、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド核酸、デオキシリボ核酸、リボ核酸、ペプチド模倣体、ヌクレオチド模倣体、キレート剤、バイオマーカーなどからなる群より選択される。
【0083】
一部の態様において、マイクロアレイの支持体表面は、ポリペプチド合成のために遊離アミンまたは遊離カルボン酸によって官能化される。一部の態様において、遊離カルボン酸は、例えば、マイクロアレイ表面上でのポリペプチド合成の間に、アミン基に結合するように活性化される。
【0084】
一部の態様において、マイクロアレイ上の特徴の表面密度は、10/cm2、100/cm2、1,000/cm2、10,000/cm2、100,000/cm2、1,000,000/cm2、10,000,000/cm2または20,000,000/cm2より大きい。一部の態様において、マイクロアレイ上の特徴の総数は、少なくとも約100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、800,000、900,000、1,000,000、2,000,000、3,000,000、4,000,000、5,000,000、6,000,000、7,000,000、8,000,000、10,000,000、12,000,000、14,000,000、16,000,000、または18,000,000である。他の態様において、マイクロアレイのサイズは、0.1平方ミリメートル、0.2平方ミリメートル、0.3平方ミリメートル、0.4平方ミリメートル、0.5平方ミリメートル、0.6平方ミリメートル、0.7平方ミリメートル、0.8平方ミリメートル、0.9平方ミリメートル、1平方ミリメートル、2平方ミリメートル、3平方ミリメートル、4平方ミリメートル、5平方ミリメートル、6平方ミリメートル、7平方ミリメートル、8平方ミリメートル、9平方ミリメートル、10平方ミリメートル、15平方ミリメートル、20平方ミリメートル、25平方ミリメートル、30平方ミリメートル、35平方ミリメートル、40平方ミリメートル、45平方ミリメートル、50平方ミリメートル、55平方ミリメートル、60平方ミリメートル、65平方ミリメートル、70平方ミリメートル、75平方ミリメートル、80平方ミリメートル、85平方ミリメートル、90平方ミリメートル、95平方ミリメートル、100平方ミリメートル、110平方ミリメートル、120平方ミリメートル、130平方ミリメートル、140平方ミリメートル、150平方ミリメートル、160平方ミリメートル、170平方ミリメートル、180平方ミリメートル、190平方ミリメートル、200平方ミリメートル、250平方ミリメートル、300平方ミリメートル、400平方ミリメートル、500平方ミリメートル、600平方ミリメートル、700平方ミリメートル、800平方ミリメートル、900平方ミリメートル、もしくは1,000平方ミリメートルより少ないか、またはこれに等しい。
【0085】
一部の態様において、マイクロアレイは、三次元アレイ、例えば、多孔層を備え、特徴が多孔層の表面に取り付けられている支持体でもよい。一部の態様において、多孔層の表面は、外面および多孔層内の孔容積を規定する表面を含む。一部の態様において、三次元マイクロアレイは、表面の、位置が定められた場所に取り付けられた特徴を含んでもよい。前記特徴はそれぞれ、決定可能な配列および意図された長さのペプチド鎖のコレクションを含む。一つの態様において、独特の特徴の中で、意図された長さを有する前記コレクションの中にあるペプチド鎖の一部分は、98%を超えるそれぞれのカップリング工程の平均カップリング効率を特徴とする。一部の態様において、それぞれのカップリング工程の平均カップリング効率は、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%である。
【0086】
一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は長さが5~60アミノ酸である。一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は長さが少なくとも5アミノ酸である。一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は長さが少なくとも5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、50アミノ酸、55アミノ酸、または60アミノ酸である。一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は長さが5アミノ酸より少ないか、少なくとも5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、25アミノ酸、26アミノ酸、27アミノ酸、28アミノ酸、29アミノ酸、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸、40アミノ酸、41アミノ酸、42アミノ酸、43アミノ酸、44アミノ酸、45アミノ酸、46アミノ酸、47アミノ酸、48アミノ酸、49アミノ酸、50アミノ酸、51アミノ酸、52アミノ酸、53アミノ酸、54アミノ酸、55アミノ酸、56アミノ酸、57アミノ酸、58アミノ酸、59アミノ酸、60アミノ酸であるか、または60アミノ酸より多い。一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は1つまたは複数のLアミノ酸を含む。一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は1つまたは複数のDアミノ酸を含む。一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は1つまたは複数の天然アミノ酸を含む。一部の態様において、それぞれのペプチド鎖は1つまたは複数の合成アミノ酸を含む。
【0087】
一部の態様において、マイクロアレイは、表面に取り付けられた少なくとも1,000の異なるペプチド鎖を含んでもよい。一部の態様において、マイクロアレイは、表面に取り付けられた少なくとも10,000の異なるペプチド鎖を含んでもよい。一部の態様において、マイクロアレイは、表面に取り付けられた少なくとも100、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10,000の、もしくは10,000(またはその間の任意の整数)より多い異なるペプチド鎖を含んでもよい。
【0088】
一部の態様において、マイクロアレイは、複数の異なるタイプのリンカー分子に取り付けられた1種類のタンパク質、ペプチド鎖、または抗体を含んでもよい。一部の態様において、マイクロアレイは少なくとも2つの異なるタイプのリンカー分子を含んでもよい。一部の態様において、マイクロアレイは、支持体に取り付けられた少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75の、または100より多い異なるタイプのリンカー分子を含んでもよい。
【0089】
一部の態様において、位置が定められた場所はそれぞれ、他の位置が定められた場所のそれぞれと物理的に分離された異なる既知の場所にある。一部の態様において、位置が定められた場所はそれぞれ、位置が区別できる場所である。一部の態様において、それぞれの決定可能な配列は既知配列である。一部の態様において、それぞれの決定可能な配列は別個の配列である。
【0090】
一部の態様において、特徴は表面に共有結合的に取り付けられる。一部の態様において、前記ペプチド鎖はリンカー分子またはカップリング分子を介して表面に取り付けられる。
【0091】
一部の態様において、前記特徴は、既知配列を有する供給源タンパク質に由来する部分配列を含む複数の別個の入れ子状の重複ペプチド鎖を含む。一部の態様において、複数の重複ペプチド鎖の中にある、それぞれのペプチド鎖は実質的に同じ長さである。複数の重複ペプチド鎖の中にある、それぞれのペプチド鎖は同じ長さである。一部の態様において、複数の重複ペプチド鎖の中にある、それぞれのペプチド鎖は長さが少なくとも5アミノ酸である。一部の態様において、複数の重複ペプチド鎖の中にある、それぞれのペプチド鎖は長さが少なくとも5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、50アミノ酸、55アミノ酸、または60アミノ酸である。一部の態様において、複数の重複ペプチド鎖の中にある、それぞれのペプチド鎖は長さが5アミノ酸より短いか、少なくとも5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、25アミノ酸、26アミノ酸、27アミノ酸、28アミノ酸、29アミノ酸、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸、40アミノ酸、41アミノ酸、42アミノ酸、43アミノ酸、44アミノ酸、45アミノ酸、46アミノ酸、47アミノ酸、48アミノ酸、49アミノ酸、50アミノ酸、51アミノ酸、52アミノ酸、53アミノ酸、54アミノ酸、55アミノ酸、56アミノ酸、57アミノ酸、58アミノ酸、59アミノ酸、60アミノ酸であるか、または60アミノ酸より長い。一部の態様において、複数の重複ペプチド鎖の中にある少なくとも1つのペプチド鎖は長さが少なくとも5アミノ酸である。一部の態様において、複数の重複ペプチド鎖の中にある少なくとも1つのペプチド鎖は長さが少なくとも5アミノ酸、10アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、50アミノ酸、55アミノ酸、または60アミノ酸である。一部の態様において、複数の重複ペプチド鎖の中にある少なくとも1つのペプチド鎖は長さが5アミノ酸より短いか、少なくとも5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、10アミノ酸、11アミノ酸、12アミノ酸、13アミノ酸、14アミノ酸、15アミノ酸、16アミノ酸、17アミノ酸、18アミノ酸、19アミノ酸、20アミノ酸、21アミノ酸、22アミノ酸、23アミノ酸、24アミノ酸、25アミノ酸、26アミノ酸、27アミノ酸、28アミノ酸、29アミノ酸、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸、40アミノ酸、41アミノ酸、42アミノ酸、43アミノ酸、44アミノ酸、45アミノ酸、46アミノ酸、47アミノ酸、48アミノ酸、49アミノ酸、50アミノ酸、51アミノ酸、52アミノ酸、53アミノ酸、54アミノ酸、55アミノ酸、56アミノ酸、57アミノ酸、58アミノ酸、59アミノ酸、60アミノ酸であるか、または60アミノ酸より長い。一部の態様において、特徴の中にある、それぞれのポリペプチドは実質的に同じ長さである。一部の態様において、特徴の中にある、それぞれのポリペプチドは同じ長さである。一部の態様において、特徴は複数のペプチド鎖を含み、それぞれのペプチド鎖はアミノ酸のランダムな決定可能な配列を有する。
【0092】
チップアレイ
チップアレイも本明細書において開示される。一部の態様において、チップアレイは、支持層または支持板の上にあるマイクロアレイ(「チップ」)の二次元アレイである。チップアレイの一部の態様において、それぞれのチップは1種類のタンパク質または抗体しか含まない。他の態様において、それぞれのチップは、複数種のタンパク質、抗体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、ペプチド核酸(「PNA」)、プローブ分子などを含む。一部の態様において、チップは96ウェルプレート上に実装される。一部の態様において、チップをウェーハに取り付けるためにエポキシが用いられる。一部の態様において、支持層はピラーのアレイであり、それぞれのピラーに1個のチップまたは複数のチップが取り付けられる。支持層のこれらのピラーは巨視的スケールのピラーであり、前記の支持体ピラーと区別しなければならない。他の態様において、チップは、ピラープレート上のピラーに付着するキャップに取り付けられる。
【0093】
一つの態様において、チップが、支持層であるシリコンウェーハ上に形成され、次いで、様々な寸法の複数のチップに分割される(
図1)。一部の態様において、それぞれのチップの寸法は1mmx1mmから2cm~2cmまでである。一部の態様において、ウェーハ上に形成され、複数のチップに分割されたチップは24ウェルプレート、96ウェルプレート、192ウェルプレート、もしくは384ウェルプレート、または他の任意のオーダーメイドプレートとぴったり合う。一部の態様において、これらのプレートには、それぞれのチップの容器として働く複数のウェルがある。一部の態様において、プレートは、タンパク質間相互作用アッセイまたは他の酵素反応などのインビトロ診断に用いられる。
【0094】
ロボットチップアレイシステム
チップアレイとロボットシステムを用いてアッセイを行うためのフローチャートを
図1に示した。一部の態様において、アッセイステーションは、チップアレイ上でのリキッドハンドリングを行うために自動化される。一部の態様において、リキッドハンドリングアッセイステーションは、複数のチップを保持する標準的なウェルプレートまたはオーダーメイドウェルプレートを使用することができる任意の市販のものである。リキッドハンドリングアッセイステーションを用いてアッセイが行われた後に、チップは任意の市販の共焦点スキャナまたはCCDスキャナを用いてスキャンされる。一部の態様において、共焦点スキャナは、支持体に装填された複数のチップをスキャンする。一部の態様において、共焦点スキャナからのデータはVibrant Bio Analyzerによって解析される。
【0095】
一部の態様において、1個またはいくつかのオートローダユニットがプレートをリキッドハンドリングアッセイステーションに送り込む。アッセイが行われたら、チップはオートローダを用いて共焦点スキャナによってスキャンされる。一部の態様において、オートローダがチップアレイを1つまたは複数のスキャナに移すことができるようにするために、1個またはいくつかの共焦点スキャナはオートローダに接続される。チップアレイ解析プロセスの一例を図示したフローチャートを
図2に示した。
【0096】
図3は、チップのパッケージングプロセスを図示し、以下の工程を含む:品質管理された処理済みウェーハをチップに分割する工程、分割されたウェーハから分割されたチップを選び取り、テープの上に置く工程、テープからチップを選び取る工程、接着剤を用いてチップをピラープレート上に取り付ける工程、および将来使用できるように、チップがそれぞれのピラーに取り付けられているピラープレートを保管する工程。
【0097】
図4は、それぞれのプレートにチップが取り付けられているピラープレートのバイオアッセイプロセスを図示し、以下の工程を含む:メタノールが充填された第1のウェルプレートの中にピラープレートを入れ、洗浄する工程、第1のウェルプレートからピラープレートを拾い上げ、洗浄のためにTBSが充填された第2のウェルプレートに運ぶ工程。第3の工程では、このプロセスは、一次抗体とのインキュベーションのためにピラープレートを第3のウェルプレートに入れた後に、ピラープレートを、PBSTを含有する第4のウェルプレートに入れて洗浄する。次の工程は、二次抗体とのインキュベーションのためにピラープレートを第5のウェルプレートに入れた後に、ピラープレートを、PBSTを含む第6のウェルプレートに入れて洗浄し、次いで、DI水を含む第7のウェルプレートに入れて洗浄した後に、さらなる解析のために窒素でピラープレートを乾燥させる工程を含む。
【0098】
図5は、アッセイされたチップのスキャニングプロセスを図示し、以下の工程を含む:チップがきれいでありかつスキャニングの準備ができているかどうかを確かめるために顕微鏡下でチップをチェックする工程、チップが汚染されていることが確かめられたらチップをDI水で洗浄する工程、チップに位置するそれぞれの特徴のシグナル強度を求めるために、共焦点スキャナ顕微鏡を用いてチップをスキャンする工程。
【0099】
方法
支持体を製造する方法
支持体を作るための方法も本明細書において開示される。一部の態様において、支持体を生成する方法は多孔層を支持層にカップリングする工程を含んでもよい。支持層は、任意の金属またはプラスチックまたはシリコンまたは酸化ケイ素または窒化ケイ素を含んでもよい。一つの態様において、支持体は、ペプチド合成およびタンパク質カップリングの間にペプチドを結合するために支持体に取り付けられた複数のカルボン酸支持体を含む。一部の態様において、支持体を生成する方法は、多孔層を複数の支持体ピラーにカップリングする工程を含んでもよく、多孔層は化合物を支持体に取り付けるための官能基を含み、ここで、平面層の、位置が定められた場所に複数の支持体ピラーが取り付けられ、それぞれの支持体ピラーは、平面層から伸ばされた平らな表面を有し、それぞれの支持体ピラーの表面と平面層の上面との間の距離は約1,000~5,000オングストロームであり、複数の支持体ピラーは約10,000/cm2を超える密度で存在する。
【0100】
一部の態様において、それぞれの支持体ピラーの表面は平面層の上面と平行している。一部の態様において、それぞれの支持体ピラーの表面は平面層の上面と実質的に平行している。
【0101】
一部の態様において、支持体の表面を調製する方法は、二酸化ケイ素を含む表面を得る工程、ならびに表面を、光活性化合物、カップリング分子、カップリング試薬、ポリマー、および溶媒を含む光活性カップリング製剤と接触させる工程;ならびに表面の上部に位置しかつ光活性製剤と接触している、位置が定められた場所に、紫外線を当てる工程を含んでもよい。
【0102】
マイクロアレイを製造する方法
マイクロアレイを製造するための方法も本明細書において開示される。一部の態様において、本明細書において開示されたマイクロアレイは、表面、例えば、本明細書において開示された支持体上で、インサイチューで合成することができる。場合によっては、マイクロアレイは光リソグラフィを用いて作られる。例えば、支持体を光活性カップリング溶液と接触させる。マスクを用いて、保護基を有する遊離リンカー分子または遊離カップリング分子が設けられた表面上の特定の場所への放射線または光の曝露を制御することができる。曝露された場所では保護基は除去されて、カップリング分子上またはリンカー分子上に1つまたは複数の新たに露出した反応性部分が生じる。次いで、望ましいリンカーまたはカップリング分子が、保護されていない取り付けられた分子に、例えば、カルボン酸基に連結される。表面上の、特定の場所または位置が定められた場所において多数の特徴を合成するために、このプロセスが繰り返されてもよい(例えば、Pirrungらへの米国特許第5,143,854号、米国特許出願公開第2007/0154946号(2005年12月29日に出願された)、同第2007/0122841号(2005年11月30日に出願された)、同第2007/0122842号(2006年3月30日に出願された)、同第2008/0108149号(2006年10月23日に出願された)、および同第2010/0093554号(2008年6月2日に出願された)を参照されたい。これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。
【0103】
一部の態様において、特徴の三次元マイクロアレイを生成する方法は、表面に取り付けられた多孔層を得る工程;ならびに特徴を多孔層に取り付ける工程を含んでもよく、前記特徴はそれぞれ、決定可能な配列および意図された長さのペプチド鎖のコレクションを含み、独特の特徴の中で、意図された長さを有する前記コレクションの中にあるペプチド鎖の一部分は、少なくとも約98%のそれぞれのカップリング工程の平均カップリング効率を特徴とする。一部の態様において、前記特徴は、光活性化合物、カップリング分子、カップリング試薬、ポリマー、および溶媒を含む光活性カップリング製剤を用いて表面に取り付けられる。一部の態様において、前記特徴は、本明細書において開示された光活性カップリング製剤を用いて表面に取り付けられる。一部の態様において、光活性カップリング製剤は水を用いて取り除かれる。
【0104】
一つの態様において、マイクロアレイを製造するプロセスが本明細書において説明される。取り付けられたカルボン酸基を含む表面が設けられる。表面を、光活性化合物、カップリング分子、カップリング試薬、ポリマー、および溶媒を含む光活性カップリング溶液と接触させる。表面は、フォトマスクによって規定されるパターンに従って遠紫外線スキャナツールにおいて紫外線に露光され、光活性カップリング溶液中に光塩基発生剤が存在するので、紫外線に露光された場所は光塩基が発生する。十分な光塩基を発生させるために、露光エネルギーは1mJ/cm2~100mJ/cm2であってもよい。
【0105】
表面は、ポスト露光ベークモジュールにおいて露光の際にポストベークされる。ポスト露光ベークは化学的増幅工程として働く。ベーク工程は、最初に発生した光塩基を増幅させ、支持体への拡散速度も速める。ポストベーク温度は、多孔性表面の厚さに応じて75℃~115℃、少なくとも60秒間、まれに120秒超でもよい。遊離カルボン酸基は遊離ペプチドまたはポリペプチドの脱保護アミン基に連結されて、表面に取り付けられたカルボン酸基に遊離ペプチドまたはポリペプチドがカップリングされることになる。この表面は多孔性表面でもよい。表面に取り付けられたカルボン酸基にカップリングされたペプチドの合成はN→C合成方向で行われ、遊離ペプチドのアミン基は、支持体表面に結合しているカルボン酸基に付着する。または、合成をC→N方向に指向させるためにジアミンリンカーが遊離カルボン酸基に取り付けられてもよく、遊離ペプチドのカルボン酸基は、支持体表面に結合しているアミン基に付着する。
【0106】
次に、光活性カップリング溶液を取り除くことができる。一部の態様において、脱イオン(DI)水を用いてフォトレジストを完全に取り除く方法が本明細書において提供される。このプロセスは現像モジュールにおいて達成される。ウェーハを真空チャックにおいて例えば60秒~90秒間回転させ、ノズルを通して脱イオン水が約30秒間分注される。
【0107】
光活性カップリング製剤はカップリングスピンモジュールにおいて表面に塗布されてもよい。カップリングスピンモジュールは、典型的には、光活性カップリング製剤を供給するために20個以上のノズルを有してもよい。これらのノズルは、これらの溶液を保持するシリンダを加圧することによって、または必要量を分注するポンプによって光活性カップリング製剤を分注するように作られてもよい。一部の態様において、ポンプは、支持体上に5~8ccの光活性カップリング製剤を分注するように用いられる。支持体を真空チャックにおいて15~30秒間回転させ、光活性カップリング製剤が分注される。回転速度は2000rpm~2500rpmになるように設定することができる。
【0108】
任意で、支持体上にある未反応アミノ基が次のカップリング分子と反応しないようにするためにキャップフィルム溶液コートが表面上に塗布される。キャップフィルムコート溶液は、以下:溶媒、ポリマー、およびカップリング分子、のように調製することができる。使用することができる溶媒は、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、またはその組み合わせのような有機溶媒でもよい。キャッピング分子は典型的には無水酢酸であり、ポリマーはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ-(メチル-イソプロペニル)-ケトン、またはポリ-(2-メチル-ペンテン-1-スルホン)でもよい。一部の態様において、キャッピング分子はエタノールアミンである。
【0109】
このプロセスはキャッピングスピンモジュールにおいて行われる。キャッピングスピンモジュールは、キャップフィルムコート溶液を支持体上に分注するように作ることができる1本のノズルを備えてもよい。この溶液は、キャップフィルムコート溶液を貯蔵するシリンダを加圧することによって、または必要量を正確に分注するポンプを通して分注されてもよい。一部の態様において、約5~8ccのキャップコート溶液を支持体上に分注するためにポンプが用いられる。支持体を真空チャックにおいて15~30秒間回転させ、カップリング製剤が分注される。回転速度は約20秒間に2000~2500rpmになるように設定される。
【0110】
キャッピング溶液を含む支持体はキャップベークモジュールにおいてベークされる。キャッピングベークモジュールは、キャッピングフィルムコートが適用された直後に、特にウェーハを受け取るように設けられたホットプレートである。一部の態様において、ホットプレートにおいて、スピンコーティングされたキャッピングコート溶液をベークしてキャッピング反応を著しく加速する方法が本明細書において提供される。一般的に、ホットプレートベークはアミノ酸のキャッピング時間を2分未満に短縮する。
【0111】
キャッピング反応の副産物はストリッパモジュールにおいて取り除かれる。ストリッパモジュールは、有機溶媒、例えば、アセトン、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、DI水などを分注するために設けられた、いくつかのノズル、典型的には10個までのノズルを備えてもよい。一部の態様において、ノズルは、アセトンの後にイソプロピルアルコールが回転ウェーハ上に分注されるように指定されてもよい。回転速度は約20秒間に2000~2500rpmになるように設定される。
【0112】
この全サイクルは、所望に応じて、望ましい配列を得るために毎回、異なるカップリング分子を用いて繰り返すことができる。
【0113】
一部の態様において、ポリペプチドをN→C方向に合成するために遊離カルボン酸表面を含むマイクロアレイが用いられる。一つの態様において、支持体表面上にあるカルボン酸は、アミノ酸にある遊離アミン基に結合できるようにするために活性化される(例えば、カルボニルに変換される)。一つの態様において、表面の基にあるカルボン酸の活性化は、マイクロアレイ表面にカルボジイミドまたはスクシンイミドを含む溶液を添加することによって行うことができる。一部の態様において、1-エチル-3-(3-ジメチル-アミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1,3-ジイソプロピル-カルボジイミド(DIC)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、0-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、またはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)をマイクロアレイ表面に添加することによってカルボン酸は活性化されてもよい。活性化溶液は洗い流され、アミノ酸層(すなわち、それぞれの活性化カルボン酸基に1個のアミノ酸)を付加するためにマイクロアレイ表面は調製される。カルボン酸基は2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、または10時間まで活性化されたままである。
【0114】
遊離アミン基を有するアミノ酸を含む溶液がマイクロアレイの活性化カルボン酸表面に添加されると、1個のアミノ酸がそれぞれのカルボン酸基に結合される。一部の態様において、アミノ酸は、保護アミン基を有するアミノ酸を含む。感光性化学反応を用いると、保護基は、レチクルを用いて、部位特異的な場所にある選択されたアミノ酸のアミン基から除去することができる。例えば、光塩基を含む溶液中でFmoc保護アミノ酸が混合される。マイクロアレイ上の溶液が部位特異的な場所で特定の周波数の光に曝露されると、光塩基は塩基を放出し、塩基はアミノ酸を脱保護して、マイクロアレイの表面上にある活性化カルボン酸基とアミノ酸がカップリングされる。塩基を発生させる別の方法は光酸発生剤の使用を介した方法である。一部の態様において、光酸発生剤はN-boc-ピペリジンまたは1-boc-4-ピペラジンである。
【0115】
完成したアミノ酸層がカップリングされた後に、後の合成工程におけるアミノ酸の非特異的結合を阻止するために、残存しているカップリングされなかった活性化カルボン酸がキャッピングされる。マイクロアレイ上の特定の場所において望ましいポリペプチドを合成するために、活性化、アミノ酸層の付加、およびキャッピングの工程が必要に応じて繰り返される。
【0116】
一つの態様において、N→C末端方向に合成されたペプチドは、生物学的分子、例えば、抗体に対する選択されたポリペプチド配列の結合特性を増強するためにジアミン分子でキャッピングされてもよい。他の態様において、C→N方向に合成されたペプチドは、生物学的分子に対する選択された配列の結合特性を増強するためにジカルボン酸分子でキャッピングされてもよい。
【0117】
ポリペプチドをマイクロアレイ表面上で同時に合成している間、本明細書に記載の方法はマイクロアレイ表面上にあるカルボン酸の完全な活性化を確実にする。活性化エステルには長期間の安定性があるために、1回の活性化工程の後に、(例えば、マイクロアレイ上の異なる場所にある2~25個またはそれより多い異なるアミノ酸からなる層を丸ごとカップリングするために)2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25回、またはそれより多いカップリングサイクルが完了されてもよい。カップリングはハードベーク(コーティング直後に90秒間、85~90℃のホットプレートにおける加熱)の間に行われ、かつ溶液中に過剰なアミノ酸が存在するので、極めて高いカップリング収率を得るために、Fmoc保護アミノ酸の完全な100%脱保護は必要とされない場合がある。全アミノ酸の添加およびキャッピングの後に、全ての遊離活性化カルボン酸はカップリングまたはキャッピングされ、従って、ポリペプチド合成の高い効率および精度が得られる。
【0118】
マイクロアレイの使用方法
支持体、製剤、および/またはマイクロアレイを使用する方法も本明細書において開示される。本明細書において開示されたマイクロアレイの用途は、研究用途、治療目的、医療診断、および/または1人もしくは複数人の患者の層別化を含んでもよい。
【0119】
本明細書に記載のマイクロアレイはいずれも研究ツールとして、または研究用途において使用することができる。一つの態様において、マイクロアレイはハイスループットスクリーニングアッセイに使用することができる。例えば、酵素基質(すなわち、本明細書に記載のペプチドマイクロアレイ上にあるペプチド)は、マイクロアレイを酵素に供し、マイクロアレイ上での酵素基質の存在または非存在を特定することによって、例えば、マイクロアレイの特徴の中の少なくとも1つの変化を検出することによって試験することができる。
【0120】
マイクロアレイはまた、基質特異性を確かめるためのリガンド結合のスクリーニングアッセイ、またはタンパク質を阻害もしくは活性化するペプチドを特定するためのスクリーニングアッセイにおいても使用することができる。これらの方法を行うのに有用な標識法、プロテアーゼアッセイ、ならびに結合アッセイは一般的に当業者に周知である。
【0121】
一部の態様において、マイクロアレイは、既知のタンパク質配列を重複ペプチドの配列として提示するのに使用することができる。例えば、既知タンパク質のアミノ酸配列は任意の長さおよび任意の適切な重複フレームの重複配列セグメントに分けられ、それぞれの配列セグメントに対応するペプチドは、本明細書において開示されたようにインサイチューで合成される。このように合成された個々のペプチドセグメントは、既知タンパク質のアミノ末端から開始して並べることができる。
【0122】
一部の態様において、既知タンパク質の抗原配列全体がエピトープスライディングによってカバーされている少なくとも1つの領域をマイクロアレイの抗原提示が含む方法において、マイクロアレイが用いられる。抗原の免疫活性領域は、アレイまたは複数の異なるマイクロアレイ上の1つまたは複数の臨床試料を接触させることによって確かめられ、既知のタンパク質抗原を提示するために必要とされるペプチド配列のセットは低減される。
【0123】
一部の態様において、試料は、複数のランダムペプチドを有するマイクロアレイに適用される。所定の抗原配列と、例えば、90%以上の同一性を有する相同ドメインを確かめるためにランダムペプチドをスクリーニングおよびBLAST検索することができる。次いで、一部の態様では、抗原配列全体を合成および使用して、関心対象の疾患の潜在的なマーカーおよび/または原因を特定することができる。
【0124】
一部の態様において、マイクロアレイは1種類または複数種の遺伝因子のハイスループットスクリーニングに用いられる。遺伝子に関連するタンパク質は潜在的な抗原となる可能性があり、これらのタンパク質に対する抗体を用いて、遺伝子と疾患との関係を評価することができる。
【0125】
別の例において、マイクロアレイは1種類または複数種のバイオマーカーを特定するのに使用することができる。バイオマーカーは疾患の診断、予後、処置、および管理に使用することができる。バイオマーカーは、疾患状態、疾患の段階、および疾患処置に対する反応に応じて個体において発現されてもよく、存在しなくてもよく、異なるレベルでもよい。バイオマーカーは、例えば、DNA、RNA、タンパク質(例えば、キナーゼなどの酵素)、糖、塩、脂肪、脂質、またはイオンでもよい。
【0126】
マイクロアレイはまた、治療目的、例えば、1種類または複数種の生理活性剤の特定にも使用することができる。生理活性剤を特定するための方法は、複数種の試験化合物をマイクロアレイに適用する工程、および生理活性剤として少なくとも1種類の試験化合物を特定する工程を含んでもよい。試験化合物は、低分子、アプタマー、オリゴヌクレオチド、化学物質、天然抽出物、ペプチド、タンパク質、抗体断片、抗体様分子、または抗体でもよい。生理活性剤は治療剤または治療標的の修飾物質でもよい。治療標的は、ホスファターゼ、プロテアーゼ、リガーゼ、シグナル伝達分子、転写因子、タンパク質輸送体、タンパク質ソーター、細胞表面受容体、分泌因子、および細胞骨格タンパク質を含んでもよい。
【0127】
別の態様において、マイクロアレイは、治療用の薬物候補を特定するのに使用することができる。例えば、特異的抗体に対する1つまたは複数のエピトープがアッセイ(例えば、ELISAなどの結合アッセイ)によって確かめられたとき、エピトープを用いて、疾患における標的抗体に対する薬物(例えば、モノクローナル中和抗体)を開発することができる。
【0128】
一つの態様において、医療診断において使用するためのマイクロアレイも提供される。アレイは、薬物またはワクチンの投与に対する反応を確かめるために使用することができる。例えば、ワクチンに対する個体の反応は、誘導された免疫応答によって産生される抗体が認識するエピトープを提示するペプチドを有するマイクロアレイを用いて個体の抗体レベルを検出することによって確かめることができる。別の診断用途は、バイオマーカーの存在について個体を試験することである。ここで、試料は対象から採取され、1種類または複数種のバイオマーカーの存在について試験される。
【0129】
マイクロアレイはまた、対象が治療的処置に反応する可能性を示すバイオマーカーの存在または非存在に基づいて患者集団を層別化するのに使用することもできる。マイクロアレイは、既知のバイオマーカーを特定して適切な治療群を確かめるのに使用することができる。例えば、ある状態を有する対象からの試料をマイクロアレイに適用することができる。マイクロアレイへの結合によって、状態のバイオマーカーの存在が分かる場合がある。以前の研究から、バイオマーカーは処置後の正のアウトカムと関連するのに対して、バイオマーカーの非存在は処置後の負または中立のアウトカムに関連することが分かる場合がある。患者にバイオマーカーがあるので、医療専門家によって、処置を受ける群に患者が層別化される場合がある。
【0130】
一部の態様において、試料中の関心対象の分子(例えば、タンパク質、抗体、または他の任意のリガンド)の存在または非存在を検出する方法が、本明細書において開示され、関心対象の分子を含むと疑われる試料と接触させたマイクロアレイを得る工程;およびマイクロアレイの1つまたは複数の特徴との結合の存在または非存在を検出することによって関心対象の分子が試料中に存在するかどうかを確かめる工程を含んでもよい。
【0131】
一部の態様において、関心対象の分子は、100μL、50μL、10μL、5μL、1.5μL、または1μLより少ないか、またはこれに等しい体積を有する試料内で検出することができる。一部の態様において、試料接触から関心対象の分子の検出までの経過時間は、40分未満、30分未満、20分未満、19分未満、18分未満、17分未満、16分未満、15分未満、14分未満、13分未満、12分未満、11分未満、10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、2分未満、または1分未満である。一部の態様において、関心対象の分子は約1pg/ml~1,000μg/mlの範囲内の接触試料中の濃度で検出することができる。
【0132】
一部の態様において、関心対象のタンパク質は、体液、例えば、羊水、房水、硝子体液、胆汁、血清、母乳、脳脊髄液、耳垢、乳び、内リンパ、外リンパ、糞便、女性の膣液、胃酸、胃液、リンパ、粘液、腹水、胸膜液、膿、唾液、皮脂、精液、汗、滑液、涙、腟分泌物、嘔吐物、または尿から得られてもよい。
【0133】
一部の態様において、ワクチン候補を特定する方法は、ワクチン候補が以前に投与された対象から得られた試料と接触させた、本明細書において開示されたマイクロアレイを得る工程であって、試料が複数の抗体を含む、工程;およびマイクロアレイの1つまたは複数の特徴に対する複数の抗体の結合特異性を確かめる工程を含んでもよい。一部の態様において、前記特徴は、既知配列を有する供給源タンパク質に由来する部分配列を含む複数の別個の入れ子状の重複ペプチド鎖を含む。
【0134】
遠隔マイクロアレイ解析
一部の態様において、チップアレイを含む診断装置は第三者拠点(例えば、参照検査機関または診断検査機関)に配置される。一部の態様において、アッセイは第三者拠点の1つまたはいくつかで行われ、患者試料にバーコードが付けられる。チップアレイからの生データ出力がユーザー管理拠点にあるアナライザに入力される。この転送はVPNを介したものでもよく、他の任意の遠隔データ転送法を介したものでもよい。一部の態様において、生データは一時的ユーザー管理データベースに、有限期間保存される。試験報告が作成され、結果が第三者に送られる。第三者が要求した追加情報も、保存された生データの追加解析から得られる場合がある。本明細書において提供される診断モデルの一つの態様を図示した流れ図を
図6に示した。
【0135】
一部の態様において、解析によって、例えば、疾患の存在、疾患の重篤度、疾患のサブタイプ、複数の疾患の存在および/もしくは同一性、ならびに/または疾病素因に関する情報が得られる。一部の態様において、分析によって、異なる抗体試験の多重化、同じ疾患からの複数の分析物、異なる疾患に対する試験の多重化からの情報が得られる。一部の態様において、アッセイは、抗体-抗原相互作用アッセイ、ペプチド間相互作用アッセイ、ペプチド-タンパク質相互作用アッセイ、タンパク質間相互作用アッセイ、またはキナーゼ相互作用アッセイである。一部の態様において、アッセイステーションは完全自動化または半自動化されたロボットリキッドハンドリングステーションである。
【0136】
一部の態様において、試験が完了した後に、さかのぼって調べることができない、バーコードの無い生データはユーザー管理データベースに保存される(一方向保存)。この、さかのぼって調べることができない生データは、集団間の特定の試験のばらつきを試験するために用いられ、設計されたセットの中にある異なる抗原性ペプチド分析物間の相関関係を調べて、対照の限度を求めるためにも用いられる。
【0137】
一部の態様において、患者一人一人の自己ベースラインを構築するために、異なる疾患を表す重要な抗原性ペプチドのセットのトレンドを知るための年間契約が提供される。この方法の一つの態様では、疾病素因または疾患の早期検出に関係なくトレンドを知って、トレンド変化を、重要な疾患関連抗原性ペプチドに関して自己ベースラインから移動しかつトレンド範囲からわずかに高いレベルに上がるという確かな証拠と関連付けるために、生物学的に関連するかまたは分子模倣体である同じセットの設計された抗原性ペプチドについて、異なる時間枠で同一人物が試験される。トレンド契約に基づいて設計されたセットに対する改善は、常に、以前に設計されたセットの過去データを受け継ぐと考えられ、そのため、同一人物のトレンドの一貫性は失われないが、診断における進歩を反映する新たな追加分を加えて改善される。
【実施例0138】
以下は、本発明を実施するための特定の態様の実施例である。本実施例は例示のみの目的で提供され、いかなるやり方でも本発明の範囲を限定することを目的としない。使用された数値(例えば、量、温度など)に関して精度を確保するための努力がなされたが、もちろん、いくらかの実験誤差および偏差が許容されるはずである。
【0139】
本発明の実施では、特に定めのない限り、当該技術の範囲内でタンパク質化学、生化学、組換えDNA法、および薬理学の従来法が用いられる。このような技法は文献において十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H.Freeman and Company, 1993); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.); Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990); Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed. (Plenum Press) Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0140】
実施例1: 1個のチップにタンパク質、ペプチド、または抗体を取り付けるための複数のリンカー分子
本実施例は、チップに取り付けるための選択されたリンカー分子の構造について説明する。リンカー分子はチップにタンパク質、ペプチド、または抗体を取り付ける(「つなぐ(link)」)。リンカー分子の構造はチップへのタンパク質、ペプチド、または抗体の取り付けに影響を及ぼし、他のタンパク質、ペプチド、または抗体に対するタンパク質または抗体の結合親和性に影響を及ぼす。
【0141】
Universityウェーハからシリコンウェーハを入手した。プラズマ強化化学気相成長(plasma-enhanced chemical vapor deposition)(PECVD)を用いてウェーハ上に約1000オングストローム厚のニッケル薄膜を付着させた。この後に、500オングストローム厚の窒化物層をPECVDによって付着させた。アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を用いて窒化物を窒化シリコン化した(
図7、リンカー1)。この窒化シリコン化工程の直後にboc-保護Gly-PEGリンカー鎖をカップリングした(
図7、リンカー2~8)。Glyはグリシンリンカー鎖を表し、PEGはポリエチレングリコールを表す。このカップリングは簡単なメリフィールド化学を用いて行った。複数の他のリンカー分子をマイクロアレイに取り付けて他のペプチドまたはタンパク質を結合することができる。リンカー配置の8つの例を
図7に示した。リンカー1はシラン-(boc)であり、(boc)はtert-ブチルオキシカルボニル保護基を表す。リンカー2はシラン-Gly-PEG(boc)である。リンカー3はシラン-Gly-PEG-PEG(boc)である。リンカー4はシラン-Gly-(PEG(boc))
2である。リンカー5はシラン-PEG-Gly(boc)である。リンカー6はシラン-Gly-cyc-PEG(boc)であり、Gly-cycは、環式グリシン鎖コンホメーションを有するグリシン鎖を表す。リンカー7はシラン-Gly-(PEG(boc))
4である。リンカー8は、複数のリジン分子およびグルタミン酸分子の側鎖によって形成された環式ペプチドループである。同じタンパク質に複数の異なるリンカー分子を使用すると、生物学的相互作用の親和性およびアビディティを確かめることが可能になる。リンカー分子は本実施例に限定されないが、例えば、タンパク質またはペプチドをシリコンウェーハチップに取り付けるために用いられる複数のリジン分枝を含んでもよい。
図8は、
図7のリンカー分子の対照アセチル化(CAP)バージョンを示す。
図9は、tert-ブチルオキシカルボニル保護基の無い、
図7の保護されていない対照リンカー分子を示す。
【0142】
実施例2: 抗p53抗体およびIL-6タンパク質とチップとのカップリング
最初に、実施例1の望ましいリンカー分子および水に溶解した10重量%ポリビニルピロリドン(PVP)の溶液でウェーハをコーティングした後に(
図10、工程1)、5%ポリエチレングリコール(PEG)をベースとするフォトレジストで覆い(
図10、工程2)、その後に、Nikon NSR203から50mJ/cm
2の光で露光した(
図10、工程3)。露光後、ウェーハを水で現像した(
図10、工程4)。露光された部分は架橋されたのに対して、露光されなかった部分は水で現像された。IL-6タンパク質をカップリングするために複数の異なるリンカーの特徴を使用した(
図10、工程5)。ここで、IL-6タンパク質カップリング溶液を以下の通りに調製した。0.05mg/mlのIL-6タンパク質を1mg/mlの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および10重量%のPVPと一緒に水に溶解した。次いで、このカップリング溶液をウェーハ上に1000rpmでスピンコーティングして均一なコートを得た。次いで、ウェーハをホットプレートにおいて37℃で5分間ベークした(
図10、工程6)。または、カップリング溶液を分注し、ウェーハを4℃で一晩保管して、リンカー分子とタンパク質のカップリングを完成させた。次に、ウェーハを水で洗浄してポリマーコートを取り除いた(
図10、工程8)。これによって、第1のタンパク質とウェーハとのカップリングが完成した。複数のタイプのリンカー分子があるので、生物学的結合の親和性およびアビディティを確かめるために、IL-6タンパク質を様々な濃度で利用することができた。タンパク質と、EDCカップリングを介して表面に取り付けられたリンカー分子との結合を
図11にさらに詳細に示した。
【0143】
次に、水に溶解した10重量%PVP(
図10、工程9)に続いて、5重量%のPEGベースフォトレジスト(
図10、工程10)でウェーハをコーティングした後に、Nikon NSR203から50mJ/cm
2の光で露光した(
図10、工程11)。露光後、ウェーハを水で現像した(
図10、工程12)。露光された部分は架橋されたのに対して、露光されなかった部分は水で現像された。次に、ウェーハをp53抗体カップリング溶液でスピンコーティングした(
図10、工程13)。p53抗体カップリング溶液は、水に溶解した0.05mg/mlのp53抗体と1mg/mlのEDCおよび10重量%のPVPからなった。このカップリング溶液を1000rpmでスピンコーティングして均一なコートを得た。次いで、ウェーハをホットプレート上で、37℃で5分間ベークした(
図10、工程14)。または、p53抗体カップリング溶液を分注し、ウェーハを4℃で一晩保管して、リンカー分子と抗体のカップリングを完成させた。次に、ウェーハを水で洗浄してポリマーコートを取り除いた(
図10、工程16)。これによってp53抗体のカップリングが完成した。複数のタイプのリンカー分子があるので、生物学的結合の親和性およびアビディティを確かめるために、同じp53抗体を様々な濃度で利用することができた。抗体と、EDCカップリングを介して表面に取り付けられたリンカー分子との結合を
図12にさらに詳細に示した。
【0144】
前記の方法を用いて、ハイスループット法で、複数の異なるタンパク質をウェーハに連結することができる。次いで、ウェーハを、1mmx1mmのサイズの小さなチップに分割した。分割されたチップを364ウェルプレートのウェルの中に入れた。
【0145】
実施例3: PDMSフィルムを用いたウェルプレートによるチップアレイ
サイズが1インチx3インチのホウケイ酸ガラススライドをVWR Internationalから入手した。ガラススライドの厚さは1.2mmであった。ガラススライドのプラズマ処理後に、最小深さ5mmおよび最大深さ9mmのPDMSフィルムをガラススライドに取り付けた。ウェル壁の厚さは1mmであった。本実施例では、チップのサイズは20mmx20mmであり、ウェルサイズは4mmx4mmであった。端部は本実施例では平らであった。別の実施例では、フィルムをガラススライドから手または機械で剥離することで容易に取り除くことができるように、端部は先細になっていた。その後に、チップを取り付ける予定であるガラススライドのウェル内に、エポキシグルー(Epoxy TechnologyのEPO-TEK301)を塗布した。ピックアンドプレースロボットによって、または手作業で、チップをエポキシグルーの上に置き、室温で24時間硬化させた。同じ手順を、他のウェル内に入れたチップに適用した。次に、ガラススライドを標準的な384ウェルプレートのフレーム内に入れ、しっかりとはめた。このチップアレイを現像するためのプロセスを
図13に示した。前記のプロセスによって作製されたチップを保持するためのウェルのアレイの上面図を
図14に示した。ウェルのチップアレイの側面図を
図15に示した。バイオアッセイを行うために、チップアレイをHamilton Roboticsリキッドアッセイステーションに送り込んだ。このアッセイステーション内で洗浄工程および乾燥工程が完了したら、手作業で、またはロボットを用いてPDMSフィルムを剥離した。次いで、アッセイの結果を確かめるためにチップをスキャンした。
【0146】
実施例4: 逆プレートピラーを用いたウェルプレートによるチップアレイ
標準的なポリプロピレン24ウェルプレート、96ウェルプレート、または384ウェルプレートを使用する。プレートのふたは、基部およびプレートピラーの上部において約10μmの平面度となるようにステンレス鋼を用いて射出成型された注文品であった。
図16の図は、必要とされる配置の一例を示す。部品1は典型的なウェルプレートである。部品2は、チップを保持するプレートピラーの付いた上下逆さのふたである。チップは、これらのプレートピラーに、エポキシグルーを用いて取り付けられてもよく、部品3を用いて取り付けられてもよい。いずれの場合でも、チップを支持体にしっかりとつないだ。代表的なリキッドアッセイステーションでは、最初に、必要とされる緩衝溶液をウェルに充填した。次いで、ピックアンドプレースロボットがプレートのふたをつかんで、チップを正確に望ましいウェルの中に沈めた。プレートピラーの高さは約2~3mmであったのに対して、緩衝溶液または試料の必要量が添加されたときに、隣接するウェルにこぼれないように、ウェルの深さは約5~6mmとした。この量は100μlであると決められた。全バイオアッセイ手順が完了した後に、チップが上向きになるように、プレートのふたを上下反転させる。次いで、窒素パージによりチップを乾燥させた。次いで、共焦点スキャナ顕微鏡でチップをスキャンした。共焦点スキャナ顕微鏡のステージは標準的なウェルプレートのフレームを保持することができる。この機構を用いて、複数のチップをスキャンすることができる。
【0147】
実施例5: キャップ上へのチップの装填およびプレートピラーへのキャップの取り付け
本実施例では、上記の実施例2に記載の方法を用いて、それぞれのウェーハを1種類のタンパク質とだけ連結した。例えば、タンパク質がカップリングされている1枚の9平方インチウェーハを1mmx1mmチップに分割して、同じタンパク質、例えばp53タンパク質を有する約52,000個のチップを得た。このウェーハは0.5mm
2~10mm
2のサイズのチップにも分割することもできる。
図17Aに示したように、タンパク質チップを集めてタンパク質チップキャップにした。
図17Bに示したようにプレートピラーを有するプレートをキャップと接続し、それによって、それぞれのキャップは、それぞれのプレートピラーにはまる。キャップの上部は複数のチップホルダーと、それぞれのチップからなる。チップホルダー間の最小間隔は約0.25mm~約5mmである。ハイスループット自動表面実装技術(SMT)ピックアンドプレースマシンを用いてチップをキャップに実装した。キャップが実装されたプレートピラーを
図17Cに示した。SMTピックアンドプレースマシンを介して実装することができる一時間当たりの部品数(cph)の最大値は約20,000cph~約150,000cphであった。結果として生じた、複数のタンパク質チップアレイが実装されたキャップは、例えば、結合親和性アッセイ(すなわち、血清アッセイ)用の24ピラープレートまたは96ピラープレートで使用することができる。24ピラープレートおよび96ピラープレートの寸法の例をそれぞれ、
図17Dおよび
図17Eに示した。
【0148】
実施例6: チップアレイ上の抗p53抗体およびIL-6タンパク質をプローブするアッセイ
抗体およびタンパク質の結合を確かめるために、(前記の)タンパク質チップアレイを保持するピラープレートを血清アッセイにおいて使用した。このアッセイのために、実施例2に従ってp53抗体およびIL-6が固定化されているチップに、以下の一般的な工程に従って試料血清を添加した。最初に、Tween-20を含むリン酸緩衝食塩水(PBST)で、溶液を穏やかに振盪しながらチップを3回洗浄した。次いで、チップを384ウェルプレートの中で、異なる患者に由来する血清と37℃でインキュベートした。その後に、チップをPBSTで3回洗浄した後で、標的抗体-抗原結合を検出するためにチップを二次抗体とインキュベートした。チップをPBSTで3回再洗浄した後に、Nikon A1R共焦点スキャナ顕微鏡またはCCDスキャナ顕微鏡でチップをスキャンした。
【0149】
スキャナ顕微鏡は、2048x2048ピクセルの解像度および1mmx1mmのフレームサイズを有する画像チップを備えるCCDカメラを搭載した。CCDカメラのフレームレートは15~30フレーム/秒の範囲内で調整することができ、典型的には30フレーム/秒に設定される。スキャン中にデータ取得を完了するために、16フレームを線積分して、スキャンされた部分の一場面を得た。二次抗体に取り付けられた蛍光プローブはそれぞれ488nmおよび470nmの波長で励起され、発光波長はそれぞれ525nmおよび670nmであった。これによって、それぞれが異なる蛍光プローブを有する2つの異なる抗体を検出することができた。例えば、670nmの波長での検出を無くすためには、550±5nmの波長帯にあるバンドパスフィルターを用いて670nmでの発光を遮ることができる。チップ上の異なる特徴を区別するために、1つの特徴あたり4x4ピクセルの解像度が用いられる。アッセイの結果を
図18~
図22に示した。
【0150】
図18は、実施例2に記載のように異なるリンカー分子を用いてIL-6がチップ表面に固定化されているチップを用いたアッセイの結果を示す。IL-6に対して高い結合親和性を有する組換えIL-6抗体およびポリクローナル抗体をLife Technologiesから入手した。複数のタイプのリンカー間でのIL-6に対する抗IL-6抗体の結合親和性のばらつきを1個のチップ上で試験した。実施例2に説明したようにIL-6をチップにカップリングした。ヒトIL-6に対するポリクローナルウサギ抗体をPBSで1:1000に希釈してチップに添加した。IL-6抗体に結合する二次抗体はヤギ抗ウサギalexafluor488であった。抗体が結合するようにチップを暗所で1時間インキュベートした。
図18は、チップ上の複数のリンカー分子とのIL-6タンパク質結合を裏付けている。結合親和性が最も高い連結部位は、4個のPEGがGlyに取り付けられた部位である。
【0151】
図19は、前記のようにp53抗体およびIL-6が固定化されているタンパク質アレイチップ上で行われた、抗IL-6抗体を含む血清を用いたアッセイからの結果を示す。結合領域は
図18において見られたものと同様の結果を示した。アセチル化対照リンカーは結合を全く示さないかまたはほとんど示さず、最大数のNH
2基を有するリンカー分子が最大結合親和性を示した。
【0152】
図20は、抗p53抗体を含むチップを用いたアッセイの結果を示す。抗p53ポリクローナルマウス抗体および組換えヒトp53タンパク質をABCAMから入手した。1個のチップに取り付けられた複数のリンカー分子間での、p53タンパク質に対する抗p53抗体結合のばらつきを試験した。実施例2に説明したように抗p53抗体をチップにカップリングした。ヒトp53タンパク質に対するポリクローナルマウス抗体をPBSで1:1000に希釈して添加した。二次抗体はヤギ抗マウスalexafluor488である。抗体が結合するようにチップを暗所で1時間インキュベートした。
図20に示した結果は、抗p53抗体が、チップに取り付けられた複数のリンカー分子に結合することを裏付けている。4個のPEGがGlyに取り付けられたリンカー分子を含む部位において、抗p53抗体の最大結合親和性が観察された。
【0153】
図21は、前述されたようにp53抗体およびIL-6が固定化されているタンパク質アレイチップ上で行われた、p53タンパク質血清を用いたアッセイからの結果を示す。結合領域は
図20において観察されたものと同様の結果を示した。アセチル化対照リンカーは結合を全く示さないかまたはほとんど示さず、最大数のNH
2基を有する領域を有するリンカーが最大結合親和性を示した。
【0154】
図22は、チップに取り付けられた対照アセチル化リンカー分子のいずれにもタンパク質または抗体が取り付けられなかったときに、対照アセチル化リンカー分子に対して最小の結合しかないことを示している。
【0155】
様々な結合事象を示すアッセイの略図を
図23に示した。血清がチップに適用されたとき、タンパク質および抗体はいずれも、チップにカップリングされた対応する分子に結合した。フルオロフォアを含む二次抗体を用いて、タンパク質または抗体と、リンカー分子を介してチップ表面上に元々固定化されている抗体またはタンパク質との結合を検出した。
【0156】
実施例7: 96ピラープレート上にIL-6タンパク質をプローブするアッセイ
本実施例では、アッセイプロトコールは、それぞれのサイズが10mmx10mmであり、96ピラープレートの別々のピラーに実装された96個のチップを含む。このアッセイのために、TBS緩衝液、PBST緩衝液、およびBSAをVWR Internationalから入手し、抗体をABCAMから入手した。6個の96ウェルプレートを事前に調製した。ウェルプレート番号1はメタノールを含有し、ウェルプレート番号2はTBS緩衝液を含有し、ウェルプレート番号3は一次抗体を含有し、ウェルプレート番号4はPBST緩衝液を含有し、ウェルプレート番号5は二次抗体を含有し、ウェルプレート番号6はDI水を含有した。
【0157】
チップを備える96ピラープレートを連続して、ウェルプレート番号1に5分間入れ、ウェルプレート番号2を5分間入れ、ウェルプレート番号3に入れ、37℃で30分間インキュベートし、プレート番号4に5分間入れ、ウェルプレート番号5に入れ、37℃で30分間インキュベートし、ウェルプレート番号5に5分間入れ、ウェルプレート番号6に5分間入れた。合計アッセイ時間は85分であった。
【0158】
このアッセイプロセスの利点には以下が含まれる。前の溶液を除去し、それぞれのアッセイ工程のために次の溶液を添加する必要性を回避することによって全アッセイ時間が短くなった。なぜなら、アッセイを行う前に全てのウェルプレートを調製したからである。さらに、ピラープレート上の1個のチップアレイを完全に覆うために必要とされる抗IL-6抗体の体積は10μlであったのに対して、ウェルプレートの中に入れられている通常のマイクロアレイを用いた従来のアッセイに必要とされる体積は25μlであった。最後に、それぞれのチップ上に固定化されるペプチドまたは特徴の数は約2,000,000である。このために、さらに多くのデータを1個のチップから収集し、さらに優れたデータ解析を行うことが可能になる。表1は、96ピラープレート上のチップが関与するアッセイを従来のマイクロアレイアッセイと比較している。
【0159】
【0160】
様々なピラープレート配置の成績のさらに詳細な比較を表2に示した。
【0161】
(表2)アッセイ成績のピラープレート比較
m=百万;k=千
【0162】
実施例8: ピラープレート上のp53 TAD1をプローブするアッセイにおけるばらつきおよび成績
本実施例は、抗p53抗体を使用する工程およびピラープレートのチップ上に、アミノ酸配列:
を有するp53 10aaTAD1転写活性化因子を成長させる工程を含む、実施例6における上記アッセイプロトコールのバリエーションについて説明する。ペプチドがそれぞれのチップ上の複数の場所でN末端から合成されたので、配列は逆の順序で列挙されている。このアッセイによって、1個のチップの中の複数の場所から得られた結果のばらつき(チップ内)、2つのチップの間で同じ場所から得られた結果のばらつき(チップ間)、異なるプレート間の同じ場所に位置するピラー上に実装されたチップ内のチップ場所から得られた結果のばらつき(ピラー内)、および1個のプレート上の異なる位置にあるピラー上のチップ内のチップ場所から得られた結果のばらつき(ピラー間)が確かめられた。測定中に、これらの場所が異なるチップ間で一致することを確実にするために、以下でさらに詳細に説明するように、アライメントマークに基づいてチップを位置合わせした。
【0163】
チップ内の強度のばらつきは、前記のようにアッセイプロトコールを用いてp53 TAD1ペプチドを検出することによって、1個のチップ上の異なる場所について得られたデータを解析することで測定された。表3に列挙したチップ内の強度のばらつきは1個のチップから得られた。
【0164】
【0165】
5つのチップから得られたデータを解析することによってチップ間の強度のばらつきを測定し、それぞれのチップの5つの異なる場所からデータを収集した。この結果も、前記のようにアッセイプロトコールに従って、それぞれのチップ上の場所1~5に固定化されたp53TAD1ペプチドに対する抗p53抗体結合を示した。表4に列挙したチップ間の強度のばらつきは1個のピラープレートから得られた。
【0166】
【0167】
5つの異なるプレート上にある5つのチップから得られたデータを解析することによってピラー内の強度のばらつきを測定し、それぞれのチップ上にある5つの異なる場所からデータを収集した。さらに、プレートを互いに比較したときに、チップを保持する5つのピラーは96ピラープレート内の同じ位置にあった。表5に列挙したピラー内の強度のばらつきは5つの異なる96ピラープレート上にある5つのチップから得られた。
【0168】
【0169】
同じ96ピラープレート上の異なる位置にある5つの異なるピラー上の5つのチップから得られたデータを解析することによってピラー間の強度のばらつきを測定した。さらに、それぞれのチップ上にある5つの異なる場所からデータを収集した。従って、表6に列挙したピラー間の強度のばらつきは1個の96ピラープレート上にある5つのチップから得られた。
【0170】
【0171】
次いで、表3~6からの強度データを、それぞれの実験について5つの場所およびチップにわたって平均した。平均±偏差(%)を含む、強度のばらつきの実験平均値(=平均)を表7に列挙した。偏差(%)は標準偏差を収集データの平均で割ることによって計算した。
【0172】
(表7)場所およびチップにわたって平均された強度のばらつき
【0173】
実施例9: 抗体濃度に対するチップの感度
本実施例では、サイズが10mmx10mmの1個のチップの感度を抗体濃度の増加に対して測定した。アッセイプロトコールは、p53 10aaTAD1ペプチドをチップ表面にカップリングした、抗p53抗体を用いた実施例8に記載のものと同様である。共焦点スキャナ顕微鏡は、1ピクセルあたり16ビットの解像度を備える画像チップを用いたときに65,536(=2
16)までの相対強度を測定することができる。65,536の最大測定可能強度によって、スキャナは、4Logオーダーに及ぶ濃度の変化を測定することができた。1ピクセルあたり20ビットまで解像度を上げることによって1,048,576(=2
10)の最大シグナル解像度が得られ、濃度の感度は6Logオーダーになった(
図24)。1種類の特徴強度シグナルと、チップ上の全ての特徴間で平均された強度と、標準偏差を収集された特徴強度データの平均(=平均値)で割ることによって計算された対応する偏差(%)とを含めて、抗体濃度の増加による強度変化の測定値を表8に列挙した。
【0174】
【0175】
再現性を確かめるために、2つの異なるチップ(チップ1およびチップ2)について同じ実験を2回繰り返した。それぞれのチップの2回の実験間のR
2はそれぞれ0.9997および0.9992であり、2つのチップ間のR
2は0.9982であり、それぞれのチップの感度はくりかえし再現され(
図25)、従って、信頼性がかなり高い。
【0176】
実施例10: 超高特徴密度チップアレイの共焦点スキャナ顕微鏡またはCCDスキャナ顕微鏡シグナル出力スキャニングの解析
本実施例は、区分的スキャニングのために関心対象の領域を特定し、スキャンされたフレームのチップ間の位置合わせ不良を補正し、それぞれのフレームのデータをスティッチングしてフレームオーバーラップを説明することによるチップアレイの解析について説明する。24ピラープレートおよび96ピラープレートをNikon A1R共焦点顕微鏡またはCCDスキャナ顕微鏡のステージに配置した。24ピラープレートまたは96ピラープレートは実施例5に記載された通りであり、それぞれのプレートピラー上に実装された1個のチップアレイにつき複数のチップを備えた。
図26の実際のチップレイアウトに示したように、約±50μmのプレアラインメント精度でチップアレイ上に実装している間に、チップをプレアラインメントした。特徴の横列または縦列を見落とすことなく、スキャンされたフレームからデータを得るためには、データスティッチングが重要である。データスティッチングが正確になるように、スキャンされたフレームの位置合わせには高い精度が必要であった。高い精度は、(プレート中心と一致して)ステージ中心の周りを回転してステージを回転させた後に、チップをスキャンして、プレート上の他のチップに対するチップの位置合わせ不良を補正することによって達成された。
【0177】
マイクロアレイ上のROIの特定
チップを収容する支持体ピラー支持体(前記)の表面の組成による屈折差を用いて、チップアレイ解析のための関心対象の領域(ROI)を正確に決定した。金属層と、プローブ分子(特徴)が存在する支持体(シリカ/窒化物)との間のコントラストによって、共焦点レーザー源からの反射光を用いて強度を捕らえた。これによって、1個のチップアレイ上にある異なるマイクロアレイの区分的スキャニングが可能になった。反射光からの画像を用いて、チップ上にある異なるROIの地図を作った。1つまたは複数のレーザー源とスキャナを用いて、様々なROIの中に位置する異なるフルオロフォアからのシグナル強度を捕らえるために励起し、反射光および発光を捕捉した。1個のチップからの反射光の画像ならびに赤色発光チャンネルおよび緑色発光チャンネルの画像を
図27に示した。
【0178】
それぞれのフレームからの反射光画像は、フルオロフォア強度を測定する必要がある場所の地図を示す。
図28に示したように、反射光画像の閾値を設けることによって、チップ上にある特徴を含むROIをバックグラウンド部分と区別することができる。バックグラウンド部分はピラー支持体と比較して異なるコントラストを生じる金属を含み、そのために、この部分と特徴のROI部分が容易に区別された。データは、それぞれのフレームについて、それぞれの特徴のステージ座標Xおよびステージ座標Y位置と、同時に1つまたは複数の波長(多重)で測定されたその平均フルオロフォア強度によって特徴付けることができるROI部分(反射光地図によって規定され、特徴を含む)からのみ収集された。
【0179】
チップ上のROIを特定するために強度閾値を確かめるプロセスを例示したフローチャートを
図29に示した。このように確かめられたチップ上のROIを
図30に示した。
【0180】
チップ位置合わせ不良の補正
チップアレイ上にある複数のチップを処理するために、アライメントマークを用いて、プレアラインメント中に引き起こされるチップ間の位置合わせ不良を補正した。
図31に示したように、チップ上にある四角の形をした特徴部分より少なくとも1.5倍大きな四角の形をしたアライメントマークをそれぞれのチップに付けた。チップの境界は4つのアライメントマークによって規定された。従って、ソフトウェアプログラムはサイズに基づいてアライメントマークおよび特徴部分を認識することができる。チップ間の隙間はチップサイズよりかなり狭く、複数のチップが一度にスキャンされるので、アライメントマークの座標をプレートステージ座標として使用した。例えば、
図32に示した、チップがフレームの中心になく、チップが占める部分およびその周囲の隙間がフレーム部分より小さければ、9個のアライメントマーク(a-g)は、スキャンされたフレームの範囲内にある。同じチップおよび他のチップからのアライメントマークを区別するために、スキャンされたアライメントマーク間の距離を求めた。距離がチップサイズにほぼ等しいアライメントマーク(a~c)だけが同じチップに属している。一部のチップについては、4つ全てのアライメントマーク(e-f、g、およびh-i)は同じフレーム部分の範囲内になかった。次いで、このプロセスによって、隣接するフレームにある残りのアライメントマークを調べた。
【0181】
チップサイズがフレームサイズよりかなり大きい別の例では、
図33に示したように、それぞれのチップには2箇所の端部に2個のアライメントマークがあった。それぞれのアライメントマークは十字パターンとして5つの点P1、P2、P3、P4、およびP5を備えた。ここで、P1をP2につなぐ線ならびにP3およびP4をつなぐ線は中心交点P5を共有した。十字パターンを用いる代わりに、前述のように強度ヒストグラムまたはアライメントマークパターンのサイズを用いてパターンをバックグラウンドと区別するアルゴリズムを用いて、これらの5つの点を配置した。次いで、CCDカメラは5つの点(P1、P2、P3、P4、およびP5)を検出し、ソフトウェアプログラムは、これらの点を標準的な参照位置(P1'、P2'、P3'、P4'、およびP5')と比較した。P5'はフレーム中心にある。
【0182】
どちらの例でも、次いで、
図34および
図35に示したように、チップアレイの標準参照位置に対するアライメントマークの位置合わせ不良を補正するために、ソフトウェアプログラムが回転角シータ(θ)およびオフセット平行移動を計算した。θと様々な距離パラメータとの関係は以下:
によって示される。ADは位置合わせ距離であり、AO
XはX軸に沿った位置合わせオフセットであり、AO
YはY軸に沿った位置合わせオフセットであり、FDは特徴の距離であり、FO
XはX軸に沿った特徴オフセットである。FO
YはY軸に沿った特徴オフセットである。ステージ中心の周りを回転してステージを回転させることによってピラープレートを位置合わせすることに基づいて、1個のチップアレイ上にあるチップ間の位置合わせ不良を補正するための後の工程を
図36~39に示した。
【0183】
フレームスティッチング
次いで、それぞれのフレームからのデータを、それぞれの隣接するフレームとスティッチングした。本実施例において
図30に示したように、2つの隣接するフレームは5~10%または0.1mm重複している。位置合わせ座標に基づいてチップ上にある全ての特徴の位置を確かめるために、
図40に示したように、最初に、チップの隅の特徴の場所を特定した。隅の特徴から、次の特徴の場所を、FO
XおよびFO
Yを用いて計算した。FO
XおよびFO
Yの工程においてX軸およびY軸に沿ってくりかえし移動することによって、次の特徴の場所を特定した。
【0184】
次いで、同じグローバル座標を有する特徴を、画像スティッチングではなくリアルタイムでデータスティッチングした。これにより、画像スティッチングに起因する時間および不一致が無くなる。リアルタイムスティッチングは、画像を取得した後に、データを引き抜き、別の画像がスキャンされたときに連続しておよび同時に追加(スティッチング)される外部ファイルまたはデータ記憶装置に保存することを伴った。500kを超える特徴を有する超高密度マイクロアレイの画像をスキャニングおよびスティッチングするための総時間は10分未満であったのに対して、画像処理ソフトウェア、例えば、Genepixを使用した場合は35分であった。ハイスループットマルチスレッディングアルゴリズムによって、このスキャニングおよびスティッチングの総時間は数秒の範囲までさらに短縮された。
【0185】
図41は、超高特徴密度チップアレイのデータ解析の様々な工程をまとめたフローチャートを図示する。
【0186】
実施例11: 品質管理モニタリングシステム
本実施例は、超高特徴密度を有する高品質チップを保証するインラインおよびエンドオブライン品質管理(QC)モニタリングシステムについて説明する。
【0187】
インライン品質管理
製造ラインの終わりに達する前に測ることができる寸法を補正する、インライン品質管理モニタリングシステムの利点が本実施例において証明される。これによって、高品質チップの高収率を維持することでスループット効率が高まり、製造時間が短縮された。
【0188】
チップアレイの厚さのインライン品質管理
図42では、工程1において、光塩基、ポリマー、およびアミノ酸を含有する光塩基溶液でウェーハをコーティングし、85℃で90秒間ソフトベークした。次の管理工程2(QC1)では、予想規定値(表9)と比較するためにウェーハの厚さを測定およびモニタリングした。測定された厚さが指定基準の範囲内になければ、ウェーハのさらなる処理を止め、ウェーハをはがし、塗り直し、その後に、工程1および工程2を繰り返した。次いで、工程3でフォトマスクを用いてウェーハを248nmで露光した後に、工程4において85℃で90秒間ハードベークした。最後の工程5(QC2)では、予想規定値(表9)と比較するためにウェーハの厚さを再度、測定およびモニタリングした。測定された厚さが指定基準の範囲内になければ、ウェーハのさらなる処理を止め、ウェーハをはがし、塗り直し、次いで、再度、工程1~5を繰り返した。
【0189】
【0190】
本実施例では、インラインQCモニタリングシステムを、一組15個のウェーハに対して、それぞれのウェーハの厚さを連続モニタリングしながら試験した。試験結果を表10に列挙した。QC1で不合格になったウェーハは2個しかなく、QC2工程ではさらに2個が不合格になった。
【0191】
【0192】
インライン拡散およびオーバーレイ品質管理
さらなるインラインQCモニタリング工程は、拡散およびオーバーレイの変化をチェックする工程を含んだ。本実施例では、フォトマスクを用いてウェーハを248nmで露光し、ベークした後で、以下の通りに、光塩基の拡散パターンが、予想される標準パターンとマッチするかどうかを確かめるために、標準的な顕微鏡を用いて光塩基の拡散パターンを調節した。このモニタリング工程のために、
図43Aに示したように、標準的な試験拡散およびオーバーレイパターンをフォトマスクの予め決定された場所にエッチングした。
【0193】
それぞれのドットの間の距離は100nmであり、+X、-X、+Y、および-Y方向において等距離であった。ウェーハを標準的な条件下で露光した場合、顕微鏡下でのパターンは
図43Bに示したように現れた(露光およびベーク後の標準的なパターン)。標準的な条件で、露光エネルギーまたはウェーハ配置の差があった結果として得られた場合には、結果は標準的な拡散およびオーバーレイパターンからそれぞれ逸脱した。正しいおよび間違ったオーバーレイおよび拡散量のいくつかのテストケースを表11に列挙し、
図44A~Cに示した。ここで、間違ったオーバーレイまたは拡散パターンはそれぞれ、標準パターンから5%超逸脱している。
図44Aに示した正しい拡散およびオーバーレイパターンだけが合格し、ウェーハの処理が継続された。他の場合はウェーハの処理が止まり、ウェーハをはがし、塗り直し、インラインQCモニタリングシステムによって再評価された。
【0194】
【0195】
エンドオブライン品質管理
インラインQCモニタリングシステムにおいてウェーハの処理が完了した後に、チップの高品質をさらに保証するためにエンドオブライン品質管理を行った。本実施例には、3種類のエンドオブライン品質管理試験を記載した。最初の1種類の試験はカップリング効率、すなわちペプチド合成を評価し、最後の2種類では合成ペプチドの生物学的性能を試験する。
【0196】
品質管理試験1
それぞれの処理工程に関して少なくとも2個(最大25個)の異なる特徴があり、これらもインラインQCモニタリングシステムの間にフォトマスクを用いて露光した。それぞれの特徴のアミノ酸カップリングを、それぞれの特徴に連結されたフルオレセインを用いて別々に測定して、カップリング効率を求めた。次いで、結果を、表12に列挙したそれぞれの特徴の閾値合格判定基準と比較して、各ウェーハのステータスを確かめた。
【0197】
【0198】
本実施例では、5個一組の処理済みウェーハを試験した結果を表13に列挙した。両方のチップの場所において不合格になったウェーハは1個しかなかった。ウェーハが、全ての予め決定された場所の閾値強度基準に合格したら、次のエンドオブライン品質管理工程においてさらに処理した。
【0199】
【0200】
品質管理試験2
次のエンドオブライン品質管理工程は、一組の市販モノクローナル抗体を用いて、ウェーハにカップリングされた特定のペプチドの生物学的性能を試験する工程を含んだ。ウェーハ上に対応する抗原ペプチド配列を合成することによって、少なくとも5個(最大75個)一組の異なるモノクローナル抗体を試験した。次いで、ウェーハの生物学的性能を試験し、表14に列挙した抗体結合の閾値基準と比較した。
【0201】
【0202】
本実施例では、5個一組の処理済みウェーハを試験した結果を表15に列挙した。不合格になったウェーハは1個しかなかった。ウェーハが両方のエンドオブライン品質管理試験(試験1および試験2)に合格したなら、高品質であり、かつ使える準備が整っているとみなされた。
【0203】
【0204】
品質管理試験3
さらなるエンドオブライン品質管理工程は、市販抗体を用いて、ウェーハにカップリングされたペプチドの生物学的性能を試験する工程を含んだ。最初に、それぞれの市販抗体について、ペプチド配列中の特定のアミノ酸が抗体結合に必須であるかどうかを確かめた。あるアミノ酸がペプチドの一部である場合、ペプチドがそのアミノ酸を欠き、そのアミノ酸が他の任意のアミノ酸によって交換されているときに生物学的活性が低く、これに対して、対応するペプチドの生物学的活性が高いときに、そのアミノ酸は必須であるとみなされた。特定の抗体を結合するためにペプチドに必須であるそれぞれのアミノ酸を含む少なくとも1つのペプチド配列を確かめるために、様々な抗体ペプチド配列をチップ上で成長させた。
【0205】
例えば、配列:
について、Lを、CIT、A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、およびYからなる群より選択されるアミノ酸によって、一つずつ交換した。その後に、同様に配列中の残りのアミノ酸を一つずつ交換した。次いで、全ての配列をウェーハ上に合成し、前述の配列に対する市販抗体を用いて生物学的活性について試験した。
【0206】
本実施例では、ヤギ抗ウサギIgG、ヤギ抗マウスIgG、および抗シトルリン抗体(ab100932)を含む全ての試験市販抗体をABCAMから入手した。TBS緩衝液、PBST緩衝液、およびBSAをVWR Internationalから入手した。このアッセイでは、全ての配列を含むチップを96ピラープレート上に実装し、メタノールで5分間洗浄した後に、TBS緩衝液で5分間洗浄した。PBSTおよび1%BSAを含有する一次抗体溶液を、チップ上で、37℃で1時間インキュベートした。次いで、チップをPBSTで5分間、3回洗浄した後に、37℃で1時間の二次抗体インキュベーションを行った。二次抗体溶液は、PBST、1%BSA、および使用されている一次抗体に応じてヤギ抗ウサギIgGまたはヤギ抗マウスIgGを含有した。チップをPBSTで5分間、3回洗浄した後に、DI水で5分間、2回、洗浄した。
【0207】
図45A~Kは、それぞれ、以下の配列:
のアッセイ結果を図示する(太字イタリック体のアミノ酸は抗体結合に必須であった)。例えば、
図45Aに示した強度地図から、KWLDSは、配列:
における抗体結合に必須のアミノ酸であった。これらのアミノ酸の代わりに他のアミノ酸が用いられた場合、この配列は抗体結合に対する生物学的活性を全く示さなかった。
【0208】
この実験は、あるアミノ酸を、必須のアミノ酸がある特定の配列と相関付けた。次いで、この特定のアミノ酸をペプチド合成中にウェーハ層において成長させたときに、試験配列の生物学的活性を評価することによってカップリング収率をチェックするために、相関付けられた配列も設計の際に試験配列として成長させた。
【0209】
例えば、Kは、配列:
に必須のアミノ酸であった。従って、それぞれの層についてペプチド合成中にKを成長させたときはいつでも、設計の際に、対応する試験配列:
をおいた。12層のKを成長させた場合、対応する試験配列を成長させたウェーハ上には12箇所の異なる場所があった。
図46は、前記のアッセイを使用し、抗p53抗体濃度を変えた、異なるKポリマーの結合強度の結果を示す。
【0210】
別の例において、アミノ酸シトルリン(CIT)の生物学的性能を、シトルリンを含有する配列(YAT6SSP)、および他の任意のアミノ酸が存在する配列であるか否かとは関係なくシトルリンを含有するペプチドと特異的に反応する抗シトルリン抗体を用いて検証した。このチップは、一方がシトルリンを含み(YAT6SSP)、他方がシトルリンを欠き(YATRSSP)変異体配列として働く、両方の配列を備えた。ペプチド合成中にシトルリンが付加されるそれぞれの層について、この配列を成長させた。それぞれの合成工程(mer付加)について、抗シトルリン抗体を用いてシトルリンの生物学的性能を試験した。
【0211】
要約すると、エンドオブラインQCモニタリングシステムはフルオレセインカップリングを用いてウェーハを検証し、ウェーハ上のペプチド鎖合成中に付加された、それぞれのアミノ酸の生物学的性能を評価した。
【0212】
本発明は、好ましい態様および様々な他の態様に関して詳細に示され、説明されたが、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、形状および細部において様々な変更を加えることができることが関連分野の当業者によって理解されるだろう。
【0213】
本明細書の本文の中で引用された全ての参考文献、発行された特許、および特許出願はこれらの全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0214】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> VIBRANT HOLDINGS, LLC
<120> METHODS, SYSTEMS, AND ARRAYS FOR BIOMOLECULAR ANALYSIS
<150> US 61/866,512
<151> 2013-08-15
<150> US 61/805,884
<151> 2013-03-27
<150> US 61/765,584
<151> 2013-02-15
<150> PCT/US2013/025190
<151> 2013-02-07
<150> US 61/732,221
<151> 2012-11-30
<150> 61/707,758
<151> 2012-09-28
<160> 22
<170> PatentIn version 3.5
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<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 16
Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys
1 5
<210> 17
<211> 9
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 17
Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys
1 5
<210> 18
<211> 10
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 18
Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys
1 5 10
<210> 19
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 19
Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys
1 5 10
<210> 20
<211> 12
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 20
Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys Lys
1 5 10
<210> 21
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<220>
<221> VARIANT
<222> (4)...(4)
<223> Xaa = Citrulline
<400> 21
Pro Ser Ser Xaa Thr Ala Tyr
1 5
<210> 22
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 22
Pro Ser Ser Arg Thr Ala Tyr
1 5
画像化された第1の領域内および第2の領域内のマイクロアレイ表面に位置する特徴を解析するために第1の領域および第2の領域の回転された画像を合成する工程であって、解析のために、画像化された第1の領域および第2の領域の任意の重複部分が平均される、工程
をさらに含む、請求項2に記載の方法。