(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027514
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】塩素低減固体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/48 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
C10L5/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132654
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 萌
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】竹本 智典
(72)【発明者】
【氏名】吉川 知久
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA02
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015BB03
4H015BB10
4H015BB13
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】塩素が低減された固体燃料の効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】体積基準の粒度分布における累積90%粒子径が1.0mm以下である廃プラスチック熱分解炭化物を水洗する工程を含む、塩素低減固形燃料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準の粒度分布における累積90%粒子径が1.0mm以下である廃プラスチック熱分解炭化物を水洗する工程を含む、塩素低減固形燃料の製造方法。
【請求項2】
水の温度が50℃以下である、請求項1記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
【請求項3】
廃プラスチック熱分解炭化物と水との質量比が1:1.5~1:6である、請求項1又は2記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
【請求項4】
水洗時間が2分以上30分以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素低減固体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物や一般廃棄物として廃棄される廃プラスチックは、単純に焼却されるか、あるいは直接埋立て処分されていた。しかし、二酸化炭素排出量削減及び資源の有効活用の観点から、廃プラスチック中の有機成分を回収し、固体燃料として再利用することが検討されている。
【0003】
固体燃料は、例えば、廃プラスチックを加熱炉で加熱して熱分解し、有機成分を炭化物とすることにより製造することができる。しかし、廃プラスチックには、通常ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素含有プラスチックが含まれているため、製造される固体燃料には高濃度の塩素が残存しやすく、このような固体燃料を燃料として使用すると、加熱炉の腐食等の原因となるため、塩素の低減が求められている。
【0004】
そこで、塩素が低減された固体燃料の製造方法として、例えば、塩素含有プラスチックを熱分解して得られる炭化物を水洗する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、常温の水で水洗すると、塩素の低減が不十分となるため、好ましくは50℃以上の水で水洗するとされている。しかし、50℃の水を用いるには、撹拌槽の水温を長時間に亘って管理しなければならないため、温度制御が難しく、またコスト面でも不利になる。加えて、水洗により脱塩素するには、多量の水を要するため、塩素濃度や化学的酸素要求量(COD)の高い排水を大量に処理することが避けられない。そのため、塩素が低減された固体燃料を簡便な操作で効率よく製造可能な方法が求められている。
したがって、本発明の課題は、塩素が低減された固体燃料を簡便な操作で効率よく製造可能な固体燃料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み検討した結果、廃プラスチック熱分解炭化物を所定の粒度に制御することで、表面積の増大とともに塩素を多く含む有機成分が濃縮され、そしてこれを水洗することで、低い温度の少量の水で塩素が十分に低減され、しかも排水処理の負荷も軽減されるため、簡便な操作で効率よく塩素低減固体燃料を製造できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕体積基準の粒度分布における累積90%粒子径が1.0mm以下である廃プラスチック熱分解炭化物を水洗する工程を含む、塩素低減固形燃料の製造方法。
〔2〕水の温度が50℃以下である、前記〔1〕記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
〔3〕廃プラスチック熱分解炭化物と水との質量比が1:1.5~1:6である、前記〔1〕又は〔2〕記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
〔4〕水洗時間が2分以上30分以下である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の塩素低減固形燃料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塩素が低減された固体燃料を簡便な操作で効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の塩素低減固体燃料の製造方法の一例を
図1に示す。
以下、本発明の塩素低減固体燃料の製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
〔廃プラスチック〕
本発明においては、
図1に示されるように、先ず、廃プラスチックを準備する。
廃プラスチックとしては、プラスチックを含む廃棄物であれば特に限定されないが、例えば、使用済みのプラスチック製品や、工場等でのプラスチックの製造・加工時に生じる屑や不良品等を使用することができる。これら廃プラスチックには、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素含有プラスチックが通常含まれている。なお、廃プラスチックは、2以上を混合してもよく、土砂、金属、ガラス、紙、木くず等のプラスチック以外の異物が含まれていても構わない。
【0013】
廃プラスチックの具体例としては、例えば、シュレッダーダスト、建築廃プラスチック、農業廃プラスチック、漁業廃プラスチック、海洋廃プラスチックを挙げることができる。ここで、本明細書において「シュレッダーダスト」とは、工業用シュレーダーで産業廃棄物又は一般廃棄物を破砕し、金属を回収した後に廃棄される破片の混合物をいう。廃棄物としては、例えば、廃自動車、廃家電、自動販売機、OA機器が挙げられる。
【0014】
廃プラスチックの大きさは特に限定されないが、搬送時の閉塞トラブル防止、加熱時の伝熱の観点から、長径が50mm以下であることが好ましい。ここで、本明細書において「廃プラスチックの長径」とは、廃プラスチックのうち、最も大きな廃プラスチックを採取し、廃プラスチックの径が最大となる箇所を測定した値である。
【0015】
〔廃プラスチック熱分解炭化物〕
次に、
図1に示されるように、廃プラスチックを加熱して廃プラスチック熱分解炭化物を製造する。ここで、本明細書において「廃プラスチック熱分解炭化物」とは、廃プラスチックを熱分解して有機成分を炭化物としたものをいう。
【0016】
加熱装置としては、廃プラスチックを収容し、かつ所望の温度に設定できれば特に限定されないが、例えば、固定炉、ストーカー炉、ロータリーキルン炉、流動床炉、堅型炉、多段炉等を挙げることができる。また、加熱炉の形状は特に限定されず、例えば、筒状、横断面矩形状等の適宜の形状を取り得る。なお、加熱炉内には、廃プラスチックの供給口から排出口に向かって廃プラスチックを搬送するためのコンベヤを装着してもよい。
加熱温度は、廃プラスチックを熱分解して炭化できれば特に限定されないが、炭化物の熱量残存を考慮すると、300℃以上が好ましく、350℃以上が更に好ましく、そして650℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、550℃以下が更に好ましく、500℃以下がより更に好ましい。
加熱時間は、廃プラスチックを熱分解して炭化できれば特に限定されないが、30分以上が好ましく、45分以上がより好ましく、60分以上が更に好ましく、そして150分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、90分以下が更に好ましい。
【0017】
〔廃プラスチック熱分解炭化物の粒度調整〕
次に、
図1に示されるように、廃プラスチック熱分解炭化物の粒度調整を行う。
粒度調整は、所望の粒度となるように、廃プラスチック熱分解炭化物を破砕及び物理選別から選択される1以上の工程に供すればよい。これにより、廃プラスチック熱分解炭化物を所望の粒度に調整しやすくなる。
【0018】
(破砕)
廃プラスチック熱分解炭化物の破砕は、破砕機及び粉砕機から選択される1以上を使用すればよい。廃プラスチック熱分解炭化物の破砕は、2回以上行ってもよく、物理選別の後に1回以上行っても構わない。
破砕機としては公知の破砕機を適宜選択可能であるが、例えば、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、ロータリークラッシャーを挙げることができる。破砕機には、粒度調整目的に所望の篩目のスクリーンを装着することが可能であり、スクリーンを装着しない場合には、固定歯、回転歯、内壁等を所望のクリアランスに調整してもよい。また、振動篩、回転式篩等の篩選別機を使用することが可能であり、所望の篩目を装着すればよい。
粉砕機としては公知の粉砕機を適宜選択可能であるが、例えば、ディスクミル、ワンダーブレンダー、ロッドミル、ボールミル、ローラーミルを挙げることができる。
【0019】
(物理選別)
廃プラスチック熱分解炭化物には、金属、土砂、ガラス等の夾雑物が含まれているため、夾雑物除去や粒度調整を目的に、廃プラスチック熱分解炭化物を物理選別することができる。効率的に夾雑物を除去するために、物理選別は、廃プラスチック熱分解炭化物の破砕後に行うことが好ましい。
【0020】
物理選別としては夾雑物を除去できれば特に限定されないが、例えば、磁力選別、風力選別、比重選別、篩選別、渦電流選別を挙げることができる。物理選別は、2以上組み合わせても、1つの物理選別を2回以上行っても構わない。
【0021】
磁力選別は公知の磁力選別機を用いることが可能であり、例えば、ドラム式、プーリー式及び吊下げ式のいずれでもよく、特に限定されない。
磁力選別では、例えば、高磁力の磁場が存在するマグネットドラムと、マグネットドラムに巻き回されたベルトコンベヤ(移動式ベルト)と、ベルトコンベヤのベルト面上に試料を供給するフィーダとを有する磁力選別装置を用いて、磁着物と非磁着物に選別し、非磁着物が回収される。
磁力選別機の表面磁束密度は、磁着物除去の観点から、700~10000ガウスが好ましく、1000~7500ガウスがより好ましく、1500~5000ガウスが更に好ましい。
【0022】
風力選別は公知の風力選別機を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、ジグザグ式、内部循環式を挙げることができる。
風力選別において、例えば、内部循環式を用いた場合、ファンにより下から上方向に空気の流れを作ると、廃プラスチック熱分解炭化物の重量物は空気の流れに逆らって下方向に移動し、他方軽量物は空気の流れに乗って上方向に移動する。このようにして廃プラスチック熱分解炭化物は、重量物と軽量物とに選別され、軽量物が回収される。この場合、重産物に金属やガラス等の夾雑物が主体になるように、風力選別の風速を設定することが好ましい。例えば、風速は、5m/s以上が好ましく、7.5m/s以上がより好ましく、10m/s以上が更に好ましい。なお、風力の上限値は廃プラスチックの種類により適宜設定可能であるが、通常30m/s以下であり、好ましくは25m/s以下である。
【0023】
比重選別は公知の比重選別機を用いることが可能であり、乾式及び湿式のいずれでも構わないが、乾式のテーブル式比重選別機が好ましく、エアテーブルが更に好ましい。
比重選別において、例えば、エアテーブルを用いた場合、振動式テーブルの上面に供給された廃プラスチック熱分解炭化物は、振動式テーブルを通過する空気流によって振動式テーブルの上面から浮上した状態となり、振動式テーブルの傾斜方向に付与された振動により、比重の大きい重産物が下層に、比重の小さい軽産物が上層に移動し、下層の重産物は振動式テーブルの上面から摩擦力と振動力とを受けて斜め上方へ移動し、上層の軽産物は振動式テーブルの上面から摩擦力と振動力とを受けずに斜め下方へ押し流される。そして、振動式テーブルから重産物と軽産物が別々に排出され、軽産物が回収される。
【0024】
篩選別としては粒度調整可能であれば特に限定されないが、例えば、振動式篩、面内運動式篩、回転式篩、固定式篩等の篩選別機を使用することができる。篩選別では、篩上物と篩下物とに選別し、粒度調整された篩下物を回収する。
【0025】
渦電流選別は公知の渦電流選別機を用いることが可能であり、特に限定されないが、例えば、回転磁石式、直行ベルトコンベヤ式、回転円筒式を挙げることができる。
渦電流選別においては、例えば、コンベヤベルトの先端側に設けられた回転磁石体の移動磁界の電磁誘導作用を受けて内部に生じる誘導電流と移動磁界との相互作用によって、コンベヤベルトの先端側に搬送された廃プラスチック破砕物に回転磁石体の回転方向に推力を与え、コンベヤベルトの表面からこの推力と導電性物質に作用する重力との合成力の方向に導電性物質を飛び出させて除去し、非導電物質を回収する。
回転磁石体の回転数は、導電性物質除去の観点から、1500rpm以上が好ましく、3000rpm以上がより好ましく、4500rpm以上が更に好ましい。
【0026】
なお、
図1に示されるフローチャートにおいては、廃プラスチック熱分解炭化物を破砕し、破砕物を磁力選別して非磁着物を回収し、非磁着物を風力選別して軽量物を回収し、軽量物を再度破砕して所望の粒度に調整される。なお、磁力選別において回収した磁着物を、鉄スクラップとして回収することができる。
【0027】
粒度を調整した廃プラスチック熱分解炭化物の粒子径は、体積基準の粒度分布における累積90%粒子径(d90)が1.0mm以下であるが、塩素低減の観点から、0.9mm以下が好ましく、0.8mm以下が更に好ましい。また、粒度が細か過ぎると含水率が高くなる傾向にあることから、粒子径d90は、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.3mm以上が更に好ましい。ここで、本明細書において「粒度分布」とは、JIS Z 8801-1:2019「試験用ふるい-第1部:金属製網ふるい」に規定された篩を使用した篩分け法、及びJIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に基づき測定される、体積基準の粒度分布をいう。なお、粒度分布は、横軸を粒子径(μm)、縦軸を体積基準の頻度(%)とする分布曲線により表される。レーザ回折・散乱法粒度測定装置として、例えば、マイクロトラック(日機装株式会社製)を使用することができる。なお、本明細書においては「体積基準の粒度分布における累積90%粒子径」を「粒子径d90」とも表記する。
【0028】
〔水洗〕
次に、所望の粒度に調整した廃プラスチック熱分解炭化物を水洗する。廃プラスチック熱分解炭化物を粒度調整することで、表面積の増大とともに塩素を多く含む有機成分が濃縮されるため、水洗により塩素を十分に除去することができる。
水洗は、廃プラスチック熱分解炭化物を水と接触させることができれば特に限定されないが、例えば、廃プラスチック熱分解炭化物を水槽に入れ攪拌する方法、軽廃プラスチック熱分解炭化物を水に浸漬させる方法、廃プラスチック熱分解炭化物に水を散布する方法が挙げられ、ドラムウォッシャー等の市販の装置を使用することもできる。
【0029】
水の温度は、50℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましく、40℃以下が更に好ましく、35℃以下がより更に好ましく、そして5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、15℃以上が更に好ましい。即ち、好適な態様は、常温(20±15℃)であり、このような低い水温でも、塩素を十分に低減することが可能であり、しかも水温の管理を要しない。
水の使用量は、塩素低減、製造効率の観点から、(A)廃プラスチック熱分解炭化物と(B)水との質量比(A:B)として、1:1.5~1:6が好ましく、1:2~1:5がより好ましく、1:2~1:4が更に好ましい。このような少量の水で塩素を十分に低減でき、しかも排水処理の負荷も軽減できる。
水洗時間は、廃プラスチック熱分解炭化物や水の使用量により適宜設定可能であるが、2~30分が好ましく、2.5~20分がより好ましく、3~10分が更に好ましい。このような短時間でも、塩素を十分に低減することができる。
【0030】
〔固液分離〕
次に、水洗後の廃プラスチック熱分解炭化物を固液分離する。これにより、固形物として塩素が低減された固体燃料を回収することができる。
固液分離としては固形物と水とを分離できれば特に限定されないが、例えば、吸引ろ過、遠心分離を挙げることができる。
吸引ろ過は、当該技術分野で一般的に採用されている方法を用いることが可能であり、特に限定されない。
遠心分離の操作方式は、連続式でも、回分式(バッチ式)でも構わない。
遠心分離としては、例えば、遠心ろ過、遠心沈降が挙げられる。遠心分離は、複数回行っても、遠心沈降と遠心ろ過を組み合わせて行ってもよい。
【0031】
遠心ろ過は、遠心ろ過機を用いて行うことができる。遠心ろ過機には様々な形式が存在するが、本工程では特に限定されない。中でも、製造効率の観点から、連続式スクリュー排出型が好ましい。
遠心ろ過機のろ材としては、例えば、ろ布、スクリーンを挙げることができるが、孔径0.05mm以上のスクリーンを使用すると、効率よく固液分離できる点で好ましい。
遠心ろ過における遠心力は、通常200~2000Gであるが、製造効率の観点から、300~1500Gが好ましい。
【0032】
遠心沈降は、遠心沈降機を用いて行うことができる。遠心沈降機にも様々な形式が存在するが、本工程では特に限定されない。中でも、製造効率の観点から、連続式デカンタ型が好ましい。
遠心沈降における遠心力は、通常1000~3000Gであるが、製造効率の観点から、1500~3000Gが好ましい。
【0033】
このようにして、本発明の塩素低減固体燃料を製造することができる。得られた固体燃料は、塩素だけでなく、水分も低減されており、ハンドリング性が良好で、燃焼性に優れるため、そのままで窯前燃料として利用することができる。
また、廃プラスチック、廃畳、微粉炭、廃油等と混合して窯前燃料として利用してもよく、更に石炭と一緒に石炭ミルに投入して、乾燥・粉砕してもよい。
【0034】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、
図1に示される製造方法においては、風力選別において回収した重量物を比重選別し、重産物と軽産物とに分離し、重産物をスクラップとして回収することできる。また、比重選別された軽産物を渦電流選別し、金、銀、パラジウム、白金、銅等の有価金属を回収してもよい。このように、本発明の塩素低減固体燃料は、廃プラスチックのリサイクル方法としても有用である。
【実施例0035】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
本実施例で使用した装置を表1に示す。
【0037】
【0038】
本実施例で採用した分析方法を表2に示す。
【0039】
【0040】
実施例1~8
廃プラスチックとして電化製品・家具等を解体・破砕することにより回収されたシュレッダーダストを用い、これを篩目30mmの篩で篩選別した篩下を原料として使用した。そして、
図1に示すフローチャートにしたがって、塩素低減固体燃料を製造した。具体的には、以下のとおりである。
【0041】
<加熱工程>
外熱式ロータリーキルンに廃プラスチックを1000kg/hの速度で50t程度供給し、400℃で加熱して廃プラスチック熱分解炭化物を得た。ロータリーキルンから排出された熱分解炭化物は関節式ロータリークーラー、冷却スクリューコンベアにて冷却した。
【0042】
<粒度調整工程>
(破砕1)
加熱工程で得られた廃プラスチック熱分解炭化物をハンマークラッシャで破砕した。破砕後、破砕物を開口径8mmのスクリーンを備えた振動篩に通した。
(風力選別)
破砕1で得た篩下について風力選別機により風力選別し、軽量物(d90=1.2mm)を回収した。
(破砕2)
風力選別で得た軽量物をディスクミル、ワンダーブレンダー及びロッドミルから選択される1以上を使用して表3に示す粒子径となるように破砕した。そして、粒度を調整した廃プラスチック熱分解炭化物の塩素含有量を分析した。粒度調整した廃プラスチック熱分解炭化物の粒子径(d90)及び塩素含有量の分析結果を表3に示す。
【0043】
<水洗工程>
破砕2で得た粒度調整した廃プラスチック熱分解炭化物を表3に示す条件で水洗を行った。水洗した廃プラスチック熱分解炭化物を、ブフナー漏斗と真空ポンプを用いて吸引ろ過し、固液分離を行った。そして、水洗前の廃プラスチック熱分解炭化物と、固液分離により得られた固体燃料の塩素含有量及び含水率を分析した。その結果を表4に示す。
【0044】
比較例1、2
比較例1では、実施例1の風力選別で得た軽量物を水洗したこと以外、実施例1と同様の操作により、固体燃料を製造した。また、比較例2では、50℃の水で水洗したこと以外、比較例1と同様の操作により、固体燃料を製造した。そして、水洗前の廃プラスチック熱分解炭化物と、固液分離により得られた固体燃料の塩素含有量及び含水率を分析した。その結果を表4に示す。
【0045】
【0046】
【0047】
表4から、廃プラスチック熱分解炭化物の粒子径(d90)を特定値以下に調整し、それを水洗することで、低い温度の水を少量使用したにも拘わらず、塩素が十分に低減された固体燃料を効率よく製造できることがわかる。