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特開2023-27592再生ポリエステル樹脂及び再生ポリエステル樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027592
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】再生ポリエステル樹脂及び再生ポリエステル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/00 20060101AFI20230222BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20230222BHJP
   D01F 6/62 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
C08G63/00
C08G63/78
D01F6/62 306A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132793
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】天満 悠太
(72)【発明者】
【氏名】冨森 康裕
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 嘉祐
(72)【発明者】
【氏名】和田 啓暉
(72)【発明者】
【氏名】小野 勝則
【テーマコード(参考)】
4J029
4L035
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB02
4J029AB05
4J029AC01
4J029AD02
4J029AD10
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029BA03
4J029CB06A
4J029HA01
4J029JE162
4J029KA02
4J029KB16
4J029KG01
4J029KG02
4J029KJ08
4J029LB06
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB33
4L035BB89
4L035BB91
4L035DD19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リサイクルポリエステル原料の使用率が80%以上であって、各種の形態のポリエステル製品の製造に利用することができる再生ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を、80質量%以上含むポリエステル樹脂であって、(1)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、(2)カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であり、(3)平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を、80質量%以上含むポリエステル樹脂であって、下記の(1)~(3)を全て満足することを特徴とする再生ポリエステル樹脂。
(1)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、
(2)カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であり、
(3)平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である(ただし、平均昇圧速度は、下記の手順によって算出される値である:エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する:
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
【請求項2】
請求項1記載の再生ポリエステル樹脂を含有する成形品。
【請求項3】
請求項1記載の再生ポリエステル樹脂を含有する繊維。
【請求項4】
請求項1記載の再生ポリエステル樹脂を含有するフィルム。
【請求項5】
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、下記(1)~(4)の工程を全て含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。
(1)前記原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.04~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な再生ポリエステル樹脂及び再生ポリエステル樹脂の製造方法に関する。特に、本発明は、使用済ポリエステル製品、ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂を含むリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含み、異物の混入量が少なく、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の成形品に加工することができる再生ポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある)は、高融点で耐薬品性があり、また比較的低コストなため、繊維やフィルム、ペットボトル等の成形品等に幅広く用いられている。
これらのポリエステル製品は、製造段階や加工段階で屑の発生が避けられず、また使用後に廃棄処分される場合が多いが、焼却する場合には高熱が発生するため焼却炉の傷みが大きく、寿命が短くなるという問題がある。一方、焼却しない場合には、腐敗分解しないため半永久的に残ることになる。
近年、ゴミとして捨てられたプラスチック容器などが河川を経由して海洋へ流出し、波や潮流の作用で細かく破砕されたマイクロプラスチックが海洋生物の体内に蓄積、食物連鎖で濃縮され海洋生物の生態系に悪影響が出ていること、プラスチックが海洋汚染の一大原因となっていることが問題視され、使用量の削減や生分解性プラスチックに切り替える動きが全世界的に起きている。
【0003】
このようなプラスチック製品の使用量を削減する観点や、環境問題の観点から、資源を再利用するリサイクルが様々な方法で行われている。ポリエステル製品に関しても、その製造工程で発生したポリエステル屑をリサイクルする方法や一度市場に出回り廃棄された製品を回収、原料として再使用する方法が検討されている。
特に近年、繊維製品については、一定のリサイクル率を達成することで認定されるエコマークを付与した製品が普及している。
【0004】
リサイクルポリエステル原料をリサイクルする方法としては、各種の方法が提案されている。例えば、PET屑にメタノールを添加してジメチレンテレフタレート(以下「DMT」と表記することがある。)とエチレングリコール(以下「EG」と表記することがある。)に分解する方法(特許文献1)、PET屑にEGを添加して解重合した後、メタノールを添加してDMTを回収する方法(特許文献2)、PET屑をEGで解重合してオリゴマーとし、これを重縮合反応に用いる方法(特許文献3)等が提案されている。
【0005】
また、一旦製品となったPETボトルなどを再生する際に問題になるものとしては、ポリエステル樹脂中に添加した添加剤やボトル本体に付属するものとして、キャップ(アルミニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン)、中栓やライナー(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ラベル(紙、ポリスチレン等の樹脂、インク)、接着剤、印字用インクなどがある。
再生工程の前処理としては、まず、回収されたPETボトルを振動ふるいにかけて砂や金属などを除去する。その後、PETボトルを洗浄し、着色ボトルを分離した上で、荒い粉砕を行う。そして、風力分離によりラベルなどを取り除く。さらにキャップなどに由来するアルミ片を除いて、PETボトル片を細かく粉砕する。高温アルカリ洗浄により接着剤、蛋白質やかびなどの成分を除き、比重によりポリプロピレンやポリエチレンなどの異種成分を分離することを行う。
【0006】
しかしながら、これらの工程を経たとしても、特に、前記したようなポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の非ポリエステル樹脂を完全に分離することは困難であった。このため、上記したような特許文献1~3に記載のリサイクル方法で再生ポリエステル樹脂を得たとしても、非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えず、異物の混入量が十分に低減できたものではなく、バージンポリエステル樹脂同等の品質を有する製品を得ることはできなかった。しかも、特許文献1~3のような方法では、回収装置の設置、運転、維持等に多額のコストもかかり、実用性という点でも改善の余地がある。
【0007】
また、特許文献4記載の発明には、ポリエステル屑をエチレングリコールで解重合した後に、平均目開きが10~50μmのフィルターでろ過した後、再重合反応を行う方法が記載されている。そして、得られた再生ポリエステル樹脂は、異物の混入量が少なく、加工時の操業性に優れるものであることが示されている。しかしながら、この方法においても、上記のような非ポリエステル樹脂由来の異物の除去が十分に行えておらず、異物の混入量が十分に低減できたものではなかった。
【0008】
特に、ポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、繊維を製造しようとする際には、異物の混入量が生産性に大きく影響を及ぼす。繊維を製造する際には、溶融紡糸工程において孔径の小さいノズルから樹脂を押し出し、押し出された多数の糸状物をローラに引き取り、必要に応じて、延伸や熱処理工程を行い、さらに巻き取る工程を経る。この場合、異物が混入した樹脂を使用すると、溶融紡糸、延伸・熱処理、巻取工程のいずれにおいても糸切れのトラブルが生じやすく、安定した生産を実施することが困難となる。そして、この問題は、より細繊度化した繊維を製造しようとする場合により顕著になる。
【0009】
さらに、環境問題への意識の高まりから、リサイクル原料の使用率を高くした再生ポリエステル樹脂への需要が高まっている。リサイクル原料の使用率を80%以上、さらにはリサイクル原料の使用率を100%とした再生ポリエステル樹脂においては、前記したような異物混入の問題が顕著になり、また、熱安定性にも劣るものとなり、当然のことながら、溶融紡糸を行い、細繊度の繊維を得ることはより困難であった。
【0010】
従って、本発明の主な目的は、上記の問題点を解決し、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含む再生ポリエステル樹脂であって、各種の形態のポリエステル製品の製造に利用することができる再生ポリエステル樹脂を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭42-8855号公報
【特許文献2】特開昭48-62732号公報
【特許文献3】特開昭60-248646号公報
【特許文献4】特開2005-171138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題点を解決し、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を使用し、これらのリサイクルポリエステル原料に由来する成分の含有量が80質量%以上であって、各種の形態のポリエステル製品の製造に利用することができる再生ポリエステル樹脂を提供しようとするものである。また、このような本発明の再生ポリエステル樹脂を得ることができる製造方法を提供しようとするものである。
【0013】
本発明者等は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、リサイクルポリエステル原料を用いて特定の製造方法を採用することにより、バージンポリエステル樹脂と同等に、異物の混入量が少なく、熱安定性にも優れた再生ポリエステル樹脂を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明は、次の(イ)~(ホ)を要旨とするものである。
【0015】
(イ) a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を、80質量%以上含むポリエステル樹脂であって、下記の(1)~(3)を全て満足することを特徴とする再生ポリエステル樹脂。
(1)全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、
(2)カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であり、
(3)平均昇圧速度が0.6MPa/h以下である(ただし、平均昇圧速度は、下記の手順によって算出される値である:エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出する:
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
(ロ) (イ)記載の再生ポリエステル樹脂を含有する成形品。
(ハ) (イ)記載の再生ポリエステル樹脂を含有する繊維。
(ニ) (イ)記載の再生ポリエステル樹脂を含有するフィルム。
(ホ) a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、下記(1)~(4)の工程を全て含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。
(1)前記原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.04~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【発明の効果】
【0016】
本発明の再生ポリエステル樹脂は、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有しながらも、異物の混入量が少なく、かつカルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量が特定の範囲を満足し、熱安定性に優れるものである。このため、例えば溶融紡糸により繊維を得る工程、成膜によりシート又はフィルムを得る工程、ボトル等の成形品を得る工程において、比較的長期にわたる連続運転が可能となり、生産性良く各種の形態の製品を製造することができる。
【0017】
また、本発明の再生ポリエステル樹脂の製造方法によれば、複雑な工程や装置を必要とせず、操業性よく低コストで本発明の再生ポリエステル樹脂を得ることが可能であり、実用上のメリットが大きいものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の再生ポリエステル樹脂(以下、本発明樹脂と称することがある)は、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含むポリエステル樹脂である。
【0019】
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂は、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
【0020】
上記a)及びb)は、その形態等は限定されず、必要に応じてさらに粉砕、切断等の加工を行うことによりペレット化されていても良いし、あるいは溶融してペレット化されていても良い。
上記a)及びb)は、それぞれ単独で使用しても良いし、両者の混合物を用いても良い。
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料としては、結晶質又は非晶質のいずれのものであっても良い。従って、例えば熱処理を行っていない非晶質のポリエステル屑のペレット、熱処理を施した結晶質ペレット、結晶質ペレットと非晶質ペレットとの混合品等を使用することができる。本発明では、特に缶内への投入や解重合反応時にペレット同士の融着を防止する目的で結晶性のリサイクルポリエステル原料を用いることが好ましい。従って、上記a)又はb)の材料を熱処理により結晶化したもの(結晶化ペレット等)を好適に用いることができる。
【0021】
また、上記a)及びb)のリサイクルポリエステル原料の性状としては、限定的ではなく、上記a)及びb)の形態のままでも良いし、さらに裁断、粉砕等の加工を施して得られる裁断片、粉砕物(粉末)等のほか、これらを成形してなる成形体(ペレット等)等の固体の形態が挙げられる。より具体的には、ポリエステル屑の溶融物を冷却及び切断して得られるペレット、PETボトルのようなポリエステル成形品を細かく裁断した裁断片等が例示される。その他にも、上記のような裁断片、粉砕物(粉末)等を溶媒に分散又は溶解させて得られる液体の形態であっても良い。これらの原料を用いてポリエステル製品を製造する際には、必要に応じてこれらをその融点以上の温度で溶融させて融液として缶内へ投入することもできる。
【0022】
本発明の目的は、リサイクルポリエステル原料の使用率が高い再生ポリエステル樹脂を得ることであるため、本発明の再生ポリエステル樹脂は、上記a)及びb)の少なくとも1種であるリサイクルポリエステル原料に由来する成分を80質量%以上含有するものであり、中でも85質量%以上含有することが好ましい。そして、本発明の再生ポリエステル樹脂は、後述する本発明の製造方法により得ることができるが、リサイクルポリエステル原料に由来する成分が100%、すなわち、リサイクル原料のみからなる再生ポリエステル樹脂も容易に得ることが可能である。
【0023】
本発明樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、エチレングリコールは、全グリコール成分の80モル%以上であり、中でも85モル%以上であることが好ましい。エチレングリコールの含有量が80モル%未満であると、得られるポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性が劣るものとなりやすい。
【0024】
本発明樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下であり、その中でも3.5モル%以下であることが好ましい。特に、本発明の製造方法により得られる本発明樹脂においては、エチレングリコールを原料の一つとして用いるが、その際の副生成物としてジエチレングリコールが生じ得る。本発明樹脂は、その副生するジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量を4モル%以下とすることにより、優れた熱安定性を得ることができる。このため、繊維、射出成形体や各種のブロー成形体、シート、フィルム等の成形品を生産性良く得ることが可能となる。なお、ジエチレングリコールの含有量の下限値は、例えば0.5モル%程度とすることができるが、これに限定されない。
【0025】
また、本発明樹脂は、ポリエステルを構成する全酸成分の合計量を100モル%とするとき、80モル%以上がテレフタル酸であることが好ましい。つまり、酸成分としてテレフタル酸を主成分とするものである。酸成分中のテレフタル酸の割合は80モル%以上であり、中でもテレフタル酸の割合は90モル%であることが好ましい。テレフタル酸の割合が80モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し非晶性のものとなりやすいため好ましくない。
【0026】
また、本発明樹脂における、全グリコール成分中のエチレングリコール、ジエチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体等を用いることができる。
【0027】
本発明樹脂における、テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0028】
本発明樹脂は、後述する本発明の再生ポリエステル樹脂の製造方法において、通常はエチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるポリエチレンテレフタレートを得ることができるが、リサイクルポリエステル原料において、エチレングリコールとテレフタル酸以外の成分が存在する際には、これらの成分が共重合されたポリエステル樹脂が重縮合反応により生成する場合もある。このため、再生ポリエステル樹脂としては、主体となるポリエチレンテレフタレート以外に、酸成分又はグリコール成分として、上記に示す成分が共重合されていても良い。これらの成分は2種以上含まれていても良い。
【0029】
本発明樹脂中には、重縮合触媒が含まれており、また、用途に応じて添加される各種添加剤が含まれていてもよい。
まず、重縮合触媒としては、限定的ではないが、例えばゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物、亜鉛化合物、スズ化合物等の少なくとも1種を用いることができる。その中でも、特にゲルマニウム化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。得られる再生ポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。上記の各化合物としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、コバルト等の酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物等を用いることができる。
【0030】
重縮合触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して1×10-5モル以上とすることが好ましく、その中でも6×10-5モル以上とすることがより好ましい。上記使用量の上限は、例えば1×10-3モル程度とすることができるが、これに限定されない。
【0031】
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒も、重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、重縮合工程で重縮合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重縮合触媒の種類及びその含有量を考慮することが好ましい。
【0032】
用途に応じて添加される各種添加剤としては、溶融粘度を調整することができる脂肪酸エステル、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物、樹脂の外観を改良することができる色調調整剤、樹脂の白度を向上させるチタン化合物、樹脂の結晶性を向上させる結晶核剤等が挙げられる。
【0033】
脂肪酸エステルとしては、例えば蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0034】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0035】
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0036】
色調調整剤としては、酢酸コバルト等のコバルト化合物、酢酸マンガン等のマンガン化合物、染料(青系、紫系、赤系)、銅フタロシアニン系化合物等の色調調整剤が挙げられる。中でも、重縮合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、酢酸コバルトや染料が好ましい。
また、染料は、青系染料、赤系染料、紫系染料等を含有すると、色調が良好となり好ましい。
【0037】
なお、染料としては、カラーインデックス名で、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 122、SOLVENT BLUE 45等の青系の染料、SOLVENT RED 111、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、P IGMENT RED 263、VATRED 41等の赤系の染料、DESPERSE VIOLET 26、SOLVENT VIOLET 13、SOLVENT VIOLET 37、SOLVENT VIOLET 49等の紫系染料が挙げられる。中でも装置腐食の要因となりやすいハロゲンを含有せず、高温での耐熱性が比較的良好で発色性に優れた、SOLVENT BLUE 104、SOLVENT BLUE 45、SOLVENT RED 179、SOLVENT RED 195、SOLVENT RED 135、SOLVENT VIOLET 49が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0038】
チタン化合物としては、酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンは、ポリエステル樹脂の艶消し剤や白色顔料として一般的に使用されているが、本発明樹脂に適量の酸化チタンが添加されていることにより、繊維とした際の白度が向上し、良好な色調の織編物を得ることが出来る点で好ましい。酸化チタンの添加量としては、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.05~5質量部であることが好ましい。
【0039】
結晶核剤としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、合成ケイ酸及びケイ酸塩、亜鉛華、ハイサイトクレー、カオリン、塩基性炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、石英粉、ケイ藻土、ドロマイト粉、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、ケイ酸カルシウム、窒化ホウ素等;カルボキシル基の金属塩を有する低分子有機化合物、カルボキシル基の金属塩を有する高分子有機化合物、高分子有機化合物等が挙げられる。中でも、マイカ、タルク、高分子量有機化合物が好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0040】
本発明樹脂は、上記のような組成を有するとともに下記に示す特性値を有するものである。
(a)カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下
(b)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度が0.6MPa/h以下
なお、これらの特性値を有する本発明樹脂は、後述する本発明の製造方法により得ることができる。
【0041】
まず、本発明樹脂は(a)の特性値として、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であり、中でも30当量/t以下であることが好ましく、さらには25当量/t以下であることが好ましい。
本発明樹脂は、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であることにより、熱安定性に優れた性能を有しており、各種の成形方法により各種の成形品を生産性よく得ることが可能となる。
【0042】
本発明の再生ポリエステル樹脂の極限粘度は、特に限定されないが、通常は0.44~0.80程度であることが好ましい。また、本発明の再生ポリエステル樹脂は、後述するように、固相重合工程を経て高重合度化することで成形用途に用いることも可能である。この場合、得られる再生ポリエステル樹脂の極限粘度は0.80~1.25とすることが好ましい。なお、極限粘度(IV)は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0043】
本発明樹脂は(b)の特性値として、次の方法により測定される平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であり、0.5MPa/h以下であることが好ましく、中でも0.4MPa/h以下であることが好ましい。本発明における平均昇圧速度は、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量の多さの指標となるものであり、平均昇圧速度が小さいほど異物の混入量が少ないことを示すものである。なお、平均昇圧速度の下限値は、例えば0.01MPa/h程度とすることができるが、これに限定されない。
【0044】
平均昇圧速度の測定方法は、エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端にステンレス鋼製フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm)をセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより上記平均昇圧速度を算出するものである。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A)
【0045】
本発明樹脂は、後述する製造方法を採用することにより、各種無機物に由来する異物や非ポリエステル樹脂に由来する異物の混入量を低減することができるため、(b)の特性値である、昇圧試験機により測定した平均昇圧速度を0.6MPa/h以下にすることが可能である。
【0046】
前記の測定で用いるエクストルーダー、フィルター等は、本発明の規定を満たす限りは、公知又は市販のものを適宜使用することもできる。
【0047】
本発明では、必要に応じて、後記の実施例で示すように、測定結果に実質的に影響を与えない範囲内において、フィルターに補強材を付加しても良い。上記の測定方法では、フィルターに極めて高い圧力が加わるため、フィルター単体ではフィルターが変形又は破損するおそれがある。そのような場合は、フィルターを補強材で支持することが好ましい。補強材としては、網目状の金属部材等を用いることができる。より具体的には、フィルターの変形を防止できる強度を有し、かつ、測定結果に実質的に影響を及ぼさない粗い網目を有する金属製フィルターを補強材として好適に用いることができる。そして、このような補強材を上記フィルターの下流側に積層することにより用いることができる。
【0048】
次に、本発明樹脂の製造方法について説明する。本発明の製造方法においては、(1)~(4)に示す工程を順に行うことが重要である。
(1)前記原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.04~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る工程
(2)前記解重合体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程
(3)前記濾液に重縮合触媒を添加、混練し、反応生成物を得る工程
(4)前記反応生成物に温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う工程
【0049】
まず、(1)の解重合工程では、リサイクルポリエステル原料にエチレングリコールを、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.04~1.40となるように添加し、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る。
なお、本発明の製造方法において、解重合体の溶融粘度は、解重合時の熱処理温度で測定した値であり、ブルックフィールド社製VISCO METER DV2T型溶融粘度計を用いて測定するものである。
【0050】
また、リサイクルポリエステル原料に添加するエチレングリコールは、公知の方法で得られたものや市販のものを使用することができる。
【0051】
(1)の工程において、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料を投入する際には、撹拌しながら全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.04~1.40となるようにして、220~285℃の熱処理条件下で解重合を行い、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得る。
本発明の製造方法においては、この工程が重要である。つまり、本発明においては、エチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合を行うが、このとき、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料の全ての成分を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が、1.04~1.40となるようにしてエチレングリコールとリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合を行うものである。
【0052】
リサイクルポリエステル原料の投入量(添加量)は、全投入量を100質量部とする際に、65質量部以上とすることが好ましく、中でも70質量部以上、さらには80質量部以上であることが好ましく、85質量部以上であることが最も好ましい。また、エチレングリコールの投入量は、全投入量を100質量部とする際に、1~20質量部とすることが好ましく、中でも2~15質量部とすることが好ましい。
エチレングリコールの添加量が上記より少ない場合、リサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料同士がブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるため好ましくない。
【0053】
なお、本発明の製造方法により得られる再生ポリエステル樹脂のリサイクルポリエステル原料に由来する成分の含有量が100質量%未満であって、80質量%以上である場合は、(1)の工程において、エチレングリコールとリサイクルポリエステル原料に加えて、エチレンテレフタレートオリゴマーを添加して解重合を行ってもよい。エチレンテレフタレートオリゴマーを添加する際にも、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.04~1.40となるようにすることが必要である。
【0054】
エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、限定的ではないが、例えば2~20程度とすることができる。
【0055】
(1)の工程においては、上記解重合を行って得られる解重合体の溶融粘度を10~1500mPa・sとすることが重要である。
全グリコール成分/全酸成分のモル比を調整して解重合を行うこと、溶融粘度10~1500mPa・sの解重合体を得ることにより、リサイクルポリエステル原料に含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、(2)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができる。
【0056】
そして、重縮合触媒や用途に応じて添加される各種添加剤を加えて混練する(3)の工程において、重縮合触媒や各種添加剤を凝集させることなく、均一に混練することが可能となる。
その結果、(4)の工程である重縮合反応において、本発明の特性値として、ジエチレングリコールの含有量(共重合量)やカルボキシル末端基濃度が特定量以下のものであり、かつ異物の混入量が少ない再生ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。
【0057】
本発明の(1)の工程においては、上記した解重合反応により、リサイクルポリエステル原料はモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。
【0058】
解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外であると、得られる再生ポリエステル樹脂は、本発明で規定する、カルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量の少なくとも一方を満足しないものとなり、また、平均昇圧速度が高いものとなる。これは、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、リサイクルポリエステル原料中の各種の無機物や非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われないため、(2)の工程において、これらの異物をもれなく濾過することができず、(4)の工程の重縮合反応後に異物が析出し、その結果、平均昇圧速度が高い再生ポリエステル樹脂となる。
【0059】
また、(1)の解融合反応工程において、得られる解重合体の溶融粘度が10mPa・s未満であると、粘度が低くなりすぎて、異物のろ過時に配管とフィルター接合部分から液漏れが生じやすく、ろ過効率が悪く、異物を十分に濾過できず、生産性も悪化する。一方、解重合体の溶融粘度が1500mPa・sを超えると、粘度が高くなりすぎるため、解重合反応時の攪拌翼への負荷が大きくなり、さらに、異物のろ過時の昇圧も大きくなるため生産性が悪化する。
【0060】
本発明の製造方法において、(1)の工程で用いる反応器は、容量や攪拌翼の形状は、一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を併設している構造となっていることが好ましい。
リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。
【0061】
また、エステル反応器を使用して解重合反応を行う際には、リサイクルポリエステル原料とエチレングリコールを添加して行う解重合反応を複数回に分けて行う方法や、エチレングリコール中にリサイクルポリエステル原料を少量ずつ添加する方法を採用することが好ましい。
【0062】
解重合反応を行う際には、エステル反応器に代えて、溶融押出機を使用してもよい。溶融押出機を用いる方法では、押出機内でポリマーがシールされて押し出されるため、空気(特に酸素)と接触することがないためにポリマーの酸化分解が生じることなく、色調劣化、カルボキシル末端基の増加に伴う溶融ポリマーの粘度低下といった問題も発生しない。しかも、溶融押出機を用いると、常圧、加圧、減圧などのあらゆる圧力条件で反応させることができる。
溶融押出機としては、一軸の押出機、二軸の押出機のいずれであってもよいが、二軸押出機を利用する方が上記メリットが得られやすいため好ましい。
【0063】
さらに、(1)の工程で溶融押出機を使用する際には、押出機内部にエチレングリコールを供給することで、押出機内部で解重合反応が進行する。リサイクルポリエステル原料を供給するとき、エチレングリコールを添加しつつ溶融押出機に通すことで低粘度化させやすく、先端ノズルからの吐出がスムーズとなる。また、圧力条件を変化させて低粘度化させることで溶融押出機の溶融温度(解重合反応の温度)を下げることもできる。
【0064】
解重合体の溶融粘度を本発明の範囲内のものにするには、解重合時の全グリコール成分/全酸成分のモル比、熱処理温度、熱処理時間、圧力等を適宜調整することにより可能となる。
【0065】
(1)の工程で行う解重合時の反応温度は、反応器や溶融押出機の内温を220~285℃の範囲に設定して行うことが好ましく、中でも内温を245~280℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が220℃未満の場合には、解重合体の溶融粘度を1500mPa・s以下にするには、長時間の熱処理が必要となり、操業性が悪くなるとともに得られる再生ポリエステル樹脂は、色調が悪化したり、ジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなる。
一方、反応温度が285℃を超える場合は、解重合体の溶融粘度が低くなりすぎたり、得られる再生ポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量やカルボキシル末端基濃度が高くなる。
なお、解重合時の反応時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、4時間以内が好ましく、ジエチレングリコールの副生量を抑えること、ポリエステルの色調悪化を抑える観点から、2時間以内とすることがより好ましい。
【0066】
(2)の工程においては、(1)の工程で解重合反応を行った解重合体を、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて異物を濾過する。上記したように、(1)の工程の条件で解重合反応を行い、特定範囲の溶融粘度の解重合体を得ることにより、リサイクルポリエステル原料の使用量が多い場合であっても、これらの原料中に多く含まれる各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われる。このため、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させることにより、これらの析出した異物をもれなくフィルターで捕捉し、異物の混入量の少ない濾液を得ることができる。
濾過粒度が25μmより大きいフィルターを使用すると、解重合体中の異物を十分に除去できず、得られる再生ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて紡糸を行うと、ノズルパックの昇圧や切糸が生じる。一方、濾過粒度が10μmよりも小さいフィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となり、また、操業性も悪化する。
【0067】
また、本発明の製造方法の(2)の工程で使用できるフィルターとしては、一般的なもので特に問題ないが、スクリーンチェンジャー式のフィルターやリーフディスクフィルターやキャンドル型焼結フィルターなどが挙げられる。
【0068】
そして、本発明の製造方法の(3)の工程においては、上記の工程(2)を経て得られた濾液に、前記したような重縮合触媒を添加し、混練し、反応生成物を得る。(3)の工程では、各種用途に応じて添加する添加剤も、重縮合触媒とともに添加し、混練することが好ましい。なお、各種用途に応じて添加する添加剤は、前記したものを用いることができる。
(3)の工程での混練を行う際の温度は、(4)の工程で重縮合反応を行う温度のプラスマイナス10℃の範囲内とすることが好ましい。
【0069】
次に(4)の工程として、重縮合反応槽において、(3)の工程で得られた反応生成物に、温度260℃以上、1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。
重縮合反応温度が260℃未満であったり、重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えると、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなったり、重縮合反応が進まず、再生ポリエステル樹脂を得ることができない。
重縮合反応温度は、中でも270℃以上とすることがより好ましい。ただし、重縮合反応温度が高過ぎると熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化したり、熱分解により末端基量(COOH)が高くなるため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、285℃以下とすることが好ましい。ここで得られる再生ポリエステル樹脂(プレポリマー)の極限粘度は0.44~0.80であることが好ましい。
【0070】
さらに再生ポリエステル樹脂の極限粘度を上げるためには、重縮合反応により得られたプレポリマーに固相重合を行うことが好ましい。このとき、プレポリマーをダイス状、円柱状などの任意の形状のチップとし、該ポリエステルチップを結晶化装置に連続的に供給し150~190℃の温度で結晶化をさせた後、乾燥機に供給し190℃以下の温度で4~16時間の範囲で乾燥後、予備加熱機に送り2~5時間の範囲で下記固相重合温度まで加熱した後、固相重合機へ連続的に供給し固相重合反応を行うことにより、目標の極限粘度のポリエステル樹脂を得ることができる。固相重合は、窒素ガスなどの不活性ガス下で行うのが好ましい。固相重合は通常170~230℃の範囲内の温度で行うのが好ましく、180~220℃の範囲内の温度行うのがより好ましい。また、重合時間は20時間~80時間の範囲で、固相重合機内にて反応させることにより行う。
【0071】
本発明樹脂は、ブロー成形、射出成形、延伸法などを採用して、色調、透明性に優れた成形品(ブロー成形品、射出成形品、シート、フィルム等)を得ることができ、また、溶融紡糸により繊維を得ることができる。
【0072】
本発明樹脂を含有する成形品は、例えば本発明樹脂を含む原料を用いてプレス成形、押出成形、圧空成形、ブロー成形等の各種の成形方法を適用することにより製造することができる。これにより、容器をはじめ、各種の部品を提供することができる。本発明樹脂は、バージンのポリエステル樹脂に近い特性を有し、熱安定性に優れているという理由から、特にブロー成形品の製造に適している。従って、本発明樹脂を含む原料の溶融物からパリソンを得る工程及び前記パリソン内部に気体を吹き込む工程を含む成形体の製造方法を好適に採用することができる。これによって、容器等の成形体を製造することができる。
【0073】
本発明樹脂を含有するフィルムの場合は、本発明樹脂を含む原料を用いて、公知のフィルム製膜法によって成形することができる。例えば、上記原料の溶融物をTダイから押出後、キャスティングロールで冷却して未延伸シートを作製する。本発明樹脂は、異物の含有量が比較的少なく、熱安定性に優れているため、MD及びTD方向への延伸を操業性良く行うことができる。延伸方法としては、一軸延伸又は二軸延伸のどちらでも良く、二軸延伸方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれの方法も採用することができる。そして、バージンポリエステル樹脂を用いた場合とほぼ同等の強度、伸度等の特性値を有し、かつ、透明性に優れたポリエステルフィルムを得ることができる。
フィルムの厚みは、限定的ではないが、通常は10~50μmの範囲内で適宜設定することができる。また、必要に応じて、他の層(例えば、接着層、ヒートシール層、表面保護層、印刷層、意匠層等)と積層して積層体として使用することができる。
【0074】
本発明樹脂は前記したように、ジエチレングリコールの含有量、カルボキシル末端基濃度が特定量以下であることにより、熱安定性に優れている。このため、上記のような成形品を得る際には、厚さ斑などが生じにくく、均整度の高い成形品を操業性よく得ることができる。さらに、本発明樹脂は前記したように、平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であり、異物の混入量が少ないものである。樹脂中に存在する異物としては、無機物や非ポリエステル樹脂由来の異物が想定されるが、これらの異物が少ないことによって、表面外観が良好で耐衝撃性や強度に優れた成形品を得ることができる。
【0075】
成形品の場合は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.1~1.0質量%含有することで極限粘度の低下や成形後の色調悪化を防ぐことができる。
また、後述するように、成形品の場合は、重合触媒としてゲルマニウム系化合物及び、コバルト化合物を含有することが、さらには染料を含有することが好ましい。
【0076】
ゲルマニウム系化合物は、ポリエステルの酸成分1モルに対し5.0×10-5モル~3.0×10-4モル含有することが好ましい。5.0×10-5モルよりも少ないと、目標の重合度のポリエステル樹脂を得ることが困難となる。一方、3.0×10-4モルを超えると、コバルト化合物とゲルマニウム化合物の反応による副生成物により、ポリエステルの経時安定性が悪くなり、長期保存後のポリエステル樹脂組成物の極限粘度の低下や色調の悪化が起こるため、好ましくない。
【0077】
ゲルマニウム系化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド等が挙げられ、重縮合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0078】
コバルト化合物の含有量は、ポリエステルの酸成分1モルに対し1.0×10-5モル~1.0×10-4モルであることが好ましく、中でも2.0×10-5モル~8.0×10-5モルであることが好ましい。
1.0×10-5モルよりも少ないと。ポリエステルの色調が悪くなる。一方、1.0×10-4モルを超えるとポリエステル樹脂の経時安定性も悪くなる。コバルト化合物としては、酢酸コバルト、蟻酸コバルト、塩化コバルト、酸化コバルト等が挙げられ、重縮合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、酢酸コバルトが好ましい。
【0079】
染料は、前述したものを用いることが好ましく、含有量は30ppm以下であることが好ましい。30ppmを越えるとポリエステルの透明性が低下したり、くすんだ発色となることがある。
【0080】
本発明樹脂を含有する繊維の場合は、例えば本発明樹脂を含む原料を溶融し、紡糸する工程を含む製造方法によって繊維を製造することができる。これにより、例えば単糸繊度が0.8デシテックス以下(好ましくは0.6~0.3デシックス)の極細繊維も製造することができる。紡糸方法等は、公知の条件に従って実施することができる。
【0081】
本発明樹脂は、前記したように異物の含有量が比較的少なく、バージンポリエステル樹脂と同等の特性を有しているため、溶融紡糸、延伸・熱処理、巻取工程のいずれにおいても糸切れのトラブルが生じにくく、生産性良くポリエステル繊維を得ることができる。
【0082】
本発明樹脂を含有する本発明の繊維としては、例えばモノフィラメント、マルチフィラメント等のいずれであっても良く、また長繊維、短繊維等のいずれであっても良い。
【0083】
また、本発明樹脂を含有する成形品としては、本発明樹脂を溶融紡糸し、そのままネットコンベア上に開繊・堆積させてウエブを形成するスパンボンド法により得られる不織布や、本発明樹脂を溶融紡糸し、紡糸ノズルの周囲から高圧エアを噴射して極細繊維を集積させてウエブを形成するメルトブローン法により得られる不織布が挙げられる。本発明樹脂は、前記したように異物の含有量が少ないため、スパンボンド法やメルトブローン法においても良好に溶融紡糸が可能である。
スパンボンド法においては、紡糸ノズルより紡出した糸条は、公知の冷却装置を用いて冷却した後、吸引装置を用いて牽引細化して引き取ればよい。牽引細化の際の速度は、2500m~5000m/分程度に設定すればよい。また、スパンボンド法による連続繊維の単繊維繊度は0.5~10デシテックス程度の任意の繊度とすればよい。スパンボンド法により形成したウエブは、熱エンボスロール等に通して熱処理を行うことや、ニードルパンチ処理等により繊維同士を交絡させること等による一般的な不織布化手段により、不織布とすればよい。
【0084】
本発明樹脂を含有する成形品、本発明樹脂を含有するフィルム、本発明樹脂を含有する繊維は、いずれも本発明樹脂の含有量は、成形品やフィルム、繊維を構成する樹脂の50質量%以上であることが好ましく、中でも60質量%以上、さらには80質量%以上であることが好ましく、最も好ましくは100質量%である。成形品やフィルム、繊維を構成する樹脂中の本発明樹脂の割合が50質量%未満であると、リサイクル原料の使用率が低いものとなり、環境配慮型の製品とすることが困難となる。
【0085】
本発明の繊維が短繊維の場合は、例えば単糸繊度0.1~25.0デシテックス、強度0.1~6.0cN/デシテックス、伸度20~500%の特性値を有するものを得ることができる。本発明樹脂は前記したように、ジエチレングリコールの含有量、カルボキシル末端基濃度が特定量以下であることにより、熱安定性に優れている。このため、上記のような短繊維を得る際には、紡糸、延伸工程での単糸融着が抑制され、単糸繊度のバラツキが生じにくく、均整度の高い繊維を操業性よく得ることができる。また、紡糸、延伸工程での単糸融着が抑制されるため、湿式不織布用途に用いられる場合には、水中での単糸分散性が良好となる。
【0086】
さらに、本発明樹脂は前記したように、平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であり、異物の混入量が少ないものである。樹脂中に存在する異物としては、無機物や非ポリエステル樹脂由来の異物が想定されるが、これらの異物が少ないことによって、本発明の繊維を用いて得られる不織布等の製品の品位や強度が向上する。
【0087】
また、本発明樹脂が熱安定性に優れ、異物の量が少ないことにより、延伸工程にてフロー延伸を行うことが可能であり、単糸繊度0.1~0.03デシテックスの極細繊維も得ることができる。フロー延伸は使用する樹脂のガラス転移温度と、昇温結晶化温度の間の温度で延伸を行うものであり、未延伸繊維の配向を抑制しながら、繊維径を細くすることが可能となる。なお、より安定したフロー延伸を行うためには使用するポリエステルのガラス転移温度より10℃以上高い媒体中で延伸することが望ましい。また、媒体としては水や水蒸気を用いることが好ましく、より好ましくは、80℃以上110℃未満の温水中や、110℃未満の湿熱中で延伸を行うことが好ましい。
【0088】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維を溶融紡糸する際に滑剤となる粒子を添加してもよい。滑剤は、ポリエステルに対して不活性であることが好ましく、例えば、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウムなどがあげられる、平滑性と粒子の粒度分布の観点から、中でも酸化チタンを用いることが好ましい。滑剤を添加することで紡糸、延伸工程での単糸融着をより抑制することができるため、湿式不織布用途に用いられる場合には、水中での単糸分散性が良好となる。添加方法については、複合繊維の製糸段階のいずれかの過程で添加すればよく、添加方法としては、マスターバッチ方式、リキッドカラー方式等が挙げられるが、溶融紡糸時の安定性、取扱性等より、マスターバッチ方式が好ましい。なお、マスターバッチ方式を採用する場合、原料ペレットの段階で計量混合して溶融紡糸する方法、別々に溶融させたポリマーを計量混合して紡糸する方法等が挙げられるが、いずれの方法で行ってもよい。
【0089】
本発明の繊維(短繊維)は、不織布用途に好適に用いることができるが、本発明の繊維を使用して得られる不織布は、本発明の繊維のみからなるものであっても、本発明の繊維以外の繊維を含むものでもよい。例えば、本発明の繊維を主体繊維とし、本発明樹脂よりも融点の低いポリエステル樹脂からなる繊維をバインダー繊維として用いた不織布が挙げられる。
【0090】
本発明の繊維を使用して得られる不織布は乾式であっても、湿式であっても良く、不織布の目付は特に限定するものではない。本発明の繊維を主体繊維とする場合、不織布の形態としては、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、湿式不織布(抄紙)などが挙げられる。なかでも、本発明の繊維は高品位な極細繊維が得られるため、本発明の繊維として極細繊維を用いた不織布は、高品位かつ均一性、多孔性に優れるものとなり、水処理用フィルターなどの各種工業用フィルター、セパレータ用途に好適に用いることができる。
【0091】
乾式不織布の製造法について一例を挙げる。本発明の繊維を主体繊維とし、本発明の繊維以外のバインダー繊維と混合して乾式不織布を得る例であり、混合する際の本発明の繊維とバインダー繊維の割合は不織布の要求特性に応じて敵宣選択すれば良いが、本発明繊維の割合は、10~90質量%程度が好ましい。これらの両繊維(構成繊維となる繊維)をカード機に投入し、解繊して乾式ウエブを作製する。得られたウエブを熱風処理がなされる連続熱処理機にて、バインダー繊維を構成する樹脂が融解又は軟化する温度で熱接着処理を施し、構成繊維同士が熱接着により一体化した乾式不織布を得る。
【0092】
湿式不織布の製造法について一例を挙げる。乾式不織布と同様、本発明の繊維を主体繊維とし、本発明繊維以外のバインダー繊維と混合して湿式不織布を得る例であり、混合する際の本発明の繊維とバインダー繊維の割合は不織布の要求特性に応じて適宜選択すれば良いが、本発明の繊維の割合は、10~90質量%程度が好ましい。これらの両繊維(構成繊維となる繊維)をパルプ離解機を用いて攪拌、解繊工程を行った後、抄紙機にて湿式ウエブを作製する。得られたウエブを熱風処理がなされる連続熱処理機にて、バインダー繊維を構成する樹脂が融解又は軟化する温度で熱接着処理を施し、構成繊維同士が熱接着により一体化した湿式不織布を得る。
【0093】
本発明の繊維が長繊維の場合は、溶融紡糸により、単糸繊度が0.8デシテックス以下(好ましくは0.6~0.3デシックス)の極細繊維も得ることができる。このとき、エクストルーダー型溶融紡糸機を用い、本発明樹脂を温度280~310℃の温度範囲で溶融し、紡糸ノズルより紡出し、500~4000m/分の紡糸速度で巻き取る。得られた未延伸糸を延伸装置にて延伸温度20~200℃、延伸倍率1.1~5.0倍で延伸し、巻き取ることにより得ることができる(延伸糸の場合)。
【0094】
また、本発明の繊維に延伸を行わない場合には、本発明樹脂を温度280~310℃の温度範囲で溶融し、紡糸ノズルより紡出し、2800~8000m/分の紡糸速度で巻き取ることにより得ることができる(未延伸糸、部分配向未延伸糸の場合)。
【0095】
さらには、本発明の繊維を仮撚加工糸とする場合には、上記のように延伸を行わずに巻き取った繊維に対して、加工速度100~700m/分、延伸倍率1.10~1.30倍の条件で仮撚加工を行うことが好ましい。
【実施例0096】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
〔再生ポリエステル樹脂の特性値〕
(a)解重合体の溶融粘度
製造工程(1)で得られた解重合体を、ブルックフィールド社製VISCO METER DV2T型溶融粘度計を用い、解重合時の処理温度と同じ温度で測定した。
(b)極限粘度
得られた再生ポリエステル樹脂を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
(c)ポリエステル樹脂の組成
得られた再生ポリエステル樹脂を、重水素化トリフルオロ酢酸と重水素化クロロホルムとの容量比が1/11の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製JNM-ECZ400R/S1型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
【0097】
(d)カルボキシル末端基濃度
得られた再生ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
(e)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度
得られた再生ポリエステル樹脂を、エクストルーダーにて300℃で溶融し、エクストルーダーの先端にフィルターとして、ステンレス鋼製綾畳織フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm、粘性抵抗係数(m-1):2.60×10、慣性抵抗係数:5.14×10、上條精機社製)をセットし、さらにその背面(下流側)に補強材(ステンレス製平織金網(呼び寸法メッシュ:40メッシュ、織り方:平織、線径:0.21mm(株)上條精機製)を積層した後、ポリマー吐出量を29.0g/分として、フィルター圧力を昇圧試験機;アサヒゲージ社製「MES-Y44D型」検出器を用いて測定する。前記の昇圧試験機を用いた昇圧試験を12時間連続して行い、昇圧試験を始める際の初期圧力値(MPa)(ポリエステル樹脂がフィルターを通り始めてから5~10分の間の圧力の最小値を初期圧力とする。)と、12時間経過時点の最終圧力値(MPa)の値から、下記計算式により平均昇圧速度を算出した。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12
【0098】
(f)融点、ガラス転移温度
得られた再生ポリエステル樹脂を、パーキンエルマー社製示差走査型熱量計(Diamond DSC)を用いて、窒素気流中、温度範囲25℃~280℃、昇温(降温)速度20℃/分、試料量8mgで測定した。
【0099】
〔短繊維の評価〕
(g)操業性(切糸)
溶融紡糸工程における切れ糸回数で操業性を評価した。紡糸量1トンあたりの切れ糸回数が5回未満であり、かつ得られた短繊維の単糸密着がない場合を「○」とし、それ以外の場合を「×」とした。
(h)水中分散性
2000cmのビーカーに30℃の水1kgを秤取し、そこへ得られた短繊維10gを投入し、DCスターラー(攪拌ペラは3枚スクリュー型で直径は約50mm)で回転数850rpm、攪拌時間2分間の条件で攪拌した後の分散状態を、目視により結束繊維の数をカウントし、下記の3段階で評価した。なお、○~△であれば合格とした。
評価 結束繊維の数
○・・1個以下
△・・2~5個
×・・6個以上
(i)短繊維の繊度
JIS L1015 8.5.1 B法により測定した。
【0100】
〔長繊維の特性値、評価〕
(j)強伸度
テンシロンRTC-1210(オリエンテック社製)を用いてJIS L 1013に基づいて測定した。
(k)毛羽数
部分配向未延伸糸を用いて、整経機を用いて毛羽数(個/10m)を測定した。測定は繊維長3×10mで行った。
【0101】
(l)紡糸性
部分配向未延伸糸を得る際の、溶融紡糸時の糸切れの状況を、24時間連続して溶融紡糸を行った際の1錘あたりの糸切れ回数により、以下のように3段階で評価した。
○・・糸切れ回数が0回であった。
△・・糸切れ回数が1~2回であった。
×・・糸切れ回数が3回以上であった。
(m)延伸性
部分配向未延伸糸を延伸する際の糸切れの状況を、10時間連続して100錘で延伸を行った際の切断回数(合計回数)により、以下のように3段階で評価した。
○・・切断回数が0~1回であった。
△・・切断回数が2~4回であった。
×・・切断回数が5回以上であった。
【0102】
〔ブロー成形品の評価〕
(n)成形性
得られた容器(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格したサンプルの本数を示した。
(о)ヘーズ
得られた容器から切り出してサンプル片(20個)を作成し、濁度を日本電色工業社製の濁度計 MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数20の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、6%以下であれば透明性に優れていると判定した。
(p)耐衝撃性
(n)成形性の評価にて、合格となった成形品(サンプル数100本)に、水道水340mlを充填し、室温下にて、Pタイル上に、200cmの高さから、成形体の底面を下向き、側面を下向きにして成形体を1回ずつ落下させた。このとき割れなかった成形体の本数で耐衝撃性を評価した。なお、90本以上の場合、耐衝撃性が良好であると評価した。
【0103】
〔フィルムの評価〕
(q)引張強度(MPa)
島津製作所製DSS-500型オ-トグラフを使用し、JIS K7127に準じて引張強度を測定した。実施例、比較例で得られた二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムのTD方向の中央部を幅10mm、長さ150mmにMD方向、TD方向にそれぞれ切り出したものを試料とした。測定長100mm、引張速度500mm/minの条件で測定を行い、次式により求めた。
引張強度(MPa)=破断時の引張荷重(N)/測定試料の元の平均断面積(mm
【0104】
(r)ヘーズ(%)
日本電色社製ヘーズメーター(NDH4000)を用い、JIS K7136に準じて実施例、比較例で得られた二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムのTD方向の中央部を測定した。
【0105】
(s)操業性
ポリエステル樹脂フィルムを連続して生産した状況において、下記の基準で評価した。 ○・・24時間以上連続して操業することができた。
×・・24時間の連続操業中に、Tダイのリップ面の汚染、フィルムの破断、ロール汚染等によって、フィルムを生産できない状況に陥った。
【0106】
実施例1
〔再生ポリエステル樹脂の製造〕
リサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)35.9質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを4.1質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、53.8質量部のリサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)を約30分かけて定量投入したのち、エチレングリコール6.2質量部を追加で投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.35となるように投入した。
その後、230℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行い、230℃での溶融粘度が80mPa・sの解重合体を得た。
そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した。このとき、解重合体を前記フィルターを通過させることにより濾液を回収した。
PC缶において、前記濾液に重縮合触媒として三酸化アンチモンを得られるポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して、1.0×10-4mol、色調調整剤として酢酸コバルトを0.2×10-4mol、二酸化チタン0.23質量部を加え、温度270℃で混練し、反応生成物を得た。
次に、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度270℃で2.5時間、重縮合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.73)を得た。
【0107】
〔短繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂を用い、孔数2010H、孔径0.18mmの紡糸口金を用い、吐出量334g/分、紡糸温度290℃、紡糸速度1176m/分で溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を収束し、80ktexのトウとし、延伸温度60℃、延伸倍率2.8倍の条件で延伸した。次いで、油剤を付与後、トウの水分率が約18質量%となるように絞り、ドラム式カッターで5mmの長さに切断し、単糸繊度0.5dtexのショートカット繊維を得た。
【0108】
〔長繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂をエクストルーダー型溶融紡糸機によって、樹脂温度295℃、濾過粒度20μmのフィルターを備えた紡糸ノズル(孔径0.15mm、孔数84ホール)より紡出し、2900m/分の紡糸速度で巻き取り、繊度45dtexのマルチフィラメント糸(部分配向未延伸糸)を得た。
【0109】
実施例2~7、11~13、比較例1~2、6~9
〔再生ポリエステル樹脂の製造〕
解重合反応時に添加する、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料、エチレンテレフタレートオリゴマーの添加量、G/A、解重合反応時の熱処理温度、溶融粘度を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、解重合反応を行った。
また、濾液を回収する工程におけるフィルターの濾過粒度、重縮合反応工程における熱処理温度を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして再生ポリエステル樹脂を製造した。
〔短繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、単糸繊度0.5dtexのショートカット繊維を得た。
〔長繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメント糸(部分配向未延伸糸)を得た。
【0110】
実施例8
〔再生ポリエステル樹脂の製造〕
二軸押出機にて、リサイクルポリエステル原料(使用済み製品からなる再生PETフレーク)57.7質量部を、溶融温度280℃で溶融させ、押出機内部にエチレングリコール2.0質量部を供給した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.06となるように投入し、その後、押出機内部で、280℃の熱処理条件下で20分解重合反応を行い、280℃での溶融粘度が580mPa・sの解重合体を得た。
そして、得られた解重合体を、二軸押出機と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した。このとき、解重合体を前記フィルターを通過させることにより濾液を回収した。
PC缶において、前記濾液に重縮合触媒として、得られるポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して三酸化アンチモンを1.0×10-4mol、色調調整剤として酢酸コバルトを0.2×10-4mol、二酸化チタン0.23質量部を加え、温度280℃で混練し、反応生成物を得た。
次に、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力2hPa及び温度280℃で3.5時間、重縮合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.69)を得た。
【0111】
〔短繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、単糸繊度0.5dtexのショートカット繊維を得た。
〔長繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメント糸(部分配向未延伸糸)を得た。
【0112】
実施例9~10、比較例4~5
解重合反応時に添加する、エチレングリコール、リサイクルポリエステル原料の添加量、G/A、解重合反応時の熱処理温度、溶融粘度を表1に示すものに変更した以外は、実施例8と同様にして、解重合反応を行った。
それ以外は実施例8と同様にして、解重合体から濾液を回収し、反応生成物を得、重縮合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.69)を得た。
なお、比較例5においては、解重合体反応で得られた解重合体の溶融粘度が高すぎたため、次工程でフィルターを追加させることができず、再生ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
【0113】
〔短繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、単糸繊度0.5dtexのショートカット繊維を得た。
〔長繊維の製造〕
得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にしてマルチフィラメント糸(部分配向未延伸糸)を得た。
【0114】
実施例1~13、比較例1~9で得られた再生ポリエステル樹脂の特性値及びこれらの再生ポリエステル樹脂を用いて得られた短繊維、長繊維の特性値と評価結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
表1から明らかなように、実施例1~13で得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量、ジエチレングリコールの含有量、平均昇圧速度が本発明で規定する範囲内のものであったため、短繊維、長繊維ともに操業性よく得ることができた。そして、得られた短繊維は水中分散性に優れるものであった。また、得られた長繊維は、強度、伸度ともに優れ、毛羽のないマルチフィラメント糸であった。
【0117】
一方、比較例1では、解重合反応時のG/Aが高いため、得られた再生ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度も高いものであった。このため、短繊維、長繊維を得る際の操業性が悪く、品位や特性値に劣るものとなった。
比較例2では、得られた解重合体の溶融粘度が低すぎたため、ろ過工程においてフィルターを通過させる際に濾液漏れが生じ、次の工程に進むことができなかった。
比較例3では、解重合反応時のG/Aが低いため、得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が高く、平均昇圧速度も高いものであった。このため、短繊維、長繊維を得る際の操業性が悪く、品位や特性値に劣るものとなった。
比較例4では、解重合工程を290℃の熱処理条件下で行ったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が高いものであった。このため、短繊維、長繊維を得る際の操業性が悪く、品位や特性値に劣るものとなった。
【0118】
比較例5では、得られた解重合体の溶融粘度が高すぎたため、ろ過工程においてフィルターを通過させることが困難となり、次の工程に進むことができなかった。
比較例6では、解重合工程の熱処理温度が低く、解重合工程で得られた解重合体の溶融粘度が高すぎたため、ろ過工程においてフィルターを通過させることが困難となり、次の工程に進むことができなかった。
比較例7では、ES缶とPC缶間に設けたキャンドルフィルターの濾過粒度が35μmであったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、平均昇圧速度が高いものとなった。このため、短繊維、長繊維を得る際の操業性が悪く、品位や特性値に劣るものとなった。
比較例8では、ES缶とPC缶間に設けたキャンドルフィルターの濾過粒度が5μmであったため、フィルターを通過させることが困難となり、次の工程に進むことができなかった。
比較例9では、重縮合工程における重縮合反応温度が低すぎたため、重合速度が遅く、再生ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
【0119】
実施例14
〔短繊維の製造〕
実施例2記載の再生ポリエステル樹脂を用いて、孔数2010H、孔径0.18mmの紡糸口金を用い、吐出量210g/分、紡糸温度290℃、紡糸速度1176m/分で溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を収束し、80ktexのトウとし、延伸温度60℃、延伸倍率2.8倍の条件で延伸した。次いで、油剤を付与後、トウの水分率が約18質量%となるように絞り、ドラム式カッターで5mmの長さに切断し、単糸繊度0.3dtexのショートカット繊維を得た。
得られたショートカット繊維は、短繊維製造の操業性(切糸)評価が○であり、水中分散性評価も○であった。
【0120】
実施例15
〔短繊維の製造〕
実施例2記載の再生ポリエステル樹脂を用いて、孔数2010H、孔径0.18mmの紡糸口金を用い、吐出量160g/分、紡糸温度290℃、紡糸速度1176m/分で溶融紡糸を行った。得られた未延伸糸を収束し、80ktexのトウとし、85℃の温水中にて、延伸倍率4.0倍の条件でフロー延伸を実施した。次いで、油剤を付与後、トウの水分率が約18質量%となるように絞り、ドラム式カッターで5mmの長さに切断し、単糸繊度0.1dtexのショートカット繊維を得た。
得られたショートカット繊維は、短繊維製造の操業性(切糸)評価が○であり、水中分散性評価も○であった。
【0121】
実施例16
〔ブロー成形品の製造〕
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂(極限粘度0.73)を結晶化装置に連続的に供給し、150℃で結晶化をさせた後、乾燥機に供給し、175℃で4時間乾燥後、予備加熱機に送り、210℃まで加熱した後、固相重合機へ供給し、窒素ガス雰囲気下にて固相重合反応を210℃で25時間行い、極限粘度1.21の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂をチップ化し、乾燥させた後、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用い、押出温度280℃で樹脂を押出して円筒形パリソンを形成し、パリソンが軟化状態にあるうちに金型で挟み、底部形成を行い、これをブローしてボトルを成形した。このとき、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで底部形成を行い、ブロー成形して350mlの中空容器(ダイレクトブロー成形品)を得た。
【0122】
実施例17
実施例8で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にして固相重合反応を行い、極限粘度1.19の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にしてブロー成形を行い、中空容器を得た。
【0123】
比較例10
比較例1で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にして固相重合反応を行い、極限粘度1.19の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器を得た。
【0124】
比較例11
比較例4で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にして固相重合反応を行い、極限粘度1.19の再生ポリエステル樹脂を得た。
固相重合反応により得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例16と同様にしてダイレクトブロー成形を行い、中空容器を得た。
【0125】
実施例16~17及び比較例10~11で得られた中空容器の成形性、ヘーズ及び耐衝撃性の評価結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
表2の結果からも明らかなように、実施例16~17で得られた中空容器は、成形性良く得ることができ、得られた中空容器は、ヘーズが低く透明性に優れており、耐衝撃性にも優れていた。
一方、比較例10では、ジエチレングリコールの含有量が多く、平均昇圧速度も高い再生ポリエステル樹脂を用いたため、成形性に劣るものであり、得られた中空容器は透明性、耐衝撃性ともに劣るものであった。比較例11では、カルボキシル末端基濃度が高い再生ポリエステル樹脂を用いたため、成形性に劣るものであり、また、得られた中空容器は、透明性、耐衝撃性ともに劣るものであった。
【0128】
実施例18
〔フィルムの製造〕
実施例1で得られた再生ポリエステル樹脂(極限粘度0.73)を93.5質量%、シリカ粒子を1.5質量%含有するポリエチレンテレフタレート樹脂をマスターチップとして6.5質量%混合し、両樹脂を押出機内で溶融混練し、Tダイへ供給してシート状に吐出し、20℃に温調した金属ドラムに巻き付け、冷却して巻き取ることにより、約150μmの厚みの未延伸シートを製造した。次いで、この未延伸シートの端部をテンター式同時二軸延伸装置のクリップで保持し、180℃の条件下で、MD方向に3.0倍、TD方向に3.3倍の延伸倍率で同時二軸延伸した後、TD方向の弛緩率を5%として215℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷し、片面にコロナ放電処理を行った後に巻き取った。このようにして、厚さが15μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを得た。
【0129】
実施例19
実施例4で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例18と同様にして未延伸シートを製造し、実施例18と同様にして延伸熱処理を行い、厚さ15μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを得た。
【0130】
比較例12
比較例3で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例18と同様にして未延伸シートを製造しようとしたが、Tダイのリップ面の汚染、フィルムの破断、ロール汚染等の原因により、操業開始から2時間で生産できない状況に陥り、未延伸シートを延伸工程に供することができず、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを得ることができなかった。
【0131】
比較例13
比較例1で得られた再生ポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例18と同様にして未延伸シートを製造し、実施例18と同様にして延伸熱処理を行い、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを得た。しかしながら、比較例12と同様の理由により、24時間以上連続操業することができず、14時間で生産できない状況となった。
【0132】
実施例18~19及び比較例12~13で得られたフィルムの引張強度、ヘーズ及び操業性の評価結果を表3に示す。
【0133】
【表3】
【0134】
表3の結果からも明らかなように、実施例18~19で得られた二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムは、MD、TD方向の引張強度ともに高く、ヘーズが低く透明性に優れており、バージンポリエステル樹脂からなるフィルムと遜色ない特性値を有するものであった。さらに、操業性も良好であった。
一方、比較例12では、カルボキシル末端基濃度が高く、平均昇圧速度も高い再生ポリエステル樹脂を用いたため、操業性に劣っており、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを得ることができなかった。
比較例13では、ジエチレングリコールの含有量が多い再生ポリエステル樹脂を用いたため、操業性に劣るものであり、得られた二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムは、引張強度、ヘーズともに劣っていた。