(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027791
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】交通情報提供装置、交通情報配信装置、交通情報提供方法、交通情報配信方法、交通情報提供プログラムおよび交通情報配信プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230224BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230224BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230224BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230224BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20230224BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/16 D
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133048
(22)【出願日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 啓貴
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL09
5H181LL15
5H181MB01
5H181MC12
5H181MC22
(57)【要約】
【課題】他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高める。
【解決手段】交通情報提供装置は、周囲の物体を検知する検知部と、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の物体を検知する検知部と、
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、
前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、
前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部とを備える、交通情報提供装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記物体情報として、前記移動物体の速度情報を取得する、請求項1に記載の交通情報提供装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記物体情報として、前記移動物体の方位情報を取得する、請求項1または請求項2に記載の交通情報提供装置。
【請求項4】
前記検知情報は、前記重複領域および前記予測領域の両方を含む領域における物体の検知結果を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の交通情報提供装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記第1特定部により特定される前記重複領域が存在しない場合、前記検知情報の送信を行わない、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の交通情報提供装置。
【請求項6】
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された、前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信する送信部と、
前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信する受信部とを備える、交通情報配信装置。
【請求項7】
交通情報提供装置における交通情報提供方法であって、
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得するステップと、
取得した前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記交通情報提供装置による周囲の検知範囲との重複領域を特定するステップと、
取得した前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定するステップと、
特定した前記重複領域および前記予測領域に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を送信するステップとを含む、交通情報提供方法。
【請求項8】
交通情報配信装置における交通情報配信方法であって、
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得するステップと、
取得した前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信するステップと、
前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信するステップとを含む、交通情報配信方法。
【請求項9】
交通情報提供装置において用いられる交通情報提供プログラムであって、
コンピュータを、
周囲の物体を検知する検知部と、
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、
前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、
前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部、
として機能させるための、交通情報提供プログラム。
【請求項10】
交通情報配信装置において用いられる交通情報配信プログラムであって、
コンピュータを、
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された、前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信する送信部と、
前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信する受信部、
として機能させるための、交通情報配信プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交通情報提供装置、交通情報配信装置、交通情報提供方法、交通情報配信方法、交通情報提供プログラムおよび交通情報配信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の安全運転を支援するために、当該車両の周辺に存在する物体などの動的情報を当該車両に配信する技術が開発されている。たとえば、特開2018-26009号公報(特許文献1)には、以下のような動的地図構成方法が記載されている。すなわち、路側機419は、第1センサ411が取得した第1検出データをセンサ統合サーバ400に送信し、センサ統合サーバ400は、受信した第1検出データに基づき、第1センサ411の死角である観測不能領域を抽出し、観測不能領域を示す観測不能領域情報を少なくとも1つの移動端末439に送信し、移動端末439は、第2センサ431が取得した第2検出データに基づき、第2センサ431のセンシング範囲に存在する物体を示す第2動的情報を抽出し、受信した観測不能領域情報が示す観測不能領域と第2センサのセンシング範囲との重複領域があるか否かを判定し、重複領域があると判定した場合に、第2動的情報のうち重複領域に存在する物体を示す第3動的情報をセンサ統合サーバ400に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の動的地図構成方法では、車載装置などの移動端末が動的情報をセンサ統合サーバへアップロードする際の通信量を抑えることができる。
【0005】
しかしながら、センサ統合サーバへの動的情報のアップロード時に通信遅延が生じたり、センサ統合サーバによる当該動的情報の情報処理等に時間を要したりすることがある。このような場合、交通情報が生成されるまでの間に対象領域における移動物体が移動して、当該交通情報の精度が低下するという問題がある。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる交通情報提供装置、交通情報配信装置、交通情報提供方法、交通情報配信方法、交通情報提供プログラムおよび交通情報配信プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の交通情報提供装置は、周囲の物体を検知する検知部と、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部とを備える。
【0008】
本開示の交通情報配信装置は、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された、前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信する送信部と、前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信する受信部とを備える。
【0009】
本開示の交通情報提供方法は、交通情報提供装置における交通情報提供方法であって、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得するステップと、取得した前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記交通情報提供装置による周囲の検知範囲との重複領域を特定するステップと、取得した前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定するステップと、特定した前記重複領域および前記予測領域に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を送信するステップとを含む。
【0010】
本開示の交通情報配信方法は、交通情報配信装置における交通情報配信方法であって、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得するステップと、取得した前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信するステップと、前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信するステップとを含む。
【0011】
本開示の交通情報提供プログラムは、交通情報提供装置において用いられる交通情報提供プログラムであって、コンピュータを、周囲の物体を検知する検知部と、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部、として機能させるためのプログラムである。
【0012】
本開示の交通情報配信プログラムは、交通情報配信装置において用いられる交通情報配信プログラムであって、コンピュータを、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された、前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信する送信部と、前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信する受信部、として機能させるためのプログラムである。
【0013】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える交通情報提供装置として実現され得るだけでなく、交通情報提供装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、交通情報提供装置を含むシステムとして実現され得る。
【0014】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える交通情報配信装置として実現され得るだけでなく、交通情報配信装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、交通情報配信装置を含むシステムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る交通情報配信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る配信サーバの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る配信サーバにより生成される走行用情報を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る配信サーバから送信される走行用情報が格納されたフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る車載装置の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載装置における第1特定部により特定される重複領域の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る車載装置における情報処理部により決定される提供領域の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る車載装置における情報処理部により決定される提供領域の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る車載装置における情報処理部により決定される提供領域の変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る交通情報配信システムにおける各装置の動作手順を定めたシーケンスの一例である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態に係る交通情報配信システムにおける各装置の動作手順を定めたシーケンスの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0018】
(1)本開示の実施の形態に係る交通情報提供装置は、周囲の物体を検知する検知部と、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部とを備える。
【0019】
このような構成により、他の装置へ送信する検知情報のデータ量を適切に抑えることができる。また、他の装置への検知情報の伝送時に通信遅延が生じたり、他の装置による当該検知情報の情報処理等に時間を要したりする場合であっても、移動物体の移動に伴う死角領域の位置の変化を考慮した領域における物体の検知結果を送信することができる。したがって、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる。
【0020】
(2)前記取得部は、前記物体情報として、前記移動物体の速度情報を取得してもよい。
【0021】
このような構成により、移動物体の移動距離を予測して、予測領域をより正確に特定することができる。
【0022】
(3)前記取得部は、前記物体情報として、前記移動物体の方位情報を取得してもよい。
【0023】
このような構成により、移動物体の移動方向を予測して、予測領域をより正確に特定することができる。
【0024】
(4)前記検知情報は、前記重複領域および前記予測領域の両方を含む領域における物体の検知結果を含んでもよい。
【0025】
このような構成により、他の装置において、重複領域だけでなく、予測領域を含めた範囲における物体の検知結果を取得することができるため、精度の高い交通情報をより確実に生成することができる。
【0026】
(5)前記送信部は、前記第1特定部により特定される前記重複領域が存在しない場合、前記検知情報の送信を行わなくてもよい。
【0027】
このように、重複領域が存在しない場合には物体の検知結果を送信しない構成により、他の装置との間における通信量をより適切に低減させることができる。
【0028】
(6)本開示の実施の形態に係る交通情報配信装置は、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された、前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信する送信部と、前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信する受信部とを備える。
【0029】
このような構成により、車載装置から送信される検知情報のデータ量を適切に抑えることができる。また、車載装置からの検知情報の伝送時に通信遅延が生じたり、他の装置である交通情報配信装置による当該検知情報の情報処理等に時間を要したりする場合であっても、移動物体の移動に伴う死角領域の位置の変化を考慮した領域における物体の検知結果を受信することができる。したがって、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる。
【0030】
(7)本開示の実施の形態に係る交通情報提供方法は、交通情報提供装置における交通情報提供方法であって、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得するステップと、取得した前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記交通情報提供装置による周囲の検知範囲との重複領域を特定するステップと、取得した前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定するステップと、特定した前記重複領域および前記予測領域に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を送信するステップとを含む。
【0031】
このような方法により、他の装置へ送信する検知情報のデータ量を適切に抑えることができる。また、他の装置への検知情報の伝送時に通信遅延が生じたり、他の装置による当該検知情報の情報処理等に時間を要したりする場合であっても、移動物体の移動に伴う死角領域の位置の変化を考慮した領域における物体の検知結果を送信することができる。したがって、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる。
【0032】
(8)本開示の実施の形態に係る交通情報配信方法は、交通情報配信装置における交通情報配信方法であって、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得するステップと、取得した前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信するステップと、前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信するステップとを含む。
【0033】
このような方法により、車載装置から送信される検知情報のデータ量を適切に抑えることができる。また、車載装置からの検知情報の伝送時に通信遅延が生じたり、他の装置である交通情報配信装置による当該検知情報の情報処理等に時間を要したりする場合であっても、移動物体の移動に伴う死角領域の位置の変化を考慮した領域における物体の検知結果を受信することができる。したがって、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる。
【0034】
(9)本開示の実施の形態に係る交通情報提供プログラムは、交通情報提供装置において用いられる交通情報提供プログラムであって、コンピュータを、周囲の物体を検知する検知部と、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部、として機能させるためのプログラムである。
【0035】
このような構成により、他の装置へ送信する検知情報のデータ量を適切に抑えることができる。また、他の装置への検知情報の伝送時に通信遅延が生じたり、他の装置による当該検知情報の情報処理等に時間を要したりする場合であっても、移動物体の移動に伴う死角領域の位置の変化を考慮した領域における物体の検知結果を送信することができる。したがって、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる。
【0036】
(10)本開示の実施の形態に係る交通情報配信プログラムは、交通情報配信装置において用いられる交通情報配信プログラムであって、コンピュータを、対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、前記取得部により取得された、前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信する送信部と、前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信する受信部、として機能させるためのプログラムである。
【0037】
このような構成により、車載装置から送信される検知情報のデータ量を適切に抑えることができる。また、車載装置からの検知情報の伝送時に通信遅延が生じたり、他の装置である交通情報配信装置による当該検知情報の情報処理等に時間を要したりする場合であっても、移動物体の移動に伴う死角領域の位置の変化を考慮した領域における物体の検知結果を受信することができる。したがって、他の装置への動的情報の伝送時における通信量を低減することができ、かつ他の装置により生成される交通情報の精度をより高めることができる。
【0038】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0039】
<構成および基本動作>
[全体構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る交通情報配信システムの構成を示す図である。
【0040】
図1を参照して、交通情報配信システム300は、配信サーバ(交通情報配信装置)100と、1または複数の車載装置(交通情報提供装置)200と、対象領域の路側に設置された1または複数の路側機60とを備える。車載装置200は、車両40に搭載される。対象領域は、たとえば交差点または道路の分岐点等を含む。
【0041】
路側機60は、たとえばITS(Intelligent Transport System)無線を用いて、無線基地局20を介して配信サーバ100と通信を行うことが可能である。
【0042】
路側機60は、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)およびミリ波レーダ装置などのセンサを用いて周囲の物体を定期的または不定期に検知し、検知結果を示す検知情報を無線基地局20経由で配信サーバ100へ送信する。物体は、車両および人などである。検知情報には、たとえば、検知された物体ごとの、種別、位置、速度および移動方位などが含まれる。
【0043】
車両40に搭載された車載装置200は、当該車両40が対象領域内に存在する場合、路側機60と同様に、車両40に搭載されたセンサを用いて周辺の物体を定期的または不定期に検知し、検知結果を示す検知情報を無線基地局20経由で配信サーバ100へ送信する。以下、路側機60および車載装置200の各々を、検知機器とも称する。
【0044】
なお、各検知機器は、配信サーバ100から検知情報の要求を受けた場合に、物体の検知結果を示す検知情報を無線基地局20経由で配信サーバ100へ送信する構成であってもよい。
【0045】
配信サーバ100は、対象領域に存在する1または複数の検知機器の各々から検知情報を無線基地局20経由で受信し、受信した1または複数の検知情報に基づいて、各検知機器の検知範囲よりも広い対象領域の物体の検知結果、すなわち動的情報を含む走行用情報を生成する。走行用情報は、対象領域に存在する物体ごとの、種別、位置、速度および移動方位等を示す。
【0046】
また、配信サーバ100は、生成した走行用情報を、対象領域に存在する車両40の車載装置200へ無線基地局20経由で送信する。以下、走行用情報の送信先となる車両40を、配信先車両とも称する。
【0047】
配信先車両である車両40の車載装置200は、たとえば、当該車両40に搭載された図示しないGPS(Global Positioning System)受信機等のGNNS(Global Navigation Satellite System)により取得された当該車両40の位置情報を取得する。また、当該車載装置200は、当該車両40に搭載されたセンサを用いて検知された、周囲の物体の検知結果を取得する。
【0048】
そして、当該車載装置200は、取得した当該車両40の位置情報、物体の検知結果、および配信サーバ100からの走行用情報などに基づいて、当該車両40の運転支援を行う。具体的には、車載装置200は、運転支援として、たとえば、走行経路をカーナビゲーションシステムの画面に表示させる制御を行ったり、速度などの車両40の走行を制御することによる自動運転を行ったりする。
【0049】
[配信サーバ]
図2は、本開示の実施の形態に係る配信サーバの構成を示す図である。
【0050】
図2を参照して、配信サーバ100は、マップ生成部11と、記憶部12と、受信部13と、特定部(取得部)14と、送信部15とを備える。マップ生成部11および特定部14は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。受信部13および送信部15は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路により実現される。記憶部12は、たとえば不揮発性メモリである。
【0051】
(記憶部、マップ生成部および送信部)
記憶部12には、静的情報である対象領域の地図データが保存されている。受信部13は、検知機器から送信された検知情報を無線基地局20経由で受信し、受信した検知情報をマップ生成部11へ出力する。
【0052】
マップ生成部11は、受信部13から出力された検知情報を受けて、当該検知情報および記憶部12に保存されている地図データに基づいて、走行用情報を生成する。
【0053】
図3は、本開示の実施の形態に係る配信サーバにより生成される走行用情報を説明するための図である。ここでは、一例として、路側機60からの検知情報に基づいて生成される走行用情報について説明する。
【0054】
図2および
図3を参照して、マップ生成部11は、たとえば、対象領域を格子状に分割した場合における、領域ごとの状態を示す走行用情報を生成する。以下、各領域を、グリッドとも称する。
【0055】
グリッドの状態とは、たとえば、路側機60の検知範囲外であるか、または地図データが存在していない等の理由により検知結果が得られない「不明状態」、物体が存在する「物体有り状態」、物体の死角となる「死角状態」、および物体が存在しない「クリア状態」を含む。
【0056】
以下、不明状態の領域を「不明領域」とも称し、物体有り状態の領域を「物体有り領域」とも称し、死角状態の領域を「死角領域」とも称し、クリア状態の領域を「クリア領域」とも称する。
【0057】
マップ生成部11は、地図データ、および路側機60からの検知情報に基づいて、各グリッドの状態を判定し、判定した各グリッドの状態、および各グリッドの位置を示す走行用情報を生成する。そして、マップ生成部11は、生成した走行用情報を記憶部12に保存する。各グリッドの位置は、たとえば緯度および経度を用いて示される。
【0058】
なお、検知機器が、検知範囲に含まれる各グリッドの状態を判定し、判定した各グリッドの状態、および各グリッドの位置を示す検知情報を無線基地局20経由で配信サーバ100へ送信してもよい。
【0059】
また、マップ生成部11は、たとえば、生成した走行用情報を送信部15へ出力する。送信部15は、マップ生成部11から出力された走行用情報を受けると、たとえば、当該走行用情報を、対象領域における複数の車両40へブロードキャストする。
【0060】
図4は、本開示の実施の形態に係る配信サーバから送信される走行用情報が格納されたフレームのフォーマットの一例を示す図である。
【0061】
図4を参照して、走行用情報は、フレームのデータ領域に格納され、たとえば、提供点管理番号と、提供点座標情報と、物体情報と、状態情報とを含む。
【0062】
提供点管理番号は、たとえば、対象領域を含む都道府県のコード、対象領域が交差点であるか、または駐停車エリアであるか等を示す提供点種別コード、対象領域ごとの固有の提供点ID(Identification)を含む。
【0063】
提供点座標情報は、たとえば、対象領域に含まれる各グリッドの緯度および経度を含む。物体情報は、対象領域に存在する物体ごとの、種別情報、位置情報、速度情報および方位情報などを含む。状態情報は、各グリッドの状態を示す。
【0064】
車載装置200は、配信サーバ100からブロードキャストされた走行用情報を無線基地局20経由で受信すると、たとえば、走行用情報が格納されているフレームに含まれる提供点ID等を確認して、走行用情報の内容を車両40の運転支援に用いるか否かを決定する。
【0065】
具体的には、車載装置200は、たとえば、当該提供点IDが、自己の搭載された車両40の位置から所定範囲内にある交差点IDである場合、当該走行用情報の内容を運転支援に用いると決定する。そして、車載装置200は、当該走行用情報の示す各グリッドの状態、および当該車両40の位置情報等に基づいて、当該車両40の運転支援を行う。
【0066】
なお、送信部15は、走行用情報を複数の車両40へブロードキャストする構成に限らず、対象領域における1または複数の車両40へ走行用情報をユニキャストする構成であってもよい。
【0067】
(特定部)
再び
図2および
図3を参照して、特定部14は、対象領域における移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および当該移動物体に関する物体情報を取得する。
【0068】
たとえば、特定部14は、記憶部12に保存されている走行用情報を参照して、たとえば、
図3に示すように、物体有り領域R1が道路上に存在し、さらに、当該物体有り領域R1に隣接する領域であって、死角状態である領域が存在する場合、当該領域を移動物体の死角となる死角領域R2と特定する。
【0069】
なお、
図3では、説明を簡単にするために、移動物体Pの位置する物体有り領域R1、および移動物体Pの四角となる死角領域R2を示しており、他の移動物体の位置する物体有り領域、および他の死角領域は示していない。
【0070】
また、特定部14は、走行用情報から、当該移動物体の、種別、位置、速度および方位等を示す物体情報、ならびに死角領域R2の位置情報を取得し、取得した死角領域R2の位置情報および物体情報を、送信部15へ出力する。
【0071】
送信部15は、特定部14から出力された死角領域R2の位置情報および物体情報を受けると、たとえば、当該死角領域R2内または当該死角領域R2の周辺に存在する複数の車両40へ、当該死角領域R2の位置情報および当該物体情報をブロードキャストする。このとき、送信部15は、たとえば、死角領域R2の位置情報および物体情報と合わせて、これら複数の車両40に対して検知情報を要求する。
【0072】
なお、送信部15は、死角領域R2の位置情報および物体情報を複数の車両40へブロードキャストする構成に限らず、たとえば、死角領域R2内または当該死角領域R2の周辺に存在する1または複数の車両40へ、死角領域R2の位置情報および物体情報をユニキャストする構成であってもよい。
【0073】
また、配信サーバ100は、死角領域R2を生み出している移動物体である車両40の車載装置200へ、検知情報を要求してもよい。この場合、配信サーバ100は、当該車載装置200へ、死角領域R2の位置情報および物体情報を送信してもよいし、これら位置情報および物体情報を送信しなくてもよい。
【0074】
また、移動物体の物体情報は、種別情報、位置情報、速度情報および方位情報のすべてを含む構成に限らず、種別情報、位置情報、速度情報および方位情報のうちの少なくともいずれか1つを含む情報であってもよい。
【0075】
[車載装置]
図5は、本開示の実施の形態に係る車載装置の構成を示す図である。
【0076】
図5を参照して、車載装置200は、受信部(取得部)31と、検知部32と、情報処理部33と、特定部34と、送信部35とを備える。情報処理部33および特定部34は、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサにより実現される。受信部31および送信部35は、たとえば通信用IC等の通信回路により実現される。特定部34は、第1特定部51と、第2特定部52とを含む。
【0077】
受信部31は、配信サーバ100から送信された死角領域R2の位置情報、物体情報、および検知情報の要求を無線基地局20経由で受信すると、検知情報の要求を受信した旨を検知部32に通知する。また、受信部31は、配信サーバ100からの死角領域R2の位置情報および物体情報を特定部34へ出力する。
【0078】
検知部32は、受信部31から検知情報の要求を受信した旨の通知を受けると、車両40に搭載されたセンサを用いて車載装置200の周辺の物体を定期的または不定期に検知し、検知した物体ごとの位置等の検知結果を情報処理部33へ出力する。
【0079】
特定部34における第1特定部51は、情報処理部33の保持する上記検知結果、および受信部31から受けた死角領域R2の位置情報に基づいて、当該死角領域R2と検知部32の検知範囲との重複領域R3を特定する。そして、第1特定部51は、特定した重複領域R3の位置情報を情報処理部33へ出力する。
【0080】
図6は、本開示の実施の形態に係る車載装置における第1特定部により特定される重複領域の一例を示す図である。
【0081】
図6を参照して、ここでは、車両40aが、移動物体Pにより生み出される死角領域R2内に存在し、車両40aの車載装置200aが、配信サーバ100から死角領域R2の位置情報、移動物体の物体情報、および検知情報の要求を受信したとする。
【0082】
この場合、車載装置200aにおける第1特定部51は、
図6に示すように、死角領域R2の位置情報に基づいて、当該死角領域R2と車両40aにおける検知部32の検知範囲との重複領域R3を特定する。
【0083】
ここで、車載装置200aが、重複領域R3における物体の検知結果を示す検知情報を無線基地局20経由で配信サーバ100へ送信するとする。この場合、配信サーバ100は、車載装置200aから送信された検知情報を受信し、当該検知情報に基づいて走行用情報を生成または更新する。
【0084】
具体的には、配信サーバ100は、たとえば、更新前の走行用情報において死角状態であった領域の状態を、物体有り状態またはクリア状態に変更するなど、より有用な走行用情報を生成することができる。
【0085】
しかしながら、車載装置200から配信サーバ100への検知情報のアップロード時において通信遅延が生じたり、配信サーバ100により走行用情報の更新処理等に時間を要したりすることがある。この場合、死角領域R2を生み出している移動物体が移動して、走行用情報の精度が低下するという問題がある。
【0086】
このため、車載装置200は、死角領域R2と物体の検知範囲との重複領域R3と、当該死角領域R2を生み出している移動物体の物体情報とに基づく提供領域を特定し、特定した提供領域における物体の検知結果を示す検知情報を無線基地局20経由で配信サーバ100へ送信する。
【0087】
より詳細には、特定部34における第2特定部52は、受信部31から受けた物体情報に基づいて、死角を生み出している移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域R4を特定する。
【0088】
図7および
図8は、本開示の実施の形態に係る車載装置における情報処理部により決定される提供領域の一例を示す図である。
【0089】
図2、
図7および
図8を参照して、第2特定部52は、物体情報に基づいて、たとえば、
図7に示すように、交差点を直進する移動物体Pが現在から所定時間が経過するまでの間に走行する動線を予測する。所定時間は、たとえば、車載装置200から配信サーバ100への検知情報のアップロード時における、予測される通信遅延の長さである。
【0090】
そして、第2特定部52は、予測した動線を含む予測領域R4を特定し、特定した予測領域R4の位置情報を情報処理部33へ出力する。
【0091】
具体的には、移動物体Pの速度が18km/hであり、所定時間が300ミリ秒であるとする。この場合、第2特定部52は、たとえば、移動物体Pの移動距離は1.5m(=18km/h×300ミリ秒)であると予測して、予測領域R4を特定する。
【0092】
また、他の例として、第2特定部52は、
図8に示すように、交差点を右折する移動物体Pの動線を予測したとする。この場合も同様に、第2特定部52は、予測した動線を含む予測領域R4を特定し、特定した予測領域R4の位置情報を情報処理部33へ出力する。
【0093】
情報処理部33は、第1特定部51から受けた重複領域R3の位置情報、および第2特定部52から受けた予測領域R4の位置情報、に基づく提供領域R5を特定する。
【0094】
たとえば、情報処理部33は、
図7および
図8に示す重複領域R3および予測領域R4の両方を含む領域を提供領域R5として特定する。そして、情報処理部33は、検知部32から受けた検知結果から、特定した提供領域R5における物体の検知結果を抽出し、抽出した検知結果を送信部35へ出力する。
【0095】
送信部35は、情報処理部33から出力された検知結果を受けて、当該検知結果を示す検知情報を無線基地局20経由で配信サーバ100へ送信する。
【0096】
(提供領域の変形例)
図9は、本開示の実施の形態に係る車載装置における情報処理部により決定される提供領域の変形例を示す図である。
【0097】
図9を参照して、情報処理部33は、重複領域R3および予測領域R4の両方を含む領域を提供領域R5として特定する構成に限らない。情報処理部33は、たとえば、予測領域R4が重複領域R3に含まれるように重複領域R3の位置をずらした場合における当該重複領域R3を、提供領域R5として特定してもよい。これにより、提供領域R5の大きさが重複領域R3の大きさと同じになるため、通信量の増加を抑えることができる。
【0098】
なお、路側機60が、死角領域R2と路側機60による周囲の検知範囲との重複領域R3、および予測領域R4を特定し、特定した重複領域R3および予測領域R4に基づく提供領域R5における物体の検知結果を示す情報を配信サーバ100へ送信してもよい。この場合、路側機60は、
図5に示す車載装置200と同様に、受信部31、検知部32、情報処理部33、特定部34および送信部35を備える。
【0099】
[配信サーバおよび車載装置の変形例]
車載装置200は、配信サーバ100から死角領域R2の位置情報、および移動物体の物体情報を無線基地局20経由で受信する構成に限らず、死角領域R2、および当該死角領域R2を生み出している移動物体を特定する構成であってもよい。
【0100】
たとえば、車載装置200における受信部31は、配信サーバ100からブロードキャストされた走行用情報を無線基地局20経由で受信し、受信した走行用情報を特定部34へ出力する。
【0101】
特定部34における第1特定部51は、受信部31から出力された走行用情報を受けて、当該走行用情報に基づいて、たとえば配信サーバ100の特定部14による死角領域R2の特定方法と同様の方法を用いて、移動物体の死角となる死角領域R2、および当該移動物体を特定する。この場合、第1特定部51が、死角領域R2の位置情報、および移動物体の物体情報を取得する取得部に相当する。
【0102】
そして、第1特定部51は、取得した死角領域R2の位置情報に基づいて、当該死角領域R2と、検知部32の検知範囲との重複領域R3を特定する。
【0103】
また、この場合、第1特定部51は、走行用情報から取得した移動物体の物体情報を第2特定部52へ出力する。第2特定部52は、第1特定部51からの物体情報に基づいて、当該移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域R4を特定する。
【0104】
なお、上記のような構成である場合、配信サーバ100は、特定部14を備えなくてもよい。
【0105】
また、第1特定部51は、死角領域R2と、検知部32による物体の検知範囲との重複領域R3が存在しない場合、たとえば、当該死角領域R2を生み出している移動物体の物体情報を第2特定部52へ出力しない。この場合、第2特定部52による予測領域R4の特定、情報処理部33による提供領域R5の特定、および送信部35による提供領域R5における物体の検知結果を示す検知情報の送信、はいずれも行われない。
【0106】
<動作の流れ>
交通情報配信システム300における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のフローチャートおよびシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0107】
[交通情報配信システムにおける各装置の動作の流れ(例1)]
図10は、本開示の実施の形態に係る交通情報配信システムにおける各装置の動作手順を定めたシーケンスの一例である。ここでは、配信サーバ100が、死角領域の位置情報、および移動物体の物体情報を車載装置200へ送信する場合について説明する。
【0108】
図10を参照して、まず、路側機60は、周囲の物体を検知し(ステップS10)、検知結果を示す検知情報を配信サーバ100へ送信する(ステップS11)。
【0109】
次に、配信サーバ100は、路側機60から送信された検知情報を受信し、当該検知情報に基づいて、対象領域における物体の検知結果を示す走行用情報を生成する(ステップS12)。
【0110】
次に、配信サーバ100は、生成した走行用情報から、移動物体の死角となる死角領域R2の位置情報、および当該移動物体の物体情報を取得する(ステップS13)。
【0111】
次に、配信サーバ100は、取得した死角領域R2の位置情報および物体情報、ならびに検知情報の要求を、たとえば、死角領域R2内または死角領域R2の周辺に存在する複数の車両40へブロードキャストする。ここでは、車両40aに対応する車載装置200aが、配信サーバ100からの、死角領域R2の位置情報、物体情報、および検知情報の要求を受信したとする(ステップS14)。
【0112】
次に、車載装置200aは、周囲の物体を検知し(ステップS15)、検知結果および配信サーバ100から受信した死角領域の位置情報に基づいて、死角領域R2と物体の検知範囲との重複領域R3を特定する(ステップS16)。
【0113】
次に、車載装置200aは、配信サーバ100から受信した物体情報に基づいて、死角を生み出している移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域R4を特定する(ステップS17)。
【0114】
次に、車載装置200aは、たとえば、特定した重複領域R3および予測領域R4の両方を含む領域を提供領域R5として決定し、ステップS15において行った物体の検知結果から、決定した提供領域R5における物体の検知結果を抽出する(ステップS18)。
【0115】
次に、車載装置200aは、抽出した検知結果を示す検知情報を配信サーバ100へ送信する(ステップS19)。
【0116】
次に、配信サーバ100は、車載装置200aから送信された検知情報を受信し、受信した検知情報に基づいて、走行用情報を更新する(ステップS20)。
【0117】
次に、配信サーバ100は、更新した走行用情報を、たとえば、対象領域における1または複数の車両40へブロードキャストする。ここでは、車両40bの車載装置200bが、走行用情報を受信したとする(ステップS21)。
【0118】
次に、車載装置200bは、周囲の物体を検知する(ステップS22)。
【0119】
次に、車載装置200bは、配信サーバ100からの走行用情報に含まれる提供点ID等を確認し、当該走行用情報の内容を運転支援に用いると決定したとする。この場合、車載装置200bは、たとえば、運転支援に用いる情報として、当該走行用情報から車両40bの周辺の領域の状態を示す状態情報等を抽出する(ステップS23)。
【0120】
次に、車載装置200bは、ステップS22において行った物体の検知結果、走行用情報から抽出した状態情報、および車両40bの位置情報等に基づいて、車両40bの走行可否を判断する。
【0121】
たとえば、車載装置200bは、車両40bが交差点を右折する場合であって、車両40bの現在位置から当該交差点を右折するまでの動線に含まれる領域、および当該交差点に向かう対向直進車の走行車線の領域がいずれもクリア状態であると確認した場合、車両40bの右折が可能であると判断する。
【0122】
一方、車載装置200bは、車両40bが交差点を右折する場合であって、車両40bの現在位置から当該交差点を右折するまでの動線に含まれる領域、および当該交差点に向かう対向直進車の走行車線の領域のうちの少なくとも一部が死角領域または物体有り領域である場合、車両40bは右折すべきでないと判断する(ステップS24)。
【0123】
そして、車載装置200bは、車両40bの走行可否の判断結果に応じて、車両40bの運転支援を行う。
【0124】
たとえば、車載装置200bは、車両40bの右折が可能であると判断した場合、車両40bが交差点を右折するように車両40bの走行を制御する。一方、車載装置200bは、車両40bは右折すべきでないと判断した場合、車両40bの速度を減速させる、または車両40bを停止させる等の制御を行う(ステップS25)。
【0125】
なお、車載装置200aは、配信サーバ100からの検知情報の要求を受信する前に、周囲の物体の検知(ステップS15)を行う構成であってもよい。
【0126】
また、車載装置200bは、配信サーバ100からの走行用情報を受信する前に、周囲の物体の検知(ステップS22)を行う構成であってもよい。
【0127】
[交通情報配信システムにおける各装置の動作の流れ(例2)]
図11は、本開示の実施の形態に係る交通情報配信システムにおける各装置の動作手順を定めたシーケンスの一例である。ここでは、車載装置200が、配信サーバ100から受信した走行用情報に基づいて、死角領域の位置情報、および移動物体の物体情報を取得する場合について説明する。
【0128】
図11を参照して、ステップS30~ステップS32までの動作は、
図10に示すステップS10~ステップS12までの動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0129】
次に、配信サーバ100は、生成した走行用情報を、たとえば、対象領域における1または複数の車両40へブロードキャストする。ここでは、車両40aの車載装置200aが、走行用情報を受信したとする(ステップS33)。
【0130】
次に、車載装置200aは、周囲の物体を検知する(ステップS34)。
【0131】
次に、車載装置200aは、配信サーバ100から受信した走行用情報に基づいて、移動物体の死角となる死角領域R2と、物体の検知範囲との重複領域R3が存在するか否かを判断する(ステップS35)。
【0132】
次に、車載装置200aは、重複領域R3が存在しないと判断した場合(ステップS35において「NO」)、たとえば、ステップS34において行った物体の検知結果、の配信サーバ100への送信を行わない。
【0133】
一方、車載装置200aは、重複領域R3が存在すると判断した場合(ステップS35において「YES」)、上記走行用情報から、死角領域R2の位置情報、および死角領域R2を生み出している移動物体の物体情報を取得する(ステップS36)。
【0134】
次に、車載装置200aは、取得した物体情報に基づいて、死角を生み出している移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域R4を特定する(ステップS37)。
【0135】
次に、車載装置200aは、たとえば、特定した重複領域R3および予測領域R4の両方を含む領域を提供領域R5として特定し、ステップS34において行った物体の検知結果から、提供領域R5における物体の検知結果を抽出する(ステップS38)。
【0136】
次に、車載装置200aは、抽出した検知結果を示す検知情報を配信サーバ100へ送信する(ステップS39)。ステップS40~ステップS45までの動作は、
図10に示すステップS20~ステップS25までの動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0137】
なお、本開示の実施の形態に係る配信サーバ100の機能の一部または全部が、クラウドコンピューティングによって提供されてもよい。すなわち、本開示の実施の形態に係る配信サーバ100が、複数のクラウドサーバ等によって構成されてもよい。
【0138】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0139】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
周囲の物体を検知する検知部と、
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記位置情報に基づいて、前記死角領域と前記検知部の検知範囲との重複領域を特定する第1特定部と、
前記取得部により取得された前記物体情報に基づいて、前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域を特定する第2特定部と、
前記第1特定部により特定された前記重複領域、および前記第2特定部により特定された前記予測領域、に基づいて特定される領域における、前記検知部による検知結果を示す検知情報を送信する送信部とを備え、
前記送信部は、前記重複領域および前記予測領域の両方を含む領域における物体の検知結果、または前記予測領域が前記重複領域に含まれるように前記重複領域の位置をずらした場合における、前記重複領域における物体の検知結果を示す検知情報を送信する、交通情報提供装置。
【0140】
[付記2]
対象領域において移動物体の死角となる死角領域の位置情報、および前記移動物体に関する物体情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された、前記位置情報および前記物体情報を他の装置へ送信する送信部と、
前記死角領域と、前記他の装置による物体の検知範囲との重複領域、および前記移動物体が移動すると予測される動線を含む予測領域、に基づいて特定される領域における、物体の検知結果を示す検知情報を前記他の装置から受信する受信部とを備え、
前記送信部は、前記死角領域内または前記死角領域の周辺に存在する1または複数の他の装置へ、前記位置情報および前記物体情報と合わせて、前記検知情報を要求し、
さらに、
前記受信部により受信された前記検知情報に基づいて、前記対象領域における物体の検知結果を含む走行用情報を生成するマップ生成部を備え、
前記他の装置は、車載装置または路側機である、交通情報配信装置。
【符号の説明】
【0141】
11 マップ生成部
12 記憶部
13 受信部(取得部)
14 特定部
15 送信部
20 無線基地局
31 受信部(取得部)
32 検知部
33 情報処理部
34 特定部
35 送信部
40,40a,40b 車両
51 第1特定部
52 第2特定部
60 路側機
100 配信サーバ(交通情報配信装置)
200,200a 車載装置(交通情報提供装置)
200b 車載装置
300 交通情報配信システム
P 移動物体
R1 物体有り領域
R2 死角領域
R3 重複領域
R4 予測領域
R5 提供領域