(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028385
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】内燃機関の油路構造
(51)【国際特許分類】
F01M 1/06 20060101AFI20230224BHJP
F01M 9/10 20060101ALI20230224BHJP
F01L 1/053 20060101ALI20230224BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
F01M1/06 K
F01M1/06 D
F01M1/06 F
F01M9/10 K
F01L1/053
F02F1/24 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134060
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡村 翔
【テーマコード(参考)】
3G016
3G024
3G313
【Fターム(参考)】
3G016AA08
3G016AA19
3G016BA03
3G016BA06
3G016BA23
3G016BA28
3G016BA31
3G016BA50
3G016DA06
3G024AA05
3G024BA23
3G024DA06
3G024DA10
3G024FA07
3G313AA17
3G313BB02
3G313BB14
3G313BC11
3G313BC20
3G313BC23
3G313BD11
3G313BD14
3G313CA26
3G313FA09
(57)【要約】
【課題】内燃機関の始動後に速やかに吸気側バルブタイミング調整装置を作動させることができ、排気ガスの低減や燃料消費の低減を図ることができる内燃機関の油路構造を提供すること。
【解決手段】エンジン1の油路構造は、主油路62および排気側ヘッド油路64は、排気側カムキャップ内油路66の下方から排気側カムキャップ内油路66に向かって上方に延びており、吸気側ヘッド油路63は、主油路62からシリンダヘッド4の吸気側壁4Bに向かって延びる第1の吸気側ヘッド油路63Aと、第1の吸気側ヘッド油路63Aの延びる方向の外端部63aから上方へ延び、吸気側カムキャップ内油路65に到る第2の吸気側ヘッド油路63Bとを有し、第2の吸気側ヘッド油路63Bに、油圧センサ70を取付けるセンサ取付用ボス69が設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸の軸方向の端部に設けられた端部壁と、前記クランク軸の軸方向と直交する幅方向の側面に設けられ、吸気マニホールドが接続される吸気側壁とを有するシリンダヘッドと、
前記端部壁の上面に設けられたカムキャップと、
前記端部壁の上面と前記カムキャップとに形成される吸気側軸受部に回転自在に支持される吸気カム軸と、
前記端部壁の上面と前記カムキャップとに形成される排気側軸受部に回転自在に支持される排気カム軸と、
前記吸気カム軸の端部に設けられた吸気側油圧制御弁と、前記吸気側油圧制御弁の外周部に設置され、前記吸気側油圧制御弁から供給されるオイルによって前記クランク軸に対する前記吸気カム軸の相対回転位相を調整する吸気側アクチュエータとを有する吸気側バルブタイミング調整装置と、
前記排気カム軸の端部に設けられた排気側油圧制御弁と、前記排気側油圧制御弁の外周部に設置され、前記排気側油圧制御弁から供給されるオイルによって前記クランク軸に対する前記排気カム軸の相対回転位相を調整する排気側アクチュエータとを有する排気側バルブタイミング調整装置と、
前記シリンダヘッドに取付けられる油圧センサとを備えた内燃機関の油路構造であって、
前記端部壁に設けられ、油圧源からオイルが供給される主油路と、
前記主油路から分岐して前記端部壁の上面に到る吸気側ヘッド油路および排気側ヘッド油路と、
前記カムキャップ内に設けられ、前記吸気側ヘッド油路と前記吸気側油圧制御弁とを連通する吸気側カムキャップ内油路と、
前記カムキャップ内に設けられ、前記排気側ヘッド油路と前記排気側油圧制御弁とを連通する排気側カムキャップ内油路とを有し、
前記吸気側カムキャップ内油路は、前記吸気側軸受部に対して前記排気側軸受部と反対側に設置されており、
前記排気側カムキャップ内油路は、前記吸気側軸受部と前記排気側軸受部との間に設置されており、
前記主油路および前記排気側ヘッド油路は、前記排気側カムキャップ内油路の下方から前記排気側カムキャップ内油路に向かって上方に延びており、
前記吸気側ヘッド油路は、前記主油路から前記吸気側壁に向かって延びる第1の吸気側ヘッド油路と、前記第1の吸気側ヘッド油路の延びる方向の外端部から上方へ延び、前記吸気側カムキャップ内油路に到る第2の吸気側ヘッド油路とを有し、
前記第2の吸気側ヘッド油路に、前記油圧センサを取付けるセンサ取付用ボスが設けられていることを特徴とする内燃機関の油路構造。
【請求項2】
前記端部壁の上端部に、前記カムキャップを前記端部壁の上面に取付ける一対のボルト取付用ボスが設けられており、
前記一対のボルト取付用ボスは、前記吸気側軸受部の両側部に設置されており、
前記第2の吸気側ヘッド油路は、その上端部が前記一対のボルト取付用ボスに対して前記吸気側壁側に位置し、かつ、前記吸気カム軸の軸方向において前記一対のボルト取付用ボスに対して前記吸気側バルブタイミング調整装置とは反対側に位置して前記一対のボルト取付用ボスの一方と隣接しており、
前記第2の吸気側ヘッド油路は、その上端部から下端部に向かうにつれて前記吸気側壁に近づくように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の油路構造。
【請求項3】
前記ボルト取付用ボスは、その下方に空間が形成されるように前記吸気カム軸の軸方向で前記端部壁から前記吸気側バルブタイミング調整装置側に膨出しており、
前記センサ取付用ボスの内部にセンサ用孔部が設けられており、
前記センサ用孔部は、前記第2の吸気側ヘッド油路の外壁より前記ボルト取付用ボス側に突出するとともに、前記第2の吸気側ヘッド油路よりも前記ボルト取付用ボス側に延びており、
前記センサ取付用ボスと前記ボルト取付用ボスとの間に前記空間が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の油路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の油路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧制御弁から供給される油圧によって制御される可変バルブタイミング装置が知られている(特許文献1、2参照)。可変バルブタイミング装置は、油圧制御弁から供給される油圧に基づいてクランク軸に対するカム軸の相対回転位相を調整し、バルブの開閉時期(バルブタイミング)を調整している。
【0003】
特許文献1に記載される可変バルブタイミング装置は、吸気カム軸の端部と排気カム軸の端部に設けられており、油圧制御弁は、カムチェーンカバーに取付けられており、吸気側可変バルブタイミング装置および排気側可変バルブタイミング装置に油圧を供給する電磁式の油圧制御弁から構成されている。
【0004】
シリンダヘッドの右側壁には吸気側油圧制御弁および排気側油圧制御弁にそれぞれオイルを供給する油路が設けられている。
【0005】
この油路は、シリンダヘッドの右側壁の底面から斜め上方に延びるメイン油路と、シリンダヘッドの右側壁に設けられ、メイン油路から吸気側油圧制御弁および排気側油圧制御弁にそれぞれオイルを供給する吸気VVT供給路および排気VVT供給路とを備えている。
【0006】
また、油路は、シリンダヘッドの右側壁に設けられ、吸気側油圧制御弁により制御された油圧により、クランクシャフトに対する吸気側カムシャフトの位相を進角方向に変化させる吸気側進角通路と、クランクシャフトに対する吸気側カムシャフトの位相を遅角方向に変化させる吸気側遅角通路とを有する。
【0007】
また、油路は、シリンダヘッドの右側壁に設けられ、排気側油圧制御弁により制御される油圧により、クランクシャフトに対する排気側カムシャフトの位相を進角方向に変化させる排気側進角通路と、クランクシャフトに対する排気側カムシャフトの位相を遅角方向に変化させる排気側遅角通路とを有する。
【0008】
特許文献2に記載される可変バルブタイミング装置は、油圧制御弁がカム軸の端部に設けられており、油圧制御弁の外周部にアクチュエータ部が設置されている。アクチュエータ部は、油圧制御弁からオイルが供給される進角室と遅角室を構成するハウジングとベーン部材とを備えている。
【0009】
特許文献2に記載される可変バルブタイミング装置は、油圧制御弁の近傍にアクチュエータ部を設置できるので、バルブタイミングの変更時の応答性を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-128682号公報
【特許文献2】特開2018-3694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、可変バルブタイミング装置を備えたエンジンにおいては、エンジンの始動後にできるだけ早く吸気側の可変バルブタイミング装置を作動させると、排気ガスの削減や燃費向上に有利である。
【0012】
ところが、エンジンの始動後に吸気側の可変バルブタイミング装置を早く作動させるには吸気側油圧制御弁に速やかにオイル供給するとともに吸気側油圧制御弁に供給される油圧を正確に検出する必要がある。
【0013】
特許文献1、2に記載される可変バルブタイミング装置にあっては、吸気側油圧制御弁に速やかにオイル供給し、かつ、吸気側油圧制御弁に供給される油圧を正確に把握することに関する記載がないので、未だ改善の余地がある。
【0014】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、内燃機関の始動後に速やかに吸気側バルブタイミング調整装置を作動させることができ、排気ガスの低減や燃料消費の低減を図ることができる内燃機関の油路構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、クランク軸の軸方向の端部に設けられた端部壁と、前記クランク軸の軸方向と直交する幅方向の側面に設けられ、吸気マニホールドが接続される吸気側壁とを有するシリンダヘッドと、前記端部壁の上面に設けられたカムキャップと、前記端部壁の上面と前記カムキャップとに形成される吸気側軸受部に回転自在に支持される吸気カム軸と、前記端部壁の上面と前記カムキャップとに形成される排気側軸受部に回転自在に支持される排気カム軸と、前記吸気カム軸の端部に設けられた吸気側油圧制御弁と、前記吸気側油圧制御弁の外周部に設置され、前記吸気側油圧制御弁から供給されるオイルによって前記クランク軸に対する前記吸気カム軸の相対回転位相を調整する吸気側アクチュエータとを有する吸気側バルブタイミング調整装置と、前記排気カム軸の端部に設けられた排気側油圧制御弁と、前記排気側油圧制御弁の外周部に設置され、前記排気側油圧制御弁から供給されるオイルによって前記クランク軸に対する前記排気カム軸の相対回転位相を調整する排気側アクチュエータとを有する排気側バルブタイミング調整装置と、前記シリンダヘッドに取付けられる油圧センサとを備えた内燃機関の油路構造であって、前記端部壁に設けられ、油圧源からオイルが供給される主油路と、前記主油路から分岐して前記端部壁の上面に到る吸気側ヘッド油路および排気側ヘッド油路と、前記カムキャップ内に設けられ、前記吸気側ヘッド油路と前記吸気側油圧制御弁とを連通する吸気側カムキャップ内油路と、前記カムキャップ内に設けられ、前記排気側ヘッド油路と前記排気側油圧制御弁とを連通する排気側カムキャップ内油路とを有し、前記吸気側カムキャップ内油路は、前記吸気側軸受部に対して前記排気側軸受部と反対側に設置されており、前記排気側カムキャップ内油路は、前記吸気側軸受部と前記排気側軸受部との間に設置されており、前記主油路および前記排気側ヘッド油路は、前記排気側カムキャップ内油路の下方から前記排気側カムキャップ内油路に向かって上方に延びており、前記吸気側ヘッド油路は、前記主油路から前記吸気側壁に向かって延びる第1の吸気側ヘッド油路と、前記第1の吸気側ヘッド油路の延びる方向の外端部から上方へ延び、前記吸気側カムキャップ内油路に到る第2の吸気側ヘッド油路とを有し、前記第2の吸気側ヘッド油路に、前記油圧センサを取付けるセンサ取付用ボスが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように上記の本発明によれば、内燃機関の始動後に速やかに吸気側バルブタイミング調整装置を作動させることができ、排気ガスの低減や燃料消費の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関の上面図であり、シリンダヘッドカバーを取り外した状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る内燃機関の上部の右側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る内燃機関の上面図であり、シリンダヘッドカバーとシリンダヘッドの前壁側のカムキャップとを取り外した状態を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る内燃機関のシリンダヘッドの上部の前側側面図である。
【
図8】
図8は、
図5のVIII-VIII方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関の油路構造は、クランク軸の軸方向の端部に設けられた端部壁と、クランク軸の軸方向と直交する幅方向の側面に設けられ、吸気マニホールドが接続される吸気側壁とを有するシリンダヘッドと、端部壁の上面に設けられたカムキャップと、端部壁の上面とカムキャップとに形成される吸気側軸受部に回転自在に支持される吸気カム軸と、端部壁の上面とカムキャップとに形成される排気側軸受部に回転自在に支持される排気カム軸と、吸気カム軸の端部に設けられた吸気側油圧制御弁と、吸気側油圧制御弁の外周部に設置され、吸気側油圧制御弁から供給されるオイルによってクランク軸に対する吸気カム軸の相対回転位相を調整する吸気側アクチュエータとを有する吸気側バルブタイミング調整装置と、排気カム軸の端部に設けられた排気側油圧制御弁と、排気側油圧制御弁の外周部に設置され、排気側油圧制御弁から供給されるオイルによってクランク軸に対する排気カム軸の相対回転位相を調整する排気側アクチュエータとを有する排気側バルブタイミング調整装置と、シリンダヘッドに取付けられる油圧センサとを備えた内燃機関の油路構造であって、端部壁に設けられ、油圧源からオイルが供給される主油路と、主油路から分岐して端部壁の上面に到る吸気側ヘッド油路および排気側ヘッド油路と、カムキャップ内に設けられ、吸気側ヘッド油路と吸気側油圧制御弁とを連通する吸気側カムキャップ内油路と、カムキャップ内に設けられ、排気側ヘッド油路と排気側油圧制御弁とを連通する排気側カムキャップ内油路とを有し、吸気側カムキャップ内油路は、吸気側軸受部に対して排気側軸受部と反対側に設置されており、排気側カムキャップ内油路は、吸気側軸受部と排気側軸受部との間に設置されており、主油路および排気側ヘッド油路は、排気側カムキャップ内油路の下方から排気側カムキャップ内油路に向かって上方に延びており、吸気側ヘッド油路は、主油路から吸気側壁に向かって延びる第1の吸気側ヘッド油路と、第1の吸気側ヘッド油路の延びる方向の外端部から上方へ延び、吸気側カムキャップ内油路に到る第2の吸気側ヘッド油路とを有し、第2の吸気側ヘッド油路に、油圧センサを取付けるセンサ取付用ボスが設けられている。
【0019】
これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関の油路構造は、内燃機関の始動後に速やかに吸気側バルブタイミング調整装置を作動させることができ、排気ガスの低減や燃料消費の低減を図ることができる。
【実施例0020】
以下、本発明に係る内燃機関の油路構造の実施例について、図面を用いて説明する。
図1から
図9は、本発明に係る一実施例の内燃機関の油路構造を示す図である。
図1から
図9において、上下前後左右方向は、以下のように規定する。
【0021】
クランク軸に沿う方向をエンジンの前後方向とし、タイミングチェーンが配置される側を前、その反対側を後ろとする。気筒の中心軸に沿う方向をエンジンの上下方向とし、シリンダヘッド側を上、その反対側を下とする。クランク軸および気筒の中心軸と交差する方向をエンジンの左右方向とし、クランク軸を後側から見て気筒の中心軸に対して左側を左、気筒の中心軸に対して右側を右とする。
【0022】
まず、構成を説明する。
【0023】
図1において、エンジン1は、エンジン本体2と、チェーンカバー40とを備えている。エンジン本体2は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4、シリンダヘッドカバー5およびオイルパン6を有する。本実施例のエンジン1は、内燃機関を構成する。
図1の仮想線55は、シリンダブロック3とシリンダヘッド4の境界である。
【0024】
シリンダブロック3には図示しない複数の気筒が設けられており、気筒は、エンジン1の前後方向に並んで設置されている。エンジン1は、気筒の中心軸1Cが上下方向に延びるように設置されている。
【0025】
気筒にはそれぞれ図示しないピストンが収容されており、ピストンは、図示しないコネクティングロッドを介してクランク軸7に連結されている。クランク軸7は、前後方向に延びる回転中心軸を有し、回転中心軸回りに回転する。
【0026】
ピストンは、気筒内で往復運動することにより、コネクティングロッドを介してクランク軸7を回転させる。シリンダヘッド4には複数の吸気ポート4P(
図8、
図9に1つ図示)と図示しない複数の排気ポートが形成されている。
【0027】
吸気ポート4Pは、それぞれ気筒に連通しており、吸入空気を気筒に導入する。排気マニホールドは、排気ポートを通して複数の気筒に連通しており、複数の気筒から排出された排気ガスを集合して排気口から図示しない触媒コンバータに排出する。
【0028】
図3、
図5に示すように、シリンダヘッド4は、前壁4Aと吸気側壁4Bを有する。前壁4Aは、クランク軸7の軸方向の前端部(端部)に設けられており、吸気側壁4Bは、クランク軸7の軸方向と直交する幅方向にてシリンダヘッド4の右側面(側面)に設けられている。本実施例の前壁4Aは、端部壁を構成する。
【0029】
シリンダヘッド4の吸気側壁4Bには吸気マニホールド9(
図1、
図6に仮想線で示す)が取付けられている。吸気マニホールド9は、図示しないエアクリーナによって浄化された後、図示しない吸気管に吸入された空気をシリンダヘッド4の各吸気ポート4Pに分配する。
【0030】
シリンダヘッド4とシリンダヘッドカバー5の内部には動弁室19が形成されており、シリンダヘッド4には吸気カム軸11と排気カム軸12が回転自在に支持されている(
図2参照)。すなわち、吸気カム軸11と排気カム軸12は、動弁室19に設置されている。
【0031】
図2に示すように、吸気カム軸11と排気カム軸12は、回転中心軸11a、12aがエンジン1の前後方向に平行に延びるようにしてエンジン1の左右方向に並んで設置されている。
【0032】
吸気カム軸11は、複数の吸気カム11Aを備えており(図示2つ)、吸気カム11Aは、吸気カム軸11の回転中心軸11aの方向に並んで設置されている。
【0033】
吸気カム11Aは、1つの気筒に対して、例えば2つ設けられている。吸気ポート4Pには図示しない吸気バルブが設けられており、吸気カム11Aは、吸気バルブを操作して吸気ポート4Pを開閉し、気筒と吸気ポート4Pを連通または遮断する。
【0034】
排気カム軸12は、複数の排気カム12Aを備えており(図示2つ)、排気カム12Aは、排気カム軸12の回転中心軸12aの方向に並んで設置されている。以下、回転中心軸11a、12aの方向を軸方向という。
【0035】
排気カム12Aは、1つの気筒に対して、例えば2つ設けられている。排気ポートには図示しない排気バルブが設けられており、排気カム12Aは、排気バルブを操作して排気ポートを開閉し、気筒と排気ポートを連通または遮断する。
【0036】
図2に示すように、シリンダヘッド4の上面には吸気カムキャップ13A、排気カムキャップ13Bおよびカムキャップ14が取付けられている。吸気カムキャップ13Aと排気カムキャップ13Bは、吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向において、気筒毎に設けられた吸気カム11Aの間および排気カム12Aの間にそれぞれ設置されている。
【0037】
吸気カムキャップ13Aと排気カムキャップ13Bの内周面には図示しない吸気カム軸受面と排気カム軸受面が設けられている。吸気カム軸受面と排気カム軸受面に対向するシリンダヘッド4の上面には図示しない吸気カム軸受面と排気カム軸受面が設けられている。
【0038】
吸気カムキャップ13Aと排気カムキャップ13Bは、ボルト33Aによってシリンダヘッド4の上面に固定されている。吸気カム軸11は、吸気カムキャップ13Aの吸気カム軸受面とシリンダヘッド4の吸気カム軸受面に回転自在に支持されている。
【0039】
排気カム軸12は、排気カムキャップ13Bの排気カム軸受面とシリンダヘッド4の排気カム軸受面に回転自在に支持されている。
【0040】
図5、
図6に示すように、前壁4Aの上面には吸気側軸受面4aと排気側軸受面4bが設けられている。
図7に示すように、カムキャップ14の内周面には吸気側軸受面14aと排気側軸受面14bが設けられている。
【0041】
吸気カム軸11は、前壁4Aの吸気側軸受面4aとカムキャップ14の吸気側軸受面14aに回転自在に支持されており、排気カム軸12は、前壁4Aの排気側軸受面4bとカムキャップ14の排気側軸受面14bに回転自在に支持されている。
【0042】
本実施例の吸気側軸受面4aと吸気側軸受面14aは、吸気側軸受部17を構成し、排気側軸受面4bと排気側軸受面14bは、排気側軸受部18を構成する。
【0043】
図2、
図7に示すように、カムキャップ14は、ボルト33Bによってシリンダヘッド4の前壁4Aの上面に固定されている。
【0044】
図5、
図6に示すように、シリンダヘッド4の前壁4Aの上端部にはボルト取付用ボス31、32が設けられている。ボルト取付用ボス31、32は、吸気側軸受部17の両側部(エンジン1の左右方向の両側部)に設置されており、エンジン1の左右方向でボルト取付用ボス31、32の間に吸気側軸受部17が形成されている。
【0045】
ボルト取付用ボス31、32の内周面にはボルト33Bが螺合されるねじ溝31a、32aが形成されている。
【0046】
シリンダヘッド4の前壁4Aの上端部にはボルト取付用ボス33、34が設けられている。ボルト取付用ボス33、34は、排気側軸受部18の両側部(エンジン1の左右方向の両側部)に設置されており、エンジン1の左右方向でボルト取付用ボス33、34の間に排気側軸受部18が形成されている。
【0047】
ボルト取付用ボス33、34の内周面にはボルト33Bが螺合されるねじ溝33a、34aが形成されている。
【0048】
図2に示すようにカムキャップ14にはボルト33Bが挿通されるボス14A、14B、14C、14Dが設けられている。カムキャップ14は、ボルト33Bがボス14A、14B、14C、14Dを通してねじ溝31a、32a、33a、34aに螺合されることにより、前壁4Aの上面に取付けられている。
【0049】
図2、
図3に示すように、吸気カム軸11の軸方向の前端部(端部)には吸気側バルブタイミング調整装置15が取付けられている。吸気側バルブタイミング調整装置15は、吸気側ハウジング部材23を有し、吸気側ハウジング部材23の外周部には吸気スプロケット23Sが設けられている。
【0050】
図2に示すように、排気カム軸12の軸方向の前端部(端部)には排気側バルブタイミング調整装置16が取付けられている。排気側バルブタイミング調整装置16は、排気側ハウジング部材24を有し、排気側ハウジング部材24の外周部には排気スプロケット24Sが設けられている。
【0051】
吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向の方向における吸気側ハウジング部材23の長さは、排気側ハウジング部材24の長さよりも長く形成されている。
【0052】
図1に示すように、クランク軸7の前端部にはクランクスプロケット7Sが設けられている。クランクスプロケット7Sと吸気スプロケット23Sと排気スプロケット24Sとにはタイミングチェーン8が巻き掛けられている。
【0053】
クランク軸7の動力は、タイミングチェーン8を介して吸気カム軸11と排気カム軸12に伝達される。これにより、吸気カム軸11が回転して吸気カム11Aによって吸気バルブの開閉が行われ、排気カム軸12が回転して排気カム12Aによって排気バルブの開閉が行われる。
【0054】
吸気側バルブタイミング調整装置15は、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相を調整し、吸気バルブの開閉時期(バルブタイミング)を調整する。
【0055】
排気側バルブタイミング調整装置16は、クランク軸7に対する排気カム軸12の相対回転位相を調整し、排気バルブの開閉時期(バルブタイミング)を調整する。
【0056】
図1に示すように、シリンダブロック3にはオイルポンプ35が設けられている。オイルポンプ35は、クランク軸7によって駆動されることにより、オイルパン6に貯留されるオイルをエンジン1の各部に供給する。本実施例のオイルポンプ35は、油圧源を構成する。
【0057】
シリンダブロック3の前端部(端部)とシリンダヘッド4の前端部(端部)にはチェーンカバー40が取付けられている。
【0058】
チェーンカバー40は、エンジン1の上下方向に沿う方向が長手方向となり、エンジン1の左右方向に沿う方向が短手方向となるようにチェーンカバー40の上下方向がチェーンカバー40の左右方向よりも長く形成されている。
図1から
図3に示すように、チェーンカバー40は、縦壁40A、左側壁40Bおよび右側壁40Cを有する。
【0059】
縦壁40Aは、シリンダブロック3とシリンダヘッド4のそれぞれの前端部と吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向で対向している。
【0060】
左側壁40Bおよび右側壁40Cは、チェーンカバー40の短手方向(チェーンカバー40の左右方向)の左端部と右端部からエンジン本体2に向かって突出しており、突出方向の先端部が複数のボルト33A(
図1参照)によってシリンダブロック3の前端部とシリンダヘッド4の前端部に締結されている。これにより、チェーンカバー40は、エンジン本体2に固定されている。
【0061】
図2に示すように、シリンダブロック3およびシリンダヘッド4とチェーンカバー40の間にはチェーン室20が形成されており、チェーン室20にはタイミングチェーン8と吸気側バルブタイミング調整装置15と排気側バルブタイミング調整装置16とが収容されている(
図2参照)。
【0062】
図1、
図2、
図3、
図5において、タイミングチェーン8を仮想線で示す。本実施例のチェーンカバー40は、カバー部材を構成する。
【0063】
図1、
図2に示すように、チェーンカバー40の縦壁40Aの上部には吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bが設けられており、吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bは、チェーンカバー40の幅方向(短手方向)に並列に設置されている。
【0064】
吸気側縦壁部41Aは、吸気カム軸11の軸方向で吸気側バルブタイミング調整装置15に対向しており、吸気側バルブタイミング調整装置15を覆っている。
【0065】
排気側縦壁部41Bは、排気カム軸12の軸方向で排気側バルブタイミング調整装置16に対向しており、排気側バルブタイミング調整装置16を覆っている。
【0066】
排気側縦壁部41Bは、吸気側縦壁部41Aに対してエンジン本体2側に窪んでいる。すなわち、排気側縦壁部41Bは、吸気側縦壁部41Aに対してエンジン本体2側に近づくように窪んでおり、吸気側縦壁部41Aは、排気側縦壁部41Bに対してエンジン本体2から離れるように膨出している。
【0067】
吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bは、吸気カム軸11の軸方向に段差を有する段差部41Cによって連結されている。すなわち、吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bは、段差部41Cによって吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向に離隔されている。
【0068】
図4に示すように、吸気側ハウジング部材23の内部には吸気側ベーンロータ23Aが収容されており、吸気側ベーンロータ23Aは、吸気カム軸11と一体で回転する。吸気側ベーンロータ23Aは、吸気側ハウジング部材23の内部を図示しない複数の進角室と複数の遅角室とに区画している。
【0069】
吸気側バルブタイミング調整装置15には吸気側スプール弁25が設けられている。
吸気側スプール弁25は、吸気カム軸11の軸方向上に設置されており、吸気カム軸11と一体で回転し、かつ、吸気カム軸11の軸方向に移動自在な弁体を有する。
【0070】
図1に示すように、チェーンカバー40の吸気側縦壁部41Aには吸気側ソレノイド52が設けられている。
図4に示すように、吸気側ソレノイド52は、吸気カム軸11の軸方向で吸気側スプール弁25に対向するようにして吸気側縦壁部41Aに取付けられている。
【0071】
吸気側ソレノイド52は、吸気側スプール弁25の弁体が吸気カム軸11の軸方向に移動するように吸気側スプール弁25を作動する。
【0072】
吸気側ソレノイド52が吸気カム軸11の軸方向で吸気側スプール弁25の弁体を進角室側位置に移動させると、オイルポンプ35から供給されるオイルが進角室に供給される。オイルポンプ35から吸気側バルブタイミング調整装置15までの油路は後述する。
【0073】
進角室にオイルが供給されると、吸気側ハウジング部材23に対して吸気側ベーンロータ23Aが相対回転することにより、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相が進角側に調整され、吸気バルブの開閉タイミングが進角側に調整される。
【0074】
吸気側ソレノイド52が吸気カム軸11の軸方向で吸気側スプール弁25の弁体を遅角室側位置に移動させると、オイルポンプ35から供給されるオイルが遅角室に供給される。
【0075】
遅角室にオイルが供給されると、吸気側ハウジング部材23に対して吸気側ベーンロータ23Aが相対回転することにより、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相が遅角に調整され、排気バルブの開閉タイミングが遅角側に調整される。
【0076】
このように、本実施例の吸気側スプール弁25と吸気側ソレノイド52は、オイルによって吸気側バルブタイミング調整装置15を作動し、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相を調整する。
【0077】
本実施例の吸気側スプール弁25は、吸気側油圧制御弁を構成している。吸気側ハウジング部材23および吸気側ベーンロータ23Aは、吸気側スプール弁25の外周部に設置されており、吸気側スプール弁25から供給されるオイルによってクランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相を調整する吸気側アクチュエータを構成する。
【0078】
排気側ハウジング部材24の内部には排気側ベーンロータ24Aが収容されており、排気側ベーンロータ24Aは、排気カム軸12と一体で回転する。排気側ベーンロータ24Aは、排気側ハウジング部材24の内部を図示しない複数の進角室と複数の遅角室とに区画している。
【0079】
図4に示すように、排気側バルブタイミング調整装置16には排気側スプール弁26が設けられている。排気側スプール弁26は、排気カム軸12の軸方向上に設置されており、排気カム軸12と一体で回転し、かつ、排気カム軸12の軸方向に移動自在な弁体を有する。
【0080】
図1に示すように、チェーンカバー40の排気側縦壁部41Bには排気側ソレノイド53が設けられている。
図4に示すように、排気側ソレノイド53は、排気カム軸12の軸方向で排気側スプール弁26に対向するようにして排気側縦壁部41Bに取付けられている。
【0081】
排気側スプール弁26は、排気側ソレノイド53によって作動されることにより、吸気側バルブタイミング調整装置15と同様に進角室と遅角室のいずれか一方にオイルを供給する。これにより、クランク軸7に対する排気カム軸12の相対回転位相を進角側または遅角側に調整し、排気バルブの開閉タイミングを進角側または遅角側に調整する。
【0082】
本実施例の排気側スプール弁26は、排気側油圧制御弁を構成している。排気側ハウジング部材24および排気側ベーンロータ24Aは、排気側スプール弁26の外周部に設置されており、排気側スプール弁26から供給されるオイルによってクランク軸7に対する排気カム軸12の相対回転位相を調整する排気側アクチュエータを構成する。
【0083】
図1、
図3に示すように、チェーンカバー40の縦壁40Aの上部にはマウント取付部44が設けられている。
【0084】
マウント取付部44は、吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bの下側に位置し、チェーンカバー40に対してエンジン本体2から離れる方向(前方)に膨出している。
【0085】
図3に示すように、エンジン1の前方にはサイドメンバ10が設けられており、サイドメンバ10は前後方向に延びている。
【0086】
マウント取付部44の先端部には取付座44aが設けられており(
図2、
図4参照)、取付座44aには図示しない締結具としてのボルトが締結されるボルト孔44b、44c、44dが形成されている。
【0087】
図3に示すように、取付座44aにはマウント部材51が取付けられている。マウント部材51は、マウントブラケット51Aを備えており、マウントブラケット51Aの後端部にはボルトが挿通される。
【0088】
マウントブラケット51Aの後端部に挿通されたボルトは、ボルト孔44b、44c、44dに締結される。これにより、マウントブラケット51Aの後端部が取付座44aに固定されている。
【0089】
マウント部材51は、振動吸収部材51Bを備えており、振動吸収部材51Bは、サイドメンバ10に取付けられている。マウントブラケット51Aの前端部は、振動吸収部材51Bに取付けられており、エンジン本体2は、マウント部材51を介してサイドメンバ10に弾性的に支持されている。
【0090】
これにより、エンジン1の振動をマウント部材51によって吸収でき、エンジン1からサイドメンバ10に伝達される振動を抑制できる。
図6、
図7に示すように、シリンダヘッド4の前壁4Aには油路61が設けられている。
【0091】
油路61は、主油路62と、吸気側ヘッド油路63と、排気側ヘッド油路64と、吸気側カムキャップ内油路65と、排気側カムキャップ内油路66と、吸気カム軸内油路67と、排気カム軸内油路68とを有する。
【0092】
なお、本実施例の油路61は、前壁4Aから膨出する筒状部と、筒状部の内部に設けられ、オイルが流れる油路とを含んだものから構成されている。
【0093】
主油路62は、シリンダヘッド4の下面から上面に向かって上下方向に直線状に延びており、主油路62にはオイルポンプ35からオイルが供給される。主油路62の上流側は、シリンダブロック3に設けられた図示しないブロック側油路に連通しており、ブロック側油路は、オイルポンプ35から吐出されるオイルを主油路62に導く。ここで、上流、下流とはオイルが流れる方向に対して上流、下流を指す。
【0094】
吸気側ヘッド油路63は、主油路62から分岐して前壁4Aの上面に到っている。具体的には、
図7に示すように、吸気側ヘッド油路63は、主油路62の分岐部62aから吸気側壁4Bに向かって直線状に延びる第1の吸気側ヘッド油路63Aと、第1の吸気側ヘッド油路63Aの延びる方向の外端部63aから上方へ直線状に延び、吸気側カムキャップ内油路65に到る第2の吸気側ヘッド油路63Bとを有する。
【0095】
排気側ヘッド油路64は、主油路62の分岐部62aから分岐して分岐部62aから上方に直線状に延びており、前壁4Aの上面に到っている。
【0096】
シリンダヘッド4における主油路62は、前壁4Aの下端から吸気側ヘッド油路63と排気側ヘッド油路64が分岐される分岐部62aまでの油路から構成されている。
【0097】
このように本実施例の主油路62と排気側ヘッド油路64は、排気側カムキャップ内油路66の下方から排気側カムキャップ内油路66に向かって上方に直線状に延びている。
【0098】
吸気側カムキャップ内油路65は、カムキャップ14の内部に設けられており、第2の吸気側ヘッド油路63Bと吸気カム軸内油路67とを連通している。吸気カム軸内油路67は、吸気カム軸11の端部に設けられており、第2の吸気側ヘッド油路63Bと吸気側スプール弁25の油路とを連通している。
【0099】
吸気側スプール弁25は、吸気側ソレノイド52に制御されることにより、吸気カム軸内油路67から供給されるオイルを吸気側バルブタイミング調整装置15の進角室または遅角室に供給する。
【0100】
排気側カムキャップ内油路66は、カムキャップ14の内部に設けられており、排気側ヘッド油路64と排気カム軸内油路68とを連通している。排気カム軸内油路68は、排気カム軸12の端部に設けられており、排気側ヘッド油路64と排気側スプール弁26の油路とを連通している。
【0101】
排気側スプール弁26は、排気側ソレノイド53に制御されることにより、排気カム軸内油路68から供給されるオイルを排気側バルブタイミング調整装置16の進角室または遅角室に供給する。
【0102】
吸気側カムキャップ内油路65は、排気側カムキャップ内油路66とエンジン1の左右方向に並んで設置されており、吸気側軸受部17に対して排気側軸受部18と反対側に設置されている。
【0103】
すなわち、吸気側カムキャップ内油路65は、吸気側軸受部17に対して吸気側壁4B側に設置されており、排気側カムキャップ内油路66は、吸気側軸受部17と排気側軸受部18との間に設置されている。
【0104】
吸気側カムキャップ内油路65と排気側カムキャップ内油路66は、同じ高さ位置でエンジン1の左右方向に並んで設置されており、吸気側カムキャップ内油路65のエンジン1の左右方向に沿う長さは、排気側カムキャップ内油路66のエンジン1の左右方向に沿う長さよりも短く形成されている。
【0105】
図7、
図9に示すように、第2の吸気側ヘッド油路63Bにはセンサ取付用ボス69が設けられており、センサ取付用ボス69の内部にはセンサ用孔部69aが設けられている。センサ用孔部69aには油圧センサ70が挿通されており、油圧センサ70はセンサ取付用ボス69に取付けられている。
【0106】
油圧センサ70は、第2の吸気側ヘッド油路63Bを流れるオイルの圧力(油圧)を検出し、図示しないコントローラに信号を送信する。
【0107】
コントローラは、油圧センサ70に基づいて吸気側ソレノイド52と排気側ソレノイド53を制御し、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相やクランク軸7に対する排気カム軸12の相対回転位相を調整する。
【0108】
図6に示すように、第2の吸気側ヘッド油路63Bは、上端部63bがボルト取付用ボス31、32に対して吸気側壁4B側に位置している。
【0109】
図5に示すように、第2の吸気側ヘッド油路63Bは、吸気カム軸11の軸方向においてボルト取付用ボス31、32に対して吸気側バルブタイミング調整装置15とは反対側に位置しており、エンジン1の左右方向でボルト取付用ボス31と隣接している。
【0110】
図6、
図7に示すように、第2の吸気側ヘッド油路63Bは、上端部63bから下端部63cに向かうにつれて吸気側壁4Bに近づくように傾斜しており、第1の吸気側ヘッド油路63Aの外端部63aから吸気側軸受部17に向かって左斜め上方に延びている。
【0111】
図6、
図8に示すように、ボルト取付用ボス31、32は、吸気カム軸11の軸方向で前壁4Aから吸気側バルブタイミング調整装置15側に膨出しており、ボルト取付用ボス31、32の下方には空間71が形成されている。
【0112】
図6に示すように、センサ用孔部69aは、第2の吸気側ヘッド油路63Bの外壁63dよりボルト取付用ボス31、32側に突出しており、第2の吸気側ヘッド油路63Bよりもボルト取付用ボス31、32側に延びている。
【0113】
センサ取付用ボス69とボルト取付用ボス31、32との間に空間71が形成されており、センサ取付用ボス69は、第2の吸気側ヘッド油路63Bから空間71に膨出している。
【0114】
図6、
図7に示すように、前壁4Aには第1の連絡油路72と、第2の連絡油路73と、吸気側ラッシュアジャスタ用油路74と、排気側ラッシュアジャスタ用油路75とが設けられている。
【0115】
第1の連絡油路72は、排気側カムキャップ内油路66と吸気側ラッシュアジャスタ用油路74とを連通している。吸気側ラッシュアジャスタ用油路74は、シリンダヘッド4の前後方向に延びており、吸気側ラッシュアジャスタ36Aに作動用のオイルを供給する。
【0116】
第2の連絡油路73は、排気側カムキャップ内油路66と排気側ラッシュアジャスタ用油路75とを連通している。排気側ラッシュアジャスタ用油路75は、シリンダヘッド4の前後方向に吸気側ラッシュアジャスタ用油路74と平行に延びており、図示しない排気側ラッシュアジャスタに作動用のオイルを供給する。
【0117】
次に、本実施例のエンジン1の油路構造の効果を説明する。
本実施例のエンジン1の油路構造は、シリンダヘッド4の前壁4Aに設けられ、オイルポンプ35からオイルが供給される主油路62と、主油路62から分岐して前壁4Aの上面に到る吸気側ヘッド油路63および排気側ヘッド油路64とを備えている。
【0118】
また、本実施例のエンジン1の油路構造は、カムキャップ14内に設けられ、吸気側ヘッド油路63と吸気側スプール弁25とを連通する吸気側カムキャップ内油路65と、カムキャップ14内に設けられ、排気側ヘッド油路64と排気側スプール弁26とを連通する排気側カムキャップ内油路66とを備えている。
【0119】
吸気側カムキャップ内油路65は、吸気カム軸内油路67を通して吸気側スプール弁25に連通しており、排気側カムキャップ内油路66は、排気カム軸内油路68を通して排気側スプール弁26に連通している。
【0120】
これにより、オイルポンプ35から主油路62に供給されたオイルは、主油路62から吸気側ヘッド油路63と排気側ヘッド油路64に分岐される。
【0121】
主油路62から吸気側ヘッド油路63に分岐されたオイルは、吸気側ヘッド油路63から吸気側カムキャップ内油路65、吸気カム軸内油路67を通して吸気側スプール弁25に供給される。
【0122】
一方、主油路62から排気側ヘッド油路64に分岐されたオイルは、排気側ヘッド油路64から排気側カムキャップ内油路66、排気カム軸内油路68を通して排気側スプール弁26に供給される。
【0123】
ここで、エンジン1の停止後には油路61のオイルが漏れる等して油路61の油圧が低下する。
【0124】
このため、エンジン1の始動後にはオイルポンプ35によって油路61にオイルを送り込み、コントローラは、油圧センサ70の圧力が所定の圧力になったときに、吸気側ソレノイド52と排気側ソレノイド53に駆動信号を出力して吸気側バルブタイミング調整装置15と排気側バルブタイミング調整装置16を作動する。
【0125】
このとき、できるだけ早く吸気側バルブタイミング調整装置15を作動させると、排気ガスの削減や燃費向上に有利となる。
【0126】
エンジン1の始動後に吸気側バルブタイミング調整装置15を早く作動させるには吸気側バルブタイミング調整装置15の吸気側スプール弁25に速やかにオイル供給するとともに吸気側スプール弁25に供給される油圧を油圧センサ70によって正確に検出する必要がある。
【0127】
本実施例のエンジン1の油路構造によれば、吸気側カムキャップ内油路65は、吸気側軸受部17に対して排気側軸受部18と反対側に設置されており、排気側カムキャップ内油路66は、吸気側軸受部17と排気側軸受部18との間に設置されている。
【0128】
主油路62および排気側ヘッド油路64は、排気側カムキャップ内油路66の下方から排気側カムキャップ内油路66に向かって上方に延びている。
【0129】
吸気側ヘッド油路63は、主油路62からシリンダヘッド4の吸気側壁4Bに向かって延びる第1の吸気側ヘッド油路63Aと、第1の吸気側ヘッド油路63Aの延びる方向の外端部63aから上方へ延び、吸気側カムキャップ内油路65に到る第2の吸気側ヘッド油路63Bとを有する。
【0130】
これに加えて、第2の吸気側ヘッド油路63Bに、油圧センサ70を取付けるセンサ取付用ボス69が設けられている。
【0131】
このように、エンジン1の油路構造においては、吸気側カムキャップ内油路65が吸気側軸受部17に対して排気側軸受部と反対側に設置されており、第2の吸気側ヘッド油路63Bが第1の吸気側ヘッド油路63Aの延びる方向の外端部63aから上方へ延び、吸気側カムキャップ内油路65に到る。
【0132】
これにより、吸気側カムキャップ内油路65および第2の吸気側ヘッド油路63Bを、吸気カム軸11と交差する方向(シリンダヘッド4の幅方向)でシリンダヘッド4の吸気側壁4Bに近づけることができる。
【0133】
このため、シリンダヘッド4の吸気側壁4Bを通して第2の吸気側ヘッド油路63Bに油圧センサ70を容易に取付けることができる。
【0134】
また、エンジン1の油路構造においては、吸気側軸受部17と排気側軸受部18との間に排気側カムキャップ内油路66が設置されるとともに、主油路62および排気側ヘッド油路64が排気側カムキャップ内油路66の下方から排気側カムキャップ内油路66に向かって上方に延び、第1の吸気側ヘッド油路63Aが主油路62からシリンダヘッド4の吸気側壁4Bに向かって延びている。
【0135】
これにより、主油路62および排気側ヘッド油路64を、吸気カム軸11と交差する方向で第2の吸気側ヘッド油路63Bに近づけて主油路62に連通される第1の吸気側ヘッド油路63Aの長さを短縮できる。
【0136】
このため、エンジン1の始動後に主油路62から第1の吸気側ヘッド油路63Aおよび第2の吸気側ヘッド油路63Bを通して吸気側スプール弁25にオイルを速やかに供給できる。
【0137】
これに加えて、油圧センサ70を取付けるセンサ取付用ボス69が第2の吸気側ヘッド油路63Bに取付けられているので、油圧センサ70を吸気側スプール弁25に近づけることができることに加えて、第2の吸気側ヘッド油路63Bの油圧を速やかに上昇させることができるので、吸気側スプール弁25に供給される油圧をより正確に検出できる。
【0138】
以上のように、本実施例のエンジン1の油路構造は、エンジン1の始動後に、オイルを速やかに吸気側スプール弁25に供給できるとともに、吸気側スプール弁25に供給される油圧を正確に検出できるので、エンジン1の始動後に速やかに吸気側バルブタイミング調整装置15を作動させることができ、排気ガスの低減や燃料消費の低減を図ることができる。
【0139】
また、本実施例のエンジン1の油路構造によれば、前壁4Aの上端部に、カムキャップ14を前壁4Aの上面に取付けるボルト取付用ボス31、32が設けられており、ボルト取付用ボス31、32は、吸気側軸受部17の両側部に設置されている。
【0140】
第2の吸気側ヘッド油路63Bは、上端部63bがボルト取付用ボス31、32に対して吸気側壁4B側に位置し、かつ、吸気カム軸11の軸方向においてボルト取付用ボス31、32に対して吸気側バルブタイミング調整装置15とは反対側に位置してボルト取付用ボス31と隣接している。
【0141】
これに加えて、第2の吸気側ヘッド油路63Bは、上端部63bから下端部63cに向かうにつれて吸気側壁4Bに近づくように傾斜している。
【0142】
これにより、第2の吸気側ヘッド油路63Bの延びる方向の中間部をシリンダヘッド4の吸気側壁4B側に近づけて油圧センサ70をセンサ取付用ボス69に容易に取付けることができる。
【0143】
これに加えて、第2の吸気側ヘッド油路63Bの上端部63bを吸気側軸受部17に近づけることができ、油圧センサ70を吸気側スプール弁25により一層近づけることができる。このため、吸気側スプール弁25に供給される油圧を油圧センサ70によって正確に検出できる。
【0144】
また、本実施例のエンジン1の油路構造によれば、ボルト取付用ボス31、32は、その下方に空間71が形成されるように吸気カム軸11の軸方向で前壁4Aから吸気側バルブタイミング調整装置15側に膨出しており、センサ取付用ボス69の内部にセンサ用孔部69aが設けられている。
【0145】
これに加えて、センサ用孔部69aは、第2の吸気側ヘッド油路63Bの外壁63dよりボルト取付用ボス31、32側に突出するとともに、第2の吸気側ヘッド油路63Bよりもボルト取付用ボス31、32側に延びており、センサ取付用ボス69とボルト取付用ボス31、32との間に空間71が形成されている。
【0146】
これにより、吸気カム軸11と交差する方向でセンサ取付用ボス69を吸気側軸受部17に近づけることができ、油圧センサ70を吸気側スプール弁25により一層近づけることができる。このため、吸気側スプール弁25に供給される油圧を油圧センサ70によってより一層正確に検出できる。
【0147】
さらに、センサ取付用ボス69とボルト取付用ボス31、32との間に空間71を設置することにより、シリンダヘッド4を鋳造によって製造する際に、鋳巣によってセンサ用孔部69aがボルト取付用ボス31、32と連通することが防止できる。
【0148】
すなわち、鋳巣によってセンサ用孔部69aとボルト取付用ボス31、32が連通する肉厚部を予め空間71にすることにより、鋳巣によってセンサ用孔部69aとボルト取付用ボス31、32とが連通することを防止できる。
【0149】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく調整が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1...エンジン(内燃機関)、4...シリンダヘッド、4A...前壁(端部壁)、4B...吸気側壁、7...クランク軸、9...吸気マニホールド、11...吸気カム軸、12...排気カム軸、14...カムキャップ、15...吸気側バルブタイミング調整装置、16...排気側バルブタイミング調整装置、17...吸気側軸受部、18...排気側軸受部、23...吸気側ハウジング部材(吸気側アクチュエータ)、23A...吸気側ベーンロータ(吸気側アクチュエータ)、24...排気側ハウジング部材(排気側アクチュエータ)、24A...排気側ベーンロータ(排気側アクチュエータ)、25...吸気側スプール弁(吸気側油圧制御弁)、26...排気側スプール弁(排気側油圧制御弁)、31,32...ボルト取付用ボス、62...主油路、63...吸気側ヘッド油路、63A...第1の吸気側ヘッド油路、63a...外端部(第1の吸気側ヘッド油路の外端部)、63B...第2の吸気側ヘッド油路、63b...上端部(第2の吸気側ヘッド油路の上端部)、63c...下端部(第2の吸気側ヘッド油路の下端部)、63d...外壁(第2の吸気側ヘッド油路の外壁)、64...排気側ヘッド油路、65...吸気側カムキャップ内油路、66...排気側カムキャップ内油路、69...センサ取付用ボス、69a...センサ用孔部、70...油圧センサ、71...空間