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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023028471
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】建物の配線引込構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20230224BHJP
   E04D 13/18 20180101ALI20230224BHJP
   H02G 3/22 20060101ALI20230224BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
H01L31/04 500
E04D13/18
H02G3/22
H02G3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134188
(22)【出願日】2021-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正人
【テーマコード(参考)】
2E108
5F151
5F251
5G363
【Fターム(参考)】
2E108KK09
2E108NN07
5F151BA11
5F151EA17
5F251BA11
5F251EA17
5G363AA15
5G363BA01
5G363CA14
5G363CA20
5G363CB11
5G363DA11
5G363DB03
(57)【要約】
【課題】主に、外壁の入線ボックスをなくして、入線ボックスによる見栄えの悪化を防止し得るようにする。
【解決手段】
建物本体2の上部に、建物本体2の上縁部2aよりも内側に位置するように屋根パネル3が設置され、建物本体2と屋根パネル3との間に、建物本体2の上縁部2aと屋根パネル3の側面3aとを覆う屋根縁カバー4が設置された建物1に対し、屋根パネル3に設置された太陽光パネル21から延びる配線22を建物1の内部へ導く建物1の配線引込構造に関する。
屋根縁カバー4には、配線引込部31を構成する開口部32が設けられる。配線22は、開口部32を通して屋根パネル3の下面側33へ導かれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の上部に、該建物本体の上縁部よりも内側に位置するように屋根パネルが設置され、
前記建物本体と前記屋根パネルとの間に、前記建物本体の前記上縁部と前記屋根パネルの側面とを覆う屋根縁カバーが設置された建物に対し、
前記屋根パネルに設置された太陽光パネルから延びる配線を前記建物の内部へ導く建物の配線引込構造であって、
前記屋根縁カバーには、配線引込部を構成する開口部が設けられ、
前記配線は、前記開口部を通して前記屋根パネルの下面側へ導かれることを特徴とする建物の配線引込構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物の配線引込構造であって、
前記配線引込部には、前記屋根縁カバーの上に、前記開口部を囲う配線引込カバーが取付けられ、
該配線引込カバーは、蓋部材によって上から覆われることを特徴とする建物の配線引込構造。
【請求項3】
請求項2に記載の建物の配線引込構造であって、
前記配線引込カバーは、前記開口部に対して立上がる立上部と、該立上部の上側に設けられた配線通過部とを有しており、
前記蓋部材は、少なくとも前記配線通過部の側の部分が、前記配線通過部よりも外側に位置して前記配線通過部よりも下方へ延びる立下部を有していることを特徴とする建物の配線引込構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の建物の配線引込構造であって、
前記屋根縁カバーには、前記屋根パネルの側面に沿って前記開口部まで導かれる前記配線を上から覆う配線保護カバーが取付けられることを特徴とする建物の配線引込構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の配線引込構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、戸建住宅や集合住宅などの建物では、屋根の上に太陽光パネルを設置することが行われている。そして、屋根に設置した太陽光パネルから延びる配線は、建物の内部へと導かれる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
太陽光パネルから延びる配線を、建物の内部へ導く場合、建物の外壁に入線ボックスを取付けて、外壁の入線ボックスを通すのが主流となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-102882号公報
【特許文献2】特開2011-018865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、太陽光パネルから延びる配線を、建物の外壁に取付けた入線ボックスを通して建物の内部へ導くようにした場合、外壁に入線ボックスを取付ける必要が生じると共に、入線ボックスによって建物の見栄えが悪化するという問題があった。
【0006】
また、入線ボックスは、通せる配線の本数が限られていることから、発電量を増やすために太陽光パネルを数多く設置することで、配線の本数が増えると、その分、多くの入線ボックスを外壁に取付ける必要が生じる。よって、上記した見栄えが悪化の問題は、太陽光パネルを数多く設置するほど、顕著になる。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、
建物本体の上部に、該建物本体の上縁部よりも内側に位置するように屋根パネルが設置され、
前記建物本体と前記屋根パネルとの間に、前記建物本体の前記上縁部と前記屋根パネルの側面とを覆う屋根縁カバーが設置された建物に対し、
前記屋根パネルに設置された太陽光パネルから延びる配線を前記建物の内部へ導く建物の配線引込構造であって、
前記屋根縁カバーに配線引込部となる開口部が形成され、
前記配線は、前記開口部を通して前記屋根パネルの下面側へ導かれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、外壁の入線ボックスをなくして、入線ボックスによる見栄えの悪化を防止することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態にかかる建物の屋根の平面図である。
図2図1の建物を構成する建物ユニットの斜視図である。
図3図2の屋根パネルの分解斜視図である。
図4図1の建物における、配線引込構造を示す屋根の部分的な斜視図である。
図5図4のA-A線に沿った縦断面図である。
図6】(a)は図4の配線引込部を構成する配線引込カバーの斜視図、(b)は(a)の配線通過部の部分拡大図、(c)は(a)の配線が導かれる屋根パネルの裏側部分の部分拡大図である。
図7図6(a)の配線引込カバーに蓋部材を取付ける状態を示す斜視図である。
図8図7のB-B線に沿った配線通過部の縦断面図である。
図9】比較例にかかる建物の配線引込構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図9は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例0012】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0013】
図1は、建物1を上から見た平面図である。
この実施例の建物1は、建物本体2の上部に、屋根パネル3を設置したものとされる。屋根パネル3は、少なくとも一辺が建物本体2の上縁部2aよりも内側に位置するように設置される。
建物本体2と屋根パネル3との間には、建物本体2の上縁部2aと屋根パネル3の側面3aとを覆う屋根縁カバー4が設置される。
【0014】
ここで、建物1は、例えば、戸建住宅や集合住宅など、どのような種類のものであっても良い。また、建物1は、木造や鉄骨造りなどどのような構造のものであっても良い。この実施例では、建物1は、ユニット建物としている。ユニット建物は、予め工場で製造した建物ユニット5(図2)を建築現場へ搬送して、建築現場で複数組み立てることで、短期間のうちに構築できるようにした建物1である。
【0015】
建物本体2は、建物1の本体部分を構成する構成物である。ユニット建物の場合、建物本体2は、単数または複数の建物ユニット5を横に並べたり上に積み上げたりして構成される。
【0016】
建物ユニット5は、図2に示すように、4本の柱6の上端間を4本の天井梁7で矩形状に連結し、4本の柱6の下端間を4本の床梁8で矩形状に連結してなる、ボックスラーメン構造のユニットフレームを、その骨格部分に有している。
【0017】
建物本体2の上縁部2aは、建物本体2の上部における、建物本体2の外周に沿った縁部(外周縁部)のことである。建物本体2の上部は、最上階の建物ユニット5の天井梁7の位置である。建物本体2の上面は、天井面で覆われている。
【0018】
屋根パネル3は、屋根を構成するためのパネルである。屋根パネル3を、建物本体2の上面に、建物本体2の上部のほぼ全面を覆うように複数枚並べて設置することで、建物本体2の上に屋根が構成される。
【0019】
屋根パネル3は、例えば、図3に示すように、平行な一対の屋根フレーム11の間に屋根面材12を設置した構造とすることができる。屋根フレーム11は、内向きC字断面の長尺の金属材で形成されている。屋根面材12は木製の下地板13と、防水シートと、耐水性を有する金属製の仕上面材15とを有している。屋根面材12は、一対の屋根フレーム11に対し、建物本体2の内側から外側へ向かって下りとなる所要の排水勾配を有して設置される。屋根面材12は、屋根フレーム11の内側面に下り勾配に傾斜した状態で取付けた横桟部材16の上に設置される。
【0020】
なお、建物本体2と屋根パネル3との間における、「間」は、単に建物本体2と屋根パネル3との間に形成される具体的な「スペース」という狭い意味に限るものではなく、建物本体2と屋根パネル3との相互関係においてなどという抽象的な意味も含まれる。
【0021】
上縁部2aよりも内側に位置するとは、図4図5(主に図5)に示すように、屋根パネル3(の全体としての側面3a)が、建物本体2の上面(上縁部2a)よりも外側へはみ出さないように設置されることである。屋根パネル3は、全ての側面3aが上縁部2aよりも内側に位置するのが好ましいが、少なくとも一つ以上の側面3aが上縁部2aよりも内側に位置していれば良い。
【0022】
屋根パネル3の側面3aは、最も外側に設置された屋根パネル3の、建物本体2の上縁部2aに最も近い側部を構成する面のことである。屋根パネル3が所要の厚みを有することで、側面3aは建物本体2の上面に対して上記厚み分の高さの段差を有している。
【0023】
屋根縁カバー4は、建物本体2の上面における、上縁部2aに沿った屋根パネル3の側面3aとの間の細長い縁部分を上から覆うほぼ帯状の部材である。屋根縁カバー4は、建物本体2の上縁部2aを構成する各辺に対してそれぞれ設置することができる。屋根縁カバー4は、金属製とされ、耐水性や防水性を有している。
【0024】
屋根縁カバー4は、少なくとも、建物本体2の上面に沿った主面4aと、主面4aの内側の縁部から屋根パネル3の側面3a(外側面)にほぼ沿って上に立上がる縦面4bとを有している。また、屋根縁カバー4は、縦面4bの上端部から屋根パネル3の側面3aの上部に沿って屋根パネル3の内側へ向けて僅かに横へ延びる横面4cを有している。屋根縁カバー4は、主面4aと、縦面4bと、横面4cとを有することで、段差形状となっている。主面4aおよび横面4cとは、ほぼ上下方向に向いた面とされ、縦面4bは、建物1のほぼ内外方向に向いた面とされる。主面4aと、縦面4bと、横面4cとは、例えば、一枚の金属板を曲げ加工して形成することができる。主面4aは、建物本体2の外方へ向けて下りとなる排水勾配を有している。屋根縁カバー4は、単数または複数の取付部材17~19を介して建物本体2の上部に取付けられている。
【0025】
上記のような基本的な構成に対し、
屋根パネル3に太陽光パネル21を設置する。そして、太陽光パネル21から延びる配線22やアース線などの配線類を建物1の内部へ導くようにする。
【0026】
ここで、太陽光パネル21は、太陽光のエネルギーを電気に変える面状の電気的素子である。太陽光パネル21は、屋根パネル3の上面(屋根面材12の上)に取付けられて一体化される。
【0027】
配線22は、各太陽光パネル21に接続されている。配線22は、太陽光パネル21の設置個数に応じて複数本設置される。
【0028】
隣接する屋根パネル3の間には、図1に示すように、金属製の化粧用および防水用のパネルカバー25が設置され、屋根の中央の棟部分には棟カバー26が設置される。そして、パネルカバー25および棟カバー26の下に太陽光パネル21からの配線22を通すことで、パネルカバー25や棟カバー26は、配線目隠カバー27となる。
【0029】
棟カバー26の両端は、建物本体2の上縁部2aの屋根縁カバー4の位置まで延びており、太陽光パネル21からの配線22は、配線目隠カバー27の内部を通って、屋根縁カバー4の位置まで導かれる。その後、配線22は、屋根縁カバー4に沿って建物本体2の上面に形成された小屋裏点検口28の位置まで案内される。小屋裏点検口28は、屋根縁カバー4に近い位置に形成される。
【0030】
なお、配線22を建物1の内部へ導くのは、建物1の内部に設置された不図示のパワーコンディショナや分電盤などの各種の電力系統機器と接続するためである。ただし、上記とは反対に、電力系統機器からの配線を屋根の上まで導いて、屋根の上で太陽光パネル21の配線22と接続するようにしても良い。
【0031】
そして、この実施例の建物1の(屋根から建物本体2の内部への)配線引込構造では、以下のような構成を備えても良い。
【0032】
(1)図6に示すように、屋根縁カバー4には、配線引込部31を構成する開口部32が設けられても良い。
配線22は、開口部32を通して屋根パネル3の下面側33(図5)へ導かれるようにしても良い。
【0033】
ここで、配線引込部31は、配線22を屋根の上から建物1の内部へ引込み得るようにするために屋根縁カバー4に形成した貫通部分である。配線引込部31は、建物本体2の上面(天井面)に形成された小屋裏点検口28に近い位置に形成され、小屋裏点検口28と共に、配線22の引込みに使用される。配線22は、配線引込部31から屋根の裏面側へ導かれた後に、小屋裏点検口28を通して建物本体2の内部へ引込まれる。
【0034】
開口部32は、配線引込部31の主要部を構成するものであり、屋根縁カバー4に形成された貫通穴とされる。開口部32は、屋根縁カバー4の主面4aに、縦面4bとの境界部分を上下に貫通するように形成される。開口部32は、どのような形状としても良いが、この実施例では、平面視ほぼ矩形状とされている。平面視ほぼ矩形状の開口部32は、主面4aの幅寸法のほぼ半分程度の幅、および、この幅と同じかそれよりも長い所要の長さを有している。
【0035】
屋根パネル3の下面側33は、屋根パネル3の下に位置して建物本体2の上面に臨む部分である。建物本体2の上面は、天井面で塞がれているが、天井面には、小屋裏点検口28が形成されるので、配線22を屋根パネル3の下面側33へ導くことができれば、そのまま小屋裏点検口28を通して建物1の内部へ引き込むことが可能になる。
【0036】
(2)配線引込部31には、屋根縁カバー4の上に、開口部32を囲う配線引込カバー41が取付けられても良い。
そして、配線引込カバー41は、蓋部材42(図7)によって上から覆われるようにしても良い。
【0037】
ここで、配線引込カバー41は、配線引込部31の開口部32の周囲を保護する金属製の部材であり、配線引込部31の一部を構成する。配線引込カバー41は、開口部32を縦面4bとの境界部分の位置に形成することで、矩形状の一辺が開放された、互いほぼ直交する三つの辺を有する平面視ほぼC字状の枠部材となる。配線引込カバー41の開放部分は、両端部が、屋根縁カバー4の縦面4bに接合されることで塞がれる。
【0038】
そして、配線引込カバー41は、底辺部が、屋根縁カバー4の主面4aの上面に接合されることで、屋根縁カバー4と一体化される。配線引込カバー41は、屋根縁カバー4(の主面4aや縦面4b)に対し、溶接やリベットなどで接合固定される。接合部分には、必要な接合代が適宜形成される。配線引込カバー41は、屋根縁カバー4と同じ色調に揃えておくのが好ましい。
【0039】
蓋部材42(図7)は、配線引込カバー41の上部に上から取付けて開口部32の全面を塞ぐ金属製の保護部材であり、配線引込部31の一部を構成する。蓋部材42は、開口部32や配線引込カバー41とほぼ同じ平面形状で、開口部32や配線引込カバー41よりも若干または一回り程度大きい、ほぼ上下方向に向いた蓋面42aを主に有している。蓋面42aは、配線引込カバー41の上部の位置に、屋根縁カバー4の横面4cよりも低い状態で設置される。蓋面42aは、屋根縁カバー4の主面4aと同様の排水勾配を有して屋外側へ向かって下り勾配となるように傾斜させても良い。蓋部材42は、屋根縁カバー4と同じ色調に揃えておくのが好ましい。
【0040】
蓋部材42には、建物本体2の内側(屋根側)へ向いた一辺に嵌合係止部42bが設けられている。この嵌合係止部42bは、屋根縁カバー4の横面4cより僅かに大きな幅寸法を有する、逆U字状の部分となっている。この嵌合係止部42bを、屋根縁カバー4の横面4cに対して上から嵌合係止させることで、蓋部材42は、屋根縁カバー4に対して位置決めされ、保持されるようになっている。
【0041】
嵌合係止部42bは、上記した一辺の全域に亘って延びるものとしても良いし、一辺に対し部分的に単数または複数設けても良い。嵌合係止部42bは、蓋部材42と一体に形成しても良いし、別体に形成して取付けても良い。嵌合係止部42bは、蓋部材42と一体に形成しても良いし、別体に形成して取付けても良い。
【0042】
蓋部材42は、蓋面42aが、配線引込カバー41に対してリベットなどの接合具45で上下方向や横方向などに適宜固定される。
【0043】
そして、配線引込カバー41の上面と蓋部材42の下面との間には、ゴムなどの弾性変形可能な固形の止水材46や、ペースト状の止水剤47などが適宜施工される。止水材46や止水剤47は、少なくとも、配線引込カバー41の上部に沿って連続するように設けられる。止水材46や止水剤47は、蓋部材42の下面の側に設けても良い。また、止水材46や止水剤47は、屋根縁カバー4の縦面4bや横面4cにおける、嵌合係止部42bが嵌合する部分に設けても良い。
【0044】
(3)図8に示すように、
配線引込カバー41は、開口部32に対して立上がる立上部51と、立上部51の上側に設けられた配線通過部52とを有しても良い。
蓋部材42は、少なくとも配線通過部52の側の部分に、配線通過部52よりも外側に位置して配線通過部52よりも下方へ延びる立下部53を有しても良い。
【0045】
ここで、立上部51は、開放枠状の配線引込カバー41の三つの辺の主要部を構成するものであり、屋根縁カバー4の縦面4bのほぼ半分程度またはそれ以上の高さまで立ち上げた立壁とされる。立上部51は、配線22からの伝い水の開口部32への入込みを防止可能な高さよりも高いものとされる。立上部51の上側とは、立上部51の高さ寸法の半分よりも上側の部分のことである。
【0046】
配線通過部52は、配線22を配線引込カバー41の外側から内側へと通過させる部分である。配線通過部52は、配線引込カバー41における、配線目隠カバー27(棟カバー26)側に位置する立上部51に設けられる。配線通過部52は、例えば、立上部51の上縁部分に沿って形成された凹状の切欠部や、立上部51の上部に形成された貫通穴などとすることができる。この実施例では、配線通過部52は、切欠部とされている。
【0047】
具体的には、配線引込カバー41は、三つの辺を形成する各立上部51の上縁に、ほぼ水平な外フランジ55が一体に形成されており、上記した止水材46や止水剤47は、外フランジ55の上面に設置される(図6(a))。外フランジ55の外側の縁部には、水切り用の下フランジ56が一体に形成されており、下フランジ56の下縁部には、配線22を傷付けないように上に折返して成るヘミング部56aが形成されている。
【0048】
そして、配線通過部52は、このような立上部51の上辺の一部または全部を、配線22を収容可能な所要の幅に切欠いて低くしたものとされる。この配線通過部52に対して、複数本の配線22は、止水性を確保するために、上下に重なり合ったり交差したりしないように、横に(整然と)並べて設置される(図6(b))。配線通過部52では、配線22は、止水材46で上下に挟んだ状態にして止水材46の間を通過させることで、上下の止水材46によって止水するようにしている。
【0049】
なお、配線通過部52以外の位置については、複数本の配線22は、まとめても良く、まとめた配線22は、テープ57で屋根フレーム11の内面などの適宜の位置に固定しても良い(図6(c))。
【0050】
立下部53は、蓋部材42における、配線引込カバー41よりも外側へ張り出している縁部に一体に設けられた、下向きのフランジ部分である。立下部53は、嵌合係止部42bを設けた以外の三つの辺に沿って連続した状態で形成される。
【0051】
このうち、少なくとも配線通過部52の側では、立下部53は、配線引込カバー41の下フランジ56の外側に、下フランジ56と所要の通線スペースを有して離間するように形成される。また、この立下部53の下縁部は、屋根縁カバー4の主面4aに対し、所要の通線スペースを有した上側の位置まで延ばされる。所要の通線スペースは、配線22の直径分の距離に余裕代を加えた大きさとされる。
【0052】
そして、少なくとも通線スペースを形成する部分については、立下部53は、その下縁部に、配線22を傷付けないように上に折返して成るヘミング部53aを形成する。または、ヘミング部53aを形成することで、立下部53は、その下縁部の下側に通線スペースを確保形成する。なお、通線スペースを設けない部分については、立下部53の下縁部は、ヘミング部53aを形成せずに、屋根縁カバー4の主面4aにほぼ達する程度の長さまで延ばしても良い。これにより、通線スペースの部分とそれ以外の部分とで、立下部53の下縁部が段差状になる(図7)。
【0053】
そして、屋根縁カバー4の主面4aに沿って、配線目隠カバー27の端部から配線引込部31へと導かれた配線22は、配線引込カバー41の外側から内側へと案内される。この際、配線22は、配線引込部31の外側から屋根縁カバー4の主面4aと立下部53の下縁部との間の上下の隙間を横に通る。次に、配線22は、立下部53と配線引込カバー41の下フランジ56との間の内外間の隙間を上に通り、配線通過部52の上を乗り越えた後に開口部32へ入ることで、上方迂回形状となる。屋根縁カバー4の主面4aと立下部53の下縁部との間の上下の隙間と、立下部53と配線引込カバー41の下フランジ56との間の内外間の隙間によって形成される通線スペースは、ほぼラビリンス状となる。
【0054】
(4)図4図5に示すように、屋根縁カバー4には、屋根パネル3の側面3aに沿って開口部32まで導かれる配線22を上から覆う配線保護カバー61が取付けられても良い。
【0055】
ここで、配線保護カバー61は、屋根パネル3の側面3aに沿って、屋根縁カバー4の主面4aの上を、屋根縁カバー4の長手方向に延びる金属製の長尺部材である。配線保護カバー61は、横面部61aと縦面部61bとを有するL字状断面の部材とされて、配線目隠カバー27(棟カバー26)と配線引込部31との間を繋ぐ。配線保護カバー61は、屋根縁カバー4と同じ色調に揃えておくのが好ましい。配線保護カバー61を屋根縁カバー4の上に設置することで、配線保護カバー61の横面部61aおよび縦面部61bと、屋根縁カバー4の主面4aおよび縦面4bとの間に、配線22を通す通路が形成される。
【0056】
配線保護カバー61は、横面部61aが、屋根縁カバー4の主面4aや蓋部材42の蓋面42aよりも狭幅とされる。横面部61aは、建物本体2の外方へ向けて下りとなる排水勾配を有している。配線保護カバー61は、縦面部61bが屋根縁カバー4の縦面4bとほぼ等しい高さを有することにより、横面部61aが、屋根縁カバー4の横面4cとほぼ面一とされる。縦面部61bは、その下部に、配線22を傷付けないように上に折返して成るヘミング部61cを形成しても良い。
【0057】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0058】
建物1は、建物本体2の上に屋根を設置することで構築される。ユニット建物の場合、建物ユニット5を複数設置して建物本体2を形成した後に、建物本体2の上に、建物本体2の上面を覆うように複数枚の屋根パネル3を並べることで、屋根の主要部を形成する。そして、屋根パネル3の周囲に、屋根パネル3の側面3aと建物本体2との間の細長い隙間を覆うように屋根縁カバー4を取付けることで屋根が形成され、建物1が構築される。
【0059】
屋根パネル3には、予め太陽光パネル21が取付けられており、各太陽光パネル21からの配線22は、屋根パネル3ごとにまとめられている。
【0060】
そして、屋根の形成後に、屋根パネル3ごとにまとめられている太陽光パネル21の配線22を集めて、全ての配線22を建物1の内部へと導く。
【0061】
この際、配線22は、屋根の上で、配線目隠カバー27(パネルカバー25、棟カバー26)の内側を通って、屋根の縁部(屋根パネル3の側面3a)の位置へと導かれる。その後、配線22は、屋根の縁部に沿って、屋根縁カバー4の上に露出した状態で、配線引込部31へ向けて導かれる。そして、配線22は、屋根縁カバー4に設けられた配線引込部31へ通される。
【0062】
配線引込部31は開口部32を有しており、配線22は、屋根縁カバー4の上側から開口部32を通して屋根パネル3の下面側33へと導かれ、小屋裏点検口28から建物本体2の内部へと引込まれる。
【0063】
配線引込部31では、開口部32の周囲に、配線引込カバー41が設置されており、配線22は、配線引込カバー41の立上部51の上を乗り越えて上方迂回形状となって、開口部32へ通される。立上部51には、配線通過部52が設けられており、配線22は、配線通過部52を通されて、配線通過部52に設けられた止水材46で止水される。
【0064】
配線引込カバー41には、上から蓋部材42が取付けられることで、開口部32が塞がれる。
【0065】
最後に、配線22の屋根縁カバー4の上で露出している部分が、配線保護カバー61で覆われる。
【0066】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果が得られる。
【0067】
(効果 1)建物1の配線引込構造は、配線22を、屋根縁カバー4に形成した配線引込部31となる開口部32を通して屋根パネル3の下面側33へ導くようにしても良い。これにより、図9の比較例に示すように、建物1の外壁71に単数または複数の入線ボックス72を取付ける必要をなくすことができる。そして、屋根の縁部の目立たない位置に配線22の引込口を確保して、入線ボックス72による見栄えの悪化を防止できる。また、開口部32は、大きく形成することで、一度に多数の配線22を通すことができるので、太陽光パネル21を数多く設置して配線22が増えた場合であっても、余裕を持って対応できる。
【0068】
(効果 2)建物1の配線引込構造は、開口部32を囲う屋根縁カバー4の上に配線引込カバー41を付けて、蓋部材42によって屋根縁カバー4を上から覆っても良い。これにより、開口部32を配線引込カバー41および蓋部材42で保護して、開口部32を止水することができる。配線引込カバー41および蓋部材42は、外部から目立たないように設置できるので、見栄えの悪化を防止できる。
【0069】
(効果 3)建物1の配線引込構造は、配線引込カバー41が、開口部32に対して立上がる立上部51と、立上部51の上側に設けられた配線通過部52とを有しても良い。これにより、立上部51(および配線通過部52)によって配線22を上方へ迂回させる(立上部51を乗越えるように取回す)ことができ、配線22の伝い水を上方への迂回部分で切って、伝い水が開口部32へ入るのを確実に防止できる。
【0070】
また、配線通過部52によって配線22を立上部51の高さ範囲内に収めることができる。また、配線通過部52に止水材46を施工すれば、配線通過部52を確実に止水した状態で蓋部材42を取付けることができる。
【0071】
蓋部材42は、少なくとも配線通過部52の側の部分に、配線通過部52よりも外側に位置して下方へ延びる立下部53を有しても良い。これにより、蓋部材42と配線引込カバー41の配線通過部52との間に、ほぼラビリンス状の通線スペースを形成することが可能になる。そして、蓋部材42および立下部53は、配線通過部52および配線22の上方への迂回部分の全体を覆って、配線引込部31に対する止水性能を確保することができる。
【0072】
(効果 4)建物1の配線引込構造は、屋根縁カバー4に、屋根パネル3の側面3aに沿って開口部32まで導かれる配線22を上から覆う配線保護カバー61を取付けても良い。これにより、開口部32へ入るまでの、屋根縁カバー4の上の配線22を配線保護カバー61で確実に保護して、外部から見えなくすることができる。しかも、上記した比較例の場合には、配線22を樹脂可撓管73に入れた状態で外壁71に沿って入線ボックス72まで導く必要があるため、樹脂可撓管73も見栄えの悪化の原因となる。これに対し、この実施例では、外壁71沿いに配設される樹脂可撓管73をなくして、外壁71の見栄えの悪化をすることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 建物
2 建物本体
2a 上縁部
3 屋根パネル
3a 側面
4 屋根縁カバー
21 太陽光パネル
22 配線
31 配線引込部
32 開口部
33 下面側
41 配線引込カバー
42 蓋部材
51 立上部
52 配線通過部
53 立下部
61 配線保護カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9