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特開2023-29029車載システム、プログラム、情報処理方法及び第2車載ECU
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029029
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】車載システム、プログラム、情報処理方法及び第2車載ECU
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20230224BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20230224BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20230224BHJP
   H02H 7/16 20060101ALI20230224BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20230224BHJP
   G06F 1/30 20060101ALI20230224BHJP
【FI】
B60R16/02 650V
H02H3/087
H02H7/00 F
H02H7/16 A
H02H7/16 E
H02H7/20 F
G06F1/30 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135094
(22)【出願日】2021-08-20
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】山根 卓真
【テーマコード(参考)】
5B011
5G004
5G053
【Fターム(参考)】
5B011DA00
5B011EA10
5B011GG06
5B011JA12
5G004AA04
5G004AB02
5G004DC12
5G004DC14
5G053AA01
5G053AA14
5G053BA01
5G053BA06
5G053CA01
5G053EA01
5G053EC05
5G053FA05
(57)【要約】
【課題】車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行うことができる車載システム等を提供する。
【解決手段】車載システムは、車両に搭載され、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと、前記第1車載ECUと通信可能に接続される第2車載ECUとを含む車載システムであって、前記第1車載ECUは、前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、検出した電流値を前記第2車載ECUに出力し、前記第2車載ECUは、前記第1車載ECUから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力し、前記第1車載ECUは、前記第2車載ECUから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと、前記第1車載ECUと通信可能に接続される第2車載ECUとを含む車載システムであって、
前記第1車載ECUは、
前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、
検出した電流値を前記第2車載ECUに出力し、
前記第2車載ECUは、
前記第1車載ECUから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、
導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力し、
前記第1車載ECUは、前記第2車載ECUから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断する
車載システム。
【請求項2】
前記第2車載ECUは、
前記第1車載ECUから取得した電流値に基づき、前記半導体ヒューズが接続される電線の温度を導出し、
前記電線の温度が、予め定められた警戒温度閾値以上である場合、前記遮断電流閾値を導出する
請求項1に記載の車載システム。
【請求項3】
前記第2車載ECUは、前記半導体ヒューズが接続される電線の温度及び前記電線の特性パラメータに基づき、前記遮断電流閾値を導出する
請求項1又は請求項2に記載の車載システム。
【請求項4】
前記第1車載ECUは、前記半導体ヒューズに流れる電流値が前記遮断電流閾値以上である場合、前記半導体ヒューズを遮断する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載システム。
【請求項5】
前記第1車載ECUが前記遮断電流閾値に応じて前記半導体ヒューズを遮断した場合、前記第2車載ECUは、前記半導体ヒューズが接続される電線の温度に応じて、前記半導体ヒューズにおける通電を再開する復帰信号を前記第1車載ECUに出力する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載システム。
【請求項6】
半導体ヒューズを制御する第1コンピュータ、及び第1コンピュータと通信可能に接続される第2コンピュータに処理を実行させる情報処理方法であって、
前記第1コンピュータに、
前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、
検出した電流値を前記第2コンピュータに出力し、
前記第2コンピュータに、
前記第1コンピュータから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、
導出した前記遮断電流閾値を前記第1コンピュータに出力し、
前記第1コンピュータに、
前記第2コンピュータから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断するための信号を出力する
処理を実行させる情報処理方法。
【請求項7】
半導体ヒューズを制御する第1コンピュータ、及び第1コンピュータと通信可能に接続される第2コンピュータに処理を実行させるプログラムであって、
前記第1コンピュータに、
前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、
検出した電流値を前記第2コンピュータに出力し、
前記第2コンピュータに、
前記第1コンピュータから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、
導出した前記遮断電流閾値を前記第1コンピュータに出力し、
前記第1コンピュータに、
前記第2コンピュータから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断するための信号を出力する
処理を実行させるプログラム。
【請求項8】
車両に搭載され、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと通信可能に接続される第2車載ECUであって、
前記第1車載ECUに対する制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1車載ECUから、前記半導体ヒューズに流れる電流値を取得し、
取得した前記電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、
導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力することにより、前記遮断電流閾値に応じた前記半導体ヒューズの遮断を前記第1車載ECUに行わせる
第2車載ECU。
【請求項9】
半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、
前記第1車載ECUから、前記半導体ヒューズに流れる電流値を取得し、
取得した前記電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、
導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力することにより、前記遮断電流閾値に応じた前記半導体ヒューズの遮断を前記第1車載ECUに行わせる
処理を実行させる情報処理方法。
【請求項10】
半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、
前記第1車載ECUから、前記半導体ヒューズに流れる電流値を取得し、
取得した前記電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、
導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力することにより、前記遮断電流閾値に応じた前記半導体ヒューズの遮断を前記第1車載ECUに行わせる
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載システム、プログラム、情報処理方法及び第2車載ECUに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、例えば、ワイパー駆動装置、車両の内外の灯火装置、ドアロック装置、パワーウインドウ等のボディ系の装置の制御を統括して行う車載ECUであるボディECUが搭載されている(例えば特許文献1)。特許文献1のワイパー駆動装置は、車載ECU(ボデーECU)を含み、車載ECUに適用されている制御プログラムにより駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-224926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の駆動装置においては、駆動対象となるアクチュエータに直接接続される車載装置と、当該車載装置に対する制御信号を送信する車載装置からなる構成において、これら複数の車載装置間における制御を効率的に行う点については考慮されていない。
【0005】
本開示は、車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行うことができる車載システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車載システムは、車両に搭載され、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと、前記第1車載ECUと通信可能に接続される第2車載ECUとを含む車載システムであって、前記第1車載ECUは、前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、検出した電流値を前記第2車載ECUに出力し、前記第2車載ECUは、前記第1車載ECUから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力し、前記第1車載ECUは、前記第2車載ECUから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行う車載システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る車載システム(統合ECU、個別ECU)のシステム構成を例示する模式図である。
図2】統合ECU等の内部構成を例示するブロック図である。
図3】個別ECU及び統合ECUによる処理の流れ(シーケンス)を例示する説明図である。
図4】遮断温度閾値等を例示する説明図である。
図5】統合ECU等の制御部の処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載システムは、車両に搭載され、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと、前記第1車載ECUと通信可能に接続される第2車載ECUとを含む車載システムであって、前記第1車載ECUは、前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、検出した電流値を前記第2車載ECUに出力し、前記第2車載ECUは、前記第1車載ECUから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力し、前記第1車載ECUは、前記第2車載ECUから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断する。
【0011】
本態様にあたっては、第1車載ECU(個別ECU)は、現時点において検出した半導体ヒューズに流れる電流値に基づき導出される遮断電流閾値を第2車載ECUから取得することにより、取得した以降は、当該遮断電流閾値に基づき、第1車載ECU(個別ECU)単独で半導体ヒューズを制御する。遮断電流閾値は、半導体ヒューズの遮断を要する温度(遮断温度閾値)に対応(相当)するものである。第2車載ECUが導出(予測)した遮断電流閾値を用いることにより、第1車載ECUは単独で、半導体ヒューズが接続される電線の温度が、遮断温度閾値に到達するか否かを判定することができる。車載システムは、制御対象となる駆動部(アクチュエータ)に直接、接続される第1車載ECU(個別ECU)と、当該駆動部に対する制御に関する種々の処理を行う第2車載ECU(統合ECU)とが、別個の車載装置となる構成である。このような構成であっても、半導体ヒューズを遮断する等の即効性(緊急性)を求められる処理に関しては、第1車載ECU(個別ECU)が単独で遮断することができる。すなわち、例えば、第1車載ECU(個別ECU)と第2車載ECU(統合ECU)との間の通信線の通信負荷(トラフィック)が増加し、通信遅延等が発生する場合であっても、1車載ECU(個別ECU)は、単独で半導体ヒューズを遮断することができ、車両における信頼性を更に向上させることができる。このように、複数の第1車載ECU(個別ECU)と第2車載ECU(統合ECU)から成る複数の車載装置が車両に搭載される場合であっても、これら複数の車載装置における制御を効率的に行うことができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載システムは、前記第2車載ECUは、前記第1車載ECUから取得した電流値に基づき、前記半導体ヒューズが接続される電線の温度を導出し、前記電線の温度が、予め定められた警戒温度閾値以上である場合、前記遮断電流閾値を導出する。
【0013】
本態様にあたっては、第2車載ECUは、第1車載ECUから取得した電流値に基づき導出した電線の温度(電線温度)が、警戒温度閾値以上である場合、遮断電流閾値を導出及び出力する。警戒温度閾値は例えば第2車載ECUの記憶部に記憶されており、第2車載ECUは、記憶部を参照することにより、警戒温度閾値を取得することができる。これにより、遮断電流閾値の導出及び出力が過度に行われることを抑制し、第1車載ECU及び第2車載ECUの処理負荷を軽減することができる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載システムは、前記第2車載ECUは、前記半導体ヒューズが接続される電線の温度及び前記電線の特性パラメータに基づき、前記遮断電流閾値を導出する。
【0015】
本態様にあたっては、第2車載ECUは、半導体ヒューズが接続される電線の温度(電線温度)、及び当該電線の材質、長さ及び太さ等の特性パラメータに基づき、遮断電流閾値を導出するため、遮断電流閾値の導出精度を向上させることができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載システムは、前記第1車載ECUは、前記半導体ヒューズに流れる電流値が前記遮断電流閾値以上である場合、前記半導体ヒューズを遮断する。
【0017】
本態様にあたっては、第1車載ECUは、半導体ヒューズに流れる電流値の検出を所定周期にて継続して行っており、検出した電流値が、第2車載ECUから直前に取得した遮断電流閾値以上である場合、半導体ヒューズを遮断する制御(オフ制御)を行う。これにより、半導体ヒューズの遮断を効率的に行うことができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載システムは、前記第1車載ECUが前記遮断電流閾値に応じて前記半導体ヒューズを遮断した場合、前記第2車載ECUは、前記半導体ヒューズが接続される電線の温度に応じて、前記半導体ヒューズにおける通電を再開する復帰信号を前記第1車載ECUに出力する。
【0019】
本態様にあたっては、第1車載ECUが遮断電流閾値に応じて半導体ヒューズを遮断した場合、第2車載ECUは、第1車載ECUが継続して検出した電線温度を取得し、当該電線温度が十分に低い温度(復帰温度)に低下した際、半導体ヒューズにおける通電を再開する復帰信号を第1車載ECUに出力する。これにより、遮断された半導体ヒューズの復帰(通電の再開)を確実に行うことができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る情報処理方法は、半導体ヒューズを制御する第1コンピュータ、及び第1コンピュータと通信可能に接続される第2コンピュータに処理を実行させる情報処理方法であって、前記第1コンピュータに、前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、検出した電流値を前記第2コンピュータに出力し、前記第2コンピュータに、前記第1コンピュータから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1コンピュータに出力し、前記第1コンピュータに、前記第2コンピュータから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断するための信号を出力する処理を実行させる。
【0021】
本態様にあたっては、第1コンピュータ及び第2コンピュータを、車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行う車載システムとして機能させる情報処理方法を提供することができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係るプログラムは、半導体ヒューズを制御する第1コンピュータ、及び第1コンピュータと通信可能に接続される第2コンピュータに処理を実行させるプログラムであって、前記第1コンピュータに、前記半導体ヒューズに流れる電流値を検出し、検出した電流値を前記第2コンピュータに出力し、前記第2コンピュータに、前記第1コンピュータから取得した電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1コンピュータに出力し、前記第1コンピュータに、前記第2コンピュータから取得した前記遮断電流閾値に応じて、前記半導体ヒューズを遮断するための信号を出力する処理を実行させる。
【0023】
本態様にあたっては、第1コンピュータ及び第2コンピュータを、車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行う車載システムとして機能させることができる。
【0024】
(8)本開示の一態様に係る第2車載ECUは、車両に搭載され、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと通信可能に接続される第2車載ECUであって、前記第1車載ECUに対する制御を行う制御部を備え、前記制御部は、前記第1車載ECUから、前記半導体ヒューズに流れる電流値を取得し、取得した前記電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力することにより、前記遮断電流閾値に応じた前記半導体ヒューズの遮断を前記第1車載ECUに行わせる。
【0025】
本態様にあたっては、車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行うことができる車載システムに含まれる第2車載ECUを提供することができる。
【0026】
(9)本開示の一態様に係る情報処理方法は、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、前記第1車載ECUから、前記半導体ヒューズに流れる電流値を取得し、取得した前記電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力することにより、前記遮断電流閾値に応じた前記半導体ヒューズの遮断を前記第1車載ECUに行わせる処理を実行させる。
【0027】
本態様にあたっては、コンピュータを、車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行うことができる車載システムに含まれる第2車載ECUとして機能させる情報処理方法を提供することができる。
【0028】
(10)本開示の一態様に係るプログラムは、半導体ヒューズを制御する第1車載ECUと通信可能に接続されるコンピュータに、前記第1車載ECUから、前記半導体ヒューズに流れる電流値を取得し、取得した前記電流値に基づき、遮断電流閾値を導出し、導出した前記遮断電流閾値を前記第1車載ECUに出力することにより、前記遮断電流閾値に応じた前記半導体ヒューズの遮断を前記第1車載ECUに行わせる処理を実行させる。
【0029】
本態様にあたっては、コンピュータを、車両に搭載される複数の車載装置における制御を効率的に行うことができる車載システムに含まれる第2車載ECUとして機能させることができる。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本開示の実施形態に係る車載システムSを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る車載システムS(統合ECU6、個別ECU2)のシステム構成を例示する模式図である。図2は、統合ECU6等の内部構成を例示するブロック図である。車載システムSは、車両Cに搭載される統合ECU6及び複数の個別ECU2を含み、当該個別ECU2には、アクチュエータ30及びセンサ31等の車載装置3が、直接、接続される。個別ECU2は第1車載ECUに相当し、統合ECU6は第2車載ECUに相当する。
【0032】
個別ECU2は、車両Cにおける各エリアに配置され、例えばカーエアコン、ワイパー、ランプ等のアクチュエータ30、及びセンサ31等の車載装置3が、シリアルケーブル(じか線)等のワイヤーハーネスにて直接、接続されている。個別ECU2は、例えば、センサ31から出力された信号(入力信号)を取得(受信)し、取得した入力信号に基づき生成した要求信号を統合ECU6に送信する。個別ECU2は、統合ECU6から送信された制御信号に基づき、自ECUに直接、接続されたアクチュエータ30の駆動制御を行う。このように個別ECU2は、統合ECU6の制御下において、自ECUに直接、接続されるアクチュエータ30等の車載装置3を駆動する。個別ECU2は、当該個別ECU2に接続される複数の車載装置3間の通信、又は車載装置3と統合ECU6との通信を中継するゲートウェイ又はイーサスイッチ等の車載中継装置として機能する中継制御ECUであってもよい。個別ECU2は、通信に関する中継に加え、電源装置5から出力された電力を分配及び中継し、自ECUに接続される車載装置3に供給する電力分配装置としても機能するPLB(Power Lan Box)であってもよい。
【0033】
統合ECU6は、個別ECU2を介して中継された車載装置3からのデータに基づき、個々の車載装置3への制御信号を生成及び出力するものであり、例えばヴィークルコンピュータ等の中央制御装置である。統合ECU6は、個別ECU2から出力(送信)される要求信号等の情報又はデータに基づき、当該要求信号の対象となるアクチュエータ30を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を個別ECU2に出力(送信)する。統合ECU6には、車載ネットワーク4を介して、複数の個別ECU2が接続されており、これら複数の個別ECU2それぞれから送信される要求信号においては、アクチュエータ30に対する制御が競合する場合がある。これに対し、統合ECU6は、これら要求信号において競合した制御における優先順位を決定し、当該優先順位に応じた処理を行うことにより、アクチュエータ30に対する制御の競合を解消するものであってもよい。
【0034】
車載装置3は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)、ライトセンサ、CMOSカメラ、赤外線センサ等の各種のセンサ31及び、ドアSW(スイッチ)、ランプSW等のスイッチ、ランプ、ドア開閉装置、モータ装置等のアクチュエータ30を含む。
【0035】
外部サーバ100は、例えばインターネット又は公衆回線網等の車外ネットワークに接続されているサーバ等のコンピュータであり、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)又はハードディスク等による記憶部を備える。統合ECU6は、車外通信装置1と通信可能に接続され、車外通信装置1を介して車外ネットワークを介して接続された外部サーバ100と通信し、外部サーバ100と、車両Cに搭載される個別ECU2又は車載装置3との間の通信を中継するものであってもよい。
【0036】
車外通信装置1は、車外通信部(図示せず)及び、統合ECU6と通信するための入出力I/F(図示せず)を含む。車外通信部は、4G、LTE(Long Term Evolution/登録商標)、5G、WiFi(登録商標)等の移動体通信のプロトコルを用いて無線通信をするための通信装置であり、車外通信部に接続されたアンテナ11を介して外部サーバ100とデータの送受信を行う。車外通信装置1と外部サーバ100との通信は、例えば公衆回線網又はインターネット等の外部ネットワークNを介して行われる。入出力I/Fは、統合ECU6と、例えばシリアル通信するための通信インターフェイスである。車外通信装置1と統合ECU6とは、入出力I/F及び入出力I/Fに接続されたシリアルケーブル等のワイヤーハーネスを介して相互に通信する。本実施形態では、車外通信装置1は、統合ECU6と別装置とし、入出力I/F等によってこれら装置を通信可能に接続しているが、これに限定されない。車外通信装置1は、統合ECU6の一構成部位として、統合ECU6に内蔵されるものであってもよい。更に、統合ECU6と外部サーバ100とが連携又は協働して、車両Cにおける中央制御装置として機能するものであってもよい。
【0037】
統合ECU6は、制御部60、記憶部61、入出力I/F62及び車内通信部63を含む。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部61に予め記憶されたプログラムP(プログラム製品)及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。制御部60は、CPU等のソフトウェア処理を行うソフトウェア処理部のみに限定されず、FPGA、ASIC又はSOC等のハードウェア処理にて種々の制御処理及び演算処理等を行うハードウェア処理部を含むものであってもよい。
【0038】
記憶部61は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部61に記憶されたプログラムP(プログラム製品)は、統合ECU6が読み取り可能な記録媒体から読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部61に記憶させたものであってもよい。
【0039】
入出力I/F62は、車外通信装置1の入出力I/Fと同様に、例えばシリアル通信するための通信インターフェイスである。入出力I/F62及びシリアルケーブル等のワイヤーハーネスを介して、統合ECU6は、車外通信装置1と通信可能に接続される。
【0040】
車内通信部63は、例えばCAN(Control Area Network)又はイーサネット(Ethernet/登録商標)の通信プロトコルを用いた入出力インターフェイスであり、制御部60は、車内通信部63を介して車載ネットワーク4に接続されている個別ECU2と相互に通信する。
【0041】
個別ECU2は、統合ECU6と同様に、制御部20、記憶部21、入出力I/F22、車内通信部23及び、例えばIPD(Intelligent Power Device)等として構成される半導体ヒューズ24を含み、当該半導体ヒューズ24を介して、アクチュエータ30に接続されている。すなわち、個別ECU2とアクチュエータ30とは、直接、接続されている。個別ECU2の制御部20、記憶部21、入出力I/F22及び車内通信部23は、統合ECU6と同一の構成によるものであってもよい。
【0042】
個別ECU2の入出力I/F22には、センサ31等の車載装置3が、例えばシリアルケーブル等のワイヤーハーネス(じか線)により、直接、接続されている。
【0043】
個別ECU2の記憶部21には、統合ECU6から出力される制御信号が、バッファリング(記憶)される。個別ECU2の記憶部21における一部の領域は、統合ECU6から出力される制御信号をバッファリングするための所定の記憶領域(バッファリング領域)として、予め確保(アロケート)されているものであってもよい。
【0044】
個別ECU2の半導体ヒューズ24は、例えばFET(Field effect transistor)又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を備えたIPD( Intelligent Power Device)として構成される。当該IPDは電流センサを含み、半導体ヒューズ24が接続される電線51に流れる電流値を検出し、検出した電流値を制御部20に出力するものであってもよい。半導体ヒューズ24(IPD)は、電線51を介してランプ等のアクチュエータ30への電力の供給及び遮断を行う。
【0045】
半導体ヒューズ24は、アクチュエータ30への電力の供給及び遮断を行う通常動作においては、半導体スイッチとして機能するものであり、制御部20から出力された駆動信号(ゲート信号)に基づきオン又はオフにすることにより、電線51にて接続されているアクチュエータ30の駆動を制御する。更に、半導体ヒューズ24は、例えば過電流が流れた場合に電流を遮断する保護装置として機能する。本実施形態においては、半導体ヒューズ24に流れる電流の値(電流値)が、統合ECU6から送信される遮断電流閾値以上となった場合、半導体ヒューズ24は遮断される。
【0046】
半導体ヒューズ24(IPD)と制御部20とは、内部バス又は信号線によって接続されている。又は、半導体ヒューズ24(IPD)と制御部20とは、入出力I/F22を介して接続されるものであってもよい。制御部20は、当該信号線等を介して、半導体ヒューズ24(IPD)が接続される電線51の電流値を取得する。又は、電流センサは半導体ヒューズ24(IPD)とは別個に設けられており、制御部20は、半導体ヒューズ24が接続された電線51に設けられたシャント抵抗等により構成される電流センサにて検出された電流値を取得するものであってもよい。制御部20は、検出された電流値を取得にあたり、当該電流値をAD変換するものであってもよい。
【0047】
電源装置5は、例えば12V(+B)の電圧を出力する鉛バッテリである。又は、電源装置5は、リチウムイオンバッテリ等の高圧バッテリ又はオルタネータから出力された電圧を、例えば12V等の所定の電圧に降圧するDCDCコンバータで又はレギュレータを含むものであってもよい。電源装置5と個別ECU2とは、電力用ハーネス等によって接続され、当該電力用ハーネス等を介して、電源装置5から個別ECU2に給電される。
【0048】
個別ECU2は、自ECUの記憶部21に記憶されているプログラム(プログラム製品)を実行することにより、自ECUに接続されているセンサ31等の車載装置3から出力された信号(入力信号)を取得し、当該信号(入力信号)に基づき生成したデータ(要求信号)を統合ECU6に出力する。個別ECU2は、統合ECU6から出力されたデータ(制御信号)を取得し、当該データ(制御信号)に基づき生成した信号(駆動信号)を、自ECUに接続されているアクチュエータ30等の車載装置3に出力する。又は、個別ECU2は、統合ECU6から出力されたデータ(制御信号)に応じて、当該アクチュエータ30が接続される半導体ヒューズ24(IPD)のオンオフ制御をすることにより、アクチュエータ30の駆動制御を行う。統合ECU6から出力された制御信号は、所定の記憶領域(バッファリング領域)に一旦バッファリングされた後、個別ECU2の制御部20により読み出され、アクチュエータ30を駆動するための駆動信号に変換されるものであってもよい。
【0049】
このように構成された統合ECU6と、複数の個別ECU2とは、例えば図1に示すとおり、スター状のネットワークトポロジーにて通信可能に接続されている。更に、隣接する個々の個別ECU2同士が接続され、ループ状のネットワークトポロジーを構成し、双方向通信を可能として冗長化を図るものであってもよい。
【0050】
統合ECU6及び、複数の個別ECU2は、電源装置5と電力用ハーネスにて接続されており、当該電源装置5から電力が供給される。個別ECU2に直接、接続されるアクチュエータ30に対しては、当該個別ECU2を介して、電源装置5からの電力が供給(分配)される。
【0051】
図3は、個別ECU2及び統合ECU6による処理の流れ(シーケンス)を例示する説明図である。個別ECU2は、電流値を検出する(S01)。個別ECU2は、電流値を統合ECU6に出力(送信)する(S02)。個別ECU2は、半導体ヒューズ24を構成するIPD等に含まれる電流センサの検出値を取得することにより、半導体ヒューズ24が設けられている電線51の電流値を検出する。個別ECU2は、当該電流値の検出を所定の周期にて行い、検出した電流値を統合ECU6に周期的に出力(送信)する
【0052】
統合ECU6は、電流値を取得(受信)する(S03)。統合ECU6は、個別ECU2から送信される電流値を待ち受ける処理を継続して行っており、当該電流値が送信される都度、これを取得(受信)し、統合ECU6の記憶部61に記憶する。
【0053】
統合ECU6は、電流値に基づき、電線温度を演算する(S04)。統合ECU6は、例えば、個別ECU2から周期的に取得した時系列からなる複数の電流値を積分処理等することにより、現時点における電線温度(半導体ヒューズ24が設けられている電線51の温度)を演算する。統合ECU6は、当該電流値に基づき発生する積算熱量と、個別ECU2にて半導体ヒューズ24が設けられた空間において定められる環境温度(放熱量)との差異に基づき、半導体ヒューズ24が設けられている電線51の温度(電線温度)を演算することにより、電線温度を導出する。当該電線温度を演算する処理は、例えば、特開2015-23029号公報、特開2020-36461号公報等に記載されている公知の処理方法を用いて行われるものであってもよい。
【0054】
統合ECU6は、電線温度が警戒温度閾値以上である場合、電線温度等に基づき、遮断電流閾値を導出する(S05)。警戒温度閾値は、半導体ヒューズ24が設けられている電線51の特性及び種別に応じて予め定められた値であり、例えば統合ECU6の記憶部61に記憶されており、これを参照することにより、統合ECU6は、警戒温度閾値を取得する。統合ECU6は、演算した電線温度と警戒温度閾値とを比較することにより、電線温度が警戒温度閾値以上であるか否かを判定し、電線温度が警戒温度閾値以上である場合、遮断電流閾値を導出する。当該遮断電流閾値は、半導体ヒューズ24の遮断を要する温度(遮断温度閾値)に対応(相当)するものである。
【0055】
図4は、遮断温度閾値等を例示する説明図である。当該説明図は、縦軸を電線温度とし、横軸を経過時間とするグラフにて示される。警戒温度閾値(X1℃)と遮断温度閾値(X2℃)との関係において、遮断温度閾値は警戒温度閾値よりも高い温度(X2>X1)であり、例えば、警戒温度閾値(X1)に対し、1よりも大きい所定係数(K;例えば1.2)を乗算した値を遮断温度閾値(X2=K・X1)とするものであってもよい。電流値から演算した電線温度が警戒温度閾値に達した場合、本実施形態にて図示されるグラフのように電線温度が更に上昇し、遮断温度閾値に到達することが予見される。統合ECU6は、警戒温度閾値に達した際の電流値(現時点の電流値)、及び当該電流値の検出対象となる電線51(半導体ヒューズ24が設けらた電線51)の材質、長さ及び太さ等の特性パラメータに基づき、遮断温度閾値に対応する遮断電流閾値を導出する。
【0056】
統合ECU6は、遮断電流閾値を個別ECU2に出力(送信)する(S06)。統合ECU6は、遮断電流閾値を個別ECU2に出力(送信)することにより、個別ECU2に対し、遮断電流閾値に応じた半導体ヒューズ24の制御を当該個別ECU2が単独で行うことを許可するものとなる。
【0057】
個別ECU2は、遮断電流閾値を取得(受信)する(S07)。個別ECU2は、統合ECU6から送信された遮断電流閾値を取得(受信)することにより、これ以降は、取得した遮断電流閾値に基づき、単独で半導体ヒューズ24の制御(遮断制御)を行うものとなる。
【0058】
個別ECU2は、検出した電流値が遮断電流閾値以上である場合、半導体ヒューズ24を遮断(遮断信号を出力)する(S08)。個別ECU2は、電流値の周期的な検出を継続しており、現時点(最新)の電流値と、遮断電流閾値とを比較し、電流値が遮断電流閾値以上である場合、半導体ヒューズ24を遮断すべく、例えば遮断信号を半導体ヒューズ24(IPD)に出力する。これにより、半導体ヒューズ24は遮断(オフ)され、半導体ヒューズ24における通電は中断される。遮断された半導体ヒューズ24は、周囲環境における雰囲気によって冷却され、半導体ヒューズ24及び電線51の温度は低下する。半導体ヒューズ24を遮断するにあたり、個別ECU2は遮断信号を半導体ヒューズ24(IPD)に出力するとしたが、これに限定されず、個別ECU2は、例えば半導体ヒューズ24(IPD)に出力したデューティ等の駆動信号の出力を停止することにより、半導体ヒューズ24を遮断するものであってもよい。すなわち、本実施形態においては、半導体ヒューズ24を遮断するための遮断信号の出力の意味は、当該遮断信号の出力のみならず、デューティ等の駆動信号の出力を停止することにより半導体ヒューズ24を遮断することも含む。
【0059】
個別ECU2は、電流値を検出する(S09)。個別ECU2は、電流値を統合ECU6に出力(送信)する(S10)。上述のとおり、個別ECU2は、周期的な電流値の検出及び統合ECU6に出力(送信)することを継続している。半導体ヒューズ24が遮断されている状態では、当該電流値は0として検出される。
【0060】
統合ECU6は、電流値を取得(受信)する(S11)。統合ECU6は、電流値に基づき、電線温度を演算する(S12)。半導体ヒューズ24が遮断されている状態においては、個別ECU2から送信される電流値は0であり、これにより統合ECU6は、半導体ヒューズ24が遮断されている期間を把握することができる。統合ECU6は、当該半導体ヒューズ24が遮断されている期間に応じて、電線51における放熱量を算出し、現時点における電線温度を演算するものであってもよい。
【0061】
統合ECU6は、電線温度が十分に低い温度(復帰温度)に低下した場合、復帰信号を個別ECU2に出力(送信)する(S13)。電線温度が十分に低いものであることを示す復帰温度は、例えば統合ECU6の記憶部61に記憶されており、統合ECU6は、これを参照することにより復帰温度を取得することができる。統合ECU6は、現時点における電線温度と、復帰温度とを比較し、電線温度が復帰温度以下となった場合、半導体ヒューズ24おける通電を再開する復帰信号を個別ECU2に出力する。
【0062】
個別ECU2は、復帰信号を取得(受信)する(S14)。個別ECU2は、取得した復帰信号に応じて、半導体ヒューズ24を復帰(復帰信号を出力し、通電を再開)する(S15)。個別ECU2は、統合ECU6から復帰信号を取得(受信)した後、半導体ヒューズ24(IPD)に復帰信号を出力し、通電を再開させ、当該半導体ヒューズ24を復帰させる。
【0063】
図5は、統合ECU6等の制御部の処理を例示するフローチャートである。統合ECU6及び個別ECU2は、例えば車両Cが起動状態(IGスイッチがオン)において、定常的に以下の処理を行う。統合ECU6及び個別ECU2の一連の処理は、互いに連関して行われるものであるが、まずは統合ECU6の処理を説明し、以降、個別ECU2の処理を説明する。
【0064】
統合ECU6の制御部60は、電流値を取得する(S101)。統合ECU6の制御部60は、個別ECU2から周期的に送信される電流値(半導体ヒューズ24が設けられている電線51の電流値)を取得する。
【0065】
統合ECU6の制御部60は、電流値に基づき、電線温度を演算する(S102)。統合ECU6の制御部60は、例えば、個別ECU2から周期的に取得した時系列からなる複数の電流値を積分処理等することにより、現時点における電線温度を演算する。
【0066】
統合ECU6の制御部60は、電線温度が警戒温度閾値以上であるか否かを判定する(S103)。統合ECU6の制御部60は、電線51の種別等に応じて予め定められている警戒温度閾値を取得し、電線温度が警戒温度閾値以上であるか否かを判定する。電線温度が警戒温度閾値以上でない場合(S103:NO)、再度S101を実行すべく、ループ処理を行う。
【0067】
電線温度が警戒温度閾値以上である場合(S103:YES)、統合ECU6の制御部60は、電線温度及び電線51の特性パラメータに基づき、遮断電流閾値を導出する(S104)。電線温度が警戒温度閾値以上である場合、統合ECU6の制御部60は、電線温度が更に上昇することが想定されると判定し、遮断電流閾値を導出する。統合ECU6の制御部60は、警戒温度閾値以上に至った際の電線温度、当該電線温度を演算した際の電流値、電線51の材質、太さ及び長さ等の特性パラメータに基づき、遮断電流閾値を導出する。統合ECU6の制御部60は、例えば、警戒温度閾値以上に至った際の電線温度と、電線51の特性に応じて予め定められている遮断温度閾値との比率を算出し、電線温度を演算した際の電流値に当該比率を乗算した値に対し、電線51の特性パラメータに基づき補正することにより、遮断電流閾値を算出するものであってもよい。このように導出した遮断電流閾値は、半導体ヒューズ24の遮断を要する温度(遮断温度閾値)に対応(相当)するものである。
【0068】
統合ECU6の制御部60は、導出した遮断電流閾値を個別ECU2に出力する(S105)。統合ECU6の制御部60は、導出した遮断電流閾値を個別ECU2に出力した後、再度S101からの処理を実行すべく、ループ処理を行うものであってもよい。
【0069】
個別ECU2の制御部20は、電流値を検出する(T101)。個別ECU2の制御部20は、例えば半導体ヒューズ24を構成するIPDに内包される電流センサによって検出された電流値を、周期的に取得する。個別ECU2の制御部20は、電流センサが検出した電流値を検出時点と関連付けて、記憶部21に記憶するものであってもよい。
【0070】
個別ECU2の制御部20は、遮断電流閾値を取得したか否かを判定する(T102)。個別ECU2の制御部20は、統合ECU6から送信される遮断電流閾値の取得を定常的に試みており、遮断電流閾値を取得したか否かを判定する。
【0071】
遮断電流閾値を取得した場合(T102:YES)、個別ECU2の制御部20は、直前に検出した電流値が、遮断電流閾値以上であるか否かを判定する(T103)。個別ECU2の制御部20は、取得した遮断電流閾値を、当該取得時点と関連付けて、記憶部21に記憶するものであってもよい。個別ECU2の制御部20は、遮断電流閾値と、直前に検出した電流値(現時点における電流値)とを比較し、当該電流値が遮断電流閾値以上であるか否かを判定する。
【0072】
電流値が遮断電流閾値以上である場合(T103:YES)、個別ECU2の制御部20は、半導体ヒューズ24に対し遮断処理(出力遮断指示)を行う(T104)。電流値が遮断電流閾値以上である場合、個別ECU2の制御部20は、半導体ヒューズ24(IPD)に対し、例えば出力遮断指示を行う(遮断信号の出力)ことにより、半導体ヒューズ24に対する遮断処理を行う。これにより、半導体ヒューズ24は遮断(オフ)され、半導体ヒューズ24における通電は中断される。このように、統合ECU6及び、当該統合ECU6の制御下にて動作する個別ECU2から構成される車載システムSであっても、半導体ヒューズ24の遮断処理を行うための直接的な制御は、個別ECU2が単独で実行することができる。これにより、個別ECU2と統合ECU6との通信におけるボトルネック又は通信遅延等が発生する場合であっても、個別ECU2に含まれる半導体ヒューズ24に対し、即効性の高い制御を確実に行うことができる。
【0073】
遮断電流閾値を取得しなかった場合(T102:NO)、電流値が遮断電流閾値以上でない場合(T103:NO)、又はS104の実行後、個別ECU2の制御部20は、電流値を統合ECU6に出力(送信)する(T105)。個別ECU2の制御部20は、T105の処理の実行後、再度T101からの処理を実行すべく、ループ処理を行うものであってもよい。
【0074】
本実施形態において、個別ECU2の制御部20は、電流値の検出及び当該電流値の統合ECU6への出力と、遮断電流閾値の取得及び遮断処理をシーケンシャルな一連の処理として説明したが、これに限定されない。個別ECU2の制御部20は、例えば複数のサブプロセスを生成し、電流値の検出及び当該電流値の統合ECU6への出力を行うプロセスと、遮断電流閾値の取得及び遮断処理を行うプロセスとを別プロセス化し、これら処理を並列して行う(マルチプロセスによる並列処理)ものであってもよい。
【0075】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0076】
C 車両
S 車載システム
100 外部サーバ
1 車外通信装置
11 アンテナ
2 個別ECU(第1車載ECU)
20 制御部
21 記憶部
22 入出力I/F
23 車内通信部
24 半導体ヒューズ
3 車載装置
30 アクチュエータ(ACT)
31 センサ
4 車載ネットワーク
5 電源装置
51 電線
6 統合ECU(第2車載ECU)
60 制御部
61 記憶部
611 記憶媒体
62 入出力I/F
63 車内通信部
P プログラム
図1
図2
図3
図4
図5