(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023029537
(43)【公開日】2023-03-03
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
A61B3/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001653
(22)【出願日】2023-01-10
(62)【分割の表示】P 2021116796の分割
【原出願日】2016-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】坂上 兼一
(72)【発明者】
【氏名】原田 明宏
(57)【要約】
【課題】適切なアライメント状態で被検眼情報を取得する。
【解決手段】実施形態の眼科装置は、情報取得部と、アライメント部と、判定部とを含む。情報取得部は、光学系を用いた被検眼の検査を第1時間間隔で繰り返し行うことによって被検眼の情報を取得する。アライメント部は、被検眼に対する光学系のアライメントを行う。判定部は、アライメントが完了したか判定する。情報取得部は、アライメントと並行して第1時間間隔で検査を繰り返し行っているときに、アライメントが完了したと判定部により判定されたことに対応して、第1時間間隔での検査の繰り返しへの割り込みとなる検査を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を用いた被検眼の検査を第1時間間隔で繰り返し行うことによって前記被検眼の情報を取得する情報取得部と、
前記被検眼に対する前記光学系のアライメントを行うアライメント部と、
前記アライメントが完了したか判定する判定部と
を備え、
前記情報取得部は、前記アライメントと並行して前記第1時間間隔で前記検査を繰り返し行っているときに、前記アライメントが完了したと前記判定部により判定されたことに対応して、前記第1時間間隔での前記検査の繰り返しへの割り込みとなる検査を行う
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記アライメントが完了したか否かの判定を第2時間間隔で繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記情報取得部により行われる前記検査は、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼軸長測定、眼圧測定、角膜内皮細胞撮影、前眼部撮影、眼底撮影、及び光コヒーレンストモグラフィのいずれかである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記光学系の光軸は、前後方向に対して平行に配置されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の眼科装置。
【請求項5】
前記光学系の光軸は、前後方向に対して傾斜している
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科装置は、被検眼の特性や画像等の被検眼情報を光学的に取得する。多くの眼科装置では、被検眼に対する光学系の位置合わせ(アライメント)の後に被検眼情報の取得が行われる。アライメントは、例えば、被検眼に投影された輝点の像の位置を参照して実行される。典型的には、左右方向(X方向)及び上下方向(Y方向)のアライメントと、前後方向(Z方向)のアライメントとが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにアライメントの後に被検眼情報を取得する場合、アライメント完了後、被検眼が動かないうちに検査を行うことが望ましい。特に、例えば角膜内皮細胞撮影装置(スペキュラーマイクロスコープ)のように、非常に高いアライメント精度が要求される眼科装置においては、被検眼の少しの動きによって不適切なアライメント状態に移行してしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、適切なアライメント状態で被検眼情報を取得することが可能な眼科装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る眼科装置は、光学系を用いた被検眼の検査を第1時間間隔で繰り返し行うことによって前記被検眼の情報を取得する情報取得部と、前記被検眼に対する前記光学系のアライメントを行うアライメント部と、前記アライメントが完了したか判定する判定部とを備え、前記情報取得部は、前記アライメントと並行して前記第1時間間隔で前記検査を繰り返し行っているときに、前記アライメントが完了したと前記判定部により判定されたことに対応して、前記第1時間間隔での前記検査の繰り返しへの割り込みとなる検査を行う。
【発明の効果】
【0007】
実施形態に係る眼科装置によれば、適切なアライメント状態で被検眼情報を取得することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る眼科装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る眼科装置の構成例を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る眼科装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る眼科装置の動作例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る眼科装置は、被検眼の検査を好適に行うための位置に光学系を移動するアライメント機能を備え、アライメントの後に被検眼のデータを光学的に取得することで被検眼情報を生成する。検査には自覚検査と他覚検査とが含まれる。自覚検査の例として、遠用視力検査、近用視力検査、コントラスト検査、グレア検査などがある。他覚検査には、被検眼の特性を測定するための他覚測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とがある。他覚測定の例として、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼軸長測定、眼圧測定などがある。撮影の例として、角膜内皮細胞撮影、前眼部撮影、眼底撮影(眼底カメラ、走査型レーザ検眼鏡等)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)などがある。
【0010】
実施形態に係る眼科装置の光学系の光軸は、前後方向(Z方向)に対して傾斜していてよい。この傾斜の方向及び角度は任意であってよい。また、傾斜の方向及び角度が固定されていてもよいし、傾斜の方向及び/又は角度が可変であってもよい。後者の場合、傾斜の方向及び/又は角度を検知するためのセンサ及び/又はソフトウェアが設けられていてよく、検知された情報を制御や演算に利用することができる。
【0011】
以下の実施形態では、光学系の光軸が前後方向に対して傾斜している眼科装置について説明するが、光学系の光軸が前後方向と平行に配置された眼科装置に対して以下の実施形態と同様の構成を適用することも可能である。
【0012】
〈構成〉
実施形態に係る眼科装置の外観構成の例を
図1に示す。眼科装置1は、ベース2と、架台3と、ヘッド部4と、顔受け部5と、ジョイスティック8と、表示部10とを備える。
【0013】
架台3は、ベース2上に設けられている。ジョイスティック8が操作されると、ベース2に対して上下・前後・左右に架台3が移動する。典型的には、ジョイスティック8をその軸周りに回転操作すると架台3が上下方向に移動し、ジョイスティック8を傾倒操作すると架台3が前後・左右に移動する。
【0014】
ヘッド部4には、各種の光学系や機構が格納されている。ヘッド部4は、架台3上に設けられており、後述の電動的な機構によって、架台3に対して上下・前後・左右に移動される。
【0015】
顔受け部5は、被検者の顔を固定するための顎受け6及び額当て7を備える。ジョイスティック8は、架台3上に設けられている。表示部10は、ヘッド部4の背面(被検眼が配置される正面側に対向する側)に設けられ、タッチパネルを備える。このタッチパネルには、各種グラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)が表示される。
【0016】
眼科装置1には外部装置11が接続されている。外部装置11は、任意の装置であってよく、また、眼科装置1と外部装置11との間の接続態様(通信形態等)も任意であってよい。外部装置11の例として、レンズの光学特性を測定するためのレンズメータ、記録媒体のリーダ・ライタ、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOMサーバ、医師端末、モバイル端末、眼科装置1のメーカ側のサーバや端末、クラウドサーバなどがある。
【0017】
眼科装置1の内部構成の例を
図2に示す。眼科装置1は、光学ユニット20と、Zアライメント系30と、移動機構40と、データ処理部50と、ユーザインターフェイス60と、制御部70とを備える。
【0018】
(光学ユニット20)
光学ユニット20は、例えば、被検眼Eの特性を測定するための各種の光学素子と、被検眼Eを撮影するための各種の光学素子と、いくつかの光学素子を移動させるための機構とを含む。光学ユニット20は、ヘッド部4に格納されている。本実施形態においては、光学ユニット20は、検査光学系21と、観察光学系22と、XYアライメント系23とを含む。
【0019】
XYアライメント系23は、ハーフミラー等のビームスプリッタ24によって観察光学系22の光路から分岐された光路に設けられている。検査光学系21の光路と観察光学系22の光路とは、ハーフミラー又はダイクロイックミラー等のビームスプリッタ25によって合成され、この合成光路OPが対物レンズ26を介して被検眼Eに導かれている。
【0020】
合成光路OPの軸(光学系の光軸)は、前後方向(Z方向)に対して上方(+Y方向)に角度θだけ傾斜している。なお、光軸の傾斜方向は、上方には限定されず、Z方向に対して任意方向(例えば下方、左方、右方等)であってもよい。また、角度θは固定されても可変であってもよい。固定の場合、角度θの値は任意であり、例えば5度に設定されている。可変の場合、角度θの範囲は任意である。このとき、傾斜方向も任意に可変であってもよい。
【0021】
なお、検査光学系21の光路と観察光学系22の光路とが合成されない場合もある。例えば、眼科装置1が角膜内皮細胞撮影装置としての機能を有する場合(例えば前述の引用文献を参照)、検査光学系21は、互いに異なる向きに光軸が配置された照明光学系及び撮影光学系に加え、照明光学系及び撮影光学系の双方の光軸と異なる向きに光軸が配置された観察光学系を含む。この観察光学系の光軸は、典型的には、Z方向に沿って配置される。よって、検査光学系21の光軸(照明光学系の光軸、撮影光学系の光軸)は、Z方向と異なる向きに配置される。このように、検査光学系21の光軸が2以上存在していてもよい。その場合、2以上の光軸の少なくとも1つがZ方向に対して傾斜していればよい。
【0022】
(検査光学系21)
検査光学系21は、被検眼Eの情報を取得するための光学系である。検査光学系21により取得される情報には、任意の眼科測定手法により取得される測定データ、及び/又は、任意の眼科撮影手法(眼科モダリティ)により取得される撮影データ(画像データ、画像データを形成するために収集されたデータなど)が含まれる。検査光学系21は、実施可能な測定及び/又は撮影の種別に応じた光学系を含む。検査光学系21により実施可能な測定及び/又は撮影の種別は1つには限定されず、2以上であってもよい。検査光学系21は、任意の眼科測定及び/又は任意の眼科撮影を実施可能に構成されていてよい。
【0023】
例えば、眼科装置1は、角膜内皮細胞撮影装置、OCT装置、眼底カメラ、スリットランプ、SLO、レフラクトメータ、ケラトメータ、眼圧計、視野計などのうちの1つ以上の装置として機能する。
【0024】
一例を説明する。眼科装置1が角膜内皮細胞撮影装置としての機能を備える場合、検査光学系21は、従来の角膜内皮細胞撮影装置と同様に、角膜内皮細胞照明光学系(スリット光照明光学系)と、角膜内皮細胞撮影光学系とを含んでいる(例えば前述の引用文献を参照)。検査光学系21により取得された画像はデータ処理部50に送られる。
【0025】
他の例として、眼科装置1がOCT装置としての機能を備える場合、検査光学系21は、一般的なOCT装置と同様に、次の構成要素を含む:光源(低コヒーレンス光源、波長掃引光源など);光源から出力された光を測定光と参照光とに分割し、且つ、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光とを干渉させる干渉光学系;干渉光学系により生成された干渉光を検出する検出部(分光器、バランスドフォトディテクタなど)。検査光学系21により収集されたデータはデータ処理部50に送られる。
【0026】
検査光学系21は、検査に付随する機能を提供するための構成を備えていてよい。例えば、被検眼Eを固視させるための視標(固視標)を眼底Efに投影するための固視光学系が設けられていてよい。
【0027】
(観察光学系22)
観察光学系22は、被検眼Eを動画撮影(及び静止画撮影)する。観察光学系22は、各種のレンズ(結像レンズ、フォーカシングレンズ、リレーレンズなど)と、レンズ以外の光学素子(絞り、撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサなど))とを含む。また、観察光学系22は、光源を含んでいてよい。この光源は、例えば、赤外光(近赤外光)及び/又は可視光を発する。本実施形態では、赤外光を用いて前眼部を動画撮影する。
【0028】
観察光学系22は、2以上のカメラを含んだ構成であってもよい。例えば、光学ユニット20の前面(被検者に対向する面)の異なる位置に2つのカメラを設ける。そして、2つのカメラを用いて異なる方向から前眼部を撮影する。すなわち、2つのカメラは、前眼部のステレオ撮影を行う。眼科装置1は、2つのカメラにより実質的に同時に取得された2つの画像に基づいて、前眼部の位置情報を求めることが可能である。
【0029】
(XYアライメント系23)
XYアライメント系23は、検査光学系21及び観察光学系22の合成光路OPの光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。
【0030】
XYアライメント系23は、ビームスプリッタ24により観察光学系22の光路から分岐された光路に設けられた光源(赤外光源)を含む。この光源から出力された光は、ビームスプリッタ24及び25により反射され、対物レンズ26を通過して被検眼Eに照射される。その角膜Ecによる反射光は、対物レンズ26を通過し、ビームスプリッタ25により反射され、ビームスプリッタ24を透過し、観察光学系22の撮像素子により検出される。
【0031】
このように検出された反射光の像(輝点像)は、観察光学系22により得られる前眼部像に描出され、XYアライメントを行うための指標として用いられる(XYアライメント指標、第2指標)。制御部70は、XYアライメント指標を含む前眼部像を表示部61(表示部10等)に表示させることができる。このとき、制御部70は、アライメントのずれの許容範囲を示す画像(アライメントマーク)などを前眼部像に重ねて表示させることができる。
【0032】
手動でXYアライメントを行う場合、ユーザは、アライメントマーク内にXYアライメント指標を誘導するようにヘッド部4(光学ユニット20)の移動操作を行う。
【0033】
自動でアライメントを行う場合、データ処理部50は、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位を算出する。更に、制御部70は、データ処理部50により算出された変位がキャンセルされるように、XY方向におけるヘッド部4(光学ユニット20)の移動制御を実行する。
【0034】
なお、観察光学系22を用いてXYアライメント指標を検出する代わりに、例えば、専用の光検出器(PSDセンサ等)を用いてXYアライメント指標を検出することも可能である。
【0035】
(Zアライメント系30)
Zアライメント系30は、光学ユニット20と一体的に移動する。Zアライメント系30は、被検眼Eに対して前後方向(Z方向)におけるアライメントを行うための光を被検眼Eに照射し、その戻り光を検出する。Zアライメント光源(赤外光源)31から出力された光は、角膜Ecに照射され、角膜Ecにて反射され、結像レンズ32によりラインセンサ33に結像される。
【0036】
被検眼Eと光学ユニット20との相対位置がZ方向に変化すると、ラインセンサ33に対する光の投影位置が変化する。ラインセンサ33に対する投影像は、Zアライメントを行うための指標として用いられる(Zアライメント指標、第1指標)。データ処理部50は、ラインセンサ33に対するZアライメント指標の投影位置に基づいて、被検眼Eの角膜頂点、角膜内皮等のZ方向における変位を求める。制御部70は、算出された変位がキャンセルされるように、Z方向におけるヘッド部4の移動制御を実行する。
【0037】
なお、従来の技術では、Z方向への移動と、傾斜角度θに応じたXY方向への移動とを交互に行うが、本実施形態では、傾斜角度θに応じた方向(検査光学系21の光軸の方向)にヘッド部4を移動するようになっている。
【0038】
(移動機構40)
移動機構40は、光学ユニット20(ヘッド部4)を移動するための機構である。移動機構40は、光学ユニット20を3次元的に移動することができる。移動機構40は、光学ユニット20を電動で移動させるための機構(例えば、架台3に対してヘッド部4を移動させるための機構)を含む。このような電動機構に加え、又は電動機構に代えて、移動機構40は、光学ユニット20を手動で移動させるための機構(例えば、ベース2に対して架台3を移動させるための機構)を含んでよい。
【0039】
移動機構40には、光学ユニット20を左右方向(X方向)に移動するための左右移動機構40Xと、上下方向(Y方向)に移動するための上下移動機構40Yと、前後方向(Z方向)に移動するための前後移動機構40Zとが設けられていてよい。
【0040】
左右移動機構40X、上下移動機構40Y、及び前後移動機構40Zのそれぞれは、アクチュエータを備えている。アクチュエータは、例えばパルスモータを含む。アクチュエータは、制御部70による制御を受けて駆動力を発生する。移動機構40は、アクチュエータにより出力された駆動力を伝達して光学ユニット20を移動するための伝達機構を含む。
【0041】
制御部70は、既定のコンピュータプログラムにしたがって、3つのアクチュエータのうちの少なくとも1つを制御する。また、制御部70は、ユーザインターフェイス60の操作部62から入力される操作信号に基づいて、3つのアクチュエータのうちの少なくとも1つを制御する。
【0042】
(データ処理部50)
データ処理部50は、眼科装置1により取得された情報の処理と、外部から入力された情報の処理とを実行する。例えば、データ処理部50は、アライメントに関する処理を実行する。本実施形態には、Zアライメントを実行するための要素として、第1制御量演算部51と第2制御量演算部52とが設けられている。更に、データ処理部50は、XYアライメントのための公知の処理を実行する。
【0043】
また、データ処理部50は、検査光学系21により取得されたデータの処理や、観察光学系22により取得された画像の処理など、各種データ処理を実行する。データ処理部50は、このような処理を実行するためのプロセッサ、記憶装置、ソフトウェア(コンピュータプログラム)等を含む。
【0044】
(第1制御量演算部51)
第1制御量演算部51は、Zアライメント指標に基づいて前後移動機構40Zの制御量を求める。なお、制御量は、移動機構40の制御に利用可能な任意の量であってよい。例えば、移動機構40に含まれるアクチュエータがパルスモータである場合、パルスモータに送られるパルスの数(パルス数)を制御量として用いることができる。或いは、光学ユニット20を移動させる距離などを制御量として用いてもよい。
【0045】
本実施形態では、Zアライメント系30のラインセンサ33に対する投影像が、Zアライメント指標として用いられる。第1制御量演算部51は、ラインセンサ33に対するZアライメント指標の投影位置に基づいて、被検眼E(角膜頂点、角膜内皮等)のZ方向における位置を特定する。
【0046】
ここで、ラインセンサ33に含まれる光検出素子列における位置(光検出素子のアドレス)には、Z方向の位置が予め対応付けられている。第1制御量演算部51は、ラインセンサ33からの出力信号に基づいて、Zアライメント指標の投影位置、つまり被検眼Eからの反射光を検出した素子のアドレスを特定する。そして、特定されたアドレスに対応するZ方向の位置が求められる。Zアライメントに関するこのような処理は、従来と同様である。
【0047】
(第2制御量演算部52)
第2制御量演算部52は、第1制御量演算部51により求められた制御量(Z制御量)に基づいて、左右移動機構40Xの制御量(X制御量)及び上下移動機構40Yの制御量(Y制御量)の少なくとも一方を求める。
【0048】
第2制御量演算部52により求められる制御量は、Z方向に対する検査光学系21の光軸の傾斜の方向に応じた制御量である。本実施形態では、
図2に示すように、合成光路OPの光軸がY方向に傾斜しているので、Y制御量が求められる。以下、第1制御量演算部51により求められたZ制御量からY制御量(及び/又はX制御量)を求めるための処理の例を説明する。
【0049】
Z制御量からY制御量を求めるための処理の第1の例として、予め作成された対応情報を参照することができる。対応情報は、例えば、制御部70又はデータ処理部50に予め記憶される。或いは、外部装置11に対応情報を予め格納し、これを参照するようにしてもよい。対応情報が記憶される要素(記憶部)は、例えば、半導体メモリ、磁気記憶装置、光学記憶装置、光磁気ディスクのいずれかを含んでよい。
【0050】
対応情報は、例えば、Z制御量の複数の値のそれぞれにY制御量が対応付けられたテーブル情報である。このようなテーブル情報においては、例えば、Z制御量の値0,ΔZ1,ΔZ2,ΔZ3,・・・・,ΔZN-1,ΔZNに対して、それぞれ、Y制御量の値0,ΔY1,ΔY2,ΔY3,・・・・,ΔYN-1,ΔYNが対応付けられている(ΔZn<ΔZn+1、ΔYn<ΔYn+1)。ここで、ΔZnとΔYnとの関係は、Z方向に対する検査光学系21の光軸(合成光路OPの光軸)の傾斜角度θに基づき決定される。具体的には、関係式ΔYn=ΔZn×tanθによって、ΔZnに対するΔYnが算出される(n=1,2,・・・,N)。
【0051】
対応情報は、上記テーブル情報のような離散的な情報には限定されない。例えば、Z制御量の値とY制御量の値との関係を連続的に表すグラフを対応情報として用いることができる。これは、例えば、Z制御量の値ΔZを横軸にとり、Y制御量の値ΔYを縦軸にとったグラフである。このようなグラフは、関係式ΔY=ΔZ×tanθによって得られる。
【0052】
傾斜角度θが可変である場合、傾斜角度θの複数の値(離散的な値)θ1,θ2,・・・,θKのそれぞれについて対応情報を準備することができる。例えば、傾斜角度θ=θk(k=1,2,・・・,K)のそれぞれについて、Z制御量の値ΔZn(θk)にY制御量の値ΔYn(θk)が対応付けられたテーブル情報を作成することができる。ここで、Z制御量の値ΔZn(θk)とY制御量の値ΔYn(θk)とは、関係式ΔYn(θk)=ΔZn(θk)×tanθkを満足する。また、同様の関係式を利用することで、傾斜角度θ=θk(k=1,2,・・・,K)のそれぞれについてのグラフを作成することもできる。
【0053】
或いは、傾斜角度θの連続的な変化を考慮した対応情報を準備することも可能である。例えば、連続的な変数である傾斜角度θについて、Z制御量の値ΔZn(θ)にY制御量の値ΔYn(θ)が対応付けられたテーブル情報を作成することができる。ここで、Z制御量の値ΔZn(θ)とY制御量の値ΔYn(θ)とは、関係式ΔYn(θ)=ΔZn(θ)×tanθを満足する。また、同様の関係式を利用することで、連続的な変数である傾斜角度θをインデックスとする関数族として対応情報を作成することもできる。
【0054】
なお、対応情報は、テーブル情報やグラフに限定されるものではない。また、Z制御量に対してX制御量が対応付けられた対応情報についても、Z制御量に対してY制御量が対応付けられた対応情報と同じ要領で作成することができる。
【0055】
第2制御量演算部52は、第1制御量演算部51により求められたZ制御量と対応情報とに基づいて、Y制御量(及び/又はX制御量)を求めることができる。
【0056】
対応情報がテーブル情報である場合、第2制御量演算部52は、まず、第1制御量演算部51により求められたZ制御量に応じたテーブル情報中のZ制御量の値を選択する。テーブル情報では、Z制御量の値は離散的である。第1制御量演算部51により求められたZ制御量と等しい値がテーブル情報に含まれる場合、この値が選択される。選択された値がY制御量として採用される。
【0057】
第1制御量演算部51により求められたZ制御量と等しい値がテーブル情報に含まれない場合、第2制御量演算部52は、例えば、第1制御量演算部51により求められたZ制御量に最も近い値を選択する。或いは、第1制御量演算部51により求められたZ制御量より小さい値のうちの最も大きい値を選択することや、第1制御量演算部51により求められたZ制御量より大きい値のうちの最も小さい値を選択することも可能である。選択された値が、第1制御量演算部51により求められたZ制御量に対応するY制御量として採用される。
【0058】
対応情報が(連続的な)グラフである場合、第2制御量演算部52は、第1制御量演算部51により求められたZ制御量に応じたZ制御量の座標軸(例えば横軸)上の座標を特定し、当該グラフによって当該座標に対応付けられたY制御量の座標軸(例えば縦軸)上の座標を特定する。特定された座標が示す値が、第1制御量演算部51により求められたZ制御量に対応するY制御量として採用される。
【0059】
Z制御量からY制御量を求めるための処理の第2の例を説明する。本例では、第2制御量演算部52は、第1制御量演算部51によりZ制御量が求められたとき、このZ制御量に対応するY制御量(及び/又はX制御量)を、検査光学系21の光軸の傾斜角度θに基づき演算する。つまり、本例では、Z制御量に対応するY制御量(及び/又はX制御量)がその都度算出される。
【0060】
具体的には、第2制御量演算部52は、第1制御量演算部51により求められたZ制御量と傾斜角度θとに基づき、三角法を用いて、Y制御量(及び/又はX制御量)を演算する。ここで、第1の例の場合と同様に、三角法の関係式「(Y制御量)=(Z制御量)×tanθ」を利用することができる。本例では、制御部70、データ処理部50、外部装置11等に、このような関係式が予め記憶される。
【0061】
(被検眼情報生成部53)
被検眼情報生成部53は、光学ユニット20(例えば検査光学系21)により得られたデータに基づいて被検眼情報を取得する。取得される被検眼情報の種類は、眼科装置1の機能に対応する。
【0062】
一例として、光学ユニット20により角膜内皮細胞画像が得られた場合、つまり、眼科装置1が角膜内皮細胞撮影装置として機能する場合、前述の引用文献を含む、当該分野の任意の公知技術を利用することが可能である。典型的には、被検眼情報生成部53は、次のような処理を実行することができる:角膜内皮細胞画像の補正(コントラスト補正、輝度補正、鮮鋭化等);連続して取得された複数の画像のうちから最適な画像を選択する処理;異なる部位の画像からパノラマ画像を生成する処理;画像を解析して角膜内皮細胞の密度を求める処理;角膜内皮細胞の輪郭を表す画像を生成する処理。
【0063】
他の例として、光学ユニット20によりOCTデータが収集された場合、つまり、眼科装置1がOCT装置として機能する場合、当該分野の任意の公知技術を利用することが可能である。典型的には、被検眼情報生成部53は、収集されたOCTデータに基づき断層像を形成する。例えば、被検眼情報生成部53は、従来のスウェプトソースOCTと同様に、Aライン毎のサンプリング結果に基づくスペクトル分布に信号処理を施してAライン毎の反射強度プロファイルを形成し、これらAラインプロファイルを画像化してスキャンラインに沿って配列する。上記信号処理には、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、FFT(Fast Fourier Transform)などが含まれる。また、被検眼情報生成部53は、断層像に対して画像処理や解析処理を施してもよい。例えば、被検眼情報生成部53は、ラスタースキャンデータに基づく3次元画像データ(スタックデータ、ボリュームデータ等)の作成、3次元画像データのレンダリング、画像補正、解析アプリケーションに基づく画像解析などを実行するように構成されてよい。
【0064】
(ユーザインターフェイス60)
ユーザインターフェイス60は、表示部61と操作部62とを含む。表示部61は、表示部10を含み、制御部70による制御を受けて動作する。操作部62は、眼科装置1の操作や情報の入力に使用される。表示部61と操作部62は、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。例えばタッチパネルのように表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることが可能である。
【0065】
(制御部70)
制御部70は、プロセッサ、記憶装置、通信インターフェイス、ソフトウェア等を含んで構成される。制御部70は眼科装置1における各種制御を行う。例えば、制御部70は、検査光学系21の制御、観察光学系22の制御、XYアライメント系23の制御、Zアライメント系30の制御、移動機構40の制御(左右移動機構40X、上下移動機構40Y、及び前後移動機構40Zの個別的制御及び/又は連係的制御等)、データ処理部50の制御、表示部61の制御などを実行する。制御部70は、アライメント制御部71と、判定部72と、検査制御部73とを備える。
【0066】
(アライメント制御部71)
アライメント制御部71は、XYアライメント及びZアライメントのための制御を実行する。XYアライメントでは、アライメント制御部71は、XYアライメント系23にXYアライメント指標を生成させる。データ処理部50は、アライメントマークに対するXYアライメント指標(例えば、観察光学系20により得られる前眼部像に描出されたXYアライメント指標の像)の変位を算出する。アライメント制御部71は、データ処理部50により算出された変位がキャンセルされるように、XY方向におけるヘッド部4(光学ユニット20)の移動制御を実行する。このような変位算出と移動制御とが、前眼部像のフレームレートに応じた時間間隔で反復的に実行される。
【0067】
Zアライメントでは、アライメント制御部71は、Zアライメント系30にZアライメント指標を生成させる。更に、アライメント制御部71は、Zアライメント指標(例えば、ラインセンサ33に対する投影像)に基づいて、合成光路OPの光軸に沿って光学ユニット20を移動するように移動機構40を制御する。本実施形態では、アライメント制御部71は、第1制御量演算部51により取得されたZ制御量に基づく前後移動機構40Zの制御と、第2制御量演算部52により取得されたY制御量(及び/又はX制御量)に基づく上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)の制御とを並行して実行することにより、合成光路OPの光軸に沿った光学ユニット20の移動を実現する。
【0068】
このようなZアライメントにおいて、アライメント制御部71は、Z制御量に基づく前後移動機構40Zの制御の開始タイミングと、Y制御量(及び/又はX制御量)に基づく上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)の制御の開始タイミングとを、略一致させることができる。更に、アライメント制御部71は、Z制御量に基づく前後移動機構40Zの制御の終了タイミングと、Y制御量(及び/又はX制御量)に基づく上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)の制御の終了タイミングとを、略一致させることができる。
【0069】
このような連係的制御は、前後方向(Z方向)への移動速度と、上下方向(又は、左右方向、若しくは、上下成分と左右成分の双方を含む移動方向)への移動速度とを、調整することによって実現される。例えば、Z方向への移動距離をDZとし、Y方向への移動距離をDYとし、Z方向への移動速度をVZとすると、Y方向への移動速度VYを次式により設定することができる:VY=VZ×(DY/DZ)。
【0070】
(判定部72)
判定部72は、アライメントが完了したか判定する。XYアライメントの典型的な例において、データ処理部50は、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位を算出する。判定部72は、この変位の量を既定の閾値と比較する。変位量が閾値を超える場合、XYアライメントは完了していないと判定され、XYアライメントが継続される。変位量が閾値以下である場合、XYアライメントは完了したと判定される。つまり、XYアライメントは、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位量が閾値以下になるように実行される。
【0071】
Zアライメントでは、ラインセンサ33におけるZアライメント指標の位置(ラインセンサ33に含まれる光検出素子列のうちZアライメント指標の生成に寄与した光検出素子の位置)が参照される。判定部72は、Zアライメントが適正な状態に対応するラインセンサ33の位置(例えば、光検出素子列の中心に位置する光検出素子)に対する変位、つまり、Zアライメント指標の形成に寄与した光検出素子の位置(アドレス)に基づいて、Zアライメントが完了したか否か判定することができる。或いは、第1制御量演算部51により求められたZ制御量を既定閾値と比較し、Z制御量が閾値以下であるときにZアライメントは完了したと判定することができる。
【0072】
典型的な例では、XYアライメントの後にZアライメントが行われる。この場合、XYアライメントが完了したと判定部72により判定されたことに対応して、アライメント制御部71は、XYアライメントのための制御を終了し、Zアライメントのための制御を開始する。更に、Zアライメントが完了したと判定部72により判定されたことに対応して、アライメント制御部71はZアライメントを終了し、且つ、後述の検査制御部73が検査を開始する。
【0073】
(検査制御部73)
検査制御部73は、アライメントが完了したとの判定結果を判定部72から受けて、被検眼Eのデータを取得するように検査光学系21を制御する。典型的な例において、検査制御部73は、Zアライメントの完了を受けて検査光学系21にデータの取得を開始させる。
【0074】
なお、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているコンピュータプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0075】
〈動作〉
眼科装置1の動作について説明する。眼科装置1の動作の例を
図3に示す。
【0076】
(S1:前眼部撮影を開始する)
まず、制御部70は、観察光学系22を制御して前眼部撮影を開始させる。観察光学系22から逐次に出力されるフレームは、制御部70を介してデータ処理部50に送られる。これと並行し、制御部70は、前眼部像を表示部61に動画表示させることができる。
【0077】
(S2:アライメント指標の生成を開始する)
続いて、アライメント制御部71は、XYアライメント系23及びZアライメント系30を制御し、XYアライメント指標とZアライメント指標とを生成させる。XYアライメント系23から出力された光は、角膜Ecにて反射され、前眼部像のフレームに輝点像として描出される。制御部70は、前眼部像のフレームをデータ処理部50に逐次に転送する。
【0078】
Zアライメント光源31から出力された光は、角膜Ecにて反射され、結像レンズ32によりラインセンサ33に投影される。ラインセンサ33は、既定の時間間隔で検出信号を制御部70に入力する。制御部70は、この検出信号をデータ処理部50に逐次に転送する。
【0079】
なお、本例では、XYアライメントの後にZアライメントを実行する。よって、XYアライメント時にはXYアライメント指標のみを生成し、Zアライメント時にはZアライメント指標のみを生成するようにしてもよい。
【0080】
(S3:XYアライメントを行う)
アライメント制御部71、データ処理部50及び移動機構40は、ステップS2で生成が開始されたXYアライメント指標に基づいてXYアライメントを実行する。つまり、データ処理部50は、XYアライメント指標を参照してXY方向のずれを求め、アライメント制御部71は、このずれをキャンセルするように左右移動機構40X及び/又は上下移動機構40Yを制御する。XYアライメントは、例えば、アライメントマークに対するXYアライメント指標の変位が既定値以下となるように行われる。XYアライメントが完了したか否かの判定は、判定部72によって行われる。
【0081】
(S4、S5:Zアライメントを行う)
ステップS3のXYアライメントが完了したら、アライメント制御部71、データ処理部50及び移動機構40は、ステップS2で生成が開始されたZアライメント指標に基づいてZアライメントを実行する。
【0082】
つまり、データ処理部50は、Zアライメント指標を参照してZ方向のずれを求め、アライメント制御部71は、このずれをキャンセルするように前後移動機構40Zの制御を行いつつ、このZ方向への移動に伴うY方向(及び/又はX方向)へのずれを補正するために上下移動機構40Y(及び/又は左右移動機構40X)を制御する。ここで、Z方向への移動に伴うY方向(及び/又はX方向)へのずれは、Z方向と合成光路OPの光軸とがなす角度θに起因する。
【0083】
本実施形態では、データ処理部50の第1制御量演算部51が、Zアライメント指標に基づいてZ制御量を求め、第2制御量演算部52が、このZ制御量と上記対応情報又は上記関係式とに基づいてY制御量を求めるアライメント制御部71は、データ処理部50により求められたZ制御量及びY制御量に基づいて、Z方向への移動速度(Z移動速度)とY方向への移動速度(Y移動速度)とを設定することができる。アライメント制御部71は、Z制御量及びZ移動速度に基づく前後移動機構40Zの制御と、Y制御量及びY移動速度に基づく上下移動機構40Yの制御とを並行して実行する。これにより、合成光路OPの光軸に沿って光学ユニット20が移動される。
【0084】
Zアライメントは、例えば、Zアライメント指標がラインセンサ33の所定位置(ラインセンサ33に含まれる光検出素子列のうちの所定の光検出素子)にて得られるように行われる。Zアライメントが完了したか否かの判定は、判定部72によって行われる(S5)。
【0085】
(S6:検査を行う)
Zアライメントが完了したと判定されると(S5:Yes)、検査制御部73は、被検眼Eのデータを取得するための検査光学系21の制御を実行する。それにより、アライメントの完了と実質的に同時に検査(測定、撮影等)が開始される。このように、本実施形態では、アライメント(Zアライメント)の完了が検査開始トリガとして用いられる。
【0086】
このような処理の例について
図4を参照しつつ説明する。本例では、検査又はそのための動作が所定の時間間隔で繰り返し実行される(
図4に示す検査タイミング)。例えば、角膜内皮細胞撮影では、撮像装置(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)が所定のレートで繰り返し撮影を行う。このような反復動作はZアライメントと並行して実行される。検査又はそのための動作の時間間隔をΔT
1で表す。
【0087】
図4に示すアライメント確認タイミングは、Zアライメントが完了したか否かの判定処理が繰り返し実行されるタイミングを表す。当該判定処理の時間間隔をΔT
2で表す。本例では、時間t=t
0にZアライメントが完了したとする(
図4に示す「OK」の時間)。
【0088】
従来の眼科装置では、Zアライメントが完了した時間t=t0の直後に到来する検査タイミングt=t1に検査を実行するように制御が行われる。例えば、典型的な角膜内皮細胞撮影における時間間隔ΔT1は33ミリ秒である。よって、Zアライメントが完了してから33ミリ秒近く経過したタイミングで検査(角膜内皮細胞の撮影画像の取り込み)が開始される。したがって、この間にアライメント状態がずれてしまう可能性がある。つまり、Zアライメントが完了した時間t=t0と検査開始の時間t=t1との差(Δt=t1-t0)が、検査を好適に行うための阻害要因となっている。
【0089】
これに対し、本実施形態に係る眼科装置では、Zアライメントの完了をトリガとして検査制御部73が検査光学系21に検査を実行させる。
図4に示す例では、検査制御部73は、Zアライメントの完了(時間t=t
0)に対応して検査光学系21に検査開始の指示を送る。この処理に要する時間をΔt
a=t
a-t
0とする。このような信号の送信に要する時間Δt
aは十分に短く、少なくともΔtよりも短い。したがって、Zアライメントの完了から検査の開始までの時間が従来よりも短くなり、Zアライメントの完了から検査の開始までの間にアライメント状態がずれる可能性が小さくなる。
【0090】
取得された検査データ(測定データ、画像データ等)は、制御部70の記憶装置に保存される。また、検査データを外部装置11に送ることもできる。以上で、本動作例に係る処理は終了となる。
【0091】
〈作用・効果〉
実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0092】
実施形態に係る眼科装置は、情報取得部と、移動機構と、指標生成部と、第1制御部と、判定部と、第2制御部とを備える。
【0093】
情報取得部は、被検眼に光を照射してその戻り光を検出する光学系を含む。一例において、光学系の光軸は、前後方向(Z方向)に対して傾斜していてよい。つまり、光学系の光軸は、前後方向と非平行に配置されていてよい(前後方向と交差していてよい)。他の例において、光学系の光軸は、前後方向と平行に配置されていてよい。情報取得部は、光学系により得られたデータに基づいて被検眼情報を取得する。上記実施形態において、光学系は検査光学系21を含み、情報取得部は被検眼情報生成部53を含む。また、上記実施形態において、光学系の光軸は、合成光軸OPの光軸である。
【0094】
移動機構は、光学系を移動する。一例において、移動機構は、被検眼に対して前後方向(Z方向)及びそれに直交する方向(X方向、Y方向)に光学系を移動可能である。上記実施形態において、移動機構は移動機構40を含み、前後方向への移動は前後移動機構40Zが担っており、前後方向に直交する方向への移動は左右移動機構40X及び上下移動機構40Yが担っている。
【0095】
指標生成部は、アライメントのための指標を生成する。例えば、指標生成部は、前後方向のアライメントのための第1指標(Zアライメント指標)を生成する。上記実施形態において、指標生成部は、Zアライメント系30を含む。
【0096】
第1制御部は、指標生成部により生成された指標に基づいて移動機構を制御することによりアライメントを行う。光学系の光軸が前後方向に対して傾斜している場合、第1制御部は、Zアライメントにおいて、光軸に沿って光学系を移動するように移動機構を制御することができる。上記実施形態では、アライメント制御部71とデータ処理部50とが第1制御部として機能する。
【0097】
判定部は、アライメントが完了したか判定する。例えば、判定部は、第1指標を用いたアライメント(Zアライメント)が完了したか判定することができる。上記実施形態では、判定部72がこれに相当する。
【0098】
第2制御部は、判定部によりアライメントが完了したと判定されたことに対応して光学系にデータを取得させる。上記実施形態では、検査制御部73がこれに相当する。
【0099】
このような実施形態に係る眼科装置によれば、アライメントの完了を契機として被検眼のデータの取得を実行できる。例えば、情報取得部が所定の時間間隔でデータを取得できるように同期制御が行われている場合、従来の技術では、この時間間隔の間に被検眼が動いてしまうおそれがあった。一方、実施形態に係る眼科装置では、例えば、アライメントの完了の直後に、情報取得部の同期制御に割り込みを行うことで、光学系にデータを取得させることが可能である。したがって、従来のように、データ取得のトリガをユーザが入力する場合や、情報取得部の同期制御の制限を受ける場合と比較し、アライメントの完了後に迅速に検査を行うことが可能である。よって、実施形態に係る眼科装置によれば、適切なアライメント状態で被検眼情報を取得することが可能である。
【0100】
実施形態において、指標生成部は、前後方向に直交する方向のアライメントのための第2指標(XYアライメント指標)を生成することができる。上記実施形態において、指標生成部は、Zアライメント系30に加え、XYアライメント系23を含む。
【0101】
第1制御部は、第2指標に基づいて前後方向に直交する方向に光学系を移動するように移動機構を制御した後、第1指標に基づいて光学系を光軸に沿って移動するように移動機構を制御することができる。つまり、XYアライメントを行った後にZアライメントを行うことができる。この場合、判定部によってXYアライメントの完了を検知してZアライメントに移行するように構成することができる。
【0102】
判定部は、第2指標に基づくアライメント(XYアライメント)の後に実行された第1指標に基づくアライメント(Zアライメント)が完了したか判定する。Zアライメントが完了したと判定されたことを受け、第2制御部は、光学系を制御して被検眼のデータを取得させる。
【0103】
このような構成によれば、まずXY方向の位置を合わせた後に、この好適な位置関係が維持されるようにZアライメントを行うことができる。そして、Zアライメントが完了したことに対応して(つまり、X方向、Y方向及びZ方向の全てにおいてアライメントが合致したことに対応して)、検査を行うことができる。
【0104】
また、第1指標を用いたアライメント(Zアライメント)において、前後方向に対して傾斜した光軸の方向に沿って光学系を移動させる場合、Z方向への移動とそれに伴うXY方向への変位の補正とを交互に実行する従来のZアライメント動作と比較して、光学系(眼科装置)に発生する揺れを低減することが可能である。
【0105】
つまり、従来の眼科装置では、Z方向への移動と、それに伴うずれを補正するためのXY方向への移動とを交互に何度も繰り返すため、移動開始時や停止時に揺れが発生する。更に、移動と停止を繰り返すため、揺れが増幅されるおそれもある。しかも、異なる方向への移動を交互に行うため、不規則で複雑な揺れが発生する。これに対し、実施形態に係る眼科装置によれば、Z方向への移動に伴うXY方向へのずれが補正される方向(つまり光軸に沿った方向)に光学系を移動させるので、揺れを抑制することが可能である。
【0106】
このような実施形態の典型的な構成例として、移動機構は、前後方向に光学系を移動するための前後移動機構(例えば前後移動機構40Z)と、被検眼に対して左右方向に光学系を移動するための左右移動機構(例えば左右移動機構40X)と、被検眼に対して上下方向に光学系を移動するための上下移動機構(例えば上下移動機構40Y)とを含んでよい。
【0107】
また、前後方向(Z方向)に対する光軸の傾斜方向(例えば傾斜角度θが示す方向)は、左右方向(X方向)、上下方向(Y方向)、又は、左右方向と上下方向との合成方向であってよい。つまり、光軸の傾斜方向は、XY面における任意の方向であってよい。
【0108】
第1制御部は、第1演算部(例えば第1制御量演算部51)と第2演算部(例えば第2制御量演算部52)とを含んでよい。第1演算部は、第1指標(Zアライメント指標)に基づいて、前後移動機構の制御量(Z制御量)を求める。第2演算部は、第1演算部により求められた制御量に基づいて、左右移動機構及び上下移動機構の少なくとも一方の制御量を求める。
【0109】
更に、移動機構は、第1演算部により求められた制御量に基づく前後移動機構の制御と、第2演算部により求められた制御量に基づく左右移動機構及び上下移動機構の少なくとも一方の制御とを並行して実行することができる。
【0110】
Z制御量からX制御量及び/又はY制御量を求めるための構成の典型的な例において、第1制御部は、前後移動機構の制御量と左右移動機構及び上下移動機構の少なくとも一方の制御量との対応を表す対応情報が予め記憶された記憶部を含む。対応情報は、例えばテーブル情報又はグラフであってよい。また、対応情報は、傾斜角度θの1以上の値について準備されてもよい。上記実施形態において、記憶部は、例えば、制御部70、データ処理部50、外部装置11等に設けられている。第2演算部は、第1演算部により求められた制御量と対応情報とに基づいて、左右移動機構及び上下移動機構の少なくとも一方の制御量を求めることができる。
【0111】
他の典型例において、第2演算部は、第1演算部により求められた制御量と前後方向に対する光軸の傾斜角度とに基づき、三角法を用いて、左右移動機構及び上下移動機構の少なくとも一方の制御量を求めることができる。このとき、三角法に基づく演算式(例えばZ制御量とY制御量(及び/又はX制御量)との間の関係式)が準備され、制御部70、データ処理部50、外部装置11等に予め格納される。
【0112】
実施形態において、第1制御部は、前後移動機構の制御と、左右移動機構及び上下移動機構の少なくとも一方の制御とを、略同時に開始し、且つ、略同時に終了することができる。
【0113】
このような構成によれば、移動・停止の回数を低減することができ、揺れの更なる抑制が可能となる。
【0114】
以上に示された実施形態は、本発明を実施するための一例に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 眼科装置
20 光学ユニット
21 検査光学系
22 観察光学系
23 XYアライメント系
30 Zアライメント系
40 移動機構
40X 左右移動機構
40Y 上下移動機構
40Z 前後移動機構
51 第1制御量演算部
52 第2制御量演算部
53 被検眼情報生成部
70 制御部
71 アライメント制御部
72 判定部
73 検査制御部