(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023030433
(43)【公開日】2023-03-08
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/12 20060101AFI20230301BHJP
F16L 21/08 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
F16L37/12
F16L21/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135560
(22)【出願日】2021-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】土田 理彩子
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
(72)【発明者】
【氏名】頼 蘭馨
【テーマコード(参考)】
3H015
3J106
【Fターム(参考)】
3H015FA06
3J106AA06
3J106AB01
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE22
3J106CA02
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC07
3J106ED13
3J106EE01
3J106EF04
(57)【要約】
【課題】パイプの抜けが発生しにくい管継手の提供。
【解決手段】筒状の継手本体101と、継手本体101の内周面に継手本体101の軸方向に沿って配置された止水部103及び固定部104と、継手本体101の端部に取り付けられたキャップ102と、を備え、固定部104は継手本体101の軸方向に沿って配置された2枚以上の抜け止めリング104a,104b及び抜け止めリング104a,104b間に配置されたスペーサー104cによって構成され、スペーサー104cの前記軸方向の厚みA及び抜け止めリング104a,104bの前記軸方向の厚みBは5.0≦A/B≦22.5を満たす、管継手100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の継手本体と、
前記継手本体の内周面に前記継手本体の軸方向に沿って配置された止水部及び固定部と、
前記継手本体の端部に取り付けられたキャップと、
を備え、
前記固定部は前記継手本体の軸方向に沿って配置された2枚以上の抜け止めリング及び前記抜け止めリング間に配置されたスペーサーによって構成され、
前記スペーサーの前記軸方向の厚みA及び前記抜け止めリングの前記軸方向の厚みBは5.0≦A/B≦22.5を満たす、
管継手。
【請求項2】
前記抜け止めリングが2枚である、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記抜け止めリングは金属製であり、かつ円環状の平面部及び係止環部を有し、
前記係止環部は、前記平面部の径方向の内側に位置し、径方向の内側に向かうに従い漸次、軸方向の内側に近づき、前記平面部と前記係止環部のなす角が130~140°である、請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記スペーサーが、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)及びポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)からなる群から選択されるいずれか1種からなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内の給水、給湯又は空調機器用の配管を接続するために、管継手が用いられている。
【0003】
特許文献1には、
図5(a)及び
図5(b)に示すような、雄ネジ部31を端部1aに有する合成樹脂製の継手本体1と、該雄ネジ部31に螺合する雌ネジ部32を有する合成樹脂製の筒状体2とを、備えた管継手に於て、上記継手本体1は、上記雄ネジ部31の基端近傍に、一対の係止爪片部51,51が一体成型され、しかも、上記係止爪片部51は軸心方向Fから見て、上記筒状体2の螺進回転方向(Na)に倒れた傾斜状として突設され、上記筒状体2は、上記雌ネジ部32の開口端近傍に、多数の係止歯部52を有し、かつ、該係止歯部52は上記軸心方向(F)から見て、上記筒状体2の螺退回転方向(Nb)に倒れた不等辺三角状として突設され、上記雄ネジ部31と上記雌ネジ部32の螺着完了直前で、上記係止歯部52が順次上記係止爪片部51を弾性変形させつつ乗り越えて、上記筒状体2の螺進方向への回転が可能となるように構成し、螺着完了状態で、上記係止爪片部51と上記係止歯部52が係止して、上記筒状体2の螺退方向への回転が阻止されるように構成したことを特徴とする管継手が記載されている。この管継手は、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、差込まれたパイプPの内部Pbと連通する流路部(孔)30を有する合成樹脂製(樹脂成型品)の継手本体1と、継手本体1の端部1aに外嵌状に取着される合成樹脂製の筒状体2とを備え、
図5(b)に示すように、継手本体1と筒状体2によって、Oリング等のシール材61や抜け止めリング62等の継手内装部品(部材)を配設するための収容空間部60を内周凹溝状に形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された管継手は、パイプと抜け止めリングの引っ掛かり箇所が小さく、引張強度が低く、疲労破壊もしやすいため、パイプの抜けが発生しやすい。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、パイプの抜けが発生しにくい管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>本発明の一態様に係る管継手は、筒状の継手本体と、前記継手本体の内周面に前記継手本体の軸方向に沿って配置された止水部及び固定部と、前記継手本体の端部に取り付けられたキャップと、を備え、前記固定部は前記継手本体の軸方向に沿って配置された2枚以上の抜け止めリング及び前記抜け止めリング間に配置されたスペーサーによって構成され、前記スペーサーの前記軸方向の厚みA及び前記抜け止めリングの前記軸方向の厚みBは5.0≦A/B≦22.5を満たす。
【0008】
抜け止めリングが複数枚構成されることで、パイプとの引っ掛かり面積が増え、引抜強度が向上する。また、より効果が出るよう、各抜け止めリング間に一定のスペースを設けることで、引抜力に対しより粘り強い構造の継手が得られる。
【0009】
<2>上記<1>に係る管継手では、前記抜け止めリングが2枚である、構成を採用してもよい。
【0010】
抜け止めリングの枚数が多いほどパイプとの引っ掛かり面積が増加するためパイプが抜けにくくなるが、多すぎると応力集中して引き抜き強度が低下したり、固定部の長さが長くなって管継手の全長も長くなってコンパクト性が低下したりする。
【0011】
<3>上記<1>又は<2>に係る管継手では、前記抜け止めリングは金属製であり、かつ円環状の平面部及び係止環部を有し、前記係止環部は、前記平面部の径方向の内側に位置し、径方向の内側に向かうに従い漸次、軸方向の内側に近づき、前記平面部と前記係止環部のなす角が130~140°である、構成を採用してもよい。
【0012】
管継手にパイプを送入すると抜け止めリングの係止環部がパイプに食い込んでパイプがより抜けにくくなる。
【0013】
<4>上記<1>ないし<3>に係る管継手では、前記スペーサーが、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)及びポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)からなる群から選択されるいずれか1種からなる、構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、パイプの抜けが発生しにくい管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管継手を示す図であって、一部断面を含む斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る管継手の部品構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る管継手の固定部の拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る管継手の抜け止めリングの断面図である。
【
図5】特許文献1に記載された管継手の(a)側面図及び(b)側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1から
図4を参照し、本発明の一実施形態に係る管継手100について説明する。
本実施形態に係る管継手100は、建物内の吸水、給湯又は空調機器用の複数のパイプ(配管)を接続するための部材である。管継手100と、この管継手100に接続されるパイプと、は配管構造を構成する。
【0017】
管継手100は、筒状の継手本体101と、継手本体101の端部に設けられたキャップ102と、を備えている。
以下では、継手本体101の中心軸線に沿う方向を軸方向といい、継手本体101を軸方向から見た平面視で、前記中心軸線と交差する方向を径方向という。また、前記平面視で前期中心軸線回りに周回する方向を周方向という。
【0018】
継手本体101の軸方向の端部における内周面には、段113が形成されている。段113は、継手本体101の内周面から径方向の内側に向けて突出している。段113は、周方向の全周にわたって設けられている。段113において、継手本体101の内径は、軸方向の外側から内側に向けて段階的に(段状に)縮径している。段113には、継手本体101とは別体で形成されたインコア105が突き当たる。
以下では、継手本体101のうち、継手本体101の端面から段113に至るまでの部分を、継手本体101の開口端という。
【0019】
継手本体101の軸方向の両端部それぞれにおける外周面には、外フランジ部101bと、雄ねじ部101cと、が形成されている。
外フランジ部101bは、継手本体101から径方向の外側に向けて突出する。外フランジ部101bは、継手本体101の外周面に、全周にわたって延びている。
雄ねじ部101cは、継手本体101の外周面のうち、外フランジ部101bよりも軸方向の外側(即ち、継手本体101の端部寄り)に位置する部分に形成されている。
【0020】
図1~
図4に示すように、キャップ102は、軸方向に段階的に外径が小さくなっている筒状である。キャップ102は、内周面に雌ねじが形成された第1筒102aと、第1筒102aよりも軸方向に沿って外側に位置する第2筒102bと、を備えている。
第1筒102aは、雄ねじ部101cに螺着する。キャップ102の内周の第1筒102aと第2筒102bとの境界に相当する部分には段差102dが設けられている。段差102dは、周方向の全周にわたって延びている。段差102dは、継手本体101において軸方向の外側を向く端面に接触又は近接する。
【0021】
第2筒102bは、第1筒102aよりも小径である。第2筒102bは、第1筒102aから軸方向の外側に延びる。
管継手100において、継手本体101とキャップ102との間には、止水部103及び固定部104を収容するための収容凹部106が形成されている。収容凹部106は、段差102dと、継手本体101において軸方向の外側を向く端面と、の間に形成されている。収容凹部106は、周方向の全周にわたって延びている。
【0022】
継手本体101は、例えば、合成樹脂材料の射出成形又は金属材料の切削加工、鋳造若しくは鍛造により形成されている。
キャップ102は、例えば、合成樹脂材料の射出成形又は金属材料の切削加工、鋳造若しくは鍛造により形成されている。
前記合成樹脂材料としては、例えば、架橋ポリエチレン、ポリブデン、塩化ビニル(PVC)、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ガラス繊維強化PPS、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。また、切削加工や融着等の他の加工方法を用いてもよい。
前記金属材料としては、ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼、低温用炭素鋼、低温用合金鋼、真鍮、砲金、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。
【0023】
管継手100における軸方向の各端部には、継手本体101の端部に向かって順に、パッキン103a(シール部材)と、ベース103bと、抜け止めリング104a(第1の抜け止めリング)と、スペーサー104cと、抜け止めリング104b(第2の抜け止めリング)と、が設けられている。即ち、固定部104は止水部103よりも端部寄りに位置している。
パッキン103a及びベース103bは止水部103を構成する。止水部103によって、パイプPの内容物が管継手100から漏れ出ることを防ぐ。
抜け止めリング104a、スペーサー104c及び抜け止めリング104bは固定部104を構成する。管継手100に挿入したパイプPは、固定部104によって管継手100に固定される。
【0024】
パッキン103a(シール部材)は、継手本体101の内周面に配置されている。パッキン103aは、図示の例では1つだが、軸方向に間隔をあけて複数設けられてもよい。パッキン103aは、断面円形の環状である。パッキン103aは、周方向の全周にわたって延びている。図示の例では、パッキン103aとしてOリングが採用されている。パッキン103aの材質としては、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FKM)、ビニルメチルシリコンゴム(VMQ)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料を採用することができる。
【0025】
ベース103bは、パッキン103aと抜け止めリング104aとの間に配置されている。ベース103bは、パッキン103aと抜け止めリング104aとが接触することを規制する。ベース103bは、環状に形成されている。ベース103bは、周方向の全周にわたって延びている。ベース103bは、継手本体101の開口端内に嵌め込まれている。ベース103bは、継手本体101の前記第1段において軸方向の外側を向く端に接触している。ベース103bは、継手本体101の前記第1段に対して軸方向の外側から引っ掛けられている。ベース103bの内径は、パッキン103aの内径よりも大きい。ベース103bは、例えば、合成樹脂材料の射出成形又は金属材料の切削加工、鋳造若しくは鍛造により形成されている。
前記合成樹脂材料としては、例えば、架橋ポリエチレン、ポリブデン、塩化ビニル(PVC)、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ガラス繊維強化PPS、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。また、切削加工や融着等の他の加工方法を用いてもよい。
前記金属材料としては、ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼、低温用炭素鋼、低温用合金鋼、真鍮、砲金、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。
【0026】
抜け止めリング104a,104b及びスペーサー104cは、ベース103bに対して軸方向の外側に配置されている。抜け止めリング104a,104b及びスペーサー104cは、継手本体101の収容凹部に配置されている。抜け止めリング104a,104b及びスペーサー104cは、前記収容凹部に対して、軸方向に若干の遊びをもった状態で配置されている。抜け止めリング104a,スペーサー104c及び抜け止めリング104bは、軸方向の外側から内側に向けてこの順に並べられて配置されている。スペーサー104cは、前記収容凹部において、抜け止めリング104a及び抜け止めリング104bの間に軸方向に挟まれて配置されている。
【0027】
図3に止水部103及び固定部104の軸方向断面図を示す。
ベース103bの軸方向奥側には段が形成されており、これに対応する段が継手本体101に設けられている。この段によりベース103bは継手本体101の奥側に移動しないように固定される。この結果、パッキン103aがベース103bと継手本体101とに挟まれて軸方向に押し潰されることが防止される。
ベース103bの軸方向外側には抜け止めリング104aの係止環部1104b(後述)の逃げ空間が設けられている。この逃げ空間は、
図3に示す軸方向断面図では、ベース103bの軸方向外側の部分円弧で表される。
ベース103bの軸方向外側は抜け止めリング104aと対向しており、
図3に示す軸方向断面図に示すとおり、抜け止めリング104aはベース103bとスペーサー104cに挟まれて固定部104に固定される。
【0028】
抜け止めリング104a,104bは、パイプPの抜けを抑制する。
図4に示すように、抜け止めリング104a,104bは、円環状の平面部1104a及び係止環部1104bを有し、平面部1104aにおける径方向の内側に、径方向の内側に向かうに従い漸次、軸方向の内側に向けて延びる係止環部1104bが形成されている。
即ち、抜け止めリング104aの係止環部1104bは、平面部1104aに対して止水部103の方向に屈曲し、抜け止めリング104bの係止環部は、平面部に対してスペーサー104cの方向に屈曲している。
【0029】
平面部1104aと係止環部1104bのなす角α(図示、平面部と係止環部のなす角のうち軸方向内側を向く角)は、例えば130~140°である。平面部1104a及び係止環部1104bの厚みは同じであるが、パイプへ食込みやすくするため係止環部1104bの先端を肉薄にしてもよい。
前記係止環部における内周縁は、キャップ102及びスペーサー104cそれぞれの内周面よりも径方向の内側に位置している。前記係止環部の内径は、パッキン103aの内径と同等である。
【0030】
前記係止環部の内径は、パイプPの外径よりも小さい。パイプPが継手本体101に挿入されたとき、前記係止環部の内周縁が、パイプPの外周面に食い込むことで、抜け止めリング104a,104bが、管継手100からパイプPが軸方向に抜けることを抑止する。なお、前記係止環部は、周方向に複数の環部片(歯部)に分割されていることが好ましい。
抜け止めリング104a,104bは、例えば、金属材料のプレス加工等により形成されている。
前記金属材料としては、ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼、低温用炭素鋼、低温用合金鋼、真鍮、砲金、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。
【0031】
スペーサー104cは、抜け止めリング104a,104bとともに、軸方向に移動可能なように、継手本体101の収容凹部に納められている。スペーサー104cは、厚みより軸方向に長い断面長方形の環状に形成されている。スペーサー104cは、周方向の全周にわたって延びている。スペーサー104cの内径は、継手本体101の開口端の内径よりも小径である。スペーサー104cの内径は、抜け止めリング104a,104bの内径(係止環部の内径)よりも大径である。スペーサー104cは、キャップ102との間に抜け止めリング104bを挟む。
スペーサー104cおよび抜け止めリング104a,104bは、軸方向に移動しないよう固定されていてもよい。
【0032】
スペーサー104cの軸方向奥側の面は抜け止めリング104aの平面部の軸方向外側の面に対向し、スペーサー104cの軸方向外側の面は抜け止めリング104bの平面部の軸方向奥側の面に対向している。
【0033】
スペーサー104cは、例えば、合成樹脂材料の射出成形などにより形成されている。
前記合成樹脂材料としては、例えば、架橋ポリエチレン、ポリブデン、塩化ビニル(PVC)、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ガラス繊維強化PPS、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。
【0034】
抜け止めリングの枚数は2枚に限定されず、3枚以上であってもよい。この場合も、2枚の抜け止めリングの間にスペーサーが挟まれる。
抜け止めリングの枚数を増加させた方がパイプとの引っ掛かり面積が増えるため抜け止めの観点からは好ましいが、抜け止めリングの枚数が多すぎると応力集中して、引抜強度が低下したり、固定部の長さが長くなるため、継手全長も長くなってしまいコンパクト性が低下したりするため、抜け止めリングは2枚が特に好ましい。
【0035】
ベース103b、抜け止めリング104a、スペーサー104c、抜け止めリング104bは、この順に、継手本体101の内面の拡径部とキャップ102の内面の縮径部との間である収容凹部に納められている。収容凹部の軸方向の長さは、抜け止めリング104bとキャップ102の縮径部に十分な空間ができるほどである。この空間の軸方向の長さは、スペーサー104cの厚みAに対し、0.2A以上、1.0A以下が好ましい。こうすることで、引抜力が働くとき、パイプに刺さった2枚の抜け止めリングが軸方向へ動くことを許容でき、引抜強度が向上する。
【0036】
図3に示すように、本実施形態の管継手100において、スペーサー104cの厚みAと抜け止めリング104a,104bの厚みBは、5.0≦A/B≦22.5を満たす。ここで、抜け止めリング104aの厚みをB1、抜け止めリング104bの厚みをB2とするとき、抜け止めリング104a,104bに挟まれたスペーサー104cの厚みAと、B1及びB2とは、5.0≦A/B1≦22.5、かつ、5.0≦A/B2≦22.5を満たす。抜け止めリングの枚数が3枚以上の場合も同様である。
A/Bは、抜け止めリングが2枚の場合、5.0≦A/B≦12.5を満たすことが好ましい。抜け止めリングが2枚の場合、A/Bがこの範囲内であると、固定部104が軸方向に長くなり過ぎず、管継手100のコンパクト性を高めることができる。
なお、スペーサー104cの厚み(A)が小さすぎると1枚目と2枚目の抜け止めリングがパイプの同じ箇所に刺さってしまい、パイプに応力集中するため、引抜強度や疲労強度が低下するおそれがある。
【0037】
インコア105は、継手本体101に対して、離脱可能な状態で収容される。インコア105は、継手本体101と同軸に配置される。インコア105の軸方向の両端部それぞれをインコア第1端、インコア第2端とする。インコア105が継手本体101に収容された状態で、前記インコア第1端は、前記インコア第2端に対して軸方向の外側に位置する。前記インコア第1端は、キャップ102(第2筒)内に位置する。前記インコア第2端は、継手本体101内に位置する。前記インコア第2端は、パッキン103aよりも軸方向の内側に位置する。インコア105は、パッキン103a、ベース103b、抜け止めリング104a、スペーサー104c、抜け止めリング104bそれぞれの内部に位置している。
【0038】
インコア105は、パイプPの端部に差し込まれ、その端部の径方向内側への変形を抑制するための部品である。インコア105は、パイプPの端部に入り込む円筒部と、パイプPの端部に入り込まず露出する先端部とからなる。インコア105の先端部の外周面には、突部が形成されている。前記突部は、インコア105において、軸方向の中央よりも前記インコア第1端寄りに配置されている。前記突部は、前記インコア第1端に配置されている。前記突部は、環状である。前記突部は、周方向の全周にわたって延びている。前記突部の外径(最大外径)は、継手本体101の内径(最小内径)よりも大きい。本実施形態では、前記突部の外径は、塩基突部の軸方向の全長にわたって、継手本体の内径(最小内径)よりも大きい。
【0039】
インコア105は、例えば、キャップ102に取付けられる継手用キャップに保持されていてもよい。この場合、施工現場では、前記継手用キャップがキャップ102から取り外された後、インコア105が前記継手用キャップから取り外される。
継手本体101から取り出されたインコア105は、パイプPの端部に挿入される。このとき、パイプPの端面にインコア50の前記突部が突き合わされた状態で、パイプP内にインコア105が配置される。またこのときインコア105は、パイプPの径方向の内側への変形を抑制する。よって、パイプPを管継手100に差し込み終えたとき、抜け止めリング104a,104bは、しっかりパイプPに食い込む。インコア105は、パイプPを形成する材料よりも剛性の高い、例えば金属材料又は樹脂材料等により形成されている。
前記合成樹脂材料としては、例えば、架橋ポリエチレン、ポリブデン、塩化ビニル(PVC)、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ガラス繊維強化PPS、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。また、切削加工や融着等の他の加工方法を用いてもよい。
前記金属材料としては、ステンレス鋼、低合金鋼、炭素鋼、低温用炭素鋼、低温用合金鋼、真鍮、砲金、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。
【0040】
パイプPは、例えば樹脂材料の押出成形等により形成されている。
前記合成樹脂材料としては、例えば、架橋ポリエチレン、ポリブデン、塩化ビニル(PVC)、ポリサルフォン樹脂(PSU)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニルスルホン樹脂(PPSU)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ガラス繊維強化PPS、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等、用途に応じた品質設計に基づき、任意に選択することができる。パイプPは、架橋ポリエチレン製又はポリブデン製が好ましい。
【0041】
なお、インコア105を継手本体101に収容しておくことで、省スペース化やインコア105の紛失を防止することができる。そのため、例えば管継手100の梱包時などには、インコア105を継手本体101に収容しておくことが好ましい。
管継手100は、軸方向の中央部を基準として、軸方向の両側に対称な形状をなしている。管継手100には、軸方向の両側それぞれからパイプが差し込まれる。管継手100は、2つのパイプPを接続する。
【0042】
次に、管継手100を用いたパイプPの接続方法について説明する。この接続方法は、2つのパイプPを、管継手100を用いて接続する方法である。この接続方法では、2つのパイプPのそれぞれを、管継手100において互いに異なる端部に差し込み、管継手100とパイプPとを接続する。
【0043】
パイプPの外径は、インコア105の突部の外径と同等、又はインコア105の凸部の外径以下である。
また、
図1、
図4に図示するように、抜け止めリング104a,104bの内径Xと管継手100に挿入されるパイプPの外径Yの比の値X/Yは、1.02≦X/Y≦1.10が好ましい。X/Yがこの範囲内であると、引張強度及び軸引張疲労強度がより良好になる。
【0044】
管継手100とパイプPとの接続に際し、まず、前述のようにインコア105を継手本体101から抜き出す。その後、パイプP内にインコア105を挿入し、パイプPの端面にインコア105の突部を突き合てる(第1工程)。このとき、パイプPの端面(小口)に、インコア105の突部が突き当たり、インコア105のパイプP内への更なる進入が規制される。その結果、インコア105の突部は、パイプPから外部に露出している。言い換えると、パイプP内にインコア105が挿入された状態では、インコア105の突部、パイプPの端面が、軸方向に沿ってパイプPの外側からこの順に並んでいる。
【0045】
その後、インコア105が挿入されたパイプPを、インコア105の突部をパイプPに対して先行させた状態で継手本体101内に挿入する(第2工程)。このとき、インコア105の突部が、抜け止めリング104b、スペーサー104c、抜け止めリング104aを軸方向に順に乗り越える。そして、
図3に示すように、抜け止めリング104a、スペーサー104c及び抜け止めリング104bが固定部104の奥に突き当たった状態となる。
【0046】
上記のようにして接続された管継手100及びパイプPでは、パッキン103aがパイプPの外周面に密に接触(圧接)している。このような状態で、継手本体101内にパイプPが配置されている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る管継手100によれば、止水部103は継手本体101奥の係止め段差に当接するパッキン103a、ベース103bで構成され、パイプPが挿入された際に発生する圧縮力と管内部に内圧がかかった際にパイプPが膨らむことで発生する圧縮力(自己止水)で面圧を得て、パイプPの外面で止水される(外面止水)。
なお、インコア105をパイプP内に挿入する場合、インコア105によりパイプPの変形が抑制される。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
例えば、本実施形態ではインコア105が継手本体101と別体となっているが、必ずしも別体でなければならないわけではなく、部品点数削減の観点から、インコア105を継手本体101と一体としてもよい。
管継手100は、本実施形態に示す直線状のアダプタ型に限らず、エルボやチーズなどであってもよい。各継手本体端部の構造は同じである必要はなく、接続すべき管に応じた他の継手構造を備えていてもよい。
【0050】
例えば、本実施形態では外面止水としたが、内面止水とすることも可能である。
また、スペーサー104cは、抜け止めリング104a及び/又は抜け止めリング104bと一体であってもよい。この場合、係止環部とスペーサーとの境界の厚みを抜け止めリング104a(104b)の平面部の厚みと見做す。また、スペーサー104cは、その外周側にある部材、例えば継手本体101と一体であってもよい。
【0051】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、本実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【実施例0052】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
【0053】
管継手の固定部のスペーサーの厚みA及び2枚の抜け止めリングのそれぞれ厚みBについて、A/Bが表1に示す値となるように設定して、JIS K 6788:2016 「水道用架橋ポリエチレン管継手」に準拠して引張強度を計測し、管破壊水圧相当の軸力を付加して繰返し疲労試験を実施して軸引張疲労強度を計測し、万能試験機にてパイプ挿入時の最大挿入力(挿入力)を計測し、及び固定部長さの追加分を計測し、総合評価を行った。なお、パイプは、架橋ポリエチレン製で、その内径は13mmとした。
【0054】
<引張強度>
A:3.6kN以上
B:3.3kN以上3.6kN未満
C:3.3kN以下
【0055】
<軸引張疲労強度>
A:300万回以上
B:100万回以上300万回未満
C:100万回以下
【0056】
<挿入力>
A:180N未満
B:180N以上200N未満
C:200N以上
【0057】
<固定部長さの追加分>
A:3mm未満
B:3mm以上5mm未満
C:5mm以上
【0058】
<総合評価>
【0059】
【0060】
A/Bが5.0以上22.5以下の例は、引張強度及び軸引張強度が優れ、かつ、管継手のコンパクト性を損なわない。
抜け止めリングの厚みを0.2mm、0.4mmに変更しても、上記総合評価と同様、A/Bが5.0以上22.5以下のときは、引張強度及び軸引張強度が優れ、かつ、管継手のコンパクト性を損なわなかった。
スペーサーの断面形状が軸方向に長い長方形状であるため、奥側の抜け止め歯に抜け方向の荷重がかかり、ひいてはスペーサーにねじれ方向に荷重がかかるが、手前側の抜け止め歯には、抜け方向への荷重が伝わりがたい。よって、引張強度は優れていると考察される。