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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003070
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】真空ポンプおよび固定構造
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20221228BHJP
   F04C 28/28 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
F04D19/04 H
F04C28/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104012
(22)【出願日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149009
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 稔久
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 雅嗣
【テーマコード(参考)】
3H129
3H131
【Fターム(参考)】
3H129AA16
3H129AB06
3H129BB47
3H129CC09
3H131AA02
3H131BA09
3H131CA39
(57)【要約】
【課題】ロータが破壊した場合に排気対象装置側に伝わる急停止トルクを十分に低減することが可能な真空ポンプを提供する。
【解決手段】真空ポンプの固定フランジでは、薄肉部は、フランジ本体に形成されている。ボルト孔は、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。ブッシュは、ボルトが通され、ボルト孔に配置される。スリット孔は、第1端部と、第2端部を有する。第1端部は、ボルト孔と繋がる。第2端部は、第1端部より第2方向側に配置されている。スリット孔は、第1端部から第2端部に向かって幅が狭くなる。ブッシュは、第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有する。第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたロータと、
前記ハウジングから突出したフランジ本体と、前記フランジ本体に形成された薄肉部と、前記薄肉部に形成されたボルト孔と、前記ボルト孔から前記ロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、前記薄肉部に形成されたスリット孔と、を含む固定フランジと、
前記ボルト孔に通されるボルトと、
前記ボルトが通され、前記ボルト孔に配置されるブッシュと、を備え、
前記スリット孔は、前記ボルト孔と繋がる第1端部と、前記第1端部より前記第2方向側に配置された第2端部と、を有し、
前記スリット孔は、前記第1端部から前記第2端部に向かって幅が狭くなり、
前記ブッシュは、前記第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、前記第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有し、
前記第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、前記第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている、
真空ポンプ。
【請求項2】
前記第1端部における前記スリット孔の幅は、前記ブッシュの外径以下である、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記第1端部における前記スリット孔の幅は、前記ボルト孔の直径と一致する、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記第2端部の縁は、円弧状に形成されており、
前記第2端部の直径は、前記ボルトの外径以上であり、前記ブッシュの外径以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記第1端部における前記スリット孔の幅は、前記ボルトの外径以下である、
請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記ボルトは、前記ブッシュに通される軸部と、前記軸部に接続されたヘッド部と、を有し、
前記ブッシュの端から外側に広がるように形成され、前記ヘッド部と前記固定フランジの間に配置される座金フランジを更に備え、
前記ブッシュおよび前記座金フランジに亘ってスリットが形成されており、
前記スリットは、
前記ブッシュの軸方向に沿って前記第1ブッシュ部に形成された第1スリット部と、
前記第1スリット部と繋がり、繋がった部分から前記回転方向側に向かって前記座金フランジに形成された第2スリット部と、を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記第2ブッシュ部の肉厚が、前記第2端部側に位置する部分から周方向に沿って徐々に厚くなるように、前記第2ブッシュ部の外側面が湾曲して形成されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記第2ブッシュ部の外側面は、前記第2端部側に位置する部分から前記ブッシュの周方向の両方に向かって平面状に形成された外側面部分を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記ブッシュの軸方向に対して垂直な平面視において、前記ブッシュの外側面は、同一円周上に配置されており、
前記平面視において、前記ブッシュの内側面は、同一円周上に配置されており、
前記第2ブッシュ部には、前記軸方向に沿って溝部が形成されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
前記ブッシュの軸方向に対して垂直な平面視において、前記ブッシュの外側面は、同一円周上に配置されており、
前記平面視において、前記ブッシュの内側面は、楕円または長孔の外周上に配置されており、
前記内側面が周上に配置されている前記楕円または前記長孔は、前記ブッシュの外形の内側において中央から前記スリット孔よりに形成されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
ロータを備えた真空ポンプを排気対象装置に締結する固定構造であって、
フランジ本体と、前記フランジ本体に形成された薄肉部と、前記薄肉部に形成されたボルト孔と、前記ボルト孔から前記ロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、前記薄肉部に形成されたスリット孔と、を含む固定フランジと、
前記ボルト孔に通されるボルトと、
前記ボルトが通され、前記ボルト孔に配置されるブッシュと、を備え、
前記スリット孔は、前記ボルト孔と繋がる第1端部と、前記第1端部より前記第2方向側に配置された第2端部と、を有し、
前記スリット孔は、前記第1端部から前記第2端部に向かって幅が狭くなり、
前記ブッシュは、前記第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、前記第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有し、
前記第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、前記第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている、
固定構造。
【請求項12】
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されたロータと、
前記ハウジングから突出したフランジ本体と、前記フランジ本体に形成された薄肉部と、前記薄肉部に形成されたボルト孔と、前記ボルト孔から前記ロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、前記薄肉部に形成されたスリット孔と、を含む固定フランジと、
前記ボルト孔に通されるボルトと、を備え、
前記スリット孔は、前記ボルト孔と繋がる第1端部と、前記第1端部より前記第2方向側に配置された第2端部と、を有し、
前記スリット孔は、前記第1端部から前記第2端部に向かって幅が狭くなり、
前記第1端部における前記スリット孔の幅は、前記ボルト孔の直径と一致する、
真空ポンプ。
【請求項13】
前記第2端部の縁は、円弧状に形成されており、
前記第2端部の直径は、前記ボルトの外径以上である、
請求項12に記載の真空ポンプ。
【請求項14】
前記ボルトが通され、前記ボルト孔に配置されるブッシュを更に備えた、
請求項12または13に記載の真空ポンプ。
【請求項15】
前記ブッシュは、前記第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、前記第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有し、
前記第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、前記第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている、
請求項14に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプおよび固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等の分野において、高真空雰囲気にするために真空ポンプの一種であるターボ分子ポンプが用いられている。ターボ分子ポンプでは、ロータがケーシング内で高速回転するため、ロータが破壊した際のエネルギーが、ターボ分子ポンプを接続する装置側に伝わりにくいようにすることを目的として、フランジ部の変形によって吸収する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示すターボ分子ポンプには、排気対象装置にボルトで締結するためのボルト孔が吸気口フランジの薄肉部に設けられている。フランジ部には、ボルト孔に繋がりボルト孔よりも幅の狭いスリット状の長孔が形成されている。ロータ破壊によって吸気口フランジが回転した場合、ボルトがスリット孔を移動しながら吸気口フランジの薄肉部を変形させることで、ロータ破壊時のエネルギーを消費させて、排気対象装置側に伝わる急停止トルクを低減させる。
【0004】
また、ロータ破壊時における排気対象装置側に伝わる急停止トルクを低減させる別の構造として、特殊座金をターボ分子ポンプの吸気口フランジのボルト孔に取り付けた構造が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
特許文献2に示すターボ分子ポンプでは、特殊座金をターボ分子ポンプの吸気口フランジの固定ボルト孔に取り付けることによって吸気口フランジのボルト孔とボルトとの間に隙間が生じる。ロータ破壊によって吸気口フランジが回転した場合、ボルトの軸部が隙間分だけ変形することが可能となり、ロータ破壊時のエネルギーがボルトの歪みエネルギーで消費され、排気対象装置側に伝わる急停止トルクを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-180147号公報
【特許文献2】特開2011―149437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示す構造では、ボルトがスリット孔の入口付近で停止し、十分にスリット孔を移動しない場合があった。この場合、ロータが破壊した際に、吸気口フランジの薄肉部を変形させることによるエネルギー消費が少なくなり、排気対象装置側に伝わる急停止トルクを十分に低減させることができなかった。
【0008】
また、特許文献1に示す構造に対して、特許文献2に示す特殊座金を用いることも考えられるが、この場合も、ボルトおよび特殊座金がスリット孔の入口付近で停止し、十分にスリット孔を移動しない場合があった。すなわち、ロータ破壊時から排気対象装置にロータ破壊時のエネルギーが伝わる時間が短くなり、排気対象装置に伝わる急停止トルクを低減することができなかった。
【0009】
本発明は、ロータが破壊した場合に排気対象装置側に伝わる急停止トルクを十分に低減することが可能な真空ポンプおよび固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る真空ポンプは、ハウジングと、ロータと、固定フランジと、ボルトと、ブッシュと、を備える。ロータは、ハウジング内に配置されている。固定フランジは、フランジ本体と、薄肉部と、ボルト孔と、スリット孔と、を含む。フランジ本体は、ハウジングから突出している。薄肉部は、フランジ本体に形成されている。ボルト孔は、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。ボルトは、ボルト孔に通される。ブッシュは、ボルトが通され、ボルト孔に配置される。スリット孔は、第1端部と、第2端部を有する。第1端部は、ボルト孔と繋がる。第2端部は、第1端部より第2方向側に配置されている。スリット孔は、第1端部から第2端部に向かって幅が狭くなる。ブッシュは、第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有する。第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。
【0011】
本発明の他の一態様に係る固定構造は、固定フランジと、ボルトと、ブッシュと、を備える。固定フランジは、フランジ本体と、薄肉部と、ボルト孔と、スリット孔と、を含む。薄肉部は、フランジ本体に形成されている。ボルト孔は、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。ボルトは、ボルト孔に通される。ブッシュは、ボルトが通され、ボルト孔に配置される。スリット孔は、第1端部と、第2端部を有する。第1端部は、ボルト孔と繋がる。第2端部は、第1端部より第2方向側に配置されている。スリット孔は、第1端部から第2端部に向かって幅が狭くなる。ブッシュは、第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有する。第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。
【0012】
本発明の他の一態様に係る真空ポンプは、ハウジングと、ロータと、固定フランジと、ボルトと、を備える。ロータは、ハウジング内に配置されている。固定フランジは、フランジ本体と、薄肉部と、ボルト孔と、スリット孔と、を含む。フランジ本体は、ハウジングから突出している。薄肉部は、フランジ本体に形成されている。ボルト孔は、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。ボルトは、ボルト孔に通される。スリット孔は、ボルト孔と繋がる第1端部と、第1端部より第2方向側に配置された第2端部と、を有する。スリット孔は、第1端部から第2端部に向かって幅が狭くなる。第1端部におけるスリット孔の幅は、ボルト孔の直径と一致する。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明の態様によれば、ロータが破壊した場合に排気対象装置側に伝わる急停止トルクを十分に低減することが可能な真空ポンプおよび固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係る真空ポンプの断面図である。
図2】実施形態1に係る真空ポンプの排気対象装置への固定状態を示す図である。
図3】実施形態1に係る真空ポンプのケーシングの上面図である。
図4】実施形態1に係る真空ポンプの固定部の拡大図である。
図5図4のV1-V1間の断面図である。
図6図4から座金およびボルトをとり除いた状態を示す図である。
図7】実施形態1に係る真空ポンプの座金の斜視図である。
図8】(a)実施形態1に係る真空ポンプの座金の平面図である。(b)図8(a)のV2-V2間の断面図である。
図9】ロータの破壊時のボルトと座金の移動を示す上面図である。
図10】実施形態2に係る真空ポンプの固定部の拡大図である。
図11図10のV6-V6間の断面図である。
図12図10からボルトを取り除いた状態を示す図である。
図13】(a)実施形態1の変形例に係る座金の平面図である。(b)図13(a)のV3-V3間の断面図である。
図14】(a)実施形態1の変形例に係る座金の平面図である。(b)図14(a)のV4-V4間の断面図である。
図15】実施形態1の変形例に係る座金の平面図である。
図16】(a)実施形態1の変形例に係る座金の平面図である。(b)図16(a)のV5-V5間の断面図である。
図17】実施形態1の変形例に係るスリット孔の形状を示す平面図である。
図18】実施形態2の変形例に係る固定部を示す平面図である。
図19】実施形態1、2の変形例に係るスリット孔の形状を示す平面図である。
図20】実施形態2の変形例に係る固定部を示す平面図である。
図21】(a)実施形態2の変形例に用いられる座金を示す平面図である、(b)図21(a)のV7-V7間の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して一実施形態に係る真空ポンプについて説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る真空ポンプ1の断面図である。図2は、真空ポンプ1の取り付け状態を示す図である。図2に示すように、真空ポンプ1は、排気対象装置100にボルト20で締結されて固定される。排気対象装置100は、例えば半導体製造装置である。ただし、排気対象装置100は、半導体製造装置以外の装置であってもよい。
【0017】
真空ポンプ1は、図1に示すように、筐体2(ハウジングの一例)と、ロータ3と、モータ4と、複数のステータ翼ユニット5と、ステータ円筒部6と、座金7と、を有する。筐体2は、ロータ3と、モータ4と、複数のステータ翼ユニット5と、ステータ円筒部6とを収容する。
【0018】
(筐体2)
筐体2は、ケーシング8と、ベース9と、固定フランジ10と、を有する。筐体2は、アルミニウム合金または鉄等の金属によって形成されている。ケーシング8は、一端に固定フランジ10を有する筒状の部材である。
【0019】
ケーシング8は、複数のステータ翼ユニット5と、ロータ3に設けられた複数段のロータ翼ユニット22と、を収容する。ケーシング8は、第1端部11と、第2端部12と、側面部13と、を有する。
【0020】
第1端部11は、排気対象装置100に取り付けられる。第1端部11には、吸気口14が設けられている。第2端部12は、ロータ3の軸線方向A1において、固定フランジ10と反対側に位置している。第2端部12は、ベース9に接続される。側面部13は、第1端部11と第2端部12を繋ぐ。ケーシング8の内側には、第1内部空間S1が形成される。
【0021】
ベース9は、ケーシング8の第2端部12側の開口を塞ぐように配置されている。ベース9に、ステータ円筒部6と、ロータ3に設けられているロータ円筒部23と、を収納する。ベース9は、ベース端部15と、排気口16と、を有する。ベース端部15は、ケーシング8の第2端部12に接続される。ベース9の内側には、第2内部空間S2が形成される。第2内部空間S2は、第1内部空間S1と連通している。排気口16は、第2内部空間S2と連通している。
【0022】
固定フランジ10は、ケーシング8に接続されている。固定フランジ10は、ケーシング8から突出している。図2に示すように、固定フランジ10は、ボルト20によって排気対象装置100に固定される。なお、「接続」とは、互いに別体の部材が接合されることを含むものとする。また、「接続」とは、一体の部材において別々の部分が連なっていることを含むものとする。
【0023】
(ロータ3)
ロータ3は、シャフト21と、複数段のロータ翼ユニット22と、ロータ円筒部23と、を有する。
【0024】
シャフト21は、ロータ3の軸線方向A1に延びている。以下の説明では、軸線方向A1において、ケーシング8からベース9に向かう方向が下方と定義され、その反対方向が上方と定義される。
【0025】
真空ポンプ1は、複数の軸受24A-24Dと、を含む。複数の軸受24A-24Dは、ロータ3を回転可能に支持する。複数の軸受24A-24Dは、ベース9に取り付けられている。複数の軸受24A-24Dは、例えば磁気軸受を含む。ただし、複数の軸受24A-24Dは、ボールベアリングなどの他の種類の軸受を含んでもよい。
【0026】
複数段のロータ翼ユニット22は、それぞれシャフト21に接続されている。複数段のロータ翼ユニット22は、軸線方向A1に互いに間隔をおいて配置されている。各々のロータ翼ユニット22は、複数のロータ翼25を含む、図示を省略するが、複数のロータ翼25の各々は、シャフト21を中心にして放射状に延びている。なお、図面においては、複数段のロータ翼ユニット22の1つ、および複数のロータ翼25の1つのみに符号が付されており、他のロータ翼ユニット22および他のロータ翼25の符号は省略されている。
【0027】
ロータ円筒部23は、シャフト21に接続されている。ロータ円筒部23は、ロータ翼ユニット22の下方に配置されている。ロータ円筒部23は、円筒状であり、軸線方向A1に延びている。ロータ円筒部23は、シャフト21の外周側においてシャフト21を囲むように配置されている。
【0028】
(モータ4)
モータ4は、ロータ3を回転駆動する。モータ4としては、例えばDCブラシレスモータが用いられる。モータ4は、モータロータ26と、モータステータ27と、を有する。モータロータ26は、シャフト21に取り付けられている。モータステータ27は、ベース9に取り付けられている。モータステータ27は、モータロータ26と向かい合って配置されている。
【0029】
(複数段のステータ翼ユニット5)
複数段のステータ翼ユニット5は、ケーシング8の内面に接続されている。複数段のステータ翼ユニット5は、軸線方向A1において、互いに間隔を空けて配置されている。複数段のステータ翼ユニット5の各々は、複数段のロータ翼ユニット22の間に配置されている。各々のステータ翼ユニット5は、複数のステータ翼28を含む。図示を省略するが、複数のステータ翼28は、それぞれシャフト21を中心として放射状に延びている。
【0030】
複数段のロータ翼ユニット22と複数段のステータ翼ユニット5とは、ターボ分子ポンプを構成する。なお、図面においては、複数のステータ翼ユニット5の1つ、および複数のステータ翼28の1つのみに符号が付されており、他のステータ翼ユニット5および他のステータ翼28の符号は省略されている。
【0031】
(ステータ円筒部6)
ステータ円筒部6は、ロータ円筒部23の径方向外側に配置されている。ステータ円筒部6は、ベース9に接続されている。ステータ円筒部6は、ロータ円筒部23の径方向において、ロータ円筒部23と向かい合って配置されている。ステータ円筒部6の内周面には、らせん状溝が設けられている。ロータ円筒部23とステータ円筒部6は、ネジ溝ポンプを構成する。なお、図1には、径方向Bのうち外側方向がB1で示され、径方向Bのうち内側方向がB2で示されている。
【0032】
真空ポンプ1では、モータ4によってロータ3が回転することで、吸気口14から排気対象装置100内のガス分子が流入する。ガス分子は、筐体2の第1内部空間S1とベース9の第2内部空間S2とを通って、排気口16から排気される。それにより吸気口14に取り付けられた排気対象装置100の内部が、高真空状態となる。
【0033】
(固定フランジ10、座金7、ボルト20)
次に、固定フランジ10、座金7およびボルト20の構成について説明するとともに、固定フランジ10を排気対象装置100に固定するための固定構造についても同時に述べる。
【0034】
固定フランジ10、座金7およびボルト20は、ステンレスや鉄などによって形成することができる。図3は、ケーシング8の上面図である。図3に示すように、固定フランジ10は、フランジ本体31と、複数の固定部32と、を有する。なお、図3において、ロータ3の回転方向C1(第1方向の一例)が図示され、回転方向C1とは反対方向の反回転方向C2(第2方向の一例)が図示されている。
【0035】
図面においては、複数の固定部32の1つのみに符号が付されており、他の固定部32の符号は省略されている。
【0036】
フランジ本体31は、ケーシング8に接続されている。フランジ本体31は、ケーシング8から径方向外方へ突出している。フランジ本体31は、円形の外形を有している。複数の固定部32は、固定フランジ10の周方向に互いに間隔をおいて配置されている。複数の固定部32は、それぞれボルト20によって排気対象装置100に固定される。
【0037】
図4は、固定部32の拡大図である。図5は、図4におけるV1-V1断面図である。図6は、図4からボルト20と座金7を取り除いた状態を示す図である。
【0038】
図5に示すように、固定部32は、フランジ本体31に形成されている薄肉部33と、ボルト孔34と、スリット孔35と、を含む。フランジ本体31は、排気対象装置100に取り付けられた際に、排気対象装置100側に配置される表面31aと、軸線方向A1において表面31aとは反対側の表面31bと、を有する。薄肉部33は、フランジ本体31よりも小さい厚さを有する。ここで厚さは、薄肉部33とフランジ本体31との軸線方向A1における寸法である。薄肉部33は、フランジ本体31よりも薄い板状の形状を有している。薄肉部33は、ロータ3の回転方向C1に延びている。
【0039】
薄肉部33は、図5に示すように、表面31aから凹んだ凹部36によって形成される。薄肉部33は、フランジ本体31のうち凹部36の底面36aから軸線方向A1における厚み部分である。凹部36もロータ3の回転方向C1に延びている。
【0040】
図5及び図6に示すように、ボルト孔34とスリット孔35とは、薄肉部33に設けられている。ボルト孔34とスリット孔35とは、軸線方向A1に薄肉部33を貫通している。スリット孔35は、ボルト孔34からロータ3の回転方向C1と反対の方向である反回転方向C2に延びている。スリット孔35は、図6に示すように、ボルト孔34と繋がる第1端部35aと、反回転方向C2側の第2端部35bと、を有する。スリット孔35の幅Wは、第1端部35aから第2端部35bに向かって狭くなっている。スリット孔35は、反回転方向C2に向かうに従って間隔が狭くなる2本の直線状の縁部35eを有している。第1端部35aは、スリット孔35のボルト孔34と連通する部分であり、2本の縁部35eの回転方向C1側の端を含む部分である。
【0041】
ボルト孔34の縁は、半周を超えて形成されており、その反回転方向C2側の端から2本の縁部35eが反回転方向C2に向かって延びている。第2端部35bの縁は、2本の縁部35eの反回転方向C2側の端と、2つの端を繋ぐ湾曲部を含む。湾曲部は、反回転方向C2側に凸な半円周の円弧に形成されている。
【0042】
なお、スリット孔35の幅は、スリット孔35が延びる方向に対して垂直な方向におけるスリット孔35の寸法である。言い換えれば、スリット孔35の幅は、固定フランジ10の径方向におけるスリット孔35の寸法である。
【0043】
ここで、スリット孔35の第1端部35aにおける幅をW1とし、第2端部35bにおける最大の幅をW2とすると、スリット孔35の幅は、第1端部35aから第2端部35bに向かって徐々に小さくなっているため、W2はW1よりも小さくなっている。また、本実施形態では、ボルト孔34の直径をD1とすると、W1はD1よりも小さく形成されている。第2端部35bにおけるスリット孔35の幅W2は、第2端部35bの湾曲部を形成する円弧の直径である。
【0044】
図5に示すように、ボルト20は、軸部41と、ヘッド部42と、を有する。軸部41は、ボルト孔34に通される。軸部41には、ネジ溝が設けられている。軸部41は、フランジ本体31から上方へ突出している。軸部41は、排気対象装置100に固定される。ヘッド部42は、軸部41に接続されている。ヘッド部42は、軸部41よりも大きな外形を有する。ヘッド部42は、フランジ本体31の下方に配置される。図4に示すように、ボルト20の軸部41の径をD2とすると、本実施形態では例えばW2はD2以上の大きさに形成されている。
【0045】
座金7は、図5に示すように、ボルト孔34に挿入されている。例えば、座金7は、圧入によってボルト孔34に固定されてもよい。図7は、座金7の斜視図である。座金7は、貫通孔43を含む。貫通孔43は、軸線方向A1に沿って座金7を貫通するように形成されている。貫通孔43には、ボルト20の軸部41が通される。
【0046】
図7に示すように、座金7にはスリット44が形成されている。スリット44は、貫通孔43に連通している。
【0047】
座金7は、ブッシュ45と、座金フランジ46と、を有する。ブッシュ45は、筒状である。ブッシュ45は、ボルト孔34に通される。ブッシュ45には、ボルト20の軸部41が通される。座金フランジ46は、ブッシュ45の表面31aとは反対側の端からブッシュ45の径方向外側に向かって突出する。座金フランジ46は、ブッシュ45よりも大径である。図5に示すように、座金フランジ46は、薄肉部33の下方に配置される。座金フランジ46は、ヘッド部42の上方に配置される。
【0048】
スリット44は、ブッシュ45と座金フランジ46を通って延びている。スリット44は、座金7のスリット孔35とは反対側の部分において、回転方向C1に向かって延びている。スリット44は、ブッシュ45に形成された第1スリット部47と、座金フランジ46に形成された第2スリット部48と、を有する。第1スリット部47は、軸線方向A1に沿ってブッシュ45の下端から上端まで全体に亘って形成されている。第2スリット部48は、第1スリット部47の下端と繋がっている。第2スリット部48は、回転方向C1に向かって貫通孔43から外周端まで座金フランジ46の全体に亘って形成されている。
【0049】
図8(a)は、座金7の平面図である。図8(b)は、図8(a)のV2-V2間の断面図である。ブッシュ45の外側面45aおよび内側面45bは、軸線方向A1に沿って設けられている。
【0050】
図に示すように、ブッシュ45は、ロータ3の回転方向である回転方向C1側の第1ブッシュ部51と、反回転方向C2側の第2ブッシュ部52と、を有する。ブッシュ45の内側面45bは、軸線方向A1に対して垂直な平面視において、同一円周上に配置されている。この平面視における内側面45bの中心を45oとする。中心45oを通り径方向Bに沿った直線をL0とすると、直線L0を基準としてブッシュ45の回転方向C1側の部分が第1ブッシュ部51であり、反回転方向C2側の部分が第2ブッシュ部52である。
【0051】
また、第2ブッシュ部52は、ブッシュ45のスリット孔35側の部分ともいえ、第1ブッシュ部51は、ブッシュ45のスリット孔35とは反対側の部分ともいえる。
【0052】
軸線方向A1に対して垂直な平面視において、ブッシュ45の外側面45aのうち第1ブッシュ部51の外側面51aは、中心45oを中心とする同一円周上に配置されている。ブッシュ45の外側面45aのうち第2ブッシュ部52の外側面52aは、最も第2端部35b側の位置する部分52p(図8(a)参照)から周方向に沿って肉厚が徐々に厚くなるように湾曲している。第2ブッシュ部52は、部分52pから径外側方向B1に向かう方向においてブッシュ45の周方向に沿って徐々に肉厚が厚くなっている。また、第2ブッシュ部52では、部分52pから径内側方向B2に向かう方向においてブッシュ45の周方向に沿って徐々に肉厚が厚くなっている。第2ブッシュ部52は、径外側方向B1側の端と径内側方向B2側の端で第1ブッシュ部51に繋がっている。
【0053】
第1ブッシュ部51は、外側面51aと内側面51bの双方とも、中心45oを中心とする円周上に位置しているため、第1ブッシュ部51の肉厚は一定となっている。
【0054】
図8(a)の第2ブッシュ部52の外側には、第1ブッシュ部51の外側面51aと同一円周上の位置が二点鎖線F1で示されている。本実施形態の第2ブッシュ部52は、全体的に第1ブッシュ部51よりも肉厚が薄くなっており、部分52pにおいて、最も厚みが薄くなっている。なお、本明細書では、第1ブッシュ部51の肉厚は、ゼロを含まないものとする。すなわち、第1ブッシュ部51の肉厚は、スリット44の部分を含まない。
【0055】
本実施形態の座金7のブッシュ45は、平面視において内側面および外側面のそれぞれが同心円上に配置された筒状部の側壁の一部を外側から切除した形状ともいえる。
【0056】
ここで、図8(a)に示すように、ボルト孔34に圧力される前の状態におけるブッシュ45の径方向Bに沿った外径(最大径)をD3とすると、D3は、D1よりも大きくなるように形成されている。また、ボルト孔34に圧力される前の状態におけるブッシュ45の内径をD4とすると、D4はD2よりも大きくなるように形成されている。
【0057】
本実施形態におけるボルト孔34とスリット孔35とボルト20とブッシュ45の寸法関係について、まとめると、W1>W2、D1>W1、D3>D1、D4>D2、およびW2≧D2が成立している。また、ロータ3の破壊時に座金7のブッシュ45が変形しながらスリット孔35内を移動するために、D3>W2に設定されている。
【0058】
以上、複数の固定部32のうちの1つについて説明した。他の固定部32も同様の構造を有しており、詳細な説明を省略する。
【0059】
以上説明した本実施形態に係る真空ポンプ1では、高速回転中のロータ3が破壊すると、遠心力によってロータ3が周囲に飛散する。その飛散したロータ3により、ケーシング8には、ロータ3の回転方向C1へのトルクが作用する。その場合、図9に示すように、ボルト20と座金7は、スリット孔35に食い込んでスリット孔35に沿って移動する。その際、座金7のブッシュ45のスリット孔35側に位置する第2ブッシュ部52の肉厚が薄いため、ブッシュ45が変形しやすくなり、スリット孔35に食い込み易い。このため、ボルト20および座金7は、スリット孔35の第1端部35a付近で止まらず、少なくともスリット孔35の中央付近まで移動することができる。座金7およびスリット孔35が変形しながら、座金7およびボルト20がスリット孔35内を移動するが、スリット孔35内を長い距離移動することができるため、ロータ3の破壊のエネルギーが効率よく吸収される。また、ボルト20は座金7によって覆われているため、座金7によってボルト20が保護される。このため、ボルト20にスリット孔35が当たることで生じるせん断力によるネジ山部やネジ溝部における応力集中の発生を抑制につながり、ボルト20の折損を防ぐことができる。なお、座金7およびボルト20は、スリット孔35の中央から第2端部35bの間で停止する方が好ましい。
【0060】
(実施形態2)
次に、実施形態2の真空ポンプについて説明する。実施形態2の真空ポンプは、実施形態1の真空ポンプと比べて、スリット孔35の形状が異なっている。また、実施形態2の真空ポンプには、実施形態1で説明した座金7が設けられていない。実施形態2では、実施形態1との相違点を中心に説明し、実施形態1と同じ構成については同じ符号を用いて説明を省略する。
【0061】
図10は、本実施形態2における真空ポンプの固定部1032を示す拡大図である。図11は、図10のV6-V6間の断面図である。図12は、図10からボルト20を除いた状態を示す図である。
【0062】
固定部1032は、薄肉部33と、ボルト孔34と、スリット孔1035と、を含む。スリット孔1035は、図12に示すように、ボルト孔34と繋がる第1端部1035aと、反回転方向C2側の第2端部1035bと、を有する。スリット孔1035の幅Wは、第1端部1035aから第2端部1035bに向かって狭くなっている。スリット孔1035は、反回転方向C2に向かうに従って間隔が狭くなる2本の直線状の縁部35eを有している。第1端部1035aは、スリット孔1035のボルト孔34と連通する部分であり、2本の縁部35eの回転方向C1側の端を含む部分である。
【0063】
ボルト孔34の縁は、回転方向C1側に凸に半周分形成されており、その反回転方向C2側の端から2本の縁部35eが反回転方向C2に向かって延びている。第2端部1035bは、2本の縁部35eの反回転方向C2側の端と、2つの端を繋ぐ湾曲部を含む。湾曲部は、反回転方向C2側に凸な半円周状に形成されている。
【0064】
実施形態2では、ボルト孔34の直径D1と第1端部1035aにおけるスリット孔1035の幅W1が同じ(D1=W1)である。すなわち、ボルト孔34の直径部分が、スリット孔1035の第1端部1035aとなっている。
【0065】
また、図10に示すように、ボルト孔の直径D1は、ボルト20の外径D2よりも大きく形成されており、D1>D2が満たされている。更に、第2端部1035bにおけるスリット孔1035の最大幅W2は、ボルト20の直径D2よりも小さく形成されており、W2<D2が満たされている。
【0066】
本実施形態2の真空ポンプでは、高速回転中のロータ3が破壊すると、遠心力によってロータ3が周囲に飛散する。その飛散したロータ3により、ケーシング8には、ロータ3の回転方向C1へのトルクが作用する。その場合、ボルト20は、スリット孔1035に食い込んでスリット孔1035に沿って移動する。その際、D1=W1に設定されているため、ボルト20がスリット孔1035に入り込みやすい。このため、ボルト20は、スリット孔1035の第1端部35a付近で止まらず、少なくともスリット孔1035の中央付近まで移動することができる。スリット孔35を変形させながら、ボルト20はスリット孔35内を移動するが、スリット孔35内を長い距離移動することができるため、ロータ3の破壊のエネルギーを効率よく吸収することができる。
【0067】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
(A)
上記実施の形態1の座金7では、ブッシュ45の第2ブッシュ部52の外側面52aは、図8(a)の平面図に示すように湾曲して形成されているが、平面状の外側面部分を有してもよい。
【0069】
図13(a)は、変形例の座金107を示す平面図である。図13(b)は、図13(a)のV3-V3間の矢視断面図である。
【0070】
座金107は、上記実施の形態の座金7とは、第2ブッシュ部52の外側面の形状が異なる。座金7と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
座金107のブッシュ145は、軸線方向A1に沿って形成されている。ブッシュ145の内側面145bの中心が145oで示されている。また、ブッシュ145の外側面が145aで示されている。ブッシュ145は、回転方向C1側に配置された第1ブッシュ部51と、反回転方向C2側に配置された第2ブッシュ部152と、を有する。
【0072】
中心145oを通り径方向Bに沿った直線L0を基準としてブッシュ145の回転方向C1側の部分が第1ブッシュ部51であり、反回転方向C2側の部分が第2ブッシュ部152である。
【0073】
座金107の第2ブッシュ部152は、平面状に形成された外側面部分を有する。軸線方向A1に対して垂直な平面視において、外側面152aが、直線状に形成された外側面部分を有しているともいえる。
【0074】
第2ブッシュ部152の外側面152aの最も反回転方向C2側に位置する部分を152pとする。外側面152aは、平面状の外側面部分152c、152dと、湾曲した外側面部分152e、152fと、を有する。外側面部分152cは、部分152pから径外側方向B1側に向かうに従って回転方向C1側に位置するように、径外側方向B1に対して傾斜して設けられている。外側面部分152eは、外側面部分152cの径外側方向B1側の端と第1ブッシュ部51の外側面51aとの間に配置されている。外側面部分152dは、部分152pから径内側方向B2側に向かうに従って回転方向C1側に位置するように、径内側方向B2に対して傾斜して設けられている。外側面部分152fは、外側面部分152dの径内側方向B2側の端と第1ブッシュ部51の外側面51aとの間に配置されている。
【0075】
このように、第2ブッシュ部152に平面状の外側面部分152c、152dを設けることによって外側面部分152c、152dの径方向Bにおける中央付近において第2ブッシュ部152の肉厚が最も小さくなる。これにより、第2ブッシュ部152に、第1ブッシュ部51の最も薄い部分の肉厚よりも肉厚が薄い部分を形成することができる。
【0076】
なお、図13(a)および図13(b)では第2ブッシュ部152に平面状の外側面部分が2つ設けられているが、2つに限らなくてもよく、1つ若しくは3つ以上設けられていてもよい。第2ブッシュ部に平面状の外側面部分が1つ設けられている場合、その外側面部分は、径外側方向B1および軸線方向A1の夫々と平行に設けられていてもよい。
【0077】
(B)
上記実施の形態1の座金7では、平面視においてブッシュ45の内側面45bが同一円周上に配置され、ブッシュ45の外側面45aの形状を同一円周上から変形することによって、第2ブッシュ部52の少なくとも一部分の肉厚を第1ブッシュ部51の最小の肉厚よりも薄くしている。しかしながら、これに限らず、ブッシュの内側面が同一円周上から変形されていてもよい。
【0078】
図14(a)は、変形例の座金207の平面図である。図14(b)は、図14(a)のV4-V4間の矢視断面図である。
【0079】
座金207は、上記実施の形態の座金7とブッシュ45の外側面の形状が異なる。座金7と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
座金207のブッシュ245は、軸線方向A1に沿って形成されている。座金207のブッシュ245は、平面視において外側面245aが、同一円周上に位置する。この同一円の中心が245oで示されている。ブッシュ245に形成された貫通孔243は、軸線方向A1に対して垂直な平面視において楕円状である。
【0081】
ブッシュ245は、第1ブッシュ部251と、第2ブッシュ部252と、を有する。中心245oを通り径方向Bに沿った直線L0を基準としてブッシュ245の回転方向C1側の部分が第1ブッシュ部251であり、反回転方向C2側の部分が第2ブッシュ部252である。
【0082】
ブッシュ245の内側面245bは、同一楕円周上に位置する。内側面245bが周上に位置する楕円は、外側面245aの内側の中央から反回転方向C2側よりに位置している。詳しくは、内側面245bが周上に位置する楕円の長軸245xは、中心245oを通り回転方向C1に沿っている。楕円の短軸245yは、径方向Bに沿っている。楕円の長軸245xの中心位置245mは、中心245oよりも反回転方向C2側に位置している。また、楕円の短軸245yは、中心245oよりも反回転方向C2側に位置している。
【0083】
このように、外側面245aの内側の中央から、内側面245bが周上に位置する楕円形状を反回転方向C2よりに配置することによって、ブッシュ245の第2ブッシュ部252の少なくとも一部の肉厚を、第1ブッシュ部251の最も薄い部分の肉厚より薄く形成することができる。第1ブッシュ部251では、例えば最も回転方向C1側に位置する部分251pにおいて、肉厚が最も薄くなっている。第2ブッシュ部252では、最も反回転方向C2側に位置する部分252pの肉厚が最も薄くなっている。第2ブッシュ部252の部分252pにおける肉厚は、第1ブッシュ部251の部分251pにおける肉厚よりも薄く形成されている。
【0084】
(C)
上記図14(a)および図14(b)に示す座金207では、ブッシュ245の内側面245bが、楕円周上に配置されているが、長孔の周上に配置されていてもよい。図15は、変形例の座金307の平面図である。
【0085】
座金307のブッシュ345は、平面視において外側面345aが、同一円周上に位置する。この同一円の中心が345oで示されている。ブッシュ345は、第1ブッシュ部351と、第2ブッシュ部352と、を有する。中心345oを通り径方向Bに沿った直線L0を基準としてブッシュ345の回転方向C1側の部分が第1ブッシュ部351であり、反回転方向C2側の部分が第2ブッシュ部352である。
【0086】
ブッシュ345の内側面345bは、平面視において同一の長孔周上に位置する。内側面345bが周上に配置されている長孔形状は、外側面345aの内側において中央から反回転方向C2側よりに位置している。
【0087】
内側面345bは、外側面345aの内側において、ドリル等を回転方向C1または反回転方向C2に移動させることによって形成することができる。
【0088】
詳しくは、内側面345bが周上に位置する長孔形状は、平面視において直線上に位置する内側面部分345c、345dと、平面視において半円周上に位置する内側面部分345e、345fを有する。内側面部分345c、345dは、回転方向C1に沿って配置されている。内側面部分345cは、内側面部分345dよりも径外側方向B1側に位置している。内側面部分345cと内側面部分345dは、径方向Bにおいて中心345oから等距離で互いに平行に配置されている。内側面部分345eは、回転方向C1側に凸に湾曲し、内側面部分345cと内側面部分345dの回転方向C1側の端の間に配置されている。なお、内側面部分345eは、スリット44によって途切れている。内側面部分345fは、反回転方向C2側に凸に湾曲し、内側面部分345cと内側面部分345dの反回転方向C2側の端の間に配置されている。内側面部分345eと内側面部分345fの半径は同じである。内側面部分345c、345dの回転方向C1に沿った中央位置345p、345qは、中心345oよりも反回転方向C2側に位置している。
【0089】
このように、内側面345bが周上に位置する長孔形状を外側面345aの内側において中央よりも反回転方向C2よりに配置することによって、ブッシュ345の第2ブッシュ部352の少なくとも一部の肉厚を、第1ブッシュ部351の最も薄い部分より薄く形成することができる。
【0090】
第1ブッシュ部351では、例えば最も回転方向C1側に位置する部分351pにおいて、肉厚が最も薄くなっている。第2ブッシュ部352では、最も反回転方向C2側に位置する部分352pの肉厚が最も薄くなっている。第2ブッシュ部352の部分352pにおける肉厚は、第1ブッシュ部351の部分351pにおける肉厚よりも薄く形成されている。
【0091】
(D)
上記実施の形態1の座金7では、平面視においてブッシュ45の内側面45bが同一円周上に配置され、ブッシュ45の外側面45aの形状を同一円周上から変形することによって、第2ブッシュ部52の少なくとも一部の肉厚を第1ブッシュ部51の最小の肉厚よりも薄くしている。しかしながら、これに限らず、ブッシュの外側面も同一円周上に配置され、内側面に溝部を形成することによって、第2ブッシュ部の少なくとも一部の肉厚を、第1ブッシュ部の最も薄い部分の肉厚より薄く形成してもよい。
【0092】
図16(a)は、変形例の座金407の平面図である。図16(b)は、図16(a)のV5-V5間の矢視断面図である。
【0093】
座金407のブッシュ445は、軸線方向A1と垂直な平面視において外側面445aが同一円周上に配置されている。外側面445aの中心を445oとする。ブッシュ445の内側面445bも中心445oを中心とする同一円周上に配置されている。内側面445bには、溝部445cが形成されている。溝部445cは、内側面445bのうち最も反回転方向C2側に位置する部分に軸線方向A1に沿って形成されている。
【0094】
ブッシュ445は、第1ブッシュ部451と、第2ブッシュ部452と、を有する。中心445oを通り径方向Bに沿った直線L0を基準としてブッシュ445の回転方向C1側の部分が第1ブッシュ部451であり、反回転方向C2側の部分が第2ブッシュ部452である。
【0095】
溝部445cは、ブッシュ445の第2ブッシュ部452に形成されているため、ブッシュ445の第2ブッシュ部452の少なくとも一部の肉厚を、第1ブッシュ部451の最も薄い部分より薄く形成することができる。ブッシュ445では、第1ブッシュ部451の肉厚は全て同じ厚さに形成されている。図16(a)には、第2ブッシュ部452の最も薄い肉厚の部分が452pで示されている。第2ブッシュ部452の部分452pにおける肉厚は、第1ブッシュ部451における肉厚よりも薄い。
【0096】
なお、溝部は、内側面445bに限らず外側面445aに形成されてもよい。
【0097】
(F)
上記実施の形態1では、スリット孔35の第1端部35aの幅W1は、ボルト孔34の径D1よりも小さく形成されているが、実施の形態2のスリット孔1035と同様に、ボルト孔34の径D1と同じでもよい。図17は、変形例のスリット孔535を示す平面図である。図17に示すスリット孔535は、ボルト孔34の直径部分を第1端部535aとして、反回転方向C2側の第2端部535bに向かって幅が徐々に狭くなるように形成されている。このように、ボルト孔34の直径部分を第1端部535aとしているため、D1とW1が同じ長さとなっている。なお、図17に示すスリット孔535では、実施の形態1のスリット孔35と同様に、第2端部535bにおけるスリット孔535の最大幅W2は、ボルト20の軸部41の外径D2以上の大きさに形成されている。
【0098】
(G)
上記実施の形態1では、スリット孔35の第1端部35aにおける幅W1が、ボルト20の外径D2よりも大きく形成されているが、ボルト20の外径以下に形成されていてもよい。
【0099】
(H)
上記実施の形態1のスリット孔35では、第2端部35bにおけるスリット孔35の最大幅W2は、ボルト20の軸部41の外径D2以上の大きさに形成されているが、これに限らなくてもよい。
【0100】
図18は、スリット孔35の変形例であるスリット孔635を示す図である。
図18に示すスリット孔635のように、第2端部635bにおけるスリット孔635の幅W2が、ボルト20の軸部41の外径D2よりも小さく形成されていてもよい。なお、スリット孔635の第1端部35aは、スリット孔35と同様に構成されてもよいし、図17に示したスリット孔535の第1端部535aのように、D1=W1になるように構成されていてもよい。
【0101】
(I)
上記実施形態の座金7には、スリット44が形成されているが、スリット44が形成されていなくてもよい。
【0102】
(J)
座金7の構造は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、ブッシュ45と座金フランジ46とは、一体に限らず、互いに別体であってもよい。座金フランジ46が省略されても良い。
【0103】
(K)
上記実施の形態1、2では、スリット孔35、1035の第2端部35b、1035bは、半円周形状に湾曲して形成されているが、これに限らなくてもよい。図19は、スリット孔35の変形例であるスリット孔735を示す図である。図19に示すように、スリット孔735の第2端部735bが、径方向Bに沿った直線上に形成されていてもよい。すなわち、第2端部735bが、一対の縁部35eの反回転方向C2側の端を結ぶように直線上に形成されていてもよい。
【0104】
(L)
上記実施の形態2では、第2端部35bにおけるスリット孔35の最大幅W2は、ボルト20の軸部41の外径よりも小さく形成されているが、これに限らなくてもよい。
【0105】
図20は、スリット孔1035の変形例であるスリット孔1135を示す図である。図20に示すスリット孔1135のように、第2端部1135bにおけるスリット孔1135の幅W2が、ボルト120の軸部41の外径D2以上の大きさに形成されていてもよい。
【0106】
(M)
上記実施の形態2の真空ポンプでは、ボルト20と固定フランジ10の間(図4および図5に示す座金7の位置)に座金が設けられていないが、座金が設けられていてもよい。その場合、上述した座金7、107、207、307、407のいずれかを用いてもよいが、これらの座金の形状に限らなくてもよい。例えば、図21(a)および図21(b)に示す座金507が用いられてもよい。
【0107】
図21(a)は、座金507の平面図である。図21(b)は、図21(a)のV7-V7間の断面図である。座金507は、ブッシュ545と、座金フランジ546と、を有する。ブッシュ545は、筒状である。座金フランジ546は、ブッシュ545の一端からブッシュ545の径方向外側に向かって突出する。座金フランジ546は、ブッシュ545よりも大径である。座金フランジ546は、薄肉部33の下方に配置される。座金フランジ546は、ヘッド部42の上方に配置される(図5のブッシュ45と座金フランジ46参照)。
【0108】
座金507のブッシュ545には、ボルト20の軸部41が挿入される貫通孔543が形成されている。軸線方向A1に対して垂直な平面視において、ブッシュ545の外側面545aは、中心545oを中心とする同一円周上に配置されている。ブッシュ545の内側面545bも中心545oを中心とする同一円周上に配置されている。座金507のブッシュ545は、全周において肉厚が一定に形成されている。また、座金507のブッシュ545は、座金7と異なり、中心545oを通り径方向Bに沿った直線L0を基準として線対称に形成されている。なお、座金507の圧入前の外径をD3とし、内径をD4とすると、D4>D2かつD3>D1が満たされている。
【0109】
また、図21(a)および図21(b)に示す座金507には、座金7と異なり、スリット44が形成されていないが、形成されていてもよい。
【0110】
(N)
上記実施形態1、2におけるスリット孔35、1035の縁部35e、1035eは直線状に形成されているが、直線に限らなくてもよく、曲線で形成されていてもよい。
(O)
上記の実施形態に係る真空ポンプ1は、ターボ分子ポンプとネジ溝ポンプとが一体化されたポンプである。しかし、ネジ溝ポンプは省略されてもよい。すなわち、真空ポンプ1は、ターボ分子ポンプであってもよい。或いは、ターボ分子ポンプは省略されてもよい。すなわち、真空ポンプ1は、ネジ溝ポンプであってもよい。或いは、真空ポンプ1は、ターボ分子ポンプ及びネジ溝ポンプと異なる種類のポンプであってもよい。
【0111】
(態様)
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0112】
(第1態様)真空ポンプは、ハウジングと、ロータと、固定フランジと、ボルトと、ブッシュと、を備える。ロータは、ハウジング内に配置されている。固定フランジは、フランジ本体と、薄肉部と、ボルト孔と、スリット孔と、を含む。フランジ本体は、ハウジングから突出している。薄肉部は、フランジ本体に形成されている。ボルト孔は、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。ボルトは、ボルト孔に通される。ブッシュは、ボルトが通され、ボルト孔に配置される。スリット孔は、第1端部と、第2端部を有する。第1端部は、ボルト孔と繋がる。第2端部は、第1端部より第2方向側に配置されている。スリット孔は、第1端部から第2端部に向かって幅が狭くなる。ブッシュは、第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有する。第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。
【0113】
第1態様に係る真空ポンプでは、第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。これによって、ロータ破壊時のボルトの衝撃力により、ブッシュ部が変形し外径が縮小しやすくなる。すなわち、従来の特許文献1の構成に特許文献2に示す座金を単に用いた場合より、スリット孔側の第2ブッシュ部がより変形しやすくなる。これにより、ボルトとブッシュが、吸気口フランジのスリット孔に入り込みやすくなり、スリット孔の内側を十分に移動することが可能となる。
【0114】
そのため、吸気口フランジの凹部の底面である薄肉部の変形量が多くなり、この部分においてロータ破壊時のエネルギー消費量が増加するとともに、ボルトまたはボルトと座金が、スリット孔内を移動することで、ロータ破壊時のエネルギーが排気対象装置側に伝わる時間を長くすることができ、排気対象装置側に伝わる急停止トルクを低減することができる。
【0115】
(第2態様)第1態様にかかる真空ポンプにおいて、第1端部におけるスリット孔の幅は、ブッシュの外径以下である。
【0116】
第2態様に係る真空ポンプでは、ブッシュの外径よりも第1端部におけるスリット孔の幅が小さく形成されているため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔に入り込む際に、スリット孔入口部を変形させる必要が生じるため、エネルギー消費量を大きくすることができる
【0117】
(第3態様)第1態様にかかる真空ポンプにおいて、第1端部におけるスリット孔の幅は、ボルト孔の直径と一致する。
【0118】
第3態様に係る真空ポンプでは、ボルト孔の直径と一致しているため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスムーズにスリット孔に入り込むことができる。そのため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔を長い距離移動でき、移動する際のエネルギー消費量を増加することができる。
【0119】
(第4態様)第1~3のいずれかの態様にかかる真空ポンプにおいて、第2端部の縁は、円弧状に形成されている。第2端部の直径は、ボルトの外径以上であり、ブッシュの外径以下である。
【0120】
第4態様に係る真空ポンプでは、第2端部におけるスリット孔の幅に対応する直径が、ボルトの外径以上に設定されているため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔をスムーズに第2端部に向かって移動することができる。そのため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔を長い距離移動でき、移動する際のエネルギー消費量を増加することができる。
【0121】
(第5態様)第1態様にかかる真空ポンプにおいて、第1端部におけるスリット孔の幅は、ボルトの外径以下である。
【0122】
第5態様に係る真空ポンプでは、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔を移動する際のエネルギー消費量を増加させるとともに、ボルトまたはボルトと座金が、スリット孔内を移動することで、ロータ破壊時のエネルギーが排気対象装置側に伝わる時間を長くすることができる。
【0123】
(第6態様)第1~5のいずれかの態様にかかる真空ポンプにおいて、ボルトは、軸部と、ヘッド部と、を有する。軸部は、ブッシュに通される。ヘッド部は、軸部に接続されている。真空ポンプは、座金フランジを更に備える。座金フランジは、ブッシュの端から外側に広がるように形成され、ヘッド部と固定フランジの間に配置される。ブッシュおよび座金フランジに亘ってスリットが形成されている。スリットは、第1スリット部分と、第2スリット部分と、を有する。第1スリット部分は、ブッシュの軸方向に沿って第1ブッシュ部に形成されている。第2スリット部分は、第1スリット部分と繋がり、繋がった部分から回転方向側に向かって座金フランジに形成されている。
【0124】
第6態様に係る真空ポンプでは、ブッシュおよび座金フランジにスリットを形成することによって、ブッシュを変形しやすくできるため、スリット孔にブッシュおよびボルトを入り込みやすくできる。
【0125】
(第7態様)第1~第6のいずれかの態様にかかる真空ポンプにおいて、第2ブッシュ部の肉厚は、スリット孔の第2端部側に位置する部分から周方向に沿って徐々に厚くなるように、第2ブッシュ部の外側面が湾曲して形成されている。
【0126】
第7態様に係る真空ポンプでは、第2ブッシュ部の外側面を湾曲することによって、第2ブッシュ部に、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄い肉厚の部分を形成することができる。このため、ブッシュのスリット孔側に配置されている第2ブッシュ部をより変形しやすくでき、スリット孔にブッシュおよびボルトを入り込みやすくできる。
【0127】
(第8態様)第1~第6のいずれかの態様にかかる真空ポンプにおいて、第2ブッシュの外側面は、第2端部側に位置する部分からブッシュの周方向の両方に向かって平面状に形成された外側面部分を有する。
【0128】
第8態様に係る真空ポンプでは、第2ブッシュ部の外側面の少なくとも一部分を平面状に形成することにより、第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚を、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄くすることができる。このため、ブッシュのスリット孔側に配置されている第2ブッシュ部をより変形しやすくでき、スリット孔にブッシュおよびボルトを入り込みやすくできる。
【0129】
(第9態様)第1~第6のいずれかの態様にかかる真空ポンプにおいて、ブッシュの軸方向に対して垂直な平面視においてブッシュの外側面は、同一円周上に配置されている。平面視において、ブッシュの内側面は、同一円周上に配置されている。第2ブッシュ部には、軸方向に沿って溝部が形成されている。
【0130】
第9態様に係る真空ポンプでは、第2ブッシュ部の内側面に溝部を形成することにより、第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚を、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄くすることができる。このため、ブッシュのスリット孔側に配置されている第2ブッシュ部をより変形しやすくでき、スリット孔にブッシュおよびボルトを入り込みやすくできる。
【0131】
(第10態様)第1~第6のいずれかの態様にかかる真空ポンプにおいて、ブッシュの軸方向に対して垂直な平面視において、ブッシュの外側面は、同一円周上に配置されている。平面視において、ブッシュの内側面は、楕円または長孔の外周上に配置されている。内側面が周上に配置されている楕円または長孔は、ブッシュの外形の内側の中央からスリット孔よりに形成されている
【0132】
第10態様に係る真空ポンプでは、内側面をスリット孔よりに形成することにより、第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚を、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄くすることができる。このため、ブッシュ部のスリット孔側に配置されている第2ブッシュ部をより変形しやすくでき、スリット孔にブッシュおよびボルトを入り込みやすくできる。
【0133】
(第11態様)第11態様にかかる固定構造は、固定フランジと、ボルトと、ブッシュと、を備える。固定フランジは、フランジ本体と、薄肉部と、ボルト孔と、スリット孔と、を含む。薄肉部は、フランジ本体の表面に形成されている。ボルト孔は、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。ボルトは、ボルト孔に通される。ブッシュは、ボルトが通され、ボルト孔に配置される。スリット孔は、第1端部と、第2端部を有する。第1端部は、ボルト孔と繋がる。第2端部は、第1端部より第2方向側に配置されている。スリット孔は、第1端部から第2端部に向かって幅が狭くなる。ブッシュは、第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有する。第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。
【0134】
第11態様に係る固定構造では、このように、第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成することによって、ロータ破壊時のボルトの衝撃力により、ブッシュ部が変形し外径が縮小しやすくなる。また、スリット孔側の第2ブッシュ部がより変形しやすくなる。これにより、ボルトとブッシュ部が、吸気口フランジのスリット孔に入り込みやすくなり、スリット孔の内側を十分な距離分移動することが可能となる。
【0135】
そのため、吸気口フランジの凹部の底面である薄肉部の変形量が多くなり、この部分においてロータは開示のエネルギー消費量が増加するとともに、ボルトまたはボルトと座金が、スリット孔内を移動することで、ロータ破壊時のエネルギーが排気対象装置側に伝わる時間を長くすることができ、排気対象装置側に伝わる急停止トルクを低減することができる。
【0136】
(第12態様)第12態様にかかる真空ポンプは、ハウジングと、ロータと、固定フランジと、ボルトと、を備える。ロータは、ハウジング内に配置されている。固定フランジは、フランジ本体と、薄肉部と、ボルト孔と、スリット孔と、を含む。フランジ本体は、ハウジングから突出している。薄肉部は、フランジ本体に形成されている。ボルト孔は、薄肉部に形成されている。スリット孔は、ボルト孔からロータの回転方向である第1方向とは反対の第2方向に延び、薄肉部に形成されている。ボルトは、ボルト孔に通される。スリット孔は、第1端部と、第2端部を有する。第1端部は、ボルト孔と繋がる。第2端部は、第1端部より第2方向側に配置されている。スリット孔は、第1端部から第2端部に向かって幅が狭くなる。第1端部における前記スリット孔の幅は、ボルト孔の直径と一致する。
【0137】
第12態様にかかる真空ポンプでは、第1端部におけるスリット孔の幅が、ボルト孔の直径と一致するように形成されているため、ロータ破壊時にボルトがスムーズにスリット孔に入り込むことができる。そのため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔を長い距離移動でき、移動する際のエネルギー消費量を増加することができる。
【0138】
(第13態様)第13態様にかかる真空ポンプでは、第2端部の縁は、円弧状に形成されている。第2端部の直径は、ボルトの外径以上である。
【0139】
第13態様にかかる真空ポンプでは、第2端部におけるスリット孔の幅に対応する直径が、ボルトの外径以上に設定されているため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔をスムーズに第2端部に向かって移動することができる。そのため、ロータ破壊時にブッシュおよびボルトがスリット孔を長い距離移動でき、移動する際のエネルギー消費量を増加することができる。
【0140】
(第14態様)第14態様にかかる真空ポンプは、ボルトが通され、ボルト孔に配置されるブッシュを更に備える。
【0141】
第14態様にかかる真空ポンプでは、ボルトの周囲にブッシュが配置され、ロータ破壊時にはブッシュおよび薄肉部が変形しながらスリット孔に挿入されるため、ボルトの破損を低減することができる。すなわち、ロータ破壊時にボルトがスリット孔の薄肉部を変形しながら移動する場合、ボルトのネジ山部やネジ溝部に応力集中が起こる場合があるが、本態様のようにブッシュを配置することによって、ボルトにおける応力集中の発生を低減できる。
【0142】
(第15態様)第15態様にかかる真空ポンプでは、ブッシュは、第1方向側に配置された第1ブッシュ部と、第2方向側に配置された第2ブッシュ部と、を有する。第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。
【0143】
第15態様にかかる真空ポンプでは、第2ブッシュ部の少なくとも1部分の肉厚が、第1ブッシュ部の最も薄い肉厚よりも薄く形成されている。これによって、ロータ破壊時のボルトの衝撃力により、ブッシュ部が変形し外径が縮小しやすくなる。これにより、ボルトとブッシュが、吸気口フランジのスリット孔に入り込みやすくなり、スリット孔の内側を十分に移動することが可能となる。
【0144】
そのため、吸気口フランジの凹部の底面である薄肉部の変形量が多くなり、この部分においてロータ破壊時のエネルギー消費量が増加するとともに、ボルトまたはボルトと座金が、スリット孔内を移動することで、ロータ破壊時のエネルギーが排気対象装置側に伝わる時間を長くすることができ、排気対象装置側に伝わる急停止トルクを低減することができる。
【符号の説明】
【0145】
1:真空ポンプ、2:筐体、3:ロータ、4:モータ、5:ステータ翼ユニット、6:ステータ円筒部、7:座金、8:ケーシング、9:ベース、10:固定フランジ、11:第1端部、12:第2端部、13:側面部、14:吸気口、15:ベース端部、16:排気口、20:ボルト、21:シャフト、22:ロータ翼ユニット、23:ロータ円筒部、24A-24D:軸受、25:ロータ翼、26:モータロータ、27:モータステータ、28:ステータ翼、31:フランジ本体、31a:表面、31b:表面、32:固定部、33:薄肉部、34:ボルト孔、35:スリット孔、35a:第1端部、35b:第2端部、35e:縁部、36:凹部、36a:底面、41:軸部、42:ヘッド部、43:貫通孔、44:スリット、45:ブッシュ、45a:外側面、45b:内側面、45o:中心、46:座金フランジ、51:第1ブッシュ部、51a:外側面、52:第2ブッシュ部、52a:外側面、52p:部分、100:排気対象装置、107:座金、152:第2ブッシュ部、152a:外側面、152c:側面部分、152d:側面部分、152e:側面部分、152f:側面部分、152p:部分、207:座金、245:ブッシュ、245a:外側面、245b:内側面、245m:中心位置、245o:中心、245x:長軸、245y:短軸、251:第1ブッシュ部、251p:部分、252:第2ブッシュ部、252p:部分、307:座金、345:ブッシュ、345a:外側面、345b:内側面、345c:内側面部分、345d:内側面部分、345e:内側面部分、345f:内側面部分、345o:中心、345p:中央位置、345q:中央位置、351:第1ブッシュ部、351p:部分、352:第2ブッシュ部、352p:部分、407:座金、445:ブッシュ、445a:外側面、445b:内側面、445c:溝部、445o:中心、451:第1ブッシュ部、452:第2ブッシュ部、452p:部分、535:スリット孔、535a:第1端部、535b:第2端部
図1
図2
図3
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