(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031384
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】ブタジエンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/24 20060101AFI20230302BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20230302BHJP
B01J 38/12 20060101ALI20230302BHJP
C07C 45/29 20060101ALN20230302BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230302BHJP
C07C 47/06 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C11/167
B01J38/12 B
C07C45/29
C07B61/00 300
C07C47/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021136824
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宣利
(72)【発明者】
【氏名】西山 悠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 壮一郎
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB84
4H006AC25
4H006AC45
4H006BA05
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA30
4H006BA55
4H006BC10
4H006BC11
4H006BD81
4H006BD84
4H039CA29
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の排出量を削減しつつ、ブタジエンを製造可能なブタジエンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のブタジエンの製造方法において使用される第1反応器3および第2反応器4は、それぞれ触媒が充填された複数の反応管Ra、Rbを備え、複数の反応管Ra、Rbのうちの一部の反応管に原料ガスを300~420℃の温度で通過させる反応プロセスと、残りの反応管に触媒を再生する再生ガスを420~550℃の温度で通過させる再生プロセスとを交互に行うに際して、触媒に対する原料ガスおよび再生ガスの下記式(1)で表される接触頻度を、500~50000に設定したことを特徴とする。
接触頻度=(原料ガスおよび再生ガスの流量[kg/hr]×反応管内の圧力[MPaA])/(反応管の長手方向中央での横断面において触媒が占める面積[m
2]×反応管の外径[m]) ・・・ (1)
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールからアセトアルデヒドに変換する第1反応器、該第1反応器で副生する無機ガスを分離する無機ガス分離器、エタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンに変換する第2反応器の順で、原料ガスを通過させてブタジエンを製造する方法であって、
各前記反応器は、互いに並列に接続され、触媒が充填された複数の反応管を備え、
該複数の反応管のうちの一部の前記反応管に前記原料ガスを300~420℃の温度で通過させる反応プロセスと、残りの前記反応管に前記触媒を再生する再生ガスを420~550℃の温度で通過させる再生プロセスとを交互に行うに際して、
前記触媒に対する前記原料ガスおよび前記再生ガスの下記式(1)で表される接触頻度を、500~50000に設定したことを特徴とするブタジエンの製造方法。
接触頻度=(原料ガスおよび再生ガスの流量[kg/hr]×反応管内の圧力[MPaA])/(反応管の長手方向中央での横断面において触媒が占める面積[m2]×反応管の外径[m]) ・・・ (1)
【請求項2】
前記原料ガスを前記無機ガス分離器に通過させる際の条件は、温度3~15℃、圧力0.5~5MPaGである請求項1に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項3】
前記反応プロセスと前記再生プロセスとの間に、前記反応管に不活性ガスを通過させる置換プロセスを有し、
前記反応プロセスの時間>(前記反応プロセスと前記再生プロセスとの温度差)÷(前記反応プロセスから前記再生プロセスへの昇温速度)+(前記再生プロセスと前記反応プロセスとの温度差)÷(前記再生プロセスから前記反応プロセスへの降温速度)+(前記置換プロセスの時間)+(前記再生プロセスの時間)なる関係を満足するように、前記昇温速度および前記降温速度を調整する請求項1または2に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項4】
さらに、前記反応プロセスにおいて、前記原料ガスを加熱する加熱機構を備え、
該加熱機構は、熱媒移送ライン内を移送される熱媒との間で熱交換を行う熱交換器、電熱器およびマイクロ波照射器から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項5】
前記熱媒移送ラインは、第1分岐ラインと、該第1分岐ラインと分岐した後、再度合流する第2分岐ラインとを備え、
前記反応管に対して、前記第1分岐ラインにおける前記熱媒の移送方向と、前記第2分岐ラインにおける前記熱媒の移送方向とが逆方向である請求項4に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項6】
前記第1分岐ラインおよび前記第2分岐ラインは、それぞれ前記反応管の内側、前記反応管の外側かつ前記反応器の内側、および前記反応器の外側から選ばれる少なくとも1つに設けられている請求項5に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項7】
前記熱媒は、前記反応管を通過した後の前記原料ガスであり、
前記熱媒移送ラインは、前記原料ガスを移送する原料ガス移送ラインとしても機能するとともに、前記熱交換器は、前記反応管を通過した後の前記原料ガスと前記反応管を通過する前の前記原料ガスとの間で熱交換を行う請求項4に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項8】
前記反応管の下流側に、前記原料ガスの圧力を上昇させる昇圧器を備える請求項4~7のいずれか1項に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項9】
さらに、前記再生プロセスにおいて、前記再生ガスを加熱する第2加熱機構を備え、
該第2加熱機構は、前記加熱機構と分離して設けられ、第2熱媒移送ライン内を移送される第2熱媒との間で熱交換を行う第2熱交換器、第2電熱器および第2マイクロ波照射器から選ばれる少なくとも1つを含む請求項4~8のいずれか1項に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項10】
さらに、前記反応プロセス終了後、前記再生プロセス開始前において、前記触媒を加熱する第3加熱機構を備え、
該第3加熱機構は、前記加熱機構および前記第2加熱機構と分離して設けられ、第3熱媒移送ライン内を移送される第3熱媒との間で熱交換を行う第3熱交換器、第3電熱器および第3マイクロ波照射器から選ばれる少なくとも1つを含む請求項9に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項11】
さらに、前記再生プロセス終了後、前記反応プロセス開始前において、前記触媒を冷却する冷却機構を備え、
該冷却機構は、冷媒移送ライン内を移送される冷媒との間で熱交換を行う第4熱交換器および冷却器から選ばれる少なくとも1つを含む請求項1~10のいずれか1項に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項12】
さらに、前記再生プロセスにおいて、予め加熱された前記再生ガスを前記反応管に供給する予熱再生ガス供給機構を備える請求項4~8のいずれか1項に記載のブタジエンの製造方法。
【請求項13】
前記反応管内の温度を調整するのに予め加熱されたガスが使用され、
該ガスは、互いにガス組成が異なる、前記反応プロセスにおいて使用される第1ガスと、前記反応プロセスから前記再生プロセスへの昇温プロセスにおいて使用される第2ガスと、前記再生プロセスにおいて使用される第3ガスと、前記再生プロセスから前記反応プロセスへの降温プロセスにおいて使用される第4ガスとを含み、
前記第1ガスと前記第3ガスとの間で熱交換を行い、かつ前記第2ガスと前記第4ガスとの間で熱交換を行う請求項1~3のいずれか1項に記載のブタジエンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブタジエンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3-ブタジエン等のブタジエンは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の原料として用いられている。ブタジエンの製造方法としては、例えば、触媒の存在下、エタノールをアセトアルデヒドに転化し、さらにエタノールおよびアセトアルデヒドをブタジエンに転化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によれば、従来の製造方法では、各工程で使用または発生する熱(エネルギー)が有効に再利用されないため、追加のエネルギーを投入せざるを得ず、このエネルギーの生成の際に発生する二酸化炭素が原因で、二酸化炭素の排出量の削減に限界があることが判った。
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、二酸化炭素の排出量を削減しつつ、ブタジエンを製造可能なブタジエンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
(1) 本発明のブタジエンの製造方法は、エタノールからアセトアルデヒドに変換する第1反応器、該第1反応器で副生する無機ガスを分離する無機ガス分離器、エタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンに変換する第2反応器の順で、原料ガスを通過させてブタジエンを製造する方法であって、
各前記反応器は、互いに並列に接続され、触媒が充填された複数の反応管を備え、
該複数の反応管のうちの一部の前記反応管に前記原料ガスを300~420℃の温度で通過させる反応プロセスと、残りの前記反応管に前記触媒を再生する再生ガスを420~550℃の温度で通過させる再生プロセスとを交互に行うに際して、
前記触媒に対する前記原料ガスおよび前記再生ガスの下記式(1)で表される接触頻度を、500~50000に設定したことを特徴とする。
接触頻度=(原料ガスおよび再生ガスの流量[kg/hr]×反応管内の圧力[MPaA])/(反応管の長手方向中央での横断面において触媒が占める面積[m2]×反応管の外径[m]) ・・・ (1)
【0006】
(2) 本発明のブタジエンの製造方法では、前記原料ガスを前記無機ガス分離器に通過させる際の条件は、温度3~15℃、圧力0.5~5MPaGであることが好ましい。
(3) 本発明のブタジエンの製造方法では、前記反応プロセスと前記再生プロセスとの間に、前記反応管に不活性ガスを通過させる置換プロセスを有し、
前記反応プロセスの時間>(前記反応プロセスと前記再生プロセスとの温度差)÷(前記反応プロセスから前記再生プロセスへの昇温速度)+(前記再生プロセスと前記反応プロセスとの温度差)÷(前記再生プロセスから前記反応プロセスへの降温速度)+(前記置換プロセスの時間)+(前記再生プロセスの時間)なる関係を満足するように、前記昇温速度および前記降温速度を調整することが好ましい。
【0007】
(4) 本発明のブタジエンの製造方法では、さらに、前記反応プロセスにおいて、前記原料ガスを加熱する加熱機構を備え、
該加熱機構は、熱媒移送ライン内を移送される熱媒との間で熱交換を行う熱交換器、電熱器およびマイクロ波照射器から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
(5) 本発明のブタジエンの製造方法では、前記熱媒移送ラインは、第1分岐ラインと、該第1分岐ラインと分岐した後、再度合流する第2分岐ラインとを備え、
前記反応管に対して、前記第1分岐ラインにおける前記熱媒の移送方向と、前記第2分岐ラインにおける前記熱媒の移送方向とが逆方向であることが好ましい。
【0008】
(6) 本発明のブタジエンの製造方法では、前記第1分岐ラインおよび前記第2分岐ラインは、それぞれ前記反応管の内側、前記反応管の外側かつ前記反応器の内側、および前記反応器の外側から選ばれる少なくとも1つに設けられていることが好ましい。
(7) 本発明のブタジエンの製造方法では、前記熱媒は、前記反応管を通過した後の前記原料ガスであり、
前記熱媒移送ラインは、前記原料ガスを移送する原料ガス移送ラインとしても機能するとともに、前記熱交換器は、前記反応管を通過した後の前記原料ガスと前記反応管を通過する前の前記原料ガスとの間で熱交換を行うことが好ましい。
【0009】
(8) 本発明のブタジエンの製造方法では、前記反応管の下流側に、前記原料ガスの圧力を上昇させる昇圧器を備えることが好ましい。
(9) 本発明のブタジエンの製造方法では、さらに、前記再生プロセスにおいて、前記再生ガスを加熱する第2加熱機構を備え、
該第2加熱機構は、前記加熱機構と分離して設けられ、第2熱媒移送ライン内を移送される第2熱媒との間で熱交換を行う第2熱交換器、第2電熱器および第2マイクロ波照射器から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0010】
(10) 本発明のブタジエンの製造方法では、さらに、前記反応プロセス終了後、前記再生プロセス開始前において、前記触媒を加熱する第3加熱機構を備え、
該第3加熱機構は、前記加熱機構および前記第2加熱機構と分離して設けられ、第3熱媒移送ライン内を移送される第3熱媒との間で熱交換を行う第3熱交換器、第3電熱器および第3マイクロ波照射器から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
(11) 本発明のブタジエンの製造方法では、さらに、前記再生プロセス終了後、前記反応プロセス開始前において、前記触媒を冷却する冷却機構を備え、
該冷却機構は、冷媒移送ライン内を移送される冷媒との間で熱交換を行う第4熱交換器および冷却器から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0011】
(12) 本発明のブタジエンの製造方法では、さらに、前記再生プロセスにおいて、予め加熱された前記再生ガスを前記反応管に供給する予熱再生ガス供給機構を備えることが好ましい。
(13) 本発明のブタジエンの製造方法では、前記反応管内の温度を調整するのに予め加熱されたガスが使用され、
該ガスは、互いにガス組成が異なる、前記反応プロセスにおいて使用される第1ガスと、前記反応プロセスから前記再生プロセスへの昇温プロセスにおいて使用される第2ガスと、前記再生プロセスにおいて使用される第3ガスと、前記再生プロセスから前記反応プロセスへの降温プロセスにおいて使用される第4ガスとを含み、
前記第1ガスと前記第3ガスとの間で熱交換を行い、かつ前記第2ガスと前記第4ガスとの間で熱交換を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二酸化炭素の排出量を削減しつつ、ブタジエンを連続的かつ安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のブタジエンの製造方法の第1実施形態で用いる製造装置の全体を示す模式図である。
【
図2】反応器付近の構成を示す概略図(一部の構成を省略)である。
【
図3】原料ガスを加熱する加熱機構の構成を示す概略図である。
【
図4】原料ガスを加熱する加熱機構の構成を示す概略図である。
【
図5】原料ガスを加熱する加熱機構の構成を示す概略図である。
【
図6】本発明のブタジエンの製造方法の第2実施形態で用いる製造装置の一部を示す模式図である。
【
図7】本発明のブタジエンの製造方法の第3実施形態で用いる製造装置の一部を示す模式図である。
【
図8】再生ガスを加熱する第2加熱機構の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のブタジエンの製造方法について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明のブタジエンの製造方法の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明のブタジエンの製造方法の第1実施形態で用いる製造装置の全体を示す模式図である。
以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明は、それらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
図1に示す製造装置1は、主に、原料タンク2と、第1反応器3と、第2反応器4と、精製部5と、原料タンク2と第1反応器3とを接続する第1ラインL1と、第1反応器3と第2反応器4とを接続する第2ラインL2と、第2反応器4と精製部5とを接続する第3ラインL3とを有している。
なお、本明細書中では、流体(液体またはガス)の流れ方向に対して上流側を単に「上流側」、下流側を単に「下流側」とも記載する。
【0016】
第1ラインL1は、その一端部において原料タンク2に接続されている。原料タンク2には、エタノール供給原料が供給および貯留される。
エタノール供給原料は、エタノールを必須成分として含み、本発明の効果を損なわない範囲で、水のような他の成分を含んでもよい。エタノール供給原料に含まれるエタノールの量は、エタノール供給原料の総質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、93質量%以上であることがさらに好ましい。エタノールの量の上限は、理論的には100質量%である。
【0017】
エタノール供給原料としては、特に限定されないが、例えば、シェールガス、石油のような化石燃料由来のエタノールであってもよく、植物、動物、ゴミのようなバイオマス由来のエタノール(バイオエタノール)であってもよい。中でも、エタノール供給原料としては、窒素化合物や硫黄化合物のような不純物の含有量が少なく、触媒を劣化させ難い観点から、バイオエタノールであることが好ましい。
【0018】
一方、第1ラインL1は、その他端部において第1反応器3に接続されている。第1反応器3では、下記式(A)に示すように、エタノールがアセトアルデヒドへ転化(変換)される。
CH
3CH
2OH → CH
3CHO+H
2 ・・・ (A)
第1反応器3は、互いに並列に接続された複数(本実施形態では、2個)の反応管Ra、Rbを備えている(
図2参照)。
第1ラインL1は、分岐した後、それぞれ反応管Ra、Rbの入口ポートに接続されている。なお、図示しないが、第1ラインL1の分岐ラインの途中には、バルブのような流路開閉装置が配置されている。
【0019】
各反応管Ra、Rbは、その内部に第1触媒が充填されて反応床(触媒層)が形成されている。なお、反応床の形態としては、例えば、固定床、移動床、流動床等が挙げられる。
第1触媒は、エタノールからアセトアルデヒドへの転化反応を促進し得ればよい。第1触媒の具体例としては、例えば、酸化クロムと酸化銅との混合物、酸化亜鉛単独、酸化銅と酸化ケイ素との混合物等が挙げられる。なお、第1触媒は、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、エタノールからのアセトアルデヒドへの転化率が高い観点から、第1触媒としては、酸化銅と酸化ケイ素との混合物であることが好ましい。
【0020】
第1ラインL1の途中には、上流側から順に、気化器7と温調装置TC1とが配置されている。
気化器7では、エタノール供給原料を加熱することにより、気化させてエタノール含有ガス(原料ガス)を生成する。
エタノール供給原料の気化時の圧力は、-1.0~1.0MPaGであることが好ましく、-0.5~0.5MPaGであることがより好ましく、-0.3~0.3MPaGであることがさらに好ましい。エタノール供給原料の気化時の圧力が上記範囲であれば、エタノール供給原料を効率的に気化させ得るとともに、気化した際にエタノール含有ガスの体積が過剰にならず、機械設備の大型化を抑制することができる。
【0021】
エタノール供給原料の気化時の温度は、-100~200℃であることが好ましく、0~150℃であることがより好ましく、25~100℃であることがさらに好ましい。エタノール供給原料の気化時の温度が上記範囲であれば、エタノール供給原料を効率的に気化させ得るとともに、エタノール供給原料の過剰な加熱が不要となる。
気化器7には、第4ラインL4を介して、不活性ガスタンク6が接続されている。不活性ガスタンク6には、不活性ガスが供給および貯留される。
必要に応じて、気化器7に不活性ガスが供給され、生成されたエタノール含有ガスに混合される。
【0022】
エタノール含有ガスに含まれるエタノールの濃度は、0.1~100体積%であることが好ましく、10~100体積%であることがより好ましく、20~100体積%であることがさらに好ましい。エタノール含有ガスに含まれるエタノールの濃度が上記範囲であれば、ブタジエンの収率を高めることができる。
不活性ガス(希釈用ガス)としては、エタノールからブタジエンまでの転化反応に悪影響を及ぼさないガスが好適である。かかる不活性ガスの具体例としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスのような希ガス、炭酸ガスが挙げられる。なお、不活性ガスは、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、安価であり、入手が容易なことから、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガスであることが好ましい。
【0023】
得られたエタノール含有ガスの一部は、温調装置TC1を介して、第1反応器3に供給され、一部は、第5ラインL5を介して、後述する混合器10に供給される。別の態様としてエタノール含有ガスを、原料タンク2とは独立した原料タンクから混合器10へ供給することもできる。
温調装置TC1では、エタノール含有ガスを加熱する。
この際の温度は、第1触媒によるエタノールからアセトアルデヒドへの転化反応(第1触媒の種類)に応じて設定され、特に限定されないが、100~500℃であることが好ましく、200~450℃であることがより好ましく、300~420℃であることがさらに好ましい。この場合、過剰なエネルギーの消費(すなわち、二酸化炭素の排出量)を低減しつつ、エタノールのアセトアルデヒドへの転化率を高めることができる。
【0024】
第1反応器3でのエタノールからアセトアルデヒドへの転化率は、30~70%であることが好ましく、40~60%であることがより好ましい。
ここで、「アルデヒドへの転化率」とは、第1反応器3に供給されるエタノール含有ガスに含まれるエタノールの単位時間当たりのモル数に対する、第1反応器3(第1触媒)で消費されたエタノールの単位時間当たりのモル数の比率(百分率)を意味する。
なお、第1反応器3で消費されたエタノールの単位時間当たりのモル数は、第1反応器3に供給されるエタノール含有ガスに含まれるエタノールの単位時間当たりのモル数から、第1反応器3から排出される排出ガス(以下、「中間ガス」とも記載する。)に含まれるエタノールの単位時間当たりのモル数を差し引くことで算出される。
【0025】
第1反応器3の転化反応におけるアセトアルデヒドの選択率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
ここで、「アセトアルデヒドの選択率」とは、第1反応器3で消費されたエタノールの単位時間当たりのモル数に対する、アセトアルデヒドに変換されたエタノールの単位時間当たりのモル数の比率(百分率)を意味する。
なお、第1反応器3から排出される中間ガスに含まれる可能性のある副生物としては、例えば、メタン、エタン、エチレン、ジエチルエーテル、アセトン、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒド、酢酸エチル、酢酸等が挙げられる。
【0026】
第1反応器3から排出される中間ガス(原料ガス)は、第2ラインL2を介して、第2反応器4に供給される。第2反応器4では、下記式(B)に示すように、中間ガスに含まれるエタノールおよびアセトアルデヒドがブタジエン(1,3-ブタジエン)へ転化される。
CH
3CH
2OH+CH
3CHO
→ CH
2=CH-CH=CH
2+2H
2O ・・・ (B)
第2反応器4は、互いに並列に接続された複数(本実施形態では、2個)の反応管Ra、Rbを備えている(
図2参照)。
第2ラインL2は、分岐した後、それぞれ反応管Ra、Rbの入口ポートに接続されている。なお、図示しないが、第2ラインL2の分岐ラインの途中には、バルブのような流路開閉装置が配置されている。
【0027】
各反応管Ra、Rbは、その内部に第2触媒が充填されて反応床(触媒層)が形成されている。なお、反応床の形態としては、例えば、固定床、移動床、流動床等が挙げられる。
第2触媒は、エタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンへの転化反応を促進し得ればよい。第2触媒の具体例としては、例えば、タンタル、ジルコニウム、チタン、セリウム、ニオブ、ハフニウム、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等が挙げられる。なお、第2触媒は、これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、ブタジエンの収率が高い観点から、第2触媒としては、ジルコニウム、ハフニウムであることが好ましい。
第2触媒の状態としては、例えば、元素単体、酸化物、塩化物が挙げられる。そして、その使用態様としては、担体上に第2触媒を担持させて使用する態様や、2種以上の混合物として使用する態様が挙げられる。
【0028】
第2ラインL2の途中には、上流側から順に、温調装置TC2と、昇圧器8と、温調装置TC3と、水素分離器(無機ガス分離器)9と、混合器10と、温調装置TC4とが配置されている。
温調装置TC2では、中間ガスを冷却する。
冷却後の中間ガスは、昇圧器8を通過することにより、その圧力が上昇する。これにより、水素分離器9で一度に処理可能な中間ガスの量を増大させることができる。また、水素分離器9でアセトアルデヒドの同伴を少なく水素(無機ガス)を分離することができる。このとき、中間ガスは、昇圧に伴って、その温度も上昇する。
昇圧器8は、例えば、遠心式圧縮機、軸流式圧縮機のようなターボ圧縮機、往復動圧縮機(レシプロ圧縮機)、ダイアフラム式圧縮機、シングルスクリュー圧縮機、ツインスクリュー圧縮機、スクロール圧縮機、ロータリー圧縮機、ロータリーピストン型圧縮機、スライドベーン型圧縮機のような容積圧縮機、低圧に対応可能なルーツブロワー(二葉送風機)、遠心式のブロワー等で構成することができる。
【0029】
温調装置TC3では、再度、中間ガスを冷却する。
冷却後の中間ガスは、水素分離器9を通過する。上述したように、第1反応器3で生成する中間ガス中には、水素が混入するため、この水素を水素分離器9で除去する。これにより、第2反応器4において、エタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンへの変換反応が阻害されるのを防止または抑制することができる。また、無機ガス分離器12においてブタジエンの同伴を少なく水素(無機ガス)を分離することができる。
水素分離器9を通過した後の中間ガスに含まれる水素の濃度は、中間ガス全体に対して、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、1体積%以下であることがさらに好ましく、0体積%であってもよい。
【0030】
水素分離器9は、例えば、気液分離器で構成される。水素分離器9では、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む液体と水素を含むガスとに分離される。この場合、エタノールおよびアセトアルデヒドを含む液体を加熱し、再び気化して中間ガスとして下流側に供給する。
気液分離の際の温度は、3~15℃であることが好ましく、5~10℃であることがより好ましい。また、気液分離の際の圧力は、0.5~5MPaGであることが好ましく、1~3MPaGであることがより好ましい。かかる条件での気液分離により、水素が効率よく分離される。
なお、気液分離器は、例えば、単なる容器、旋回流式分離器、遠心分離器、表面張力式分離器等で構成することができる。
【0031】
水素除去後の中間ガスは、混合器10に供給される。この混合器10には、さらに、気化器7が第5ラインL5を介して、後述するAcH(アセトアルデヒド)精製器52が第6ラインL6を介して、後述するEtOH(エタノール)精製器53が第7ラインL7を介して、それぞれ接続されている。
混合器10では、水素除去後の中間ガスに、第5ラインL5を介して供給されるエタノール含有ガス、第6ラインL6を介して供給されるアセトアルデヒド含有ガス、第7ラインL7を介して供給される第2エタノール含有ガス、および原料タンク2とは独立した原料タンク由来のエタノール含有ガスのうちの少なくとも1つを混合して、中間ガスに含まれるエタノールとアセトアルデヒドとのモル比(以下、「モル比P」とも記載する。)を調整する。
【0032】
モル比Pは、1~100であることが好ましく、1~50であることがより好ましく、1~20であることがさらに好ましく、1~10であることが特に好ましく、1~5または1.1~3であることが最も好ましい。モル比Pが上記範囲であれば、ブタジエンの収率が向上する。
また、混合器10には、中間ガスに含まれる成分を分析する分析計を設けるようにしてもよい。この場合、モル比Pを分析計によって監視した結果に基づいて、中間ガスに混合するエタノール含有ガス、アセトアルデヒド含有ガス、原料タンク2とは独立した原料タンク由来のエタノール含有ガスおよび第2エタノール含有ガスの少なくとも1つの量を調整することができる。これにより、モル比Pを上記範囲に制御することが容易になる。
なお、分析計には、例えば、プロセス質量分析計、ガスクロマトグラフィーを使用することができる。
【0033】
本実施形態では、混合器10において、気化器7で生成されたエタノールリッチなエタノール含有ガスを中間ガスに直接混合するとともに、後述する精製部5から得られるアセトアルデヒド含有ガスおよび第2エタノール含有ガスを再利用して中間ガスに混合する。
ここで、第1反応器3から排出される中間ガスは、エタノールの濃度が低くなり易いものの、エタノールリッチなエタノール含有ガスが混合されるので、その極端な濃度低下を防止することができる。
また、精製部5から回収されるアセトアルデヒド含有ガスおよび第2エタノール含有ガスを再利用するため、ブタジエンの製造コストの増大を防止しつつ、上記範囲内で比較的高めの値にモル比Pを制御することが可能になる。したがって、ブタジエンへの転化効率が高められ、その収率を顕著に増大させることができる。
【0034】
温調装置TC4では、中間ガスを加熱する。
この際の温度は、第2触媒によるエタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンへの転化反応(第2触媒の種類)に応じて設定され、特に限定されないが、50~500℃であることが好ましく、300~400℃であることがより好ましく、320~370℃であることがさらに好ましい。この場合、過剰なエネルギーの消費(すなわち、二酸化炭素の排出量)を低減しつつ、エタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンへの転化率を高めることができる。
【0035】
第2反応器4でのエタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンへの転化率は、30超であることが好ましく、40%超であることがより好ましく、50%超であることがさらに好ましい。
ここで、「ブタジエンへの転化率」とは、第2反応器4に供給される中間ガスに含まれるエタノールおよびアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数に対する、第2反応器4(第2触媒)で消費されたエタノールおよびアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数の比率(百分率)を意味する。
なお、第2反応器4で消費されたエタノールおよびアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数は、第2反応器4に供給される中間ガスに含まれるエタノールおよびアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数から、第2反応器4から排出される排出ガス(以下、「粗生成ガス」とも記載する。)に含まれるエタノールおよびアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数を差し引くことで算出される。
【0036】
第2反応器4の転化反応におけるブタジエンの選択率は、60%超であることが好ましく、70%超であることがより好ましく、80%超であることがさらに好ましい。
ここで、「ブタジエンの選択率」とは、第2反応器4で消費されたエタノールおよびアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数に対する、ブタジエンに変換されたエタノールおよびアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数の比率(百分率)を意味する。
第2反応器4においては、アセトアルデヒドの約65~80%がブタジエンに転化されることが好ましい。
なお、第2反応器4から排出される粗生成ガスに含まれる可能性のある副生物としては、例えば、エチレン、プロピレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ブタノール、ヘキサノール、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセン、ヘキサジエン、酢酸、酪酸、クロトン酸、クロトンアルデヒド、クロチルアルコール、オクテン、オクタジエン、ヘキセン酸、オクテン酸、2,4-ジメチルフラン,2-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、2,5-ジエチルフェノール、1,2,3-トリメチルインデン、4-ヒドロキシ‐4-メチル-2-ペンタノン、ジエチルアセタール等が挙げられる。
【0037】
第2反応器4から排出される粗生成ガスは、第3ラインL3を介して、精製部5に供給される。
第3ラインL3の途中には、上流側から順に、温調装置TC5と、昇圧器11と、温調装置TC6と、無機ガス分離器12とが配置されている。
温調装置TC5では、粗生成ガスを冷却する。
冷却後の粗生成ガスは、昇圧器11を通過することにより、その圧力が上昇する。これにより、無機ガス分離器12で一度に処理可能な粗生成ガスの量を増大させることができる。また、無機ガス分離器12でアセトアルデヒドおよびブタジエンの同伴を少なく水素(無機ガス)を分離することができる。このとき、粗生成ガスは、昇圧に伴って、その温度も上昇する。
昇圧器11は、昇圧器8と同様の構成とすることができる。
【0038】
温調装置TC6では、再度、粗生成ガスを冷却する。
冷却後の粗生成ガスは、無機ガス分離器12を通過する。上述したように、第2反応器4で生成する粗生成ガス中には、水素、不活性ガスのような無機ガスが混入するため、この無機ガスを無機ガス分離器12で除去する。ことにより、精製部5において、ブタジエンの精製が阻害されたり、ブタジエンが副生物へ変換されることを防止または抑制することができる。
無機ガス分離器12を通過した後の粗生成ガスに含まれる無機ガスの濃度は、粗生成ガス全体に対して、30体積%以下であることが好ましく、20体積%以下であることがより好ましく、10体積%以下であることがさらに好ましく、0体積%であってもよい。
無機ガス分離器12は、水素分離器9と同様の構成および処理条件とすることができる。
なお、分離された無機ガスは、所定の処理を施した後、廃棄してもよく、水素や窒素等の無機ガスを精製・回収後に、他のプロセス等に再利用してもよい。
【0039】
精製部5は、軽炭化水素分離器51と、軽炭化水素分離器51に接続されたAcH精製器52と、AcH精製器52に接続されたEtOH精製器53と、EtOH精製器53および軽炭化水素分離器51に接続されたBD抽出器54とを備える。
軽炭化水素分離器51は、例えば、蒸留塔で構成される。軽炭化水素分離器51では、主にエタノールおよびアセトアルデヒドを含む液体(以下、「原料含有液」とも記載する。)と、軽炭化水素含有ガスと、主にブタジエンを含むガス(ブタジエン含有ガス)とに分離される。
軽炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、1-ブテン、2-ブテン等が挙げられる。
なお、軽炭化水素含有ガスは、蒸留塔の塔頂から抜き出され、所定の処理を施した後、廃棄される。軽炭化水素含有ガスを抜き出した後、ブタジエン含有ガスは、蒸留塔の塔頂から抜き出され、BD抽出器54に供給される。一方、原料含有液は、蒸留塔の塔底から抜き出され、AcH精製器52に供給される。
【0040】
AcH精製器52は、例えば、蒸留塔で構成される。AcH精製器52では、エタノール含有液とアセトアルデヒド含有ガスとに分離される。
なお、アセトアルデヒド含有ガスは、蒸留塔の塔頂から抜き出され、第6ラインL6を介して混合器10に供給される。一方、エタノール含有液は、蒸留塔の塔底から抜き出され、EtOH精製器53に供給される。
EtOH精製器53も、例えば、蒸留塔で構成される。EtOH精製器53では、水を含む残液と、第2エタノール含有ガスと、ブタジエン含有ガスとに分離される。
なお、ブタジエン含有ガスは、蒸留塔の塔頂から抜き出され、BD抽出器54に供給される。ブタジエン含有ガスを抜き出した後、第2エタノール含有ガスは、蒸留塔の塔頂から抜き出され、第7ラインL7を介して混合器10に供給される。一方、残液は、蒸留塔の塔底から抜き出され、所定の処理を施した後、廃棄される。
【0041】
BD抽出器54は、例えば、抽出塔で構成される。BD抽出器54では、ブタジエンが抽出されて、ブタジエンが精製される。
抽出塔としては、例えば、多孔板抽出塔、バッフル抽出塔、堰板型(WINTRAY)抽出塔等を使用することができる。
【0042】
次に、このような製造装置1を使用して行うブタジエンの製造方法、すなわち本実施形態のブタジエンの製造方法について説明する。
かかるブタジエンの製造方法は、主に、エタノールからアセトアルデヒドに転化(変換)する第1反応器3、この第1反応器3で副生する水素(無機ガス)を分離する水素分離器(無機ガス分離器)9、エタノールおよびアセトアルデヒドからブタジエンに転化(変換)する第2反応器4の順で、原料ガスを通過させてブタジエンを製造する方法である。
図2に示すように、第1反応器3および第2反応器4は、それぞれ互いに並列に接続され、触媒(第1触媒または第2触媒)が充填された複数(本実施形態では、2個)の反応管Ra、Rbを備えている。
【0043】
なお、反応管の設置数は、2個以上であればよいが、3~20個(好ましくは、5~15個)とすることもできる。また、複数の反応管は、外容器に収納され、各反応器3、4を構成していてもよい。
本実施形態では、複数の反応管Ra、Rbのうちの一部の反応管Ra、Rbに原料ガスを300~420℃の温度で通過させる反応プロセスと、残りの反応管Ra、Rbに触媒を再生する再生ガスを420~550℃の温度で通過させる再生プロセスとが交互に行われる。すなわち、まず反応管Raで反応プロセスが行われた場合、次に反応管Raで再生プロセスが行われ、一方、まず反応管Rbで再生プロセスが行われた場合、次に反応管Rbで反応プロセスが行われ、これらのプロセスが交互に繰り返して行われる。
【0044】
再生ガスとしては、酸素濃度が0.01~100体積%の酸素含有ガスが好適に使用される。かかる酸素含有ガスを使用することにより、触媒上に炭素成分、硫黄成分、窒素成分等が付着(析出)して触媒活性が低下している場合であっても、これらの成分が酸素と反応する。その結果、これらの成分が対応する酸化物となって除去されるため、触媒活性が復活(すなわち、触媒が再生)する。
酸素含有ガスの酸素濃度は、1~100体積%であることが好ましく、10~70体積%であることがより好ましく、20~50体積%であることがさらに好ましい。酸素含有ガスの酸素濃度が上記範囲であれば、短時間で触媒活性が回復し易く、1,3-ブタジエンの収率が向上するとともに、酸素濃度が高濃度になり過ぎることを防止して、発熱による爆発の可能性の低減に寄与する。
【0045】
酸素含有ガスとしては、例えば、空気、酸素ガス、希釈用ガスで酸素ガスを希釈したガス等が挙げられる。希釈用ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスのような希ガス等が挙げられる。
酸素含有ガスは、酸素濃度を所望の濃度に調節し易い観点から、希釈用ガスで酸素ガスを希釈したガスであることが好ましい。入手容易性の観点からは、酸素含有ガスは、空気であることが好ましい。
そして、本発明では、触媒に対する原料ガスおよび再生ガスの下記式(1)で表される接触頻度を、500~50000に設定した。
接触頻度=(原料ガスおよび再生ガスの流量[kg/hr]×反応管Ra、Rb内の圧力[MPaA])/(反応管Ra、Rbの長手方向中央での横断面において触媒が占める面積[m2]×反応管Ra、Rbの外径[m]) ・・・ (1)
【0046】
かかる構成によれば、ブタジエンの収率の低下を伴うことなく、反応プロセスおよび再生プロセスに投入するエネルギーを小さくすることができる。また、反応管Ra、Rbの直前に、反応管Ra、Rbに供給する原料ガスおよび再生ガスを昇圧するための昇圧器を配置する必要がなくなるため、昇圧器に要するエネルギーも削減することができる。その結果、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量を削減することができる。
上記式(1)で表される接触頻度は、500~50000であればよいが、500~25000であることが好ましく、500~10000であることがより好ましく、500~5000であることがさらに好ましい。この場合、反応プロセスおよび再生プロセスに投入するエネルギーをより小さくすることができる。
【0047】
原料ガスおよび再生ガスの流量は、特に限定されないが、1000~100000kg/hrであることが好ましく、5000~50000kg/hrであることがより好ましい。
反応管Ra、Rb内の圧力も、特に限定されないが、0.02~5MPaAであることが好ましく、0.05~2MPaAであることがより好ましい。
反応管Ra、Rbの長手方向(鉛直方向)中央での横断面において触媒が占める面積(以下、「触媒層の横断面積」とも記載する。)は、0.1~10m2であることが好ましく、0.5~5m2であることがより好ましい。
さらに、反応管Ra、Rbの外径は、0.1~5mであることが好ましく、0.5~1mであることがより好ましい。
触媒層の横断面積および反応管Ra、Rbの外径を上記範囲とれば、反応管Ra、Rbの管厚(肉厚)の増大を防止することができる。この場合、例えば、原料ガスおよび再生ガスの加熱を反応管Ra、Rbの外側から行う際には、熱の反応管Ra、Rbの内側への移動がより迅速になされるようになる。
【0048】
本実施形態では、反応プロセスと再生プロセスとの間に、反応管Ra、Rbに不活性ガスを通過させる置換プロセスを有することが好ましい。置換プロセスを設けることにより、反応プロセスで副生する水素と、再生プロセスで使用する酸素含有ガスとが接触する可能性を十分に排除することができ、爆発の危険性をより確実に防止することができる。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガスのような希ガス等が挙げられる。
反応プロセスから再生プロセスへの昇温速度および再生プロセスから反応プロセスへの降温速は、反応プロセスの時間>(反応プロセスと再生プロセスとの温度差)÷(上記昇温速度)+(再生プロセスと反応プロセスとの温度差)÷(上記降温速度)+(置換プロセスの時間)+(再生プロセスの時間)なる関係を満足するように調整することが好ましい。これにより、ブタジエンの収率を維持しつつ、触媒の長寿命化を図ることができる。
【0049】
左辺の時間(反応プロセスの時間)をX[時間]とし、右辺の時間(再生プロセスを含む反応プロセスの時間以外の時間)をY[時間]としたとき、X-Yは、0.1時間以上であることが好ましく、0.5時間以上であることがより好ましく、1時間以上であることがさらに好ましい。なお、X-Yは、通常、10時間以下である。この場合、触媒を反応プロセスに使用できない時間を短縮して、ブタジエンの収率をより高めることができる。
昇温速度の具体的な値は、特に限定されないが、0.05~20℃/分が好ましく、0.1~10℃/分がより好ましい。
一方、降温速度の具体的な値も、特に限定されないが、0.05~20℃/分が好ましく、0.1~10℃/分がより好ましい。
【0050】
また、製造装置1は、反応プロセスにおいて、原料ガスを加熱する加熱機構を備えていることが好ましい。
図3~
図5は、それぞれ原料ガスを加熱する加熱機構の構成を示す概略図である。
図3に示す加熱機構20は、原料ガスに熱を供給する熱媒(例えば、気体、液体等)を移送可能な熱媒移送ライン21と、熱媒移送ライン21の途中に設けられた熱媒タンク22、熱交換器23および電熱器24とを備えている。
熱媒移送ライン21は、反応管Ra、Rbの外面に接触して設けられた配管29を有している。熱交換器(エコノマイザ)23および電熱器24により加熱された熱媒は、配管29を通過する際に、反応管Ra、Rbを介して、反応管Ra、Rb内の原料ガスを加熱することができる。
【0051】
熱交換器23は、例えば、温調装置TC2、温調装置TC3、温調装置TC5、温調装置TC6等に適用することができ、第2ラインL2または第3ラインL3を構成する一部の配管を屈曲させ、熱媒移送ライン21を構成する配管に接近させて構成することができる。かかる構成によれば、第1反応器3や第2反応器4を通過した後の高温の原料ガス(または中間ガス)を利用して、第1反応器3や第2反応器4に供給する前の熱媒を熱交換により加熱するため、熱の有効利用を図ることができる。したがって、追加するエネルギーを削減することができ、エネルギーの生成の際に発生する二酸化炭素を削減することができる。
このような熱交換器23は、例えば、ジャケット式熱交換器、浸漬コイル式熱交換器、二重管式熱交換器、シェル&チューブ式熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル式熱交換器等として構成することができる。
なお、加熱機構20では、熱交換器23および電熱器24のいずれか一方を省略してもよい。
【0052】
また、電熱器24は、熱媒移送ライン21内の熱媒を加熱する構成に代えて、反応管Ra、Rbを直接加熱するように構成することができる。
さらに、加熱機構20は、熱交換器23および電熱器24の少なくとも一方に代えて、または熱交換器23および電熱器24とともに、マイクロ波照射器を備えていてもよい。
マイクロ波照射器を使用すれば、反応管Ra、Rbおよび充填された触媒を比較的短時間で、目的の温度まで加熱することができる。また、触媒の表面付近のみならず、中心部まで均一に加熱し易い。さらに、触媒(原料ガス)の加熱温度を精密に制御し易い。よって、ブタジエンの製造効率をより高めることができる。
なお、マイクロ波照射器により熱媒を加熱するようにしてもよい。
【0053】
マイクロ波は、周波数300MHz~300GHzの電磁波を意味し、周波数300~3000MHzの極超短波(UHF)、周波数3~30GHzのセンチメートル波(SHF)、周波数30~300GHzのミリ波(EHF)、周波数300~3000GHzのサブミリ波(SHF)に分類される。中でも、マイクロ波としては、極超短波(UHF)が好ましい。極超短波(UHF)を使用することにより、触媒または反応管Ra、Rbをより短時間で、目的の温度まで加熱することができる。
なお、マイクロ波の照射を行う場合、電波法に準拠した電波の漏洩対策が適切に講じられる。
【0054】
また、マイクロ波の照射は、連続的に行ってもよく、間欠的(パルス的)に行ってもよい。
マイクロ波の照射を連続的に行えば、ブタジエンの収率および触媒の再生効率がさらに高まることを、本発明者らは知見している。その理由は、必ずしも明確ではないが、反応管Ra、Rb内に供給されるガスおよび触媒が、連続的に照射されるマイクロ波により活性化されることが要因であると考えられる。
一方、マイクロ波の照射を間欠的に行う場合には、ブタジエンの収率および触媒の再生時の吸熱反応に必要なエネルギー分だけを補償するように、所定のタイミングでマイクロ波を照射すればよいので、エネルギー効率を高めることができる。
【0055】
図4に示す加熱機構20では、熱媒移送ライン21は、第1分岐ライン21aと、第1分岐ライン21aと分岐した後、再度合流する第2分岐ライン21bとを備えている。
図4に示す構成例では、第1分岐ライン21aが反応管Ra、Rbの外面に接触して設けられた配管29を有し、第2分岐ライン21bが反応管Ra、Rbの内面に接触して設けられた配管28を有している。配管28は、反応管Ra、Rb内に設けられることにより、触媒にも直接接触している。かかる構成によれば、触媒(原料ガス)の加熱効率をより高めることができる。
【0056】
図5に示す加熱機構20では、熱媒移送ライン21は、第1分岐ライン21a、21cと、第1分岐ライン21a、21cと分岐した後、再度合流する第2分岐ライン21bとを備えている。
図5に示す構成例では、第1分岐ライン21a、21cがそれぞれ反応管Ra、Rbの外面に接触して設けられた配管29を有し、第2分岐ライン21bが反応管Ra、Rbの中心軸に沿って設けられた配管28を有している。配管28は、反応管Ra、Rbの中心軸に沿って設けられることにより、触媒層を貫通して触媒にも直接接触している。
【0057】
また、反応管Ra、Rbに対して、第1分岐ライン21a、21cにおける熱媒の移送方向は、長手方向(鉛直方向)の上から下に向かう方向であり、第2分岐ライン21bにおける熱媒の移送方向は、これとは逆方向、すなわち長手方向(鉛直方向)の下から上に向かう方向である。
このように、反応管Ra、Rbに対して異なる2方向に熱媒を通過させることにより、触媒(原料ガス)をより効率的に加熱することが可能となる。特に、反応管Ra、Rbの中心軸に沿って熱媒を通過させることにより、吸熱反応による触媒の低温化を防止することができる。そのため、ブタジエン転化反応を低下させることなく、かつ熱エネルギーを再利用することでブタジエンの生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量をさらに削減することができる。
【0058】
なお、各反応器3、4が、外容器に複数の反応管Ra、Rbを収納してなる構成の場合、第1分岐ライン21a、21cおよび第2分岐ライン21bは、それぞれ反応管Ra、Rbの内側、反応管Ra、Rbの外側かつ反応器(外容器)の内側、および反応器(外容器)の外側から選ばれる少なくとも1つに設けることができる。本構成は、使用する触媒と反応管、反応器との組合せにより適宜変更することができ、触媒反応状態を最適かつ一定に保ち、ブタジエン製造における熱エネルギーを最小限に抑えることを可能にする。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明のブタジエンの製造方法の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明のブタジエンの製造方法の第2実施形態で用いる製造装置の一部を示す模式図である。
以下、第2実施形態で用いる製造装置について、上記第1実施形態で用いる製造装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図6に示す製造装置1では、加熱機構の構成が異なり、それ以外は、上記第1実施形態の製造装置1と同様である。
【0060】
第2実施形態の加熱機構では、熱媒は、第1反応器3(反応管Ra、Rb)を通過した後の原料ガスであり、熱媒移送ラインは、原料ガスを移送するライン(原料ガス移送ライン)L2としても機能する。
そして、熱交換器(エコノマイザ)13は、第1反応器3を通過した後の原料ガスと第1反応器3を通過する前の原料ガスとの間で熱交換を行うように構成されている。また、第2ラインL2の途中であって、第1反応器3と熱交換器13との間には、昇圧器8が設けられている。
なお、原料タンク2とは独立した原料ガスの供給ラインを併設する場合は、熱交換器(エコノマイザ)13は、当該独立した原料ガスとの間で熱交換を行うように構成されていてもよい。
【0061】
かかる構成によれば、1つの熱交換器13で、
図1中の温調装置TC1および温調装置TC3の機能を発揮させることができる。
したがって、製造装置1の構成を簡略化するとともに、第1反応器3および昇圧器8の熱を効率よく利用することができる。このため、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量を削減することができる。
なお、
図6には、第1反応器3周辺の構成について示したが、第2反応器4周辺にも同様の構成を採用することができる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、本発明のブタジエンの製造方法の第3実施形態について説明する。
図7は、本発明のブタジエンの製造方法の第3実施形態で用いる製造装置の一部を示す模式図である。
以下、第3実施形態で用いる製造装置について、上記第1および第2実施形態で用いる製造装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図7に示す製造装置1では、加熱機構の構成が異なり、それ以外は、上記第1実施形態の製造装置1と同様である。
【0063】
第3実施形態の製造装置1では、温調装置TC1~TC3のそれぞれが熱交換器で構成されている。
そして、温調装置TC1と温調装置TC3とが、これらの間で熱媒を移送(循環)する熱媒移送ライン31で接続されて、加熱機構30が構成されている。また、温調装置TC1と温調装置TC2とが、これらの間で熱媒を移送(循環)する熱媒移送ライン41で接続されて、加熱機構40が構成されている。
かかる構成によれば、製造装置1の構成を簡略化するとともに、第1反応器3および昇圧器8の熱を効率よく利用することができる。このため、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量を削減することができる。
なお、
図7には、第1反応器3周辺の構成について示したが、第2反応器4周辺にも同様の構成を採用することができる。
【0064】
<第4実施形態>
次に、本発明のブタジエンの製造方法の第4実施形態について説明する。
図8は、再生ガスを加熱する第2加熱機構の構成を示す概略図である。
以下、第4実施形態の製造装置について、上記第1~第3実施形態の製造装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図8に示す製造装置1では、さらに、再生プロセスにおいて、再生ガスを加熱する第2加熱機構を備え、それ以外は、上記第1実施形態の製造装置1と同様である。
【0065】
図8に示す第2加熱機構90は、加熱機構20と分離して設けられ、再生ガスに熱を供給する再生用熱媒(第2熱媒)を移送可能な第2熱媒移送ライン91と、第2熱媒移送ライン91の途中に設けられた再生用熱媒タンク92、第2熱交換器93および第2電熱器94とを備えている。
第2熱媒移送ライン91は、反応管Ra、Rbの外面に接触して設けられた配管99を有している。第2熱交換器(エコノマイザ)93および第2電熱器94により加熱された再生用熱媒は、配管99を通過する際に、反応管Ra、Rbを介して、反応管Ra、Rb内の再生ガスを加熱することができる。
【0066】
第2熱交換器93は、例えば、温調装置TC2、温調装置TC3、温調装置TC5、温調装置TC6等に適用することができ、第2ラインL2を構成する一部の配管を屈曲させ、第2熱媒移送ライン91を構成する配管に接近させて構成することができる。かかる構成によれば、第1反応器3や第2反応器4を通過した後の高温の原料ガス(または中間ガス)を利用して、第1反応器3や第2反応器4に供給する前の熱媒を熱交換により加熱するため、熱の有効利用を図ることができる。したがって、追加するエネルギーを削減することができ、エネルギーの生成の際に発生する二酸化炭素を削減することができる。
このような第2熱交換器93は、熱交換器23と同様の構成とすることができる。
【0067】
かかる構成によれば、反応用熱媒の温度と再生用熱媒の温度とを大きく変動させる必要がなくなり、所定の温度に維持すればよい。このため、ブタジエンの製造に際して、投入するエネルギーを削減することができ、よって、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量も削減することができる。
なお、第2加熱機構90では、第2熱交換器93および第2電熱器94のいずれか一方を省略してもよい。
また、第2電熱器94は、第2熱媒移送ライン91内の再生用熱媒を加熱する構成に代えて、反応管Ra、Rbを直接加熱するように構成することができる。
【0068】
さらに、第2加熱機構90は、第2熱交換器93および第2電熱器94の少なくとも一方に代えて、または第2熱交換器93および第2電熱器94とともに、上記のマイクロ波照射器と同様の第2マイクロ波照射器を備えていてもよい。
第2マイクロ波照射器を使用すれば、反応管Ra、Rbおよび充填された触媒を比較的短時間で、目的の温度まで加熱することができる。また、触媒の表面付近のみならず、中心部まで均一に加熱し易い。さらに、触媒(再生ガス)の加熱温度を精密に制御し易い。よって、ブタジエンの製造効率をより高めることができる。
なお、第2マイクロ波照射器により再生用熱媒を加熱するようにしてもよい。
【0069】
なお、第2加熱機構90に代えて、再生プロセスにおいて、予め加熱された再生ガスを反応管Ra、Rbに供給する予熱再生ガス供給機構を設けるようにしてもよい。
この場合、多種類の熱媒を用意する必要がなくなるという利点がある。また、それぞれの熱媒を加熱するためのエネルギーが削減され、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量をより削減することができる。
【0070】
<第5実施形態>
次に、本発明のブタジエンの製造方法の第5実施形態について説明する。
以下、第5実施形態で用いる製造装置について、上記第1~第4実施形態の製造装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第5実施形態の製造装置1では、さらに、反応プロセス終了後、再生プロセス開始前において、触媒を加熱する第3加熱機構を備え、それ以外は、上記第4実施形態の製造装置1と同様である。
【0071】
この第3加熱機構は、加熱機構20および第2加熱機構90と分離して設けられ、触媒に熱を供給する昇温用熱媒(第3熱媒)を移送可能な第3熱媒移送ラインと、第3熱媒移送ラインの途中に設けられた昇温用熱媒タンク、第3熱交換器および第3電熱器とを備え、各部は、加熱機構20および第2加熱機構90と同様に構成することができる。
かかる構成によれば、反応用熱媒および再生用熱媒以外に、昇温用熱媒を使用するため、反応用熱媒の温度と再生用熱媒の温度とをさらに大きく変動させる必要がなくなり、所定の温度に維持すればよい。このため、ブタジエンの製造に際して、投入するエネルギーをより削減することができ、よって、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量も十分に削減することができる。
なお、第3加熱機構では、第3熱交換器および第3電熱器のいずれか一方を省略してもよい。
また、第3電熱器は、第3熱媒移送ライン内の昇温用熱媒を加熱する構成に代えて、反応管Ra、Rbを直接加熱するように構成することができる。
【0072】
さらに、第3加熱機構は、第3熱交換器および第3電熱器の少なくとも一方に代えて、または第3熱交換器および第3電熱器とともに、上記のマイクロ波照射器と同様の第3マイクロ波照射器を備えていてもよい。
第3マイクロ波照射器を使用すれば、反応管Ra、Rbおよび充填された触媒を比較的短時間で、目的の温度まで加熱することができる。また、触媒の表面付近のみならず、中心部まで均一に加熱し易い。さらに、触媒の加熱温度を精密に制御し易い。よって、ブタジエンの製造効率をより高めることができる。
なお、第3マイクロ波照射器により昇温用熱媒を加熱するようにしてもよい。
【0073】
<第6実施形態>
次に、本発明のブタジエンの製造方法の第6実施形態について説明する。
以下、第6実施形態で用いる製造装置について、上記第1~第5実施形態の製造装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第6実施形態の製造装置1では、さらに、再生プロセス終了後、反応プロセス開始前において、触媒を冷却する冷却機構を備え、それ以外は、上記第5実施形態の製造装置1と同様である。
【0074】
この冷却機構は、触媒から熱を除去する降温用熱媒(冷媒)を移送可能な冷媒移送ラインと、冷媒移送ラインの途中に設けられた冷媒タンク、第4熱交換器および冷却器とを備え、各部は、加熱機構20および第2加熱機構90と同様に構成することができる。
かかる構成によれば、反応用熱媒および再生用熱媒以外に、冷媒を使用するため、反応用熱媒の温度と再生用熱媒の温度とをさらに大きく変動させる必要がなくなり、所定の温度に維持すればよい。このため、ブタジエンの製造に際して、投入するエネルギーをより削減することができ、よって、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量も十分に削減することができる。
なお、冷却機構では、第4熱交換器および冷却器のいずれか一方を省略してもよい。
【0075】
第6実施形態の製造装置1では、反応プロセス、反応プロセスから再生プロセスへの昇温プロセス、再生プロセス、および再生プロセスから反応プロセスへの降温プロセスが、この順で繰り返して行われる。
この場合、反応管Ra、Rb内の温度を調整するのに予め加熱されたガスを使用するようにしてもよい。また、この場合、4つのプロセスには、互いにガス組成が異なるガスを使用することが好ましい。
【0076】
反応プロセスにおける第1ガスには、原料ガス自体を使用することが好ましく、再生プロセスにおける第3ガスには、再生ガス自体を使用することが好ましい。一方、昇温プロセスにおける第2ガスには、窒素ガスを使用することが好ましく、降温プロセスにおける第4ガスには、希ガスを使用することが好ましい。
また、この場合、第1ガスと第3ガスとの間で熱交換を行い、かつ第2ガスと第4ガスとの間で熱交換を行うことが好ましい。
熱媒の加熱降温操作が必要なくなり、また、熱交換を行うことで効率よく投入エネルギーを削減できる。そのため、ブタジエン生産量当たりにおける二酸化炭素の排出量を十分に削減することができる。
【0077】
以上、本発明のブタジエンの製造方法について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明のブタジエンの製造方法は、上記実施形態に対して、他の任意の目的の工程を有していてもよく、同様の機能を発揮する任意の工程と置換されていてよい。
また、上記第1~第6実施形態の任意の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…製造装置
2…原料タンク
3…第1反応器
4…第2反応器
5…精製部
51…軽炭化水素分離器
52…AcH精製器
53…EtOH精製器
54…BD抽出器
6…不活性ガスタンク
7…気化器
8…昇圧器
9…水素分離器
10…混合器
11…昇圧器
12…無機ガス分離器
13…熱交換器
20…加熱機構
21…熱媒移送ライン
21a…第1分岐ライン
21b…第2分岐ライン
21c…第1分岐ライン
22…熱媒タンク
23…熱交換器
24…電熱器
28…配管
29…配管
30…加熱機構
31…熱媒移送ライン
40…加熱機構
41…熱媒移送ライン
90…第2加熱機構
91…熱媒移送ライン
92…再生用熱媒タンク
93…熱交換器
94…電熱器
99…配管
L1…第1ライン
L2…第2ライン
L3…第3ライン
L4…第4ライン
L5…第5ライン
L6…第6ライン
L7…第7ライン
TC1…温調装置
TC2…温調装置
TC3…温調装置
TC4…温調装置
TC5…温調装置
TC6…温調装置