IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

特開2023-315841,3-ブタジエンの製造方法及び1,3-ブタジエンの製造装置
<>
  • 特開-1,3-ブタジエンの製造方法及び1,3-ブタジエンの製造装置 図1
  • 特開-1,3-ブタジエンの製造方法及び1,3-ブタジエンの製造装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023031584
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】1,3-ブタジエンの製造方法及び1,3-ブタジエンの製造装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/24 20060101AFI20230302BHJP
   C07C 11/167 20060101ALI20230302BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20230302BHJP
   C07C 45/29 20060101ALN20230302BHJP
   C07C 47/06 20060101ALN20230302BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230302BHJP
【FI】
C07C1/24
C07C11/167
B01J21/06 Z
C07C45/29
C07C47/06 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021137158
(22)【出願日】2021-08-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】西山 悠
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宣利
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 壮一郎
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA02B
4G169BC52B
4G169CB21
4G169CB63
4G169DA06
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169EC08Y
4G169EC14Y
4G169EC15Y
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC25
4H006AC45
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA30
4H006BA55
4H006BD84
4H006BE20
4H039CA29
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】高い収率で1,3-ブタジエンを連続的に製造できる1,3-ブタジエンの製造方法及びブタジエンの製造装置の提供。
【解決手段】エタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化し、中間ガスを得る、第1転化工程と、前記中間ガス、又は前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して得られる混合ガスを第2触媒に接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスを得る、第2転化工程と、を含み、前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御する、1,3-ブタジエンの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール含有ガスから1,3-ブタジエンを連続的に製造する1,3-ブタジエンの製造方法であって、
前記エタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化し、エタノール及びアセトアルデヒドを含む中間ガスを得る、第1転化工程と、
前記中間ガス、又は前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して得られる混合ガスを第2触媒に接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスを得る、第2転化工程と、を含み、
前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御する、1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項2】
前記第1転化工程と前記第2転化工程の間に、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減工程を有する、請求項1に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項3】
前記水素濃度低減工程は、前記中間ガス、又は前記混合ガスを気液分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する工程を含む、請求項2に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項4】
前記水素濃度低減工程は、前記中間ガス、又は前記混合ガスを希釈して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する工程を含む、請求項2又は3に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項5】
前記第1転化工程のエタノールの転化率が25~80%であり、アルデヒドの選択率が80~100%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項6】
前記第2転化工程のエタノール及びアセトアルデヒドの転化率が50%超である、請求項1~5のいずれか一項に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
【請求項7】
エタノール含有ガスから1,3-ブタジエンを連続的に製造する1,3-ブタジエンの製造装置であって、
転化手段を備え、
前記転化手段は、前記エタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化し、エタノール及びアセトアルデヒドを含む中間ガスとする第1反応器と、前記中間ガス、又は前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して得られる混合ガスを第2触媒に接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスとする第2反応器と、前記第1反応器と前記第2反応器の間に前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減装置と、を備える、1,3-ブタジエンの製造装置。
【請求項8】
前記第1反応器と、前記第2反応器の間に、前記中間ガス又は前記混合ガスを不活性ガスで希釈する希釈装置をさらに備える、請求項7に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
【請求項9】
さらに精製手段と、前記転化手段と前記精製手段を接続する接続配管と、を備え、前記精製手段は、前記転化手段で得られる前記1,3-ブタジエン含有ガスを精製する手段であり、前記接続配管は、少なくとも1つの屈曲部を有し、前記屈曲部における曲率半径が20mm以上である、請求項7又は8に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
【請求項10】
前記接続配管の内面における算術平均粗さが1.02μm以下である、請求項9に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
【請求項11】
前記接続配管の内面が、炭素数6~12の有機化合物でコーティングされている、請求項9又は10に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
【請求項12】
前記接続配管が、少なくとも一つのバイパスを有し、前記バイパスが取り外し可能である、請求項9~11のいずれか一項に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3-ブタジエンの製造方法及び1,3-ブタジエンの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3-ブタジエン等のブタジエンは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の原料として用いられている。1,3-ブタジエンの製造方法としては、例えば、エタノールを第1触媒に接触処理させて、エタノールをアセトアルデヒドに転化する第1工程と、さらにエタノール及びアセトアルデヒドを第2触媒に接触処理させて、1,3-ブタジエンに転化する第2工程と、を含む方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017-532318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1工程の反応では、アセトアルデヒドと等モル量の水素が生成する。本願の発明者らが、特許文献1に記載の第1工程と第2工程を含む1,3-ブタジエンの製造方法を検討した所、第1工程で生成した水素により、第2工程の1,3-ブタジエンの収率が低下することが判明した。
【0005】
さらに、高温化された水素は、ブタジエン製造プロセスの金属から構成される装置や配管を腐食することが知られている。特に、配管の屈曲部では流れるガスとの接触頻度が高くなった結果、配管が劣化しやすくなる。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであって、高い収率で1,3-ブタジエンを連続的に製造できる1,3-ブタジエンの製造方法及びブタジエンの製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] エタノール含有ガスから1,3-ブタジエンを連続的に製造する1,3-ブタジエンの製造方法であって、前記エタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化し、エタノール及びアセトアルデヒドを含む中間ガスを得る、第1転化工程と、前記中間ガス、又は前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して得られる混合ガスを第2触媒に接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスを得る、第2転化工程と、を含み、前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御する、1,3-ブタジエンの製造方法。
[2] 前記第1転化工程と前記第2転化工程の間に、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減工程を有する、[1]に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
[3] 前記水素濃度低減工程は、前記中間ガス、又は前記混合ガスを気液分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する工程を含む、[2]に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
[4] 前記水素濃度低減工程は、前記中間ガス、又は前記混合ガスを希釈して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する工程を含む、[2]又は[3]に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
[5] 前記第1転化工程のエタノールの転化率が25~80%であり、アルデヒドの選択率が80~100%である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
[6] 前記第2転化工程のエタノール及びアセトアルデヒドの転化率が50%超である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
[7] エタノール含有ガスから1,3-ブタジエンを連続的に製造する1,3-ブタジエンの製造装置であって、転化手段を備え、前記転化手段は、前記エタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化し、エタノール及びアセトアルデヒドを含む中間ガスとする第1反応器と、前記中間ガス、又は前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して得られる混合ガスを第2触媒に接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスとする第2反応器と、前記第1反応器と前記第2反応器の間に前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減装置と、を備える、1,3-ブタジエンの製造装置。
[8] 前記第1反応器と、前記第2反応器の間に、前記中間ガス又は前記混合ガスを不活性ガスで希釈する希釈装置をさらに備える、[7]に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
[9] さらに精製手段と、前記転化手段と前記精製手段を接続する接続配管と、を備え、前記精製手段は、前記転化手段で得られる前記1,3―ブタジエン含有ガスを精製する手段であり、前記接続配管は、少なくとも1つの屈曲部を有し、前記屈曲部における曲率半径が20mm以上である、[7]又は[8]に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
[10] 前記接続配管の内面における算術平均粗さが1.02μm以下である、[9]に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
[11] 前記接続配管の内面が、炭素数6~12の有機化合物でコーティングされている、[9]又は[10]に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
[12] 前記接続配管が、少なくとも一つのバイパスを有し、前記バイパスが取り外し可能である、[9]~[11]のいずれか一項に記載の1,3-ブタジエンの製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い収率で1,3-ブタジエンを連続的に製造できる1,3-ブタジエンの製造方法及びブタジエンの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかるブタジエンの製造装置の模式図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる水素濃度低減装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
【0011】
[1,3-ブタジエンの製造方法]
本実施形態の1,3-ブタジエンの製造方法は、エタノール含有ガスから1,3-ブタジエンを連続的に製造する方法であって、下記の工程B1及び工程B3を含む方法である。本実施形態の1,3-ブタジエンの製造方法は、下記中間ガス、又は下記混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御する。
工程B1:エタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化し、エタノール及びアセトアルデヒドを含む中間ガスを得る、第1転化工程。
工程B3:前記中間ガス、又は前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して得られる混合ガスを第2触媒に接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスを得る、第2転化工程。
【0012】
工程B3が、前記混合ガスを第2触媒に接触処理させて、前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスを得る第2転化工程である場合、工程B1と工程B3の間に工程B2を含む。
工程B2:第1転化工程で得た前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して混合ガスを得る混合ガス調製工程。
【0013】
工程B1における、エタノール含有ガスに特に制限はないが、例えば下記の工程Aにより調製されたエタノール含有ガスを用いてもよい。
工程A:エタノール供給原料からエタノール含有ガスを調製するガス調製工程。
【0014】
工程B3で製造された1,3-ブタジエン含有ガスを、例えば、下記の工程Cにより精製して、精製1,3-ブタジエンとしてもよい。
工程C:前記1,3-ブタジエン含有ガスを精製して精製1,3-ブタジエンを得る精製工程。
【0015】
(工程A)
工程Aは、圧力が-1.0~3.0MPaG、温度が-100~400℃の条件でエタノール供給原料を気化してエタノール含有ガスとする工程A1を含む。
なお、本明細書中において、「~」で表される数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を示す。
【0016】
エタノール供給原料は、エタノールを必須として含み、本発明の効果を損なわない範囲で、水等の他の成分を含んでもよい。エタノール供給原料中のエタノールの割合は、エタノール供給原料の総質量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、93質量%以上がさらに好ましい。エタノールの割合の上限は、理論的には100質量%である。
【0017】
エタノール供給原料としては、特に限定されず、例えば、シェールガス、石油等の化石由来のエタノールであってもよく、植物、動物、ゴミ等のバイオマス由来のバイオエタノールであってもよい。なかでも、窒素化合物や硫黄化合物等の不純物が少なく、触媒が劣化しにくい点から、バイオエタノールが好ましい。
【0018】
工程A1のエタノール供給原料の気化時の圧力は、-1.0~3.0MPaGの範囲で設定すればよく、-0.5~2.0MPaGが好ましく、-0.3~1.0MPaGがより好ましい。気化時の圧力が前記範囲の下限値以上であれば、気化した際の体積が過剰にならず機械設備の大きさを抑制できる。気化時の圧力が前記範囲の上限値以下であれば、効率的に気化する。
【0019】
工程A1のエタノール供給原料の気化時の温度は、-100~400℃の範囲で設定すればよく、0~200℃が好ましく、25~100℃がより好ましい。気化時の温度が前記範囲の下限値以上であれば、効率的に気化する。気化時の温度が前記範囲の上限値以下であれば、過剰な加熱が不要となる。
【0020】
工程Aは、必要に応じて、工程A1で得たエタノール含有ガスに1種以上のガスを混合し、エタノール含有ガス中のエタノールの濃度を0.1~100体積%の範囲内で調整する工程A2をさらに含んでもよい。
【0021】
エタノール含有ガスのエタノール濃度は、0.1~100体積%の範囲で調整すればよく、10~100体積%が好ましく、20~100体積%がより好ましい。エタノール濃度が前記範囲の下限値以上であれば、1,3-ブタジエンの収率が向上する。
本発明の一つの側面としては、エタノール含有ガス中のエタノール濃度は、0.1~95体積%が好ましく、10~90体積%がより好ましく、20~85体積%がさらに好ましい。
【0022】
エタノール含有ガスに混合するガス(希釈用ガス)としては、エタノールから1,3-ブタジエンまでの転化反応に悪影響を及ぼさない不活性ガスを使用でき、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の希ガス、二酸化炭素を例示できる。なかでも、価格及び入手しやすさの点から、窒素ガス、アルゴンガスが好ましい。エタノール含有ガスに混合するガスは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(工程B1)
工程B1では、例えば工程Aで得たエタノール含有ガスを後述の第1反応器に充填された第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化し、エタノール及びアセトアルデヒドを含む中間ガスを得る。工程B1の反応は、下式(1)で表される。
CHCHOH→CHCHO+H ・・・(1)
【0024】
第1反応器の態様としては、所定の圧力及び温度でエタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させることができるものであればよい。例えば、側壁部に熱媒が循環される反応器内に第1触媒を充填して反応床を形成し、供給されたエタノール含有ガスを反応床の第1触媒に接触処理させる態様を例示できる。反応床としては、特に限定されず、例えば、固定床、移動床、流動床を例示できる。
【0025】
工程B1では、2つ以上の並列の反応器を用いてもよい。工程B1において並列して設置する反応器の数は、適宜設定でき、例えば、2~5個とすることができる。
【0026】
第1触媒としては、エタノールからアセトアルデヒドへの転化反応を促進するものであればよく、例えば、酸化クロムと酸化銅の混合物、酸化亜鉛、酸化銅と酸化ケイ素の混合物を例示できる。なかでも、アセトアルデヒドへの転化率の点から、酸化銅と酸化ケイ素の混合物が好ましい。第1触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
工程B1の転化反応時の第1反応器内の全ガスの圧力は、0~1.0MPaGの範囲で設定すればよく、0~0.5MPaGが好ましく、0~0.3MPaGがより好ましい。工程B1の圧力が前記範囲の下限値以上であれば、エタノールの転化率が向上する。工程B1の圧力が前記範囲の上限値以下であれば、反応中の液化を抑制できる。
【0028】
工程B1の転化反応時の温度は、50~500℃の範囲で設定すればよく、200~500℃が好ましく、250~350℃がより好ましい。工程B1の温度が前記範囲の下限値以上であると、エタノールの転化率が向上する。工程B1の温度が前記範囲の上限値以下であれば、過剰なエネルギーの消費を抑制できる。
【0029】
本発明において、ガス空間速度(Gas Hourly Space Velocity:GHSV)は、標準状態換算のガス体積流量を触媒の体積で除したものとする。第1触媒に対するエタノール含有ガスのガス空間速度は、標準状態換算で、1000~20000h-1が好ましく、2000~15000h-1がより好ましく、3000~10000h-1がさらに好ましい。GHSVが前記下限値以上であると、エタノール含有ガスの処理能力が高くなる。GHSVが前記上限値以下であると、エタノールの転化率が向上する。
【0030】
第1触媒に対するエタノール含有ガス中のエタノールのGHSVは、標準状態換算で、500~20000h-1が好ましく、1000~15000h-1がより好ましく、1500~10000h-1がさらに好ましい。GHSVが前記下限値以上であると、エタノール含有ガスの処理能力が高くなる。GHSVが前記上限値以下であると、エタノールの転化率が向上する。
【0031】
第1触媒の金属種に対するエタノール含有ガス中のエタノールの重量空間速度(Weight Hourly Space Velocity:WHSV)は、20000~500000h-1が好ましく、50000~450000h-1がより好ましく、100000~400000h-1がさらに好ましい。WHSVが前記下限値以上であると、エタノール含有ガスの処理能力が高くなる。WHSVが前記上限値以下であると、エタノールの転化率が向上する。
WHSVは以下のようにして求めることができる。第1触媒に含まれる金属種の元素の含有量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置などにより測定し、酸化物換算に計算する。例えば、上述の酸化クロムはCr、酸化銅はCuO、酸化亜鉛はZnO、酸化ケイ素はSiOに換算する。エタノール含有ガス中のエタノールの流量(単位は例えば、kg/h)を上述の第1触媒に含まれる金属種の酸化物換算の質量(単位は例えば、kg)で除することによりWHSVを求めることができる。
【0032】
工程B1でのエタノールの転化率は、25~80%が好ましく、30~60%がより好ましく、40~50%がさらに好ましい。
なお、工程B1の「エタノールの転化率」とは、工程B1の反応器に供給されるエタノール含有ガス中のエタノールの単位時間当たりのモル数に対する、当該反応器で消費されたエタノールの単位時間当たりのモル数の比率(百分率)を意味する。工程B1の反応器中で消費されたエタノールの単位時間当たりのモル数は、工程B1の反応器に供給されるエタノール含有ガス中のエタノールの単位時間当たりのモル数から、工程B1の反応器から排出される中間ガス中のエタノールの単位時間当たりのモル数を差し引くことで算出される。
【0033】
工程B1の転化反応のアセトアルデヒドの選択率は、80~100%が好ましく、90~100%がより好ましい。なお、工程B1の「アセトアルデヒドの選択率」とは、工程B1の反応器中で消費されたエタノールの単位時間当たりのモル数に対する、アセトアルデヒドに変換されたエタノールの単位時間当たりのモル数の比率(百分率)を意味する。
工程B1で得られる中間ガスに含まれ得る副生物としては、クロトンアルデヒド、ブチルアルデヒド、酢酸エチル、酢酸等が挙げられる。
【0034】
工程B1の転化反応のアセトアルデヒドの収率は、25~80%が好ましく、30~70%がより好ましい。なお、工程B1の「アセトアルデヒドの収率」とは、「エタノールの転化率」×「アセトアルデヒドの選択率」を意味する。アセトアルデヒドの収率が前記上限値以下であると、生成する水素の量が低下し、後述の中間ガス又は混合ガス中の水素濃度が低下し、結果として1,3―ブタジエンの収率が向上する。
【0035】
(工程B2)
工程B2では、工程B1で得た前記中間ガスとエタノールを含有するガスとを混合して混合ガス得る。工程B2は、工程B1と工程B3の間で行う。
【0036】
混合ガス中のアセトアルデヒドに対するエタノールのモル比(エタノール/アセトアルデヒド)は、1~100が好ましく、1~50がより好ましく、1~20がさらに好ましく、1~10がよりさらに好ましく、1~5が特に好ましい。モル比が前記範囲内であると、1,3-ブタジエンの収率が向上する。
【0037】
工程B2では、第1転化工程で得た前記中間ガス中のモル比(エタノール/アセトアルデヒド)を分析計によって監視した結果に基づいて、不足するエタノールを増加させることで最適な反応比率になるようにエタノールを含有するガスを前記中間ガスに混合する。エタノールを含有するガスとしては、工程Aで得たエタノール含有ガスの一部、他の供給源から供給されるエタノール含有ガスの一部が挙げられる。これにより、モル比(エタノール/アセトアルデヒド)を前記範囲内に制御することが容易になる。
分析計は工程B2を実施する箇所~後述の工程B3における第2反応器の入口までの間、に設置され、経時的に第2反応器へ供給されるガスのモル比(エタノール/アルデヒド)を分析する。これにより、ブタジエン製造工程全体における各ガス流量の変化、触媒及び/又は機器の経時的な劣化に伴う各ガス流量の変化など、いずれのガス流量の変化も常時観察することができる。
分析計としては、例えば、プロセス質量分析計、ガス分析計等を例示できる。
【0038】
(工程B3)
工程B3では、工程B1で得た前記中間ガス、又は工程B2で得た前記混合ガスを後述の第2反応器に充填された第2触媒に接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを、1,3-ブタジエンに転化し、1,3-ブタジエン含有ガスを得る。工程B3の反応は、下式(2)で表される。
CHCHOH+CHCHO→CH=CH-CH=CH+2HO ・・・(2)
【0039】
工程B3における第2反応器の態様としては、第1反応器で例示した態様と同様の態様を例示できる。工程B3では、工程B1と同様に、2つ以上の並列の反応器を用いてもよい。工程B3において並列して設置する反応器の数は、適宜設定でき、例えば、2~5個とすることができる。
【0040】
第2触媒としては、エタノール及びアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンへの転化反応を促進するものであればよく、例えば、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、マグネシウム、亜鉛、ケイ素を例示できる。なかでも、1,3-ブタジエンの収率の点から、ハフニウムが好ましい。第2触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
第2触媒を使用する態様としては、例えば金属、酸化物、塩化物を例示でき、担体上に第2触媒を担持させて使用する態様や、2種以上の混合物として使用する態様を例示できる。
【0041】
工程B3の転化反応時の第2反応器内の全ガスの圧力は、0~1.0MPaGの範囲で設定すればよく、0~0.5MPaGが好ましく、0~0.3MPaGがより好ましい。工程B3の圧力が前記範囲の下限値以上であれば、1,3-ブタジエンの収率が向上する。工程B3の圧力が前記範囲の上限値以下であれば、過剰反応による1,3-ブタジエンの収率低下を抑制できる。
【0042】
工程B3の転化反応時の温度は、50~500℃の範囲で設定すればよく、300~400℃が好ましく、320~370℃がより好ましい。工程B3の温度が前記範囲の下限値以上であれば、1,3-ブタジエンの収率が向上する。工程B3の温度が前記範囲の上限値以下であれば、過剰反応による1,3-ブタジエンの収率低下を抑制できる。
【0043】
第2触媒に対する前記中間ガス又は前記混合ガスのGHSVは、標準状態換算で、100~5000h-1が好ましく、200~4000h-1がより好ましく、400~3000h-1がさらに好ましい。GHSVが前記下限値以上であると、前記中間ガス又は前記混合ガスの処理能力が高くなる。GHSVが前記上限値以下であると、エタノール及びアセトアルデヒドの転化率が向上する。
【0044】
第2触媒に対する前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドの合計のGHSVは、標準状態換算で、100~3000h-1が好ましく、200~2500h-1がより好ましく、400~2000h-1がさらに好ましい。GHSVが前記下限値以上であると、前記中間ガス又は前記混合ガスの処理能力が高くなる。GHSVが前記上限値以下であると、エタノール及びアセトアルデヒドの転化率が向上する。
【0045】
工程B3でのエタノール及びアセトアルデヒドの転化率は、50%超が好ましく、60%超がより好ましく、70%超がさらに好ましい。
なお、工程B3の「エタノール及びアセトアルデヒドの転化率」とは、工程B3の反応器に供給される前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数に対する、当該反応器中で消費されたエタノール及びアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数のモル比率を意味する。工程B3の反応器中で消費されたエタノール及びアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数は、工程B3の反応器に供給される前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数から、工程B3の反応器から排出される1,3-ブタジエン含有ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数を差し引くことで算出される。
【0046】
工程B3の転化反応の1,3-ブタジエンの選択率は、60%超が好ましく、70%超がより好ましく、80%超がさらに好ましい。なお、工程B3の「1,3-ブタジエンの選択率」とは、工程B3の反応器中で消費されたエタノール及びアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数に対する、1,3-ブタジエンに変換されたエタノール及びアセトアルデヒドの単位時間当たりのモル数の比率(百分率)を意味する。
【0047】
工程B3の転化反応の1,3-ブタジエンの収率は、40~90%が好ましく、50~90%がより好ましく、60~90%がさらに好ましい。なお、工程B3の「1,3-ブタジエンの収率」とは、「エタノール及びアセトアルデヒドの転化率」×「1,3-ブタジエンの選択率」を意味する。
【0048】
工程B3においては、アセトアルデヒドの65~100%が1,3-ブタジエンに転化されることが好ましい。
工程B3で得られる1,3-ブタジエン含有ガスに含まれ得る副生物としては、エチレン、プロピレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ブタノール、ヘキサノール、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセン、ヘキサジエン等が挙げられる。
【0049】
上述のような反応条件において、上述のようなエタノール及びアセトアルデヒドの転化率等の反応成績を示す場合、第2触媒の活性が非常に高いことを意味する。このような活性が非常に高い第2触媒を使用すると、第2触媒に金属酸化物が含まれる場合、前記金属酸化物のエタノール及びアセトアルデヒドに対する反応性のみならず、水素に対する反応性も高くなる。本願の発明者らが検討を行った結果、金属酸化物を含み活性が非常に高い第2触媒を使用すると、前記金属酸化物の水素に対する反応性が高くなりすぎ、前記金属酸化物がより活性の低い金属に還元され、第2触媒の活性が低下するという問題が発生することが判明した。さらに、前記金属酸化物により活性化された水素が工程B3で生成した1,3-ブタジエンの2重結合に付加することにより、ブテン等の副生成物の生成が増加するという問題が発生することも判明した。すなわち、本願の発明者らは、金属酸化物を含み活性が非常に高い第2触媒を使用し、かつ、前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度が高いと、ブタジエンの収率が低下するということを新たに知見した。
【0050】
本実施形態の1,3-ブタジエンの製造方法は、工程B3における、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御する。水素濃度は10体積%以下が好ましく5体積%以下がより好ましい。水素濃度が前記上限値未満であると、1,3―ブタジエンの収率が向上する。
【0051】
水素濃度の制御の方法としては、工程B1におけるアルデヒドの収率を前記上限値以下とすることが例として挙げられる。また、前記工程A2の希釈率によっても制御することができる。
本実施形態においては、工程B1と工程B3の間に水素濃度低減工程を設け、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を制御することが好ましい。水素濃度低減工程としては、特に限定されないが、例えば、下記工程B4-1~B4-4のいずれか一種以上の工程が挙げられる。
工程B4-1:前記中間ガス、又は前記混合ガスの一部を凝縮することで気液分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減工程。
工程B4-2:前記中間ガス、又は前記混合ガスを希釈して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減工程。
工程B4-3:前記中間ガス、又は前記混合ガスをガス分離器によりガス分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減工程。
工程B4-4:前記中間ガス、又は前記混合ガスをスクラバーにより気液分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する水素濃度低減工程。
【0052】
(工程B4-1)
工程B4-1では、工程B1で得た前記中間ガス、又は工程B2で得た前記混合ガスの一部を凝縮することで気液分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する。
【0053】
気液分離によって、エタノール及びアセトアルデヒドを含む液と水素を含むガスとに分離することができる。この場合、エタノール及びアセトアルデヒドを含む液を加熱し、再び気化して中間ガス又は混合ガスとして第2反応器に供給する。分離された水素を含むガスはそのまま別の用途として使用してもよく、微量含まれるエタノールやアセトアルデヒド、ブタジエンを蒸留などにより回収してもよい。
中間ガス又は混合ガスから水素を含むガスを分離する気液分離の条件としては、圧力が0~1.0MPaG、温度が0℃~100℃の条件が好ましい。
【0054】
(工程B4-2)
工程B4-2では、工程B1で得た前記中間ガス、又は工程B2で得た前記混合ガスを希釈して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する。
【0055】
工程B4-2では、工程B1で得た前記中間ガス、又は工程B2で得た前記混合ガス中の水素濃度を水素分析計によって監視した結果に基づいて、水素濃度が15体積%未満となるように希釈用ガスで希釈する。希釈用ガスとしては、工程A2で例示した希釈用ガスが例として挙げられる。
【0056】
(工程B4-3)
工程B4-3では、工程B1で得た前記中間ガス、又は工程B2で得た前記混合ガスをガス分離器によりガス分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する。
【0057】
ガス分離器は、例えば、低温分離方式(深冷方式)の分離器、圧力スイング吸着(PSA)方式の分離器、膜分離方式の分離器、温度スイング吸着(TSA)方式の分離器、金属イオン(例えば、銅イオン)と有機配位子(例えば、5-アジドイソフタル酸)とを複合化した多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer:PCP)を用いた分離器、アミン吸収を利用した分離器等のうちの1種又は2種以上を用いて構成することができる。
【0058】
(工程B4-4)
工程B4-4では、工程B1で得た前記中間ガス、又は工程B2で得た前記混合ガスをスクラバーにより気液分離して、前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を低減する。
【0059】
スクラバーによる分離では、工程B1で得た前記中間ガス、又は工程B2で得た前記混合ガスをエタノールやアセトアルデヒド等の溶媒を用いてスクラブ処理することで、エタノール及びアセトアルデヒドを含む液と水素を含むガスとに分離することができる。この場合、エタノール及びアセトアルデヒド、溶媒を含む液を加熱し、再び気化して中間ガス又は混合ガスとして第2反応器に供給する。
【0060】
水素分析計は、工程B1の第1反応器の出口~工程B3の第2反応器の入り口までの間に設置され、経時的に第2反応器へ供給される前記中間ガス、又は前記混合ガス中の水素濃度を分析する。前記混合ガス中の水素濃度を分析したい場合、水素分析計は、工程B2を実施する箇所~工程B3の第2反応器の入り口までの間に設置する。
水素分析計としては、例えば、インライン水素分析計、熱伝導式水素分析計、プロセス質量分析計、ガス分析計等を例示できる。
工程B4-1と工程B4-2の両方を行う場合は、工程B4-2は、工程B4-1よりも後に行うことが好ましい。工程B4-2と工程B4-4の両方を行う場合は、工程B4-2は、工程B4-4よりも後に行うことが好ましい。工程B4-1~4-4の全てを行う場合は、工程B4-4、工程B4-1、工程B4-3、工程B4-2の順番で行うことが好ましい。すなわち工程B4-2は最後に行うことが好ましい。
【0061】
(工程C)
工程Cは、下記工程C1~工程C4からなる群から選ばれる少なくとも1つの工程を含む。
工程C1:1,3-ブタジエン含有ガス中のブテン(1-ブテン、2-ブテン、イソブテン)を脱水素化反応させて1,3-ブタジエンに転化する。
工程C2:1,3-ブタジエン含有ガスから気液分離によって水素を含むガスを分離して1,3-ブタジエン含有液を得る。
工程C3:1,3-ブタジエン含有ガスの液化物又は1,3-ブタジエン含有液を蒸留してエチレン含有ガスと1,3-ブタジエン含有流出物とアセトアルデヒド含有液に分離する。
工程C4:アセトアルデヒド含有液を蒸留し、アセトアルデヒド含有ガスと、水を含む残液とに分離する。
【0062】
一般に、1-ブテン、2-ブテン、イソブテンは蒸留等によって1,3-ブタジエンと分離することが困難である。工程C1において、1-ブテン、2-ブテン、イソブテンを脱水素化反応させて1,3-ブタジエンに転化することで、1,3-ブタジエンの比率が高まる。なお、本実施形態の1,3-ブタジエンの製造方法では、前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御するため、1-ブテン、2-ブテン、イソブテンの生成は抑制される。
【0063】
工程Cにおいて工程C1と工程C3の両方を行う場合、工程C3の前に工程C1を行ってもよく、工程C3の後に工程C1を行ってもよい。
工程C1では、例えば、工程B3で得た1,3-ブタジエン含有ガス、又は工程C3で得た1,3-ブタジエン含有流出物を第3反応器に供給し、第3触媒の存在下、圧力が-1.0~1.0MPaG、温度が200~550℃の条件で1-ブテン、2-ブテン、イソブテンを脱水素化反応させて1,3-ブタジエンに転化する。
工程C1における第3反応器の態様としては、第1反応器で例示した態様と同様の態様を例示できる。
【0064】
第3触媒としては、1-ブテン、2-ブテン、イソブテンの脱水素化反応を促進するものであればよく、例えば、モリブデン、タングステン、ビスマス、スズ、鉄、ニッケルを例示できる。なかでも、1,3-ブタジエンの収率の点から、モリブデンが好ましい。第3触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
工程C1の脱水素化反応時の圧力は、-1.0~1.0MPaGの範囲で設定すればよく、-0.5~0.5MPaGが好ましく、-0.3~0.3MPaGがより好ましい。
工程C1の圧力が前記範囲の下限値以上であれば、1,3-ブタジエンの収率が向上する。工程C1の圧力が前記範囲の上限値以下であれば、過剰反応による1,3-ブタジエンの収率低下を抑制できる。
【0066】
工程C1の脱水素化反応時の温度は、200~550℃の範囲で設定すればよく、300~500℃が好ましく、300~450℃がより好ましい。工程C1の温度が前記範囲の下限値以上であれば、1,3-ブタジエンの収率が向上する。工程C1の温度が前記範囲の上限値以下であれば、過剰反応による1,3-ブタジエンの収率低下を抑制できる。
【0067】
工程C2では、工程B3で得た1,3ブタジエン含有ガス、又は工程C1を行った後の1,3ブタジエン含有ガスに対して気液分離を行い、水素を含むガスを分離して1,3-ブタジエン含有液を得る。工程A2、工程B4-2で窒素ガス等の希釈用ガスで前記エタノール含有ガス、前記中間ガス、又は前記混合ガスを希釈している場合、工程C2では水素ガスとともに希釈用ガスも分離される。
1,3ブタジエン含有ガスの気液分離の条件としては、圧力が0~1.0MPaG、温度が0~100℃の条件が好ましい。
【0068】
工程C3では、工程B3で得た1,3ブタジエン含有ガスの液化物、工程C1後の1,3ブタジエン含有ガスの液化物、又は工程C2後の1,3-ブタジエン含有液を蒸留塔に供給して蒸留する。これにより、エチレン含有ガスと1,3-ブタジエン含有流出物とアセトアルデヒド含有液に分離する。より具体的には、例えば、棚段式蒸留塔や充填型蒸留塔を用い、塔頂からエチレン含有ガスを抜き出し、塔底からアセトアルデヒド含有液を抜き出し、中間部から1,3-ブタジエン含有流出物を抜き出す。なお、工程C3では、2つの蒸留塔を用い、1つ目の蒸留塔でエチレン含有ガスを分離し、2つ目の蒸留塔で1,3-ブタジエン含有流出物とアセトアルデヒド含有液に分離してもよい。
【0069】
エチレン含有ガスには、エチレンの他、プロピレン、メタン、エタン等が含まれる。工程C1を行わずに工程B3で得た1,3ブタジエン含有ガスの液化物を蒸留した場合は、水素ガスと窒素ガス等の希釈用ガスは工程C3においてエチレン含有ガスとともに分離される。
アセトアルデヒド含有液には、アセトアルデヒドの他、エタノール、水等が含まれる。
【0070】
工程C2を行わずに工程C3を行う場合、工程C3ではエチレン含有ガスとともに水素を含むガスも分離される。また、工程A2、工程B4-2で窒素ガス等の希釈用ガスで前記エタノール含有ガス、前記中間ガス、又は前記混合ガスを希釈している場合、工程C3ではエチレン含有ガスとともに希釈用ガスも分離される。
【0071】
工程C4では、工程C3で得たアセトアルデヒド含有液を蒸留塔に供給し、アセトアルデヒド含有ガスと、水を含む残液とに分離する。
なお、工程Cで工程C3及び工程C4を行う場合、工程C3と工程C4を別々に行う態様には限定されず、工程C3と工程C4を1つの蒸留塔で一度に行ってもよい。
【0072】
工程C4で得られるアセトアルデヒド含有ガス中のアセトアルデヒドの含有量は、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、40体積%以上がさらに好ましい。アセトアルデヒドの含有量が前記下限値以上であれば、含有副生物が少ないため、アセトアルデヒドの回収、アセトアルデヒド含有ガスの再利用が容易になり経済性が向上する。
工程Cで得られる精製1,3-ブタジエンの純度は、95.0質量%以上が好ましく、99.0質量%以上がより好ましく、99.5質量%以上がさらに好ましい。
本実施形態において、工程C3及び工程C4による精製工程により、より純度の高い1,3-ブタジエン、アセトアルデヒド含有ガスを得ることができる。
【0073】
[1,3-ブタジエンの製造装置]
本実施形態の1,3-ブタジエンの製造装置は、エタノール含有ガスから1,3-ブタジエンを連続的に製造する製造装置である。本実施形態の1,3-ブタジエンの製造装置を用いることで、前述の1,3-ブタジエンの製造方法を実施できる。
本発明の1,3-ブタジエンの製造装置は、転化手段を備えている。本発明の1,3-ブタジエンの製造装置は、さらにガス調製手段と、精製手段とを備えていてもよい。また、本発明の1,3-ブタジエンの製造装置は、前記転化手段と、前記精製手段とを接続する接続配管を備えていてもよい。
【0074】
ガス調製手段は、工程Aのための手段であり、エタノール供給原料を気化してエタノール含有ガスとする気化器を備えている。気化器は、エタノール供給原料を気化できるものであればよく、公知の気化器を採用できる。
【0075】
転化手段は、工程B1~3、工程B4-1~4-4のための手段であり、工程B1を実施するための第1反応器と、工程B3を実施するための第2反応器と、前記第1反応器と前記第2反応器との間に工程B4-1~4-4を実施するための水素濃度低減装置及び/又は希釈装置を備えている。反応器の態様としては、所定の圧力及び温度でガスを触媒に接触させることができるものであればよい。例えば、側壁部に熱媒が循環される反応器内に触媒を充填して反応床を形成し、供給されたガスを反応床の触媒に接触させる態様を例示できる。反応床としては、特に限定されず、例えば、固定床、移動床、流動床を例示できる。水素濃度低減装置の態様としては、例えば、気液分離器、ガス分離器、スクラバー等が挙げられる。
【0076】
転化手段は、2つ以上の並列の第1反応器を備えていてもよい。転化手段は、2つ以上の並列の第2反応器を備えていてもよい。
【0077】
精製手段は、工程Cのための手段であり、例えば、気液分離器、蒸留塔、反応器等の1,3-ブタジエン含有ガスを精製可能な機器を備える。
精製手段が反応器を備えることで工程C1を実施できる。精製手段が気液分離器を備えることで工程C2を実施することができる。精製手段が蒸留塔を備えることで工程C3、工程C4を実施することができる。精製手段は、前記した機器の1つを単独で備えるものであってもよく、2つ以上の機器を組み合わせたものであってもよい。
【0078】
[実施形態]
以下、本実施形態の1,3-ブタジエンの製造方法及び製造装置の実施形態例を示して具体的に説明する。図1は、本実施形態の1,3-ブタジエンの製造装置100(以下、「製造装置100」とも記す。)の概略模式図である。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0079】
(製造装置)
製造装置100は、ガス調製手段1と、転化手段2と、精製手段3と、を備えている。
ガス調製手段1は、原料収容部102と、気化器104と、希釈用ガス収容部106と、を備えている。転化手段2は、第1反応器108と、水素濃度低減装置109と、第2反応器110と、を備えている。精製手段3は、気液分離器112と、第1蒸留塔114と、第3反応器116と、第2蒸留塔118と、回収部120と、を備えている。
【0080】
原料収容部102と気化器104とは配管10で接続されている。配管10には流量指示調節計11が設けられている。気化器104と第1反応器108とは配管12によって接続されている。配管12には、気化器104内の圧力に基づいて流量を調整する圧力指示調節計14、ミキサー16、熱交換器18、温度指示調節計20、弁22が気化器104側からこの順に設けられている。希釈用ガス収容部106は、配管24によって、配管12における圧力指示調節計14とミキサー16の間と接続されている。配管24には流量指示調節計26が設けられている。
【0081】
2つ以上の並列の第1反応器108と、水素濃度低減装置109とは、第1反応器108側が分岐している配管28によって接続されている。配管28の第1反応器108側の分岐部分にはそれぞれ弁30が設けられている。水素濃度低減装置109と、2つ以上の並列の第2反応器110とは、第2反応器110側が分岐している配管29によって接続されている。配管29の第2反応器110側の分岐部分にはそれぞれ弁32が設けられている。配管28には分析計34が設けられている。また、配管12の気化器104と圧力指示調整計14の間から分岐し、配管28の第1反応器108側の分岐部と分析計34との間に接続される配管36が設けられている。配管36には、流量指示調整計38が設けられており、分析計34の分析結果に基づいて配管36の流量を調整できるようになっている。配管29にはミキサー33、分析計35がこの順で設けられている。また、配管24の希釈用ガス収容部106と流量指示調節計26の間から分岐し、配管29の水素濃度低減装置109と分析計35との間に接続される配管37が設けられている。配管37には、流量指示調整計27が設けられており、分析計35の分析結果に基づいて配管37の流量を調整できるようになっている。水素濃度低減装置109は、工程B4-1を行う場合、熱交換器130、気液分離器132、及び気化器138がこの順で設置された水素濃度低減装置109-1である(図2)。気液分離器132は配管28と接続されおり、配管28上には熱交換器130が設けられている。気液分離器132は配管134と接続されている。気液分離器132と気化器138は配管136で接続されている。気化器138は配管29と接続されている。工程B4-3を行う場合、ガス分離器及び水素を含むガスを排出する配管が設置された水素濃度低減装置109-2(不図示)であり、工程B4-4を行う場合、スクラバー、気化器がこの順番で設置された水素濃度低減装置109-3(不図示)である。なお、水素濃度低減装置109-1~109-3のいずれか1つ以上を備えていればよい。
【0082】
2つ以上の並列の第2反応器110と気液分離器112とは接続配管40で接続されている。本実施形態においては、接続配管40が、転化手段と精製手段とを接続する接続配管である。接続配管40の第2反応器110側の分岐部分にはそれぞれ弁42が設けられ、また気液分離器112寄りの位置に熱交換器44が設けられている。接続配管40の弁42と熱交換器44との間には、3つの屈曲部R1、R2、R3が設けられている。本実施形態において屈曲部は3つであるが、屈曲部の数は特に限定されない。例えば、屈曲部の数は0~20でもよく、1~10でもよい。接続配管40には、バイパス41が並列に設けられており、バイパス41の分岐部分には、それぞれ弁45が設けられている。接続配管40のバイパス41と並行する部分には、弁43が設けられている。バイパス41の弁45で挟まれる部分は、取り外し可能になっている。接続配管40の弁43で挟まれる部分は、取り外し可能になっている。
気液分離器112と第1蒸留塔114とは配管46によって接続されている。配管46には、ポンプ48と、気液分離器112内の液面レベルに基づいて流量を調整するレベル指示調整計50とが、気液分離器112側からこの順に設けられている。
【0083】
第1蒸留塔114の塔頂には配管52が接続されている。また、気液分離器112の気相部と接続され、配管52に合流する配管54が設けられている。
第1蒸留塔114の中間部と第3反応器116とは配管56によって接続されている。
第3反応器116と回収部120とは配管58によって接続されている。
【0084】
第1蒸留塔114の塔底と第2蒸留塔118とは配管60によって接続されている。
【0085】
上述の接続配管40としては、耐食性、耐熱性を有するステンレス製の鋼管等が挙げられる。バイパス41としては、接続配管40と同様の鋼管等が挙げられる。
【0086】
接続配管40には、反応器110から排出される1,3-ブタジエン含有ガスが通流する。このため、接続配管40の内面(流路)には、転化反応で発生する副生成物が付着し得る。接続配管40の内面に副生成物が付着すると、接続配管40の詰まりや圧力損失の原因となる場合がある。このため、接続配管40は、以下の構成を有することが好ましい。
【0087】
転化工程で生成する副生成物としては、褐色油に含まれる不純物(重質物)、及び1,3-ブタジエン含有ガスに含まれる不純物(軽質物)等が挙げられる。
褐色油としては、例えば、炭素数5以上の炭化水素、炭素数3以上のアルコール、炭素数3以上のアルデヒド、炭素数2以上のケトン、炭素数3以上のエーテル、炭素数2以上のエステル、炭素数1以上のカルボン酸等が挙げられる。
褐色油の炭素数の上限は、特に限定されないが、例えば、50とされる。
【0088】
1,3-ブタジエン含有ガスに含まれる不純物(軽質物)としては、例えば、エチレン、プロピレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ブタノール、ヘキサノール、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、ペンテン、ペンタジエン、ヘキセン、ヘキサジエン等が挙げられる。
【0089】
接続配管における屈曲部として具体的には、接続配管40における屈曲部Rmなどが挙げられ、その曲率半径は、20mm以上が好ましく、25mm以上がより好ましく、30mm以上がさらに好ましい。屈曲部Rmにおける曲率半径が上記下限値以上であると、副生成物、特に褐色油を溜まりにくくできる。屈曲部Rmにおける曲率半径の上限値は特に限定されず、例えば、100mmとされる。
屈曲部Rmにおける曲率半径は、それぞれの屈曲部Rmの内面の曲線を円弧とみなしたときの円の半径で与えられる。ここで、mは、屈曲部の数であり、自然数である。mとしては、例えば、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~5がさらに好ましい。本実施形態において、mは、1~3である。なお、第2反応器110から離れるにつれて、図1に示されるようにmは増加する。例えば、図1に示すように、屈曲部を3つ有する場合、第2反応器110に最も近い屈曲部はR1であり、最も遠い屈曲部はR3となる。
なお、2本の直管を継手等で接続して屈曲部を形成している場合は、継手等の曲率半径を、接続配管40の屈曲部における曲率半径とみなす。
【0090】
屈曲部Rmの曲率半径(rRm(mm))を屈曲部Rmの内面の温度TRm(K)で除した値(rRm/TRm)は、0.03~100mm/Kが好ましく、0.05~80mm/Kがより好ましく、0.07~60mm/Kがさらに好ましい。rRm/TRmが上記下限値以上であると、温度TRmが高く、褐色油の流動性が上がるため、屈曲部Rmの内面に褐色油が溜まりにくい。rRm/TRmが上記上限値以下であると、曲率半径(rRm)が大きいため、屈曲部Rmの内面に褐色油が溜まりにくい。
【0091】
屈曲部Rmの曲率半径(rRm(mm))を屈曲部Rmの配管の半径(r’Rm(mm))で除した値(rRm/r’Rm)は、0.02~1.00が好ましく、0.03~0.80がより好ましく、0.05~0.60がさらに好ましい。rRm/r’Rmが上記下限値以上であると、屈曲部Rmの配管の半径(r’Rm(mm))が小さく、褐色油の分散性が上がるため、屈曲部Rmの内面に褐色油が溜まりにくい。rRm/r’Rmが上記上限値以下であると、屈曲部Rmの曲率半径(rRm(mm))が大きいため、屈曲部Rmの内面に褐色油が溜まりにくい。なお、屈曲部Rmの配管の半径(r’Rm(mm))とは、屈曲部Rmにおける配管の内径を2で除した長さを意味する。
【0092】
屈曲部Rmの曲率半径(rRm(mm))を屈曲部Rmの内面に付着した副生成物の粘度(μRm(mPa・s))で除した値(rRm/μRm)は、0.04mm/mPa・s以上が好ましく、0.05mm/mPa・s以上がより好ましく、0.06mm/mPa・s以上がさらに好ましい。rRm/μRmが上記下限値以上であると、屈曲部Rmの曲率半径(rRm(mm))が大きいため、屈曲部Rmの内面に褐色油が溜まりにくい。rRm/μRmの上限値は、特に限定されないが、例えば、1.0mm/mPa・sとされる。なお、屈曲部Rmの内面に付着した副生成物の粘度(μRm(mPa・s))は、屈曲部Rmの内面に付着した副生成物を10mL採取し、B型粘度計を用いて、190℃で測定される値とする。
【0093】
接続配管40は、内面における算術平均粗さ(Ra40(μm))が1.02μm以下が好ましく、1.00μm以下がより好ましく、0.90μm以下がさらに好ましく、0.80μm以下が特に好ましい。接続配管40の内面における算術平均粗さが上記上限値以下であると、副生成物、特に褐色油の付着を抑制できる。接続配管40の内面における算術平均粗さの下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μmとされる。
接続配管40の内面における算術平均粗さは、JIS B0601:2013に記載の粗さ曲線を、株式会社東京精密製のハンディサーフE-35Bを用いて、カットオフ値2.5にて測定される算術平均粗さである。
接続配管40の内面における算術平均粗さは、接続配管40の材質や、接続配管40のメンテナンス等により調節できる。
【0094】
接続配管40における内面の温度をT40(K)としたとき、上述した算術平均粗さの示す範囲において、接続配管40の算術平均粗さ(Ra40(μm))とT40との積(Ra40・T40)は、0.1~750μm・Kが好ましく、0.5~550μm・Kがより好ましく、1.0~480μm・Kがさらに好ましい。Ra40・T40が上記下限値以上であると、温度T40が高く、褐色油の流動性が上がるため、接続配管40の内面に褐色油が溜まりにくい。Ra40・T40が上記上限値以下であると、Ra40が小さいため、接続配管40の内面に褐色油が溜まりにくい。
なお、T40(K)は、接続配管40において、その算術平均粗さを有する位置における内面の温度とする。
【0095】
接続配管40における配管半径をr40(mm)としたとき、接続配管40の算術平均粗さ(Ra40(μm))とr40との積(Ra40・r40)は、0.002~1mmが好ましく、0.005~0.8mmがより好ましく、0.01~0.5mmがさらに好ましい。Ra40・r40が上記下限値以上であると、Ra40が小さいため、接続配管40の内面に褐色油が溜まりにくい。Ra40・r40が上記上限値以下であると、配管半径r40が広く、褐色油の分散性が上がるため、接続配管40の内面に褐色油が溜まりにくい。
なお、r40(mm)は、接続配管40において、その算術平均粗さを有する位置における配管の半径(配管の内径の1/2)とする。
【0096】
接続配管40における副生成物の粘度をμ40(mPa・s)とするとき、接続配管40の算術平均粗さ(Ra40(μm))をμ40で除した値(Ra40/μ40)は、0.0001μm/mPa・s以上が好ましく、0.0002μm/mPa・s以上がより好ましく、0.0005μm/mPa・s以上がさらに好ましい。Ra40/μ40が上記下限値以上であると、Ra40が小さいため、接続配管40の内面に褐色油が溜まりにくい。Ra40/μ40の上限値は、特に限定されないが、例えば、0.01μm/mPa・sとされる。
なお、μ40(mPa・s)は、接続配管40において、その算術平均粗さを有する位置における副生成物の190℃での粘度とする。
【0097】
接続配管40は、内面が炭素数6~12の有機化合物でコーティングされていることが好ましい。接続配管40の内面が炭素数6~12の有機化合物でコーティングされていることで、接続配管40の内面に褐色油が付着することを抑制できる。
炭素数6~12の有機化合物としては、例えば、炭素数7~10の炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、エーテル、エステル、カルボン酸、フェノール等が挙げられる。より具体的には、δ-ヘキサノラクトン、2,6-ジイソプロピルフェノール、1-アダマンチルメチルケトン等が挙げられる。
【0098】
本明細書において、「コーティングされている」とは、接続配管40の内表面に厚さ100mm以下のコーティング層が形成されていることをいう。コーティング層の厚さは、0.001~100mmが好ましく、0.01~10mmがより好ましい。コーティング層の厚さが上記下限値以上であると、接続配管40の内面に褐色油が付着することを抑制できる。コーティング層の厚さが上記上限値以下であると、配管の詰まりや圧力損失を抑制できる。コーティング層の厚さは、接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部を接続配管40の厚さ方向に切断した断面を顕微鏡等で観察することにより測定できる。この場合、接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部における流路から無作為に選択した10箇所についてコーティング層の厚さを測定し、その測定値の算術平均値を「コーティング層の厚さ」とする。
なお、「接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部」とは、接続配管40において、曲率半径が100mm以下であり、かつ、反応器110に最も近い部分をいうものとする。本実施形態では、屈曲部R1が、接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部である。
【0099】
接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部における内面の温度(TR1(K))は、反応器110の内面の温度(T110(K)、触媒層の中央部分の温度)に対して、-250℃以上が好ましく、-200℃以上がより好ましく、-150℃以上がさらに好ましい。接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部における内面の温度が上記下限値以上であると、接続配管40の内面に褐色油が付着することを抑制できる。接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部における内面の温度の上限値は、特に限定されないが、例えば、反応器110の内面の温度に対して、±0℃とされる。
【0100】
接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部における内面の温度低下(以下、単に「温度低下」ともいう。)は、反応器110の内面の温度(T110(K))に対して、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。温度低下が上記上限値以下であると、接続配管40の内面に褐色油が付着することを抑制できる。温度低下の下限値は、特に限定されないが、例えば、0%とされる。
なお、温度低下は、下記式(3)により求められる。
温度低下(%)=(T110(K)-TR1(K))/T110(K)×100・・・(3)
【0101】
接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部における配管半径(r’R1(mm))は、50~1000mmが好ましく、80~800mmがより好ましく、100~500mmがさらに好ましい。配管半径(r’R1(mm))が上記下限値以上であると、接続配管40の内面に褐色油が付着することを抑制できる。配管半径(r’R1(mm))が上記上限値以下であると、接続配管40のメンテナンスが容易になる。なお、配管半径(r’R1(mm))は、屈曲部R1における配管の半径(配管の内径の1/2)とする。
【0102】
接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部における配管半径の減縮率は、屈曲前の配管半径(r’(mm)、屈曲部の前段における配管の内径の1/2)に対して、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。配管半径の減縮率が上記上限値以下であると、接続配管40の内面に褐色油が付着することを抑制できる。配管半径の減縮率の下限値は、特に限定されないが、例えば、0%とされる。なお、配管半径の減縮率は、下記式(4)により求められる。
配管半径の減縮率(%)=(r’(mm)-r’(mm))/r’(mm)×100・・・(4)
式(4)において、r’(mm)は、屈曲後の配管半径(屈曲部の後段における配管の内径の1/2)である。
【0103】
接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部の内面に付着し得る副生成物の主成分としては、アセトアルデヒドが重合して生じる炭素数4以上の化合物が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、δ-ヘキサノラクトン、2,6-ジイソプロピルフェノール、1-アダマンチルメチルケトン等が挙げられる。これらの化合物は、製造装置100Aのバイパス41に捕捉された副生成物をガスクロマトグラフィー(GC)で分析することにより検出できる。
接続配管40の反応器110に最も近い屈曲部の内面に付着し得る副生成物の粘度(μR1(mPa・s))は、これらの化合物の混合比によって変化する。副生成物の粘度(μR1(mPa・s))は、100~800mPa・sが好ましい。副生成物の粘度(μR1(mPa・s))は、JIS Z8803:2011に記載の共軸二重円筒形回転粘度計(内筒定速方式)を用いて20℃にて測定される粘度である。
【0104】
接続配管40には、バイパス41が並列に設けられている。弁43を閉、弁45を開とすることで、1,3-ブタジエン含有ガスをバイパス41に通流させることができる。バイパス41の内面の算術平均粗さ(Ra41)をRa40よりも大きくすることや、バイパス41の内面の温度T41をT40よりも低くすることで、バイパス41の内面に副生成物、特に褐色油を溜めやすくできる。すなわち、バイパス41を副生成物のトラップとして利用できる。バイパス41に曲率半径が小さい屈曲部を設けたり、適当な格子サイズのフィルターを設置すること等で、トラップとしての機能をより高められる。
【0105】
バイパス41は、弁45で挟まれる部分が、取り外し可能になっている。バイパス41を取り外し可能とすることで、内面に副生成物が付着した場合に、新しいバイパスに交換したり、内面を清掃したりして、製造装置100の連続運転を停止せずに、メンテナンスをすることができる。バイパス41のメンテナンスを行う場合は、弁45を閉として、バイパス41を取り外して行う。また、バイパス配管によるトラップ以外にも、接続配管及び/又はバイパス配管上に適当な格子サイズの脱着可能なフィルターを設置して、付着、蓄積した副生成物を適宜取り除くことで製造装置をメンテナンスすることもできる。
【0106】
接続配管40の内面に副生成物が付着した場合は、弁43を閉とし、弁45を開として、1,3-ブタジエン含有ガスをバイパス41に通流させる。接続配管40の弁43で挟まれる部分は、取り外し可能になっているので、この部分をメンテナンスすることが可能である。
【0107】
接続配管40には、バイパス41以外のバイパスを設けてもよい。バイパス41以外のバイパスを設けることで、より多くの副生成物を回収できる。
バイパスの数は、1個でもよく、2個以上であってもよい。
【0108】
以下、製造装置100を用いる第1実施形態の1,3-ブタジエンの製造方法について説明する。
原料収容部102から配管10を通じて気化器104にエタノール供給原料を供給し、圧力が-1.0MPaG~1.0MPaG、温度が-100℃~200℃の条件でエタノール供給原料を気化してエタノール含有ガスとする(工程A1)。気化器104から配管12にエタノール含有ガスを送り出し、希釈用ガス収容部106から配管24を通じて窒素ガス(希釈用ガス)を合流させ、ミキサー16で混合する。そして、エタノール含有ガスのエタノール濃度を0.1体積%~100体積%の範囲内で調整する(工程A2)。
【0109】
エタノール濃度を調整したエタノール含有ガスを熱交換器18で加熱し、2つ以上の並列の第1反応器108に供給する。各々の第1反応器108において、例えば、圧力が0~1.0MPaG、温度が50℃~500℃の条件でエタノール含有ガスを第1触媒に接触処理させて、前記エタノール含有ガス中のエタノールの一部をアセトアルデヒドに転化する(工程B1)。各々の第1反応器108からエタノール及びアセトアルデヒドを含む中間ガスを配管28へと送り出す。
【0110】
気化器104(工程A1)で得たエタノール含有ガスの一部を、配管36を通じて中間ガスに混合して混合ガスを得る(工程B2)。分析計34によって第2反応器110に供給される中間ガス又は混合ガス中のモル比(エタノール/アルデヒド)を分析する。その結果に基づいて流量指示調整計38によって配管36からのエタノール含有ガスの流量を調整し、第2反応器110に供給する混合ガスのモル比(エタノール/アルデヒド)を1~100の範囲で調整する(工程B2)。具体的には、製造プロセスを運転中にモル比(エタノール/アルデヒド)が小さくなった場合、配管36から供給されるエタノール含有ガスの流量を増加させることで、モル比(エタノール/アルデヒド)を大きくすることができる。反対にモル比(エタノール/アルデヒド)が大きくなった場合、配管36から供給されるエタノール含有ガスの流量を減らすことによって、モル比(エタノール/アルデヒド)を小さくすることができる。
【0111】
前記中間ガス又は前記混合ガスを水素濃度低減装置109へ送る。前記中間ガス又は前記混合ガスをエタノール及びアセトアルデヒドと、水素を含むガスとに分離する。1実施形態においては、水素濃度低減装置109が上述の水素濃度低減装置109-1である場合、熱交換器130によって前記中間ガス又は前記混合ガスを冷却して気液分離器132に供給する。気液分離器132において、前記中間ガス又は前記混合ガスから水素を含むガスを分離する。詳細には、気液分離によって、エタノール及びアセトアルデヒドを含む液と、水素を含むガスとに分離することができる(工程B4-1)。この場合、エタノール及びアセトアルデヒドを含む液を気化器138によって加熱し、再び気化して前記中間ガス又は混合ガスとして配管29を通じて第2反応器110に供給する。気液分離器132で分離された水素を含むガスは、配管134を通じて外部で処理される。他の実施形態においては、水素濃度低減装置109が上述の水素濃度低減装置109-2である場合、前記中間ガス又は前記混合ガスをガス分離器に供給し、エタノール及びアセトアルデヒドを含むガスと水素を含むガスとに分離する(工程B4-3)。水素を含むガスは、水素を含むガスを排出する配管(不図示)から排出してもよい。エタノール及びアセトアルデヒドを含むガスは、前記中間ガス又は混合ガスとして第2反応器110に供給する。他の実施形態においては、水素濃度低減装置109が上述の水素濃度低減装置109-3である場合、前記中間ガス又は前記混合ガスをスクラバーにより気液分離し、エタノール及びアセトアルデヒドを含む液と、水素を含むガスとに分離する(工程B4-4)。この場合、エタノール及びアセトアルデヒドを含む液を気化器によって加熱し、再び気化して前記中間ガス又は混合ガスとして第2反応器110に供給する。水素を含むガスは、水素を含むガスを排出する配管(不図示)から排出してもよい。
【0112】
分析計35によって第2反応器110に供給される前記中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を分析する。その結果に基づいて、流量指示調節計27によって配管37からの窒素ガス(希釈用ガス)の流量を調整し、第2反応器110に供給する中間ガス又は混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御する(工程B4-2)。すなわち、希釈用ガス収容部106、配管37、流量指示調節計27、配管29、分析計35が本実施形態の希釈装置を構成する。
【0113】
中間ガス又は混合ガスを2つ以上の並列の第2反応器110に供給する。各々の第2反応器110において、例えば、圧力が0~1.0MPaG、温度が50℃~500℃の条件で前記中間ガス又は前記混合ガスを第2触媒と接触処理させて、前記中間ガス又は前記混合ガス中のエタノール及びアセトアルデヒドを1,3-ブタジエンに転化する(工程B3)。各々の第2反応器110から1,3-ブタジエン含有ガスを接続配管40へと送り出す。
【0114】
1,3-ブタジエン含有ガスを、熱交換器44によって冷却して気液分離器112に供給する。気液分離器112において、1,3-ブタジエン含有ガスから気液分離によって水素を含むガスを分離する。詳細には、気液分離によって、1,3-ブタジエン含有ガスを、水素ガス及び窒素ガス(希釈用ガス)と、1,3-ブタジエン含有液とに分離する(工程C2)。ポンプ48を駆動させ、1,3-ブタジエン含有液を気液分離器112から配管46を通じて第1蒸留塔114に供給し、第1蒸留塔114にて1,3-ブタジエン含有液を蒸留する。第1蒸留塔114の塔頂から配管52にエチレン含有ガスを抜き出し、塔底から配管60にアセトアルデヒド含有液を抜き出し、中間部から配管56に1,3-ブタジエン含有流出物を抜き出して、それぞれに分離する(工程C3)。配管52に抜き出したエチレン含有ガスは、気液分離器112の気相部から配管54に抜き出した水素ガス及び窒素ガス(希釈用ガス)と合流させて廃ガスとして処理する。
【0115】
配管56に抜き出した1,3-ブタジエン含有流出物を第3反応器116に供給し、第3触媒の存在下、1,3-ブタジエン含有流出物を脱水素化反応させて、1,3-ブタジエン含有流出物中のブテン(1-ブテン、2-ブテン、イソブテン)を1,3-ブタジエンに転化する(工程C1)。配管58によって、第3反応器116から回収部120に精製1,3-ブタジエンを送って回収する。
【0116】
第1蒸留塔114の塔底から配管60に抜き出したアセトアルデヒド含有液は第2蒸留塔118に供給して蒸留する。第2蒸留塔118の塔底から配管64に水を含む残液を抜き出し、塔頂からアセトアルデヒド含有ガスを抜き出す(工程C4)。
【0117】
なお、上記構成の製造装置100においては、第1反応器108と第2反応器110とを接続する配管28、配管29の経路に、第1触媒が第2反応器110内に混入するのを防止するための、集塵装置(不図示)を設置することが好ましい。
このような集塵装置を設置することにより、第2反応器110におけるエタノールからアセトアルデヒドへの転化反応を抑制することができ、エタノールが必要な第2触媒による1,3-ブタジエンへの転化を安定的に維持することが可能になる。
上記のような集塵装置としては、特に限定されないが、例えば、サイクロン、バグフィルター、又は充填層フィルターを例示できる。
【0118】
さらに、製造装置100においては、第1触媒又は第2触媒が、第1反応器108又は第2反応器110の後段側に流出するのを防止するため、これら各反応器の後段側、具体的には配管28、配管29及び接続配管40に図示略の触媒保持ユニットを設置することが好ましい。
このような触媒保持ユニットを設置することにより、第1反応器108又は第2反応器110から流出した第1触媒及び第2触媒が、これら各反応器以外の配管内などにおいて蓄積するのを防止できる。これにより、エタノール、又は、エタノール及びアセトアルデヒドから1,3-ブタジエンへの転化反応が、各反応器以外の箇所で生じることによる、炭素含有物の生成や、1,3-ブタジエンの収率の低下を抑制することが可能になる。
上記のような触媒保持ユニットとしては、特に限定されないが、例えば、グリッドサポート、多孔板、又はアルミナボール等が例示できる。
【0119】
以上説明したように、本実施形態は、工程A~工程Cを行う。特に工程B4-1又は工程4-2を行うことにより、第2反応器110に供給する中間ガス又は混合ガス中の水素濃度が15体積%未満となり、第2触媒の活性の低下、副反応を抑制することができ、1,3-ブタジエンの収率が向上する。
【0120】
なお、本発明の本発明の1,3-ブタジエンの製造方法は、前記した実施態様には限定されず、各工程で説明した構成を適宜組み合わせることができる。本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【実施例0121】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0122】
1.触媒の製造
まず、1.0gの塩化ハフニウム(HfCl:株式会社高純度化学研究所製)を、水100mLに溶解して、溶液を調製した。
次に、この溶液を、1.0gの多孔質担体(富士シリシア化学株式会社製のシリカ多孔質粒子、平均粒径:1.77mm、平均細孔直径:10nm、全細孔容積:1.01mL/g、比表面積:283m/g)に滴下した。
次に、多孔質担体が浸漬された溶液を、大気圧下、超音波洗浄機で、1時間攪拌した後、濾過により溶液を分離した。
回収された多孔質体を110℃で4時間乾燥した後、さらに400℃で4.5時間焼成して、触媒を製造した。
【0123】
2.触媒の評価(1,3-ブタジエンの製造)
各実施例及び各比較例で製造された触媒を用いて、エタノール及びアセトアルデヒドを1,3-ブタジエン(以下、「BD」とも記載する。)に変換し、1,3-ブタジエンの収率を求めた。
具体的には、まず、1.0gの触媒を直径1/2インチ(1.27cm)、長さ15.7インチ(40cm)のステンレス製円筒型の反応器に充填して反応床を形成した。
次に、反応温度(反応床の温度)を325℃とし、反応圧力(反応床の圧力)を0.1MPaとした。
この状態で、触媒に対するガス空間速度(GHSV)1200h-1で原料を反応器に供給し、1,3-ブタジエンを含む生成ガスを得た。
原料の供給開始1時間後に、生成ガスを回収した。
そして、回収した生成ガスをそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析し、BDの選択率、エタノール及びアセトアルデヒドの転化率、BDの収率([エタノール及びアセトアルデヒドの転化率]×[BDの選択率])を求めた。
なお、「BDの選択率」とは、触媒を用いた反応で消費された原料に含まれるエタノール及びアセトアルデヒドのモル数のうち、BDへ変換されたエタノール及びアセトアルデヒドのモル数が占める百分率である。
また、「エタノール及びアセトアルデヒドの転化率」とは、原料に含まれるエタノール及びアセトアルデヒドのモル数うち、消費されたエタノール及びアセトアルデヒドモル数が占める百分率である。
【0124】
[比較例1]
原料として、エタノール35体積%、アセトアルデヒド35体積%、水素30体積%の混合ガスを使用した。なお、体積%は気体換算であり、以下も同様である。
【0125】
[比較例2]
原料として、エタノール35体積%、アセトアルデヒド35体積%、窒素15体積%、水素15体積%の混合ガスを使用した。
【0126】
[実施例1]
原料として、エタノール35体積%、アセトアルデヒド35体積%、窒素20体積%、水素10体積%の混合ガスを使用した。
【0127】
[実施例2]
原料として、エタノール35体積%、アセトアルデヒド35体積%、窒素25体積%、水素5体積%の混合ガスを使用した。
【0128】
[実施例3]
原料として、エタノール35体積%、アセトアルデヒド35体積%、窒素30体積%の混合ガスを使用した。
【0129】
【表1】
【0130】
表1に示されるように、第2転化工程の原料中の水素濃度が15体積%以上である比較例1、2では、水素濃度が15体積%未満である実施例1~3よりもBD収率が低下することがわかった。すなわち、上述したように、第2転化工程に供される中間ガス又は前記混合ガス中の水素濃度を15体積%未満に制御することにより、高い収率で1,3-ブタジエンを連続的に製造できると考えられる。
【符号の説明】
【0131】
1…ガス調製手段、2…転化手段、3…精製手段、10…配管、11…流量指示計、12…配管、14…圧力指示調節計、16…ミキサー、18…熱交換器、20…温度指示調節計、22…弁、24…配管、26…流量指示調節計、27…流量指示調節計、28…配管、29…配管、30…弁、32…弁、34…分析計、33…ミキサー、35…分析計、36…配管、37…配管、38…流量指示調整計、40…接続配管、41…バイパス、42…弁43…弁、44…熱交換器、45…弁、46…配管、48…ポンプ、50…レベル指示調節計、52…配管、54…配管、56…配管、58…配管、60…配管、64…配管、100…1,3-ブタジエン製造装置、102…原料収容部、104…気化器、106…希釈用ガス収容部、108…第1反応器、109(109-1)…水素濃度低減装置、110‥第2反応器、112…気液分離器、114…第1蒸留塔、116…第3反応器、118…第2蒸留塔、120…回収部、130…熱交換器、132…気液分離器、134…配管、136…配管、138…気化器
図1
図2