▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032102
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20230302BHJP
F24F 11/62 20180101ALI20230302BHJP
F24F 11/70 20180101ALI20230302BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20230302BHJP
F24F 110/20 20180101ALN20230302BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/62
F24F11/70
F24F110:10
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138014
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝桐 大介
(72)【発明者】
【氏名】植竹 篤志
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA02
3L260BA05
3L260EA02
3L260FA02
(57)【要約】
【課題】主に、季節の移行期における、僅かな室温不足や室温過多の状態を自動的に解消して体調不良を予防し得るようにする。
【解決手段】
室温を調整する空調装置4と、空調装置4を操作する操作部5と、操作部5からの操作により空調装置4を制御する空調制御装置6とを備えた空気調和システム2に関する。
冬から春、または、秋から冬への季節の移行期に、室温が、予め設定した体調不良の契機となる下限温度41を下回った場合に、
空調制御装置6は、電源のオンオフに拘わらず、自動的に空調装置4による暖房運転を開始してユーザの暖房設定温度42まで室温を昇温するようにしている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温を調整する空調装置と、該空調装置を操作する操作部と、該操作部からの操作により前記空調装置を制御する空調制御装置とを備えた空気調和システムであって、
冬から春、または、秋から冬への季節の移行期に、室温が、予め設定した体調不良の契機となる下限温度を下回った場合に、
前記空調制御装置は、電源のオンオフに拘わらず、自動的に前記空調装置による暖房運転を開始してユーザの暖房設定温度まで室温を昇温することを特徴とする空気調和システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和システムであって、
前記空調制御装置は、前記自動的な暖房運転の際に、季節の移行期における体調不良と関連する風邪ひき指数に基づいて、前記下限温度と前記暖房設定温度の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする空気調和システム。
【請求項3】
請求項2に記載の空気調和システムであって、
前記下限温度は、前記操作部を用いて予め設定された日毎の値であり、
前記風邪ひき指数は、体感気温と、月ごとの基礎代謝と、最小湿度と、気温日格差と、前日温度差との少なくともいずれか2つ以上をポイント化して加算したその日の値であり、
前記下限温度および前記暖房設定温度は、前記風邪ひき指数をランク付けして、ランクごとに割り当てた補正値で補正されることを特徴とする空気調和システム。
【請求項4】
室温を調整する空調装置と、該空調装置を操作する操作部と、該操作部からの操作により前記空調装置を制御する空調制御装置とを備えた空気調和システムであって、
春から梅雨を介して夏、または、夏から秋への季節の移行期に、室温および室内湿度が、予め設定した体調不良の契機となる上限温湿度を上回った場合に、
前記空調制御装置は、電源のオンオフに拘わらず、自動的に前記空調装置による冷房運転を開始してユーザの冷房設定温度まで室温を降温することを特徴とする空気調和システム。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和システムであって、
前記空調制御装置は、前記自動的な冷房運転の際に、季節の移行期における体調不良と関連する不快指数および暑さ指数の少なくとも一方に基づいて、前記上限温湿度と前記冷房設定温度の少なくとも一方の補正を行うことを特徴とする空気調和システム。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和システムであって、
前記上限温湿度は、前記操作部を用いて予め設定された日毎の値であり、
前記不快指数または前記暑さ指数は、前記空調制御装置が、以下の式と、前記室温および前記室内湿度のデータとを用いて定期的に算出した値であり、
前記上限温湿度および前記冷房設定温度は、前記不快指数または前記暑さ指数をランク付けして、ランクごとに割り当てた補正値で補正されることを特徴とする空気調和システム。
(式)
不快指数=0.81×気温+0.01×湿度(0.99×気温-14.3)+46.3
または
暑さ指数(WBGT)=
(0.7×自然湿球温度)+(0.3×黒球温度)
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の空気調和システムであって、
前記操作部には、健康モードボタンが設けられ、
該健康モードボタンがオンになっているときに限り、前記空調制御装置は、前記空調装置による自動的な暖房運転または冷房運転を実行させることを特徴とする空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、夏季の高温時に、強制的に冷房運転を行うことで熱中症を予防する機能を備えた空気調和システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された空気調和システムでは、熱中症を予防する機能しか備えていないため、真夏の最も暑い時期の、明らかに危険な暑さのときにしか、強制的な運転が行われないという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に対して、本発明は、
室温を調整する空調装置と、該空調装置を操作する操作部と、該操作部からの操作により前記空調装置を制御する空調制御装置とを備えた空気調和システムであって、
冬から春、または、秋から冬への季節の移行期に、室温が、予め設定した体調不良の契機となる下限温度を下回った場合に、
前記空調制御装置は、電源のオンオフに拘わらず、自動的に前記空調装置による暖房運転を開始してユーザの暖房設定温度まで室温を昇温することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成によって、例えば、季節の移行期における、僅かな室温不足の状態を自動的に解消して体調不良を予防することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態にかかる空気調和システムを備えた建物の概略構成図である。
【
図2】(a)
図1の操作部の外観図、(b)操作部の構成図である。
【
図3】実施例1にかかる、室温の変化と、下限温度および暖房設定温度との関係を示す図である。縦軸は温度、横軸は時間である。
【
図4】下限温度と暖房設定温度を補正する様子を示す図である。
【
図5】実施例2にかかる、室内温湿度の変化と、上限温湿度および冷房設定温度との関係を示す図である。縦軸は温湿度(または温度)、横軸は時間である。
【
図6】縦軸を気温(乾球温度)、横軸を相対湿度として、暑さ指数をランク付けした一覧表である。
【
図7】上限温湿度と冷房設定温度とを補正する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図7は、この実施の形態の各実施例を説明するためのものである。
【実施例0010】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、建物1に、空気調和システム2を設置する。この空気調和システム2は、室温を調整する空調装置4と、空調装置4を操作する操作部5と、操作部5からの操作により空調装置4を制御する空調制御装置6とを備えている。
【0012】
更に、空気調和システム2は、少なくとも、室温を計測する温度計7と、室内湿度を計測する湿度計8と、タイマー9と、温度を設定する設定部11とを備えている。
【0013】
ここで、建物1は、戸建住宅や集合住宅やオフィスビルなど何でも良い。図では、建物1は、基礎12の上に、一つの居室空間13を有する建物本体14を載置固定した最も単純な構成の戸建住宅となっているが、建物1の構成はこれに限るものではない。
【0014】
空気調和システム2は、建物1の内部(室内)の温度環境を暖房や冷房などによって整えるためのシステムである。建物1の内部は、主に居室空間13となる。
【0015】
空調装置4は、室内の温度調整を行うための熱交換器であり、室内機15と室外機16とを有する。室内機15は建物1の内部に設置され、室外機16は建物1の外部に設置される。室内機15と室外機16との間には、冷媒の循環路が接続される。
【0016】
この実施例では、室内機15は、建物1の床下空間17に設置されている。室内機15は、床面18に設けた給気口19に給気ダクト21を介して接続される共に、床面18に設けた排気口22に排気ダクト23を介して接続されて、居室空間13に対して空調風24を給排し得るようになっている。ただし、室内機15は床下空間17に限らず、居室空間13内や天井空間内に設置しても良い。
【0017】
操作部5(
図2(a)(b))は、空調装置4を操作するためのリモコンである。操作部5は、空調装置4とは別に構成されて、例えば、居室内の壁面などに固定した状態、または、壁面に対して着脱可能な状態で設置される。操作部5は、有線または無線で空調制御装置6と接続される。そのために、操作部5の内部には、空調制御装置6や外部と通信を行うための通信部25が備えられる。
【0018】
操作部5の内部には、コンピュータなどの演算処理装置26や、メモリ27が備えられる。メモリ27には、操作部5の制御ソフトや後述する各種設定などが適宜記憶される(
図2(b))。
【0019】
操作部5の表面には、上記した設定部11の他に、少なくとも電源スイッチ28や、冷房や暖房などの運転モードの切替スイッチ29などの入力部(操作ボタンなど)が備えられる。操作部5の表面には、表示装置31が備えられる(
図2(a))。上記した操作部5の各構成や機能は、操作部5がなくても操作できるように、例えば、空調装置4(の室内機15)に対して一体的に設けても良い。
【0020】
空調制御装置6は、操作部5の操作に基づいて空調装置4を制御するコンピュータなどの演算処理装置であり、空調装置4の内部に、メモリ32や通信部33などと共に備えられている。メモリ32には、空調装置4の制御ソフトや後述する各種設定などが適宜記憶される(
図1)。
【0021】
室温は、建物1の内部(居室空間13)の温度である。温度計7は、室温を計測する計測器であり、主に、操作部5の内部や、空調装置4(の室内機15)などに備えられて、常時室温を計測する。
【0022】
室内湿度は、建物1の内部(居室空間13)の湿度である。湿度計8は、室内湿度を計測する計測器であり、主に、空調装置4(の室内機15)の内部(例えば、給気ダクト21との接続部分の近傍)や、建物1の内部(例えば、給気口19の周辺)や、操作部5などに備えられて、常時室内湿度を計測する。
【0023】
タイマー9は、日時を管理する計器であり、主に、操作部5や空調制御装置6の内部に備えられる。
【0024】
設定部11は、各種の温度などを設定するスイッチであり、操作部5や空調装置4(の室内機15)に設けられる。設定部11に設定された各種の温度は、操作部5や空調制御装置6のメモリ27,32に記憶される。
【0025】
また、室外機16には、上記とは別に、外気温を計測する温度計や、屋外の湿度を検出するための湿度計や、屋外の風速を検出するための風速計などの各種の検知器を、必要に応じて適宜備えることができる。
【0026】
上記は、以下の実施例で共通の構成である。上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにしても良い。
【0027】
(1)この実施例の空気調和システム2では、
図3に示すように、
冬から春、または、秋から冬への季節の移行期に、室温が、予め設定した体調不良の契機となる下限温度41を下回った場合に、
空調制御装置6が、電源(電源スイッチ28)のオンオフに拘わらず、自動的に空調装置4による暖房運転を開始してユーザの暖房設定温度42まで室温を昇温するようにしている。
【0028】
ここで、季節は、日本の場合、基本的に春夏秋冬の4つとなっている。季節の移行期は、春夏秋冬の4つの季節が入れ替わる中間期のことである。季節の移行期は、気候がはっきりせず、寒暖差が大きくなり易い微妙な時期であり、体調管理が難しい。
【0029】
季節の変化に伴う体の機能的な変化で見た場合、一年は季節の移行期を含めて以下のA~Hの8つの時期(シーズン)に分けることができる。
A.真冬期 (1月初旬~2月中旬) 低温期 乾燥期
B.冬春移行期 (2月下旬~3月末) 昇温期
C.春期 (4月初旬~梅雨入り) 昇温期 高湿度期
D.梅雨期 (梅雨入り~梅雨明け) 昇温期 高湿度期
E.真夏期 (梅雨明け~8月下旬) 高温期 高湿度期
F.初秋期 (8月下旬~9月末) 降温期
G.晩秋期 (10月初旬~11月末)降温期
H.初冬期 (12月初旬~12月末)降温期 乾燥期
【0030】
このうち、冬から春への季節の移行期は、主に、春先の「B.冬春移行期(2月下旬~3月末)」となる。また、秋から冬への季節の移行期は、主に、秋口の「G.晩秋期(10月初旬~11月末)」となる。
【0031】
通常の場合、暖房が行われるのは、主に、「A.真冬期」と「H.初冬期」の周辺である。また、通常の場合、冷房が行われるのは、主に、「E.真夏期」の周辺である。それ以外の時期については、体の熱収支で見ると冷房や暖房の必要性があるにも拘わらず、実際には、冷房や暖房はあまり行われていない。
【0032】
そこで、この実施例では、主に、春先の「B.冬春移行期(2月下旬~3月末)」や、秋口の「G.晩秋期(10月初旬~11月末)」などのあまり暖房が行われていない時期に自動的な暖房運転を行わせることで、不足分の体の熱収支を調整させる。
【0033】
なお、春先には、「春期(4月初旬~梅雨入り)」の一部または全部も含めることができる。また、秋口には「H.初冬期(12月初旬~12月末)」の一部または全部も含めることができる。現在が何月何日であるか、また、現在がどの時期に当たるかについては、タイマー9の時計機能によって管理する。
【0034】
室温は、室内の温度のことであり、温度計7によって(空調装置4がオフのときも含めて)常時計測される。
【0035】
季節の移行期における体調不良は、季節の移行期における気温の変化(気温変動)に、基礎代謝の変化による体の温熱感受性の変化がついて行けない(ズレが生じる)ことで起こるものと考えられる。このような、気温と温熱感受性とのズレは、気温変動を感じてから基礎代謝が遅れて変化することや、気温変動に基礎代謝を完全に一致させることが難しいことなどにより、避けられないものである。
【0036】
下限温度41は、自動的な暖房運転を開始するしきい値となる温度である。下限温度41は、季節の移行期における、体調不良の契機となる温度(例えば、僅かに室温不足を感じる温度)となるように、または、その温度に可能な限り近くなるように設定される。下限温度41は、例えば、多くの人が体調不良を起こし易い温度として、統計的に求めることができる。
【0037】
下限温度41は、例えば、統計的に求めた数値を空調制御装置6や操作部5(のメモリ27,32)に初期設定値として予め設定しておき、その初期設定値を通年で使用することができる。
【0038】
更に、下限温度41は、ユーザが好みに合わせて、初期設定値を中心とする所定の範囲内で、任意に調整・設定変更できるようにしても良い。これにより、ユーザは、下限温度41を自分の体調などに合うように最適に調整できる。
【0039】
この実施例では、下限温度41は、例えば、初期設定値が17℃~18℃、1℃間隔の調整幅で±5℃まで変更可能なように設定される。ただし、上記は一例であり、下限温度41は、上記に限るものではない。そして、例えば、下限温度41を18℃に設定した場合には、起床時間の前に室温が18℃以下になったら、自動的に暖房運転が開始されるようになる。
【0040】
室温が下限温度41を下回った場合とは、室温が下限温度41よりも低くなることである。室温が下限温度41を下回った場合の制御は、(室温<下限温度41)と、(室温≦下限温度41)とのどちらで行っても良い。室温が下限温度41を下回ったか否かの判断は、例えば、一定時間連続して上記関係が成立することを条件としても良い。一定時間は、例えば、1分間としても良いし、上記判断が成立した回数が所定数に達成するまでの時間などとしても良いし、そのどちらか長い方としても良い。
【0041】
電源(電源スイッチ28)のオンオフに拘わらずとは、空調装置4の電源がオンであっても、オフであっても強制的に暖房運転を行うことである。自動的な暖房運転は、電源がオンのときには既に行われているため、特に、暖房が行われていない電源がオフのときに有効な機能となる。
【0042】
自動的な暖房運転は、暖房設定温度42で一定時間(例えば、2~4時間程度の予め決められた自動運転時間)運転し、一定時間経過後に自動的に停止されるようにするのが好ましい。自動的な暖房運転の間に、ユーザの操作(例えば、温度変更や停止操作)があった場合には、ユーザの操作を優先して、自動的な暖房運転からユーザの操作通りの運転に切り替えるのが好ましい。ユーザの操作は、AIに学習させて、自動的な暖房運転の精度向上に利用しても良い。自動的な暖房運転は、その後も、室温が下限温度41を下回るたびに繰り返し行われるようにするのが好ましい。
【0043】
暖房設定温度42は、下限温度41よりも高ければ何度にしても良いが、例えば、季節の移行期に入る前の、暖房を日常的に使用していた時期(例えば、A.真冬期)の通常の暖房の設定をそのまま基準値として使えるようにするのが好ましい。これにより、ユーザが(自動的な暖房運転のための)暖房設定温度42を入力する手間を省略することができる。この通常の暖房の設定温度は、移行期に入る前の最も寒い時期を快適に過ごした、そのユーザにとって最適な室温であり、ユーザごとに異なる温度となっている。そのため、通常の暖房の設定温度は、季節の移行期に行う、体調不良を予防するための自動的な暖房運転においても、体調不良を起こし難く、しかも、ユーザにとって最適な室温を得るための有効な基準値になる。
【0044】
一般的には、季節の移行期には、あまり暖房が使われない傾向にあるが、通常の暖房の設定温度は、空調制御装置6や操作部5(のメモリ27,32)に設定として残されているので、季節の移行期にもそのままその設定を読み込むことで基準値として利用できる。
【0045】
なお、暖房設定温度42は、上記した基準値をそのまま使っても良いが、ユーザによって、自分に合うように調整、変更できるようにしても良い。暖房設定温度42は、通常の暖房のための設定を、自動的な暖房運転が行われている際に修正しても良いし、または、通常の暖房の設定とは別に自動的な暖房運転のための専用の設定として用意しておき、いつでも設定や修正ができるようにしても良い。暖房設定温度42は、例えば、1℃間隔の調整幅で±5℃まで変更可能としても良い。ユーザによる設定変更は、AIに学習させて、自動的な暖房運転の精度向上に利用しても良い。
【0046】
具体的には、例えば、下限温度41を18℃、暖房設定温度42を22℃に設定して自動運転を行うようにした場合、季節の移行期に、室温が18℃以下となったときに、室温が22℃となるように自動的に暖房が行われると共に、ユーザは、いつでも暖房設定温度42を、例えば、21℃や23℃などに変更することができる。
【0047】
(2)上記において、空調制御装置6は、自動的な暖房運転の際に、季節の移行期における体調不良と関連する風邪ひき指数に基づいて、下限温度41と暖房設定温度42の少なくとも一方の補正を行うようにしても良い。
【0048】
ここで、季節の移行期における体調不良の代表的なものは、例えば、風邪である。
【0049】
風邪ひき指数は、風邪をひき易い状況を示す指標であり、人体が感じる肌寒さの良い目安になる。そして、肌寒さは、風邪などの体調不良の原因になる。風邪ひき指数は、例えば、0~100の数値で表される。
【0050】
風邪ひき指数は、その値によって肌寒さの度合いを具体的に把握することができる。そして、風邪ひき指数は、客観的な数値であること、また、数値によって風邪のひき易さが分かるように考えて作られたものであることから、季節の移行期における体の温熱感受性の変化や、気温変動とのズレとの関連性が高く、季節の移行期の体調不良を表す数値として、最もふさわしい。そこで、この風邪ひき指数を、下限温度41および暖房設定温度42の補正に利用する。風邪ひき指数は、例えば、空調制御装置6や操作部5で常時または適時に(例えば、少なくとも1日に1回以上)算出される。
【0051】
風邪ひき指数は、例えば、気象庁や民間の気象会社などの外部機関によって常に最新情報(当日のデータや予報データなど)が公開されている。よって、風邪ひき指数は、比較的容易に得ることができる。風邪ひき指数は、数値が大きくなるほど、風邪をひき易くなる。風邪ひき指数の詳細については、後述する。
【0052】
そして、季節の移行期における気温変動と基礎代謝の変化とのズレによって温度に対する感じ方(温熱感受性)が変化するため、同じ温度であっても、熱く感じたり、寒く感じたりする。よって、体調不良の契機(きっかけ)となる下限温度41も変化する。この下限温度41の変化などに合わせるために補正が必要になる。
【0053】
補正は、下限温度41および暖房設定温度42の少なくとも一方を、その時期やその日の状況に合うように調整するために行われる。下限温度41を補正することで、自動的な暖房運転の開始のタイミングがその時期のその日に合わせて最適に調整される。また、暖房設定温度42を補正することで、自動的な暖房による室温がその時期のその日に合わせて最適化される。
【0054】
一般成人の快適な暮らしの温度の目安は、統計的にまた経験的に以下のようなものとされている。
快適温度
冬18~22℃
夏25~28℃
なお、赤ちゃんやお年寄りの場合には、冬は1~2℃高め、夏は1~2℃低めにするのが良いとされている。
【0055】
上記によれば、快適な温度の幅は、概ね4℃の間となっている。そして、下限温度41は、冬の快適温度の低い方の値である18℃の周辺に設定するのが良いことが分かる。また、暖房設定温度42は、冬の快適温度の高い方の値である22℃の周辺に設定される可能性が高いものと思われる。よって、補正は、例えば、以下のようなものなどとなる。
【0056】
具体的には、下限温度41:18℃、暖房設定温度42:22℃で自動運転を行うように設定した場合、春先は、寒さに慣れているため、室温が多少低めでも寒く感じないので、自動的な暖房運転は、低めの温度で作動が開始され、室温があまり高くならないように、例えば、下限温度41を17℃、暖房設定温度42を21℃に補正する。
【0057】
また、下限温度41:18℃、暖房設定温度42:22℃で自動運転を行うように設定した場合、秋口は、寒さに不慣れなため、室温をやや高めにしても寒く感じるので、自動的な暖房運転は、高めの温度で作動が開始され、室温が少し高くなるように、例えば、下限温度41を19℃、暖房設定温度42を23℃に補正する。
【0058】
このような下限温度41や暖房設定温度42の補正によって、自動的な暖房運転が、その日、その時期の僅かな温度変化に合うように調整されるため、常にユーザにとって快適な室温が得られる。ただし、上記は一例であるため、補正は、上記に限るものでなく、その日、その時期の状況によっては、補正されないことや、春先に高めの温度で作動され、秋口に低めの温度で作動されるように補正されることもあり得る。
【0059】
(3)上記において、空気調和システム2では、
下限温度41は、操作部5を用いて予め設定された日毎の値とされても良い。
風邪ひき指数は、体感気温と、月ごとの基礎代謝と、最小湿度と、気温日格差と、前日温度差との少なくともいずれか2つ以上をポイント化して加算したその日の値が使われても良い。
下限温度41および暖房設定温度42は、風邪ひき指数をランク付けして、ランクごとに割り当てた補正値41a,41bおよび補正値42a,42b(
図4)で補正されても良い。
【0060】
ここで、下限温度41が日毎の値とは、一日を通して同じ下限温度41の値が使用されること、または、下限温度41が一日間に限り有効な値として取り扱われるということである。ただし、装置の処理能力に余裕がある場合には、下限温度41は、より短い時間のみ(例えば、半日ごと、単位時間(1時間~数時間)ごとなど)有効な値として一日の間で逐次更新して使用するようにしても良い。この場合には、「日毎の値」を「時間ごとの値」などと読み替えるようにする。
【0061】
下限温度41は、上記したように、通年で有効な基準値が予め用意されると共に、基準値はユーザの好みやその日の判断によって所定の範囲内で任意に調整・変更できるようになっている。そのため、ユーザは、下限温度41を、基準値のままにして運用しても良いし、最初に一度、好みに合わせて調整したあと放っておいても良いし、状況に応じて頻繁に変更するようにしても良い。そして、下限温度41(基準値またはユーザの調整値)は、風邪ひき指数によって少なくとも毎日補正され、更新される。これにより、下限温度41は、最長で一日間のみ有効な値になる。
【0062】
風邪ひき指数は、体感気温、月ごとの基礎代謝、最小湿度、気温日格差、前日温度差、の5つの要素を用いて風邪のひき易さを表した指数である。各要素の詳細については後述する。
【0063】
屋外では、体感気温が風邪のひき易さに最も大きく影響することが感覚的に理解されるが、屋内の場合は、体感気温よりも、最小湿度と気温日格差の影響が風邪のひき易さに大きく影響する。これは、湿度が低い日に風邪をひき易かったり、一日の間の気温の変化が激しい日に風邪をひき易かったりすることからも理解できる。よって、屋内の場合、最小湿度と気温日格差が、比較的重要度の高い要素になる。よって、最低限、最小湿度と気温日格差のみを使って補正を行うことが可能となる。
【0064】
これに対し、屋内の場合、体感気温および前日温度差は、風邪のひき易さに対する影響が最小湿度や気温日格差よりも低くなるが、最小湿度と気温日格差が小さくなったときに、これら(体感気温および前日温度差)の影響が大きくなる傾向が見られた。
【0065】
そこで、これらの各要素の相関関係について、具体的にデータを取って調べたところ、「体感気温が15℃以上、前日温度差が-3℃未満」の条件を満たしていないときに風邪を引き易い状態になること、および、「気温日格差が8℃未満、最小湿度が50%以上」の条件を満たしていないときに風邪を引き易い状態になることが確認された。よって、このような調査結果に基づいて風邪ひき指数を下限温度41や暖房設定温度42の補正に利用する。
【0066】
以下、風邪ひき指数の5つの要素について説明する。
【0067】
体感気温は、実際に体が感じる温度感覚を数値化したものであり、風速や日射や湿度などの様々な環境的要因によって変化する。体感気温は、例えば、気温から風によって奪われる体温を引いた値(T-4√V(風速最大値))として得ることができる。この体感気温は、温度計7と速度計のデータから求めることができる。この場合、体感気温は、15℃以上が風邪のひき難さの基準となる。体感気温が15℃未満のときに風邪をひき易い状態になり、体感気温が15℃よりも低くなるほど風邪のひき易さが増して行くので、ポイントも大きくなる。
【0068】
月ごとの基礎代謝は、年間を通した基礎代謝の変化をまとめて、月別にポイントを与えたものである。月ごとの基礎代謝は、予め決められたその月のポイントをそのまま使用する。例えば、4月は全て0ポイント、5月は全て-3ポイントなどとなる。
【0069】
最小湿度は、一日の間の湿度の最小値である。最小湿度は、湿度計8のデータから求めることができる。最小湿度は、50%以上が風邪のひき難さの基準となる。最小湿度が50%未満のときに風邪をひき易い状態になり、50%よりも低くなるほど風邪のひき易さが増して行くので、ポイントも大きくなる。
【0070】
気温日格差は、一日の間の温度差であり、一日の最高気温と最低気温との差(最高気温-最低気温)である。気温日格差は、温度計7のデータから求めることができる。気温日格差は、8℃未満が風邪のひき難さの基準となる。気温日格差が8℃以上のときに風邪をひき易い状態になり、気温日格差が8℃よりも大きくなるほど風邪のひき易さが増して行くので、ポイントも大きくなる。
【0071】
前日温度差は、前日と当日との気温差であり、前日の最高気温と当日の最高気温との差(当日最高気温ー前日最高気温)である。前日温度差は、温度計7のデータから求めることができる。前日温度差は、-3℃未満が風邪のひき難さの基準となる。前日温度差は、-3℃以上のときに風邪をひき易い状態になり、前日温度差が-3℃より大きくなるほど風邪のひき易さが増して行くので、ポイントも大きくなる。
【0072】
そして、各要素のポイントを合計することで、風邪ひき指数が得られる。風邪ひき指数は、ポイントが大きくなるほど風邪をひき易くなる。
【0073】
また、風邪ひき指数は、上記したポイントを用いて毎回算出するやり方の他にも、例えば、温度と湿度からおおまかな風邪ひき指数のポイントが分かるようにした一覧表データを予め作成して空調制御装置6や操作部5のメモリ27,32に記憶しておき、記憶した一覧表データを使って温度計7の温度と湿度計8の湿度の関係から風邪ひき指数を直接導けるようにしても良い。このように、一覧表データを用いることで、暖房すべき目標の温度も同時に表に示されているので、下限温度41と暖房設定温度42との両方を簡単に補正することができる。
【0074】
また、風邪ひき指数は、空調制御装置6が直接算出する以外にも、外部のクラウドサービスを使って算出させても良いし、外部の気象データなどを直接ダウンロードして使用しても良い。風邪ひき指数は、上記したように、気象庁や民間の気象会社などの外部機関によって常に最新情報が公表されているので、これらの外部機関からその地域のデータを随時取り寄せて使用しても良い。この場合には、空調制御装置6や操作部5は、ネットワークを介して外部のクラウドサービスと接続したり、外部機関、または、外部機関からのデータを扱う別の外部機関などと接続したりするための通信部25を備えていることで、リアルタイムに外部のデータを受信できる。また、外部のデータを受信して使用する場合には、当日のデータ以外に、(前日の)予報データなどを使用することもできる。あるいは、データが更新されるごとに最新のデータを取り込んで使用することもできる。また、これらの外部のデータと、内部で算出したデータとを合わせて使用することもできる。
【0075】
風邪ひき指数のランク付けは、多段階、例えば、5段階に分けることができる。風邪ひき指数は、例えば、以下の5段階で評価する。
ランク5.要警戒レベル(18ポイント~)
ランク4.警戒レベル (14~17ポイント)
ランク3.要注意レベル( 9~13ポイント)
ランク2.注意レベル ( 4~ 8ポイント)
ランク1.引きにくい ( 0~ 3ポイント)
なお、ランク分けの項目は、例えば、「危険」「厳重警戒」「警戒」「注意」「安心」の5段階などとしても良い。
【0076】
ただし、ランク付けは、5段階に限るものではなく、3段階以上であれば良い。また、ランクごとの境界値は、適宜定めることができる。ランクの順位は逆にしても良い。
【0077】
補正値41a,41bおよび42a,42bは、風邪ひき指数のランクに応じて0.5℃~1.0℃とし、これを増減する。下限温度41と暖房設定温度42との両方を補正する場合には、同じ補正値41a,42aおよび41b,42bを使用するのが好ましい。
【0078】
ランクと補正値41a,41bおよび42a,42bとの関係は、例えば、以下のようにする。
ランク5(要警戒レベル)→ ±1℃
ランク4(警戒レベル) → ±1℃
ランク3(要注意レベル)→ ±0.5℃
ランク2(注意レベル) → ±0.5℃
ランク1(引きにくい) → 0℃
【0079】
補正値41a,41bおよび42a,42bは、直下のランクに対する差分である。補正値41a,41bおよび42a,42bは、自動的な暖房運転によってランク1の状態になるような値に設定されている。
【0080】
(4)上記において、空気調和システム2では、
操作部5に、健康モードボタン51(
図2)が設けられても良い。
健康モードボタン51がオンになっているときに限り、空調制御装置6は、空調装置4による上記した自動的な暖房運転を実行させるようにしても良い。
【0081】
ここで、健康モードボタン51は、自動的な暖房運転を行わせるための選択スイッチである。健康モードボタン51は、押すたびに、自動的な暖房運転のオンオフが切り替えられるようにしても良い。
【0082】
下限温度41および暖房設定温度42は、健康モードボタン51を押した後に、設定できるようにしても良いし、専用の温度設定モードを用意して随時設定できるようにしても良い。
【0083】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0084】
季節の移行期は、気温変動に伴って基礎代謝が大きく変化するが、気温変動と基礎代謝の変化との間に生じるズレによって、体調不良を起こし易い。しかし、季節の移行期には、ほんの少しのことと油断して暖房や冷房をあまり使用せずに好ましくない室温のまま我慢して過ごしてしまう傾向が多く見られる。そこで、季節の移行期に自動的に暖房を行わせることで、室温を適正化し体調不良を防止できるようにする。
【0085】
この際、季節の移行期は、基礎代謝の変化により、温度に対する感じ方(温熱感受性)が変わるので、冬から春に向かって冷え込みが緩み始めている時期や、秋から冬に向かって冷え込みが始まる時期において「暖房が欲しい」と思う温度も変わる。
【0086】
よって、一年中、暖房設定温度42が一律のままだと、「暖房が欲しいのにONにならない」「暖房が不要なのにONになった」などという不満が生じ易くなる。そして、不満だけではなく、体調不良の原因にも繋がる。
【0087】
そこで、季節の移行期に、体調不良防止のための自動的な暖房運転を行う際に、このような不満をなくすことも望まれる。
【0088】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果が得られる。
【0089】
(作用効果 1)季節の移行期において、室温が予め設定された体調不良の契機となる下限温度41を下回ったときに、空調制御装置6は空調装置4に自動的な暖房運転を強制的に行わせて、ユーザが自分で設定した好みの暖房設定温度42まで室温を上げる。
【0090】
これにより、室温が、下限温度41を下回らないように常に管理されると共に、室温が、ユーザ自身の暖房設定温度42まで上昇されて保たれるようになり、季節の移行期の気温変動に体の温熱感受性(または基礎代謝)の変化がついて行けないことで起こりがちな体調不良に対し、体調不良が起こり難い室内環境を、ユーザが気付かないうちに自動的に作り出すことができる。そのため、季節の移行期における、僅かな室温不足を解消し、僅かな室温不足を原因とする体調不良を予防できる。
【0091】
この際、室温を、ユーザが自分で設定した暖房設定温度42にすることで、ユーザ好みの室内環境を自動的に作り出すことができ、ユーザの不満をなくすことができる。また、暖房設定温度42を冬期における暖房使用時の設定温度にすれば、ユーザが自分で暖房設定温度42を設定する手間を省略することもできる。
【0092】
よって、寒暖差が大きく体調管理が難しいにも拘わらず、暖房を使わずに我慢して過ごしてしまいがちな季節の移行期における、ほんの僅かな室温不足を解消して、健康的で快適なユーザ好みの室内環境を得ることができる。しかも、ほんの僅かな室温不足に対して、ユーザがいちいち自ら暖房をつけたり、こまめに室温調整を行ったりするといった、非現実的で煩わしく手間のかかる操作をなくすことができ、また、ユーザの個人差に合った健康的で快適な室内環境を、戸別に実現することができる。更に、ほんの僅かな室温不足が生じたときに自動的に短時間運転して、室温不足を解消するだけなので、エネルギー消費も少なくて済む。
【0093】
なお、室温が低すぎる場合には、ユーザが自ら暖房をつけるので、この実施例の自動的な暖房運転は必要ないが、この実施例の自動的な暖房運転を使っていれば、上記により、室温が低くなりすぎることも防止できる。
【0094】
(作用効果 2)自動的な暖房運転の暖房設定温度42を、その日の風邪ひき指数に応じて変える(補正する)ようにしても良い。これにより、温度に対する感じ方の変化に、その日の天候の状況に合わせてきめ細かく対応することができる。
【0095】
また、下限温度41についても、その日の風邪ひき指数に応じて変える(補正する)ようにしても良い。これにより、自動的な暖房運転の開始のタイミングを、その日の天候の状況に合わせて最適に調整(早くしたり、遅くしたり)できる。
【0096】
しかも、風邪ひき指数を使用して補正を行うことで、ユーザがいちいち下限温度41および暖房設定温度42をその日の状況に合わせて手作業で変更・調整する手間もなくすことができる。
【0097】
よって、風邪ひき指数を使って、下限温度41および暖房設定温度42の補正を自動的に行わせることで、実際に「肌寒い」「暖房が欲しい」と感じるような状況のときに、体調不良防止のための自動的な暖房運転を行わせて肌寒さを感じさせない快適な室内環境にすることができ、反対に、「暖房が不要」と感じるときに、暖房運転を行わせないようにすることができる。そして、温度に対する感じ方の変化によるユーザごとの暖房に対する不満を、手間をかけずに解消することが可能になる。
【0098】
(作用効果 3)下限温度41は、日毎の値として使っても良い。これにより、自動的な暖房運転をその日に合った最適なタイミングで行わせることができる。
【0099】
風邪ひき指数は、その日の値を使用するようにしても良い。これにより、その日の状況に合わせて下限温度41およびユーザの暖房設定温度42を補正することができる。
【0100】
そして、下限温度41および暖房設定温度42を、風邪ひき指数のランクごとに割り当てた温度によって補正することで、補正を容易化すると共に、季節の移行期における日々の微妙な気温変動に合った細かな補正も行うことができる。
【0101】
よって、その日やその時に必要かどうかを正しく判断して、実際に必要となった場合に、空調装置4の電源がOFFとなっていても、その日やその時に合うように調整して体調不良防止のための自動的な暖房運転を行わせることができる。
【0102】
(作用効果 4)空調装置4の操作部5に、健康モードボタン51を設けて、健康モードボタン51をオンにしているときに限り、自動的な暖房運転が実行されるようにしても良い。これにより、ユーザは、操作部5に設けられた健康モードボタン51を最初に一度操作するだけで、その後は、特に意識することなく季節の移行期における体調不良防止のための自動的な暖房運転を継続的に行わせることが可能になる。また、健康モードボタン51をオフにすることで、ユーザは、自動的な暖房運転の不使用を選ぶことができる。
【実施例0103】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0104】
室温を調整する空調装置4と、空調装置4を操作する操作部5と、操作部5からの操作により空調装置4を制御する空調制御装置6とを備えた空気調和システム2については、上記実施例と同様である。
【0105】
更に、空気調和システム2が、室温を計測する温度計7や、室内湿度を計測する湿度計8や、タイマー9や、温度を設定する設定部11やその他の構成を備えている点についても、上記実施例と同様である。
【0106】
(2-1)この実施例の空気調和システム2では、
図5に示すように、
春から梅雨を介して夏、または、夏から秋への季節の移行期に、室温および室内湿度が、予め設定した体調不良の契機となる上限温湿度61を上回った場合に、
空調制御装置6が、電源(電源スイッチ28)のオンオフに拘わらず、自動的に空調装置4による冷房運転を開始してユーザの冷房設定温度62まで室温を降温するようにしている。
【0107】
ここで、季節、および、季節の移行期などについては、上記実施例と同様である。
【0108】
春から梅雨を介して夏への季節の移行期は、主に、夏前の「D.梅雨期(梅雨入り~梅雨明け)」となる。また、夏から秋への季節の移行期は、主に、秋口の「F.初秋期(8月下旬~9月末)」となる。
【0109】
この実施例では、主に、夏前の「D.梅雨期(梅雨入り~梅雨明け)」や、秋口の「F.初秋期(8月下旬~9月末)」などのあまり冷房が行われない時期に自動的に冷房運転を行わせることで、余剰分の体の熱収支を調整させる。
【0110】
なお、夏前には、「C.春期(4月初旬~梅雨入り)」「E.真夏期(梅雨明け~8月下旬)」の一部または全部を含めることができる。秋口には、「E.真夏期(梅雨明け~8月下旬)」の一部または全部を含めることができる。現在が何月何日であるか、また、現在がどの時期に当たるかについては、タイマー9の時計機能によって管理する。
【0111】
室温および室内湿度は、室内の温度および室内の湿度のことであり、温度計7および湿度計8によって(空調装置4がオフのときも含めて)常時計測される。
【0112】
季節の移行期における体調不良については、上記実施例と同様である。
【0113】
上限温湿度61は、自動的な冷房運転を開始するしきい値となる温度であり、湿度と関連付けた温度の値となっている。同じ温度でも湿度によって暑さに対する感じ方が変化する。上限温湿度61は、季節の移行期における、体調不良の契機となる温度および湿度(例えば、僅かに室温過多を感じる温度および湿度)となるように、または、その温度および湿度に可能な限り近くなるように設定される。上限温湿度61は、例えば、多くの人が体調不良を起こし易い温度および湿度として、統計的に求めることができる。
【0114】
上限温湿度61は、例えば、統計的に求めた数値を空調制御装置6や操作部5(のメモリ27,32)に初期設定値として予め設定しておき、その初期設定値を通年で使用することができる。
【0115】
更に、上限温湿度61は、ユーザが好みに合わせて、初期設定値を中心とする所定の範囲内で、任意に調整・設定変更ができるようにしても良い。これにより、ユーザは、上限温湿度61を自分の体調などに合うように最適に調整できる。
【0116】
この実施例では、上限温湿度61は、例えば、初期設定値が28℃~29℃(55%)相当、1℃間隔の調整幅で±5℃まで変更可能なように設定される。ただし、上記は一例であり、上限温湿度61は、上記に限るものではない。そして、例えば、上限温湿度61を28℃(55%)相当に設定した場合には、日中に室温および室内湿度が28℃(55%)相当以上になったら、自動的に冷房運転が開始されるようになる。
【0117】
室温および室内湿度が、上限温湿度61を上回った場合とは、室温が上限温湿度61の温度よりも高くなり、かつ、室内湿度が上限温湿度61の湿度よりも高くなることである。または、上限温湿度61相当の温度または湿度を越えることである。室温および室内湿度が、上限温湿度61を上回った場合の制御は、(上限温湿度61<(室温、室内湿度))と、(上限温湿度61≦(室温、室内湿度))とのどちらで行っても良い。室温や室内湿度が、上限温湿度61を上回ったか否かの判断は、例えば、一定時間連続して上記関係が成立することを条件としても良い。一定時間は、例えば、1分間としても良いし、上記判断が成立した回数が所定数に達成するまでの時間などとしても良いし、そのどちらか長い方としても良い。
【0118】
電源(電源スイッチ28)のオンオフに拘わらずとは、空調装置4の電源がオンであっても、オフであっても強制的に冷房運転を行うことである。自動的な冷房運転は、電源がオンのときには既に行われているため、特に、冷房が行われていない電源がオフのときに有効な機能となる。
【0119】
自動的な冷房運転は、冷房設定温度62で一定時間(例えば、2~4時間程度の予め決められた自動運転時間)運転し、一定時間経過後に自動的に停止されるようにするのが好ましい。自動的な冷房運転の間に、ユーザの操作(例えば、温度変更や停止操作)があった場合には、ユーザの操作を優先して、自動的な冷房運転からユーザの操作通りの運転に切り替えるのが好ましい。ユーザの操作は、AIに学習させて、自動的な冷房運転の精度向上に利用しても良い。自動的な冷房運転は、その後も、室温が上限温湿度61を上回るたびに繰り返し行われるようにするのが好ましい。
【0120】
冷房設定温度62は、上限温湿度61よりも低ければ良いが、例えば、季節の移行期に入る前の、冷房を日常的に使用していた時期(例えば、E.真夏期)の通常の冷房の設定をそのまま基準値として使えるようにするのが好ましい。これにより、ユーザが(自動的な冷房運転のための)冷房設定温度62を入力する手間を省略することができる。この通常の冷房の設定温度は、移行期に入る前の最も暑い時期を快適に過ごした、そのユーザにとって最適な室温であり、ユーザごとに異なる温度となっている。そのため、通常の冷房の設定温度は、季節の移行期に行う、体調不良を予防するための自動的な冷房運転においても、体調不良を起こし難く、しかも、ユーザにとって最適な室温を得るための有効な基準値になる。また、冷房時には、除湿が行われるので、冷房によって湿度も適宜調整される。
【0121】
一般的には、季節の移行期には、あまり冷房が使われない傾向にあるが、通常の冷房の設定温度は、空調制御装置6や操作部5(のメモリ27,32)に設定として残されているので、季節の移行期にもそのままその設定を読み込むことで基準値として利用できる。
【0122】
なお、冷房設定温度62は、上記した基準値をそのまま使っても良いが、ユーザによって、自分に合うように調整、変更できるようにしても良い。冷房設定温度62は、通常の冷房のための設定を、自動的な冷房運転が行われている際に修正しても良いし、または、通常の冷房の設定とは別に自動的な冷房運転のための専用の設定として用意しておき、いつでも設定や修正ができるようにしても良い。冷房設定温度62は、例えば、1℃間隔の調整幅で±5℃まで変更可能としても良い。ユーザによる設定変更は、AIに学習させて、自動的な冷房運転の精度向上に利用しても良い。
【0123】
具体的には、例えば、上限温湿度61を温度28℃(湿度55%)、冷房設定温度62を25℃に設定して自動運転を行うようにした場合、季節の移行期に、室温が28℃(湿度55%)相当以上になったときに、室温が25℃となるように自動的に冷房が行われると共に、ユーザは、いつでも冷房設定温度62を、例えば、24℃や26℃などに変更することができる。
【0124】
(2-2)上記において、空調制御装置6は、自動的な冷房運転の際に、季節の移行期における体調不良と関連する不快指数および暑さ指数の少なくとも一方に基づいて、上限温湿度61と冷房設定温度62の少なくとも一方の補正を行うようにしても良い。
【0125】
ここで、季節の移行期における体調不良は、例えば、暑気当たりや、夏風邪や、熱中症などである。これらの体調不良は、蒸し暑さなどによる不快感や、暑さによって生じる。
【0126】
不快指数は、主に蒸し暑さの指標であり、人体が感じる不快感の良い目安となる。そして、蒸し暑さは、季節の移行期に起こりがちな体調不良(例えば、暑気当たりや夏風邪など)の原因になる不快感である。
【0127】
蒸し暑さの感じ方は、人種や民族や地域などによって異なるので、不快指数は、人種や民族や地域などに応じて、使用する際の数値の扱い方を適宜調整する必要がある。
例えば、日本人の場合、不快指数と蒸し暑さの感じ方との関係は、以下のようになる(ランク付けされる)ことが分かっている。
【0128】
不快指数 感じ方
55未満 寒い
55以上60未満 肌寒い
60以上65未満 何も感じない
65以上70未満 快い
70以上75未満 暑くない
75以上80未満 やや暑い
80以上85未満 暑くて汗が出る
85以上 暑くてたまらない
なお、50以下は寒すぎるため、上記は、50以上での評価となっている。65以上70未満の「快い」状態が制御の際の基準になる。
【0129】
一方、暑さ指数(WBGT値)は、人体と外気との熱収支の指標(または、人体の熱収支に影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標)であり、例えば、熱中症の指標として使われている。暑さは、熱中症などの体調不良の原因になる。
【0130】
不快指数や暑さ指数は、その値によって蒸し暑さなどの不快感や、熱中症の危険を生じる暑さ(危険度)を具体的に把握することができる。そして、不快指数や暑さ指数は、室温と湿度によって簡単に算出できる客観的な数値であること、また、数値と蒸し暑さや熱中症の危険度との関係が明確になっていることから、季節の移行期における体の温熱感受性の変化や、気温変動とのズレとの関連性が高く、季節の移行期の体調不良を表す数値として、最もふさわしい。そこで、このような不快指数や暑さ指数を、上限温湿度61および冷房設定温度62の補正に利用する。不快指数や暑さ指数は、例えば、空調制御装置6や操作部5で常時または適時に(例えば、少なくとも1日に1回以上)算出される。
【0131】
なお、不快指数は湿度の依存度が大きく、暑さ指数は温度の依存度が大きいため、それぞれが示す体調不良は同じではない(または、それぞれが異なる種類の体調不良を示す指標となる)。よって、不快指数と暑さ指数は、どちらか一方を使用しても良いし、両方を使用しても良い。
【0132】
そして、上限温湿度61および冷房設定温度62の補正は、不快指数と暑さ指数とでそれぞれ別々に行っても良いし、どちらか一方のみで行っても良い。不快指数に基づいた補正により、不快感による体調不良(暑気当たりや夏風邪など)を防止するための冷房運転が行われる。また、暑さ指数に基づいた補正により、熱中症を防止するための冷房運転が行われる。
【0133】
不快指数や暑さ指数は、例えば、気象庁や民間の気象会社などの外部機関によって常に最新情報(当日のデータや予報データなど)が公開されている。よって、不快指数や暑さ指数は、比較的容易に得ることができる。不快指数や暑さ指数は、数値が大きくなるほど、体調不良を起こし易くなる。不快指数や暑さ指数の詳細については、後述する。
【0134】
そして、季節の移行期における気温変動と基礎代謝の変化とのズレによって温度に対する感じ方(温熱感受性)が変化するため、同じ温度であっても、熱く感じたり、寒く感じたりする。よって、体調不良の契機(きっかけ)となる上限温度も変化する。この上限温度の変化などに合わせるために補正が必要になる。
【0135】
補正は、上限温湿度61と冷房設定温度62の少なくとも一方を、その時期やその日の状況に合うように調整するために行われる。上限温湿度61を補正することで、自動的な冷房運転の開始のタイミングがその時期のその日に合わせて最適に調整される。また、冷房設定温度62を補正することで、自動的な冷房による室温がその時期のその日に合わせて最適化される。
【0136】
一般成人の快適な暮らしの温度・湿度の目安は、統計的にまた経験的に以下のようなものとされている。
快適温度 湿度
冬18~22℃ 45~60%
夏25~28℃ 55~65%
なお、赤ちゃんやお年寄りの場合には、冬は1~2℃高め、夏は1~2℃低めにするのが良いとされている。
【0137】
上記によれば、快適な温度の幅は、概ね4℃の間となっている。また、上記温度における湿度の幅は、概ね15%の間となっている。そして、上限温湿度61は、夏の快適温度の高い方の値である28℃(湿度55%)相当の周辺に設定するのが良いことが分かる。また、冷房設定温度62は、夏の快適温度の低い方の値である25℃の周辺に設定される可能性が高いものと思われる。よって、補正は、例えば、以下のようなものとなる。
【0138】
具体的には、上限温湿度61:28℃(湿度55%)相当、冷房設定温度62:25℃で自動運転を行うように設定した場合、夏前は、暑さに不慣れなため、室温がやや低めでも暑く感じるので、自動的な冷房運転は、低めの温度で作動が開始され、室温が少し低くなるように、例えば、上限温湿度61を27℃(湿度55%)相当、冷房設定温度62を24℃に補正する。
【0139】
また、上限温湿度61:28℃(湿度55%)相当、冷房設定温度62:25℃で自動運転を行うように設定した場合、秋口は、暑さに慣れているため、室温が多少高めでも暑く感じないので、自動的な冷房運転は、高めの温度で作動が開始され、室温が少し高くなるように、例えば、上限温湿度61を29℃(湿度55%)相当、冷房設定温度62を26℃に補正する。
【0140】
このような上限温湿度61や冷房設定温度62の補正によって、自動的な冷房運転が、その日、その時期の僅かな温度変化に合うように調整されるため、常にユーザにとって快適な室温が得られる。ただし、上記は一例であるため、補正は、上記に限るものでなく、その日、その時期の状況によっては、補正されないことや、夏前に高めの温湿度で作動され、秋口に低めの温湿度で作動されるように補正されることもあり得る。
【0141】
(2-3)上記において、空気調和システム2では、
上限温湿度61は、操作部5を用いて予め設定された日毎の値とされても良い。
不快指数または暑さ指数は、空調制御装置6が、以下の式と、(温度計7の)室温および(湿度計8の)室内湿度のデータとを用いて定期的に算出した値が使われても良い。
上限温湿度61および冷房設定温度62は、不快指数または暑さ指数をランク付けして、ランクごとに割り当てた補正値61a,61bおよび補正値62a,62b(
図7)で補正されても良い。
【0142】
ここで、上限温湿度61が日毎の値とは、一日を通して同じ上限温湿度61の値が使用されること、または、上限温湿度61が一日間に限り有効な値取り扱われるということである。ただし、装置の処理能力に余裕がある場合には、上限温湿度61は、より短い時間のみ(例えば、半日ごと、単位時間(1時間~数時間)ごとなど)有効な値として一日の間で逐次更新して使用するようにしても良い。この場合には、「日毎の値」を「時間ごとの値」などと読み替えるようにする。
【0143】
上限温湿度61は、上記したように、通年で有効な基準値が予め用意されると共に、基準値はユーザの好みやその日の判断によって所定の範囲内で任意に調整・変更できるようになっている。そのため、ユーザは、上限温湿度61を、基準値のままにして運用しても良いし、最初に一度、好みに合わせて調整したあと放っておいても良いし、状況に応じて頻繁に変更するようにしても良い。そして、上限温湿度61(基準値またはユーザの調整値)は、不快指数や暑さ指数によって少なくとも毎日補正され、更新される。これにより、上限温湿度61は、最長で一日間のみ有効な値になる。
【0144】
不快指数は、以下の式を用いて算出する。
不快指数=0.81×気温+0.01×湿度(0.99×気温-14.3)+46.3
計算に使用する気温と湿度は、温度計7と湿度計8で検知したものを使用する。
【0145】
暑さ指数は、以下の式を用いて算出する。
暑さ指数(WBGT)=(0.7×自然湿球温度)+(0.3×黒球温度)
【0146】
自然湿球温度は、湿球温度計が示す温度であり、普通の温度計7(乾球温度計)が示す温度よりも低くなる。湿球温度計は、球部を湿ったガーゼで包んだ温度計7である。
【0147】
黒球温度(グローブ温度)は、黒球温度計が示す温度であり、輻射熱や気流の影響を測定するために用いられる。黒球温度計(グローブ温度計)は、周囲からの輻射熱を計測するために用いられる温度計7であり、つや消しの黒色で塗られた中空の球体(黒体)の中心部の温度を測るものである。計算に使用する自然湿球温度と黒球温度は、温度計7と湿度計8で検知したものを換算して使用する。
【0148】
また、例えば、暑さ指数は、上記した式を用いて毎回算出するやり方の他にも、例えば、温度と湿度から暑さ指数のポイントが分かるようにした一覧表データ(
図6)を予め作成して空調制御装置6や操作部5のメモリ27,32に記憶しておき、記憶した一覧表データを使って温度計7の温度と湿度計8の湿度の関係から暑さ指数を直接導けるようにしても良い。このように、一覧表データを用いることで、冷房すべき目標の温度も同時に表に示されているので、上限温湿度61と冷房設定温度62との両方を簡単に補正することができる。
【0149】
また、不快指数や暑さ指数は、空調制御装置6が直接算出する以外にも、外部のクラウドサービスを使って算出させても良いし、外部の気象データなどを直接ダウンロードして使用しても良い。不快指数や暑さ指数は、上記したように、気象庁や民間の気象会社などの外部機関によって常に最新情報が公開されているので、これらの外部機関からその地域のデータを随時取り寄せて使用しても良い。この場合には、空調制御装置6や操作部5は、ネットワークを介して外部のクラウドサービスと接続したり、外部機関、または、外部機関からのデータを扱う別の外部機関などと接続したりするための通信部25を備えていることで、リアルタイムに外部のデータを受信できる。また、外部のデータを受信して使用する場合には、当日のデータ以外に、(前日の)予報データなどを使用することもできる。あるいは、データが更新されるごとに最新のデータを取り込んで使用することもできる。また、これらの外部のデータと、内部で算出したデータとを合わせて使用することもできる。
【0150】
不快指数や暑さ指数のランク付けは、多段階、例えば、5段階や4段階に分けることができる。
【0151】
不快指数の場合は、例えば、上記した「暑くてたまらない」から「快い」までの5つのランクで評価する(
図6)。
ランク5.暑くてたまらない(85以上)
ランク4.暑くて汗が出る (80以上85未満)
ランク3.やや暑い (75以上80未満)
ランク2.暑くない (70以上75未満)
ランク1.快い (65以上70未満)
(括弧)内は不快指数の値である。
【0152】
また、暑さ指数の場合は、例えば、以下のような4つのランクで評価する。
ランク4.危険 (31℃以上)
ランク3.厳重警戒(28℃以上、31℃未満)
ランク2.警戒 (25℃以上、28℃未満)
ランク1.注意 (25℃未満)
(括弧)内は暑さ指数の値である。なお、「ランク1.注意」には「なりにくい」も含まれている。ランク分けの項目は、例えば、「要警戒レベル」「警戒レベル」「要注意レベル」「注意レベル」「安心」の5段階などとしても良い。
【0153】
ただし、ランク付けは、5段階や4段階に限るものではなく、3段階以上であれば良い。また、ランクごとの境界値は、適宜定めることができる。ランクの順位は逆にしても良い。
【0154】
補正値61a,61bおよび62a,62bは、不快指数や暑さ指数のランクに応じて0.5℃~1.0℃とし、これを増減する。上限温湿度61と冷房設定温度62との両方を補正する場合には、同じ補正値61a,62aおよび61b,62bを使用するのが好ましい。
【0155】
ランクと補正値61a,61bおよび62a,62bとの関係は、例えば、以下のようにする。
ランク5 → ±1℃
ランク4 → ±1℃
ランク3 → ±0.5℃
ランク2 → ±0.5℃
ランク1 → 0℃
【0156】
補正値61a,61bおよび62a,62bは、直下のランクに対する差分である。補正値61a,61bおよび62a,62bは、自動的な冷房運転によってランク1の状態になるような値に設定されている。
【0157】
(2-4)上記において、空気調和システム2では、
操作部5に、健康モードボタン71(
図2)が設けられても良い。
健康モードボタン71がオンになっているときに限り、空調制御装置6は、空調装置4による上記した自動的な冷房運転を実行させるようにしても良い。
【0158】
ここで、健康モードボタン71は、自動的な冷房運転を行わせるための選択スイッチである。健康モードボタン71は、押すたびに、自動的な冷房運転のオンオフが切り替えられるようにしても良い。
【0159】
この実施例は、上記した実施例1とは、別の機能として設けても良いし、上記した実施例1と組み合わせて設けても良い。この場合、健康モードボタン71は、自動的な暖房運転のものとは、別に設けても良いが、1つにまとめて共通化しても良い。この場合、1つの健康モードボタン71を押す回数によって、自動的な冷房運転と、自動的な暖房運転と、その両方と、オフとが順番に切り替わるようにしても良い。
【0160】
上限温湿度61および冷房設定温度62は、健康モードボタン71を押した後に、設定できるようにしても良いし、専用の温度設定モードを用意して随時設定できるようにしても良い。
【0161】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0162】
季節の移行期は、気温変動に伴って基礎代謝が大きく変化するが、気温変動と基礎代謝の変化との間に生じるズレによって、体調不良を起こし易い。しかし、季節の移行期には、ほんの少しのことと油断して暖房や冷房をあまり使用せずに好ましくない室温のまま我慢して過ごしてしまう傾向が多く見られる。そこで、季節の移行期に自動的に冷房を行わせることで、室温を適正化し体調不良を防止できるようにする。
【0163】
この際、季節の移行期は、基礎代謝の変化により、温度に対する感じ方(温熱感受性)が変わるので、春から梅雨を介して夏へ向かって蒸し暑さが増す時期や、夏から秋へ向かって蒸し暑さが和らぐ時期において「冷房が欲しい」と思う温度も変わる。
【0164】
よって、一年中、冷房設定温度62が一律のままだと、体調不良防止のための自動的な冷房運転に対して、「冷房が欲しいのにONにならない」「冷房が不要なのにONになった」などという不満が生じ易くなる。そして、不満だけではなく、体調不良の原因にも繋がる。
【0165】
そこで、季節の移行期に、体調不良防止のための自動的な冷房運転を行う際に、このような不満を解消することも望まれる。
【0166】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果が得られる。
【0167】
(作用効果 2-1)季節の移行期において、室温および室内湿度が予め設定された体調不良の契機となる上限温湿度61を上回ったときに、空調制御装置6は空調装置4に自動的な冷房運転を強制的に行わせて、ユーザが自分で設定した好みの冷房設定温度62まで室温を下げる。
【0168】
これにより、室温および室内湿度が、上限温湿度61を上回らないように常に管理されると共に、室温がユーザ自身の冷房設定温度62まで下降されて保たれるようになり、季節の移行期の気温変動に体の温熱感受性(または基礎代謝)の変化がついて行けないことで起こりがちな体調不良に対し、体調不良が起こり難い室内環境を、ユーザが気付かないうちに自動的に作り出すことができる。そのため、季節の移行期における、僅かな室温過多を解消し、僅かな室温過多を原因とする体調不良を予防できる。
【0169】
この際、室温を、ユーザが自分で設定した冷房設定温度62にすることで、ユーザ好みの室内環境を自動的に作り出すことができ、ユーザの不満をなくすことができる。また、冷房設定温度62を夏期における冷房使用時の設定温度にすれば、ユーザが自分で冷房設定温度62を設定する手間を省略することもできる。
【0170】
よって、温度や湿度の変化が大きく体調管理が難しいにも拘わらず、冷房を使わずに我慢して過ごしてしまいがちな季節の移行期における、ほんの僅かな室温過多を解消して、健康的で快適なユーザ好みの室内環境を得ることができる。しかも、ほんの僅かな室温過多に対して、ユーザがいちいち自ら冷房をつけたり、こまめに室温調整を行ったりするといった、非現実的で煩わしく手間のかかる操作をなくすことができ、また、ユーザの個人差に合った健康的で快適な室内環境を、戸別に実現することができる。更に、ほんの僅かな室温過多が生じたときに自動的に短時間運転して、室温過多を解消するだけなので、エネルギー消費も少なくて済む。
【0171】
なお、室温が高すぎる場合には、ユーザが自ら冷房をつけるので、この実施例の自動的な冷房運転は必要ないが、この実施例の自動的な冷房運転を使っていれば、上記により、室温が高くなりすぎることも防止できる。
【0172】
(作用効果 2-2)自動的な冷房運転の冷房設定温度62を、その日の不快指数および暑さ指数の少なくとも一方に応じて変える(補正する)ようにしても良い。これにより、温度に対する感じ方の変化に、その日の天候の状況に合わせてきめ細かく対応することができる。
【0173】
また、上限温湿度61についても、その日の不快指数および暑さ指数の少なくとも一方に応じて変える(補正する)ようにしても良い。これにより、自動的な冷房運転の開始のタイミングを、その日の天候の状況に合わせて最適に調整(早くしたり、遅くしたり)できる。
【0174】
しかも、不快指数や暑さ指数を使用して補正を行うことで、ユーザがいちいち上限温湿度61および冷房設定温度62をその日の状況に合わせて手作業で変更・調整する手間もなくすことができる。
【0175】
蒸し暑さは、季節の移行期における体調不良の代表的な要因であり、不快指数は、蒸し暑さを示す指標であるため、不快指数を使って、上限温湿度61および冷房設定温度62の補正を自動的に行わせることで、実際に「蒸し暑い」「冷房が欲しい」と感じるような状況のときに、体調不良防止のための自動的な冷房運転を行わせて蒸し暑さを感じさせない快適な室内環境にすることができ、反対に、「冷房が不要」と感じるときに、冷房運転を行わせないようにすることができる。
【0176】
また、暑さ指数も、人体と外気との熱収支(熱のやりとり)を表すことで熱中症の指標に用いられているものであり、不快指数と同様に、暑さ指数を使って、上限温湿度61および冷房設定温度62の補正を自動的に行わせることで、実際に熱中症の危険を感じるような状況のときに、体調不良防止のための自動的な冷房運転を行わせて熱中症が起きない快適な室内環境を作ることができ、反対に、「冷房が不要」と感じるときに、冷房運転を行わせないようにすることができる。そして、温度に対する感じ方の変化によるユーザごとの冷房に対する不満を、手間をかけずに解消することが可能になる。
【0177】
(作用効果 2-3)上限温湿度61は、日毎の値として使っても良い。これにより、自動的な冷房運転を、その日に合った最適なタイミングで行わせることができる。
【0178】
不快指数または暑さ指数は、例えば、(空調装置4の電源がOFFになっている間にも)空調制御装置6が常時(例えば、10分毎などに)算出し続けることで、その日のその時の値を得ることができる。得られたその日やその時の不快指数または暑さ指数を使用することで、上限温湿度61およびユーザの冷房設定温度62をその日やその時の状況に合うように補正することができる。
【0179】
そして、上限温湿度61および冷房設定温度62を、不快指数のランクごとに割り当てた温度によって補正することで、補正を容易化すると共に、季節の移行期における日々の微妙な気温変動に合った細かな補正も行うことができる。
【0180】
よって、その日やその時に必要かどうかを正しく判断して、実際に必要となった場合に、空調装置4の電源がOFFとなっていても、その日やその時に合うように調整して体調不良防止のための自動的な冷房運転を行わせることができる。
【0181】
(作用効果 2-4)空調装置4の操作部5に、健康モードボタン71を設けて、健康モードボタン71をオンにしているときに限り、自動的な冷房運転が実行されるようにしても良い。これにより、ユーザは、操作部5に設けられた健康モードボタン71を最初に一度操作しておくだけで、その後は、特に意識することなく季節の移行期における体調不良防止のための自動的な冷房運転を継続的に行わせることが可能になる。また、健康モードボタン71をオフにすることで、ユーザは、自動的な冷房運転の不使用を選ぶことができる。