(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032130
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】介護支援システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20180101AFI20230302BHJP
【FI】
G06Q50/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138064
(22)【出願日】2021-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西口 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】西田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌太
(72)【発明者】
【氏名】片岡 夏海
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】介護施設の入居者への介護処置の内容の記録忘れを防止する介護支援システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】介護施設の入居者の介護内容を記録する介護支援システム1において、介護支援装置2は、介護施設の居室に設置されたマイク3と、マイク3により検出された音の特徴量に基づいて、複数種類の動作音を判定する判定手段71と、判定手段71により判定された動作音の組み合わせパターンに基づいて、介護内容を推定する介護内容推定手段72と、介護内容推定手段72により推定した介護内容を記録する介護内容記録手段74と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
介護施設の入居者の介護内容を記録する介護支援システムであって、
前記介護施設の居室に設置されたマイクと、
前記マイクにより検出された音の特徴量に基づいて、複数種類の動作音を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された動作音の組み合わせパターンに基づいて、介護内容を推定する介護内容推定手段と、
前記介護内容推定手段により推定した介護内容を記録する介護内容記録手段とを備える、介護支援システム。
【請求項2】
各介護内容と動作音の種類の組み合わせパターンとを予め対応付けた対応テーブルを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記介護内容推定手段は、前記対応テーブルを参照して、前記介護内容を推定する、請求項1に記載の介護支援システム。
【請求項3】
前記居室の出入り口に扉が設けられており、
前記動作音の種類の組み合わせパターンは、1回目の扉音から2回目の扉音までの動作音の種類および順序により規定されている、請求項2に記載の介護支援システム。
【請求項4】
前記介護内容推定手段により推定された1つまたは複数の前記介護内容を、介護内容候補として表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記介護内容候補から、前記介護内容記録手段に記録する介護内容を選択するための選択手段とをさらに備える、請求項1~3のいずれかに記載の介護支援システム。
【請求項5】
前記介護内容記録手段は、前記マイクが設置された居室または入居者の識別情報と対応付けて介護内容を記録する、請求項1~4のいずれかに記載の介護支援システム。
【請求項6】
介護施設の入居者の介護内容を記録するための介護支援プログラムであって、
前記介護施設の居室に設置されたマイクにより検出された音の特徴量に基づいて、複数種類の動作音を判定するステップと、
判定された動作音の組み合わせパターンに基づいて、介護内容を推定するステップと、
推定した前記介護内容を記録するステップとをコンピュータに実行させる、介護支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護支援システムに関し、特に、介護施設の入居者への介護処置の内容を記録する介護支援システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
老人ホーム等の介護施設のスタッフは、入居者である高齢者へ介護処置を行った場合、その介護内容を記録することが求められている。介護内容の記録は、たとえば手書きでメモしたり、持ち運び可能なタブレット端末に入力したりすることに加え、介護記録の入力作業を支援するシステムが従来から提案されている。
【0003】
たとえば特開2016-206959号公報(特許文献1)には、介護スタッフおよび介護者の会話音声から、特定の症状用語を抽出し、その症状用語と対応付けて介護情報記録手段に記録する介護支援装置が開示されている。
【0004】
また、特開2020-160579号公報(特許文献2)には、介護現場の会話音声データから変換されたテキストデータに基づいて、介護記録を作成する介護支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-206959号公報
【特許文献2】特開2020-160579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2では、介護スタッフおよび介護者の会話音声が記録されることになるが、介護者の前では言葉にしにくい介護内容もあり、その内容は手書きのメモに頼らざるを得ず、記録忘れが発生する場合がある。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、介護内容の記録忘れを防止することができる介護支援システムおよびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従う介護支援システムは、介護施設の入居者の介護内容を記録する介護支援システムであって、介護施設の居室に設置されたマイクと、マイクにより検出された音の特徴量に基づいて、複数種類の動作音を判定する判定手段と、判定手段により判定された動作音の組み合わせパターンに基づいて、介護内容を推定する介護内容推定手段と、介護内容推定手段により推定した介護内容を記録する介護内容記録手段とを備える。
【0009】
好ましくは、各介護内容と動作音の種類の組み合わせパターンとを予め対応付けた対応テーブルを記憶する記憶手段をさらに備え、介護内容推定手段は、対応テーブルを参照して、介護内容を推定する。
【0010】
好ましくは、居室の出入り口に扉が設けられており、動作音の種類の組み合わせパターンは、1回目の扉音から2回目の扉音までの動作音の種類および順序により規定されている。
【0011】
好ましくは、介護内容推定手段により推定された1つまたは複数の介護内容を、介護内容候補として表示する表示手段と、表示手段に表示された介護内容候補から、介護内容記録手段に記録する介護内容を選択するための選択手段とをさらに備える。
【0012】
好ましくは、介護内容記録手段は、マイクが設置された居室または入居者の識別情報と対応付けて介護内容を記録する。
【0013】
この発明のある局面に従う介護支援プログラムは、介護施設の入居者の介護内容を記録するための介護支援プログラムであって、介護施設の居室に設置されたマイクにより検出された音の特徴量に基づいて、複数種類の動作音を判定するステップと、判定された動作音の組み合わせパターンに基づいて、介護内容を推定するステップと、推定した介護内容を記録するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、介護内容の記録忘れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る介護支援システムの概要を模式的に示す図であり、(A)は、介護施設の廊下を含むフロアの平面図であり、(B)は、居室の間取り図である。
【
図2】(A)は、本発明の実施の形態に係る介護支援システムの概略構成を示すブロック図であり、(B)は、本発明の実施の形態に係る介護支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】(A)は、対応情報記憶部のデータ構造例を示す図であり、(B)は、音パターン記憶部のデータ構造例を示す図である。
【
図4】介護施設における入居者への介護処置の具体例を示した説明図である。
【
図5】介護施設における入居者への介護処置の他の具体例を示した説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態における介護支援処理を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態における介護支援処理を示すフローチャートである。
【
図8】(A)は、
図4に示す介護処置を行った場合に端末に表示される画面例を示す図であり、(B)は、
図5に示す介護処置を行った場合に端末に表示される画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
<介護支援システムの概要>
図1および
図2(A)を参照して、本実施の形態に係る介護支援システム1の概要について説明する。
図1(A)は、介護施設の廊下を含むフロアの平面図であり、(B)は、居室の間取り図である。
図2(A)は、介護支援システム1の概略構成を示すブロック図である。なお、「介護施設」とは、高齢者や認知症患者が入居する施設に限らず、スタッフが常駐する高齢者向け住宅などを含むものとする。
【0018】
図1(A)に示されるように、介護施設では、1フロアに複数の居室111が配置されている。本実施の形態では、一例として、居室111に面して廊下101が設けられ、廊下101に面して事務室112が設けられる。
【0019】
介護支援システム1は、介護スタッフが入居者に行った介護内容を音により推定し、記録する。そのため、
図1(B)に模式的に示すように、居室111には、マイク3が設けられている。マイク3により検出された音は、介護支援装置2に送信される。マイク3は、たとえば、全方位からの集音が可能な集音マイクであり、天井に設置されることが好ましい。居室111は、入居者のプライベートな空間であり、典型的には、ベッド11が配置される滞在空間10と、トイレ13が配置されるトイレ空間12とに区画される。居室111は、2つの扉が設けられており、廊下101から滞在空間10に繋がる出入り口扉14と、トイレ空間12に繋がるトイレ扉15とが設けられる。
【0020】
図1(A)に示すように、介護支援装置2は、典型的には事務室112に設置されたパソコンにより構成される。事務室112は、介護スタッフが入居者への介護の合間に、事務作業等を行う室である。
図2(A)に示すように、介護支援装置2は、ネットワークを介して介護記録サーバ4と接続されていてもよい。介護記録サーバ4は、介護内容記憶部40を含み、介護支援装置2で推定された介護内容を記録する。
【0021】
なお、介護スタッフは、たとえばスマートフォン、タブレットなどの携帯型の端末50を所持していてもよい。端末50は、ネットワークを介して介護支援装置2と接続されていてもよい。
【0022】
<介護支援システムの構成>
図2(B)を参照して、介護支援システム1の介護支援装置2の構成について説明する。
図2(B)は、介護支援装置2の構成を示すブロック図である。
【0023】
介護支援装置2は、ハードウェア構成として、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部22と、計時動作を行う計時部23と、ネットワークを介して端末50および介護記録サーバ4等の通信機器と通信する通信部24と、不揮発性の記憶装置25と、各種情報を表示する表示部26と、外部機器からの信号を入出力する入出力部27と、ユーザからの指示の入力を受け付ける選択部28とを備えている。選択部28は、たとえばキーボードなどの操作手段により構成される。
【0024】
なお、端末50および介護記録サーバ4は、ハードウェア構成として、典型的には、各種演算処理を実行するCPUなどのプロセッサと、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部と、各種情報を表示する表示部と、ネットワークを介して他の通信機器と通信する通信部とを備えている(図示せず)。
【0025】
介護支援装置2は、主な機能構成として、動作判定部71と、介護内容推定部72と、報知処理部73と、記録処理部74と、動作音DB(データベース)25aと、対応情報記憶部25bと、音パターン記憶部25cとを含む。
【0026】
動作判定部71は、マイク3により検出された音の特徴量に基づいて、複数種類の動作音を判定する。動作音DB25aには、動作音の種類ごとに、その特徴量の変動パターンが記憶されている。動作音の種類は、介護スタッフの入居者への介護処置に伴う各動作に対応しており、たとえば、リネンが擦れる音、トイレの流水音などが含まれる。また、居室への出入り動作を表す扉の開閉音、扉のノック音などが含まれる。これにより、動作判定部71は、動作音DB25aを参照することにより、動作音の種類を特定できる。
【0027】
介護内容推定部72は、動作判定部71により判定された動作音の組み合わせパターンに基づいて、介護内容を推定する。
図3(B)に示すように、音パターン記憶部25cには、介護内容と動作音の種類の組み合わせパターンとを予め対応付けた対応テーブルが記憶されている。介護内容推定部72は、動作判定部71で判定した動作音の種類および順序と、対応テーブルに記載されている組み合わせパターンとを比較して、介護スタッフが入居者に行った介護内容を推定する。
【0028】
動作音の種類の組み合わせパターンは、1回目の扉音から2回目の扉音までの動作音の種類および順序により規定されている。そのため、介護内容推定部72は、1回目の扉音を介護の開始、2回目の扉音を介護の終了とみなし、その間の動作音の種類および順序に基づいて、介護内容を推定する。介護スタッフが入居者の居室内に入らなければ、介護が行われることがなく、介護スタッフが入居者の居室外に出れば、介護が終了したと判断できるからである。本実施の形態の扉音は、居室111の出入り口扉14の開閉音である。
【0029】
図3(A)に示すように、対応情報記憶部25bには、居室No.に対応付けて、その入居者の氏名、および、マイク3ごとに付与されたマイクIDが記憶されている。マイク3は、各居室111に設けられているため、マイク3のマイクIDにより、介護を受けた入居者の居室No.と氏名が判別できる。
【0030】
動作判定部71で判定した動作音の種類が多く、1つの組み合わせパターンに絞れない場合などにおいては、介護内容推定部72は、複数の介護内容を推定してもよい。
【0031】
報知処理部73は、介護内容推定部72の推定結果を介護内容候補として表示部26に表示する。介護内容推定部72で、介護スタッフが行った介護内容が、対応テーブルの組み合わせパターンと一致し、1つに推定できた場合は、1つの介護内容を候補として表示する。対応テーブルの組み合わせパターンと完全に一致せず、類似する場合には、複数の介護内容を候補として複数表示することが好ましい。なお、入居者ごとに、過去の介護内容の記録から発生傾向の高い介護内容を予測し、複数の介護内容を順位付けして表示するようにしてもよい。
【0032】
記録処理部74は、選択部28からの信号に基づいて、ユーザにより確定された介護内容を介護記録サーバ4に送信し、介護内容記憶部40に記録する。この際、マイク3が設置された居室または入居者の識別情報とともに、確定された介護内容を送信する。
【0033】
これにより、介護内容記憶部40には、マイク3が設置された居室または入居者の識別情報と対応付けて介護内容が記録される。
【0034】
上述の動作判定部71、介護内容推定部72、報知処理部73、および記録処理部74の機能は、介護支援装置2のCPU21がソフトウェアを実行することにより実現される。動作音DB25a、対応情報記憶部25b、および音パターン記憶部25cは、(共通または別個の)不揮発性の記憶装置25により実現される。なお、上記の機能部のうちの少なくとも一つはハードウェアにより実現されてもよい。
【0035】
<介護内容の一例>
図4,5は、介護施設における介護処置の具体例を示した説明図である。本実施の形態の介護支援システム1の動作の説明に先立ち、
図4,5を参照して、介護スタッフによる入居者への介護処置の具体例を説明する。
【0036】
まず、
図4を参照して、介護処置の一例として「トイレ介助」を行った場合について説明する。
図4(A)に示すように、介護スタッフは、居室111の出入り口扉14を開いて居室111に入室し、出入り口扉14を閉める。この動作により、動作判定部71は、1回目の出入り口扉14の扉音を検出する。
【0037】
図4(B)に示すように、介護スタッフは、トイレ扉15を開けて、入居者をトイレ空間12に連れていく。この動作により、動作判定部71は、トイレ扉15の扉音を検出する。
図4(C)に示すように、介護スタッフは、トイレ扉15を閉め、入居者がトイレ空間12で排泄を行っている間、滞在空間10内で待機する。
【0038】
図4(D)に示すように、介護スタッフは、入居者の排泄が終わったら、入居者をトイレ空間12から滞在空間10に連れていき、ベッド11に横たわらせる。この動作により、動作判定部71は、リネン音を検出する。
図4(E)に示すように、介護スタッフは、入居者の排泄物の量、色、状態を確認し、トイレ13を流水する。この動作により、動作判定部71は、トイレ13の流水音を検出する。なお、入居者の排泄物の量、色、状態等は、動作音として検出することは不可能であるため、介護スタッフは、排泄物の量、色、状態等を確認した後にメモしておいてもよい。
図4(F)に示すように、介護スタッフは、出入り口扉14を閉めて、退室する。この動作により、動作判定部71は、2回目の出入り口扉14の扉音を検出する。
【0039】
このように、動作判定部71は、以下の順番で複数種類の動作音を判定する。すなわち、1回目の出入り口扉14の扉音、トイレ扉15の扉音、リネン音、水洗音、2回目の出入り口扉14の扉音をこの順番で判定する。介護内容推定部72は、
図3(B)に示すように、音パターン記憶部25cに記憶されている対応テーブルから、介護スタッフが行った介護処置は、トイレ介助であると推定する。
【0040】
次に、
図5を参照して、介護内容の具体例として「おむつ交換」を行った場合について説明する。
図5(A)に示すように、介護スタッフは、出入り口扉14をノックして、滞在空間10に入室し、出入り口扉14を閉める。この動作により、マイク3は、1回目の出入り口扉14の扉音を検出する。
【0041】
図5(B)に示すように、介護スタッフは、入居者のおむつを確認する。この動作により、動作判定部71は、リネンが擦れるリネン音を検出する。
図5(C)に示すように、介護スタッフは、入居者のおむつを交換する。この動作により、動作判定部71は、おむつを交換する際に発生するテープ音とリネン音を検出する。
図4(D)に示すように、介護スタッフは、出入り口扉14を閉めて、退室する。この動作により、動作判定部71は、2回目の出入り口扉14の扉音を検出する。
【0042】
このように、動作判定部71は、以下の順番で複数種類の動作音を判定する。すなわち、1回目の出入り口扉14の扉音、リネン音、テープ音、リネン音、2回目の出入り口扉14の扉音の順番で判定する。この場合、介護内容推定部72は、音パターン記憶部25cに記憶されている対応テーブルから、介護スタッフが行った介護処置を一つに選択することはできず、おむつ交換または体位変換<2>であると推定する。
【0043】
<介護支援システムの動作>
図6,7は、本実施の形態における介護支援処理を示すフローチャートである。介護支援処理は、介護支援装置2のCPU21が、記憶部22に予め記憶されたプログラム(介護支援プログラム)を読み出して実行することにより実現される。
【0044】
図6を参照して、介護支援装置2の動作判定部71は、居室111に設置されたマイク3からの信号(音信号)を常時入力し、動作音DB25aに基づいて動作音を判定する(ステップS2)。この際、環境音であるノイズを除去することが好ましい。
【0045】
出入り口扉14の扉音と判定された場合、すなわち1回目の扉音が検知された場合に(ステップS4にてYES)、介護スタッフによる入居者への介護が開始されたと判定し、動作音の種類の記録処理(内部メモリへの一時記録)を開始する(ステップS6)。一方、1回目の扉音でないと判定された場合には(ステップS4にてNO)、ステップS8に進む。
【0046】
ステップS8において、2回目の扉音が判定されるまで(ステップS8にてNO)、ステップS2で判定された動作音の種類を内部メモリに一時記録する(ステップS10)。具体的には、動作判定部71により判定された、たとえばリネン音、トイレ扉音、水洗音などの種類を一時記録した後に、ステップS2に戻る。出入り口扉14の2回目の扉音が検知されるまで、ステップS10が繰り返し実行されることにより、時系列として動作音の種類が記録される。これにより、複数の動作音とその順序が内部メモリに蓄積される。
【0047】
出入り口扉14の2回目の扉音が判定された場合に(ステップS8にてYES)、介護スタッフによる介護が終了されたと判定し、終了する(ステップS12)。続いて、介護内容推定部72は、対応情報記憶部25bに記憶された対応テーブルを参照し(ステップS14)、内部メモリに一時記憶された動作音の組み合わせパターンに一致または類似する介護内容を抽出する(ステップS16)。具体的には、1回目の扉音から2回目の扉音の間に検出された動作音の種類および順序と一致または類似する組み合わせパターンを検索し、対応テーブルに記載されている介護内容を抽出する。対応テーブルに記載されている組み合わせパターンと、動作判定部71により判定された動作音の組み合わせパターンとが完全一致する場合は、介護内容の候補は1つしか抽出されないが、それらが完全一致しない場合には、介護内容の候補は複数抽出される。
【0048】
次に、
図7を参照して、報知処理部73は、介護内容の候補を表示部26に表示させる(ステップS22)。具体的には、表示部26には、部屋番号と、介護内容推定部72で推定された介護内容の候補が表示される。介護スタッフは、表示部26に表示された内容が正しいをこと確認した上で、選択部28で確定指示を行う(ステップS24)。1つの介護内容が表示されている場合は、その介護内容が正しいかどうかを確認し、確定する。複数の介護内容が表示されている場合は、複数の介護内容のうち、介護スタッフが行った介護内容にチェックを入れ、確定する。
【0049】
続いて、介護記録に必要な情報、すなわち介護内容に関連する補足情報を入力する(ステップS26)。必要情報は、動作音では分からないような情報であり、介護内容推定部72では推定できない情報である。具体的には、トイレ介助においては、排泄物の量、色、状態などである。このステップS26では、介護スタッフが手入力する必要がある。さらに、記録処理部74は、確定した介護内容および補足情報を介護記録サーバ4に送信して、介護内容記憶部40に記録する(ステップS28)。
【0050】
図7のステップS22の画面例を
図8に示す。
図8(A)は、
図4に示す介護処理を行った場合に端末に表示される画面例を示す図であり、介護内容の候補が1つである場合が示されている。画面SC1上には、居室111の居室No.と、入居者名、介護を行った時間、および介護内容が表示される。介護スタッフは、画面SC1上に表示された内容が正しいことを確認して、確定指示を行う(ステップS24)。手入力が必要な項目は、たとえば排泄物の量、色、状態などであり、介護スタッフが自身のメモに基づいて手入力を行う(ステップS26)。入力した情報に間違いがなければ、介護記録の登録を完了させる(ステップS28)。
【0051】
図8(B)は、
図5に示す介護処理を行った場合に端末に表示される画面例を示す図であり、介護内容の候補が複数ある場合が示されている。画面SC2上には、居室111の居室No.と、入居者名、介護を行った時間、および介護内容の候補が表示される。介護内容の候補としては、「オムツ交換」と「体位変換」が示されている。介護スタッフは、画面SC3に示すように、自身が行った介護内容、具体的には「おむつ交換」にチェックし、確定指示を行う(ステップS24)。さらに、手入力が必要な項目は、上述した内容と同様に、たとえば排泄物の量、色、状態などであり、介護スタッフが自身のメモに基づいて手入力を行う(ステップS26)。入力した情報に間違いがなければ、介護記録の登録を完了させる(ステップS28)。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態に係る介護支援システム1によれば、居室111内にマイク3を設置するだけの簡易な構成で、介護内容の記録忘れを防止することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、従来の介護支援システムのように、介護スタッフと入居者の会話音声をテキスト化して保存するものではないため、入居者のプライバシーを保護することもできる。
【0054】
したがって、本実施の形態に係る介護支援システム1を、既存の介護施設に容易に適用することができる。
【0055】
<変形例>
本実施の形態の介護内容推定部72は、動作音DB25bの対応テーブルを参照して介護内容を推定するとしたが、たとえばAI技術などを用いて介護内容を推定してもよい。
【0056】
また、報知処理部73は、介護内容推定部72の推定結果を介護内容候補として表示部26に表示するものとしたが、端末50に送信して報知し、端末50上で介護内容の候補の選択や必要情報の入力が行われてもよい。
【0057】
本実施の形態の介護支援装置2は、事務室112に配置されたパソコンにより構成されるとしたが、このような例に限定されない。たとえば、介護支援装置2の各機能部は、介護スタッフが所持している端末50により実現されてもよい。また、介護支援装置2と介護記録サーバ4とを別の装置としたが、介護支援装置2と介護記録サーバ4とが1つの装置で実現されてもよい。つまり、介護内容記憶部40が介護支援装置2に含まれていてもよい。
【0058】
また、介護支援装置2により実行される介護支援処理を、プログラムとして提供してもよい。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0059】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0060】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 介護支援システム、2 介護支援装置、3 マイク、4 介護記録サーバ、25a 動作音DB、25b 対応情報記憶部、71 動作判定部、72 介護内容推定部、73 報知処理部、74 記録処理部、75 選択部。