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特開2023-3215通信システム、アンテナ設置高決定方法、及び管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003215
(43)【公開日】2023-01-11
(54)【発明の名称】通信システム、アンテナ設置高決定方法、及び管理装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/04 20060101AFI20221228BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20221228BHJP
   H01Q 3/26 20060101ALI20221228BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
H01Q3/04
H04B7/08 680
H01Q3/26 A
H01Q1/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104260
(22)【出願日】2021-06-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】新海 宗太郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和樹
(72)【発明者】
【氏名】大植 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山田 英之
【テーマコード(参考)】
5J021
5J047
【Fターム(参考)】
5J021CA06
5J021DA02
5J021DB00
5J021EA01
5J021FA13
5J021FA30
5J021GA02
5J021HA05
5J047BG05
(57)【要約】
【課題】大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる、受信側の無線装置のアンテナの設置高を決定する。
【解決手段】通信システムが、第1の無線装置と、当該第1の無線装置から送信された電波を受信する第2の無線装置と、管理装置と、を備え、管理装置は、第2の無線装置が備えるアンテナにおけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質と、第1の無線装置及び第2の無線装置の間の距離とに基づいて、アンテナの設置高の調整値を決定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線装置と、
前記第1の無線装置から送信された電波を受信する第2の無線装置と、
管理装置と、を備える通信システムであって、
前記管理装置は、
前記第2の無線装置が備えるアンテナにおけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質と、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離とに基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を決定する、
通信システム。
【請求項2】
前記管理装置は、
所定の電力分布パターンにおける、現在の前記アンテナの設置高に対応する位置であるパターン内位置を、前記受信品質と前記距離とに基づいて特定し、
特定した前記パターン内位置に基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を決定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記アンテナの設置高の調整値は、前記パターン内位置と、前記電力分布パターンにおける電力が最大となる位置とのずれを示す値である、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記パターン内位置と、前記電力分布パターンにおける電力が最大となる位置とのずれを示す画像を表示する、
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離に基づくデータと、前記セクタごとの受信品質に基づくデータとを入力データとし、前記パターン内位置を算出可能なデータを出力データとする、学習済モデルを用いて、前記パターン内位置を特定する、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項6】
第1の無線装置から送信された電波を受信する第2の無線装置のアンテナの設置高を決定する方法であって、
前記アンテナにおけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質と、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離とに基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を決定する、
方法。
【請求項7】
所定の電力分布パターン内における、現在の前記アンテナの設置高に対応する位置であるパターン内位置を、前記受信品質と前記距離とに基づいて特定し、
特定した前記パターン内位置に基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を決定する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アンテナの設置高の調整値は、前記パターン内位置と、前記電力分布パターンにおける電力が最大となる位置とのずれを示す値である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パターン内位置と、前記電力分布パターンにおける電力が最大となる位置とのずれを示す画像を表示する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離に基づくデータと、前記セクタごとの受信品質に基づくデータとを入力データとし、前記パターン内位置を算出可能なデータを出力データとする、学習済モデルを用いて、前記パターン内位置を特定する、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
第1の無線装置から送信された電波を受信する第2の無線装置が備えるアンテナにおけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質を示すデータと、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離を示すデータとを取得し、前記受信品質を示すデータと、前記距離を示すデータとに基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を出力するプロセッサを備える、
管理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
所定の電力分布パターン内における、現在の前記アンテナの設置高に対応する位置であるパターン内位置を、前記受信品質と前記距離とに基づいて特定し、
特定した前記パターン内位置に基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を決定する、
請求項11に記載の管理装置。
【請求項13】
前記アンテナの設置高の調整値は、前記パターン内位置と、前記電力分布パターンにおける電力が最大となる位置とのずれを示す値である、
請求項12に記載の管理装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記パターン内位置と、前記電力分布パターンにおける電力が最大となる位置とのずれを示す画像を表示装置に表示する、
請求項13に記載の管理装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離に基づくデータと、前記セクタごとの受信品質に基づくデータとを入力データとし、前記パターン内位置を算出可能なデータを出力データとする、学習済モデルを用いて、前記パターン内位置を特定する、
請求項12に記載の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、アンテナ設置高決定方法、及び管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2台の無線装置を対向配置して電波を送受信する通信システムにおいて、複数のアンテナを備える受信側の無線装置は、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を抑制するために、アンテナ間の距離を調整することが行われている。
【0003】
特許文献1には、アンテナ間の距離を調整可能な複数のアンテナのうちの任意の1つの設置高に応じた間隔で、アンテナ間の距離の候補値を生成し、アンテナ間の距離を候補値に設定した場合の通信品質を算出し、通信品質に基づき、候補値の中からアンテナ間の距離の設定値を決定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-207172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる、受信側の無線装置のアンテナの設置高を決定することは、困難である。
【0006】
本開示の目的は、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる、受信側の無線装置のアンテナの設置高を決定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、第1の無線装置と、前記第1の無線装置から送信された電波を受信する第2の無線装置と、管理装置と、を備える通信システムであって、前記管理装置は、前記第2の無線装置が備えるアンテナにおけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質と、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離とに基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を決定する、通信システムを提供する。
【0008】
本開示は、第1の無線装置から送信された電波を受信する第2の無線装置のアンテナの設置高を決定する方法であって、前記アンテナにおけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質と、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離とに基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を決定する、アンテナ設置高決定方法を提供する。
【0009】
本開示は、第1の無線装置から送信された電波を受信する第2の無線装置が備えるアンテナにおけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質を示すデータと、前記第1の無線装置及び前記第2の無線装置の間の距離を示すデータとを取得し、前記受信品質を示すデータと、前記距離を示すデータとに基づいて、前記アンテナの設置高の調整値を出力するプロセッサを備える、管理装置を提供する。
【0010】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる、受信側の無線装置のアンテナの設置高を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態に係る無線装置の設置例を示す概念図
図2】本実施の形態に係る通信システムの構成例を示すブロック図
図3】本実施の形態に係る受信機セクタスイープを例示する概念図
図4】本実施の形態に係る受信機セクタスイープにより得られたセクタ別SNRパターンを示す概念図
図5】本実施の形態に係るセクタ別SNRパターンと電力分布パターンとの関係を説明するための図
図6】本実施の形態に係るアンテナの設置工程の一例を示すシーケンス図
図7】本実施の形態に係る無線装置の設置例を示す概念図
図8】本実施の形態に係る管理装置によるアンテナ設置高の調整値の通知例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0014】
(本実施の形態)
<無線装置の設置例>
図1は、本実施の形態に係る無線装置10の設置例を示す概念図である。無線装置10の例として、第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bとが図示されている。第1の無線装置10A及び第2の無線装置10Bは、作業者(ユーザ)によって、互いに対向するように、壁又は柱などに設置される。互いに対向する第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bとは、ミリ波通信によって無線通信を行ってよい。すなわち、第2の無線装置10Bは、第1の無線装置10Aから送信された電波を受信する。無線装置10は、ミリ波を用いる長距離無線機と読み替えられてもよい。なお、第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bとは、ミリ波とは異なる波長の電波を用いて無線通信を行ってもよい。
【0015】
作業者は、例えば地面から高さht(cm)の高さに第1の無線装置10Aを設置する。作業者は、同様に第2の無線装置10Bを設置する。最初の設置時における第2の無線装置10Bの地面からの高さをhr(cm)とする。第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bとの間の距離をd(cm)とする。
【0016】
ここで、第1の無線装置10Aのアンテナから送出された電波のうち一部が大地で反射し得る。第2の無線装置10Bのアンテナの設置高さによっては、この反射波が干渉して電力を弱め合い、第2の無線装置10Bのアンテナでの受信電力が弱まることがある。
【0017】
作業者は、反射波による上述のような影響を受けにくい高さになるように、第2の無線装置10Bのアンテナの設置高を調整する。この設置高の調整をなるべく簡易に行うことができれば好適である。
【0018】
そこで本開示の実施形態においては、第2の無線装置10Bに接続される管理装置20が、第2の無線装置10Bのアンテナについて、設置高の調整値を決定する。これにより作業者は、設置高の調整値に基づいて第2の無線装置10Bのアンテナの高さを簡易に調整することができる。設置高の調整値は、図1においてΔhとして表現されている。Δhが正の値であれば、作業者は第2の無線装置10Bのアンテナを上へと移動させる。Δhが負の値であれば、作業者は第2の無線装置10Bのアンテナをより下へと移動させる。
【0019】
なお、無線装置10はビームフォーミングを行うことができる。図示されているように、本開示の実施形態に係る無線装置10は上下方向にビームフォーミングを行う。ここでいう上下方向は、図1に示されたX-Z座標軸におけるZ軸方向に相当する。
【0020】
<通信システムの構成例>
図2は、本実施の形態に係る通信システム1の構成例を示すブロック図である。通信システム1は、第1の無線装置10Aと、当該第1の無線装置10Aから送信された電波を受信する第2の無線装置10Bと、第2の無線装置10Bに接続される管理装置20とを備える。第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bの構成は同様であるため、無線装置10としてまとめて説明する。無線装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、接続インタフェース13と、無線インタフェース14とを備える。また、無線インタフェース14には、アンテナ15が接続されている。
【0021】
プロセッサ11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又は、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。プロセッサ11は、無線装置10の各部の動作を全体的に統括するための制御処理を行う。
【0022】
メモリ12は、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又は、フラッシュメモリ等を含んでいてよく、プロセッサ11によって実行される各種プログラムや各種データを格納している。
【0023】
接続インタフェース13は、後述の管理装置20などの外部装置との間の通信接続を行うためのインタフェースである。接続インタフェース13は、有線通信または無線通信に対応した通信回路を含む。有線通信の場合における接続インタフェース13の例として、USB(Universal Serial Bus)インタフェースまたはEthernet(登録商標)が挙げられる。無線通信の場合における接続インタフェース13の例として、Wi-Fi通信用インタフェース、又は、Bluetooth通信用インタフェースが挙げられる。
【0024】
無線インタフェース14は、アンテナ15を通じて他の無線装置と無線通信を行うことが可能なインタフェースである。無線インタフェース14は、無線通信に対応した通信回路を含む。
【0025】
アンテナ15は、指向性のあるビームを用いた無線通信が可能なアンテナである。指向性のあるビームを用いた無線通信には、ミリ波通信が含まれる。アンテナ15は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナであってよい。
【0026】
管理装置20は、情報処理装置の一例であり、例えばスマートフォン、タブレット、またはパーソナルコンピュータ等である。なお、管理装置20は、それらとは異なる装置であってもよい。また、管理装置20は、第2の無線装置10Bと一体化されてもよい。
【0027】
管理装置20は、プロセッサ21と、メモリ22と、接続インタフェース23と、操作装置24と、表示装置25とを備える。
【0028】
プロセッサ21は、例えばCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、MPU、DSP、又は、FPGAを用いて構成される。プロセッサ21は、管理装置20の各部の動作を全体的に統括するための制御処理を行う。
【0029】
メモリ22は、ROM、RAM、又は、フラッシュメモリ等を含んでいてよく、プロセッサ21によって実行される各種プログラムや各種データを格納している。メモリ22には、図6に基づいて後述する高さ調整プログラムが記憶されている。メモリ22には、ニューラルネットワークにより構成される学習済モデル221が記憶されている。
【0030】
接続インタフェース23は、無線装置10などの外部装置との間の通信を行うためのインタフェースである。接続インタフェース23は、有線通信または無線通信に対応した通信回路を含む。有線通信の場合における接続インタフェース23の例として、USBインタフェースまたはEthernetが挙げられる。無線通信の場合における接続インタフェース13の例として、Wi-Fi通信用インタフェース、又は、Bluetooth通信用インタフェースが挙げられる。
【0031】
操作装置24は、ユーザの入力操作を受け付ける装置であり、例えば、マウス、キーボード、レバー、ボタン、又は、タッチパネル等を用いて構成されてよい。
【0032】
表示装置25は、ユーザに対して情報を表示する装置であり、ディスプレイ又はタッチパネル等を用いて構成されてよい。
【0033】
<セクタ別SNRパターン>
図3は、本実施の形態に係る受信機セクタスイープを例示する概念図である。図4は、本実施の形態に係る受信機セクタスイープにより得られたセクタ別SNRパターンを示す概念図である。図3及び図4を参照して、ビームフォーミングのセクタと、セクタ別SNRパターンとの関係を説明する。
【0034】
図3に示されているように、第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bは受信機セクタスイープを行う。まず、発信側である第1の無線装置10Aがトレーニング用信号を送信する。受信側である第2の無線装置10Bは、セクタをNo.0からN.32まで切り替えながらトレーニング用信号を受信して、受信した信号の信号品質であるSNR(単位はdB)を測定する。
【0035】
上記の測定により、図4に示されているような、セクタNo.ごとの信号品質であるSNR(単位はdB)を示すパターンのデータが得られる。このパターンを、セクタ別SNRパターンと表現する。
【0036】
図5は、セクタ別SNRパターンと電力分布パターンとの関係を説明するための図である。図5には、第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高さに応じたセクタ別SNRパターン及び受信電力の強さが例示されている。第2の無線装置10Bのアンテナ15の高さがhaである場合のセクタ別SNRパターンをパターンAとする。第2の無線装置10Bのアンテナ15の高さがhbである場合のセクタ別SNRパターンをパターンBとする。第2の無線装置10Bのアンテナ15の高さがhcである場合のセクタ別SNRパターンをパターンCとする。
【0037】
パターンBの場合、例えばセクタNo.14からNo.18などの中央セクタのSNRの値が最も高く、受信電力が最大になっている。また、中央以外のセクタのSNRの値が他のパターンと比べて有意に低く抑えられている。
【0038】
パターンA及びパターンCの場合、中央セクタのSNRの値はパターンBほど高くない。また、セクタNo.4付近のSNRの値がある程度高くなっている。そのため、ここで図1をあわせて参照すると、第1の無線装置10Aから第2の無線装置10Bへと直線的に到達する電波が支配的であり、大地等からの反射波による悪影響を受けにくいアンテナ15の高さは、高さhbであると推定される。
【0039】
また、アンテナ15の高さが高くなるにつれて、アンテナ15による受信電力の大きさは破線で示したような変化を示すと推定される。すなわち、アンテナ15の高さが高くなるにつれて、受信電力は最小値(谷)からほぼ単調増加してピーク(山)を迎え、そこから単調減少して再び最小値(谷)となるように、ある程度規則的に変化する。このような、アンテナ15の高さに応じた受信電力の規則的な変化を、電力分布パターンと表現する。
【0040】
反射波等による影響を最も受けにくくするには、電力分布パターンにおける受信電力が最大となる位置にアンテナ15を設置すれば良いということになる。図5に示した実施形態では、電力分布パターンにおける受信電力が最大となる位置とは、高さhbの位置である。この位置は、電力分布パターンのピーク(山)に対応する。なお、高さhbが含まれる電力分布パターンの上にも、同様に谷、山、及び谷を構成する電力分布パターンがある。当該電力分布パターンの山の位置もまた、電力分布パターンにおける受信電力が最大となる位置となる。
【0041】
図6は、本実施の形態に係るアンテナの設置工程の一例を示すシーケンス図である。図7は、図1に対応する、無線装置10の設置例を示す概念図である。図6及び図7を参照して、アンテナ設置高さの決定処理について説明する。
【0042】
図6におけるユーザは、無線装置10を設置する作業者であるとする。ユーザは、第1の無線装置10Aを任意の高さ(ht)に設置する(ステップS1)。ユーザは、第2の無線装置10Bを任意の高さ(hr)に設置する(ステップS2)。ユーザは、管理装置20のメモリ22に記憶されている高さ調整プログラムを起動する(ステップS3)。このとき、管理装置20は、第1の無線装置10Aから第1の無線装置10Aの高さhtの値を通知される。もしくは、ユーザが管理装置20に高さhtの値を入力してもよい。同様に、管理装置20は、第2の無線装置10Bから第2の無線装置10Bの高さhrの値を通知されてよい。もしくは、ユーザが管理装置20に高さhrの値を入力してもよい。
【0043】
管理装置20のプロセッサ21は、第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bとを無線接続させる(ステップS4)。管理装置20のプロセッサ21は、第2の無線装置10Bから、セクタ別SNRパターンと、無線装置間距離dとを取得する(ステップS5)。なお、セクタ別SNRパターンは、図3に基づき説明した受信機セクタスイープによって得られる。また、第2の無線装置10Bは、第1の無線装置10Aから信号が返ってくるまでの時間又は受信電力(例えばRSSI(Received Signal Strength Indication))等に基づいて、無線装置間距離dを取得することができる。
【0044】
管理装置20のプロセッサ21は、ステップS5で取得したセクタ別SNRパターンと無線装置間距離dとを、学習済モデル221に入力する(ステップS6)。
【0045】
ここで、学習済モデル221についてより詳しく説明する。学習済モデル221は、ニューラルネットワークにより構成されている。本実施の形態において用いられるニューラルネットワークの構造又はアーキテクチャ等については特に限定しない。以下、入力層と出力層とを含み、逆伝搬により教師あり学習を行う一般的なニューラルネットワークを例示して、本開示の実施形態に用いられる学習済モデル221について説明する。なお、ニューラルネットワークが隠れ層を有していてもよいことは言うまでもない。
【0046】
学習済モデル221を構成するニューラルネットワークの入力層には、セクタ別SNRパターンに基づく入力データと、無線装置間距離dに基づく入力データとが入力される。入力層への入力データは、基となるデータに対してプロセッサ21により変換処理または前処理が適宜行われたものであってよい。
【0047】
ニューラルネットワークの出力層からは、後述の電力分布パターン内の位置を算出可能な値または値の集合が出力される。
【0048】
プロセッサ21は、学習済モデル221からの出力に基づいて、電力分布パターン内の位置(パターン内位置)を示す値を取得する。電力分布パターン内の位置を示す値として、本実施の形態ではhratioを例示する。ここで、hratio=Δh0/Δhrである。
【0049】
Δh0は、現在のアンテナ15の高さ(=hr)と、現在のアンテナ15の高さよりも下にある、電力分布パターンの始点(図7における、受信電力の谷)における高さとの差に相当する。すなわちΔh0は、電力分布パターンの始点における高さからどの程度上にアンテナ15が現在設置されているかを示す値である。
【0050】
Δhrは、電力分布パターンの始点(図7における、受信電力の谷)と終点(山を越えた後の次の受信電力の谷)との間の、高さの差に相当する。すなわちΔhrは、1つの電力分布パターンの高さ方向(Z軸方向)におけるピッチ(長さ)を示す値である。Δhrは、ハイトパターンピッチとも呼ばれる。電力分布パターンに周期性がある場合、Δhrは、1周期分の高さに該当する。
【0051】
学習済モデル221を構成するニューラルネットワークは、事前に学習が行われた学習済みのものであってよい。ニューラルネットワークの学習処理は、管理装置20で実行されてもよく、管理装置20とは異なる装置、例えばGPUを備えたサーバ等で実行されてもよい。
【0052】
図6の説明に戻る。管理装置20のプロセッサ21は、電力分布パターン内の位置を示す値であるhratioを取得する(ステップS7)。
【0053】
なお、学習済モデル221の出力がhratioとなるように学習済モデル221を構成してもよく、学習済モデル221の出力データに基づいてプロセッサ21がhratioを算出可能になるように学習済モデル221を構成してもよい。いずれの場合においても、プロセッサ21は学習済モデル221の出力データに基づいてhratioの値を取得する。
【0054】
管理装置20のプロセッサ21は、第1の無線装置10Aの高さhtと、無線装置間距離dから、上述のハイトパターンピッチΔhrを算出する(ステップS8)。本実施の形態が想定する、図5に示されているような電力分布パターンの場合、ハイトパターンピッチΔhrは以下の式(1)により算出される。
Δhr=λd/2ht …(1)
ここで、λはミリ波通信で用いられる電波の波長を示す。
【0055】
管理装置20のプロセッサ21は、アンテナ15の設置高の調整値Δhを、以下の式(2)に基づいて算出する(ステップS9)。
Δh=(0.5-hratio)×Δhr …(2)
そしてプロセッサ21は、ユーザに対して調整値Δhを通知する。ユーザに対する調整値Δhの通知態様は種々考えられるが、そのうちの一例を図8に基づいて後述する。
【0056】
ユーザは、調整値Δhの値に応じて、第2の無線装置10Bの高さを上げる(ステップS10)。なお、調整値Δhが負の値である場合は、第2の無線装置10Bの高さを下げる。
【0057】
ユーザは、第1の無線装置10Aと第2の無線装置10Bとの間の通信速度を最終確認する(ステップS11)。調整値Δhに基づく第2の無線装置10Bの高さ調整が行われた後なので、通信速度は改善されている。
【0058】
なお、大地からの反射波の状況が変化し、第2の無線装置10Bにおける受信品質が低下した場合、図6に示すステップS5からステップS9の処理が再実行されてもよい。すなわち、管理装置20は、状況が変化した反射波について、セクタ別SNRパターンを再取得し、調整値Δhを再算出し、ユーザに通知してよい。そして、ユーザは、通知された調整値Δhに基づいて、第2の無線装置10Bの高さを再調整してよい。これにより、ユーザは、当該通知により、大地からの反射波の状況が変化し、第2の無線装置10Bにおける受信品質が低下したことを認識することができる。加えて、ユーザは、第2の無線装置10Bの高さを再調整して、第2の無線装置10Bにおける受信品質を向上させることができる。
【0059】
図8は、ステップS9に対応する、管理装置20によるアンテナ設置高の調整値の通知例を示す図である。本実施の形態では、管理装置20がスマートフォンである場合を例示して説明する。管理装置20のプロセッサ21は、調整値Δhを例えば以下のようにして表示装置25に画像として表示させる。
【0060】
管理装置20がスマートフォンである場合、スマートフォンが備えるタッチパネル画面が表示装置25に相当する。作業者は、第2の無線装置10Bに設けられた固定用スロットなどに管理装置20を挿入する。これにより、第2の無線装置10Bとスマートフォンである管理装置20とが一体となり、互いの相対位置を変えずに移動可能になる。
【0061】
表示装置25には、ガイダンス画面が表示される。ガイダンス画面には、第2の無線装置10Bと管理装置20とが表示されている。ガイダンス画面には、「高さを調整します。該当の治具を動かしてください」という文字メッセージと、治具を動かす方向を示す矢印と、「次へ」ボタンとが表示される。このようなガイダンス画面において、作業者が「次へ」ボタンをタップすると、プロセッサ21は高さ調整画面を表示装置25に表示させる。
【0062】
高さ調整画面においては、プロセッサ21が表示装置25に、第2の無線装置10Bの目標となる最適高さを示す横線L1と、第2の無線装置10Bの現在の高さhrを示す横線L2とを表示させる。横線L1が示す最適高さは、第2の無線装置10Bの現在の高さhrに調整値Δhを加算した高さである。すなわち、横線L1と横線L2との間の距離が、調整値Δhと対応する。また、プロセッサ21は表示装置25に「目標に合わせてください」という文字メッセージを表示させる。作業者は、管理装置20と一体化した第2の無線装置10Bを、横線L2が横線L1と一致するように動かす。図7に示されているような本実施の形態では、管理装置20と一体化した第2の無線装置10Bを上に動かす。このとき、スマートフォンである管理装置20は、移動方向及び距離を推定できる機能を有している。例えばスマートフォンは加速度センサ又は気圧センサを備えており、加速度センサ又は気圧センサから得た情報に基づいて高さ方向の移動距離を算出することができる。この算出された高さ方向の移動距離に応じて、横線L1と横線L2との間の距離が増減する。
【0063】
横線L2と横線L1とが一致すると、プロセッサ21は表示装置25に、治具固定画面を表示させる。治具固定画面では、プロセッサ21は「目標に合いました」及び「治具を固定してください」の文字メッセージと、「完了」ボタンとを表示させる。ユーザが「完了」ボタンをタップすると、プロセッサ21は表示装置25に完了画面を表示させる。完了画面において、プロセッサ21は「高さが整いました」の文字メッセージと、作業完了を示すチェックマークとを表示装置25に表示させる。
【0064】
例えばプロセッサ21が上記のような画像による表示を表示装置25に行わせることにより、無線装置10の設置作業者が、表示装置25を見ながら第2の無線装置10B及びアンテナ15の高さを簡単に調節することができる。
【0065】
(本開示のまとめ)
本開示の内容は以下のように表現できる。
【0066】
<表現1>
通信システム1は、第1の無線装置10Aと、第1の無線装置10Aから送信された電波を受信する第2の無線装置10Bと、管理装置20とを備える。管理装置20は、第2の無線装置10Bが備えるアンテナ15におけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質と、第1の無線装置10A及び第2の無線装置10Bの間の距離とに基づいて、アンテナ15の設置高の調整値を決定する。
これにより、第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高を、決定された調整値に基づいて調整することができる。また、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる。
【0067】
<表現2>
表現1において、所定の電力分布パターンにおける、現在のアンテナ15の設置高に対応する位置であるパターン内位置を、上記受信品質と上記距離とに基づいて特定し、特定したパターン内位置に基づいて、アンテナ15の設置高の調整値を決定してよい。
これにより、第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高の調整値を、所定の電力分布パターンにおけるパターン内位置に基づいて決定することができる。
【0068】
<表現3>
表現2において、アンテナ15の設置高の調整値は、パターン内位置と、電力分布パターンにおける受信電力が最大となる位置とのずれを示す値であってよい。
これにより、第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高を、決定された調整値に基づいて調整することにより、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下をさらに抑制できる。
【0069】
<表現4>
表現3において、管理装置20は、パターン内位置と、電力分布パターンにおける受信電力が最大となる位置とのずれを示す画像を表示してよい。
これにより、表示された画面を作業者が見ながら、第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高を簡単に調整することができる。
【0070】
<表現5>
表現2において、管理装置20は、第1の無線装置10A及び第2の無線装置10Bの間の距離に基づくデータと、セクタごとの受信品質に基づくデータとを入力データとし、パターン内位置を算出可能なデータを出力データとする、学習済の学習済モデル221を用いて、パターン内位置を特定する。
これにより、管理装置20は、無線装置間距離dと、セクタ別SNRパターンとを取得することにより、学習済モデル221を活用してパターン内位置を算出することができる。
【0071】
<表現6>
第1の無線装置10Aから送信された電波を受信する第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高を決定する方法において、管理装置20が設置高を決定する。管理装置20は、アンテナ15におけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質と、第1の無線装置10A及び第2の無線装置10Bの間の距離とに基づいて、アンテナの設置高の調整値を決定する。
これにより、第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高を、決定された調整値に基づいて調整することができる。また、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる。
【0072】
<表現7>
管理装置20がプロセッサ21を備える。プロセッサ21は、第1の無線装置10Aから送信された電波を受信する第2の無線装置10Bが備えるアンテナ15におけるビームフォーミングによるセクタごとの受信品質を示すデータと、第1の無線装置10A及び第2の無線装置10Bの間の距離を示すデータとを取得する。プロセッサ21は、受信品質を示すデータと、距離を示すデータとに基づいて、アンテナ15の設置高の調整値を出力する。
これにより、第2の無線装置10Bのアンテナ15の設置高を、決定された調整値に基づいて調整することができる。また、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示は、大地等からの反射波等の干渉による受信品質の低下を適切に抑制できる、受信側の無線装置のアンテナの設置高を決定する通信システム、アンテナ設置高決定方法、及び管理装置として有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 通信システム
10 無線装置
11 プロセッサ
12 メモリ
13 接続インタフェース
14 無線インタフェース
15 アンテナ
20 管理装置
21 プロセッサ
22 メモリ
221 学習済モデル
23 接続インタフェース
24 操作装置
25 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8