(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023032473
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】発光装置及びそれを備えた灯具
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20230302BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20230302BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20230302BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20230302BHJP
C09K 11/67 20060101ALI20230302BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20230302BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20230302BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01L33/50
F21V9/38
C09K11/08 J
C09K11/80
C09K11/67
C09K11/66
C09K11/61
C09K11/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021138623
(22)【出願日】2021-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】板東 篤史
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CA05
4H001XA03
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA25
4H001XA31
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA39
4H001XA55
4H001XA71
4H001XB32
4H001XB42
4H001YA25
4H001YA58
4H001YA63
5F142AA25
5F142BA24
5F142CA02
5F142CC26
5F142CG03
5F142CG42
5F142DA02
5F142DA03
5F142DA12
5F142DA23
5F142DA43
5F142DA45
5F142DA48
5F142DA53
5F142DA54
5F142DA55
5F142DA56
5F142DA73
5F142GA21
5F142HA01
(57)【要約】
【課題】視対象の色再現性を向上できる発光装置及び灯具を提供する。
【解決手段】430nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、蛍光部材と、を備え、蛍光部材が、式(I)で表される組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体及び式(II)で表され組成を有する第2希土類アルミン酸塩蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種の希土類アルミン酸塩蛍光体と、式(III)で表される組成を有する第1フッ化物蛍光体及び式(IV)で表される組成を有する第2フッ化物蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種のフッ化物蛍光体と、式(V)で表される組成式に含まれる組成を有する窒化物蛍光体から選択された少なくとも2種の窒化物蛍光体と、を含み、EBUによって推奨されるTLCI-2012により算出される値Qaが90以上であり、値Q10が90以上である光を発する、発光装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
430nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、蛍光部材と、を備えた発光装置であり、
前記蛍光部材が、下記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体及び下記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有する第2希土類アルミン酸塩蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種の希土類アルミン酸塩蛍光体と、
下記式(III)で表される組成式に含まれる組成を有する第1フッ化物蛍光体及び下記式(IV)で表される組成式に含まれる組成を有する第2フッ化物蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種のフッ化物蛍光体と、
下記式(V)で表される組成式に含まれる組成を有する少なくとも2種の窒化物蛍光体と、を含み、
欧州放送連合(European Broadcasting Union:EBU)によって推奨される照明一貫性指数TLCI(Television Lighting Consistency Index)-2012により算出される値Qaが90以上であり、値Q10が90以上である光を発する、発光装置。
Lu3Al5O12:Ce (I)
Y3(Al1-aGaa)5O12:Ce (II)
(式(II)中、aは、0≦a≦0.5を満たす。)
Ac[M2
1-bMn4+
bFd] (III)
(式(III)中、Aは、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M2は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M2
1-bMn4+
bFd]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c'[M2’1-b'Mn4+
b'Fd'] (IV)
(式(IV)中、A’は、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M2’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M2'
1-b'Mn4+
b'Fd']イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
SrqCasAltSiuNv:Eu (V)
(式(V)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
【請求項2】
前記希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量に対する前記フッ化物蛍光体の総含有量の含有率は、
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する場合、0.35以上0.70以下の範囲内であり、
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する場合、0.60以上1.30以下の範囲内である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記希土類アルミン酸塩蛍光体、前記フッ化物蛍光体及び前記窒化物蛍光体の総含有量に対する前記フッ化物蛍光体の総含有量の含有率は、
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する場合、0.25以上0.45以下の範囲内であり、
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する場合、0.35以上0.60以下の範囲内である請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記希土類アルミン酸塩蛍光体、前記フッ化物蛍光体及び前記窒化物蛍光体の総含有量に対する前記希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量の含有率は、
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する場合、0.50以上0.75以下の範囲内であり、
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する場合、0.40以上0.60以下の範囲内である請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記希土類アルミン酸塩蛍光体、前記フッ化物蛍光体及び前記窒化物蛍光体の総含有量に対する前記フッ化物蛍光体及び前記窒化物蛍光体の総含有量の含有率は、
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する場合、0.25以上0.50以下の範囲内であり、
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する場合、0.40以上0.60以下の範囲内である請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記フッ化物蛍光体及び前記窒化物蛍光体の総含有量に対する前記フッ化物蛍光体の総含有量の含有率は、
相関色温度が3250K以上7000K以下の範囲内の光を発する場合、0.80以上0.99以下の範囲内であり、
相関色温度が2500K以上3250K以下の範囲内の光を発する場合、0.80以上0.95以下の範囲内である請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記発光装置の発光スペクトルにおける、前記発光素子の発光ピークに対する前記フッ化物蛍光体の発光ピークの発光ピーク強度比は、
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する場合、1.00以上2.00以下の範囲内であり、
相関色温度が3250K以上4750K未満の範囲内の光を発する場合、2.00以上4.00以下の範囲内であり、
相関色温度が2850K以上3250K未満の範囲内の光を発する場合、4.00以上6.00以下の範囲内であり、
相関色温度が2500K以上2850K未満の範囲内の光を発する場合、5.50以上9.00以下の範囲内である請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子が、440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する請求項1から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1希土類アルミン酸塩蛍光体は、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が500nm以上540nm以下の範囲内にあり、半値全幅が95nm以上105nm以下の範囲内である第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含む請求項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2希土類アルミン酸塩蛍光体は、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が520nm以上550nm以下の範囲内にあり、半値全幅が95nm以上115nm以下の範囲内である第3希土類アルミン酸塩蛍光体を含む請求項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第2希土類アルミン酸塩蛍光体は、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が535nm以上555nm以下の範囲内にあり、半値全幅が100nm以上120nm以下の範囲内である第4希土類アルミン酸塩蛍光体を含む請求項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記窒化物蛍光体は、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が600nm以上630nm以下の範囲内にあり、半値全幅が80nm以下である窒化物蛍光体を含む請求項1から11のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記窒化物蛍光体は、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が640nm以上680nm以下の範囲内にあり、半値全幅が100nm以下である窒化物蛍光体を含む請求項1から12のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記請求項1から13のいずれか1項に記載の発光装置を備えた灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置及びそれを備えた灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(以下、「LED」とも記載する。)と呼ばれる発光素子を用いる発光装置として、例えば、青色に発光するLEDと黄色発光の蛍光体とを組み合わせた発光装置が挙げられる。これは、青色LEDの青色光と、その光によって励起された蛍光体の黄色発光とが混色することにより白色光を放出する発光装置である。
【0003】
青色光を発する発光素子と黄色に発光する蛍光体とを組み合わせた発光装置は、可視光領域における放射強度が強いので、発光効率が高い。さらに、照射物の色の見え方(演色性)の指数である平均演色評価指数が高い発光装置が求められる場合がある。
【0004】
光源の演色性の評価手順はJIS Z8726によって、所定の反射率特性を有する試験色(R1からR15)を、試験光源と基準光源とでそれぞれ測色した場合の色差ΔEi(iは1から15の整数)がどうなるかを数値計算して算出すると定められている。ここで演色評価数Ri(iは1から15の整数)の上限は100である。つまり、試験光源とそれに対応する色温度の基準光源の色差が小さいほど、演色性が高くなる。
【0005】
上記に関連して、青色に発光するLEDと、黄色から緑色に発光する2種類の蛍光体とを用いて、色再現性のよい発光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
色再現性がよい発光装置を用いて視対象を照明しても、視対象を例えばテレビカメラなどのカメラで撮影して放送し、その放送を受信する画面に映し出した場合に、その画面を通して見る視対象の色再現性が維持されていない場合がある。
【0008】
本開示の一態様は、視対象の色再現性を向上できる発光装置及びそれを備えた灯具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の態様を包含する。
第一の態様は、430nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、蛍光部材と、を備えた発光装置であり、前記蛍光部材が、下記式(I)で表される組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体及び下記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有する第2希土類アルミン酸塩蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種の希土類アルミン酸塩蛍光体と、下記式(III)で表される組成式に含まれる組成を有する第1フッ化物蛍光体及び下記式(IV)で表される組成式に含まれる組成を有する第2フッ化物蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種のフッ化物蛍光体と、下記式(V)で表される組成式に含まれる組成を有する窒化物蛍光体から選択された少なくとも2種の窒化物蛍光体と、を含み、欧州放送連合(European Broadcasting Union:EBU)によって推奨される照明一貫性指数TLCI(Television Lighting Consistency Index)-2012により算出されるTLCIの値Qaが90以上であり、値Q10が90以上の光を発する、発光装置である。
Lu3Al5O12:Ce (I)
Y3(Al1-aGaa)5O12:Ce (II)
(式(II)中、aは、0≦a≦0.5を満たす。)
Ac[M2
1-bMn4+
bFd] (III)
(式(III)中、Aは、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M2は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M2
1-bMn4+
bFd]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c'[M2’1-b'Mn4+
b'Fd'] (IV)
(式(IV)中、A’は、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M2’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M2'
1-b'Mn4+
b'Fd']イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
SrqCasAltSiuNv:Eu (V)
(式(V)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
【0010】
第二の態様は、前記発光装置を備えた灯具である。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る一態様によれば、視対象の色再現性を向上できる発光装置及びそれを備えた灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る発光装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】各相関色温度の光を発する実施例1から6に係る発光装置及び比較例1から6に係る発光装置の値Q10を示す図である。
【
図3】実施例1に係る発光装置の発光スペクトル、比較例1に係る発光装置の発光スペクトル及び相関色温度6500Kの基準光源のスペクトルを示す図である。
【
図4】実施例2に係る発光装置の発光スペクトル、比較例2に係る発光装置の発光スペクトル及び相関色温度5000Kの基準光源のスペクトルを示す図である。
【
図5】実施例3に係る発光装置の発光スペクトル、比較例3に係る発光装置の発光スペクトル及び相関色温度4000Kの基準光源のスペクトルを示す図である。
【
図6】実施例4に係る発光装置の発光スペクトル、比較例4に係る発光装置の発光スペクトル及び相関色温度3500Kの基準光源のスペクトルを示す図である。
【
図7】実施例5に係る発光装置の発光スペクトル、比較例5に係る発光装置の発光スペクトル及び相関色温度3000Kの基準光源のスペクトルを示す図である。
【
図8】実施例6に係る発光装置の発光スペクトル、比較例6に係る発光装置の発光スペクトル及び相関色温度2700Kの基準光源のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る発光装置及びそれを備えた灯具を、実施の形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに特定するものではない。なお、本明細書において色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係は、JIS Z8110に従う。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。蛍光体の平均粒径は、フィッシャー・サブ・シーブ・サイザーズ・ナンバー(Fisher Sub Sieve Sizer's No.)と呼ばれる数値であり、空気透過法を用いて測定される。
【0014】
発光装置
発光装置は、430nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、蛍光部材と、を備える。蛍光部材は、下記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体及び下記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有する第2希土類アルミン酸塩蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種の希土類アルミン酸塩蛍光体と、下記式(III)で表される組成式に含まれる組成を有する第1フッ化物蛍光体及び下記式(IV)で表される組成式に含まれる組成を有する第2フッ化物蛍光体からなる群から選択された少なくとも1種を含むフッ化物蛍光体と、下記式(V)で表される組成式に含まれる組成を有する窒化物蛍光体から選択された少なくとも2種の窒化物蛍光体と、を含む。また、発光装置は、欧州放送連合(European Broadcasting Union、以下「EBU」と表記する。)によって推奨される照明一貫性指数(Television Lighting Consistency Index、以下、「TLCI」と表記する。)-2012により算出されるTLCIの値Qaが90以上であり、値Q10が90以上の光を発する。
【0015】
Lu3Al5O12:Ce (I)
Y3(Al1-aGaa)5O12:Ce (II)
Ac[M2
1-bMn4+
bFd] (III)
A’c'[M2’1-b'Mn4+
b'Fd'] (IV)
SrqCasAltSiuNv:Eu (V)
【0016】
式(II)中、aは、0≦a≦0.5を満たす。
式(III)中、Aは、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M2は、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、Aは、K+が好ましく、M2は、Siが好ましい。bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M2
1-bMn4+
bFd]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。なお、式(III)で表される組成式に含まれる組成として、例えば、K2SiF6:Mn(以下、「KSF」とも表記する。)と表記することもある。
式(IV)中、A’は、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4
+からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M2’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、Aは、K+が好ましく、M2は、Si及びAlが好ましい。b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M2'
1-b'Mn4+
b'Fd']イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。なお、式(IV)で表される組成式に含まれ、SiおよびAlを含む組成として、例えば、「KSAF」とも表記する組成が挙げられる。
式(V)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。なお、式(V)で表される組成式に含まれる組成として、例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:E
u(以下、「SCASN」とも表記する。)、CaAlSiN3:Eu(以下、「CASN」とも表記する。)と表記することもある。
【0017】
EBUが推奨するTLCI(略号「Q」とも表記する。)-2012は、照射物である視対象を例えばテレビカメラで撮影して放送し、その放送を受信する画面に映し出したときの照射物の演色性の評価指数である。その他、携帯用カメラで撮影し、その撮影内容を携帯用カメラの画面に映し出す場合や、パソコン用カメラで撮影し、その撮影内容をパソコンのディスプレイの画面に映し出す場合にも、上記「Q」は、照射物の演色性の評価指数になり得る。TLCIの値Qが高いほど、色再現性が高い。EBUによって推奨されたTLCI-2012により算出されるTLCIの値Qは、Q1からQ24まで、24色の各色のパッチが6個ずつ4列に配列されたテストサンプルがある。値Qaは、Q1からQ18までの平均値である。TLCI-2012により算出されるTLCIの値Qを、TLCIの値Qという場合がある。TLCIのQ1からQ24の各上限値は100である。TLCIのQ1からQ24の各値が100に近いほど、画面に映し出された照射物の映像は、優れた色再現性を示す。TLCIのテストサンプルには、白色(White)の値Q19を含むグレースケールQ19からQ24が含まれており、グレースケールは、TLCIの分析には含まれない。TLCIの値Q10は、紫色(Purple)を表す値である。TLCIのQ1からQ18の平均値である値Qaの数値が高いほど、視対象の観覧の仕方にかかわらず、視対象の色再現性を向上した光が発せられる。
【0018】
発光装置は、上記構成を有することにより、発光装置の発光スペクトルにおいて、430nm以上470nm以下の範囲にある青紫色から青色の発光スペクトルが突出して高い強度とならないように抑制し、黄色から緑色発光の波長領域における発光スペクトルの発光強度を大きく向上させることができる。特に、発光装置の発光スペクトルにおいて、青紫色から青色の波長領域における発光スペクトルのみが突出して高い強度とならないように抑制し、黄色から緑色発光の波長領域における発光スペクトルを、基準光源により近似させて、視感度が高い緑色発光の発光成分も増やすことができるので、優れた演色性と高い発光効率を達成することが可能となる。発光装置は、赤色発光のフッ化物蛍光体及び2種の窒化物蛍光体を用いることにより、発光装置の発光スペクトルにおいて、650nm付近の発光強度を大きく向上させることができる。発光装置は、フッ化物蛍光体を用いることにより、高い発光効率を維持しつつ、さらに2種の窒化物蛍光体を用いることで、TLCIの値Qaが90以上であり、値Q10が90以上である光を発することができる。発光装置は、TLCIの値Qaが90以上である光を発し、値Qaが91以上である光を発することが好ましく、値Qaが92以上である光を発することがより好ましく、値Qaが93以上である光を発することが特に好ましい。なお、発光装置から発せられる光の値Qaの上限は、100であり、発光装置からTLCIの値Qaが100以下である光を発してもよく、値Qaが99以下である光を発してもよい。発光装置は、TLCIの値Q10が90以上である光を発し、値Q10が91以上である光を発することが好ましく、値Q10が92以上である光を発することがより好ましく、値Q10が93以上である光を発することが特に好ましい。なお、発光装置から発せられる光の値Q10の上限は、100であり、発光装置からTLCIの値Q10が100以下である光を発してもよく、値Q10が99以下である光を発してもよい。一般照明などに用いられる演色性が高い白色の混色光を発する発光装置は、TLCIの値Q10が90を下回る数値になる傾向がある。TLCIの値Q10が90以上の高い数値を示すと、値Q10を含むQ1からQ18の平均値である値Qaの数値も高い90以上の100に近い数値を示し、画面に映し出される場合であっても、色再現性を向上した光が発せられる。EBUによって推奨されるTLCIのQ1からQ24、及びQ1からQ18の平均値である値Qaは、EBUが推奨するTLCI-2012(「TECH 3355 METHOD FOR THE ASSESSMENT OF THE COLORIMETRIC PROPERTIES OF LUMINAIRES THE TELEVISION LIGHTING CONSISTENCY INDEX (TLCI-2012) AND THE TELEVISION LUMINAIRE MATCHING FACTOR(TLMF-2013)」、Euorpean Broadcasting Union、Geneva、March、2017)に記載の数式から算出することができる。
【0019】
発光装置は、照射物の見え方(以下、「演色性」とも表記する。)も優れた光を発することが好ましい。
発光装置などの光源から発せられる光の演色性の評価手順は、JIS Z8726によって、所定の反射率特性を有する試験色(R1からR15)を、試験光源と基準光源とでそれぞれ測色した場合の色差ΔEi(iは1から15の整数)を数値計算して演色評価数を算出して行うと定められている。演色評価数Ri(iは1から15の整数)の上限は100である。試験光源とそれに対応する色温度の基準光源の色差が小さいほど、演色評価数は100に近づき高くなる。演色評価数のうち、R1からR8の平均値を平均演色評価数(以下、「Ra」とも表記する。)とし、R9からR15を特殊演色評価数とする。演色性についてCIE(国際照明委員会)は、蛍光ランプが具備すべき演色性の指針を1986年に公表しており、その指針によれば、使用される場所に応じた好ましいRaは、一般作業を行う工場では60以上80未満、住宅、ホテル、レストラン、店舗、オフィス、学校、病院、精密作業を行う工場などでは80以上90未満、高い演色性が求められる臨床検査を行う場所、美術館などでは90以上とされている。
【0020】
発光装置は、Raが例えば80以上の光を発し、Raが90以上の光を発することが好ましく、Raが92以上の光を発することがより好ましい。また、発光装置は、R15がより高い数値である光を発することが好ましく、R15が85以上である光を発することが好ましく、R15が90以上である光を発することがより好ましく、R15が92以上である光を発することがさらに好ましく、R15が93以上である光を発することが特に好ましい。
【0021】
発光装置が発する光は、発光素子の光と、上述したそれぞれの蛍光体が発する蛍光との混合色であり、例えば、CIE1931に規定される色度座標が、x=0.20から0.50且つy=0.20から0.50の範囲に含まれる光とすることができ、x=0.30から0.50且つy=0.30から0.45の範囲に含まれる光とすることもできる。
発光装置が発する光の相関色温度は、例えば2000K以上とすることができ、2500K以上とすることもできる。また相関色温度は7000K以下とすることができる。
【0022】
発光装置の一例である発光装置100を図面に基づいて説明する。
図1は、発光装置100を示す概略断面図である。
発光装置100は、発光ピーク波長が430nm以上470nm以下の範囲内にある窒化ガリウム系化合物半導体の発光素子10と、発光素子10を載置する成形体40と、を有する。成形体40は、第1のリード20及び第2のリード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42とが一体的に成形されてなるものである。成形体40は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極はそれぞれ第1のリード20及び第2のリード30とワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は蛍光部材50により被覆されている。蛍光部材50は、例えば、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70として、希土類アルミン酸塩蛍光体71、フッ化物蛍光体72、及び2種の窒化物蛍光体73と、樹脂とを含有してなる。蛍光部材50に含有される蛍光体70は、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
【0023】
蛍光部材50は、発光素子10が発する光を波長変換するだけではなく、外部環境から発光素子10を保護するための部材としても機能する。
図1では、蛍光体70は蛍光部材50中で偏在している。このように発光素子10に接近して蛍光体70を配置することにより、発光素子10からの光を効率よく波長変換することができ、発光効率の優れた発光装置とできる。なお、蛍光体70を含む蛍光部材50と、発光素子10との配置は、それらを接近して配置させる形態に限定されることなく、蛍光体70への熱の影響を考慮して、蛍光部材50中で発光素子10と、蛍光体70との間隔を空けて配置することもできる。また蛍光体70を蛍光部材50の全体にほぼ均一の割合で混合することによって、色ムラがより抑制された光を得るようにすることもできる。
【0024】
発光素子
発光素子は、430nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、発光効率と演色性の観点から、440nm以上465nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することが好ましく、440nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがより好ましく、445nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがさらに好ましく、450nm以上460nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。このような発光素子を励起光源として用い、発光素子からの光と蛍光体からの蛍光との混色光を発する発光装置を構成する。
【0025】
発光素子の最大の発光強度を示す発光スペクトルの半値全幅は、例えば、30nm以下であってもよい。
発光素子としては、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることが好ましい。光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
本明細書において、半値全幅は、発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光ピーク波長における発光強度に対して発光強度が50%となる波長幅をいう。
【0026】
蛍光体
発光装置は、発光素子から発せられる光の一部を吸収し、発光素子から発せられた光とは異なる波長の光を発する前記蛍光体の少なくとも1種を含むことで、発光装置の光束を高めつつ、TLCIの値Qaを高めることができる。
【0027】
希土類アルミン酸塩蛍光体
前記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体は、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が500nm以上540nm以下の範囲内にあり、半値全幅が95nm以上105nm以下の範囲内である第1希土類アルミン酸塩蛍光体を含むことが好ましい。前記式(I)で表される組成式に含まれる組成を有する第1希土類アルミン酸塩蛍光体であり、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が500nm以上540nm以下の範囲内にあり、半値全幅が95nm以上105nm以下の範囲内である第1希土類アルミン酸塩蛍光体は、例えばLAGと表記する希土類アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。
【0028】
前記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有する第2希土類アルミン酸塩蛍光体は、第2希土類アルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長が520nm以上550nm以下の範囲内にあり、半値全幅が95nm以上115nm以下の範囲内である第3希土類アルミン酸塩蛍光体を含むことが好ましい。前記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有し、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が520nm以上550nm以下の範囲内にあり、半値全幅が95nm以上115nm以下の範囲内である第2希土類アルミン酸塩蛍光体に含まれる第3希土類アルミン酸塩蛍光体は、発光ピーク波長及び半値全幅がそれぞれ異なるGYAG1又はGYAG2と表記する希土類アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。
【0029】
前記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有する第2希土類アルミン酸塩蛍光体は、第2希土類アルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長が535nm以上555nm以下の範囲内にあり、半値全幅が100nm以上120nm以下の範囲内である第4希土類アルミン酸塩蛍光体を含むことが好ましい。前記式(II)で表される組成式に含まれる組成を有し、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が535nm以上555nm以下の範囲内にあり、半値全幅が100nm以上120nm以下の範囲内である第2希土類アルミン酸塩蛍光体に含まれる第4希土類アルミン酸塩蛍光体は、YAGと表記する希土類アルミン酸塩蛍光体が挙げられる。
【0030】
希土類アルミン酸塩蛍光体の極大励起波長は、発光効率を考慮して、380nm以上490nm以下の範囲内にあることが好ましく、430nm以上470nm以下の範囲内にあることがより好ましく、440nm以上460nm以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0031】
希土類アルミン酸塩蛍光体の平均粒径は、発光強度及び発光装置の製造工程における作業性の向上を考慮して、例えば5μm以上30μm以下の範囲内であり、20μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましい。発光装置は、希土類アルミン酸塩蛍光体を1種単独で含んでいてもよく、組成が異なる希土類アルミン酸塩蛍光体の2種以上を組合せて含んでいてもよい。以下、蛍光体の平均粒径は、レーザー回折粒度分布測定法により測定した体積基準の粒度分布における累積50%粒径(体積平均粒径)をいう。体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MASTER SIZER(マスターサイザー)3000、MALVERN社製)を用いて測定することができ、レーザー回折粒度分布測定法により測定された体積平均粒径であれば、カタログ値であってもよい。
【0032】
フッ化物蛍光体
前記式(III)で表される組成式に含まれる組成を有する第1フッ化物蛍光体は、第1フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長が620nm以上640nm以下の範囲内にある第1フッ化物蛍光体を含むことが好ましい。前記式(III)で表される組成式に含まれる組成を有し、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が620nm以上640nm以下の範囲内にあり、半値全幅が14nm以下である第1フッ化物蛍光体は、KSFと表記する第1フッ化物蛍光体が挙げられる。
【0033】
前記式(IV)で表される組成式に含まれる組成を有する第2フッ化物蛍光体は、第2フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長が620nm以上640nm以下の範囲内にある第2フッ化物蛍光体を含むことが好ましい。前記式(IV)で表される組成式に含まれる組成を有し、発光スペクトルにおける発光ピーク波長が620nm以上640nm以下の範囲内にあり、半値全幅が14nm以下である第2フッ化物蛍光体は、KSAFと表記する第2フッ化物蛍光体が挙げられる。
【0034】
フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける半値全幅は、小さいことが好ましく、例えば10nm以下であってもよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける半値全幅は、例えば1nm以上であってもよい。フッ化物蛍光体の極大励起波長は、発光効率を考慮して、430nm以上470nm以下の範囲内にあることが好ましく、440nm以上460nm以下の範囲内にあることがより好ましい。
【0035】
フッ化物蛍光体の平均粒径は、発光強度及び発光装置の製造工程における作業性の向上を考慮して、例えば5μm以上50μm以下の範囲内でもよく、10μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。発光装置は、フッ化物蛍光体を1種単独で含んでいてもよく、組成が異なるフッ化物蛍光体の2種以上を組合せて含んでいてもよい。
【0036】
窒化物蛍光体
前記式(V)で表される組成式に含まれる組成を有する窒化物蛍光体は、窒化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長が600nm以上630nm以下の範囲内にあり、半値全幅が80nm以下である窒化物蛍光体を含むことが好ましく、例えば、SCASNと表記する窒化物蛍光体が挙げられる。窒化物蛍光体は、発光スペクトルにおける半値全幅が40nm以上であってもよい。窒化物蛍光体はSr及びCaからなる群から選択される少なくとも1種を含むが、SrとCaの両方を含むことが好ましく、Sr及びCaのうちのSr含有率が0.8モル%以上であることがより好ましい。
【0037】
前記式(V)で表される組成式に含まれる組成を有する窒化物蛍光体は、窒化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長が640nm以上680nm以下の範囲内にあり、半値全幅が100nm以下である窒化物蛍光体を含むことが好ましく、例えば、CASNと表記する窒化物蛍光体が挙げられる。第3窒化物蛍光体は、発光スペクトルにおける半値全幅が40nm以上であってもよい。
【0038】
窒化物蛍光体の励起波長は、発光効率を考慮して、380nm以上490nm以下の範囲内にピーク強度があることが好ましく、430nm以上470nm以下の範囲内にあることがより好ましく、440nm以上460nm以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0039】
窒化物蛍光体の平均粒径は、発光強度及び発光装置の製造工程における作業性の向上を考慮して、例えば5μm以上35μm以下の範囲内であり、15μm以上25μm以下の範囲内であることが好ましい。
発光装置は、前記式(V)で表される組成式に含まれる組成を有し、発光ピーク波長の範囲又は半値全幅が異なる2種以上の窒化物蛍光体を含む。
【0040】
その他の蛍光体
発光装置は、上述の希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体以外のその他の蛍光体を必要に応じて含んでいてもよい。その他の蛍光体としては、(Sr、Ba、Ca)10(PO4)6(Br、Cl)2:Eu、(Y,Gd,Tb,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce(ただし、第1希土類アルミン酸塩蛍光体及び第2希土類アルミン酸塩蛍光体を除く。)、Ca3Sc2Si3O12:Ce、CaSc2O4:Ce、(La,Y)3Si6N11:Ce、(Ca,Sr,Ba)3Si6O9N4:Eu、(Ca,Sr,Ba)3Si6O12N2:Eu、(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2:Eu、(Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Eu、(Ca,Sr,Ba)S:Eu、(Ba,Sr,Ca)Ga2S4:Euなどを挙げることができる。発光装置がその他の蛍光体を含む場合、その含有量は、特定の発光特性が得られるように適宜調整される。
【0041】
蛍光体は、市販の蛍光体を使用することができる。また、例えばフッ化物蛍光体は、出願人が先に出願した特願2014-202266号、特願2020-212532号に記載の製造方法を参照にして製造することができる。また、その他の蛍光体について、例えば以下のようにして製造することができる。蛍光体の組成に含有される元素の単体や酸化物、炭酸塩、窒化物、塩化物、フッ化物、硫化物などを原料とし、これらの各原料を所定の組成比となるように秤量する。また、原料にさらにフラックスなどの添加材料を適宜加え、混合機を用いて湿式又は乾式で混合する。これにより、固相反応を促進させて均一な大きさの粒子を形成することが可能となる。また、混合機は工業的に通常用いられているボールミルの他、振動ミル、ロールミル、ジェットミルなどの粉砕機を用いてもよい。粉砕機を用いて粉砕することで比表面積を大きくすることもできる。また、得られる蛍光体粒子の比表面積を一定範囲とするために、工業的に通常用いられている沈降槽、ハイドロサイクロン、遠心分離器などの湿式分離機、サイクロン、エアセパレータなどの乾式分級などを用いて分級することもできる。上記の混合した原料をSiC、石英、アルミナ、BNなどの坩堝に詰め、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気、水素を含む還元雰囲気にて焼成を行う。焼成は所定の温度及び時間で行う。焼成されたものを粉砕、分散、濾過などを行い目的の蛍光体粉末を得る。固液分離は濾過、吸引濾過、加圧濾過、遠心分離、デカンテーションなどの工業的に通常用いられる方法により行うことができる。乾燥は、真空乾燥機、熱風加熱乾燥機、コニカルドライヤー、ロータリーエバポレーターなどの工業的に通常用いられる装置により行うことができる。
【0042】
前述の各蛍光体の含有率は、TLCIの値Qa及び値Q10を高めるために、発光装置が発する光の目的とする相関色温度に応じて、以下(1)から(5)に説明するように選択してもよい。
【0043】
(1)希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量(質量)に対するフッ化物蛍光体の総含有量(質量)の含有率(フッ化物蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量)が0.35以上0.70以下の範囲内であることが好ましく、0.40以上0.65以下の範囲内であることがより好ましく、0.42以上0.60以下の範囲内であることがさらに好ましい。以下蛍光体の含有量は、質量をいう。
【0044】
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率(フッ化物蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量)が0.60以上1.30以下の範囲内であることが好ましく、0.65以上1.20以下の範囲内であることがより好ましく、0.68以上1.00以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0045】
(2)希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率(フッ化物蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.25以上0.45以下の範囲内であることが好ましく、0.26以上0.40以下の範囲内であることがより好ましく、0.28以上0.34以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0046】
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率(フッ化物蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.35以上0.60以下の範囲内であることが好ましく、0.36以上0.55以下の範囲内であることがより好ましく、0.38以上0.53以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0047】
(3)希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対する希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量の含有率
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対する希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量の含有率(希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.50以上0.75以下の範囲内であることが好ましく、0.60以上0.72以下の範囲内であることがより好ましく、0.62以上0.70以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0048】
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対する希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量の含有率(希土類アルミン酸塩蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.40以上0.60以下の範囲内であることが好ましく、0.45以上0.59以下の範囲内であることがより好ましく、0.50以上0.58以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0049】
(4)希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量の含有率
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量の含有率(フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.25以上0.50以下の範囲内であることが好ましく、0.28以上0.45以下の範囲内であることがより好ましく、0.30以上0.40以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0050】
相関色温度が2500K以上4750K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量の含有率(フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量/希土類アルミン酸塩蛍光体、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.40以上0.60以下の範囲内であることが好ましく、0.41以上0.55以下の範囲内であることがより好ましく、0.42以上0.50以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0051】
(5)フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率
相関色温度が3250K以上7000K以下の範囲内の光を発する発光装置とする場合、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率(フッ化物蛍光体の総含有量/フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.80以上0.99以下の範囲内であることが好ましく、0.85以上0.98以下の範囲内であることがより好ましく、0.90以上0.95以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
相関色温度が2500K以上3250K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量に対するフッ化物蛍光体の総含有量の含有率(フッ化物蛍光体の総含有量/フッ化物蛍光体及び窒化物蛍光体の総含有量)が0.80以上0.95以下の範囲内であることが好ましく、0.82以上0.93以下の範囲内であることがより好ましく、0.85以上0.92以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0053】
発光スペクトル
発光装置の発光スペクトルは、横軸に波長、縦軸に発光強度を有する分光分布で表される。発光装置の発光スペクトルにおいて、発光素子の発光ピークに対するフッ化物蛍光体の発光ピークの発光ピーク強度比は、TLCIの値Qa及び値Q10を高めるために、発光装置が目的とする相関色温度に応じて、選択することが好ましい。
相関色温度が4750K以上7000K以下の範囲内の光を発する発光装置とする場合、発光装置の発光スペクトルにおける、発光素子の発光ピークに対するフッ化物蛍光体の発光ピークの発光ピーク強度比が、1.00以上2.00以下の範囲内であることが好ましく、1.10以上1.80以下の範囲内であることがより好ましく、1.20以上1.70以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0054】
相関色温度が3250K以上4750K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、発光装置の発光スペクトルにおける、発光素子の発光ピークに対するフッ化物蛍光体の発光ピークの発光ピーク強度比が、2.00以上4.50以下の範囲内であることが好ましく、2.20以上4.00以下の範囲内であることがより好ましく、2.50以上3.75以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0055】
相関色温度が2850K以上3250K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、発光装置の発光スペクトルにおける、発光素子の発光ピークに対するフッ化物蛍光体の発光ピークの発光ピーク強度比が、4.00以上6.00以下の範囲内であることが好ましく、4.20以上5.50以下の範囲内であることがより好ましく、4.80以上5.40以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0056】
相関色温度が2500K以上2850K未満の範囲内の光を発する発光装置とする場合、発光装置の発光スペクトルにおける、発光素子の発光ピークに対するフッ化物蛍光体の発光ピークの発光ピーク強度比が、5.50以上9.00以下の範囲内であることが好ましく、6.00以上8.50以下の範囲内であることがより好ましく、7.00以上8.40以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0057】
蛍光部材
発光装置は、例えば、蛍光体及び樹脂を含み、発光素子を被覆する蛍光部材を備える。蛍光部材を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂として、具体的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂などの変性シリコーン樹脂などを挙げることができる。
【0058】
蛍光部材は、蛍光体及び樹脂に加えてその他の成分を必要に応じて含んでいてもよい。その他の成分としては、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどのフィラー、光安定化剤、着色剤などを挙げることができる。蛍光部材がその他の成分を含む場合、その含有量は特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、その他の成分として、フィラーを含む場合、その含有量は樹脂に対して、0.01質量%以上60質量%以下の範囲内とすることができる。
【0059】
灯具
灯具は、上述した発光装置の少なくとも1種を備えていればよい。さらに、灯具は、上述した発光装置の少なくとも1種と、既に公知の白色系の混色光を発光する発光装置とを組み合わせて備えることもできる。灯具は、上述した発光装置の他、反射部材、保護部材、発光装置に電力を供給するための装置などをさらに備えていてもよい。なお、灯具は上述した発光装置を複数備えていてもよい。灯具が複数の発光装置を備える場合、同一の発光装置を複数備えていてもよく、例えば相関色温度が異なる発光装置を複数備えていてもよい。また、複数の発光装置を個別に駆動して、明るさや相関色温度を好みに合わせて調節可能な駆動装置を備えていてもよい。灯具の使用形態としては、直付型、埋め込み型、吊り下げ型のいずれであってもよい。
【実施例0060】
以下、本開示の実施例を具体的に説明する。
【0061】
蛍光体
発光装置の製造に先立ち、実施例及び比較例に使用する蛍光体として以下に示す蛍光体をそれぞれ準備した。
第1希土類アルミン酸塩蛍光体:LAG、第1希土類アルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長521nm、半値全幅100nm、
第2希土類アルミン酸塩蛍光体:GYAG1、第2希土類アルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長535nm、半値全幅106nm、
第2希土類アルミン酸塩蛍光体:GYAG2、第2希土類アルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長541nm、半値全幅107nm、
第2希土類アルミン酸塩蛍光体:YAG、第2希土類アルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長546nm、半値全幅110nm、
第1フッ化物蛍光体:KSF、第1フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長630nm、半値全幅14nm、
窒化物蛍光体:SCASN、窒化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長600nm以上630nm以下の範囲内、半値全幅80nm、
窒化物蛍光体:CASN、窒化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長640nm以上680nm以下の範囲内、半値全幅100nm。
【0062】
さらに、比較例の発光装置に使用する蛍光体として、下記式(VI)で表される組成式に含まれる組成を有し、発光ピーク波長が521nmであり、半値幅が63nmであるクロロシリケート蛍光体を準備した。
Ca8MgSi4O16Cll2:Eu (VI)
なお、上述した各蛍光体の発光ピーク波長及び半値全幅は、蛍光体の製造条件、組成の変更により調整することが可能である。
【0063】
発光素子として、発光ピーク波長が450nmである窒化ガリウム系の半導体発光素子をそれぞれ準備した。
【0064】
実施例1から6
発光装置の作製
発光ピーク波長が450nmの発光素子と、前記LAG、前記GYAG1、前記GYAG2及び前記YAG、前記KSF、前記SCASN、前記CASNのいずれかを表1に示すように組合せて、蛍光体を含む蛍光部材と、を備えた発光装置を作製した。表中に記載されている「-」の記号は、該当する蛍光体を含んでいない又は該当する単位の数値がないことを表す。
相関色温度が6500K、5000K、4000K、3500K、3000K、2700Kの各相関色温度付近になるように各蛍光体及び各蛍光体の含有率を以下の表2に示す値となるように調節して、配合した蛍光体をシリコーン樹脂に添加し、混合分散した後、更に脱泡することにより蛍光体含有樹脂組成物を得た。次にこの蛍光体含有樹脂組成物を発光素子の上に注入、充填し、さらに加熱することで樹脂組成物を硬化させて蛍光部材を作製した。このような工程により発光装置を作製した。
【0065】
【0066】
比較例1から6
発光装置の作製
発光ピーク波長が450nmの発光素子と、フッ化物蛍光体を含むことなく、前記GYAG2、前記SCASN、前記クロロシリケート蛍光体のいずれかを表2に示すように組合せて、蛍光体を含む蛍光部材と、を備えた発光装置を作製した。
相関色温度が6500K、5000K、4000K、3500K、3000K、2700Kの各相関色温度付近になるように各蛍光体及び各蛍光体の含有率を以下の表4に示す値となるように調節したこと以外は、実施例1から6に係る発光装置と同様にして、発光装置を作製した。
【0067】
【0068】
以下のように、実施例に係る各発光装置及び比較例に係る各発光装置を測定した。結果は、表3及び表4に示す。
【0069】
発光ピーク強度比
実施例に係る各発光装置及び比較例に係る各発光装置の発光スペクトルは、分光蛍光光度計を用いて測定した。また、各発光装置からの発光の発光スペクトルから、450nm付近の発光素子の発光ピークの発光ピーク強度に対する630nm付近のフッ化物蛍光体の発光ピークの発光ピーク強度の発光ピーク強度比を求めた。
図3から
図8は、実施例1から6に係る各発光装置及び比較例1から6に係る各発光装置の各発光スペクトルと各相関色温度における基準光源のスペクトルを示す。
図3から
図8に示す各発光装置の発光スペクトル及び基準光源のスペクトルは、最大の発光強度を1とした発光スペクトルである。
【0070】
相関色温度、色度座標(x、y)、演色評価数(Ra,R15)、相対光束(%)
実施例に係る各発光装置及び比較例に係る各発光装置について、発光色の色度座標、相関色温度(K)、平均演色評価数(Ra)、特殊演色評価数(R15)を測定した。具体的には、実施例及び比較例に用いた各発光装置について、分光測光装置(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、CIE1931色度図の色度座標系における色度座標(x、y)、相関色温度(K)、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R15及び光束を測定した。実施例に係る各発光装置の発光の相対光束は、各相関色温度における比較例に係る各発光装置の光束を100%として求めた。
【0071】
TLCIの値Qa、値Q10
実施例に係る各発光装置及び比較例に係る各発光装置について、分光測光装置(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、先に説明した、EBUで推奨されたTLCI-2012に記載された数式に基づき、TLCIの値Qa及び値Q10を算出した。
【0072】
【0073】
【0074】
表3及び表4に示されるように、相関色温度がほぼ同じ実施例及び比較例の各発光装置の平均変色評価数RaとTLCIの値Qaを比べると、平均演色評価数Raについては、実施例及び比較例において、ほぼ同等の数値が得られた。一方、TLCIの値Qaについては、各相関色温度において、実施例の発光装置のほうが比較例よりも高い数値が得られていた。また、R15についても、各相関色温度において、実施例の発光装置のほうが比較例よりも高い数値が得られていた。実施例の発光装置は、TLCIの値Qaが高く、視対象の観覧の仕方にかかわらず、視対象の色再現性を向上した光が発せられていることが分かる。また、実施例の各発光装置の相対光束は、表3と表4に示されるように各比較例の発光装置の光束を基準(100%)として、相関色温度がほぼ同じ実施例の発光装置及び比較例の発光装置を比べると、いずれの実施例の発光装置においても高い光束が得られた。
以上のことから、実施例に係る発光装置は、高い光束を有し、視対象の色再現性が向上し、優れた演色性を有することが分かる。
【0075】
図2は、相関色温度がほぼ同程度の光を発する実施例の発光装置及び比較例の発光装置のTLCIのQ10を示す図である。
図2に示すように、各相関色温度において、各実施例の各発光装置は、比較例の各発光装置よりも値Q10が高く、値Q10が90以上である光を発した。
【0076】
図3から
図8に、各相関色温度における実施例に係る発光装置の発光スペクトル、比較例に係る発光装置の発光スペクトル、及び基準光源の発光スペクトルを示した。
実施例1から6の発光装置の発光スペクトルは、6500K付近、5000K付近、4000K付近、3500K付近、3000K付近、2700K付近の各相関色温度において、430nm以上470nm以下の範囲の発光ピークの発光強度が基準光源の発光強度を超えることなく、青紫色から青色の発光強度が突出して高くなることなく、色バランスが維持されていた。実施例1から6に係る発光装置は、TLCIの値Q10の数値が90以上と高く、各色の色バランスが維持されてTLCIの値Qaも90以上に高くなる光を発した。
【0077】
比較例1から6の発光装置の発光スペクトルは、6500K付近、5000K付近、4000K付近、3500K付近、3000K付近、2700K付近の各相関色温度において、430nm以上470nm以下の範囲の発光ピークの発光強度が基準光源の発光強度と同等であるか、基準光源の発光強度を超えており、青紫色から青色の発光の強度が高くなり、色バランスが崩れTLCIの値Q10の数値が低くなり、相関色温度によっては、TLCIの値Qaが90よりも低くなると推測された。
本開示の発光装置は、発光特性に優れた照明器具、LEDディスプレイ、カメラのフラッシュライトなどに利用することができる。さらに、この発光装置を備えた灯具として利用することができる。