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特開2023-33211絶縁樹脂シート、積層体、及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033211
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】絶縁樹脂シート、積層体、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/00 20060101AFI20230302BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20230302BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230302BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230302BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
H01B3/00 G
H01L23/14 R
H01L23/12 J
H05K1/03 630H
B32B15/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133617
(22)【出願日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021137565
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】新土 誠実
(72)【発明者】
【氏名】水野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】新城 隆
(72)【発明者】
【氏名】高麗 亜希
【テーマコード(参考)】
4F100
5G303
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AA13B
4F100AA14B
4F100AA16B
4F100AA18B
4F100AA19B
4F100AA37B
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB10A
4F100AB10C
4F100AB17A
4F100AB17C
4F100AH02B
4F100AK01B
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100CA02B
4F100CA23B
4F100GB41
4F100JB13B
4F100JG04B
4F100JL01A
4F100JL01C
5G303AA05
5G303AB02
5G303AB20
5G303BA02
5G303CA09
5G303CA11
5G303CB02
5G303CB19
5G303CD01
5G303DA03
(57)【要約】
【課題】厚みが薄い場合であっても、絶縁性及び熱伝導性に優れる絶縁樹脂シートを提供する。
【解決手段】無機フィラーとバインダー樹脂とを含む絶縁樹脂シートであって、前記無機フィラーは、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有し、かつ体積頻度の累積値が95%となる粒径(D95)が40μm以上55μm以下であり、前記無機フィラーの含有量が65体積%以上である、絶縁樹脂シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機フィラーとバインダー樹脂とを含む絶縁樹脂シートであって、
前記無機フィラーは、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有し、かつ体積頻度の累積値が95%となる粒径(D95)が40μm以上55μm以下であり、
前記無機フィラーの含有量が65体積%以上である、絶縁樹脂シート。
【請求項2】
前記無機フィラーが窒化ホウ素粒子を含む、請求項1に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項3】
前記無機フィラーが、体積頻度粒度分布において15μm未満の領域及び25μm超の領域に極大ピークを有さない、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項4】
前記無機フィラーが、体積頻度の累積値が50%となる粒径(D50)が15μm以下である、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項5】
前記無機フィラーが、体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを1個のみ有する、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項6】
前記窒化ホウ素粒子が窒化ホウ素凝集粒子を含む、請求項2に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項7】
前記無機フィラーが窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーを含有する、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項8】
前記窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項7に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項9】
絶縁樹脂シートにおける窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーの含有量が、5体積%以上40体積%以下である、請求項7に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項10】
前記バインダー樹脂が熱硬化性樹脂及び硬化剤を含み、前記硬化剤がフェノール化合物以外の硬化剤である、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項11】
厚みが150μm以下である、請求項1又は2に記載の絶縁樹脂シート。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の絶縁樹脂シートと、金属ベース板と、金属板とを備え、前記金属ベース板上に、前記絶縁樹脂シート及び前記金属板をこの順で備える積層体。
【請求項13】
前記積層体が、回路基板である請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
前記金属板が、回路パターンを有する請求項12に記載の積層体。
【請求項15】
請求項12に記載の積層体と、前記金属板の上に設けられる半導体素子とを備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は絶縁樹脂シート、該絶縁樹脂シートを備える積層体、及び該積層体を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスなどの半導体素子を備える機器は、使用時に発生する熱の放熱を目的に、絶縁放熱基板が用いられることがある。
パワーデバイスに用いられる絶縁放熱基板では、放熱基板としての高い熱伝導率と、基板の上下に設けられている金属に対する導通を防止するため、高い絶縁性が求められている。そのため、絶縁放熱フィラーを含む絶縁樹脂シートを絶縁放熱基板として使用することが検討されているが、熱伝導率と絶縁性はトレードオフの関係にあり、例えば絶縁放熱フィラーを高充填にすると、熱伝導率は向上するものの、絶縁性が劣る傾向がある。そのため、少量の絶縁放熱フィラーで効果的に熱伝導性を向上させる観点から、使用する絶縁放熱フィラー自体の熱伝導性を向上させる検討もなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、一次粒子が凝集してなる窒化ホウ素粉末であって、前記窒化ホウ素粉末の体積基準の粒度分布において、最頻径と平均径との差の絶対値が10μm以下である、窒化ホウ素粉末に関する発明が記載されており、窒化ホウ素粉末の熱伝導性を向上できることが記載されている。
また、特許文献2では、窒化アルミニウム粒子を含む熱伝導性ポリマー組成物に関する発明が記載されている。具体的には、前記窒化アルミニウム粒子は20μm以上200μm以下の範囲に粒度分布曲線の最大ピーク値を有する第1の粒子を必須成分として特定量含有すること、及び第1の粒子の最大ピーク値における粒子径と半値幅を特定の関係とすることにより、窒化アルミニウム粒子の充填量を高め、組成物の熱伝導性を向上できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-164364号公報
【特許文献2】国際公開第2015/136806号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1及び2に記載の発明では、熱伝導性及び絶縁性を両立させる手段については何ら記載も示唆もされていない。特に、絶縁樹脂シートの厚さが薄い場合、熱伝導性と絶縁性の両方を高めることは困難であり、両方の物性に優れる絶縁樹脂シートが求められている。
そこで本発明では、絶縁性及び熱伝導性に優れる絶縁樹脂シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の体積頻度粒度分布を有する無機フィラーを特定量含む絶縁樹脂シートにより、上記課題が解決できること見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[14]に関する。
【0007】
[1]無機フィラーとバインダー樹脂とを含む絶縁樹脂シートであって、前記無機フィラーは、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有し、かつ体積頻度の累積値が95%となる粒径(D95)が40μm以上55μm以下であり、前記無機フィラーの含有量が65体積%以上である、絶縁樹脂シート。
[2]前記無機フィラーが窒化ホウ素粒子を含む、上記[1]に記載の絶縁樹脂シート。
[3]前記無機フィラーが、体積頻度粒度分布において15μm未満の領域及び25μm超の領域に極大ピークを有さない、上記[1]又は[2]に記載の絶縁樹脂シート。
[4]前記無機フィラーが、体積頻度の累積値が50%となる粒径(D50)が15μm以下である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂シート。
[5]前記無機フィラーが、体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを1個のみ有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂シート。
[6]前記窒化ホウ素粒子が窒化ホウ素凝集粒子を含む、上記[2]~[5]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂シート。
[7]前記無機フィラーが窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーを含有する、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂シート。
[8]前記窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーが、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[7]に記載の絶縁樹脂シート。
[9]絶縁樹脂シートにおける窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーの含有量が、5体積%以上40体積%以下である、上記[7]又は[8]に記載の絶縁樹脂シート。
[10]前記バインダー樹脂が熱硬化性樹脂及び硬化剤を含み、前記硬化剤がフェノール化合物以外の硬化剤である、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂シート。
[11]厚みが150μm以下である、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂シート。
[12]上記[1]~[11]のいずれか1項に記載の絶縁樹脂シートと、金属ベース板と、金属板とを備え、前記金属ベース板上に、前記絶縁樹脂シート及び前記金属板をこの順で備える積層体。
[13]前記積層体が、回路基板である上記[12]に記載の積層体。
[14]前記金属板が、回路パターンを有する上記[12]又は[13]に記載の積層体。
[15]上記[12]~[14]のいずれか1項に記載の積層体と、前記金属板の上に設けられる半導体素子とを備える半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、絶縁性及び熱伝導性に共に優れる絶縁樹脂シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る積層体を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<絶縁樹脂シート>
本発明の絶縁樹脂シートは、無機フィラーとバインダー樹脂を含み、無機フィラーは、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有し、体積頻度の累積値が95%となる粒径(D95)が40μm以上55μm以下であり、無機フィラーの含有量が65体積%以上である。
【0011】
[無機フィラー]
本発明の絶縁樹脂シートに含まれる無機フィラーは、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有する。無機フィラーが、体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有さず、25μm超の領域に極大ピークを有する場合は、無機フィラーのサイズが大きすぎるため短絡しやすくなり絶縁樹脂シートの絶縁性が悪くなる。一方、無機フィラーが、体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有さず、15μm未満の領域に極大ピークを有する場合は、無機フィラーのサイズが相対的に小さすぎるため熱伝導パスが長くなり絶縁樹脂シートの熱伝導性が悪くなる。
無機フィラーは、体積頻度粒度分布において15.5μm以上の領域に極大ピークを有することが好ましく、17μm以上の領域に極大ピークを有することがより好ましく、23μm以下の領域に極大ピークを有することが好ましく、22μm以下の領域に極大ピークを有することがより好ましい。無機フィラーが上記下限以上の領域に極大ピークを有することで熱伝導性により一層優れ、無機フィラーが上記上限以下の領域に極大ピークを有することで絶縁性により一層優れる。
【0012】
無機フィラーの体積頻度粒度分布における極大ピークは、15μm以上25μm以下の領域に存在する限り、その他領域(15μm未満の領域や25μm超の領域)にも存在してもよい。ただし、無機フィラーは体積頻度粒度分布において15μm未満の領域に極大ピークを有さないことが好ましく、25μm超の領域に極大ピークを有さないことが好ましい。無機フィラーが、体積頻度粒度分布において15μm未満の領域に極大ピークを有さないことで、絶縁樹脂シートの熱伝導性が向上しやすくなる。また無機フィラーが体積頻度粒度分布において25μm超の領域に極大ピークを有さないことで、絶縁樹脂シートの絶縁性が向上しやすくなる。すなわち、絶縁樹脂シートの絶縁性及び熱伝導性向上の観点から、無機フィラーは体積頻度粒度分布において15μm未満の領域及び25μm超の領域に極大ピークを有さないことがより好ましい。
さらに、絶縁樹脂シートの絶縁性及び熱伝導性向上の観点から、無機フィラーは体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを1個のみ有することが好ましい。
【0013】
体積頻度粒度分布はレーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積基準の頻度粒度分布曲線を意味し、横軸を粒子径とし、縦軸を頻度として表される曲線である。そして極大ピークとは、体積頻度粒度分布が示す曲線において、粒子径が大きくなるにつれて頻度が増加し、頻度の極大値を経て、頻度が減少する曲線の形状を意味する。また、例えば無機フィラーの体積頻度粒度分布において、極大ピークがXμmであるとは、上記した頻度の極大値を示す粒子径がXμmであることを意味する。
なおレーザー回折散乱型粒度分布計においては隣り合う複数の測定点で同一の頻度の値となり、これらが上記した頻度の極大値となっている場合があるが、この場合は、隣り合う複数の測定点の粒子径の平均値を算出し、該平均値を極大ピークとする。
また、レーザー回折散乱型粒度分布計における測定は、粒子径0.01μmから500μmまでを対数軸にて均等に85分割して行い、代表粒子径を用いて表記する。また、レーザー回折散乱粒度分布計における測定は3回行い、個々の測定の結果を平均したものを体積頻度粒度分布とする。
【0014】
無機フィラーのレーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度の累積値が95%となる粒径(D95)は40μm以上55μm以下である。該D95が55μmを超えると、絶縁樹脂シート中に局所的に短絡しやすい箇所が生じるため絶縁樹脂シートの熱伝導性及び絶縁性が悪くなる。該D95が40μm未満であると、熱伝導パスが長くなるため絶縁樹脂シートの熱伝導性が悪くなる。無機フィラーのD95は、好ましくは40μm以上、より好ましくは41μm以上であり、好ましくは53μm以下、より好ましくは50μm以下である。無機フィラーのD95が上記下限以上であることにより熱伝導性により一層優れ、無機フィラーのD95が上記上限以下であることにより熱伝導性及び絶縁性により一層優れる。
なお、D95は、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布において、粒子径の小さい方から体積頻度を累積して、累積値が95%となるところの粒子径を意味する。
また、D95は、無機フィラー2種以上を併用する場合は、混合された状態の無機フィラーの累積値が95%となるところの粒子径を意味する。この時、レーザー回折散乱型粒度分布計の測定における屈折率は、併用する無機フィラーの合計の含有量から算出し用いることができ、具体的には、併用する無機フィラーのそれぞれの屈折率と含有量から算出される加重平均値を用いることができる。
本発明における無機フィラーは、体積頻度粒度分布において15μm以上25μm以下の領域に極大ピークを有し、かつD95が40μm以上55μm以下であることにより、絶縁樹脂シートの熱伝導性及び絶縁性が共に良好になる。一般に絶縁樹脂シートの厚みが薄い場合は、熱伝導性及び絶縁性の両方を良好にすることが難しいが、本発明における絶縁樹脂シートは、厚みが薄い場合であったとしても、熱伝導性及び絶縁性の両方を良好にすることができる。
【0015】
無機フィラーのレーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度の累積値が50%となる粒径(D50)は、15μm以下であることが好ましい。D50が15μm以下であることにより、絶縁樹脂シートの絶縁性が向上する。無機フィラーのD50は、好ましくは14μm以下であり、より好ましくは13μm以下である。無機フィラーのD50が上記上限以下であることにより絶縁性により一層優れる。無機フィラーのD50の下限は特に限定されないが、熱伝導性に優れる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。
なお、D50は、レーザー回折散乱型粒度分布計により測定される体積頻度粒度分布において、粒子径の小さい方から体積頻度を累積して、累積値が50%となるところの粒子径を意味する。
【0016】
無機フィラーは、絶縁樹脂シートの熱伝導性を向上させる観点から、10W/m・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。無機フィラーの熱伝導率は、好ましくは15W/m・K以上、より好ましくは20W/m・K以上である。また、無機フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されないが、例えば、300W/m・K以下でもよいし、250W/m・K以下でもよい。
絶縁放熱性フィラーの熱伝導率は、例えば、クロスセクションポリッシャーにて切削加工したフィラー断面に対して、株式会社ベテル製サーマルマイクロスコープを用いて、周期加熱サーモリフレクタンス法により測定することができる。
【0017】
本発明の絶縁樹脂シートにおける無機フィラーの含有量は65体積%以上である。無機フィラーの含有量が65体積%未満であると、絶縁樹脂シートの熱伝導性が低下する。絶縁樹脂シートの熱伝導性向上の観点から、無機フィラーの含有量は、好ましくは67体積%以上であり、より好ましくは70体積%以上であり、そして絶縁樹脂シートの金属板に対する密着性の観点などから、好ましくは85体積%以下であり、より好ましくは80体積%以下である。
【0018】
本発明における無機フィラーは、絶縁樹脂シートの熱伝導性及び絶縁性向上の観点から、窒化ホウ素粒子を含むことが好ましい。また、無機フィラーは、窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーを含んでもよく、窒化ホウ素粒子及び窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーを併用することも好ましい。
窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
無機フィラーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、上記した所定の体積頻度粒度分布に調整しやすくする観点から、2種以上を併用することが好ましく、2種の窒化ホウ素粒子を併用することがより好ましく、または窒化ホウ素粒子と窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーを併用することがより好ましい。
また、窒化ホウ素粒子は、絶縁樹脂シートの熱伝導性及び絶縁性向上の観点から、窒化ホウ素凝集粒子を含むことが好ましい。窒化ホウ素凝集粒子は、一次粒子を凝集して構成される凝集粒子である。
窒化ホウ素凝集粒子は、一般的に、例えばSEMによる断面観察により、凝集粒子か否かを判別できる。なお、窒化ホウ素凝集粒子は、プレス成形などの種々の工程を経ることで、凝集粒子の形態を維持することもあるし、変形、崩壊、解砕などすることがある。ただし、窒化ホウ素凝集粒子は、後述する熱硬化性樹脂などと混合後に、プレス成形などの工程を経ることで、仮に変形、崩壊、解砕などしても概ね配向せず、また、ある程度の纏まりとなって存在するため、例えば上記した断面を観察することにより、窒化ホウ素凝集粒子であることが示唆され、それにより凝集粒子か否かを判別できる。
【0019】
窒化ホウ素凝集粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で製造できる。例えば、予め用意した一次粒子を凝集(造粒)させて得ることができ、具体的には、噴霧乾燥方法及び流動層造粒方法等が挙げられる。噴霧乾燥方法(スプレードライとも呼ばれる)は、スプレー方式によって、二流体ノズル方式、ディスク方式(ロータリ方式とも呼ばれる)、及び超音波ノズル方式等に分類でき、これらのどの方式でも適用できる。
また、窒化ホウ素凝集粒子の製造方法としては、必ずしも造粒工程は必要ではない。例えば、公知の方法で結晶化させた窒化ホウ素の結晶の成長に伴い、窒化ホウ素の一次粒子が自然に集結することで凝集粒子を形成させてもよい。
また、窒化ホウ素凝集粒子としては、例えば、昭和電工株式会社製の「UHP-G1H」などが挙げられる。
【0020】
無機フィラーは、窒化ホウ素粒子と窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーとを併用する場合、絶縁樹脂シートにおける窒化ホウ素粒子の含有量は、絶縁樹脂シートの熱伝導性向上の観点から、好ましくは30体積%以上であり、より好ましくは35体積%以上である。そして、絶縁樹脂シートの金属板に対する密着性の観点などから、絶縁樹脂シートにおける窒化ホウ素粒子の含有量は、好ましくは75体積%以下であり、より好ましくは65体積%以下である。
また、絶縁樹脂シートにおける窒化ホウ素粒子以外の無機フィラーの含有量は、絶縁樹脂シートの金属板に対する密着性の観点などから、好ましくは5体積%以上であり、より好ましくは10体積%以上であり、絶縁樹脂シートの熱伝導性向上の観点から、好ましくは40体積%以下であり、より好ましくは30体積%以下である。
【0021】
無機フィラーは、上記した所定の体積頻度粒度分布を満足するのであれば、1種を単独で使用してもよいし、複数を併用してもよいが、複数を併用することが好ましい。複数の無機フィラーを併用する場合は、個々の無機フィラーのD50は、特に限定されないが、0.1μm以上100μm以下、好ましくは0.5μm以上60μm以下である。
また、上記した所定の体積頻度粒度分布に調整し易くする観点から、市販の無機フィラーを公知の方法で粒度分布を調整して使用することも好ましい。粒度分布の調整方法は特に限定されないが、その一例として、例えば、無機フィラーを、篩を用いて粒度分布を調整する方法、分球機を用いて分球する方法が挙げられる。
【0022】
本発明における無機フィラーは、特定の目開きを有する篩を通過させた無機フィラーを含むことが好ましい。これにより、上記した所定の体積頻度粒度分布に調整しやすくなる。篩はJIS標準篩(JIS Z-8801)を用い、目開きが30~70μmの範囲にある篩が好ましく、35~60μmの範囲にある篩がより好ましく、40~50μmの範囲にある篩がさらに好ましい。
無機フィラー全量に対する、篩を通過させた無機フィラーの含有量は、好ましくは3~80質量%であり、より好ましくは5~70質量%であり、さらに好ましくは10~50質量%である。
【0023】
[バインダー樹脂]
本発明の絶縁樹脂シートに含まれるバインダー樹脂の種類は特に限定されないが、バインダー樹脂は熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、熱硬化性樹脂及び硬化剤を含むことがより好ましい。
なお、絶縁樹脂シートが熱硬化性樹脂を含む場合、最終品である製品形態においては、熱硬化性樹脂は通常は硬化した樹脂として存在するが、一部が未硬化であってもよい。
【0024】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、尿素樹脂及びメラミン樹脂等のアミノ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂及びアミノアルキド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。絶縁樹脂シートに使用する熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。熱硬化性樹脂としては、上記した中でも、エポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂としては、例えば、分子中にエポキシ基を2つ以上含有する化合物が挙げられる。エポキシ樹脂は、例えば重量平均分子量が5000未満となるものである。
エポキシ樹脂としては、具体的には、スチレン骨格含有エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェニレンエーテル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、例えば70g/eq以上500g/eq以下である。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは80g/eq以上であり、そして好ましくは400g/eq以下、より好ましくは350g/eq以下である。なお、エポキシ当量は、例えば、JIS K 7236に規定された方法に従って測定できる。
上記したエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
絶縁樹脂シートにおける熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは10体積%以上であり、より好ましくは15体積%以上であり、さらに好ましくは20体積%以上であり、そして好ましくは35体積%以下であり、より好ましくは30体積%以下である。
【0028】
(硬化剤)
上記した熱硬化性樹脂は硬化剤により硬化し、無機フィラーを結着させることが好ましい。
硬化剤としては、例えば、フェノール化合物(フェノール熱硬化剤)、アミン化合物(アミン熱硬化剤)、イミダゾール化合物、酸無水物などが挙げられる。これらの中でも硬化剤としては、フェノール化合物以外の硬化剤が好ましい。硬化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
アミン化合物としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
【0030】
イミダゾール化合物としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0031】
酸無水物としては、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0032】
絶縁樹脂シートにおける硬化剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.1体積%以上であり、より好ましくは0.2体積%以上であり、さらに好ましくは0.5体積%以上であり、そして好ましくは15体積%以下であり、より好ましくは12体積%以下であり、さらに好ましくは10体積%以下である。
【0033】
(硬化促進剤)
バインダー樹脂は、硬化促進剤をさらに使用してもよい。硬化促進剤の使用により、硬化速度がより速くなり、熱硬化性樹脂を速やかに硬化させることができ、絶縁樹脂シートにおける架橋構造を均一にできる。また、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。
硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。具体的には、イミダゾール化合物等のアニオン性硬化促進剤、アミン化合物等のカチオン性硬化促進剤、リン化合物及び有機金属化合物等のアニオン性及びカチオン性硬化促進剤以外の硬化促進剤、並びに過酸化物等のラジカル性硬化促進剤等が挙げられる。絶縁樹脂シートにおける硬化促進剤の含有量は、例えば0.1~8体積%、好ましくは0.3~5体積%である。
硬化促進剤は、1種単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
絶縁樹脂シートにおけるバインダー樹脂の含有量は、特に限定されないが、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上であり、さらに好ましくは20体積%以上であり、そして好ましくは35体積%以下であり、より好ましくは30体積%以下である。バインダー樹脂の含有量がこれら下限値以上であると、硬化後において、無機フィラーを十分に結着させて、所望の形状のシートを得ることができる。バインダー樹脂の含有量がこれら上限値以下であると、無機フィラーを一定量以上含有させることができるので、熱伝導性を優れたものとすることができる。
【0035】
[その他]
本発明に係る絶縁樹脂シートは、上記成分以外にも、分散剤、シランカップリング剤などのカップリング剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、粘着性付与剤、可塑剤、チソ性付与剤、及び着色剤などのその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
[厚み]
本発明の絶縁樹脂シートの厚みは、特に限定されないが、好ましくは150μm以下である。厚みが150μm以下であると、後述する回路基板や半導体装置などを薄膜化しやすくなる。本発明においては、厚みが150μm以下のような薄い絶縁樹脂シートの場合であっても、熱伝導性及び絶縁性を共に良好にすることができる。
絶縁樹脂シートの厚みは、好ましくは140μm以下であり、より好ましくは130μm以下であり、そして一定の絶縁性及び熱伝導性を確保する観点から、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは60μm以上であり、さらに好ましくは70μm以上である。なお、絶縁樹脂シートの厚みは、硬化後の絶縁樹脂シートの厚みである。
【0037】
本発明の絶縁樹脂シートは、単層構造であっても、多層構造であってもよい。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、絶縁樹脂シートの片面又は両面に樹脂層を積層した絶縁樹脂シートであってもよい。
【0038】
絶縁樹脂シートは、例えば、上記した無機フィラー及びバインダー樹脂を含む硬化性樹脂組成物をシート状に成形することにより形成することができる。硬化性樹脂組成物は、上記したその他の添加剤を含んでもよい。
【0039】
[積層体]
本発明の積層体は、図1に示すように、本発明の絶縁樹脂シート10に加えて、金属ベース板11及び金属板12を備え、金属ベース板11上に、絶縁樹脂シート10及び金属板12をこの順に備える積層体13である。
【0040】
金属ベース板11及び金属板12は、それぞれ熱伝導体としての機能を発揮するため、その熱伝導率は、10W/m・K以上であることが好ましい。これらに用いる材料としては、アルミニウム、銅、金、銀などの金属、及びグラファイトシート等が挙げられる。熱伝導性をより一層効果的に高める観点からは、アルミニウム、銅、又は金であることが好ましく、アルミニウム又は銅であることがより好ましい。
金属ベース板11の厚みは、0.1~5mmであることが好ましく、金属板12の厚みは、10~3000μmであることが好ましく、10~1500μmであることがより好ましい。なお、金属板としては、銅板のような板や銅箔のような箔の場合も含む。
【0041】
積層体13は、回路基板として使用されることが好ましい。回路基板として使用される場合、積層体13における金属板12は、回路パターンを有するよい。回路パターンは、回路基板上に実装される素子などに応じて、適宜パターニングすればよい。回路パターンは、特に限定されないが、エッチングなどにより形成されるとよい。また、回路基板において、金属ベース板11は、放熱板などとして使用される。
【0042】
[半導体装置]
本発明は、上記積層体を有する半導体装置も提供する。具体的には、図2に示すように、半導体装置15は、絶縁樹脂シート10、金属ベース板11及び金属板12を有する積層体13と、積層体13の金属板12の上に設けられる半導体素子14とを備える。金属板12は、エッチングなどによりパターニングされ、回路パターンを有するとよい。
【0043】
なお、半導体素子14は、図2では2つ示されるが、半導体素子14の数は限定されず、1つ以上であればいくつであってもよい。また、金属板12の上には、半導体素子14以外にも、トランジスタ等の他の電子部品(図示しない)が搭載されていてもよい。各半導体素子14は、金属板12の上に形成された接続導電部16を介して金属板12に接続される。接続導電部16は、はんだにより形成されるとよい。また、積層体13の金属板12側の表面には封止樹脂19が設けられる。そして、少なくとも半導体素子14が封止樹脂19により封止され、必要に応じて、金属板12も半導体素子14と共に封止樹脂19により封止されるとよい。
半導体素子14は、特に限定されないが、少なくとも1つがパワー素子(すなわち、電力用半導体素子)であることが好ましく、それにより、半導体装置15がパワーモジュールであることが好ましい。パワーモジュールは、例えば、インバータなどに使用される。
また、パワーモジュールは、例えば、エレベータ、無停電電源装置(UPS)等の産業用機器において使用されるが、その用途は特に限定されない。
【0044】
金属板12には、リード20が接続されている。リード20は、例えば封止樹脂19より外部に延出し、金属板12を外部機器などに接続する。また、半導体素子14にはワイヤ17が接続されてもよい。ワイヤ17は、図2に示すように半導体素子14を別の半導体素子14、金属板12、リード20などに接続するとよい。
半導体素子14は、リード20などを介して電力が供給されて駆動すると発熱するが、半導体素子14で発生した熱は、絶縁樹脂シート10を介して金属ベース板11に伝播され、金属ベース板11から放熱される。金属ベース板11は、必要に応じて放熱フィンなどからなるヒートシンクに接続されるとよい。
【0045】
半導体装置15は、その製造工程において、リフロー工程を経て製造されるとよい。具体的には、半導体装置15の製造方法においては、まず、積層体13を用意して、積層体13の金属板12上にはんだ印刷などにより接続導電部16を形成し、その接続導電部16の上に半導体素子14を搭載する。その後、半導体素子14を搭載した積層体13をリフロー炉の内部を通過させて、リフロー炉の内部で加熱し、接続導電部16により半導体素子14を金属板12の上に接続させる。なお、リフロー炉内の温度は、特に限定されないが、例えば200~300℃程度である。半導体装置15の製造方法においては、リフロー工程後に封止樹脂19を積層体13上に積層して半導体素子14は封止すればよい。また、封止樹脂19で封止する前に、適宜、ワイヤ17、リード20などを取り付けるとよい。
なお、以上では、リフロー工程により半導体素子14を金属板12に接続させる態様を示したが、このような態様に限定されず、例えば、リフロー工程により、積層体13(すなわち、回路基板)を別の基板(図示しない)に接続してもよい。
【0046】
[絶縁樹脂シート及び積層体の製造方法]
絶縁樹脂シートは、上記した硬化性樹脂組成物をシート状に成形して得ることができる。例えば、硬化性樹脂組成物を、剥離シートなどの支持体上に塗布、積層などして、シート状に成形してもよいし、積層体を製造する場合には、金属ベース板などの上に塗布、積層などしてシート状に成形してもよい。ここで、シート状とは、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らなものをいい、支持体、金属ベース板の上などの他の部材に膜状、層状に形成されたものもシート状の概念に含まれる。このように、硬化性樹脂組成物をシート状に成形することにより、硬化前の絶縁樹脂シートを得ることができる。
【0047】
塗布、積層などによりシート状に成形した硬化性樹脂組成物(硬化前の絶縁樹脂シート)は、プレス成形などにより加熱及び加圧することで部分的又は完全に硬化してもよいし、プレス成形前に部分的又は完全に硬化させておいてもよい。
【0048】
また、絶縁樹脂シート、金属ベース板、及び金属板を備える積層体を製造する場合には、予めシート状に成形した硬化性樹脂組成物(硬化前の絶縁樹脂シート)を、金属ベース板と金属板の間に配置して、プレス成形により加熱及び加圧して、金属ベース板と金属板を、絶縁樹脂シートを介して接着させることで積層体を製造することができる。絶縁樹脂シートは、プレス成形時の加熱により硬化させることが好ましいが、プレス成形前に部分的又は完全に硬化させておいてもよい。積層体では、その最終品である製品形態においては、絶縁樹脂シートは完全に硬化されていることが最も好ましい。完全に硬化することで、絶縁性や耐熱性が安定し、ガラス転移温度が向上し、積層体の品質が安定する。
【0049】
また、金属ベース板の上に硬化性樹脂組成物を塗布、積層などして、硬化前の絶縁樹脂シートを作製し、次いで、その上に金属板を積層し、その後、必要に応じてプレス成形などにより加熱及び加圧して絶縁樹脂シートを硬化させ、金属板を、絶縁樹脂シートを介して金属ベース板に接着させることで積層体を得てもよい。
【実施例0050】
以下、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
なお、各物性の測定方法及び評価方法は以下のとおりである。
【0052】
[絶縁樹脂シートの厚み]
各実施例及び比較例で作製した積層体の片面の銅をエッチングにて除去したのち、渦電流式膜厚測定計(エルコメーター社製)で絶縁樹脂シートの厚みを測定した。
【0053】
[無機フィラーの極大ピーク、D50、D95]
実施例・比較例で作製した積層体を、500℃で4時間の条件で加熱したのちにアルコールにて洗浄し乾燥して、絶縁樹脂シートに含まれる無機フィラーを単離した。得られた無機フィラーをスペクトリス株式会社製のレーザー回折散乱型粒度分布計「マスターサイザー3000」にて3回測定して平均して得た体積頻度粒度分布において、無機フィラーの極大ピーク、D50、及びD95を求めた。
【0054】
[絶縁樹脂シートの熱伝導率]
実施例及び比較例の各積層体を1cm角にカットした後に、両面にカーボンブラックをスプレーした測定サンプルに対して、測定装置「ナノフラッシュ」(NETZSCH社、型番:LFA447)を用いて、レーザーフラッシュ法により熱伝導率の測定を行い、以下の評価基準に基づいて評価した。
A 熱伝導率が19.6W/m・K以上
B 熱伝導率が18W/m・K以上19.6W/m・K未満
C 熱伝導率が15W/m・K以上18W/m・K未満
D 熱伝導率が15W/m・K未満
【0055】
[絶縁樹脂シートの絶縁破壊電圧]
実施例・比較例で作製した各積層体(6cm×6cm)にφ2の円電極を作成し、電極に対して20kV/minの速度で電圧を印可した。測定試料が絶縁破壊を起こした電圧を絶縁破壊電圧とした。
A 絶縁破壊電圧が6kV以上
B 絶縁破壊電圧が4kV以上6kV未満
C 絶縁破壊電圧が3kV以上4kV未満
D 絶縁破壊電圧が3kV未満
【0056】
実施例及び比較例で使用した各成分は以下の通りである。
<バインダー樹脂>
(熱硬化性樹脂)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂 三菱ケミカル社製「jER828US」
・フェノキシ型エポキシ樹脂 三菱ケミカル社製「jER4275」
(硬化剤)
・アミン化合物 東京化成工業社製「ジシアンジアミド」
・イミダゾール化合物 イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール 四国化成株式会社製「2MZA」
・酸無水物 三菱ケミカル社製「YH307」
【0057】
(無機フィラー)
・G1H 45F篩 窒化ホウ素凝集粒子である昭和電工株式会社製「UHP-G1H」(D50=40μm)を目開き45μmの篩で処理し、篩を通過したフィラー
・G1H 75F篩 窒化ホウ素凝集粒子である昭和電工株式会社製「UHP-G1H」(D50=40μm)を目開き75μmの篩で処理し、篩を通過したフィラー
・窒化ホウ素凝集粒子 水島合金鉄社製「HP40」、D50=40μm
・HP40 45F篩 HP40を目開き45μmの篩で処理し、篩を通過したフィラー
・窒化ホウ素粒子 水島合金鉄社製「FS-1」、D50=0.3μm
・アルミナ 住友化学社製「AA05」、D50=0.5μm
・アルミナ 住友化学社製「AA18」、D50=19μm
・窒化アルミニウム 東洋アルミ社製「TFZ-S20P」、D50=21μm
・ダイヤモンド グローバルダイヤモンド社製「FMM0-2」、D50=0.9μm
【0058】
[実施例1]
表1に記載の熱硬化性樹脂、硬化剤、及び無機フィラーを表1に記載の量となるように混合し、硬化性樹脂組成物を得た。該硬化性樹脂組成物を離型PETシート(厚み40μm)上に、厚み200μmになるように塗工し、50℃のオーブン内で10分間乾燥して、離型PETシート上に硬化性樹脂組成物からなる絶縁樹脂シートを形成させた。その後、離型PETシートを剥がして、絶縁樹脂シートの両面を、第1の金属層(銅板、厚さ500μm)と第2の金属層(アルミニウム板、厚さ1.0mm)とで挟み、温度150℃、圧力10MPaの条件で真空プレスすることにより、第1の金属層、絶縁樹脂シート、第2の金属層がこの順に積層された積層体を作製した。該積層体の絶縁樹脂シートに含まれる無機フィラーの体積頻度粒度分布における極大ピークは18.7μmに確認され、その他の領域には極大ピークは確認されなかった。またD50は11.6μmであり、D95は45μmであった。その他の各評価結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2~15、比較例1~3]
硬化性樹脂組成物に含まれる各成分の種類及び量を表1のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を作製した。各評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
本発明の要件を満足する各実施例の絶縁樹脂シートは、熱伝導性及び絶縁性が共に良好であった。
これに対して、本発明の要件を満足しない各比較例の絶縁樹脂シートは、熱伝導性及び絶縁性の少なくとも一方が悪い結果となった。
具体的には、無機フィラーの極大ピークが15μm以上25μm以下の領域に存在せず、25μm超の領域に存在する比較例1の絶縁樹脂シートは絶縁性が悪かった。無機フィラーの極大ピークが15μm以上25μm以下の領域に存在せず、15μm未満の領域に存在する比較例3の絶縁樹脂シートは熱伝導性が悪かった。また、無機フィラーの含有量が65体積%未満である比較例2の絶縁樹脂シートは熱伝導性が悪かった。
【符号の説明】
【0062】
10 絶縁樹脂シート
11 金属ベース板
12 金属板
13 積層体
14 半導体素子
15 半導体装置
16 接続導電部
17 ワイヤ
19 封止樹脂
20 リード
図1
図2