(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033243
(43)【公開日】2023-03-09
(54)【発明の名称】延伸加工用積層体、二次成形品及び抗ウイルス性部材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20230302BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20230302BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20230302BHJP
A01N 41/04 20060101ALI20230302BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20230302BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20230302BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230302BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20230302BHJP
【FI】
B32B27/18 F
A01N25/10
A01N25/34 A
A01N41/04 Z
A01N59/16 A
A01P1/00
C08L101/00
C08J7/04 U CER
C08J7/04 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135190
(22)【出願日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2021139219
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022124655
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出呂町 清花
(72)【発明者】
【氏名】小齊 拓人
(72)【発明者】
【氏名】笹山 道章
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
4H011
4J002
【Fターム(参考)】
4F006AA17
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4J002AA001
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4J002FB082
4J002FD186
4J002FD202
4J002FD206
4J002GC00
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】延伸加工して用いることができ、延伸加工後も抗ウイルス性に優れる延伸加工用積層体を提供する。
【解決手段】本発明に係る延伸加工用積層体は、基材と、前記基材の第1の表面側に配置された抗ウイルス層とを備え、前記抗ウイルス層が、抗ウイルス剤と、樹脂部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の第1の表面側に配置された抗ウイルス層とを備え、
前記抗ウイルス層が、抗ウイルス剤と、樹脂部とを含む、延伸加工用積層体。
【請求項2】
前記抗ウイルス剤の耐熱温度が、200℃以上である、請求項1に記載の延伸加工用積層体。
【請求項3】
前記基材が、熱可塑性樹脂を含み、
前記樹脂部に含まれる樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項1又は2に記載の延伸加工用積層体。
【請求項4】
前記樹脂部に含まれる樹脂が、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ABS樹脂、又はこれらの樹脂の共重合体樹脂である、請求項1又は2に記載の延伸加工用積層体。
【請求項5】
前記抗ウイルス層の平均厚みの、前記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比が、1.0以上である、請求項1又は2に記載の延伸加工用積層体。
【請求項6】
前記抗ウイルス層の平均厚みの、前記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比が、1.69以上である、請求項5に記載の延伸加工用積層体。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の延伸加工用積層体が延伸加工された、二次成形品。
【請求項8】
前記抗ウイルス層に由来する層の平均厚みの、前記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比が、0.5以上である、請求項7に記載の二次成形品。
【請求項9】
抗ウイルス性部材本体と、
請求項7に記載の二次成形品とを備える、抗ウイルス性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と抗ウイルス剤を含む抗ウイルス層とを備える延伸加工用積層体に関する。また、本発明は、上記延伸加工用積層体を用いた二次成形品に関する。さらに本発明は、上記二次成形品を備える抗ウイルス性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、重症呼吸器感染症(SARS)ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、新型インフルエンザウイルス及び新型コロナウイルス等のウイルスを起因とする感染症が社会問題となっている。
【0003】
そのため、不特定多数の人が触れる部材又は触れる可能性のある部材に対して、抗ウイルス加工を施す技術の開発が進められている。
【0004】
抗ウイルス性を有する部材の一例として、下記の特許文献1には、基材層と、抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂層とを備えるポリ塩化ビニル系樹脂製内装シートが開示されている。この内装シートでは、抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂層の材料が、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部と、スルホン酸系界面活性剤0.1重量部~7.5重量部と、可塑剤10重量部~100重量部とを含む。また、特許文献1には、上記内装シートが、上記基材層の表面に上記抗ウイルス性ポリ塩化ビニル系樹脂層の材料を塗工することにより製造されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の抗ウイルス性部材は、特許文献1に記載のように、部材本体等に抗ウイルス性を有する材料を塗工して製造されている。また、従来、抗ウイルス性を有する部材を更に加工して用いることは想定されていない。
【0007】
本発明の目的は、延伸加工して用いることができ、延伸加工後も抗ウイルス性に優れる延伸加工用積層体を提供することである。また、本発明は、上記延伸加工用積層体を用いた二次成形品及び抗ウイルス性部材を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、以下の延伸加工用積層体、二次成形品及び抗ウイルス性部材を開示する。
【0009】
項1.基材と、前記基材の第1の表面側に配置された抗ウイルス層とを備え、前記抗ウイルス層が、抗ウイルス剤と、樹脂部とを含む、延伸加工用積層体(以下、積層体と略記することがある)。
【0010】
項2.前記抗ウイルス剤の耐熱温度が、200℃以上である、項1に記載の積層体。
【0011】
項3.前記基材が、熱可塑性樹脂を含み、前記樹脂部に含まれる樹脂が、熱可塑性樹脂である、項1又は2に記載の積層体。
【0012】
項4.前記樹脂部に含まれる樹脂が、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ABS樹脂、又はこれらの樹脂の共重合体樹脂である、項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【0013】
項5.前記抗ウイルス層の平均厚みの、前記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比が、1.0以上である、項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【0014】
項6.前記抗ウイルス層の平均厚みの、前記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比が、1.69以上である、項5に記載の積層体。
【0015】
項7.項1~6のいずれか1項に記載の積層体が延伸加工された、二次成形品。
【0016】
項8.前記抗ウイルス層に由来する層の平均厚みの、前記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比が、0.5以上である、項7に記載の二次成形品。
【0017】
項9.抗ウイルス性部材本体と、項7又は8に記載の二次成形品とを備える、抗ウイルス性部材。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る延伸加工用積層体は、基材と、上記基材の第1の表面側に配置された抗ウイルス層とを備え、上記抗ウイルス層が、抗ウイルス剤と、樹脂部とを含む。本発明に係る延伸加工用積層体は、上記の構成を備えるので、延伸加工して用いることができ、延伸加工後も抗ウイルス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る延伸加工用積層体を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、抗ウイルス剤Aの露出している部分の高さを説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施例における延伸加工用積層体の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
[延伸加工用積層体]
本発明に係る延伸加工用積層体(以下、「積層体」と略記することがある)は、延伸加工して用いられる積層体である。本発明に係る積層体は、抗ウイルス性積層体である。本発明に係る延伸加工用積層体は、基材と、上記基材の第1の表面側に配置された抗ウイルス層とを備え、上記抗ウイルス層が、抗ウイルス剤と、樹脂部とを含む。
【0022】
本発明に係る積層体は、上記の構成を備えるので、延伸加工して用いることができ、延伸加工後も抗ウイルス性に優れる。上記積層体が延伸加工可能であれば、上記積層体を延伸して用いることができ、上記積層体を延伸せずに用いることもでき、上記積層体の汎用性をかなり高めることができる。
【0023】
上記積層体は、例えば、該積層体を真空成形、圧空成形及びブロー成形等により延伸加工し、延伸加工した積層体を、対象部材の表面上に上記基材に由来する層側から配置して用いられる。上記積層体は、対象部材の形状に応じて、様々な形状に延伸加工させることができるため、対象部材に抗ウイルス性能を容易に付与することができる。
【0024】
上記積層体は、延伸加工後も抗ウイルス性を良好に発揮することができる。本発明では、延伸加工後の積層体(二次成形品)であっても、延伸加工前の積層体と同等の抗ウイルス性能を発揮させることも可能である。
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る延伸加工用積層体を模式的に示す断面図である。
【0027】
図1に示す延伸加工用積層体10は、延伸加工して用いられる。積層体10は、抗ウイルス性能を有する。積層体10は、基材1と、抗ウイルス層2とを備える。抗ウイルス層2は、基材1の第1の表面1a側に配置されている。抗ウイルス層2は、基材1の第1の表面1a上に配置されており、積層されている。
【0028】
抗ウイルス層2は、樹脂部21(層本体)と、抗ウイルス剤22とを含む。抗ウイルス層2は、樹脂と、複数個の抗ウイルス剤22とを含む。抗ウイルス層2は、積層体10の表面層である。抗ウイルス層2は、積層体10の一方の表面層である。
【0029】
積層体10において、抗ウイルス剤22は、樹脂部21の基材1側とは反対の表面21aから露出している部分を有する。抗ウイルス剤22は、樹脂部21の表面21aから露出している部分を有する抗ウイルス剤22Aと、樹脂部21の表面21aから露出している部分を有さない抗ウイルス剤22Bとを含む。
【0030】
抗ウイルス作用の即効性をより一層高める観点から、上記積層体では、上記抗ウイルス層が上記積層体の表面層であることが好ましい。
【0031】
上記積層体において、上記抗ウイルス剤は、樹脂部の表面から露出している部分を有する抗ウイルス剤と、樹脂部の表面から露出している部分を有さない抗ウイルス剤とを含むことが好ましい。
【0032】
なお、本明細書において、樹脂部の表面から露出している部分を有する抗ウイルス剤を「抗ウイルス剤A」と呼び、樹脂部の表面から露出している部分を有さない抗ウイルス剤を「抗ウイルス剤B」と呼ぶことがある。
【0033】
上記抗ウイルス剤は、上記樹脂部の上記基材側とは反対の表面から露出している部分を有することが好ましい。上記抗ウイルス剤は、上記樹脂部の上記基材側とは反対の表面から露出している部分を有する抗ウイルス剤Aを含むことが好ましい。この場合には、抗ウイルス作用の即効性をより一層高めることができる。
【0034】
上記抗ウイルス剤の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。上記抗ウイルス剤の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、抗ウイルス剤の分散性に優れた抗ウイルス層を良好に得ることができ、その結果、延伸加工後も抗ウイルス性をより一層高めることができる。
【0035】
上記抗ウイルス剤の平均粒子径は、上記抗ウイルス剤の全体での平均粒子径である。したがって、例えば、上記積層体が上記抗ウイルス剤Aと上記抗ウイルス剤Bとを含む場合には、上記抗ウイルス剤の平均粒子径は、上記抗ウイルス剤Aと上記抗ウイルス剤Bとを含む抗ウイルス剤の全体での平均粒子径である。上記抗ウイルス剤の平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。上記抗ウイルス剤の平均粒子径は、例えば、抗ウイルス剤をスクワラン等の溶媒に分散させて、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0036】
上記積層体において、上記抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さは、上記抗ウイルス剤Aが上記樹脂部の上記基材側とは反対の表面から露出している部分の平均高さである。上記抗ウイルス剤Aの露出している部分の高さは、
図2に示すように、樹脂部21の基材1側とは反対の表面21aから抗ウイルス剤22Aの先端までの距離hである。上記抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さは、上記抗ウイルス剤Aの露出している部分の高さ(距離h)の平均である。なお、上記抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さを求める際に、樹脂部の表面から露出している部分を有さない上記抗ウイルス剤Bは測定対象に含まれない。
【0037】
上記抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さは、レーザー顕微鏡を用いて、上記積層体において、露出している部分を有する任意の抗ウイルス剤A20個について、各抗ウイルス剤Aの露出している部分の高さを求め、それらを平均することにより求めることができる。
【0038】
上記積層体において、上記抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さの、上記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比(抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さ/抗ウイルス剤の平均粒子径)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上であり、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下である。上記比(抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さ/抗ウイルス剤の平均粒子径)が上記下限以上であると、延伸加工後も抗ウイルス作用の即効性をより一層高めることができる。上記比(抗ウイルス剤Aの露出している部分の平均高さ/抗ウイルス剤の平均粒子径)が上記上限以下であると、積層体の表面及び二次成形品の表面から抗ウイルス剤をより一層剥落しにくくすることができる。
【0039】
以下、上記基材及び上記抗ウイルス層の詳細を更に説明する。
【0040】
(基材)
上記積層体は、延伸可能な基材を備える。上記基材は、延伸加工可能である。上記基材の素材は、延伸加工できる限り、特に限定されない。
【0041】
延伸加工の観点から、上記基材は、樹脂を含むことが好ましい。上記基材は、樹脂基材であることが好ましい。
【0042】
上記基材に含まれる上記樹脂は、特に限定されない。上記基材に含まれる上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂の硬化物であってもよい。上記基材に含まれる上記樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記基材に含まれる上記樹脂としては、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、メチルメタクリレート・スチレン(MS)樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、熱可塑性オレフィン(TPO)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル(PVF)樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0044】
積層体を延伸加工して二次成形品を良好に得る観点からは、上記基材は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、上記基材に含まれる上記樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。ただし、積層体を延伸加工して用いる場合でも、上記基材に含まれる上記樹脂として、熱硬化性樹脂の硬化物又は光硬化性樹脂の硬化物を用いることもできる。
【0045】
上記基材が上記樹脂を含む又は上記樹脂基材である場合に、上記基材100重量%中、上記樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98重量%以上である。上記基材100重量%中、上記樹脂の含有量は100重量%であってもよく、100重量%以下であってもよく、100重量%未満であってもよく、99重量%未満であってもよい。
【0046】
上記基材に含まれる上記樹脂が上記熱可塑性樹脂である場合に、上記基材100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは98重量%以上である。上記基材100重量%中、上記熱可塑性樹脂の含有量は100重量%であってもよく、100重量%以下であってもよく、100重量%未満であってもよく、99重量%未満であってもよい。
【0047】
上記基材は、シート状であってもよく、シート状以外の形状であってもよい。
【0048】
シート状である上記基材の厚み(基材シートの厚み)は、1mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、15mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。
【0049】
上記基材は、例えば、着色剤、増粘剤、充填剤、抗菌剤、難燃剤、防黴剤、紫外線吸収剤、及び粘着付与剤等の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0050】
(抗ウイルス層)
上記抗ウイルス層は、抗ウイルス剤と樹脂部とを含む。
【0051】
上記抗ウイルス層の可視光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、より一層好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、更により一層好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上である。上記抗ウイルス層の可視光線透過率が上記下限以上であると、上記抗ウイルス層の透明性をより一層高めることができる。上記抗ウイルス層の可視光線透過率は、100%以下であってもよく、100%未満であってもよく、90%以下であってもよく、80%以下であってもよく、75%以下であってもよい。
【0052】
上記抗ウイルス層の可視光線透過率は、380nm~780nmの波長範囲における透過率を5nmの波長間隔で測定した場合に得られる測定値の平均値である。上記抗ウイルス層の可視光線透過率は、例えば分光光度計(例えば日本電飾工業社製「分光ヘーズメーター SH7000」)を用いて測定することができる。
【0053】
上記抗ウイルス層の平均厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは6μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。上記抗ウイルス層の平均厚みが上記下限以上であると、積層体の表面及び二次成形品の表面から抗ウイルス剤をより一層剥落しにくくすることができる。上記抗ウイルス層の平均厚みが上記上限以下であると、上記抗ウイルス層の透明性を高めることができる。また、上記抗ウイルス層の平均厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、延伸加工時に抗ウイルス層が破損することを効果的に抑えることができる。
【0054】
上記抗ウイルス層の平均厚みは、分光干渉膜厚計により測定したり、抗ウイルス層の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察して測定したりすることができる。
【0055】
上記抗ウイルス層の平均厚みの、上記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比を、比(抗ウイルス層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)と記載する。上記比(抗ウイルス層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.50以上、更に好ましくは1.69以上、特に好ましくは2.0以上、最も好ましくは2.2以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは2.5以下である。上記比(抗ウイルス層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)が上記下限以上であると、延伸加工後も二次成形品の表面から抗ウイルス剤をより一層剥落しにくくすることができる。特に、上記比(抗ウイルス層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)が1.0以上であると、1.0未満である場合と比べて、上記積層体の表面から抗ウイルス剤がかなり剥落し難くなり、更に延伸加工後も二次成形品の表面から抗ウイルス剤がかなり剥落し難くなる。特に、上記比(抗ウイルス層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)が1.69以上であると、1.69未満である場合と比べて、上記積層体の表面から抗ウイルス剤が顕著に剥落し難くなり、更に延伸加工後も二次成形品の表面から抗ウイルス剤が顕著に剥落し難くなる。上記比(抗ウイルス層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)が上記上限以下であると、上記抗ウイルス層の透明性を良好に保つことができる。
【0056】
<抗ウイルス剤>
上記抗ウイルス層は、上記抗ウイルス剤を含む。上記抗ウイルス剤として、従来公知の抗ウイルス剤を用いることができる。上記抗ウイルス剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記抗ウイルス剤は、無機系抗ウイルス剤、有機系抗ウイルス剤、及び無機粒子に界面活性剤が担持された抗ウイルス剤等が挙げられる。
【0058】
無機系抗ウイルス剤:
上記無機系抗ウイルス剤としては、金属、金属イオン又は金属化合物を含む抗ウイルス剤等が挙げられる。上記無機系抗ウイルス剤としては、銀含有粒子等の銀系抗ウイルス剤、銅含有粒子等の銅系抗ウイルス剤等が挙げられる。
【0059】
上記銀系抗ウイルス剤(銀含有粒子)としては、銀粒子、銀塩粒子及び銀錯体粒子等が挙げられる。上記銀塩としては、硝酸銀、硫酸銀、及び塩化銀等が挙げられる。上記銀錯体としては、チオスルファイト銀錯体及び塩化銀ナトリウム錯体等が挙げられる。
【0060】
また、上記銀系抗ウイルス剤(銀含有粒子)としては、銀含有化合物が担体に担持された粒子も挙げられる。上記銀含有化合物としては、銀、銀塩及び銀錯体粒子等が挙げられる。上記担体としては、ゼオライト、シリカゲル、ケイ酸塩、リン酸塩、溶解性ガラス、活性炭及び金属担体等が挙げられる。
【0061】
さらに上記銀系抗ウイルス剤(銀含有粒子)としては、コロイダル銀も挙げられる。上記コロイダル銀の平均粒子径は、例えば、1nm以上1μm以下である。上記コロイダル銀の平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。
【0062】
有機系抗ウイルス剤:
上記有機系抗ウイルス剤としては、界面活性剤を含む抗ウイルス剤等が挙げられ、例えば、有機粒子に界面活性剤が担持された抗ウイルス剤等が挙げられる。
【0063】
上記有機粒子の材料としては、樹脂等が挙げられる。上記有機粒子は、樹脂粒子であることが好ましい。
【0064】
上記有機粒子(樹脂粒子)に含まれる上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂の硬化物であってもよい。
【0065】
上記有機粒子に含まれる上記樹脂としては、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、メチルメタクリレート・スチレン(MS)樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、熱可塑性オレフィン(TPO)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル(PVF)樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0066】
上記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤及びカチオン系界面活性剤等が挙げられる。上記界面活性剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0067】
抗ウイルス作用の即効性を高める観点からは、上記界面活性剤は、スルホン酸系界面活性剤であることが好ましい。
【0068】
上記スルホン酸系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系化合物、及びナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられる。上記スルホン酸系界面活性剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
抗ウイルス作用の即効性をより一層高める観点からは、上記スルホン酸系界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、又はアルキルナフタレンスルホン酸系化合物であることが好ましい。
【0070】
上記有機粒子に界面活性剤が担持された抗ウイルス剤において、上記有機粒子100重量部に対する上記界面活性剤の含有量(上記有機粒子100重量部に対する担持された上記界面活性剤の量)は、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。上記界面活性剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、抗ウイルス作用の即効性をより一層高めることができる。
【0071】
無機粒子に界面活性剤が担持された抗ウイルス剤:
上記無機粒子としては、炭酸カルシウム粒子、タルク粒子、シリカ粒子、水酸化アルミニウム粒子、水酸化マグネシウム粒子、酸化チタン粒子、クレー粒子、マイカ粒子、ウォラストナイト粒子、ゼオライト粒子、酸化亜鉛粒子、酸化マグネシウム粒子、カーボンブラック粒子、グラファイト粒子、及びガラスビーズ粒子等が挙げられる。
【0072】
上記界面活性剤としては、上述の有機系抗ウイルス剤の欄に記載した界面活性剤等が挙げられる。
【0073】
上記無機粒子に界面活性剤が担持された抗ウイルス剤において、上記無機粒子100重量部に対する上記界面活性剤の含有量(上記無機粒子100重量部に対する担持された上記界面活性剤の量)は、好ましくは20重量部以上、より好ましくは30重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。上記界面活性剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、抗ウイルス作用の即効性をより一層高めることができる。
【0074】
上記抗ウイルス剤の耐熱温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは215℃以上、特に好ましくは230℃以上である。上記抗ウイルス剤の耐熱温度が上記下限以上であると、延伸加工を容易に行うことができる。特に上記抗ウイルス剤の耐熱温度が200℃以上であると、200℃未満である場合と比べて、延伸加工をより一層容易に行うことができ、延伸加工後の抗ウイルス作用をかなり高めることができる。上記抗ウイルス剤の耐熱温度は、400℃以下であってもよく、300℃以下であってもよい。
【0075】
上記抗ウイルス剤の耐熱温度は、抗ウイルス性試験によって測定することができる。抗ウイルス剤をヒーターで加熱した後も抗ウイルス性を維持している温度を、上記抗ウイルス剤の耐熱温度とする。上記「抗ウイルス性を維持している」とは、後述のISO21702に準拠して求められる抗ウイルス活性値が2.0以上であることを意味する。
【0076】
上記抗ウイルス層100重量%中、上記抗ウイルス剤の含有量は、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。上記抗ウイルス剤の含有量が上記下限以上であると、延伸加工後も抗ウイルス作用の即効性及び持続性をより一層高めることができる。上記抗ウイルス剤の含有量が上記上限以下であると、抗ウイルス剤の分散性に優れた抗ウイルス層を良好に得ることができ、その結果、延伸加工後も抗ウイルス性をより一層高めることができる。
【0077】
上記抗ウイルス層中の上記樹脂部100重量部に対して、上記抗ウイルス層中の上記抗ウイルス剤の含有量は、好ましくは2重量部以上、より好ましくは10重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは70重量部以下である。上記抗ウイルス剤の含有量が上記下限以上であると、延伸加工後も抗ウイルス作用の即効性及び持続性をより一層高めることができる。上記抗ウイルス剤の含有量が上記上限以下であると、抗ウイルス剤の分散性に優れた抗ウイルス層を良好に得ることができ、その結果、延伸加工後も抗ウイルス性をより一層高めることができる。
【0078】
<樹脂部>
上記樹脂部は、樹脂を含む。意匠性を高める観点から、上記樹脂部は、透明な樹脂部であることが好ましい。
【0079】
上記樹脂部に含まれる上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂の硬化物であってもよく、光硬化性樹脂の硬化物であってもよい。
【0080】
上記樹脂部に含まれる上記樹脂としては、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、及びエステル系樹脂等が挙げられる。より具体的には、上記樹脂部に含まれる上記樹脂としては、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、メチルメタクリレート・スチレン(MS)樹脂、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン(MBS)樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、熱可塑性オレフィン(TPO)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル(PVF)樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。上記樹脂部に含まれる上記樹脂は、上述した樹脂それぞれの共重合体樹脂であってもよい。
【0081】
なお、上記基材に含まれる上記樹脂と、上記樹脂部に含まれる上記樹脂とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0082】
積層体を延伸加工して二次成形品を良好に得る観点からは、上記樹脂部は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、上記樹脂部に含まれる上記樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。ただし、積層体を延伸加工して用いる場合でも、上記樹脂部に含まれる上記樹脂として、熱硬化性樹脂の硬化物又は光硬化性樹脂の硬化物を用いることもできる。
【0083】
上記樹脂部に含まれる上記樹脂は、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ABS樹脂、又はこれらの樹脂の共重合体樹脂であることが好ましく、MS樹脂であることがより好ましい。この場合には、抗ウイルス層の透明性をより一層高めることができ、また、積層体を延伸加工して二次成形品を良好に得ることができる。
【0084】
上記抗ウイルス層100重量%中、上記抗ウイルス剤と上記樹脂部との合計含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは98重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%である。ただし、上記合計含有量は、100重量%以下であってもよく、100重量%未満であってもよい。
【0085】
<他の成分>
上記抗ウイルス層は、樹脂及び抗ウイルス剤の双方とは異なる他の成分を含んでいてもよい。上記抗ウイルス層は、例えば、増粘剤、充填剤、抗菌剤、難燃剤、防黴剤、紫外線吸収剤、及び粘着付与剤等の他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
(延伸加工用積層体の他の詳細)
上記積層体において、上記抗ウイルス層とウイルス液とを10分間接触させたときに、ISO21702に準拠して求められる抗ウイルス活性値は、好ましくは2.0以上である。この場合には、抗ウイルス作用の即効性をより一層高めることができる。
【0087】
上記積層体において、上記抗ウイルス層とウイルス液とを24時間接触させたときに、ISO21702に準拠して求められる抗ウイルス活性値は、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3.0以上である。この場合には、抗ウイルス作用をより一層高めることができる。
【0088】
上記抗ウイルス活性値を測定するための上記ウイルス液としては、例えば、インフルエンザウイルス液を用いることができる。上記抗ウイルス活性値は、以下のようにして、求めることができる。
【0089】
抗ウイルス層のサイズが縦50mm及び横50mmとなるように、上記積層体を切削して、評価用サンプルを得る。得られた評価用サンプルの抗ウイルス層と、ウイルス液(例えば、インフルエンザウイルス液)とを25℃で10分間又は24時間接触させる。次いで、ウイルス液を回収し、ISO21702に準拠して、プラーク法にて抗ウイルス活性値を求める。なお、上記抗ウイルス活性値は、2個以上の評価用サンプルを用いて算出された抗ウイルス活性値の平均値であることが好ましい。
【0090】
上記積層体では、上記基材と上記抗ウイルス層とが、直接積層されていてもよく、直接積層されていなくてもよい。上記積層体は、上記基材と上記抗ウイルス層との間に、他の層を備えていてもよい。
【0091】
上記他の層としては、接着層等が挙げられる。上記接着層の材料としては、接着剤等が挙げられる。
【0092】
上記接着層の厚みは、好ましくは1nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは10nm以下である。
【0093】
上記接着層を形成する方法は、特に限定されない。上記接着層を形成する方法は、スパッタリングにより形成する方法等が挙げられる。上記接着層をスパッタリングにより形成する場合に、上記接着層の厚みは、好ましくは10nm以下である。
【0094】
上記積層体の形状は特に限定されない。上記積層体は、シート状であってもよく、棒状であってもよく、管状であってもよい。延伸加工を容易に行う観点からは、上記積層体は、シート状であることが好ましく、延伸加工用積層シートであることが好ましい。
【0095】
シート状である上記積層体の平均厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下である。
【0096】
シート状である上記積層体の平均厚みは、マイクロメーターを用いて測定することができる。
【0097】
上記基材は、延伸可能であり、延伸加工可能である。上記基材は、1.5倍以上に延伸可能であってもよく、2倍以上に延伸可能であってもよい。上記基材は、3倍以上に延伸可能であることが好ましく、5倍以上に延伸可能であることがより好ましい。上記基材は、上記の倍率まで延伸しても破断しないことが好ましい。延伸可能な倍率(成形倍率)が上記下限以上であると、延伸加工時の基材の破損を効果的に抑えることができ、また、二次成形品の汎用性を高めることができる。上記基材は、8倍以下に延伸可能であってもよい。なお、上記抗ウイルス層は、延伸可能である。上記坑ウイルス層は、上記基材の延伸に伴って延伸可能であることが好ましい。
【0098】
上記積層体は、延伸可能であり、延伸加工可能である。上記積層体は、1.5倍以上に延伸可能であってもよく、2倍以上に延伸可能であってもよい。上記積層体は、3倍以上に延伸可能であることが好ましく、5倍以上に延伸可能であることがより好ましい。上記積層体は、上記の倍率まで延伸しても破断しないことが好ましい。延伸可能な倍率(成形倍率)が上記下限以上であると、延伸加工時の積層体の破損を効果的に抑えることができ、また、二次成形品の汎用性を高めることができる。上記積層体は、8倍以下に延伸可能であってもよい。
【0099】
上記積層体の製造方法は、特に限定されない。
【0100】
上記積層体は、例えば、上記基材の第1の表面上に、抗ウイルス層の材料を配置した後、抗ウイルス層の材料を乾燥させて抗ウイルス層を形成させることにより製造することができる。
【0101】
また、上記積層体は、例えば、上記基材の第1の表面上に、抗ウイルス剤を含まない樹脂部の材料を配置した後、抗ウイルス剤を含む液を、樹脂部の材料の表面に噴霧することにより製造することができる。
【0102】
上記基材の第1の表面上への上記材料の配置方法としては、塗布、物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、スプレー、塗工、プラズマコーティング、浸漬コーティング及びラミネーティング等が挙げられる。
【0103】
また、上記積層体は、例えば、抗ウイルス層を作製した後、作製した抗ウイルス層を上記基材の第1の表面上に配置して製造することもできる。
【0104】
また、上記積層体では、上記抗ウイルス層が、上記基材の第1の表面側とは反対の第2の表面側にも配置されていてもよい。この場合には、上記積層体の両面にて、抗ウイルス性を発揮することができる。
【0105】
[二次成形品]
本発明に係る二次成形品は、上述した積層体が延伸加工された二次成形品である。上記積層体に対して、真空成形、圧空成形、ブロー成形及び型押し成形等を行い、上記積層体を延伸加工することにより、二次成形品を作製することができる。
【0106】
上記二次成形品は、上記積層体の真空成形品であってもよく、圧空成形品であってもよく、ブロー成形品であってもよく、型押し成形品であってもよい。
【0107】
上記二次成形品は、上記積層体が、1.5倍以上の成形倍率で延伸加工された二次成形品であってもよく、8倍以下の成形倍率で延伸加工された二次成形品であってもよい。上記二次成形品は、上記積層体が、2倍以上の成形倍率で延伸加工された二次成形品であることが好ましく、2倍以上の成形倍率で延伸加工された二次成形品であることが好ましく、3倍以上の成形倍率で延伸加工された二次成形品であることがより好ましく、6倍以下の成形倍率で延伸加工された二次成形品であることが好ましく、5倍以下の成形倍率で延伸加工された二次成形品であることがより好ましい。したがって、上記積層体は、2倍以上の成形倍率で延伸加工されて用いられることが好ましく、3倍以上の成形倍率で延伸加工されて用いられることがより好ましく、6倍以下の成形倍率で延伸加工されて用いられることが好ましく、5倍以下の成形倍率で延伸加工されて用いられることがより好ましい。上記成形倍率が上記下限以上及び上記上限以下であると、延伸加工時の抗ウイルス層の破損を効果的に抑えることができ、また、二次成形品の汎用性を高めることができる。
【0108】
なお、上記積層体の上記成形倍率とは、延伸後の積層体の表面の面積の、延伸前の積層体の表面の面積に対する比(延伸後の積層体の表面の面積/延伸前の積層体の表面の面積)を意味する。例えば、5倍の成形倍率とは、延伸前の積層体の表面における1cm2の面積を有する正方形の領域が、延伸後に5cm2の面積を有する領域に変化することを意味する。なお、上記基材の上記成形倍率は、上記積層体の上記成形倍率の説明における「積層体」を「基材」に読み替えた内容を意味する。
【0109】
上記二次成形品において、上記抗ウイルス層に由来する層の平均厚みの、上記抗ウイルス剤の平均粒子径に対する比(抗ウイルス層に由来する層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.5以上、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下である。上記比(抗ウイルス層に由来する層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)が上記下限以上であると、二次成形品の表面から抗ウイルス剤をより一層剥落しにくくすることができる。上記比(抗ウイルス層に由来する層の平均厚み/抗ウイルス剤の平均粒子径)が上記上限以下であると、抗ウイルス層に由来する層の透明性を良好に保つことができる。
【0110】
上記二次成形品において、上記抗ウイルス層に由来する層とウイルス液とを10分間接触させたときに、ISO21702に準拠して求められる抗ウイルス活性値は、好ましくは2.0以上である。この場合には、抗ウイルス作用の即効性をより一層高めることができる。なお、上記抗ウイルス活性値は、2.0以下であってもよい。
【0111】
上記二次成形品において、上記抗ウイルス層に由来する層とウイルス液とを24時間接触させたときに、ISO21702に準拠して求められる抗ウイルス活性値は、好ましくは2.0以上、特に好ましくは2.5以上、最も好ましくは3.0以上である。上記抗ウイルス活性値が上記下限以上であると、抗ウイルス作用をより一層高めることができる。なお、上記抗ウイルス活性値は、3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよい。
【0112】
上記積層体において、上記抗ウイルス層とウイルス液とを24時間接触させたときに、ISO21702に準拠して求められる抗ウイルス活性値を、抗ウイルス活性値Aと記載する。上記二次成形品において、上記抗ウイルス層に由来する層とウイルス液とを24時間接触させたときに、ISO21702に準拠して求められる抗ウイルス活性値を、抗ウイルス活性値Bと記載する。上記抗ウイルス活性値Bの抗ウイルス活性値Aに対する比を、比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)と記載する。
【0113】
上記積層体は、上記積層体を3倍の成形倍率で延伸加工して二次成形品を得たときに、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が0.50以上(好ましくは0.67以上)を満たす積層体であることが好ましい。上記積層体は、上記積層体を3倍の成形倍率で延伸加工して二次成形品を得たときに、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が2.0以下を満たす積層体であってもよく、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が1.5以下を満たす積層体であってもよい。なお、このような性質を示す積層体は、3倍以外の成形倍率で延伸加工して用いてもよい。上記積層体は、上記積層体を5倍の成形倍率で延伸加工して二次成形品を得たときに、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が0.50以上(好ましくは0.67以上)を満たす積層体であることが好ましい。上記積層体は、上記積層体を5倍の成形倍率で延伸加工して二次成形品を得たときに、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が2.0以下を満たす積層体であってもよく、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が1.5以下を満たす積層体であってもよい。なお、このような性質を示す積層体は、5倍以外の成形倍率で延伸加工して用いてもよい。
【0114】
上記二次成形品は、上記積層体が、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が0.50以上(好ましくは0.67以上)を満たすように延伸加工された二次成形品であることが好ましい。上記二次成形品は、上記積層体が、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が2.0以下を満たすように延伸加工された二次成形品であってもよく、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が1.5以下を満たすように延伸加工された二次成形品であってもよい。したがって、上記積層体は、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が0.50以上(好ましくは0.67以上)を満たすように延伸加工されて用いられることが好ましい。上記積層体は、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が2.0以下を満たすように延伸加工されて用いられてもよく、上記比(抗ウイルス活性値B/抗ウイルス活性値A)が1.5以下を満たすように延伸加工されて用いられてもよい。
【0115】
なお、上記二次成形品における上記抗ウイルス活性値は、上述した積層体における上記抗ウイルス活性値の測定方法と同様にして求めることができる。
【0116】
[抗ウイルス性部材]
本発明に係る抗ウイルス性部材は、抗ウイルス性部材本体と、上述した二次成形品とを備える。上記抗ウイルス性部材本体は、抗ウイルス性を有する部材であってもよく、抗ウイルス性を有さない部材であってもよい。上記抗ウイルス性部材では、抗ウイルス性部材本体側に、上記二次成形品の基材に由来する層が配置されていることが好ましい。上記抗ウイルス性部材では、該抗ウイルス性部材の表面層が、上記抗ウイルス層に由来する層であることが好ましい。
【0117】
上記抗ウイルス性部材は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、積層体を加熱して軟化させる。次いで、軟化させた積層体を抗ウイルス性部材本体の型に合わせて真空吸引して変形させて、抗ウイルス性部材本体の表面に二次成形品を配置する。
【0118】
上記積層体及び上記二次成形品は、例えば、鉄道車両、航空機、船舶及び自動車等の輸送機の内外装材、トイレ及び食品調理エリア;建物の内外装材、トイレ及び食品調理エリア;駅構内の券売機;商業施設の情報端末;病院の医療機器等に好適に用いられる。
【0119】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0120】
以下の材料を用意した。
【0121】
(基材)
樹脂基材(PVC樹脂基材、タキロンシーアイ社製「タキフレックスEVC8600」)
【0122】
(抗ウイルス層の材料)
MS樹脂(Denka社製「TX-100S」)
抗ウイルス剤1(ポリスチレン樹脂粒子にスルホン酸系界面活性剤が担持された抗ウイルス剤、平均粒子径5μm、耐熱温度300℃)
抗ウイルス剤2(銀系抗ウイルス剤、平均粒子径8μm、耐熱温度350℃)
抗ウイルス剤3(カルボン酸系抗ウイルス剤、平均粒子径3μm、耐熱温度180℃) ケトン系溶媒(4-メチル-2-ペンタノン、富士フィルム和光純薬社製)
【0123】
(実施例1)
抗ウイルス層の材料の作製:
ケトン系溶媒にMS樹脂を溶解させて、樹脂含有溶液を得た。次いで、得られた樹脂含有溶液に抗ウイルス剤1を添加し、撹拌して抗ウイルス層の材料を得た。なお、各成分の含有量は、得られる抗ウイルス層において、表1に示す含有量となる量とした。
【0124】
延伸加工用積層体の作製:
図3に示すように、得られた抗ウイルス層の材料2Xを、基材1の第1の表面1aに垂らした。バーコーターBの両端を強く基材1の第1の表面1aに押し当てながら、バーコーターBを動かした(
図3の矢印方向)。このようにして、抗ウイルス層の材料2Xを、基材1の第1の表面1a上に塗工した。
【0125】
次いで、抗ウイルス層の材料が塗工された基材を、40℃及び5分間の条件でオーブンにて加熱して、抗ウイルス層の材料を乾燥させた。このようにして、基材の表面上に、抗ウイルス層を備える積層体(積層シート)を得た。
【0126】
二次成形品の作製:
真空成形機を用いて、得られた積層体を3倍の成形倍率で延伸加工して、二次成形品を作製した。なお、3倍の成形倍率であることは、延伸前の積層体に1cm幅の格子状の線を引き、1cm2の面積を有するマスが、延伸後に3cm2の面積になったことにより確認した。
【0127】
(実施例2~4及び比較例1,2)
抗ウイルス層の組成及び平均厚みを下記の表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。また、得られた積層体を、表1の成形倍率で延伸加工したこと以外は、実施例1と同様にして、二次成形品を得た。
【0128】
(評価)
(1)抗ウイルス層の平均厚み
上記抗ウイルス層の平均厚みを、SEMによる断面観察により測定した。
【0129】
(2)抗ウイルス活性値
(2-1)ウイルス液の調製
10cmDishに培養したMDCK細胞に対して、インフルエンザウイルスを接種し、37℃で1時間培養した。培養後、未感作ウイルスを含む培養上清を除去した。上清を除去した10cmDishに新たにDMEM培地を加え、37℃で4日間培養した。培養後、培養上清を採取し、800rpmで5分間遠心分離した。遠心分離後の上清をウイルス液とした。
【0130】
(2-2)積層体の抗ウイルス活性値の測定
得られた積層体を、抗ウイルス層のサイズが縦50mm及び横50mmとなるように、切削して、評価用サンプルを得た。得られた評価用サンプルをシャーレ内に配置し、評価用サンプルの抗ウイルス層側の表面に、滅菌水で10倍希釈したウイルス液を0.4ml滴下して、カバーフィルムを被せ、シャーレに蓋をし、25℃で24時間静置した。次いで、洗い出し液10mlを添加し、評価用サンプルからウイルス液を回収した。回収したウイルス液を細胞維持培地で10倍段階希釈した。希釈したウイルス液を、6wellプレートに培養したMDCK細胞に接種し、ISO21702に準拠して、プラーク数を数え、抗ウイルス活性値を求めた。試験は2枚の評価用サンプルについて行い、抗ウイルス活性値の平均値を算出した。
【0131】
(2-3)二次成形品の抗ウイルス活性値の測定
積層体の代わりに、二次成形品を用いたこと以外は、「(2-2)積層体の抗ウイルス活性値の測定」と同様にして、抗ウイルス活性値を測定した。なお、二次成形品の抗ウイルス活性値の判定結果が「×」である場合に、「延伸加工に不適」と判断した。
【0132】
抗ウイルス活性値を下記の基準で判定した。
【0133】
[抗ウイルス活性値の判定基準]
○:抗ウイルス活性値が2.0以上
×:抗ウイルス活性値が2.0未満
【0134】
(3)抗ウイルス剤の剥落抑制性
レーザー顕微鏡(OLYMPUS社製「OLS4000」)を用いて、二次成形品における抗ウイルス層に由来する層の表面を観察し、該層の樹脂部の表面から露出している抗ウイルス剤Aの個数(A)を計測した。その後、水道水を染み込ませたマイクロファイバークロスを用いて、二次成形品における抗ウイルス層に由来する層の表面を150Paの圧力で3650回拭き取った。次いで、同様にして、レーザー顕微鏡を用いて、抗ウイルス層に由来する層の表面を観察し、該層の樹脂部の表面から露出している抗ウイルス剤Aの個数(Aa)を計測した。抗ウイルス剤の残存割合を「式:抗ウイルス剤Aの個数(Aa)/抗ウイルス剤Aの個数(A)」により求め、抗ウイルス剤の剥落抑制性を下記の基準で判定した。なお、二次成形品の剥落抑制性の判定結果が「×」である場合に、「延伸加工に不適」と判断した。
【0135】
[抗ウイルス剤の剥落抑制性の判定基準]
○:抗ウイルス剤の残存割合が0.9以上
×:抗ウイルス剤の残存割合が0.9未満
【0136】
積層体の構成及び結果を下記の表1に示す。
【0137】
【0138】
表1に示された通り、比較例1及び2の積層体は、延伸加工後に抗ウイルス活性値が低く、比較例2の積層体は、延伸加工後に抗ウイルス剤の剥落を十分に抑制できなかったため、延伸加工して用いることに適していないことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0139】
1…基材
1a…第1の表面
2…抗ウイルス層
10…延伸加工用積層体
21…樹脂部
21a…表面
22…抗ウイルス剤
22A…樹脂部の表面から露出している部分を有する抗ウイルス剤
22B…樹脂部の表面から露出している部分を有さない抗ウイルス剤