IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トプコンの特許一覧

<>
  • 特開-眼科装置 図1
  • 特開-眼科装置 図2
  • 特開-眼科装置 図3
  • 特開-眼科装置 図4
  • 特開-眼科装置 図5A
  • 特開-眼科装置 図5B
  • 特開-眼科装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033406
(43)【公開日】2023-03-10
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230303BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20230303BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230303BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20230303BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
A61B3/10
G02B21/00
G02B21/06
G02B13/18
G02B13/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002600
(22)【出願日】2023-01-11
(62)【分割の表示】P 2020557764の分割
【原出願日】2019-11-27
(31)【優先権主張番号】16/200,676
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英晴
(72)【発明者】
【氏名】ワング・ゼングォ
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】藤野 誠
(57)【要約】
【課題】涙液の状態の異常発生箇所を前眼部の広い範囲にわたり良好な位置精度で提示する。
【解決手段】実施形態の眼科装置は、被検眼の前眼部に照明光を投射する照明系、照明光により角膜上に形成される干渉模様を撮影する干渉撮影系、前眼部を撮影する前眼部撮影系、及び、干渉撮影系が取得した干渉像を前眼部撮影が取得した前眼部画像に重ねて表示装置に表示させる制御部を含む。照明系及び干渉撮影系は共通の光学系を含む。照明系は、当該共通の光学系を介して、角膜の各位置に対して略垂直に前記照明光を入射させる。干渉撮影系は、当該共通の光学系を介して、角膜の各位置に入射した照明光の反射光であって当該位置への照明光の入射経路と略同一の経路を逆向きに進行した反射光を検出する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出力された照明光を被検眼の前眼部に投射する照明系と、
前記照明光により角膜上に形成される前記角膜上の涙液の状態を表す干渉模様を撮影するための干渉撮影系と、
前記照明光が投射されている前記前眼部を撮影するための前眼部撮影系と、
前記干渉撮影系により前記干渉模様を撮影することによって取得された前記角膜上の涙液の状態を表す干渉像を前記前眼部撮影系により取得された前眼部画像に重ねて表示装置に表示させる制御部と
を含み、
前記照明系及び前記干渉撮影系は、共通の光学系を含み、
前記照明系は、前記共通の光学系を介して、前記角膜の各位置に対して略垂直に前記照明光を入射させ、
前記干渉撮影系は、前記共通の光学系を介して、前記角膜の各位置に入射した前記照明光の反射光であって当該位置への前記照明光の入射経路と略同一の経路を逆向きに進行した前記反射光を検出する
ことを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記共通の光学系は、前記被検眼からの距離が近い順に、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、及び第4レンズを含み、
前記第1レンズは、前記被検眼の側の面が凹面状又は平面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸型非球面状に形成されており、
前記第2レンズは、前記被検眼の側の面及び前記被検眼の反対側の面の双方が凸面状又は平面状に形成されており、
前記第3レンズは、前記被検眼の側の面及び前記被検眼の反対側の面の双方が凸面状に形成されており、
前記第4レンズは、前記被検眼の側の面及び前記被検眼の反対側の面の双方が凹面状に形成されており、
前記第3レンズと前記第4レンズとが貼り合わせレンズとして形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記共通の光学系は、前記被検眼からの距離が近い順に、第1レンズ、第2レンズ、及び第3レンズを含み、
前記第1レンズは、前記被検眼の側の面が凹面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸型非球面状に形成されており、
前記第2レンズは、前記被検眼の側の面及び前記被検眼の反対側の面の双方が凸面状に形成されており、
前記第3レンズは、前記被検眼の側の面が凹面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸面状に形成されており、
前記第2レンズと前記第3レンズとが貼り合わせレンズとして形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記共通の光学系は、前記被検眼からの距離が近い順に、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、及び第4レンズを含み、
前記第1レンズは、前記被検眼の側の面が緩凸面状又は平面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸型非球面状に形成されており、
前記第2レンズは、前記被検眼の側の面及び前記被検眼の反対側の面の双方が凸面状に形成されており、
前記第3レンズは、前記被検眼の側の面が凹面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸面状に形成されており、
前記第4レンズは、前記被検眼の側の面が凸面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凹面状に形成されており、
前記第2レンズと前記第3レンズとが貼り合わせレンズとして形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記共通の光学系は、前記被検眼からの距離が近い順に、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、第4レンズ、及び第5レンズを含み、
前記第1レンズは、前記被検眼の側の面が平面状又は凹面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸型非球面状に形成されており、
前記第2レンズは、前記被検眼の側の面が平面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸面状に形成されており、
前記第3レンズは、前記被検眼の側の面及び前記被検眼の反対側の面の双方が凸面状に形成されており、
前記第4レンズは、前記被検眼の側の面が凹面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凸面状に形成されており、
前記第5レンズは、前記被検眼の側の面が凸面状に形成され、且つ、前記被検眼の反対側の面が凹面状に形成されており、
前記第3レンズと前記第4レンズとが貼り合わせレンズとして形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の眼科装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼の涙液の状態を検査するための眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドライアイ患者が増加している。これは、コンピュータ等のディスプレイを用いて行われる作業(VDT作業)による眼の酷使、冷暖房による空気の乾燥、コンタクトレンズの装着などが原因であると考えられている。
【0003】
ドライアイの検査法としては、涙液量を測定するシルマー試験が最も一般的である。また、フルオレセインで染色された角膜をスリットランプ顕微鏡で観察することや、涙液の安定性を測定する検査(涙液層破壊時間(BUT)検査)も行われている。
【0004】
ドライアイの検査を行うための装置として、次のものが知られている。特許文献1は、被検眼の前眼部での鏡面反射光を効率よく得るために、角膜表面に対してほぼ垂直に光線が入射するように投光系を配置し、且つ、鏡面反射光の射出瞳径とほぼ同じ大きさの絞りを射出瞳の近傍に配置した眼科装置を開示している。
【0005】
特許文献2は、涙液層の状態を客観的に検査するために、涙液層により形成される干渉模様(interference pattern)をカラー撮影して得られた時系列画像から干渉模様の色相の時系列変化を求める眼科装置を開示している。
【0006】
特許文献3は、ドライアイの進行状態を高精度且つ的確に定量化するために、涙液層により形成される干渉模様をカラー撮影して得られた画像の色成分毎の干渉模様を解析してドライアイの進行状態を評価する眼科装置を開示している。
【0007】
特許文献4は、ドライアイのタイプを客観的に評価するために、被検眼の前眼部を連続的に撮影して得られた複数の正面画像を処理することにより、ドライスポットの位置や形状、ドライスポットの周囲における涙液の移動方向を評価する眼科装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-289970号公報
【特許文献2】特開2001-309889号公報
【特許文献3】特開2005-211173号公報
【特許文献4】特開2017-136212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献4にも開示されているように、ドライアイの評価における重要事項の一つにドライスポットの位置(より一般に、涙液の厚みの分布、又は涙液の状態異常の分布)がある。当然であるが、検査の前には、前眼部のどの箇所に異常が発生するかは分からない。よって、角膜の端部に発生する異常を見逃さないためにも、また、検査を効率的に行うためにも、前眼部の広い範囲を観察可能であることが望まれる。
【0010】
また、検査結果を提示する際には、前眼部における異常発生箇所を容易に(直感的に)把握できるように、異常の箇所や分布を前眼部画像に重ねて表示することが望まれる。この前眼部画像は、前眼部の広い範囲を描出した画像であることが望ましい。
【0011】
更に、眼球運動や体動に起因して干渉模様画像と前眼部画像との間に位置ずれが生じるおそれを考慮すると、異常の箇所や分布を得るための干渉模様の撮影と、前眼部画像を得るための前眼部の撮影とを、ほぼ同時に行うことが望ましい。
【0012】
従来の技術では、ドライアイの検査に用いられる眼科装置に関するこれらの要求を満足することは困難であった。
【0013】
本発明の目的は、涙液の状態の異常発生箇所を前眼部の広い範囲にわたり良好な位置精度で提示することを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
幾つかの例示的な実施形態の第1の態様に係る眼科装置は、照明系と、干渉撮影系と、前眼部撮影系と、第1光路結合素子と、制御部とを含む。照明系は、光源から出力された照明光を被検眼の前眼部に投射する。干渉撮影系は、照明光により角膜上に形成される角膜上の涙液の状態を表す干渉模様を撮影するための構成を有する。前眼部撮影系は、照明光が投射されている前眼部を撮影するための構成を有する。第1光路結合素子は、干渉撮影系の光路と前眼部撮影系の光路とを結合する。制御部は、干渉撮影系により角膜上の涙液の状態を表す干渉模様を撮影することによって取得された角膜上の涙液の状態を表す干渉像を前眼部撮影系により取得された前眼部画像に重ねて表示装置に表示させる。
【0015】
幾つかの例示的な実施形態の第2の態様は、第1の態様の眼科装置であって、第1光路結合素子に対して被検眼の側に配置された第1レンズ群と、第1光路結合素子に対して被検眼の反対側に配置された第2レンズ群とを更に含む。第1レンズ群及び第2レンズ群は、干渉撮影系の対物レンズとして機能する。第1レンズ群は、前眼部撮影系の対物レンズとして機能する。
【0016】
幾つかの例示的な実施形態の第3の態様は、第2の態様の眼科装置であって、前眼部撮影系に含まれるレンズのうち最も第1光路結合素子の側に位置するレンズが、第1レンズ群の焦点位置又はその近傍に配置されている。
【0017】
幾つかの例示的な実施形態の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれかの眼科装置であって、照明系の光路と干渉撮影系の光路とを結合する第2光路結合素子を更に含む。
【0018】
幾つかの例示的な実施形態の第5の態様は、第4の態様の眼科装置であって、第1光路結合素子及び第2光路結合素子のそれぞれはビームスプリッタである。干渉模様を撮影するための照明光の戻り光は、第1光路結合素子及び第2光路結合素子のそれぞれにより反射されて、干渉撮影系の撮像素子に導かれる。
【0019】
幾つかの例示的な実施形態の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれかの眼科装置であって、前眼部に投射される照明光の強度を変更する照明強度変更部を更に含む。
【0020】
幾つかの例示的な実施形態の第7の態様は、第1~第6の態様のいずれかの眼科装置であって、エキサイタフィルタと、バリアフィルタとを更に含む。エキサイタフィルタは、前眼部に投与された蛍光剤の励起光を照明光から生成する。バリアフィルタは、励起光を受けた蛍光剤が発する蛍光を選択的に通過させる。
【0021】
幾つかの例示的な実施形態の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれかの眼科装置であって、投射系と、検出系と、第1アライメント部とを更に含む。投射系は、第1光路結合素子から被検眼に向かう光路の光軸に対して傾斜した方向に沿って前眼部にアライメント光を投射する。検出系は、アライメント光の前眼部での反射光を検出する。第1アライメント部は、検出系からの出力に基づいて、当該光軸に沿う方向におけるアライメントを実行する。
【0022】
幾つかの例示的な実施形態の第9の態様は、第8の態様の眼科装置であって、投射系は、アライメント光を出力するアライメント光源を含み、且つ、検出系は、アライメント光の前眼部での反射光を検出するイメージセンサーを含む。アライメント光源及びイメージセンサーは、第1光路結合素子に対して被検眼の反対側に配置されている。
【0023】
幾つかの例示的な実施形態の第10の態様は、第1~第9の態様のいずれかの眼科装置であって、第2アライメント部を更に含む。第2アライメント部は、前眼部撮影系により取得された前眼部画像に基づいて、第1光路結合素子から被検眼に向かう光路の光軸に直交する方向におけるアライメントを実行する。
【0024】
幾つかの例示的な実施形態の第11の態様は、第1~第7の態様のいずれかの眼科装置であって、2以上の撮影部と、第3アライメント部とを含む。2以上の撮影部は、互いに異なる方向から前眼部を撮影する。第3アライメント部は、2以上の撮影部によりそれぞれ取得された2以上の撮影画像に基づいて3次元アライメントを実行する。
【発明の効果】
【0025】
実施形態によれば、涙液の状態の異常発生箇所を前眼部の広い範囲にわたり良好な位置精度で提示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】例示的な実施形態に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
図2】例示的な実施形態に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
図3】例示的な実施形態に係る眼科装置の構成の一例を説明するための概略図である。
図4】例示的な実施形態に係る眼科装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5A】変形例に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
図5B】変形例に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
図6】変形例に係る眼科装置の構成の一例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
まず、実施形態の概要を説明する。実施形態の眼科装置は、角膜上の涙液の状態を表す干渉模様を撮影して干渉像を取得し、前眼部を撮影して前眼部画像を取得し、干渉像を前眼部画像に重ねて提示するように構成されている。干渉撮影のための要素群(干渉撮影系)の少なくとも一部は、前眼部撮影のための要素群(前眼部撮影系)と異なっている。
【0029】
提示される干渉像は、干渉撮影系により取得された干渉像そのもの(生画像)でもよいし、この生画像を加工して得られた干渉像(加工画像)でもよい。加工画像は、例えば、生画像が表現するパラメータ分布を擬似カラー表現したカラーマップ、又は、パラメータ値が所定範囲に属する領域を表現したマップであってよい。このパラメータは、例えば、涙液を構成する油層、水層及びムチン層のうちのいずれか1つの層の厚み、いずれか2つの層の厚み、又は3つの層の厚みであってよい。また、加工画像は、補正、調整、強調等の任意の画像処理を生画像に適用して得られた画像であってもよい。
【0030】
同様に、提示される前眼部画像は、前眼部撮影系により取得された前眼部画像そのもの(生画像)でもよいし、この生画像を加工して得られた前眼部画像(加工画像)でもよい。加工画像は、例えば、補正、調整、強調等の任意の画像処理を生画像に適用して得られた画像であってよい。
【0031】
干渉像及び前眼部画像が表示される表示装置は、実施形態に係る眼科装置に含まれてもよいし、含まれなくてもよい。後者の場合、表示装置は、実施形態に係る眼科装置の周辺機器である。
【0032】
本明細書において、特に言及しない限り、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを区別しない。同様に、特に言及しない限り、被検眼の部位又は組織と、それを表す画像とを区別しない。
【0033】
また、本明細書において、特に言及しない限り、「レンズ」は、単一のレンズ、又は、2枚以上のレンズの組み合わせを示す。同様に、特に言及しない限り、「レンズ群」は、2枚以上のレンズの集合、又は、単一のレンズを示す。
【0034】
また、本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
【0035】
〈構成〉
実施形態に係る眼科装置の構成例を図1及び図2に示す。眼科装置1は、被検眼Eの角膜Ec上の涙液の状態を表す干渉模様を撮影する機能と、前眼部Eaを撮影する機能と、干渉模様を表す干渉像を前眼部画像に重ねて提示する機能とを有する。
【0036】
これら機能を実現するための例示的な構成として、眼科装置1は、検査ユニット2と、ユニット移動機構70と、表示デバイス80と、操作デバイス90と、コンピュータ100とを含む。コンピュータ100は、例えば、眼科装置1の組み込みシステム(embedded system)であってよい。
【0037】
検査ユニット2には、各種光学系や各種機構が格納されている。例示的な検査ユニット2は、照明系10と、干渉撮影系20と、前眼部撮影系30と、2つのレンズ41及び42を含む第1レンズ群と、2つのレンズ43及び44を含む第2レンズ群と、光路結合素子51と、反射ミラー52と、光路結合素子53と、アライメント光源61と、イメージセンサー62とを含む。
【0038】
照明系10は、被検眼Eの前眼部Eaに照明光を投射するように構成されている。例示的な照明系10は、照明光源11と、コリメートレンズ12と、エキサイタフィルタ13と、可変フィルタ14とを含む。照明系10の光路は、照明光源11、コリメートレンズ12、エキサイタフィルタ13、可変フィルタ14、(光路結合素子53、)反射ミラー52、レンズ44、レンズ43、光路結合素子51、レンズ42、及びレンズ41により形成されている。
【0039】
照明光源11は照明光を出力する。照明光源11の動作はコンピュータ100によって制御される。
【0040】
コリメートレンズ12は、照明光源11から出力された照明光を平行光束に変換する。コリメートレンズ12は、例えば、単一のレンズ、又は、2以上のレンズの組み合わせからなる。
【0041】
エキサイタフィルタ13は、前眼部撮影のモダリティが蛍光造影撮影である場合に光路に配置され(実線で示す状態)、その他の場合には光路外に配置される(点線で示す状態)。エキサイタフィルタ13の移動は、エキサイタフィルタ移動機構13Aによって行われる。エキサイタフィルタ移動機構13Aは、コンピュータ100からの命令にしたがって動作するアクチュエータを含む。このアクチュエータは、例えば、ソレノイドアクチュエータであってよい。
【0042】
蛍光造影撮影では蛍光剤(蛍光色素)が前眼部Eaに投与される。エキサイタフィルタ13は、蛍光剤の励起光を照明光から生成する。つまり、エキサイタフィルタ13は、蛍光剤を励起する波長を選択的に通過させる。典型的な例において、蛍光色素はフルオレセインであり、エキサイタフィルタ13の通過中心波長は、フルオレセインの吸収極大波長494nm又はその近傍(例えば490~500nmの範囲)に設定される。
【0043】
可変フィルタ14は、被検眼Eに投射される照明光の強度(光量)を変更するための光学素子である。涙液に起因する干渉模様の時系列変化を評価するには或る程度の時間(10秒又はそれ以上)が必要であるため、その間ずっと被検者が眼を開けていられるように照明光の強度を調整できることが望ましいと考えられる。可変フィルタ14は、この要望を実現するための要素の例である。
【0044】
可変フィルタ14は、例えば、減光フィルタ(NDフィルタ)及びバンドパスフィルタ(BPF)のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。可変フィルタ14は、単一のフィルタ、又は、2枚以上のフィルタを含む。
【0045】
可変フィルタ14が単一のフィルタからなる場合、可変フィルタ14は、例えば、フィルタ特性(例えば、通過特性、吸収特性)が連続的又は離散的に変化可能な光学フィルタである。フィルタ特性を変化させるための制御はコンピュータ100によって行われる。
【0046】
可変フィルタ14が2枚以上のフィルタを含む場合、これらフィルタが選択的に光路に配置される。この場合の典型例として、可変フィルタ14は、ターレットに装着された2以上のフィルタと、ターレットを移動(典型的には回動)するアクチュエータとを含む。アクチュエータは、例えば、コンピュータ100からの命令(パルス制御信号)により動作するパルスモータであってよい。
【0047】
なお、可変フィルタ14を用いることなく、被検眼Eに投射される照明光の強度を変更することも可能である。例えば、幾つかの例示的な実施形態は、照明光源(11)により出力される照明光の強度及び波長帯のいずれか一方又は双方を変更することによって、被検眼Eに投射される照明光の強度を変更するように構成されていてよい。また、幾つかの例示的な実施形態は、照明光源の制御と可変フィルタの制御との組み合わせによって、被検眼Eに投射される照明光の強度を変更するように構成されていてよい。
【0048】
また、可変フィルタ14に設けられた2以上のフィルタのいずれかがエキサイタフィルタ13であってよい。エキサイタフィルタ13が可変フィルタ14に含まれる場合において、蛍光造影撮影を行う際には、コンピュータ100は、可変フィルタ14を制御することによって、エキサイタフィルタ13の光路への挿入及び光路からの退避を行う。
【0049】
本例の照明系10によれば、照明光源11から出力された照明光は、コリメートレンズ12により平行光束に変換される。蛍光造影撮影が適用される場合、コリメートレンズ12を通過した照明光は、エキサイタフィルタ13によって励起光となり、この励起光の強度が可変フィルタ14によって調整される。蛍光造影撮影が適用されない場合、コリメートレンズ12を通過した照明光の強度が可変フィルタ14によって調整される。可変フィルタ14を通過した照明光(励起光)は、光路結合素子53、反射ミラー52、レンズ44、レンズ43、光路結合素子51、レンズ42、及び、レンズ41を経由して、前眼部Eaに投射される。
【0050】
干渉撮影系20は、照明系10により前眼部Eaに投射される照明光によって角膜上に形成される干渉模様を撮影するように構成されている。この干渉模様は、照明光が涙液の層(層境界)で反射されることにより形成される。例えば、涙液の油層の表面からの反射光と裏面からの反射光とが干渉することによって、油層の厚みの分布に応じた模様が形成される。
【0051】
干渉撮影系20は、絞り21と、テレセントリックレンズ22と、干渉撮影カメラ23とを含む。干渉光学系20の光路は、レンズ41、レンズ42、光路結合素子51、レンズ43、レンズ44、反射ミラー52、光路結合素子53、絞り21、テレセントリックレンズ22、及び干渉撮影カメラ23により形成されている。
【0052】
絞り21は、干渉撮影カメラ23に導かれる光の量を制限(調整)するための光学素子である。絞り21は、コンピュータ100によって制御される可変絞りであってよい。
【0053】
テレセントリックレンズ22は、例えば、像側テレセントリック(image-space telecentric)レンズであってよい。これにより、干渉撮影カメラ23の撮像面の全体に対して光線が略垂直に入射するため、ロールオフや口径食の解消、ひいては周辺光量比の均一化を図ることができる。テレセントリックレンズ22は、例えば、単一のレンズ、又は、2以上のレンズの組み合わせからなる。
【0054】
干渉撮影カメラ23は、テレセントリックレンズ22を通過した光を検出することにより、角膜上に形成される干渉模様を表す画像(干渉像)を生成する。干渉撮影カメラ23は、少なくとも可視域に感度を有する。干渉撮影カメラ23は、例えばカラービデオカメラであってよく、典型的には3CCDビデオカメラ又は3CMOSビデオカメラであってよい。これにより、様々な色成分の干渉像を得ることができる。
【0055】
照明系10により前眼部Eaに投射された照明光の反射光は、レンズ41、レンズ42、光路結合素子51、レンズ43、レンズ44、反射ミラー52、光路結合素子53、絞り21、及び、テレセントリックレンズ22を経由して干渉撮影カメラ23に導かれる。
【0056】
前眼部撮影系30は、照明系10により照明光が投射されている前眼部Eaを撮影するように構成されている。前眼部撮影系30は、バリアフィルタ31と、レンズ32と、前眼部撮影カメラ33とを含む。前眼部撮影系30の光路は、レンズ41、レンズ42、(光路結合素子51、)バリアフィルタ31、レンズ32、及び前眼部撮影カメラ33により形成されている。
【0057】
バリアフィルタ31は、前眼部撮影のモダリティが蛍光造影撮影である場合に光路に配置され(実線で示す状態)、その他の場合には光路外に配置される(点線で示す状態)。バリアフィルタ31の移動は、バリアフィルタ移動機構31Aによって行われる。バリアフィルタ移動機構31Aは、コンピュータ100からの命令にしたがって動作するアクチュエータを含む。このアクチュエータは、例えば、ソレノイドアクチュエータであってよい。
【0058】
コンピュータ100は、エキサイタフィルタ移動機構13Aの動作と、バリアフィルタ移動機構31Aの動作とを同期的に制御する。つまり、前眼部撮影のモダリティが蛍光造影撮影である場合、コンピュータ100は、エキサイタフィルタ13及びバリアフィルタ31の双方が光路に配置されるようにエキサイタフィルタ移動機構13A及びバリアフィルタ移動機構31Aを制御し、且つ、前眼部撮影のモダリティが蛍光造影撮影でない場合、コンピュータ100は、エキサイタフィルタ13及びバリアフィルタ31の双方が光路外に配置されるようにエキサイタフィルタ移動機構13A及びバリアフィルタ移動機構31Aを制御する。
【0059】
蛍光造影撮影では、前眼部Eaに投与された蛍光剤(蛍光色素)が、エキサイタフィルタ13により生成された励起光を受けて、特定波長の蛍光を放出する。バリアフィルタ31は、この蛍光の波長を選択的に通過させる。典型的な例として、蛍光色素がフルオレセインである場合、バリアフィルタ31の通過中心波長は、フルオレセインの放出極大波長521nm又はその近傍に設定される。
【0060】
レンズ32は、例えば、前眼部撮影カメラ33の受光面に光を結像させる結像レンズである。或いは、干渉撮影系20と同様に、レンズ32は、(像側)テレセントリックレンズであってもよい。レンズ32は、例えば、単一のレンズ、又は、2以上のレンズの組み合わせからなる。
【0061】
レンズ32のうち最も光路結合素子51の近くに位置するレンズは、2つのレンズ41及び42からなる第1レンズ群の焦点位置又はその近傍に配置される。レンズ32が単一のレンズからなる場合、レンズ32が、第1レンズ群の後側焦点位置又はその近傍に配置される。レンズ32が2以上のレンズからなる場合、これらレンズのうち最も光路結合素子51の近くに位置するレンズ、つまり、最も被検眼Eの側に位置するレンズが、第1レンズ群の後側焦点位置又はその近傍に配置される。これにより、前眼部撮影カメラ33の撮影視野を広くすることができ、前眼部Eaの広い範囲を撮像することが可能になる。
【0062】
前眼部撮影カメラ33は、レンズ32を通過した光を検出することにより前眼部Eaを撮像する。これにより前眼部画像が得られる。前眼部撮影カメラ33は、少なくとも蛍光造影撮影のための波長域に感度を有する。前眼部撮影カメラ33は、例えば、可視域及び赤外域に感度を有する。前眼部撮影カメラ33は、例えばカラービデオカメラ又はモノクロビデオカメラであってよく、典型的にはCCDビデオカメラ、3CCDビデオカメラ、CMOSカメラ、又は3CMOSビデオカメラであってよい。
【0063】
2つのレンズ41及び42からなる第1レンズ群は、光路結合素子51に対して被検眼Eの側に配置されている。また、2つのレンズ43及び44からなる第2レンズ群は、光路結合素子51に対して被検眼Eの反対側に配置されている。換言すると、第2レンズ群は、光路結合素子51に対して干渉撮影カメラ23の側に配置されている。
【0064】
レンズ41は、例えば、被検眼Eの側の面(前面)が凹面状又は平面状に形成され、且つ、被検眼Eの反対側の面(後面)が凸型非球面状に形成されている。レンズ42は、例えば、前面及び後面ともに凸面状又は平面状に形成されている。
【0065】
レンズ43及びレンズ44は貼り合わせレンズを形成している。レンズ43は、例えば、前面及び後面ともに凸面状に形成されている。レンズ44は、例えば、前面及び後面ともに凹面状に形成されている。
【0066】
このようなレンズ構成は、次の2つの条件を満足するためのものである:(1)角膜Ecの各位置に対して略垂直に照明光が入射する;(2)角膜Ecの各位置からの反射光が、当該位置への照明光の入射経路と略同一の経路を逆向きに進行してレンズ41に到達し、干渉撮影系20により検出される。
【0067】
本例に係る干渉撮影系20がこれら2つの条件を満足していることは、図3の光線図(シミュレーション図)から分かる。なお、これら2つの条件に関する事項が特許文献1に記載されているが、これら2つの条件を実際に満足する具体的な光学系は公知文献には開示されておらず、発明者らが初めて考案したものと考えられる。
【0068】
上記2つの条件を満足する光学系を適用することにより、角膜Ecの各位置に対応する照明光の経路とその反射光の経路とが略一致され、その結果、湾曲した角膜Ec上の涙液の状態の分布を湾曲面に対し垂直方向から正確に捉えることが可能になる。
【0069】
上記2つの条件を満足するための構成はこれに限定されない。発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、少なくとも以下に示す光学系構成(A)~(C)が上記2つの条件を満足することを確認した。なお、これらも単なる例示に過ぎず、任意の変形(省略、置換、付加等)が許容される。
【0070】
(A)本例の光学系構成は、図1の4つのレンズ41~44の代わりに、次の3つのレンズを使用するものである。被検眼に最も近い第1レンズは、前面が凹面状に形成され、後面が凸型非球面状に形成されている。第1レンズに隣接する第2レンズは、前面及び後面ともに凸面状に形成されている。第2レンズの後面に前面が貼り付けられた第3レンズは、前面が凹面状に形成され、後面が凸面状に形成されている。
【0071】
(B)本例の光学系構成は、図1の4つのレンズ41~44の代わりに、次の4つのレンズを使用するものである。被検眼に最も近い第1レンズは、前面が緩凸面状又は平面状に形成され、後面が凸型非球面状に形成されている。第1レンズの次に被検眼に近い第2レンズは、前面及び後面ともに凸面状に形成されている。第2レンズの後面に前面が貼り付けられた第3レンズは、前面が凹面状に形成され、後面が凸面状に形成されている。第3レンズの後面に前面が対向する第4レンズは、前面が凸面状に形成され、後面が凹面状に形成されている。
【0072】
(C)本例の光学系構成は、図1の4つのレンズ41~44の代わりに、次の5つのレンズを使用するものである。被検眼に最も近い第1レンズは、前面が平面状又は凹面状に形成され、後面が凸型非球面状に形成されている。第1レンズに隣接する第2レンズは、前面が平面状に形成され、後面が凸面状に形成されている。第2レンズに隣接する第3レンズは、前面及び後面ともに凸面状に形成されている。第3レンズの後面に前面が貼り付けられた第4レンズは、前面が凹面状に形成され、後面が凸面状に形成されている。第4レンズに隣接する第5レンズは、前面が凸面状に形成され、後面が凹面状に形成されている。
【0073】
図1に示す例において、4つのレンズ41、42、43及び44、つまり第1レンズ群及び第2レンズ群は、干渉撮影系20の対物レンズとして機能する。また、2つのレンズ41及び42、つまり第1レンズ群は、前眼部撮影系30の対物レンズとして機能する。
【0074】
これにより、干渉撮影系20については、角膜Ecの各位置に対して略垂直に照明光を入射させることが可能となり、且つ、角膜Ecの各位置からの反射光を入射経路と略同一の経路に導くことが可能となる。一方、前眼部撮影系30については、広い撮影視野の確保、すなわち前眼部Eaの広い範囲の撮像が可能になる。
【0075】
なお、干渉撮影系20により検出される光と前眼部撮影系30により検出される光とは、ともに前眼部Eaからの戻り光ではあるが、互いに異なる光である。互いに異なる要求を満足するように構成された別々の光学系によってこのような互いに異なる光をそれぞれ検出するように光学系を構成することが容易でないことは、当業者であれば理解できるであろう。
【0076】
光路結合素子51は、干渉撮影系20の光路と前眼部撮影系30の光路とを結合する光学素子である。光路結合素子51は、例えば、干渉撮影系20の光路と前眼部撮影系30の光路とを同軸に結合する(つまり、互いの光軸が交差するように結合する)。
【0077】
光路結合素子51は、任意のビームスプリッタであってよい。本例では、干渉撮影系20は広帯域の可視光を利用し、且つ、前眼部撮影系30は可視蛍光(フルオレセイン)を利用しているので、ハーフミラーを光路結合素子51として用いることができる。また、図1に示す例では、光路結合素子51は、照明系10の光路と前眼部撮影系30の光路とを結合する機能も有する。
【0078】
幾つかの例示的な実施形態において、通過光(透過光)と反射光とを波長で分離する構成が採用される場合には、ダイクロイックミラーを光路結合素子51として用いることができる。他の幾つかの例示的な実施形態において、通過光(透過光)と反射光とを偏光で分離する構成が採用される場合には、偏光ビームスプリッタを光路結合素子51として用いることができる。なお、これらは、干渉撮影系の光路と前眼部撮影系の光路とを結合するための要素(第1光路結合素子)の単なる例示に過ぎず、任意の変形(省略、置換、付加等)が許容される。
【0079】
反射ミラー52は、照明系10の光路及び干渉撮影系20の光路を折り曲げている。これにより、光学系構成のコンパクト化が可能となり、その結果として眼科装置1の小型化が可能となる。なお、この目的又は他の目的のために使用され得る要素は任意であり、また、採用しうる構成も任意である。例えば、反射ミラーの位置、配置角度、個数、サイズなどを適宜に設計することができる。また、反射ミラーと異なる要素を用いてもよい。
【0080】
光路結合素子53は、照明系10の光路と干渉撮影系20の光路とを結合する光学素子である。光路結合素子53は、例えば、照明系10の光路と干渉撮影系20の光路とを同軸に結合する。
【0081】
光路結合素子53は、任意のビームスプリッタであってよい。本例では、照明系10及び干渉撮影系20はともに広帯域の可視光を利用しているので、ハーフミラーを光路結合素子53として用いることができる。ダイクロイックミラー、偏光ビームスプリッタ又は他のビームスプリッタを、必要に応じてハーフミラーの代わりに採用できることは、光路結合素子51の場合と同様である。
【0082】
図1に示す例では、干渉撮影系20により導かれる光(つまり、角膜Ec上の涙液に起因する干渉模様を撮影するための照明光の戻り光)は、2つのビームスプリッタを経由するが、双方により反射される。すなわち、干渉撮影系20により導かれる光は、光路結合素子51において反射され、且つ、光路結合素子53においても反射されて、干渉撮影カメラ23に導かれる。
【0083】
この構成は、ビームスプリッタを透過する際の光の乱れを回避することを意図している。それにより、角膜Ec上に生じた干渉模様を高い確度で検出することが可能になる。
【0084】
アライメント光源61及びイメージセンサー62は、レンズ41の光軸に沿う方向(Z方向)におけるアライメント(Zアライメント)に用いられる。アライメント光源61は、Zアライメントを行うための光(例えば赤外光)を被検眼Eに投射する。アライメント光源61から出力された光は、レンズ42及びレンズ41を介して角膜Ecに斜方から投射される。この光の角膜反射光は、レンズ41及びレンズ42(並びに、図示しない他のレンズ)によってイメージセンサー62の受光面に結像される。
【0085】
イメージセンサー62は、任意の1次元又は2次元イメージセンサーであってよい。すなわち、Zアライメント系に設けられるイメージセンサー62は、複数の光検出素子(フォトダイオード等)が1次元的又は2次元的に配列された任意のイメージセンサーであってよい。イメージセンサー62は、典型的にはラインセンサーである。
【0086】
幾つかの例示的な実施形態において、アライメント光源61からレンズ42に向かう光は、例えば、光路結合素子51に形成された切り欠き、開口、又は透光部を通過してレンズ42に到達する。同様に、レンズ42からイメージセンサー62に向かう光は、例えば、光路結合素子51に形成された切り欠き、開口、又は透光部を通過してレンズ42に到達する。これにより、干渉撮影系20に関する上記条件の満足と、前眼部撮影系30の撮影視野の拡大とを図りつつ、アライメントのための要素を設けることが可能である。
【0087】
角膜Ec(角膜頂点)の位置がZ方向に変化すると、イメージセンサー62の受光面に対する光の投射位置が変化する。コンピュータ100は、イメージセンサー62が光を検出した位置に基づいて角膜Ec(角膜頂点)の位置を求めることができる。更に、コンピュータ100は、求められた角膜Ec(角膜頂点)の位置に基づきユニット移動機構70を制御することで、検査ユニット2のZアライメントを実行する。このZアライメント手法は、光テコを利用したアライメント手法の例である。
【0088】
ユニット移動機構70は、検査ユニット2を3次元的に移動する。典型的な例において、ユニット移動機構70は、Z方向(前後方向)に移動可能なZステージと、Zステージを移動するZ移動機構と、Z方向に直交するX方向(左右方向)に移動可能なXステージと、Xステージを移動するX移動機構と、Z方向及びX方向の双方に直交するY方向(上下方向)に移動可能なYステージと、Yステージを移動するY移動機構とを含む。これら移動機構のそれぞれは、コンピュータ100の制御の下に動作するアクチュエータ(例えばパルスモータ)を含む。
【0089】
表示デバイス80は、ユーザインターフェイス部の一部として機能し、コンピュータ100による制御を受けて情報を表示する。表示デバイス80は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであってよい。
【0090】
操作デバイス90は、ユーザインターフェイス部の一部として機能し、眼科装置1を操作するために使用される。操作デバイス90は、眼科装置1に設けられた各種のハードウェアキー(ジョイスティック、ボタン、スイッチなど)を含んでいてよい。また、操作デバイス90は、眼科装置1に接続された各種の周辺機器(キーボード、マウス、ジョイスティック、操作パネルなど)を含んでいてよい。また、操作デバイス90は、タッチパネルに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニューなど)を含んでよい。
【0091】
コンピュータ100は、眼科装置1を動作させるための各種演算や各種制御を実行する。コンピュータ100は、1以上のプロセッサと、1以上の記憶装置とを含む。記憶装置としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などがある。記憶装置には各種のコンピュータプログラムが格納されており、それに基づきプロセッサが動作することにより本例に係る演算や制御が実現される。
【0092】
コンピュータ100の構成の例を図2に示す。コンピュータ100は、検査処理部110と、表示処理部120と、照明強度変更処理部130と、アライメント処理部140とを含む。
【0093】
検査処理部110は、眼科装置1が行う検査に関する処理(演算、制御等)を実行する。検査処理部110は、プロセッサを含むハードウェアと検査処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0094】
検査処理部110は、例えば、照明光源11、エキサイタフィルタ移動機構13A、干渉撮影カメラ23、バリアフィルタ移動機構31A、及び、前眼部撮影カメラ33のそれぞれを制御する。
【0095】
照明光源11の制御は、例えば、点灯、消灯、出力光量の変更、及び、出力波長域の変更を含む。エキサイタフィルタ移動機構13Aの制御は、例えば、エキサイタフィルタ13の光路への挿入と、エキサイタフィルタ13の光路からの退避とを含む。
【0096】
干渉撮影カメラ23の制御は、例えば、露光調整、ゲイン調整、検出レート調整、及び、検出波長域(使用するイメージセンサ)の選択を含む。なお、絞り21が可変絞りである場合には、検査処理部110は絞り21の制御を行う。
【0097】
バリアフィルタ移動機構31Aの制御は、例えば、バリアフィルタ31の光路への挿入と、バリアフィルタ31の光路からの退避とを含む。前眼部撮影カメラ33の制御は、例えば、露光調整、ゲイン調整、及び、検出レート調整を含む。
【0098】
更に、検査処理部110は、干渉撮影カメラ23により得られた干渉像に関する処理や演算を行うことができる。例えば、検査処理部110は、干渉撮影系20により取得された生画像から加工画像を構築することができる。加工画像は、例えば、生画像が表現するパラメータ分布を擬似カラー表現したカラーマップ、又は、パラメータ値が所定範囲に属する領域を表現したマップであってよい。このパラメータは、例えば、涙液を構成する油層、水層及びムチン層のうちのいずれか1つの層の厚み、いずれか2つの層の厚み、又は3つの層の厚みであってよい。また、加工画像は、補正、調整、強調等の任意の画像処理を生画像に適用して得られた画像であってもよい。
【0099】
また、検査処理部110は、特許文献1~4に開示された処理や他の公知処理を実行可能であってよい。例えば、検査処理部110は、干渉像(干渉模様)の色相の時系列変化の特定や、色成分毎の干渉模様に基づくドライアイの進行状態の評価や、ドライスポットの位置の評価や、ドライスポットの形状の評価、ドライスポットの周囲における涙液の移動方向の評価を実行可能であってよい。
【0100】
検査処理部110は、前眼部撮影カメラ33により得られた前眼部画像に関する処理や演算を行うことができる。例えば、検査処理部110は、前眼部撮影系30により取得された生画像から加工画像を構築することができる。前述したように、加工画像は、例えば、補正、調整、強調等の任意の画像処理を生画像に適用して得られた画像であってよい。
【0101】
表示処理部120は、表示デバイス80に情報を表示させるための処理を行う。表示処理部120は、プロセッサを含むハードウェアと表示処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0102】
例えば、第1情報上に第2情報を重ねて表示させるために、表示処理部120は、例えば、第1レイヤ上に第2レイヤを提示する制御と、第1レイヤに第1情報を表示させる制御と、第2レイヤに第2情報を表示させる制御とを実行する。或いは、表示処理部120は、第1情報に第2情報を合成する処理(埋め込み)と、それにより得られた合成情報を表示させる処理とを実行してもよい。
【0103】
照明強度変更処理部130は、照明系10により前眼部Eaに投射される照明光の強度を変更するための処理を実行する。照明強度変更処理部130は、プロセッサを含むハードウェアと照明強度変更処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0104】
照明強度の変更に可変フィルタ14が用いられる場合、照明強度変更処理部130は、例えば、可変フィルタ14のフィルタ特性を変更するための制御、又は、2枚以上のフィルタのいずれかを光路に配置されるための制御を実行する。
【0105】
照明光源(11)により出力される照明光の強度及び波長帯のいずれか一方又は双方を変更することによって前眼部Eaに投射される照明光の強度を変更する場合、照明強度変更処理部130は、照明光源(11)の制御を行う。
【0106】
照明強度変更処理部130は、例えば、操作デバイス90からの信号にしたがって照明強度を変更するための制御を行う。すなわち、眼科装置1は、照明強度を手動で変更できるように構成されていてよい。ここで、操作デバイス90は、検者又は被検者によって操作される。なお、照明強度の可変範囲を、干渉撮影及び前眼部撮影の少なくとも一方を好適に実施できるような範囲に事前に設定することができる。
【0107】
照明強度の変更を自動で行う場合、例えば、照明強度変更処理部130は、過去の検査で当該被検者(当該被検眼E)に対して適用された照明強度の情報を、当該被検者に関連付けられた医療情報(例えば、電子カルテ)から取得し、この照明強度を再現するように構成されていてよい。
【0108】
照明強度の変更を自動で行う場合の他の例として、照明強度変更処理部130は、前眼部Eaに照明光が投射されているときに、眩しさの程度を被検者に問うための視覚情報又は聴覚情報を眼科装置1に出力させ、被検者の応答にしたがって照明強度を調整するように構成されていてよい。
【0109】
照明強度の変更を自動で行う場合の更に他の例として、照明強度変更処理部130は、前眼部Eaに照明光が投射されているときに、被検者の生体信号に基づいて照明強度を調整するように構成されていてよい。この生体信号は、例えば、縮瞳、脳波、心拍、発汗、表情などであってよい。眼科装置1は、例えば、いずれかの生体信号を検出するためのデバイスを含んでいるか、或いは、当該デバイスに接続されている。縮瞳は、例えば、前眼部撮影カメラ33及び照明強度変更処理部130により検出可能である。脳波は、例えば、脳波計により検出可能である。心拍は、例えば、心電計又はパルスオキシメータにより検出可能である。発汗は、例えば、発汗計により検出可能である。表情は、例えば、カメラ及び照明強度変更処理部130により検出可能である。これらの例と異なる生体信号は、それに応じたデバイスによって検出可能である。
【0110】
アライメント処理部140は、被検眼Eに対する光学系の位置調整(アライメント)に関する処理を実行する。アライメント処理部140は、プロセッサを含むハードウェアとアライメント処理ソフトウェアとの協働によって実現される。
【0111】
眼科装置1は、Zアライメントに加え、X方向及びY方向のアライメント(XYアライメント)も実行可能であってよい。アライメント処理部140は、Zアライメントに関する処理と、XYアライメントに関する処理とを実行する。
【0112】
まず、Zアライメントに関する処理について説明する。アライメント処理部140は、アライメント光源61の制御と、イメージセンサー62の制御とを実行可能である。アライメント光源の制御は、点灯、消灯、光量調整、絞り調整などを含む。イメージセンサー62の制御は、露光調整、ゲイン調整、検出レート調整などを含む。
【0113】
更に、アライメント処理部140は、イメージセンサー62から出力された信号を取り込み、この信号に基づいてイメージセンサー62の受光面における光の投影位置を特定する。アライメント処理部140は、特定された投影位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づきユニット移動機構70を制御して検査ユニット2を前後方向に移動させる(Zアライメント)。
【0114】
次に、XYアライメントについて説明する。眼科装置1は、前眼部撮影系30により取得された前眼部画像に基づいてXYアライメントを実行するように構成されていてよい。
【0115】
例えば、アライメント処理部140は、まず、前眼部画像を解析して特徴点(例えば、瞳孔中心又は瞳孔重心)を検出する。次に、アライメント処理部140は、前眼部画像のフレームの所定位置(例えば、フレーム中心)に対する特徴点の偏位を算出する。続いて、アライメント処理部140は、算出された偏位がキャンセルされるようにユニット移動機構70を制御して検査ユニット2を左右方向及び/又は上下方向に移動させる(XYアライメント)。これにより、フレームの所定位置に前眼部の特徴点が配置されるようにXYアライメントを行うことができる。
【0116】
コンピュータ100は、図2に示す要素と異なる要素を含んでいてもよい。例えば、コンピュータ100は、通信インターフェイスを含んでいてよい。通信インターフェイスは、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。外部装置は、例えば、任意の眼科装置、記録媒体から情報を読み取る装置(リーダ)、及び、記録媒体に情報を書き込む装置(ライタ)のいずれかを含んでいてよい。また、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなど、任意の情報処理装置を含んでいてよい。
【0117】
〈動作〉
本実施形態に係る眼科装置1の動作について説明する。眼科装置1の動作の例を図4に示す。
【0118】
(S1:前眼部の照明を開始)
まず、照明光源11が点灯されて前眼部Eaに照明光が投射される。
【0119】
(S2:照明強度を調整)
次に、可変フィルタ14の制御などによって、前眼部Eaに投射される照明光の強度の調整が行われる。照明強度調整は、例えば、前述した要領で実行可能である。
【0120】
(S3:アライメント)
次に、アライメントが実行される。本実施形態では、例えば、XYアライメントの後にZアライメントが行われる。XYアライメント及びZアライメントは、例えば、前述した要領で実行可能である。
【0121】
(S4:蛍光造影撮影用フィルタを光路に配置)
次に、エキサイタフィルタ13及びバリアフィルタ31がそれぞれ対応する光路に配置される。
【0122】
(S5:干渉撮影と前眼部撮影を開始)
以上の準備が完了したら、干渉撮影系20による干渉撮影と、前眼部撮影系30による前眼部撮影とが開始される。
【0123】
干渉撮影は、角膜Ec上の涙液の状態(例えば、厚み分布)を表す干渉模様を撮影する。干渉撮影は、例えば、予め設定された時間にわたって行われる。或いは、干渉撮影は、角膜Ec上の涙液の状態が所定の状態に達するまで(例えば、涙液層破壊十分に進行するまで)行われる。
【0124】
前眼部撮影は、例えば、干渉撮影の実施期間の少なくとも一部において実行される。これにより、干渉撮影により得られた或る干渉像とほぼ同時刻の前眼部画像を得ることができる。干渉撮影と前眼部撮影とを並行して行う場合のように、干渉撮影の実施期間の全体にわたって前眼部撮影が行われた場合、干渉撮影により取得される干渉像それぞれに時間的に対応する前眼部画像を得ることができる。
【0125】
干渉撮影のタイミングと前眼部撮影のタイミングとを同期させることができる。例えば、干渉撮影と前眼部撮影とを同じ繰り返しタイミング(撮影レート、フレームレート)で実行させることが可能である。
【0126】
(S6:干渉像と前眼部画像を取り込み)
表示処理部120は、例えば、互いにほぼ同時に取得された干渉像と前眼部画像とを取り込む。なお、表示処理部120は、互いに実質的に異なるタイミングで取得された干渉像と前眼部画像とを取り込んでもよい。
【0127】
(S7:干渉像を前眼部画像に重ねて表示)
表示処理部120は、ステップS6で取り込まれた干渉像と前眼部画像とを表示デバイス80に表示させる。このとき、表示処理部120は、前眼部画像上に干渉像を重ねて表示させる。
【0128】
ステップS6において、互いにほぼ同時に取得された干渉像と前眼部画像とが取り込まれた場合、これら画像の間のレジストレーションを行うことなく、前眼部画像に干渉像をオーバーレイすることができる。
【0129】
他方、ステップS6において、互いに実質的に異なるタイミングで取得された干渉像と前眼部画像とが取り込まれた場合、これら画像の間のレジストレーションを行うことが望ましい。ここで、干渉像に描出された内容と前眼部画像に描出された内容とが異なっているので、これら画像を直接に比較してレジストレーションを行うことは難しい。
【0130】
そこで、表示される前眼部画像とは別に、この干渉像とほぼ同時に取得された前眼部画像(補助前眼部画像)を利用する。補助前眼部画像の選択は、例えば、前述した干渉撮影と前眼部撮影との同期に基づき行うことができる。表示処理部120は、表示される前眼部画像と補助前眼部画像と間のレジストレーションを実行し、前者に対する後者の偏位を求めることができる。更に、表示処理部120は、求められた偏位がキャンセルされるように干渉像と表示される前眼部画像との間のレジストレーションを行うことができる。以上で、本動作例は終了となる(エンド)。
【0131】
〈変形例〉
上記の実施形態では、光テコを利用したZアライメントと、前眼部画像を利用したXYアライメントとを実行している。これの代わりに適用可能なアライメント手法の例を以下に説明する。
【0132】
本変形例では、互いに異なる方向から前眼部Eaを撮影して取得された2以上の撮影画像に基づいて3次元的なアライメント(XYZアライメント)を実行する。これを実現するための構成の例を図5A図5B及び図6に示す。図5A及び図5Bは、本変形例に係る眼科装置の外観の例を示している。図6に示す構成は、図2に示す構成の代わりに適用可能である。
【0133】
本変形例に係る眼科装置の構成は、例えば、2つの前眼部カメラ300A及び300Bが設けられている点、アライメント処理部140の代わりにアライメント処理部140Aが設けられている点、並びに、アライメント光源61及びイメージセンサー62を有しない点を除いて、上記実施形態の眼科装置1の構成と同じであってよい。ただし、本変形例に係る眼科装置がアライメント光源61及びイメージセンサー62を有することを排除するものではない。以下の説明において、特に言及しない限り、眼科装置1の説明と同じ符号が使用される。
【0134】
変形例に係る眼科装置は、被検者の顔を支持するための顎受け及び額当てを備えている。上記実施形態の眼科装置1も同様であってよい。
【0135】
ベース310には、駆動系や処理系が格納されている。例えば、ベース310には、図1に示すユニット移動機構70及びコンピュータ100が格納されている。
【0136】
ベース310上に設けられた筐体320には、光学系や駆動系が格納されている。例えば、筐体320には、図1に示す検査ユニット2が格納されている。
【0137】
筐体320の前面に突出して設けられたレンズ収容部330には、少なくともレンズ41が収容されている。
【0138】
図1に示す表示デバイス80は、筐体320に設けられていてよい。また、操作デバイス90は、ベース310及び筐体320の少なくとも一方に設けられていてよい。
【0139】
筐体320の前面には、2つの前眼部カメラ300A及び300Bが設けられている。2つの前眼部カメラ300A及び300Bは、互いに異なる2つの方向(互いに異なる2つの位置)から被検眼Eの前眼部Eaを撮影する。
【0140】
2つの前眼部カメラ300A及び300Bのそれぞれは、CCDイメージセンサー又はCMOSイメージセンサーなどの撮像素子を含む。本変形例では、筐体320の被検者側の面に2つの前眼部カメラ300A及び300Bが設けられている。図5Aに示すように、2つの前眼部カメラ300A及び300Bは、レンズ41を通過する光路から外れた位置に設けられている。
【0141】
本変形例では、2つの前眼部カメラ300A及び300Bが設けられているが、前眼部カメラの個数は2以上の任意の個数であってよい。ただし、3次元アライメントのための演算の処理負荷を考慮すると、異なる2方向から前眼部を撮影可能な構成であれば十分である(しかし、これに限定されるものではない)。或いは、移動可能な前眼部カメラを設け、互いに異なる2以上の位置から順次に前眼部撮影を行うようにしてもよい。
【0142】
本変形例では前眼部撮影系30とは別個に2つの前眼部カメラ300A及び300Bが設けられているが、2以上の前眼部カメラのうちの1つが前眼部撮影系30であってもよい。
【0143】
2以上の前眼部カメラが設けられる場合、互いに異なる2以上の方向から実質的に同時に前眼部を撮影することができる。「実質的に同時」とは、2以上の前眼部カメラによる撮影タイミングが同時である場合に加え、例えば、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレが介在する場合も許容されることを示す。このような実質的同時撮影を行うことで、被検眼が実質的に同じ位置及び向きにあるときの2以上の前眼部画像を取得することが可能になる。
【0144】
2以上の前眼部カメラによる撮影は、動画撮影でも静止画撮影でもよい。動画撮影の場合、撮影開始タイミングを合わせるよう制御したり、フレームレートや各フレームの撮影タイミングを制御したりすることにより、上記のような実質的に同時の前眼部撮影を実現することができる。一方、静止画撮影の場合、撮影タイミングを合わせるよう制御を行うことによって、実質的に同時の前眼部撮影を実現することができる。
【0145】
2つの前眼部カメラ300A及び300Bにより実質的に同時に取得された2つの前眼部画像は、コンピュータ100に送られる。
【0146】
アライメント処理部140Aは、2つの前眼部カメラ300A及び300Bにより実質的に同時に得られた2つの撮影画像(前眼部画像)を解析することで、被検眼Eの3次元位置を求める。
【0147】
この解析は、例えば、米国特許出願公開第2015/0085252号に開示されているように、特徴位置の特定と、3次元位置の算出とを含んでいてよい。なお、これら処理の前に、2つの前眼部カメラ300A及び300Bのそれぞれにより得られた撮影画像の歪みを補正する処理を行ってもよい。
【0148】
特徴位置の特定において、アライメント処理部140Aは、例えば、2つの前眼部カメラ300A及び300Bにより実質的に同時に取得された2つの前眼部画像のそれぞれを解析することで、前眼部Eaの所定の特徴部位に相当する当該撮影画像中の位置(特徴位置と呼ぶ)を特定する。この特徴部位は、典型的には瞳孔中心(又は瞳孔重心)である。
【0149】
瞳孔中心の位置を特定するために、まず、アライメント処理部140Aは、撮影画像の画素値(例えば輝度値)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。
【0150】
次に、アライメント処理部140Aは、特定された瞳孔領域の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭(又は、その近似円若しくは近似楕円)の中心位置を特定し、これを瞳孔中心とすることができる。
【0151】
3次元位置の算出において、アライメント処理部140Aは、2つの前眼部カメラ300A及び300Bのそれぞれの位置と、上記処理で特定された2つの撮影画像中の特徴位置とに基づいて、被検眼Eの特徴部位の3次元位置を算出する。この演算は、米国特許出願公開第2015/0085252号に記載されているように、三角法を用いて行われる。
【0152】
アライメント処理部140Aは、このようにして算出された被検眼Eの3次元位置に基づいて、光学系の光軸が被検眼Eの軸に一致するようにユニット移動機構70の制御を行い(XYアライメントに相当する)、且つ、被検眼Eと光学系との間の距離が既定のワーキングディスタンスに一致するようにユニット移動機構70の制御を行う(Zアライメントに相当する)。
【0153】
〈作用・効果〉
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置の作用及び効果について説明する。
【0154】
例示的な実施形態に係る眼科装置は、照明系と、干渉撮影系と、前眼部撮影系と、第1光路結合素子と、制御部とを含む。
【0155】
照明系は、光源から出力された照明光を被検眼の前眼部に投射する。上記の例示においては、照明系10が照明系に相当する。照明系10は、照明光源11から出力された照明光を前眼部Eaに投射するように構成されている。
【0156】
干渉撮影系は、照明系により前眼部に投射された照明光によって角膜上に形成される干渉模様を撮影する。上記の例示においては、干渉撮影系20が干渉撮影系に相当する。干渉撮影系20は、照明系10により前眼部Eaに投射された照明光によって角膜Ec上に形成される干渉模様を撮影することで干渉像を取得する。
【0157】
前眼部撮影系は、照明系により照明光が投射されている前眼部を撮影する。上記の例示においては、前眼部撮影系30が前眼部撮影系に相当する。前眼部撮影系30は、照明系10により照明光が投射されている前眼部Eaを撮影する。前眼部撮影系30は、前眼部Eaの広い範囲を正面から撮影するように構成されている。
【0158】
第1光路結合素子は、干渉撮影系の光路と前眼部撮影系の光路とを結合する。上記の例示においては、光路結合素子51が第1光路結合素子に相当する。光路結合素子51は、干渉撮影系20の光路と前眼部撮影系30の光路とを結合するように構成されている。更に、光路結合素子51は、照明系10の光路と前眼部撮影系30の光路とを結合している。
【0159】
制御部は、干渉撮影系により取得された干渉像を前眼部撮影系により取得された前眼部画像に重ねて表示装置に表示させる。表示される干渉像は、干渉撮影系により取得された生画像でもよいし、これから得られた加工画像でもよい。表示装置は、眼科装置の要素であってもよいし、眼科装置の周辺機器であってもよい。
【0160】
上記の例示においては、コンピュータ100(特に表示処理部120)が制御部に相当する。コンピュータ100は、干渉撮影系20により取得された干渉像を前眼部撮影系30により取得された前眼部画像に重ねて表示デバイス80に表示させるように構成されている。
【0161】
このように構成された例示的な実施形態によれば、干渉撮影系と前眼部撮影系とが別々に設けられており、且つ、双方の光路が第1光路結合素子により互いに結合されているので、干渉撮影と前眼部撮影とをほぼ同時に行うことができる。これにより、眼球運動や体動に起因する干渉像と前眼部画像との間の位置ずれが生じるおそれを低減することができる。
【0162】
更に、例示的な実施形態によれば、干渉撮影系とは別に設けられた前眼部撮影系により、前眼部の広い範囲を撮影することが可能である。これにより、角膜の端部に発生する異常を見逃すおそれを低減することができ、また、検査を効率的に行うことが可能である。
【0163】
加えて、例示的な実施形態によれば、涙液の状態を表現する干渉像を前眼部画像に重ねて表示することができるので、涙液の異常の箇所や分布を前眼部画像に重ねて表示することが可能である。これにより、異常発生箇所を容易に(直感的に)把握可能な態様でユーザに提示することができる。
【0164】
以上のように、例示的な実施形態によれば、涙液の状態の異常発生箇所を前眼部の広い範囲にわたり良好な位置精度で提示することが可能になる。
【0165】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、第1光路結合素子に対して被検眼の側に配置された第1レンズ群と、第1光路結合素子に対して被検眼の反対側に配置された第2レンズ群とを更に含んでいてよい。ここで、第1レンズ群及び第2レンズ群は、干渉撮影系の対物レンズとして機能するように構成されてよく、第1レンズ群は、前眼部撮影系の対物レンズとして機能するように構成されてよい。
【0166】
上記の例示においては、2つのレンズ41及び42が第1レンズ群に相当し、2つのレンズ43及び44が第2レンズ群に相当する。更に、4つのレンズ41~44が干渉撮影系22の対物レンズとして機能しており、且つ、2つのレンズ41及び42が前眼部撮影系30の対物レンズとして機能している。
【0167】
幾つかの例示的な実施形態において、前眼部撮影系に含まれるレンズのうち最も第1光路結合素子の側に位置するレンズが、第1レンズ群の焦点位置又はその近傍に配置されていてよい。
【0168】
上記の例示においては、前眼部撮影系30に含まれるレンズ32のうち最も光路結合素子51の側に位置するレンズが、2つのレンズ41及び42からなる第1レンズ群の焦点位置又はその近傍に配置されている。
【0169】
このように構成された例示的な実施形態により、少なくとも次の2つの効果が奏される。第1に、干渉撮影系に関し、角膜の各位置に対して略垂直に照明光を入射させることができ、且つ、角膜の各位置からの反射光が、当該位置への照明光の入射経路と略同一の経路を逆向きに進行して検出されることができる。これにより、角膜の各位置に対応する照明光の経路とその反射光の経路とが略一致され、その結果、湾曲した角膜上の涙液の状態の分布を湾曲面に対し垂直方向から正確に捉えることが可能になる。
【0170】
第2に、前眼部撮影系に関し、第1光路結合素子の近くに前眼部撮影系を配置することができ、更に、第1レンズ群の後側焦点位置又はその近傍に前眼部撮影系(レンズ)を配置することができる。これにより、前眼部撮影系の撮影視野の拡大を図ることが可能になる。
【0171】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、照明系の光路と干渉撮影系の光路とを結合する第2光路結合素子を更に含んでいてよい。上記の例示においては、光路結合素子53が第2光路結合素子に相当する。光路結合素子53は、照明系10の光路と干渉撮影系20の光路とを結合するように構成されている。
【0172】
幾つかの例示的な実施形態において、第1光路結合素子及び第2光路結合素子のそれぞれはビームスプリッタであってよい。更に、干渉模様を撮影するための照明光の戻り光は、第1光路結合素子及び第2光路結合素子のそれぞれにより反射されて、干渉撮影系の撮像素子に導かれるように構成されていてよい。
【0173】
上記の例示においては、光路結合素子51及び光路結合素子53のそれぞれはビームスプリッタ(ハーフミラー等)である。更に、干渉模様を撮影するための照明光の戻り光は、光路結合素子51及び光路結合素子53のそれぞれにより反射されて、撮像素子に相当する干渉撮影カメラ23に導かれるように構成されていてよい。
【0174】
このように構成された例示的な実施形態によれば、光学系のコンパクト化を図りつつ、ビームスプリッタを透過する際の光の乱れを回避することができるので、角膜上に生じた干渉模様を高い確度で検出することが可能になる。
【0175】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、前眼部に投射される照明光の強度を変更する照明強度変更部を更に含んでいてよい。上記の例示においては、可変フィルタ14及び照明強度変更処理部130が照明強度変更部に相当する。
【0176】
このように構成された例示的な実施形態によれば、好適な強度の光を用いて検査を行うことができる。例えば、涙液層破壊時間(BUT)検査のように或る程度の時間が掛かる検査において、眩しさによって被検者が眼を閉じてしまうおそれを低減することができ、被検者への負担を軽減することもできる。
【0177】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、前眼部に投与された蛍光剤の励起光を照明光から生成するエキサイタフィルタと、この励起光を受けた蛍光剤が発する蛍光を選択的に通過させるバリアフィルタとを更に含んでいてよい。上記の例示においては、エキサイタフィルタ13がエキサイタフィルタに相当し、バリアフィルタ31がバリアフィルタに相当する。
【0178】
このように構成された例示的な実施形態によれば、前眼部の蛍光造影撮影を行うことができるので、角膜の状態や涙液の状態を好適に観察することが可能である。
【0179】
幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、アライメントのための要素を含んでいてよい。アライメントによって検査の容易化を図ることができる。アライメントのための構成の例を以下に挙げる。
【0180】
第1の例として、幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、投射系と、検出系と、第1アライメント部とを含んでいてよい。投射系は、第1光路結合素子から被検眼に向かう光路の光軸に対して傾斜した方向に沿って前眼部にアライメント光を投射する。検出系は、投射系により前眼部に投射されたアライメント光の反射光を検出する。第1アライメント部は、検出系からの出力に基づいて、当該光軸に沿う方向におけるアライメントを実行する。
【0181】
上記の例示においては、アライメント光源61、レンズ42、及びレンズ41が投射系に相当する。また、レンズ41、レンズ42、及びイメージセンサー62が検出系に相当する。更に、ユニット移動機構70及びアライメント処理部140が第1アライメント部に相当する。これら要素によってZアライメントが実現される。
【0182】
第1の例において、投射系は、アライメント光を出力するアライメント光源を含んでいてよい。また、検出系は、アライメント光の反射光を検出するイメージセンサーを含んでいてよい。更に、アライメント光源及びイメージセンサーは、第1光路結合素子に対して被検眼の反対側に配置されていてよい。
【0183】
上記の例示においては、アライメント光源61がアライメント光源に相当し、イメージセンサー62がイメージセンサーに相当する。更に、アライメント光源61及びイメージセンサー62は、光路結合素子51に対して被検眼Eの反対側、つまり前眼部撮影系30の側、に配置されている。光路結合素子51には切り欠き、開口、透光部等が形成されており、これを介して光が光路結合素子51を通過するように構成されていてよい。
【0184】
第2の例として、幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、第2アライメント部を更に含んでいてよい。第2アライメント部は、前眼部撮影系により取得された前眼部画像に基づいて、第1光路結合素子から被検眼に向かう光路の光軸に直交する方向におけるアライメントを実行する。
【0185】
上記の例示においては、ユニット移動機構70及びアライメント処理部140が第2アライメント部に相当する。これら要素によってXYアライメントが実現される。
【0186】
第3の例として、幾つかの例示的な実施形態に係る眼科装置は、2以上の撮影部と、第3アライメント部とを含む。2以上の撮影部は、互いに異なる方向から前眼部を撮影する。第3アライメント部は、2以上の撮影部によりそれぞれ取得された2以上の撮影画像に基づいて3次元アライメントを実行する。
【0187】
上記の例示においては、2つの前眼部カメラ300A及び300Bが2以上の撮影部に相当し、ユニット移動機構70及びアライメント処理部140Aが第3アライメント部に相当する。これら要素によって3次元アライメント(XYZアライメント)が実現される。
【符号の説明】
【0188】
1 眼科装置
2 検査ユニット
10 照明系
11 照明光源
13 エキサイタフィルタ
13A エキサイタフィルタ移動機構
14 可変フィルタ
20 干渉撮影系
23 干渉撮影カメラ
30 前眼部撮影系
31 バリアフィルタ
31A バリアフィルタ移動機構
32 レンズ
33 前眼部撮影カメラ
41、42、43、44 レンズ
51、53 光路結合素子
61 アライメント光源
62 イメージセンサー
70 ユニット移動機構
80 表示デバイス
100 コンピュータ
110 検査処理部
120 表示処理部
130 照明強度変更処理部
140 アライメント処理部

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6