(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023033985
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/06 20060101AFI20230306BHJP
B62D 25/02 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B60J5/06 A
B62D25/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140005
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】川久保 翔平
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB55
3D203BB57
3D203DA35
(57)【要約】
【課題】使用者がスライドドアを容易に閉めることができる構造を有した車両側部構造を提供する。
【解決手段】乗降口1aが形成された車体側部1と、乗降口1aを開閉するスライドドア2と、を含む車両側部構造を有する車両100は、被押圧部9を有する。スライドドア2は、車両前後方向の一方側へスライドすることで乗降口1aを全閉する閉位置に位置し、車両前後方向の他方側へスライドすることで乗降口1aを開放し且つ車体側部1の乗降口1aよりも前記他方側の外側面1d1に対向する開位置に位置する。被押圧部9は、スライドドア2の前記他方側の端部である開放側端部21における車両上下方向の所定範囲Rに設けられ、スライドドア2を前記他方側から前記一方側にスライドさせるための押圧力を受ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口が形成された車体側部と、
車両前後方向の一方側へスライドすることで前記乗降口を全閉する閉位置に位置し、車両前後方向の他方側へスライドすることで前記乗降口を開放し且つ前記車体側部の前記乗降口よりも前記他方側の外側面に対向する開位置に位置する、スライドドアと、
を含む、車両側部構造であって、
前記スライドドアの前記他方側の端部である開放側端部における車両上下方向の所定範囲に設けられ、前記スライドドアを前記他方側から前記一方側にスライドさせるための押圧力を受ける被押圧部を有することを特徴とする、車両側部構造。
【請求項2】
前記被押圧部は、前記開放側端部から車幅方向に突出した突出部を含む、請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記突出部は、前記開放側端部から車幅方向内側に突出した内側突出部からなる、請求項2に記載の車両側部構造。
【請求項4】
前記被押圧部は、前記開放側端部における車両前後方向の前記他方側の端面であるドア端面のうちの前記所定範囲の周辺の滑り抵抗よりも高い滑り抵抗を有するスリップガード部を含み、
前記スリップガード部は、前記ドア端面のうちの車両上下方向の前記所定範囲と、前記突出部における車両前後方向の前記他方側の端面である突出部端面と、に亘る範囲に形成されている、請求項2又は3に記載の車両側部構造。
【請求項5】
前記所定範囲は、前記開放側端部における車両上下方向の一部の範囲に設定されており、
前記車体側部における前記乗降口の周縁のうちの前記他方側の縁部である対象縁部は、前記スライドドアが前記閉位置にあるときに、前記被押圧部のうちの前記スライドドアの車幅方向外側のドア外側面よりも車幅方向内側の内側被押圧部分と対向する対向領域を有しており、
前記対向領域は、前記対象縁部における当該対向領域が形成されていない領域よりも車両前後方向について前記他方側に拡張されている、請求項2~4のいずれか一つに記載の車両側部構造。
【請求項6】
前記被押圧部は、前記開放側端部における車両前後方向の前記他方側の端面であるドア端面のうちの前記所定範囲の周辺の滑り抵抗よりも高い滑り抵抗を有するスリップガード部を含み、
前記スリップガード部は、前記ドア端面のうちの車両上下方向の前記所定範囲に形成されている、請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項7】
前記スライドドアの車幅方向外側のドア外側面には、ドアハンドルが設けられており、
前記所定範囲は、前記開放側端部における車両上下方向について前記ドアハンドルよりも上方に設定されている、請求項1~6のいずれか一つに記載の車両側部構造。
【請求項8】
前記スライドドアの車幅方向外側のドア外側面には、ドアハンドルが設けられており、
前記所定範囲は、前記スライドドアの前記開放側端部における車両上下方向について前記ドアハンドルよりも下方に設定されている、請求項1~6のいずれか一つに記載の車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部の乗降口を開閉可能なスライド式のサイドドア(以下、「スライドドア」という)を含む車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スライドドアは、車体側部に延在するレールに沿ってスライドすることにより車体側部の乗降口を開閉する。このようなスライドドアを含む車両側部構造の一例として、特許文献1に開示された自動車の側部構造が知られている。この特許文献1の側部構造では、スライドドアは、車両前後方向の前方へスライドすることで乗降口を全閉する閉位置に位置し、車両前後方向の後方へスライドすることで乗降口を開放し且つ車体側部における乗降口よりも後方の外側面に対向する閉位置に位置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両側部構造において、車両の乗員等の使用者がスライドドアを開閉するためのドアハンドルは、スライドドアのドア外側面における車両前後方向の前方側(換言すると、スライド方向についてドア閉方向側)の部分に配置されることが多い。そして、例えば、手動開閉式のスライドドアと車体後部のバックドアが開放された状態で、使用者が車両後方において荷物の出し入れ等の作業を行う場合がある。このような作業が完了した場合に、使用者は例えばバックドアを閉めた直後に開放状態のスライドドアを閉めることが多い。しかし、使用者が手動開閉式のスライドドアを閉めるためには、使用者は車両後方の位置から車両側方におけるスライドドアのドアハンドル側の位置まで移動する必要がある。このようなスライドドアの開閉のための使用者の移動は、例えば、貨物用の車両の使用者において頻繁になされることになり、作業負荷の軽減等のための工夫が求められ得る。なお、スライドドアが自動で開閉可能な自動開閉式のドアである場合には、上述した使用者の移動は、例えば、自動開閉用の駆動機構の故障時等になされ得る。
【0005】
そこで、本発明は、使用者が開放状態のスライドドアを当該スライドドアよりもスライド方向について開放側の位置から容易に閉めることができる構造を有した車両側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の一態様によると、乗降口が形成された車体側部とスライドドアとを含む車両側部構造が提供される。前記スライドドアは、車両前後方向の一方側へスライドすることで前記乗降口を全閉する閉位置に位置し、車両前後方向の他方側へスライドすることで前記乗降口を開放し且つ前記車体側部の前記乗降口よりも前記他方側の外側面に対向する開位置に位置する。前記車両側部構造は、前記スライドドアの前記他方側の端部である開放側端部における車両上下方向の所定範囲に設けられる被押圧部を有する。前記被押圧部は、前記スライドドアを前記他方側から前記一方側にスライドさせるための押圧力を受ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様による前記車両側部構造では、前記スライドドアの前記他方側の端部である開放側端部における車両上下方向の所定範囲に設けられる被押圧部によって、前記スライドドアを前記他方側から前記一方側にスライドさせるための押圧力を受けることができる。これにより、車両の乗員等の使用者は、前記開放側端部及び前記被押圧部よりも車両前後方向の前記他方側(つまり、開放側)の位置から、前記開位置にある前記スライドドアの前記開放側端部に設けられた前記被押圧部に対して、前記スライドドアを車両前後方向の前記他方側から前記一方側にスライドさせるための押圧力(つまり、ドア閉方向の押圧力)を、容易に加えることができる。その結果、使用者は、前記被押圧部を用いてスライドドアをスライドドアよりもスライド方向について開放側の位置から容易に閉めることができる。
【0008】
このようにして、本発明は、使用者が開放状態のスライドドアを当該スライドドアよりもスライド方向について開放側の位置から容易に閉めることができる構造を有した車両側部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両側部構造が適用された車両の側面図である。
【
図2】
図1に示すA-A線における部分断面図である。
【
図3】前記車両側部構造の被押圧部を含む部分の拡大断面図である。
【
図4】前記被押圧部の変形例(変形例1)を説明するための部分断面図である。
【
図5】前記被押圧部の変形例(変形例2)を説明するための部分断面図である。
【
図6】前記被押圧部の変形例(変形例3)を説明するための部分断面図である。
【
図7】前記被押圧部の変形例(変形例4)を説明するための部分断面図である。
【
図8】前記被押圧部の変形例(変形例5)を説明するための部分断面図である。
【
図9】前記被押圧部の変形例(変形例6)を説明するための部分断面図である。
【
図10】前記被押圧部の変形例(変形例7)を説明するための部分断面図である。
【
図11】前記被押圧部の範囲の変形例(変形例8)を説明するための図である。
【
図12】前記被押圧部の範囲の変形例(変形例9)を説明するための図である。
【
図13】前記被押圧部の範囲の変形例(変形例10)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る車両側部構造が適用された車両100の側面図である。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向で車両前方を示し、矢印O方向は車両幅方向(車幅方向)で車両外方を示し、矢印U方向は車両上下方向で車両上方を示している。以下の説明における「前」及び「後」は車両前後方向における前及び後に対応し、「上」及び「下」は車両上下方向における上及び下に対応している。
【0011】
[車両側部構造の概要]
図1に示すように、車両100は、乗降口1aが形成された車体側部1と、車体側部1に設けられるスライド開閉式のサイドドアであるスライドドア2と、スライドドア2のスライド用の複数のレール(3,4)と、を備えている。本実施形態では、車両100は、複数のレール(3,4)として、センターレール3と下レール4とを有している。
【0012】
車体側部1は、車両100の車体のうちの車幅方向外側の部分である。
図1では、車室内の乗員等の使用者が車両前後方向の前方に向かって視たときの車体の右側部が車体側部1として示されている。乗降口1aは後部席にアクセスするために車体側部1に形成された開口であり、車体側部1には、この後部席用の乗降口1a以外に運転席用の乗降口1bも形成されている。そして、車体側部1には、後部席用の乗降口1aと運転席用の乗降口1bを仕切るように上下方向に延在するセンターピラー1cが形成されている。また、車体側部1における後部席用の乗降口1aよりも車両前後方向の後方には、車体側部1の一部としてクォーターパネル1dが設けられている。
【0013】
車体側部1の後部席用の乗降口1aはスライドドア2によって開閉される。車体側部1における後部席用の乗降口1aを形成する周縁5は、車幅方向外側から視た平面視では幅を有した環状に視認される形態で形成され、乗降口1aの周囲を取り囲んでいる。また、車両100は、運転席用の乗降口1bを開閉するためのヒンジ開閉式のサイドドアであるフロントサイドドア6も備えている。フロントサイドドア6はヒンジ(図示省略)を支点として車幅方向に回動することにより乗降口1bを開閉する。
【0014】
スライドドア2は、車体側部1に形成された二つの乗降口1a,1bのうちのリア側の乗降口1aを開閉するためのサイドドアである。本実施形態に係る車両側部構造は主に車両100の車体側部1におけるリア側(後部席用)の乗降口1a及びスライドドア2を含む部分の構造に適用されている。なお、特に限定されるものではないが、本実施形態では、スライドドア2は手動で開閉される手動開閉式のドアであるものとする。
【0015】
スライドドア2は、車両前後方向の一方側へスライドすることで乗降口1aを全閉する閉位置(
図1及び後述する
図2及び
図3に実線で示す位置を参照)に位置し、車両前後方向の他方側へスライドすることで乗降口1aを開放し且つ車体側部1の乗降口1aよりも他方側の外側面1d1に対向する開位置(
図1及び後述する
図3に破線で示す位置を参照)に位置するように構成されている。
【0016】
本実施形態では、スライドドア2のドア閉方向である車両前後方向の「一方側」は車両前後方向の前方側であり、スライドドア2のドア開方向である車両前後方向の「他方側」は車両前後方向の後方側である。つまり、スライドドア2は、車両前後方向の前方へスライドすることで閉位置に位置し、車両前後方向の後方へスライドすることで開位置に位置する。具体的には、閉位置では、スライドドア2の車幅方向外側のドア外側面2aと、車体側部1における乗降口1aよりも後方(他方側)に位置するクォーターパネル1dの外側面1d1と、センターピラー1cの車幅方向外側のピラー外側面1c1は互いに車幅方向について出入りなく揃っており、これらの面(2a,1d1,1c1)は車両100の側部の意匠面の一部を構成している。開位置では、スライドドア2の大半の部分は乗降口1aの後方のクォーターパネル1dの外側面1d1に対向している。
【0017】
スライドドア2の車両前後方向の後方側の端部(つまり、後端部)である開放側端部21は、閉位置において、車体側部1における乗降口1aの周縁5のうちの車両前後方向の後方側の縁部(つまり、後側縁部)である対象縁部51の少なくとも一部を車幅方向外側から覆うフランジとしての機能を有している。つまり、スライドドア2の開放側端部21は、車両前後方向に所定の長さを有しており、スライドドア2における他の部分よりも車幅方向に薄肉のフランジ状に形成されている。そして、車両100では、閉位置にあるスライドドア2のフランジ状の開放側端部21と乗降口1aの周縁5のうちの対象縁部51との間に隙間が設けられている。
【0018】
スライドドア2のドア外側面2aには、ドアハンドル2bが設けられている。具体的には、スライドドア2は閉位置にあるときに、スライドドア2に設けられたドアラッチ(図示省略)に車体側部1に設けられたストライカ(図示省略)が係合することによって、ドア閉状態が維持される。そして、ドアハンドル2bが使用者により操作されると、ドア閉状態が解除されるようになっている。本実施形態では、ドアハンドル2bは、ドア外側面2aにおける車両前後方向の前方側(前記一方側)の部分に設けられている。これにより、乗員がドアハンドル2bを把持してスライドドアを閉位置と開位置との間で移動させる際、把持する手が乗降口2bと車幅方向で重なる位置またはおよび乗降口2bと前後方向で隣接する位置に位置することができるので、乗員が乗降口1aから乗車しやすい。
【0019】
開放側端部21は、スライドドア2の大半の部分を構成するドア本体部22の後端から後方に突出しており、ドア本体部22の車幅方向についての厚み(幅)よりも薄い厚み(薄肉)で形成されている。このドア本体部22は、車幅方向に所定幅を有している。また、車体側部1の対象縁部51は車幅方向内側に退避するように形成されており、これにより、対象縁部51の大半の部分が閉位置にあるスライドドア2の車幅方向内側の内側面よりも車幅方向内側に位置するようになっている。なお、スライドドア2及び対象縁部51についてのさらに詳しい構造については後に詳述する。
【0020】
センターレール3及び下レール4は、それぞれ、車体側部1に延在しており、スライドドア2を閉位置と開位置との間でスライド可能に支持するレールである。そして、センターレール3及び下レール4は、スライドドア2が閉位置から車両前後方向の後方側にスライドしつつ車幅方向外側に退避する移動軌跡M(後述の
図2及び
図3参照)を通るように、車体側部1に設けられている。スライドドア2は、これらのレール(3,4)によって、開放側端部21と車体側部1の対象縁部51との間に所定の隙間を空けた状態でスライド可能に支持されている。
【0021】
センターレール3は、車体側部1における車両上下方向の中間位置において、車体側部1における乗降口1aよりも車両前後方向の後方の外側面1d1(つまり、クォーターパネル1dの外側面1d1)から乗降口1aの周縁5のうちの車両前後方向の後方側の対象縁部51に亘って延在している。
【0022】
下レール4は、乗降口1aの周縁5のうちの車両上下方向の下縁部52に延在しており、周縁5のうちの前縁部53側の部分(つまり、閉方向側の端部)が車幅方向内側に偏向している。より具体的には、下レール4は、下縁部52の車両前後方向に直線的に延びた後、前縁部53側の部分において車両前後方向の前方に向かうにしたがって車幅方向内側に向かうように湾曲した湾曲レール部41を有している。
【0023】
図2は、
図1に示すA-A線における部分断面図である。ただし、
図2では、図の簡略化のためセンターレール3の外形が二点鎖線で示されている。そして、センターレール3は、
図2に示すように、スライドドア2が閉位置から車両前後方向の後方側にスライドしつつ車幅方向外側に退避するように、車体側部1における乗降口1aの周縁5において傾斜して延びる傾斜レール部31を有する。つまり、センターレール3は、対象縁部51側の部分(つまり、閉方向側の端部)が車幅方向内側に偏向している。より具体的には、センターレール3は、車体側部1のクォーターパネル1dの外側面1d1において車幅方向内側に凹み且つ車両前後方向に延在する凹部内を車両前後方向に直線的に延びた後、対象縁部51に対応する部分において車両前後方向の前方に向かうにしたがって車幅方向内側に向かうように湾曲している。この湾曲した湾曲レール部32に連続して延びるように、傾斜レール部31が延在している。
【0024】
車両100は、スライドドア2のドア本体部22とセンターレール3とを連結する第1連結ユニット7と、ドア本体部22と下レール4とを連結する第2連結ユニット8とを有している。各連結ユニット(7,8)は例えば同様の構造を有している。第1連結ユニット7について主に説明すると、第1連結ユニット7は、ドア本体部22の内側面に取り付けられたアーム71と、センターレール3に係合し且つセンターレール3に沿って転動(摺動)可能なローラ72と、ローラ72の軸部72aを車両上下方向に延びる揺動軸73aを支点として揺動可能にアーム71の先端に連結する揺動部73と、を有している。
【0025】
[車両側部構造の詳細]
車両100において、車体側部1における乗降口1aの周縁5の対象縁部51(ここでは、後側縁部)は、センターレール3の傾斜レール部31が延在する傾斜したレール用傾斜面511を有する内側縁部51aと、内側縁部51aよりも車体側部1の外側面1d1側の外側縁部51bとに区分される。そして、スライドドア2は、前述したように、開放側端部21と、ドア本体部22とを有している。
【0026】
対象縁部51の内側縁部51aは、対象縁部51における乗降口1aを実質的に形成する部分であり、内側縁部51aの前端は乗降口1aの開口輪郭の一部を形成する。レール用傾斜面511は、車両前後方向の前方から後方に向かうにしたがってスライドドア2のドア外側面2aに近づくように傾斜している。
【0027】
対象縁部51の外側縁部51bは、閉位置にある開放側端部21の車幅方向内側のフランジ内側面21aにおける少なくとも先端側の部分と対向する対向面512と、対向面512と車体側部1の外側面1d1との間を接続する接続面513と、を有している。
【0028】
具体的には、対向面512は、車両前後方向及び車両上下方向に延びており、開放側端部21のフランジ内側面21aにおける後述するフランジ先端部211と平行になっている。対向面512のうちの車両前後方向の前方側の部分が開放側端部21(フランジ先端部211)のフランジ内側面21aの一部と対向している。そして、対向面512は、車体側部1の外側面1d1に対して車幅方向内側に所定の深さ分だけ退避した位置に位置している。接続面513は、対向面512の車両前後方向の後端と、車体側部1の乗降口1aよりも車両前後方向の後方側の外側面1d1の車両前後方向の前端との間を接続している。
【0029】
スライドドア2のフランジ状の開放側端部21は、閉位置において対象縁部51の接続面513に対向する先端(換言すると、後述するドア端面2c)を有するフランジ先端部211と、フランジ先端部211から連続して車両前後方向の前方側(ドア本体部22側)に延び且つフランジ先端部211の対向面512側の面(フランジ内側面21a)よりも車幅方向内側に位置する拡幅部212aを有するフランジ基端部212と、を有している。
【0030】
スライドドア2のドア本体部22は開放側端部21と連続して形成されている。そして、ドア本体部22は、開放側端部21と接続する接続部分221を有している。この接続部分221の車幅方向内側の面である接続部内側面221aは、開放側端部21側に向うにしたがって車幅方向外側に傾斜しており、閉位置において、対象縁部51の内側縁部51aのレール用傾斜面511と離隔して対向している。
【0031】
本実施形態では、対象縁部51の接続面513は、車両前後方向について前方側から後方側(前記一方側から前記他方側)に向かうほど閉位置にある開放側端部21(フランジ先端部211)の先端から離れる傾斜面として形成されている。そして、本実施形態では、接続面513は、センターレール3の傾斜レール部31と同一の傾斜方向に延びている。なお、接続面513は、傾斜レール部31よりも車幅方向に緩やかな傾斜方向に延びていてもよい。
【0032】
本実施形態では、対象縁部51は、対向面512における車両前後方向の前方側の部分に、車幅方向外側に突出する突起部514を有している。突起部514は、例えば、山形断面を有している。突起部514の先端は、車幅方向について閉位置にあるフランジ基端部212の拡幅部212aに対応する領域内であり、且つ、車両前後方向について閉位置にあるフランジ先端部211に対応する領域内である領域に位置している。
【0033】
ここで、車両100(車両側部構造)は、上述した主な要素(車体側部1、スライドドア2)に加えて、使用者によるスライド操作用の被押圧部9を有する。
図3は、被押圧部9を含む部分の拡大断面図であり、被押圧部9の作用を説明するための図でもある。
【0034】
被押圧部9は、
図3に示すように、スライドドア2の開放側端部21における車両上下方向の所定範囲R(
図1参照)に設けられ、スライドドア2を車両前後方向について後方側から前方側(前記他方側から前記一方側)にスライドさせるための押圧力(つまり、ドア閉方向の押圧力)を受ける部分である。この押圧力は、外力であり、例えば、使用者により加えられる力である。換言すると、被押圧部9は、スライドドア2の開放側端部21の所定範囲Rに設けられ、スライドドア2を閉方向にスライドさせるための外力を効率的且つ確実に受けるように形成された外力受け部(又は押圧力受け部)である。
【0035】
本実施形態では、被押圧部9が設けられる所定範囲Rは、開放側端部21における車両上下方向の一部の範囲に設定されている。具体的には、本実施形態では、被押圧部9が設けられる所定範囲Rは、スライドドア2の上端から下端に亘るドア外側面2aの全体における車両上下方向の中間部分に設けられたドアハンドル2bとの関係では、開放側端部21における車両上下方向についてドアハンドル2bよりも上方に設定されている。したがって、被押圧部9は、開放側端部21における車両上下方向の中間部分よりも上方に設けられている。なお、ドアハンドル2bは、換言すると、ドア外側面2aにおけるドアガラスとスライドドア2の下端との間に設けられている。
【0036】
本実施形態では、被押圧部9は、押圧力を受ける面積を拡大させるための突出部10と、滑りを抑制する(止める)ためのスリップガード部11とにより構成されている。
【0037】
突出部10は、開放側端部21から車幅方向(換言するとスライドドア2の厚み方向)に突出した部分である。図では、突出部10は開放側端部21(スライドドア2)と別体の部材として開放側端部21に設けられているが、これに限らず、開放側端部21と一体に形成されてもよい。
【0038】
本実施形態では、突出部10は、開放側端部21から車幅方向内側(換言するとスライドドア2の厚み方向の内側)に突出した内側突出部10aからなる。内側突出部10aは、開放側端部21のフランジ先端部211のフランジ内側面21aに設けられており、車両上下方向に所定範囲Rに亘って延在している。また、内側突出部10aは車両前後方向について開放側端部21における車両前後方向の後方側の端面であるドア端面2cに寄せて設けられている。このドア端面2cは、スライドドア2の車両前後方向の後端面でもある。そして、内側突出部10a(突出部10)の車両前後方向の後方側の端面である突出部端面10a1と開放側端部21(スライドドア2)のドア端面2cは、互いに車両前後方向について出入りなく揃っている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、内側突出部10aは一辺が傾斜した四角形状の断面を有して車両上下方向に延在している。
【0039】
被押圧部9が設けられたスライドドア2は、各レール(3,4)によって、内側突出部10aを含む被押圧部9と車体側部1との間に所定の隙間を空けた状態でスライド可能に支持されている。
【0040】
具体的には、スライドドア2が閉位置にあるときに、内側突出部10aの突出部端面10a1は対象縁部51の接続面513と車両前後方向に離隔しており、内側突出部10aの車幅方向内側の突出部内側面10a2は対象縁部51の対向面512と対向し、内側突出部10aの車両前後方向の前方側の端面である突出部背面10a3は対象縁部51の突起部514と対向している。
【0041】
そして、突起部514は、車両前後方向について、被押圧部9の内側突出部10aと開放側端部21のフランジ基端部212の拡幅部212aとの間に位置している。これにより、スライドドア2が閉位置にある状態で、開放側端部21及び内側突出部10aと対象縁部51の突起部514との間の隙間は、車幅方向に往復するラビリンス状の空間として形成されることになり、雨水等の乗降口1a側への侵入が効果的に抑制される。また、雨水等が侵入したとしても、侵入した雨水等の大半はフランジ基端部212の拡幅部212a(
図1参照)における内側突出部10aの突出部背面10a3に相対する端面に衝突することになるため、内側にさらに流れようとする雨水等の勢いを減衰させることができる。
【0042】
また、被押圧部9(内側突出部10a及びスリップガード部11)は、車両前後方向について接続面513と突起部514との間に位置している。これにより、スライドドア2が閉位置にある状態で、被押圧部9と対象縁部51との間の隙間についても、車幅方向に往復するラビリンス状の空間として形成される。したがって、被押圧部9と対象縁部51との間の隙間においても、雨水等の乗降口1a側への侵入が効果的に抑制される。
【0043】
内側突出部10aの突出部背面10a3は、車幅方向について内側から外側に向かうほど突出部端面10a1から離れるように傾斜している。突起部514における突出部背面10a3側の面は、突出部背面10a3と略同一の傾斜方向に延びている。したがって、スライドドア2の閉止時における突起部514と内側突出部10aとの接触が確実に防止されている。
【0044】
スリップガード部11は、開放側端部21(スライドドア2)のドア端面2cのうちの車両上下方向の所定範囲Rと突出部10(ここでは、内側突出部10a)の突出部端面10a1とに亘る範囲に形成されている。そして、スリップガード部11は、開放側端部21のドア端面2cのうちの所定範囲Rの周辺の滑り抵抗よりも高い滑り抵抗を有している。スリップガード部11によって、ドア端面2cのうちの所定範囲R及び突出部10の突出部端面10a1が覆われている。
【0045】
本実施形態では、スリップガード部11は、車両前後方向に所定の厚みを有した部材として設けられており、例えば、ドア端面2c及び突出部端面10a1に接着等により取り付けられている。スリップガード部11として適用される部材としては、仕上げ塗装等により滑り抵抗が比較的に低くなっているドア端面2cよりも滑り抵抗の高い表面を有した、樹脂、シリコン、ゴム(弾性体)等の適宜の材料を用いることができる。シリコンやゴム等の粘性の比較的に高い材料の滑り抵抗はドア端面2cよりも高い。
【0046】
本実施形態では、車体側部1の対象縁部51は、スライドドア2が閉位置にあるときに、被押圧部9のうちのスライドドア2のドア外側面2aよりも車幅方向内側の内側被押圧部分9aと対向する対向領域51Aを有している。そして、対象縁部51における対向領域51Aは、対象縁部51における対向領域51Aが形成されていない領域よりも車両前後方向について後方側(前記他方側)に拡張されている。換言すると、対象縁部51における対向領域51Aのうちの接続面513が、スライドするスライドドア2との干渉を回避するように、対象縁部51における対向領域51Aが形成されていない領域のうちの接続面513よりも後方側に位置(退避)している。さらにいうと、対象縁部51と外側面1d1との境界のうちの車両上下方向について所定範囲Rに対応する部分は、車幅方向で視た平面視で、前記境界のうちの車両上下方向について所定範囲Rに対応する部分以外の部分よりも後方に位置している。
【0047】
本実施形態では、被押圧部9はドア外側面2aよりも車幅方向外側に位置する部分を有していない。したがって、ここでは、内側被押圧部分9aは、被押圧部9の全体、つまり、突出部10及びスリップガード部11の全体である。そして、対向領域51Aは、スライドドア2が閉位置にあるときに、突出部10及びスリップガード部11からなる被押圧部9の全体である内側被押圧部分9aと対向している。具体的には、スライドドア2が閉位置にあるときに、対向領域51Aの対向面512は内側突出部10aの突出部内側面10a2及びスリップガード部11の車幅方向内側の面と対向し、対向領域51Aの接続面513はスリップガード部11の車両前後方向の後端面と対向し、対向領域51Aの突起部514の車両前後方向の後側の面は内側突出部10aの突出部背面10a3と対向している。
【0048】
本実施形態では、車両100の車体の後部角部における車両上下方向の少なくとも被押圧部9に対応する範囲には、
図1及び
図3に示すように、使用者の被押圧部9へのアクセスを容易にするための逃げ部1eが設けられている。逃げ部1eは、図では、車体側部1の外側面1d1の後端部から車幅方向内側に向かって傾斜して車体後部まで延びる傾斜部として形成されている。なお、逃げ部1eは、傾斜部に限らず、車幅方向内側に凹み且つ車両前後方向の後方に開口するように切り欠かれた凹部であってもよい。また、
図1及び
図3に示すように、閉位置にあるスライドドア2の車両前後方向の後端面であるドア端面2cは車体後部(バックドア)よりも車両後方に位置している。
【0049】
次に、本実施形態に係る車両100に適用した車両側部構造における被押圧部9の作用について主に
図3を参照して説明する。
【0050】
車両100では、スライドドア2の開放側端部21における車両上下方向の所定範囲Rに設けられる被押圧部9によって、ドア閉方向の押圧力を受けることができる。これにより、乗員等の使用者は、開放側端部21及び被押圧部9よりも車両前後方向の開放側の位置から、開位置にあるスライドドア2の開放側端部21に設けられた被押圧部9に対して、ドア閉方向の押圧力を、容易に加えることができる。その結果、使用者は、被押圧部9を用いてスライドドア2をスライドドア2よりもスライド方向について開放側(本実施形態では後方)の位置から容易に閉めることができる。
【0051】
このようにして、本実施形態に係る車両100によれば、使用者が開放状態のスライドドア2をスライドドア2よりもスライド方向について開放側の位置から容易に閉めることができる構造を有した車両側部構造を提供することができる。
【0052】
本実施形態では、被押圧部9は、スライドドア2の開放側端部21から車幅方向に突出した突出部10を含む。これにより、被押圧部9が設けられる車両上下方向の所定範囲Rにおいて、スライドドア2の開放側の部分の実質的な面積が突出部10の車幅方向の突出量の分だけ拡大(増大)し、押圧力を受けることができる面積が増大する。その結果、使用者がスライドドア2に対して閉方向の押圧力を加え易くなる。
【0053】
本実施形態では、突出部は開放側端部21から車幅方向内側に突出した内側突出部10aからなる。したがって、スライドドア2が閉位置にあるとき、突出部10がスライドドア2の車幅方向内側に位置することになる。これにより、押圧力を受ける面積の増大を図りつつ、突出部10がスライドドア2の車幅方向外側に位置する場合(後述する
図5参照)と比較すると、車両走行時に生じ得る空気抵抗を低減させることができる。
【0054】
本実施形態では、被押圧部9は、ドア端面2cの所定範囲Rと突出部端面10a1とに亘る範囲に形成され、ドア端面2cのうちの所定範囲Rの周辺の滑り抵抗よりも高い滑り抵抗を有するスリップガード部11を有している。これにより、使用者がスリップガード部11に触れてスライドドア2を閉める際に、スリップガード部11に触れる使用者の身体の一部がスリップガード部11に対してスリップしてしまい、使用者がスライドドア2を閉め損なうといったことが抑制される。その結果、使用者はより確実にスライドドア2を閉めることができるようになる。
【0055】
本実施形態では、車体側部1の対象縁部51はスライドドア2が閉位置にあるときに、被押圧部9のうちの内側被押圧部分9aと対向する対向領域51Aを有しており、この対向領域51Aは対象縁部51における対向領域51Aが形成されていない領域よりも車両前後方向について後方側(前記他方側、ドア開方向側)に拡張されている。これにより、押圧力を受ける面積の増大を図りつつ、内側被押圧部分9aと車体側部1との干渉を確実に防止することができる。
【0056】
本実施形態では、被押圧部9が設けられる所定範囲Rは、開放側端部21における車両上下方向についてドアハンドル2bよりも上方に設定されている。これにより、被押圧部9が比較的に高い位置に設けられることになる。その結果、立った状態の使用者が、上半身の一部(例えば、腕、肩、肘等)を被押圧部9(本実施形態ではスリップガード部11)に押し付ける動作等を行うことによって、スライドドア2を容易に閉めることができる。したがって、使用者が両手で荷物を持つなどにより使用者の両手が塞がっている場合であっても、使用者は荷物を持って立った状態で、スライドドア2を閉めることができる。
【0057】
本実施形態では、被押圧部9が設けられる所定範囲Rがスライドドア2のドア外側面2aにおけるドアガラスと車両前後方向において重なる範囲に設定されている。これにより、より一層、立った状態の使用者が、上半身の一部を被押圧部9に押し付ける動作等を行うことによって、スライドドア2を容易に閉めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、突出部10(内側突出部10a)の突出部背面10a3は、車幅方向について内側から外側に向かうほど突出部端面10a1から離れるように傾斜している。これにより、突出部10における開放側端部21側の部分の車両前後方向の幅が増えるため、被押圧部9の一部である突出部10に伝達された押圧力(荷重)が開放側端部21側に効率的に伝達される。
【0059】
本実施形態では、車両100の車体の後部角部に逃げ部1eが設けられている。これにより、使用者は被押圧部9にアクセスし易くなり、被押圧部9に対して車両後方から容易に押圧力を加えることができる。また、
図1及び
図3に示すように、閉位置にあるスライドドア2の車両前後方向の後端面であるドア端面2cは車体後部(バックドア)よりも車両後方に位置しているため、使用者は被押圧部9に押圧力をより容易に加えることができる。
【0060】
[変形例]
次に、本実施形態に係る車両100に適用された車両側部構造の変形例について、説明する。
【0061】
図4~
図10は被押圧部9についての変形例(変形例1~変形例7)を説明するための
図3に対応する部分断面図である。
【0062】
[変形例1]
突出部10の突出方向は、車幅方向内側に限らない。例えば、
図4に示すように、突出部10は、開放側端部21から車幅方向の両側に突出していてもよい。この場合、突出部10は、例えば、内側突出部10aと、開放側端部21から車幅方向外側に突出した外側突出部10bとにより構成され、突出部10の突出部端面10a1は内側突出部10a側の部分と外側突出部10b側の部分とからなり、スリップガード部11は外側突出部10bの範囲まで延長される。そして、
図4に示す変形例では、被押圧部9これにより、被押圧部9における押圧力を受ける面積が更に増大する。しかも、開放側端部21が車幅方向において内側突出部10aと外側突出部10bとにより挟持されるので、被押圧部9が押圧力を受けた場合に、被押圧部9が位置ずれしにくい(特に開放側端部21に対して被押圧部9を着脱可能に形成する場合)。また、突出部10及びスリップガード部11からなる被押圧部9を弾性体で形成し、開放側端部21を内側突出部10aと外側突出部10bで挟持するようにすれば、オプション部品として、容易に後付けできるように構成することもできる。
【0063】
[変形例2]
また、
図5に示すように、突出部10は開放側端部21から車幅方向外側に突出した外側突出部10bからなるものとしてもよい。この場合、スリップガード部11はドア端面2cの所定範囲Rと突出部10としての外側突出部10bの突出部端面10a1とを覆うように設けられる。これにより、スリップガード部11の一部と突出部10が開放側端部21よりも車幅方向外側に配置されるので、使用者が被押圧部9を後方(前記他方側)から押圧し易くなる。
【0064】
[変形例3]
突出部10の断面形状は、一辺が傾斜した四角形状の断面に限らず、適宜の断面形状が適用される。
図6及び
図7を参照して、内側突出部10aの変形例の一例について説明すると、例えば、
図6に示すように、内側突出部10aは、開放側端部21に対して車幅方向内側に張り出した薄板状部材からなり、矩形薄板状の断面を有して車両上下方向に延在してもよい。この場合、
図6に示すように、薄板状の内側突出部10aを突出部背面10a3側から補強する板状のリブ12が車両上下方向に間隔を空けた複数の箇所に設けられるとよい。詳しくは、板状のリブ12は、特に限定されるものではないが、
図6に示すように、車両上方から視た平面視で直角三角形状に形成されている。
【0065】
[変形例4]
また、
図7に示すように、内側突出部10aは、曲面を有した扁平形状の断面を有して車両上下方向に延在してもよい。そして、ゴムのような弾性体により扁平形状の内側突出部10aを形成する場合、スライドドア2が閉止位置にあるときに、内側突出部10aと突起部514を接触するように構成すれば、乗降口1a側への雨水等の侵入を好適に抑制することもできる。また、突出部10は、ドア端面2cを覆う薄板状の取付板部10a4を有してもよい。この場合、例えば、突出部10は取付板部10a4に形成された締結用孔に挿通されるボルト等の締結具13により開放側端部21のドア端面2cに取り付けられ、この状態で、スリップガード部11が突出部10の突出部端面10a1に取り付けられてもよい。つまり、突出部10及びスリップガード部11からなる被押圧部9は、オプション部品として、容易に後付けできるように構成されていてもよい。なお、
図6及び
図7に示す変形例は外側突出部10bについて適用されてもよい。
【0066】
また、
図4~
図7に示した変形例(変形例1~変形例4)において、被押圧部9はスリップガード部11を有さなくてもよい。つまり、被押圧部9は突出部10のみで構成されていてもよい。この場合、使用者からの押圧力は、突出部10の突出部端面10a1やドア端面2cに直接的に加えられる。また、突出部10は開放側端部21(スライドドア2)と別体の部材として開放側端部21に設けられているが、これに限らず、突出部10は開放側端部21と一体に形成されてもよい。
【0067】
[変形例5]
また、被押圧部9は、突出部10を有さなくてもよく、
図8に示すように、被押圧部9は前述したスリップガード部11とは別のスリップガード部14からなるものとしてもよい。つまり、被押圧部9は、突出部10を有さず、スリップガード部14のみで構成されてもよい。スリップガード部14は、開放側端部21のドア端面2cのうちの車両上下方向の所定範囲Rに形成され、前述したスリップガード部11と同様に、ドア端面2cのうちの所定範囲Rの周辺の滑り抵抗よりも高い滑り抵抗を有する。そして、スリップガード部14によって、ドア端面2cのうちの所定範囲Rが覆われる。スリップガード部14は、
図8では、例えば、車両前後方向に所定の厚みを有したスリップガード部11と同様の材料からなる部材として設けられ、ドア端面2cに接着等により取り付けられている。この場合、押圧力を受ける面積の増大は図られないものの、使用者による押圧動作時のスリップが抑制され、使用者はより確実にスライドドア2を閉めることができるようになる。
【0068】
なお、本実施形態や上記各変形例では、スリップガード部(11,14)は、車両前後方向に所定の厚みを有し、開放側端部21や突出部10とは別の部材として、ドア端面2cや突出部端面10a1に設けられる場合を一例に挙げて説明したが、これに限らない。図示を省略するが、ドア端面2cのうちの所定範囲Rや突出部10の突出部端面10a1に対して滑り抵抗を高めるための微細な凹凸等の表面加工を施すことによって、各スリップガード部(11,14)がドア端面2cや突出部端面10a1に形成されてもよい。
【0069】
また、本実施形態や上記各変形例では、スライドドア2は手動開閉式のドアであるものとしたが、これに限らず、自動で開閉される自動開閉式のドアであってもよい。この場合、使用者は、例えば、自動開閉用の駆動機構の故障時等に、スライドドア2の被押圧部9に押圧力を加えることにより、スライドドア2を容易に閉めることができる。
【0070】
[変形例6]
また、スライドドア2が自動開閉式のドアである場合には、
図9に示したように、被押圧部9は、押圧力を受けて押圧操作されるとともに、図示を省略した自動開閉用の駆動機構に信号線15aを通じてドア開信号を出力可能に構成された押圧スイッチ15により構成されてもよい。具体的には、被押圧部9としての押圧スイッチ15は、
図9に示すように、開放側端部21のドア端面2cに設けられる。この場合、被押圧部9(押圧スイッチ15)が設けられるドア端面2cのうちの所定範囲Rは、
図1に示したように車両上下方向に比較的に広い幅を有する必要はなく、押圧スイッチ15の機器に応じた比較的に狭い範囲になる。そして、使用者が押圧スイッチ15を押すと、押圧スイッチ15は信号線15aを通じてドア開信号を駆動機構に出力し、ドア開信号を受信した駆動機構はドア閉方向の駆動力を発生させてスライドドア2を閉める。このように、自動開閉式のスライドドア2の場合であっても、本実施形態及び変形例に係る車両100の車両側部構造は好適である。このように構成すれば、被押圧部9に作用させる押圧力を小さくすることができるので、使用者が両手で荷物を持つなどにより使用者の両手が塞がっている場合であっても、使用者の身体を使用してスライドドア2を容易に閉めることができる。
【0071】
[変形例7]
また、
図10に示すように、被押圧部9は、車幅方向に揺動可能なフラップ16であってもよい。具体的には、開放側端部21には、フラップ16を収容するフラップ収容部211aが形成されている。フラップ収容部211aは、ドア外側面2aより車幅方向内側に凹み且つドア端面2c側に開口するように形成され、車両上下方向に所定幅を有する凹部からなる。そして、フラップ16は、薄板状に形成されており、その一端部がフラップ収容部211aの上下の内壁に支持された車両上下方向に延びるフラップ揺動軸16aを支点として車幅方向に揺動可能に開放側端部21に取り付けられる。フラップ16は、例えば、押圧力が加えられていない状態では、その全体がフラップ収容部211a内の空間に収まっている。この収容状態が維持されるように、例えば、図示省略した巻きバネ等の付勢部材による付勢力がフラップ16に作用している。そして、被押圧部9としてのフラップ16の先端部に、押圧力が加えられることによって、フラップ16は、
図9に点線で示すように、車幅方向外側に回動する。このようにフラップ16が回動することによって、押圧力が被押圧部9としてのフラップ16に加え易いようになっている。この場合、被押圧部9(フラップ16)が設けられるドア端面2cのうちの所定範囲Rは、前述した押圧スイッチ15と同様に、
図1に示したように車両上下方向に比較的に広い幅を有する必要はなく、フラップ16に応じた比較的に狭い範囲になる。
【0072】
また、開放側端部21のフランジ先端部211はフランジ基端部212と同程度の厚みを有してもよい。これにより、スライドドア2における開放側端部21の剛性が高まり、スライドドア2が閉まり易くなる。
【0073】
図11~
図13は被押圧部9を設ける範囲の変形例(変形例8~変形例10)を説明するための車体側部1の部分側面図である。
【0074】
[変形例8]
被押圧部9が設けられる所定範囲Rは、ドアハンドル2bの上方に限らず、適宜の範囲に設定することができる。例えば、
図11に示すように、被押圧部9が設けられる所定範囲Rは、開放側端部21における車両上下方向についてドアハンドル2bよりも下方に設定されてもよい。これにより、被押圧部9が比較的に低い位置に設けられることになる。その結果、使用者が両手を使用できない状態であっても、使用者は下半身の一部を被押圧部9に押し付ける動作等を行うことによって、スライドドア2を容易に閉めることができる。
【0075】
[変形例9]
また、
図12に示すように、被押圧部9が設けられる所定範囲Rは、開放側端部21における車両上下方向について、ドアハンドル2bよりも上方の部分とドアハンドル2bよりも下方の部分との両方に設定されてもよい。
【0076】
[変形例10]
さらに、
図13に示すように、被押圧部9が設けられる所定範囲Rは、開放側端部21におけるドアハンドル2bに対応する上下方向についての範囲を含む範囲に設定されてもよい。これにより、使用者がドアハンドル2bの高さと同じ高さで被押圧部9を押圧することができるので、使用者が感覚的に被押圧部9を押圧し易くなる。
【0077】
[その他の変形例]
車両側部構造は、車両100の右側の側部構造として適用されたが、車両100の左側の側部構造として適用されてもよい。この場合、上述した構造と車幅方向について左右に逆向きの構造が適用される。
【0078】
また、スライドドア2は車両前後方向の前方へスライドすることで閉位置に位置するサイドドアであるものとしたが、これに限らず、車両前後方向の後方へスライドすることで閉位置に位置するサイドドアでもよい。この場合、スライドドア2のドア閉方向である車両前後方向の「一方側」は車両前後方向の後方側であり、スライドドア2のドア開方向である車両前後方向の「他方側」は車両前後方向の前方側である。そして、スライドドア2の開放側端部21はスライドドア2の前端部に形成され、対象縁部51は車体側部1における乗降口1aの周縁5のうちの前方側の縁部(前側縁部)である。このような、開閉形態のスライドドア2を有する車両100としては、例えば、車体側部1の面積が比較的に大きな車両が想定される。このような車両100において、本実施形態に係る上述した車両側部構造を適用してもよい。この場合、上述した構造と車両前後方向について前後に逆向きの構造が適用される。これにより、使用者は、被押圧部9を用いてスライドドア2をスライドドア2よりもスライド方向について開放側(前方側)の位置から容易に閉めることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…車体側部、1a…乗降口、1d1…外側面、2…スライドドア、2a…ドア外側面、2b…ドアハンドル、2c…ドア端面、21…開放側端部、5…周縁、51…対象縁部、51A…対向領域、9…被押圧部、9a…内側被押圧部分、10…突出部、10a…内側突出部、10a1…突出部端面、11…スリップガード部、14…スリップガード部、R…所定範囲