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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023034263
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】車両用インストルメントパネル構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20230306BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230306BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
B60K35/00 A
B62D25/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021140422
(22)【出願日】2021-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】川村 善明
【テーマコード(参考)】
3D203
3D344
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB37
3D344AA01
3D344AA12
3D344AA14
3D344AB01
3D344AC13
3D344AC25
3D344AC28
3D344AC30
(57)【要約】
【課題】メータおよびヘッドアップディスプレイの取付剛性および取付精度を向上することが可能な車両用インストルメントパネル構造。
【解決手段】車両用インストルメントパネル構造100のインストルメントパネル102は、ヘッドアップディスプレイ106を収容する上面開口部118と、メータ104を収容する凹形状部120とを有する。ステアリングサポートメンバ140は、車幅方向に延びるパイプ部142と、パイプ部142とインストルメントパネル102とをつなぐ支持ステー144、146とを有する。当該車両用インストルメントパネル構造100はさらに、支持ステー144、146の上端と上面開口部118の車幅方向の脇とをつなぐ第1固定部156a、156bと、支持ステー144のうち第1固定部156a、156bとパイプ部142との間の箇所と凹形状部120とをつなぐ第2固定部158a、158bとを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部に設置されるインストルメントパネルと、該インストルメントパネルの上面に配置されるヘッドアップディスプレイと、該インストルメントパネルの後面に配置されるメータと、該インストルメントパネルの前方に設けられるステアリングサポートメンバとを備える車両用インストルメントパネル構造において、
前記インストルメントパネルは、
前記上面に形成されて前記ヘッドアップディスプレイを収容する開口した上面開口部と、
前記後面のうち車幅方向において前記上面開口部と重なる範囲に形成され前記メータを収容する車両前方に窪んだ凹形状部とを有し、
前記ステアリングサポートメンバは、
車幅方向に延びるパイプ部と、
前記パイプ部のうち車幅方向における前記ヘッドアップディスプレイの両脇それぞれから上方に延びて該パイプ部と前記インストルメントパネルとをつなぐ一対の支持ステーとを有し、
当該車両用インストルメントパネル構造はさらに、
前記一対の支持ステーの上端と前記上面開口部の車幅方向の両脇とをそれぞれつなぐ一対の第1固定部と、
前記一対の支持ステーそれぞれのうち前記第1固定部から前記パイプ部までの間の箇所と前記凹形状部とをつなぐ一対の第2固定部とを備えることを特徴とする車両用インストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記インストルメントパネルは、
前記上面開口部および前記凹形状部を有するアッパパネルと、
前記アッパパネルの下側に接合されるロアパネルとを含んでいて、
前記ロアパネルは、前記凹形状部の前方に車幅方向に延びるように設けられて該凹形状部が接合される橋渡し形状部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用インストルメントパネル構造。
【請求項3】
前記一対の第2固定部は、前記橋渡し形状部と前記一対の支持ステーとをつなぐことで前記凹形状部を該一対の支持ステーにつないでいて、
前記橋渡し形状部は、
車幅方向の中央に設けられて前記凹形状部に連結される中央連結部と、
前記一対の第2固定部と前記中央連結部とを結ぶよう車幅方向に延びる車両前方に凸のビードを有することを特徴とする請求項2に記載の車両用インストルメントパネル構造。
【請求項4】
当該車両インストルメントパネル構造はさらに、前記上面開口部内に設置されて前記ヘッドアップディスプレイが取り付けられるブラケットを備え、
前記ブラケットは、前記上面開口部の車幅方向の側縁それぞれの少なくとも前後二か所に間隔をあけて接合される脚部を有し、
前記第1固定部は、前後方向における前記脚部の範囲内であって該脚部から車幅方向に離れた箇所に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用インストルメントパネル構造。
【請求項5】
前記インストルメントパネルはさらに、
前記凹形状部の上端のうち前記第1固定部の車両後方の位置に形成されて前記メータが取り付けられるメータ取付部と、
前記メータ取付部と前記第1固定部とをつなぐよう車両前後方向に延びる稜線部とを有することを特徴とする請求項4に記載の車両用インストルメントパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用インストルメントパネル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のインストルメントパネルには、後面にメータ類が配置される他、上面にヘッドアップディスプレイが配置されることが多くなっている。例えば特許文献1では、図2に示されるように、インストルメントパネル2の上面に取り付け用開口24が設けられ、この取り付け用開口24にヘッドアップディスプレイ装置6が収容されている。図4に示されるように、ヘッドアップディスプレイ装置6は、支持ブラケット8によってインパネメンバ10に保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-52290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、段落0073等に示されるようにメータ用開口31が大きく開口しているため、インストルメントパネル2の剛性が確保し難いことが懸念される。特に、近年ではメータの液晶パネルは大型化し、その重量は増加する傾向にあるため、メータを効率よく支持することのできる構造が求められている。
【0005】
また、特許文献1の構成において、例えばメータ装置3の取付剛性、およびメータ装置3とヘッドアップディスプレイ装置6との互いの取付位置の精度向上を図るためには、これら装置とインパネメンバ10とを十全に連結できる剛性の高い補強部材が必要になる。このような補強部材は、相応の設置空間も必要であり、またヘッドアップディスプレイ装置6の種類などに応じた専用の設計が必要になって汎用性に影響が出るなど、レイアウトの自由度を下げかねない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、メータおよびヘッドアップディスプレイの取付剛性および取付精度を向上することが可能な車両用インストルメントパネル構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用インストルメントパネル構造の代表的な構成は、車室前部に設置されるインストルメントパネルと、インストルメントパネルの上面に配置されるヘッドアップディスプレイと、インストルメントパネルの後面に配置されるメータと、インストルメントパネルの前方に設けられたステアリングサポートメンバとを備える車両用インストルメントパネル構造において、インストルメントパネルは、上面に形成されてヘッドアップディスプレイを収容する開口した上面開口部と、後面のうち車幅方向において上面開口部と重なる範囲に形成されメータを収容する車両前方に窪んだ凹形状部とを有し、ステアリングサポートメンバは、車幅方向に延びるパイプ部と、パイプ部のうち車幅方向におけるヘッドアップディスプレイの両脇それぞれから上方に延びていてパイプ部とインストルメントパネルとをつなぐ一対の支持ステーとを有し、当該車両用インストルメントパネル構造はさらに、一対の支持ステーの上端と上面開口部の車幅方向の両脇とをそれぞれつなぐ一対の第1固定部と、一対の支持ステーそれぞれのうち第1固定部からパイプ部までの間の箇所と凹形状部とをつなぐ一対の第2固定部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メータおよびヘッドアップディスプレイの取付剛性および取付精度を向上することが可能な車両用インストルメントパネル構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る車両用インストルメントパネル構造を示す図である。
図2図1(b)のヘッドアップディスプレイおよびメータを取り外した図である。
図3図2のインストルメントパネルをさらに分解した斜視図である。
図4図1(a)のインストルメントパネルが組み付けられるステアリングサポートメンバの概要を示す斜視図である。
図5図4のステアリングサポートメンバにインストルメントパネルを組み付けた状態を示した図である
図6図5(b)の車両用インストルメントパネル構造の各断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用インストルメントパネル構造は、車室前部に設置されるインストルメントパネルと、インストルメントパネルの上面に配置されるヘッドアップディスプレイと、インストルメントパネルの後面に配置されるメータと、インストルメントパネルの前方に設けられたステアリングサポートメンバとを備える車両用インストルメントパネル構造において、インストルメントパネルは、上面に形成されてヘッドアップディスプレイを収容する開口した上面開口部と、後面のうち車幅方向において上面開口部と重なる範囲に形成されメータを収容する車両前方に窪んだ凹形状部とを有し、ステアリングサポートメンバは、車幅方向に延びるパイプ部と、パイプ部のうち車幅方向におけるヘッドアップディスプレイの両脇それぞれから上方に延びていてパイプ部とインストルメントパネルとをつなぐ一対の支持ステーとを有し、当該車両用インストルメントパネル構造はさらに、一対の支持ステーの上端と上面開口部の車幅方向の両脇とをそれぞれつなぐ一対の第1固定部と、一対の支持ステーそれぞれのうち第1固定部からパイプ部までの間の箇所と凹形状部とをつなぐ一対の第2固定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、支持ステーによって、剛性の高いステアリングサポートメンバのパイプ部に、インストルメントパネルの上面開口部の脇および凹形状部をつなぐことで、インストルメントパネルの剛性を高めるとともに、ヘッドアップディスプレイおよびメータの取付剛性および取付精度を向上させることが可能となる。
【0012】
上記のインストルメントパネルは、上面開口部および凹形状部を有するアッパパネルと、アッパパネルの下側に接合されるロアパネルとを含んでいて、ロアパネルは、凹形状部の前方に車幅方向に延びるように設けられて凹形状部が接合される橋渡し形状部が設けられている。
【0013】
上記構成によれば、凹形状部の範囲にてアッパパネルとロアパネルとを接合することで、他の補強部材等を追加することなく凹形状部の剛性を向上させることが可能になる。
【0014】
上記一対の第2固定部は、橋渡し形状部と一対の支持ステーとをつなぐことで凹形状部を一対の支持ステーにつないでいて、橋渡し形状部は、車幅方向の中央に設けられて凹形状部に連結される中央連結部と、一対の第2固定部と中央連結部とを結ぶよう車幅方向に延びる車両前方に凸のビードを有する。
【0015】
上記構成によれば、ビードを設けて橋渡し形状部の剛性を向上させることで、中央連結部によるアッパパネルとロアパネルとの組付剛性を向上させることができる。また、橋渡し形状部の剛性を高めることで、この橋渡し形状部を利用したインストルメントパネルの支持ステーに対する位置合わせを容易にし、当該インストルメントパネルのステアリングサポートメンバへの組付精度も向上させることが可能になる。
【0016】
当該車両インストルメントパネル構造はさらに、上面開口部内に設置されてヘッドアップディスプレイが取り付けられるブラケットを備え、ブラケットは、上面開口部の車幅方向の側縁それぞれの少なくとも前後二か所に間隔をあけて接合される脚部を有し、第1固定部は、前後方向における脚部の範囲内であって脚部から車幅方向に離れた箇所に設けられている。
【0017】
上記構成によれば、第1固定部をブラケットの脚部の近傍に設けることで、ヘッドアップディスプレイの重量を第1固定部から支持ステーに吸収させやすくし、ヘッドアップディスプレイの姿勢を安定させると共に、インストルメントパネルの変形も低減することが可能になる。
【0018】
上記のインストルメントパネルはさらに、凹形状部の上端のうち第1固定部の車両後方の位置に形成されてメータが取り付けられるメータ取付部と、メータ取付部と第1固定部とをつなぐよう車両前後方向に延びる稜線部とを有する。
【0019】
上記構成によれば、メータ取付部と第1固定部とを稜線部でつなぐことで、メータの取付剛性および取付精度を向上させることが可能になる。
【実施例0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施例に係る車両用インストルメントパネル構造100を示す図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で例示する。
【0022】
図1(a)は、インストルメントパネル102の運転席の前方の領域を示した斜視図である。当該車両用インストルメントパネル構造100は、インストルメントパネル102を中心として、メータ104やヘッドアップディスプレイ106を含んで構成される。
【0023】
インストルメントパネル102は、樹脂製のパネル部材であり、車両前部のステアリングサポートメンバ140(図4参照)に組み付けて設置される。インストルメントパネル102には、メータ104やヘッドアップディスプレイ106の他、多数の部品が設置される。本実施例では、インストルメントパネル102に対してメータ104とヘッドアップディスプレイ106とを近接させて配置することができ、インストルメントパネル102の表面および内側における省スペース化が図られている。
【0024】
メータ104は、表示面が車両後方を向くよう、インストルメントパネル102の後面102b側に配置される。メータ104の周囲には、ひさしとなるメータバイザ110が取り付けられている。
【0025】
ヘッドアップディスプレイ106は、情報をインストルメントパネル102の上方に表示する装置であり、インストルメントパネル102の上面102a側に配置され、ディスプレイ112を上方に起立させることが可能になっている。ヘッドアップディスプレイ106の周囲には、カバーとなるガーニッシュ114が取り付けられている。
【0026】
図1(b)は、メータバイザ110およびガーニッシュ114を取り外した図である。インストルメントパネル102の上面102aには、周囲よりも窪んだHUD設置領域116(Head-Up Display)が形成されている。HUD設置領域118は、ガーニッシュ114によって覆い隠される領域であって、中央にヘッドアップディスプレイ106を収容する上面開口部118(図2等参照)が形成されている。
【0027】
メータ104は、インストルメントパネル102の後面102bに形成された凹形状部120(図2参照)に収容して設置される。凹形状部120は、車両後方の乗員から見てHUD設置領域118の下方に形成され、設置したメータ104とヘッドアップディスプレイ106とが上下に並ぶ構成になっている。
【0028】
図2は、図1(b)のヘッドアップディスプレイ106およびメータ104を取り外した図である。上面開口部120には、ヘッドアップディスプレイ106を保持および固定するブラケット122が取り付けられている。ブラケット122は、主に金属製の部材であって、上面開口部120に車幅方向にかけ渡すように設置され、ヘッドアップディスプレイ106の下面を支える。
【0029】
ブラケット122は、車幅方向の端に形成された複数の脚部(脚部124a等)で上面開口部120の車幅方向の側縁それぞれにボルト126等を使用して固定される。例えば、脚部124a、124bは、上面開口部118の側縁の前後二か所に間隔をあけて接合される。
【0030】
凹形状部122は、メータ104(図1(b)参照)を収容するために車両前方に窪んだ部位であり、インストルメントパネル102の後面102bのうち車幅方向において上面開口部120と重なる範囲に形成されている。凹形状部120の側壁には、メータ104の側部を避けるための開口128が形成されている。
【0031】
図3は、図2のインストルメントパネル102をさらに分解した斜視図である。図3(a)は、インストルメントパネル102の上側を構成するアッパパネル130を示した図である。インストルメントパネル102は、大きく分けて、上側を構成するアッパパネル130と、下側を構成するロアパネル132(図3(b)参照)とを含んで構成されている。アッパパネル130には、前述した上面開口部118および凹形状部120が形成されている。
【0032】
図3(b)は、インストルメントパネル102の下側を構成するロアパネル132を示した図である。ロアパネル132は、アッパパネル130の下側に接合される部品であって、不図示のステアリング装置が前後方向に延びるよう設置される開口部134が形成されている。
【0033】
ロアパネル132の開口部134部の上方には、車幅方向に延びるよう形成された橋渡し形状部136が設けられている。橋渡し形状部136は、アッパパネル130(図3(a)参照)の凹形状部120の前方に重なる部位であり、中央連結部138を利用して凹形状部120の前壁162に接合される。
【0034】
橋渡し形状部136は、凹形状部120の前側および側部に沿って、上方から見ると車両前方にコ字状に突出した形状になっている。中央連結部138は、橋渡し形状部136の車幅方向の中央の範囲を、後方に向かって矩形に膨出させることで形成されていて、膨出した後面で凹形状部120(図3(a)参照)の前壁162に締結具等を利用して接合される。凹形状部120の範囲内にて中央連結部138を利用してアッパパネル130とロアパネル132とを接合することで、他の補強部材等を追加することなく、凹形状部120の付近の剛性を向上させ、メータ104(図1(b)等参照)の取付剛性も高めることができる。
【0035】
図4は、図1(a)のインストルメントパネル102が組み付けられるステアリングサポートメンバ140の概要を示す斜視図である。ステアリングサポートメンバ140は、長尺なパイプ部142を中心にして構成されている。パイプ部142は、インストルメントパネル102の前方で車幅方向に延び、車体に固定される。
【0036】
ステアリングサポートメンバ140には、インストルメントパネル102(図1(a)等参照)が組み付けられる一対の支持ステー144、146が設けられている。支持ステー144、146は、パイプ部142とインストルメントパネル102とをつなぐ部位であり、パイプ部142から上方に延びるよう設けられている。この構成により、インストルメントパネル102に加わる荷重は、支持ステー144、146を介してパイプ部142に分散させることが可能になっている。
【0037】
支持ステー144、146は、対称になった同様の構成になっている。以下では主に車幅方向右側の支持ステー144を例に挙げて説明を行うが、支持ステー144の構成や作用および効果についての説明は支持ステー146にも適用される。
【0038】
図5は、図4のステアリングサポートメンバ140にインストルメントパネル102(図1(a)等参照)を組み付けた状態を示した図である。図5(a)は、図4のステアリングサポートメンバ140とロアパネル132(図3(b)参照)を示した図である。ロアパネル132は、橋渡し形状部136を利用して、ステアリングサポートメンバ140の支持ステー144、146に組み付けることができる。
【0039】
橋渡し形状部136には、支持ステー144、146に組み付けるための部位として、車幅方向の両端側に矩形凸部148、150が設けられている。矩形凸部148、150は、車両前方に矩形に突出した形状の部位であり、ボルト等の締結具を利用して、支持ステー144、146それぞれの前側フランジ152、153(図4参照)に接合される。
【0040】
図5(b)は、図1のインストルメントパネル102とステアリングサポートメンバ140とを車両前方から見た図である。支持ステー144、146は、パイプ部142のうち車幅方向におけるヘッドアップディスプレイ106の両脇それぞれから上方に延びている。
【0041】
支持ステー144、146の上端に形成された上端フランジ154、155は、アッパパネル130の上面開口部118(図3(a)参照)の両脇に接合される。このとき、上端フランジ154、155は、上面開口部118から離れる方向に屈曲する向きで、アッパパネル130に接合される。支持ステー144、146の上端フランジ154、155を外向きにすることで、ヘッドアップディスプレイ106やメータ104の取付作業を行うときの上端フランジ154、155へのハーネス等の接触の可能性を減らすことができる。
【0042】
図6は、図5(b)の車両用インストルメントパネル構造100の各断面図である。図6(a)は、図5(b)の車両用インストルメントパネル構造100のA-A断面図である。支持ステー144の上端フランジ154と、インストルメントパネル102のうち上面開口部118の車幅方向の脇の箇所とは、第1固定部156aによってつながれる。第1固定部156aは、ボルトやナットなどの締結具として具現化される。
【0043】
図2に示すアッパパネル102bの上面開口部118の車幅方向の両脇は、図4に示す支持ステー144、146それぞれの上端フランジ154、155に、一対の第1固定部156a、156bによって固定された状態になっている。
【0044】
図6(a)に示すように、インストルメントパネル102のうち橋渡し形状部136の矩形凸部148と、支持ステー144のうち第1固定部156aとパイプ部142との間の箇所とは、第2固定部158aによってつながれる。第2固定部158aもまた、ボルトやナットなどの締結具として具現化される。
【0045】
図5に示すロアパネル132のうち、橋渡し形状部136の車幅方向の両端の矩形凸部148、150は、支持ステー144、146それぞれの前側フランジ152、153(図4参照)に、一対の第2固定部158a、158bによって固定された状態になっている。このとき、ロアパネル132の橋渡し形状部136の中央連結部138は、アッパパネル130(図3(a)参照)の凹形状部120の前壁162に連結されている。よって、凹形状部120は、橋渡し形状部136によって間接的に支持ステー144、146に固定された状態になっている。
【0046】
これらのように、本実施例では、支持ステー144、146によって、剛性の高いステアリングサポートメンバ140(図4参照)のパイプ部142に、インストルメントパネル102の上面開口部118の脇および凹形状部120をつないでいる。これによって、インストルメントパネル102の剛性を高めるとともに、ヘッドアップディスプレイ106およびメータ104の取付剛性および取付精度を向上させることが可能になっている。
【0047】
特に、一対の支持ステー144、146を効率よく機能させることで、他のブラケットなどの構造物を追加する場合に比べて、構造が簡潔であって、部品点数や重量を減らした完結な構造でメータ104およびヘッドアップディスプレイ106の取付剛性を向上させることが可能になっている。
【0048】
図2に示すように、第1固定部156aは、ブラケット122の前後方向における脚部124a、124bぞれぞれの固定点(ボルト126)の範囲E1内であって、脚部124a、124bから車幅方向に離れた箇所に設けられている。同様に、車幅方向左側の第1固定部156bも、前後の脚部の固定点の範囲内であって各脚部から見て外側に設けられている。
【0049】
第1固定部156a、156bをブラケット122の脚部124a、124b等の近傍に設けることで、ヘッドアップディスプレイ106(図1(b)参照)の重量を第1固定部156a、156bから支持ステー144、146(図4参照)に吸収させやすくすることができる。これによって、ヘッドアップディスプレイ106の姿勢を安定させると共に、インストルメントパネル102の変形も低減することが可能になる。
【0050】
前述したように、図5(a)の第2固定部158a、158bは、橋渡し形状部136の矩形凸部148、150と支持ステー144、146とをつないでいる。そして、このロアパネル132の橋渡し形状部136は、車幅方向の中央に設けられた中央連結部138を介して、アッパパネル130(図3(a)参照)の凹形状部120を支持ステー144、145につないでいる。
【0051】
図6(b)は、図5(b)の車両用インストルメントパネル構造100のB-B断面図である。ロアパネル132の橋渡し形状部の中央連結部138は、アッパパネル130の凹形状部120の前壁162に向かって、後方に凸の矩形状に膨出して、当該前壁162にボルト等によって締結固定されている。
【0052】
図5(a)に示す橋渡し形状部136には、ビード160も設けられている。ビード160は、橋渡し形状136の上下方向の途中箇所を、車両前方に凸になるよう膨出させて形成されている。ビード160は、車幅方向に延びていて、車幅方向の中央の中央連結部138と、車幅方向の両端の矩形凸部148、150および第2固定部158a、158bとを結んでいる。
【0053】
上記のビード160によれば、橋渡し形状部136の剛性を向上させることで、中央連結部138によるアッパパネル130とロアパネル132との組付剛性を向上させることができる。また、ビード160によって橋渡し形状部136の剛性を高めることで、インストルメントパネル102の矩形凸部148、150の支持ステー144、146への位置合わせを容易にし、第2固定部158a、158bによる締結を行いやすくすることができる。よって、インストルメントパネル102のステアリングサポートメンバ140への組付精度も向上させることが可能である。
【0054】
また、本実施例では、車両後方から見た場合の凹形状部120の範囲内に、アッパパネル130とロアパネル132とを連結する中央連結部138と、これらインストルメントパネル102とステアリングサポートメンバ140とを連結する第2固定部158a、158bが設けられている。よって、メータ104はより高い剛性で設置することが可能になっている。
【0055】
図2に示すように、凹形状部120の前壁162には、メータ104(図1(b)参照)を取り付ける複数のメータ取付部164a~164dが設けられている。メータ取付部164a~164dは、メータ104が嵌め合いや締結によって取り付けられる取付点である。メータ取付部164a~164dのうち、上側のメータ取付部164a、164bは、凹形状部120の上端側であって、第1固定部156a、156bそれぞれの後方に位置する箇所に設けられている。
【0056】
メータ取付部164a、164dは凹形状部の上端の上方に突出した箇所に設けられていて、HUD設置領域118内にはメータ取付部164a、164dと第1固定部156a、156bとをつなぐよう車両前後方向に延びる稜線部166a、166bが形成されている。
【0057】
稜線部166a、166bは、上方に凸の角部が車両前後方向に連なることで形成されていて、形状的に断面二次モーメントが高い。稜線部166a、166bによって第1固定部156a、156bとメータ取付部164a、164bとを前後方向につなぐことで、メータ104にかかる荷重を第1固定部156a、156bからステアリングサポートメンバ140(図4参照)に吸収させ、メータ104の取付剛性および取付精度を向上させることができる。
【0058】
ここで、本実施例であれば、凹形状部120におけるメータ104の取付剛性を高く確保できるため、凹形状部120の側壁に設けた開口128(図3(a)参照)も、より大きく設けることが可能である。開口128を大きく設けることで、軽量化が達成できるとともに、より横幅の大きいメータも開口128に側部を通して設置することが可能になり、汎用性を高めることができる。
【0059】
なお、本実施例では、インストルメントパネル102がアッパパネル130とロアパネル132とから構成されているが、一体型のインストルメントパネルにも本発明の技術的思想は適用可能である。ロアパネル132が無い場合、橋渡し形状部136(図6(a)等参照)も省略される。その場合であっても、凹形状部120にリブ等を設けて補強したうえで、当該凹形状部120を第2固定部158aによって直接に支持ステー144に固定する構成を採用することが可能できる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、車両用インストルメントパネル構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
100…車両用インストルメントパネル構造、102…インストルメントパネル、102a…上面、102b…後面、104…メータ、106…ヘッドアップディスプレイ、108…表示面、110…メータバイザ、112…ディスプレイ、114…ガーニッシュ、116…HUD設置領域、118…上面開口部、120…凹形状部、122…ブラケット、124a、124b…脚部、126…ボルト、128…開口、130…アッパパネル、132…ロアパネル、134…開口、136…形状部、138…中央連結部、140…ステアリングサポートメンバ、142…パイプ部、144…支持ステー、148、150…矩形凸部、152、153…前側フランジ、154、155…上端フランジ、156a、156b…第1固定部、158a、158b…第2固定部、160…ビード、162…前壁、164a~164d…メータ取付部、166a、166b…稜線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6