(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003494
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】一斉開放弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/363 20060101AFI20230110BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
F16K31/363
A62C35/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104601
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】志賀 法道
(72)【発明者】
【氏名】椿 大志
【テーマコード(参考)】
2E189
3H056
【Fターム(参考)】
2E189CE07
2E189MB01
2E189MB06
3H056AA01
3H056BB03
3H056BB41
3H056BB47
3H056CA01
3H056CB02
3H056CB06
3H056CB09
3H056CD01
3H056CE03
3H056DD02
3H056DD07
3H056DD10
3H056GG05
(57)【要約】
【課題】縦使用時及び横使用時のいずれの使用状態においてもピストン室の加圧側の空気を全て排出することができる一斉開放弁を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る一斉開放弁1は、一次室5と、二次室9と、一次室5と二次室9を仕切る弁体11と、ステム13を介して弁体11と連動するピストン15と、ピストン15が移動可能に配設されるピストン室17とを備え、ピストン室17はピストン15によって第1ピストン室17aと第2ピストン室17bとに区画されるものであって、ピストン室17の内周面に第1ピストン室17aと第2ピストン室17bとを連通させる溝形状部23を有し、溝形状部23は、ピストン室17を横向きに配置し、かつ、縦方向に配置された一次側配管3と二次側配管7の間に配設して使用する縦使用時において、ピストン室17における最も高位置に配置されることを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次室と、二次室と、該一次室と二次室を仕切る弁体と、ステムを介して前記弁体と連動するピストンと、該ピストンが移動可能に配設されるピストン室とを備え、該ピストン室は前記ピストンによって前記弁体を開放する際に加圧される第1ピストン室と、該第1ピストン室に連続する第2ピストン室とに区画される一斉開放弁であって、
前記ピストン室の内周面に前記第1ピストン室と前記第2ピストン室とを連通させる溝形状部を有し、
該溝形状部は、前記ピストン室を横向きに配置し、かつ、縦方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する縦使用時において、前記ピストン室における最も高位置に配置されることを特徴とする一斉開放弁。
【請求項2】
前記ピストンの外周部にリング状のシールリングが設けられ、
前記溝形状部の溝壁と前記ピストン室の内周面との境界部にR加工が施されていることを特徴とする請求項1記載の一斉開放弁。
【請求項3】
前記溝形状部は、溝の開口側が狭く、溝の奥側が広くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の一斉開放弁。
【請求項4】
前記溝形状部は、前記第1ピストン室側から前記第2ピストン室側に向かう方向に漸次溝深さが深くなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一斉開放弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備における消火水を供給する配管中に設置される加圧開放型の一斉開放弁に関する。
【背景技術】
【0002】
消火設備で用いられる一斉開放弁として、弁体に突設したピストンステムの先端に設けたピストンに圧力が加わったときに上記弁体が開動して一次室と二次室とが連通する加圧開放型のものがある。このような加圧開放型の一斉開放弁の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の「加圧開放弁」は、特許文献1の
図1に示されるように、一次側流路1aの高圧消火水を一次圧流入孔6から下部室4に流入させることで下部室4を加圧し、この圧力によってピストン3を上方に押し上げて主弁12を開動させるものである。
このような構造の一斉開放弁は、加圧時においてピストン室の加圧側の空気が排出されて消火水に置換されるが、その際下部室4の空気が全て排出されないと、以下のような問題が生じる場合がある。
【0004】
例えば、開動作時(加圧時)においては、下部室4に残存空気があると、空気の膨張・収縮の作用によって所定の圧力が得られず、正しく弁体11が開動しない場合がある。
また、閉動作時においては、閉止直前の微小開度領域において弁の吸付き現象が生じることがあり、この時下部室4に残存空気があると、思惑に反して空気が圧縮してしまい急閉止する場合がある。
【0005】
この点、特許文献1は、ピストン3に小孔Bが設けられているので、下部室4の空気は小孔Bから上部室5に排出できる。なお、小孔Bは、閉動作時に下部室4に充満した水を上部室5に排出するのにも用いられる。
【0006】
特許文献1は、ピストン3に設けられた小孔Bから下部室4の空気を排出する例であるが、ピストン室の加圧側の空気を排出する他の例として、ピストン室を覆う蓋部材に設けられた排出口から排出するものがある。このような例を
図7に示す。
【0007】
図7に示す一斉開放弁31は、一次側配管3に連通する一次室5と、二次側配管7に連通する二次室9と、一次室5と二次室9を仕切る弁体11と、ステム13を介して弁体11と連動するピストン15と、ピストン15の外周部に設けられたリング状のシールリング16と、ピストン15によって第1ピストン室17aと第2ピストン室17bとに区画されるピストン室17と、ピストン室17を覆う蓋部材19とを備えたものである。蓋部材19の中央はドーム形状となっており、ドーム形状部分の外周部に第1ピストン室17aに水を導入するための導入口21と、第1ピストン室17aの空気及び水を排出するための排出口33が形成されている。一斉開放弁31の加圧時においては蓋部材19の排出口33から第1ピストン室17aの空気が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第1ピストン室17aに水が導入されると、第1ピストン室17aの底部に水が溜まり始めるのに伴い、空気が上方に移動する。したがって、空気を全て排出するためには、水が導入される領域の最も高位置に空気の排出口33を配置する必要がある。
【0010】
この点、特許文献1の
図1は、下部室4の上方に小孔Bが配置されているので適切に空気を排出できるが、取付状態によってはその限りではない。
例えば、特許文献1の
図1は、横方向に配置された配管の間に配設して使用する(以下、「横使用」という)状態を示したものであるが、取り付け現場によっては縦方向に配置された配管の間に配設して使用する(以下、「縦使用」という)場合がある。その場合、特許文献1の
図1の状態から90度回転させた状態で取り付けることになり、小孔Bは下部室4内の最も高位置に配置されない。もっとも、小孔Bをピストン外周部側に設け、小孔Bを縦使用時に最高点に近い場所に配置することは可能だが、ピストンに連結されたステムは弁体に挿入されているだけであるので、設置後ピストンが回転することがあり、小孔Bを常時最高点にしておくことができない。
したがって、縦使用する場合には、加圧時に下部室4の空気を全て排出することができず動作が不安定になる恐れがある。
【0011】
一方、
図7の一斉開放弁31は縦使用の状態を示したものであるが、この状態においては第1ピストン室17aの最も高い位置に排出口33が配置されているので適切に空気を排出できるものの、横使用の状態では適切に空気を排出できない。この点ついて、
図8に
図7の一斉開放弁31を横使用した状態を示し、説明する。
【0012】
図8に示すように、排出口33はドーム形状部分の外周部に設けられているため、横使用の状態では排出口33の位置が第1ピストン室17aの最も高位置に配置されない。この場合、加圧時にドーム形状部分の内側に空気が残留してしまい、動作が不安定になる恐れがある。
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、縦使用時及び横使用時のいずれの使用状態においてもピストン室の加圧側の空気を全て排出することができる一斉開放弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明に係る一斉開放弁は、一次室と、二次室と、該一次室と二次室を仕切る弁体と、ステムを介して前記弁体と連動するピストンと、該ピストンが移動可能に配設されるピストン室とを備え、該ピストン室は前記ピストンによって前記弁体を開放する際に加圧される第1ピストン室と、該第1ピストン室に連続する第2ピストン室とに区画されるものであって、前記ピストン室の内周面に前記第1ピストン室と前記第2ピストン室とを連通させる溝形状部を有し、該溝形状部は、前記ピストン室を横向きに配置し、かつ、縦方向に配置された一次側配管と二次側配管の間に配設して使用する縦使用時において、前記ピストン室における最も高位置に配置されることを特徴とするものである。
【0015】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ピストンの外周部にリング状のシールリングが設けられ、前記溝形状部の溝壁と前記ピストン室の内周面との境界部にR加工が施されていることを特徴とするものである。
【0016】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記溝形状部は、溝の開口側が狭く、溝の奥側が広くなっていることを特徴とするものである。
【0017】
(4)また、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記溝形状部は、前記第1ピストン室側から前記第2ピストン室側に向かう方向に漸次溝深さが深くなっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、ピストン室の内周面に第1ピストン室と第2ピストン室とを連通させる溝形状部を有しており、該溝形状部は、縦使用時において、ピストン室における最も高位置に配置されるので、縦使用時及び横使用時のいずれの使用状態においてもピストン室における最も高位置からピストン室の加圧側の空気を排出することができる。したがって、縦使用時及び横使用時のいずれの使用状態においても、起動時にピストン室の加圧側を水で充満できるので、動作が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁の説明図であり、縦使用の状態における部分断面図である。
【
図3】
図1の一斉開放弁を横使用した状態を示した図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る溝形状部の他の態様を示した図である(その1)。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る溝形状部の他の態様を示した図である(その2)。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る溝形状部の他の態様を示した図である(その3)。
【
図7】従来の一斉開放弁の課題を説明する説明図であり、縦使用の状態における断面図である。
【
図8】
図7の一斉開放弁を横使用した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁を
図1、
図2に基づいて説明する。
図1は一斉開放弁1を縦方向に配置された一次側配管3と二次側配管7の間に配設して使用(縦使用)した場合の部分断面図である。また、
図2は、
図1のA-A断面図である。
なお、一斉開放弁の内部構造は、
図7、
図8で説明した従来の一斉開放弁31と同様であるので説明を省略し、本発明の要部についてのみ、
図1、
図2を用いて説明する。また、
図1、
図2や以下の説明文において、
図7、
図8と同一の部分又は対応する部分は同一の符号を付してある。
【0021】
本発明の一実施の形態に係る一斉開放弁1は、一次側配管3に連通する一次室5と、二次側配管7に連通する二次室9と、一次室5と二次室9を仕切る弁体11と、ステム13を介して弁体11と連動するピストン15と、ピストン15が移動可能に配設されるピストン室17と、ピストン室17を覆う蓋部材19とを備えたものであり、ピストン室17はピストン15によって弁体11を開放する際に加圧される第1ピストン室17aと、第1ピストン室17aに連続する第2ピストン室17bとに区画されている。
また、
図1、
図2に示すように、一斉開放弁1のピストン室17の内周面には、ピストン15のストローク方向に延びる断面矩形状の溝形状部23が設けられており、第1ピストン室17aと第2ピストン室17bが溝形状部23を介して連通している。
【0022】
溝形状部23の長さは、ピストン15の最大ストローク長さよりも長く設定されている。これにより、本弁11が閉状態であるときから全開状態になるときまで、即ち、ピストン15が蓋部材19に最も近い状態から最も離れた状態までのいずれの状態においても、第1ピストン室17aと第2ピストン室17bは溝形状部23を介して連通している。
【0023】
さらに、溝形状部23は、
図1、
図2に示すように、ピストン室17が横向きに配置され、かつ、縦使用する場合において、ピストン室17の最も高位置に形成されている。
したがって、導入口21から一次側配管3の消火水が第1ピストン室17aに導入されると、第1ピストン室17aの空気を第1ピストン室17aの最も高位置から第2ピストン室17bに排出することができ、第1ピストン室17aを水で充満することができる。
よって、一斉開放弁1は、縦使用時において加圧時に所定の圧力を確実に得ることができ、弁体11の開動作が安定する。
【0024】
次に、上述した本実施の形態の一斉開放弁1を横使用した場合について説明する。
図3は
図1の一斉開放弁1を横方向に配置された一次側配管3と二次側配管7の間に配設して使用した場合の部分断面図である。
図3に示すように、横使用時においてはピストン15の下方に第1ピストン室17a、上方に第2ピストン室17bが配置され、溝形状部23が鉛直方向に配置される。この場合も、第1ピストン室17aにおいて最も高位置に第2ピストン室17bへの連通口が溝形状部23によって形成されることになる。このため、導入口21から一次側配管3の消火水が第1ピストン室17aに導入されると、第1ピストン室17aの空気を第1ピストン室17aから第2ピストン室17bに排出することができ、第1ピストン室17aを水で充満することができる。
したがって、一斉開放弁1は、横使用時においても加圧時に所定の圧力を確実に得ることができ、弁体11の開動作が安定する。
【0025】
なお、本実施の形態の一斉開放弁1を横使用する場合、
図3のようにピストン室17を弁体11の下側に配置する必要があるが、ピストン室17を弁体11の上側に配置して横使用したいという要望がある場合には、
図8の従来の一斉開放弁31のように、蓋部材19に排出口33を設ければよい。本実施の形態の一斉開放弁1の蓋部材19に排出口33をさらに設ければ、横使用時にピストン室17を上下どちらに配しても第1ピストン室17aの空気を適切に排出できる。
【0026】
以上のように、本実施の形態においては、ピストン室17の内周面に第1ピストン室17aと第2ピストン室17bとを連通させる溝形状部23を設けたことにより、縦使用時、横使用時のいずれの使用状態でもピストン室17の加圧側の空気を全て排出できるので、弁体11を確実に開動できる。
【0027】
次に、溝形状部23の他の態様について説明する。
ピストン15の外周部には、Oリングなどの弾性体からなるシールリング16(
図1参照)が嵌装されており、ピストン室17の内周面に密着している。このとき、シールリング16の一部が溝形状部23にくい込んで、溝縁23a(溝形状部23の溝壁とピストン室17の内周面との境界部)がシールリング16に強く押し付けられる場合がある。溝縁23aは、
図2の拡大図の断面に示すように角張った形状になっているので、シールリング16を傷つける恐れがある。
そこで、
図4に示す溝形状部25のように、溝壁とピストン室17の内周面との境界部(溝縁25a)にR加工を施して、シールリング16を傷つきにくくするのが好ましい。なお、
図2、
図4においては溝形状部23、25の形状を分かりやすくするため、シールリング16の図示を省略している。(以下、
図5も同様)
【0028】
さらに、溝形状部25は、
図2の溝形状部23と比べて溝幅が狭くなっている。
このように溝幅を狭くすることで、シールリング16が溝形状部25にくい込みにくくなり、シールリング16の損傷をさらに防止できる。
なお、溝の深さが浅すぎると、溝形状部23、25にくい込んだシールリング16によって空気の流路が塞がれてしまう恐れがあるので、適切な硬さのシールリング16を用いたり、一定の溝深さを設定するなどして、確実に溝形状部から空気が排出されるようにするとよい。
【0029】
なお、溝形状部23、25は、前述したように、加圧時(本弁11の開動時)において第1ピストン室17aの空気を第2ピストン室17bに排出するためのものであるが、本弁11が閉動する際に第1ピストン室17aに充満した水を第2ピストン室17bに排出する排水路としての機能を兼ねている。
しかし、
図4の溝形状部25は溝幅を狭くしたものであるので、流路断面積が小さくなっており、排水に時間を要する場合がある。
そこで、シールリング16の傷つきを防止しつつ、かつ排水に要する時間を短縮できるようにするために、
図5(a)、
図5(b)に示す溝形状部27、29のように、溝の開口側が狭く、溝の奥側を広くするのが好ましい。
【0030】
この時、溝の奥側の断面積が溝の手前の断面積よりも大きくなっていればよく、その形状は特に限定されない。溝の奥側の断面が、
図5(a)のように円形状であってもよいし、
図5(b)のように矩形状であってもよい。
また、
図5(a)、(b)の例は溝形状部27、29の溝縁27a、29aが断面R形状となっているものであるが、溝の開口側の溝幅を狭くすることでシールリング16のくい込みを防止できる場合には、必ずしも溝縁にR加工を施す必要はない。
【0031】
上記のように、溝形状部27、29においては、溝の開口側を狭くしたことでシールリング16がくい込みにくくなっており、かつ、溝の奥側を広くしたことで流路断面積が大きくなっているので、シールリング16の傷つきを防止しつつ、排水時間を短縮できる。
なお、溝形状部27、29においても、溝の深さが浅すぎると、くい込んだシールリング16によって空気や水の流路が塞がれてしまう恐れがあるので、適切な硬さのシールリング16を用いたり、溝幅の狭い部分に一定の深さを設定するなどして、少なくともシールリング16が溝の奥側の広くなった部分までくい込まないようにするとよい。
【0032】
なお、上記実施の形態の一斉開放弁1は、第2ピストン室17bと二次室9との間に隔壁がなく、第2ピストン室17bに排出された空気を二次室9に排出するようにしたものであった。もっとも、本発明はこれに限定されるものではなく、第2ピストン室17bと二次室9との間に隔壁が設けられたものであってもよい。その場合には、第2ピストン室17bに排出口を設けて、該排出口から第2ピストン室17bに排出された空気を大気開放してもよいし、排出口と二次側配管7(または二次室9)とを外部配管で接続して、本弁11の二次側に排出するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施の形態の溝形状部23は、全長に亘って溝深さが同じであったが(
図1参照)、本発明はこれに限定されない。例えば、
図6に示す溝形状部30のように、蓋部材19側から二次室9側(第1ピストン室17a側から第2ピストン室17b側)に向かって漸次溝深さが深くなっているものでもよい。このように溝底30aに勾配を設けることで、
図6の拡大図に示すように、蓋部材19側よりもピストン15側の方が溝底30aが高い位置あるので、空気がピストン15側に移動しやすくなる。これにより、第2ピストン室17bに空気が排出されやすくなる。
また、一斉開放弁1の設置に際して、例えば
図6の状態から反時計回りに若干傾いて設置されることも考えられるが、このような場合であっても、溝底に勾配があれば、第2ピストン室17bに空気が排出されやすくなる。
【0034】
前述したように、溝形状部30は、第1ピストン室17aに充填された水を排水するための排水路として機能するが、この観点からも下記のような効果を奏する。
溝形状部30の溝深さが蓋部材19側から二次室9側に向かって漸次深くなっているので、溝形状部30の断面積は蓋部材19側から二次室9側に向かって徐々に大きくなる。
弁体11が開の時は、ピストン15は最も二次室9側に位置しているので、ピストン15の外周面との溝形状部30によって形成される流路断面積は最も大きくなる(図中B-B断面参照)。したがって、弁体11を開から閉とするときは溝形状部30から水を排出しやすくなり、排水時間を短縮できる。
他方、弁体11が閉の時は、ピストン15は最も蓋部材19側に位置しているので、ピストン15の外周面との溝形状部30によって形成される流路断面積は最も小さくなる(図中C-C断面参照)。したがって、弁体11を閉から開とするときに溝形状部30から水が排出されにくく、弁体11を開動させるための加圧力が問題なく得られる。
上記のように、蓋部材19側から二次室9側に向かって溝深さを漸次深くしたことにより、開動時の加圧力を損なうことなく、閉動時の排水時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 一斉開放弁
3 一次側配管
5 一次室
7 二次側配管
9 二次室
11 弁体
13 ステム
15 ピストン
16 シールリング
17 ピストン室
17a 第1ピストン室
17b 第2ピストン室
19 蓋部材
21 導入口
23 溝形状部
23a 溝縁
25 溝形状部(他の態様1)
25a 溝縁
27 溝形状部(他の態様2)
27a 溝縁
29 溝形状部(他の態様3)
29a 溝縁
30 溝形状部(他の態様4)
30a 溝底
31 一斉開放弁(従来例)
33 排出口(従来例)