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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035097
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】断熱弾性部材
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20230306BHJP
   F16L 59/13 20060101ALI20230306BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230306BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230306BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20230306BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20230306BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20230306BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20230306BHJP
【FI】
H01M10/658
F16L59/13
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/653
H01M50/289 101
H01M50/293
H01M10/6555
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141714
(22)【出願日】2021-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】大西 將博
(72)【発明者】
【氏名】木村 健二
(72)【発明者】
【氏名】日比野 委茂
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB15
3H036AC03
5H031EE03
5H031HH08
5H031KK02
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040LL04
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】 あるバッテリーセルの温度が上昇しても、隣接するバッテリーセルとの間の間隔を確保して断熱シートによる断熱性を発揮させることにより、バッテリーセル間の熱の伝達を抑制することができる断熱弾性部材を提供する。
【解決手段】 断熱弾性部材30は、隣接するバッテリーセル2間に配置され、断熱シート40と、断熱シート40の片面に所定の間隔を空けて配置される複数の弾性体50、51と、断熱シート40の片面において少なくとも弾性体50、51の間に配置され、弾性体50、51とは異なる材料からなり、難燃性を有し、熱伝導率が弾性体50、51の熱伝導率と同じかそれより小さい規制体60と、を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するバッテリーセル間に配置される断熱弾性部材であって、
断熱シートと、
該断熱シートの片面に所定の間隔を空けて配置される複数の弾性体と、
該断熱シートの片面において少なくとも該弾性体の間に配置され、該弾性体とは異なる材料からなり、難燃性を有し、熱伝導率が該弾性体の熱伝導率と同じかそれより小さい規制体と、
を有することを特徴とする断熱弾性部材。
【請求項2】
前記バッテリーセルの並び方向をX方向、該X方向に直交する二方向のうち、一方をY方向、他方をZ方向とした場合に、
複数の前記弾性体は、該Y方向または該Z方向に延在し、
前記規制体は、隣接する該弾性体の間に配置される請求項1に記載の断熱弾性部材。
【請求項3】
前記Y方向は前記断熱シートの長手方向、前記Z方向は該断熱シートの短手方向であり、
複数の前記弾性体は、該Y方向に延在し、該Z方向に所定の間隔を空けて一つずつ配置され、
前記規制体は、二つの該弾性体の間に配置され該Y方向に延在する請求項2に記載の断熱弾性部材。
【請求項4】
前記規制体は、前記断熱シートの片面における中央域を含んで配置される請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【請求項5】
複数の前記弾性体は、各々、隣接する前記バッテリーセルに弾接する突条部を有し、該弾性体における該バッテリーセル側の表面は凹凸状を呈する請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【請求項6】
複数の前記弾性体は、各々、中空部を有する請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【請求項7】
前記規制体は、難燃断熱布または難燃紙からなり、
該難燃断熱布は、複数の微粒子が連結して骨格をなし、内部に細孔を有し、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する多孔質構造体と、バインダーと、を有する断熱層が、無機繊維製の布に担持されてなる請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【請求項8】
さらに袋状の外装体を有し、
該外装体により、前記断熱シート、複数の前記弾性体、および前記規制体が一体化されている請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【請求項9】
前記断熱シートは、断熱層を有し、
該断熱層は、複数の微粒子が連結して骨格をなし、内部に細孔を有し、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する多孔質構造体と、バインダーと、を有する請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【請求項10】
前記断熱シートは、さらに前記断熱層を担持する基材を有する請求項9に記載の断熱弾性部材。
【請求項11】
前記バインダーは、無機材料を有する無機バインダーである請求項9または請求項10に記載の断熱弾性部材。
【請求項12】
前記無機材料は、シリカ、水ガラス、セメント、石こう、ケイ酸マグネシウム、生石灰、消石灰から選ばれる一種以上を有する請求項11に記載の断熱弾性部材。
【請求項13】
前記断熱層は、さらに増粘剤および補強繊維から選ばれる一種以上を有する請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【請求項14】
前記多孔質構造体は、複数のシリカ微粒子が連結して骨格をなすシリカエアロゲルである請求項9ないし請求項13のいずれかに記載の断熱弾性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のバッテリーセルが収容されるバッテリーパックにおいて、隣接するバッテリーセル間に配置される断熱弾性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車には、複数のバッテリーセルを収容したバッテリーパックが搭載される。バッテリーパックにおいては、複数のバッテリーセルが積層されてなるバッテリーモジュールが、積層方向の両側から締結部材により固定された状態で筐体内に収容される。一つのバッテリーセルの温度が何らかの原因で上昇した場合、この熱が隣接するバッテリーセルに伝達されると、熱の連鎖により重大な事象を招くおそれがある。したがって、隣接するバッテリーセル間に断熱材を配置するなどして、熱の連鎖を回避している。
【0003】
例えば、特許文献1には、隣接するバッテリーセル間に配置される多層シートが記載されている。特許文献1の図3に示されているように、多層シートは、厚さ方向に、第1熱伝導シート/断熱シート/ゴムシート/断熱シート/第1熱伝導シートが積層されてなる。第1熱伝導シートは、熱伝導率が大きい金属などから形成され、放熱作用を有する。特許文献2には、隣接するバッテリーセル間に配置される仕切り部材が記載されている。仕切り部材は、温度上昇により溶融する母材と、該母材に埋め込まれた熱硬化性樹脂製のスペーサと、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-99940号公報
【特許文献2】特開2010-97693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断熱材の断熱性能を高めるには、厚さを大きくすればよい。しかしながら、バッテリーパック内のバッテリーセル間という限られたスペースに配置する場合には、断熱材の厚さを極力小さくする必要がある。このため、断熱材には、薄さと断熱性能との両方が要求される。
【0006】
隣接するバッテリーセル間には、断熱材とは別に、車両の走行時の振動などによるバッテリーセルの位置ずれを抑制したり、充放電によるバッテリーセルの膨張、収縮に追従できるように、ゴム製の緩衝材が介装される場合がある。この場合、バッテリーセル間には、断熱材と緩衝材とが積層されて配置される。例えば、バッテリーセルの温度が上昇し、数百℃という高温に達すると、ゴム製の緩衝材は溶融するなどして消失してしまう。緩衝材が消失すると、発熱して膨張したバッテリーセルが断熱材に接触し、平常では断熱材および緩衝材により保たれていたバッテリーセル間の間隔が狭くなる。バッテリーセル間の間隔が狭くなると、その分だけ断熱効果が低下する。この状態で断熱材のみにより熱の伝達を抑制しなければならなくなると、厚さや材質などの変更なしでは断熱性能に限界がある。また、溶融したゴム材料が、バッテリーパックに配置された冷却パイプなどの放熱性を担う部材に付着すると、冷却機能を阻害するおそれがある。
【0007】
上記特許文献1に記載されている多層シートも、ゴムシートを有している。しかしながら、多層シートにおいては、ゴムシートの厚さ方向両側に断熱シートが配置されている。ここで、ゴムシートと断熱シートとの大きさは同じである。すなわち、ゴムシートの厚さ方向両面は、断熱シートに被覆されている。さらに、断熱シートの厚さ方向両側には、放熱性に優れた第1熱伝導シートも配置されている。よって、バッテリーセルの温度が上昇しても、熱はゴムシートに伝達されにくい。特許文献1の段落[0036]に、「ゴムシート13は、第1熱伝導シート11および断熱シート12を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。」と記載されているように、多層シートにおいては、ゴムシートが溶融することは想定されていない。他方、上記特許文献2の仕切り部材においては、母材は蝋などから形成され、バッテリーセルの温度上昇により溶融する。特許文献2の段落[0007]に記載されているように、仕切り部材においては、母材が溶融する際の融解熱を利用してバッテリーセル間の熱の伝達を抑制している。母材に埋め込まれているスペーサは、母材が溶融した後もバッテリーセル間に残るため、バッテリーセル間の間隔は維持される。しかしながら、スペーサは熱硬化性樹脂からなり、スペーサの難燃性、熱伝導率は考慮されていない。よって、バッテリーセル間にスペーサが配置されるだけでは、断熱性能は充分ではない。
【0008】
本開示は、このような実情に鑑みてなされたものであり、あるバッテリーセルの温度が上昇しても、隣接するバッテリーセルとの間の間隔を確保して断熱シートによる断熱性を発揮させることにより、バッテリーセル間の熱の伝達を抑制することができる断熱弾性部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本開示の断熱弾性部材は、隣接するバッテリーセル間に配置される断熱弾性部材であって、断熱シートと、該断熱シートの片面に所定の間隔を空けて配置される複数の弾性体と、該断熱シートの片面において少なくとも該弾性体の間に配置され、該弾性体とは異なる材料からなり、難燃性を有し、熱伝導率が該弾性体の熱伝導率と同じかそれより小さい規制体と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の断熱弾性部材においては、断熱シートの片面に、複数の弾性体と規制体とが配置される。弾性体は、クッション性を有し、車両の走行時などにおけるバッテリーセルの位置ずれを抑制したり、充放電時のバッテリーセルの膨張、収縮による変形を吸収する役割を果たす。規制体は、弾性体の間に配置される。規制体は、弾性体とは異なる材料からなり、難燃性を有する。よって、バッテリーセルの温度が上昇して弾性体が溶融したとしても、規制体は残存し、これによりバッテリーセルの膨張が抑止され、バッテリーセル同士の間、バッテリーセルと断熱シートとの間の間隔を維持することができる。加えて、規制体の熱伝導率は弾性体の熱伝導率と同じかそれより小さいため、規制体による断熱効果も期待できる。このように規制体を介在させることにより、バッテリーセル間の間隔を維持すると共に、規制体および断熱シートによる断熱効果を充分に発揮させることができる。
【0011】
したがって、本開示の断熱弾性部材によると、断熱シートの厚さを大きくしたり、断熱性を担う材料を増やしたりすることなく、隣接するバッテリーセル間の熱の伝達を抑制することができる。これにより、コストの削減を図ることができる。また、断熱シートが曲がりやすく自立性に乏しい場合でも、規制体が骨格の役割を果たすため、断熱弾性部材全体として自立性が発現する。結果、組み付け時の作業性を向上させることができる。さらに、規制体を弾性体よりも下側に配置したり、弾性体の周囲に枠状に配置したりすると、溶融した弾性体の流出を抑制することができる。これにより、溶融した弾性体が、バッテリーパックに配置された冷却パイプなどの放熱性を担う部材に付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一実施形態の断熱弾性部材が配置されるバッテリーパックの断面模式図である。
図2】第一実施形態の断熱弾性部材の斜視図である。
図3】同断熱弾性部材の厚さ方向断面図である。
図4】第二実施形態の断熱弾性部材の斜視図である。
図5】同断熱弾性部材の厚さ方向断面図である。
図6】第三実施形態の断熱弾性部材の斜視図である。
図7】同断熱弾性部材の厚さ方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
[構成]
まず、第一実施形態の断熱弾性部材の構成を説明する。図1に、第一実施形態の断熱弾性部材が配置されるバッテリーパックの断面模式図を示す。図2に、第一実施形態の断熱弾性部材の斜視図を示す。図3に、図2のIII-III断面図(同断熱弾性部材の厚さ方向断面図)を示す。図中の方位については、バッテリーセルの並び方向(各部材の厚さ方向、積層方向)をX方向、X方向に直交する二方向のうち、バッテリーセルの長手方向である一方をY方向、短手方向(重力方向に対応する方向)である他方をZ方向としている(以下の図面においても同じ)。図1に示すように、バッテリーパック1は、筐体10と、複数のバッテリーセル2と、断熱弾性部材30と、を有している。
【0014】
筐体10は、金属製であり箱状を呈している。複数のバッテリーセル2は、リチウムイオン電池からなる。複数のバッテリーセル2は、各々、長方形薄板状を呈しており、厚さ方向(X方向)に積層されている。断熱弾性部材30は、隣り合うバッテリーセル2の間に配置されている。図2図3に示すように、断熱弾性部材30は、断熱シート40と、二つの弾性体50、51と、規制体60と、を有している。
【0015】
断熱シート40は、厚さ2mmの長方形シート状を呈している。断熱シート40は、シート本体41と、カバー層42と、を有している。シート本体41は、断熱層と、それを担持する基材と、を有している。断熱層は、シリカエアロゲルと、バインダーとしてのシリカ粒子および石こうと、を有している。基材は、ガラスクロスからなる。断熱層は、シリカエアロゲルを含むスラリー状の組成物を、基材に塗布して形成されている。断熱層の一部は、基材を構成するガラス繊維間の空孔に含浸されている。カバー層42は、樹脂製のフィルムからなり、シート本体41の表面を被覆している。カバー層42に被覆されていないシート本体41の裏面は、バッテリーセル2に接触している。
【0016】
二つの弾性体50、51は、断熱シート40の片面、すなわちY-Z面の一方に配置されている。二つの弾性体50、51は、断熱シート40のカバー層42に、両面テープ(図略)により接着されている。二つの弾性体50、51は、各々、Y方向(断熱シート40の長手方向)に延在し、Z方向(断熱シート40の短手方向)に所定の間隔を空けて互いに平行に配置されている。二つの弾性体50、51は、材質、形状および寸法において同じである。よって、ここでは一方の弾性体50についてのみ説明する。弾性体50は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)を有するゴム組成物の架橋物からなる。弾性体50は、平板部500と二つの突条部501とを有している。二つの突条部501は、各々、Y方向に延在している。二つの突条部501は、各々、Z方向に平板部500を介して互いに平行に配置されている。Z方向に平板部500と突条部501とが交互に配置されることにより、弾性体50のバッテリーセル2側の表面は凹凸状を呈している。二つの突条部501の高さ(弾性体50の最大厚さ)は、非圧縮状態で6mmである。二つの突条部501は、隣接するバッテリーセル2に弾接している。
【0017】
規制体60も、二つの弾性体50、51が配置されている断熱シート40のY-Z面に配置されている。規制体60は、断熱シート40のカバー層42に、両面テープ(図略)により接着されている。規制体60は、帯状を呈しており、二つの弾性体50、51の間に配置されている。規制体60は、Z方向の中間位置においてY方向に延在している。規制体60の厚さは2mmである。規制体60は、難燃断熱布からなる。難燃断熱布は、断熱シート40のシート本体41と同じものであり、シリカエアロゲルと、バインダーとしてのシリカ粒子および石こうと、を有する断熱層と、それを担持するガラスクロスと、を有している。断熱層の一部は、ガラスクロスの繊維間の空孔に含浸されている。ガラスクロスは、本開示における「無機繊維製の布」の概念に含まれる。規制体60は難燃性を有し、規制体60の熱伝導率は弾性体50、51の熱伝導率より小さい。
【0018】
[作用効果]
次に、本実施形態の断熱弾性部材の作用効果を説明する。断熱弾性部材30においては、断熱シート40の片面に、二つの弾性体50、51と規制体60とが配置される。二つの弾性体50、51は、バッテリーセル2に弾接し、バッテリーセル2の充放電時の膨張、収縮に追従して圧縮、復元を繰り返す。これにより、車両の走行時などにおけるバッテリーセル2の位置ずれが抑制されると共に、充放電によるバッテリーセル2の変形が吸収される。また、弾性体50は二つの突条部501を有する(弾性体51も同じ)ため、同じ厚さで直方体状に形成される場合と比較して、X-Z方向の断面積が小さくなる。このため、弾性体50、51は、圧縮変形しやすく、バッテリーセル2に対する追従性に優れる。二つの弾性体50、51は、いずれも一方向に直線状に延在する。このため、押し出し加工により製造しやすい。二つの弾性体50、51は、規制体60を挟んでZ方向に対称的に配置される。このため、隣接するバッテリーセル2の変形をバランス良く吸収することができ、充放電時にバッテリーセル2が傾くなどの不具合が生じにくい。
【0019】
規制体60は、二つの弾性体50、51の間に配置される。規制体60は、二つの弾性体50、51とは異なり、難燃断熱布からなる。よって、隣接するバッテリーセル2の温度が上昇しても、規制体60は、燃焼しにくく、熱を伝達しにくい。また、難燃断熱布は、シリカエアロゲルなどを含む断熱層がガラスクロスに担持されてなる。断熱層において、シリカエアロゲルなどの構成成分を結合するバインダーは、シリカ粒子および石こうである。このため、高温になってもバインダーの分解、劣化が生じにくく、断熱構造が維持される。また、規制体60は比較的硬く、バッテリーセル2の膨張により圧縮されても、潰れにくい。したがって、仮にバッテリーセル2の温度が上昇して二つの弾性体50、51が溶融したとしても、規制体60は残存する。これにより、バッテリーセル2の膨張が抑止され、バッテリーセル2と断熱シート40との間の間隔を維持することができる。規制体60は、二つの弾性体50、51を分断するように配置される。このため、弾性体50、51の溶融物を堰き止める効果も有する。ここで、規制体60はガラスクロスを有するため、弾性体50、51の溶融物の一部はガラス繊維間の空孔に含浸される。また、規制体60は、Z方向の中間位置に帯状に配置される。バッテリーセル2は、温度が上昇すると中央付近が膨張しやすい。よって、規制体60が断熱シート40の片面における中央域を含んで配置されると、バッテリーセル2と断熱シート40との間の間隔維持に効果的である。このように、断熱弾性部材30によると、規制体60および断熱シート40による断熱効果を充分に発揮させることができる。
【0020】
断熱弾性部材30の厚さは、8mmである。断熱弾性部材30によると、断熱シート40の厚さを大きくしたり、断熱性を担う材料を増やしたりすることなく、隣接するバッテリーセル2間の熱の伝達を抑制することができる。これにより、コストの削減を図ることができる。また、断熱シート40は薄く自立性に乏しいが、規制体60が骨格の役割を果たすため、断熱弾性部材30全体として自立性が発現する。結果、組み付け時の作業性を向上させることができる。断熱シート40のシート本体41は、カバー層42により被覆されている。これにより、ガラス繊維の毛羽立ちやシリカエアロゲルの粉落ちなどが抑制されるため、作業性などが向上する。また、シート本体41のガラスクロスへの弾性体50、51の溶融物の含浸を、抑制することができる。
【0021】
<第二実施形態>
[構成]
本実施形態の断熱弾性部材と第一実施形態の断熱弾性部材との相違点は、弾性体および規制体の配置形態である。ここでは、主に相違点を説明する。図4に、本実施形態の断熱弾性部材の斜視図を示す。図5に、図4のV-V断面図(同断熱弾性部材の厚さ方向断面図)を示す。図4図5中、第一実施形態と同じ部材については、同じ符号で示す。図4図5に示すように、断熱弾性部材31は、断熱シート40と、二つの弾性体52、53と、規制体61と、を有している。
【0022】
二つの弾性体52、53は、断熱シート40の片面、すなわちY-Z面の一方に配置されている。二つの弾性体52、53は、断熱シート40のカバー層42に、両面テープ(図略)により接着されている。二つの弾性体52、53は、Y方向(断熱シート40の長手方向)の両側に所定の間隔を空けて一つずつ配置されている。二つの弾性体52、53は、材質、形状および寸法において同じである。よって、ここでは一方の弾性体52についてのみ説明する。弾性体52は、EPDMを有するゴム組成物の架橋物からなる。弾性体52は、平板部520と六つの突条部521とを有している。六つの突条部521は、各々、Z方向に延在している。六つの突条部521は、各々、Z方向に平板部520を介して互いに平行に配置されている。Y方向に平板部520と突条部521とが交互に配置されることにより、弾性体52のバッテリーセル側の表面は凹凸状を呈している。六つの突条部521の高さ(弾性体52の最大厚さ)は、非圧縮状態で6mmである。六つの突条部521は、隣接するバッテリーセルに弾接している。
【0023】
規制体61も、二つの弾性体52、53が配置されている断熱シート40のY-Z面に配置されている。規制体61は、断熱シート40のカバー層42に、両面テープ(図略)により接着されている。規制体61は、長方形板状を呈しており、二つの弾性体52、53の間に配置されている。規制体61は、断熱シート40の片面をY方向に略三分割した場合の真ん中の区域に配置されている。規制体61の厚さは2mmである。規制体61は、第一実施形態の規制体60と同じ難燃断熱布からなる。
【0024】
[作用効果]
次に、本実施形態の断熱弾性部材の作用効果を説明する。本実施形態の断熱弾性部材と、第一実施形態の断熱弾性部材とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。断熱弾性部材31によると、二つの弾性体52、53は、規制体61を挟んでY方向に対称的に配置される。このため、隣接するバッテリーセルの変形をバランス良く吸収することができ、充放電時にバッテリーセルが傾くなどの不具合が生じにくい。規制体61は、Y方向の中間位置の全体に配置される。よって、バッテリーセルの温度が上昇し、中央付近が膨張した場合においても、バッテリーセルと断熱シート40との間の間隔維持に効果的である。
【0025】
<第三実施形態>
[構成]
本実施形態の断熱弾性部材と第一実施形態の断熱弾性部材との相違点は、断熱シートの構成、弾性体の形状、および外装体を有する点である。ここでは、主に相違点を説明する。図6に、本実施形態の断熱弾性部材の斜視図を示す。図7に、図6のVII-VII断面図(同断熱弾性部材の厚さ方向断面図)を示す。図6においては、説明の便宜上、外装体を省略して示す。図6図7中、第一実施形態と同じ部材については、同じ符号で示す。図6図7に示すように、断熱弾性部材32は、断熱シート43と、二つの弾性体54、55と、規制体60と、外装体44と、を有している。
【0026】
断熱シート43は、厚さ2mmの長方形シート状を呈している。断熱シート43は、第一実施形態のシート本体41と同じものであり、シリカエアロゲルなどを含む断熱層がガラスクロス製の基材に担持されてなる。
【0027】
二つの弾性体54、55は、断熱シート43の片面、すなわちY-Z面の一方に配置されている。二つの弾性体54、55は、各々、Y方向(断熱シート40の長手方向)に延在する平板状を呈している。二つの弾性体54、55は、Z方向(断熱シート40の短手方向)に所定の間隔を空けて互いに平行に配置されている。二つの弾性体54、55は、材質、形状および寸法において同じである。よって、ここでは一方の弾性体54についてのみ説明する。弾性体54は、EPDMを有するゴム組成物の架橋物からなる。弾性体54は、中空部540と、一対の肉抜き部541と、を有している。中空部540は、弾性体54の内部の中央部に配置され、Y方向に延在している。一対の肉抜き部541は、弾性体54のZ方向の両側面に配置され、各々、Y方向に延在している。弾性体54の厚さは、非圧縮状態で6mmである。弾性体54のバッテリーセル側の表面は、隣接するバッテリーセルに弾接している。
【0028】
規制体60も、二つの弾性体54、55が配置されている断熱シート43のY-Z面に配置されている。規制体60は、帯状を呈しており、二つの弾性体54、55の間に配置されている。規制体60は、Z方向の中間位置においてY方向に延在している。規制体60は、厚さ2mmの難燃断熱布からなる。
【0029】
外装体44は、樹脂製のフィルムからなり、断熱シート43、弾性体54、55、および規制体60からなる積層体全体の表面を被覆している。断熱弾性部材32は、袋状の樹脂製のフィルムの中に積層体を収容し、脱気した後、フィルムの開口部を熱圧着して製造されている。外装体44により、弾性体54、55および規制体60は断熱シート43に固定され一体化されている。
【0030】
[作用効果]
次に、本実施形態の断熱弾性部材の作用効果を説明する。本実施形態の断熱弾性部材と、第一実施形態の断熱弾性部材とは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。断熱弾性部材32において、弾性体54は、中空部540および一対の肉抜き部541を有している(弾性体55も同じ)。このため、同じ厚さで中実の直方体状に形成される場合と比較して、X-Z方向の断面積が小さくなる。よって、弾性体54、55は、圧縮変形しやすく、バッテリーセルに対する追従性に優れる。断熱弾性部材32は、外装体44を有し、弾性体54、55および規制体60は、外装体44により断熱シート43に固定され一体化される。このため、各部材を接着する接着剤、粘着剤などは不要である。加えて、断熱シート43、弾性体54、55および規制体60が外装体44の中に封入されるため、取り扱い性、作業性に優れる。また、ガラス繊維の毛羽立ちやシリカエアロゲルの粉落ちなどを考慮する必要がないため、第一、第二実施形態のように、断熱シートにおけるカバー層は必要ない。
【0031】
<その他の実施形態>
以上、本開示の断熱弾性部材を実施する三つの形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に限定されるものではない。本開示の断熱弾性部材は、当業者が行い得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
【0032】
[弾性体]
本開示の断熱弾性部材を構成する弾性体は、バッテリーセルの膨張、収縮に追従して変形可能な弾性を有すればよい。例えば、充電時にバッテリーセルが膨張した場合に、厚さが1/3~1/4程度、なかでも1/2程度になると好適である。弾性体の厚さは、バッテリーセル間の間隔、バッテリーセルの膨張の程度などを考慮して適宜決定すればよい。例えば、1mm以上6mm以下にすればよい。弾性体にゴム組成物の架橋物を用いる場合、ゴム成分としては、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。なかでも、低分子シロキサンを含まないという観点から、EPDMが好適である。また、ゴム成分の架橋剤としては、硫黄などの揮発成分を含まないという理由から、有機過酸化物を用いることが望ましい。
【0033】
弾性体は、断熱シートの片面に所定の間隔を空けて複数配置される。弾性体の配置形態は特に限定されないが、バッテリーセルの膨張、収縮による変形をバランス良く吸収するという観点から、バッテリーセルに積層される断熱シートの表面において対称的に配置されることが望ましい。弾性体の数は二つ以上であればよく、例えばバッテリーセルの並び方向をX方向、該X方向に直交する二方向のうち、一方をY方向、他方をZ方向とした場合に、Y方向またはZ方向を分割するように帯状に配置することができる。あるいは、Y-Z面を四分割するように配置するなど、Y-Z面に島状に配置してもよい。
【0034】
弾性体の形状は、特に限定されない。バッテリーセル側の表面は、第一、第二実施形態のように凹凸状でも、第三実施形態のように平板状でもよく、さらには曲面状でも構わない。また、弾性体は、中実でも中空でもよい。第一、第二実施形態のように、突条部を有する場合、突条部の数、形状などは特に限定されない。突条部の厚さ方向の断面は、台形状の他、矩形状、半円形状などでもよい。第三実施形態のように中空部を有する場合、中空部の大きさ、形状なども限定されない。
【0035】
[規制体]
本開示の断熱弾性部材を構成する規制体は、弾性体とは異なる材料からなる。規制体は、難燃性を有し、かつ熱伝導率が弾性体より小さければよい。難燃性の有無については、例えば次のバーナー試験により判断することができる。規制体の材料で厚さ2mmのシート状試験片を作製し、当該試験片にプロパンガスバーナーで1000℃程度の直火を10秒間当てる。これにより、試験片に穴があかなければ、規制体は「難燃性を有する」と判断してよい。さらに、バッテリーセルの温度上昇時の膨張による押圧力に耐えられる耐圧縮性を有することが望ましい。規制体は、断熱シートの構成部材と同じ材質にしてもよい。
【0036】
規制体を、難燃布または難燃紙で形成することができる。難燃布としては、断熱性も有する難燃断熱布が好適である。難燃断熱布としては、複数の微粒子が連結して骨格をなし、内部に細孔を有し、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する多孔質構造体と、バインダーと、を有する断熱層が、無機繊維製の布に担持されたものが挙げられる。後に詳しく説明するが、多孔質構造体は、複数の微粒子が連結して骨格をなし、10~50nm程度の大きさの細孔構造を有する。このため、多孔質構造体の熱伝導率は、空気の熱伝導率よりも小さく、多孔質構造体を有する断熱層は高い断熱性を有する。無機繊維製の布としては、ガラス繊維、ロックウール、セラミックファイバーなどから形成される織布や不織布が挙げられる。また、難燃紙としては、パルプおよびケイ酸マグネシウムの複合材として製造される難燃断熱紙などが挙げられる。
【0037】
規制体の形状は限定されない。規制体は、平常時はバッテリーセルに接触してもしなくてもよい。規制体の厚さは、硬さや圧縮時の挙動に応じて適宜決定すればよく、弾性体の厚さと同じか、それより大きくても小さくてもよい。規制体が比較的硬い場合には、弾性体よりも薄くするとよい。例えば、弾性体の厚さの1/2程度かそれ以下が好適である。反対に、規制体が比較的柔らかい場合には、弾性体と同じかそれより厚くてもよい。
【0038】
規制体の数、配置形態は限定されず、少なくとも弾性体と弾性体との間に配置すればよい。規制体は、一方向に延在するように配置しても、例えば十字型のように交差するように配置しても、島状に配置してもよい。規制体は、弾性体を分断するように配置する以外に、断熱シートの片面における周囲、バッテリーパックの冷却部材側の端部などに配置してもよい。これらの位置に規制体を配置することにより、バッテリーセルの温度上昇により生じた弾性体の溶融物の流出を、抑制することができる。また、断熱シートの片面における中央域を含むように規制体を配置すると、バッテリーセルの膨張抑止効果が高く、バッテリーセルと断熱シートとの間の間隔維持に効果的である。
【0039】
[断熱シート]
本開示の断熱弾性部材を構成する断熱シートは、断熱性を有するシート状の部材であれば、構成は限定されない。例えば、断熱シートを、断熱層と、該断熱層を担持する基材と、を有するよう構成することが望ましい。ここで、断熱層は、複数の微粒子が連結して骨格をなし、内部に細孔を有し、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する多孔質構造体と、バインダーと、を有することが望ましい。このような構成の断熱シートは、断熱層を製造するための組成物(断熱層用組成物)を、基材に塗布、乾燥して製造することができる。
【0040】
多孔質構造体は、表面および内部のうち少なくとも表面に疎水部位を有する。表面に疎水部位を有すると、水分などの染み込みを抑制することができるため、細孔構造が維持され、断熱性が損なわれにくい。例えば、シランカップリング剤などで表面処理することにより、多孔質構造体の表面に疎水性などの機能を付与することができる。また、多孔質構造体の製造過程において、疎水基を付与するなどの疎水化処理を施してもよい。
【0041】
多孔質構造体の種類は特に限定されない。一次粒子として、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどが挙げられる。なかでも化学的安定性に優れるという観点から、一次粒子がシリカである、すなわち複数のシリカ微粒子が連結して骨格をなすシリカエアロゲルが望ましい。シリカエアロゲルは白色を呈し赤外線を反射する。よって、シリカエアロゲルを用いると、断熱層に遮熱効果を付与することができる。
【0042】
シリカエアロゲルの製造方法は、特に限定されず、乾燥工程を常圧で行ったものでも、超臨界で行ったものでも構わない。例えば、疎水化処理を乾燥工程前に行うと、超臨界で乾燥する必要がなくなる、すなわち常圧で乾燥すればよいため、より容易かつ低コストに製造することができる。エアロゲルを製造する際の乾燥方法の違いにより、常圧で乾燥したものを「キセロゲル」、超臨界で乾燥したものを「エアロゲル」と呼び分けることがあるが、本明細書においては、その両方を含めて「エアロゲル」と称す。
【0043】
バインダーとしては、断熱層用組成物を調製しやすいという観点から、水(純水、水道水などを含む)を溶媒とするバインダー(水性バインダー)を用いるとよい。バインダーとしては、高温下での有機成分の分解、劣化を低減し、クラックなどの発生を抑制するという観点から、バインダーの成分が無機材料である無機バインダーを用いることが望ましい。無機材料としては、シリカ、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニアなどの金属酸化物の他、水ガラス(ケイ酸ナトリウム)、セメント、石こう、ケイ酸マグネシウム、生石灰、消石灰などが挙げられる。なかでも、多孔質構造体と相溶しやすく、安価で入手しやすいという理由から、シリカを有するバインダーが好適である。また、溶媒である水と反応しながら、多孔質構造体同士の間の隙間を埋めながらバインダー化することで高強度な断熱層を形成することができ、安価で入手しやすいという理由から、水硬性材料であるセメント、石こう、ケイ酸マグネシウムも好適である。
【0044】
無機材料がナノ粒子(ナノメートルオーダーの粒子)である場合には、断熱層が無機材料を有することによる硬さや脆さの欠点を改善することができる。シリカのナノ粒子を有するバインダーとしては、水を分散媒とするコロイダルシリカ、ケイ酸ナトリウム溶液などを用いればよい。チタニアのナノ粒子を有するバインダーとしては、チタニアの水分散液などを用いればよい。
【0045】
断熱層は、多孔質構造体およびバインダーの他に、架橋剤、増粘剤、補強繊維、難燃剤などの他の成分を含んでいてもよい。表面や内部に疎水部位を有する多孔質構造体は、水になじみにくい。なかでもシリカエアロゲルは比重が小さいため、水に浮きやすい。このため、断熱層用組成物を調製する際に、水を溶媒とするバインダー液にシリカエアロゲルを分散させるのは難しく、分散工程に時間を要する。例えば、増粘剤を配合すると、バインダー液の粘性が高くなり、疎水性の多孔質構造体の水懸濁性が向上して、多孔質構造体が分散しやすくなる。これにより、多孔質構造体の分散に要する時間を短縮することができ、生産性を高めることができる。また、断熱層に柔軟性が付与されるため、クラックの発生も抑制される。増粘剤としては、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キサンタンガム、アガロース、カラギナンなどの多糖類や、ポリビニルアルコール、グルコマンナンなどを用いればよい。
【0046】
補強繊維を配合すると、多孔質構造体の周りに物理的に絡み合って存在することにより、断熱層の機械的強度が向上し、多孔質構造体の脱落を抑制することができる。補強繊維の種類は特に限定されないが、耐熱性などを考慮すると、ガラス繊維、アルミナ繊維などのセラミック繊維が好適である。
【0047】
難燃剤を配合すると、断熱層に難燃性を付与することができる。難燃剤は、ハロゲン系、リン系、金属水酸化物系などの既に公知のものを使用すればよい。環境負荷を考慮すると、リン系難燃剤を用いることが望ましい。リン系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、赤リン、リン酸エステルなどが挙げられる。なかでも、使用中に水分と接触しても難燃剤が流出しにくいという理由から、水に不溶なものが望ましく、例えばポリリン酸アンモニウムが好適である。
【0048】
基材の材質は、布、樹脂、紙などが挙げられる。布を構成する繊維としては、ガラス繊維、ロックウール、セラミックファイバー、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維、金属繊維、ポリイミド繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維などが挙げられる。セラミックファイバーとしては、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)、多結晶質アルミナファイバー(Polycrystalline Wool:PCW)、アルカリアースシリケート(AES)ファイバーが知られている。なかでも、AESファイバーは、生体溶解性を有するためより安全性が高い。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリアミド、PPSなどが挙げられる。紙としては、パルプ、パルプおよびケイ酸マグネシウムの複合材などが挙げられる。基材の形状は特に限定されず、織布、不織布、フィルム、シートなどが挙げられる。例えば、ガラスクロスなど、ガラス繊維や金属繊維などの無機繊維から製造される織布、不織布や、パルプおよびケイ酸マグネシウムの複合材として製造される難燃断熱紙は、熱伝導率が比較的小さく、高温雰囲気においても形状保持性が高い。耐熱性が高い基材は、ガラス繊維、ロックウール、セラミックファイバー、ポリイミド、PPSなどから製造すればよく、具体的には、ガラス繊維不織布、ガラスクロス、アルミガラスクロス、AESウールペーパー、ポリイミド繊維不織布などが挙げられる。
【0049】
断熱シートは、断熱層に加えて、難燃性、輻射放熱性、電気絶縁性などの機能を有する機能層を有してもよい。機能層は、断熱層の片側または両側に積層すればよい。機能層は、必要な機能に応じて配合されるマイカ、カオリナイト、シリカ、タルク、ジルコニア、酸化チタンなどの機能材料を、バインダーで結合して形成することができる。断熱シートは、断熱層、機能層などからなるシート本体を被覆するカバー層を有してもよい。カバー層を配置することにより、弾性体および規制体の接着性や、取り扱い性、作業性が向上する。カバー層は、例えば、タルク、カオリナイト、モンモリナイト、マイカ、シリカ、チタン酸カリウム、酸化チタン、窒化ケイ素、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ジルコニアなどの高融点材料と、難燃剤としてのポリリン酸アンモニウムと、バインダーとしてのウレタン樹脂と、を含んで形成することができる。また、高融点材料およびコロイダルシリカを含んで形成してもよい。さらに、カバー層として、ガラスクロスや、ポリイミドなどからなる樹脂フィルムを用いてもよい。
【0050】
[外装体]
外装体は必ずしも必要ではないが、袋状の外装体の中に断熱シートなどの部材を収容することにより、各部材を一体化することができ、取り扱い性、作業性が向上する。外装体としては、PET、ポリプロピレン(PP)などからなる樹脂フィルムなどが好適である。
【0051】
[バッテリーパック]
本開示の断熱弾性部材が適用されるバッテリーセルの種類は、特に限定されない。例えば、リチウムイオン電池からなる複数のバッテリーセルと、本開示の断熱弾性部材と、が積層されてなるバッテリーモジュールを、締結部材により積層方向の両側から締め付けて筐体内に収容して、バッテリーパックを構成することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:バッテリーパック、2:バッテリーセル、10:筐体、30、31、32:断熱弾性部材、40、43:断熱シート、41:シート本体、42:カバー層、44:外装体、50、51、52、53、54、55:弾性体、60、61:規制体、500、520:平板部、501、521:突条部、540:中空部、541:肉抜き部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7