(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035631
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】取付部材、取付ユニット、配策モジュール、及び配策部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20230306BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
H02G3/30
F16B19/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142633
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高木 哲史
【テーマコード(参考)】
3J036
5G363
【Fターム(参考)】
3J036AA01
3J036BA01
5G363AA07
5G363AA11
5G363AA12
5G363DA13
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】シートからの脱落を防止可能とした取付部材を提供すること。
【解決手段】取付部材30は、第1主面21と第2主面22とを有するシート20に取り付けられる。取付部材30は、第1部分31と第2部分32とヒンジ部33とを有する一体成形品である。ヒンジ部33は、第1部分31と第2部分32との相対的な位置が異なる第1状態と第2状態とへの変形を可能とする。第1部分31は、第1状態においてシート20の貫通部23を貫通する第1挿通部34と、第1挿通部34の第1端部側から屈曲して延びて第1状態において第1主面21に接触される第1台座部35と、第1挿通部34の第2端部側に設けられ電線部材が固定される固定部36とを有する。第2部分32は、第1状態において第1台座部35と異なる方向に延びて第1主面21に接触される第2台座部38を有する。第1台座部35と第2台座部38とは、第2状態において互いに沿って延びる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と前記第1主面の裏側の第2主面とを有するシートに取り付けられ、ハーネス部品が固定される取付部材であって、
第1部分と第2部分と連結部とを有し、
前記第1部分と前記第2部分と前記連結部とは一体成形品であり、
前記連結部は、前記第1部分と前記第2部分との相対的な位置が異なる第1状態と第2状態とへの変形を可能としながら前記第1部分と前記第2部分とを連結しており、
前記第1部分は、
前記第1状態において前記シートの貫通部を貫通する第1挿通部と、
前記第1挿通部の第1端部側から屈曲して延びて前記第1状態において前記第1主面に接触される第1台座部と、
前記第1挿通部の第2端部側に設けられ前記ハーネス部品が固定される固定部と
を有し、
前記第2部分は、
前記第1状態において前記第1台座部と異なる方向に延びて前記第1主面に接触される第2台座部を有し、
前記第1台座部と前記第2台座部とは、前記第2状態において互いに沿って延びる、取付部材。
【請求項2】
前記連結部は、薄肉のヒンジ部である、請求項1に記載の取付部材。
【請求項3】
前記第2部分は、前記第2台座部から屈曲して延びるとともに前記第1状態において前記第1挿通部に沿って延びて前記貫通部を貫通する第2挿通部を有し、
前記ヒンジ部は、前記第1挿通部と前記第1台座部との境目の第1角部と、前記第2挿通部と前記第2台座部との境目の第2角部とを連結する、請求項2に記載の取付部材。
【請求項4】
前記第1挿通部及び前記第2挿通部の一方は、係止部を有し、
前記第1挿通部及び前記第2挿通部の他方は、被係止部を有し、
前記係止部は、前記第1状態で前記被係止部に係止される、請求項3に記載の取付部材。
【請求項5】
前記第1挿通部の前記第1端部である前記第1台座部側の端部は、前記第1状態において前記第2挿通部が配置される側の反対側から凹設された第1溝を有し、前記第2挿通部の前記第2台座部側の端部は、前記第1状態において前記第1挿通部が配置される側の反対側から凹設された第2溝を有する、請求項3または請求項4に記載の取付部材。
【請求項6】
前記第1台座部の前記第1挿通部側の端部は、前記第2状態において前記第2台座部が配置される側の反対側から凹設された湾曲形状の第1案内部を有し、前記第2台座部の前記第2挿通部側の端部は、前記第2状態において前記第1台座部が配置される側の反対側から凹設された湾曲形状の第2案内部を有する、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の取付部材。
【請求項7】
前記第1挿通部は、前記第1状態において前記第2主面と係合する第1爪を有し、前記第2挿通部は、前記第1状態において前記第2主面と係合する第2爪を有する、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の取付部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の取付部材と、
前記ハーネス部品に固定され前記固定部に嵌着される固定部材と
を備える取付ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の取付ユニットと、
前記固定部材が固定される前記ハーネス部品と、
前記取付部材が取り付けられる前記シートと
を備える配策モジュール。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の取付部材と、
前記取付部材が取り付けられる前記シートと
を備える配策部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取付部材、取付ユニット、配策モジュール、及び配策部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられたルーフライニング等のシートに電線やコネクタ等のハーネス部品を固定する構造としては、例えばシートに取付部材を接着剤で固定し、その取付部材にハーネス部品を固定する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、例えば、ハーネス部品である電線の位置が予め設定した位置からずれないように、電線をシートに対して配策することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構造では、例えば、車両走行時の振動等によって取付部材とシートとの接着部位が剥がれてしまい、取付部材がシートから脱落する虞があった。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、シートからの取付部材の脱落を防止可能とした取付部材、取付ユニット、配策モジュール、及び配策部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の取付部材は、第1主面と前記第1主面の裏側の第2主面とを有するシートに取り付けられ、ハーネス部品が固定される取付部材であって、第1部分と第2部分と連結部とを有し、前記第1部分と前記第2部分と前記連結部とは一体成形品であり、前記連結部は、前記第1部分と前記第2部分との相対的な位置が異なる第1状態と第2状態とへの変形を可能としながら前記第1部分と前記第2部分とを連結しており、前記第1部分は、前記第1状態において前記シートの貫通部を貫通する第1挿通部と、前記第1状態において前記第1挿通部の第1端部側から屈曲して延びて前記第1主面に接触される第1台座部と、前記第1挿通部の第2端部側に設けられ前記ハーネス部品が固定される固定部とを有し、前記第2部分は、前記第1状態において前記第1台座部と異なる方向に延びて前記第1主面に接触される第2台座部を有し、前記第1台座部と前記第2台座部とは、前記第2状態において互いに沿って延びる。
【0006】
本開示の取付ユニットは、前記取付部材と、前記ハーネス部品に固定され前記固定部に嵌着される固定部材とを備える。
本開示の配策モジュールは、前記取付ユニットと、前記固定部材が固定される前記ハーネス部品と、前記取付部材が取り付けられる前記シートとを備える。
【0007】
本開示の配策部材は、前記取付部材と、前記取付部材が取り付けられる前記シートとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の取付部材、取付ユニット、配策モジュール、及び配策部材によれば、シートからの取付部材の脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態における配策モジュールの一部斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態における配策モジュールの一部正面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態における配策モジュールの一部分解正面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態における第1状態の取付部材の側面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態における第1状態の取付部材の斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態における第2状態の取付部材の側面図である。
【
図7】
図7は、一実施形態における第2状態の取付部材の正面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態における取付部材の組み付け方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の取付部材は、
[1]第1主面と前記第1主面の裏側の第2主面とを有するシートに取り付けられ、ハーネス部品が固定される取付部材であって、第1部分と第2部分と連結部とを有し、前記第1部分と前記第2部分と前記連結部とは一体成形品であり、前記連結部は、前記第1部分と前記第2部分との相対的な位置が異なる第1状態と第2状態とへの変形を可能としながら前記第1部分と前記第2部分とを連結しており、前記第1部分は、前記第1状態において前記シートの貫通部を貫通する第1挿通部と、前記第1挿通部の第1端部側から屈曲して延びて前記第1状態において前記第1主面に接触される第1台座部と、前記第1挿通部の第2端部側に設けられ前記ハーネス部品が固定される固定部とを有し、前記第2部分は、前記第1状態において前記第1台座部と異なる方向に延びて前記第1主面に接触される第2台座部を有し、前記第1台座部と前記第2台座部とは、前記第2状態において互いに沿って延びる。
【0011】
同構成によれば、取付部材は、第2状態において互いに沿って延びる第1台座部と第2台座部とを第2主面側から第1主面側に向かって同時に貫通部を通すことができる。また、取付部材は、第2状態から第1状態に変形させると、第1台座部と第2台座部とが異なる方向に延びるため、第1台座部及び第2台座部が第2主面側に抜け出ないようにすることができる。これにより、取付部材は第2主面側からシートに組み付け可能となる。また、シートからの取付部材の脱落を防止することができる。また、第1部分と第2部分と連結部とは一体成形品であるため、例えば、複数の部品からなる構成に比べて、部品点数や成形型を低減できるとともに、組み立てが不要となる。
【0012】
[2]前記連結部は、薄肉のヒンジ部であることが好ましい。
同構成によれば、簡単な構成で、第1状態と第2状態とへの変形を安定して行うことができる。
【0013】
[3]前記第2部分は、前記第2台座部から屈曲して延びるとともに前記第1状態において前記第1挿通部に沿って延びて前記貫通部を貫通する第2挿通部を有し、前記ヒンジ部は、前記第1挿通部と前記第1台座部との境目の第1角部と、前記第2挿通部と前記第2台座部との境目の第2角部とを連結することが好ましい。
【0014】
同構成によれば、第2状態で第1台座部と第2台座部とを貫通部に通した後、第2主面側から第1挿通部と第2挿通部とを操作して容易に取付部材を第1状態に変形させることができる。
【0015】
[4]前記第1挿通部及び前記第2挿通部の一方は、係止部を有し、前記第1挿通部及び前記第2挿通部の他方は、被係止部を有し、前記係止部は、前記第1状態で前記被係止部に係止されることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、第1状態で係止部が被係止部に係止されることにより取付部材は第1状態が維持される。よって、第1台座部と第2台座部とが異なる方向に延びる状態が維持され、第1台座部及び第2台座部が第2主面側に抜け出ることが安定して防止される。
【0017】
[5]前記第1挿通部の前記第1端部である前記第1台座部側の端部は、前記第1状態において前記第2挿通部が配置される側の反対側から凹設された第1溝を有し、前記第2挿通部の前記第2台座部側の端部は、前記第1状態において前記第1挿通部が配置される側の反対側から凹設された第2溝を有することが好ましい。
【0018】
同構成によれば、貫通部を形成するシートの縁部が第1溝及び第2溝内に食い込むことで、取付部材に対するシートの干渉度合が緩和されるため、取付部材をシートに対して正常な位置に安定して保持しておくことができる。
【0019】
[6]前記第1台座部の前記第1挿通部側の端部は、前記第2状態において前記第2台座部が配置される側の反対側から凹設された湾曲形状の第1案内部を有し、前記第2台座部の前記第2挿通部側の端部は、前記第2状態において前記第1台座部が配置される側の反対側から凹設された湾曲形状の第2案内部を有することが好ましい。
【0020】
同構成によれば、第2状態で第1台座部と第2台座部とを貫通部に通した後、取付部材を第1状態に変形させる際に、貫通部を形成するシートの縁部が第1案内部及び第2案内部によって円滑に第1挿通部及び第2挿通部と対向する側に案内される。
【0021】
[7]前記第1挿通部は、前記第1状態において前記第2主面と係合する第1爪を有し、前記第2挿通部は、前記第1状態において前記第2主面と係合する第2爪を有することが好ましい。
【0022】
同構成によれば、第1爪及び第2爪が第2主面と係合することで、取付部材をシートに対して正常な位置に安定して保持しておくことができる。
本開示の取付ユニットは、
[8]前記取付部材と、前記ハーネス部品に固定され前記固定部に嵌着される固定部材とを備える。
【0023】
同構成によれば、固定部材をハーネス部品に固定しておき、その固定部材を固定部に嵌着させることでハーネス部品を取付部材に容易に組み付けることができる。
本開示の配策モジュールは、
[9]前記取付ユニットと、前記固定部材が固定される前記ハーネス部品と、前記取付部材が取り付けられる前記シートとを備える。
【0024】
同構成によれば、取付部材と同様の作用効果が得られる。
本開示の配策部材は、
[10]前記取付部材と、前記取付部材が取り付けられる前記シートとを備える。
【0025】
同構成によれば、取付部材と同様の作用効果が得られる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配策モジュール10の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
[配策モジュール10の構成]
図1~
図3に示すように、配策モジュール10は、シート20と、取付部材30と、固定部材40と、ハーネス部品としての電線部材50とを備えている。なお、本実施形態では、シート20と取付部材30とが配策部材60を構成している。また、取付部材30と固定部材40とが取付ユニット70を構成している。
【0027】
[シート20の構成]
シート20は、例えば、車体の天井の内面に設けられるルーフライニングである。本実施形態のシート20は、不織布である。シート20は、第1主面21と第1主面21の裏側の第2主面22とを有する。シート20は、貫通部23を有する。本実施形態の貫通部23は、貫通方向から見て長方形の貫通孔、または一直線状の切り込みである。
【0028】
[取付部材30の構成]
取付部材30は、樹脂製である。
図4に示すように、取付部材30は、第1部分31と第2部分32と連結部としてのヒンジ部33とを有する。第1部分31と第2部分32とヒンジ部33とは一体成形品である。ヒンジ部33は、第1部分31と第2部分32との相対的な位置が異なる第1状態と第2状態とへの変形を可能としながら第1部分31と第2部分32とを連結している。なお、
図1~
図5は、取付部材30の第1状態を図示し、
図6及び
図7は、取付部材30の第2状態を図示している。
【0029】
図1及び
図4に示すように、第1部分31は、第1挿通部34と、第1台座部35と、固定部36とを有する。第1挿通部34は、第1状態においてシート20の貫通部23を貫通する。第1挿通部34は、板状である。第1台座部35は、第1挿通部34の第1端部側から屈曲して延びて第1状態において第1主面21に接触される。第1台座部35は、第1挿通部34の幅方向の全体から屈曲して延びる板状である。固定部36は、第1挿通部34の第2端部側に設けられている。固定部36は、第1挿通部34の幅方向の全体から第1挿通部34を延長するように延びる板状である。固定部36は、固定孔36aを有している。
【0030】
第2部分32は、第2挿通部37と、第2台座部38とを有する。第2挿通部37は、第1状態において第1挿通部34に沿って延びてシート20の貫通部23を貫通する。言い換えると、第2挿通部37は、第1状態において第1挿通部34と同じ方向に延びてシート20の貫通部23を貫通する。第2挿通部37は、板状である。第2挿通部37の幅は第1挿通部34の幅と同じである。第2挿通部37は、第1状態において第1挿通部34と板厚方向に重なる。第2台座部38は、第2挿通部37の第1端部側から屈曲して延びて第1状態において第1主面21に接触される。第2台座部38は、第1状態において第1台座部35と異なる方向であって反対方向に延びて第1主面21に接触される。第2台座部38は、第2挿通部37の幅方向の全体から屈曲して延びる板状である。
【0031】
図4、
図6~
図8に示すように、ヒンジ部33は、第1挿通部34と第1台座部35との境目の第1角部31aと、第2挿通部37と第2台座部38との境目の第2角部32aとを連結する。ヒンジ部33は、第1挿通部34、第1台座部35、第2挿通部37、及び第2台座部38に比べて薄肉であり、可撓性を有する。
図7に示すように、本実施形態のヒンジ部33の幅は、第1挿通部34の幅、及び第2挿通部37の幅よりも小さい。ヒンジ部33は、第1挿通部34と第2挿通部37とが互いに沿って延びる第1状態(
図4参照)と、第1台座部35と第2台座部38とが互いに沿って延びる第2状態(
図6参照)とへの変形を可能としながら第1部分31と第2部分32とを連結している。すなわち、第1部分31と第2部分32とはヒンジ部33を中心として相対的に回動可能とされている。取付部材30は、第1部分31と第2部分32との相対的な回動によって第1状態と第2状態とに変形可能とされている。なお、取付部材30は、
図6に示す第2状態で、図示しない金型を用いて成形されている。
【0032】
図3及び
図5に示すように、第1挿通部34は、係止部34aを有する。また、第2挿通部37は、被係止部37aを有する。被係止部37aは、固定孔37bを有している。係止部34aは、第1状態で被係止部37aに係止される。詳しくは、係止部34aは、第1挿通部34から突出する基部34bと、基部34bの先端両側から基端側に延びて幅方向に可撓性を有する可撓片34cとを有している。係止部34aは、可撓片34cが幅方向内側に撓むことで固定孔37bを貫通していくことが可能とされ、固定孔37bを貫通すると可撓片34cが幅方向外側に広がることで、被係止部37aに嵌着されて固定孔37bからの抜けが防止される。
【0033】
図4に示すように、第1挿通部34の第1台座部35側の端部は、第1状態において第2挿通部37が配置される側の反対側から凹設された第1溝34dを有する。第2挿通部37の第2台座部38側の端部は、第1状態において第1挿通部34が配置される側の反対側から凹設された第2溝37cを有する。第1溝34d及び第2溝37cは、それぞれ第1挿通部34及び第2挿通部37の幅方向全体に形成されている。第1溝34d及び第2溝37cは、それぞれ第1挿通部34及び第2挿通部37の幅方向から見て中央ほど深さが深くなる湾曲形状である。
【0034】
また、
図6に示すように、第1台座部35の第1挿通部34側の端部は、第2状態において第2台座部38が配置される側の反対側から凹設された湾曲形状の第1案内部35aを有する。第2台座部38の第2挿通部37側の端部は、第2状態において第1台座部35が配置される側の反対側から凹設された湾曲形状の第2案内部38aを有する。第1案内部35a及び第2案内部38aは、それぞれ第1台座部35及び第2台座部38の幅方向全体に形成されている。第1案内部35a及び第2案内部38aは、それぞれ第1台座部35及び第2台座部38の幅方向から見て中央ほど深さが深くなる湾曲形状である。第1溝34dと第1案内部35aとは、連続した湾曲形状とされている。第2溝37cと第2案内部38aとは、連続した湾曲形状とされている。
【0035】
また、
図4に示すように、第1挿通部34は、第1状態において第2主面22と係合する第1爪39aを有する。第1爪39aは、第1挿通部34に一対設けられている。第1爪39aは、第1挿通部34の幅方向の両側に設けられている。第1爪39aは、第1挿通部34の第1台座部35側に向かって高さが徐々に高くなるように形成されている。第1爪39aは、第1挿通部34の第1台座部35側に向かって幅が徐々に大きくなるように形成されている。
【0036】
また、第2挿通部37は、第1状態において第2主面22と係合する第2爪39bを有する。第2爪39bは、第2挿通部37に一対設けられている。第2爪39bは、第2挿通部37の幅方向の両側に設けられている。第2爪39bは、第2挿通部37の第2台座部38側に向かって高さが徐々に高くなるように形成されている。第2爪39bは、第2挿通部37の第2台座部38側に向かって幅が徐々に大きくなるように形成されている。
【0037】
[電線部材50の構成]
図1から
図3に示すように、電線部材50は、例えば、複数の電線からなる電線束をテープ等の外装部材でまとめて覆ったものである。
【0038】
[固定部材40の構成]
固定部材40は、樹脂製である。
固定部材40は、電線部材50に固定され、固定部36に嵌着されるものである。詳しくは、固定部材40は、電線部材50に固定される電線固定部41と、電線固定部41から突出して固定孔36aを貫通しつつ固定部36に嵌着される嵌着部42とを有している。本実施形態の電線固定部41は、長方形の板状であり、電線部材50に沿った状態で電線部材50と共にまとめてテープ43が巻かれることで電線部材50に固定される。本実施形態の嵌着部42は、電線固定部41から突出する基部42aと、基部42aの先端両側から基端側に延びて幅方向に可撓性を有する可撓片42bとを有している。嵌着部42は、可撓片42bが幅方向内側に撓むことで固定孔36aを貫通していくことが可能とされ、固定孔36aを貫通すると可撓片42bが幅方向外側に広がることで、固定部36に嵌着されて固定孔36aからの抜けが防止される。
【0039】
上記のように構成された配策モジュール10の作用について説明する。
取付部材30は、シート20に対して第2主面22側から組み付けられる。
詳しくは、
図6に示すように、まず、取付部材30は、第1台座部35と第2台座部38とが互いに沿って延びる第2状態で、第1台座部35と第2台座部38とがシート20の貫通部23に第2主面22側から挿入される。
【0040】
次に、
図8に示すように、例えば、作業者は、第2主面22側から第1挿通部34と第2挿通部37とを操作して、第1部分31と第2部分32とをヒンジ部33を中心として相対的に回動させる。このとき、貫通部23を形成するシート20の縁部は、第1案内部35a及び第2案内部38aによって円滑に第1挿通部34及び第2挿通部37と対向する側に案内されて、
図4に示すように、第1溝34d及び第2溝37c内に食い込むように配置される。
【0041】
また、
図4に示すように、取付部材30は、第1挿通部34と第2挿通部37とが互いに沿って延びる第1状態とされると、係止部34aが被係止部37aに係止される。また、第1状態では、第1台座部35と第2台座部38とが貫通部23を中心として互いに異なる方向であって反対方向に延びる状態とされる。これにより、取付部材30は、シート20への組み付けが完了する。
【0042】
そして、固定部材40は、電線固定部41が電線部材50に固定された状態(
図3参照)で、嵌着部42が取付部材30の固定部36に嵌着される(
図2参照)。
このように組み付けられた配策モジュール10では、電線部材50の位置が予め設定した位置からずれないように、電線部材50がシート20に対して配策される。
【0043】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)取付部材30は、第2状態において互いに沿って延びる第1台座部35と第2台座部38とを第2主面22側から第1主面21側に向かって同時に貫通部23を通すことができる。また、取付部材30は、第2状態から第1状態に変形させると、第1台座部35と第2台座部38とが異なる方向に延びるため、第1台座部35及び第2台座部38が第2主面22側に抜け出ないようにすることができる。これにより、取付部材30は第2主面22側からシート20に組み付け可能となる。また、シート20からの取付部材30の脱落を防止することができる。また、第1部分31と第2部分32とヒンジ部33とは一体成形品であるため、例えば、複数の部品からなる構成に比べて、部品点数や成形型を低減できるとともに、組み立てが不要となる。
【0044】
(2)第1状態と第2状態とへの変形を可能とする連結部を薄肉のヒンジ部33としたため、簡単な構成で、第1状態と第2状態とへの変形を安定して行うことができる。
(3)第2部分32は、第2台座部38から屈曲して延びる第2挿通部37を有し、ヒンジ部33は、第1挿通部34と第1台座部35との境目の第1角部31aと、第2挿通部37と第2台座部38との境目の第2角部32aとを連結する。これにより、第2状態で第1台座部35と第2台座部38とを貫通部23に通した後、第2主面22側から第1挿通部34と第2挿通部37とを操作して第1部分31と第2部分32とを回動させて容易に取付部材30を第1状態に変形させることができる。
【0045】
(4)第1状態で係止部34aが被係止部37aに係止されることにより取付部材30は第1状態が維持される。よって、第1台座部35と第2台座部38とが異なる方向に延びる状態が維持され、第1台座部35及び第2台座部38が第2主面22側に抜け出ることが安定して防止される。
【0046】
(5)第1挿通部34の第1台座部35側の端部は、第1溝34dを有し、第2挿通部37の第2台座部38側の端部は、第2溝37cを有する。よって、貫通部23を形成するシート20の縁部が第1溝34d及び第2溝37c内に食い込むことで、取付部材30に対するシート20の干渉度合が緩和されるため、取付部材30をシート20に対して正常な位置に安定して保持しておくことができる。
【0047】
(6)第1台座部35の第1挿通部34側の端部は、湾曲形状の第1案内部35aを有し、第2台座部38の第2挿通部37側の端部は、湾曲形状の第2案内部38aを有する。よって、第2状態から第1状態に変形させる際に、貫通部23を形成するシート20の縁部が第1案内部35a及び第2案内部38aによって円滑に第1挿通部34及び第2挿通部37と対向する側に案内される。すなわち、取付部材30を第2状態から第1状態に変形させる際に、貫通部23を形成するシート20の縁部がめくれあがってしまうといったことが抑制され、取付部材30をシート20に安定して組み付けることができる。
【0048】
(7)第1挿通部34は、第1状態において第2主面22と係合する第1爪39aを有し、第2挿通部37は、第1状態において第2主面22と係合する第2爪39bを有する。第1爪39a及び第2爪39bが第2主面22と係合することで、取付部材30をシート20に対して正常な位置に安定して保持しておくことができる。
【0049】
(8)取付ユニット70は、取付部材30と、電線部材50に固定され固定部36に嵌着される固定部材40とを備える。よって、固定部材40を電線部材50に固定しておき、その固定部材40を固定部36に嵌着させることで電線部材50を取付部材30に容易に組み付けることができる。
【0050】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・上記実施形態では、連結部は、第1部分31と第2部分32とを回動可能に連結する薄肉のヒンジ部33であるとしたが、第1状態と第2状態とへの変形を可能とする連結部であれば、他の連結部としてもよい。例えば、連結部は、自由に曲げることができる薄肉で長尺の連結部としてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、第1挿通部34は、係止部34aを有し、第2挿通部37は、被係止部37aを有するとしたが、逆に、第1挿通部34が被係止部を有し、第2挿通部37が係止部を有する構成としてもよい。また、係止部34aと被係止部37aとは、同様の機能を有する他の形状の構成に変更してもよい。
【0053】
・上記実施形態では、第1挿通部34の第1台座部35側の端部は、第1溝34dを有するとしたが、これに限定されず、第1溝34dを有していない構成としてもよい。第2挿通部37の第2台座部38側の端部は、第2溝37cを有するとしたが、これに限定されず、第2溝37cを有していない構成としてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、第1台座部35の第1挿通部34側の端部は、第1案内部35aを有するとしたが、これに限定されず、第1案内部35aを有していない構成としてもよい。第2台座部38の第2挿通部37側の端部は、第2案内部38aを有するとしたが、これに限定されず、第2案内部38aを有していない構成としてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、第1挿通部34は、第1状態において第2主面22と係合する第1爪39aを有するとしたが、これに限定されず、第1爪39aを有していない構成としてもよい。第2挿通部37は、第1状態において第2主面22と係合する第2爪39bを有するとしたが、これに限定されず、第2爪39bを有していない構成としてもよい。また、第1爪39a及び第2爪39bの数は変更してもよい。また、第1爪39a及び第2爪39bが設けられる位置は変更してもよい。
【0056】
・上記実施形態では、電線部材50は、固定部材40を介して取付部材30の固定部36に固定される構成としたが、これに限定されず、例えば、固定部36に直接固定される構成としてもよい。例えば、電線部材50は、固定孔36aを貫通することで固定部36に固定される構成としてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、固定部材40の電線固定部41は、電線部材50と共にテープ43が巻かれることで電線部材50に固定される構成としたが、これに限定されず、例えば、電線部材50に巻き付けられて固定されるベルトを有した電線固定部としてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、第1挿通部34、第1台座部35、第2挿通部37、及び第2台座部38は、それぞれ板状であるとしたが、これに限定されず、例えば、それぞれ棒状等、他の形状に変更してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、取付部材30に固定されるハーネス部品は電線部材50であるとしたが、これに限定されず、例えば、コネクタやプロテクタ等の他のハーネス部品としてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、シート20は、例えば、車体の天井の内面に設けられるルーフライニングであるとしたが、これに限定されず、例えば、ドアトリム等の他の部位に設けられるシートとしてもよい。
【0061】
・上記実施形態では、シート20は、不織布であるとしたが、これに限定されず、例えば、編み物等の他のシートとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10 配策モジュール
20 シート
21 第1主面
22 第2主面
23 貫通部
30 取付部材
31 第1部分
31a 第1角部
32 第2部分
32a 第2角部
33 ヒンジ部(連結部)
34 第1挿通部
34a 係止部
34b 基部
34c 可撓片
34d 第1溝
35 第1台座部
35a 第1案内部
36 固定部
36a 固定孔
37 第2挿通部
37a 被係止部
37b 固定孔
37c 第2溝
38 第2台座部
38a 第2案内部
39a 第1爪
39b 第2爪
40 固定部材
41 電線固定部
42 嵌着部
42a 基部
42b 可撓片
43 テープ
50 電線部材(ハーネス部品)
60 配策部材
70 取付ユニット