(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023035632
(43)【公開日】2023-03-13
(54)【発明の名称】密閉型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/06 20060101AFI20230306BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20230306BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20230306BHJP
【FI】
F04B39/06 U
F04B39/06 T
F04C29/12 C
F04C29/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142634
(22)【出願日】2021-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 浩志
(72)【発明者】
【氏名】上田 健史
(72)【発明者】
【氏名】多田 直人
(72)【発明者】
【氏名】秋本 諒
(72)【発明者】
【氏名】安井 達也
(72)【発明者】
【氏名】森田 雄大
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB04
3H003AC03
3H003BA00
3H003BB06
3H003BF04
3H003BF05
3H003CD01
3H003CE02
3H129AA04
3H129AA13
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB14
3H129BB21
3H129BB32
3H129CC09
3H129CC10
3H129CC24
3H129CC26
3H129CC38
3H129CC46
(57)【要約】
【課題】アキュムレータ容器を支持するベース部材と、アキュムレータ容器との間の断熱性を高める。
【解決手段】密閉型圧縮機は、冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦置き筒状の圧縮機本体容器と、吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、圧縮機本体容器内に配置されてアキュムレータ容器から吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して吐出管から吐出する圧縮部と、圧縮機本体容器内に配置されて圧縮部を駆動するモータと、を備える密閉型圧縮機である。密閉型圧縮機は、圧縮機本体容器に開口側が接合されたカップ状のアキュムレータシェルを有するアキュムレータ容器と、アキュムレータ容器を支持するベース部材と、ベース部材を支持する弾性体と、アキュムレータシェルの反開口側に設けられ、アキュムレータシェルとベース部材との間の熱伝導を遮る断熱部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦置き筒状の圧縮機本体容器と、前記吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、前記圧縮機本体容器内に配置されて前記アキュムレータ容器から前記吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して前記吐出管から吐出する圧縮部と、前記圧縮機本体容器内に配置されて前記圧縮部を駆動するモータと、を備える密閉型圧縮機であって、
前記圧縮機本体容器に開口側が接合されたカップ状のアキュムレータシェルを有する前記アキュムレータ容器と、
前記アキュムレータ容器を支持するベース部材と、
前記ベース部材を支持する弾性体と、
前記アキュムレータシェルの反開口側に設けられ、前記アキュムレータシェルと前記ベース部材との間の熱伝導を遮る断熱部と、
を備える、密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記アキュムレータ容器には、カップ状の中空シェルが前記アキュムレータシェルの反開口側に設けられ、前記中空シェルの開口側が前記アキュムレータシェルに接合され、
前記断熱部は、前記中空シェル内に形成された内部空間である、
請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記アキュムレータ容器は、前記アキュムレータシェルの内部を仕切る仕切り部材を有し、前記仕切り部材と前記アキュムレータシェルの前記反開口側との間に前記内部空間が形成されている、
請求項2に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記仕切り部材の外周部は、前記アキュムレータシェルの内周面に接合されている、
請求項3に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
前記断熱部には、前記内部空間に断熱材が設けられている、
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の密閉型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルを利用した冷凍機または空調機において冷媒を圧縮搬送する密閉型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型圧縮機としては、縦型円筒状の圧縮機本体容器の内部に圧縮部と圧縮部を駆動するモータを収容し、圧縮機本体容器の下方に、冷媒を気体冷媒と液体冷媒とに分離(以下、冷媒の気液を分離と称する。)して気体冷媒だけを圧縮部に吸入させるためのアキュムレータ容器が設けられた圧縮機が知られている。
【0003】
特許文献1の圧縮機は圧縮部がロータリ式の圧縮機であり、圧縮部に吸入される冷媒の気液を分離するアキュムレータ容器が、圧縮機本体容器とは独立した容器で構成されて、圧縮機本体容器の下方に配置されており、ブラケットを用いて圧縮機本体容器とアキュムレータ容器とが接続されている。
特許文献2の圧縮機は圧縮部がスクロール式の圧縮機であり、圧縮部と圧縮部を駆動するモータとを収容する圧縮機本体容器の下部にアキュムレータ容器が直接的に接合されている。
特許文献3の圧縮機は、密閉容器の内部を圧力仕切壁で区画し、圧力仕切壁の上部を圧縮部及びモータが収容される圧縮機本体容器とし、圧力仕切壁の下部をアキュムレータ容器としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-109283号公報
【特許文献2】特開平3-202682号公報
【特許文献3】特開平6-66258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1、2,3のように圧縮機本体容器における底部にアキュムレータ容器が接合された圧縮機において、圧縮機の製造コストを抑制するとともに、圧縮機本体容器からアキュムレータ容器への冷媒漏れを防止し、信頼性の高い密閉型圧縮機を実現するために、アキュムレータ容器を、圧縮機本体容器に直接的に溶接する構造が考えられている。このような構造の場合にも、圧縮機の振動を吸収して振動を抑えるために、アキュムレータ容器における底部にベース部材が取り付けられ、ベース部材に設けられた弾性体が設置箇所に載置されることで、ベース部材及び弾性体によってアキュムレータ容器及び圧縮機本体容器が支持される構造が考えられる。
【0006】
しかし、この構造の場合、圧縮機の運転時にアキュムレータ容器が内部のガス冷媒によって低温になり、アキュムレータ容器のアキュムレータシェルに取り付けられたベース部材が凍結することがある。このとき、ベース部材の凍結に伴って弾性体が冷却されることで、弾性体が劣化し、弾性が低下する問題がある。その結果、弾性が低下した弾性体によって圧縮機の振動を吸収して振動を十分に抑えられなくなる。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、アキュムレータ容器を支持するベース部材と、アキュムレータ容器との間の断熱性を高めることができる密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様は、冷媒の吐出管及び吸入管が設けられた縦置き筒状の圧縮機本体容器と、吸入管に接続されるアキュムレータ容器と、圧縮機本体容器内に配置されてアキュムレータ容器から吸入管を介して吸入した冷媒を圧縮して吐出管から吐出する圧縮部と、圧縮機本体容器内に配置されて圧縮部を駆動するモータと、を備える密閉型圧縮機であって、圧縮機本体容器に開口側が接合されたカップ状のアキュムレータシェルを有するアキュムレータ容器と、アキュムレータ容器を支持するベース部材と、ベース部材を支持する弾性体と、アキュムレータシェルの開口とは反対側(反開口側と称する。)に設けられ、アキュムレータシェルとベース部材との間の熱伝導を遮る断熱部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する密閉型圧縮機の一態様によれば、アキュムレータ容器を支持するベース部材と、アキュムレータ容器との間の断熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施例のロータリ圧縮機のアキュムレータ容器を示す側面図である。
【
図4】
図4は、変形例1における要部を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、変形例2における要部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する密閉型圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する密閉型圧縮機が限定されるものではない。
【実施例0012】
(ロータリ圧縮機の構成)
本実施例では、密閉型圧縮機の一例として、ロータリ圧縮機について説明する。
図1は、実施例のロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
図2は、実施例のロータリ圧縮機の圧縮部を示す分解斜視図である。
【0013】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、圧縮機本体容器10の内部に、圧縮部吸入管102から冷媒を吸入して圧縮した冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出する圧縮部12と、圧縮部12を駆動するモータ11と、が収容され、圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部に吐出し、さらに吐出管107を通して冷凍サイクルに吐出する内部高圧型の密閉型圧縮機である。
【0014】
圧縮機本体容器10は、縦型円筒状のメインシェル10aと、カップ状のトップシェル10bと、カップ状のボトムシェル10cと、を有し、メインシェル10aの上端部にトップシェル10bの開口側10gが第1の溶接部Vで溶接固定され、メインシェル10aの下端部にボトムシェル10cの開口側10dが第2の溶接部Wで溶接固定されることにより構成されている。
【0015】
冷凍サイクルの低圧冷媒を圧縮部12に吸入するための圧縮部吸入管102がメインシェル10aを貫通して設けられている。詳しくは、メインシェル10aにガイド管101がろう付固定され、圧縮部吸入管102はガイド管101の内側を通ってガイド管101にろう付固定されている。
【0016】
圧縮部12で圧縮された高圧冷媒を圧縮機本体容器10の内部から冷凍サイクルに吐出するための吐出管107がトップシェル10bを貫通して設けられている。吐出管107はトップシェル10bに直接ろう付固定されている。
【0017】
圧縮機本体容器10の下方には、冷凍サイクルから吸入される低圧冷媒の気液を分離して気体冷媒だけを圧縮部12に吸入させるためのアキュムレータ容器25が設けられている。詳しくは、圧縮機本体容器10におけるメインシェル10aとボトムシェル10cの第2の溶接部Wよりも下方の位置で、アキュムレータシェル26の開口側26aをボトムシェル10cの反開口側10eに第3の溶接部Xで溶接固定してアキュムレータシェル26の内部が密閉されることによりアキュムレータ容器25が形成されている。
【0018】
アキュムレータシェル26には、アキュムレータ容器25の内部に冷凍サイクルから冷媒を吸入するアキュムレータ吸入管27と、アキュムレータ内部から気体冷媒を送る気液分離管31と、がそれぞれアキュムレータシェル26を貫通してアキュムレータシェル26にろう付固定されている。
【0019】
気液分離管31はアキュムレータ容器25の外部で吸入管104を介して圧縮部吸入管102に接続されている。
【0020】
アキュムレータシェル26における下部には、ロータリ圧縮機1全体を支持するベース部材310が溶接固定されている。
【0021】
圧縮部12は、シリンダ121と、上端板160Tと、下端板160Sと、回転軸15を有し、上端板160T、シリンダ121、下端板160Sは順に積層され複数のボルト175により固定されている。上端板160Tには主軸受部161Tが設けられている。下端板160Sには副軸受部161Sが設けられている。回転軸15には主軸部153と偏心部152と副軸部151と、が設けられている。回転軸15の主軸部153が上端板160Tの主軸受部161Tに篏合し、回転軸15の副軸部151が下端板160Sの副軸受部161Sに篏合することにより、回転軸15は回転自在に支持される。
【0022】
モータ11は、外側に配置されたステータ111と、内側に配置されたロータ112と、を有している。ステータ111は、メインシェル10aの内周面に焼嵌め固定されている。ロータ112は、回転軸15に焼嵌め固定されている。
【0023】
圧縮機本体容器10の内部には、圧縮部12の摺動部材の潤滑および圧縮室内の高圧部と低圧部とのシールのために、圧縮部12がほぼ浸漬する量の潤滑油18が封入されている。
【0024】
次に、
図2によって圧縮部12を詳しく説明する。
シリンダ121には内部に円筒状の中空部130が設けられ、中空部130にはピストン125が配置されている。ピストン125は回転軸15の偏心部152に篏合している。シリンダ121には中空部130から外向きに設けられた溝部が設けられ、溝部にはベーン127が配置されている。シリンダ121には外周から溝部に通じるスプリング穴124が設けられ、スプリング穴124にはスプリング126が配置されている。ベーン127の一端がスプリング126によってピストン125に押し当てられることにより、シリンダ121の中空部130においてピストン125の外側の空間が吸入室133と吐出室131に区画される。シリンダ121には、外周から吸入室133に連通する吸入穴135が設けられている。吸入穴135には圧縮部吸入管102が接続される。上端板160Tには、上端板160Tを貫通して吐出室131に連通する吐出穴190が設けられている。上端板160Tには、吐出穴190を開閉する吐出弁200と、吐出弁200の反りを規制する吐出弁押さえ201と、がリベット202によって固定されている。上端板160Tの上側には、吐出穴190を覆う上端板カバー170が配置され、上端板160Tと上端板カバー170とで閉塞される上端板カバー室180を形成する。上端板カバー170は、上端板160Tとシリンダ121とを固定する複数のボルト175によって上端板160Tに固定される。上端板カバー170には、上端板カバー室180と圧縮機本体容器10の内部を連通する上端板カバー吐出穴172が設けられている。
【0025】
以下に、回転軸15の回転による吸入冷媒の流れを説明する。
回転軸15の回転によって、回転軸15の偏心部152に嵌合されたピストン125が公転運動することにより、吸入室133が容積を拡大しながら冷媒を吸入する。冷媒の吸入経路として、冷凍サイクルの低圧冷媒は、アキュムレータ吸入管27を通してアキュムレータ容器25の内部に吸入され、アキュムレータ容器25に吸入された冷媒に液が混ざっていた場合にはアキュムレータ容器25内の下部に滞留し、気体冷媒だけがアキュムレータ容器25の内部の上方に開口した気液分離管31に吸入される。気液分離管31に吸入された気体冷媒は、吸入管104と圧縮部吸入管102とを通って吸入室133に吸入される。冷凍サイクルから吸入される冷媒のうち液冷媒の量が多い場合は、アキュムレータ容器25の内部において液冷媒の液面が気液分離管31の開口端31bよりも上昇して多量の液冷媒が気液分離管31に流れ込む可能性がある。気液分離管31を通して圧縮部12に多量の液冷媒が流れ込むと圧縮部12を損傷させる原因となる。気液分離管31に多量の液冷媒が流れ込むことを防止するため、気液分離管31には液冷媒を少量ずつ気液分離管31に吸入させるための液戻し穴34が設けられている。
【0026】
次に、回転軸15の回転による吐出冷媒の流れを説明する。
回転軸15の回転によって、回転軸15の偏心部152に嵌合されたピストン125が公転運動することにより、吐出室131が容積を縮小しながら冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒の圧力が吐出弁200の外側の上端板カバー室180の圧力よりも高くなると、吐出弁200が開いて吐出室131から上端板カバー室180へ冷媒を吐出する。上端板カバー室180に吐出された冷媒は、上端板カバー170に設けられた上端板カバー吐出穴172から圧縮機本体容器10内に吐出される。
【0027】
圧縮機本体容器10内に吐出された冷媒は、ステータ111外周に設けられた上下を連通する切欠き(図示せず)、又はステータ111の巻線部の隙間(図示せず)、又はステータ111とロータ112との隙間115(
図1参照)を通ってモータ11の上方に導かれ、トップシェル10bに設けられた吐出管107から冷凍サイクルに吐出される。
【0028】
次に、潤滑油18の流れを説明する。
圧縮機本体容器10内の下部に封入されている潤滑油18は、回転軸の遠心力により回転軸の内部(図示せず)を通って圧縮部12に供給される。圧縮部12に供給された潤滑油18は、冷媒に巻き込まれ霧状となって冷媒とともに圧縮機本体容器10の内部に排出される。霧状となって圧縮機本体容器10の内部に排出された潤滑油18はモータ11の回転力によって遠心力で冷媒と分離され、油滴となって再び圧縮機本体容器10内の下部に戻る。しかしながら一部の潤滑油18は分離されずに冷媒とともに冷凍サイクルに排出される。冷凍サイクルに排出された潤滑油18は冷凍サイクルを循環してアキュムレータ容器25に戻り、アキュムレータ容器25の内部で分離されアキュムレータ容器25内の下部に滞留する。アキュムレータ容器25内の下部に滞留した潤滑油18は液冷媒とともに液戻し穴34を通って少量ずつ気液分離管31に流入し、吸入冷媒とともに吸入室133に吸入される。
【0029】
(ロータリ圧縮機の特徴的な構成)
次に、実施例のロータリ圧縮機1の特徴について説明する。本実施例における特徴には、
図1に示すように、アキュムレータシェル26の開口側26aとは反対の反開口側26bに断熱部35が設けられている点が含まれる。
【0030】
(断熱部の構造)
図3は、実施例のロータリ圧縮機1のアキュムレータ容器25を示す側面図である。
図1及び
図3に示すように、アキュムレータシェル26の反開口側26bには、アキュムレータシェル26とベース部材310との間の熱伝導を遮る中空の内部空間35aを有する断熱部35が設けられている。
【0031】
断熱部35は、カップ状の中空シェル38を有しており、中空シェル38の開口側38aがアキュムレータシェル26に第4の溶接部Yによって接合されている。断熱部35の内部空間35aは、中空シェル38の開口側38aがアキュムレータシェル26の反開口側26bで塞がれることによって中空シェル38内に形成されている。言い換えると、断熱部35は、アキュムレータシェル26の反開口側26bとベース部材310との間に挟まれるように設けられており、断熱部35の内部空間35aが、アキュムレータシェル26の反開口側26b全域に対向して設けられている。このように中空シェル38によって、断熱部35をアキュムレータシェル26の反開口側26bの外側に隣り合う位置に簡素な構造で容易に形成できる。
【0032】
中空シェル38の開口側38aとアキュムレータシェル26との第4の溶接部Yは、例えば、アキュムレータシェル26の周方向にわたって形成されている。なお、断熱部35は、第4の溶接部Yによって内部空間35aが密閉されなくてもよいため、第4の溶接部Yがアキュムレータシェル26の周方向に連続して形成されなくてもよい。また、中空シェル38の開口側38aとアキュムレータシェル26との第4の溶接部Yがアキュムレータシェル26の周方向に連続して形成されないことで、第4の溶接部Yが形成されない部分の空隙が、アキュムレータシェル26と中空シェル38との間の熱伝導を遮る断熱空間としても機能するので、アキュムレータシェル26内のガス冷媒によってベース部材310が冷却されることが更に抑えられる。このため、ベース部材310によって弾性体311が冷却されて弾性が低下することが更に抑えられる。
【0033】
なお、図示しないが、断熱部35には、中空シェル38を貫通する通気口が設けられてもよい。通気口が設けられることで、通気口を通して中空シェル38の周囲の外気を内部空間35aに取り込み、内部空間35aの空気を通気口から排出することが可能になる。このため、アキュムレータシェル26内のガス冷媒によって断熱部35の内部空間35a内の空気が冷却された場合であっても、通気口を通して断熱部35の内部空間35aが通気されるので、断熱部35による断熱性が低下することが抑えられる。したがって、断熱部35による断熱性を適正に保つことができる。なお、断熱部35には、中空シェル38を貫通する複数の通気口が設けられてもよい。この場合、1つの通気口から内部空間35aに取り込まれた空気を、他の通気口からスムーズに排出できる。
【0034】
また、中空シェル38は、円筒状のメインシェルと、メインシェルの下端部の開口を塞ぐすり鉢状のボトムシェルと、を有し、メインシェルにボトムシェルが溶接部によって接合されて形成されてもよい。これと同様に、アキュムレータシェル26も、円筒状のメインシェルと、メインシェルの下端部の開口を塞ぐすり鉢状のボトムシェルを有し、メインシェルにボトムシェルが溶接部によって接合されて形成されてもよい。
【0035】
(実施例の効果)
上述したように実施例のロータリ圧縮機1は、アキュムレータ容器25を支持するベース部材310と、ベース部材310を支持する弾性体311と、アキュムレータシェル26の反開口側26bに設けられてアキュムレータシェル26とベース部材310との間の熱伝導を遮る断熱部35と、を備える。これにより、アキュムレータ容器25とベース部材310との間の断熱性を高められる。このため、アキュムレータシェル26がベース部材310によって支持される構造であっても、アキュムレータシェル26内のガス冷媒によってベース部材310が冷却されることが断熱部35によって抑えられるので、ベース部材310が凍結することが抑制される。したがって、ベース部材310に設けられた弾性体311が有する弾性が低下することが抑えられ、弾性体311によってロータリ圧縮機1の振動を吸収して振動を適正に抑えられる。
【0036】
また、実施例のロータリ圧縮機1は、アキュムレータシェル26の開口側26aが圧縮機本体容器10のボトムシェル10cに接合されている。これにより、既存の圧縮機本体容器10を利用し、圧縮機本体容器10のボトムシェル10cをアキュムレータシェル26の開口側26aに差し込むことによって容易に適用できると共に、アキュムレータ容器25を圧縮機本体容器10に取り付けるための取り付けバンド等の取り付け部材を省き、製造コストの増加を抑えることができる。また、アキュムレータシェル26が別部材を介して圧縮機本体容器10のボトムシェル10cに間接的に連結される構造と比較して、別部材が有する固有振動数に起因する騒音、振動の発生を避けられる。
【0037】
また、実施例のロータリ圧縮機1のアキュムレータ容器25において、カップ状の中空シェル38の開口側38aがアキュムレータシェル26の反開口側26bに接合されており、断熱部35が、中空シェル38内に形成されたの内部空間35aである。これにより、中空シェル38によって、アキュムレータシェル26の反開口側26bの外側に隣り合う位置に断熱部35を簡素な構造で容易に形成できる。
【0038】
以下、変形例1、2について図面を参照して説明する。変形例1、2において、実施例と同一の構成部材には、実施例と同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
(変形例1)
変形例1は、断熱部35の構造が実施例と異なる。
図4は、変形例1における要部を示す縦断面図である。
【0040】
図4に示すように、変形例1のロータリ圧縮機2における断熱部35は、上述した中空シェル38の代わりに、アキュムレータシェル26の内部を仕切る仕切り部材48を有しており、仕切り部材48とアキュムレータシェル26の反開口側26bとの間に、断熱部35の内部空間35aが形成されている。仕切り部材48の外周部48aは、アキュムレータシェル26の内周面に第4の溶接部Yによって接合されている。
【0041】
断熱部35の内部空間35aは、中空シェル38の開口側38aがアキュムレータシェル26の反開口側26bで塞がれることによって中空シェル38内に形成されている。断熱部35の内部空間35aは、アキュムレータシェル26の反開口側26b全域に対向して設けられている。このように中空シェル38によって、断熱部35をアキュムレータシェル26の反開口側26bの内側に隣り合う位置に簡素な構造で容易に形成できる。
【0042】
仕切り部材48の外周部48aとアキュムレータシェル26の内周面との第4の溶接部Yは、アキュムレータシェル26の周方向にわたって形成されている。したがって、アキュムレータシェル26内において冷媒が導入される導入空間は、アキュムレータシェル26と、圧縮機本体容器10のボトムシェル10cと、仕切り部材28とによって密閉されて形成されている。また、断熱部35の内部空間35aは、アキュムレータシェル26の反開口側26bと仕切り部材28によって形成されている。仕切り部材28の外周部28aは、アキュムレータシェル26の上方に向かうように湾曲される形状に限定されず、アキュムレータシェル26の下方に向かうように湾曲されてもよい。
【0043】
変形例1においても、仕切り部材48によってアキュムレータシェル26内に断熱部35が形成されることにより、アキュムレータシェル26内のガス冷媒によってベース部材310が冷却されることが断熱部35によって抑えられるので、ベース部材310が凍結することが抑制される。その結果、ベース部材310に設けられた弾性体311の弾性が低下することが抑えられ、弾性体311によってロータリ圧縮機1の振動を吸収して振動を適正に抑えられる。
【0044】
また、変形例1では、仕切り部材48の外周部48aが、アキュムレータシェル26の内周面に接合されていることで、仕切り部材48によって、アキュムレータシェル26の内部における反開口側26bに隣り合う位置に、中空の内部空間35aを有する断熱部35を簡素な構造で容易に形成することができる。
【0045】
(変形例2)
変形例2は、断熱部35が断熱材を有する点が、実施例及び変形例1と異なる。
図5は、変形例2における要部を示す縦断面図である。
【0046】
図5に示すように、変形例2のロータリ圧縮機3における断熱部35には、内部空間35aに断熱材36が設けられている。断熱材36としては、例えば、ポリスチレンフォーム等の発泡性断熱材や、グラスウール等が用いられる。断熱材36が設けられる断熱部35は、断熱材36が内部空間35a全体に充填される構造に限定されず、内部空間35aの一部に中空となる空気層を含むように断熱材36が配置される構造であってもよい。断熱材36は、アキュムレータシェル26の反開口側26bに接するように配置される構造に限定されず、反開口側26bとの間に中空の空気層を挟むように配置される構造を含む。また、断熱材36は、中空シェル38内の上下方向に積層された複数種類の断熱材によって形成されてもよく、例えば、粒子状の断熱材と、発泡性の断熱材が組み合わされて用いられてもよい。
【0047】
変形例2によれば、断熱材36を用いて断熱部35の断熱性を確保できるので、実施例及び変形例1と同様に、断熱部35によってベース部材310が凍結することが抑制される。その結果、弾性体311の弾性が低下することが抑えられ、弾性体311によってロータリ圧縮機1の振動を吸収して振動を適正に抑えられる。
【0048】
図示しないが、ベース部材310は、アキュムレータシェル26の外周面に取り付けられてもよく、ベース部材310とアキュムレータシェル26の外周面との間に、アキュムレータシェル26とベース部材310との間の熱伝導を遮る断熱部が設けられてもよい。この場合、断熱部は、アキュムレータシェル26の外周面に、中空容器によって形成される。断熱部は、中空空間であってもよく、中空空間内に断熱材が充填されてもよい。このような構造であっても、上述した実施例、変形例1、2と同様の効果が得られる。
【0049】
なお、本実施例のロータリ圧縮機は、1つのシリンダを有する、いわゆる1シリンダ型のロータリ圧縮機に限定されず、2つのシリンダを有する、いわゆる2シリンダ型のロータリ圧縮機に適用されてもよい。また、本実施例は、ロータリ圧縮機を一例として説明したが、例えば、スクロール圧縮機等の他の圧縮機に適用されてもよく、本実施例と同様の効果が得られる。