(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036379
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の発電システム
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20230307BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20230307BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20230307BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20230307BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20230307BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230307BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20230307BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20230307BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/485 ZHV
B60W10/08 900
B60L3/00 N
B60L3/00 S
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/10
H02H7/00 K
H02H7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143397
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 佑
(72)【発明者】
【氏名】安達 宏
【テーマコード(参考)】
3D202
5G053
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB00
3D202BB16
3D202BB21
3D202BB23
3D202CC89
3D202DD00
3D202DD28
3D202DD47
5G053CA01
5G053CA04
5G053EA01
5G053EB02
5G053FA05
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB09
5H125BD17
5H125CA02
5H125CC01
5H125CD04
5H125EE26
5H125EE31
5H125EE51
5H125FF05
(57)【要約】
【課題】制御装置との通信に異常が発生した場合であっても走行を継続可能な電力を発電機が発電でき、かつ、高電圧通電路に設けられたコンタクタの遮断時の溶着や高電圧通電路の電圧サージの発生を防止できるハイブリッド車両の発電システムを提供すること。
【解決手段】ハイブリッド車両1は、発電機13に接続され、高電圧電力よりも低電圧の低電圧電力を発電機13に供給する低電圧通電路21と、制御装置19によって、低電圧通電路21を導通させる閉状態または低電圧通電路21を遮断する開状態に切り替えられるリレー16と、を備えている。発電機13は、自律発電中にリレー16が開状態にされて低電圧通電路21が遮断された場合、自律発電を停止する。制御装置19は、コンタクタ14Aを閉状態から開状態にする場合、コンタクタ14Aを閉状態から開状態にする前にリレー16を閉状態から開状態にする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、
前記制御装置と通信を行い、前記通信に異常が発生していない通常時には前記制御装置の指示に従って高電圧電力の発電を行い、前記通信に異常が発生している通信異常時には高電圧電力を自律発電する発電機と、
前記発電機に接続され、前記発電機が発電した高電圧電力が供給される高電圧通電路と、
前記制御装置によって、前記高電圧通電路を導通させる閉状態または前記高電圧通電路を遮断する開状態に切り替えられるコンタクタと、を備えるハイブリッド車両の発電システムであって、
前記発電機に接続され、前記高電圧通電路に供給される高電圧電力よりも低電圧の低電圧電力を前記発電機に供給する低電圧通電路と、
前記制御装置によって、前記低電圧通電路を導通させる閉状態または前記低電圧通電路を遮断する開状態に切り替えられるリレーと、を備え、
前記発電機は、前記自律発電中に前記リレーが開状態にされて前記低電圧通電路が遮断された場合、前記自律発電を停止し、
前記制御装置は、前記コンタクタを閉状態から開状態にする場合、前記コンタクタを閉状態から開状態にする前に前記リレーを閉状態から開状態にすることを特徴とするハイブリッド車両の発電システム。
【請求項2】
前記発電機が発電した高電圧電力を降圧し、降圧された低電圧電力を低電圧系に供給するDCDCコンバータを備え、
前記低電圧通電路は、前記低電圧系から前記発電機に低電圧電力を供給し、
前記発電機は、発電する高電圧電力の実発電電圧値を検出する高電圧検出部を備え、前記通信異常中は、前記通信異常の発生前に前記高電圧検出部により検出された実発電電圧値を目標発電電圧値に設定して前記自律発電を行うことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の発電システム。
【請求項3】
前記発電機は、前記低電圧通電路から供給される低電圧電力の電圧を検出する低電圧検出部を備え、
前記発電機は、前記通信異常中に、前記低電圧検出部により検出された電圧値が閾値以下である場合、前記自律発電を停止することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の発電システム。
【請求項4】
複数のセルを有する高電圧バッテリを備え、
前記高電圧通電路は、前記発電機と前記高電圧バッテリとを接続し、
前記制御装置は、前記通信異常時であって、かつ前記セルが故障している場合、前記リレーを閉状態から開状態に切り替えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のハイブリッド車両の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のハイブリッド車両は、比較的高電圧(例えば、約500V)の走行用高電圧バッテリと、比較的低電圧(例えば、約24V)の直流電力を蓄電する車両搭載電装品用低電圧バッテリと、を備えている。特許文献1に記載のハイブリッド車両は、バッテリとモータとの間に設けられるメインリレーが溶着し、モータインバータが故障し、かつ、バッテリの過充電の危険がある場合、エンジン制御装置を通して上限エンジン回転数を制御し、モータ逆起電力を過充電以下の電圧に維持することで、バッテリを過充電の危険から保護するようになっている。また、特許文献1に記載のハイブリッド車両は、モータ制御装置の通信がOFFかつバッテリ制御装置の通信がOFFの場合、エンジン制御装置を通して上限エンジン回転数を制御し、モータ逆起電力を制限してモータ逆起電圧を過充電以下の電圧に維持することで、バッテリを過充電の危険から保護するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、発電機(モータ)とバッテリとを接続する高電圧通電路に設けられたコンタクタ(メインリレー)の溶着を防止することについて検討されていないため、コンタクタの溶着を防止できなかった。また、特許文献1に記載の技術にあっては、発電機と制御装置との通信に通信異常が発生した場合、上限エンジン回転数を制御することにより発電機の発電電圧を制限しているため、発電電力の不足により走行を継続できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、制御装置との通信に異常が発生した場合であっても走行を継続可能な電力を発電機が発電でき、かつ、高電圧通電路に設けられたコンタクタの遮断時の溶着や高電圧通電路の電圧サージの発生を防止できるハイブリッド車両の発電システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制御装置と、前記制御装置と通信を行い、前記通信に異常が発生していない通常時には前記制御装置の指示に従って高電圧電力の発電を行い、前記通信に異常が発生している通信異常時には高電圧電力を自律発電する発電機と、前記発電機に接続され、前記発電機が発電した高電圧電力が供給される高電圧通電路と、前記制御装置によって、前記高電圧通電路を導通させる閉状態または前記高電圧通電路を遮断する開状態に切り替えられるコンタクタと、を備えるハイブリッド車両の発電システムであって、前記発電機に接続され、前記高電圧通電路に供給される高電圧電力よりも低電圧の低電圧電力を前記発電機に供給する低電圧通電路と、前記制御装置によって、前記低電圧通電路を導通させる閉状態または前記低電圧通電路を遮断する開状態に切り替えられるリレーと、を備え、前記発電機は、前記自律発電中に前記リレーが開状態にされて前記低電圧通電路が遮断された場合、前記自律発電を停止し、前記制御装置は、前記コンタクタを閉状態から開状態にする場合、前記コンタクタを閉状態から開状態にする前に前記リレーを閉状態から開状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように上記の本発明によれば、制御装置との通信に異常が発生した場合であっても走行を継続可能な電力を発電機が発電でき、かつ、高電圧通電路に設けられたコンタクタの遮断時の溶着や高電圧通電路の電圧サージの発生を防止できるハイブリッド車両の発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の発電システムを備える車両の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の発電システムの発電機の逆起電圧を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の発電システムの発電機の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の発電システムの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の発電システムは、制御装置と、制御装置と通信を行い、通信に異常が発生していない通常時には制御装置の指示に従って高電圧電力の発電を行い、通信に異常が発生している通信異常時には高電圧電力を自律発電する発電機と、発電機に接続され、発電機が発電した高電圧電力が供給される高電圧通電路と、制御装置によって、高電圧通電路を導通させる閉状態または高電圧通電路を遮断する開状態に切り替えられるコンタクタと、を備えるハイブリッド車両の発電システムであって、発電機に接続され、高電圧通電路に供給される高電圧電力よりも低電圧の低電圧電力を発電機に供給する低電圧通電路と、制御装置によって、低電圧通電路を導通させる閉状態または低電圧通電路を遮断する開状態に切り替えられるリレーと、を備え、発電機は、自律発電中にリレーが開状態にされて低電圧通電路が遮断された場合、自律発電を停止し、制御装置は、コンタクタを閉状態から開状態にする場合、コンタクタを閉状態から開状態にする前にリレーを閉状態から開状態にすることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の発電システムは、制御装置との通信に異常が発生した場合であっても走行を継続可能な電力を発電機が発電でき、かつ、高電圧通電路に設けられたコンタクタの遮断時の溶着や高電圧通電路の電圧サージの発生を防止できる。
【実施例0010】
以下、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の発電システムについて図面を用いて説明する。
図1から
図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の発電システムを示す図である。
【0011】
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の発電システムを搭載したハイブリッド車両1は、内燃機関型のエンジン10と、このエンジン10にベルト12を介して連結された発電機13と、発電機13に接続され、発電機13が発電した高電圧電力が供給される高電圧通電路20と、制御装置19と、を備えている。エンジン10はスタータ11を有しており、スタータ11はエンジン10を始動する。
【0012】
発電機13は、ベルト12を介してエンジン10の図示しないクランク軸に連結されている。発電機13は、エンジン10の動力によって発電する機能と、エンジン10に動力を付与する機能と、エンジン10を始動する機能とを有する回転電機であるISG(Integrated Starter Generator)からなる。発電機13は48Vの電力を発生する。発電機13は、クローポール式の磁石入り巻線界磁式モータからなる。
【0013】
ハイブリッド車両1は高電圧バッテリ14を備えており、高電圧バッテリ14は、複数のセルを有するLi(リチウムイオン)バッテリからなり、48Vの電力を蓄電および放電する。高電圧通電路20は、発電機13と高電圧バッテリ14とを接続している。
【0014】
ハイブリッド車両1はコンタクタ14Aを有している。コンタクタ14Aは高電圧バッテリ14に設けられている。コンタクタ14Aは、制御装置19によって、高電圧通電路20を導通させる閉状態または高電圧通電路20を遮断する開状態に切り替えられる。高電圧バッテリ14にはBMS(Battery Management System)14Bが設けられている。BMS14Bは、セルの過充電、過放電、過電流を防ぐ機能、セルの温度管理を行う機能、セルの異常の有無を判別する機能、充電状態(SOC)を算出する機能等を有している。BMS14Bは、制御装置19からの指示に従ってコンタクタ14Aを開状態または閉状態に切り替える。
【0015】
ハイブリッド車両1は、12Vの低電圧の電力が通電される低電圧通電路21、22、27を備えている。低電圧通電路27は、DC-DCコンバータ15と鉛バッテリ17とを接続している。低電圧通電路22は、低電圧通電路27と12V部品18とを接続している。低電圧通電路21は、低電圧通電路27と発電機13とを接続している。したがって、低電圧通電路21は、高電圧通電路20に供給される高電圧電力よりも低電圧の低電圧電力を発電機13に供給する。詳しくは、低電圧通電路21は、ハイブリッド車両1の低電圧系から発電機13に低電圧電力を供給する。
【0016】
ハイブリッド車両1は、12Vの電力を蓄電および発生する鉛バッテリ17と、この鉛バッテリ17に低電圧通電路27、22を介して接続された12V部品18と、を低電圧系として備えている。12V部品18は、12Vの電力により作動する電装品である。低電圧通電路21は、12Vの低電圧電力を発電機13に供給する。
【0017】
ハイブリッド車両1はリレー16を備えている。リレー16は低電圧通電路21に設けられている。リレー16は、制御装置19によって、低電圧通電路21を導通させる閉状態または低電圧通電路21を遮断する開状態に切り替えられる。
【0018】
ハイブリッド車両1はDC-DCコンバータ15を備えている。DC-DCコンバータ15は、高電圧通電路20と低電圧通電路27とに接続されている。DC-DCコンバータ15は、発電機13が発電した高電圧電力を降圧し、降圧された低電圧電力を低電圧系に供給する。ここで、DC-DCコンバータ15により出力された低電圧電力は鉛バッテリ17に充電される。そのため、DC-DCコンバータ15は、高電圧通電路20を介して発電機13から供給された48Vの高電圧電力を14Vの低電圧電力に降圧し、降圧された低電圧電力を低電圧通電路27を介して鉛バッテリ17に供給する。
【0019】
ハイブリッド車両1は接地線23、24を備えている。接地線23は鉛バッテリ17の図示しないマイナス端子とDC-DCコンバータ15とを接続している。接地線24は鉛バッテリ17のマイナス端子と発電機13とを接続している。
【0020】
ハイブリッド車両1は、制御装置19と発電機13との間でCAN(Controller Area Network)による通信を行うための通信線25と、制御装置19と高電圧バッテリ14との間でCANによる通信を行うための通信線26と、を備えている。発電機13は、通信線25を介して制御装置19と通信を行う。高電圧バッテリ14のBMS14Bは、通信線26を介して制御装置19と通信を行う。
【0021】
制御装置19は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含むECU(Electronic Control Unit)からなる。CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
【0022】
発電機13は、制御装置19と通信を行い、通信に異常が発生していない通常時には制御装置19の指示に従って高電圧電力の発電を行う。
【0023】
ここで、制御装置19と発電機13との通信に異常が発生した場合に発電機13が発電を停止するように構成した場合、電力の不足によりハイブリッド車両1が走行を継続できなくなることがある。そこで、本実施例では、発電機13は、通信線25を介する制御装置19との通信に異常が発生している通信異常時には、高電圧電力を自律発電する。つまり、発電機13は、制御装置19との通信が通信異常である場合、発電機13に予め設定された制御内容に従って自律発電を行う。これにより、ハイブリッド車両1は、自律発電による発電を継続でき、修理等が可能なサービス拠点まで走行することができる。
【0024】
一方、高電圧通電路20に高電圧電力が通電している状態でコンタクタ14Aが閉状態から開状態に切り替えられた場合、コンタクタ14Aがアーク放電により溶着したり、高電圧通電路20に電圧サージ(ロードダンプ)が発生したりすることがある。コンタクタ14Aの溶着や高電圧通電路20の電圧サージを防止するためには、発電機13が発電を停止した状態でコンタクタ14Aを開状態に切り替えることが望ましい。一方、制御装置19は、発電機13との通信異常時には、自律発電を停止するように発電機13を制御することができない。
【0025】
そこで、本実施例では、発電機13は、自律発電中にリレー16が開状態にされて低電圧通電路21が遮断された場合、自律発電を停止するようになっている。低電圧通電路21が遮断されることで発電機13への低電圧電力の供給が停止し、発電機13の制御部への電力供給が絶たれるため、発電機13の内部の界磁コイルへの電力供給部がオフとなり、発電機13は発電を停止する。
【0026】
制御装置19は、高電圧バッテリ14のBMS14Bからの要求に応じてコンタクタ14Aを閉状態から開状態にする場合、コンタクタ14Aを閉状態から開状態にする前にリレー16を閉状態から開状態にする。言い換えれば、制御装置19は、リレー16を閉状態から開状態にした後に、コンタクタ14Aを閉状態から開状態にする。
【0027】
発電機13は、発電する高電圧電力の実発電電圧値を検出する高電圧検出部13Aを備えている。実発電電圧値とは、発電機13が発電時に実際に発生している電圧である。発電機13は、通信異常中は、通信異常の発生前に高電圧検出部13Aにより検出されていた実発電電圧値を目標発電電圧値に設定して自律発電を行う。これにより、通信異常の発生時点での発電電圧が自律発電においても維持され、サービス拠点までの延命走行が可能となる。目標発電電圧とは、発電機13の目標とする発電電圧である。なお、発電機13は、通信異常の発生時に高電圧バッテリ14の開回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)の常用使用領域の中心(60%程度)以上で発電していた場合は、通信異常の発生時の実発電電圧値ではなく、発電機13の内部で保有している所定値(定数)に目標発電電圧を設定する。これにより、仮に、発電機13の高回生時に通信異常となった場合であっても、余分な電力の発電により機械負荷が増えてサービス拠点までの延命走行に必要な燃料以上の燃料を無駄に消費してしまうことを防止できる。
【0028】
発電機13は、低電圧通電路21から供給される低電圧電力の電圧を検出する低電圧検出部13Bを備えている。ここで、DC-DCコンバータ15が正常に機能している場合、DC-DCコンバータ15に接続された低電圧通電路27の電圧の正常値は、通常発電時の閾値以上(本実施例では14V)となる。一方、DC-DCコンバータ15が正常に機能しておらず低電圧通電路27への電力供給を停止している場合、低電圧通電路27の電圧の正常値は14Vよりも低い値となる。そこで、発電機13は、通信異常中に、低電圧検出部13Bにより検出された電圧値が閾値(本実施例では10V)以下である場合、自律発電を停止する。制御装置19は、通信異常時であって、かつセルが故障している場合、リレー16を閉状態から開状態に切り替えることが望ましい。
【0029】
図2を参照して発電機13の構成および発電特性について説明する。
図2において、縦軸は高電圧バッテリ14の開回路電圧(Open Circuit Voltage:OCV)(図中、LiB電圧_OCVと記す)を示し、横軸は高電圧バッテリ14の充電状態(図中、State Of Chargeを略してSOCと記す)を示している。本実施例では、高電圧バッテリ14には充電状態の通常使用領域が設定されている。
【0030】
高電圧バッテリ14には、発電機13内の磁石により発生する逆起電圧が作用する。そのため、エンジン10が最高エンジン回転数で回転している場合(発電機13が最高回転数で回転している場合)の磁石による逆起電圧が、高電圧バッテリ14の通常使用領域での開回路電圧の下限となるように、発電機13の磁石量および磁気回路が設定されている。発電機13の磁石による逆起電圧には逆起電圧範囲が存在する。この逆起電圧範囲の上限値は、高電圧バッテリ14の通常使用領域での開回路電圧の下限となるように設定されている。
【0031】
図1において、制御装置19は、高電圧バッテリ14のセルが故障しており、かつ、発電機13との通信異常が発生している場合、リレー16を開状態にして低電圧通電路21による発電機13への低電圧電力の供給を停止する。低電圧電力の供給が停止されることにより、発電機13の界磁コイルへの電力供給部がオフとなり、発電機13は発電を停止する。さらに、エンジン10の連れ回りにより逆起電圧が発生しても、その電圧は高電圧バッテリ14の通常仕様領域の電圧値以下に設定されているため、セル故障している高電圧バッテリ14に電流が流れない。したがって、高電圧バッテリ14のセルが故障しており、かつ、発電機13との通信異常が発生している場合、高電圧バッテリ14のセルに通電されないので、高電圧バッテリ14を保護することができる。
【0032】
図3を参照して通信異常時の発電機13の動作について説明する。
図3において、発電機13は、ステップS1で、CANによる通信(図中、CAN通信と記す)が異常状態であるか否かを判断し、異常状態でない場合、ステップS8で通常制御を行い、今回の動作を終了する。通常制御とは、制御装置19と発電機13とが通信を行い、発電機13が制御装置19の指示に従って高電圧電力の発電を行う制御である。
【0033】
発電機13は、ステップS1で通信が異常状態である場合、ステップS2で、低電圧通電路の電圧値が閾値以下であるか否かを判断する。発電機13は、ステップS2で電圧値が閾値以下ではないと判断した場合、ステップS3で、目標発電電圧を設定済か否かを判断する。
【0034】
ステップS3で目標発電電圧を設定済ではない場合、発電機13は、ステップS4で、実発電電圧値を取得する。次いで、発電機13は、ステップS5で、実発電電圧値に目標発電電圧を設定する。次いで、発電機13は、ステップS6で、自律発電を開始する。
【0035】
発電機13は、ステップS2で電圧値が閾値以下であると判断した場合、ステップS7で、発電を停止する。なお、発電機13は、制御装置19との通信異常時の自律発電中も、電圧値が閾値以下であると判断した場合は、自律発電を停止する。
【0036】
図4を参照して通信異常時の制御装置19の動作を説明する。
図4において、制御装置19は、ステップS11で、CANによる通信(図中、CAN通信と記す)が異常状態であるか否かを判断し、異常状態でない場合、ステップS15で通常制御を行い、今回の動作を終了する。通常制御とは、制御装置19と発電機13とが通信を行い、発電機13が制御装置19の指示に従って高電圧電力の発電を行う制御である。
【0037】
制御装置19は、ステップS11で発電機13との通信が異常状態である場合、ステップS12で、コンタクタ14Aの溶着または高電圧バッテリ14のセルの故障が発生しているか否かを判断する。
【0038】
制御装置19は、ステップS12でコンタクタ14Aの溶着または高電圧バッテリ14のセルの故障が発生していると判断した場合、ステップS13で、リレー16を開放し、今回の動作を終了する。
【0039】
制御装置19は、ステップS12でコンタクタ14Aの溶着または高電圧バッテリ14のセルの故障が発生していないと判断した場合、ステップS14で、高電圧バッテリ14のBMS14Bからコンタクタ14Aの開放要求が有るか否かを判断する。
【0040】
制御装置19は、ステップS14でコンタクタ14Aの開放要求がない場合、今回の動作を終了する。制御装置19は、ステップS14でコンタクタ14Aの開放要求がある場合、ステップS13で、コンタクタ14Aの開放の前にリレー16を開放し、今回の動作を終了する。つまり、ステップS13では、制御装置19は、まずリレー16を開放し、その後にコンタクタ14Aを開放する。
【0041】
以上説明したように、本実施例では、ハイブリッド車両1は、発電機13に接続され、高電圧電力よりも低電圧の低電圧電力を発電機13に供給する低電圧通電路21と、制御装置19によって、低電圧通電路21を導通させる閉状態または低電圧通電路21を遮断する開状態に切り替えられるリレー16と、を備えている。発電機13は、自律発電中にリレー16が開状態にされて低電圧通電路21が遮断された場合、自律発電を停止する。制御装置19は、コンタクタ14Aを閉状態から開状態にする場合、コンタクタ14Aを閉状態から開状態にする前にリレー16を閉状態から開状態にする。
【0042】
これにより、制御装置19との通信に異常が発生した場合であっても、ハイブリッド車両1が走行を継続可能な電力を発電機13が自律発電により発電できる。このため、通信異常時であっても、運転者がハイブリッド車両1を運転してサービス工場へ持ち込む機会を増やすことができる。
【0043】
また、コンタクタ14Aを閉状態から開状態にする前にリレー16を閉状態から開状態にすることにより、発電機13の自律発電が停止して高電圧通電路20に高電圧電力が通電していない状態でコンタクタ14Aを開状態にすることができ、高電圧通電路20に設けられたコンタクタ14Aの遮断時の溶着や高電圧通電路20の電圧サージ(ロードダンプ)の発生を防止できる。
【0044】
この結果、制御装置19との通信に異常が発生した場合であっても走行を継続可能な電力を発電機13が発電でき、かつ、高電圧通電路20に設けられたコンタクタ14Aの遮断時の溶着や高電圧通電路20の電圧サージの発生を防止できる。
【0045】
また、本実施例では、ハイブリッド車両1は、発電機13が発電した高電圧電力を降圧し、降圧された低電圧電力を低電圧系に供給するDC-DCコンバータ15を備え、低電圧通電路21は、低電圧系から発電機13に低電圧電力を供給し、発電機13は、発電する高電圧電力の実発電電圧値を検出する高電圧検出部13Aを備え、通信異常中は、通信異常の発生前に高電圧検出部13Aにより検出された実発電電圧値を目標発電電圧値に設定して自律発電を行う。
【0046】
これにより、通信異常中は、通信異常の発生前の実発電電圧値が目標発電電圧に設定されるため、目標発電電圧を適正な電圧値に設定でき、低電圧系の過充電や過放電を防ぐことができる。
【0047】
また、コンタクタ14Aが溶着している場合、コンタクタ14Aへの通電を極力抑えることができるので、コンタクタ14Aにダメージを与える可能性を減少させ、コンタクタ14Aの赤熱等の可能性を減少できる。
【0048】
また、本実施例では、発電機13は、低電圧通電路21から供給される低電圧電力の電圧を検出する低電圧検出部13Bを備え、発電機13は、通信異常中に、低電圧検出部13Bにより検出された電圧値が閾値以下である場合、自律発電を停止する。
【0049】
これにより、DC-DCコンバータ15が低電圧系への低電圧の電力の供給を停止している場合、発電機13が自律発電を停止するため、エンジン負荷を減らし、燃料と電力の消費が抑えられるため走行距離を延ばすことができ、ディーラーや修理工場まで走行することができる。また、DC-DCコンバータ15が故障している場合、DC-DCコンバータ15への通電を停止することで、DC-DCコンバータ15の赤熱等の可能性を減少できる。
【0050】
また、本実施例では、ハイブリッド車両1は、複数のセルを有する高電圧バッテリ14を備え、高電圧通電路20は、発電機13と高電圧バッテリ14とを接続している。そして、制御装置19は、通信異常時であって、かつセルが故障している場合、リレー16を閉状態から開状態に切り替える。
【0051】
これにより、通信異常時であって、かつ高電圧バッテリ14のセルが故障している場合は、リレー16が閉状態に切替えられることにより発電機13が自律発電を停止するので、高電圧バッテリ14を保護することができる。
【0052】
本実施例では、発電機13は、通信異常中は、通信異常の発生前に高電圧検出部13Aにより検出されていた実発電電圧値を目標発電電圧値に設定して自律発電を行う。
【0053】
なお、高電圧バッテリ14の通常使用領域の中心(例えば、60%)以上で発電していた場合、発電機13は、通信異常中は、目標発電電圧を発電機13の内部で保有している定数に設定するようにしてもよい。
【0054】
自律発電は、基本的には通信異常発生時点での状態を維持するものであるが、発電機13が高回生中に通信異常が発生した場合、余剰に発電することで機械負荷が増えて燃料を無駄に消費することになる。目標発電電圧を発電機13の内部で保有している定数に設定することで、車両の延命走行を図ることができる。
【0055】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。