(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036513
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】飲料の風味改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20230307BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230307BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/38 J
A23L2/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022078326
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2021143127の分割
【原出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】高岸 知輝
(72)【発明者】
【氏名】武邑 有希子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慈
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LG12
4B117LG13
4B117LG24
4B117LK06
4B117LL01
4B117LP14
(57)【要約】
【課題】穀物粉末が含まれていても、後味やざらつき感を改善し、嗜好性に優れる飲料を提供すること。
【解決手段】本発明は、穀物粉末を含む飲料であって、4-エチルフェノールを0.1~100ppbの割合で含有する。また、好ましくは、4-エチルフェノールを1~20ppbの割合で含有する。また、好ましくは、穀物粉末を0.1~0.5g/Lの割合で含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-エチルフェノールを含み、
飲料中の前記4-エチルフェノールの含有量が0.1~100ppbとなるように、穀物粉砕粉末と混合して用いられる、
穀物粉砕粉末を含む飲料の風味改善剤(ただし、穀物粉砕粉末を含む風味改善剤を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種飲料において、より濃い味わいに関するニーズがある。例えば、麦茶には夏場の止渇性目的でスッキリごくごく飲めるような設計が求められている一方で、止渇性を損なわずに、より濃い仕立ての設計が求められるようになってきている。
【0003】
このような濃い仕立てを実現する方法の一つとして、大麦をはじめとする穀物原料を細かく粉砕した「穀物粉末」を併用する方法が挙げられる。ただし、これらの素材をはじめとする粉末素材の特徴として、配合することで「後味の良さ」や「ざらつき感」が悪化するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、穀物粉末が含まれていても、後味やざらつき感を改善し、嗜好性に優れる飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、穀物粉末を含む飲料において、4-エチルフェノール(4-ethylphenol)を特定の割合で含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)のように構成される。
(1)穀物粉末を含む飲料であって、4-エチルフェノールを0.1~100ppbの割合で含有する、飲料。
【0007】
(2)前記4-エチルフェノールを1~20ppbの割合で含有する、(1)の飲料。
【0008】
(3)前記穀物粉末を0.1~0.5g/Lの割合で含有する、(1)又は(2)の飲料。
【0009】
(4)焙煎された植物の抽出液を含む、(1)~(3)のいずれかの飲料。
【0010】
(5)穀物粉末を含む飲料の風味改善方法であって、前記飲料中の4-エチルフェノールの含有量が0.1~100ppbとなるように、前記4-エチルフェノールを前記穀物粉末と混合する、飲料の風味改善方法。
【0011】
(6)4-エチルフェノールを含み、飲料中の前記4-エチルフェノールの含有量が0.1~100ppbとなるように、穀物粉末と混合して用いられる、飲料の風味改善剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、穀物粉末が含まれていても、後味やざらつき感を改善し、嗜好性に優れる飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態(「本実施の形態」)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更が可能である。また、本明細書において「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0014】
≪1.飲料≫
本実施の形態に係る飲料は、穀物粉末を含む飲料であって、4-エチルフェノールを0.1~100ppbの割合で含有する。
【0015】
このように、飲料中に特定の割合で4-エチルフェノールを含有するように設計することで、穀物粉末により悪化した後味やざらつき感を改善し、嗜好性に優れる飲料とすることができる。
【0016】
ここで、4-エチルフェノールは、香気成分であり、本発明者らによる研究の結果、穀物粉末を含む飲料に、4-エチルフェノールを特定の割合で含有させることで、飲用時の後味の悪さやざらつき感を感じにくくなることを見出した。また、4-エチルフェノールを含有させることで、後味やざらつき感を改善できるだけでなく、飲料のおいしさを向上させることができることもわかった。
【0017】
飲料の種類としては、特に限定されるものではないが、焙煎された植物の抽出液を含む飲料が挙げられ、なかでも焙煎された穀物の抽出液を含む飲料が好ましい。なお、焙煎された植物の抽出液を一部に含む飲料であればよく、穀物茶等の茶飲料に限定されるものではない。例えば、焙煎された植物の抽出液を一部に含む機能性飲料や乳性飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、果実飲料等であってもよい。
【0018】
また、飲料が焙煎された植物の抽出液を含むものである場合、ある一種の焙煎された植物を抽出して得られる抽出物を含む液体だけでなく、その抽出物に他の植物の抽出物を混合して得られる液体、もしくはこれらの液体に添加物を加えて得られる液体、又はこれらの液体を乾燥したものを分散させてなる液体等を含む。
【0019】
また、飲料が茶飲料である場合、飲料に含まれる抽出物の由来となる植物の品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法等は、特に限定されない。植物の種類も特に限定されず、例えば、大麦、ハトムギ、玄米、ハブ茶、トウモロコシ、黒豆、大豆、小豆、芋、びわの葉、チャの葉、昆布、熊笹、ごま、柿の葉、アマチャヅル、桑の葉、霊芝、クコ、みかんの皮、ユズの皮、杜仲葉、シソの葉、ドクダミ、オオバコ、ギムネマ、ルイボス、ラフマ、タンポポ、ペパーミント、モロヘイヤ、陳皮、イチョウ、松葉、蓮、オリーブ、大麦若葉、カワラケツメイ、仙草、明日葉、よもぎ、月見草等を用いることができる。これらの中でも、大麦、ハトムギ、玄米、ハブ茶、トウモロコシ、小豆、びわの葉、ユズの皮、タンポポ、カワラケツメイ等を好ましく用いることができる。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
[穀物粉末]
本実施の形態に係る飲料には、穀物粉末が含まれる。穀物粉末とは、原料穀物を必要に応じて焙煎した後、粉砕して得られる粉末状の穀物である。原料穀物を粉砕する方法は特に限定されず、例えば、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハンマーミル、ピンミル、ロールミル、カッターミル、ホモゲナイザー、フレンチプレス等を用いて粉砕することができる。穀物粉末の原料穀物としては、穀物茶飲料の原料として通常用いられる穀物を使用でき、大麦、発芽大麦、小麦等の麦類、玄米、発芽玄米等の米類、大豆、小豆、黒豆等の豆類、ハトムギ、トウモロコシ、芋、あわ、キビ等が挙げられる。穀物粉末の原料穀物としては、おいしさや味わいの観点から、大麦、トウモロコシ、玄米、ハトムギが好ましい。
【0021】
穀物粉末の粒子の大きさは、特に限定されないが、穀物粉末の50%積算質量粒子径(D50)は、例えば、1~600μmである。D50の上限は、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、100μm以下が更に好ましく、50μm以下が特に好ましい。また、穀物粉末の90%積算質量粒子径(D90)は、1500μm以下が好ましく、700μm以下がより好ましい。穀物粉末のD50及びD90の測定は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができ、具体的には、例えば後述する実施例に示す条件に基づいて行うことができる。
【0022】
本実施の形態に係る飲料では、特定の割合で4-エチルフェノールを含有するように設計することで、穀物粉末により悪化した後味やざらつき感を改善することができるため、飲料中の穀物粉末の含有量は、特に限定されないが、濃い味わいが得られ、嗜好性に優れる飲料が得られやすい点からは、0.1~0.5g/Lが好ましく、0.1~0.3g/Lがより好ましい。
【0023】
[4-エチルフェノール]
本実施の形態に係る飲料には、4-エチルフェノールが含まれる。4-エチルフェノールとしては、特に限定されないが、化合物の市販品を用いて配合したり、4-エチルフェノールが含まれる天然物やその抽出物等を配合することができる。
【0024】
飲料中の4-エチルフェノールの含有量は、0.1~100ppbの範囲である。飲料中の4-エチルフェノールの含有量をこのような範囲に設定することで、穀物粉末を配合することにより悪化した後味やざらつき感を改善することができる。また、このような範囲で4-エチルフェノールを含有させることで、飲料のおいしさを向上させる効果も有し、飲料の嗜好性をより一層に高めることができる。
【0025】
4-エチルフェノールの含有量の下限値は0.1ppb以上であり、1ppb以上が好ましい。好ましくはこのような範囲で含有することで、穀物粉末を配合することにより悪化した後味やざらつき感を改善する効果をより一層に高めることができる。他方で、4-エチルフェノールの含有量が多すぎると、ざらつき感の改善効果はさらに高まるものの、飲料のおいしさや後味を損なわせる可能性がある。このような点から、飲料中の4-エチルフェノールの含有量の上限値は100ppb以下であり、50ppb以下が好ましく、20ppb以下がより好ましい。
【0026】
飲料中の4-エチルフェノールの含有量は、ガスクロマトグラフタンデム質量分析計(GC-MS/MS)を用いて測定することができる。GC-MS/MSの測定は、例えば後述する実施例に示す条件に基づいて行うことができる。また、各原料中における濃度が把握できている場合には計算することもできる。
【0027】
[その他の成分]
本実施の形態に係る飲料においては、その効果を阻害しない範囲で、一般的な飲料に通常用いられる他の原料や添加剤を適宜配合できる。なお、その配合量は、目的とする効果に応じて適宜調整できる。具体的には、例えば、酸化防止剤、pH調整剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、品質安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0028】
[容器]
本実施の形態に係るに係る飲料においては、容器に充填することで容器詰飲料とすることができる。容器としては、飲料業界で公知の密封容器であればよく、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定できる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体、又はこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。特に、透明(半透明も含む)容器が好ましい。透明容器は全体が透明であっても、一部が透明であってもよい。
【0029】
≪2.飲料の製造方法≫
本実施の形態に係る飲料は、飲料の製造において採用される任意の条件や方法を用いて製造することができる。例えば、飲料中の4-エチルフェノールの含有量が0.1~100ppbとなるように、4-エチルフェノールを穀物粉末と混合する。さらにその他必要に応じて加えられる成分を添加する等して飲料を調製する。
【0030】
飲料の製造においては、例えば、準備されたそれぞれ所定量の成分を含有する抽出液等、穀物粉末、及び特定量の4-エチルフェノールを、順次又は同時に添加し、撹拌等により混合する方法が挙げられる。各成分の混合順序等については、特に限定されない。例えば穀物茶飲料等の茶飲料の場合では、複数の植物を予め混合して抽出処理を行って抽出液を得た後に、得られた抽出液に穀物粉末を添加し、さらに4-エチルフェノールを所定濃度となるように添加する方法や、所定濃度の4-エチルフェノールを含む抽出液に穀物粉末を添加する方法も挙げられる。
【0031】
4-エチルフェノールを添加するにあたっては、香料(化学合成された化合物等)として添加する方法や、4-エチルフェノールを含む食品素材の抽出液を添加する方法等が挙げられる。
【0032】
製造された飲料は、容器に充填して容器詰飲料とすることができ、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。殺菌処理の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等が挙げられる。
【0033】
≪3.飲料の風味を改善する方法≫
上述したように、本実施の形態に係る飲料によれば、穀物粉末を含む場合でも、4-エチルフェノールが0.1~100ppbの含有量で配合されていることにより、穀物粉末により悪化した後味やざらつき感を改善し、嗜好性に優れた飲料となる。
【0034】
したがって、このことから、4-エチルフェノールを穀物粉末と混合することで、飲料の風味を改善する方法として定義することができる。すなわち、飲料中の4-エチルフェノールの含有量が0.1~100ppbとなるように、4-エチルフェノールを穀物粉末と混合する飲料の風味改善方法を定義することができる。
【0035】
≪4.飲料の風味改善剤≫
また、4-エチルフェノールを穀物粉末と混合することで、穀物粉末により悪化した後味やざらつき感を改善させるための風味改善剤として定義することもできる。
【0036】
具体的には、飲料の風味改善剤は、4-エチルフェノールを含むものであって、飲料中の4-エチルフェノールの含有量が0.1~100ppbとなるように、穀物粉末と混合して用いられるものである。
【0037】
飲料の風味改善剤は、本分野において採用される任意の方法や適当な改良を加えた方法によって製造することができる。また、その風味改善剤に、4-エチルフェノール以外の成分が含まれる場合、その種類及び含量は、得ようとする効果に応じて適宜設計できる。
【実施例0038】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
≪試験1:大麦粉末の添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
大麦粉末(L*=53、50%積算質量粒子径(D50)9.9μm、90%積算質量粒子径(D90)18.2μm、粒子径分布1.98~44.94μm)0.6gを1Lの水に添加してUHT殺菌した後、大麦粉末が0.01、0.1、0.3g/Lの各濃度となるように希釈し、評価に用いる試験サンプル(参考例1~3)を作製した。大麦粉末が0.3g/Lの試験サンプルにおける4-エチルフェノール濃度は0ppbであった。大麦粉末無添加の水を基準品1とした。
【0040】
なお、上記L*値(焙煎度)は、大麦粉末試料を、分光色差計(SE7700,日本電色工業社製)を用いて反射法にて測定して得られた値である。
【0041】
また、上記D50、D90及び粒子径分布は、大麦粉末が0.3g/Lの濃度となるように水を添加して得られた添加液を、超音波で15秒間処理した後、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960(株式会社堀場製作所製)を用いて測定して得られた値である。
【0042】
[官能評価について]
作製した基準品1及び各試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品1に対して、「おいしさ」、「後味の良さ」、「ざらつき感」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、基準品1の点数を基準値(4点)として評価した。なお、「おいしさ」は「風味に基づく嗜好性の高さ」を、「後味の良さ」は「後味が良いか否か」を、「ざらつき感」は「飲用後の舌に残るざらざらとした不快な食感」をそれぞれ評価した。
【0043】
「おいしさ」、「後味の良さ」については、下記評価基準に基づき7段階で評価した。
(評価基準)7点:かなり良い、6点:良い、5点:やや良い、4点:基準品と同等、3点:やや悪い、2点:悪い、1点:かなり悪い
【0044】
「ざらつき感」については、下記評価基準に基づき7段階で評価した。
(評価基準)7点:かなり強い、6点:強い、5点:やや強い、4点:基準品と同等、3点:やや弱い、2点:弱い、1点:かなり弱い
【0045】
[結果]
下記表1に、基準品1及び試験サンプル中の大麦粉末濃度及び官能評価結果を示す。評価における「おいしさ」、「後味の良さ」については、上記の評価基準にあるように、点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「ざらつき感」については、上記の評価基準にあるように、点数が小さくなるほど感じられにくくなっており、評価が高いことを意味する。
【0046】
【0047】
表1に示されるとおり、大麦粉末の濃度が高くなると「おいしさ」は向上するが、「後味の良さ」及び「ざらつき感」が不良となった。したがって、飲料において大麦粉末が含まれることで、後味やざらつき感が悪化することがわかる。
【0048】
≪試験2:大麦粉末添加液における4-エチルフェノール添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
試験1で得られた、大麦粉末が0.3g/Lの濃度の試験サンプル(参考例3)を基準品2とした。また、基準品2に、4-エチルフェノールを下記表2に示す濃度となるように添加し、各試験サンプル(実施例1~3、比較例1)を作製した。
【0049】
基準品2及び各試験サンプル中における4-エチルフェノールの含有量は、ガスクロマトグラフタンデム質量分析(GC-MS/MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、分析対象である試験サンプル100μLをバイアル瓶(容量10mL)に入れ、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)によりGC-MS/MS(アジレント・テクノロジー社製)に導入した。検量線は標準添加法にて作成し、内標としてシクロヘキサノールを用いた。
(GC-MS/MSの分析条件)
・機器 GC:Agilent 7890B GC System(アジレント・テクノロジー社製)
MS:Agilent 7000D GC/MS Triple Quad(アジレント・テクノロジー社製)
全自動揮発性成分抽出導入装置:MPS Robotic Pro/DHS/TDU2/CIS4(ゲステル社製)
捕集管(吸着剤):Tenax TA、Carbopack-B & Carbopack-X
・カラム :DB-WAX UI(20m×0.18mm、膜厚0.30μm)(アジレント・テクノロジー社製)
・注入法 :スプリットレス
・キャリアガス :He(1.0mL/分)
・トランスファーライン :250℃
・昇温プログラム :40℃(3分間保持)→5℃/分→240℃(7分間保持)
・プリカーサーイオン>プロダクトイオン(CE(コリジョンエネルギー))
:4-ethylphenol 107>77(20V)
:cyclohexanol 82>67(5V)
・イオン化方法 :EI
・四重極温度 :150℃
・イオン源温度 :230℃
【0050】
[官能評価について]
作製した基準品2及び各試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品2に対して、「おいしさ」、「後味の良さ」、「ざらつき感」について比較評価することで行った。各評価点数は、試験1と同様の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、基準品2の点数を基準値(4点)として評価した。
【0051】
[結果]
下記表2に、基準品2及び各試験サンプル中の大麦粉末濃度、4-エチルフェノール濃度、及び官能評価結果を示す。
【0052】
【0053】
表2にあるように、実施例1~3では、基準品2と比べて、「ざらつき感」の評価が高くなり、ざらつき感が改善されたことが示された。また、特に実施例1及び2では、「後味の良さ」の評価が高くなり、後味が改善されたことが示された。さらに、「おいしさ」の向上効果も表れており、より嗜好性に優れるものであった。
【0054】
≪試験3:とうもろこし粉末添加液における4-エチルフェノール添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
とうもろこし粉末(L*=53、50%積算質量粒子径(D50)193.5μm、90%積算質量粒子径(D90)661.4μm、粒子径分布4.47~1337.48μm)0.6gを1Lの水に添加してUHT殺菌した後、とうもろこし粉末が0.3g/Lの濃度となるように希釈し、基準品3とした。また、基準品3に、4-エチルフェノールを下記表3に示す濃度となるように添加し、各試験サンプル(実施例4、5)を作製した。なお、上記L*値(焙煎度)、D50、D90及び粒子径分布は、試験1と同様にして得られた値である。基準品3及び各試験サンプル中における4-エチルフェノールの含有量は、試験2における4-エチルフェノールの含有量の測定と同様の方法・条件により測定した。
【0055】
[官能評価について]
作製した基準品3及び各試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品3に対して、「おいしさ」、「後味の良さ」、「ざらつき感」について比較評価することで行った。各評価点数は、試験1と同様の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、基準品3の点数を基準値(4点)として評価した。
【0056】
[結果]
下記表3に、基準品3及び各試験サンプル中の大麦粉末濃度、4-エチルフェノール濃度、及び官能評価結果を示す。
【0057】
【0058】
表3にあるように、実施例4、5では、基準品3と比べて、「後味の良さ」の評価が高くなり、後味が改善されたことが示された。また、「おいしさ」の向上効果も表れており、より嗜好性に優れるものであった。
【0059】
≪試験4:玄米粉末添加液における4-エチルフェノール添加による検証≫
[基準品及び試験サンプルの作製]
玄米粉末(L*=58、50%積算質量粒子径(D50)185.6μm、90%積算質量粒子径(D90)630.6μm、粒子径分布4.47~1337.48μm)0.6gを1Lの水に添加してUHT殺菌した後、玄米粉末が0.3g/Lの濃度となるように希釈し、基準品4とした。また、基準品4に、4-エチルフェノールを下記表4に示す濃度となるように添加し、試験サンプル(実施例6、7)を作製した。なお、上記L*値(焙煎度)、D50、D90及び粒子径分布は、試験1と同様にして得られた値である。基準品4及び試験サンプル中における4-エチルフェノールの含有量は、試験2における4-エチルフェノールの含有量の測定と同様の方法・条件により測定した。
【0060】
[官能評価について]
作製した基準品4及び試験サンプルについて、専門パネル5名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品4に対して、「おいしさ」、「後味の良さ」、「ざらつき感」について比較評価することで行った。各評価点数は、試験1と同様の評価基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。かかる評価においては、基準品4の点数を基準値(4点)として評価した。
【0061】
[結果]
下記表4に、基準品4及び試験サンプル中の大麦粉末濃度、4-エチルフェノール濃度、及び官能評価結果を示す。
【0062】
【0063】
表4にあるように、実施例6、7では、基準品4と比べて、「後味の良さ」の評価が高くなり、後味が改善されたことが示された。また、「おいしさ」の向上効果も表れており、より嗜好性に優れるものであった。