(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003750
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】押圧具および防水シート接着方法
(51)【国際特許分類】
E04D 5/14 20060101AFI20230110BHJP
E04F 21/00 20060101ALI20230110BHJP
E04D 15/06 20060101ALI20230110BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20230110BHJP
B29C 65/18 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
E04D5/14 F
E04F21/00 A
E04D15/06 J
B29C63/02
B29C65/18
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105014
(22)【出願日】2021-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】赤木 大介
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD08
4F211AH47
4F211SA17
4F211SC05
4F211SD01
4F211SJ21
4F211SP03
4F211TA01
4F211TC03
4F211TD11
4F211TH06
4F211TN11
4F211TQ06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かを判定し易くする手法を提供する。
【解決手段】防水下地4に固定した防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置した後に防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する防水シート接着工法において防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8の押圧に用いる押圧具1であって、防水シート8と接触する接触面2に設けられ防水シート8の押圧の際に防水シート8の表面に痕跡を形成する痕跡形成部3を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、
前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面に痕跡を形成する痕跡形成部を備える押圧具。
【請求項2】
前記痕跡形成部は互いに離間した複数の部分を有しており、
前記防水シートへの一度の押圧により複数の前記痕跡が前記防水シートの表面に形成される請求項1に記載の押圧具。
【請求項3】
前記痕跡形成部の複数の前記部分が、前記接触面の中心を中心とする一つの円の上に配置されている請求項2に記載の押圧具。
【請求項4】
前記痕跡形成部の複数の前記部分の形態が互いに異なっており、
前記防水シートの表面に形成される複数の前記痕跡の形態が互いに異なる請求項2又は3に記載の押圧具。
【請求項5】
前記防水シート固定具の前記固定面は外縁と内縁とを有する円環形状であり、
前記痕跡形成部は、前記防水シートの表面における前記外縁よりも前記内縁に近い位置に前記痕跡が形成されるように、前記接触面に設けられている請求項1から4のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項6】
弾性変形が可能な弾性部材を備え、
前記接触面は前記弾性部材の表面であり、
前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項7】
前記剛性部材が、前記接触面から突出する状態で前記弾性部材に配置されている請求項6に記載の押圧具。
【請求項8】
前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材を備え、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されている請求項6又は7に記載の押圧具。
【請求項9】
前記支持部材は円環形状の部材であり、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材よりも内側に位置する請求項8に記載の押圧具。
【請求項10】
防水下地に防水シート固定具を固定する固定工程と、
前記防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程と、
前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する接着工程と、
痕跡形成部を備える押圧具で前記防水シートを押圧して前記防水シートを前記防水シート固定具に密着させると共に前記防水シートの表面に痕跡を形成する押圧工程と、を含む防水シート接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧具および防水シート接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防水シート押さえパットが開示されている。この防水シート押さえパットは、防水シートを固定板に接着する防水シート接着方法の実施の際に用いられる。詳しくは、防水シート押さえパットは、固定板の加熱後に接着箇所の防水シートを弾性的に押さえて、固定板に対する防水シートの密着性を向上させるのに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5385655号公報
【特許文献2】特開平10-77722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防水シート押さえパットによる防水シートの押さえ作業は、作業者が防水シート押さえパットを手で接着箇所に押しつけることにより、実行される。防水シート押さえパットを接着箇所へ押しつける力が弱い場合や、押しつける方向が傾いている場合、押しつける位置がずれている場合、押さえ作業の実行を忘れた場合には、固定板への防水シートの接着が不良となる。
【0005】
固定板への防水シートの接着不良は、以下の理由で発見が困難である。まず、固定板と防水シートとの接着が不良であっても防水シートの表面は正常接着の場合と同様に滑らかであるから、目視で不良を発見し難い。また、固定板と防水シートとの接着箇所は防水シートの裏側であるから、直接視認することができない。そして、周囲の接着箇所が正常に接着されていると、防水シートを持ち上げて接着の成否を確認することも困難である。
【0006】
特許文献2には、導体片(上述の固定板)のビス取付孔の近傍周囲に、環状凸部を設ける技術が開示されている。環状凸部は、他の部分より低くしてある。この導体片の上面に防水シートが溶着されると、防水シートの表面に環状凸部に対応する溶着紋が生じる。この技術によれば、環状の溶着紋が生じたか否かによって、確実に溶着がなされているか否かを判断することができる。しかし、この技術によれば、導体片の形状が複雑になる上に、防水シートにおける環状凸部に溶着した部位が、他の部位よりも低くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かを判定し易くする手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する手段として、本発明の押圧具は、防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面に痕跡を形成する痕跡形成部を備えることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、押圧具が痕跡形成部を備えるので、防水シート固定具の加熱の後に防水シートを押圧すると、防水シートの表面に痕跡が形成される。痕跡の有無や形状、深さ等により、押圧具による押圧が行なわれたか否か、適切な押圧であったか否かを判定することが可能である。また、本構成によれば、防水シート固定具を特別な形状にすることが不要となる。すなわち、本構成によれば、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かが判定し易くなる。
【0010】
本発明において、前記痕跡形成部は互いに離間した複数の部分を有しており、前記防水シートへの一度の押圧により複数の前記痕跡が前記防水シートの表面に形成されると好適である。
【0011】
本構成によれば、押圧具の痕跡形成部が互いに離間した複数の部分を有するので、押圧具の防水シートへの一度の押圧により、痕跡形成部の複数の部分に対応する複数の痕跡が、防水シートの表面に形成される。痕跡の数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。
【0012】
本発明において、前記痕跡形成部の複数の前記部分が、前記接触面の中心を中心とする一つの円の上に配置されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、痕跡形成部の複数の部分が一つの円の上に配置されているので、防水シートの表面に形成される複数の痕跡が一つの円の上に位置することになる。痕跡の位置、数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。例えば、痕跡の位置から、押圧の際の押圧具の位置を推定することができるので、防水シート固定具に対して適切な位置で押圧したか否かを判定することが可能となる。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。
【0014】
本発明において、前記痕跡形成部の複数の前記部分の形態が互いに異なっており、前記防水シートの表面に形成される複数の前記痕跡の形態が互いに異なると好適である。
【0015】
本構成によれば、痕跡形成部の複数の部分の形態が互いに異なっているので、防水シートの表面に形成される複数の痕跡の形態が、互いに異なる。痕跡の位置、数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。また、痕跡の配置から、押圧の際の押圧具の向きや、押圧力の傾きの方向を推定することができるので、押圧の際の力の入れ方の癖や作業の巧拙を推定することも可能となる。
【0016】
本発明において、前記防水シート固定具の前記固定面は外縁と内縁とを有する円環形状であり、前記痕跡形成部は、前記防水シートの表面における前記外縁よりも前記内縁に近い位置に前記痕跡が形成されるように、前記接触面に設けられていると好適である。
【0017】
防水シートの剥がれの抑制のため、防水シート固定具への防水シートの接着は、固定面の外縁の近傍で強固に行なわれると好ましい。本構成によれば、防水シートの表面における外縁よりも内縁に近い位置に痕跡が形成されるように、痕跡形成部が押圧具の接触面に設けられる。従って、固定面の外縁の近傍における押圧具による防水シートの押圧に、痕跡形成部が影響を与えることが抑制される。すなわち、防水シートの接着への悪影響を抑制しつつ、防水シートの施工が適切に為されたか否かを判定し易くすることができる。
【0018】
本発明において、弾性変形が可能な弾性部材を備え、前記接触面は前記弾性部材の表面であり、前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、弾性部材よりも剛性の高い剛性部材により、防水シートの表面に痕跡を確実に形成することができる。また、剛性部材が弾性部材に設けられるので、弾性部材の弾性変形により剛性部材が防水シートを押す力が低減される。これにより、防水シートの損傷が抑制される。
【0020】
本発明において、前記剛性部材が、前記接触面から突出する状態で前記弾性部材に配置されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、接触面から突出する剛性部材が防水シートに接触するので、防水シートの表面に痕跡を更に確実に形成することができる。
【0022】
本発明において、前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材を備え、前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、弾性部材が支持部材に支持されるので、押圧具の取り扱いが容易になって作業性が向上すると共に、押圧具による防水シートの押圧が均一に行なわれる。ここで、押圧具で防水シートを押圧する際、平面視で支持部材と重なる位置においては、支持部材の存在により、弾性部材が防水シートを押圧する力が大きくなる。本構成によれば、剛性部材が平面視で支持部材と重ならない位置に配置されているので、弾性部材が防水シートを押す力が過度に大きくなることが抑制されて、防水シートの損傷が抑制される。
【0024】
本発明において、前記支持部材は円環形状の部材であり、前記剛性部材は、平面視で前記支持部材よりも内側に位置すると好適である。
【0025】
本構成によれば、支持部材が円環形状の部材であるので、支持部材を手で押し易く、押圧具による防水シートの押圧が更に均一に行なわれる。加えて、剛性部材が平面視で支持部材よりも内側に位置するので、弾性部材が防水シートを押す力が過度に大きくなることが抑制されて、防水シートの損傷が抑制される。
【0026】
上述した課題を解決する手段として、本発明の防水シート接着方法は、防水下地に防水シート固定具を固定する固定工程と、前記防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程と、前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する接着工程と、痕跡形成部を備える押圧具で前記防水シートを押圧して前記防水シートを前記防水シート固定具に密着させると共に前記防水シートの表面に痕跡を形成する押圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、押圧具が痕跡形成部を備えるので、防水シート固定具の加熱の後に防水シートを押圧すると、防水シートの表面に痕跡が形成される。痕跡の有無や形状、深さ等により、押圧具による押圧が行なわれたか否か、適切な押圧であったか否かを判定することが可能である。また、本構成によれば、防水シート固定具を特別な形状にすることが不要となる。すなわち、本構成によれば、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かが判定し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程を示す縦断面図である。
【
図5】防水シート固定具を加熱して防水シートを防水シート固定具に接着する接着工程を示す縦断面図である。
【
図6】押圧具で防水シートの表面を押圧する押圧工程を示す縦断面図である。
【
図7】押圧具で防水シートの表面を押圧している状態を示す部分断面平面図である。
【
図8】防水シートに痕跡が形成された状態を示す縦断面図である。
【
図9】防水シートに痕跡が形成された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る押圧具および防水シート接着方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
図1-3に、押圧具1が示されている。
図4-9に、防水シート接着工法が示されている。押圧具1は、防水シート接着工法において、防水シート8の押圧に用いられる。詳しくは、押圧具1は、防水下地4に固定した防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置した後に防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する防水シート接着工法において、防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8の押圧に用いられる。
【0031】
本実施形態では、
図3-6、
図8、
図10に示されるように、円盤状の押圧具1において痕跡形成部3が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水下地4が位置する側を下側と定義し、図中の矢印DWで示す。円盤状の押圧具1において支持部材31が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水シート8が位置する側を上側と定義し、図中の矢印UPで示す。
【0032】
押圧具1は、痕跡形成部3を備える。痕跡形成部3は、押圧具1における防水シート8と接触する接触面2に設けられ、防水シート8の押圧の際に防水シート8の表面に痕跡X(
図8、
図9)を形成する。
【0033】
〔押圧具〕
図1、
図2、
図3に示されるように、押圧具1は、弾性部材11と、剛性部材21と、支持部材31と、を備える。
【0034】
弾性部材11は、弾性変形が可能な部材である。弾性部材11は、例えば板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。弾性部材11の材料は、例えば樹脂であり、例えばゴムであり、本実施形態ではシリコンゴムである。本実施形態では、弾性部材11の下面は、平面であり、接触面2(押圧具1における防水シート8と接触する面)である。図示例では弾性部材11の上面11a(接触面2と反対側の面)は平面であるが、平面でなくてもよい。
【0035】
剛性部材21は、弾性部材11よりも剛性が高い部材である。剛性部材21の材料は、例えば金属であり、本実施形態ではステンレスである。剛性部材21の材料が、弾性部材11よりも剛性の高い樹脂やゴムであってもよい。剛性部材21は、例えば円柱形状である。剛性部材21は、本実施形態では下部が半球状の円柱形状である。剛性部材21は、弾性部材11の下面(接触面2)に配置されている。詳しくは、剛性部材21は、弾性部材11の下面に形成された穴12に挿入されている。剛性部材21は、弾性部材11の下面(接触面2)から突出する状態で弾性部材11に配置されている。
【0036】
本実施形態では、痕跡形成部3が剛性部材21により構成されている。すなわち、剛性部材21は、押圧具1による防水シート8の押圧の際に防水シート8の表面に接触して痕跡Xを形成する。
【0037】
支持部材31は、弾性部材11における下面(接触面2)と反対側の面(上面11a)に接触して弾性部材11を支持する部材である。支持部材31は、例えば板状の部材であり、本実施形態では外周部31aと内周部31bとを有する円環形状の部材である。支持部材31の材料は、例えば金属であり、本実施形態ではアルミ合金である。支持部材31の材料が、弾性部材11よりも剛性の高い樹脂やゴムであってもよい。
【0038】
〔防水シート接着工法〕
図4-9を参照しながら防水シート接着工法(防水シート接着方法の一例)を説明する。防水シート接着工法は、建築工事又は土木工事の防水作業、例えば陸屋根等の防水工事において、コンクリートや金属等の躯体上(以下、防水下地4と称する。)に防水シート8を張り、防水シート8を防水下地4に固定する工法である。
【0039】
〔固定工程、配置工程〕
まず、
図4に示されるように、防水下地4に防水シート固定具6を固定する工程(固定工程)、及び、防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置する工程(配置工程)が行なわれる。詳しくは、防水下地4の上に断熱パネル5を配置し、断熱パネル5の上に防水シート固定具6を配置し、固定部材7により防水下地4に防水シート固定具6を固定する。断熱パネル5は、例えば、イソシアネートのフォーム材で形成してあり、無数の独立気泡が内在している。また、適度な強度と断熱性とを備えている。
【0040】
防水シート固定具6は、電磁誘導による加熱が可能な部材であり、例えば金属製の部材である。防水シート固定具6は、平板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。防水シート固定具6は、上に突出する突出部位6aを有する。突出部位6aの上面が、防水シート8が固定される面(固定面6b)である。本実施形態では、
図7に示されるように、突出部位6aは円環形状であり、固定面6bは外縁6cと内縁6dとを有する円環形状である。本実施形態では、固定面6bにホットメルト接着層が設けられており、防水シート8の防水シート固定具6への接着はホットメルト接着層の熱溶着により行なわれる。なお、防水シート8の防水シート固定具6への接着が、防水シート8の融着(溶融及び固化)により行なわれてもよい。
【0041】
固定部材7は、チューブワッシャ7aとビス7bとを備える。本実施形態では、チューブワッシャ7aを防水シート固定具6の中央の穴に通した状態でチューブワッシャ7aを断熱パネル5に上から貫入させ、チューブワッシャ7aにビス7bを挿入し、ビス7bを防水下地4に螺合させることにより、固定部材7が防水シート固定具6を防水下地4に固定する。
【0042】
防水シート8は、可撓性及び防水性を有するシートである。防水シート8は、例えば塩化ビニル樹脂製のシートである。
【0043】
〔接着工程〕
配置工程の後に、
図5に示されるように、防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する工程(接着工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で加熱装置9を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に加熱装置9を当てて、加熱装置9を作動させ、防水シート固定具6を加熱する。加熱装置9は、例えば、電磁誘導により防水シート固定具6を加熱する電磁誘導加熱装置である。防水シート固定具6が加熱されると、固定面6bに設けられたホットメルト接着層の温度が上昇して軟化又は溶融する。これにより、防水シート固定具6と防水シート8とが接着される。
【0044】
〔押圧工程〕
接着工程の後に、
図6に示されるように、押圧具1で防水シート8を押圧して防水シート8を防水シート固定具6に密着させると共に防水シート8の表面に痕跡Xを形成する工程(押圧工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で押圧具1を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に押圧具1を当てて、防水シート8を押圧する。押圧具1に押されて、防水シート8が防水シート固定具6に密着し、痕跡形成部3により防水シート8の表面に痕跡X(
図8、
図9)が形成される。
【0045】
押圧具1で防水シート8を押圧する際は、
図6、
図7に示されるように、押圧具1の中心と防水シート固定具6の中心とが平面視で一致するように押圧具1を配置すると好ましい。
【0046】
本実施形態では、痕跡形成部3は剛性部材21により構成されており、剛性部材21は押圧具1の接触面2から突出する状態で弾性部材11に配置されている。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、剛性部材21に押されて防水シート8の表面が下方向に窪む。これにより、防水シート8の表面に痕跡Xが形成される。本実施形態では、痕跡Xは、防水シート8の表面の窪み(凹部)である。痕跡Xは、防水シート8の表面における、押圧具1における痕跡形成部3(剛性部材21)の位置に対応する位置に形成される。
【0047】
本実施形態では、痕跡形成部3は互いに離間した複数の部分を有しており、防水シート8への一度の押圧により複数の痕跡Xが防水シート8の表面に形成される。図示例では、痕跡形成部3は、3つの剛性部材21を有している。従って、押圧具1の防水シート8への一度の押圧により、3つの痕跡Xが形成される。
【0048】
本実施形態では、痕跡形成部3の複数の部分が、接触面2の中心2aを中心とする一つの円2bの上に配置されている。詳しくは、
図7に示されるように、3つの剛性部材21が、中心2aを中心とする円2bの上に配置されている。従って、押圧具1の防水シート8への一度の押圧により、3つの痕跡Xが、一つの円の上に位置する状態で形成される。図示例では、3つの剛性部材21は円2b上に等間隔で配置される。従って、3つの痕跡Xが、一つの円の上に等間隔で位置する状態で形成される。
【0049】
本実施形態では、痕跡形成部3は、防水シート8を真上から見て(平面視)防水シート固定具6の固定面6bと重なる位置に痕跡Xが形成されるように、押圧具1の接触面2に設けられている。押圧具1による防水シート8の押圧の際に、痕跡形成部3(剛性部材21)の下方に防水シート固定具6の固定面6b(突出部位6a)が位置するので、痕跡Xが確実に形成される。
【0050】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、平面視で防水シート固定具6の固定面6bと重なる位置に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0051】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、平面視で防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cと内縁6dとの間に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0052】
換言すれば、
図7に示されるように、押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離A1は、防水シート固定具6の中心から固定面6bの外縁6cまでの距離B1よりも小さく、防水シート固定具6の中心から固定面6bの内縁6dまでの距離B2よりも大きい。
【0053】
本実施形態では、痕跡形成部3は、防水シート8の表面における、防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cよりも内縁6dに近い位置に痕跡Xが形成されるように、押圧具1の接触面2に設けられている。
【0054】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cよりも内縁6dに近い位置に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0055】
換言すれば、
図7に示されるように、距離A1(押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離)と距離B1(防水シート固定具6の中心から固定面6bの外縁6cまでの距離)の差(すなわち痕跡形成部3と外縁6cの距離)は、距離A1と距離B2(防水シート固定具6の中心から固定面6bの内縁6dまでの距離)の差(すなわち痕跡形成部3と内縁6dの距離)よりも大きい。
【0056】
本実施形態では、
図3、
図7に示されるように、痕跡形成部3(剛性部材21)は、平面視で支持部材31と重ならない位置に配置されている。換言すれば、痕跡形成部3(剛性部材21)は、平面視で支持部材31よりも内側に位置する。換言すれば、距離A1(押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離)は、円環形状である支持部材31の内周部31bの半径A2よりも小さい。
【0057】
〔確認工程〕
押圧工程の後に、痕跡Xを確認する工程(確認工程)が行なわれる。
図8、
図9に、防水シート8の表面に痕跡Xが形成された状態の例が示されている。
図9の図示例では、防水シート8の表面に、防水シート固定具6との接着部に対応する輪郭が現れており、その輪郭の内側に痕跡Xが現れている。図示例では、4つの接着箇所D1、D2、D3、D4が示されている。
【0058】
図中左上の接着箇所D1、及び図中右下の接着箇所D4には、3つの痕跡Xが現れている。このことから、接着箇所D1、D4に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されたと判定することができる。
【0059】
図中右上の接着箇所D2には、痕跡Xが現れていない。このことから、接着箇所D2に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されなかったと判定することができる。例えば、接着箇所D2に対して、押圧具1による防水シート8の押圧が為されなかった(作業忘れ)と判定することができる。
【0060】
図中左下の接着箇所D3には、2つの痕跡Xが現れている。痕跡Xの数が、痕跡形成部3の数(3つ)よりも少ない。このことから、接着箇所D3に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されなかったと判定することができる。例えば、接着箇所D3に対して、押圧具1からの押圧力が不適切(傾き、不均一など)、または、押圧具1の位置が不適切であったと判定することができる。
【0061】
確認工程は、押圧工程の直後に押圧工程を行なった作業者により行なわれてもよい。この場合、作業者が自分の作業(押圧作業)の適否を判定できるという利点がある。
【0062】
確認工程は、防水シート8を施工する領域全体に対して押圧工程が完了した後に行なわれてもよいし、防水シート8を施工する領域の一部に対して押圧工程が完了した後に行なわれてもよい。この場合、確認工程の作業を迅速化できるという利点がある。
【0063】
確認工程を、押圧工程を行なった作業者と別の者が行なってもよい。この場合、押圧が適切に為されたか否かの確認を客観的に確実に行なうことができるという利点がある。
【0064】
確認工程が、確認者による接着箇所の目視により行なわれてもよいし、接着箇所を撮影した画像または映像の目視により行なわれてもよい。接着箇所を撮影した画像を含む確認報告書が作成されてもよい。確認工程が、接着箇所の撮影と、撮影された画像又は映像に対する、画像解析を用いたコンピュータによる自動の適否判定により行なわれてもよい。
【0065】
〔他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、押圧具1の接触面2から痕跡形成部3(剛性部材21)が突出する。押圧具1の形態は、上述の例に限られない。例えば、
図10に示されるように、痕跡形成部3が、押圧具1の接触面2に形成された凹部(穴12)であってもよい。
【0066】
押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、防水シート8における接触面2と接触した部位は下方向に押されるが、防水シート8における穴12と対向する部位は下方向に押されない。従って、防水シート8の表面に、表面から突出する形態の痕跡Xが形成される。
【0067】
(2)押圧具1の接触面2から剛性部材21が突出しない形態も可能である。例えば、剛性部材21の下端が接触面2と同一平面上に位置する形態や、剛性部材21の下端が接触面2よりも上に位置する形態も可能である。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、弾性部材11が防水シート8に押されて圧縮され、剛性部材21が防水シート8に接触し、痕跡Xが形成される。
【0068】
(3)押圧具1の接触面2に剛性部材21が露出しない形態も可能である。例えば、剛性部材21が弾性部材11の内部に埋め込まれてもよい。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、弾性部材11が防水シート8に押されて圧縮変形する。剛性部材21が内部に位置する部位では変形量が小さく、その部位が接触面2から突出する。その部位が防水シート8を押すことにより、痕跡Xが形成される。
【0069】
(4)防水シート8に形成される痕跡Xが、文字や図形、模様などであってもよい。例えば、
図11に示されるように、痕跡Xが文字(図示例ではアルファベットの「A」)であってもよい。
【0070】
(5)上述の実施形態では、痕跡形成部3の複数の部分(例えば剛性部材21)の形態は同一であり、形成される複数の痕跡Xの形態は同一である。痕跡形成部3の複数の部分の形態が互いに異なっており、防水シート8の表面に形成される複数の痕跡Xの形態が互いに異なってもよい。例えば、防水シート8に「上」「下」「右」「左」の4つの痕跡Xが形成されるよう、痕跡形成部3の4つの部分が「上」「下」「右」「左」の反転文字の形態を有してもよい。
【0071】
(6)痕跡形成部3の形態(大きさ、接触面2からの突出/後退長さなど)は、防水シート8の性状(厚さ、材質、強度など)に応じて適宜設定されるとよい。
【0072】
例えば、剛性部材21における接触面2からの突出部が、円柱形状であってもよい。突出部が接触面2から突出する長さが、0.5mmであってもよい。この場合、押圧具1を厚さが1.5mmである防水シート8に使用した場合、深さが0.2mmから0.3mmの円形の痕跡Xが防水シート8に形成される。
【0073】
剛性部材21における接触面2からの突出部の突出長さは、防水シート8の厚さの1/2以下であると好ましく、防水シート8の厚さの1/3以下であると更に好ましく、0.5mm以下であると更に好ましい。
【0074】
痕跡Xが時間の経過と共に薄くなる、又は消えるように、痕跡形成部3の形態が決定されてもよい。例えば、防水シート8の施工の1ヶ月後までに痕跡Xが消えるような形態に、痕跡形成部3の形態が設定されてもよい。
【0075】
(7)押圧具1が、弾性部材11に替えて、弾性を有さない板状の部材を備えてもよい。当該板状の部材の下面が接触面2として機能する。板状の部材の下面に痕跡形成部3が備えられる。
【0076】
(8)押圧具1と加熱装置9とが、一体化した装置であってもよい。すなわち、加熱装置9における防水シート8と接触する部位が、押圧具1と同様の構成を有してもよい。換言すれば、加熱装置9が押圧具1を兼ねてもよい。
【0077】
この場合、接着工程にて加熱装置9を防水シート8に当てたとき、接触面2及び痕跡形成部3が防水シート8に押し当てられる。その状態で加熱装置9を作動させて防水シート固定具6を加熱し防水シート8と防水シート固定具6とを接着させる。加熱装置9を停止させ、接触面2により防水シート8を押圧して、防水シート8を防水シート固定具6に密着させると共に、防水シート8の表面に痕跡Xを形成する。すなわち、この形態においても、接着工程の後に押圧工程が行なわれる。
【0078】
(9)上述の実施形態では、押圧具1、弾性部材11、及び支持部材31は、平面視の形状が共に円形である。押圧具1、弾性部材11、及び支持部材31の形状は、上述の例に限られない。これら部材の全て、又は一部の平面視の形状が、小判型などの楕円形や、三角形、四角形などの多角形であってもよい。
【0079】
(10)押圧具1が、作業者により把持される把持部材を備えてもよい。例えば、把持部材は、上下方向に延びる棒状の部材であってもよい。
【0080】
(11)痕跡形成部3の形態が変更可能であってもよい。例えば、剛性部材21が異なる形態の部材へ変更可能であってもよい。防水シート8の種類に応じた複数種類の剛性部材21が用意されてもよい。
【0081】
(12)押圧具1による防水シート8への「押圧」は、作業者が押圧具1を防水シート8へ向けて押しつけることにより実現されてもよいし、押圧具1の自重によって押圧具1が防水シート8を押すことにより実現されてもよい。
【0082】
(13)複数の押圧具1が用意され、それらの押圧具1が複数の接着箇所に置かれ、防水シート8の押圧が複数の接着箇所で同時並行して行なわれてもよい。この場合、作業効率が向上する利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、防水シート接着工法に用いることができる。詳しくは、押圧具を、防水シート固定具の加熱の後に防水シートの押圧に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :押圧具
2 :接触面
2a :中心
2b :円
3 :痕跡形成部
4 :防水下地
6 :防水シート固定具
6b :固定面
6c :外縁
6d :内縁
8 :防水シート
11 :弾性部材
21 :剛性部材
31 :支持部材
X :痕跡
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具を加熱して加熱装置を除去した後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、
前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡を形成する痕跡形成部を備える押圧具。
【請求項2】
前記痕跡形成部は互いに離間した複数の部分を有しており、
前記防水シートへの一度の押圧により複数の前記痕跡が前記防水シートの表面に形成される請求項1に記載の押圧具。
【請求項3】
前記痕跡形成部の複数の前記部分が、前記接触面の中心を中心とする一つの円の上に配置されている請求項2に記載の押圧具。
【請求項4】
前記痕跡形成部の複数の前記部分の形態が互いに異なっており、
前記防水シートの表面に形成される複数の前記痕跡の形態が互いに異なる請求項2又は3に記載の押圧具。
【請求項5】
前記防水シート固定具の前記固定面は外縁と内縁とを有する円環形状であり、
前記痕跡形成部は、前記防水シートの表面における前記外縁よりも前記内縁に近い位置に前記痕跡が形成されるように、前記接触面に設けられている請求項1から4のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項6】
弾性変形が可能な弾性部材を備え、
前記接触面は前記弾性部材の表面であり、
前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項7】
前記剛性部材が、前記接触面から突出する状態で前記弾性部材に配置されている請求項6に記載の押圧具。
【請求項8】
前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材を備え、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されている請求項6又は7に記載の押圧具。
【請求項9】
前記支持部材は円環形状の部材であり、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材よりも内側に位置する請求項8に記載の押圧具。
【請求項10】
防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、
前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面に痕跡を形成する痕跡形成部と、
弾性変形が可能であり、その表面が前記接触面である弾性部材と、
前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材と、を備え、
前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されており、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されている、押圧具。
【請求項11】
防水下地に防水シート固定具を固定する固定工程と、
前記防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程と、
前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する接着工程と、
前記防水シートを加熱する加熱装置を除去した後に痕跡形成部を備える押圧具で前記防水シートを押圧して前記防水シートを前記防水シート固定具に密着させると共に前記防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡を形成する押圧工程と、を含む防水シート接着方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧具および防水シート接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防水シート押さえパットが開示されている。この防水シート押さえパットは、防水シートを固定板に接着する防水シート接着方法の実施の際に用いられる。詳しくは、防水シート押さえパットは、固定板の加熱後に接着箇所の防水シートを弾性的に押さえて、固定板に対する防水シートの密着性を向上させるのに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5385655号公報
【特許文献2】特開平10-77722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防水シート押さえパットによる防水シートの押さえ作業は、作業者が防水シート押さえパットを手で接着箇所に押しつけることにより、実行される。防水シート押さえパットを接着箇所へ押しつける力が弱い場合や、押しつける方向が傾いている場合、押しつける位置がずれている場合、押さえ作業の実行を忘れた場合には、固定板への防水シートの接着が不良となる。
【0005】
固定板への防水シートの接着不良は、以下の理由で発見が困難である。まず、固定板と防水シートとの接着が不良であっても防水シートの表面は正常接着の場合と同様に滑らかであるから、目視で不良を発見し難い。また、固定板と防水シートとの接着箇所は防水シートの裏側であるから、直接視認することができない。そして、周囲の接着箇所が正常に接着されていると、防水シートを持ち上げて接着の成否を確認することも困難である。
【0006】
特許文献2には、導体片(上述の固定板)のビス取付孔の近傍周囲に、環状凸部を設ける技術が開示されている。環状凸部は、他の部分より低くしてある。この導体片の上面に防水シートが溶着されると、防水シートの表面に環状凸部に対応する溶着紋が生じる。この技術によれば、環状の溶着紋が生じたか否かによって、確実に溶着がなされているか否かを判断することができる。しかし、この技術によれば、導体片の形状が複雑になる上に、防水シートにおける環状凸部に溶着した部位が、他の部位よりも低くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かを判定し易くする手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する手段として、本発明の押圧具は、防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具を加熱して加熱装置を除去した後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡を形成する痕跡形成部を備えることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、押圧具が痕跡形成部を備えるので、防水シート固定具の加熱の後に防水シートを押圧すると、防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡が形成される。痕跡の有無や形状、深さ等により、押圧具による押圧が行なわれたか否か、適切な押圧であったか否かを判定することが可能である。また、本構成によれば、防水シート固定具を特別な形状にすることが不要となる。すなわち、本構成によれば、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かが判定し易くなる。
【0010】
本発明において、前記痕跡形成部は互いに離間した複数の部分を有しており、前記防水シートへの一度の押圧により複数の前記痕跡が前記防水シートの表面に形成されると好適である。
【0011】
本構成によれば、押圧具の痕跡形成部が互いに離間した複数の部分を有するので、押圧具の防水シートへの一度の押圧により、痕跡形成部の複数の部分に対応する複数の痕跡が、防水シートの表面に形成される。痕跡の数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。
【0012】
本発明において、前記痕跡形成部の複数の前記部分が、前記接触面の中心を中心とする一つの円の上に配置されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、痕跡形成部の複数の部分が一つの円の上に配置されているので、防水シートの表面に形成される複数の痕跡が一つの円の上に位置することになる。痕跡の位置、数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。例えば、痕跡の位置から、押圧の際の押圧具の位置を推定することができるので、防水シート固定具に対して適切な位置で押圧したか否かを判定することが可能となる。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。
【0014】
本発明において、前記痕跡形成部の複数の前記部分の形態が互いに異なっており、前記防水シートの表面に形成される複数の前記痕跡の形態が互いに異なると好適である。
【0015】
本構成によれば、痕跡形成部の複数の部分の形態が互いに異なっているので、防水シートの表面に形成される複数の痕跡の形態が、互いに異なる。痕跡の位置、数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。また、痕跡の配置から、押圧の際の押圧具の向きや、押圧力の傾きの方向を推定することができるので、押圧の際の力の入れ方の癖や作業の巧拙を推定することも可能となる。
【0016】
本発明において、前記防水シート固定具の前記固定面は外縁と内縁とを有する円環形状であり、前記痕跡形成部は、前記防水シートの表面における前記外縁よりも前記内縁に近い位置に前記痕跡が形成されるように、前記接触面に設けられていると好適である。
【0017】
防水シートの剥がれの抑制のため、防水シート固定具への防水シートの接着は、固定面の外縁の近傍で強固に行なわれると好ましい。本構成によれば、防水シートの表面における外縁よりも内縁に近い位置に痕跡が形成されるように、痕跡形成部が押圧具の接触面に設けられる。従って、固定面の外縁の近傍における押圧具による防水シートの押圧に、痕跡形成部が影響を与えることが抑制される。すなわち、防水シートの接着への悪影響を抑制しつつ、防水シートの施工が適切に為されたか否かを判定し易くすることができる。
【0018】
本発明において、弾性変形が可能な弾性部材を備え、前記接触面は前記弾性部材の表面であり、前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、弾性部材よりも剛性の高い剛性部材により、防水シートの表面に痕跡を確実に形成することができる。また、剛性部材が弾性部材に設けられるので、弾性部材の弾性変形により剛性部材が防水シートを押す力が低減される。これにより、防水シートの損傷が抑制される。
【0020】
本発明において、前記剛性部材が、前記接触面から突出する状態で前記弾性部材に配置されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、接触面から突出する剛性部材が防水シートに接触するので、防水シートの表面に痕跡を更に確実に形成することができる。
【0022】
本発明において、前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材を備え、前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、弾性部材が支持部材に支持されるので、押圧具の取り扱いが容易になって作業性が向上すると共に、押圧具による防水シートの押圧が均一に行なわれる。ここで、押圧具で防水シートを押圧する際、平面視で支持部材と重なる位置においては、支持部材の存在により、弾性部材が防水シートを押圧する力が大きくなる。本構成によれば、剛性部材が平面視で支持部材と重ならない位置に配置されているので、弾性部材が防水シートを押す力が過度に大きくなることが抑制されて、防水シートの損傷が抑制される。
【0024】
本発明において、前記支持部材は円環形状の部材であり、前記剛性部材は、平面視で前記支持部材よりも内側に位置すると好適である。
【0025】
本構成によれば、支持部材が円環形状の部材であるので、支持部材を手で押し易く、押圧具による防水シートの押圧が更に均一に行なわれる。加えて、剛性部材が平面視で支持部材よりも内側に位置するので、弾性部材が防水シートを押す力が過度に大きくなることが抑制されて、防水シートの損傷が抑制される。
【0026】
上述した課題を解決する手段として、本発明の防水シート接着方法は、防水下地に防水シート固定具を固定する固定工程と、前記防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程と、前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する接着工程と、前記防水シートを加熱する加熱装置を除去した後に痕跡形成部を備える押圧具で前記防水シートを押圧して前記防水シートを前記防水シート固定具に密着させると共に前記防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡を形成する押圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、押圧具が痕跡形成部を備えるので、防水シート固定具の加熱の後に防水シートを押圧すると、防水シートの表面に痕跡が形成される。痕跡の有無や形状、深さ等により、押圧具による押圧が行なわれたか否か、適切な押圧であったか否かを判定することが可能である。また、本構成によれば、防水シート固定具を特別な形状にすることが不要となる。すなわち、本構成によれば、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かが判定し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程を示す縦断面図である。
【
図5】防水シート固定具を加熱して防水シートを防水シート固定具に接着する接着工程を示す縦断面図である。
【
図6】押圧具で防水シートの表面を押圧する押圧工程を示す縦断面図である。
【
図7】押圧具で防水シートの表面を押圧している状態を示す部分断面平面図である。
【
図8】防水シートに痕跡が形成された状態を示す縦断面図である。
【
図9】防水シートに痕跡が形成された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る押圧具および防水シート接着方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
図1-3に、押圧具1が示されている。
図4-9に、防水シート接着工法が示されている。押圧具1は、防水シート接着工法において、防水シート8の押圧に用いられる。詳しくは、押圧具1は、防水下地4に固定した防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置した後に防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する防水シート接着工法において、防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8の押圧に用いられる。
【0031】
本実施形態では、
図3-6、
図8、
図10に示されるように、円盤状の押圧具1において痕跡形成部3が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水下地4が位置する側を下側と定義し、図中の矢印DWで示す。円盤状の押圧具1において支持部材31が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水シート8が位置する側を上側と定義し、図中の矢印UPで示す。
【0032】
押圧具1は、痕跡形成部3を備える。痕跡形成部3は、押圧具1における防水シート8と接触する接触面2に設けられ、防水シート8の押圧の際に防水シート8の表面に痕跡X(
図8、
図9)を形成する。
【0033】
〔押圧具〕
図1、
図2、
図3に示されるように、押圧具1は、弾性部材11と、剛性部材21と、支持部材31と、を備える。
【0034】
弾性部材11は、弾性変形が可能な部材である。弾性部材11は、例えば板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。弾性部材11の材料は、例えば樹脂であり、例えばゴムであり、本実施形態ではシリコンゴムである。本実施形態では、弾性部材11の下面は、平面であり、接触面2(押圧具1における防水シート8と接触する面)である。図示例では弾性部材11の上面11a(接触面2と反対側の面)は平面であるが、平面でなくてもよい。
【0035】
剛性部材21は、弾性部材11よりも剛性が高い部材である。剛性部材21の材料は、例えば金属であり、本実施形態ではステンレスである。剛性部材21の材料が、弾性部材11よりも剛性の高い樹脂やゴムであってもよい。剛性部材21は、例えば円柱形状である。剛性部材21は、本実施形態では下部が半球状の円柱形状である。剛性部材21は、弾性部材11の下面(接触面2)に配置されている。詳しくは、剛性部材21は、弾性部材11の下面に形成された穴12に挿入されている。剛性部材21は、弾性部材11の下面(接触面2)から突出する状態で弾性部材11に配置されている。
【0036】
本実施形態では、痕跡形成部3が剛性部材21により構成されている。すなわち、剛性部材21は、押圧具1による防水シート8の押圧の際に防水シート8の表面に接触して痕跡Xを形成する。
【0037】
支持部材31は、弾性部材11における下面(接触面2)と反対側の面(上面11a)に接触して弾性部材11を支持する部材である。支持部材31は、例えば板状の部材であり、本実施形態では外周部31aと内周部31bとを有する円環形状の部材である。支持部材31の材料は、例えば金属であり、本実施形態ではアルミ合金である。支持部材31の材料が、弾性部材11よりも剛性の高い樹脂やゴムであってもよい。
【0038】
〔防水シート接着工法〕
図4-9を参照しながら防水シート接着工法(防水シート接着方法の一例)を説明する。防水シート接着工法は、建築工事又は土木工事の防水作業、例えば陸屋根等の防水工事において、コンクリートや金属等の躯体上(以下、防水下地4と称する。)に防水シート8を張り、防水シート8を防水下地4に固定する工法である。
【0039】
〔固定工程、配置工程〕
まず、
図4に示されるように、防水下地4に防水シート固定具6を固定する工程(固定工程)、及び、防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置する工程(配置工程)が行なわれる。詳しくは、防水下地4の上に断熱パネル5を配置し、断熱パネル5の上に防水シート固定具6を配置し、固定部材7により防水下地4に防水シート固定具6を固定する。断熱パネル5は、例えば、イソシアネートのフォーム材で形成してあり、無数の独立気泡が内在している。また、適度な強度と断熱性とを備えている。
【0040】
防水シート固定具6は、電磁誘導による加熱が可能な部材であり、例えば金属製の部材である。防水シート固定具6は、平板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。防水シート固定具6は、上に突出する突出部位6aを有する。突出部位6aの上面が、防水シート8が固定される面(固定面6b)である。本実施形態では、
図7に示されるように、突出部位6aは円環形状であり、固定面6bは外縁6cと内縁6dとを有する円環形状である。本実施形態では、固定面6bにホットメルト接着層が設けられており、防水シート8の防水シート固定具6への接着はホットメルト接着層の熱溶着により行なわれる。なお、防水シート8の防水シート固定具6への接着が、防水シート8の融着(溶融及び固化)により行なわれてもよい。
【0041】
固定部材7は、チューブワッシャ7aとビス7bとを備える。本実施形態では、チューブワッシャ7aを防水シート固定具6の中央の穴に通した状態でチューブワッシャ7aを断熱パネル5に上から貫入させ、チューブワッシャ7aにビス7bを挿入し、ビス7bを防水下地4に螺合させることにより、固定部材7が防水シート固定具6を防水下地4に固定する。
【0042】
防水シート8は、可撓性及び防水性を有するシートである。防水シート8は、例えば塩化ビニル樹脂製のシートである。
【0043】
〔接着工程〕
配置工程の後に、
図5に示されるように、防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する工程(接着工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で加熱装置9を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に加熱装置9を当てて、加熱装置9を作動させ、防水シート固定具6を加熱する。加熱装置9は、例えば、電磁誘導により防水シート固定具6を加熱する電磁誘導加熱装置である。防水シート固定具6が加熱されると、固定面6bに設けられたホットメルト接着層の温度が上昇して軟化又は溶融する。これにより、防水シート固定具6と防水シート8とが接着される。
【0044】
〔押圧工程〕
接着工程の後に、
図6に示されるように、押圧具1で防水シート8を押圧して防水シート8を防水シート固定具6に密着させると共に防水シート8の表面に痕跡Xを形成する工程(押圧工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で押圧具1を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に押圧具1を当てて、防水シート8を押圧する。押圧具1に押されて、防水シート8が防水シート固定具6に密着し、痕跡形成部3により防水シート8の表面に痕跡X(
図8、
図9)が形成される。
【0045】
押圧具1で防水シート8を押圧する際は、
図6、
図7に示されるように、押圧具1の中心と防水シート固定具6の中心とが平面視で一致するように押圧具1を配置すると好ましい。
【0046】
本実施形態では、痕跡形成部3は剛性部材21により構成されており、剛性部材21は押圧具1の接触面2から突出する状態で弾性部材11に配置されている。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、剛性部材21に押されて防水シート8の表面が下方向に窪む。これにより、防水シート8の表面に痕跡Xが形成される。本実施形態では、痕跡Xは、防水シート8の表面の窪み(凹部)である。痕跡Xは、防水シート8の表面における、押圧具1における痕跡形成部3(剛性部材21)の位置に対応する位置に形成される。
【0047】
本実施形態では、痕跡形成部3は互いに離間した複数の部分を有しており、防水シート8への一度の押圧により複数の痕跡Xが防水シート8の表面に形成される。図示例では、痕跡形成部3は、3つの剛性部材21を有している。従って、押圧具1の防水シート8への一度の押圧により、3つの痕跡Xが形成される。
【0048】
本実施形態では、痕跡形成部3の複数の部分が、接触面2の中心2aを中心とする一つの円2bの上に配置されている。詳しくは、
図7に示されるように、3つの剛性部材21が、中心2aを中心とする円2bの上に配置されている。従って、押圧具1の防水シート8への一度の押圧により、3つの痕跡Xが、一つの円の上に位置する状態で形成される。
図示例では、3つの剛性部材21は円2b上に等間隔で配置される。従って、3つの痕跡Xが、一つの円の上に等間隔で位置する状態で形成される。
【0049】
本実施形態では、痕跡形成部3は、防水シート8を真上から見て(平面視)防水シート固定具6の固定面6bと重なる位置に痕跡Xが形成されるように、押圧具1の接触面2に設けられている。押圧具1による防水シート8の押圧の際に、痕跡形成部3(剛性部材21)の下方に防水シート固定具6の固定面6b(突出部位6a)が位置するので、痕跡Xが確実に形成される。
【0050】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、平面視で防水シート固定具6の固定面6bと重なる位置に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0051】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、平面視で防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cと内縁6dとの間に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0052】
換言すれば、
図7に示されるように、押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離A1は、防水シート固定具6の中心から固定面6bの外縁6cまでの距離B1よりも小さく、防水シート固定具6の中心から固定面6bの内縁6dまでの距離B2よりも大きい。
【0053】
本実施形態では、痕跡形成部3は、防水シート8の表面における、防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cよりも内縁6dに近い位置に痕跡Xが形成されるように、押圧具1の接触面2に設けられている。
【0054】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cよりも内縁6dに近い位置に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0055】
換言すれば、
図7に示されるように、距離A1(押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離)と距離B1(防水シート固定具6の中心から固定面6bの外縁6cまでの距離)の差(すなわち痕跡形成部3と外縁6cの距離)は、距離A1と距離B2(防水シート固定具6の中心から固定面6bの内縁6dまでの距離)の差(すなわち痕跡形成部3と内縁6dの距離)よりも大きい。
【0056】
本実施形態では、
図3、
図7に示されるように、痕跡形成部3(剛性部材21)は、平面視で支持部材31と重ならない位置に配置されている。換言すれば、痕跡形成部3(剛性部材21)は、平面視で支持部材31よりも内側に位置する。換言すれば、距離A1(押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離)は、円環形状である支持部材31の内周部31bの半径A2よりも小さい。
【0057】
〔確認工程〕
押圧工程の後に、痕跡Xを確認する工程(確認工程)が行なわれる。
図8、
図9に、防水シート8の表面に痕跡Xが形成された状態の例が示されている。
図9の図示例では、防水シート8の表面に、防水シート固定具6との接着部に対応する輪郭が現れており、その輪郭の内側に痕跡Xが現れている。図示例では、4つの接着箇所D1、D2、D3、D4が示されている。
【0058】
図中左上の接着箇所D1、及び図中右下の接着箇所D4には、3つの痕跡Xが現れている。このことから、接着箇所D1、D4に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されたと判定することができる。
【0059】
図中右上の接着箇所D2には、痕跡Xが現れていない。このことから、接着箇所D2に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されなかったと判定することができる。例えば、接着箇所D2に対して、押圧具1による防水シート8の押圧が為されなかった(作業忘れ)と判定することができる。
【0060】
図中左下の接着箇所D3には、2つの痕跡Xが現れている。痕跡Xの数が、痕跡形成部3の数(3つ)よりも少ない。このことから、接着箇所D3に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されなかったと判定することができる。例えば、接着箇所D3に対して、押圧具1からの押圧力が不適切(傾き、不均一など)、または、押圧具1の位置が不適切であったと判定することができる。
【0061】
確認工程は、押圧工程の直後に押圧工程を行なった作業者により行なわれてもよい。この場合、作業者が自分の作業(押圧作業)の適否を判定できるという利点がある。
【0062】
確認工程は、防水シート8を施工する領域全体に対して押圧工程が完了した後に行なわれてもよいし、防水シート8を施工する領域の一部に対して押圧工程が完了した後に行なわれてもよい。この場合、確認工程の作業を迅速化できるという利点がある。
【0063】
確認工程を、押圧工程を行なった作業者と別の者が行なってもよい。この場合、押圧が適切に為されたか否かの確認を客観的に確実に行なうことができるという利点がある。
【0064】
確認工程が、確認者による接着箇所の目視により行なわれてもよいし、接着箇所を撮影した画像または映像の目視により行なわれてもよい。接着箇所を撮影した画像を含む確認報告書が作成されてもよい。確認工程が、接着箇所の撮影と、撮影された画像又は映像に対する、画像解析を用いたコンピュータによる自動の適否判定により行なわれてもよい。
【0065】
〔他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、押圧具1の接触面2から痕跡形成部3(剛性部材21)が突出する。押圧具1の形態は、上述の例に限られない。例えば、
図10に示されるように、痕跡形成部3が、押圧具1の接触面2に形成された凹部(穴12)であってもよい。
【0066】
押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、防水シート8における接触面2と接触した部位は下方向に押されるが、防水シート8における穴12と対向する部位は下方向に押されない。従って、防水シート8の表面に、表面から突出する形態の痕跡Xが形成される。
【0067】
(2)押圧具1の接触面2から剛性部材21が突出しない形態も可能である。例えば、剛性部材21の下端が接触面2と同一平面上に位置する形態や、剛性部材21の下端が接触面2よりも上に位置する形態も可能である。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、弾性部材11が防水シート8に押されて圧縮され、剛性部材21が防水シート8に接触し、痕跡Xが形成される。
【0068】
(3)押圧具1の接触面2に剛性部材21が露出しない形態も可能である。例えば、剛性部材21が弾性部材11の内部に埋め込まれてもよい。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、弾性部材11が防水シート8に押されて圧縮変形する。剛性部材21が内部に位置する部位では変形量が小さく、その部位が接触面2から突出する。その部位が防水シート8を押すことにより、痕跡Xが形成される。
【0069】
(4)防水シート8に形成される痕跡Xが、文字や図形、模様などであってもよい。例えば、
図11に示されるように、痕跡Xが文字(図示例ではアルファベットの「A」)であってもよい。
【0070】
(5)上述の実施形態では、痕跡形成部3の複数の部分(例えば剛性部材21)の形態は同一であり、形成される複数の痕跡Xの形態は同一である。痕跡形成部3の複数の部分の形態が互いに異なっており、防水シート8の表面に形成される複数の痕跡Xの形態が互いに異なってもよい。例えば、防水シート8に「上」「下」「右」「左」の4つの痕跡Xが形成されるよう、痕跡形成部3の4つの部分が「上」「下」「右」「左」の反転文字の形態を有してもよい。
【0071】
(6)痕跡形成部3の形態(大きさ、接触面2からの突出/後退長さなど)は、防水シート8の性状(厚さ、材質、強度など)に応じて適宜設定されるとよい。
【0072】
例えば、剛性部材21における接触面2からの突出部が、円柱形状であってもよい。突出部が接触面2から突出する長さが、0.5mmであってもよい。この場合、押圧具1を厚さが1.5mmである防水シート8に使用した場合、深さが0.2mmから0.3mmの円形の痕跡Xが防水シート8に形成される。
【0073】
剛性部材21における接触面2からの突出部の突出長さは、防水シート8の厚さの1/2以下であると好ましく、防水シート8の厚さの1/3以下であると更に好ましく、0.5mm以下であると更に好ましい。
【0074】
痕跡Xが時間の経過と共に薄くなる、又は消えるように、痕跡形成部3の形態が決定されてもよい。例えば、防水シート8の施工の1ヶ月後までに痕跡Xが消えるような形態に、痕跡形成部3の形態が設定されてもよい。
【0075】
(7)押圧具1が、弾性部材11に替えて、弾性を有さない板状の部材を備えてもよい。
当該板状の部材の下面が接触面2として機能する。板状の部材の下面に痕跡形成部3が備えられる。
【0076】
(8)押圧具1と加熱装置9とが、一体化した装置であってもよい。すなわち、加熱装置9における防水シート8と接触する部位が、押圧具1と同様の構成を有してもよい。換言すれば、加熱装置9が押圧具1を兼ねてもよい。
【0077】
この場合、接着工程にて加熱装置9を防水シート8に当てたとき、接触面2及び痕跡形成部3が防水シート8に押し当てられる。その状態で加熱装置9を作動させて防水シート固定具6を加熱し防水シート8と防水シート固定具6とを接着させる。加熱装置9を停止させ、接触面2により防水シート8を押圧して、防水シート8を防水シート固定具6に密着させると共に、防水シート8の表面に痕跡Xを形成する。すなわち、この形態においても、接着工程の後に押圧工程が行なわれる。
【0078】
(9)上述の実施形態では、押圧具1、弾性部材11、及び支持部材31は、平面視の形状が共に円形である。押圧具1、弾性部材11、及び支持部材31の形状は、上述の例に限られない。これら部材の全て、又は一部の平面視の形状が、小判型などの楕円形や、三角形、四角形などの多角形であってもよい。
【0079】
(10)押圧具1が、作業者により把持される把持部材を備えてもよい。例えば、把持部材は、上下方向に延びる棒状の部材であってもよい。
【0080】
(11)痕跡形成部3の形態が変更可能であってもよい。例えば、剛性部材21が異なる形態の部材へ変更可能であってもよい。防水シート8の種類に応じた複数種類の剛性部材21が用意されてもよい。
【0081】
(12)押圧具1による防水シート8への「押圧」は、作業者が押圧具1を防水シート8へ向けて押しつけることにより実現されてもよいし、押圧具1の自重によって押圧具1が防水シート8を押すことにより実現されてもよい。
【0082】
(13)複数の押圧具1が用意され、それらの押圧具1が複数の接着箇所に置かれ、防水シート8の押圧が複数の接着箇所で同時並行して行なわれてもよい。この場合、作業効率が向上する利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、防水シート接着工法に用いることができる。詳しくは、押圧具を、防水シート固定具の加熱の後に防水シートの押圧に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :押圧具
2 :接触面
2a :中心
2b :円
3 :痕跡形成部
4 :防水下地
6 :防水シート固定具
6b :固定面
6c :外縁
6d :内縁
8 :防水シート
11 :弾性部材
21 :剛性部材
31 :支持部材
X :痕跡
【手続補正書】
【提出日】2022-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる、加熱機能を有さない押圧具であって、
前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面に痕跡を形成する痕跡形成部を備える押圧具。
【請求項2】
前記痕跡形成部は互いに離間した複数の部分を有しており、
前記防水シートへの一度の押圧により複数の前記痕跡が前記防水シートの表面に形成される請求項1に記載の押圧具。
【請求項3】
前記痕跡形成部の複数の前記部分が、前記接触面の中心を中心とする一つの円の上に配置されている請求項2に記載の押圧具。
【請求項4】
前記痕跡形成部の複数の前記部分の形態が互いに異なっており、
前記防水シートの表面に形成される複数の前記痕跡の形態が互いに異なる請求項2又は3に記載の押圧具。
【請求項5】
前記防水シート固定具の前記固定面は外縁と内縁とを有する円環形状であり、
前記痕跡形成部は、前記防水シートの表面における前記外縁よりも前記内縁に近い位置に前記痕跡が形成されるように、前記接触面に設けられている請求項1から4のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項6】
弾性変形が可能な弾性部材を備え、
前記接触面は前記弾性部材の表面であり、
前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されている請求項1から5のいずれか1項に記載の押圧具。
【請求項7】
前記剛性部材が、前記接触面から突出する状態で前記弾性部材に配置されている請求項6に記載の押圧具。
【請求項8】
前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材を備え、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されている請求項6又は7に記載の押圧具。
【請求項9】
前記支持部材は円環形状の部材であり、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材よりも内側に位置する請求項8に記載の押圧具。
【請求項10】
防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる押圧具であって、
前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面に痕跡を形成する痕跡形成部と、
弾性変形が可能であり、その表面が前記接触面である弾性部材と、
前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材と、を備え、
前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されており、
前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されている、押圧具。
【請求項11】
防水下地に防水シート固定具を固定する固定工程と、
前記防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程と、
前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する接着工程と、
前記防水シートを加熱する加熱装置を除去した後に痕跡形成部を備える押圧具で前記防水シートを押圧して前記防水シートを前記防水シート固定具に密着させると共に前記防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡を形成する押圧工程と、を含む防水シート接着方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧具および防水シート接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、防水シート押さえパットが開示されている。この防水シート押さえパットは、防水シートを固定板に接着する防水シート接着方法の実施の際に用いられる。詳しくは、防水シート押さえパットは、固定板の加熱後に接着箇所の防水シートを弾性的に押さえて、固定板に対する防水シートの密着性を向上させるのに使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5385655号公報
【特許文献2】特開平10-77722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防水シート押さえパットによる防水シートの押さえ作業は、作業者が防水シート押さえパットを手で接着箇所に押しつけることにより、実行される。防水シート押さえパットを接着箇所へ押しつける力が弱い場合や、押しつける方向が傾いている場合、押しつける位置がずれている場合、押さえ作業の実行を忘れた場合には、固定板への防水シートの接着が不良となる。
【0005】
固定板への防水シートの接着不良は、以下の理由で発見が困難である。まず、固定板と防水シートとの接着が不良であっても防水シートの表面は正常接着の場合と同様に滑らかであるから、目視で不良を発見し難い。また、固定板と防水シートとの接着箇所は防水シートの裏側であるから、直接視認することができない。そして、周囲の接着箇所が正常に接着されていると、防水シートを持ち上げて接着の成否を確認することも困難である。
【0006】
特許文献2には、導体片(上述の固定板)のビス取付孔の近傍周囲に、環状凸部を設ける技術が開示されている。環状凸部は、他の部分より低くしてある。この導体片の上面に防水シートが溶着されると、防水シートの表面に環状凸部に対応する溶着紋が生じる。この技術によれば、環状の溶着紋が生じたか否かによって、確実に溶着がなされているか否かを判断することができる。しかし、この技術によれば、導体片の形状が複雑になる上に、防水シートにおける環状凸部に溶着した部位が、他の部位よりも低くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かを判定し易くする手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する手段として、本発明の押圧具は、防水下地に固定した防水シート固定具の固定面に防水シートを配置した後に前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する防水シート接着工法において前記防水シート固定具の加熱の後に前記防水シートの押圧に用いる、加熱機能を有さない押圧具であって、前記防水シートと接触する接触面に設けられ前記防水シートの押圧の際に前記防水シートの表面に痕跡を形成する痕跡形成部を備えることを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、押圧具が痕跡形成部を備えるので、防水シート固定具の加熱の後に防水シートを押圧すると、防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡が形成される。痕跡の有無や形状、深さ等により、押圧具による押圧が行なわれたか否か、適切な押圧であったか否かを判定することが可能である。また、本構成によれば、防水シート固定具を特別な形状にすることが不要となる。すなわち、本構成によれば、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かが判定し易くなる。
【0010】
本発明において、前記痕跡形成部は互いに離間した複数の部分を有しており、前記防水シートへの一度の押圧により複数の前記痕跡が前記防水シートの表面に形成されると好適である。
【0011】
本構成によれば、押圧具の痕跡形成部が互いに離間した複数の部分を有するので、押圧具の防水シートへの一度の押圧により、痕跡形成部の複数の部分に対応する複数の痕跡が、防水シートの表面に形成される。痕跡の数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。
【0012】
本発明において、前記痕跡形成部の複数の前記部分が、前記接触面の中心を中心とする一つの円の上に配置されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、痕跡形成部の複数の部分が一つの円の上に配置されているので、防水シートの表面に形成される複数の痕跡が一つの円の上に位置することになる。痕跡の位置、数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。例えば、痕跡の位置から、押圧の際の押圧具の位置を推定することができるので、防水シート固定具に対して適切な位置で押圧したか否かを判定することが可能となる。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。
【0014】
本発明において、前記痕跡形成部の複数の前記部分の形態が互いに異なっており、前記防水シートの表面に形成される複数の前記痕跡の形態が互いに異なると好適である。
【0015】
本構成によれば、痕跡形成部の複数の部分の形態が互いに異なっているので、防水シートの表面に形成される複数の痕跡の形態が、互いに異なる。痕跡の位置、数、痕跡の深さの大小関係等により、押圧具による押圧が適切であったか否かをより詳しく判定することが可能である。すなわち、本構成によれば、防水シートの施工が適切に為されたか否かが更に判定し易くなる。また、痕跡の配置から、押圧の際の押圧具の向きや、押圧力の傾きの方向を推定することができるので、押圧の際の力の入れ方の癖や作業の巧拙を推定することも可能となる。
【0016】
本発明において、前記防水シート固定具の前記固定面は外縁と内縁とを有する円環形状であり、前記痕跡形成部は、前記防水シートの表面における前記外縁よりも前記内縁に近い位置に前記痕跡が形成されるように、前記接触面に設けられていると好適である。
【0017】
防水シートの剥がれの抑制のため、防水シート固定具への防水シートの接着は、固定面の外縁の近傍で強固に行なわれると好ましい。本構成によれば、防水シートの表面における外縁よりも内縁に近い位置に痕跡が形成されるように、痕跡形成部が押圧具の接触面に設けられる。従って、固定面の外縁の近傍における押圧具による防水シートの押圧に、痕跡形成部が影響を与えることが抑制される。すなわち、防水シートの接着への悪影響を抑制しつつ、防水シートの施工が適切に為されたか否かを判定し易くすることができる。
【0018】
本発明において、弾性変形が可能な弾性部材を備え、前記接触面は前記弾性部材の表面であり、前記痕跡形成部が前記弾性部材よりも剛性が高い剛性部材により構成されていると好適である。
【0019】
本構成によれば、弾性部材よりも剛性の高い剛性部材により、防水シートの表面に痕跡を確実に形成することができる。また、剛性部材が弾性部材に設けられるので、弾性部材の弾性変形により剛性部材が防水シートを押す力が低減される。これにより、防水シートの損傷が抑制される。
【0020】
本発明において、前記剛性部材が、前記接触面から突出する状態で前記弾性部材に配置されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、接触面から突出する剛性部材が防水シートに接触するので、防水シートの表面に痕跡を更に確実に形成することができる。
【0022】
本発明において、前記弾性部材における前記接触面と反対側の面に接触して前記弾性部材を支持する支持部材を備え、前記剛性部材は、平面視で前記支持部材と重ならない位置に配置されていると好適である。
【0023】
本構成によれば、弾性部材が支持部材に支持されるので、押圧具の取り扱いが容易になって作業性が向上すると共に、押圧具による防水シートの押圧が均一に行なわれる。ここで、押圧具で防水シートを押圧する際、平面視で支持部材と重なる位置においては、支持部材の存在により、弾性部材が防水シートを押圧する力が大きくなる。本構成によれば、剛性部材が平面視で支持部材と重ならない位置に配置されているので、弾性部材が防水シートを押す力が過度に大きくなることが抑制されて、防水シートの損傷が抑制される。
【0024】
本発明において、前記支持部材は円環形状の部材であり、前記剛性部材は、平面視で前記支持部材よりも内側に位置すると好適である。
【0025】
本構成によれば、支持部材が円環形状の部材であるので、支持部材を手で押し易く、押圧具による防水シートの押圧が更に均一に行なわれる。加えて、剛性部材が平面視で支持部材よりも内側に位置するので、弾性部材が防水シートを押す力が過度に大きくなることが抑制されて、防水シートの損傷が抑制される。
【0026】
上述した課題を解決する手段として、本発明の防水シート接着方法は、防水下地に防水シート固定具を固定する固定工程と、前記防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程と、前記防水シート固定具を加熱して前記防水シートを前記防水シート固定具に接着する接着工程と、前記防水シートを加熱する加熱装置を除去した後に痕跡形成部を備える押圧具で前記防水シートを押圧して前記防水シートを前記防水シート固定具に密着させると共に前記防水シートの表面のうち前記防水シート固定具の平坦部に対応する部位に痕跡を形成する押圧工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
本構成によれば、押圧具が痕跡形成部を備えるので、防水シート固定具の加熱の後に防水シートを押圧すると、防水シートの表面に痕跡が形成される。痕跡の有無や形状、深さ等により、押圧具による押圧が行なわれたか否か、適切な押圧であったか否かを判定することが可能である。また、本構成によれば、防水シート固定具を特別な形状にすることが不要となる。すなわち、本構成によれば、簡易な構成により防水シートの施工が適切に為されたか否かが判定し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図4】防水シート固定具の固定面に防水シートを配置する配置工程を示す縦断面図である。
【
図5】防水シート固定具を加熱して防水シートを防水シート固定具に接着する接着工程を示す縦断面図である。
【
図6】押圧具で防水シートの表面を押圧する押圧工程を示す縦断面図である。
【
図7】押圧具で防水シートの表面を押圧している状態を示す部分断面平面図である。
【
図8】防水シートに痕跡が形成された状態を示す縦断面図である。
【
図9】防水シートに痕跡が形成された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る押圧具および防水シート接着方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0030】
図1-3に、押圧具1が示されている。
図4-9に、防水シート接着工法が示されている。押圧具1は、防水シート接着工法において、防水シート8の押圧に用いられる。詳しくは、押圧具1は、防水下地4に固定した防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置した後に防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する防水シート接着工法において、防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8の押圧に用いられる。
【0031】
本実施形態では、
図3-6、
図8、
図10に示されるように、円盤状の押圧具1において痕跡形成部3が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水下地4が位置する側を下側と定義し、図中の矢印DWで示す。円盤状の押圧具1において支持部材31が位置する側、及び円盤状の防水シート固定具6に対して防水シート8が位置する側を上側と定義し、図中の矢印UPで示す。
【0032】
押圧具1は、痕跡形成部3を備える。痕跡形成部3は、押圧具1における防水シート8と接触する接触面2に設けられ、防水シート8の押圧の際に防水シート8の表面に痕跡X(
図8、
図9)を形成する。
【0033】
〔押圧具〕
図1、
図2、
図3に示されるように、押圧具1は、弾性部材11と、剛性部材21と、支持部材31と、を備える。
【0034】
弾性部材11は、弾性変形が可能な部材である。弾性部材11は、例えば板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。弾性部材11の材料は、例えば樹脂であり、例えばゴムであり、本実施形態ではシリコンゴムである。本実施形態では、弾性部材11の下面は、平面であり、接触面2(押圧具1における防水シート8と接触する面)である。図示例では弾性部材11の上面11a(接触面2と反対側の面)は平面であるが、平面でなくてもよい。
【0035】
剛性部材21は、弾性部材11よりも剛性が高い部材である。剛性部材21の材料は、例えば金属であり、本実施形態ではステンレスである。剛性部材21の材料が、弾性部材11よりも剛性の高い樹脂やゴムであってもよい。剛性部材21は、例えば円柱形状である。剛性部材21は、本実施形態では下部が半球状の円柱形状である。剛性部材21は、弾性部材11の下面(接触面2)に配置されている。詳しくは、剛性部材21は、弾性部材11の下面に形成された穴12に挿入されている。剛性部材21は、弾性部材11の下面(接触面2)から突出する状態で弾性部材11に配置されている。
【0036】
本実施形態では、痕跡形成部3が剛性部材21により構成されている。すなわち、剛性部材21は、押圧具1による防水シート8の押圧の際に防水シート8の表面に接触して痕跡Xを形成する。
【0037】
支持部材31は、弾性部材11における下面(接触面2)と反対側の面(上面11a)に接触して弾性部材11を支持する部材である。支持部材31は、例えば板状の部材であり、本実施形態では外周部31aと内周部31bとを有する円環形状の部材である。支持部材31の材料は、例えば金属であり、本実施形態ではアルミ合金である。支持部材31の材料が、弾性部材11よりも剛性の高い樹脂やゴムであってもよい。
【0038】
〔防水シート接着工法〕
図4-9を参照しながら防水シート接着工法(防水シート接着方法の一例)を説明する。防水シート接着工法は、建築工事又は土木工事の防水作業、例えば陸屋根等の防水工事において、コンクリートや金属等の躯体上(以下、防水下地4と称する。)に防水シート8を張り、防水シート8を防水下地4に固定する工法である。
【0039】
〔固定工程、配置工程〕
まず、
図4に示されるように、防水下地4に防水シート固定具6を固定する工程(固定工程)、及び、防水シート固定具6の固定面6bに防水シート8を配置する工程(配置工程)が行なわれる。詳しくは、防水下地4の上に断熱パネル5を配置し、断熱パネル5の上に防水シート固定具6を配置し、固定部材7により防水下地4に防水シート固定具6を固定する。断熱パネル5は、例えば、イソシアネートのフォーム材で形成してあり、無数の独立気泡が内在している。また、適度な強度と断熱性とを備えている。
【0040】
防水シート固定具6は、電磁誘導による加熱が可能な部材であり、例えば金属製の部材である。防水シート固定具6は、平板状の部材であり、本実施形態では円盤状の部材である。防水シート固定具6は、上に突出する突出部位6aを有する。突出部位6aの上面が、防水シート8が固定される面(固定面6b)である。本実施形態では、
図7に示されるように、突出部位6aは円環形状であり、固定面6bは外縁6cと内縁6dとを有する円環形状である。本実施形態では、固定面6bにホットメルト接着層が設けられており、防水シート8の防水シート固定具6への接着はホットメルト接着層の熱溶着により行なわれる。なお、防水シート8の防水シート固定具6への接着が、防水シート8の融着(溶融及び固化)により行なわれてもよい。
【0041】
固定部材7は、チューブワッシャ7aとビス7bとを備える。本実施形態では、チューブワッシャ7aを防水シート固定具6の中央の穴に通した状態でチューブワッシャ7aを断熱パネル5に上から貫入させ、チューブワッシャ7aにビス7bを挿入し、ビス7bを防水下地4に螺合させることにより、固定部材7が防水シート固定具6を防水下地4に固定する。
【0042】
防水シート8は、可撓性及び防水性を有するシートである。防水シート8は、例えば塩化ビニル樹脂製のシートである。
【0043】
〔接着工程〕
配置工程の後に、
図5に示されるように、防水シート固定具6を加熱して防水シート8を防水シート固定具6に接着する工程(接着工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で加熱装置9を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に加熱装置9を当てて、加熱装置9を作動させ、防水シート固定具6を加熱する。加熱装置9は、例えば、電磁誘導により防水シート固定具6を加熱する電磁誘導加熱装置である。防水シート固定具6が加熱されると、固定面6bに設けられたホットメルト接着層の温度が上昇して軟化又は溶融する。これにより、防水シート固定具6と防水シート8とが接着される。
【0044】
〔押圧工程〕
接着工程の後に、
図6に示されるように、押圧具1で防水シート8を押圧して防水シート8を防水シート固定具6に密着させると共に防水シート8の表面に痕跡Xを形成する工程(押圧工程)が行なわれる。詳しくは、作業者が、手で押圧具1を持ち、防水シート8の上から防水シート固定具6の上に押圧具1を当てて、防水シート8を押圧する。押圧具1に押されて、防水シート8が防水シート固定具6に密着し、痕跡形成部3により防水シート8の表面に痕跡X(
図8、
図9)が形成される。
【0045】
押圧具1で防水シート8を押圧する際は、
図6、
図7に示されるように、押圧具1の中心と防水シート固定具6の中心とが平面視で一致するように押圧具1を配置すると好ましい。
【0046】
本実施形態では、痕跡形成部3は剛性部材21により構成されており、剛性部材21は押圧具1の接触面2から突出する状態で弾性部材11に配置されている。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、剛性部材21に押されて防水シート8の表面が下方向に窪む。これにより、防水シート8の表面に痕跡Xが形成される。本実施形態では、痕跡Xは、防水シート8の表面の窪み(凹部)である。痕跡Xは、防水シート8の表面における、押圧具1における痕跡形成部3(剛性部材21)の位置に対応する位置に形成される。
【0047】
本実施形態では、痕跡形成部3は互いに離間した複数の部分を有しており、防水シート8への一度の押圧により複数の痕跡Xが防水シート8の表面に形成される。図示例では、痕跡形成部3は、3つの剛性部材21を有している。従って、押圧具1の防水シート8への一度の押圧により、3つの痕跡Xが形成される。
【0048】
本実施形態では、痕跡形成部3の複数の部分が、接触面2の中心2aを中心とする一つの円2bの上に配置されている。詳しくは、
図7に示されるように、3つの剛性部材21が、中心2aを中心とする円2bの上に配置されている。従って、押圧具1の防水シート8への一度の押圧により、3つの痕跡Xが、一つの円の上に位置する状態で形成される。
図示例では、3つの剛性部材21は円2b上に等間隔で配置される。従って、3つの痕跡Xが、一つの円の上に等間隔で位置する状態で形成される。
【0049】
本実施形態では、痕跡形成部3は、防水シート8を真上から見て(平面視)防水シート固定具6の固定面6bと重なる位置に痕跡Xが形成されるように、押圧具1の接触面2に設けられている。押圧具1による防水シート8の押圧の際に、痕跡形成部3(剛性部材21)の下方に防水シート固定具6の固定面6b(突出部位6a)が位置するので、痕跡Xが確実に形成される。
【0050】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、平面視で防水シート固定具6の固定面6bと重なる位置に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0051】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、平面視で防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cと内縁6dとの間に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0052】
換言すれば、
図7に示されるように、押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離A1は、防水シート固定具6の中心から固定面6bの外縁6cまでの距離B1よりも小さく、防水シート固定具6の中心から固定面6bの内縁6dまでの距離B2よりも大きい。
【0053】
本実施形態では、痕跡形成部3は、防水シート8の表面における、防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cよりも内縁6dに近い位置に痕跡Xが形成されるように、押圧具1の接触面2に設けられている。
【0054】
換言すれば、痕跡形成部3は、押圧具1を防水シート固定具6の真上に位置させたとき(
図7)に、防水シート固定具6の固定面6bの外縁6cよりも内縁6dに近い位置に位置するように、押圧具1に配置されている。
【0055】
換言すれば、
図7に示されるように、距離A1(押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離)と距離B1(防水シート固定具6の中心から固定面6bの外縁6cまでの距離)の差(すなわち痕跡形成部3と外縁6cの距離)は、距離A1と距離B2(防水シート固定具6の中心から固定面6bの内縁6dまでの距離)の差(すなわち痕跡形成部3と内縁6dの距離)よりも大きい。
【0056】
本実施形態では、
図3、
図7に示されるように、痕跡形成部3(剛性部材21)は、平面視で支持部材31と重ならない位置に配置されている。換言すれば、痕跡形成部3(剛性部材21)は、平面視で支持部材31よりも内側に位置する。換言すれば、距離A1(押圧具1における接触面2の中心2aから痕跡形成部3までの距離)は、円環形状である支持部材31の内周部31bの半径A2よりも小さい。
【0057】
〔確認工程〕
押圧工程の後に、痕跡Xを確認する工程(確認工程)が行なわれる。
図8、
図9に、防水シート8の表面に痕跡Xが形成された状態の例が示されている。
図9の図示例では、防水シート8の表面に、防水シート固定具6との接着部に対応する輪郭が現れており、その輪郭の内側に痕跡Xが現れている。図示例では、4つの接着箇所D1、D2、D3、D4が示されている。
【0058】
図中左上の接着箇所D1、及び図中右下の接着箇所D4には、3つの痕跡Xが現れている。このことから、接着箇所D1、D4に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されたと判定することができる。
【0059】
図中右上の接着箇所D2には、痕跡Xが現れていない。このことから、接着箇所D2に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されなかったと判定することができる。例えば、接着箇所D2に対して、押圧具1による防水シート8の押圧が為されなかった(作業忘れ)と判定することができる。
【0060】
図中左下の接着箇所D3には、2つの痕跡Xが現れている。痕跡Xの数が、痕跡形成部3の数(3つ)よりも少ない。このことから、接着箇所D3に対して押圧具1による防水シート8の押圧が適切に為されなかったと判定することができる。例えば、接着箇所D3に対して、押圧具1からの押圧力が不適切(傾き、不均一など)、または、押圧具1の位置が不適切であったと判定することができる。
【0061】
確認工程は、押圧工程の直後に押圧工程を行なった作業者により行なわれてもよい。この場合、作業者が自分の作業(押圧作業)の適否を判定できるという利点がある。
【0062】
確認工程は、防水シート8を施工する領域全体に対して押圧工程が完了した後に行なわれてもよいし、防水シート8を施工する領域の一部に対して押圧工程が完了した後に行なわれてもよい。この場合、確認工程の作業を迅速化できるという利点がある。
【0063】
確認工程を、押圧工程を行なった作業者と別の者が行なってもよい。この場合、押圧が適切に為されたか否かの確認を客観的に確実に行なうことができるという利点がある。
【0064】
確認工程が、確認者による接着箇所の目視により行なわれてもよいし、接着箇所を撮影した画像または映像の目視により行なわれてもよい。接着箇所を撮影した画像を含む確認報告書が作成されてもよい。確認工程が、接着箇所の撮影と、撮影された画像又は映像に対する、画像解析を用いたコンピュータによる自動の適否判定により行なわれてもよい。
【0065】
〔他の実施形態〕(1)上述の実施形態では、押圧具1の接触面2から痕跡形成部3(剛性部材21)が突出する。押圧具1の形態は、上述の例に限られない。例えば、
図10に示されるように、痕跡形成部3が、押圧具1の接触面2に形成された凹部(穴12)であってもよい。
【0066】
押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、防水シート8における接触面2と接触した部位は下方向に押されるが、防水シート8における穴12と対向する部位は下方向に押されない。従って、防水シート8の表面に、表面から突出する形態の痕跡Xが形成される。
【0067】
(2)押圧具1の接触面2から剛性部材21が突出しない形態も可能である。例えば、剛性部材21の下端が接触面2と同一平面上に位置する形態や、剛性部材21の下端が接触面2よりも上に位置する形態も可能である。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、弾性部材11が防水シート8に押されて圧縮され、剛性部材21が防水シート8に接触し、痕跡Xが形成される。
【0068】
(3)押圧具1の接触面2に剛性部材21が露出しない形態も可能である。例えば、剛性部材21が弾性部材11の内部に埋め込まれてもよい。押圧具1が防水シート固定具6の加熱の後に防水シート8に押しつけられると、弾性部材11が防水シート8に押されて圧縮変形する。剛性部材21が内部に位置する部位では変形量が小さく、その部位が接触面2から突出する。その部位が防水シート8を押すことにより、痕跡Xが形成される。
【0069】
(4)防水シート8に形成される痕跡Xが、文字や図形、模様などであってもよい。例えば、
図11に示されるように、痕跡Xが文字(図示例ではアルファベットの「A」)であってもよい。
【0070】
(5)上述の実施形態では、痕跡形成部3の複数の部分(例えば剛性部材21)の形態は同一であり、形成される複数の痕跡Xの形態は同一である。痕跡形成部3の複数の部分の形態が互いに異なっており、防水シート8の表面に形成される複数の痕跡Xの形態が互いに異なってもよい。例えば、防水シート8に「上」「下」「右」「左」の4つの痕跡Xが形成されるよう、痕跡形成部3の4つの部分が「上」「下」「右」「左」の反転文字の形態を有してもよい。
【0071】
(6)痕跡形成部3の形態(大きさ、接触面2からの突出/後退長さなど)は、防水シート8の性状(厚さ、材質、強度など)に応じて適宜設定されるとよい。
【0072】
例えば、剛性部材21における接触面2からの突出部が、円柱形状であってもよい。突出部が接触面2から突出する長さが、0.5mmであってもよい。この場合、押圧具1を厚さが1.5mmである防水シート8に使用した場合、深さが0.2mmから0.3mmの円形の痕跡Xが防水シート8に形成される。
【0073】
剛性部材21における接触面2からの突出部の突出長さは、防水シート8の厚さの1/2以下であると好ましく、防水シート8の厚さの1/3以下であると更に好ましく、0.5mm以下であると更に好ましい。
【0074】
痕跡Xが時間の経過と共に薄くなる、又は消えるように、痕跡形成部3の形態が決定されてもよい。例えば、防水シート8の施工の1ヶ月後までに痕跡Xが消えるような形態に、痕跡形成部3の形態が設定されてもよい。
【0075】
(7)押圧具1が、弾性部材11に替えて、弾性を有さない板状の部材を備えてもよい。
当該板状の部材の下面が接触面2として機能する。板状の部材の下面に痕跡形成部3が備えられる。
【0076】
(8)押圧具1と加熱装置9とが、一体化した装置であってもよい。すなわち、加熱装置9における防水シート8と接触する部位が、押圧具1と同様の構成を有してもよい。換言すれば、加熱装置9が押圧具1を兼ねてもよい。
【0077】
この場合、接着工程にて加熱装置9を防水シート8に当てたとき、接触面2及び痕跡形成部3が防水シート8に押し当てられる。その状態で加熱装置9を作動させて防水シート固定具6を加熱し防水シート8と防水シート固定具6とを接着させる。加熱装置9を停止させ、接触面2により防水シート8を押圧して、防水シート8を防水シート固定具6に密着させると共に、防水シート8の表面に痕跡Xを形成する。すなわち、この形態においても、接着工程の後に押圧工程が行なわれる。
【0078】
(9)上述の実施形態では、押圧具1、弾性部材11、及び支持部材31は、平面視の形状が共に円形である。押圧具1、弾性部材11、及び支持部材31の形状は、上述の例に限られない。これら部材の全て、又は一部の平面視の形状が、小判型などの楕円形や、三角形、四角形などの多角形であってもよい。
【0079】
(10)押圧具1が、作業者により把持される把持部材を備えてもよい。例えば、把持部材は、上下方向に延びる棒状の部材であってもよい。
【0080】
(11)痕跡形成部3の形態が変更可能であってもよい。例えば、剛性部材21が異なる形態の部材へ変更可能であってもよい。防水シート8の種類に応じた複数種類の剛性部材21が用意されてもよい。
【0081】
(12)押圧具1による防水シート8への「押圧」は、作業者が押圧具1を防水シート8へ向けて押しつけることにより実現されてもよいし、押圧具1の自重によって押圧具1が防水シート8を押すことにより実現されてもよい。
【0082】
(13)複数の押圧具1が用意され、それらの押圧具1が複数の接着箇所に置かれ、防水シート8の押圧が複数の接着箇所で同時並行して行なわれてもよい。この場合、作業効率が向上する利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、防水シート接着工法に用いることができる。詳しくは、押圧具を、防水シート固定具の加熱の後に防水シートの押圧に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 :押圧具
2 :接触面
2a :中心
2b :円
3 :痕跡形成部
4 :防水下地
6 :防水シート固定具
6b :固定面
6c :外縁
6d :内縁
8 :防水シート
11 :弾性部材
21 :剛性部材
31 :支持部材
X :痕跡