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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038280
(43)【公開日】2023-03-16
(54)【発明の名称】血流計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/12 20060101AFI20230309BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61B3/12 300
A61B3/10 100
A61B3/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005581
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2018246992の分割
【原出願日】2018-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】南出 夏奈
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 正博
(57)【要約】
【課題】眼底血流の計測位置の設定を自動化する。
【解決手段】実施形態の血流計測装置は、眼底の正面画像を解析して血管に交差する注目領域を設定し、それを示す注目領域画像を表示する。ユーザーが注目領域画像を移動すると、血流計測装置はこの新たな注目領域が適当であるか否か判定して新たな注目領域を設定し、この新たな注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用してデータを収集し、このデータに基づき血流情報を取得する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用するスキャン光学系と、
前記眼底の正面画像を取得する正面画像取得部と、
予め設定された条件に基づき前記正面画像を解析して、血管に交差する注目領域を設定する注目領域設定部と、
前記注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するように前記スキャン光学系を制御するスキャン制御部と、
前記反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を取得する血流情報取得部と
を含み、
前記注目領域設定部により設定された注目領域を示す注目領域画像を表示装置に表示させる表示制御部と、
前記表示装置に表示された前記注目領域画像を移動するための操作部と
を更に含み、
前記注目領域設定部は、前記操作部を用いて前記注目領域画像を移動することによって設定された新たな注目領域が適当であるか否か判定を行って新たな注目領域を設定し、
前記スキャン制御部は、前記新たな注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するように前記スキャン光学系を制御し、
前記血流情報取得部は、前記新たな注目領域に対して適用された前記反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を取得する
ことを特徴とする、血流計測装置。
【請求項2】
前記注目領域設定部は、予め設定された血管特定条件及び予め設定された位置特定条件の一方又は双方に基づいて前記判定を行う
ことを特徴とする、請求項1の血流計測装置。
【請求項3】
前記注目領域設定部は、少なくとも前記血管特定条件に基づいて前記判定を行い、
前記血管特定条件は、血管の種別に関する血管種別条件、血管の太さに関する血管径条件、及び、血管の位置に関する血管位置条件のうちのいずれか1つ以上を含む
ことを特徴とする、請求項2の血流計測装置。
【請求項4】
前記注目領域設定部は、少なくとも前記位置特定条件に基づいて前記判定を行い、
前記位置特定条件は、血管の分岐に関する分岐条件、血管の蛇行に関する蛇行条件、及び、眼底の部位に対する位置に関する相対位置条件のうちのいずれか1つ以上を含む
ことを特徴とする、請求項2又は3の血流計測装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記被検眼の眼底画像上に重ねて注目領域画像を表示させる
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれかの血流計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、眼底の血流動態を計測するための血流計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野において、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を利用して眼底の血流動態を計測する装置の開発が進められている(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【0003】
眼底血流計測においては、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを取得するために、計測位置を適切に選択する必要がある。適切な計測位置を設定するには、眼底を走行する多数の血管のうちから適切な血管を選択することや、血管の適切な箇所を特定することが必要であるが、このような作業を手動で行うことはユーザーにとって煩雑であり、検査時間を長引かせる一因にもなっていた。また、適切な計測位置が設定されないまま血流計測が実施されるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-184018号公報
【特許文献2】特開2018-46959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、眼底血流の計測位置の設定を自動化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例示的な実施形態に係る血流計測装置は、スキャン光学系と、正面画像取得部と、注目領域設定部と、スキャン制御部と、血流情報取得部とを含む。スキャン光学系は、被検眼の眼底に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用する。正面画像取得部は、眼底の正面画像を取得する。注目領域設定部は、予め設定された条件に基づき正面画像を解析して、血管に交差する注目領域を設定する。スキャン制御部は、注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。血流情報取得部は、反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を取得する。
【0007】
例示的な実施形態において、注目領域設定部は、予め設定された血管特定条件に基づき正面画像を解析して注目血管を特定する注目血管特定部を含み、注目血管に交差する注目領域を設定する。
【0008】
例示的な実施形態において、注目血管特定部は、注目血管として注目動脈を特定する注目動脈特定部を含む。
【0009】
例示的な実施形態において、注目血管特定部は、予め設定された閾値以上の径を有する大径血管を注目血管として特定する大径血管特定部を含む。
【0010】
例示的な実施形態において、正面画像は、視神経乳頭画像を含み、注目血管特定部は、視神経乳頭画像に対して互いに異なる方向に位置する2以上の領域のそれぞれにおいて最大の径を有する最大径血管を注目血管として特定し、注目領域設定部は、2以上の領域について特定された2以上の最大径血管のいずれかに交差する注目領域を設定する。
【0011】
例示的な実施形態において、注目領域設定部は、予め設定された位置特定条件に基づき正面画像を解析して、血管の注目位置を特定する注目位置特定部を含み、注目位置を通過する注目領域を設定する。
【0012】
例示的な実施形態において、注目位置特定部は、血管分岐部とは異なる位置を注目位置として特定する。
【0013】
例示的な実施形態において、注目位置特定部は、血管蛇行部とは異なる位置を注目位置として特定する。
【0014】
例示的な実施形態において、正面画像は、視神経乳頭画像を含み、注目位置特定部は、視神経乳頭画像から所定距離だけ離れた位置を注目位置として特定する。
【0015】
例示的な実施形態に係る血流計測装置の制御方法は、被検眼の眼底に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用して血流動態を計測する血流計測装置を制御する方法であって、正面画像取得ステップと、注目領域設定ステップと、スキャンステップと、血流情報取得ステップとを含む。正面画像取得ステップは、眼底の正面画像を取得する。注目領域設定ステップは、予め設定された条件に基づき正面画像を解析して、血管に交差する注目領域を設定する。スキャンステップは、注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用する。血流情報取得ステップは、反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を取得する。
【0016】
例示的な実施形態に係るプログラムは、例示的な実施形態に係る制御方法を、コンピュータを含む血流計測装置に実行させる。
【0017】
例示的な実施形態に係る記録媒体は、例示的な実施形態に係るプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体である。
【発明の効果】
【0018】
実施形態によれば、眼底血流の計測位置の設定を自動化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】例示的な実施形態に係る血流計測装置の構成の一例を表す概略図である。
図2】例示的な実施形態に係る血流計測装置の構成の一例を表す概略図である。
図3】例示的な実施形態に係る血流計測装置の構成の一例を表す概略図である。
図4A】例示的な実施形態に係る血流計測装置の構成の一例を表す概略図である。
図4B】例示的な実施形態に係る血流計測装置の構成の一例を表す概略図である。
図5A】例示的な実施形態に係る血流計測装置の動作の一例を説明するための概略図である。
図5B】例示的な実施形態に係る血流計測装置の動作の一例を説明するための概略図である。
図6A】例示的な実施形態に係る血流計測装置の動作の一例を説明するための概略図である。
図6B】例示的な実施形態に係る血流計測装置の動作の一例を説明するための概略図である。
図7A】例示的な実施形態に係る血流計測装置の動作の一例を表すフローチャートである。
図7B】例示的な実施形態に係る血流計測装置の動作の一例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
幾つかの例示的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、血流計測装置の例、その制御方法の例、プログラムの例、及び記録媒体の例を開示する。
【0021】
幾つかの例示的な実施形態に係る血流計測装置は、OCTを利用して眼底のデータを収集し、このデータから血流動態を表す情報(血流情報)を取得する。幾つかの例示的な実施形態に係る血流計測装置は、フーリエドメインOCT(例えば、スウェプトソースOCT)を用いて生体眼の眼底を計測することが可能である。OCTのタイプはスウェプトソースOCTには限定されず、例えばスペクトラルドメインOCTであってもよい。
【0022】
スウェプトソースOCTは、波長可変光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光をバランスドフォトダイオードなどで検出し、波長の掃引及び測定光のスキャンに応じて収集された検出データにフーリエ変換などを施して画像を形成する手法である。
【0023】
スペクトラルドメインOCTは、低コヒーレンス光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検物からの測定光の戻り光を参照光と重ね合わせて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル分布を分光器で検出し、検出されたスペクトル分布にフーリエ変換などを施して画像を形成する手法である。
【0024】
このように、スウェプトソースOCTは時分割でスペクトル分布を取得するOCT手法であり、スペクトラルドメインOCTは空間分割でスペクトル分布を取得するOCT手法である。なお、実施形態に利用することが可能なOCT手法はこれらに限定されず、これらと異なる任意のOCT手法(例えば、タイムドメインOCT)を利用した実施形態を採用することも可能である。
【0025】
幾つかの例示的な実施形態に係る血流計測装置は、OCT装置に眼底撮影装置を組み合わせた複合機であってよい。眼底撮影装置は、眼底を撮影して正面画像(デジタル写真)を取得する機能を有する。このような眼底撮影装置は、以下の例示的な実施形態における眼底カメラであってよく、或いは、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡、又は他のモダリティであってもよい。
【0026】
幾つかの例示的な実施形態に係る血流計測装置は、眼底撮影機能を有しなくてよい。そのような血流計測装置は、記憶装置や記録媒体から眼底の正面画像を取得する機能を有する。記憶装置の典型例として医用画像アーカイビングシステム(医用画像ファイリングシステム)がある。また、記録媒体の典型的な例としてハードディスクドライブや光ディスクがある。
【0027】
本明細書にて引用された文献の開示内容やその他の任意の公知技術を実施形態に援用することが可能である。また、本明細書においては、特に言及しない限り、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを区別しない。同様に、特に言及しない限り、被検眼の「部位」又は「組織」と、それを表す「画像」とを区別しない。
【0028】
本明細書において「プロセッサ」は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))などの回路を意味する。プロセッサは、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することによって目的の機能を実現する。
【0029】
〈血流計測装置の構成〉
幾つかの例示的な実施形態に係る血流計測装置について説明する。例示的な血流計測装置の構成を図1図4Bに示す。本例の血流計測装置1は、眼底カメラユニット2と、OCTユニット100と、演算制御ユニット200とを含む。
【0030】
眼底カメラユニット2は、被検眼の眼底を撮影して正面画像(デジタル写真)を取得する。眼底カメラユニット2には、眼底のデジタル撮影するための各種の要素(例えば、光学素子、アクチュエータ、機構など)が設けられている。
【0031】
OCTユニット100は、被検眼の眼底にスウェプトソースOCTを適用してデータを収集する。OCTユニット100には、眼底にOCTを適用するための各種の要素(例えば、光学素子、アクチュエータ、機構など)が設けられている。眼底にOCTを適用するための要素は、眼底カメラユニット2にも設けられている。
【0032】
演算制御ユニット200は、各種の演算や制御を実行するためのコンピュータを含む。このコンピュータは、1以上のプロセッサを含む。
【0033】
これらに加え、血流計測装置1は、被検者の顔を支持するための部材や、OCT適用対象部位を切り替えるためのレンズユニットなど、任意の要素やユニットを備えていてよい。顔支持部材は、例えば、顎受け、額当てなどであってよい。レンズユニットは、例えば、OCT適用対象部位を眼底から前眼部に切り替えるためのレンズユニット(前眼部OCT用アタッチメント)、OCT適用対象部位を前眼部から眼底に切り替えるためのレンズユニット(眼底OCT用アタッチメント)などであってよい。
【0034】
〈眼底カメラユニット2〉
眼底カメラユニット2は、被検眼Eの眼底Efをデジタル撮影するための光学系や機構を含む。眼底カメラユニット2により取得される眼底Efのデジタル画像は、観察画像、撮影画像などの正面画像である。観察画像は、近赤外光を用いた動画撮影により得られる。撮影画像は、フラッシュ光を用いた静止画像である。眼底カメラユニット2により取得される眼底Efのデジタル画像を「眼底像」と総称することがある。
【0035】
眼底カメラユニット2は、照明光学系10と撮影光学系30とを含む。照明光学系10は被検眼Eに照明光を照射する。撮影光学系30は、被検眼Eからの照明光の戻り光を検出する。また、OCTユニット100からの測定光は、眼底カメラユニット2内の経路を通じて被検眼Eに照射され、その戻り光は、同じ経路を通じてOCTユニット100に導かれる。
【0036】
照明光学系10の観察光源11から出力された光(観察照明光)は、凹面鏡12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となり、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ系17、リレーレンズ18、絞り19、及びリレーレンズ系20を経由する。更に、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。これにより、眼底Efが観察照明光によって照明される。
【0037】
観察照明光の被検眼Eからの戻り光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、撮影合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射され、ハーフミラー33Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によってイメージセンサ35の受光面に結像される。イメージセンサ35は、所定の繰り返し周波数(フレームレート)で戻り光を検出する。撮影光学系30のフォーカスは、眼底撮影では眼底Efに合致するように調整され、前眼部撮影では前眼部に合致するように調整される。
【0038】
撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに投射される。その戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によってイメージセンサ38の受光面に結像される。
【0039】
液晶ディスプレイ(LCD)39は固視標(固視標画像)を表示する。LCD39から出力された光束は、その一部がハーフミラー33Aに反射され、ミラー32に反射され、撮影合焦レンズ31及びダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投射される。
【0040】
LCD39の画面上における固視標画像の表示位置を変更することにより、固視標によって誘導される被検眼Eの視線の向き(固視位置)を変更できる。固視位置の例として、黄斑部を中心とする画像を取得するための固視位置、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための固視位置、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための固視位置、黄斑から大きく離れた部位(眼底周辺部)の画像を取得するための固視位置などがある。
【0041】
このような典型的な固視位置の少なくとも1つを指定するために使用可能なユーザーインターフェイスを設けることができる。また、固視位置(固視標の表示位置)をマニュアルで移動するためのユーザーインターフェイスを設けることができる。
【0042】
固視標を被検眼Eに提示するための要素は、LCDなどの表示デバイスに限定されない。例えば、複数の発光部(発光ダイオード)がマトリクス状(アレイ状)に配列された固視マトリクスを表示デバイスの代わりに採用することができる。複数の発光部を選択的に点灯させることによって固視位置を変更することができる。他の例として、移動可能な1以上の発光部によって固視位置を変更可能な固視標を生成することができる。各発光部は、例えば、発光ダイオード(LED)などの光源である。
【0043】
アライメント光学系50は、被検眼Eに対する光学系のアライメントに用いられるアライメント指標を生成する。LED51から出力されたアライメント光は、絞り52、絞り53、及びリレーレンズ54を経由し、ダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。アライメント光の被検眼Eからの戻り光は、観察照明光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。イメージセンサ35により検出される当該戻り光の像(アライメント指標像)に基づいてマニュアルアライメント及びオートアライメントのいずれか一方又は双方が実行される。
【0044】
本例のアライメント指標像は、アライメント状態により位置が変化する2つの輝点像からなる。被検眼Eと光学系との間の相対位置がxy面内の或る方向に変化すると、当該方向に対応する方向に2つの輝点像が一体的に移動する。被検眼Eと光学系との間の相対位置がz座標に沿う方向に変化すると、当該方向に対応する方向に2つの輝点像の間の相対位置(距離)が変化する。z方向における被検眼Eと光学系との間の距離が既定のワーキングディスタンスに一致すると、2つの輝点像が互いに重なる。xy方向において被検眼Eの位置と光学系の位置とが一致すると、所定のアライメントターゲット内に2つの輝点像が提示される。これら2つの条件が満足されるように、被検眼Eに対する光学系の位置が調整される。
【0045】
オートアライメントでは、データ処理部230が、2つの輝点像の位置を検出し、主制御部211が、2つの輝点像とアライメントターゲットとの位置関係から光学系の移動方向及び移動量を求め、これらに基づき移動機構150を制御する。マニュアルアライメントでは、主制御部211が、2つの輝点像が描出された被検眼Eの観察画像を表示部241に表示させ、ユーザーが、表示された2つの輝点像を参照しながら操作部242を用いて光学系の移動操作を行う。
【0046】
フォーカス光学系60は、被検眼Eに対するフォーカス調整に用いられるスプリット指標を生成する。撮影光学系30の光路(撮影光路)に沿った撮影合焦レンズ31の移動に連動して、フォーカス光学系60が照明光学系10の光路(照明光路)に沿って移動される。フォーカス調整を行う際には、反射棒67が照明光路に挿入され、反射棒67の反射面が照明光路に傾斜配置される。
【0047】
LED61から出力されたフォーカス光は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65により反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射され、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22を介して被検眼Eに投射される。フォーカス光の被検眼Eからの戻り光は、アライメント光の戻り光と同じ経路を通ってイメージセンサ35に導かれる。イメージセンサ35により検出される当該戻り光の像(スプリット指標像)に基づいてマニュアルフォーカシング及びオートフォーカシングのいずれか一方又は双方が実行される。
【0048】
孔開きミラー21とダイクロイックミラー55との間の位置(撮影光路)に視度補正レンズ70及び71を選択的に挿入することができる。視度補正レンズ70は、強度遠視を補正するためのプラスレンズ(凸レンズ)である。視度補正レンズ71は、強度近視を補正するためのマイナスレンズ(凹レンズ)である。
【0049】
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影光路(照明光路、撮影光路)とOCT光路(測定アーム)とを結合する。ダイクロイックミラー46は、OCT測定光の波長帯を反射し、眼底撮影光の波長帯を透過させる。測定アームには、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44、及び、リレーレンズ45が設けられている。
【0050】
リトロリフレクタ41は、図1に示す矢印の方向に移動可能とされ、それにより測定アームの長さが変更される。測定アームの長さの変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0051】
分散補償部材42は、参照アームに配置された分散補償部材113とともに、測定アームの分散特性と参照アームの分散特性とを合わせるよう作用する。
【0052】
OCT合焦レンズ43は、測定アームのフォーカス調整を行うために測定アームに沿って移動される。撮影合焦レンズ31の移動、フォーカス光学系60の移動、及びOCT合焦レンズ43の移動を連係的に実行するように制御を行うことができる。
【0053】
光スキャナ44は、実質的に、被検眼Eの瞳孔と光学的に共役な位置に配置される。光スキャナ44は、測定アームにより導かれる測定光LSを偏向する。光スキャナ44は、例えば、2次元走査が可能なガルバノスキャナである。このガルバノスキャナは、典型的には、測定光をx方向に偏向するためのxスキャナと、y方向に偏向するためのyスキャナとを含む。この場合、瞳孔共役位置は、例えば、xスキャナの反射面の位置、yスキャナの反射面の位置、及び、xスキャナとyスキャナとの間の位置のいずれかに設定される。
【0054】
〈OCTユニット100〉
図2に例示するように、OCTユニット100には、スウェプトソースOCTを行うための要素が設けられている。OCTユニット100は干渉光学系を含む。この干渉光学系は、波長可変光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光とを重ね合わせ、それにより生成された干渉光を検出する。干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを表す信号であり、演算制御ユニット200に送られる。
【0055】
光源ユニット101は、波長可変光源の例として、出射波長の高速変化が可能な近赤外波長可変レーザーを含む。光源ユニット101から出力された光L0は、光ファイバ102により偏波コントローラ103に導かれ、偏波コントローラ103により偏光状態が調整され、光ファイバ104によりファイバカプラ105に導かれ、ファイバカプラ105により測定光LSと参照光LRとに分割される。本明細書において、測定光LSの光路を測定アームと呼び、参照光LRの光路を参照アームと呼ぶ。
【0056】
参照光LRは、光ファイバ110によりコリメータ111に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材112及び分散補償部材113を経由し、リトロリフレクタ114に導かれる。光路長補正部材112は、参照アームの長さと測定アームの長さとの間の相違を埋め合わせる。分散補償部材113は、測定アームに配置された分散補償部材42とともに、参照アームの分散特性と測定アームの分散特性とを合わせるよう作用する。リトロリフレクタ114は、これに対する参照光LRの入射方向(すなわち、これからの参照光LRの出射方向)に沿って移動可能であり、それにより参照アームの長さが変化する。参照アームの長さの変更は、例えば、眼軸長に応じた光路長補正や、干渉状態の調整などに利用される。
【0057】
なお、本例では、測定アームの長さを変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ41)と、参照アームの長さを変更するための要素(例えば、リトロリフレクタ114又は参照ミラー)との双方が設けられているが、これらのうちの一方の要素のみが設けられていてもよい。また、測定アームの長さと参照アームの長さとの間の差(光路長差)を変更するための要素はこれらに限定されず、任意の要素(光学部材、機構など)であってよい。
【0058】
リトロリフレクタ114を経由した参照光LRは、分散補償部材113及び光路長補正部材112を経由し、コリメータ116によって平行光束から集束光束に変換され、光ファイバ117に入射する。光ファイバ117に入射した参照光LRは、偏波コントローラ118に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ119を通じてアッテネータ120に導かれてその光量が調整され、光ファイバ121を通じてファイバカプラ122に導かれる。
【0059】
一方、ファイバカプラ105により生成された測定光LSは、光ファイバ127により導かれてコリメータレンズユニット40により平行光束に変換され、リトロリフレクタ41、分散補償部材42、OCT合焦レンズ43、光スキャナ44及びリレーレンズ45を経由し、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて被検眼Eに投射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において散乱・反射される。測定光LSの被検眼Eからの戻り光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ105に導かれ、光ファイバ128を経由してファイバカプラ122に到達する。
【0060】
ファイバカプラ122は、光ファイバ128を介して入射された測定光LSと、光ファイバ121を介して入射された参照光LRとを重ね合わせる。それにより干渉光が生成される。ファイバカプラ122は、生成された干渉光を所定の比率(例えば1:1)で分割することで一対の干渉光LCを生成する。一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ123及び124を通じて検出器125に導かれる。
【0061】
検出器125は、例えばバランスドフォトダイオードを含む。バランスドフォトダイオードは一対のフォトディテクタを含む。一対のフォトディテクタは、一対の干渉光LCをそれぞれ検出する。バランスドフォトダイオードは、一対のフォトディテクタからの一対の出力信号の差分信号を出力する。検出器125は、この差分信号(検出信号)をデータ収集システム(DAQ)130に送る。
【0062】
データ収集システム130には、光源ユニット101からクロックKCが供給される。クロックKCは、光源ユニット101において、波長可変光源により所定の波長範囲内で掃引される各波長の出力タイミングに同期して生成される。そのために、光源ユニット101は、例えば、各出力波長の光L0を分割して2つの分割光を生成する要素と、2つの分割光の一方を光学的に遅延させる要素と、一方が遅延された2つの分割光を合成して合成光を生成する要素と、生成された合成光を検出する要素と、合成光の検出結果からクロックKCを生成する要素とを含む。データ収集システム130は、検出器125から入力された検出信号をクロックKCに基づきサンプリングする。データ収集システム130は、このサンプリングの結果を演算制御ユニット200に送る。
【0063】
〈処理系〉
血流計測装置1の処理系(演算制御系)の構成例を図3図4A及び図4Bに示す。制御部210、画像形成部220及びデータ処理部230は、演算制御ユニット200に設けられる。
【0064】
〈制御部210〉
制御部210は、各種の制御を実行する。制御部210は、主制御部211と記憶部212とを含む。
【0065】
〈主制御部211〉
主制御部211は、制御プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含み、血流計測装置1の各部(図1図4Bに示された要素を含む)を制御する。
【0066】
撮影光路に配置された撮影合焦レンズ31と照明光路に配置されたフォーカス光学系60とは、主制御部211の制御の下に、図示しない撮影合焦駆動部によって同期的に移動される。測定アームに設けられたリトロリフレクタ41は、主制御部211の制御の下に、リトロリフレクタ(RR)駆動部41Aによって移動される。測定アームに配置されたOCT合焦レンズ43は、主制御部211の制御の下に、OCT合焦駆動部43Aによって移動される。参照アームに配置されたリトロリフレクタ114は、主制御部211の制御の下に、リトロリフレクタ(RR)駆動部114Aによって移動される。これら駆動部のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。
【0067】
移動機構150は、例えば、少なくとも眼底カメラユニット2を3次元的に移動する。典型的な例において、移動機構150は、±x方向(左右方向)に移動可能なxステージと、xステージを移動するx移動機構と、±y方向(上下方向)に移動可能なyステージと、yステージを移動するy移動機構と、±z方向(奥行き方向)に移動可能なzステージと、zステージを移動するz移動機構とを含む。これら移動機構のそれぞれは、主制御部211の制御の下に動作するパルスモータ等のアクチュエータを含む。
【0068】
〈記憶部212〉
記憶部212は各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、OCT画像や眼底像や被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者情報や、左眼/右眼の識別情報や、電子カルテ情報などを含む。
【0069】
記憶部212は、眼底血流動態計測のためのOCTスキャンが適用される箇所(注目領域)を設定するための情報を記憶している。注目領域は、所定の第1条件を満足する血管に交差するように設定される。更に、注目領域は、所定の第2条件を満足する位置において血管に交差するように設定される。
【0070】
第1条件は、眼底血流動態計測のためのOCTスキャンが適用される血管を特定するための条件である。以下、第1条件を血管特定条件と呼ぶ。血管特定条件に基づき特定される血管を注目血管と呼ぶ。
【0071】
血管特定条件は、例えば、血管の種別に関する条件(血管種別条件)、血管の太さに関する条件(血管径条件)、及び、血管の位置に関する条件(血管位置条件)のうちのいずれか1つ以上を含む。なお、血管特定条件は、これらの例以外の条件を含んでいてもよい。
【0072】
眼底血流動態計測のためのOCTスキャンが適用される血管(又はその候補となる血管)は、血流動態の時間変化が比較的顕著に現れる動脈であることが望ましいと考えられる。例示的な血管種別条件は、動脈を特定するための条件を含み、典型的には、動脈と静脈とを判別(分別)するための条件を含む。
【0073】
動脈を特定するための条件及び処理については、例えば、本出願人による以下のいずれかの文献に開示された技術を適用することができる:特開2007-319403号公報、特開2016-043155号公報、特開2016-116595号公報、特開2017-079886号公報、特開2017-202369号公報、特開2018-046959号公報。また、これら以外の画像処理技術、人工知能技術、コグニティブコンピューティング技術などを利用することによって、動脈の特定を行うようにしてもよい。人工知能技術やコグニティブコンピューティング技術を利用する場合、血管種別条件は、例えば、ディープラーニングが適用された多層ニューラルネットワークのパラメータ群を含む。
【0074】
眼底血流動態計測のためのOCTスキャンが適用される血管(又はその候補となる血管)は、或る程度以上の太さを有することが望ましいと考えられる。例示的な血管径条件は、血管径の閾値(下限値)を含む。この閾値は、例えば100マイクロメートルに設定される。なお、血管径は、血管外壁の径でもよいし、血管内壁の径でもよい。
【0075】
血管径を算出するための処理については、例えば、本出願人による特開2016-43155号公報に開示された技術を適用することができる。典型的な血管径算出は、眼底の正面画像から血管壁画像(例えば、血管外壁画像、血管内壁画像)を特定する処理と、血管走行情報(例えば、血管軸線、血管中心線、血管壁画像など)を取得する処理と、血管走行情報から血管幅方向(例えば、血管軸線に直交する方向)を特定する処理と、血管幅方向に沿う直線と2つの血管壁画像のそれぞれとの交点を特定する処理と、特定された2つの交点の間の距離を算出する処理とを含む。この距離が、当該計測位置における血管径に相当する。
【0076】
眼底血流動態計測の好適化(高精度化、高確度化、効率向上など)を図るために、OCTスキャンが適用される血管(又はその候補となる血管)の眼底における位置を条件に加えることができる。例示的な血管位置条件は、眼底の特徴点に対する位置を規定する情報を含む。典型的には、血管位置条件は、視神経乳頭に対して互いに異なる方向に位置する2以上の領域を示す条件を含む。その例として、血管位置条件は、視神経乳頭の中心(重心)を原点として定義される4つの象限を示す条件を含み、更に、4つの象限のそれぞれにおける最も太い血管(最大径血管)を特定するための条件を含む。
【0077】
視神経乳頭の中心(重心)を特定するための処理については、例えば、本出願人による特開2008-206684号公報に開示された技術を適用することができる。典型的な乳頭中心特定は、眼底の正面画像から視神経乳頭画像(例えば、視神経乳頭のエッジに相当する画像領域)を特定する処理と、視神経乳頭画像のエッジを近似する円(又は楕円)を求める処理と、求められた近似円(又は近似楕円)の中心を求める処理とを含む。
【0078】
視神経乳頭の中心を原点とする4つの象限を設定する処理は、例えば、基準方向を特定する処理と、この基準方向に基づき4つの象限を設定する処理とを含む。基準方向は、眼底の正面画像のフレームにおける方向、及び、眼底の特徴点に基づき設定される方向のいずれかであってよい。前者は、例えば、画像フレームに設定された座標軸により定義される方向であってよく、典型的にはx方向及びy方向のいずれかである。後者は、例えば、視神経乳頭の中心と黄斑中心(中心窩)とを通る直線により定義される方向であってよい。なお、中心窩の特定は、視神経乳頭の中心の特定と同じ要領で実行可能である。4つの象限は、例えば、視神経乳頭の中心をそれぞれ通過する基準方向に沿う直線及びこれに直交する直線によって画定される。
【0079】
第2条件は、眼底血流動態計測のためのOCTスキャンの適用位置を特定するための条件である。以下、第2条件を位置特定条件と呼ぶ。位置特定条件に基づき特定される血管位置を注目位置と呼ぶ。
【0080】
位置特定条件は、例えば、血管の分岐に関する条件(分岐条件)、血管の蛇行に関する条件(蛇行条件)、及び、眼底の部位に対する位置に関する条件(相対位置条件)のうちのいずれか1つ以上を含む。なお、位置特定条件は、これらの例以外の条件を含んでいてもよい。
【0081】
眼底血流動態計測を高い信頼性(例えば、高精度、高確度)で行うためには、血流動態が複雑な血管分岐部やその近傍を避けてOCTスキャンを適用することが望ましいと考えられる。例示的な分岐条件は、血管分岐部からの距離に関する閾値を含む。
【0082】
血管分岐部の特定は、例えば、眼底の正面画像から血管走行情報(例えば、血管軸線、血管中心線、血管壁画像など)を取得する処理と、血管走行情報から血管分岐部を特定する処理とを含む。血管分岐部は、例えば、血管軸線(血管中心線)の分岐点として、又は、分岐点を囲む図形(例えば、三角形又は円)として特定される。血管分岐部からの距離は、例えば、分岐点又は図形からの距離として定義される。
【0083】
眼底血流動態計測を高い信頼性で行うためには、血流動態が複雑な血管蛇行部やその近傍を避けてOCTスキャンを適用することが望ましいと考えられる。例示的な蛇行条件は、血管の曲率半径(又は曲率)に関する閾値を含む。
【0084】
血管蛇行部の特定は、例えば、眼底の正面画像から血管走行情報(例えば、血管軸線、血管中心線、血管壁画像など)を取得する処理と、血管走行情報から血管の曲率半径(例えば、血管軸線の各点における曲率半径)を算出する処理と、曲率半径が閾値よりも大きい位置(つまり、血管の屈曲が比較的緩やかな位置)を特定する処理とを含む。
【0085】
眼底血流動態計測を高い信頼性で行うためには、眼底の好適な位置においてOCTスキャンを行うことが望ましいと考えられる。例えば、眼底に血液を供給する血管ネットワークの形態を考慮すると、視神経乳頭に対して特定の条件(相対位置条件)を満足する位置にある血管に対してOCTスキャンを適用することが望ましいと考えられる。
【0086】
眼底に血液を供給する血管ネットワークは、視神経乳頭を通る動脈を通じて血液が眼底に流入し、動脈を通じて眼底の各所に運ばれた血液が毛細血管を介して静脈に流入し、静脈を通じて血液が視神経乳頭まで運ばれ、視神経乳頭を通る静脈を通じて眼底から血液が流出するようになっている。また、視神経乳頭のエッジにおいて血管の屈曲が比較的大きく、また、視神経乳頭の近傍の血管は比較的太い。これらを勘案すると、視神経乳頭から或る程度離れた位置がOCTスキャンの適用位置として好適と考えられる。例えば、視神経乳頭のエッジから乳頭径に等しい距離だけ離れた位置を、OCTスキャンの適用位置として採用することができる。
【0087】
〈画像形成部220〉
画像形成部220は、データ収集システム130から入力された信号(サンプリングデータ)に基づいて、眼底EfのOCT画像データを形成する。画像形成部220は、眼底EfのBスキャン画像データ(2次元断層像データ)と、位相画像データとを形成することができる。これらOCT画像データについては後述する。画像形成部220は、例えば、画像形成プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。
【0088】
本実施形態の血流計測では、眼底Efに対して2種類の走査(主走査及び補足走査)が実行される。
【0089】
主走査では、位相画像データを取得するために、眼底Efの注目血管に注目位置において交差する注目領域(注目断面)を測定光LSで反復的に走査する。
【0090】
補足走査では、注目断面における注目血管の傾きを推定するために、所定の断面(補足断面)を測定光LSで走査する。補足断面は、例えば、注目血管に交差し、且つ、注目断面の近傍に位置する断面(第1補足断面)であってよい。或いは、補足断面は、注目断面に交差し、且つ、注目血管に沿う断面(第2補足断面)であってよい。
【0091】
第1補足断面が適用される場合の例を図5Aに示す。本例では、眼底像Dに示すように、眼底Efの視神経乳頭Daの近傍に位置する1つの注目断面C0と、その近傍に位置する2つの補足断面C1及びC2とが、注目血管Dbに交差するように設定される。2つの補足断面C1及びC2の一方は、注目断面C0に対して注目血管Dbの上流側に位置し、他方は下流側に位置する。注目断面C0及び補足断面C1及びC2は、例えば、注目血管Dbの走行方向に対して略直交するように向き付けられる。
【0092】
第2補足断面が適用される場合の例を図5Bに示す。本例では、図5Aに示す例と同様の注目断面C0が注目血管Dbに略直交するように設定され、且つ、注目断面C0に略直交するように補足断面Cpが設定される。補足断面Cpは、注目血管Dbに沿って設定される。一例として、補足断面Cpは、注目断面C0の位置において注目血管Dbの中心軸を通過するように設定されてよい。
【0093】
例示的な血流計測において、主走査は、患者の心臓の少なくとも1心周期を含む期間にわたって繰り返し実行される。それにより、全ての心時相における血流動態を求めることが可能となる。なお、主走査を実行する時間は、予め設定された一定の時間であってもよいし、患者ごとに又は検査ごとに設定された時間であってもよい。前者の場合、標準的な心周期よりも長い時間が設定される(例えば2秒間)。後者の場合、患者の心電図等の生体データを参照することができる。ここで、心周期以外のファクターを考慮することも可能である。このファクターの例としては、検査に掛かる時間(患者への負担)、光スキャナ44の応答時間(走査時間間隔)、検出器125の応答時間(走査時間間隔)などがある。
【0094】
画像形成部220は、断層像形成部221と、位相画像形成部222とを含む。断層像形成部221は、例えば、断層像形成プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。位相画像形成部222は、例えば、位相画像形成プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。
【0095】
〈断層像形成部221〉
断層像形成部221は、主走査においてデータ収集システム130より得られたサンプリングデータに基づいて、注目断面における形態の時系列変化を表す断層像(主断層像)を形成する。この処理についてより詳しく説明する。主走査は、上記のように注目断面C0を繰り返し走査するものである。断層像形成部221には、この繰り返し走査に応じて、データ収集システム130からサンプリングデータが逐次に入力される。断層像形成部221は、注目断面C0の各走査に対応するサンプリングデータに基づいて、注目断面C0に対応する1枚の主断層像を形成する。断層像形成部221は、この処理を主走査の反復回数だけ繰り返すことで、時系列に沿った一連の主断層像を形成する。ここで、これら主断層像を複数の群に分割し、各群に含まれる主断層像群を重ね合わせて画質の向上を図ってもよい(画像の加算平均処理)。
【0096】
更に、断層像形成部221は、補足断面に対する補足走査においてデータ収集システム130により得られたサンプリングデータに基づいて、補足断面の形態を表す断層像(補足断層像)を形成する。補足断層像を形成する処理は、主断層像を形成する処理と同じ要領で実行される。ここで、主断層像は時系列に沿う一連の断層像であるが、補足断層像は1枚の断層像であってよい。また、補足断層像は、補足断面を複数回走査して得られた複数の断層像を重ね合わせて画質の向上を図ったものであってもよい(画像の加算平均処理)。
【0097】
図5Aに例示する補足断面C1及びC2が適用される場合、断層像形成部221は、補足断面C1に対応する補足断層像と、補足断面C2に対応する補足断層像とを形成する。図5Bに例示する補足断面Cpが適用される場合、断層像形成部221は、補足断面Cpに対応する補足断層像を形成する。
【0098】
以上に例示したような断層像を形成する処理は、従来のフーリエドメインOCTと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、高速フーリエ変換(FFT)などを含む。高速フーリエ変換により、データ収集システム130により得られたサンプリングデータ(干渉信号、インターフェログラム)が、Aラインプロファイル(z方向に沿った反射強度プロファイル)に変換される。Aラインプロファイルを画像化することで(つまり、反射強度値に画素値を割り当てることで)、Aスキャン画像が得られる。複数のAスキャン画像をスキャンパターンにしたがって配列することにより、Bスキャン画像やサークルスキャン画像などの2次元断層像が得られる。他のタイプのOCT装置の場合、断層像形成部221は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。
【0099】
〈位相画像形成部222〉
位相画像形成部222は、主走査においてデータ収集システム130により得られたサンプリングデータに基づいて、注目断面における位相差の時系列変化を表す位相画像を形成する。位相画像の形成に用いられるサンプリングデータは、断層像形成部221による主断層像の形成に用いられるサンプリングデータと同じである。よって、主断層像と位相画像との間の位置合わせをすることが可能である。つまり、主断層像の画素と位相画像の画素との間に自然な対応関係を設定することが可能である。
【0100】
位相画像の形成方法の一例を説明する。この例の位相画像は、隣り合うAライン複素信号(つまり、隣接する走査点に対応する信号)の位相差を算出することにより得られる。換言すると、この例の位相画像は、主断層像の画素値(輝度値)の時系列変化に基づいて形成される。主断層像の任意の画素について、位相画像形成部222は、その画素の輝度値の時系列変化のグラフを作成する。位相画像形成部222は、このグラフにおいて所定の時間間隔Δtだけ離れた2つの時点t1及びt2(t2=t1+Δt)の間における位相差Δφを求める。そして、この位相差Δφを時点t1(より一般に、時点t1と時点t2との間の任意の時点)における位相差Δφ(t1)として定義する。予め設定された多数の時点のそれぞれについてこの処理を実行することにより、当該画素における位相差の時系列変化が得られる。
【0101】
位相画像は、各画素の各時点における位相差の値を画像として表現したものである。この画像化処理は、例えば、位相差の値を表示色や輝度で表現することで実現できる。このとき、時系列に沿って位相が増加した場合の表示色(例えば赤色)と、減少した場合の表示色(例えば青色)とを変更することができる。また、位相の変化量の大きさを表示色の濃度で表現することもできる。このような表現方法を採用することで、血流の向きや大きさを表示色で明示することが可能となる。以上の処理を各画素について実行することにより位相画像が形成される。
【0102】
なお、位相差の時系列変化は、上記の時間間隔Δtを十分に小さくして位相の相関を確保することにより得られる。このとき、測定光LSの走査において断層像の分解能に相当する時間未満の値に時間間隔Δtを設定したオーバーサンプリングが実行される。
【0103】
〈データ処理部230〉
データ処理部230は、各種のデータ処理を実行する。例えば、データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。その具体例として、データ処理部230は、画像の輝度補正や分散補正等の各種補正処理を実行する。更に、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)や、外部から入力された画像に対して、各種の画像処理や解析処理を施すことができる。
【0104】
データ処理部230は、眼底Efの3次元画像データを形成することができる。3次元画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像データの例として、スタックデータやボリュームデータがある。
【0105】
スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させて得られた画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり、1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られた画像データである。
【0106】
ボリュームデータは、3次元的に配列されたボクセルを画素とする画像データであり、ボクセルデータとも呼ばれる。ボリュームデータは、スタックデータに補間処理やボクセル化処理などを適用することで形成される。
【0107】
データ処理部230は、3次元画像データに対してレンダリングを施すことで、表示用の画像を形成することができる。適用可能なレンダリング法の例として、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、最大値投影(MIP)、最小値投影(MinIP)、多断面再構成(MPR)などがある。
【0108】
データ処理部230は、例えば、上記した各種のデータ処理を実行するために、データ処理プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。
【0109】
データ処理部230は、血流情報を求めるための例示的な要素として、血管領域特定部231と、血流情報生成部232と、注目領域設定部260とを含む。血流情報生成部232は、傾き推定部233と、血流速度算出部234と、血管径算出部235と、血流量算出部236とを含んでいてよい。
【0110】
注目領域設定部260は、注目血管特定部270を含んでいてよい。注目血管特定部270は、注目動脈特定部271及び大径血管特定部272のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。注目領域設定部260は、注目位置特定部280を含んでいてよい。
【0111】
血管領域特定部231は、例えば、血管領域特定プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。血流情報生成部232は、例えば、血流情報生成プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。傾き推定部233は、例えば、傾き推定プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。血流速度算出部234は、例えば、血流速度算出プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。血管径算出部235は、例えば、血管径算出プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。血流量算出部236は、例えば、血流量算出プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。注目領域設定部260は、例えば、注目領域設定プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。注目血管特定部270は、例えば、注目血管特定プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。注目動脈特定部271は、例えば、注目動脈特定プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。大径血管特定部272は、例えば、大径血管特定プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。注目位置特定部280は、例えば、注目位置特定プログラムにしたがって動作可能なプロセッサを含む。
【0112】
〈血管領域特定部231〉
血管領域特定部231は、主断層像、補足断層像、及び位相画像のそれぞれについて、注目血管Dbに対応する血管領域を特定する。この処理は、各画像の画素値を解析することによって実行することが可能である(例えば閾値処理)。
【0113】
なお、主断層像と補足断層像は解析処理の対象として十分な解像度を持っているが、位相画像は血管領域の境界を特定できるほどの解像度を持っていない場合がある。しかし、位相画像に基づき血流情報を生成する以上、それに含まれる血管領域を高精度且つ高確度で特定する必要がある。そこで、例えば次のような処理を行うことで、位相画像中の血管領域をより正確に特定することができる。
【0114】
前述のように、主断層像と位相画像は同じサンプリングデータに基づいて形成されるため、主断層像の画素と位相画像の画素との間の自然な対応関係を定義することが可能である。血管領域特定部231は、例えば、主断層像を解析して血管領域を求め、この血管領域に対応する位相画像中の画像領域を当該対応関係に基づき特定し、特定された画像領域を位相画像中の血管領域として採用する。これにより、位相画像の血管領域を高精度且つ高確度で特定することができる。
【0115】
〈血流情報生成部232〉
血流情報生成部232は、注目血管Dbに関する血流情報を生成する。前述のように、血流情報生成部232は、傾き推定部233と、血流速度算出部234と、血管径算出部235と、血流量算出部236とを含む。
【0116】
〈傾き推定部233〉
傾き推定部233は、補足走査により収集された補足断面のデータ(断面データ、補足断層像)に基づいて、注目血管の傾きの推定値を求める。この傾き推定値は、例えば、注目断面における注目血管の傾きの測定値、又はその近似値であってよい。
【0117】
注目血管の傾きの値を実際に測定する場合の例を説明する(傾き推定の第1の例)。図5Aに示す補足断面C1及びC2が適用された場合、傾き推定部233は、注目断面C0と補足断面C1と補足断面C2との間の位置関係と、血管領域特定部231による血管領域の特定結果とに基づいて、注目断面C0における注目血管Dbの傾きを算出することができる。
【0118】
注目血管Dbの傾きの算出方法について図6Aを参照しつつ説明する。符号G0、G1及びG2は、それぞれ、注目断面C0における主断層像、補足断面C1における補足断層像、及び補足断面C2における補足断層像を示す。また、符号V0、V1及びV2は、それぞれ、主断層像G0内の血管領域、補足断層像G1内の血管領域、及び補足断層像G2内の血管領域を示す。図6Aに示すz座標軸は、測定光LSの入射方向と実質的に一致する。また、主断層像G0(注目断面C0)と補足断層像G1(補足断面C1)との間の距離をdとし、主断層像G0(注目断面C0)と補足断層像G2(補足断面C2)との間の距離を同じくdとする。隣接する断層像の間隔、つまり隣接する断面の間隔を、断面間距離と呼ぶ。
【0119】
傾き推定部233は、3つの血管領域V0、V1及びV2の間の位置関係に基づいて、注目断面C0における注目血管Dbの傾きAを算出することができる。この位置関係は、例えば、3つの血管領域V0、V1及びV2を接続することによって求められる。その具体例として、傾き推定部233は、3つの血管領域V0、V1及びV2のそれぞれの特徴位置を特定し、これら特徴位置を接続することができる。この特徴位置としては、中心位置、重心位置、最上部(z座標値が最小の位置)、最下部(z座標値が最大の位置)などがある。これら特徴位置のうちでは、最上部の特定が最も簡便な処理と考えられる。また、特徴位置の接続方法としては、線分で結ぶ方法、近似曲線(スプライン曲線、ベジェ曲線等)で結ぶ方法などがある。
【0120】
更に、傾き推定部233は、3つの血管領域V0、V1及びV2から特定された特徴位置の間を接続する線に基づいて傾きAを算出する。線分で接続する場合、例えば、注目断面C0の特徴位置と補足断面C1の特徴位置とを結ぶ第1線分の傾きと、注目断面C0の特徴位置と補足断面C2の特徴位置とを結ぶ第2線分の傾きとに基づき傾きAを算出することができる。この算出処理の例として、2つの線分の傾きの平均値を求めることが可能である。また、近似曲線で結ぶ場合の例として、近似曲線が注目断面C0に交差する位置におけるこの近似曲線の傾きを求めることができる。なお、断面間距離dは、例えば、線分や近似曲線を求める処理において、断層像G0~G2をxyz座標系に埋め込むときに用いられる。
【0121】
上記の例では、3つの断面における血管領域を考慮しているが、2つの断面を考慮して傾きを求めるように構成することも可能である。その具体例として、上記第1線分又は第2線分の傾きを目的の傾きとすることができる。また、2つの補足断層像G1及びG2に基づいて注目断面C0における注目血管Dbの傾きAを算出することができる。
【0122】
上記の例では1つの傾きを求めているが、血管領域V0中の2つ以上の位置(又は領域)についてそれぞれ傾きを求めるようにしてもよい。この場合、得られた2つ以上の傾きの値を別々に用いることもできるし、これら傾きの値を統計的に処理して得られる値(例えば、平均値、最大値、最小値、中間値、最頻値など)を傾きAとして用いることもできる。
【0123】
注目血管の傾きの近似値を求める場合の例を説明する(傾き推定の第2の例)。図5Bに示す補足断面Cpが適用された場合、傾き推定部233は、補足断面Cpに対応する補足断層像を解析して、注目断面C0における注目血管Dbの傾きの近似値を算出することができる。
【0124】
注目血管Dbの傾きの近似方法について図6Bを参照しつつ説明する。符号Gpは、補足断面Cpにおける補足断層像を示す。符号Aは、図6Aに示す例と同様に、注目断面C0における注目血管Dbの傾きを示す。
【0125】
本例において、傾き推定部233は、補足断層像Gpを解析して、眼底Efの所定組織に相当する画像領域を特定することができる。例えば、傾き推定部233は、網膜の表層組織である内境界膜(ILM)に相当する画像領域(内境界膜領域)Mを特定することができる。画像領域の特定には、例えば、公知のセグメンテーション処理が利用される。
【0126】
内境界膜と眼底血管とは互いに略平行であることが知られている。傾き推定部233は、注目断面C0における内境界膜領域Mの傾きAappを算出する。注目断面C0における内境界膜領域Mの傾きAappは、注目断面C0における注目血管Dbの傾きAの近似値として用いられる。
【0127】
なお、図6A及び図6Bに示す傾きAは、注目血管Dbの向きを表すベクトルであり、その値の定義は任意であってよい。一例として、傾き(ベクトル)Aとz軸とが成す角度として傾きAの値を定義することが可能である。同様に、図6Bに示す傾きAappは、内境界膜領域Mの向きを表すベクトルであり、その値の定義は任意であってよい。例えば、傾き(ベクトル)Aappとz軸とが成す角度として傾きAappの値を定義することが可能である。なお、z軸の向きは、測定光LSの入射方向と実質的に同一である。
【0128】
注目血管の傾き推定の第3の例として、傾き推定部233は、図6Bに示す補足断層像Gpを解析して、注目血管Dbに相当する画像領域を特定し、注目断面C0に相当する位置における当該画像領域の傾きを求めることができる。このとき、傾き推定部233は、例えば、注目血管Dbに相当する画像領域の境界又は中心軸を曲線近似することができ、注目断面C0に相当する位置における当該近似曲線の傾きを求めるようにしてもよい。前述した眼底Efの所定組織に相当する画像領域(例えば内境界膜領域M)に対して同様の曲線近似を適用することも可能である。
【0129】
傾き推定部233が実行する処理は上記の例には限定されず、眼底Efの断面にOCTスキャンを適用して収集された断面データに基づいて注目血管Dbの傾きの推定値(例えば、注目血管Db自体の傾き値、その近似値など)を求めることが可能な任意の処理であってよい。
【0130】
〈血流速度算出部234〉
血流速度算出部234は、位相画像として得られる位相差の時系列変化に基づいて、注目血管Db内を流れる血液の注目断面C0における血流速度を算出する。この算出対象は、或る時点における血流速度でもよいし、この血流速度の時系列変化(血流速度変化情報)でもよい。前者の場合、例えば心電図の所定の時相(例えばR波の時相)における血流速度を選択的に取得することが可能である。また、後者における時間の範囲は、注目断面C0を走査した時間の全体又は任意の一部である。
【0131】
血流速度変化情報が得られた場合、血流速度算出部234は、計測期間における血流速度の統計値を算出することができる。この統計値としては、平均値、標準偏差、分散、中央値、最頻値、最大値、最小値、極大値、極小値などがある。また、血流速度の値に関するヒストグラムを作成することもできる。
【0132】
血流速度算出部234は、ドップラーOCTの手法を用いて血流速度を算出する。このとき、傾き推定部233により算出された注目断面C0における注目血管Dbの傾きA(又は、その近似値Aapp)が考慮される。具体的には、血流速度算出部234は、次式を用いることができる。
【0133】
【数1】
【0134】
ここで:
Δfは、測定光LSの散乱光が受けるドップラーシフトを表す;
nは、媒質の屈折率を表す;
vは、媒質の流速(血流速度)を表す;
θは、測定光LSの照射方向と媒質の流れベクトルとが成す角度を表す;
λは、測定光LSの中心波長を表す。
【0135】
本実施形態では、nとλは既知であり、Δfは位相差の時系列変化から得られ、θは傾きA(又は、その近似値Aapp)から得られる。典型的には、θは、傾きA(又は、その近似値Aapp)に等しい。これらの値を上記の式に代入することにより、血流速度vが算出される。
【0136】
〈血管径算出部235〉
血管径算出部235は、注目断面C0における注目血管Dbの径を算出する。この算出方法の例として、眼底像(正面画像)を用いた第1の算出方法と、断層像を用いた第2の算出方法がある。
【0137】
第1の算出方法が適用される場合、注目断面C0の位置を含む眼底Efの部位の撮影が予め行われる。それにより得られる眼底像は、観察画像(のフレーム)でもよいし、撮影画像でもよい。撮影画像がカラー画像である場合には、これを構成する画像(例えばレッドフリー画像)を用いてもよい。また、撮影画像は、眼底蛍光造影撮影(フルオレセイン蛍光造影撮影など)により得られた蛍光画像でもよいし、OCT血管造影(OCTアンジオグラフィ)により得られた血管強調画像(アンジオグラム、モーションコントラスト画像)でもよい。
【0138】
血管径算出部235は、撮影画角(撮影倍率)、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて、眼底像におけるスケールを設定する。このスケールは実空間における長さを表す。具体例として、このスケールは、隣接する画素の間隔(画素ピッチ)と、実空間におけるスケールとを対応付けたものである(例えば、画素ピッチ=10μm)。なお、上記ファクターの様々な値と、実空間でのスケールとの関係を予め算出し、この関係をテーブル形式やグラフ形式で表現した情報を記憶しておくことも可能である。この場合、血管径算出部235は、上記ファクターに対応するスケールを選択的に適用する。
【0139】
更に、血管径算出部235は、このスケールと血管領域V0に含まれる画素とに基づいて、注目断面C0における注目血管Dbの径、つまり血管領域V0の径を算出する。具体例として、血管径算出部235は、血管領域V0の様々な方向の径の最大値や平均値を求める。また、血管領域235は、血管領域V0の輪郭を円近似又は楕円近似し、その円又は楕円の径を求めることができる。なお、血管径が決まれば血管領域V0の面積を(実質的に)決定することができるので(つまり両者を実質的に一対一に対応付けることができるので)、血管径を求める代わりに当該面積を算出するようにしてもよい。
【0140】
第2の算出方法について説明する。第2の算出方法では、典型的には、注目断面C0における断層像が用いられる。この断層像は、主断層像でもよいし、これとは別個に取得されたものでもよい。
【0141】
この断層像におけるスケールは、OCTの計測条件などに基づき決定される。本実施形態では、図5A又は図5Bに示すように注目断面C0を走査する。注目断面C0の長さは、ワーキングディスタンス、眼球光学系の情報など、画像上のスケールと実空間でのスケールとの関係を決定する各種ファクターに基づいて決定される。血管径算出部235は、例えば、この長さに基づいて画素ピッチを求め、第1の算出方法と同様にして注目断面C0における注目血管Dbの径を算出する。
【0142】
〈血流量算出部236〉
血流量算出部236は、血流速度の算出結果と血管径の算出結果とに基づいて、注目血管Db内を流れる血液の流量を算出する。この処理の一例を以下に説明する。
【0143】
血管内における血流がハーゲン・ポアズイユ流(Hagen-Poiseuille flow)と仮定する。また、血管径をwとし、血流速度の最大値をVmとすると、血流量Qは次式で表される。
【0144】
【数2】
【0145】
血流量算出部236は、血管径算出部235による血管径の算出結果wと、血流速度算出部234による血流速度の算出結果に基づく最大値Vmとを、この数式に代入することにより、目的の血流量Qを算出する。
【0146】
〈注目領域設定部260〉
注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して、眼底Efの血管に交差する注目領域を設定する。注目領域は、OCTスキャンが適用される断面である。注目領域設定部260は、任意の画像解析処理を眼底Efの正面画像に適用することで注目領域の設定を行う。
【0147】
注目領域設定部260に入力される眼底Efの正面画像は、眼底Efの形態を表す任意のデジタル画像であってよい。例えば、正面画像は、眼底カメラ、SLO、OCT、スリットランプ顕微鏡、眼科手術用顕微鏡など、任意の眼科モダリティによって取得された画像であってよい。
【0148】
また、正面画像は、任意の眼科モダリティにより取得された画像を加工して得られた画像であってもよい。例えば、正面画像は、3次元OCTスキャンにより取得された3次元画像データをレンダリングして構築された画像であってよい。また、正面画像は、OCTアンジオグラフィにより構築された3次元画像データの任意の深さ領域をレンダリングして構築された画像であってよい。
【0149】
注目領域設定部260の構成及び動作の幾つかの例を以下に説明する。
【0150】
第1の例を説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して注目血管を特定し、この注目血管に交差する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は、注目血管特定部270を含む。
【0151】
注目血管特定部270は、記憶部212に記憶されている血管特定条件に基づき眼底Efの正面画像を解析することによって注目血管を特定する。血管特定条件及びそれに基づく注目血管特定処理については前述した。本例の注目領域設定部260は、注目血管特定部270により特定された注目血管に交差するように注目領域を設定する。
【0152】
第2の例を説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して眼底Efの動脈(注目動脈)を特定し、この注目動脈に交差する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は注目血管特定部270を含み、注目血管特定部270は注目動脈特定部271を含む。
【0153】
注目動脈特定部271は、注目血管特定部270により特定される注目血管として、静脈ではなく動脈(注目動脈)を選択的に特定する。注目動脈を特定するための血管特定条件(血管種別条件)及びそれに基づく処理については前述した。本例の注目領域設定部260は、注目動脈特定部271により特定された注目動脈に交差するように注目領域を設定する。
【0154】
第3の例を説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して、所定閾値以上の太さを有する眼底Efの血管(大径血管)を特定し、この大径血管に交差する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は注目血管特定部270を含み、注目血管特定部270は大径血管特定部272を含む。
【0155】
大径血管特定部272は、注目血管特定部270により特定される注目血管として、既定閾値以上の太さの血管を選択的に特定する。大径血管を特定するための血管特定条件(血管径条件)及びそれに基づく処理については前述した。本例の注目領域設定部260は、大径血管特定部272により特定された大径血管に交差するように注目領域を設定する。
【0156】
第4の例を説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して、所定閾値以上の太さを有する眼底Efの動脈(大径動脈)を特定し、この大径動脈に交差する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は注目血管特定部270を含み、注目血管特定部270は注目動脈特定部271と大径血管特定部272とを含む。
【0157】
例えば、眼底Efの正面画像は、まず注目動脈特定部271に入力される。注目動脈特定部271は、前述した要領で、1以上の動脈を特定する。動脈の特定結果(及び当該正面画像)は、大径血管特定部272に入力される。大径血管特定部272は、前述した要領で、注目動脈特定部271により特定された1以上の動脈のうちから、既定閾値以上の太さを有する動脈を特定する。
【0158】
或いは、眼底Efの正面画像は、まず大径血管特定部272に入力される。大径血管特定部272は、前述した要領で、1以上の大径血管を特定する。大径血管の特定結果(及び当該正面画像)は、注目動脈特定部271に入力される。注目動脈特定部271は、前述した要領で、大径血管特定部272により特定された1以上の大径血管のうちから動脈を特定する。
【0159】
本例の注目領域設定部260は、注目動脈特定部271及び大径血管特定部272の組み合わせによって特定された大径動脈に交差するように注目領域を設定する。
【0160】
第5の例を説明する。本例において、眼底Efの正面画像は、視神経乳頭画像を含む。本例の注目血管特定部270は、眼底Efの正面画像を解析することにより、視神経乳頭画像に対して互いに異なる方向に位置する2以上の領域のそれぞれにおいて最大の径を有する血管(最大径血管)を、注目血管として特定する。最大径血管を特定するための血管特定条件(血管位置条件)及びそれに基づく処理については前述した。例えば、注目血管特定部270は、眼底Efの正面画像を解析することで前述した4つの象限を特定し、これら象限のそれぞれにおいて最も太い血管を特定するように構成される。
【0161】
本例の注目領域設定部260は、注目血管特定部270により上記2以上の領域について特定された2以上の最大径血管のいずれかに交差するように注目領域を設定する。例えば、注目領域設定部260は、4つの象限について特定された4つの最大径血管のうちのいずれか1以上の最大径血管を選択し、それに交差するように注目領域を設定する。一例として、注目領域設定部260は、4つの最大径血管のうち最も太い血管を選択し、選択された血管に交差するように注目領域を設定するように構成されていてよい。他の例として、注目領域設定部260は、4つの最大径血管のそれぞれについてそれに交差する注目領域を設定することで、4つの注目領域を設定するように構成されていてよい。更に他の例として、注目領域設定部260は、4つの最大径血管のうち既定閾値以上の太さのものを選択し、選択された1以上の血管のそれぞれについてそれに交差するように注目領域を設定するように構成されていてよい。
【0162】
第6の例について説明する。本例は、第2~第4の例のいずれかに第5の例を組み合わせたものである。
【0163】
第2の例と第5の例とを組み合わせる場合、注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析することにより、視神経乳頭画像に対して互いに異なる方向に位置する2以上の領域のそれぞれにおいて最大の径を有する動脈(最大径動脈)を特定し、2以上の領域について特定された2以上の最大径動脈のいずれかに交差するように注目領域を設定するように構成される。
【0164】
第3の例と第5の例とを組み合わる場合、注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析することにより、視神経乳頭画像に対して互いに異なる方向に位置する2以上の領域のそれぞれにおいて既定閾値以上且つ最大の径を有する血管(最大径血管)を特定し、2以上の領域について特定された2以上の最大径血管のいずれかに交差するように注目領域を設定するように構成される。
【0165】
第4の例と第5の例とを組み合わせる場合、注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析することにより、視神経乳頭画像に対して互いに異なる方向に位置する2以上の領域のそれぞれにおいて既定閾値以上且つ最大の径を有する動脈(最大径動脈)を特定し、2以上の領域について特定された2以上の最大径動脈のいずれかに交差するように注目領域を設定するように構成される。
【0166】
第7の例について説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して血管の注目位置を特定し、この注目位置を通過する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は、注目位置特定部280を含む。
【0167】
注目位置特定部280は、記憶部212に記憶されている位置特定条件に基づき眼底Efの正面画像を解析することによって血管の注目位置を特定する。位置特定条件及びそれに基づく注目位置特定処理については前述した。本例の注目領域設定部260は、注目位置特定部280により特定された注目位置を通過するように注目領域を設定する。
【0168】
第8の例について説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して血管分岐部とは異なる位置を注目位置として特定し、この注目位置を通過する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は、血管分岐部とは異なる位置を注目位置として特定するように構成された注目位置特定部280を含む。血管分岐部とは異なる位置を注目位置として特定するための位置特定条件(分岐条件)及びそれに基づく処理については前述した。
【0169】
第9の例について説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して血管蛇行部とは異なる位置を注目位置として特定し、この注目位置を通過する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は、血管蛇行部とは異なる位置を注目位置として特定するように構成された注目位置特定部280を含む。血管蛇行部とは異なる位置を注目位置として特定するための位置特定条件(蛇行条件)及びそれに基づく処理については前述した。
【0170】
第10の例について説明する。本例の注目領域設定部260は、眼底Efの正面画像を解析して血管分岐部及び血管蛇行部の双方と異なる位置を注目位置として特定し、この注目位置を通過する注目領域を設定するように構成される。本例の注目領域設定部260は、血管分岐部及び血管蛇行部の双方と異なる位置を注目位置として特定するように構成された注目位置特定部280を含む。血管分岐部及び血管蛇行部の双方と異なる位置を注目位置として特定するための位置特定条件は、分岐条件及び蛇行条件の双方を含む。また、血管分岐部とは異なる位置を分岐条件に基づき特定する処理と、血管蛇行部とは異なる位置を蛇行条件に基づき特定する処理とのいずれを先に行ってもよい。
【0171】
第11の例について説明する。本例において、眼底Efの正面画像は、視神経乳頭画像を含む。本例の注目位置特定部280は、視神経乳頭画像から所定距離だけ離れた位置を注目位置として特定する。所定距離は、眼底Efの視神経乳頭の径(乳頭径)に基づき設定されてよく、例えば、乳頭径に等しい距離であってよい。本例に適用される位置特定条件(相対位置条件)及びそれに基づく処理については前述した。
【0172】
第12の例について説明する。本例は、第8~第10の例のいずれかに第11の例を組み合わせたものである。
【0173】
第8の例と第11の例とを組み合わせる場合、注目領域設定部260は、視神経乳頭画像から所定距離だけ離れた位置であって血管分岐部とは異なる位置を注目位置として特定し、この注目位置を通過する注目領域を設定するように構成される。
【0174】
第9の例と第11の例とを組み合わせる場合、注目領域設定部260は、視神経乳頭画像から所定距離だけ離れた位置であって血管蛇行部とは異なる位置を注目位置として特定し、この注目位置を通過する注目領域を設定するように構成される。
【0175】
第10の例と第11の例とを組み合わせる場合、注目領域設定部260は、視神経乳頭画像から所定距離だけ離れた位置であって血管分岐部及び血管蛇行部の双方と異なる位置を注目位置として特定し、この注目位置を通過する注目領域を設定するように構成される。
【0176】
第13の例について説明する。本例は、注目血管特定に関する第1~第6の例のいずれかと、注目位置特定に関する第7~第12の例のいずれかと、を組み合わせたものである。第13の例として採用可能な組み合わせ並びに構成及び動作については、第1~第12の例の説明から明らかであり、また、各組み合わせについて説明することは冗長であるから、それらの説明は省略する。
【0177】
〈ユーザーインターフェイス240〉
ユーザーインターフェイス(UI)240は、表示部241と操作部242とを含む。表示部241は、図1に示す表示装置3や他の表示デバイスを含む。操作部242は、任意の操作デバイスを含む。ユーザーインターフェイス240は、例えばタッチパネルのように、表示機能と操作機能の双方を備えたデバイスを含んでいてもよい。
【0178】
〈データ入出力部290〉
データ入出力部290は、血流計測装置1からのデータの出力と、血流計測装置1へのデータの入力とを行う。例えば、データ入出力部290は、眼底Efの正面画像の入力を受け付ける。
【0179】
データ入出力部290は、例えば、図示しない外部装置と通信するための機能を有する。通信部290は、外部装置との接続形態に応じた通信インターフェイスを備える。外部装置は、例えば、任意の眼科装置である。また、外部装置は、病院情報システム(HIS)サーバ、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)サーバ、医師端末、モバイル端末、個人端末、クラウドサーバなど、任意の情報処理装置であってもよい。
【0180】
データ入出力部290は、記録媒体から情報を読み取る装置(データリーダ)、記録媒体に情報を書き込む装置(データライタ)などを含んでいてもよい。
【0181】
〈血流計測装置の動作〉
血流計測装置1の動作の例を説明する。血流計測装置1の動作の2つの例を図7A及び図7Bに示す。なお、患者IDの入力、アライメント、フォーカシング、光路長調整など、眼底撮影やOCTスキャンのための準備的処理は既に行われたとする。
【0182】
〈第1動作例〉
図7Aを参照して第1動作例を説明する。
【0183】
(S1:眼底を撮影して正面画像を取得)
まず、血流計測装置1は、眼底撮影機能(眼底カメラ機能)を用いて眼底Efを撮影することにより、眼底Efの正面画像を取得する。
【0184】
(S2:眼底の注目領域を設定)
注目領域設定部260は、ステップS1で取得された正面画像を解析して、眼底Efの血管に交差する注目領域を設定する。
【0185】
本例で設定される注目領域は、以下に挙げる複数の特徴のうちの1つ以上を有していてよい:(1)注目領域は、眼底Efの動脈に交差する;(2)注目領域は、予め設定された閾値以上の径を有する血管に交差する;(3)注目領域は、血管分岐部とは異なる位置を通過する;(4)注目領域は、血管蛇行部とは異なる位置を通過する;(5)注目領域は、視神経乳頭から所定距離だけ離れた位置を通過する。
【0186】
(S3:注目領域に反復的OCTスキャンを適用)
血流計測装置1は、ステップS2で設定された注目領域に、血流計測のためのOCTスキャン(反復的OCTスキャン)を適用する。
【0187】
ここで、反復的OCTスキャンは、同じ箇所(ここでは注目領域)に対してOCTスキャンを繰り返し(つまり複数回)適用するものであれば、その態様は任意であってよい。
【0188】
例えば、スキャンパターンは、ラインスキャンやサークルスキャンや弧状パターンなど任意のパターンであってよく、その少なくとも一部として注目領域を含むパターンであればよい。また、反復的OCTスキャンで実行される複数のOCTスキャンのパターンは、一定でもよいし、一定でなくてもよい。スキャンパターンが一定でない場合、反復的OCTスキャンは、第1スキャンパターン(例えばサークルスキャン)と、第1スキャンパターンと異なる第2スキャンパターン(例えばサークルスキャン)との双方を含んでいてよい。
【0189】
また、反復的OCTスキャンで実行される複数のOCTスキャンの向きは、一定でもよいし、一定でなくてもよい。スキャンの向きが一定でない場合の例として、第1端と第2端とを両端とするライン状の領域に対する反復的OCTスキャンは、第1端から第2端に向かう向きのスキャンと、第2端から第1端に向かうスキャンとの双方を含んでいてよい。或いは、サークル状の領域に対する反復的OCTスキャンは、時計回りのスキャンと、反時計回りのスキャンとの双方を含んでいてよい。
【0190】
(S4:血流情報を生成)
血管領域特定部231及び血流情報生成部232は、ステップS3の反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を生成する。
【0191】
血流情報は、ステップS2で設定された注目領域(つまり、ステップS3の反復的OCTスキャンが適用された断面)を通過する血管のいずれかにおける血流動態パラメータ(例えば、血流速度、血流量)を表す。
【0192】
〈第2動作例〉
図7Bを参照して第2動作例を説明する。
【0193】
(S11:眼底の正面画像を受け付け)
まず、血流計測装置1は、データ入出力部290を用いて、例えば外部装置又は記録媒体から眼底Efの正面画像を受け付ける。
【0194】
(S12:眼底の注目領域を設定)
注目領域設定部260は、ステップS11で取得された正面画像を解析して、眼底Efの血管に交差する注目領域を設定する。
【0195】
(S13:注目領域に反復的OCTスキャンを適用)
血流計測装置1は、ステップS12で設定された注目領域に、血流計測のためのOCTスキャン(反復的OCTスキャン)を適用する。
【0196】
(S14:血流情報を生成)
血管領域特定部231及び血流情報生成部232は、ステップS13の反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を生成する。
【0197】
〈血流計測装置の効果〉
例示的な実施形態に係る血流計測装置の幾つかの効果について説明する。
【0198】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置は、スキャン光学系と、正面画像取得部と、注目領域設定部と、スキャン制御部と、血流情報取得部とを含む。
【0199】
スキャン光学系は、被検眼の眼底にOCTスキャンを適用する。上記の例示的態様では、OCTユニット100と眼底カメラユニット2内の測定アームとを含む光学系が、このスキャン光学系の例に相当する。
【0200】
正面画像取得部は、被検眼の眼底の正面画像を取得する。正面画像取得部は、例えば、眼底撮影機能及びデータ受付機能のいずれかを奏する。上記の例示的態様では、眼底カメラユニット2(照明光学系10及び撮影光学系30を含む)が、眼底撮影機能を有する正面画像取得部の例に相当する。また、データ入出力部290が、データ受付機能を有する正面画像取得部の例に相当する。正面画像は、任意のモダリティにより取得された画像であってよい。
【0201】
注目領域設定部は、正面画像取得部により取得された正面画像を、予め設定された条件に基づき解析することにより、血管に交差する注目領域を設定する。正面画像の解析において参照される既定の条件は、例えば、正面画像に描出された血管の像を特定するための条件である血管特定条件、及び、正面画像における位置を特定するための条件である位置特定条件のいずれか一方又は双方を含んでいてよい。なお、正面画像の解析において参照される既定の条件は、これらに限定されず、任意の条件であってよい。上記の例示的態様では、注目領域設定部260が注目領域設定部の例に相当する。この例示的な注目領域設定部260は、図4B等に示すように幾つかの要素を含んでいるが、これは例示に過ぎず、これら要素のいずれか又は全てを含まない注目領域設定部を採用することが可能である。
【0202】
スキャン制御部は、注目領域設定部により設定された注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。前述したように反復的OCTスキャンは、血流計測のためのOCTスキャンである。スキャン制御部が実行する制御は、例えば、光源の制御、光スキャナの制御、検出器の制御、データ収集システムの制御などを含んでいてよい。上記の例示的態様では、制御部210(主制御部211)がスキャン制御部の例に相当する。
【0203】
血流情報取得部は、スキャン制御部の制御の下に実行された反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を取得する。血流情報は、例えば、眼底の血流動態を示す所定のパラメータに関する情報である。上記の例示的態様では、血管領域特定部231及び血流情報生成部232が血流情報取得部の例に相当する。
【0204】
このような例示的な実施形態によれば、血流計測に好適な計測位置(注目領域)を眼底の正面画像から自動で設定してOCT血流計測を実施することが可能である。したがって、計測位置を設定するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な計測位置が設定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0205】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、注目領域設定部は、注目血管特定部を含んでいてよい。注目血管特定部は、正面画像取得部により取得された眼底の正面画像を、予め設定された血管特定条件に基づき解析することにより、注目血管を特定する。注目血管は、眼底の正面画像に描出されている複数の血管(血管ネットワーク)のうち、血流計測の適用対象又はその候補として選択される1以上の血管を示す。上記の例示的態様では、注目血管特定部270が注目血管特定部の例に相当する。本例の注目領域設定部は、更に、注目血管特定部により特定された注目血管に交差する注目領域を設定するように構成されていてよい。スキャン制御部は、このようにして設定された注目血管に交差する注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、この注目血管に関する血流情報を取得する。
【0206】
このような例示的な実施形態によれば、眼底を走行する多数の血管のうちから血流計測に好適な血管を選択するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な血管が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0207】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、注目領域設定部に含まれる注目血管特定部は、注目血管として注目動脈を特定する注目動脈特定部を含んでいてよい。注目動脈は、眼底の正面画像に描出されている血管ネットワークのうち、血流計測の適用対象又はその候補として選択される1以上の動脈を示す。上記の例示的態様では、注目動脈特定部271が注目動脈特定部の例に相当する。本例の注目領域設定部は、更に、注目動脈特定部により特定された注目動脈に交差する注目領域を設定するように構成されていてよい。スキャン制御部は、このようにして設定された注目動脈に交差する注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、この注目動脈に関する血流情報を取得する。
【0208】
このような例示的な実施形態によれば、眼底を走行する多数の血管のうちから血流計測に好適な動脈を選択するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な動脈が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0209】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、注目領域設定部に含まれる注目血管特定部は、予め設定された閾値以上の径を有する大径血管を注目血管として特定する大径血管特定部を含んでいてよい。大径血管は、眼底の正面画像に描出されている血管ネットワークのうち、血流計測の適用対象又はその候補として選択される、比較的太い1以上の血管を示す。上記の例示的態様では、大径血管特定部272が大径血管特定部の例に相当する。本例の注目領域設定部は、更に、大径血管特定部により特定された大径血管に交差する注目領域を設定するように構成されていてよい。スキャン制御部は、このようにして設定された大径血管に交差する注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、この大径血管に関する血流情報を取得する。
【0210】
このような例示的な実施形態によれば、眼底を走行する多数の血管のうちから血流計測に好適な大径血管を選択するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な大径血管が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0211】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、正面画像取得部により取得された正面画像は、視神経乳頭の像(視神経乳頭画像)を含んでいてよい。正面画像が視神経乳頭画像を含む場合、つまり、正面画像に視神経乳頭が描出されている場合、注目領域設定部に含まれる注目血管特定部は、この視神経乳頭画像に対して互いに異なる方向に位置する2以上の領域のそれぞれにおいて最大の径を有する最大径血管を注目血管として特定することができる。本例の注目領域設定部は、更に、注目血管特定部により2以上の領域について特定された2以上の最大径血管のいずれかに交差する注目領域を設定することができる。スキャン制御部は、このようにして設定された1以上の注目領域のそれぞれに対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、1以上の注目領域に対応する1以上の最大径血管に関する血流情報を取得する。
【0212】
このような例示的な実施形態によれば、眼底を走行する多数の血管のうちから眼底の2以上の領域のそれぞれにおいて最も太い血管を選択するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な血管が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0213】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、注目領域設定部は、注目位置特定部を含んでいてよい。注目位置特定部は、正面画像取得部により取得された眼底の正面画像を、予め設定された位置特定条件に基づき正面画像を解析することにより、血管の注目位置を特定する。血管の注目位置は、眼底の正面画像に描出されている血管ネットワークにおいて、血流計測の適用対象又はその候補として選択される1以上の位置(箇所)を示す。上記の例示的態様では、注目位置特定部280が注目位置特定部の例に相当する。本例の注目領域設定部は、更に、注目位置特定部により特定された注目位置を通過する注目領域を設定するように構成されていてよい。スキャン制御部は、このようにして設定された注目位置を通過する注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、この注目位置における血流情報を取得する。
【0214】
このような例示的な実施形態によれば、血流計測に好適な眼底の位置を選択するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な計測位置が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0215】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、注目領域設定部に含まれる注目位置特定部は、血管分岐部とは異なる位置を注目位置として特定するように構成されていてよい。血管分岐部は、眼底の血管ネットワークにおいて血管が分岐している箇所を示す。本例の注目領域設定部は、更に、注目位置特定部により特定された血管分岐部とは異なる注目位置を通過する注目領域を設定するように構成されていてよい。スキャン制御部は、このようにして設定された血管分岐部とは異なる注目位置を通過する注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、この注目位置における血流情報を取得する。
【0216】
このような例示的な実施形態によれば、血流計測には不適切な血管分岐部を避けて計測位置を設定するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な計測位置が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0217】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、注目領域設定部に含まれる注目位置特定部は、血管蛇行部とは異なる位置を注目位置として特定するように構成されていてよい。血管蛇行部は、眼底の血管ネットワークにおいて血管の屈曲が比較的大きい箇所を示す。本例の注目領域設定部は、更に、注目位置特定部により特定された血管蛇行部とは異なる注目位置を通過する注目領域を設定するように構成されていてよい。スキャン制御部は、このようにして設定された血管蛇行部とは異なる注目位置を通過する注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、この注目位置における血流情報を取得する。
【0218】
このような例示的な実施形態によれば、血流計測には不適切な血管蛇行部を避けて計測位置を設定するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な計測位置が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0219】
幾つかの例示的な実施形態の血流計測装置において、正面画像取得部により取得された正面画像が視神経乳頭画像を含む場合、注目領域設定部に含まれる注目位置特定部は、視神経乳頭画像から所定距離だけ離れた1以上の位置を注目位置として特定することができる。本例の注目領域設定部は、更に、注目位置特定部により特定された1以上の注目位置のそれぞれについて、当該注目位置を通過する注目領域を設定することができる。スキャン制御部は、このようにして設定された1以上の注目領域のそれぞれに対して反復的OCTスキャンを適用するようにスキャン光学系を制御する。更に、血流情報取得部は、この反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて、1以上の注目領域に対応する1以上の血管に関する血流情報を取得する。
【0220】
このような例示的な実施形態によれば、血流計測に好適な視神経乳頭から所定距離だけ離れた位置を計測位置として設定するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な計測位置が指定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0221】
上記した例示的な実施形態では、注目領域設定部により設定された注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用しているが、実施形態はこれに限定されない。例えば、注目領域設定部により設定された注目領域をユーザーに提示することができる。幾つかの例示的な実施形態において、表示制御部(制御部210)は、設定された注目領域を示す画像(注目領域画像)を眼底画像とともに表示させることができる。典型的には、表示制御部は、注目領域画像を眼底画像上に重ねて表示させることができる。
【0222】
注目領域画像とともに表示される眼底画像は任意の画像であってよく、典型的には正面画像であってよい。この正面画像は、正面画像取得部により取得された正面画像であってよく、例えば、注目領域設定処理において解析された正面画像(第1正面画像)であってもよいし、第1正面画像とは異なる正面画像(第2正面画像)であってもよい。第2正面画像が表示される場合、第1正面画像と第2正面画像との間のレジストレーションを行うことによって第2正面画像と注目領域との間の位置関係を求めることができる。
【0223】
注目領域画像とともに表示される眼底画像は、3次元画像データに基づく画像であってもよい。注目領域と3次元画像データとの間の位置関係は、例えば、3次元画像データのプロジェクション画像と第1正面画像との間のレジストレーションを介して求めることが可能である。
【0224】
ユーザーは、表示された注目領域画像(及び眼底画像)を参照して、眼底における注目領域の位置を把握することができる。更に、ユーザーは、操作部242を用いて注目領域画像を移動することができる。それにより、眼底の所望の位置に注目領域を設定することができる。このとき、眼科装置は、ユーザーにより設定された新たな注目領域が適当であるか否か判定することができる。この判定処理は、例えば、前述した血管特定条件及び位置特定条件のいずれか一方又は双方に基づき、注目領域設定部によって実行される。注目領域の確定は、ユーザー又は眼科装置により行われる。眼科装置は、確定された注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用する。
【0225】
〈血流計測装置の制御方法、プログラム、記録媒体〉
上記の例示的な実施形態は、被検眼の眼底にOCTスキャンを適用して血流動態を計測する血流計測装置を制御する方法の例を提供している。この制御方法は、正面画像取得ステップと、注目領域設定ステップと、スキャンステップと、血流情報取得ステップとを含む。
【0226】
正面画像取得ステップでは、血流計測装置は、眼底の正面画像を取得する。上記の例示的な実施形態では、眼底カメラユニット2又はデータ入出力部290が、制御部210の制御の下に正面画像取得ステップを実行する。
【0227】
注目領域設定ステップでは、血流計測装置は、正面画像取得ステップで取得された正面画像を、予め設定された条件に基づき解析することにより、血管に交差する注目領域を設定する。上記の例示的な実施形態では、注目領域設定部260が、制御部210の制御の下に注目領域設定ステップを実行する。なお、注目領域設定ステップは、予め設定された血管特定条件に基づき注目血管を特定するステップを含んでいてよい。この注目血管特定ステップは、注目動脈を特定するステップ、大径血管を特定するステップ、及び、最大径血管を特定するステップのうちのいずれか1以上を含んでいてもよい。また、注目領域設定ステップは、予め設定された位置特定条件に基づき注目位置を特定するステップを含んでいてよい。この注目位置特定ステップは、血管分岐部とは異なる位置を注目位置として特定するステップ、血管蛇行部とは異なる位置を注目位置として特定するステップ、及び、視神経乳頭から所定距離だけ離れた位置を注目位置として特定するステップうちのいずれか1以上を含んでいてもよい。
【0228】
スキャンステップでは、血流計測装置は、注目領域設定ステップで設定された注目領域に対して反復的OCTスキャンを適用する。上記の例示的態様では、眼底にOCTスキャンを適用するスキャン光学系が、制御部210の制御の下にスキャンステップを実行する。
【0229】
血流情報取得ステップでは、血流計測装置は、スキャンステップで実行された反復的OCTスキャンにより収集されたデータに基づいて血流情報を取得する。上記の例示的態様では、血管領域特定部231及び血流情報生成部232が、制御部210の制御の下に血流情報取得ステップを実行する。
【0230】
このような例示的な制御方法によれば、血流計測に好適な計測位置(注目領域)を眼底の正面画像から自動で設定してOCT血流計測を実施することが可能である。したがって、計測位置を設定するための煩わしい作業をユーザーが行う必要がなくなり、また、適切な計測位置が設定されないまま血流計測を実施するおそれも低減される。これにより、実際の血流動態を正確に反映した診療上有用なデータを容易且つ迅速に取得することが可能になる。
【0231】
このような制御方法をコンピュータを含む血流計測装置に実行させるプログラムを構成することが可能である。また、このようなプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を作成することが可能である。この非一時的記録媒体は、任意の形態であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0232】
以上に説明した実施形態は、この発明の例示的な態様を提供するものに過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲に属する任意の変形(省略、置換、付加等)を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0233】
1 血流計測装置
100 OCTユニット
210 制御部
211 主制御部
220 画像形成部
230 データ処理部
231 血管領域特定部
232 血流情報生成部
260 注目領域設定部
270 注目血管特定部
271 注目動脈特定部
272 大径血管特定部
280 注目位置特定部
290 データ入出力部

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B