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特開2023-38571車両用情報収集システムと車両用情報収集分析方法
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  • 特開-車両用情報収集システムと車両用情報収集分析方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038571
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】車両用情報収集システムと車両用情報収集分析方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20230310BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20230310BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
B60R16/02 650J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145374
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 響
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】数多くの車両の多数のセンサ情報を効率よく収集し分析することができる車両用情報収集システムを提供すること。
【解決手段】複数の車載センサ11a、11b、11cと、車載センサ11a、11b、11cから出力される出力値に対して統計的処理を行ない、波形データを頻度データに変換する演算装置14と、頻度データを記憶する記憶装置13と、記憶装置13に記憶された頻度データを車両外部に送信する通信装置12と、を備える情報収集装置1と、情報収集装置1から送信された頻度データを車両ごとに記録するデータベース22と、不具合が発生した不具合発生車両の頻度データと、その他の車両の頻度データと、を比較及び分析して、不具合発生車両と、他の車両と、の頻度データの乖離量を計算する計算装置24と、計算装置24の計算結果を表示する表示装置23と、を備えるサーバ装置2と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載センサと、前記車載センサから出力される出力値に対して統計的処理を行ない、波形データを頻度データに変換する演算装置と、前記頻度データを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記頻度データを車両外部に送信する通信装置と、を備える情報収集装置と、
前記情報収集装置から送信された前記頻度データを車両ごとに記録するデータベースと、不具合が発生した不具合発生車両の前記頻度データと、その他の車両の前記頻度データと、を比較及び分析して、前記不具合発生車両と、他の車両と、の前記頻度データの乖離量を計算する計算装置と、前記計算装置の計算結果を表示する表示装置と、を備えるサーバ装置と、を備える車両用情報収集システム。
【請求項2】
前記計算装置は、前記不具合発生車両以外の車両の前記頻度データにおける平均値に対する乖離量を計算する請求項1に記載の車両用情報収集システム。
【請求項3】
車載センサから出力される出力値に対して統計的処理を行ない、波形データを頻度データに変換するステップと、
前記頻度データを車両ごとに記録するステップと、
不具合が発生した不具合発生車両の前記頻度データと、その他の車両の前記頻度データと、を比較及び分析して、前記不具合発生車両と、他の車両と、の前記頻度データの乖離量を計算するステップと、
前記計算の結果を表示するステップと、を備える車両用情報収集分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用情報収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、初めて異常が検出された際に取得されたフリーズフレームデータと、最後に異常が検出された際に取得されたフリーズフレームデータの2つのデータを記憶しておく構成が記載されている。そして、特許文献1には、フリーズフレームデータに異常の発生回数に関する発生回数情報を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-19183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の不具合要因の推定には、比較対象として不具合を起こしていない車両の車両情報も把握する必要がある。
【0005】
不具合の要因となった車両環境や運転状況を素早く絞り込むためには、故障車両だけではなく、数多くの車両の多数のセンサ情報を効率よく収集し分析することができるシステムが必要である。
【0006】
特許文献1に記載された構成では、数多くの車両の多数のセンサ情報を効率よく収集し分析することができないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、数多くの車両の多数のセンサ情報を効率よく収集し分析することができる車両用情報収集システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、複数の車載センサと、前記車載センサから出力される出力値に対して統計的処理を行ない、波形データを頻度データに変換する演算装置と、前記頻度データを記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記頻度データを車両外部に送信する通信装置と、を備える情報収集装置と、前記情報収集装置から送信された前記頻度データを車両ごとに記録するデータベースと、不具合が発生した不具合発生車両の前記頻度データと、その他の車両の前記頻度データと、を比較及び分析して、前記不具合発生車両と、他の車両と、の前記頻度データの乖離量を計算する計算装置と、前記計算装置の計算結果を表示する表示装置と、を備えるサーバ装置と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、数多くの車両の多数のセンサ情報を効率よく収集し分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用情報収集システムのブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用情報収集システムの波形データから頻度データへの変換の例を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用情報収集システムの頻度データの記憶方法の例を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用情報収集システムの不具合発生車両と他の車両との頻度データの乖離量の計算結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用情報収集システムは、複数の車載センサと、車載センサから出力される出力値に対して統計的処理を行ない、波形データを頻度データに変換する演算装置と、頻度データを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶された頻度データを車両外部に送信する通信装置と、を備える情報収集装置と、情報収集装置から送信された頻度データを車両ごとに記録するデータベースと、不具合が発生した不具合発生車両の頻度データと、その他の車両の頻度データと、を比較及び分析して、不具合発生車両と、他の車両と、の頻度データの乖離量を計算する計算装置と、計算装置の計算結果を表示する表示装置と、を備えるサーバ装置と、を備えるよう構成されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用情報収集システムは、数多くの車両の多数のセンサ情報を効率よく収集し分析することができる。
【実施例0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る車両用情報収集システムについて詳細に説明する。
【0014】
図1において、本発明の一実施例に係る車両用情報収集システムは、車両に搭載される情報収集装置1と、情報処理装置としてのサーバ装置2と、を含んで構成される。
【0015】
情報収集装置1は、複数の車載センサ11a、11b、11cと、通信装置12と、記憶装置13と、演算装置14と、を含んで構成される。
【0016】
車載センサ11a、11b、11cは、車両に搭載されるセンサであり、例えば、車速センサ、冷却水温センサ、加速度センサ、操舵角センサなどから構成される。
【0017】
通信装置12は、車両外部のサーバ装置2と、無線通信などの通信媒体を介して通信して情報の送受信を行なう。
【0018】
記憶装置13は、演算装置14の演算したデータを記憶する。通信装置12は、記憶装置13に記憶されたデータを送信することができるようになっている。
【0019】
演算装置14は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0020】
このコンピュータユニットのROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを演算装置14として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、演算装置14として機能する。
【0021】
演算装置14の入力ポートには、前述した、車載センサ11a、11b、11c等の各種センサ類が接続されている。
【0022】
一方、演算装置14の出力ポートには、前述した、記憶装置13等の各種制御対象類が接続されている。
【0023】
本実施例において、演算装置14は、車載センサ11a、11b、11cから出力される出力値に対して統計的処理を行ない、波形データを頻度データに変換する。
【0024】
演算装置14は、変換した頻度データを記憶装置13に記憶させる。記憶装置13に記憶された頻度データは、通信装置12により、車両外部に送信される。
【0025】
例えば、演算装置14には、予め、対象とする車載センサ11a、11b、11cと、波形データを頻度データに変換するための分析手法と、測定レンジと、分割数と、波形データのサンプリングレートなどの分析に必要な項目が設定されている。分析手法としては、レインフロー法や、MIN-MAX法などが利用できる。
【0026】
演算装置14は、車載センサ11a、11b、11cから出力される電圧値や抵抗値などの生値、生値を物理量に変換した値、複数のセンサの生値を四則演算等で組み合わせた値、などの波形データを頻度データに変換する。演算装置14は、車載センサ11a、11b、11cからの出力だけでなく、アクチュエータへの要求値や制御変数を頻度データに変換してもよい。
【0027】
演算装置14は、例えば、図2の左側に示すような波形データから、設定されたサンプリングレートで値を取得し、取得された値が、設定された測定レンジを設定された分割数で分割した複数の値の範囲のどこに入るかを判定し、対応する値の範囲の頻度データに1を加算し、図2の右側に示すような頻度データに変換する。
【0028】
演算装置14は、例えば、図3に示すように、車載センサ11a、11b、11cごとに、センサ出力の値の範囲と、回数の2×N行列の形式で頻度データを記憶装置13に記憶させる。なお、演算装置14は、オンとオフのみのデータは回数を記憶させる。また、2×N行列に限らず、2より大きい次元の行列としてもよい。
【0029】
通信装置12は、記憶装置13に記憶されている頻度データを、車両を識別する識別情報を付加して、定期的にサーバ装置2に送信する。通信装置12は、例えば、スマートフォンなどの通信機器と通信し、頻度データを送信するようにしてもよい。
【0030】
図1において、サーバ装置2は、通信装置21と、データベース22と、表示装置23と、計算装置24と、を含んで構成される。
【0031】
通信装置21は、有線通信や無線通信などの通信媒体を介して、情報収集装置1などと通信して情報の送受信を行なう。
【0032】
データベース22は、情報収集装置1から送信された頻度データを車両ごとに記録する。データベース22は、頻度データに、対応する車両の車両販売情報やサービス情報等を関連付けて記録してもよい。このようにすることで、頻度データと各種情報を一元管理することができる。
【0033】
表示装置23は、液晶ディスプレイ等の画像表示機器で構成され、データベース22に記録されたデータを示す画像や、計算装置24による計算の結果を示す画像などを表示する。
【0034】
計算装置24は、CPUと、RAMと、ROMと、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0035】
このコンピュータユニットのROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを計算装置24として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、計算装置24として機能する。
【0036】
計算装置24の入力ポートには、前述した、データベース22等の各種データ出力装置類が接続されている。
【0037】
一方、計算装置24の出力ポートには、前述した、表示装置23等の各種制御対象類が接続されている。
【0038】
本実施例において、計算装置24は、不具合が発生した不具合発生車両の頻度データと、その他の車両の頻度データと、を比較及び分析して、不具合発生車両と、他の車両と、の頻度データの乖離量を計算する。計算装置24は、例えば、不具合発生車両以外の車両の頻度データにおける平均値に対する乖離量を計算する。
【0039】
計算装置24は、例えば、ユーザの指定した不具合発生車両の頻度データと、その他の車両の頻度データと、を比較し、どの車載センサ11a、11b、11cの頻度データが特徴のある外れ値を示しているかを計算する。
【0040】
外れ値の計算方法としては、例えば、頻度データをダメージ量に換算し、そのダメージ量を統計分析する。
【0041】
疲労破壊では、線形累積損傷則(マイナー則)に従うことが多いため、加速度センサやロードセルといった、応力に関連する頻度データをダメージ値に変換し、その結果を統計分析する。
【0042】
部品には、設計データとして材料SN線図があることがほとんどのため、ダメージ値への換算は容易であり、不具合を起こした部品が疲労破壊と推測される場合は有効な手法となる。
【0043】
また、熱による劣化でも同様の分析が可能であり、この場合は、温度の頻度データを使用する。熱劣化は10℃2倍則と呼ばれる経験則が知られており、温度による劣化の指標データを持っていない場合は、これを使用する。
【0044】
また、外れ値の計算方法として、例えば、マハラノビス距離を用いて、分布の形を比較し、平均的な分布との比較を行なう方法もある。
【0045】
不具合発生車両が特徴的な使われ方をしている場合、分布の形に特徴がある可能性が高い。そのため、マハラノビス距離と呼ばれる統計的指標を用いて、分布の形が平均に対してどれだけのずれがあるかを分析し、外れ値を計算する。
【0046】
計算装置24は、分析した結果を表示装置23に表示させる。計算装置24は、例えば、図4に示すように、各種車載センサ11a、11b、11cの頻度データを基に統計分析した結果の中から、所定の閾値、例えば上位1%を超えた(上位1%より上位)頻度データを表示させる。
【0047】
なお、分析に必要なデータの絞り込みが容易にできるように、各センサに対して、構成部品(エンジン、トランスミッション、電装など)やセンサの種類(荷重、温度など)などをデータベース化しておくことが望ましい。
【0048】
また、可能な限り同一条件のデータを比較するため、不具合発生車両の製造年月日や走行距離等と同じ条件の他の車両を抽出して分析できるようにすると、分析の精度が向上する。
【0049】
このように、本実施例では、複数の車載センサ11a、11b、11cと、車載センサ11a、11b、11cから出力される出力値に対して統計的処理を行ない、波形データを頻度データに変換する演算装置14と、頻度データを記憶する記憶装置13と、記憶装置13に記憶された頻度データを車両外部に送信する通信装置12と、を備える情報収集装置1と、情報収集装置1から送信された頻度データを車両ごとに記録するデータベース22と、不具合が発生した不具合発生車両の頻度データと、その他の車両の頻度データと、を比較及び分析して、不具合発生車両と、他の車両と、の頻度データの乖離量を計算する計算装置24と、計算装置24の計算結果を表示する表示装置23と、を備えるサーバ装置2と、を備える。
【0050】
波形データを頻度データに変換して頻度データを統計分析するため、数多くの車両の多数のセンサ情報を効率よく収集及び分析することができる。これにより、不具合の要因となった車両環境や運転状況を素早く絞り込むことができる。
【0051】
また、計算装置24は、不具合発生車両以外の車両の頻度データにおける平均値に対する乖離量を計算する。
【0052】
車載センサ11a、11b、11cの情報は不具合を起こした部品の実際の情報ではないため、平均値からのずれの情報に規格化することで、不具合発生車両の特徴的な車両環境や運転状況を横並びで比較することができる。
【0053】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0054】
1 情報収集装置
2 サーバ装置
11a、11b、11c 車載センサ
12 通信装置
13 記憶装置
14 演算装置
21 通信装置
22 データベース
23 表示装置
24 計算装置
図1
図2
図3
図4