(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023038693
(43)【公開日】2023-03-17
(54)【発明の名称】測量データ処理装置、測量データ処理方法および測量データ処理用プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230310BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145554
(22)【出願日】2021-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 陽
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF11
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL61
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】レーザースキャンにより測量用のターゲットの位置を効率よく的確に検出できる技術を得る。
【解決手段】第1のレーザースキャンにより得たレーザースキャン点群の取得を行ない、前記レーザースキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群を取得し、前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群を取得し、この部分点群の測距値に基づき、当該部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状を取得し、このレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状に基づき、反射プリズム300,301からの反射が生じた領域と推定される部分点群の反射推定領域を識別し、識別された部分点群に基づき、反射プリズム300,301に対する第2のレーザースキャンの条件の設定を行なう。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザースキャン点群の取得を行なうレーザースキャン点群取得部と、
前記レーザースキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群を取得する高輝度反射点群取得部と、
前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群を取得する部分点群取得部と、
前記部分点群の測距値に基づき、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状を取得するレーザースキャン光情報取得部と、
前記レーザースキャン光の分布と前記ビーム断面の形状に基づき、前記対象物からの反射が生じた領域と推定される反射推定領域を取得する反射推定領域取得部と、
測量用の反射体の大きさおよび/または形状と、前記部分点群の反射推定領域の大きさおよび/または形状とを比較し、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群を識別する部分点群識別部と
を備える測量データ処理装置。
【請求項2】
前記識別された部分点群に基づき、前記測量用の反射体に対するレーザースキャンの条件の設定を行うレーザースキャン条件設定部を備える請求項1に記載の測量データ処理装置。
【請求項3】
前記部分点群の反射推定領域は、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光のビーム断面の外縁を内側に納めた閉じた線により囲まれる領域である請求項1または2に記載の測量データ処理装置。
【請求項4】
前記レーザースキャンの視点の位置からの距離が大きくなる程、より輝度の小さい点が前記閾値を超える反射輝度の点群として取得される請求項1~3のいずれか一項に記載の測量データ処理装置。
【請求項5】
前記閾値は、前記レーザースキャンの視点の位置からの距離が大きくなる程小さくなる請求項1~4のいずれか一項に記載の測量データ処理装置。
【請求項6】
前記レーザースキャン光の反射光に係り、光軸中心からの距離と光強度との関係を示すビームプロファイルが予め取得され、
前記レーザースキャン光のそれぞれにおいて、その反射光の検出値と前記ビームプロファイルに基づき、前記部分点群における反射中心の位置を予想する予想範囲が決められ、
前記予想範囲は、前記反射光の強度に反比例する大きさを有し、
前記レーザースキャン光のそれぞれの前記予想範囲の重なりに基づき、前記部分点群における反射中心の位置が予想される請求項1~5のいずれか一項に記載の測量データ処理装置。
【請求項7】
前記部分点群の取得において、
対象となる点までの距離に基づいて推定される対象となる点と隣接する他の点との推定離間距離と、前記対象となる点と前記他の点の測距値に基づいて算出される両点の間の算出離間距離と、を比較し、
該比較の結果、前記対象となる点と前記他の点とが、レーザースキャン点群の視点の位置から見て奥行き方向に離間している場合、前記対象となる点と前記他の点が前記部分点群でないと判定される請求項1~6のいずれか一項に記載の測量データ処理装置。
【請求項8】
前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別では、
着目している部分点群の距離におけるレーザースキャンの条件から推定される前記測量用の反射体における反射点の数と、前記着目している部分点群の点の数とが比較され、
該比較の結果に基づいて、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別が行われる請求項1~7のいずれか一項に記載の測量データ処理装置。
【請求項9】
レーザースキャン点群の取得と、
前記レーザースキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群の取得と、
前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群の取得と、
前記部分点群の測距値に基づく、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状の取得と、
前記レーザースキャン光の分布と前記ビーム断面の形状に基づく、前記対象物からの反射が生じた領域と推定される反射推定領域の取得と、
測量用の反射体の大きさおよび/または形状と、前記部分点群の反射推定領域の大きさおよび/または形状とを比較することで、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別と
を行う測量データ処理方法。
【請求項10】
コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、
コンピュータに
レーザースキャン点群の取得と、
前記レーザースキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群の取得と、
前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群の取得と、
前記部分点群の測距値に基づく、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状の取得と、
前記レーザースキャン光の分布と前記ビーム断面の形状に基づく、前記対象物からの反射が生じた領域と推定される反射推定領域の取得と、
測量用の反射体の大きさおよび/または形状と、前記部分点群の反射推定領域の大きさおよび/または形状とを比較することで、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別と
を実行させる測量データ処理用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザースキャンにおいて、反射プリズム等の測量用の反射体をターゲットに用いる場合がある(例えば、特許文献1を参照)。この場合、ターゲットは、レーザースキャン装置の外部標定要素の算出、レーザースキャン点群に座標を与える、特定の位置の座標を計測する、といった目的で利用される。
【0003】
これは、トータルステーションの代わりにレーザースキャナ装置を利用したターゲットの測位と考えることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の測量用の反射体を用いたレーザースキャンでは、まず相対的にスキャン密度が粗い第1のレーザースキャンを行い、第1のレーザースキャン点群を得る。次に、この第1のレーザースキャン点群の中から、反射強度の高い点(より反射光量の大きい点)を検出し、その点の付近に当該反射体があるものと見なし、スキャン密度が高い第2のレーザースキャンを行う。
【0006】
この第2のレーザースキャンは、当該反射体において多数の反射点が得られるようにスキャン密度が高く設定される。こうして、測量用の反射体において多数の測位点を得、その平均値を求めることで、当該反射体の精密な測位を行なう。
【0007】
ところで、レーザースキャン装置からのスキャン光の照射は放射状に行われるので、遠方では、スキャン密度が低下し、隣接するスキャン光間の間隔が大きくなる。よって、上記第1のレーザースキャナでは、必ずしもレーザースキャン光の光軸(中心)が測量用の反射体に入射するとは限らない(特に遠方の場合)。しかしながら、遠方になる程、スキャン光のビーム断面が大きくなるので、1条のスキャン光で考えた場合、スキャン光に当該反射体が捕捉される確率が増大する。ただし、スキャン光のビーム断面が大きくなると、エネルギー密度は低下するので、反射光の受光強度は低下する。
【0008】
従来、これらの点は考慮されず、反射強度の高い点に着目して第2のレーザースキャンの条件が決められていた。
【0009】
このような背景において、本発明は、レーザースキャンによる測量用のターゲットの位置の検出を効率よく行える技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、レーザースキャン点群の取得を行なうレーザースキャン点群取得部と、前記レーザースキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群を取得する高輝度反射点群取得部と、前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群を取得する部分点群取得部と、前記部分点群の測距値に基づき、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状を取得するレーザースキャン光情報取得部と、前記レーザースキャン光の分布と前記ビーム断面の形状に基づき、前記対象物からの反射が生じた領域と推定される反射推定領域を取得する反射推定領域取得部と、測量用の反射体の大きさおよび/または形状と、前記部分点群の反射推定領域の大きさおよび/または形状とを比較し、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群を識別する部分点群識別部とを備える測量データ処理装置である。
【0011】
本発明において、前記部分点群の反射推定領域は、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光のビーム断面の外縁を内側に納めた閉じた線により囲まれる領域である態様は好ましい。
【0012】
本発明において、前記レーザースキャンの視点の位置からの距離が大きくなる程、より輝度の小さい点が前記閾値を超える反射輝度の点群として取得される態様は好ましい。本発明において、前記閾値は、前記レーザースキャンの視点の位置からの距離が大きくなる程小さくなる態様は好ましい。
【0013】
本発明において、前記レーザースキャン光の反射光に係り、光軸中心からの距離と光強度との関係を示すビームプロファイルが予め取得され、前記レーザースキャン光のそれぞれにおいて、その反射光の検出値と前記ビームプロファイルに基づき、前記部分点群における反射中心の位置を予想する予想範囲が決められ、前記予想範囲は、前記反射光の強度に反比例する大きさを有し、前記レーザースキャン光のそれぞれの前記予想範囲の重なりに基づき、前記部分点群における反射中心の位置が予想される態様は好ましい。
【0014】
本発明における前記部分点群の取得において、対象となる点までの距離に基づいて推定される対象となる点と隣接する他の点との推定離間距離と、前記対象となる点と前記他の点の測距値に基づいて算出される両点の間の算出離間距離と、を比較し、該比較の結果、前記対象となる点と前記他の点とが、レーザースキャン点群の視点の位置から見て奥行き方向に離間している場合、前記対象となる点と前記他の点が前記部分点群でないと判定される態様が挙げられる。
【0015】
本発明における前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別では、着目している部分点群の距離におけるレーザースキャンの条件から推定される前記測量用の反射体における反射点の数と、前記着目している部分点群の点の数とが比較され、該比較の結果に基づいて、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別が行われる態様が挙げられる。
【0016】
本発明は、スキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群の取得と、前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群の取得と、前記部分点群の測距値に基づく、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状の取得と、前記レーザースキャン光の分布と前記ビーム断面の形状に基づく、前記対象物からの反射が生じた領域と推定される反射推定領域の取得と、測量用の反射体の大きさおよび/または形状と、前記部分点群の反射推定領域の大きさおよび/または形状とを比較することで、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別とを行う測量データ処理方法として把握することもできる。
【0017】
本発明は、コンピュータに読み取らせて実行させるプログラムであって、コンピュータにレーザースキャン点群の取得と、前記レーザースキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群の取得と、前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群の取得と、前記部分点群の測距値に基づく、前記部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状の取得と、前記レーザースキャン光の分布と前記ビーム断面の形状に基づく、前記対象物からの反射が生じた領域と推定される反射推定領域の取得と、測量用の反射体の大きさおよび/または形状と、前記部分点群の反射推定領域の大きさおよび/または形状とを比較することで、前記測量用の反射体に対応する前記部分点群の識別とを実行させる測量データ処理用プログラムとして把握することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レーザースキャンによる測量用のターゲットの位置の検出を効率よく行える技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】部分点群の大きさを評価する方法を示す概念図である。
【
図7】レーザースキャン光のビーム形状を示す図(A)と光強度の分布プロファイルを示す図(B)である。
【
図8】レーザースキャン光のビームプロファイルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(概要)
図1には、レーザースキャン装置(レーザースキャナ)100、測量データ処理装置200、反射プリズム300,301、レーザースキャンの対象となる建物400が示されている。この例では、レーザースキャン装置100がレーザースキャンの視点として適当と判断される位置に設置される。反射プリズム300と301は、測量用の反射体の一例であり、座標が既知の位置に設置される。ここでは、反射プリズムを2つ用いる場合を例示するが、反射プリズムを3つ以上利用することもできる。
【0021】
反射プリズム300,301は、入射した光を180°反転させて反射する機能を有する。反射プリズムには、特定の方向からの入射に対応したものと、全周からの入射に対応したものがある。どちらも利用できるが、ここでは、特定の方向からの入射に対応した反射プリズムが利用される。
【0022】
この例において、レーザースキャン装置100は、座標が未知な場所に設置される。そして位置が既知な2つの反射プリズム300,301の測位をレーザースキャンにより行う。そして、反射プリズム300,301の位置を標定点とした後方交会法により、レーザースキャナ装置100の位置と姿勢が求められる。利用される座標系は、例えば絶対座標系が利用される。絶対座標系は、GNSSや地図において利用される座標系であり、その位置(座標)は、例えば緯度、経度、標高によって記述される。なお、本発明は、上記の例に限定されず、反射プリズムをレーザースキャンにより測位する技術に広く適用できる。
【0023】
測量データ処理装置200は、レーザースキャン装置100が得たレーザースキャンデータの処理を行う。レーザースキャンデータの処理には、(1)相対的に粗い第1のレーザースキャンの結果に基づく、相対的に密な第2のレーザースキャンの条件を求める処理、(2)第2のレーザースキャンに基づく反射プリズムの位置を高精度に求める処理、(3)レーザースキャンにより得た測量対象物のレーザースキャン点群の処理、が挙げられる。
【0024】
ここでは、(1)の処理に関して説明する。(2)と(3)の処理は公知の処理であるので、説明は省略する。なお、(3)の処理としては、異なる視点から得られた第1のレーザースキャン点群と第2のレーザースキャン点群のマッチング処理、レーザースキャン点群に基づく三次元モデルの作成等が挙げられる。
【0025】
この例において、測量データ処理装置200は、PC(パーソナル・コンピュータ)により構成されている。測量データ処理装置200を専用のハードウェアで構成することもできる。測量装置200をレーザースキャン装置100に組み込む形態も可能である。
【0026】
反射プリズム300,301は、同じもので、測量用に市販されているものを利用している。反射プリズム以外の測量用の反射体を利用することもできる。反射プリズム以外の測量用の反射体としては、再帰反射材を用いたものが挙げられる。建物400は、レーザースキャンの対象の一例である。レーザースキャンの対象は特に限定されない。
【0027】
(レーザースキャン装置)
図2には、レーザースキャン装置100が示されている。レーザースキャン装置100は、三脚111、三脚111の上部に固定されたベース部112、ベース部112上で水平回転が可能な水平回転部113、水平回転部113に対して鉛直回転が可能な鉛直回転部114を備えている。
【0028】
鉛直回転部114は、レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部115を備えている。水平回転部113を水平回転させ、且つ、鉛直回転部114を鉛直回転させながら、光学部105からレーザースキャン光をパルス照射し、その反射光を受光することで、レーザースキャンが行われる。水平回転部113と鉛直回転部114の回転は、モータにより行われる。水平回転部113の水平回転角と、鉛直回転部114の鉛直回転角は、エンコーダにより精密に計測さる。
【0029】
レーザースキャン光は、1条のパルス測距光であり、一つのレーザースキャン光により、当該レーザースキャン光が当たった反射点であるスキャン点の測距が行われる。この測距値とレーザースキャン光の方向から、レーザースキャナ100に対するスキャン点の位置が算出される。ここで、絶対座標系におけるレーザースキャナ100の外部標定要素(位置と姿勢)が既知であれば、絶対座標系におけるスキャン点の位置が判明する。そして、点々とスキャン点の位置を求めることでレーザースキャン点群が得られる。
【0030】
レーザースキャン装置100から出力されるレーザースキャン点群の形態としては、各点(スキャン点)に係る距離と方向のデータを出力する形態が挙げられる。レーザースキャン装置100の内部において、特定の座標系における各点の位置を計算し、各点の3次元座標位置を点群データとして出力する形態も可能である。なお、レーザースキャナ点群のデータには、スキャン点の輝度(反射光の強度)の情報も含まれる。
【0031】
水平回転部113の前面には、カメラ110(
図3参照)の光学系116が配置されている。このカメラ110により、レーザースキャンの対象を撮影できる。レーザースキャン装置100におけるカメラ110の外部標定要素(位置と姿勢)は既知であり、カメラ110が撮影した画像とレーザースキャン点群を関連付けることができる。例えば、カメラ110が撮影した画像中にレーザースキャン点群を重ねて表示した点群画像を得ることができる。
【0032】
水平回転と鉛直回転の回転速度、レーザースキャン光の発光間隔を調整することで、レーザースキャンの密度の設定および調整が行われる。なお、遠方になる程、レーザースキャン光の間隔(レーザースキャン点の中心位置の間隔)は広くなり、またレーザースキャン光のビーム断面積が大きくなる。
【0033】
光学部115の光軸がレーザースキャン光の光軸となる。またこの光軸がレーザースキャン光のビームの中心の方向として把握される。またこの光軸の延長線上がレーザースキャン点、すなわちレーザースキャン光の反射中心の点となる。
【0034】
図3は、レーザースキャン装置100のブロック図である。レーザースキャン装置100は、発光部101、受光部102、測距部103、方向取得部104、スキャン制御部105、駆動制御部106、スキャン条件設定部107、通信装置108、タッチパネルディスプレイ109、カメラ110を備える。
【0035】
発光部101は、レーザースキャン光の発光を行う発光素子、発光に関係する光学系と周辺回路を有する。受光部102は、レーザースキャン光の受光を行う受光素子、受光に関係する光学系と周辺回路を有する。
【0036】
受光素子の種類によるが、この例では、受光素子は光量に比例した出力信号を出力する。よって、反射光の強度は光量の大小を評価することになる。レーザースキャン光のパルス幅は決まっているので、反射光の強度は光量に比例する。
【0037】
測距部103は、レーザースキャン装置100からレーザースキャン光の反射点までの距離を算出する。この例では、レーザースキャン装置100の内部に基準光路が設けられている。発光部から出力されたレーザースキャン光は2分岐され、一方がレーザースキャン光として光学部115から対象に照射され、他方が参照光として上記基準光路に導かれる。
【0038】
対象から反射され、光学部105から取り込まれたレーザースキャン光と上記基準光路を伝搬した参照光とが合成され、受光部201に入力される。レーザースキャン光と参照光は、伝搬距離が異なり、最初に参照光が受光素子で検出され、次いでレーザースキャン光が受光素子で検出される。
【0039】
ここで、受光素子の出力波形を見ると、参照光の検出波形が最初に出力され、ついで時間差をおいてレーザースキャン光の検出波形が出力される。この2つの波形の位相差(時間差)からレーザースキャン光の反射点までの距離が算出される。なお、レーザースキャン光の飛翔時間から距離を算出する形態も可能である。
【0040】
方向取得部104は、レーザースキャン光の光軸の方向を取得する。水平回転部113の水平角と鉛直回転部115の鉛直回転角を計測することで、レーザースキャン装置100から見たレーザースキャン光の光軸の方向、すなわちスキャン点の方向が判る。
【0041】
各スキャン点に係り、距離と方向のデータをまとめたものがレーザースキャナ点群のデータとなる。
【0042】
スキャン制御部105は、レーザースキャン時における水平回転部113の水平回転の制御、鉛直回転部115の鉛直回転の制御、発光部101におけるレーザースキャン光の発光タイミングの制御を行う。
【0043】
駆動制御部106は、水平回転部113の水平回転を行うためのモータの駆動制御、鉛直回転部115の鉛直回転を行うためのモータの駆動制御を行う。スキャン条件設定部107は、レーザースキャンに係る各種条件の設定を行う。通信装置108は、外部の機器との間で通信を行う。この例では、通信装置108により、測量データ処理装置200との通信が行われる。通信は、例えば無線LANの規格を用いて行われる。有線、携帯電話回線、光通信を用いる形態も可能である。
【0044】
タッチパネルディスプレイ109は、レーザースキャン装置100のUI(ユーザインターフェース)として機能する。タッチパネルディスプレイ109を用いてレーザースキャン装置100の各種の操作や設定が行われる。また、タッチパネルディスプレイ109にレーザースキャン装置100の動作に係る各種の情報が表示される。
【0045】
カメラ110は、デジタルカメラである。カメラ110は、静止画と動画の撮影が可能である。
【0046】
(測量データ処理装置)
図4は、測量データ処理装置200のブロック図である。測量データ処理装置200は、レーザースキャン点群取得部201、高輝度反射点群取得部202、部分点群取得部203、レーザースキャン光の間隔とビーム断面形状の取得部204、部分点群の反射推定領域取得部205、部分点群識別部206、詳細スキャン条件設定部207、記憶部208、通信装置209を備える。
【0047】
記憶部208と通信装置209は、使用するPCが備える機能を利用する。他の機能部は、各機能部を実現するためのアプリケーションソフトウェアが当該PCのCPUにより実行されることで実現される。機能部の一部または全部を専用のハードウェアやマイコンにより実現する形態も可能である。測量データ処理装置200を実現するアプリケーションソフトウェアは、適当な記憶媒体や記憶領域に記憶され、使用するPCにダウンロードされて利用される。
【0048】
例えば、インターネット回線を利用してレーザースキャン装置100が処理サーバに接続され、この処理サーバにおいて、測量データ処理装置200の一部または全部の機能が実行される形態も可能である。
【0049】
レーザースキャン点群取得部201は、
図5のステップS101の処理を実行する。高輝度反射点群取得部202は、
図5のステップS102の処理を実行する。部分点群取得部203は、
図5のステップS103の処理を実行する。レーザースキャン光の間隔とビーム断面形状の取得部204は、部分点群の測距値に基づき、部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状を取得する。レーザースキャン光の間隔とビーム断面形状の取得部204は、
図5のステップS105の処理を実行する。
【0050】
部分点群の反射推定領域取得部205は、
図5のステップS106の処理を実行する。部分点群識別部206は、
図5のステップS107の処理を実行する。詳細スキャン条件設定部207は、
図5のステップS108の処理を実行する。記憶部208は、測量データ処理装置200の動作に必要なデータ、プログラム、測量データ処理装置200が動作することで得られるデータを記憶する。通信装置209は、レーザースキャン装置100および他の機器との通信を行なう。
【0051】
(処理の一例)
まず、レーザースキャンを行う現場においてレーザースキャン装置100と、測量用の反射体である反射プリズム300,301の設置を行う。ここで、レーザースキャン装置100の位置と姿勢は未知であり、反射プリズム300と301は、絶対座標系における既知の位置に設置される。
【0052】
ここでは、反射プリズム300,301の詳細スキャンの条件を設定するまでの手順を説明する。詳細スキャン以降の処理は、これまで行われてきた処理と同じであるので、説明は省略する。
【0053】
レーザースキャン装置100と反射プリズム300,301を設置したら、レーザースキャン装置100による周囲の第1のレーザースキャンを行う。ここでは、周囲360°(2π空間)のレーザースキャンを行う。範囲を絞ったレーザースキャンも可能である。
【0054】
第1のレーザースキャンは、反射プリズム300,301の探索と通常計測用の全周スキャンを兼ねている。この通常計測用の全周スキャンは、反射プリズム300,301のサーチには使えるが、精密測位をするにはスキャン密度が粗い設定となっている。
【0055】
第1のレーザースキャンのスキャン密度を高めると、反射プリズム300,301の補足精度は高くなるが、スキャン時間が長くなり、また消費電力が増大する。前者は作業効率を高める上でマイナスである。また、後者は野外でのバッテリー動作を考えた場合、好ましくない。よって、第1のレーザースキャンは、反射プリズム300,301を見逃さずに捕捉できる程度のスキャン密度で行うのが好ましい。
【0056】
また、第1のレーザースキャンでは、反射プリズム300,301からの反射光から距離データを取得したいので、反射プリズム300,301からの反射光により、レーザースキャン装置100の受光部が飽和し、距離情報が得られない状態とならないようにする。
【0057】
反射プリズムからの反射が強すぎ、距離情報は得られない場合は、スキャン光の出力の調整、減光フィルタを利用したスキャン光の出力および/または検出光の強度の調整を行い、距離情報が得られるようにする。なお、この段階における反射プリズム300,301の距離情報は高い精度を必要としない。
【0058】
レーザースキャン装置100によるレーザースキャンデータを得た後、
図5の処理が開始される。
図5の処理を実行するプログラムは、適当な記憶媒体に記憶され、測量データ処理装置200を構成するPCにより実行される。当該プログラムをサーバに記憶し、インターネット経由でPCにダウンロードする形態も可能である。また、
図5の処理をサーバで行う形態も可能である。
【0059】
処理が開始されると、まずレーザースキャン装置100による第1のレーザースキャンにより得た第1のレーザースキャン点群の取得を行う(ステップS101)。次に、ステップS101で得た第1のレーザースキャン点群の中から高輝度反射点群の取得を行う(ステップS102)。
【0060】
ステップS102の処理では、ステップS101で得たレーザースキャン点群の中から、閾値以上の反射強度の点群を抽出する。閾値は予め設定した値を採用する。ここで、閾値以上の反射強度の点を抽出するのは、高反射率を有する反射プリズム300,301からの反射光に起因するレーザースキャン点群、すなわち反射プリズム300,301のレーザースキャン点群を得るためである。
【0061】
反射プリズム300,301からの反射光は、鏡面からの反射であり、その反射光の強度は鏡面以外の反射面からの反射光の強度に比較して相対的に強い。このことを利用して、閾値以上の強度を有する反射光の点群データを抽出することで、反射プリズム300,301からの反射光に基づく点群データを抽出する。
【0062】
また、ステップS102の処理では、距離による反射強度の補正を行う。すなわち、スキャン光のビームの広がりから、遠距離程、反射光の強度は低下する。また、空気中の塵や水分による散乱や吸収の影響により、遠距離程、レーザースキャン光は減衰する。この低下分を見越して、遠距離の場合、高輝度反射点群を取得するための上記の閾値を小さくする。すなわち、ステップS102で用いる閾値は、近距離では大きく、遠距離では小さくなるように可変設定とする。
【0063】
この処理は以下のようにして行われる。まず、基準となる閾値をTh0とする。また、レーザースキャン装置100からスキャン点までの距離をxとする。そして、xが大きくなる程減少する減少関数をf(x)とする。使用する閾値Thは、Th=f(x)Th0で示される。f(x)は、予め距離と反射光の強さ(光量)の関係を調べることで得られる。
【0064】
上記の式によれば、遠い点程、閾値Thは小さくなる。この場合、距離xが大きくなると、反射光の弱い点も高輝度反射点として抽出できる。他方において、距離xが小さいと、ある程度強い反射でないと、高輝度反射点として抽出されない。
【0065】
ここで、距離に応じて閾値を可変するのではなく、距離に応じて反射光の強さの評価値を可変させてもよい。この場合、検出した点の反射の強さ(光量)をIとして、上記の関数f(x)を用いて、I/f(x)を用いて、反射光の強さを評価する。こうすることで、近い位置からの反射光は検出強度が低く見積もられ、遠い位置からの反射は検出強度が高く見積もられる。得られる効果は、上記の閾値を可変する場合と同じである。
【0066】
いずれの場合もレーザースキャンの視点の位置からの距離が大きくなる程、より輝度の小さい点が高輝度反射の点群として取得される。こうして、近距離における反射プリズム以外からの反射の誤検出、および長距離における反射プリズムからの反射光の取りこぼしが抑制される。
【0067】
なお、ステップS102で取得する高輝度反射点群の数は、最低2点である。これは、反射プリズム300,301からの反射光が最低でもあるからである。通常は、一つの反射プリズムからの複数のスキャン光の反射が得られる可能性が高く、また反射プリズム以外の反射の可能性もあるので、高輝度反射点群の数は2以上の複数点となる。
【0068】
次に、ステップS102において取得した高輝度反射点群の中から反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群を取得する(ステップS103)。高輝度反射点は、反射プリズムに代表される高い反射率を有する対象における反射点である。よってその反射点は、反射体毎に分類することができる。この反射体毎に分類した部分的な点群が部分点群である。
【0069】
部分点群を得る方法には、いくつかの方法がある。第1の方法は、レーザースキャンの視点(レーザースキャン装置100の光学原点)から見た点群の分布の状態により、部分点群を分離する方法である。この方法は、視点から見て、部分点群が部分的に固まって分布していることを利用する。ただし、奥行き情報(距離情報)を利用しないので、奥行き方向の違いを分離に利用できない。
【0070】
部分点群を得る第2の方法は、点の距離情報も利用する方法である。レーザースキャン点群は、レーザースキャン装置100から見た点の方向と距離のデータを含んでいる。そこで、高輝度反射点群の3次元分布を調べることで、3次元的に固まって存在する高輝度点群を特定の対象物からの反射に基づく部分点群として把握する。
【0071】
例えば、レーザースキャン装置100が測定した点までの距離における点分解能から点群の隣接点の間の距離である離間距離を見積もり、その離間距離から大きく外れてしまう点をはずれ点として排除していく。
【0072】
ターゲットをスキャンした点群は、レーザースキャン装置100からほぼ等しい距離の面(ターゲット面)上にあると考えられるため、そのターゲット面での点群の各点の実際の離間距離は、レーザースキャン装置100が測定した点までの距離における点分解能から見積もられた離間距離を大きく外れない。このため、上記の処理により、部分点群とそれ以外を識別できる。
【0073】
離間距離が大きく外れるものは、ターゲット面から見て奥行き方向における手前や奥にある点と判定できる。そして、任意の点を起点として候補の離間距離を判定していく。こうすることで、各対象に対応した部分点群が得られる。
【0074】
レーザースキャン装置100が測定した点までの距離としては、レーザースキャン装置100で測距した点群における各点のうち所定の条件で選択した代表的な点での点の距離(レーザースキャン装置100と点の間の距離)を用いる代表点距離や、その点群における各点の距離を平均化した点群平均距離、などがある。
【0075】
点群の隣接点の離間距離は、以下の様に定義される。レーザースキャンによって得た点群をレーザースキャン装置100から見ると、格子状に点(スキャン点)が並んだ状態に見える。この格子状に並んだ点における隣り合う点が隣接する点となる。そして、この隣接した点の間の3次元距離が隣接点の離間距離となる。
【0076】
以下、具体的な例を説明する。例えば、隣接する2つの点Aと点Bがあるとする。ここで、点Aの距離(測距値)から推定される点Aと点Bの間の離間距離である推定離間距離をD0とする。そして、レーザースキャンデータから得られる点Aと点Bとの間の実際の離間距離である算出離間距離をD1とする。
【0077】
この場合において、D0≒D1であれば、点Aと点Bはレーザースキャン装置から見て、レーザースキャン装置に正対する同一面上にあり(レーザースキャン装置からの距離がほぼ同じであり)、部分点群であると判定する。他方において、D0≠D1である場合、点Aと点Bはレーザースキャン装置(レーザースキャン点群の視点の位置)から見てレーザースキャン装置に正対する同一面上になく(奥行方向に離れており)、部分点群ではないと判定する。この手法により、部分点群を構成する点を見つけ出す。
【0078】
以上のようにして、3次元空間中に濃淡を持って存在する高輝度反射点群が、対象物毎に分類され、部分点群が得られる。例えば、第1の3次元位置を中心とした第1の部分点群、第2の3次元位置を中心とした第2の部分点群、・・・といったように高輝度反射点群が複数の部分点群に分類される。なお、部分点群の中心は、部分点群を構成する点の平均の位置として算出される。
【0079】
この例の場合、第1のレーザースキャンは、反射プリズム300,301を含む領域を対象に行っているので、最低2群の部分点群が得られる。
【0080】
ステップS103において、部分点群を得たら、各部分点群の距離情報を取得する(ステップS104)。ここでは、レーザースキャン装置100の位置(光学原点)から部分点群を構成する各点までの距離の平均値を各部分点群の距離情報として取得する。
【0081】
次に、各部分点群におけるスキャン光の間隔D、スキャン光のビーム断面形状(ビーム断面の形と寸法)を得る(ステップS105)。レーザースキャン装置100からの距離Lとスキャン光の間隔Dの関係、当該距離Lとスキャン光の断面形状の関係は既知であり、予め取得されている。よって、部分点群の中心位置までの距離Lが判れば、当該部分点群の位置におけるスキャン光の間隔Dと、スキャン光のビーム断面形状およびその寸法を得ることができる。ステップS105の処理により、部分点群の位置におけるレーザースキャン点の分布とビーム断面の形状が取得される。
【0082】
図7(A)には、レーザースキャン光を光軸の方向から見た断面形状の例が示されている。
図7(A)には、レーザースキャン光のビームの断面形状が横長の楕円形となる場合が示されている。レーザースキャン光のビームの断面形状としては、円形、縦長の楕円形、斜め方向に長軸を有する楕円形、角が丸い多角形等がある。レーザースキャン光のビームの断面形状は、レーザースキャン光の発光素子、発光部やレーザースキャナ装置の光学系の構造や仕様によって決まる。
【0083】
ビーム径(ビーム幅)は、強度がピークの半分以上である領域の寸法として定義される。よって、ビームの断面形状は、強度がピークの半分以上である領域を光軸の方向から見た場合の形状となる。
図7(B)に
図7(A)のビームに対応する強度分布の例を示す。
【0084】
次に、隣接するスキャン光の間隔、ビーム断面形状およびその寸法、反射プリズム300,301の形状と寸法に基づく、部分点群の反射推定領域の取得を行う(ステップS106)。
【0085】
部分点群の反射推定領域は、そのどこかで反射が行なわれた可能性が高いと推定される領域である。よって、部分点群の反射推定領域の大きさは、実際に反射体の大きさに対応したものとなる。
【0086】
部分点群の反射推定領域は、例えば部分点群を構成する点に係るビーム断面の外縁を内側に納めた(この場合は内接する)閉じた線により囲まれる領域として定義される。この例では、部分点群を構成する点に係るビーム断面が占める領域にフィッティングする四角形の領域が部分点群の反射推定領域として求められる。
【0087】
部分点群の反射推定領域の面積(視点から見た面積)をS1、部分点群を構成する点に係るビームの断面で塗り潰される部分の面積(ビーム断面が占める領域の面積)をS0とした場合、S0<S1<1.2S0の関係が満たされる関係が好ましい。これは、部分点群の反射推定領域は、ビーム断面が占める領域を見積もるための領域であり、その面積の差に乖離があるのは好ましくないからである。
【0088】
図6には、光軸の方向から見た部分点群におけるレーザースキャン光のビーム断面の形状が示されている。なお、中心の黒点は、レーザースキャン光の光軸を示している。
【0089】
図6(A)には、部分点群を構成するレーザースキャン光の断面が横長の楕円形であり、2×5の10点により部分点群が構成されている場合が示されている。この場合、部分点群の反射推定領域は、2×5の楕円形のビーム断面の集まりにフィッティングする四角の領域として求められる。
【0090】
図6(B)には、レーザースキャン光の断面が円形であり、3×3の9点により部分点群が構成されている場合における部分点群の反射推定領域が示されている。この場合、3×3の円形のビーム断面を内側に納める正方形の領域が、部分点群の反射推定領域となる。
図6において、点の間隔は、隣接するレーザースキャン光の光軸の間隔である。
【0091】
横または縦方向の点の数が1点しかない場合、その位置におけるビーム断面の形状を用いて、該当する方向における部分点群の反射推定領域の範囲を決める。部分点群の反射推定領域の範囲を四角でなく、台形や5角以上の多角形や曲線で囲まれた図形とすることもできる。
図6に示すように、部分点群の反射推定領域は、点の間隔とビーム断面の形状に依存する。
【0092】
次に、反射プリズム300,301に対応する部分点群を識別する(ステップS107)。部分点群には、反射プリズム300,301以外からの反射に起因する点群が含まれている可能性がある。ステップS107では、反射プリズム300,301以外からの反射に起因する部分点群を排除し、反射プリズム300,301からの反射に起因する部分点群を選び出す。
【0093】
ステップS107では、ステップS106において求めた部分点群の反射推定領域の大きさと、反射プリズム300,301の大きさとを比較する。ここで、反射プリズム300,301の大きさは、反射面を正面から見た場合の大きさであり、予め調べられ、記憶部208に記憶されている。なお、反射プリズム300と301の大きさが異なる場合、各反射プリズムについて比較を行なう。
【0094】
ここで、部分点群の反射推定領域の横方向の寸法をHn、縦方向の寸法をVnとし、反射プリズム300,301の横方向の寸法をH0、縦方向の寸法をV0とする。この場合、H0との差が閾値以下のHn、V0との差が閾値以下のVnを持った部分点群を反射プリズムに対応する部分点群として選択する。ここで閾値は、予め実験を行い適切な値を設定する。
【0095】
例えば、正面から見た部分点群の反射推定領域の形状が矩形の場合、その横方向の辺の長さがHnとなり、縦方向の辺の長さがVnとなる。また例えば、正面から見た部分点群の反射推定領域の形状が円形の場合、横方向の直径がHnとなり、縦方向の直径がVnとなる。また例えば、正面から見た部分点群の反射推定領域の形状が横長の楕円形の場合、横方向(長軸)の直径がHnとなり、縦方向(短軸)の直径がVnとなる。
【0096】
部分点群の反射推定領域の外縁が凸凹している場合、それにフィッティングする四角形、円形あるいは楕円形を選択し、上述したVnとHn求める。
【0097】
ステップ107における処理、すなわちステップS106において求めた部分点群の反射推定領域の大きさと、反射プリズム300,301の大きさとを比較する処理として以下の方法もある。
【0098】
この方法では、部分点群の距離情報からその距離でのビーム広がり、点ピッチを求め、それらとプリズムサイズから対象プリズムが返してくる理屈上の点数(何点~何点)を見積もる。
【0099】
すなわち、仮に反射プリズムが着目している部分点群の距離にあるとし、この反射プリズムにおける反射点の点数(X0点、Y0点)を予想する。ここで、X0は横方向における点の数の最大値であり、Y0は縦方向における点の数の最大値である。反射プリズムが円形であれば、X0=Y0となる。また、反射プリズムが四角形であれば、X0は横方向の点の数であり、Y0は縦方向の点の数となる。
【0100】
例えば、反射プリズムが直径10cmの円形、スキャン光のビーム断面は円形、対象となる部分点群の距離におけるスキャン光の間隔が5cm、ビーム径(直径)が15cmであるとする。この場合、有効な反射が得られるスキャン光は最大で5×5本と見積られ、反射点の数は、(X0点、Y0点)=(5点×5点)と見積られる。
【0101】
この点数(X0点、Y0点)と当該部分点群の点数(X1点、Y1点)とを比較する。ここで、X1は横方向における点の数の最大値であり、Y1は縦方向における点の数の最大値である。例えば、正面から見た部分点群の形状が四角形であり、点の数が(5点×5点)の場合、X1=5点、Y1=5点となる。
【0102】
ここで、(X0点、Y0点)=(X1点、Y1点)であれば、当該部分点群が反射プリズムからの反射に基づく点群、すなわち当該部分点群を反射プリズムに対応する部分点群として判定する。なお、誤差を勘案して、1点~2点程度の差を許容して(X0点、Y0点)≒(X1点、Y1点)であれば、当該部分点群が反射プリズムからの反射に基づく点群と判定する。
【0103】
(X0点、Y0点)≠(X1点、Y1点)であれば、当該部分点群が反射プリズムからの反射に基づく点群ではない、すなわち当該部分点群が反射プリズムに対応する部分点群でないと判定する。この方法は、点の数を利用して、大きさの比較を行う手法と見ることができる。
【0104】
なお、識別された部分点群の数が反射プリズムの数よりも多い場合、この場合でいうと、識別された部分点群が3つ以上ある場合、レーザースキャン装置100が備えるカメラ110(
図3参照)が撮影した画像に基づく画像判定により、反射プリズム300,301からの反射に起因する部分点群を識別する。
【0105】
ステップS107の後、ステップS108に進む。ステップS108では、ステップS107において、反射プリズムとして識別された部分点群を対象とする2回目のレーザースキャンである詳細レーザースキャン(第2のレーザースキャン)のスキャン条件の設定を行う。
【0106】
ここでは、反射プリズム300,301の位置において、縦横5mm間隔の密度でレーザースキャンが行われるように条件を設定する。スキャン範囲の中心、すなわち反射プリズムがあると推定される位置は、部分点群を構成する各点について、反射光の強度で重み付けを行った重心の位置(加重平均の位置)を推定中心位置として算出する。
【0107】
例えば、対象となる部分点群が2×2の4点で構成されているとする。この場合、レーザースキャン装置100から見た4点の位置を(X1、Y1)、(X2、Y2)、(X3、Y3)、(X4、Y4)、各点の反射光の強度がI1、I2、I3、I4、であるとする。この場合、推定中心位置(X0、Y0)は、下記の加重平均の位置を求める計算式により求められる。
X0=(I1X1+I2X2+I3X3+I4X4)/(I1+I2+I3+I4)
Y0=(I1Y1+I2Y2+I3Y3+I4Y4)/(I1+I2+I3+I4)
【0108】
推定中心位置を求めたら、そこを中心とした縦横5mm間隔の密度のレーザースキャン範囲を設定する。スキャンの範囲は、対象となる部分点群における
図6に関連して説明した四角形の範囲とする。
【0109】
レーザースキャンの間隔は5mmに限定されないが、この間隔を狭くすると、反射プリズムの測位精度が高くなるが、他方でより多くのレーザースキャン点群を取得しなければならず、処理に要する時間や消費電力が増大する。
【0110】
詳細スキャンを用いた反射プリズム300,301の測位は、従来行なわれていた方法と同じである。すなわち、多数を得た反射プリズム300と301のレーザースキャン点群の位置データの重心の位置を求め、それを反射プリズム300,301の位置とする。こうして、レーザースキャン装置100を基準とした反射プリズム300,301の位置が求められる。
【0111】
レーザースキャン装置100を基準とした反射プリズム300,301の位置を求めたら、後方交会法を用いてレーザースキャン装置100の外部標定要素を求める。ここで、反射プリズム300,301の絶対座標系における位置は既知である。よって、上記の後方交会法により、絶対座標系におけるレーザースキャン装置100の外部標定要素を求めることができる。
【0112】
絶対座標系におけるレーザースキャン装置100の外部標定要素を求めることで、第1のレーザースキャンにおいて得たレーザースキャン点群を絶対座標系上で扱うことができる。こうして、絶対座標系上で扱うことができるレーザースキャン装置100周囲のレーザースキャン点群が得られる。
【0113】
(優位性)
レーザースキャンの密度は距離によって異なり、またレーザースキャン光のビーム断面の大きさも距離によって異なる。この点を考慮して詳細スキャンの条件を設定することで、無駄なレーザースキャンを抑制し、またより高い精度で詳細スキャンの設定が可能となる。
【0114】
また、ステップS102において、距離に応じて高輝度反射点の抽出基準となる閾値を可変することで、近距離からの不要な反射点の検出および遠距離における必要な反射点の検出の取りこぼしが抑制される。
【0115】
ステップS107において、部分点群の位置における点の間隔とビームの断面形状を考慮して、反射プリズムに対応する部分点群の識別を行うことで、反射プリズム以外の反射の悪影響を抑制できる。
【0116】
また、ステップS107において、特に遠方で点の密度が疎である場合に、点の間隔ではなく、レーザースキャン光のビームの断面形状に基づき、部分点群の大きさを見積ることで、効率の良い詳細スキャンの設定が可能となる。
【0117】
また、部分点群の見た目の大きさおよび形状と、反射プリズムの大きさおよび形状とを比較して、反射プリズムに対応する部分点群を選択することで、反射プリズム以外の反射に起因する点群を効果的に排除でき、効率よく詳細スキャンの対象を絞り込むことができる。
【0118】
以上述べた技術では、第1のレーザースキャンにより得たレーザースキャン点群の取得を行ない、前記レーザースキャン点群の中から閾値を超える反射輝度の点群を取得し、前記閾値を超える反射輝度の点群の中から、反射が生じた対象物に対応する部分的な点群である部分点群を取得し、この部分点群の測距値に基づき、当該部分点群の位置におけるレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状を取得し、このレーザースキャン光の分布とビーム断面の形状に基づき、反射プリズム300,301からの反射が生じた領域と推定される部分点群の反射推定領域を識別し、識別された部分点群に基づき、反射プリズム300,301に対する第2のレーザースキャンの条件の設定を行なう。この技術によれば、レーザースキャンによる測量用のターゲットの位置の検出を効率よく的確に行える技術が得られる。
【0119】
2.第2の実施形態
以下、レーザースキャン光のビームプロファイルを利用して、複数の反射光に対して重み付けを行い、反射中心の位置(反射プリズムの位置)を予想する例を説明する。例えば、2×2の4点(A,B,C,D)の部分点群が得られたとする。この際、検出された反射光の強さが点A>点B≒C≒Dであったとする。この場合、反射中心は、点Aに寄った位置にあると推定される。
【0120】
以下、上記の推定を定量的に行う一例を説明する。ここでは、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向とする。
図8には、水平方向(X方向)におけるレーザースキャン光の反射光のビームプロファイルの例が示されている。
図8のビームプロファイルは、光軸中心からの距離と光強度との関係を示すビームパターンである。このビームプロファイルは、利用する反射体を対象に事前に距離に応じたものを取得しておく。
【0121】
ここで、
図8のビームプロファイルの縦軸の値に対応させて、各点について反射中心が存在する確率を示す予想範囲を設定する。例えば、X方向とY方向のビームプロファイルが同じ場合、この予想範囲は円形の予想円となる。
【0122】
ここでは、予想範囲が円(予想円)となる場合を説明する。予想円は、点の位置(レーザースキャン光の光軸の位置)を中心とする。予想円の直径は、以下のようにして設定される。まず、着目した点のレーザースキャン装置からの距離を取得し、この距離に対応したビームプロファイル(
図8参照)を取得する。次に、取得したビームプロファイルの縦軸上に反射光の検出値を当てはめ、検出値以上の強度の範囲の幅に対応した長さを予想円の直径として取得する。
【0123】
こうして、検出した反射光の光強度が大きい場合、予想円の直径が小さく設定され、逆に、反射光の光強度が小さい場合、予想円の直系が大きく設定される。すなわち、予想範囲は、反射光の強度に反比例する大きさに設定される。
【0124】
この予想円を部分点群を構成する各点について作成する。
図9には、A,B,C,Dの4点から構成される部分点群の例が示されている。この場合、点Aに近い部分にターゲットとなる反射プリズムがあるとする。また、上記A,B,C,Dのレーザースキャン光のビーム断面の周辺部分は、当該部分点群の位置において隙間なく重なっているとする。
【0125】
この場合、点Aの位置を光軸とするレーザースキャン光は、そのビームプロファイルのピークに近い部分に反射プリズムが存在する。他方において、B,C,Dの点に係るレーザースキャン光は、点Aの場合に比較して強度が落ちたビームプロファイル上の位置に反射プリズムが存在する。
【0126】
よって、点Aの反射光は相対的に高強度で、点B,C,Dの反射光は相対的に低強度となる。そしてそれに対応して、点Aの予想円は小さく、点B,C,Dの予想円は大きく設定される。なお、隣接する予想円は、隙間が生じないように一部が重なるように径が設定される。
【0127】
ここで、4つの予想円が重なる部分を反射プリズムの中心が存在すると予想される位置となる。こうして、A,B,C,Dの4点に係り、検出された反射光の強さが点A>点B≒C≒Dである場合に、反射中心が点Aに寄った位置にあることが定量的に推定される。
【0128】
水平方向と縦方向でビームプロファイルが異なる場合、予想円は例えば楕円形となる。また、予想範囲が円や楕円でない閉じた形状となる場合もあり得る。
【0129】
なお、反射プリズムがレーザースキャン光の光軸と重なる場合、該当する点に係る予想範囲は極小さくなる。この場合、本実施形態の方法と反射強度が最強の点を選択する方法は、似た様な結果となる。よって、本実施形態は、レーザースキャン光の光軸が反射プリズムと重なる可能性が高いスキャン密度が密となる近距離よりも、スキャン密度が疎になる遠方の領域において有効となる。
【0130】
予想範囲(この場合は予想円)の集合は、部分点群の反射推定領域の一例と考えることができる。この場合、部分点群の反射推定領域が各点に係る複数の予想範囲により構成され、予想範囲の重なりの状態から反射中心の位置が求められる。
【0131】
3.他の実施形態
ステップ107における反射プリズム300,301に対応する部分点群を識別する処理として形状の比較による方法も可能である。例えば、形状を特徴づけるパラメータとして縦横比を用いる。この場合、反射プリズム300,301の縦横比と、ステップS103において得られた部分点群の反射推定領域の縦横比を比較する。そして、反射プリズム300,301の縦横比と同様な反射推定領域の縦横比を有した部分点群を反射プリズム300,301に対応する部分点群と判定する。
【0132】
例えば、部分点群の反射推定領域の横方向の寸法をHn、縦方向の寸法をVnとし、反射プリズム300,301の横方向の寸法をH0、縦方向の寸法をV0とする。この場合、H0/V0に近い値のHn/Vnの部分点群を反射プリズムに対応する部分点群として選択する。
【0133】
反射プリズムや部分点群の形状を特徴づけるパラメータとして、フィッティングする図形のアスペクト比を用いる形態も可能である。また、反射プリズムや部分点群の形状を四角、丸、楕円といった形状に類型化し、同じ類型のもの選択する形態も可能である。また、大きさの比較の一例として面積の比較による方法も可能である。この場合、例えば点の数の総数を数えることで面積が評価される。また、大きさの比較の一例としてフィッティングする図形の周囲長を比較する形態も可能である。また、大きさの比較と形状の比較を組み合わせて反射プリズムに対応する部分点群を識別する方法も可能である。
【符号の説明】
【0134】
100…レーザースキャン装置、111…三脚、112…ベース部、113…水平回転部、114…鉛直回転部、115…レーザースキャン光の放射と受光を行う光学部、116…カメラの光学系、300…反射プリズム、301…反射プリズム。