(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039144
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ユニット起動方法、復水器真空度制御装置、およびユニット起動時復水器真空度制御方法
(51)【国際特許分類】
F01K 13/02 20060101AFI20230313BHJP
F01K 9/00 20060101ALI20230313BHJP
F01K 13/00 20060101ALI20230313BHJP
F01D 19/00 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
F01K13/02 B
F01K9/00 B
F01K13/00 D
F01D19/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146165
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】山根 雄介
(72)【発明者】
【氏名】白石 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】宮 啓之
【テーマコード(参考)】
3G071
【Fターム(参考)】
3G071AA01
3G071AB01
3G071CA01
3G071FA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発電ユニットの起動時間を短縮する。
【解決手段】蒸気発生装置、蒸気タービン、その排気蒸気を冷却する復水器、および複数の真空ポンプを具備する発電ユニットのユニット起動方法は、発電ユニットの起動準備を行うステップと、蒸気タービンに通気するために復水器、蒸気発生装置を含む水質改善対象設備内の水質を改善する水質改善プロセスにおけるそれぞれのプロセスを段階的に進行するステップと蒸気タービンに通気するステップとを有する。水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップに関して、その前段階の完了条件として、復水器真空度が第1真空度に到達しているという条件を有し、蒸気タービンに通気するための水質改善プロセスの完了条件として、復水器真空度が蒸気タービンに通気可能な第2真空度に到達しているという条件を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生装置、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動される蒸気タービン、前記蒸気タービンの排気蒸気を冷却して凝縮させ復水とする復水器、および前記復水器内の不凝縮ガスを排出する複数の真空ポンプとを具備する発電ユニットのユニット起動方法であって、
前記発電ユニットの起動準備を行うステップと、
前記蒸気タービンに通気するために前記復水器、前記蒸気発生装置を含む水質改善対象設備内の水質を改善する水質改善プロセスにおけるそれぞれのプロセスを段階的に進行するステップと、
前記蒸気タービンに通気するステップと、
を有し、
前記水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップに関して、その前段階の完了条件として、復水器真空度が第1真空度に到達しているという条件を有し、
前記蒸気タービンに通気するための前記水質改善プロセスの完了条件として、前記復水器真空度が前記蒸気タービンに通気可能な第2真空度に到達しているという条件を有する、
ことを特徴とするユニット起動方法。
【請求項2】
蒸気発生装置、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動される蒸気タービン、前記蒸気タービンの排気蒸気を冷却して凝縮させ復水とする復水器、および前記復水器内の不凝縮ガスを排出する複数の真空ポンプとを具備する発電ユニットのユニット起動プロセスにおいて、前記復水器の復水器真空度を制御する復水器真空度制御装置であって、
前記復水器真空度が、前記蒸気タービンへのタービン通気前の水質改善プロセスの開始の許可条件となる第1真空度に到達したか否かを判定する第1真空度判定部と、
前記復水器真空度が、前記第1真空度より高い真空度であり前記タービン通気の許可条件となる第2真空度に到達したか否かを判定する第2真空度判定部と、
前記第1真空度および前記第2真空度の値を記憶する真空度設定値記憶部と、
外部へ情報を発信する出力部と、
前記第1真空度判定部が、前記復水器真空度が前記第1真空度に到達したと判定した場合に、水質改善プロセス開始許可信号を出力するよう、前記出力部に指令を発する進行制御部と、
を備えることを特徴とする復水器真空度制御装置。
【請求項3】
前記第2真空度判定部が前記第2真空度に到達したと判定し、かつ、前記タービン通気前の水質改善プロセスが終了していない状態において、前記復水器真空度を所定の幅内にあるように前記真空ポンプの運転台数を選択するタービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の復水器真空度制御装置。
【請求項4】
前記タービン通気の後に前記復水器真空度が過剰に上昇しないように前記真空ポンプの前記運転台数を選択するタービン通気後真空ポンプ運転台数選択部をさらに備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の復水器真空度制御装置。
【請求項5】
蒸気発生装置、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動される蒸気タービン、前記蒸気タービンの排気蒸気を冷却して凝縮させ復水とする復水器、および前記復水器内の不凝縮ガスを排出する複数の真空ポンプとを具備する発電ユニットのユニット起動方法において、前記復水器の復水器真空度を制御するユニット起動時復水器真空度制御方法であって、
前記復水器真空度の上昇を開始するステップと、
前記復水器真空度が前記蒸気タービンへのタービン通気前の水質改善プロセスの開始の許可条件となる第1真空度に到達したか否かを判定する第1真空度判定ステップと、
前記第1真空度判定ステップで前記第1真空度に到達したと判定した場合に前記タービン通気前の水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップの開始を許可する開始許可ステップと、
前記復水器真空度が、前記第1真空度より高い真空度であり前記タービン通気の許可条件となる第2真空度に到達したか否かを判定する第2真空度判定ステップと、
前記第2真空度判定ステップで前記第2真空度に到達したと判定した場合に前記タービン通気の許可を出力するタービン通気許可ステップと、
を有することを特徴とするユニット起動時復水器真空度制御方法。
【請求項6】
前記タービン通気許可ステップの後に、タービン通気後真空ポンプ運転台数選択ステップをさらに有し、
前記タービン通気後真空ポンプ運転台数選択ステップは、
上限真空度到達判定部が、前記復水器真空度が前記第2真空度より高い真空度である上限真空度に到達したか否かを判定し前記復水器真空度が前記上限真空度に到達したと判定すると第1のON信号を出力する上限判定ステップと、
前記タービン通気許可ステップによりタービン通気後真空ポンプ停止タイマーに動作開始の指示を出力し、かつ、前記タービン通気後真空ポンプ停止タイマーからの所定の遅延時間の後の動作完了の信号を第2のON信号として受け入れるタイマー動作ステップと、
を有し、
進行制御部が、前記第1のON信号と前記第2のON信号とのいずれかを受けて運転中の前記真空ポンプの停止を指令する、
ことを特徴とする請求項5に記載のユニット起動時復水器真空度制御方法。
【請求項7】
前記第2真空度判定ステップは、
前記復水器真空度が、前記第1真空度を経由し高側設定真空度に到達すると、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部が、前記真空ポンプの運転台数を減少させる台数減少ステップと、
前記台数減少ステップの結果、前記復水器真空度が低下して低側設定真空度に到達すると、前記タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部が、前記真空ポンプの前記運転台数を増加させる台数増加ステップと、
を有し、前記タービン通気許可ステップが開始されるまで、前記台数減少ステップと前記台数増加ステップとを繰り返す、
ことを特徴とする請求項5に記載のユニット起動時復水器真空度制御方法。
【請求項8】
前記第1真空度判定ステップは、
前記第1真空度より真空度の高い第1a真空度に到達した場合に前記第1のON信号を出力する真空度到達判定ステップと、
プロセス開始許可判定用タイマーが、前記第1真空度に到達した時点で動作を開始し動作終了とともに前記第2のON信号を出力するタイマー判定ステップと、
を有し、
進行制御部が、前記第1のON信号と前記第2のON信号とのいずれかを受けて水質改善プロセス開始許可信号を出力する、
ことを特徴とする請求項5に記載のユニット起動時復水器真空度制御方法。
【請求項9】
前記プロセス開始許可判定用タイマーの設定値は、前記発電ユニット内の代表部位の温度および圧力に依存する値であることを特徴とする請求項8に記載のユニット起動時復水器真空度制御方法。
【請求項10】
前記プロセス開始許可判定用タイマーの設定値は、前記復水器において前記排気蒸気を冷却する冷却水の温度に依存する値であることを特徴とする請求項8に記載のユニット起動時復水器真空度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ユニット起動方法、復水器真空度制御装置、およびユニット起動時復水器真空度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に蒸気タービン、発電機、ボイラ等を備えた火力発電プラント(発電ユニット)は、復水器を真空ポ ンプにて真空状態にし、タービンの排圧をできるだけ下げ最大の熱エネルギを蒸気タービンに与えることで、高効率な発電プラントとして運転される。
【0003】
図16は、発電ユニットの従来の起動方法の例を示すフロー図である。一般的な発電ユニットでは
図16に示すように、ユニット起動準備からタービン起動・負荷運転を行うまで一連のプロセスで制御が行われている。すなわち、ユニット起動準備、復水・給水クリーンアップ、ボイラコールドクリーンアップ、ボイラホットクリーンアップ、ボイラ点火、ボイラホットクリーンアップ、ボイラ昇温・昇圧、タービン起動、および負荷運転の各プロセスである。各プロセスについては、それぞれについて完了条件A、B、C、D、E、FおよびGが設けられ、それぞれの完了条件が成立後に次のプロセスに移行する。
【0004】
一般的に、発電ユニットにおける真空上昇は、タービン通気によるタービン起動、電力系統への併入による並列運転より前のユニット起動準備の過程で、あるいは、復水・給水の水質改善プロセスである復水・給水クリーンアップの過程で行われる。
【0005】
すなわち、
図16の実線部分に示すように、ユニット起動準備の完了条件Aに復水器真空上昇完了が含まれる場合がある。あるいは、
図16の破線部分に示すように、復水・給水クリーンアップの完了条件Bに復水器真空上昇完了が含まれる場合がある。あるいは、図示しないが、復水・給水クリーンアップにおける複数のステップのうちの一つのステップの完了条件に復水器真空上昇完了が含まれる場合がある。いずれの場合にも、用いられる真空上昇完了条件は、タービンの運転に必要な真空度以上という条件であることが一般的である。
【0006】
復水器の真空上昇がユニット起動準備あるいは復水・給水クリーンアップのいずれで行われる場合でも、大気圧から真空上昇を開始し、タービン起動に必要な真空度となったら真空上昇を完了とし、次のプロセスに移行する、という順序でプロセスが進行する。しかしながら、設備の経年劣化の状態、あるいは蒸気が存在していない状態では、真空上昇の過程で配管、弁等の接続部等での外部からの空気漏洩(インリーク)により真空上昇完了条件に到達するまでの時間が大幅に増加しタービン起動が大幅に遅れる、あるいは、タービン起動に必要な真空度まで真空上昇できずに最終的にタービン起動に至らない場合が生じる等の可能性がある。
【0007】
また真空とする範囲は、タービン側だけでなく、蒸気配管で接続されるボイラ側にも及ぶため、非常に広範囲な系統を真空とすること必要があり、インリークが発生している箇所を特定してインリークを低減することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、タービン起動に必要な真空度までの真空上昇が発電ユニットの起動方法の中の序盤に設定されているため、真空上昇の遅れは発電プラントの起動スケジュール全体に影響を与えることとなり、タービン起動、並列等にも遅れが発生する。この結果、タービンの起動までの間に不要に多数のポンプや機器を運転させている待ち時間が発生し、動力分の電力消費が増加し、また、補助蒸気を発生させる補助ボイラ等に使用する燃料や水、薬品等の消費量も増大する。
【0010】
近年の発電プラントにおいては、タービン発電所の高効率化に加えて、発電所内での所内動力の低減も重要視されており、起動時間の短縮が求められている。
【0011】
さらに、発電ユニットは、電力系統を介して他の複数の発電ユニットと電気的に繋がっており、一つの発電ユニットの運転が予定通りに行なわれないと、系統の電力需要と電力供給のバランスが崩れ、電力系統の運用に支障をきたすことになる。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、発電ユニットの起動時間を短縮することができるユニット起動方法、復水器真空度制御装置、およびユニット起動時復水器真空度制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態によれば、ユニット起動方法は、蒸気発生装置、前記蒸気発生装置で発生した蒸気により駆動される蒸気タービン、前記蒸気タービンの排気蒸気を冷却して凝縮させ復水とする復水器、および前記復水器内の不凝縮ガスを排出する複数の真空ポンプとを具備する発電ユニットのユニット起動方法であって、前記発電ユニットの起動準備を行うステップと、前記蒸気タービンに通気するために前記復水器、前記蒸気発生装置を含む水質改善対象設備内の水質を改善する水質改善プロセスにおけるそれぞれのプロセスを段階的に進行するステップと、前記蒸気タービンに通気するステップと、を有し、前記水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップに関して、その前段階の完了条件として、復水器真空度が第1真空度に到達しているという条件を有し、前記蒸気タービンに通気するための前記水質改善プロセスの完了条件として、前記復水器真空度が前記蒸気タービンに通気可能な第2真空度に到達しているという条件を有する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係るユニット起動方法およびユニット起動時復水器真空度制御方法を適用する発電ユニットの例を示す系統図である。
【
図2】第1の実施形態に係る復水器真空度制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係るユニット起動方法の手順を示すフロー図である。
【
図4】第1の実施形態に係るユニット起動方法に基づく復水器真空度の変化と従来の方法に基づく復水器真空度の変化との比較を示すグラフである。
【
図5】第1の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法の手順を示すフロー図である。
【
図6】第1の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づくタービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択制御による復水器真空度の変化を示すグラフである。
【
図7】第1の実施形態に係る復水器真空度制御装置のタービン通気後真空ポンプ運転台数選択部の構成を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施形態に係る復水器真空度制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】第2の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づく水質改善プロセス開始許可の条件を説明するグラフである。
【
図10】第3の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法を適用する発電ユニットの例を示す蒸気タービンまわりの部分系統図である。
【
図11】第3の実施形態に係る復水器真空度制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】第3の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づく水質改善プロセス開始許可の条件における遅れ時間の第1補正値を与える遅れ時間補正値グラフである。
【
図13】第4の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法を適用する発電ユニットの例を示す蒸気タービンまわりの部分系統図である。
【
図14】第4の実施形態に係る復水器真空度制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】第4の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づく水質改善プロセス開始許可の条件における遅れ時間の第2補正値を与える遅れ時間補正値グラフである。
【
図16】発電ユニットの従来の起動方法の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るユニット起動方法、復水器真空度制御装置、およびユニット起動時復水器真空度制御方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るユニット起動方法およびユニット起動時復水器真空度制御方法を適用する発電ユニットの例を示す系統図である。
【0017】
発電ユニット1は、蒸気タービン10、発電機17、復水器21、復水系統30、給水系統40、蒸気タービン10に蒸気を供給する蒸気発生装置としてのボイラ50、および復水器真空度制御装置100を有する。
【0018】
蒸気タービン10は、高圧タービン11、中圧タービン12、および2つの低圧タービン13を有する。なお、低圧タービン13は、たとえば1つであってもよい。また、発電機17は、蒸気タービン10と同一の軸上にあって蒸気タービン10によって回転駆動され回転エネルギを電気エネルギに変換する。なお、このようなタンデムコンパウンド方式に限定されない。すなわち、たとえば、高圧タービン11と中圧タービン12が同一軸、2つの低圧タービン13が別軸で、それぞれに発電機が設けられているクロスコンパウンド方式の場合であってもよい。
【0019】
復水器21は、外部の冷却水管25に接続する複数の伝熱管22を内蔵し、低圧タービン13からの排気蒸気を冷却し凝縮させ凝縮水である復水を生成する。冷却水管25には、復水器21の上流部分に、冷却水を駆動する冷却水ポンプ25aが設けられている。
【0020】
復水器21内で残留する不凝縮ガスを外部に排出するために、復水器21内に開放された排出管24が設けられ、また、排出管24の復水器21の外側の部分には複数の真空ポンプ23が設けられている。以下、
図1に示すように真空ポンプ23が2台設けられている場合を例に説明するが、3台以上であってもよい。
【0021】
復水器21には、復水器21内の圧力を測定する復水器圧力計21aが設けられている。復水器真空度制御装置100は、復水器圧力計21aからの復水器圧力信号を入力とし、真空ポンプ23の図示しない駆動部への運転指令信号を出力する。
【0022】
復水系統30は、復水器21に接続された復水管31、復水管31に設けられた復水ポンプ32、復水ポンプ32の下流側に設けられたろ過脱塩器33、低圧給水加熱器35、および脱気器36を有する。また、復水系統30は、ろ過脱塩器33によって異物、イオン等を除去された復水を、ろ過脱塩器33の出口側から復水器21に再循環させる復水再循環配管34を有する。復水再循環配管34には、復水再循環モードを開始するための復水再循環弁34aが設けられている。
【0023】
脱気器36は、復水と蒸気を接触させて加熱脱気し、脱気した復水を一次貯留する。加熱ライン36hから受け入れる加熱の蒸気源としては、図示しないが、たとえば低圧タービン13あるいは中圧タービン12等からの抽気が用いられる。
【0024】
復水系統30は、さらに、脱気器36により加熱脱気された復水を、脱気器36の出口側から復水器21に再循環させる低圧クリーンアップ配管37を有する。低圧クリーンアップ配管37には低圧クリーンアップモードを開始するための低圧クリーンアップ弁37aが設けられている。低圧給水加熱器35の蒸気源としては、図示しないが、たとえば低圧タービン13あるいは中圧タービン12等からの抽気が用いられる。
【0025】
給水系統40は、給水管41、給水ポンプ42、および高圧給水加熱器43を有する。給水管41は、給水ポンプ42とボイラ50を接続する。高圧給水加熱器43の蒸気源としては、図示しないが、たとえば高圧タービン11からの抽気等が用いられる。
【0026】
給水系統40は、さらに、高圧給水加熱器43の出口側から復水器21に給水を再循環させる給水ポンプミニマムフロー配管44を有する。給水ポンプミニマムフロー配管44には高圧クリーンアップモードを開始するための給水ポンプミニマムフロー弁44aが設けられている。
【0027】
ボイラ50は、節炭器51、蒸発器52、気水分離器53、ドレンタンク54、過熱器57、および再熱器58を有する。なお、
図1においては、節炭器51、蒸発器52、過熱器57、および再熱器58は、便宜上別々の熱交換器のように図示しているが、それぞれの伝熱管の外側を流れる加熱側の流体である燃焼ガスは、同一の炉内を流れるのが一般的である。
図1では、貫流ボイラの場合を示しているが、例えば循環ボイラの場合でも、後述する水質改善プロセスの考え方は共通である。また、
図1では、ボイラ50の起動バイパス系統として気水分離器53およびドレンタンク54を有する例を示したが、フラッシュタンクを有する場合等、クリーンアップ時の構成を含めて他の構成であってもよい。
【0028】
ボイラ50は、さらに、ドレンタンク54からドレンを復水器21に戻すためのドレン戻り管56と、ドレンを給水管41に戻すためのボイラ循環配管55を有する。ドレン戻り管56には、ドレン戻り弁56aが設けられている。また、ボイラ循環配管55には、ボイラ循環ポンプ55aおよびボイラ循環弁55bが設けられている。
【0029】
次にボイラ50と蒸気タービン10との間の蒸気系統として、主蒸気管14、タービンバイパス管15、および再熱蒸気管16が設けられている。主蒸気管14は、過熱器57からの過熱蒸気を高圧タービン11に移送する。主蒸気管14の蒸気タービン10の入り口側には主蒸気止め弁14aおよび蒸気加減弁14bが設けられている。タービンバイパス管15は、主蒸気管14から分岐して復水器21に主蒸気を導く。タービンバイパス管15にはタービンバイパス弁15aが設けられている。再熱蒸気管16は、高圧タービン11の出口から再熱器58まで、および再熱器58から中圧タービン12までを接続する。再熱蒸気管16の中圧タービン12の入り口側には再熱蒸気弁16aが設けられている。
【0030】
発電ユニット1の出力運転時の流体すなわち主蒸気、復水、および給水等の流れおよびその流路は、次のとおりである。
【0031】
まず、過熱器57で生じた過熱蒸気は、主蒸気管14を流れ、主蒸気管14に設けられた主蒸気止め弁14aおよび蒸気流量を制御する蒸気加減弁14bを経て、高圧タービン11に流入する。高圧タービン11で仕事をして高圧タービン11から流出した蒸気は、再熱器58に送られる。再熱器58で再度加熱された再熱蒸気は、再熱蒸気管16に設けられた再熱止め弁16aを経て、中圧タービン12に流入する。中圧タービン12で仕事をして中圧タービン12から流出した蒸気は、低圧タービン13に流入する。
【0032】
低圧タービン13で仕事をした排気蒸気は、復水器21で冷却され凝縮して復水となる。また、不凝縮ガスは、真空ポンプ23によって排出管24を通じて復水器21内から排出される。復水は、所定の真空度を維持する復水器21内で脱気される。復水はさらに、復水系統30の復水ポンプ32により駆動され、ろ過脱塩器33、低圧給水加熱器35、および脱気器36を通過する。ろ過脱塩器33で、復水中の異物、イオン等が除去される。さらに、脱気器36においては、復水は、蒸気と接触して加熱脱気され、一次貯留される。
【0033】
脱気器36に一時貯留された復水は、給水ポンプ42により駆動され、給水系統40の給水管41を流れ、高圧給水加熱器43を経て、ボイラ50に給水として供給される。
【0034】
ボイラ50に送られた給水は、節炭器51でまず加熱され、蒸発器52にて蒸気となる。蒸発器52を出た蒸気は、気水分離器53を経て、過熱器57に流入する。過熱器57に流入した蒸気は、さらに過熱され、所定の過熱度を有する過熱蒸気となって再び高圧タービン11に送られる。
【0035】
なお、起動過程において、蒸発器52に流入した給水が完全に蒸気とならない段階では、蒸発器52を出た二相流は気水分離器53において蒸気とドレンとに分離される。分離された、蒸気は過熱器57に流入し、ドレンはドレンタンク54に流入する。ドレンタンク54に流入したドレンは、ドレン戻り管56を経て、復水器21に回収される。
【0036】
また、出力運転中に負荷遮断等が発生した場合には、タービンバイパス管15に設けられたタービンバイパス弁15aが急開して、過熱蒸気は、高圧タービン11、中圧タービン12および低圧タービン13をバイパスして、タービンバイパス管15を通じて復水器21に直接流入する。
【0037】
以上が、発電ユニット1の出力運転時のタービン作動流体の流れである。発電ユニット1においては、蒸気タービン10で仕事をする蒸気の最高温度/圧力と蒸気タービン10で仕事をした蒸気の最低温度圧力の差を大きくして熱効率を高くするために、復水器21内の圧力を極力、負圧に、即ち、真空にするのが一般的である。蒸気タービン10に通気しての蒸気タービン10の起動後は、気体であるタービン排気蒸気を凝縮して水とすることにより、復水器21内を高い真空度に維持することができる。一方、蒸気タービン10の起動前には、凝縮すべきタービン排気蒸気がないため、真空ポンプ23を用いて復水器21内を真空とし、かつ、復水器21に接続される系統も真空とする。
【0038】
停止状態であった発電ユニット1を起動する場合は、上述の作動流体の各流路を順次クリーンアップして、水質を確保しながら、作動流体の流路範囲を拡大していく手順が必要となる。このような水質確保のための手順を、以下、水質改善プロセスと呼び、それぞれの状態を、各クリーンアップモードと呼ぶものとする。また、クリーンアップを実施する復水器21、復水系統30、給水系統40、ボイラ50を含むボイラ50への給水の水質に関わる範囲の設備を、水質改善対象設備70と呼ぶこととする。水質改善プロセスは、一部、後述するタービン通気以降にも行われる場合があるが、以下では、タービン通気までに行われるものをいうものとする。
【0039】
水質改善プロセスによるクリーンアップモードは、低圧クリーンアップモードおよび高圧クリーンアップモードを有する復水・給水クリーンアップモード、ボイラコールドクリーンアップモード、およびボイラホットクリーンアップモードに大別され、この順に水質改善対象設備70の水質改善プロセスが進められる。なお、
図1では、各クリーンアップモード間の切り替えに必要な止め弁の図示を省略している。
【0040】
なお、水質改善プロセスにおいては、復水器21内の真空度(復水器真空度)として、所定の真空度が確保されている。ここで、復水器真空度とは、復水器21内の圧力が、大気圧からどの程度低いかを示す指標である。以下では、説明の便宜上、復水器真空度に代えて復水器21内の圧力(復水器圧力)を用いる場合がある。なお、所定の真空度については、
図2以降を参照する際に説明する。
【0041】
まず、復水・給水クリーンアップモードのうちの低圧クリーンアップモードを説明する。低圧クリーンアップモードは、2つのステップからなる。第1のステップは、復水再循環モードである。復水再循環モードは、復水が復水ポンプ32により駆動され、復水器21から復水管31、ろ過脱塩器33、復水再循環配管34を経て、再び復水器21に戻る流路が形成される。この再循環により、復水は、ろ過脱塩器33により、ろ過脱塩される。この際、復水再循環弁34aが調節弁であれば、復水の流量は復水再循環弁34aにより調節される。
【0042】
低圧クリーンアップモードの第2のステップは、脱気器再循環モードである。脱気器再循環モードでは、復水が、復水ポンプ32により駆動され、復水器21から復水管31、ろ過脱塩器33、低圧給水加熱器35、脱気器36、低圧クリーンアップ配管37を経て、再び復水器21に戻る流路が形成される。この再循環により、復水は、脱気器36により、加熱脱気される。なお、この時点においての脱気器36ン供給されるべき加熱蒸気は、蒸気タービン10からの抽気が利用できないため、たとえば所内ボイラからの補助蒸気が用いられる。この際、低圧クリーンアップ弁37aが調節弁であれば、復水の流量は低圧クリーンアップ弁37aにより調節される。
【0043】
次に、復水・給水クリーンアップモードのうちの高圧クリーンアップモードにおいては、復水ポンプ32に加えて給水ポンプ42も運転される。復水は、復水ポンプ32により駆動され、復水器21から復水管31、ろ過脱塩器33、低圧給水加熱器35、脱気器36に移送される。さらに、脱気器36内に一時貯留された復水は、給水ポンプ42により駆動され、給水として、高圧給水加熱器43、および給水ポンプミニマムフロー配管44を経て、復水器21に戻る。
【0044】
次に、ボイラコールドクリーンアップモードにおいては、節炭器51および蒸発器52に給水し、給水を気水分離器53、ドレンタンク54およびドレン戻り管56を経由して復水器に戻す再循環流路と、給水の一部を、ボイラ循環ポンプ55aによりボイラ循環配管55で給水管41に戻す再循環流路とによるモードである。前者の流量はドレン戻り弁56aにより、また後者の流量はボイラ循環弁55bにより調節することができる。
【0045】
次に、ボイラホットクリーンアップモードにおいては、ボイラ50において燃料の燃焼が開始されて、節炭器51および蒸発器52の各伝熱管内の流体を加熱しながらクリーンアップが行われるモードである。また、この段階で、蒸発器52において蒸気が発生することから、必要に応じて蒸発器52から過熱器57に蒸気を供給し、過熱器57をクリーンアップし、蒸気を、過熱器57からタービンバイパス管15を経由して復水器21に戻す再循環流路を形成することができる。
【0046】
図2は、第1の実施形態に係る復水器真空度制御装置100の構成を示すブロック図である。
【0047】
復水器真空度制御装置100は、入力部110、演算部120、記憶部130、タービン通気後真空ポンプ停止タイマー141、進行制御部150、および出力部160を有する。復水器真空度制御装置100は、たとえば計算機システムである。あるいは、個々の機能に対応する個別の装置の集合であってもよい。また、入力部110および出力部160は、たとえばマンマシーンインターフェイスなどの双方向コミュニケーション装置であってもよい。
【0048】
入力部110は、復水器圧力計21aからの復水器圧力信号、演算部120が判定を行うための基準値、設定値、あるいは発電ユニット1の状態に関する情報等を、外部入力として受け入れる。
【0049】
演算部120は、第1真空度判定部121、第2真空度判定部122、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123、およびタービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124を有する。
【0050】
第1真空度判定部121は、復水器真空度が、水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップを開始する条件として、復水器真空度が第1真空度に到達したか否かを判定する。前者の水質改善プロセスの最初のステップとは、具体的には、低圧クリーンアップモードの第1のステップである復水再循環モードの運転である。後者の水質改善プロセスの初期のステップとは、具体的には、たとえば、低圧クリーンアップモードの第2のステップである脱気器再循環モードの運転、あるいは高圧クリーンアップモードの運転である。
【0051】
第2真空度判定部122は、復水器真空度が、タービン通気を開始する条件として、復水器真空度が第2真空度に到達したか否かを判定する。ここで、タービン通気とは、蒸気タービン10に作動蒸気を導入することをいう。
【0052】
第2真空度は、上述のようにタービン通気を開始可能な真空度である。従来は、第2真空度のレベルは、水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップを開始する条件としても用いられてきた。本実施形態においては、水質改善プロセスを開始する条件として用いる第1真空度は、第2真空度に比べて低い真空度である。すなわち、第1真空度に対応する復水器21の器内圧力は、第2真空度に対応する器内圧力より高い値である。
【0053】
復水器21の真空度の確保は、蒸気タービン10の熱効率を向上させる以外にも、復水あるいは給水に含まれる溶存酸素を脱気し、配管等の発錆の防止の上でも必要である。発電ユニットの起動プロセスにおいては、復水・給水クリーンアップを行う段階において、第1真空度は、蒸気タービン10の通気に必要な第2真空度までのレベルは必要ないが、復水系統30内の復水および給水系統40内の給水等の流体の脱気に必要なレベルの真空度である必要がある。
【0054】
ここで、第1真空度はたとえば、真空度65kPa程度~70kPa程度、すなわち大気圧より65kPa程度~70kPa程度低い圧力である。また、第2真空度はたとえば真空度85kPa程度~90kPa程度、すなわち大気圧より85kPa程度~90kPa程度低い圧力である。なお、いずれの値も例示であり、これに限定されない。
【0055】
タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123は、所定の状態となった場合に、真空ポンプ23の運転台数を選択制御する。すなわち、復水器真空度が第1真空度に到達後、水質改善プロセスを開始し、復水器真空度のさらなる上昇と水質改善プロセスの実行が並行して進められる。上述の所定の状態となった場合とは、復水器真空度の方は第2真空度に到達したが、水質改善プロセスの方は終了しないという状態となった場合である。このような場合には、詳細は後述するが、第2真空度の近傍の真空度を維持するように、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123によって、真空ポンプ23の運転台数の増減が行われる。
【0056】
タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124は、復水器真空度が第1真空度に到達し、水質改善プロセスも終了したという条件で、タービン通気が行われた後の、真空ポンプ23の運転台数を選択制御する。詳細は後述するが、過真空となることを防止するために、タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124によって、真空ポンプ23は最終的に全台停止となる。
【0057】
記憶部130は、真空度設定値記憶部131、およびタイマー設定値記憶部132を有する。
【0058】
真空度設定値記憶部131は、入力部110が受け入れた第1真空度および第2真空度の設定値を記憶する。
【0059】
タイマー設定値記憶部132は、タービン通気後真空ポンプ停止タイマー141の設定値を入力部110が受け入れた後、その値を記憶する。
【0060】
タービン通気後真空ポンプ停止タイマー141は、タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124からの動作指示により時間をカウントし、タイマー設定値記憶部132に記憶された所定の時間に到達するとタービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124にON信号を出力する。
【0061】
進行制御部150は、起動プロセスの進行状態に関する情報の整理、およびこれに基づく復水器真空度制御装置100の進行に関する決定を行うなど、復水器真空度制御装置100によるユニット起動時復水器真空度制御方法のステップの進行を司る。なお、以下に述べるユニット起動時復水器真空度制御方法のステップの進行への進行制御部150の係わりの詳細については、その都度の記載はせずに省略する場合がある。
【0062】
出力部160は、復水器真空度制御装置100によるユニット起動時復水器真空度制御のプロセスの進行状態を含む運転上必要な情報を表示するとともに、これらの情報を、発電ユニット1の制御装置(図示せず)あるいは中央監視制御盤(図示せず)に出力する。
【0063】
図3は、第1の実施形態に係るユニット起動方法の手順を示すフロー図である。従来は、完了条件Aでは、タービン通気可能な真空度に到達しているという項目が含まれていた。本実施形態では、従来のタービン通気可能な真空度を第2真空度とし、これとは別に、第2真空度より真空度の低い第1真空度を設けた。本実施形態におけるユニット起動方法においては、水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップにおいては、第1真空度に到達していることを条件とし、タービン通気前においては、第2真空度に到達していることを条件としている。
【0064】
図4は、第1の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づく復水器真空度の変化と従来の方法に基づく復水器真空度の変化との比較を示すグラフである。横軸は時間軸である。また、縦軸は復水器内の圧力(bar(a))である。破線で示す大気圧からの差分が真空度を表わす。第1圧力P1および第2圧力P2は、それぞれ、第1真空度および第2真空度の復水器真空度に対応する復水器圧力である。
【0065】
図4では、ユニット起動準備において真空上昇し、復水・給水クリーンアップの開始時刻T3までに所定の真空度に到達する場合を示している。実線で示す曲線は、本実施形態に係るユニット起動方法による復水器真空度の変化を示し、上記所定の真空度は、第1真空度(第1圧力)である。2点鎖線で示す曲線は、従来のユニット起動方法による復水器真空度の変化を示し、上記所定の真空度は、タービン通気可能な真空度すなわち本実施形態における第2真空度(第2圧力)に相当する真空度である。
【0066】
図4に示すように、真空上昇を開始して、復水器真空度が第2真空度まで上昇(復水器圧力P2まで低下)するまでの所要時間をΔT1とする。従来のユニット起動方法では、復水・給水クリーンアップモードの最初あるいは初期に、復水器真空度が第2真空度まで上昇している必要があった。この時点を時刻T3とすると、従来のユニット起動方法で(T3-ΔT1)の時点すなわち時刻T1には真空上昇を開始する必要があった。
【0067】
一方、真空上昇を開始して、復水器真空度が第2真空度まで上昇(復水器圧力P2まで低下)するまでの所要時間をΔT2とする。本実施形態に係るユニット起動方法においては、復水・給水クリーンアップモードの最初あるいは初期には、復水器真空度は第1真空度まで上昇(復水器圧力P1まで低下)すればよい。この時点は時刻T3であるので、本実施形態に係るユニット起動方法においては、(T3-ΔT2)の時点すなわち時刻T2に真空上昇を開始すればよい。
【0068】
復水器真空度を、第1真空度から第2真空度まで上昇(復水器圧力P1からP2まで低下)するまでの所要時間をΔT3とする。すなわち、ΔT1=ΔT2+ΔT3である。また、第1真空度に到達した時点から、水質改善プロセスを完了するまでの所要時間をΔTcとする。
図4では、ΔTcがΔT3より長い場合を例にとって示しているが、逆に、ΔT3がΔTcより長い場合もある。
【0069】
従来のユニット起動方法においては、真空上昇を介してしてからタービン通気可能となるまでの時間は、ΔTcがΔT3より長い場合は(ΔT1+ΔTc)、ΔT3がΔTcより長い場合は(ΔT1+ΔT3)である。一方、本実施形態に係るユニット起動方法においては、真空上昇を開始してからタービン通気が行われるまでの時間は、ΔTcがΔT3より長い場合は(ΔT2+ΔTc)、ΔT3がΔTcより長い場合は(ΔT2+ΔT3)である。すなわちいずれの場合も、本実施形態に係るユニット起動方法においては、従来のユニット起動方法に比べて、(ΔT1-ΔT2)だけ短い。前述のように、(ΔT1-ΔT2)はΔT3であるから、本実施形態に係るユニット起動方法の場合、従来のユニット起動方法に比べて、ΔT3だけ時間が短縮される。ΔT3は、第1真空度から第2真空度まで真空上昇するまでの所要時間である。
【0070】
以上のように、本実施形態によるユニット起動方法においては、水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップの開始の条件とする復水器真空度(第1真空度)を、タービン通気条件とする復水器真空度(第2真空度)より、低い真空度(高い圧力)としている。すなわち、水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップの開始までに第2真空度に到達すればよく、これ以降の水質改善プロセスを実施している期間を、蒸気タービン10の通気可能な条件である第2真空度までの真空上昇のために使用することができる。特に真空度の上昇過程では、真空度が高くなるほど、真空度の上昇速度が遅くなることから、第1真空度の状態から第2真空度の状態への真空上昇のための時間を確保できる効果は大きい。本実施形態によって、大きな起動時間短縮効果を得ることができる。
【0071】
図5は、第1の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法の手順を示すフロー図である。
【0072】
まず、復水器21の真空上昇を開始する(ステップS01)。具体的には、復水器21周りの流路を隔離して、真空ポンプ23を全台、具体的には2台とも起動する。
【0073】
次に、第1真空度判定部121が、復水器真空度が第1真空度に到達したか否かを判定する(ステップS02)。第1真空度判定部121が、復水器真空度が第1真空度に到達したと判定しなかった場合(ステップS02 NO)には、ステップS01以下を繰り返す。
【0074】
第1真空度判定部121が、復水器真空度が第1真空度に到達したと判定した場合(ステップS02 YES)には、第1真空度判定部121は、判定結果を進行制御部150に出力する。また、出力部160は進行制御部150からの指令を受けて、水質改善プロセス開始許可信号を出力する(ステップS03)。出力部160からの水質改善プロセス開始許可信号は、たとえば、発電ユニット1の図示しない制御装置により受信され、水質改善プロセスが開始される。あるいは、水質改善プロセス開始許可信号は、発電ユニット1の図示しない中央監視制御盤に表示され、運転員が水質改善プロセスを開始する。この後も、真空ポンプ23により復水器真空上昇が継続される。
【0075】
次に、第2真空度判定部122は、復水器真空度が第2真空度に到達したか否かを判定する(ステップS11)。第2真空度判定部122が、復水器真空度が第2真空度に到達したと判定しなかった場合(ステップS11 NO)には、真空上昇を継続(ステップS12)し、ステップS11以下を繰り返す。
【0076】
ステップS11に並行して、進行制御部150は、発電ユニット1の制御装置からのボイラホットクリーンアップ終了の旨の情報を入力部110が受信したか否かを判定する(ステップS21)。
【0077】
ステップS11において第2真空度判定部122が復水器真空度が第2真空度に到達したと判定し(ステップS11 YES)、かつ、ステップS21において進行制御部150がボイラホットクリーンアップ終了の情報を入力部110が受信したとは判定しない(ステップS21 NO)場合には、進行制御部150は、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123に、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択制御を行うよう指令(ステップS22)する。タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123は、第2真空度の近傍の真空度を維持するように真空ポンプ23の運転台数を増減する。以上のステップを、進行制御部150がボイラホットクリーンアップ終了の情報を入力部110が受信したと判定(ステップS21 YES)するまで繰り返す。
【0078】
次に、第2真空度判定部122が、復水器真空度が第2真空度に到達したと判定し(ステップS11 YES)、かつ、ステップS21において進行制御部150がボイラホットクリーンアップ終了の情報を入力部110が受信したと判定(ステップS21 YES)した場合、進行制御部150は、出力部160を通じてタービン通気許可信号を出力する(ステップS31)。具体的には、進行制御部150は、復水器真空度制御装置100側として、タービン通気可能の条件が成立した旨の情報を、出力部160を通じて、発電ユニット1の制御装置あるいは中央監視制御盤に出力する。この結果、自動あるいは手動操作によって、ボイラ50で発生した蒸気の蒸気タービン10への導入がなされる。
【0079】
次に、タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124が、真空ポンプ23の停止を行う(ステップS32)。すなわち、ステップS31でのタービン通気により、低圧タービン13からのタービン排気蒸気が復水器21において冷却され凝縮されることによる復水器真空度維持状態に移行する。これに伴い、真空ポンプ23によるシンク度維持が不要となり、また、過真空状態となることを避けるために、タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124により、真空ポンプ23が全台停止される。
【0080】
なお、ステップS32の前の真空ポンプ23の運転台数は、状況によって異なる。すなわち、真空ポンプ23が2台構成の場合、ステップS11でのYESの判定が、ステップS21でのYESの判定より遅いあるいは同時の場合には、2台運転である。また、ステップS11でのYESの判定が、ステップS21でのYESの判定より早い場合には、1台または2台である。
【0081】
また、タービン通気許可(ステップS31)により、タービン通気後、タービン負荷運転に移行する(ステップS33)。ステップS33は、ステップS32と並行に勧められてもよい。
【0082】
図6は、第1の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づくタービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択制御による復水器真空度の変化を示すグラフである。前述のように、復水器真空度がタービン通気可能な真空度である第2真空度に到達しているが、ボイラホットクリーンアップの方が終了していないという状態において、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123により運転台数選択制御が行われる。
【0083】
プラント熱効率を向上させるためには、復水器真空度は可能な限り高いことが望ましい。しかし真空度が高すぎると、復水器21が、構造強度限界を超えて破損する可能性や、低圧タービン13の軸受台支持部(図示せず)が変形し振動問題等を発生す可能性がある。一方で復水器真空度が低下しすぎると、タービン翼(図示せず)の振動応力が増加し、タービン翼の破損につながる可能性もある。そのため、第2真空度到達後の待機状態においては、復水器真空度を適切な範囲に制限することが重要となる。
【0084】
図6では、第2真空度到達後にタービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123が真空ポンプの台数制御を行う際の設定圧力として、中心設定圧力P2a、高側設定圧力P2ap、低側設定圧力P2aqが示されている。ここで、第2圧力P2に対応する圧力を、中心設定圧力P2aとする。なお、第2圧力P2に対応する圧力を低側設定圧力P2aqとしてもよい。ただし、第2圧力P2に対応する圧力を低側設定圧力P2aqとする場合は、低側設定圧力P2aqが過真空とならない設定とするように注意する。なお、中心設定圧力P2a、高側設定圧力P2ap、および低側設定圧力P2aqは、それぞれ、中心設定真空度、低側設定真空度、および高側設定真空度に対応する。
【0085】
まず、真空ポンプ23を全台起動して後、第1真空度(第1圧力P1)を経由し、低側設定圧力P2aqに到達すると、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123は、真空ポンプ23の運転台数を減少させる。
図1に示す2台構成の場合は、運転台数を2台から1台とする。
【0086】
この結果、復水器真空度は低下すなわち復水器圧力は上昇する。復水器圧力が第2真空度を経て、高側設定圧力P2apとなると、タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部123は、真空ポンプ23の運転台数を増加させる。
図1に示す2台構成の場合は、運転台数を1台から2台とする。この結果、復水器真空度は再び上昇に転じる。
【0087】
以上のように、本実施形態に係る復水器真空度制御装置100によれば、水質改善プロセスが完了する前に、復水器真空度が第2真空度に到達した場合にも、真空ポンプ23の運転台数を適切に制御することにより、過真空となることを防止し、復水器真空度を適切な範囲に維持することができる。
【0088】
図7は、第1の実施形態に係る復水器真空度制御装置100のタービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124の構成を示すブロック図である。
【0089】
タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124は、上限真空度到達判定部124a、および、論理和ゲート124bを有する。
【0090】
上限真空度到達判定部124aは、入力部110が復水器圧力計21aから受け入れた復水器圧力に対応する復水器真空度が、第2真空度より高い真空度である上限真空度に到達したか否かを判定する。ここで、上限真空度は、過真空状態となる真空度に十分な余裕を見た真空度に設定される。上限真空度到達判定部124aは、復水器真空度が上限真空度に到達したと判定すると第1のON信号を出力する。
【0091】
また、タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部124は、進行制御部150が、タービン通気許可信号を出力すると、その信号を受けて、タービン通気後真空ポンプ停止タイマー141に動作開始の指示を出力し、かつ、タービン通気後真空ポンプ停止タイマー141からの所定の遅延時間の後の動作完了の信号を第2のON信号として受け入れる。
【0092】
論理和ゲート124bは、上限真空度到達判定部124aからの第1のON信号およびタービン通気後真空ポンプ停止タイマー141からの第2のON信号のいずれかを受けると、真空ポンプ全台停止信号を出力する。真空ポンプ全台停止信号は、出力部160を介して、真空ポンプ23に出力され、運転中の真空ポンプ23が停止する。
【0093】
以上のように、本実施形態に係る復水器真空度制御装置100によれば、タービン通気後においても、真空ポンプ23の運転台数を適切に制御することにより、復水器真空度の過剰な上昇を防止することができる。
【0094】
上述のように、本実施形態によれば、水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップの開始の条件とする第1真空度を、タービン通気条件とする第2真空度より、低い真空度とすることにより起動時間を短縮することができる。また、水質改善プロセスの進行状況および復水器の真空度に応じて、タービン通気前後の真空ポンプ23の運転台数を自動的に選択し、復水器21の真空度を適切な範囲に維持することができる。
【0095】
[第2の実施形態]
図8は、第2の実施形態に係る復水器真空度制御装置100aの構成を示すブロック図である。
【0096】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の相違点として、復水器真空度制御装置100aは、プロセス開始許可判定用タイマー142をさらに有する。第2の相違点として、演算部120aは、第1の実施形態に係る復水器真空度制御装置100の第1真空度判定部121に代えて第1真空度判定部121aを有する。第3の相違点として、第1の実施形態の進行制御部150に代えて進行制御部150aを有する。これ以外は、第1の実施形態と同様である。
【0097】
この構成により、本実施形態に係る復水器真空度制御装置100aでは、
図5に示すステップS03における水質改善プロセス開始許可の条件が第1の実施形態とは異なる。
【0098】
図9は、第2の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づく水質改善プロセス開始許可の条件を説明するグラフである。横軸は時間軸である。また、縦軸は復水器内の圧力(bar(a))である。破線で示す大気圧からの差分が真空度を表わす。
【0099】
横軸の時刻T2および時刻T1は、
図4に示すものと同様であり、時刻T3は、復水器真空度が第1真空度に到達した時刻を示す。
【0100】
第1真空度(第1圧力P1)に到達しても、確実に第1真空度が確保されてから、水質改善プロセスが開始されるように、本実施形態においては、第1真空度より有意かつ若干の幅αだけ高い第1a真空度(第1圧力P1よりαだけ低い第1a圧力P1a)が設定されている。この設定値は、真空度設定値記憶部131に収納されている。
【0101】
ΔT3は、プロセス開始許可判定用タイマー142の設定値であり、たとえば、30分に設定される。
【0102】
第1真空度判定部121aは、入力部110が復水器圧力計21aから受け入れた復水器圧力に対応する復水器真空度が、第1a真空度より高い真空度である上限真空度に到達したか否かを判定する。第1真空度判定部121aは、復水器真空度が上限真空度に到達したと判定すると第1のON信号を出力する。
【0103】
プロセス開始許可判定用タイマー142は、第1真空度判定部121aが第1真空度到達の判定を出力すると、その時点からカウントを開始し、所定の遅延時間ΔT3の後に第2のON信号を出力する。
【0104】
進行制御部150aは、第1真空度判定部121aからの第1のON信号およびプロセス開始許可判定用タイマー142からの第2のON信号のいずれかを受けると、
図5で示したステップS03の水質改善プロセス開始許可信号を出力する。なお、
図9では、第2のON信号が第1のON信号より早く発生する場合の例を示している。
【0105】
以上のように、本実施形態においては、第1真空度(第1圧力P1)に到達しても、確実に第1真空度が確保されるように第1a真空度が設定されるが、真空度の上昇速度が遅い場合には、プロセス開始許可判定用タイマー142からの出力でも、水質改善プロセス開始許可のステップS03に進めることができる。この結果、スムーズなプロセス進行を確保することができる。
【0106】
[第3の実施形態]
図10は、第3の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法を適用する発電ユニット1の例を示す蒸気タービン10まわりの部分系統図である。
【0107】
本実施形態が対象とする発電ユニット1においては、主蒸気管14の主蒸気止め弁14aの上流側の部分に、主蒸気管14内の圧力を測定する主蒸気管内圧力計14p、および、主蒸気管14の温度を測定する主蒸気管温度計14tが設けられている。主蒸気管内圧力計14pおよび主蒸気管温度計14tの出力は、復水器真空度制御装置100bに受け入れられる。
【0108】
図11は、第3の実施形態に係る復水器真空度制御装置100bの構成を示すブロック図である。
【0109】
本実施形態は、第2の実施形態の変形である。本実施形態に係る復水器真空度制御装置100bは、第2の実施形態の入力部110および進行制御部150aのそれぞれに代えて、入力部110bおよび進行制御部150bを有する。また、復水器真空度制御装置100bの記憶部130bは、第1補正値データベース133をさらに有する。これ以外は、第2の実施形態と同様である。
【0110】
この構成により、本実施形態に係る復水器真空度制御装置100bでは、
図5に示すステップS03における水質改善プロセス開始許可の条件に第2の実施形態と異なる部分がある。
【0111】
図12は、第3の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づく水質改善プロセス開始許可の条件における遅れ時間の第1補正値dtaを与える遅れ時間補正値のグラフである。ここで、遅れ時間の第1補正値dtaは、第2の実施形態においては、遅れ時間をΔT3と固定した値を用いるのに対して、本実施形態では、遅れ時間dtとして(一定遅れ時間ΔT+遅れ時間の第1補正値dta)とし、主蒸気管14の温度Tsおよび主蒸気管14内の圧力Psに応じてdtを変化させるものである。
【0112】
図12の横軸は、主蒸気管14の温度である主蒸気管温度Tsであり主蒸気管温度計14tによる主蒸気管14の温度信号に対応する。縦軸は、主蒸気管14内の圧力である主蒸気管内圧力Psであり主蒸気管内圧力計14pによる主蒸気管14内の圧力信号に対応する。各曲線は、同一の遅れ時間の第1の補正値dtaを与える曲線である。遅れ時間の第一の補正値dtaとして
図12に例示する値は、dta1>dta2>dta3>dta4の関係がある。
【0113】
第1補正値データベース133は、このグラフデータをディジタル値として保管する。保管データ形式としては、たとえば、温度Tsと圧力Psの2次元データに対するdt値がセットとなった3次元データ、あるいは、温度Tsと圧力Psの2次元平面におけるdt値の等高線を多次元近似曲線の形式でもよい。
【0114】
たとえば、発電ユニット1が数時間の短時間停止した場合と、1週間以上の長期間停止をした場合とでは、系統が保有する温度や蒸気圧力が異なる。長期間停止した状態では、熱の保有量が少なく、逆に短期間停止では、高温状態で、ボイラ50側では蒸気圧が残った状態で停止を行っている。また、系統が高温であれば熱膨張によってインリークが収まる場合があり、また蒸気圧がある状態では蒸気圧によりインリーク個所がシールされインリークが収まることがある。このように、真空上昇に必要な時間は、配管等の温度や蒸気圧力によって差が発生する。
【0115】
具体的には、代表箇所である主蒸気管14の温度Tsおよび主蒸気管14内の圧力Psが高いほど、水質改善プロセス開始許可の条件における遅れ時間の第1の補正値dtaは短くなる。なお、代表箇所は、系統の状態を把握できる箇所であれば、主蒸気管14以外の箇所でもよい。
【0116】
入力部110bは、主蒸気管温度計14tからの主蒸気管14の温度Tsおよび主蒸気管内圧力計14pからの主蒸気管14内の圧力Psの値を受け入れる。
【0117】
第1真空度判定部121aは、第2の実施形態と同様に、入力部110が復水器圧力計21aから受け入れた復水器圧力に対応する復水器真空度が、第1a真空度より高い真空度である上限真空度に到達したか否かを判定する。第1真空度判定部121aは、復水器真空度が上限真空度に到達したと判定すると第1のON信号を出力する。
【0118】
プロセス開始許可判定用タイマー142は、第1真空度判定部121aが第1真空度到達の判定を出力すると、その時点からカウントを開始し、所定の遅延時間ΔTの後に第2のON信号を出力する。
【0119】
進行制御部150bは、入力部110bが受け入れた主蒸気管14の温度Tsおよび主蒸気管14内の圧力Psの値に基づいて、
図12に示す遅れ時間補正値グラフを用いで、遅れ時間の第1の補正値dtaを導出する。
【0120】
進行制御部150bは、第1真空度判定部121aからの第1の判定用信号を受け入れた時刻、およびプロセス開始許可判定用タイマー142からの第2の判定用信号を受け入れてから遅れ時間の第1の補正値dtaだけ経過した時刻のいずれかの早いタイミングで、
図5で示したステップS03の水質改善プロセス開始許可信号を出力する。
【0121】
本実施形態では、主蒸気管14の温度Tsおよび主蒸気管14内の圧力Psに応じて、水質改善プロセス開始許可判定のための遅れ時を変化させる。すなわち、発電ユニット1の停止後の時間経過の度合いに応じて、遅れ時間を変化させることにより、無駄な時間経過を生じることを防ぐことができる。
【0122】
[第4の実施形態]
図13は、第4の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法を適用する発電ユニット1の例を示す蒸気タービン10まわりの部分系統図である。
【0123】
本実施形態が対象とする発電ユニット1においては、冷却水管25の冷却水ポンプ25aの出口側であって伝熱管22の上流側の部分に、冷却水の温度を測定する冷却水温度計25tが設けられている。冷却水温度計25tの出力は、復水器真空度制御装置100cにより受け入れられる。
【0124】
図14は、第4の実施形態に係る復水器真空度制御装置100cの構成を示すブロック図である。
【0125】
本実施形態は、第2の実施形態の変形である。本実施形態に係る復水器真空度制御装置100cは、第2の実施形態の入力部110および進行制御部150aのそれぞれに代えて、入力部110cおよび進行制御部150cを有する。また、復水器真空度制御装置100cの記憶部130cは、第2補正値データベース133aをさらに有する。これ以外は、第2の実施形態と同様である。
【0126】
この構成により、本実施形態に係る復水器真空度制御装置100cでは、
図5に示すステップS03における水質改善プロセス開始許可の条件に第2の実施形態と異なる部分がある。なお、本実施形態と第3の実施形態とを組み合わせてもよい。
【0127】
図15は、第4の実施形態に係るユニット起動時復水器真空度制御方法に基づく水質改善プロセス開始許可の条件における遅れ時間の第2補正値dtbを与える遅れ時間補正値グラフである。ここで、遅れ時間の第2補正値dtbは、第2の実施形態においては、遅れ時間をΔT3と固定した値を用いるのに対して、本実施形態では、遅れ時間dtとして(一定遅れ時間ΔT+遅れ時間の第2補正値dtb)とし、冷却水温度Tcに応じてdtを変化させるものである。
【0128】
図15の横軸は、冷却水温度Tcであり冷却水温度計25tからの冷却水温度に対応する。縦軸は、遅れ時間の第2の補正値dtbである。
【0129】
一般に、復水器においてタービン排気蒸気を冷却するためには、大容量の冷却水が必要となる。このため、発電ユニットにおいて冷却水として海水が使用される場合が多い。たとえば、我が国のような北半球に位置する国では、夏場は海水温度が高くなり冬場は海水温度が低下する。冷却水温度が高い場合は、排気蒸気を冷却する効果が減少することとなり、復水器の真空度上昇能力が低下する。逆に、冷却水温度が低い場合には、復水器の真空度上昇能力が増加する。このため、
図15に示すように、冷却水温度の上昇に従って、第2補正時間を長く設定する。
【0130】
入力部110bは、冷却水温度計25tからの冷却水温度Tcを受け入れる。
【0131】
第1真空度判定部121aは、第2の実施形態と同様に、入力部110が復水器圧力計21aから受け入れた復水器圧力に対応する復水器真空度が、第1a真空度より高い真空度である上限真空度に到達したか否かを判定する。第1真空度判定部121aは、復水器真空度が上限真空度に到達したと判定すると第1のON信号を出力する。
【0132】
プロセス開始許可判定用タイマー142は、第1真空度判定部121aが第1真空度到達の判定を出力すると、その時点からカウントを開始し、所定の遅延時間ΔTの後に第2のON信号を出力する。
【0133】
進行制御部150cは、入力部110bが受け入れた冷却水温度Tcの値に基づいて、
図15に示す第2補正値データベースを用いて遅れ時間の第2の補正値dtbを導出する。
【0134】
進行制御部150cは、第1真空度判定部121aからの第1の判定用信号を受け入れた時刻、およびプロセス開始許可判定用タイマー142からの第2の判定用信号を受け入れてから遅れ時間の第2の補正値dtbだけ経過した時刻のいずれかの早いタイミングで、
図5で示したステップS03の水質改善プロセス開始許可信号を出力する。
【0135】
本実施形態では、冷却水温度Tcに応じて、水質改善プロセス開始許可判定のための遅れ時間を変化させる。すなわち、発電ユニット1の停止後の時間経過の度合いに応じて、遅れ時間を変化させることにより、無駄な時間経過を生じることを防ぐことができる。
【0136】
以上説明した実施形態によれば、水質改善プロセスの最初のステップあるいは初期のステップ開始の条件とする第1真空度を、タービン通気可能な真空度である第2真空度より、低い真空度とすることにより、発電ユニット1の起動時間の短縮を可能とする。
【0137】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1…発電ユニット、10…蒸気タービン、11…高圧タービン、12…中圧タービン、13…低圧タービン、14…主蒸気管、14a…主蒸気止め弁、14b…蒸気加減弁、14p…主蒸気管内圧力計、14t…主蒸気管温度計、15…タービンバイパス管、15a…タービンバイパス弁、16‥再熱蒸気管、16a‥再熱止め弁、17…発電機、21…復水器、21a…復水器圧力計、22…伝熱管、23…真空ポンプ、24…排出管、25…冷却水管、25a…冷却水ポンプ、25t…冷却水温度計、30…復水系統、31…復水管、32…復水ポンプ、33…ろ過脱塩器、34…復水再循環配管、34a…復水再循環弁、35…低圧給水加熱器、36…脱気器、36h…加熱ライン、37…低圧クリーンアップ配管、37a…低圧クリーンアップ弁、40…給水系統、41…給水管、42…給水ポンプ、43…高圧給水加熱器、44…給水ポンプミニマムフロー配管、44a…給水ポンプミニマムフロー弁、50…ボイラ、51…節炭器、52…蒸発器、53…気水分離器、54…ドレンタンク、55…ボイラ循環配管、55a…ボイラ循環ポンプ、55b…ボイラ循環弁、56…ドレン戻り管、56a…ドレン戻り弁、57…過熱器、58…再熱器、70…水質改善対象設備、100、100a、100b…復水器真空度制御装置、110…入力部、120…演算部、121…第1真空度判定部、122…第2真空度判定部、123…タービン通気待機時真空ポンプ運転台数選択部、124…タービン通気後真空ポンプ運転台数選択部、124a…上限真空度到達判定部、124b…論理和ゲート、126…タイマー設定値補正演算部、130…記憶部、131…真空度設定値記憶部、132…タイマー設定値記憶部、133…第1補正値データベース、133a…第2補正値データベース、134…タイマー補正テーブル、141…タービン通気後真空ポンプ停止タイマー、142…プロセス開始許可判定用タイマー、150…進行制御部、160…出力部