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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039644
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】フロントフェンダ
(51)【国際特許分類】
   B62J 15/00 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
B62J15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146872
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】石井 樹
(57)【要約】
【課題】フロントフェンダによって泥水や雨水の飛散を防止すると共にブレーキキャリパへの泥水や雨水の落下を防止する。
【解決手段】フロントフェンダ(40)は鞍乗型車両のフロントフォーク(20)に取り付けられている。フロントフェンダには、フロントフォークに支持された前輪(30)の上方を覆うフェンダ本体(41)と、フェンダ本体の両側縁から車軸側に広がる一対のフェンダ側面(51)と、が設けられている。フロントフォークには前輪を制動するブレーキキャリパ(37)が設けられている。フェンダ側面の下縁がブレーキキャリパよりも上方を前後に延び、当該下縁が車軸方向内側に向けられて折り返し部(63)が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両のフロントフォークに取り付けられたフロントフェンダであって、
前記フロントフォークに支持された前輪の上方を覆うフェンダ本体と、
前記フェンダ本体の両側縁から車軸側に広がる一対のフェンダ側面と、を備え、
前記フロントフォークには前記前輪を制動するブレーキキャリパが設けられており、
前記フェンダ側面の下縁が前記ブレーキキャリパよりも上方を前後に延び、当該下縁が車軸方向内側に向けられて折り返し部が形成されていることを特徴とするフロントフェンダ。
【請求項2】
前記前輪には前記ブレーキキャリパに挟持されるブレーキディスクが設けられており、前記折り返し部の一部が当該ブレーキディスクよりも車軸方向内側に屈曲されていることを特徴とする請求項1に記載のフロントフェンダ。
【請求項3】
前記ブレーキキャリパの真上にある前記折り返し部の所定位置よりも後側が後方に向かって低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のフロントフェンダ。
【請求項4】
前記ブレーキキャリパの真上にある前記折り返し部の所定位置よりも前側が前方に向かって低くなるように傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフロントフェンダ。
【請求項5】
前記フェンダ側面には前記フロントフォークに取り付けられる連結部が形成され、
前記連結部が前記折り返し部の所定位置よりも前方に位置していることを特徴とする請求項4に記載のフロントフェンダ。
【請求項6】
前記連結部の下縁が下方に向けられていることを特徴とする請求項5に記載のフロントフェンダ。
【請求項7】
前記フェンダ側面の前縁が前記フロントフォークに沿って上下に延び、当該前縁が車軸方向内側に向けられて他の折り返し部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフロントフェンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフェンダに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗型車両には、フロントフェンダが取り付けられている。この種のフロントフェンダとして、前輪を上方から覆うフェンダ本体によって泥水の飛散を効果的に防止するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のフロントフェンダでは、フェンダ本体の前側の両側縁から延出した一対の脚部がアクスルブラケットに取り付けられ、フェンダ本体の後側の両側縁から延出した一対の支持部がアクスルブラケットに取り付けられている。前輪に巻き上げられた泥水がフェンダ本体の内面に当ることで、灯火器類やライダーへの泥水の飛散が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-085743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のフロントフェンダでは、フェンダ本体の内面に当った泥水は一対の支持部の内面を伝って、一対の支持部の下方のブレーキキャリパに流れ落ちてブレーキパッドを異常摩耗させるおそれがある。耐摩耗性のブレーキパッドを使用することも考えられるが、コストが増加するという不具合がある。また、ブレーキキャリパの外面に泥水が付着すると、ブレーキキャリパの汚れが目立って外観性が悪化する。泥水だけではなく、雨水についても同様な不具合が生じるおそれがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、泥水や雨水の飛散を防止すると共にブレーキキャリパへの泥水や雨水の落下を防止することができるフロントフェンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のフロントフェンダは、鞍乗型車両のフロントフォークに取り付けられたフロントフェンダであって、前記フロントフォークに支持された前輪の上方を覆うフェンダ本体と、前記フェンダ本体の両側縁から車軸側に広がる一対のフェンダ側面と、を備え、前記フロントフォークには前記前輪を制動するブレーキキャリパが設けられており、前記フェンダ側面の下縁が前記ブレーキキャリパよりも上方を前後に延び、当該下縁が車軸方向内側に向けられて折り返し部が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のフロントフェンダによれば、前輪に巻き上げられた泥水や雨水がフロントフェンダの内面に当たることで泥水や雨水の飛散が防止される。フロントフェンダに当たった泥水や雨水はフェンダ側面の内面を伝って下方に移動するが、折り返し部によってフェンダ側面の下縁からブレーキキャリパに泥水や雨水が流れ落ちることが防止される。よって、ブレーキキャリパのブレーキパッドの異常摩耗を抑えると共に、汚れによるブレーキキャリパの外観性の悪化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の鞍乗型車両の右側面図である。
図2】本実施例の前輪の周辺部分の斜視図である。
図3】本実施例の前輪の周辺部分の右側面図である。
図4】本実施例の前輪の周辺部分を内側から見た側面図である。
図5】本実施例のフェンダ支持部を内側から見た斜視図である。
図6図4のフロントフェンダをA-A線に沿って切断した断面図である。
図7図4のフロントフェンダをB-B線に沿って切断した断面図である。
図8】本実施例のフロントフェンダの泥水の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のフロントフェンダは、鞍乗型車両のフロントフォークに取り付けられている。フロントフェンダのフェンダ本体はフロントフォークに支持された前輪を上方から覆っており、フェンダ本体の両側縁から一対のフェンダ側面が車軸側に広がっている。フロントフォークには前輪を制動するブレーキキャリパが設けられている。フェンダ側面の下縁がブレーキキャリパよりも上方を前後に延びており、当該下縁が車軸方向内側に向けられて折り返し部が形成されている。これにより、前輪に巻き上げられた泥水や雨水がフロントフェンダの内面に当たることで泥水や雨水の飛散が防止される。フロントフェンダに当たった泥水や雨水はフェンダ支持部の内面を伝って下方に移動するが、折り返し部によってフェンダ支持部の下縁からブレーキキャリパに泥水や雨水が流れ落ちることが防止される。よって、ブレーキキャリパのブレーキパッドの異常摩耗を抑えると共に、汚れによるブレーキキャリパの外観性の悪化を抑えることができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。図1は本実施例の鞍乗型車両の右側面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1に示すように、鞍乗型車両1には、アルミ合金によって成形されるツインスパー型の車体フレームが使用されている。車体フレームは、ヘッドパイプ(不図示)から左右に分岐してエンジン11を抱え込むように後方に延びる一対のメインフレーム10を有している。一対のメインフレーム10の前側には燃料タンク12が下方から支持されており、一対のメインフレーム10の後側にはスイングアーム13が揺動可能に支持されている。一対のメインフレーム10から後方に一対のシートレール14が延びており、一対のシートレール14にはシート15が下方から支持されている。
【0012】
ヘッドパイプにはステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク20が操舵可能に支持されており、フロントフォーク20の下部には前輪30が回転可能に支持されている。スイングアーム13はメインフレーム10の下部から後方に延びており、スイングアーム13の後端には後輪16が回転可能に支持されている。後輪16にはチェーンドライブ式の変速機構を介してエンジン11が連結されており、変速機構を介してエンジン11からの動力が後輪16に伝達されている。エンジン11の後方にマフラ17が配置されており、エンジン11からの排気ガスがマフラ17を通じて外部に排出される。
【0013】
フロントフォーク20には前輪30による泥跳ねを防ぐフロントフェンダ40が取り付けられている。フロントフェンダ40によって泥水の飛散が防止されるが、フロントフェンダ40の内面を伝って泥水が流れ落ちてブレーキキャリパ37に付着すると、ブレーキパッドの異常摩耗や外観性を悪化させるおそれがある。そこで、本実施例のフロントフェンダ40では、ブレーキキャリパ37の上方に位置するフェンダ支持部(フェンダ側面)51の下縁を車軸方向内側に折り返して、フェンダ支持部51の下縁からブレーキキャリパ37に泥水が流れ落ちることを防止している。
【0014】
図2から図4を参照して、前輪の周辺部分について説明する。図2は本実施例の前輪の周辺部分の斜視図である。図3は本実施例の前輪の周辺部分の左側面図である。図4は本実施例の前輪の周辺部分を内側から見た側面図である。なお、図4では、説明の便宜上、前輪を省略して記載している。
【0015】
図2に示すように、フロントフォーク20の一対のフォークチューブ21の下部にはアクスルブラケット22が設けられており、アクスルブラケット22には車軸31を介して前輪30が支持されている。前輪30のホイールは、車軸31が挿し込まれた筒状のハブ32と、タイヤ33が装着された円環状のリム34と、ハブ32とリム34を連結する多数のスポーク35と、を有している。ハブ32の両端部には一対のリング板状の一対のブレーキディスク36が固定され、アクスルブラケット22にはブレーキディスク36を挟持する一対のブレーキキャリパ37が固定されている。
【0016】
フロントフォーク20の下部のアクスルブラケット22には樹脂製のフロントフェンダ40が取り付けられている。フロントフェンダ40は、個別にインジェクション成形された2種類の成形部品から成っている。ベースとなる成形部品は、前輪30の上方を覆うフェンダ本体41と、一対のフォークチューブ21の前方の一対のフェンダベース43(図4参照)と、一対のフォークチューブ21の後方の一対のフェンダ支持部51と、を一体に成形したものである。付加部材となる成形部品は、一対のフェンダベース43を前方から覆う一対のフェンダカバー44を単独で成形したものである。
【0017】
図3及び図4に示すように、フェンダ本体41はタイヤ33の外周面に沿って形成されている。フェンダ本体41はタイヤ33の外周面を上方から覆って泥除け面を形成している。フェンダ本体41の前側の両側縁から車軸31に向かって一対のフェンダベース43が延びている。一対のフェンダベース43の前面には一対のフェンダカバー44が取り付けられている。フェンダベース43及びフェンダカバー44はフォークチューブ21に沿って形成されている。フェンダベース43は内壁と後壁によってL字板状に形成されており、フェンダカバー44はフェンダベース43を前方から覆うように湾曲板に形成されている。
【0018】
フェンダベース43とフェンダカバー44によって支柱状の脚部42が形成されている。フェンダベース43のL字形状とフェンダカバー44の湾曲形状によって脚部42が中空断面に形成され、脚部42の軽量化が図られると共に一対の脚部42の剛性が高められている。特に、フェンダベース43及びフェンダカバー44が前後に位置することで、前後方向の曲げに対する脚部42の剛性が高められている。この場合、通常のフロントフェンダと同様に、前後抜きの金型を用いて、フェンダ本体41から下方に延びるフェンダベース43を長く形成することができる。
【0019】
フェンダ本体41の後側の両側縁から車軸31に向かって一対のフェンダ支持部51が広がっている。フェンダ支持部51は、フォークチューブ21に沿った第1のアーム52と略水平に延びる第2のアーム53とをV字状に連ねて形成されている。フェンダ支持部51の内面には側面視V字状の補強プレート54が取り付けられている。補強プレート54によってフェンダ支持部51が内側から補強されて剛性が高められている。このように、フェンダ本体41の前側から延びる脚部42の剛性が高められると共に、フェンダ本体41の後側から延びるフェンダ支持部51の剛性が高められている。
【0020】
フェンダカバー44の下部が部分的に陥没して座面45a、45bが形成され、アクスルブラケット22には座面45a、45bに対応して取付部23a、23bが形成されている。フェンダベース43を介して座面45a、45bが取付部23a、23bにネジ止めされて、脚部42がアクスルブラケット22に固定されている。また、フェンダ支持部51の頂点部分には座面55が形成されており、アクスルブラケット22からフェンダ支持部51の頂点部分に向かってステー24が延びている。座面55がステー24の先端部にネジ止めされて、フェンダ支持部51がアクスルブラケット22に固定されている。
【0021】
アクスルブラケット22に取り付けられた脚部42によってフェンダ本体41の前側が支持され、アクスルブラケット22に取り付けられたフェンダ支持部51によってフェンダ本体41の後側が支持されている。剛性が高い一対の脚部42及び一対のフェンダ支持部51によってフェンダ本体41が安定的に支持され、走行時にフェンダ本体41がタイヤ33に接触することが防止されている。一対の脚部42及び一対のフェンダ支持部51がアクスルブラケット22に固定されるため、フロントフォーク20の動きに合わせて前輪30と一体になってフロントフェンダ40が動かされる。
【0022】
図4から図7を参照して、フェンダ支持部について詳細に説明する。図5は本実施例のフェンダ支持部を内側から見た斜視図である。図6図4のフロントフェンダをA-A線に沿って切断した断面図である。図7図4のフロントフェンダをB-B線に沿って切断した断面図である。なお、図4では、説明の便宜上、前輪を省略して記載している。
【0023】
図4及び図5に示すように、フォークチューブ21の下部にはアクスルブラケット22が設けられている。アクスルブラケット22の後部には前輪30を制動するブレーキキャリパ37が固定され、前輪30には前輪30と一体に回転するブレーキディスク36が固定されている。ブレーキキャリパ37にはブレーキパッド(不図示)が設けられており、ブレーキパッドとブレーキディスク36の摩擦接触によって前輪30が制動される。アクスルブラケット22からフォークチューブ21に沿ってステー24が延びており、ステー24の先端部にはフェンダ支持部51の頂点部分の連結部56が取り付けられている。
【0024】
フェンダ支持部51はフォークチューブ21の後方に位置付けられており、フェンダ支持部51の前縁、すなわち第1のアーム52の前縁がフォークチューブ21に沿って上下に延びている。第1のアーム52の前縁が車軸方向内側に向けられて前縁折り返し部(他の折り返し部)61が形成されている。前輪30に泥水が巻き上げられたときに、前縁折り返し部61によって第1のアーム52の前縁からフォークチューブ21に泥水が向かい難くなってフォークチューブ21に対する泥の付着が抑えられている。第1のアーム52の後縁についても車軸方向内側に向けられて後縁折り返し部62が形成されている。
【0025】
フェンダ支持部51はブレーキキャリパ37の上方に位置付けられており、フェンダ支持部51の下縁、すなわち第2のアーム53の下縁がブレーキキャリパ37よりも上方を前後に延びている。第2のアーム53の下縁が車軸方向内側に向けられて下縁折り返し部(折り返し部)63が形成されている。前輪30に泥水が巻き上げられたときに、下縁折り返し部63によって第2のアーム53の下縁からブレーキキャリパ37に泥水が流れ落ち難くなって、ブレーキパッドの異常摩耗やブレーキキャリパ37に対する泥の付着が抑えられている。第2のアーム53の上縁についても車軸方向内側に向けられて上縁折り返し部64が形成されている。
【0026】
下縁折り返し部63においてブレーキキャリパ37の真上にある所定位置Gが最も高くなっている。下縁折り返し部63の所定位置Gよりも後側が後方に向かって低くなるように傾斜して、第2のアーム53の下縁に流れ着いた泥水が下縁折り返し部63に沿ってブレーキキャリパ37の後方に流される。下縁折り返し部63の所定位置Gよりも前側が前方に向かって低くなるように傾斜して、第2のアーム53の下縁に流れ着いた泥水が下縁折り返し部63に沿ってブレーキキャリパ37の前方に流される。このように、下縁折り返し部63によってブレーキキャリパ37の真上を避けるように泥水の流れがコントロールされている。
【0027】
下縁折り返し部63の所定位置Gよりも前方には連結部56が位置している。連結部56はボルト(不図示)によってアクスルブラケット22のステー24に連結されているため、ボルトや補強プレート54等の部品の隙間に泥水が溜まり易くなっている。連結部56から下縁折り返し部63の所定位置Gまでは上り坂になっているため、連結部56の周辺部品に付着した泥水が下縁折り返し部63を伝ってブレーキキャリパ37側に向かい難くなる。このため、連結部56付近の泥水がブレーキキャリパ37の真上の下縁折り返し部63の所定位置G付近から流れ落ちることが抑えられる。
【0028】
図6に示すように、連結部56の下縁が下方に向けられており、連結部56の下縁には下縁折り返し部63が形成されていない。連結部56の周辺部品に付着した泥水が連結部56の下縁から排出されて、泥水が下縁折り返し部63を伝ってブレーキキャリパ37側に向かい難くなる。また、前縁折り返し部61に沿って泥水が連結部56の下縁から排出される。連結部56にはステー24が連結されているため、連結部56からステー24を伝ってアクスルブラケット22に泥水が流れ易くなっている。このため、連結部56からブレーキキャリパ37に泥水が流れ落ち難くなっている。
【0029】
図7に示すように、第2のアーム53よりも連結部56が車軸方向外側に位置している。第2のアーム53の前端部分は前方に向かって車軸方向外側に湾曲しており、この第2のアーム53の前端部分よりも後側が後方に向かって車軸方向内側に傾斜している。第2のアーム53には全長に亘って下縁折り返し部63が形成されており、第2のアーム53の前端部分よりも後側では下縁折り返し部63がブレーキディスク36よりも車軸方向内側に屈曲している。連結部56の下方には下縁折り返し部63が形成されていないが、連結部56がブレーキディスク36から車軸方向外側に十分に離れている。
【0030】
このような構成により、下縁折り返し部63から一部の泥水が流れ落ちても、ブレーキキャリパ37とブレーキディスク36の摺動面よりも車軸方向内側に泥水が付着する。連結部56ではブレーキキャリパ37とブレーキディスク36の摺動面よりも車軸方向内側に離れた位置に泥水が流れ落ち、一部の泥水がステー24を伝ってアクスルブラケット22に流れる。ブレーキキャリパ37のブレーキパッドとブレーキディスク36の摺動面に泥水が入り込み難くなって、ブレーキパッドの異常摩耗が抑えられて、ブレーキパッドの交換頻度を減らすことができる。
【0031】
また、下縁折り返し部63の前端はブレーキキャリパ37の後部よりも前方に位置し、下縁折り返し部63の後端はブレーキキャリパ37の後部よりも後方に位置している。したがって、上面視にて、下縁折り返し部63の一部がブレーキキャリパ37に重なっている。さらに、下縁折り返し部63の後端は前輪30のリム34よりも後方に延びており、側面視にて下縁折り返し部63が前輪30のタイヤ33に重なっている。下縁折り返し部63の幅が後方に向かって小さくなっており、下縁折り返し部63に沿って流れる泥水が前輪30付近で流れ落ち易くなっている。
【0032】
図8を参照して、フロントフェンダにおける泥水の流れについて説明する。図8は本実施例のフロントフェンダの泥水の流れの説明図である。
【0033】
図8に示すように、前輪30によって泥水が巻き上げられると、フェンダ本体41の内面に泥水が付着して灯火器類やライダーへの泥水の飛散が防止されている。矢印F1に示すように、前輪30に巻き上げられた泥水の勢いによって、フェンダ本体41の内面を伝って泥水が上方に向かって移動する。矢印F2に示すように、フェンダ本体41の内面から第1のアーム52の内面に泥水が移動し、第1のアーム52の内面を伝って泥水が下方に向かって移動する。このとき、前縁折り返し部61によって泥水が前方に向かい難くなって、フォークチューブ21への泥水の付着が抑えられている。
【0034】
連結部56の上方で泥水の流れが二手に分岐する。矢印F3に示すように、一部の泥水は連結部56の下縁からアクスルブラケット22に向かって排出される。連結部56の下縁からステー24を伝って泥水が移動することで、ブレーキキャリパ37への泥水の付着が抑えられる。また、連結部56の下縁から流れ落ちても、連結部56がブレーキディスク36(図7参照)から車軸方向外側に離れているため、ディスクブレーキ36の摺動面への泥水の侵入が抑えられる。連結部56の下縁は折り返されていないため、連結部56の下縁で泥水の流れが遮られることがない。
【0035】
矢印F4に示すように、残りの泥水は第2のアーム53の内面を伝って後方に向かって移動する。ブレーキキャリパ37の上方では下縁折り返し部63から泥水が流れ落ち難なって、ブレーキキャリパ37への泥水の付着が抑えられる。下縁折り返し部63から泥水が流れ落ちても、下縁折り返し部63がブレーキディスク36よりも車軸方向内側に突き出しているため、ディスクブレーキの摺動面への泥水の侵入が抑えられる。下縁折り返し部63の所定位置Gよりも後方が下り坂になっているため、下縁折り返し部63に沿って泥水が後方に移動して前輪30付近で流れ落ちる。
【0036】
以上、本実施例によれば、前輪30に巻き上げられた泥水がフロントフェンダ40の内面に当たることで泥水の飛散が防止される。フロントフェンダ40に当たった泥水はフェンダ支持部51の内面を伝って下方に移動するが、下縁折り返し部63によってフェンダ支持部51の下縁からブレーキキャリパ37に泥水が流れ落ちることが防止される。よって、ブレーキキャリパ37のブレーキパッドの異常摩耗を抑えると共に、汚れによるブレーキキャリパ37の外観性の悪化を抑えることができる。
【0037】
なお、本実施例では、フロントフェンダによって泥水の飛散及びブレーキキャリパへの泥水の落下が抑えられるが、フロントフェンダによって雨水の飛散及びブレーキキャリパへの雨水の落下も抑えられる。
【0038】
また、本実施例では、フェンダ支持部が第1アームと第2アームをV字状に連ねて形成されているが、フェンダ支持部の形状は特に限定されない。フェンダ支持部はフェンダ本体の両側縁から車軸側に広がるように形成され、フェンダ支持部の下縁が車軸方向内側に向けられて折り返し部が形成されていればよい。
【0039】
また、本実施例では、フロントフェンダがアクスルブラケットに取り付けられる構成にしたが、フロントフェンダはフロントフォークに取り付けられていればよい。例えば、フロントフェンダはフロントフォークのブリッジ等に取り付けられていてもよい。
【0040】
また、本実施例では、フェンダ側面としてアクスルブラケットに取り付けられるフェンダ支持部を例示したが、フェンダ側面はフェンダ本体の両側縁から車軸側に広がっていればよく、アクスルブラケットに取り付けられていなくてもよい。
【0041】
また、本実施例では、下縁折り返し部がブレーキディスクよりも車軸方向内側に屈曲されているが、下縁折り返し部はフェンダ側面の内面から車軸方向内側に突き出していればよい。
【0042】
また、フロントフェンダは、図示の鞍乗型車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車する小型のスクータタイプの車両も含んでいる。
【0043】
以上の通り、本実施例のフロントフェンダ(40)は、鞍乗型車両(1)のフロントフォーク(20)に取り付けられたフロントフェンダであって、フロントフォークに支持された前輪(30)の上方を覆うフェンダ本体(41)と、フェンダ本体の両側縁から車軸(31)側に広がる一対のフェンダ側面(フェンダ支持部51)と、を備え、フロントフォークには前輪を制動するブレーキキャリパ(37)が設けられており、フェンダ側面の下縁がブレーキキャリパよりも上方を前後に延び、当該下縁が車軸方向内側に向けられて折り返し部(下縁折り返し部63)が形成されている。この構成によれば、前輪に巻き上げられた泥水がフロントフェンダの内面に当たることで泥水や雨水の飛散が防止される。フロントフェンダに当たった泥水や雨水はフェンダ側面の内面を伝って下方に移動するが、折り返し部によってフェンダ側面の下縁からブレーキキャリパに泥水や雨水が流れ落ちることが防止される。よって、ブレーキキャリパのブレーキパッドの異常摩耗を抑えると共に、汚れによるブレーキキャリパの外観性の悪化を抑えることができる。
【0044】
本実施例のフロントフェンダにおいて、前輪にはブレーキキャリパに挟持されるブレーキディスク(36)が設けられており、折り返し部の一部が当該ブレーキディスクよりも車軸方向内側に屈曲されている。この構成によれば、ブレーキキャリパとブレーキディスクの摺動面に泥水や雨水が流れ落ち難くなって、ブレーキキャリパのブレーキパッドの異常摩耗を抑えることができる。
【0045】
本実施例のフロントフェンダにおいて、ブレーキキャリパの真上にある折り返し部の所定位置(G)よりも後側が後方に向かって低くなるように傾斜している。この構成によれば、フェンダ側面の下縁に流れ着いた泥水や雨水を折り返し部によってブレーキキャリパの後方に流すことができる。
【0046】
本実施例のフロントフェンダにおいて、ブレーキキャリパの真上にある折り返し部の所定位置よりも前側が前方に向かって低くなるように傾斜している。この構成によれば、フェンダ側面の下縁に流れ着いた泥水や雨水を折り返し部によってブレーキキャリパの前方に流すことができる。
【0047】
本実施例のフロントフェンダにおいて、フェンダ側面にはフロントフォークに取り付けられる連結部(56)が形成され、連結部が折り返し部の所定位置よりも前方に位置している。この構成によれば、連結部の周辺部品に付着した泥水や雨水が折り返し部を伝ってブレーキキャリパ側に向かい難くなる。
【0048】
本実施例のフロントフェンダにおいて、連結部の下縁が下方に向けられている。この構成によれば、連結部の周辺部品に付着した泥水や雨水が連結部の下縁から排出されることで、泥水や雨水が折り返し部を伝ってブレーキキャリパ側に向かい難くなる。
【0049】
本実施例のフロントフェンダにおいて、フェンダ側面の前縁がフロントフォークに沿って上下に延び、当該前縁が車軸方向内側に向けられて他の折り返し部(前縁折り返し部61)が形成されている。この構成によれば、折り返し部によってフェンダ側面の前縁からフロントフォークに泥水や雨水が向かうことが防止される。よって、汚れによるフロントフォークの外観性の悪化を抑えることができる。
【0050】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0051】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0052】
1 :鞍乗型車両
20:フロントフォーク
30:前輪
31:車軸
36:ブレーキディスク
37:ブレーキキャリパ
40:フロントフェンダ
41:フェンダ本体
51:フェンダ支持部(フェンダ側面)
56:連結部
61:前縁折り返し部(他の折り返し部)
63:下縁折り返し部(折り返し部)
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8