(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039674
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】厚み検知装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/02 20060101AFI20230314BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20230314BHJP
G07D 7/164 20160101ALI20230314BHJP
G07D 7/00 20160101ALI20230314BHJP
【FI】
B65H7/02
B65H5/06 D
G07D7/164
G07D7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146911
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小川 和人
(72)【発明者】
【氏名】松本 英司
(72)【発明者】
【氏名】山本 道雄
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲也
【テーマコード(参考)】
3E041
3F048
3F049
【Fターム(参考)】
3E041AA02
3E041BA04
3E041BB07
3E041BC05
3E041EA01
3E041EA05
3F048AA06
3F048AB03
3F048BA06
3F048BB05
3F048BB09
3F048BB10
3F048CA02
3F048DA06
3F048DB02
3F048EB24
3F049CA33
3F049DA12
3F049DB04
3F049LA08
3F049LB04
(57)【要約】
【課題】シンプルな構成で揺動軸部材の振動の影響を軽減できる厚み検知装置の提供。
【解決手段】基準ローラ60と複数の検知ローラ12との間を搬送される紙葉類100の厚みを、基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量に基づいて検知する厚み検知装置。検知ローラ12を回転可能に支持する検知ブロック10と、複数の検知ブロック10を揺動可能に支持する揺動軸部材50と、検知ローラ12を基準ローラ60の方へ付勢するための付勢部材40と、検知ブロック10に設けた被検知部13の変位量を相対変位量として検知するセンサ30と、を備える。基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入した際に揺動軸部材50に作用する突入力と平行な第一方向A1と、相対変位量を検知する際のセンサの検知方向である第二方向A2と、が交差する角度である交差角が、45度よりも大きくなるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準ローラと、前記基準ローラに対向する複数の検知ローラと、の間を搬送される紙葉類の厚みを、前記基準ローラに対する前記検知ローラの相対変位量に基づいて検知する厚み検知装置であって、
前記複数の検知ローラのうちの少なくとも1つを回転可能に支持する検知ブロックと、
複数の前記検知ブロックを揺動可能に支持する揺動軸部材と、
前記検知ローラを前記基準ローラの方へ付勢するための付勢部材と、
前記検知ブロックに設けた被検知部に対向し、前記被検知部の変位量を前記相対変位量として検知するセンサと、を備え、
前記基準ローラと前記検知ローラとの間に前記紙葉類が突入した際に前記揺動軸部材に作用する突入力と平行な第一方向と、前記相対変位量を検知する際の前記センサの検知方向である第二方向と、が交差する角度である交差角が、45度よりも大きくなるように構成されている厚み検知装置。
【請求項2】
前記突入力の前記第二方向に平行な分力が、前記突入力の前記第二方向に直交する分力よりも小さくなるように構成されている請求項1に記載の厚み検知装置。
【請求項3】
前記被検知部は前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、
前記センサは、前記第二方向に沿って配置された第一ホール素子及び第二ホール素子を有し、前記第一ホール素子と前記磁石との距離である第一距離、及び、前記第二ホール素子と前記磁石との距離である第二距離を検知すると共に、前記第一距離と前記第二距離との差に基づいて前記被検知部の変位量を検知するように構成されている請求項1または2に記載の厚み検知装置。
【請求項4】
前記被検知部は前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、
前記センサは、1つのホール素子を有し、前記ホール素子と前記磁石との距離に基づいて前記被検知部の変位量を検知し、
前記磁石の移動方向が前記第二方向である請求項1または2に記載の厚み検知装置。
【請求項5】
前記第二方向に視て、前記ホール素子は前記磁石の外周縁部よりも内側の領域に位置する請求項4に記載の厚み検知装置。
【請求項6】
基準ローラと、前記基準ローラに対向する複数の検知ローラと、の間を搬送される紙葉類の厚みを、前記基準ローラに対する前記検知ローラの相対変位量に基づいて検知する厚み検知装置であって、
前記複数の検知ローラのうちの少なくとも1つを回転可能に支持する検知ブロックと、
複数の前記検知ブロックを揺動可能に支持する揺動軸部材と、
前記検知ローラを前記基準ローラの方へ付勢するための付勢部材と、
前記検知ブロックに設けた被検知部に対向し、前記被検知部の変位量を前記相対変位量として検知するセンサと、を備え、
前記揺動軸部材の中心軸と前記検知ローラの回転軸とに直交する方向である軸間方向は、前記紙葉類が搬送される方向である搬送方向と交差しており、
前記被検知部は前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、
前記センサは、第一ホール素子及び第二ホール素子を有し、前記第一ホール素子と前記磁石との距離である第一距離、及び、前記第二ホール素子と前記磁石との距離である第二距離を検知すると共に、前記第一距離と前記第二距離との差に基づいて前記被検知部の変位量を検知するように構成され、
前記第一ホール素子及び前記第二ホール素子は、前記軸間方向と交差する角度が45度より大きい方向である配置方向に沿って前記センサに配置されている、厚み検知装置。
【請求項7】
基準ローラと、前記基準ローラに対向する複数の検知ローラと、の間を搬送される紙葉類の厚みを、前記基準ローラに対する前記検知ローラの相対変位量に基づいて検知する厚み検知装置であって、
前記複数の検知ローラのうちの少なくとも1つを回転可能に支持する検知ブロックと、
複数の前記検知ブロックを揺動可能に支持する揺動軸部材と、
前記検知ローラを前記基準ローラの方へ付勢するための付勢部材と、
前記検知ブロックの前端部に設けた被検知部の前方に位置し、前記被検知部の変位量を前記相対変位量として検知するセンサと、を備え、
前記被検知部は、上下方向において前記揺動軸部材と重複する高さ位置に、前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、
前記センサは、第一ホール素子及び第二ホール素子を有し、前記第一ホール素子と前記磁石との距離である第一距離、及び、前記第二ホール素子と前記磁石との距離である第二距離を検知すると共に、前記第一距離と前記第二距離との差に基づいて前記被検知部の変位量を検知するように構成され、
前記第一ホール素子及び前記第二ホール素子は、上下方向において前記揺動軸部材と重複する高さ位置に、上下に並んで前記センサに配置されている、厚み検知装置。
【請求項8】
前記揺動軸部材は、前記紙葉類の搬送方向において、前記基準ローラ及び前記複数の検知ローラよりも下流側に配置されている請求項1~7の何れか一項に記載の厚み検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚み検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣等の紙葉類の厚みを検知する厚み検知装置が利用されている。例えば、紙幣処理装置では、テープ等で貼り合わせた変造紙幣を発見するために、厚み検知装置が利用される。特許文献1に開示された厚み検知装置では、基準ローラ及び検知ローラが備えられ、基準ローラと検知ローラとは外周面部が接触するように対向配置されている。基準ローラの位置は固定されている。検知ローラは検知ブロックに回転可能に支持され、検知ブロックは揺動軸部材(文献では「支持軸」)の中心軸まわりに揺動可能に構成されている。この構成によって、基準ローラと検知ローラの間を紙葉類が通過する際、検知ローラが上向きに揺動する。厚み検知装置は、検知ローラの基準ローラに対する変位量(文献では「移動量」)に基づいて紙葉類の厚みを検知する。
【0003】
特許文献1に記載の厚み検知装置では、検知ローラ及び検知ブロックが横一列に複数並ぶ状態で揺動軸部材に支持されている。この構成において、紙葉類の搬送速度が高速になると、紙葉類が基準ローラと検知ローラの間に突入する際の衝撃が、検知ローラから検知ブロックを介して揺動軸部材に伝達し、揺動軸部材の長手方向中央部分が振動する場合があった。揺動軸部材が振動すると、センサ(文献では「センサ部」)が検知する検知ローラの変位量に、揺動軸部材の振動によるノイズが加わる。このため、揺動軸部材の振動に起因してセンサの出力信号が乱れ、厚み検知の精度が低下する虞があった。この不都合を解消する手段として、特許文献1に記載の厚み検知装置では、揺動軸部材の長手方向における略中央部分に支持部材が設けられ、揺動軸部材の振動が支持部材によって抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の技術においては、支持部材が設けられる構成によって、構成が複雑となり、コストも増加する。また、厚み検知装置の検知幅のうち、支持部材の横幅の分だけ不感領域が発生する。
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明は、従来の厚み検知装置よりも、シンプルな構成で揺動軸部材の振動の影響を軽減できる厚み検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基準ローラと、前記基準ローラに対向する複数の検知ローラと、の間を搬送される紙葉類の厚みを、前記基準ローラに対する前記検知ローラの相対変位量に基づいて検知する厚み検知装置であって、前記複数の検知ローラのうちの少なくとも1つを回転可能に支持する検知ブロックと、複数の前記検知ブロックを揺動可能に支持する揺動軸部材と、前記検知ローラを前記基準ローラの方へ付勢するための付勢部材と、前記検知ブロックに設けた被検知部に対向し、前記被検知部の変位量を前記相対変位量として検知するセンサと、を備え、前記基準ローラと前記検知ローラとの間に前記紙葉類が突入した際に前記揺動軸部材に作用する突入力と平行な第一方向と、前記相対変位量を検知する際の前記センサの検知方向である第二方向と、が交差する角度である交差角が、45度よりも大きくなるように構成されている。
【0008】
突入力が第一方向に作用すると、揺動軸部材は第一方向に沿って振動しがちとなる。本発明では、センサの検知方向である第二方向が第一方向に対して45度よりも大きくずれる構成である。このため、揺動軸部材、検知ブロック、及び被検知部材が第一方向に沿って振動しても、交差角が45度よりも大きいことによって、被検知部材の第二方向に沿った振動幅は比較的小さくなるから、センサ出力における突入力に起因するノイズは比較的小さくなる。従って、揺動軸部材の長手方向中央部分が特許文献1に開示されたような支持部材に支持される構成でなくても、センサは被検知部の変位量に基づいて検知ローラの相対変位量を精度よく検知可能となる。これにより、従来の厚み検知装置と比較して、シンプルな構成で揺動軸部材の振動の影響を軽減できる厚み検知装置が実現される。
【0009】
本発明において、前記突入力の前記第二方向に平行な分力が、前記突入力の前記第二方向に直交する分力よりも小さくなるように構成されていると好適である。
【0010】
本構成によると、センサの検知方向に、できるだけ突入力を作用させない構成となっている。このことから、センサが検知する被検知部の変位量に、突入力によるノイズが加わり難くなる。これにより、センサは、突入力の影響を軽減しながら、被検知部の変位量に基づいて検知ローラの相対変位量を精度よく検知可能となる。
【0011】
本発明において、前記被検知部は前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、前記センサは、前記第二方向に沿って配置された第一ホール素子及び第二ホール素子を有し、前記第一ホール素子と前記磁石との距離である第一距離、及び、前記第二ホール素子と前記磁石との距離である第二距離を検知すると共に、前記第一距離と前記第二距離との差異に基づいて前記被検知部の変位量を検知するように構成されていると好適である。
【0012】
本構成によると、二つのホール素子として第一ホール素子及び第二ホール素子が第二方向に沿って並んで配置されている。第一ホール素子と磁石との距離である第一距離が第一ホール素子によって検知され、第二ホール素子と磁石との距離である第二距離が第二ホール素子によって検知される。そして、第一距離と第二距離との差異に基づいて、センサは磁石(被検知部)の変位量を検知する。なお、本発明において『第一距離と第二距離との差異』とは、第一距離と第二距離との差と、第一距離と第二距離との比率と、の両方の意味を含む。磁石が第二方向に沿って変位すると、第一距離と第二距離との差異に変化が生じ、当該差異の変化量に応じて磁石の変位量が検知される。揺動軸部材が第一方向に沿って振動すると、磁石が揺動軸部材の振動に起因して二つのホール素子に対して近づいたり遠ざかったりする。このとき、第一距離と第二距離と夫々は波のように変化するが、第二方向においては、磁石の変位量のうち揺動軸部材の振動に起因する割合は小さいため、第一距離と第二距離との差異の変化は、第一距離と第二距離と夫々の変化と比較して小さい。これにより、センサは、被検知部の第二方向への変位量に基づいて検知ローラの相対変位量を精度よく検知可能となる。
【0013】
本発明において、前記被検知部は前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、前記センサは、1つのホール素子を有し、前記ホール素子と前記磁石との距離に基づいて前記被検知部の変位量を検知し、前記磁石の移動方向が前記第二方向であると好適である。
【0014】
本構成によると、センサは、一つのホール素子と磁石との距離に基づいて被検知部の変位量を検知するため、磁石が第二方向に沿って移動すると、ホール素子と磁石との距離に変化が生じ、ホール素子と磁石との距離の変化量が、そのままセンサによって検知される。揺動軸部材が第一方向に沿って振動しても、第二方向においては、磁石の変位量のうち揺動軸部材の振動に起因する割合は小さいため、ホール素子と磁石との距離の変化量に大きな変化は生じない。これにより、センサは、被検知部の第二方向への変位量に基づいて検知ローラの相対変位量を精度よく検知可能となる。
【0015】
本発明において、前記第二方向に視て、前記ホール素子は前記磁石の外周縁部よりも内側の領域に位置すると好適である。
【0016】
本構成によって、揺動軸部材が第一方向に沿って振動しても、ホール素子は磁石の外周縁部よりも外側の領域に外れ難くなって、ホール素子は常に磁石を適切な距離で検知できる。これにより、センサは、検知ローラの相対変位量を安定的に検知可能となる。
【0017】
本発明の厚み検知装置は、基準ローラと、前記基準ローラに対向する複数の検知ローラと、の間を搬送される紙葉類の厚みを、前記基準ローラに対する前記検知ローラの相対変位量に基づいて検知する厚み検知装置であって、前記複数の検知ローラのうちの少なくとも1つを回転可能に支持する検知ブロックと、複数の前記検知ブロックを揺動可能に支持する揺動軸部材と、前記検知ローラを前記基準ローラの方へ付勢するための付勢部材と、前記検知ブロックに設けた被検知部に対向し、前記被検知部の変位量を前記相対変位量として検知するセンサと、を備え、前記揺動軸部材の中心軸と前記検知ローラの回転軸とに直交する方向である軸間方向は、前記紙葉類が搬送される方向である搬送方向と交差しており、前記被検知部は前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、前記センサは、第一ホール素子及び第二ホール素子を有し、前記第一ホール素子と前記磁石との距離である第一距離、及び、前記第二ホール素子と前記磁石との距離である第二距離を検知すると共に、前記第一距離と前記第二距離との差に基づいて前記被検知部の変位量を検知するように構成され、前記第一ホール素子及び前記第二ホール素子は、前記軸間方向と交差する角度が45度より大きい方向である配置方向に沿って前記センサに配置されている。
【0018】
基準ローラと検知ローラとの間に紙葉類が突入するとき、突入力は、揺動軸部材の中心軸と検知ローラの回転軸とに亘る軸間方向に作用する場合がある。本発明では、第一ホール素子及び第二ホール素子の配置方向と、突入力の掛かる軸間方向と、のなす角度が45度よりも大きな交差角となるように、第一ホール素子及び第二ホール素子が配置されている。第一ホール素子と磁石との距離である第一距離が第一ホール素子によって検知され、第二ホール素子と磁石との距離である第二距離が第二ホール素子によって検知される。そして、第一距離と第二距離との差異に基づいて、センサは磁石(被検知部)の変位量を検知する。なお、本発明において『第一距離と第二距離との差異』とは、第一距離と第二距離との差と、第一距離と第二距離との比率と、の両方の意味を含む。磁石が配置方向に沿って変位すると、第一距離と第二距離との差異に変化が生じ、当該差異の変化量に応じて磁石の変位量が検知される。揺動軸部材が軸間方向に沿って振動すると、磁石が揺動軸部材の振動に起因して二つのホール素子に対して近づいたり遠ざかったりする。このとき、第一距離と第二距離と夫々は波のように変化するが、配置方向においては、磁石の変位量のうち揺動軸部材の振動に起因する割合は小さいため、第一距離と第二距離との差異の変化は、第一距離と第二距離と夫々の変化と比較して小さい。このことから、第一ホール素子及び第二ホール素子の配置方向と、突入力の掛かる軸間方向と、のなす角度が45度以下である場合と比較して、突入力に起因して揺動軸部材が振動する場合であっても、センサが検知する被検知部の変位量に、揺動軸部材の振動によるノイズが加わり難くなる。このため、揺動軸部材の長手方向中央部分が特許文献1に開示されたような支持部材に支持される構成でなくても、センサは被検知部の変位量に基づいて検知ローラの相対変位量を精度よく検知可能となる。これにより、従来の厚み検知装置と比較して、シンプルな構成で揺動軸部材の振動の影響を軽減できる厚み検知装置が実現される。
【0019】
本発明の厚み検知装置は、基準ローラと、前記基準ローラの上方に配置された複数の検知ローラと、の間を搬送される紙葉類の厚みを、前記基準ローラに対する前記検知ローラの相対変位量に基づいて検知する厚み検知装置であって、前記複数の検知ローラのうちの少なくとも1つを回転可能に支持する検知ブロックと、複数の前記検知ブロックを揺動可能に支持する揺動軸部材と、前記検知ローラを前記基準ローラの方へ付勢するための付勢部材と、前記検知ブロックの前端部に設けた被検知部の前方に位置し、前記被検知部の変位量を前記相対変位量として検知するセンサと、を備え、前記被検知部は、上下方向において前記揺動軸部材と重複する高さ位置に、前記検知ブロックと共に揺動する磁石を有し、前記センサは、第一ホール素子及び第二ホール素子を有し、前記第一ホール素子と前記磁石との距離である第一距離、及び、前記第二ホール素子と前記磁石との距離である第二距離を検知すると共に、前記第一距離と前記第二距離との差異に基づいて前記被検知部の変位量を検知するように構成され、前記第一ホール素子及び前記第二ホール素子は、上下方向において前記揺動軸部材と重複する高さ位置に、上下に並んで前記センサに配置されている。
【0020】
本願の発明者は、解析の結果、基準ローラと検知ローラとの間に紙葉類が突入するとき、紙葉類の搬送方向と直交する方向よりも、紙葉類の搬送方向に突入力が強く作用するという知見を得た。このことから、揺動軸部材は、紙葉類の搬送方向に沿って強く振動する。本発明では、基準ローラと複数の検知ローラとが上下に並んで配置され、第一ホール素子及び第二ホール素子が上下に並んで配置されている。このため、簡易な構成で、第一ホール素子及び第二ホール素子の配置方向を、突入力の作用する方向と直交する方向に近付けることが可能となる。基準ローラと複数の検知ローラとが上下に並んで配置された状態で、紙葉類の搬送方向は、水平方向または水平方向に近い方向となる。第一ホール素子と磁石との距離である第一距離が第一ホール素子によって検知され、第二ホール素子と磁石との距離である第二距離が第二ホール素子によって検知される。そして、第一距離と第二距離との差異に基づいて、センサは磁石(被検知部)の変位量を検知する。なお、本発明において『第一距離と第二距離との差異』とは、第一距離と第二距離との差と、第一距離と第二距離との比率と、の両方の意味を含む。また、磁石が揺動軸部材と重複する高さ位置に備えられ、第一ホール素子及び第二ホール素子が磁石よりも前側に位置する。この構成によって、センサは磁石(被検知部)の上下方向における変位量を検知する。つまり、磁石が上下方向に沿って変位すると、第一距離と第二距離との差異に変化が生じ、当該差異の変化量に応じて磁石の変位量が検知される。このとき、揺動軸部材が紙葉類の搬送方向に沿って振動すると、揺動軸部材の振動に起因して磁石が搬送方向に沿って振動し、二つのホール素子に対して近づいたり遠ざかったりする。第一距離と第二距離との値は波のように変化するが、上下方向においては、磁石の変位量のうち揺動軸部材の振動に起因する割合は小さいため、第一距離と第二距離との差異の変化は、第一距離及び第二距離の夫々の値の変化と比較して小さい。このことから、第一ホール素子及び第二ホール素子が紙葉類の搬送方向に沿って並ぶ構成と比較して、突入力に起因して揺動軸部材が振動する場合であっても、センサが検知する被検知部の変位量に、揺動軸部材の振動によるノイズが加わり難くなる。このため、揺動軸部材の長手方向中央部分が特許文献1に開示されたような支持部材に支持される構成でなくても、センサは被検知部の変位量に基づいて検知ローラの相対変位量を精度よく検知可能となる。これにより、従来の厚み検知装置と比較して、シンプルな構成で揺動軸部材の振動の影響を軽減できる厚み検知装置が実現される。
【0021】
本発明において、前記揺動軸部材は、前記紙葉類の搬送方向において、前記基準ローラ及び前記複数の検知ローラよりも下流側に配置されていると好適である。
【0022】
本願の発明者は、解析の結果、紙葉類の搬送方向において、揺動軸部材が基準ローラ及び検知ローラよりも上流側に配置されていると検知ローラ及び検知ブロックが揺動し易くなり、揺動軸部材が基準ローラ及び検知ローラよりも下流側に配置されていると検知ローラ及び検知ブロックが揺動し難くなるという知見を得た。紙葉類が基準ローラと検知ローラの間に突入すると、突入の衝撃によって検知ローラが瞬間的に紙葉類から上側へ離れるため、センサによって検知される検知ローラの相対変位量にオーバーシュートが発生する。本構成であれば、揺動軸部材が基準ローラ及び検知ローラよりも下流側に配置されているため、揺動軸部材が基準ローラ及び検知ローラよりも上流側に配置される構成と比較して、検知ローラ及び検知ブロックが揺動し難くなり、センサによって検知される検知ローラの相対変位量のオーバーシュートが抑制される。これにより、紙葉類が基準ローラと検知ローラとの間に突入するタイミングであっても、センサは検知ローラの相対変位量を精度よく検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】複数の検知ブロックを支持する支持軸部材の支持構造を示す図である。
【
図3】第一方向と第二方向との関係を示す原理図である。
【
図4】第一方向と第二方向との関係を示す原理図である。
【
図5】従来技術と本実施形態とで相対変位量の波形の比較を示すグラフ図である。
【
図6】スクレーパを備える厚み検知装置の構成を示す模式図である。
【
図7】スクレーパ及びカムの配置、及び、検知ブロックとの位置関係を示す図である。
【
図9】異なる形態のスクレーパを示す模式図である。
【
図10】異なる形態のスクレーパを示す模式図である。
【
図11】異なる形態のスクレーパを示す模式図である。
【
図12】異なる形態のスクレーパを示す模式図である。
【
図13】厚み検知装置の別実施形態を示す模式図である。
【
図14】厚み検知装置の別実施形態を示す模式図である。
【
図15】厚み検知装置の別実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔厚み検知装置の構成について〕
以下、添付図面を参照しながら、厚み検知装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、厚み検知装置によって紙葉類100の厚みを検知する方法を説明するための模式図である。なお、
図1に示す矢印「U」は上方向を示し、
図1に示す矢印「D」は下方向を示す。矢印「U」及び「D」は、上下方向の位置関係を示すものである。
図2以降の矢印「U」及び「D」も同様のものである。
【0025】
図1に示すように、厚み検知装置に基準ローラ60と複数の検知ローラ12とが備えられている。厚み検知の対象となる紙葉類100は、搬送路70に沿って搬送方向A3に示す方向に搬送される。そして紙葉類100は、検知ローラ12と基準ローラ60との間に挟まれた状態で基準ローラ60と検知ローラ12との間を通過する。このとき、検知ローラ12は、
図1において紙面時計回りに回転し、基準ローラ60は、
図1において紙面反時計回りに回転する。なお、検知ローラ12及び基準ローラ60の回転方向は、
図1~
図12において共通する。厚み検知装置は、紙葉類100が基準ローラ60と検知ローラ12との間を通過するときに、基準ローラ60に対する複数の検知ローラ12の相対変位量を検知することによって、紙葉類100の厚みを検知する。
【0026】
本実施形態では、対象となる紙葉類100の全面に亘って厚みを検知するため、搬送路70を搬送される紙葉類100の幅より広い範囲に複数の検知ローラ12が配置されている(
図2参照)。なお、厚み検知装置が紙葉類100の厚みを検知する幅は任意に設定可能である。
【0027】
基準ローラ60と複数の検知ローラ12とは上下方向に対向する状態で配置されている。基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が存在しないとき、複数の検知ローラ12の夫々の外周面部は基準ローラ60の外周面部と接触する。
【0028】
基準ローラ60は、回動軸部材61によって回転可能に支持されており、基準ローラ60の位置は固定されている。このため、紙葉類100が基準ローラ60と検知ローラ12との間に挟まれる場合であっても、基準ローラ60の位置は変化しない。
【0029】
検知ローラ12は、回動軸部材11によって回転可能に支持されている。回動軸部材11は検知ブロック10の下部に固定されている。検知ブロック10は、例えば金属材料や樹脂材料によって構成され、揺動軸部材50に揺動可能に支持される。このことから、検知ローラ12は揺動軸部材50の中心軸まわりに揺動可能なように構成されている。揺動軸部材50は、紙葉類100の搬送方向A3において、基準ローラ60及び複数の検知ローラ12よりも上流側に配置されている。紙葉類100が基準ローラ60と検知ローラ12との間に挟まれると、検知ローラ12は上向きに揺動する。つまり、検知ローラ12は基準ローラ60に対して変位可能に構成されている。
【0030】
上述したように、厚み検知装置は、紙葉類100の厚みを、基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量に基づいて検知する。『相対変位量』とは、基準ローラ60の外周面部と検知ローラ12の外周面部とが接触する状態における検知ローラ12の位置を基準として、紙葉類100が検知ローラ12と基準ローラ60との間に挟まれる際の検知ローラ12の変位量である。
【0031】
上述したように、検知ブロック10は揺動軸部材50に揺動可能に支持される。具体的には、
図1に示すように、検知ブロック10に貫通穴が形成され、当該貫通穴に管状のスリーブ14が挿通され固定されている。スリーブ14は金属材料によって構成されている。揺動軸部材50の中心軸方向において、スリーブ14は検知ブロック10より長い寸法に構成され、スリーブ14の両端部が検知ブロック10に対して外側に露出している。スリーブ14は、揺動軸部材50に外嵌し、揺動軸部材50の軸受部材として機能する。揺動軸部材50の両端は、保持ブロック20に固定されている(
図2参照)。紙葉類100の搬送方向A3において、揺動軸部材50は、検知ローラ12を支持する回動軸部材11に対して上流側に位置する。
【0032】
図1に示すように、検知ブロック10のうち、検知ローラ12の上方に位置する部分に凸部10Aが形成されている。この凸部10Aの上面部は、板バネ40(本発明の『付勢部材』)によって下方へ付勢されている。板バネ40の一端側部分が保持ブロック20に固定され、板バネ40の他端側部分が凸部10Aに接触する。この構成によって、板バネ40は保持ブロック20を下方へ付勢し、検知ローラ12を基準ローラ60の方へ付勢する。なお、付勢部材は、板バネ40に限定されず、他の種類のバネを利用する態様であってもよいし、ゴム等を利用する態様であってもよい。つまり、付勢部材は、検知ローラ12を基準ローラ60の方へ付勢するためのものであれば良い。
【0033】
検知ローラ12と基準ローラ60との間に紙葉類100がないときは、検知ローラ12の外周面部が、板バネ40によって下方へ付勢され、基準ローラ60の外周面部に押しつけられる。搬送路70を搬送されてきた紙葉類100が、検知ローラ12と基準ローラ60との間に進入すると、検知ローラ12が上方に押し上げられる。このとき、検知ブロック10は、板バネ40の付勢力に抗して揺動軸部材50の中心軸まわりに揺動する。
【0034】
検知ブロック10の凸部10Aに被検知部13が設けられている。被検知部13は、凸部10Aのうち、紙葉類100の搬送方向A3における下流側の面部に設けられている。被検知部13は磁石を有し、検知ブロック10と共に揺動する。被検知部13に設けられた磁石は、永久磁石であっても良いし、電磁石であっても良い。
【0035】
検知ブロック10が揺動軸部材50の中心軸まわりに揺動するのに伴って、被検知部13が変位する。被検知部13に対して、紙葉類100の搬送方向A3における下流側にセンサ30が設けられている。センサ30は、検知ブロック10に設けた被検知部13に対向し、被検知部13の変位量を、基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量として検知する。
【0036】
本実施形態では、センサ30は二つのホール素子31を有し、二つのホール素子31が上下方向に沿って並ぶ。ホール素子31は、被検知部13の磁石との距離を示す信号を出力するように構成されている。本実施形態では、二つのホール素子31の一方を『第一ホール素子31a』と称し、二つのホール素子31の他方を『第二ホール素子31b』と称する。なお、
図1,
図6~
図10,
図12では二つのホール素子31が上下方向に沿って並ぶが、第一ホール素子31aと第二ホール素子31bとの夫々は上下どちらに配置されても良い。
【0037】
センサ30が第一ホール素子31a及び第二ホール素子31bを有する構成では、第一ホール素子31aと被検知部13との距離(本発明の『第一距離』)と、第二ホール素子31bと被検知部13との距離(本発明の『第二距離』)と、に差が生じる。また、被検知部13が変位すると、第一距離と第二距離との夫々が変化することによって第一ホール素子31aと第二ホール素子31bとの夫々から出力される信号が変化する。このとき、第一ホール素子31aと第二ホール素子31bとの夫々から出力される信号の差も変化する。センサ30は、第一ホール素子31aと第二ホール素子31bとの夫々から出力される信号の差を検知することによって、被検知部13の変位量を検知する。つまり、センサ30は、第一距離及び第二距離を検知すると共に、第一距離と第二距離との差異(第一距離と第二距離との差であっても良いし、第一距離と第二距離との比率であっても良い)に基づいて、被検知部13の変位量を検知するように構成されている。この構成によって、センサ30は、基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量を検知する。
【0038】
検知ローラ12と基準ローラ60との間に紙葉類100が進入して、紙葉類100の厚みの分だけ検知ローラ12が押し上げられる。検知ローラ12が押し上げられるのに応じて検知ブロック10が揺動して、被検知部13の位置が変化する。被検知部13の位置が変化すると、二つのホール素子31の夫々から出力される信号が変化する。センサ30は、この信号の変化量に基づいて、紙葉類100によって検知ローラ12が押し上げられた量、すなわち紙葉類100の厚みを検知することができる。紙葉類100が検知ローラ12と基準ローラ60の間を通過した後は、板バネ40によって検知ブロック10が押し下げられ、検知ローラ12の外周面部が基準ローラ60の外周面部と接触した状態に戻る。
【0039】
図2は、複数の検知ブロック10を取り付けた揺動軸部材50の支持方法を示す図である。
図2は、検知ブロック10を
図1の右側から見た図を示している。スリーブ14は、軸方向両端が、検知ブロック10の本体部から僅かに外側に出ている。このため、
図2に部分拡大図で示したように、隣接するスリーブ14の端面部分同士が接触し、隣接する検知ブロック10同士は接触しない。一方の検知ブロック10が揺動する際に、一方の検知ブロック10から他方の検知ブロック10に対して摩擦力が作用しないため、他方の検知ブロック10が不意に揺動する虞が回避される。
【0040】
揺動軸部材50の両端が保持ブロック20に固定され、保持ブロック20は、揺動軸部材50の両端を保持する保持部として機能する。両端が保持ブロック20に固定された揺動軸部材50に、複数の検知ブロック10が取り付けられている。複数の検知ブロック10が揺動軸部材50の長手方向に沿って並列に配置されている。
【0041】
図2に示すように、揺動軸部材50の軸方向両外側にある2つの検知ブロック10と保持ブロック20との間に、それぞれ圧縮バネ51が取り付けられている。圧縮バネ51は、検知ブロック10のスリーブ14を、両外側から、揺動軸部材50の軸方向(スラスト方向)に押し付けるように付勢する。
【0042】
本実施形態では、1つの検知ブロック10に2つの検知ローラ12が取り付けられている。複数の検知ローラ12は、紙葉類100の搬送方向A3と垂直な方向に横並びの状態で配置されている。一つまたは複数の基準ローラ60は、各検知ローラ12と対向する状態で配置され、揺動軸部材50の長手方向と平行な方向に沿って設けられている。複数の検知ローラ12は、紙葉類100の搬送される幅より広い範囲に亘って配置される。すなわち、紙葉類100の搬送方向A3と垂直な搬送路幅方向(揺動軸部材50の長手方向)において、当該方向における紙葉類100の長さ(幅)を超える範囲に、複数の検知ローラ12が配置されている。換言すると、複数の検知ローラ12は、配列方向両外側に配置された2つの検知ローラ12の間の距離が、搬送方向A3と垂直な方向における紙葉類100の長さ(幅)より大きくなるように配置されている。複数の検知ローラ12のうち、紙葉類100が通過する位置の検知ローラ12が押し上げられて検知ブロック10が揺動する。センサ30は、検知ブロック10の変位に基づいて紙葉類100の厚みを検知する。
【0043】
例えば紙葉類100にテープが貼り付けられている場合、紙葉類100のうちテープが貼られた部分によって押し上げられる検知ローラ12の揺動変位量は、紙葉類100のうちテープがない部分によって押し上げられる検知ローラ12の揺動変位量よりも、テープの厚み分だけ大きくなる。つまり、厚み検知装置は、複数の検知ブロック10のうち、テープの厚み分だけ余分に大きく揺動した検知ブロック10を検知することによって、紙葉類100に貼り付けられたテープの位置を特定可能なように構成されている。このように、厚み検知装置は、検知ブロック10の揺動変位量に基づいて、紙葉類100にテープが貼り付けられていることを検知可能に構成されている。
【0044】
〔センサの検知方向について〕
検知ローラ12及び検知ブロック10が横一列に複数並ぶ状態で揺動軸部材50に支持されている。この構成において、紙葉類100の搬送速度が高速になると、紙葉類100が基準ローラ60と検知ローラ12との間に突入するときに衝撃が発生する場合がある。この衝撃は、検知ローラ12から検知ブロック10を介して揺動軸部材50に伝達する。そして、揺動軸部材50の長手方向中央部分が当該衝撃によって振動する場合がある。揺動軸部材50が振動すると、センサ30が検知する検知ローラ12の変位量に、揺動軸部材50の振動によるノイズが加わる。このため、揺動軸部材50の振動に起因してセンサ30の出力信号が乱れ、厚み検知の精度が低下する虞がある。
【0045】
上述したように、センサ30は、第一ホール素子31aと被検知部13との距離(本発明の『第一距離』)と、第二ホール素子31bと被検知部13との距離(本発明の『第二距離』)と、の差異に基づいて被検知部13の変位量を検知する。このため、被検知部13が変位する方向が、第一ホール素子31aと第二ホール素子31bとの並列方向に沿うほど、センサ30が基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量を精度良く検知できる。第一ホール素子31aと第二ホール素子31bとの並列方向を、本実施形態では検知方向A2と称する。
【0046】
本出願の発明者は、揺動軸部材50の振動を解析し、揺動軸部材50が特定の方向において強く振動するという知見を得た。揺動軸部材50が強く振動する方向は、基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入した際に揺動軸部材50に突入力が作用する方向と平行な方向であって、この方向を
図1で作用方向A1として示している。作用方向A1は、本発明の『第一方向』である。この第一方向がセンサ30の検知方向A2に対して大きくずれるほど、揺動軸部材50の振動によるノイズがセンサ30の出力信号に加わり難くなり、厚み検知の精度が向上する。センサ30の検知方向A2は、本発明の『第二方向』である。
【0047】
図3では、第一方向である作用方向A1と、第二方向である検知方向A2と、が直交(または略直交)で交わっている。揺動軸部材50が作用方向A1に沿って振動すると、被検知部13が揺動軸部材50の振動に起因して二つのホール素子31に対して近づいたり遠ざかったりする。このとき、第一距離と第二距離と夫々は波のように変化するが、検知方向A2においては、被検知部13の変位量のうち揺動軸部材50の振動に起因する割合は小さいため、第一距離と第二距離との差異の変化は、第一距離と第二距離と夫々の変化と比較して小さい。この状態であると、センサ30は揺動軸部材50の振動による影響を最も受け難くなり、厚み検知の精度が最も向上する。
【0048】
作用方向A1と検知方向A2とが直交するように、センサ30と被検知部13とが配置されると理想である。しかし、厚み検知装置における部品のスペースの取り合いの関係や、限られたコスト等の要因によって、作用方向A1と検知方向A2とが直交するように、センサ30と被検知部13とを配置する構成は困難な場合が多い。このため、
図4で示すように、作用方向A1と検知方向A2とが直交しなくても、作用方向A1と検知方向A2とが直交に近い交差角で交差すると良い。
図4では、作用方向A1に作用する突入力の分力として、第二方向(検知方向A2)に平行な分力A12と、第二方向に垂直な分力A11と、が示されている。
図4に示す実施形態では、第二方向に平行な分力A12が、第二方向に直交する分力A11よりも小さくなるように構成されている。この構成によって、揺動軸部材50の振動による影響を、出来るだけセンサ30に及ぼし難くする構成が可能である。作用方向A1(第一方向)と検知方向A2(第二方向)とが交差する角度である交差角が、45度よりも大きいことが好ましい。このため、第一方向と第二方向とが交差する角度である交差角が、45度よりも大きくなるように、厚み検知装置は構成されている。
【0049】
本願の発明者は、解析の結果、基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入するとき、紙葉類100の搬送方向A3と直交する方向よりも、紙葉類100の搬送方向A3に突入力が強く作用するという知見を得た。
図1に示す厚み検知装置において、揺動軸部材50には、検知ローラ12の回動軸部材11から揺動軸部材50への方向に突入力が作用する。この突入力の方向は、揺動軸部材50の中心軸と検知ローラ12の回転軸とに直交する方向(本発明の『軸間方向』)である。基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入するとき、この軸間方向に突入力が強く作用する。この軸間方向は、作用方向A1であって、基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入した際に揺動軸部材50に作用する突入力と平行な第一方向となる。この第一方向と、紙葉類100の搬送方向A3と、が交差する角度は45度よりも小さくなるように、厚み検知装置は構成されている。
【0050】
図1では、二つのホール素子31が、被検知部13の移動方向に沿って上下に並んでおり、センサ30の検知方向A2は上下に延びる。被検知部13の移動方向が、センサ30の検知方向A2であって、基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量を検知する際の第二方向となる。換言すると、第一ホール素子31a及び第二ホール素子31bが第二方向に沿って配置されている。この第二方向と、紙葉類100の搬送方向A3と、の交差角は直交または略直交の角度となるように、厚み検知装置は構成されている。
【0051】
この構成によって、揺動軸部材50に突入力が作用する作用方向A1である第一方向と、センサ30の検知方向A2である第二方向と、が交差する角度である交差角が、45度よりも大きくなるように、厚み検知装置は構成されている。また、
図1に示す実施形態では、第一ホール素子31a及び第二ホール素子31bは、上述の『軸間方向』と交差する角度が45度より大きい方向(本発明の『配置方向』)に沿って配置されている。つまり、作用方向A1と検知方向A2とが45度よりも大きくずれる構成となっている。
【0052】
図5は、センサ30の出力波形、即ち基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量の波形を本実施形態と従来技術とで比較したグラフである。
図5のグラフの縦軸が相対変位量で、横軸が時間である。実線で示す波形が従来技術の出力波形で、破線で示す波形が本実施形態の波形である。従来技術は、上述の特許文献1に示す厚み検知装置から「支持部材80」を取り外したものである。特許文献1の厚み検知装置では、被検知部13が検知ブロック10の上端部に設けられ、二つのホール素子31が左右に並ぶ状態で被検知部13と対向する。特許文献1の厚み検知装置では、センサ30の検知方向A2が、紙葉類100の搬送方向A3と略同じである。
【0053】
本願の発明者の知見によると、基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入するとき、紙葉類100の搬送方向A3と直交する方向よりも、紙葉類100の搬送方向A3に突入力が強く作用する。このため、
図5に実線で示すように、従来技術の出力波形では、立ち上がり時のオーバーシュートと、その直後のアンダーシュートと、が見られる。一方、
図5に破線で示すように、本実施形態の出力波形では、立ち上がり時のオーバーシュートは見られるものの、その直後のアンダーシュートは従来技術と比較して抑制され、更にその後の収束性が向上している。このことから、本実施形態の厚み検知装置は、上述の特許文献1に示す厚み検知装置から「支持部材80」を取り外した構成と比較しても、厚み検知の精度が向上する。これにより、厚み検知の精度と、コストの抑制と、の両立が可能である。
【0054】
〔スクレーパを備える実施形態〕
以下、
図6~
図12を参照しながら別の実施形態 について説明する。紙葉類100に埃や粘着物などの異物が付着した状態で紙葉類100が搬送路70を通過すると、当該異物が紙葉類100から基準ローラ60の外周面部に転移する虞が考えられる。基準ローラ60の外周面部に異物が付着すると、検知ローラ12が当該異物に押し上げられることによって、センサ30の出力波形が乱れ、誤検知等が発生したり厚み検知の精度が低下したりする虞が考えられる。
【0055】
図6~
図12に示す実施形態では、基準ローラ60の下方にスクレーパ80が備えられている。紙葉類100の搬送方向A3に視て、基準ローラ60の下半分の部分とスクレーパ80とが重複する。スクレーパ80は、基準ローラ60の外周面部と摺接し、基準ローラ60の外周面部に付着した塵埃等の異物を除去可能に構成されている。
【0056】
なお、
図6~
図12に示す実施形態では、薄板状のスクレーパ90が検知ブロック10に支持されている。スクレーパ90は、検知ローラ12の外周面部に付着した異物を、検知ローラ12の回転に伴って除去するためのものである。スクレーパ90は、検知ローラ12に垂直または略垂直に当接しており、検知ローラ12の回転方向の如何にかかわらず、検知ローラ12の外周面部に付着した異物を除去することが可能である。
【0057】
図7に示すように、厚み検知装置に複数のスクレーパ80が備えられている。スクレーパ80の個数と、検知ブロック10の個数と、が同じとなっており、各検知ブロック10に対応してスクレーパ80が備えられている。複数のスクレーパ80の夫々は板バネ82に支持されている。板バネ82は、保持ブロック20に支持される構成であっても良いし、厚み検知装置における保持ブロック20以外の部材に支持されても良い。つまり、スクレーパ80は、厚み検知装置における所定の部材に支持されている。
【0058】
スクレーパ80及び板バネ82の下方に隣接する状態でカム81が備えられ、複数のカム81がカム軸部材83に支持されている。カム軸部材83が回転すると、複数のカム81はカム軸部材83と一体的に回転する。カム81の外周面部に突起部分81Aが形成されている。
図8に示すように、カム81の突起部分81Aは一周ごとに板バネ82と当接する。カム81が板バネ82に当接すると、板バネ82はカム81によって下方から上向きに押し上げられて弾性変形し、スクレーパ80が基準ローラ60の外周面部に摺接する。また、カム81の突起部分81Aが板バネ82から離れると、板バネ82は元の形状に戻り、スクレーパ80が基準ローラ60から離れる。
【0059】
基準ローラ60の外周面部にスクレーパ80が摺接することによって、基準ローラ60の外周面部に付着した塵埃等の異物が除去される。これにより、センサ30の出力波形が安定的になる。その結果、厚み検知の精度が維持され易くなり、誤検知等が発生し難くなる。
【0060】
なお、スクレーパ80は、厚み検知装置の低温起動時以外のタイミングで基準ローラ60に摺接する構成が望ましい。このため、スクレーパ80が、低温起動時以外のタイミングで基準ローラ60に摺接するように構成されても良い。
【0061】
全てのスクレーパ80が基準ローラ60に対して同時に摺接すると、スクレーパ80の摺動抵抗が大きくなって、基準ローラ60の回転負荷が大きくなる。このため、本実施形態の厚み検知装置は、各スクレーパ80の基準ローラ60に対する摺接タイミングがずれるように構成されている。具体的には、カム81の回転方向において、各カム81の突起部分81A~81Hが、他のカム81の突起部分に対して位相ずれするように角度をずらして配置される。
【0062】
図6~
図8に示す実施形態では、各カム81の突起部分81A~81Hが45度ずつ位相ずれしている。
図7に示すように、カム軸部材83の長手方向に沿って16個のカム81が設けられ、同一位相の突起部分81A~81Hを有するカム81が二つずつ存在する。
【0063】
全てのカム81の突起部分81A~81Hが同一方向に向き、突起部分81A~81Hが基準ローラ60に同時に摺接する場合に、基準ローラ60にFニュートンの押圧力が作用すると仮定する。
図7に示す実施形態では、基準ローラ60に対して同時に摺接するカム81の数が二個であるため、基準ローラ60に作用する押圧力は、(F/8)ニュートンとなる。また、全てのカム81の突起部分が他のカム81の突起部分に対して位相ずれする場合には、カム軸部材83が一回転する間に各突起部分が基準ローラ60に一つずつ摺接するため、基準ローラ60に作用する押圧力は、(F/16)ニュートンとなる。これにより、全てのスクレーパ80が基準ローラ60に対して同時に摺接する構成と比較して、スクレーパ80の摺動抵抗が小さくなって、基準ローラ60の回転負荷が小さくなる。
【0064】
なお、
図6~
図8に示す実施形態では、基準ローラ60に対して同時に摺接するカム81の数が二個であるが、この実施形態に限定されない。例えば、基準ローラ60に対して同時に摺接するカム81の数が一個であっても良いし、三個であっても良い。また、カム81は、例えば偏芯ローラであっても良い。
【0065】
図9~
図12に、スクレーパ80の別実施形態を示す。
図9及び
図10に示す実施形態では、支持軸部材88にスクレーパ80と連係機構84とが連結され、スクレーパ80及び連係機構84は支持軸部材88の中心軸まわりに一体的に揺動する。支持軸部材88を挟んでスクレーパ80と連係機構84とが振り分けられている。連係機構84は遊端側ほど上側に位置するように傾斜し、遊端部84Aが搬送路70に位置する。連係機構84の基端部と遊端部84Aとの間の部分に付勢部材85が備えられ、付勢部材85は連係機構84及びスクレーパ80を
図9及び
図10の紙面反時計回りに揺動するように付勢する。
図9及び
図10では付勢部材85はコイルバネとして示されているが、付勢部材85は、例えば板バネ、スポンジ部材等であっても良い。
図9に示すように、紙葉類100が搬送路70を搬送されるとき、紙葉類100が連係機構84の遊端部84Aと当接すると、連係機構84及びスクレーパ80は付勢部材85の付勢力に抗して、
図10の紙面時計回りに揺動する。そして、スクレーパ80が基準ローラ60の外周面部に摺接する。紙葉類100が搬送路70を通過して連係機構84の遊端部84Aと接触しなくなると、連係機構84及びスクレーパ80は付勢部材85の付勢力によって、
図9及び
図10の紙面反時計回りに揺動する。そして、スクレーパ80が基準ローラ60の外周面部に摺接しなくなる。
【0066】
図11及び
図12に示す実施形態では、支持軸部材89に連係機構86が連結され、スクレーパ80の遊端部86Aにスクレーパ80が連結されている。スクレーパ80と支持軸部材89との離間距離は、連係機構86と支持軸部材89との離間距離よりも長い。スクレーパ80及び連係機構86は支持軸部材89の中心軸まわりに一体的に揺動する。連係機構84は遊端側ほど上側に位置するように傾斜し、遊端部86Aが搬送路70に位置する。スクレーパ80は搬送路70よりも下側に位置する。連係機構86の基端部と遊端部86Aとの間の部分に付勢部材87が備えられ、付勢部材87は連係機構86及びスクレーパ80を
図11及び
図12の紙面時計回りに揺動するように付勢する。
図9及び
図10では付勢部材85はコイルバネとして示されているが、付勢部材85は、例えば板バネ、スポンジ部材等であっても良い。
図12に示すように、紙葉類100が搬送路70を搬送されるとき、紙葉類100が連係機構86の遊端部86Aと当接すると、連係機構86及びスクレーパ80は付勢部材87の付勢力に抗して、
図12の紙面反時計回りに揺動する。そして、スクレーパ80が基準ローラ60の外周面部に摺接する。紙葉類100が搬送路70を通過して連係機構86の遊端部86Aと接触しなくなると、連係機構86及びスクレーパ80は付勢部材87の付勢力によって、
図11及び
図12の紙面時計回りに揺動する。そして、スクレーパ80が基準ローラ60の外周面部に摺接しなくなる。なお、
図11及び
図12に示す実施形態では、スクレーパ80が紙葉類100を基準ローラ60と検知ローラ12との間にガイドするガイド部材として兼用されても良い。
【0067】
厚み検知装置の起動時、装置に備えられたモータは大きなトルクを発生させる必要がある。装置が低温であるとき、更に大きなトルクが必要となる。モータの性能は、起動に必要なトルクに応じて決定される。基準ローラ60とスクレーパ80とが接触している構成の場合、起動に必要なトルクが更に大きくなるので、基準ローラ60を駆動するモータの性能を高くする必要がある。
図9~
図12に示す実施形態であると、紙葉類100が搬送路70を通過しないときには基準ローラ60とスクレーパ80とが接触しない。従って、起動に必要なトルクの増大が抑制される。モータの性能を高くする必要が生じないため、コストの増大が抑制される。また、本実施形態であれば、基準ローラ60とスクレーパ80とが接触するタイミングが、紙葉類100が搬送路70を通過するタイミングに限定されるため、スクレーパ80の耐久性が向上する。
【0068】
なお、
図9~
図12に示す実施形態以外にも、例えば、搬送路70の途中に非接触センサが設けられ、非接触センサの検出信号に基づいてスクレーパ80を制御するアクチュエータが備えられる構成であっても良い。この場合、非接触センサは紙葉類100の通過を検知し、アクチュエータは、非接触センサの検知に基づいてスクレーパ80を基準ローラ60に摺接する状態と基準ローラ60に摺接しない状態とに切換可能に構成される。また、厚み検知装置の低温起動完了後に基準ローラ60等が適温に達したタイミング、厚み検知装置のイニシャル処理のタイミング、一回の取引終了のタイミングや一日の業務終了のタイミングに限定して、上述の
図6~
図12に示すスクレーパ80が基準ローラ60に摺接するように構成されても良い。
【0069】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0070】
(1)
図13に示すように、センサ30がホール素子32を一つだけ有する場合が考えられる。
図13に示す厚み検知装置では、
図2に示す形態と同様に一つの揺動軸部材50に複数の検知ブロック10が並列配置され、検知ブロック10に二つの検知ローラ12と一つの被検知部16とが備えられている。被検知部16は磁石を有し、検知ブロック10と共に揺動する。被検知部16に設けられた磁石は、永久磁石であっても良いし、電磁石であっても良い。なお、図示はしないが、検知ブロック10は不図示の付勢部材によって下向きに揺動するように付勢されている。また、
図13ではスクレーパ80を省略するが、
図13に示す実施形態にスクレーパ80が備えられても良い。
【0071】
揺動軸部材50には、検知ローラ12の回動軸部材11から揺動軸部材50への方向に突入力が作用する。
図13において、この突入力の方向を作用方向A1として示す。作用方向A1は、揺動軸部材50の中心軸と検知ローラ12の回転軸とに直交する軸間方向である。基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入するとき、作用方向A1に突入力が強く作用する。作用方向A1は、基準ローラ60と検知ローラ12との間に紙葉類100が突入した際に揺動軸部材50に作用する突入力と平行な第一方向となる。
【0072】
図13に示す実施形態では、被検知部16とホール素子32とが作用方向A1に対して直交または略直交する方向に沿って並べられている。被検知部16は検知ブロック10と共に揺動し、センサ30の検知方向A2に沿って移動する。検知方向A2は第二方向である。被検知部16の上面部分がホール素子32に対して遠近作用する。センサ30は一つのホール素子32を有し、ホール素子32と被検知部16との距離に基づいて、被検知部16の変位量を検知する。つまり、被検知部16の磁石の移動方向が第二方向である。
【0073】
図13に示す実施形態では、第二方向(検知方向A2)に視て、ホール素子32は被検知部16の外周縁部よりも内側の領域に位置する。このため、揺動軸部材50が第一方向に沿って振動する場合であっても、被検知部16の上面部分とホール素子32との離間距離は、揺動軸部材50の振動に起因して変化することが殆ど無い。これにより、厚み検知の精度が向上する。
【0074】
(2)
図14に示す実施形態では、被検知部13が検知ブロック10の前端部に備えられている。被検知部13は、上下方向において揺動軸部材50と重複する高さ位置に、検知ブロック10と共に揺動する磁石を有する。被検知部13に設けられた磁石は、永久磁石であっても良いし、電磁石であっても良い。なお、検知ブロック10の凸部10Bは、
図1等に示す凸部10Aと同様の構成を有し、凸部10Bの上面部は、板バネ40によって下方へ付勢されている。
【0075】
センサ30は、検知ブロック10の前端部に設けた被検知部13の前方に位置し、被検知部13の変位量を、基準ローラ60に対する検知ローラ12の相対変位量として検知する。また、センサ30は、上下方向において揺動軸部材50と重複する高さ位置に、上下に並んで配置された第一ホール素子31a及び第二ホール素子31bを有する。そしてセンサ30は、第一ホール素子31aと被検知部13の磁石との距離である第一距離、及び、第二ホール素子31bと当該磁石との距離である第二距離を検知すると共に、第一距離と第二距離との差に基づいて被検知部13の変位量を検知するように構成されている。
【0076】
揺動軸部材50は、紙葉類100の搬送方向A3に沿って強く振動する。揺動軸部材50が紙葉類100の搬送方向A3に沿って振動すると、揺動軸部材50の振動に起因して被検知部13の磁石が搬送方向A3に沿って振動し、二つのホール素子31に対して近づいたり遠ざかったりする。第一距離と第二距離との値は波のように変化するが、上下方向においては、磁石の変位量のうち揺動軸部材50の振動に起因する割合は小さいため、第一距離と第二距離との差異の変化は、第一距離及び第二距離の夫々の値の変化と比較して小さい。このため、
図14に示す構成であれば、突入力に起因して揺動軸部材50が振動する場合であっても、第一ホール素子31a及び第二ホール素子31bが紙葉類100の搬送方向A3に沿って並ぶ構成と比較して、センサ30が検知する被検知部13の変位量に、揺動軸部材50の振動によるノイズが加わり難くなる。
【0077】
(3)上述の実施形態では、検知ブロック10は二つの検知ローラ12を回転可能に支持する。この実施形態に限定されず、検知ブロック10は一つの検知ローラ12を支持する構成であっても良いし、三つ以上の検知ローラ12を支持する構成であっても良い。
【0078】
(4)上述の実施形態では、センサ30はホール素子31を有し、被検知部13は磁石を有する構成となっている。この実施形態に限定されず、例えば、センサ30はレーザセンサ等の光学センサを有し、被検知部13は、光学センサから照射される光を反射するミラーを有する構成であっても良い。
【0079】
(5)上述の実施形態では、揺動軸部材50は、紙葉類100の搬送方向A3において、基準ローラ60及び複数の検知ローラ12よりも上流側に配置されている。この実施形態に限定されず、
図15に示すように、揺動軸部材50は、紙葉類100の搬送方向A4において、基準ローラ60及び複数の検知ローラ12よりも下流側に配置されても良い。
【0080】
紙葉類100は、搬送路70に沿って搬送方向A4に示す方向に搬送される。搬送方向A4は、
図1等に示す搬送方向A3と反対側の方向である。そして紙葉類100は、検知ローラ12と基準ローラ60との間に挟まれた状態で基準ローラ60と検知ローラ12との間を通過する。このとき、検知ローラ12は、
図15において紙面反時計回りに回転し、基準ローラ60は、
図15において紙面時計回りに回転する。
【0081】
紙葉類100が基準ローラ60と検知ローラ12の間に突入すると、突入の衝撃によって検知ローラ12が瞬間的に紙葉類100から上側へ離れるため、センサ30によって検知される検知ローラ12の相対変位量にオーバーシュートが発生する。本願の発明者の知見によると、紙葉類100の搬送方向A4において、揺動軸部材50が基準ローラ60及び検知ローラ12よりも下流側に配置されると、基準ローラ60及び検知ローラ12よりも上流側に配置される構成と比較して、検知ローラ12及び検知ブロック10が揺動し難くなる。本構成であれば、検知ローラ12及び検知ブロック10が揺動し難くなり、センサ30によって検知される検知ローラ12の相対変位量のオーバーシュートが抑制される。これにより、紙葉類100が基準ローラ60と検知ローラ12との間に突入するタイミングであっても、センサ30は検知ローラ12の相対変位量を精度よく検知可能となる。
【0082】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、基準ローラに対する検知ローラの相対変位量に基づいて、基準ローラと複数の検知ローラとの間を搬送される紙葉類の厚みを検知する厚み検知装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 :検知ブロック
12 :検知ローラ
13 :被検知部
16 :被検知部
30 :センサ
31 :ホール素子
31a :第一ホール素子
31b :第二ホール素子
32 :ホール素子
40 :板バネ(付勢部材)
50 :揺動軸部材
60 :基準ローラ
100 :紙葉類
A1 :作用方向(第一方向)
A2 :検知方向(第二方向)
A3 :搬送方向
A4 :搬送方向