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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023040798
(43)【公開日】2023-03-23
(54)【発明の名称】遮蔽体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20230315BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20230315BHJP
   G21F 1/10 20060101ALI20230315BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/36
G21F1/10
G21F3/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147962
(22)【出願日】2021-09-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】521401597
【氏名又は名称】明和興業ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521401601
【氏名又は名称】明和テクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521401173
【氏名又は名称】明和興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100213687
【弁理士】
【氏名又は名称】平松 大輝
(72)【発明者】
【氏名】柴田 裕二郎
(72)【発明者】
【氏名】林 譲治
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 修
(72)【発明者】
【氏名】小出 卓和
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA04
4F202AA50
4F202AC01
4F202AH81
4F202AR12
4F202CA09
4F202CB01
4F204AA04
4F204AA50
4F204AC01
4F204FA01
4F204FB01
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】安価な遮蔽体を製造できる遮蔽体の製造方法を提供する。
【解決手段】遮蔽体の製造方法は、中性子を遮蔽するための遮蔽体の製造方法である。遮蔽体の製造方法は、架橋ポリエチレンを絶縁体として含む電線またはケーブルであって、廃材となった電線またはケーブルから、架橋ポリエチレンのチップを取得する取得工程(S1、S2)と、取得工程で取得されたチップを成形素材とした充填材料を、金型に充填して成形する成形工程(S3、S4、S5)とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子を遮蔽するための遮蔽体の製造方法であって、
架橋ポリエチレンを絶縁体として含む電線またはケーブルであって、廃材となった前記電線または前記ケーブルから、前記架橋ポリエチレンのチップを取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記チップを成形素材とした充填材料を、金型に充填して成形する成形工程と
を備えたことを特徴とする遮蔽体の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程において、前記取得工程で取得された前記チップを前記充填材料として前記金型に充填し、前記金型を加熱することで成形する
ことを特徴とする請求項1に記載の遮蔽体の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程において、前記金型に充填された前記充填材料を加圧した状態で前記金型を加熱する
ことを特徴とする請求項2に記載の遮蔽体の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程において、少なくとも1つの凹部が形成された第一面と、前記第一面と反対側の面であって、少なくとも1つの凸部が形成された第二面を前記遮蔽体に形成する凹凸形状を有する前記金型に前記充填材料を充填し、
第一の前記遮蔽体の前記凸部は、第二の前記遮蔽体の前記凹部に嵌ることができる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の遮蔽体の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程において、前記遮蔽体を略直方体状に成形し、且つ前記第一面および前記第二面のそれぞれの短手方向と長手方向の寸法比を1:2に成形する前記金型であって、前記長手方向に四等分する3つの分割線のうち前記長手方向の中心線と一致しない一対の分割線と、前記短手方向の中心線とのそれぞれの交点の位置に一対の前記凹部が成形された前記第一面と、前記それぞれの交点の位置に一対の前記凸部が形成された前記第二面とを前記遮蔽体に形成する前記凹凸形状を有する前記金型に前記充填材料を充填する
ことを特徴とする請求項4に記載の遮蔽体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中性子を遮蔽するための遮蔽体が知られている。例えば特許文献1に記載の遮蔽体の製造方法では、高分子量ポリエチレンの厚肉パイプがその外周から桂剥きされることによって遮蔽体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-51093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記遮蔽体の製造方法において、例えば厚肉パイプが高分子量ポリエチレンのバージン材の場合、材料費が高くなるので、遮蔽体が高価となる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、安価な遮蔽体を製造できる遮蔽体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、中性子を遮蔽するための遮蔽体の製造方法であって、架橋ポリエチレンを絶縁体として含む電線またはケーブルであって、廃材となった前記電線または前記ケーブルから、前記架橋ポリエチレンのチップを取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記チップを成形素材とした充填材料を、金型に充填して成形する成形工程とを備えたことを特徴とする。
【0007】
上記態様によれば、廃材が使用されて遮蔽体が製造される。よって、遮蔽体の製造方法は安価な遮蔽体を製造できる。
【0008】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、前記成形工程において、前記取得工程で取得された前記チップを前記充填材料として前記金型に充填し、前記金型を加熱することで成形してもよい。
【0009】
この場合、チップは固形物なので、遮蔽体の製造方法は例えばチップを融解してから充填材料として金型に充填するよりも、充填材料を取り扱いやすい。
【0010】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、前記成形工程において、前記金型に充填された前記充填材料を加圧した状態で前記金型を加熱してもよい。
【0011】
この場合、遮蔽体の製造方法は複数の遮蔽体のそれぞれの形状を一定に成形しやすい。
【0012】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、前記成形工程において、少なくとも1つの凹部が形成された第一面と、前記第一面と反対側の面であって、少なくとも1つの凸部が形成された第二面を前記遮蔽体に形成する凹凸形状を有する前記金型に前記充填材料を充填し、第一の前記遮蔽体の前記凸部は、第二の前記遮蔽体の前記凹部に嵌ることができてもよい。
【0013】
この場合、遮蔽体の製造方法は第一の遮蔽体と第二の遮蔽体の積み上げの安定性を増加できる。
【0014】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、前記成形工程において、前記遮蔽体を略直方体状に成形し、且つ前記第一面および前記第二面のそれぞれの短手方向と長手方向の寸法比を1:2に成形する前記金型であって、前記長手方向に四等分する3つの分割線のうち前記長手方向の中心線と一致しない一対の分割線と、前記短手方向の中心線とのそれぞれの交点の位置に一対の前記凹部が成形された前記第一面と、前記それぞれの交点の位置に一対の前記凸部が形成された前記第二面とを前記遮蔽体に形成する前記凹凸形状を有する前記金型に前記充填材料を充填してもよい。
【0015】
この場合、遮蔽体の製造方法は複数の遮蔽体の水平方向と上下方向への積み上げの安定性が増加するような積み方を採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】遮蔽体1を左前上方から見た斜視図である。
図2】遮蔽体1を右後下方から見た斜視図である。
図3】遮蔽体1の積み上げ方法を示す図である。
図4】遮蔽体1の製造方法を示すフローチャートである。
図5】電線9と粉砕チップ900の説明図である。
図6】金型2を左前上方から見た斜視図である。
図7図3に示す前板31を取り除いた金型2の正面図である。
図8】変形例の遮蔽体1を左前上方から見た斜視図である。
図9図8に示すIV-IV線矢視方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成、部材の構成、およびフローチャートは、それらのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。また、本実施形態において、「同じ」、「等しい」、「一致」、「平行」とは、完全同一、完全に等しい、完全一致、完全な平行を意味するものではなく、積極的に異ならせる場合を除く概念である。つまり、誤差程度の違いは実質的に「同じ」、「等しい」、「一致」、「平行」に含まれるものとする。
【0018】
まず、図1図2を参照して、遮蔽体1について説明する。以下では、図1の左下方、右上方、右下方、左上方、下方、および上方を、それぞれ、遮蔽体1の左方、右方、前方、後方、下方、および上方とする。遮蔽体1は架橋ポリエチレンによって構成され、例えばポリエチレンよりも耐熱性と耐火性が高く、中性子を遮蔽する機能を有する。
【0019】
図1図2に示すように、遮蔽体1はブロックであり、略直方体状を有する。遮蔽体1は前面11、後面12、左面13、右面14、下面15、および上面16を含む。前面11は上下左右に延び、前方を向く。後面12は前面11と平行に延び、後方を向く。左面13は前後上下に延び、左方を向く。右面14は左面13と平行に延び、右方を向く。下面15は前後左右に延び、下方を向く。上面16は下面15と平行に延び、上方を向く。
【0020】
図1に示すように、遮蔽体1において、前後方向の長さD1と左右方向の長さD2と上下方向の長さD3の寸法比、つまり長さD1:長さD2:長さD3は1:2:1である。長さD1と長さD3は、それぞれ、特定の長さに限定されないが、本実施形態では10cm程度である。長さD2は、特定の長さに限定されないが、本実施形態では20cm程度である。以下では、遮蔽体1の左右方向を「長手方向」ともいい、遮蔽体1の前後方向を「短手方向」ともいう。
【0021】
中心線C1は、遮蔽体1の短手方向(前後方向)の中心を通り、且つ長手方向(左右方向)に延びる。中心線C2は、遮蔽体1の長手方向(左右方向)の中心を通り、且つ短手方向(前後方向)に延びる。分割線V1、V2、V3は、それぞれ、短手方向(前後方向)に延び、遮蔽体1を長手方向(左右方向)において四等分する。分割線V1、V2、V3は、左方から右方に向かって、分割線V1、V2、V3の順に並ぶ。この場合、分割線V2は中心線C2と一致する。
【0022】
図2に示すように、遮蔽体1には凹部151、152が形成される。凹部151、152は互いに左右方向に並ぶ。凹部151、152は、それぞれ、下面15から上方に円柱状に凹む。凹部151は下方から見て中心線C1と分割線V1との交点P1に位置する。凹部152は下方から見て中心線C1と分割線V2との交点P2に位置する。凹部151、152は、それぞれ、下方から見て交点P1、P2を中心とした円形状を有する。凹部151の内径と凹部152の内径は互いに同じ大きさである。
【0023】
図1に示すように、遮蔽体1には凸部161、162が形成される。凸部161、162は互いに左右方向に並ぶ。凸部161は、それぞれ、円柱状であり、上面16から上方に突出する。凸部161は上方から見て中心線C1と分割線V1との交点P1に位置する。凸部162は上方から見て中心線C1と分割線V2との交点P2に位置する。つまり、凸部161、162は、それぞれ、前後左右において、凹部151、152(図2参照)と同じ位置に位置する。
【0024】
凸部161、162は、それぞれ、上方から見て交点P1、P2を中心とした円形状を有する。凸部161の外径と凸部162の外径は互いに同じ大きさである。凸部161、162のそれぞれの外径は凹部151、152(図2参照)の内径よりもわずかに小さい。したがって、第一の遮蔽体1の上に第二の遮蔽体1が積み上げられた場合には、第一の遮蔽体1の凸部161、162のそれぞれは第二の遮蔽体1の凹部151または凹部152に嵌ることができる。
【0025】
図3を参照して、遮蔽体1の積み上げ方法の一例について説明する。作業者は例えば複数の遮蔽体1を積み上げることで壁を形成し、中性子を発生する装置(図示略)を複数の遮蔽体1による壁で囲む。これにより、複数の遮蔽体1による壁は装置から発生する中性子を遮蔽する。
【0026】
以下では、複数の遮蔽体1が水平方向に並んだ列を「遮蔽体列」という。作業者は、例えば第一の遮蔽体列L1の上に第二の遮蔽体列L2を積み上げることで、複数の遮蔽体1による壁を形成する。この場合、作業者は、第一の遮蔽体列L1における遮蔽体1の凸部161、162の一方または両方に第二の遮蔽体列L2における遮蔽体1の凹部151、152の一方または両方を嵌めることで、第一の遮蔽体列L1の上に第二の遮蔽体列L2を積み上げる。
【0027】
より詳細には、作業者は、遮蔽体1Aの長手方向と遮蔽体1Bの長手方向が直交し、且つ遮蔽体1Aの凸部161と遮蔽体1Bの凸部161、162が遮蔽体1Bの長手方向において一直線上に並ぶするように、遮蔽体1Aと遮蔽体1Bを配置する。この状態で、作業者は、遮蔽体1Aと遮蔽体1Bの上に遮蔽体1Cを積み上げる。この場合、作業者は、遮蔽体1Aの凸部161に遮蔽体1Cの凹部151を嵌め、且つ遮蔽体1Bの凸部161に遮蔽体1Cの凹部152を嵌める。これにより、遮蔽体1Cは遮蔽体1A、1Bの両方に対して水平方向において位置決めされる。よって、以上説明した積み上げ方法によれば、複数の遮蔽体1による壁の安定性が増加する。
【0028】
次に、図4を参照して、上述した遮蔽体1の製造方法について説明する。遮蔽体1の製造方法は、粉砕工程(S1)、選別工程(S2)、充填工程(S3)、圧縮工程(S4)、加熱工程(S5)、後処理工程(S6)を含み、各工程を実行することで、遮蔽体1を製造する。
【0029】
まず、粉砕工程(S1)について説明する。粉砕工程(S1)では、廃材となった電線9(図5(A)参照)が作業者の手作業によって、または粉砕機(図示略)によって粉砕される。これにより、電線9はチップ状(図5(B)参照)になる。以下では、粉砕工程(S1)でチップ状に粉砕された電線9を「粉砕チップ900」という(図5(B)参照)。
【0030】
ここで、図5を参照して、電線9と粉砕チップ900について説明する。なお、図5(A)は電線9を模式的に示した断面斜視図であり、図5(B)は粉砕チップ900を模式的に示した平面図である。
【0031】
図5(A)に示すように、電線9は、導体91と絶縁体92と被覆材93とを含む。導体91は例えば銅線によって構成される。絶縁体92は架橋ポリエチレンによって構成され、導体91の外周を覆う。被覆材93は例えば塩化ビニルによって構成され、絶縁体92の外周を覆う。
【0032】
したがって、図5(B)に示すように、粉砕チップ900には、チップ状の導体91(以下、「導体チップ911」という。)とチップ状の絶縁体92(以下、「架橋ポリエチレンチップ921」という。)とチップ状の被覆材93(以下、「被覆材チップ931」という。)が混在する。粉砕チップ900は特定の大きさに限定されないが、例えば2mm角程度の大きさを有する。
【0033】
なお、電線9は、上述したように絶縁体92として架橋ポリエチレンを含んでいればよく、導体91と被覆材93の構成については、本実施形態に限定されない。また、電線9の代わりに、光等を伝えるためのケーブル(図示略)が採用されてもよい。この場合も、ケーブルは絶縁体として架橋ポリエチレンを含めばよい。
【0034】
次に、選別工程(S2)について説明する。選別工程(S2)は、粉砕工程(S1)の後に行われる。選別工程(S2)では、粉砕工程(S1)で得られた粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921が選別される。選別方法は特定の方法に限定されないが、本実施形態では以下のように粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921が選別される。例えば、導体91、絶縁体92、および被覆材93のそれぞれの比重は互いに異なる。このため、比重の違いが利用され、粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921が選別される。
【0035】
なお、粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921のみが完全に選別されることが好ましいが、導体チップ911と被覆材チップ931の一方または両方が、選別された架橋ポリエチレンチップ921に混入してもよい。
【0036】
次に、充填工程(S3)について説明する。充填工程(S3)は、選別工程(S2)の後に行われる。充填工程(S3)では、充填材料300(図7参照)が金型2(図6図7参照)に所定量充填される。充填材料300は、選別工程(S2)で得られた架橋ポリエチレンチップ921(図5(B)参照)を成形素材とし、本実施形態では、架橋ポリエチレンチップ921そのものである。
【0037】
ここで、図6図7を参照して、金型2について説明する。以下では、図1の左下方、右上方、右下方、左上方、下方、および上方を、それぞれ、金型2の左方、右方、前方、後方、下方、および上方とする。
【0038】
図6に示すように、金型2は、下金型3と上金型4を備える。上金型4は下金型3の上方に位置し、下金型3に対して取り付けまたは取り外しできる。下金型3は前板31、後板32、左板33、右板34、および下板35を含む。前板31は下金型3の前部に位置する。前板31は後方から見て矩形状であり、上下左右に延びる。前板31は遮蔽体1に前面11(図1参照)を形成する。後板32は前板31よりも後方に位置する。後板32は前方から見て矩形状であり、前板31と平行に延びる。後板32は遮蔽体1に後面12(図2参照)を形成する。
【0039】
左板33は前板31および後板32のそれぞれの左端の位置に位置する。左板33は右方から見て矩形状であり、前後上下に延びる。左板33は遮蔽体1に左面13(図1参照)を形成する。右板34は前板31および後板32のそれぞれの右端の位置に位置する。右板34は左方から見て矩形状であり、左板33と平行に延びる。右板34は遮蔽体1に右面14(図2参照)を形成する。
【0040】
下板35は前板31および後板32のそれぞれの下端の位置に位置する。下板35は上方から見て矩形状であり、前後左右に延びる。下板35は遮蔽体1に下面15(図2参照)を形成する。下板35は前板31よりも前方まで延び、且つ後板32よりも後方まで延びる。前板31は左板33、右板34、および下板35のそれぞれに対してボルトとナット(図示略)によって直接または他の板を介して固定される。後板32も左板33、右板34、および下板35のそれぞれに対してボルトとナット(図示略)によって直接または他の板を介して固定される。
【0041】
以下では、前板31、後板32、左板33、右板34、および下板35によって囲まれる空間を、「キャビティ30」という。キャビティ30の前後方向の長さ、つまり前板31と後板32の間の距離は長さD1と等しい。キャビティ30の左右方向の長さ、つまり左板33と右板34の間の距離は長さD2と等しい。
【0042】
キャビティ30には充填材料300(図7参照)が充填される。図4に示す充填工程(S3)では、充填材料300として架橋ポリエチレンチップ921がキャビティ30に充填される。
【0043】
キャビティ30内において、下板35には凸部351、352が設けられる。凸部351、352は、それぞれ、遮蔽体1に凹部151、152(図2参照)を形成するための形状であり、下板35のうち凹部151、152と対応する位置から上方に突出する。
【0044】
下金型3は4つのシャフト371、372、373、374を備える。シャフト371は下板35の左端部うち前板31よりも前方の部位を上下方向に貫通する。シャフト372は下板35の右端部うち前板31よりも前方の部位を上下方向に貫通する。シャフト373は下板35の左端部うち後板32よりも後方の部位を上下方向に貫通する。シャフト374は下板35の右端部うち後板32よりも後方の部位を上下方向に貫通する。シャフト371、372、373、374は、それぞれ、下板35よりも下方から前板31、後板32、左板33、右板34のそれぞれの上端よりも上方まで延びる。
【0045】
シャフト371、372、373、374のそれぞれの外周にはネジが切ってある。シャフト371は、一対のナット381が下板35を上下方向から挟み込むようにして、一対のナット381によって下板35に固定される。シャフト372、373、374も、それぞれ、一対のナット381によるシャフト371の固定方法と同様にして、一対のナット382、一対のナット383、一対のナット384によって下板35に固定される。
【0046】
上金型4は上板41を含む。上板41は上金型4の下端に位置する。上板41は下方から見て矩形状であり、前後左右に延びる。上板41は遮蔽体1に上面16(図1参照)を形成する。上板41を下方から見た大きさはキャビティ30を上方から見た大きさと同じまたはわずかに小さい。したがって、上板41は下板35と平行な状態でキャビティ30内に配置されることができる。
【0047】
上板41には凹部411、412が設けられる。凹部411、412は、それぞれ、遮蔽体1に凸部161、162(図1参照)を形成するための形状であり、上板41のうち凸部161、162と対応する位置から上方に凹む。
【0048】
上金型4は延出支持部42、43、44、45を備える。延出支持部42、43、44、45は、それぞれ、上方から見て上金型4の4つの角に設けられる。延出支持部42は延出板421と支持板422を含む。延出板421は上板41の前左角部から上方に延びる。支持板422は延出板421の上端部から前方に延びる。延出板421には孔423が設けられる。孔423は延出板421を上下方向に貫通する。
【0049】
延出支持部43は延出支持部42と左右方向において対称構造である。延出支持部44は延出支持部42と前後方向において対称構造である。延出支持部45は延出支持部44と左右方向において対称構造である。よって、延出支持部43、44、45の説明は簡略化する。
【0050】
延出支持部43、44、45は、それぞれ、延出支持部42と同様に、延出板431、441、451と支持板432、442、452を含む。延出板431、441、451には、それぞれ、孔433、443、453が設けられる。
【0051】
図7に示すように、上板41が下板35と平行な状態で上方からキャビティ30内に配置されると、孔423、433、443、453(孔443、453については、図6参照)には、それぞれ、シャフト371、372、373、374(シャフト373、374については、図6参照)が下方から貫通する。この状態で、圧縮コイルばね461、462、463、464(圧縮コイルばね461、462については、図6参照)が、それぞれ、シャフト371、372、373、374に上方から装着される。
【0052】
この場合、圧縮コイルばね461、462、463、464は支持板422、432、442、452(支持板442、452については、図6参照)の上面によって支持される。この状態でナット471、472、473、474(ナット473、474については、図6参照)が、それぞれ、上方からシャフト371、372、373、374に締め付けられる。
【0053】
次に、圧縮工程(S4)について説明する。圧縮工程(S4)は、充填工程(S3)の後に行われる。圧縮工程(S4)では、充填工程(S3)で金型2に充填された充填材料300が圧縮される。
【0054】
図7に示すように、圧縮工程(S4)では、例えば、金型2において、充填工程(S3)で充填材料300がキャビティ30に充填された状態で、作業者は、上板41を、下板35と平行な状態で上方からキャビティ30内に配置する。この状態で、加圧装置(図示略)が上板36を下方に押圧する。加圧装置による押圧荷重は、特定の大きさに限定されないが、例えば、充填材料300の体積が加圧前の充填材料300の体積の50%程度になる程度の大きさである。
【0055】
この状態で、作業者は、圧縮コイルばね461、462、463、464を、それぞれ、シャフト371、372、373、374に上方から装着し、且つナット471、472、473、474をシャフト371、372、373、374に上方から締め付ける。この場合、圧縮コイルばね461、462、463、464は圧縮変形した状態になる。よって、圧縮コイルばね461、462、463、464は上板41を下方に付勢する。圧縮コイルばね461、462、463、464による付勢荷重は圧縮コイルばね461、462、463、464の圧縮変形が解除されない程度の大きさである。
【0056】
次に、加熱工程(S5)について説明する。加熱工程(S5)は、圧縮工程(S4)の後に行われる。なお、本実施形態では、圧縮コイルばね461、462、463、464が上板41を下方に付勢した状態でシャフト371、372、373、374を介してナット471、472、473、474によって上板41が下板35に対して固定されている。このため、加熱工程(S5)では、金型2において、圧縮工程(S4)でキャビティ30に充填された充填材料300が加圧された状態が維持される。この状態で、加熱工程(S5)では、金型2が所定時間の間、所定温度で加熱される。
【0057】
加熱工程(S5)では、例えばコンベア(図示略)上に金型2が載置され、コンベアが金型2を窯(図示略)の中まで搬送する。所定時間経過すると、コンベアが金型2を窯の中から外に排出する。所定時間は特定の時間に限定されないが、例えば10~20分程度である。所定温度は特定の温度に限定されないが、例えば300℃程度であり、架橋ポリエチレンの融点(110℃程度)よりも高い。所定時間の間、所定温度で金型2が加熱されると、キャビティ30内の充填材料300(架橋ポリエチレンチップ921)がその内部中心まで融解する。
【0058】
この場合、キャビティ30内の充填材料300の体積が減少する。圧縮コイルばね461、462、463、464が上板41を下方に付勢しているので、上板41がシャフト371、372、373、374に沿って下方に移動する。これにより、キャビティ30内の充填材料300がさらに圧縮される。この場合、下板35と上板41の間の距離は長さD3と等しくなる。このように、本実施形態では、圧縮工程(S4)での圧縮と加熱工程(S5)での圧縮の2段階でキャビティ30内の充填材料300が圧縮される。
【0059】
次に、後処理工程(S6)について説明する。後処理工程(S6)は、加熱工程(S5)の後に行われる。後処理工程(S6)では、金型2が自然冷却される。なお、金型2は空冷されてもよいし、水冷されてもよい。冷却時間は特定の長さに限定されない。
【0060】
さらに、後処理工程(S6)では、金型2が冷却された後、金型2から遮蔽体1が取り出される。例えば、作業者は金型2から上板36を取り外し、さらに前板31、後板32、左板33、右板34の一部または全部を金型2から取り外す。この状態で、作業者は金型2から遮蔽体1を取り出す。これにより、遮蔽体1が成形される。
【0061】
以上説明したように、遮蔽体1の製造方法は、廃材となった電線9から、架橋ポリエチレンチップ921を取得する(S1、S2)。次いで、遮蔽体1の製造方法は、取得された架橋ポリエチレンチップ921を成形素材とした充填材料300を、金型2に充填して成形する(S3、S4、S5)。これによれば、廃材が使用されて遮蔽体1が製造される。よって、遮蔽体1の製造方法は安価な遮蔽体1を製造できる。また、遮蔽体1の製造方法は金型2によって遮蔽体1の形状を成形するので、従来の切削加工による遮蔽体1の成形に比べ、遮蔽体1の表面形状および大きさを容易に設計できる。さらに、遮蔽体1の製造方法は金型2によって遮蔽体1の形状を成形するので、従来の切削加工による遮蔽体1の成形に比べ、切りくず等の廃棄物の発生を抑制できる。
【0062】
遮蔽体1の製造方法は、取得された架橋ポリエチレンチップ921を充填材料300として金型2に充填し、金型2を加熱することで成形する(S3、S4、S5)。これによれば、架橋ポリエチレンチップ921は固形物なので、遮蔽体1の製造方法は例えば架橋ポリエチレンチップ921を融解してから充填材料300として金型2に充填するよりも、充填材料300を取り扱いやすい。
【0063】
遮蔽体1の製造方法は、金型2に充填された充填材料300を加圧した状態で金型2を加熱する(S5)。これによれば、遮蔽体1の製造方法は複数の遮蔽体1のそれぞれの形状を一定に成形しやすい。
【0064】
金型2は、凹部151、152が形成された下面15と、凸部161、162が形成された上面16を遮蔽体1に形成する凹凸形状を有する。第一の遮蔽体1の凸部161、162は、第二の遮蔽体1の凹部151、152に嵌ることができる。これによれば、遮蔽体1の製造方法は第一の遮蔽体1と第二の遮蔽体1の積み上げの安定性を増加できる。
【0065】
金型2は、遮蔽体1を略直方体状に成形し、且つ下面15および上面16のそれぞれの短手方向と長手方向の寸法比を1:2に成形する。金型2は一対の分割線V1、V3と中心線C1とのそれぞれの交点P1、P2の位置に一対の凹部151、152が成形された下面15と、それぞれの交点P1、P2の位置に一対の凸部161、162が形成された上面16と遮蔽体1に形成する凹凸形状を有する。これによれば、遮蔽体1の製造方法は複数の遮蔽体1の水平方向と上下方向への積み上げの安定性が増加するような積み方を採用できる。
【0066】
また、上記実施形態において、電線9が、本発明の「電線」に相当する。架橋ポリエチレンチップ921が、本発明の「架橋ポリエチレンのチップ」に相当する。図4のS1の工程が、本発明の「取得工程」に相当する。充填材料300が、本発明の「充填材料」に相当する。図4のS3、S4、S5が、本発明の「成形工程」に相当する。
【0067】
凹部151、152が、本発明の「少なくとも1つの凹部」に相当する。下面15が、本発明の「第一面」に相当する。凸部161、162が、本発明の「少なくとも1つの凸部」に相当する。上面16が、本発明の「第二面」に相当する。分割線V1、V2、V3が、本発明の「長手方向に四等分する3つの分割線」に相当する。中心線C2が、本発明の「長手方向の中心線」に相当する。分割線V1、V3が、本発明の「長手方向の中心線と一致しない一対の分割線」に相当する。中心線C1が、本発明の「短手方向の中心線」に相当する。交点P1、P2が、本発明の「それぞれの交点」に相当する。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。また、以下説明する変形例は矛盾が生じない範囲において互いに組み合わせることができる。例えば、上記実施形態では、遮蔽体1の製造方法は、加熱工程(S5)において、圧縮された状態を維持しなくてもよいし、圧縮工程(S4)を省略してもよい。
【0069】
また、遮蔽体1の製造方法は、遮蔽体1を射出成形によって成形してもよい。この場合、遮蔽体1の製造方法は、選別工程(S2)の後、充填工程(S3)において、架橋ポリエチレンチップ921そのものを充填材料300とするのではなく、架橋ポリエチレンチップ921を成形素材として、成形素材を加熱融解した充填材料300を、金型2に充填する。この場合、遮蔽体1の製造方法は、圧縮工程(S4)と加熱工程(S5)を省略する。
【0070】
また、上記実施形態では、遮蔽体1の製造方法は、加熱工程(S5)において、キャビティ30内の充填材料300(架橋ポリエチレンチップ921)がその内部中心まで融解せず、その外表面(前板31、後板32、左板33、右板34、下板35、および上板41近傍)だけ融解する程度に所定時間の間、所定温度で金型2を加熱してもよい。この場合、遮蔽体1の製造方法は、加熱工程(S5)での加熱に伴う消費電力を小さくできる。
【0071】
また、上記実施形態において、加熱工程(S5)での加熱方法は、コンベアと窯による加熱に限定されない。例えば遮蔽体1の製造方法は、金型2を搬送することなく、加熱装置(図示略)内で金型2を加熱してもよい。
【0072】
また、凸部161、162と凹部151、152のそれぞれの形状は上記実施形態に限定されない。凸部161、162と凹部151、152のそれぞれの形状は、凸部161、162が凹部151、152に嵌まる形状であればよく、例えば多角柱状、円錐状、または多角錐状であってもよい。また、例えば凹部151、152は互いにつながっていてもよい。
【0073】
図8図9を参照して、変形例の遮蔽体1について説明する。変形例の遮蔽体1では、凹部151、152、凸部161、162のそれぞれの形状が上記実施形態と異なる。すなわち、変形例の遮蔽体1では、凹部151、152が、それぞれ、下面15から上方に正四角錐状に凹む。凹部151は下面15の左端を底面の一辺とする。凹部152は下面15の右端を底面の一辺とする。この場合、長さD1:長さD2が1:2なので、凹部151の底面のうち左右方向において下面15の左端とは反対の辺と、凹部152の底面のうち左右方向において下面15の右端とは反対の辺は、互いに一致する。
【0074】
凸部161、162は、それぞれ、正四角錐状であり、上面16から上方に突出する。凸部161は上面16の左端を底面の一辺とする。凸部162は上面16の右端を底面の一辺とする。この場合、長さD1:長さD2が1:2なので、凸部161の底面のうち左右方向において上面16の左端とは反対の辺と、凸部162の底面のうち左右方向において上面16の右端とは反対の辺は、互いに一致する。凹部151の頂点Q1と凸部161の頂点Q2と交点P1は一直線上に位置する。凹部152の頂点Q2と凸部162の頂点Q4と交点P2は一直線上に位置する。
【0075】
上記構成によれば、例えば第一の遮蔽体1の凹部151に第二の遮蔽体1の凸部161が嵌まった場合に、凹部151と凸部161の接触面積が上記実施形態と比べて大きくなる。よって、変形例の遮蔽体1は、複数の遮蔽体1が積み上げられた場合に、互いの間に隙間が生じることを抑制できる。
【0076】
また、上記実施形態において、凸部161、162の個数は1個でもよいし、3個以上でもよいし、0個でもよい。凹部151、152の個数も1個でもよいし、3個以上でもよいし、0個でもよい。例えば凹部151、152の個数は凸部161、162の個数と同じでなくてもよく、凸部161、162の個数よりも多くてもよい。
【0077】
また、凸部161、162がそれぞれ設けられる位置は、上記実施形態に限定されない。例えば1つの凸部が上面16において、上方から見て中心線C1と中心線C2の交点に設けられてもよいし、4つの凸部が上面16において、上方から見て4つの角部のそれぞれに設けられてもよい。凹部151、152がそれぞれ設けられる位置も、凸部161、162と同様に、上記実施形態に限定されない。
【0078】
また、上記実施形態では、凹部151、152と凸部161、162のそれぞれが互いに反対を向く面(下面15と上面16)に設けられる。これに対し、凹部151、152と凸部161、162のそれぞれが互いに交差する面に設けられてもよい。すなわち、例えば凹部151、152が下面15に設けられ、凸部161、162が左面13に設けられてもよい。
【0079】
また、上記実施形態において、凹部151、152は互いに異なる複数の面に設けられてもよい。すなわち、例えば凹部151が下面15に設けられ、凹部152が上面16または左面13に設けられてもよい。凸部161、162も、凹部151、152と同様に、互いに異なる複数の面に設けられてもよい。
【0080】
また、遮蔽体1の形状は上記実施形態に限定されない。例えば、遮蔽体1は円柱状、円錐状、多角柱状、多角錐状でもよい。下面15と上面16は扇形であってもよい。長さD1:長さD2:長さD3は1:2:1でなくてもよい。つまり、長さD1は長さD2と同じでもよいし、長さD2よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。長さD2は長さD3と同じでもよいし、長さD3よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。長さD3は長さD1と同じでもよいし、長さD1よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。遮蔽体1はブロックではなく、板状でもよい。これらの場合、金型2は遮蔽体1の上記形状に応じたキャビティ30の形状を有すればよい。また、遮蔽体1の製造方法は、互いに異なる形状のキャビティ30を有する複数の金型2によって互いに異なる形状の遮蔽体1を成形してもよい。また、金型2の構成は上記実施形態に限定されない。例えば金型2は圧縮コイルばね461、462、463、464に代えて他のばね、シリンダ等によって上板41を下方に押圧してもよい。また、金型2は上板41を下方に押圧する機構(例えば圧縮コイルばね461、462、463、464)を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 遮蔽体
2 金型
9 電線
15 下面
16 上面
92 絶縁体
151、152 凹部
161、162 凸部
300 充填材料
351、352 凸部
411、412 凹部
921 架橋ポリエチレンチップ
C1、C2 中心線
P1、P2 交点
V1、V2、V3 分割線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-11-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子を遮蔽するための遮蔽体の製造方法であって、
架橋ポリエチレンを絶縁体として含む電線またはケーブルであって、廃材となった前記電線または前記ケーブルから、前記架橋ポリエチレンのチップを取得する取得工程と、
前記取得工程で取得された前記チップを成形素材とした充填材料を、金型に充填して成形する成形工程と
を備え、
前記金型は、
前記遮蔽体を、第一面と、前記第一面と反対側の第二面とを有する略直方体状に成形し、且つ前記第一面および前記第二面のそれぞれの短手方向と長手方向の寸法比を1:2に成形し、
前記長手方向に四等分する3つの分割線のうち前記長手方向の中心線と一致しない一対の分割線と、前記短手方向の中心線とのそれぞれの交点の位置において一対の凹部を前記第一面に形成し、且つ前記それぞれの交点の位置において一対の凸部を前記第二面に形成する凹凸形状を有し、
第一の前記遮蔽体の前記一対の凸部は、第二の前記遮蔽体の前記一対の凹部に嵌ることができる
ことを特徴とする遮蔽体の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程において、前記取得工程で取得された前記チップを前記充填材料として前記金型に充填し、前記金型を加熱することで成形する
ことを特徴とする請求項1に記載の遮蔽体の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程において、前記金型に充填された前記充填材料を加圧した状態で前記金型を加熱する
ことを特徴とする請求項2に記載の遮蔽体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮蔽体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中性子を遮蔽するための遮蔽体が知られている。例えば特許文献1に記載の遮蔽体の製造方法では、高分子量ポリエチレンの厚肉パイプがその外周から桂剥きされることによって遮蔽体が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-51093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記遮蔽体の製造方法において、例えば厚肉パイプが高分子量ポリエチレンのバージン材の場合、材料費が高くなるので、遮蔽体が高価となる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、安価な遮蔽体を製造できる遮蔽体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、中性子を遮蔽するための遮蔽体の製造方法であって、架橋ポリエチレンを絶縁体として含む電線またはケーブルであって、廃材となった前記電線または前記ケーブルから、前記架橋ポリエチレンのチップを取得する取得工程と、前記取得工程で取得された前記チップを成形素材とした充填材料を、金型に充填して成形する成形工程とを備え、前記金型は、前記遮蔽体を、第一面と、前記第一面と反対側の第二面とを有する略直方体状に成形し、且つ前記第一面および前記第二面のそれぞれの短手方向と長手方向の寸法比を1:2に成形し、前記長手方向に四等分する3つの分割線のうち前記長手方向の中心線と一致しない一対の分割線と、前記短手方向の中心線とのそれぞれの交点の位置に一対の凹部を前記第一面に形成し、且つ前記それぞれの交点の位置において一対の凸部を前記第二面に形成する凹凸形状を有し、第一の前記遮蔽体の前記一対の凸部は、第二の前記遮蔽体の前記一対の凹部に嵌ることができることを特徴とする。
【0007】
上記態様によれば、廃材が使用されて遮蔽体が製造される。よって、遮蔽体の製造方法は安価な遮蔽体を製造できる。さらに、遮蔽体の製造方法は複数の遮蔽体の水平方向と上下方向への積み上げの安定性が増加するような積み方を採用できる。
【0008】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、前記成形工程において、前記取得工程で取得された前記チップを前記充填材料として前記金型に充填し、前記金型を加熱することで成形してもよい。
【0009】
この場合、チップは固形物なので、遮蔽体の製造方法は例えばチップを融解してから充填材料として金型に充填するよりも、充填材料を取り扱いやすい。
【0010】
本発明の一態様に係る遮蔽体の製造方法は、前記成形工程において、前記金型に充填された前記充填材料を加圧した状態で前記金型を加熱してもよい。
【0011】
この場合、遮蔽体の製造方法は複数の遮蔽体のそれぞれの形状を一定に成形しやすい。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】遮蔽体1を左前上方から見た斜視図である。
図2】遮蔽体1を右後下方から見た斜視図である。
図3】遮蔽体1の積み上げ方法を示す図である。
図4】遮蔽体1の製造方法を示すフローチャートである。
図5】電線9と粉砕チップ900の説明図である。
図6】金型2を左前上方から見た斜視図である。
図7図3に示す前板31を取り除いた金型2の正面図である。
図8】変形例の遮蔽体1を左前上方から見た斜視図である。
図9図8に示すIV-IV線矢視方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成、部材の構成、およびフローチャートは、それらのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。また、本実施形態において、「同じ」、「等しい」、「一致」、「平行」とは、完全同一、完全に等しい、完全一致、完全な平行を意味するものではなく、積極的に異ならせる場合を除く概念である。つまり、誤差程度の違いは実質的に「同じ」、「等しい」、「一致」、「平行」に含まれるものとする。
【0018】
まず、図1図2を参照して、遮蔽体1について説明する。以下では、図1の左下方、右上方、右下方、左上方、下方、および上方を、それぞれ、遮蔽体1の左方、右方、前方、後方、下方、および上方とする。遮蔽体1は架橋ポリエチレンによって構成され、例えばポリエチレンよりも耐熱性と耐火性が高く、中性子を遮蔽する機能を有する。
【0019】
図1図2に示すように、遮蔽体1はブロックであり、略直方体状を有する。遮蔽体1は前面11、後面12、左面13、右面14、下面15、および上面16を含む。前面11は上下左右に延び、前方を向く。後面12は前面11と平行に延び、後方を向く。左面13は前後上下に延び、左方を向く。右面14は左面13と平行に延び、右方を向く。下面15は前後左右に延び、下方を向く。上面16は下面15と平行に延び、上方を向く。
【0020】
図1に示すように、遮蔽体1において、前後方向の長さD1と左右方向の長さD2と上下方向の長さD3の寸法比、つまり長さD1:長さD2:長さD3は1:2:1である。長さD1と長さD3は、それぞれ、特定の長さに限定されないが、本実施形態では10cm程度である。長さD2は、特定の長さに限定されないが、本実施形態では20cm程度である。以下では、遮蔽体1の左右方向を「長手方向」ともいい、遮蔽体1の前後方向を「短手方向」ともいう。
【0021】
中心線C1は、遮蔽体1の短手方向(前後方向)の中心を通り、且つ長手方向(左右方向)に延びる。中心線C2は、遮蔽体1の長手方向(左右方向)の中心を通り、且つ短手方向(前後方向)に延びる。分割線V1、V2、V3は、それぞれ、短手方向(前後方向)に延び、遮蔽体1を長手方向(左右方向)において四等分する。分割線V1、V2、V3は、左方から右方に向かって、分割線V1、V2、V3の順に並ぶ。この場合、分割線V2は中心線C2と一致する。
【0022】
図2に示すように、遮蔽体1には凹部151、152が形成される。凹部151、152は互いに左右方向に並ぶ。凹部151、152は、それぞれ、下面15から上方に円柱状に凹む。凹部151は下方から見て中心線C1と分割線V1との交点P1に位置する。凹部152は下方から見て中心線C1と分割線V2との交点P2に位置する。凹部151、152は、それぞれ、下方から見て交点P1、P2を中心とした円形状を有する。凹部151の内径と凹部152の内径は互いに同じ大きさである。
【0023】
図1に示すように、遮蔽体1には凸部161、162が形成される。凸部161、162は互いに左右方向に並ぶ。凸部161は、それぞれ、円柱状であり、上面16から上方に突出する。凸部161は上方から見て中心線C1と分割線V1との交点P1に位置する。凸部162は上方から見て中心線C1と分割線V2との交点P2に位置する。つまり、凸部161、162は、それぞれ、前後左右において、凹部151、152(図2参照)と同じ位置に位置する。
【0024】
凸部161、162は、それぞれ、上方から見て交点P1、P2を中心とした円形状を有する。凸部161の外径と凸部162の外径は互いに同じ大きさである。凸部161、162のそれぞれの外径は凹部151、152(図2参照)の内径よりもわずかに小さい。したがって、第一の遮蔽体1の上に第二の遮蔽体1が積み上げられた場合には、第一の遮蔽体1の凸部161、162のそれぞれは第二の遮蔽体1の凹部151または凹部152に嵌ることができる。
【0025】
図3を参照して、遮蔽体1の積み上げ方法の一例について説明する。作業者は例えば複数の遮蔽体1を積み上げることで壁を形成し、中性子を発生する装置(図示略)を複数の遮蔽体1による壁で囲む。これにより、複数の遮蔽体1による壁は装置から発生する中性子を遮蔽する。
【0026】
以下では、複数の遮蔽体1が水平方向に並んだ列を「遮蔽体列」という。作業者は、例えば第一の遮蔽体列L1の上に第二の遮蔽体列L2を積み上げることで、複数の遮蔽体1による壁を形成する。この場合、作業者は、第一の遮蔽体列L1における遮蔽体1の凸部161、162の一方または両方に第二の遮蔽体列L2における遮蔽体1の凹部151、152の一方または両方を嵌めることで、第一の遮蔽体列L1の上に第二の遮蔽体列L2を積み上げる。
【0027】
より詳細には、作業者は、遮蔽体1Aの長手方向と遮蔽体1Bの長手方向が直交し、且つ遮蔽体1Aの凸部161と遮蔽体1Bの凸部161、162が遮蔽体1Bの長手方向において一直線上に並ぶするように、遮蔽体1Aと遮蔽体1Bを配置する。この状態で、作業者は、遮蔽体1Aと遮蔽体1Bの上に遮蔽体1Cを積み上げる。この場合、作業者は、遮蔽体1Aの凸部161に遮蔽体1Cの凹部151を嵌め、且つ遮蔽体1Bの凸部161に遮蔽体1Cの凹部152を嵌める。これにより、遮蔽体1Cは遮蔽体1A、1Bの両方に対して水平方向において位置決めされる。よって、以上説明した積み上げ方法によれば、複数の遮蔽体1による壁の安定性が増加する。
【0028】
次に、図4を参照して、上述した遮蔽体1の製造方法について説明する。遮蔽体1の製造方法は、粉砕工程(S1)、選別工程(S2)、充填工程(S3)、圧縮工程(S4)、加熱工程(S5)、後処理工程(S6)を含み、各工程を実行することで、遮蔽体1を製造する。
【0029】
まず、粉砕工程(S1)について説明する。粉砕工程(S1)では、廃材となった電線9(図5(A)参照)が作業者の手作業によって、または粉砕機(図示略)によって粉砕される。これにより、電線9はチップ状(図5(B)参照)になる。以下では、粉砕工程(S1)でチップ状に粉砕された電線9を「粉砕チップ900」という(図5(B)参照)。
【0030】
ここで、図5を参照して、電線9と粉砕チップ900について説明する。なお、図5(A)は電線9を模式的に示した断面斜視図であり、図5(B)は粉砕チップ900を模式的に示した平面図である。
【0031】
図5(A)に示すように、電線9は、導体91と絶縁体92と被覆材93とを含む。導体91は例えば銅線によって構成される。絶縁体92は架橋ポリエチレンによって構成され、導体91の外周を覆う。被覆材93は例えば塩化ビニルによって構成され、絶縁体92の外周を覆う。
【0032】
したがって、図5(B)に示すように、粉砕チップ900には、チップ状の導体91(以下、「導体チップ911」という。)とチップ状の絶縁体92(以下、「架橋ポリエチレンチップ921」という。)とチップ状の被覆材93(以下、「被覆材チップ931」という。)が混在する。粉砕チップ900は特定の大きさに限定されないが、例えば2mm角程度の大きさを有する。
【0033】
なお、電線9は、上述したように絶縁体92として架橋ポリエチレンを含んでいればよく、導体91と被覆材93の構成については、本実施形態に限定されない。また、電線9の代わりに、光等を伝えるためのケーブル(図示略)が採用されてもよい。この場合も、ケーブルは絶縁体として架橋ポリエチレンを含めばよい。
【0034】
次に、選別工程(S2)について説明する。選別工程(S2)は、粉砕工程(S1)の後に行われる。選別工程(S2)では、粉砕工程(S1)で得られた粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921が選別される。選別方法は特定の方法に限定されないが、本実施形態では以下のように粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921が選別される。例えば、導体91、絶縁体92、および被覆材93のそれぞれの比重は互いに異なる。このため、比重の違いが利用され、粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921が選別される。
【0035】
なお、粉砕チップ900の中から架橋ポリエチレンチップ921のみが完全に選別されることが好ましいが、導体チップ911と被覆材チップ931の一方または両方が、選別された架橋ポリエチレンチップ921に混入してもよい。
【0036】
次に、充填工程(S3)について説明する。充填工程(S3)は、選別工程(S2)の後に行われる。充填工程(S3)では、充填材料300(図7参照)が金型2(図6図7参照)に所定量充填される。充填材料300は、選別工程(S2)で得られた架橋ポリエチレンチップ921(図5(B)参照)を成形素材とし、本実施形態では、架橋ポリエチレンチップ921そのものである。
【0037】
ここで、図6図7を参照して、金型2について説明する。以下では、図1の左下方、右上方、右下方、左上方、下方、および上方を、それぞれ、金型2の左方、右方、前方、後方、下方、および上方とする。
【0038】
図6に示すように、金型2は、下金型3と上金型4を備える。上金型4は下金型3の上方に位置し、下金型3に対して取り付けまたは取り外しできる。下金型3は前板31、後板32、左板33、右板34、および下板35を含む。前板31は下金型3の前部に位置する。前板31は後方から見て矩形状であり、上下左右に延びる。前板31は遮蔽体1に前面11(図1参照)を形成する。後板32は前板31よりも後方に位置する。後板32は前方から見て矩形状であり、前板31と平行に延びる。後板32は遮蔽体1に後面12(図2参照)を形成する。
【0039】
左板33は前板31および後板32のそれぞれの左端の位置に位置する。左板33は右方から見て矩形状であり、前後上下に延びる。左板33は遮蔽体1に左面13(図1参照)を形成する。右板34は前板31および後板32のそれぞれの右端の位置に位置する。右板34は左方から見て矩形状であり、左板33と平行に延びる。右板34は遮蔽体1に右面14(図2参照)を形成する。
【0040】
下板35は前板31および後板32のそれぞれの下端の位置に位置する。下板35は上方から見て矩形状であり、前後左右に延びる。下板35は遮蔽体1に下面15(図2参照)を形成する。下板35は前板31よりも前方まで延び、且つ後板32よりも後方まで延びる。前板31は左板33、右板34、および下板35のそれぞれに対してボルトとナット(図示略)によって直接または他の板を介して固定される。後板32も左板33、右板34、および下板35のそれぞれに対してボルトとナット(図示略)によって直接または他の板を介して固定される。
【0041】
以下では、前板31、後板32、左板33、右板34、および下板35によって囲まれる空間を、「キャビティ30」という。キャビティ30の前後方向の長さ、つまり前板31と後板32の間の距離は長さD1と等しい。キャビティ30の左右方向の長さ、つまり左板33と右板34の間の距離は長さD2と等しい。
【0042】
キャビティ30には充填材料300(図7参照)が充填される。図4に示す充填工程(S3)では、充填材料300として架橋ポリエチレンチップ921がキャビティ30に充填される。
【0043】
キャビティ30内において、下板35には凸部351、352が設けられる。凸部351、352は、それぞれ、遮蔽体1に凹部151、152(図2参照)を形成するための形状であり、下板35のうち凹部151、152と対応する位置から上方に突出する。
【0044】
下金型3は4つのシャフト371、372、373、374を備える。シャフト371は下板35の左端部うち前板31よりも前方の部位を上下方向に貫通する。シャフト372は下板35の右端部うち前板31よりも前方の部位を上下方向に貫通する。シャフト373は下板35の左端部うち後板32よりも後方の部位を上下方向に貫通する。シャフト374は下板35の右端部うち後板32よりも後方の部位を上下方向に貫通する。シャフト371、372、373、374は、それぞれ、下板35よりも下方から前板31、後板32、左板33、右板34のそれぞれの上端よりも上方まで延びる。
【0045】
シャフト371、372、373、374のそれぞれの外周にはネジが切ってある。シャフト371は、一対のナット381が下板35を上下方向から挟み込むようにして、一対のナット381によって下板35に固定される。シャフト372、373、374も、それぞれ、一対のナット381によるシャフト371の固定方法と同様にして、一対のナット382、一対のナット383、一対のナット384によって下板35に固定される。
【0046】
上金型4は上板41を含む。上板41は上金型4の下端に位置する。上板41は下方から見て矩形状であり、前後左右に延びる。上板41は遮蔽体1に上面16(図1参照)を形成する。上板41を下方から見た大きさはキャビティ30を上方から見た大きさと同じまたはわずかに小さい。したがって、上板41は下板35と平行な状態でキャビティ30内に配置されることができる。
【0047】
上板41には凹部411、412が設けられる。凹部411、412は、それぞれ、遮蔽体1に凸部161、162(図1参照)を形成するための形状であり、上板41のうち凸部161、162と対応する位置から上方に凹む。
【0048】
上金型4は延出支持部42、43、44、45を備える。延出支持部42、43、44、45は、それぞれ、上方から見て上金型4の4つの角に設けられる。延出支持部42は延出板421と支持板422を含む。延出板421は上板41の前左角部から上方に延びる。支持板422は延出板421の上端部から前方に延びる。延出板421には孔423が設けられる。孔423は延出板421を上下方向に貫通する。
【0049】
延出支持部43は延出支持部42と左右方向において対称構造である。延出支持部44は延出支持部42と前後方向において対称構造である。延出支持部45は延出支持部44と左右方向において対称構造である。よって、延出支持部43、44、45の説明は簡略化する。
【0050】
延出支持部43、44、45は、それぞれ、延出支持部42と同様に、延出板431、441、451と支持板432、442、452を含む。延出板431、441、451には、それぞれ、孔433、443、453が設けられる。
【0051】
図7に示すように、上板41が下板35と平行な状態で上方からキャビティ30内に配置されると、孔423、433、443、453(孔443、453については、図6参照)には、それぞれ、シャフト371、372、373、374(シャフト373、374については、図6参照)が下方から貫通する。この状態で、圧縮コイルばね461、462、463、464(圧縮コイルばね461、462については、図6参照)が、それぞれ、シャフト371、372、373、374に上方から装着される。
【0052】
この場合、圧縮コイルばね461、462、463、464は支持板422、432、442、452(支持板442、452については、図6参照)の上面によって支持される。この状態でナット471、472、473、474(ナット473、474については、図6参照)が、それぞれ、上方からシャフト371、372、373、374に締め付けられる。
【0053】
次に、圧縮工程(S4)について説明する。圧縮工程(S4)は、充填工程(S3)の後に行われる。圧縮工程(S4)では、充填工程(S3)で金型2に充填された充填材料300が圧縮される。
【0054】
図7に示すように、圧縮工程(S4)では、例えば、金型2において、充填工程(S3)で充填材料300がキャビティ30に充填された状態で、作業者は、上板41を、下板35と平行な状態で上方からキャビティ30内に配置する。この状態で、加圧装置(図示略)が上板36を下方に押圧する。加圧装置による押圧荷重は、特定の大きさに限定されないが、例えば、充填材料300の体積が加圧前の充填材料300の体積の50%程度になる程度の大きさである。
【0055】
この状態で、作業者は、圧縮コイルばね461、462、463、464を、それぞれ、シャフト371、372、373、374に上方から装着し、且つナット471、472、473、474をシャフト371、372、373、374に上方から締め付ける。この場合、圧縮コイルばね461、462、463、464は圧縮変形した状態になる。よって、圧縮コイルばね461、462、463、464は上板41を下方に付勢する。圧縮コイルばね461、462、463、464による付勢荷重は圧縮コイルばね461、462、463、464の圧縮変形が解除されない程度の大きさである。
【0056】
次に、加熱工程(S5)について説明する。加熱工程(S5)は、圧縮工程(S4)の後に行われる。なお、本実施形態では、圧縮コイルばね461、462、463、464が上板41を下方に付勢した状態でシャフト371、372、373、374を介してナット471、472、473、474によって上板41が下板35に対して固定されている。このため、加熱工程(S5)では、金型2において、圧縮工程(S4)でキャビティ30に充填された充填材料300が加圧された状態が維持される。この状態で、加熱工程(S5)では、金型2が所定時間の間、所定温度で加熱される。
【0057】
加熱工程(S5)では、例えばコンベア(図示略)上に金型2が載置され、コンベアが金型2を窯(図示略)の中まで搬送する。所定時間経過すると、コンベアが金型2を窯の中から外に排出する。所定時間は特定の時間に限定されないが、例えば10~20分程度である。所定温度は特定の温度に限定されないが、例えば300℃程度であり、架橋ポリエチレンの融点(110℃程度)よりも高い。所定時間の間、所定温度で金型2が加熱されると、キャビティ30内の充填材料300(架橋ポリエチレンチップ921)がその内部中心まで融解する。
【0058】
この場合、キャビティ30内の充填材料300の体積が減少する。圧縮コイルばね461、462、463、464が上板41を下方に付勢しているので、上板41がシャフト371、372、373、374に沿って下方に移動する。これにより、キャビティ30内の充填材料300がさらに圧縮される。この場合、下板35と上板41の間の距離は長さD3と等しくなる。このように、本実施形態では、圧縮工程(S4)での圧縮と加熱工程(S5)での圧縮の2段階でキャビティ30内の充填材料300が圧縮される。
【0059】
次に、後処理工程(S6)について説明する。後処理工程(S6)は、加熱工程(S5)の後に行われる。後処理工程(S6)では、金型2が自然冷却される。なお、金型2は空冷されてもよいし、水冷されてもよい。冷却時間は特定の長さに限定されない。
【0060】
さらに、後処理工程(S6)では、金型2が冷却された後、金型2から遮蔽体1が取り出される。例えば、作業者は金型2から上板36を取り外し、さらに前板31、後板32、左板33、右板34の一部または全部を金型2から取り外す。この状態で、作業者は金型2から遮蔽体1を取り出す。これにより、遮蔽体1が成形される。
【0061】
以上説明したように、遮蔽体1の製造方法は、廃材となった電線9から、架橋ポリエチレンチップ921を取得する(S1、S2)。次いで、遮蔽体1の製造方法は、取得された架橋ポリエチレンチップ921を成形素材とした充填材料300を、金型2に充填して成形する(S3、S4、S5)。これによれば、廃材が使用されて遮蔽体1が製造される。よって、遮蔽体1の製造方法は安価な遮蔽体1を製造できる。また、遮蔽体1の製造方法は金型2によって遮蔽体1の形状を成形するので、従来の切削加工による遮蔽体1の成形に比べ、遮蔽体1の表面形状および大きさを容易に設計できる。さらに、遮蔽体1の製造方法は金型2によって遮蔽体1の形状を成形するので、従来の切削加工による遮蔽体1の成形に比べ、切りくず等の廃棄物の発生を抑制できる。
【0062】
遮蔽体1の製造方法は、取得された架橋ポリエチレンチップ921を充填材料300として金型2に充填し、金型2を加熱することで成形する(S3、S4、S5)。これによれば、架橋ポリエチレンチップ921は固形物なので、遮蔽体1の製造方法は例えば架橋ポリエチレンチップ921を融解してから充填材料300として金型2に充填するよりも、充填材料300を取り扱いやすい。
【0063】
遮蔽体1の製造方法は、金型2に充填された充填材料300を加圧した状態で金型2を加熱する(S5)。これによれば、遮蔽体1の製造方法は複数の遮蔽体1のそれぞれの形状を一定に成形しやすい。
【0064】
金型2は、凹部151、152が形成された下面15と、凸部161、162が形成された上面16を遮蔽体1に形成する凹凸形状を有する。第一の遮蔽体1の凸部161、162は、第二の遮蔽体1の凹部151、152に嵌ることができる。これによれば、遮蔽体1の製造方法は第一の遮蔽体1と第二の遮蔽体1の積み上げの安定性を増加できる。
【0065】
金型2は、遮蔽体1を略直方体状に成形し、且つ下面15および上面16のそれぞれの短手方向と長手方向の寸法比を1:2に成形する。金型2は一対の分割線V1、V3と中心線C1とのそれぞれの交点P1、P2の位置に一対の凹部151、152が成形された下面15と、それぞれの交点P1、P2の位置に一対の凸部161、162が形成された上面16と遮蔽体1に形成する凹凸形状を有する。これによれば、遮蔽体1の製造方法は複数の遮蔽体1の水平方向と上下方向への積み上げの安定性が増加するような積み方を採用できる。
【0066】
また、上記実施形態において、電線9が、本発明の「電線」に相当する。架橋ポリエチレンチップ921が、本発明の「架橋ポリエチレンのチップ」に相当する。図4のS1の工程が、本発明の「取得工程」に相当する。充填材料300が、本発明の「充填材料」に相当する。図4のS3、S4、S5が、本発明の「成形工程」に相当する。
【0067】
凹部151、152が、本発明の「少なくとも1つの凹部」に相当する。下面15が、本発明の「第一面」に相当する。凸部161、162が、本発明の「少なくとも1つの凸部」に相当する。上面16が、本発明の「第二面」に相当する。分割線V1、V2、V3が、本発明の「長手方向に四等分する3つの分割線」に相当する。中心線C2が、本発明の「長手方向の中心線」に相当する。分割線V1、V3が、本発明の「長手方向の中心線と一致しない一対の分割線」に相当する。中心線C1が、本発明の「短手方向の中心線」に相当する。交点P1、P2が、本発明の「それぞれの交点」に相当する。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能である。また、以下説明する変形例は矛盾が生じない範囲において互いに組み合わせることができる。例えば、上記実施形態では、遮蔽体1の製造方法は、加熱工程(S5)において、圧縮された状態を維持しなくてもよいし、圧縮工程(S4)を省略してもよい。
【0069】
また、遮蔽体1の製造方法は、遮蔽体1を射出成形によって成形してもよい。この場合、遮蔽体1の製造方法は、選別工程(S2)の後、充填工程(S3)において、架橋ポリエチレンチップ921そのものを充填材料300とするのではなく、架橋ポリエチレンチップ921を成形素材として、成形素材を加熱融解した充填材料300を、金型2に充填する。この場合、遮蔽体1の製造方法は、圧縮工程(S4)と加熱工程(S5)を省略する。
【0070】
また、上記実施形態では、遮蔽体1の製造方法は、加熱工程(S5)において、キャビティ30内の充填材料300(架橋ポリエチレンチップ921)がその内部中心まで融解せず、その外表面(前板31、後板32、左板33、右板34、下板35、および上板41近傍)だけ融解する程度に所定時間の間、所定温度で金型2を加熱してもよい。この場合、遮蔽体1の製造方法は、加熱工程(S5)での加熱に伴う消費電力を小さくできる。
【0071】
また、上記実施形態において、加熱工程(S5)での加熱方法は、コンベアと窯による加熱に限定されない。例えば遮蔽体1の製造方法は、金型2を搬送することなく、加熱装置(図示略)内で金型2を加熱してもよい。
【0072】
また、凸部161、162と凹部151、152のそれぞれの形状は上記実施形態に限定されない。凸部161、162と凹部151、152のそれぞれの形状は、凸部161、162が凹部151、152に嵌まる形状であればよく、例えば多角柱状、円錐状、または多角錐状であってもよい。また、例えば凹部151、152は互いにつながっていてもよい。
【0073】
図8図9を参照して、変形例の遮蔽体1について説明する。変形例の遮蔽体1では、凹部151、152、凸部161、162のそれぞれの形状が上記実施形態と異なる。すなわち、変形例の遮蔽体1では、凹部151、152が、それぞれ、下面15から上方に正四角錐状に凹む。凹部151は下面15の左端を底面の一辺とする。凹部152は下面15の右端を底面の一辺とする。この場合、長さD1:長さD2が1:2なので、凹部151の底面のうち左右方向において下面15の左端とは反対の辺と、凹部152の底面のうち左右方向において下面15の右端とは反対の辺は、互いに一致する。
【0074】
凸部161、162は、それぞれ、正四角錐状であり、上面16から上方に突出する。凸部161は上面16の左端を底面の一辺とする。凸部162は上面16の右端を底面の一辺とする。この場合、長さD1:長さD2が1:2なので、凸部161の底面のうち左右方向において上面16の左端とは反対の辺と、凸部162の底面のうち左右方向において上面16の右端とは反対の辺は、互いに一致する。凹部151の頂点Q1と凸部161の頂点Q2と交点P1は一直線上に位置する。凹部152の頂点Q2と凸部162の頂点Q4と交点P2は一直線上に位置する。
【0075】
上記構成によれば、例えば第一の遮蔽体1の凹部151に第二の遮蔽体1の凸部161が嵌まった場合に、凹部151と凸部161の接触面積が上記実施形態と比べて大きくなる。よって、変形例の遮蔽体1は、複数の遮蔽体1が積み上げられた場合に、互いの間に隙間が生じることを抑制できる。
【0076】
また、上記実施形態において、凸部161、162の個数は1個でもよいし、3個以上でもよいし、0個でもよい。凹部151、152の個数も1個でもよいし、3個以上でもよいし、0個でもよい。例えば凹部151、152の個数は凸部161、162の個数と同じでなくてもよく、凸部161、162の個数よりも多くてもよい。
【0077】
また、凸部161、162がそれぞれ設けられる位置は、上記実施形態に限定されない。例えば1つの凸部が上面16において、上方から見て中心線C1と中心線C2の交点に設けられてもよいし、4つの凸部が上面16において、上方から見て4つの角部のそれぞれに設けられてもよい。凹部151、152がそれぞれ設けられる位置も、凸部161、162と同様に、上記実施形態に限定されない。
【0078】
また、上記実施形態では、凹部151、152と凸部161、162のそれぞれが互いに反対を向く面(下面15と上面16)に設けられる。これに対し、凹部151、152と凸部161、162のそれぞれが互いに交差する面に設けられてもよい。すなわち、例えば凹部151、152が下面15に設けられ、凸部161、162が左面13に設けられてもよい。
【0079】
また、上記実施形態において、凹部151、152は互いに異なる複数の面に設けられてもよい。すなわち、例えば凹部151が下面15に設けられ、凹部152が上面16または左面13に設けられてもよい。凸部161、162も、凹部151、152と同様に、互いに異なる複数の面に設けられてもよい。
【0080】
また、遮蔽体1の形状は上記実施形態に限定されない。例えば、遮蔽体1は円柱状、円錐状、多角柱状、多角錐状でもよい。下面15と上面16は扇形であってもよい。長さD1:長さD2:長さD3は1:2:1でなくてもよい。つまり、長さD1は長さD2と同じでもよいし、長さD2よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。長さD2は長さD3と同じでもよいし、長さD3よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。長さD3は長さD1と同じでもよいし、長さD1よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。遮蔽体1はブロックではなく、板状でもよい。これらの場合、金型2は遮蔽体1の上記形状に応じたキャビティ30の形状を有すればよい。また、遮蔽体1の製造方法は、互いに異なる形状のキャビティ30を有する複数の金型2によって互いに異なる形状の遮蔽体1を成形してもよい。また、金型2の構成は上記実施形態に限定されない。例えば金型2は圧縮コイルばね461、462、463、464に代えて他のばね、シリンダ等によって上板41を下方に押圧してもよい。また、金型2は上板41を下方に押圧する機構(例えば圧縮コイルばね461、462、463、464)を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 遮蔽体
2 金型
9 電線
15 下面
16 上面
92 絶縁体
151、152 凹部
161、162 凸部
300 充填材料
351、352 凸部
411、412 凹部
921 架橋ポリエチレンチップ
C1、C2 中心線
P1、P2 交点
V1、V2、V3 分割線