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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041142
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】建物浸水抑止構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/64 20060101AFI20230316BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20230316BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20230316BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
E04B1/64 A
E04B1/682 A
E04B1/66 A
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148330
(22)【出願日】2021-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 麻利子
(72)【発明者】
【氏名】東 智明
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001EA08
2E001FA04
2E001FA21
2E001GA06
2E001GA24
2E001HF01
2E001HF02
2E139AA07
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】内水氾濫等による建物周囲の冠水に対して、外壁断熱材等の断熱面材に接着される防水シートからの建物内への浸水を抑制することができる建物浸水抑止構造を提供する。
【解決手段】建物浸水抑止構造1は、建物の基礎11と、基礎上に固定された土台12と、土台12上に固定された複数の柱2と、土台12の屋外側に固定された横桟21と、柱2の屋外側に渡って横桟21上に配置された複数の外壁断熱材31と、外壁断熱材31間の目地および外壁断熱材31の下部から横桟21の屋外面に渡って塗布された屋内側弾性接着シーリング剤41と、屋内側弾性接着シーリング剤41によって外壁断熱材31および横桟21の屋外面に貼付された複数の透湿防水シート32と、透湿防水シート32同士の接合箇所および透湿防水シート32における下縁側から横桟21の屋外面に至る領域に塗布された屋外側弾性接着シーリング剤42と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎と、
上記基礎上に固定された土台と、
上記土台上に固定された複数の柱と、
上記複数の柱の屋外側または柱間に渡って配置された複数の断熱面材と、
上記断熱面材の横縁側、および上記断熱面材の下部側に塗布された屋内側弾性接着シーリング剤と、
上記屋内側弾性接着シーリング剤によって上記断熱面材の屋外面に貼付された複数の防水シートと、
隣り合う防水シート同士の接合箇所の屋外側、および上記防水シートにおける下縁側の領域に塗布された屋外側弾性接着シーリング剤と、
を備えることを特徴とする建物浸水抑止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物浸水抑止構造において、上記屋内側弾性接着シーリング剤および上記屋外側弾性接着シーリング剤は、想定する浸水高さである所定高さ位置まで塗布され、上記所定高さを超える高さでは雨に対する防水処理がされていることを特徴とする建物浸水抑止構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建物浸水抑止構造において、
上記土台の屋外側に横桟が固定されており、
上記断熱面材は、上記複数の柱の屋外側に渡って上記横桟上に配置された外壁断熱材であり、
上記屋内側弾性接着シーリング剤は、上記横桟の屋外面にも渡って塗布されており、
上記防水シートは上記横桟の屋外面にも貼付されていることを特徴とする建物浸水抑止構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の建物浸水抑止構造において、
上記防水シートの屋外側に配置された縦胴縁と、
上記縦胴縁と上記防水シートとの間に位置する粘着性止水層部と、
上記縦胴縁、上記粘着性止水層部、上記防水シートを貫通して上記縦胴縁を上記土台および上記柱に固定するビスと、
を備えることを特徴とする建物浸水抑止構造。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか1に記載の建物浸水抑止構造において、
上記防水シートの屋外側に配置された外壁留め金具と、
上記外壁留め金具と上記防水シートとの間に位置する粘着性止水層部と、
上記外壁留め金具、上記粘着性止水層部、上記防水シートを貫通して上記外壁留め金具を上記土台および上記柱に固定するビスと、
を備えることを特徴とする建物浸水抑止構造。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の建物浸水抑止構造において、上記屋外側弾性接着シーリング剤の下部領域は、上記基礎の天端へと延長して塗布されていることを特徴とする建物浸水抑止構造。
【請求項7】
請求項6に記載の建物浸水抑止構造において、上記基礎の天端へ延長して塗布された上記屋外側弾性接着シーリング剤の下部領域が、土台水切りで覆われることを特徴とする建物浸水抑止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物周囲の冠水によって建物内に水が浸入するのを抑制できる建物浸水抑止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の断熱構造が開示されている。この建物の断熱構造は、建築物を支持し地面から上方に立ち上がって設けられる外周基礎と、前記外周基礎上に設置された基礎パッキンと、前記基礎パッキン上に設置された土台とを備えた建物の断熱構造であって、前記外周基礎の屋外側又は屋内側の側面を覆う基礎断熱材と、前記基礎パッキンの屋外側又は屋内側の側面を覆い、前記外周基礎と前記基礎断熱材とに跨って配置されたパッキン断熱材と、前記土台の屋外側又は屋内側の側面に固定部材によって固定され、前記パッキン断熱材を前記外周基礎及び前記基礎断熱材に向けて押圧する押圧部材と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-165448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記建物の断熱構造では、竪胴縁が、外壁断熱材の屋外側の側面との間に透湿防水シートを挟んだ状態で間柱に釘などで固定される。しかし、上記透湿防水シートは、降雨時の雨水浸入を防止するべく上記外壁断熱材に接着されるが、このような接着は、雨水の浸入は防止できても、例えば、内水氾濫等による建物周囲の冠水に対して、建物内への浸水を抑制することは容易でないと思われる。
【0005】
この発明は、内水氾濫等による建物周囲の冠水に対して、外壁断熱材等の断熱面材に接着される防水シートからの建物内への浸水を抑制することができる建物浸水抑止構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の建物浸水抑止構造は、
建物の基礎と、
上記基礎上に固定された土台と、
上記土台上に固定された複数の柱と、
上記複数の柱の屋外側または柱間に渡って配置された複数の断熱面材と、
上記断熱面材の横縁側、および上記断熱面材の下部側に塗布された屋内側弾性接着シーリング剤と、
上記屋内側弾性接着シーリング剤によって上記断熱面材の屋外面に貼付された複数の防水シートと、
隣り合う防水シート同士の接合箇所の屋外側、および上記防水シートにおける下縁側の領域に塗布された屋外側弾性接着シーリング剤と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、上記断熱面材の横縁側、および上記断熱面材の下部側に塗布された屋内側弾性接着シーリング剤によって、当該箇所のシール施工と共に、防水シートを断熱面材の屋外面に貼付する作業を同時的に行うことができる。また、仮に、上記防水シートが破れたような場合でも、上記屋内側弾性接着シーリング剤による上記シール状態は維持されるので、建物内への浸水は抑制される。さらに、隣り合う防水シート同士の接合箇所の屋外側、および上記防水シートにおける下縁側の領域には、屋外側弾性接着シーリング剤が塗布されるので、仮に、隣り合う上記防水シート同士の接合箇所等において、屋内側弾性接着シーリング剤による上記防水シートの接着に不良箇所が生じていたとしても、この不良箇所を屋外側弾性接着シーリング剤で適切に上塗りシールすることができる。そして、上記屋内側弾性接着シーリング剤および上記屋外側弾性接着シーリング剤は同一種の素材であり、異なる種の素材を用いる場合の多数種の素材を用意する非効率を回避することができ、また、誤使用による不具合も低減できる。
【0008】
上記屋内側弾性接着シーリング剤および上記屋外側弾性接着シーリング剤は、想定する浸水高さである所定高さ位置まで塗布され、上記所定高さを超える高さでは雨に対する防水処理がされていてもよい。これによれば、上記屋内側弾性接着シーリング剤等の過剰使用等を防止することができる。
【0009】
上記建物浸水抑止構造において、
上記土台の屋外側に横桟が固定されており、
上記断熱面材は、上記複数の柱の屋外側に渡って上記横桟上に配置された外壁断熱材であり、
上記屋内側弾性接着シーリング剤は、上記横桟の屋外面にも渡って塗布されており、
上記防水シートは上記横桟の屋外面にも貼付されてもよい。
【0010】
上記建物浸水抑止構造において、
上記防水シートの屋外側に配置された縦胴縁と、
上記縦胴縁と上記防水シートとの間に位置する粘着性止水層部と、
上記縦胴縁、上記粘着性止水層部、上記防水シートを貫通して上記縦胴縁を上記土台および上記柱に固定するビスと、
を備えてもよい。これによれば、上記ビスの表面と当該ビスによる穿孔との間の隙間からの水の浸入を、上記ビスの表面に粘り付いた上記粘着性止水層部で抑制することができる。
【0011】
或いは、上記建物浸水抑止構造において、
上記防水シートの屋外側に配置された外壁留め金具と、
上記外壁留め金具と上記防水シートとの間に位置する粘着性止水層部と、
上記外壁留め金具、上記粘着性止水層部、上記防水シートを貫通して上記外壁留め金具を上記土台および上記柱に固定するビスと、
を備えてもよい。
【0012】
上記屋外側弾性接着シーリング剤の下部領域は、上記基礎の天端へと延長して塗布されていてもよい。これによれば、仮に、上記防水シートの上記横桟に対する上記屋内側弾性接着シーリング剤による貼付において適切にシールされていない箇所が存在していても、当該箇所からの水の浸入を、上記屋外側弾性接着シーリング剤の下部領域によって抑制することができる。また、上記横桟の下面から土台側に至る経路による浸水も上記下部領域によって抑制することができる。
【0013】
上記基礎の天端へ延長して塗布された上記屋外側弾性接着シーリング剤の下部領域が、土台水切りで覆われてもよい。これによれば、上記屋外側弾性接着シーリング剤の下部領域で建物外観の美観が低下するのを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明であれば、内水氾濫等による建物周囲の冠水に対しても、外壁断熱材等の断熱面材に接着される防水シートの個所からの建物内への浸水を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の建物浸水抑止構造を示した図であって、同図(A)は概略の鉛直断面図であり、同図(B)は概略の水平断面図である。
図2図1の建物浸水抑止構造を有する建物の出隅部の作製工程を示した斜視図である。
図3図2の後工程を示した斜視図である。
図4図3の後工程を示した斜視図である。
図5図4の後工程を示した斜視図である。
図6図5の後工程を示した斜視図である。
図7図6の後工程を示した斜視図である。
図8図7の後工程を示した斜視図である。
図9図8の後工程を示した斜視図である。
図10図9の後工程を示した斜視図である。
図11図10の後工程を示した斜視図である。
図12図11の後工程を示した斜視図である。
図13図12の後工程を示した斜視図である。
図14図13の後工程を示した斜視図である。
図15図14の後工程を示した斜視図である。
図16】他の実施形態の建物浸水抑止構造を示した図であって、縦胴縁を用いずに外壁面材を支持する構造の概略の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)は実施形態にかかる建物浸水抑止構造1を有する建物の出隅部の概略の鉛直断面を示しており、図1(B)は、同出隅部の概略の水平断面を示している。これらの図では、部材構成を分かり易くするために、部材の厚みおよび部材同士の間隔等は実際と異なる場合がある。
【0017】
建物浸水抑止構造1は、基礎11およびこの基礎11上に固定された木材からなる土台12を有する。また、基礎11の天端と土台12との間には、複数列で止水材13が設けられており、また、基礎11の天端を覆うように止水材13上に防湿シート14が敷かれている。防湿シート14および止水材13は、主に、基礎11のコンクリートからの湿気が土台12に移るのを防止するためのものであり、冠水に対する止水性はあまり高くない。なお、基礎11の天端がレベラーからなる場合がある。
【0018】
上記土台12上には、複数の柱2が所定間隔で固定されている。また、柱2間には間柱2Aが設けられ、柱2と間柱2Aとの間には、グラスウール等の断熱材が設けられる。土台12の屋外側であって基礎11の天端上には、木材からなる横桟21が配置され、この横桟21はビス等によって土台12に固定される。さらに、柱2の屋外側面には、壁合板パッキン22がビス等によって固定される。
【0019】
上記柱2の屋外側(この実施形態では、壁合板パッキン22の屋外側)には、外壁部3を構成する発泡プラスチック系の材料等からなる複数枚の外壁断熱材(例えば、商品名スタイロフォーム:厚さ30mm)31が配置される。外壁断熱材31は、上記複数の柱2の屋外側に渡って、横桟21上に並べて配置されている。
【0020】
横に隣り合う外壁断熱材31間の目地(横縁側)の屋外側を塞ぐように、且つ外壁断熱材31の下部の屋外面から上記横桟21の屋外面に渡るように、屋内側弾性接着シーリング剤41が塗布されている。屋内側弾性接着シーリング剤41は、不定形の止水剤として機能し、接着性を有するとともに乾燥後も一定の弾性を有するものである。屋内側弾性接着シーリング剤41としては、例えば、1成分形変成シリコーン樹脂系である弾性接着剤(コニシ株式会社製MPX-1等)、或いは、この弾性接着剤と同等の接着性および弾性(弾性復元率)を有するコーキング剤等を用いることができる。
【0021】
そして、上記のように塗布された屋内側弾性接着シーリング剤41によって、外壁断熱材31および横桟21の屋外面には、複数枚の透湿防水シート(単に、防水シートと記すことがある)32が貼り付けられる。すなわち、透湿防水シート32の下部は、屋内側弾性接着シーリング剤41によって、外壁断熱材31の下部から横桟21にかけて接着される。また、横に隣り合う透湿防水シート32の左右縁は幾分重なって接している。透湿防水シート32は、所定高さの範囲で、屋内側弾性接着シーリング剤41によって、外壁断熱材31に接着される。上記所定高さは、想定される浸水高さであり、例えば、グランドレベルから800mm以下の高さとしている。後述する屋外側弾性接着シーリング剤42についても、上記所定高さ位置まで施され、上記所定高さを超える高さでは、一般的な雨に対する防水処理がされてもよい。
【0022】
横に隣り合う透湿防水シート32同士の接合箇所の屋外側、および透湿防水シート32における下縁側から横桟21の屋外面にかかる領域には、屋外側弾性接着シーリング剤42が塗布される。屋外側弾性接着シーリング剤42としては、例えば、1成分形変成シリコーン樹脂系である弾性接着剤(コニシ株式会社製MPX-1等)、或いは、この弾性接着剤と同等の接着性および弾性(弾性復元率)を有するコーキング剤等を用いることができる。屋内側弾性接着シーリング剤41と屋外側弾性接着シーリング剤42とは、同一メーカーの同一品である必要はないが、これらが混同使用されてもよい程度の同種品とする。なお、屋内側弾性接着シーリング剤41および屋外側弾性接着シーリング剤42は、50%モジュラス値が0.2N/mm2以下(低モジュラス)であるのが望ましい。
【0023】
なお、出隅箇所に位置する外壁断熱材31の屋外面には、透湿防水シート32ではなく、防水シート32Aを貼付している。
【0024】
防水シート32、32Aの屋外側には、縦胴縁(竪胴縁)34が配置されており、各縦胴縁34は、ビス51によって土台12および柱2に固定される。縦胴縁34の下端は外壁断熱材31の下端よりも下側に位置する。縦胴縁34と防水シート32、32Aとの間には、粘着性および止水性を有する粘着性止水層部(例えば、自己融着テープ(ブチルゴムテープ等))33が配置されている。粘着性止水層部33の下端は外壁断熱材31の下端よりも下側に位置する。ビス51の先端側は、縦胴縁34、粘着性止水層部33、透湿防水シート32および外壁断熱材31を貫通して土台12に達する。縦胴縁34には図示しない支持金具が固定されており、この支持金具によって外壁面材35が支持される。
【0025】
屋外側弾性接着シーリング剤42の下部領域は、基礎11の天端側に延長され、さらに、基礎11の屋外側の立上面の上部側にも延長されて塗布されている。そして、上記延長塗布された屋外側弾性接着シーリング剤42(下部領域)は、土台水切り5で覆われる。土台水切り5はビスによって横桟21に固定される。
【0026】
すなわち、この実施形態の建物浸水抑止構造は、
建物の基礎11と、
上記基礎11上に固定された土台12と、
上記土台12上に固定された複数の柱2と、
上記土台12の屋外側に固定された横桟21と、
上記複数の柱2の屋外側に渡って上記横桟21上に配置された複数の外壁断熱材31と、
隣り合う外壁断熱材31間の目地、および上記外壁断熱材31の下部から上記横桟21の屋外面に渡って塗布された屋内側弾性接着シーリング剤41と、
上記屋内側弾性接着シーリング剤41によって上記外壁断熱材31および上記横桟21の屋外面に貼付された複数の防水シート32,32Aと、
隣り合う防水シート32,32A同士の接合箇所の屋外側、および上記防水シート32,32Aにおける下縁側から上記横桟21の屋外面に至る領域に塗布された屋外側弾性接着シーリング剤42と、を備える。
【0027】
上記の構成であれば、隣り合う外壁断熱材31間の目地および外壁断熱材31と横桟21との間をシールする屋内側弾性接着シーリング剤41によって、当該箇所のシール施工と共に、防水シート32,32Aを外壁断熱材31の屋外面に貼付する作業を同時的に行うことができる。また、仮に、透湿防水シート32が破れたような場合でも、屋内側弾性接着シーリング剤41による上記シール状態は維持されるので、建物内への浸水は抑制される。さらに、隣り合う透湿防水シート32同士や防水シート32Aとの接合箇所の屋外側、および防水シート32,32Aにおける下縁側から横桟21の屋外面に至る領域には、屋外側弾性接着シーリング剤42が塗布されるので、仮に、隣り合う透湿防水シート32同士や防水シート32Aの接合箇所等に、屋内側弾性接着シーリング剤41の接着シール不良箇所が生じていたとしても、この不良箇所を屋外側弾性接着シーリング剤42で適切に上塗りシールすることができる。そして、屋内側弾性接着シーリング剤41および屋外側弾性接着シーリング剤42は同一種の素材であり、異なる種の素材を用いる場合の多数種の素材を用意する非効率を回避することができ、また、誤使用による不具合も低減できる。
【0028】
屋内側弾性接着シーリング剤41および屋外側弾性接着シーリング剤42は、想定する浸水高さである所定高さ位置まで塗布され、上記所定高さを超える高さでは雨に対する防水処理がされている。これにより、過剰な浸水対策を回避して屋内側弾性接着シーリング剤41等の過剰使用等を防止することができる。
【0029】
縦胴縁34、粘着性止水層部33、防水シート32、32Aおよび外壁断熱材31を貫通するビス51により、縦胴縁34が土台12に固定される。これにより、ビス51の表面と当該ビス51による穿孔との間の隙間からの水の浸入が、ビス51の表面に粘り付く粘着性止水層部33で抑制される。
【0030】
屋外側弾性接着シーリング剤42の下部領域が基礎11の天端へと延長して塗布されていると、仮に、防水シート32、32Aの横桟21に対する貼付において適切にシールされていない箇所が存在していても、当該箇所からの水の浸入を、上記屋外側弾性接着シーリング剤42の下部領域によって抑制することができる。また、横桟21の下面から土台12側に至る経路による浸水も上記下部領域によって抑制することができる。なお、基礎11の天端を屋外側弾性接着シーリング剤42とは異なる特段の接着性を有しないシリコーン剤等で塗布してもよいが、基礎11の天端を屋外側弾性接着シーリング剤42によって塗布する方が、多数種の素材を用意する非効率を回避でき、また、誤使用による不具合も低減できることになる。
【0031】
基礎11の天端へ延長して塗布された屋外側弾性接着シーリング剤42の下部領域が、土台水切り5で覆われると、屋外側弾性接着シーリング剤42の下部領域で建物外観の美観が低下するのを回避できる。
【0032】
基礎11の天端がレベラーで形成される場合は、屋外側弾性接着シーリング剤42の下部領域が基礎11の屋外側の立上面(レベラー側面)にも延長されて塗布されているのが望ましい。上記レベラーは、基礎11のコンクリートよりも水セメント比が大きく緻密ではないので、当該レベラーを透過した水による浸水のおそれがあるが、これを上記下部領域で阻止することができる。
【0033】
次に、図2乃至図15を用いて、建物浸水抑止構造1を有する建物の出隅部の作製方法について説明していく。なお、これらの図では、耐浸水性能を評価するために水槽内に構築された実験用の建物浸水抑止構造を示している。
【0034】
図2に示すように、基礎11を作製し、基礎11の天端に止水材13を塗布し、この止水材13上に防湿シート14を敷く。
【0035】
図3に示すように、防湿シート14上に土台12を配置し、この土台12を、アンカーボルト11aおよび図示しないナットを用いて基礎11に固定する。また、土台12上に柱2を立設する。
【0036】
図4に示すように、土台12の屋外側であって基礎11の天端上に、木材からなる横桟21を配置し、この横桟21をビス等で土台12に固定する。また、柱2間には、土台12上に間柱2Aを立設する。さらに、柱2および間柱2Aの屋外側面に、壁合板パッキン22をビス等で固定する。
【0037】
図5に示すように、複数枚の外壁断熱材31を、壁合板パッキン22の屋外において、横桟21上に並べて配置する。外壁断熱材31は、例えば、釘等で壁合板パッキン22の屋外面に仮固定される。
【0038】
図6に示すように、屋内側弾性接着シーリング剤41を、横に隣り合う外壁断熱材31間の目地、および外壁断熱材31の下部から上記横桟21の屋外面に渡る箇所に付着させる。
【0039】
図7に示すように、付着させた屋内側弾性接着シーリング剤41を、ヘラ等を用いて塗り延ばす。
【0040】
図8に示すように、透湿防水シート32を、屋内側弾性接着シーリング剤41によって、外壁断熱材31および上記横桟21の屋外面に貼付する。
【0041】
図9に示すように、防水シート32Aを、出隅箇所に位置する外壁断熱材31の屋外面に屋内側弾性接着シーリング剤41によって貼付する。なお、防水シート32Aと透湿防水シート32の縁同士の接着のために、透湿防水シート32の縁側に屋内側弾性接着シーリング剤41を寄せ広げてもよい。
【0042】
図10に示すように、屋外側弾性接着シーリング剤42を、横に隣り合う防水シート32、32A同士の接合箇所の屋外側および防水シート32、32Aにおける下縁側から横桟21の屋外面に至る領域に付着させる。
【0043】
図11に示すように、付着させた屋外側弾性接着シーリング剤42を、ヘラ等を用いて塗り延ばす。このとき、屋外側弾性接着シーリング剤42の下部領域を基礎11の天端に延長し、さらに、基礎11の屋外側の立上面の上部側にも塗り延ばす。
【0044】
図12に示すように、土台水切り5をビスによって横桟21に固定する。この土台水切り5によって、上記延長塗布された屋外側弾性接着シーリング剤42(下部領域)が覆われる。
【0045】
図13に示すように、粘着性止水層部33を、透湿防水シート32の屋外側の縦胴縁34が配置される箇所(ビスが挿通される箇所)に貼り付ける。
【0046】
図14に示すように、粘着性止水層部33上に縦胴縁34を配置し、各縦胴縁34をビス51(図1参照)によって土台12および柱2に固定する。なお、縦胴縁34については、便宜上、上記所定の高さのものを示しているが、本来は外壁高さに対応した高さとされる。また、粘着性止水層部33は、縦胴縁34の高さに合わせて高くされてもよい。
【0047】
図15に示すように、外壁面材35を縦胴縁34に固定する。縦胴縁34には図示しない支持金具が固定され、この支持金具によって外壁面材35が支持される。なお、上記支持金具を有する構造では、ビス51は、当該支持金具も貫通して設けられる。
【0048】
図16に、他の実施形態として、縦胴縁を備えず、外壁面材が支持金具である外壁留め金具55で直接支持される建物浸水抑止構造を示す。この構造は、上記防水シート32、32Aの屋外側に配置された外壁留め金具55と、上記外壁留め金具55と上記防水シート32、32Aとの間に位置する粘着性止水層部33と、上記外壁留め金具55、上記粘着性止水層部33、上記防水シート32、32Aおよび上記外壁断熱材31を貫通して上記外壁留め金具55を上記土台12および上記柱2に固定するビス51と、を備える。
【0049】
なお、上記外壁留め金具55は、一般的な金具でよい。また、上記の外壁留め金具55を備える構造においてジョイナー56を取り付けることができる。このジョイナー56の脚部は、屋外側弾性接着シーリング剤42の屋外側に配置される。また、図1に示した構造においても、縦胴縁34の屋外側面にジョイナーを配置した構造とすることができる。
【0050】
また、この発明の建物浸水抑止構造は、上記外壁断熱材(外張り断熱材)31を備えるものに限定されない。外壁断熱材31に代えて柱間に断熱面材が配置される構造にも適用できる。かかる構造では、横桟21は不要である。また、柱と断熱面材の横縁同士の目地部分に屋内側弾性接着シーリング剤41が塗布される。
【0051】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 :建物浸水抑止構造
2 :柱
2A :間柱
3 :外壁部
5 :土台水切り
11 :基礎
11a :アンカーボルト
12 :土台
13 :止水材
14 :防湿シート
21 :横桟
22 :壁合板パッキン
31 :外壁断熱材(断熱面材)
32 :透湿防水シート
32A :防水シート
33 :粘着性止水層部
34 :縦胴縁
35 :外壁面材
41 :屋内側弾性接着シーリング剤
42 :屋外側弾性接着シーリング剤
51 :ビス
55 :外壁留め金具
56 :ジョイナー
図1
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