(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004144
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】内燃機関のカバー構造
(51)【国際特許分類】
F02F 7/00 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
F02F7/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105666
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 義裕
【テーマコード(参考)】
3G024
【Fターム(参考)】
3G024AA08
3G024AA39
3G024AA49
3G024BA28
3G024EA01
3G024FA02
(57)【要約】
【課題】マウントブラケットが締結されるマウント取付部をカバー部材から外方に膨出させた内燃機関のカバー構造において、マウント取付部の外方への膨出量を大きくしつつ、マウント取付部の振動を抑制できる内燃機関のカバー構造を提供すること。
【解決手段】チェーンカバー40のマウント取付部44の下壁44Cは、湾曲壁部44Dからチェーンカバー40の内側に膨出し、中央ボス45Aの外周縁に連結される曲面からなる中央膨出部44Gと、下壁側左側壁部44Eおよび湾曲壁部44Dからチェーンカバー40の内側に膨出し、外側ボス42aの外周縁に連結される曲面からなる左側膨出部44Hと、下壁側右側壁部44Fおよび湾曲壁部44Dからチェーンカバー40の内側に膨出し、外側ボス43aの外周縁に連結される曲面からなる右側膨出部44Iとを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体壁部と、前記本体壁部の幅方向一端部に設けられた第1の側壁部と、前記本体壁部の幅方向他端部に設けられた第2の側壁部とを有し、クランク軸からカム軸に動力を伝達する伝動部材を覆うカバー部材を有し、
前記カバー部材は、前記第1の側壁部および前記第2の側壁部にそれぞれ設けられ、締結具によって内燃機関本体に締結される外側ボスと、前記本体壁部の幅方向中央部に位置し、締結具によって前記内燃機関本体に締結される複数の中央ボスと、前記本体壁部に対して前記内燃機関本体から離れる方向に膨出し、前記内燃機関本体を、マウントブラケットを介して車体に支持するマウント取付部とを備えており、
前記マウント取付部は、前記マウントブラケットが取付けられる上壁と、前記上壁の外周縁から下方に延びる周壁と、前記周壁の外周縁から下方に延びる下壁とを有する内燃機関のカバー構造であって、
前記下壁は、前記本体壁部から上側に向かうにつれて前記本体壁部から漸次離れるように湾曲し、その上端部が前記周壁の膨出方向の先端部に連結される湾曲壁部と、前記湾曲壁部の幅方向一端部を前記周壁および前記第1の側壁部に連結する第1の下壁側側壁部と、前記湾曲壁部の幅方向他端部を前記周壁および前記第2の側壁部に連結する第2の下壁側側壁部とを有し、
前記複数の中央ボスは、前記湾曲壁部に設けられた下側中央ボスを含んで構成されており、
前記外側ボスは、前記下側中央ボスに対して前記本体壁部の幅方向一方側に位置する第1の外側ボスと、前記下側中央ボスに対して前記本体壁部の幅方向他方側に位置する第2の外側ボスとを有し、
前記下壁は、前記湾曲壁部から前記カバー部材の内側に膨出し、前記下側中央ボスの外周縁に連結される曲面からなる中央膨出部と、前記第1の下壁側側壁部および前記湾曲壁部から前記カバー部材の内側に膨出し、前記第1の外側ボスの外周縁に連結される曲面からなる第1の膨出部と、前記第2の下壁側側壁部および前記湾曲壁部から前記カバー部材の内側に膨出し、前記第2の外側ボスの外周縁に連結される曲面からなる第2の膨出部とを有することを特徴とする内燃機関のカバー構造。
【請求項2】
前記複数の中央ボスは、前記マウント取付部よりも上方で、かつ、前記下側中央ボスと上下方向に並ぶように設置される上側中央ボスを含んで構成されており、
前記カバー部材は、前記上側中央ボスから前記下側中央ボスおよび前記中央膨出部まで延び、前記上側中央ボスと前記下側中央ボスおよび前記中央膨出部とを連結する第1のリブと、
前記上側中央ボスから前記第1の膨出部まで延び、前記上側中央ボスと前記第1の膨出部とを連結する第2のリブと、
前記上側中央ボスから前記第2の膨出部まで延び、前記上側中央ボスと前記第2の膨出部とを連結する第3のリブとを有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のカバー構造。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記下側中央ボスおよび前記中央膨出部から前記第2のリブの延びる方向の中央部まで延び、前記下側中央ボスおよび前記中央膨出部と前記第2のリブの延びる方向の中央部とを連結する第4のリブと、
前記下側中央ボスおよび前記中央膨出部から前記第3のリブの延びる方向の中央部まで延び、前記第3のリブの延びる方向の中央部と前記下側中央ボスおよび前記中央膨出部とを連結する第5のリブとを有することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関のカバー構造。
【請求項4】
前記マウント取付部は、前記上壁から湾曲壁部側に延び、締結具によって前記マウントブラケットを前記上壁に締結する複数のマウントボスを備えており、
前記第2のリブと前記第4のリブの交点を第1の交点とし、前記第3のリブと前記第5のリブの交点を第2の交点とした場合に、前記第1の交点と前記第2の交点のうちの少なくとも1つの交点は、前記複数のマウントボスのいずれかに連結されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイミングチェーンを有するエンジン本体と、タイミングチェーンを覆うカバー部材とを備えた内燃機関において、カバー部材の上部に膨出部を設けて膨出部にマウントブラケットを締結し、マウントブラケットを車体フレームに支持することにより、エンジン本体をサイドフレームに支持するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジン本体が車体フレームから離れている場合、膨出部がカバー部材から車体フレーム側に大きく膨出する。このため、特許文献1に記載される内燃機関は、マウントブラケットの振動によって膨出部が上下方向に振動し易くなり、未だ、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、マウントブラケットが締結されるマウント取付部をカバー部材から外方に膨出させた内燃機関のカバー構造において、マウント取付部の外方への膨出量を大きくしつつ、マウント取付部の振動を抑制できる内燃機関のカバー構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、本体壁部と、前記本体壁部の幅方向一端部に設けられた第1の側壁部と、前記本体壁部の幅方向他端部に設けられた第2の側壁部とを有し、クランク軸からカム軸に動力を伝達する伝動部材を覆うカバー部材を有し、前記カバー部材は、前記第1の側壁部および前記第2の側壁部にそれぞれ設けられ、締結具によって内燃機関本体に締結される外側ボスと、前記本体壁部の幅方向中央部に位置し、締結具によって前記内燃機関本体に締結される複数の中央ボスと、前記本体壁部に対して前記内燃機関本体から離れる方向に膨出し、前記内燃機関本体を、マウントブラケットを介して車体に支持するマウント取付部とを備えており、前記マウント取付部は、前記マウントブラケットが取付けられる上壁と、前記上壁の外周縁から下方に延びる周壁と、前記周壁の外周縁から下方に延びる下壁とを有する内燃機関のカバー構造であって、前記下壁は、前記本体壁部から上側に向かうにつれて前記本体壁部から漸次離れるように湾曲し、その上端部が前記周壁の膨出方向の先端部に連結される湾曲壁部と、前記湾曲壁部の幅方向一端部を前記周壁および前記第1の側壁部に連結する第1の下壁側側壁部と、前記湾曲壁部の幅方向他端部を前記周壁および前記第2の側壁部に連結する第2の下壁側側壁部とを有し、前記複数の中央ボスは、前記湾曲壁部に設けられた下側中央ボスを含んで構成されており、前記外側ボスは、前記下側中央ボスに対して前記本体壁部の幅方向一方側に位置する第1の外側ボスと、前記下側中央ボスに対して前記本体壁部の幅方向他方側に位置する第2の外側ボスとを有し、前記下壁は、前記湾曲壁部から前記カバー部材の内側に膨出し、前記下側中央ボスの外周縁に連結される曲面からなる中央膨出部と、前記第1の下壁側側壁部および前記湾曲壁部から前記カバー部材の内側に膨出し、前記第1の外側ボスの外周縁に連結される曲面からなる第1の膨出部と、前記第2の下壁側側壁部および前記湾曲壁部から前記カバー部材の内側に膨出し、前記第2の外側ボスの外周縁に連結される曲面からなる第2の膨出部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように上記の本発明によれば、マウントブラケットが締結されるマウント取付部をカバー部材から外方に膨出させた内燃機関のカバー構造において、マウント取付部の外方への膨出量を大きくしつつ、マウント取付部の振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関の上面図であり、シリンダヘッドカバーを取り外した状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る内燃機関のチェーンカバーの上部の正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る内燃機関のチェーンカバーを前斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施例に係る内燃機関のチェーンカバーの内側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係る内燃機関のチェーンカバーを右後斜め上方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、
図5のVIII-VIII方向矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関のカバー構造は、本体壁部と、本体壁部の幅方向一端部に設けられた第1の側壁部と、本体壁部の幅方向他端部に設けられた第2の側壁部とを有し、クランク軸からカム軸に動力を伝達する伝動部材を覆うカバー部材を有し、カバー部材は、第1の側壁部および第2の側壁部にそれぞれ設けられ、締結具によって内燃機関本体に締結される外側ボスと、本体壁部の幅方向中央部に位置し、締結具によって内燃機関本体に締結される複数の中央ボスと、本体壁部に対して内燃機関本体から離れる方向に膨出し、内燃機関本体を、マウントブラケットを介して車体に支持するマウント取付部とを備えており、マウント取付部は、マウントブラケットが取付けられる上壁と、上壁の外周縁から下方に延びる周壁と、周壁の外周縁から下方に延びる下壁とを有する内燃機関のカバー構造であって、下壁は、本体壁部から上側に向かうにつれて本体壁部から漸次離れるように湾曲し、その上端部が周壁の膨出方向の先端部に連結される湾曲壁部と、湾曲壁部の幅方向一端部を周壁および第1の側壁部に連結する第1の下壁側側壁部と、湾曲壁部の幅方向他端部を周壁および第2の側壁部に連結する第2の下壁側側壁部とを有し、複数の中央ボスは、湾曲壁部に設けられた下側中央ボスを含んで構成されており、外側ボスは、下側中央ボスに対して本体壁部の幅方向一方側に位置する第1の外側ボスと、下側中央ボスに対して本体壁部の幅方向他方側に位置する第2の外側ボスとを有し、下壁は、湾曲壁部からカバー部材の内側に膨出し、下側中央ボスの外周縁に連結される曲面からなる中央膨出部と、第1の下壁側側壁部および湾曲壁部からカバー部材の内側に膨出し、第1の外側ボスの外周縁に連結される曲面からなる第1の膨出部と、第2の下壁側側壁部および湾曲壁部からカバー部材の内側に膨出し、第2の外側ボスの外周縁に連結される曲面からなる第2の膨出部とを有する。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関のカバー構造は、マウントブラケットが締結されるマウント取付部をカバー部材から外方に膨出させた内燃機関のカバー構造において、マウント取付部の外方への膨出量を大きくしつつ、マウント取付部の振動を抑制できる。
【実施例0011】
以下、本発明に係る内燃機関のカバー構造の実施例について、図面を用いて説明する。
図1から
図9は、本発明に係る一実施例の内燃機関のカバー構造を示す図である。
図1から
図9において、上下前後左右方向は、以下のように規定する。
【0012】
クランク軸に沿う方向をエンジンの前後方向とし、タイミングチェーンが配置される側を前、その反対側を後ろとする。気筒の中心軸に沿う方向をエンジンの上下方向とし、シリンダヘッド側を上、その反対側を下とする。クランク軸および気筒の中心軸と交差する方向をエンジンの左右方向とし、クランク軸を後側から見て気筒の中心軸に対して左側を左、気筒の中心軸に対して右側を右とする。
【0013】
まず、構成を説明する。
図1において、エンジン1は、エンジン本体2と、チェーンカバー40とを備えている。エンジン本体2は、シリンダブロック3、シリンダヘッド4、シリンダヘッドカバー5およびオイルパン6を有する。本実施例のエンジン1は、内燃機関を構成し、エンジン本体2は、内燃機関本体を構成する。
【0014】
シリンダブロック3には図示しない複数の気筒が設けられており、気筒は、エンジン1の前後方向に並んで設置されている。エンジン1は、気筒の中心軸1Cが上下方向に延びるように設置されている。
【0015】
気筒にはそれぞれ図示しないピストンが収容されており、ピストンは、図示しないコネクティングロッドを介してクランク軸7に連結されている。クランク軸7は、前後方向に延びる回転中心軸を有し、回転中心軸回りに回転する。
【0016】
ピストンは、気筒内で往復運動することにより、コネクティングロッドを介してクランク軸7を回転させる。シリンダヘッド4にはそれぞれ図示しない複数の吸気ポートと複数の排気ポートが形成されている。
【0017】
吸気ポートは、それぞれ気筒に連通しており、吸入空気を気筒に導入する。排気マニホールドは、排気ポートを通して複数の気筒に連通しており、複数の気筒から排出された排気ガスを集合して排気口から図示しない触媒コンバータに排出する。
【0018】
図2に示すように、シリンダヘッド4には吸気カム軸11と排気カム軸12が回転自在に支持されている。吸気カム軸11と排気カム軸12は、回転中心軸11a、12aがエンジン1の前後方向に平行に延びるようにしてエンジン1の左右方向に並んで設置されている。
【0019】
吸気カム軸11は、複数の吸気カム11Aを備えており(図示2つ)、吸気カム11Aは、吸気カム軸11の回転中心軸11aの方向に並んで設置されている。
【0020】
吸気カム11Aは、1つの気筒に対して、例えば2つ設けられている。吸気ポートには図示しない吸気バルブが設けられており、吸気カム11Aは、吸気バルブを操作して吸気ポートを開閉し、気筒と吸気ポートを連通または遮断する。
【0021】
排気カム軸12は、複数の排気カム12Aを備えており(図示2つ)、排気カム12Aは、排気カム軸12の回転中心軸12aの方向に並んで設置されている。以下、回転中心軸11a、12aの方向を軸方向という。
【0022】
排気カム12Aは、1つの気筒に対して、例えば2つ設けられている。排気ポートには図示しない排気バルブが設けられており、排気カム12Aは、排気バルブを操作して排気ポートを開閉し、気筒と排気ポートを連通または遮断する。
【0023】
吸気カム軸11の軸方向の前端部(端部)には吸気側バルブタイミング調整装置15が取付けられている。吸気側バルブタイミング調整装置15は、吸気側ハウジング部材23を有し、吸気側ハウジング部材23の外周部には吸気スプロケット23Sが設けられている。
【0024】
排気カム軸12の軸方向の前端部(端部)には排気側バルブタイミング調整装置16が取付けられている。排気側バルブタイミング調整装置16は、排気側ハウジング部材24を有し、排気側ハウジング部材24の外周部には排気スプロケット24Sが設けられている。
【0025】
吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向における吸気側ハウジング部材23の長さは、排気側ハウジング部材24の長さよりも長く形成されている。
【0026】
図1に示すように、クランク軸7の前端部にはクランクスプロケット7Sが設けられている。クランクスプロケット7Sと吸気スプロケット23Sと排気スプロケット24Sとにはタイミングチェーン8が巻き掛けられている。本実施例のタイミングチェーン8は、伝動部材を構成する。
【0027】
なお、吸気側バルブタイミング調整装置15を排気側バルブタイミング調整装置から構成し、排気側バルブタイミング調整装置16を吸気バルブタイミング調整装置から構成してもよい。この場合、吸気カム軸11と排気カム軸12はバルブタイミング調整装置15、16に応じて入れ替えられる。
【0028】
クランク軸7の動力は、タイミングチェーン8を介して吸気カム軸11と排気カム軸12に伝達される。これにより、吸気カム軸11が回転して吸気カム11Aによって吸気バルブの開閉が行われ、排気カム軸12が回転して排気カム12Aによって排気バルブの開閉が行われる。
【0029】
吸気側バルブタイミング調整装置15は、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相を調整し、吸気バルブの開閉時期(バルブタイミング)を調整する。
【0030】
排気側バルブタイミング調整装置16は、クランク軸7に対する排気カム軸12の相対回転位相を調整し、排気バルブの開閉時期(バルブタイミング)を調整する。本実施例の吸気カム軸11および排気カム軸12は、カム軸を構成する。
【0031】
シリンダブロック3にはオイルポンプ35が設けられている。オイルポンプ35は、クランク軸7によって駆動されることにより、オイルパン6に貯留されるオイルをエンジン1の各部に供給する。
【0032】
チェーンカバー40は、シリンダブロック3の前端部(端部)とシリンダヘッド4の前端部(端部)に取付けられている。
【0033】
チェーンカバー40は、エンジン1の上下方向に沿う方向が長手方向となり、エンジン1の左右方向に沿う方向が短手方向となるようにチェーンカバー40の上下方向がチェーンカバー40の左右方向よりも長く形成されている。
図2、
図5に示すように、チェーンカバー40は、縦壁41、左側壁部42および右側壁部43を有する。
【0034】
縦壁41は、シリンダブロック3とシリンダヘッド4のそれぞれの前端部と吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向で対向している。
【0035】
左側壁部42および右側壁部43は、チェーンカバー40の幅方向(チェーンカバー40の短手方向、左右方向)の右端部と左端部からエンジン本体2に向かって突出している。
【0036】
図1、
図3から
図5に示すように、左側壁部42には複数の外側ボス42Aが設けられており、外側ボス42Aは、左側壁部42の延びる上下方向で離隔して配列されている。右側壁部43には複数の外側ボス43Aが設けられており、外側ボス43Aは、右側壁部43の延びる上下方向で離隔して配列されている。
【0037】
図1に示すように、外側ボス42A、43Aにはボルト33A、33Bが挿通されており、ボルト33A、33Bは、シリンダブロック3の前端部とシリンダヘッド4の前端部に締結されている。
【0038】
これにより、チェーンカバー40は、ボルト33A、33Bによってエンジン本体2に固定されている。本実施例の縦壁41は、本体壁を構成し、左側壁部42は、第1の側壁を構成する。右側壁部43は、第2の側壁を構成し、ボルト33A、33Bは、締結具を構成する。
【0039】
図2に示すように、チェーンカバー40は、タイミングチェーン8と吸気側バルブタイミング調整装置15と排気側バルブタイミング調整装置16とを収容しており、タイミングチェーン8と吸気側バルブタイミング調整装置15と排気側バルブタイミング調整装置16とを前側から覆っている。
【0040】
図1、
図2において、タイミングチェーン8を仮想線で示す。本実施例のチェーンカバー40は、カバー部材を構成する。なお、
図1、
図3の仮想線55は、シリンダブロック3とシリンダヘッド4の境界である。
【0041】
吸気側バルブタイミング調整装置15の吸気側ハウジング部材23にはタイミングチェーン8を介してクランク軸7の動力が伝達される。
【0042】
吸気側ハウジング部材23には図示しない吸気側ベーンロータが収容されており、吸気側ベーンロータは、吸気カム軸11と一体で回転する。吸気側ベーンロータは、吸気側ハウジング部材23の内部を図示しない複数の進角室と複数の遅角室とに区画している。
【0043】
吸気側バルブタイミング調整装置15には吸気側スプール弁25が設けられている(
図2参照)。吸気側スプール弁25は、吸気カム軸11と一体で回転するとともに、吸気カム軸11の軸方向に移動自在となっている。
【0044】
排気側バルブタイミング調整装置16の排気側ハウジング部材24にはタイミングチェーン8を介してクランク軸7の動力が伝達される。
【0045】
排気側ハウジング部材24には図示しない排気側ベーンロータが収容されており、排気側ベーンロータは、排気カム軸12と一体で回転する。排気側ベーンロータは、排気側ハウジング部材24の内部を図示しない複数の進角室と複数の遅角室とに区画している。
【0046】
排気側バルブタイミング調整装置16には排気側スプール弁26が設けられている(
図2参照)。排気側スプール弁26は、排気カム軸12と一体で回転するように排気カム軸12の回転中心軸12a上に設置されており、排気カム軸12の軸方向に移動自在となっている。
【0047】
図2に示すように、チェーンカバー40の縦壁41の上部には吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bが設けられており、吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bは、チェーンカバー40の幅方向(短手方向)に並列に設置されている。
【0048】
吸気側縦壁部41Aは、吸気カム軸11の軸方向で吸気側バルブタイミング調整装置15に対向しており、吸気側バルブタイミング調整装置15を覆っている。
【0049】
排気側縦壁部41Bは、排気カム軸12の軸方向で排気側バルブタイミング調整装置16に対向しており、排気側バルブタイミング調整装置16を覆っている。
【0050】
排気側縦壁部41Bは、吸気側縦壁部41Aに対してエンジン本体2側に窪んでいる。すなわち、排気側縦壁部41Bは、吸気側縦壁部41Aに対してエンジン本体2側に近づくように窪んでおり、吸気側縦壁部41Aは、排気側縦壁部41Bに対してエンジン本体2から離れるように膨出している。
【0051】
吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bは、吸気カム軸11の軸方向に段差を有する段差部41Cによって連結されている。すなわち、吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bは、段差部41Cによって吸気カム軸11と排気カム軸12の軸方向に離隔されている。
【0052】
図1、
図2に示すように、チェーンカバー40には吸気側ソレノイド31と排気側ソレノイド32が設けられている。
【0053】
図1、
図3に示すように、吸気側縦壁部41Aは、吸気側ソレノイド31が挿入される吸気側貫通孔41aを有する。吸気側貫通孔41aには吸気側ソレノイド31が取付けられており、吸気側ソレノイド31は、図示しないボルトによって吸気側縦壁部41Aに固定されている。
【0054】
排気側縦壁部41Bは、排気側ソレノイド32が挿入される排気側貫通孔41bを有する。排気側貫通孔41bには排気側ソレノイド32が取付けられており、排気側ソレノイド32は、ボルト33Cによって排気側縦壁部41Bに固定されている。
【0055】
吸気側ソレノイド31は、吸気側スプール弁25が吸気カム軸11の軸方向に移動するように吸気側スプール弁25を作動する。
【0056】
吸気側ソレノイド31が吸気側バルブタイミング調整装置15の軸方向で進角室側位置に移動すると、オイルポンプ35から供給されるオイルが進角室に供給される。
【0057】
進角室にオイルが供給されると、吸気側ハウジング部材23に対して吸気側ベーンロータが相対回転することにより、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相が進角側に調整され、吸気バルブの開閉タイミングが進角側に調整される。
【0058】
吸気側ソレノイド31が吸気カム軸11の軸方向で遅角側に移動すると、オイルポンプ35から供給されるオイルが遅角室に供給される。
【0059】
遅角室にオイルが供給されると、吸気側ハウジング部材23に対して吸気側ベーンロータが相対回転することにより、クランク軸7に対する吸気カム軸11の相対回転位相が遅角に調整され、排気バルブの開閉タイミングが遅角側に調整される。
【0060】
排気側スプール弁26は、排気側ソレノイド32によって作動されることにより、吸気側バルブタイミング調整装置15と同様に進角室と遅角室のいずれか一方にオイルを供給することにより、クランク軸7に対する排気カム軸12の相対回転位相を進角側または遅角側に調整し、排気バルブの開閉タイミングを進角側または遅角側に調整する。
【0061】
図3、
図4に示すように、チェーンカバー40の縦壁41の上部にはマウント取付部44が設けられている。
【0062】
マウント取付部44は、吸気側縦壁部41Aと排気側縦壁部41Bの下側に位置し、チェーンカバー40に対してエンジン本体2から離れる方向(前方)に膨出している。
【0063】
図7に示すように、エンジン1の前方にはサイドメンバ9が設けられており、サイドメンバ9は車両前後方向に延びている。
【0064】
図2に示すように、マウント取付部44の先端部には取付座44aが設けられており、取付座44aには図示しない締結具としてのボルトが締結されるマウントボス44b、44c、44dが設けられている。
【0065】
マウントボス44b、44c、44dの内周面にはボルトが挿通されるボルト孔44r、44s、44tが形成されている。
【0066】
図7に示すように、取付座44aにはマウント部材51が取付けられている。マウント部材51は、マウントブラケット51Aを備えており、マウントブラケット51Aの後端部にはボルトが挿通される。
【0067】
マウントブラケット51Aの後端部に挿通されたボルトは、ボルト孔44r、44s、44tに挿通された後、図示しないナットに締結される。これにより、マウントブラケット51Aの後端部が取付座44aに締結されている。
【0068】
マウント部材51は、振動吸収部材51Bを備えており、振動吸収部材51Bは、サイドメンバ9に取付けられている。マウントブラケット51Aの前端部は、振動吸収部材51Bに取付けられており、エンジン本体2は、マウント部材51を介してサイドメンバ9に弾性的に支持されている。
【0069】
これにより、エンジン1の振動をマウント部材51によって吸収でき、エンジン1からサイドメンバ9に伝達される振動を抑制できる。本実施例のサイドメンバ9は、車体を構成する。
【0070】
図3、
図4に示すように、マウント取付部44は、上壁44A、周壁44Bおよび下壁44Cを有する。上壁44Aは、縦壁41から前方に直線状に延びており、取付座44aは、上壁44Aの膨出方向の先端部に設けられている。
【0071】
周壁44Bは、上壁44Aの外周縁から下方に延びており、周壁44Bの内方にマウントボス44b、44c、44dが設けられている。
【0072】
下壁44Cは、湾曲壁部44D、下壁側左側壁部44Eおよび下壁側右側壁部44Fを有し、周壁44Bの外周縁から下方に延びている。
【0073】
図7、
図9に示すように、湾曲壁部44Dは、縦壁41から上側に向かうにつれて縦壁41から漸次離れるように湾曲している。
【0074】
具体的には、湾曲壁部44Dの下端部は縦壁41に連結されている。湾曲壁部44Dは、下端部から上側に向かうにつれて縦壁41から漸次離れるように湾曲し、上端部44uが周壁44Bの膨出方向の先端部44eに連結されている。
【0075】
マウントボス44b、44c、44dは、取付座44aから湾曲壁部44Dまで延びている。本実施例のマウントボス44b、44c、44dは、ボルト孔44r、44s、44tを含んでいる。
【0076】
図4に示すように、下壁側左側壁部44Eは、湾曲壁部44Dの左端部44hを周壁44Bおよび左側壁部42に連結しており、下壁側右側壁部44Fは、湾曲壁部44Dの右端部44iを周壁44Bおよび右側壁部43に連結している。
【0077】
本実施例の湾曲壁部44Dの左端部44hは、湾曲壁部の幅方向一端部を構成し、湾曲壁部44Dの右端部44iは、湾曲壁部の幅方向他端部を構成する。
【0078】
図4、
図7に示すように、湾曲壁部44Dには中央膨出部44Gが設けられており、中央膨出部44Gは、湾曲壁部44Dからチェーンカバー40の内側に膨出する曲面から構成されている。
【0079】
図4から
図6に示すように、下壁側左側壁部44Eには左側膨出部44Hが設けられており、左側膨出部44Hは、湾曲壁部44Dおよび下壁側左側壁部44Eからチェーンカバー40の内側に膨出する曲面から構成されている。
【0080】
下壁側右側壁部44Fには右側膨出部44Iが設けられており、右側膨出部44Iは、湾曲壁部44Dおよび下壁側右側壁部44Fからチェーンカバー40の内側に膨出する曲面から構成されている。
【0081】
図3、
図5に示すように、下壁44Cの湾曲壁部44Dには中央ボス45Aが設けられている。中央ボス45Aは、縦壁41の幅方向中央部に位置しており、ボルト33D(
図1参照)によってシリンダヘッド4に締結されている。
【0082】
縦壁41には中央ボス45Bが設けられている。中央ボス45Bは、マウント取付部44よりも上方に設けられており、チェーンカバー40の上下方向で吸気側貫通孔41aおよび排気側貫通孔41bと上壁44Aとの間に位置している。
【0083】
中央ボス45Bは、中央ボス45Aと上下方向に並ぶように縦壁41の幅方向中央部に位置しており、ボルト33E(
図1参照)によってシリンダヘッド4に締結されている。本実施例の中央ボス45Aは、下側中央ボスを構成し、中央ボス45Bは、上側中央ボスを構成する。ボルト33D、33Eは、締結具を構成する。
【0084】
湾曲壁部44Dの下部には中央ボス45Cが設けられており、中央ボス45Cは、中央ボス45Aよりも下方に位置している。中央ボス45Cは、中央ボス45Aと上下方向に並ぶように縦壁41の幅方向中央部に位置しており、ボルト33F(
図1参照)によってシリンダブロック3に締結されている。
【0085】
本実施例のチェーンカバー40は、外側ボス42A、43Aがボルト33A、33Bによってシリンダブロック3およびシリンダヘッド4に締結されることに加えて、中央ボス45A、45Bがボルト33D、33Eによってシリンダヘッド4に締結されるとともに、中央ボス45Cがボルト33Fによってシリンダブロック3に締結されることにより、エンジン本体2に固定されている。
【0086】
図1、
図4に示すように、外側ボス42A、43Aのうち、中央ボス45Aに対して幅方向一方側(左側)に位置する外側ボス42aは、第1の外側ボスを構成しており、中央ボス45Aに対して幅方向他方側(右側)に位置する外側ボス43aは、第2の外側ボスを構成している。
【0087】
外側ボス42a、43aと中央ボス45Aとはエンジン1の高さ方向で同じ高さ位置に設置されている。
【0088】
図4、
図5に示すように、左側膨出部44Hは、外側ボス42aの外周縁に連結されており、右側膨出部44Iは、外側ボス43aの外周縁に連結されている。
【0089】
図6、
図7に示すように、中央ボス45Aは、エンジン本体2側から中央膨出部44Gまで延びており、中央膨出部44Gは、中央ボス45Aの前端部の外周縁に連結されている。
【0090】
ここで、下壁側左側壁部44Eと下壁側右側壁部44Fは、上下方向において中央ボス45Cから周壁44Bまでの範囲に設けられており、左側膨出部44Hと右側膨出部44Iは、それぞれ湾曲壁部44D、下壁側左側壁部44Eおよび下壁側右側壁部44Fの上部に設けられている。
【0091】
図5、
図6に示すように、縦壁41には第1のリブ46A、第2のリブ46B、第3のリブ46C、第4のリブ46D、第5のリブ46E、第6のリブ46F、第7のリブ46G、第8のリブ46Hおよび第9のリブ46Iが設けられている。
【0092】
第1のリブ46Aは、周壁44Bからエンジン本体2側に突出しており、チェーンカバー40の幅方向中央部において上下方向に直線状に延びている。第1のリブ46Aは、中央ボス45Bから中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gまで延びており、中央ボス45Bと中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gとを連結している。
【0093】
第2のリブ46Bは、周壁44Bおよび下壁側左側壁部44Eからエンジン本体2側に突出している。第2のリブ46Bは、中央ボス45Bから左側膨出部44Hに向かって左斜め下方に直線状に延びており、中央ボス45Bと左側膨出部44Hとを連結している。
【0094】
第3のリブ46Cは、周壁44Bおよび下壁側右側壁部44Fからエンジン本体2側に突出している。第3のリブ46Cは、中央ボス45Bから右側膨出部44Iに向かって右斜め下方に直線状に延びており、中央ボス45Bと右側膨出部44Iとを連結している。
【0095】
第4のリブ46Dは、周壁44Bおよび湾曲壁部44Dからエンジン本体2側に突出している。
【0096】
第4のリブ46Dは、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから第2のリブ46Bの延びる方向の中央部に向かって左斜め上方に直線状に延びており、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと第2のリブ46Bの延びる方向の中央部とを連結している。
【0097】
図5に示すように、第4のリブ46Dと第2のリブ46Bの延びる方向の中央部の連結部、すなわち、第2のリブ46Bと第4のリブ46Dの交点は、第1の交点47Aを構成しており、第1の交点47Aは、マウントボス44dに連結されている(
図8参照)。
【0098】
図5、
図6に示すように、第5のリブ46Eは、周壁44Bおよび湾曲壁部44Dからエンジン本体2側に突出している。
【0099】
第5のリブ46Eは、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから第3のリブ46Cの延びる方向の中央部に向かって右斜め上方に直線状に延びており、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと第3のリブ46Cの延びる方向の中央部とを連結している。
【0100】
図5に示すように、第5のリブ46Eと第3のリブ46Cの延びる方向の中央部の連結部、すなわち、第3のリブ46Cと第5のリブ46Eの交点は、第2の交点47Bを構成しており、第2の交点47Bは、マウントボス44bに連結されている(
図8参照)。
【0101】
第6のリブ46Fは、湾曲壁部44Dからエンジン本体2側に突出しており、チェーンカバー40の幅方向中央部において上下方向に直線状に延びている。
【0102】
第6のリブ46Fは、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから下方に向かって中央ボス45Cまで延びており、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと中央ボス45Cとを連結している。
【0103】
第7のリブ46Gは、湾曲壁部44Dからエンジン本体2側に突出している。第7のリブ46Gは、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから左側膨出部44Hに向かって左斜め下方に直線状に延びており、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと左側膨出部44Hとを連結している。
【0104】
第8のリブ46Hは、湾曲壁部44Dからエンジン本体2側に突出している。第8のリブ46Hは、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから右側膨出部44Iに向かって右斜め下方に直線状に延びており、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと右側膨出部44Iとを連結している。
【0105】
第9のリブ46Iは、湾曲壁部44Dからエンジン本体2側に突出している。第9のリブ46Iは、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから下壁側右側壁部44Fに向かって直線状に延びており、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと下壁側右側壁部44Fとを連結している。
【0106】
次に、本実施例のエンジン1のカバー構造の効果を説明する。
本実施例のエンジン1のカバー構造によれば、チェーンカバー40のマウント取付部44は、マウントブラケット51Aが取付けられる上壁44Aと、上壁44Aの外周縁から下方に延びる周壁44Bと、周壁44Bの外周縁から下方に延びる下壁44Cとを有する。
【0107】
下壁44Cは、縦壁41から上側に向かうにつれて縦壁41から漸次離れるように湾曲し、上端部44uが周壁44Bの膨出方向の先端部44eに連結される湾曲壁部44Dと、湾曲壁部44Dの左端部44hを周壁44Bおよび左側壁部42に連結する下壁側左側壁部44Eと、湾曲壁部44Dの右端部44iを周壁44Bおよび右側壁部43に連結する下壁側右側壁部44Fとを有する。
【0108】
チェーンカバー40は、湾曲壁部44Dに設けられた中央ボス45Aに対して縦壁41の左側に位置する外側ボス42aと、中央ボス45Aに対して縦壁41の右側に位置する外側ボス43aとを有する。
【0109】
チェーンカバー40の下壁44Cは、湾曲壁部44Dからチェーンカバー40の内側に膨出し、中央ボス45Aの外周縁に連結される曲面からなる中央膨出部44Gと、下壁側左側壁部44Eおよび湾曲壁部44Dからチェーンカバー40の内側に膨出し、外側ボス42aの外周縁に連結される曲面からなる左側膨出部44Hと、下壁側右側壁部44Fおよび湾曲壁部44Dからチェーンカバー40の内側に膨出し、外側ボス43aの外周縁に連結される曲面からなる右側膨出部44Iとを有する。
【0110】
これにより、それぞれ平面に比べて剛性の高い曲面からなる中央膨出部44G、左側膨出部44Hおよび右側膨出部44Iを湾曲壁部44Dに連結して湾曲壁部44Dを補強するとともに、湾曲壁部44Dによりこの湾曲壁部44Dと各膨出部44G、44H、44Iとの接合長さを長くでき、湾曲壁部44Dに対する膨出部44G、44H、44Iの結合強度を高められる。
【0111】
そして、中央膨出部44Gを中央ボス45Aに連結し、左側膨出部44Hを外側ボス42aに連結し、右側膨出部44Iを外側ボス43aに連結することにより、下壁44Cに対する各ボス42a、43a、45Aの結合剛性をより一層高くできる。
【0112】
このため、マウント取付部44を縦壁41に対してエンジン本体2から離れる方向に大きく膨出させ、マウント取付部44の先端部に上下方向の荷重F(
図7参照)が作用する状況であっても、マウント取付部44が変形することを抑制でき、マウント取付部44の振動を抑制できる。
【0113】
以上のように、マウントブラケット51Aが締結されるマウント取付部44をチェーンカバー40から外方に膨出させたエンジン1のカバー構造において、マウント取付部44の外方への膨出量を大きくしつつ、マウント取付部44の振動を抑制できる。
【0114】
また、本実施例のエンジン1のカバー構造によれば、チェーンカバー40は、マウント取付部44よりも上方で、かつ、中央ボス45Aと上下方向に並ぶように設置される中央ボス45Bと、中央ボス45Bから中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gまで延び、中央ボス45Bと中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gとを連結する第1のリブ46Aとを有する。
【0115】
これにより、中央ボス45Bから中央ボス45Aに向かって下方に延びる第1のリブ46Aによって中央ボス45Bと中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gとを連結できる。
【0116】
このため、第1のリブ46Aによってマウント取付部44の幅方向中央部の上下方向の剛性を高くできる。
【0117】
また、本実施例のエンジン1のカバー構造によれば、中央ボス45Bから左側膨出部44Hまで延び、中央ボス45Bと左側膨出部44Hとを連結する第2のリブ46Bと、中央ボス45Bから右側膨出部44Iまで延び、中央ボス45Bと右側膨出部44Iとを連結する第3のリブ46Cとを有する。
【0118】
これにより、中央ボス45Bから左側膨出部44Hに向かって左斜め下方に延びる第2のリブ46Bによって中央ボス45Bと左側膨出部44Hとを連結できるとともに、中央ボスから右側膨出部44Iに向かって右斜め下方に延びる第3のリブ46Cによって中央ボス45Bと右側膨出部44Iとを連結できる。
【0119】
このため、第2のリブ46Bと第3のリブ46Cによってマウント取付部44の幅方向の剛性を高くできる。したがって、第1のリブ46A、第2のリブ46Bおよび第3のリブ46Cによってマウント取付部44の全体の剛性を高くできる。
【0120】
また、エンジン1の振動時にマウントブラケット51Aからマウント取付部44に上下方向の荷重Fが加わった場合に、この荷重Fを第1のリブ46A、第2のリブ46Bおよび第3のリブ46Cによって、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと、左側膨出部44Hおよび外側ボス42aと、右側膨出部44Iおよび外側ボス43aと分散できる。
【0121】
以上の結果、エンジン1の振動時にマウント取付部44に上下方向の荷重Fが加わった場合に、マウント取付部44が変形することをより効果的に抑制でき、マウント取付部44の振動をより効果的に抑制できる。
【0122】
また、本実施例のエンジン1のカバー構造によれば、チェーンカバー40は、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから第2のリブ46Bの延びる方向の中央部まで延び、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと第2のリブ46Bの延びる方向の中央部とを連結する第4のリブ46Dを有する。
【0123】
これに加えて、チェーンカバー40は、中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gから第3のリブ46Cの延びる方向の中央部まで延び、第3のリブ46Cの延びる方向の中央部と中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gとを連結する第5のリブ46Eを有する。
【0124】
このため、第2のリブ46Bに加わる上下方向の荷重が第2のリブ46Bから左側膨出部44Hおよび外側ボス42aに集中することを抑制できるとともに、第3のリブ46Cに加わる上下方向の荷重が第3のリブ46Cから右側膨出部44Iおよび外側ボス43aに集中することを抑制できる。
【0125】
このため、エンジン1の振動時にマウント取付部44に加わる上下方向の荷重Fを中央ボス45Aおよび中央膨出部44Gと、左側膨出部44Hおよび外側ボス42aと、右側膨出部44Iおよび外側ボス43aとに均等に分散できる。この結果、マウント取付部44が変形することをより効果的に抑制でき、マウント取付部44の振動をより効果的に抑制できる。
【0126】
また、本実施例のエンジン1のカバー構造によれば、マウント取付部44は、上壁44Aから湾曲壁部44D側に延び、マウントブラケット51Aを上壁44Aに締結するマウントボス44b、44c、44dを備えている。
【0127】
第2のリブ46Bと第4のリブ46Dの交点を第1の交点47Aとし、第3のリブ46Cと第5のリブ46Eの交点を第2の交点47Bとした場合に、第1の交点47Aがマウントボス44dに連結されているとともに、第2の交点47Bがマウントボス44bに連結されている。
【0128】
これにより、第2のリブ46Bおよび第4のリブ46Dと、第3のリブ46Cおよび第5のリブ46Eとによってマウントボス44b、44dの剛性を高くできる。
【0129】
このため、エンジン1の振動時にマウント取付部44に上下方向の荷重Fが加わった場合に、ボルトによってマウントブラケット51Aが締結されるマウントボス44b、44c、44dの振動を抑制でき、マウント取付部44が変形することをより効果的に抑制できる。この結果、マウント取付部44の振動をより効果的に抑制できる。
【0130】
なお、第1の交点47Aと第2の交点47Bのうちの少なくとも1つの交点がマウントボス44b、44c、44dのいずれかに連結されていてもよい。
【0131】
例えば、第1の交点47Aがマウントボス44dに連結され、第2の交点47Bがマウントボス44bに非連結であってもよく、第1の交点47Aがマウントボス44dに非連結であり、第2の交点47Bがマウントボス44bに連結されていてもよい。
【0132】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく調整が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1...エンジン(内燃機関)、2...エンジン本体(内燃機関本体)、7...クランク軸、8...タイミングチェーン(伝動部材)、9...サイドメンバ(車体)、11...吸気カム軸(カム軸)、12...排気カム軸(カム軸)、33A,33B,33D,33E...ボルト(締結具)、40...チェーンカバー(カバー部材)、41...縦壁(本体壁部)、42...左側壁部(第1の側壁部)、42a...外側ボス(第1の外側ボス)、43...右側壁部(第2の側壁部)、43a...外側ボス(第2の外側ボス)、44...マウント取付部、44A...上壁、44B...周壁、44b,44c,44d...マウントボス、44C...下壁、44D...湾曲壁部、44E...下壁側左側壁部(第1の下壁側側壁部)、44e...先端部(周壁の膨出方向の先端部)、44F...下壁側右側壁部(第2の下壁側側壁部)、44G...中央膨出部、44H...左側膨出部(第1の膨出部)、44h...左端部(湾曲壁の幅方向一端部)、44I...右側膨出部(第2の膨出部)、44i...右端部(湾曲壁の幅方向他端部)、44u...上端部(湾曲壁部の上端部)、45A...中央ボス(下側中央ボス)、45B...中央ボス(上側中央ボス)、46A...第1のリブ、46B...第2のリブ、46C...第3のリブ、46D...第4のリブ、46E...第5のリブ、47A...第1の交点、47B...第2の交点、51A...マウントブラケット