(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004151
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】クッションおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
A47C27/00 Z
A47C27/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105676
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】500203019
【氏名又は名称】カネヨウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】定井 智太郎
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB00
3B096AB08
(57)【要約】
【課題】 クッション性がクッション本体の外周縁まで保たれるばかりでなく、使用した際に違和感のあるヘム材を使用しないクッションを提供すること。
【解決手段】 2枚以上の立体編物3A,3Bを固着したカバー2内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッション1において、前記カバー2の外周縁の全部または一部が、相互に内向きに折曲されたうえで、それぞれの内側で相互に固着されていること。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションにおいて、
前記カバーの外周縁の全部または一部が、相互に内向きに曲げたうえで、それぞれの内側で相互に固着されていることを特徴とするクッション。
【請求項2】
2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションにおいて、
前記カバーの外周縁の全部または一部が、相互に内向きに曲げたうえで、それぞれの外側で相互に固着されていることを特徴とするクッション。
【請求項3】
2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションにおいて、
前記カバーの外周縁の一部が相互に内側で固着されており、前記カバーの外周縁の残部が、相互に内向きに曲げたうえで、それぞれの外側で相互に固着されていることを特徴とするクッション。
【請求項4】
前記弾性材および/または緩衝材は、積層配置されている複数の板状体とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のクッション。
【請求項5】
前記各板状体に連結されている連結片が前記カバーを構成する両立体編物とともに固着されていることを特徴とする請求項4に記載のクッション。
【請求項6】
2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションの製造方法において、
前記カバーを構成する前記2枚以上の立体編物の外周縁を重積したうえで周方向における一部を残して相互に固着し、カバー全体の表裏を逆にし、相互に固着していない開口部から前記弾性材および/または緩衝材を挿入し、前記開口部の外周をなす立体編物をそれぞれ内側に折曲して重ねたうえで、外側に突出している部位を相互に固着したことを特徴とするクッションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソファやベッドなどで使用され立体編物を表地および裏地に使用して全体の厚みが厚く形成されたクッションに係り、特に、外側に突出する部位を極力減少させたクッションおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の立体編物を表地および裏地に使用して全体の厚みが厚く形成されたクッションは、2枚の立体編物を縫製により固着して形成したカバーの内側に、弾性材を収納して構成されている。そして、従来のこの種のクッションにおいては、ほぼ長方形をなす同形の2枚の立体編物の外周縁の大部分を固着してカバーを構成し、このカバー内に相互に固着していない立体編物からなる表地および裏地の開口部分から弾性材を挿入し、その後、この開口部分も相互に固着する。そして、相互に固着された固着部分を上下から被覆するように断面ほぼコ字状のヘム材をカバーの外周全域に卷回したうえでヘム材と2枚の立体編物からなる表地および裏地を縫製により固着してヘム材をカバーに固定するようにしていた(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1のように外周の全域にヘム材があると、クッション本体自体に相当な厚みがあるうえに厚みのあるヘム材がクッション本体から外周に突出することになり、クッション性がクッション本体の外周縁まで至らないばかりでなく、ヘム材自体の違和感が使用者に伝達されてしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、前述した従来のものにおける問題点を克服し、クッション性がクッション本体の外周縁まで保たれるばかりでなく、使用した際にクッション本体と違和感のあるヘム材を使用しないクッションおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するために、請求項1に記載のクッションは、2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションにおいて、前記カバーの外周縁の全部または一部が、相互に内向きに折曲されたうえで、それぞれの内側で相互に固着されていることを特徴としている。そして、このような構成を有することにより、カバーの外周縁にヘム材がないため、カバー内に収納されている弾性材および/または緩衝材がカバーの外周縁にまで到達でき、クッション性がクッションの全域において確保される。
【0007】
請求項2に記載のクッションは、2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションにおいて、前記カバーの外周縁の全部または一部が、相互に内向きに折曲されたうえで、それぞれの外側で相互に固着されていることを特徴としている。そして、このような構成を有することにより、請求項1と同様、カバーの外周縁にヘム材がないため、カバー内に収納されている弾性材および/または緩衝材がカバーの外周縁にまで到達でき、クッション性がクッションの全域において確保される。
【0008】
請求項3に記載のクッションは、2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションにおいて、前記カバーの外周縁の一部が相互に内側で固着されており、前記カバーの外周縁の残部が、相互に内向きに折曲されたうえで、それぞれの外側で相互に固着されていることを特徴としている。そして、このような構成を有することにより、請求項1と同様、カバーの外周縁にヘム材がないため、カバー内に収納されている弾性材および/または緩衝材がカバーの外周縁にまで到達でき、クッション性がクッションの全域において確保される。
【0009】
請求項4に記載のクッションは、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のクッションにおいて、前記弾性材および/または緩衝材が、積層配置されている複数の板状体とされていることを特徴としている。そして、このような構成を有することにより、弾性材および/または緩衝材の取り扱いが容易となる。
【0010】
請求項5に記載のクッションは、請求項4に記載のクッションにおいて、前記各板状体に連結されている連結片が、前記カバーを構成する両立体編物とともに固着されていることを特徴としている。そして、このような構成を有することにより、積層配置されている複数の板状体である前記弾性材および/または緩衝材が、移動しにくくなり、安定したクッション性を得ることができる。
【0011】
請求項6に記載のクッションの製造方法は、2枚以上の立体編物を固着したカバー内に、弾性材および/または緩衝材を収納してなるクッションの製造方法において、前記カバーを構成する前記2枚以上の立体編物の外周縁を重積したうえで周方向における一部を残して相互に固着し、カバー全体の表裏を逆にし、相互に固着していない開口部から前記弾性材および/または緩衝材を挿入し、前記開口部の外周をなす立体編物をそれぞれ内側に折曲して重ねたうえで、外側に突出している部位を相互に固着したことを特徴としている。そして、このような構成を有することにより、ヘム材を設ける必要のないクッションを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクッションは、クッション性がクッション本体の外周縁まで保たれるばかりでなく、使用した際にクッション本体と違和感のあるヘム材を使用しない快適なクッションとすることができる。また、本発明のクッションの製造方法によれば、本発明のクッションを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るクッションの実施形態を示す要部の概略縦断面説明図
【
図3】
図1のクッションにおける開口部近傍の固着状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係るクッションの第1実施形態の要部を示すものである。本実施形態のクッション1は、2枚以上の立体編物3A,3Bを固着したカバー2を有している。本実施形態のカバー2においては、表裏1枚ずつの同形の立体編物3A,3Bからカバー2が構成されている。なお、2枚以上の立体編物3A,3Bと記載したのは、片面あるいは両面を、相互に固着された2枚以上の立体編物により構成することももちろん可能だからである。
【0015】
個々の立体編物3A,3Bは、
図2に詳示するように、天然繊維あるいは合成繊維からなりフィラメント状あるいはステープル状をなす種々の形態の糸により構成された表裏2枚の基布4,4を連結糸5により相互に連結して構成された編物である。具体的には、基布4の材質としては、ポリエステル系繊維・ポリアミド系繊維・ポリアクリル系繊維・ポリプロピレン系繊維などの合成繊維、綿・麻・羊毛などの天然繊維、キュプラレーヨン・ビスコースレーヨン・リヨセルなどの再生繊維、などのうちから任意の繊維を使用することができる。また、前記連結糸5としては、ポリトリメチレンテレフタレート繊維・ポリブチレンテレフタレート繊維・ポリアミド繊維・ポリプロピレン繊維・ポリ塩化ビニル繊維・ポリエステル系エラストマー繊維など任意の合成繊維を使用することができる。
、そして、この立体編物3A,3Bは、各基布4,4を構成する糸の外径、本数、角度やメッシュ組織を変えることにより、用途に適合した種々のクッション性や通気性を得ることができる。
【0016】
前記クッション1は、
図1に示すように、両立体編物3A,3Bを固着するために、前記カバー2を構成する両立体編物3A,3Bの各外周縁の全部が、相互に内向きに折曲されたうえで、両立体編物3A,3Bの内側において通常に使用される各種縫製糸6のうち任意の縫製糸6により相互に縫製して固着されている。また、前記カバー2内には、厚みのある複数の弾性材および/または緩衝材の板状体である固形物7,7…が積層収納されている。
【0017】
前述したように、カバー2を構成する前記両立体編物3A,3Bの外周縁の全域を両立体編物3A,3Bの内側において縫製糸6により相互に固着することはできないので、実際には、下記のようにして、両立体編物3A,3Bを固着する。
【0018】
すなわち、前記両立体編物3A,3Bを平面状態にして重積し、両立体編物3A,3Bの外周縁のほぼ全域を固形物7の挿入が可能な分だけ残して縫製糸6により縫製して固着する。つぎに、両立体編物3A,3Bからなるカバー2の表裏を逆にする。これにより、縫製糸6により固着されている両立体編物3A,3Bの外周縁が、
図1に示すように内向きになる。そして、両立体編物3A,3Bの
図3に示す開口部8から、前記各固形物7をカバー2内に挿入する。
【0019】
ついで、前記開口部8の近傍の両立体編物3A,3Bを外側に若干突出するようにして折りたたんで重積し、縫製糸6と同様の縫製糸9により突出部10を縫製して固着する。なお、縫製糸9により突出部10を縫製して固着する際に、前記固形物7に接続した接続片11を前記突出部10とともに縫製することにより前記固形物7の位置ずれをある程度抑制することができる。また、前記突出部10をクッション1の長手方向に間隔を隔てて2つ設けるとともに、前記固形物7の長手方向の両端に接続されている1対の接続片11,11のそれぞれを、各突出部10の縫製の際に前記突出部10とともに縫製することにより前記固形物7の位置ずれを強固に抑制することができる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のクッションによれば、クッション性がクッション本体の外周縁まで保たれるばかりでなく、使用した際に違和感のあるヘム材を使用しないので、良好な使用状態を保持することができる。
【0021】
なお、本発明のクッションには、2枚以上の立体編物を固着したカバー内に弾性材および/または緩衝材を収納してなる敷きパッド、枕などの寝装品も包含されることはもちろんである。
【0022】
また、カバーを内向きに折曲することには、折らずに彎曲することも含まれる。
【符号の説明】
【0023】
1 クッション
2 カバー
3A,3B 立体編物
4 基布
5 連結糸
6,9 縫製糸
7 固形物
8 開口部
10 突出部
11 接続片