(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023041841
(43)【公開日】2023-03-24
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、及び粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20230316BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230316BHJP
C09J 7/21 20180101ALI20230316BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20230316BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230316BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J7/38
C09J7/21
C09J7/26
C09J11/08
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013962
(22)【出願日】2023-02-01
(62)【分割の表示】P 2019504144の分割
【原出願日】2018-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2017189135
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017217824
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】肥田 知浩
(72)【発明者】
【氏名】中谷 好孝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(57)【要約】
【課題】ポリプロピレン樹脂等の難被着体に対して粘着力が高く、かつ軟質ポリ塩化ビニル樹脂に対して、経時的な粘着力の低下を抑制した粘着剤組成物、及び該粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供する。
【解決手段】本発明の粘着剤組成物は、重量平均分子量が55万~100万であるアクリル系重合体(X)100質量部、軟化点が140~160℃である粘着付与樹脂(Y)3~9質量部、及び架橋剤(Z)を含む粘着剤組成物である。前記アクリル系重合体(X)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部と、カルボキシル基含有モノマー(B)5~18質量部とを含むモノマー成分の重合体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が55万~100万であるアクリル系重合体(X)100質量部、軟化点が140~160℃である粘着付与樹脂(Y)3~9質量部、及び架橋剤(Z)を含む粘着剤組成物であり、
前記アクリル系重合体(X)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部と、カルボキシル基含有モノマー(B)5~18質量部とを含むモノマー成分の重合体である、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)がn-ブチル(メタ)アクリレートを含む、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有モノマー(B)がアクリル酸である、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂(Y)がロジン系粘着付与樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着付与樹脂(Y)が、分子量600以下の成分の含有量が13質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記架橋剤(Z)が金属キレート系架橋剤及びイソシアネート系架橋剤からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ。
【請求項8】
基材の少なくとも一面に、請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層された、粘着テープ。
【請求項9】
前記基材がレーヨン成分を0.1~60質量%含有するパルプ繊維不織布である、請求項8に記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記基材が、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有する請求項8に記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタールである請求項10に記載の粘着テープ。
【請求項12】
前記基材が、前記熱可塑性樹脂と可塑剤を含有する繊維よりなる不織布、及び多数の気泡を有する多孔質体のいずれかである請求項10又は11に記載の粘着テープ。
【請求項13】
前記基材が、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有し、多数の気泡を有する多孔質体であって、
前記多孔質体は、ISO 16940に従って機械インピーダンス測定(MIM)により測定される0~50℃の範囲における1次反共振周波数の損失係数が0.2以上、かつ、0~30℃の範囲における2次反共振周波数が800Hz以下である請求項10~12のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項14】
前記基材が、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、かつ多数の気泡を有する多孔質体であって、
前記多孔質体は、伸長ひずみが300%以上、かつ、50%圧縮応力が70kPa以下である請求項10~12のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項15】
前記基材が、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有する繊維からなる不織布であって、
前記不織布は、目付が100~800g/m2であり、縦10cm、横10cm、厚さ4mmの不織布サンプルを縦10cm以上、横10cm以上、厚さ1cmの鉄板上に置き、一定の落球高さから不織布サンプルの中央に向かってJIS B 1501に準拠した1/2インチSUS玉を落したときの跳ね返り高さを測定したときの跳ね返り係数(跳ね返り高さ/落球高さ)が0.1以下である請求項10~12のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項16】
粘着剤層のゲル分率が30~50質量%である、請求項7~15のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項17】
軟質ポリ塩化ビニル樹脂を被着体として使用する、請求項7~16のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項18】
車両内装用として用いられる、請求項7~17のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、及び該粘着剤組成物を用いた粘着テープに関する。より具体的には、例えば、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を被着対象とし、また、可塑剤を含有する基材が粘着テープの基材として用いられる粘着剤組成物、及び該粘着剤組成物を用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、作業性に優れることから、養生、梱包、補修等を目的として、広く使用されている。例えば、アクリル系の粘着剤層を有する粘着テープは、耐候性、耐久性、耐熱性、透明性等の各種物性に優れているため、車両、住宅、電子機器内部等において部材を固定するために広く利用されている。
粘着テープとしては、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられる粘着剤層を備えたものが多く用いられており、粘着剤層を構成する材料は、被着体に対する粘着力を左右するため、被着体の材料種類に応じた設計が必要になる。特許文献1では、アクリル系の粘着剤層を有する粘着テープを、軟質ポリ塩化ビニル樹脂に使用した場合の可塑剤の移行に起因する経時的な粘着力の低下を問題にしており、これを解決するために、特定のアクリル系共重合体と金属キレート架橋剤とを配合した粘着剤組成物を用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を原材料とする部材、シート等が車両の内装材として用いられることが多く、このような内装材を被着対象とした粘着テープが必要とされている。そのため、上記した軟質ポリ塩化ビニル樹脂中の可塑剤の移行に起因する粘着力低下の課題をより高度に防止することが求められている。
また、一般に粘着テープは、車両用部材として広く用いられている極性の低いポリプロピレン樹脂等の被着体に対して粘着力が低く、このような難被着体に対しても、高い粘着力が要求されている。このような難被着体に対する粘着力を向上させる方法として、粘着剤層に粘着付与樹脂を一定量含有させる技術が知られているが、粘着付与樹脂を含有させる場合には、該粘着付与樹脂が上記した可塑剤の移行を促進してしまい、軟質ポリ塩化ビニル樹脂に対する経時的な粘着力低下という問題が生じる。したがって、軟質ポリ塩化ビニル樹脂に対する経時的な粘着力の低下を抑制しつつ、ポリプロピレン樹脂等の難被着体に対する粘着性も改善された粘着剤層を有する粘着テープが求められている。
また、熱可塑性樹脂と可塑剤とを含む多孔質体を基材として用いる場合もあり、このような基材に対しても可塑剤の移行に由来する粘着力の低下を抑制できる、粘着テープが求められている。
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、粘着付与樹脂を一定量含む粘着性組成物であって、経時的な粘着力の低下を抑制した粘着剤組成物、及びこれを用いた粘着テープを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと特定量のカルボキシル基含有モノマーとの重合体であるアクリル系重合体と、特定の粘着付与樹脂と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物、並びに該粘着剤組成物を用いた粘着テープが前記課題を解決できることを見出し本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]~[18]に関する。
[1]重量平均分子量が55万~100万であるアクリル系重合体(X)100質量部、軟化点が140~160℃である粘着付与樹脂(Y)3~9質量部、及び架橋剤(Z)を含む粘着剤組成物であり、
前記アクリル系重合体(X)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部と、カルボキシル基含有モノマー(B)5~18質量部とを含むモノマー成分の重合体である、粘着剤組成物。
[2]前記アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)がn-ブチル(メタ)アクリレートを含む、上記[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記カルボキシル基含有モノマー(B)がアクリル酸である、上記[1]又は[2]に記載の粘着剤組成物。
[4]前記粘着付与樹脂(Y)がロジン系粘着付与樹脂である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[5]前記粘着付与樹脂(Y)が、分子量600以下の成分の含有量が13質量%以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6]前記架橋剤(Z)が金属キレート系架橋剤及びイソシアネート系架橋剤からなる群から選択される少なくとも一つである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープ。
[8]基材の少なくとも一面に、上記[1]~[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層された、粘着テープ。
[9]前記基材がレーヨン成分を0.1~60質量%含有するパルプ繊維不織布である、上記[8]に記載の粘着テープ。
[10]前記基材が、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有する上記[8]に記載の粘着テープ。
[11]前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタールである上記[10]に記載の粘着テープ。
[12]前記基材が、前記熱可塑性樹脂と可塑剤を含有する繊維よりなる不織布、及び多数の気泡を有する多孔質体のいずれかである上記[10]又は[11]に記載の粘着テープ。
[13]前記基材が、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有し、多数の気泡を有する多孔質体であって、
前記多孔質体は、ISO 16940に従って機械インピーダンス測定(MIM)により測定される0~50℃の範囲における1次反共振周波数の損失係数が0.2以上、かつ、0~30℃の範囲における2次反共振周波数が800Hz以下である上記[10]~[12]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[14] 前記基材が、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、かつ多数の気泡を有する多孔質体であって、
前記多孔質体は、伸長ひずみが300%以上、かつ、50%圧縮応力が70kPa以下である上記[10]~[12]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[15]前記基材が、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有する繊維からなる不織布であって、
前記不織布は、目付が100~800g/m2であり、縦10cm、横10cm、厚さ4mmの不織布サンプルを縦10cm以上、横10cm以上、厚さ1cmの鉄板上に置き、一定の落球高さから不織布サンプルの中央に向かってJIS B 1501に準拠した1/2インチSUS玉を落したときの跳ね返り高さを測定したときの跳ね返り係数(跳ね返り高さ/落球高さ)が0.1以下である上記[10]~[12]のいずれか1項に記載の粘着テープ。
[16]粘着剤層のゲル分率が30~50質量%である、上記[7]~[15]のいずれかに記載の粘着テープ。
[17]軟質ポリ塩化ビニル樹脂を被着体として使用する、上記[7]~[16]のいずれかに記載の粘着テープ。
[18]車両内装用として用いられる、上記[7]~[17]のいずれかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリプロピレン樹脂等の難被着体に対して粘着力が高く、かつ軟質ポリ塩化ビニル樹脂に対して、経時的な粘着力の低下を抑制した粘着剤組成物、及び該粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供することができる。
また、粘着テープの基材に可塑剤を含有させても、経時的な粘着力の低下を抑制することが可能な粘着剤組成物、及び該粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
[粘着剤組成物]
本発明の粘着剤組成物は、重量平均分子量が55万~100万であるアクリル系重合体(X)100質量部、軟化点が140~160℃である粘着付与樹脂(Y)3~9質量部、及び架橋剤(Z)を含む粘着剤組成物であり、アクリル系重合体(X)は、特定のモノマー成分の重合体を用いている。本発明において、アクリル系重合体(X)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有モノマー(B)を5~18質量部含むモノマー成分の重合体である。
本発明の粘着剤組成物を用いることで、軟質ポリ塩化ビニル樹脂等の被着体に対する粘着力が高くなり、かつ経時的な粘着力の低下が生じにくくなる。その理由については定かではないが、次のように推定している。通常、粘着剤組成物を軟質ポリ塩化ビニル樹脂により形成されたシートの表面に貼付して使用する場合、軟質ポリ塩化ビニルシート中に含まれる可塑剤が、軟質ポリ塩化ビニルシート表面から、粘着剤組成物により形成された粘着剤層の方に移行しやすく、これにより粘着力が低下すると考えられる。
これに対して、本発明の粘着剤組成物により形成される粘着剤層は、カルボキシル基含有モノマーを比較的多く含んでいるアクリル系重合体を含有している。そのため、該アクリル系重合体は極性が比較的高い高酸価の状態にあり、相対的に極性の低い可塑剤の移行を阻害しやすくなり、その結果、粘着剤層の粘着力の低下が抑制されると推察される。さらには、アクリル系共重合体の分子量が高く、また、場合によっては架橋密度が高いことも加わり、可塑剤移行の阻害を通じた粘着力の低下を抑制する効果が高まるものと予想される。
また、後述するように、粘着テープの基材が可塑剤を含有する場合も同様に、基材から粘着剤層への可塑剤の移行が阻害され、それにより、粘着剤層の粘着力の低下が抑制されると推察される。
以下、本発明の粘着剤組成物を構成する各成分について説明する。
【0010】
<アクリル系重合体(X)>
本発明の粘着剤組成物に含まれるアクリル系重合体(X)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有モノマー(B)を5~18質量部含むモノマー成分の重合体である。
本明細書において、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを示す。
【0011】
((メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A))
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60質量%以上含む。アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の含有量が60質量%未満であると、粘着剤組成物により形成される粘着剤層の軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体に対する粘着力が低下しやすくなる傾向にある。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)におけるアルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)の含有量は、軟質ポリ塩化ビニルに対する粘着力の低下を抑制する観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。また、上記した中では、n-ブチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレートを単独で使用することがより好ましい。n-ブチル(メタ)アクリレートの含有量は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)全量基準で60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0012】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)は、アルキル基の炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b)を含んでもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b)としては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)におけるアルキル基の炭素数が5以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(b)の含有量は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質%以下である。
【0013】
(カルボキシル基含有モノマー(B))
カルボキシル基含有モノマー(B)は、分子内にカルボキシル基を含有し重合可能なモノマーであり、好ましくはカルボキシル基を含有したビニル系モノマーである。カルボキシル基含有モノマー(B)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。カルボキシル基含有モノマー(B)は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0014】
アクリル系重合体(X)を得るためのモノマー成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有モノマー(B)を5~18質量部含有する。カルボキシル基含有モノマー(B)が5質量部未満であると、後述する架橋剤との反応性が低くなるとともに、粘着剤組成物の軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体に対する粘着力が低下しやすい。この理由は、カルボキシル基含有モノマー(B)が少ないと、アクリル系重合体(X)の極性が低下し、比較的極性の低い化合物である可塑剤の軟質ポリ塩化ビニル、又は粘着テープの基材から粘着剤組成物への移行が生じやすいからと考えられる。
一方、カルボキシル基含有モノマー(B)が18質量部を超える場合には、粘着剤組成物から形成される粘着剤層自体が架橋の進行に伴い硬くなる傾向にあり、軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体に対する粘着力が低下しやすい。またカルボキシル基含有モノマー(B)が18質量部を超える場合にはポリプロピレン樹脂などの低エネルギー表面への粘着性が低下する傾向がある。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部に対して、カルボキシル基含有モノマー(B)は、5~17質量部であることが好ましく、6~15質量部であることがより好ましく、10~15質量部であることがさらに好ましい。
モノマー成分には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)及びカルボキシル基含有モノマー(B)以外のその他のモノマーを含有してもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、カルボキシル基以外の極性基を含有するモノマー、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等のスチレン系モノマーなどが挙げられる。
【0015】
(アクリル系重合体(X)の重量平均分子量)
本発明の粘着剤組成物に用いるアクリル系重合体(X)の重量平均分子量は、55万~100万である。重量平均分子量が55万未満であると、軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体に対する粘着力が経時的に低下しやすい傾向にある。一方、重量平均分子量が100万を超えると、粘着剤層が硬くなりやすい傾向にあるため、複雑な形状の被着体に対する粘着力が低下しやすく、またポリプロピレン樹脂などの低エネルギー表面への粘着性が低下する傾向がある。アクリル系重合体(X)の重量平均分子量は、好ましくは60万~80万であり、より好ましくは65~75万である。
【0016】
<アクリル系重合体(X)の製造方法>
アクリル系重合体(X)の製造方法に特に制限はないが、例えば、モノマー成分を重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法が挙げられる。重合方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合等が挙げられる。
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、有機過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。
【0017】
有機過酸化物系重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、o-クロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート又はジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0018】
アゾ系重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられる。
上記した重合開始剤の中でも、アクリル系重合体(X)の臭気低減の観点から、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドを使用することが好ましい。また、重合開始剤は、1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の量は、特に制限されないが、モノマー成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.05~2質量部である。
【0019】
<粘着付与樹脂(Y)>
本発明の粘着剤組成物に含まれる粘着付与樹脂(Y)の軟化点は140~160℃である。軟化点が上記範囲外である場合には、粘着剤組成物により形成される粘着剤層の軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体に対する経時的な粘着力の低下が生じやすい。粘着剤層の軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体への粘着力を高め、経時的な粘着力低下を抑制する観点から、粘着付与樹脂(Y)の軟化点は、140~150℃が好ましい。軟化点はJIS K2207に準拠して測定することができる。
粘着付与樹脂(Y)の種類としては、例えば、石油樹脂系粘着付与樹脂、水添石油樹脂系粘着付与樹脂、ロジンジオール系粘着付与樹脂、ロジンエステル系粘着付与樹脂等のロジン系樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。これらの中では、軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体への粘着力を高め、経時的な粘着力を抑制する観点から、ロジン系粘着付与樹脂が好ましく、ロジンエステル系粘着付与樹脂がより好ましい。
ロジンエステル系粘着付与樹脂としては、不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジンフェノール系等が挙げられる。
【0020】
粘着剤組成物中の粘着付与樹脂(Y)の配合量は、アクリル系重合体(X)100質量部に対して3~9質量部である。粘着付与樹脂の配合量が3質量部未満であると、ポリプロピレン等の難被着体に対する粘着力が低下しやすくなり、また被着体が変形している場合の粘着剤層の保持が難しくなる。粘着付与樹脂の配合量が9質量部より多くなると、粘着剤層を軟質ポリ塩化ビニル又は基材に積層した状態において、軟質ポリ塩化ビニル又は基材から粘着剤層への可塑剤の移動が促進されやすくなり、経時的な粘着力の低下が生じやすい。ポリプロピレン樹脂等の難被着体への粘着力を高め、かつ軟質ポリ塩化ビニル又はその他被着体への粘着力を維持する観点から、粘着剤組成物中の粘着付与樹脂(Y)の配合量は、アクリル系重合体(X)100質量部に対して好ましくは3~8質量部であり、より好ましくは4~7質量部である。
【0021】
粘着付与樹脂(Y)は、分子量600以下の成分が13質量%以下であることが好ましい。このような粘着付与樹脂を用いれば、粘着性を維持しつつ、粘着付与樹脂より発生する揮発成分を低く抑えることができる。さらに、低分子量成分が少ないことにより、粘着剤層の粘度を相対的に高くでき、粘着剤層を軟質ポリ塩化ビニル又は基材に積層した状態において、軟質ポリ塩化ビニル又は基材から粘着剤層への可塑剤の移動が阻害されやすくなり、経時的な粘着力の低下が生じにくくなる。なお、上記粘着付与樹脂の分子量及びその含有量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値及び面積比により算出できる。
粘着付与樹脂から分子量600以下の成分を除去する方法としては、例えば、粘着付与樹脂を軟化点以上に加熱溶融する方法、水蒸気を吹き込む方法等が挙げられる。
【0022】
<架橋剤(Z)>
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤を用いることで、形成される粘着剤層の凝集力が高まり、粘着テープとしての物性が向上する。架橋剤としては特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられるが、これらの中でも、イソシアネート系架橋剤及び金属キレート系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ナフチレンー1,5-ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられ、市販品としては、例えば、日本ポリウレタン社製のコロネートLなどが挙げられる。金属キレート系架橋剤としては、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズ等であるキレート化合物があげられるが、中心金属がアルミニウムであるアルミニウムキレートが好ましい。市販品としては、川研ファインケミカル株式会社製のアルミキレートA、アルミキレートMなどが挙げられる。
粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は特に制限されないが、アクリル系重合体(X)100質量部に対して、好ましくは0.005~5質量部であり、より好ましくは0.01~1質量部であり、さらに好ましくは0.02~0.1質量部である。
【0023】
<その他の成分>
本発明の粘着剤組成物には、アクリル系重合体(X)、粘着付与樹脂(Y)、及び架橋剤(Z)以外にも、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等の溶剤を含んでもよく、溶剤の中でも、揮発成分を低く抑える観点から酢酸エチルが好ましい。本発明の粘着剤組成物には、充填剤、顔料、染料、酸化防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0024】
<ゲル分率>
本発明の粘着剤組成物を、後述するように、基材上等に塗布、乾燥することで粘着剤層を形成することができる。本発明の粘着剤組成物から形成される粘着剤層のゲル分率は、軟質ポリ塩化ビニル又は基材から粘着剤層への可塑剤の移動を阻害し、経時的な粘着力の低下が抑制する観点から、30~50質量%が好ましく、35~45質量%がより好ましい。なお、ゲル分率は実施例に記載の方法で測定することができる。
【0025】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、上記した粘着剤組成物からなる粘着剤層を含むものである。粘着テープは、粘着剤層のみからなるノンサポートタイプのものでも、基材の少なくとも一方の面に、粘着剤組成物からなる粘着剤層が積層されているものでもよい。これらの中でも、基材の両方の面に粘着剤層が積層された両面粘着テープが好ましい。
粘着テープの製造方法は特に限定されないが、例えば、基材等に上記したアクリル系重合体(X)、粘着剤付与樹脂(Y)、架橋剤(Z)及び溶剤等必要に応じてその他の成分を含有した粘着剤組成物を塗布し、乾燥することで基材上に粘着剤層を形成させ、製造することができる。乾燥方法としては、例えば、IRヒータやオーブンなどの乾燥炉に入れて乾燥させる方法が挙げられる。
【0026】
基材としては特に限定されず、例えば、和紙、不織布、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリウレタン等のプラスチックフィルム、金属箔、多孔質体等を用いることができる。これら基材の中でも、作業性や軟質ポリ塩化ビニルなどの被着体への追従性の観点から基材として不織布が好適に用いられ、不織布の中でも環境保全、粘着剤層に対する保持性能の観点からはパルプ繊維不織布がより好適に用いられる。
【0027】
パルプ繊維不織布の目付けは特に制限されないが、好ましくは8~25g/m2、より好ましくは10~18g/m2である。目付けをこのような範囲とすることにより、粘着剤組成物の浸透性、塗布性を良好にすることができる。また、パルプ繊維不織布の厚さは特に制限されないが好ましくは5~50μm、より好ましくは10~40μmである。
パルプ繊維不織布を基材として用いる場合には、レーヨン成分を含有するパルプ繊維不織布を用いることが好ましい。レーヨン成分を含有するパルプ繊維不織布におけるレーヨン成分量は、好ましくは0.1~60質量%、より好ましくは1~50質量%であり、そして、パルプ繊維の成分量は、好ましくは40~99.9質量%、より好ましくは50~99質量%である。なお、パルプ繊維不織布には、レーヨン成分以外にも、必要に応じてマニラ麻、ナイロン、ポリエステル、アクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールなどの他の繊維を含んでもよいが、他の繊維の含有量は好ましくは20質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
レーヨン成分を含有するパルプ繊維不織布を用いると、作業性、環境保全の観点から優れることに加えて、本発明の粘着剤組成物をパルプ繊維不織布に塗布し、粘着剤層を形成させた場合において、該粘着剤層がパルプ繊維不織布から離脱し難くなり、粘着テープとしての性能が向上する。
【0028】
また、基材として、多孔質体を使用することも好ましい。多孔質体は、多数の気泡を有するものであり、樹脂発泡体からなる。
【0029】
さらに、本発明においては、基材は、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有してもよい。また、このように可塑剤を含有する基材を使用しても、上記粘着剤組成物を使用することで、可塑剤が基材から粘着剤層に移行することが防止され、経時によって粘着剤層の粘着力が低下することが抑制される。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン-六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアセタール、又は、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリビニルアセタールがより好ましい。
【0030】
基材が、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有する場合、その基材は不織布又は多孔質体であることが好ましい。すなわち、基材は、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有する繊維からなるポリビニルアセタール不織布、又はポリビニルアセタールと可塑剤を含む多孔質体であることが好ましく、これらの中では、多孔質体であることがより好ましい。
基材を多孔質体とすることで、後述するように、基材の衝撃吸収性、制振性、賦形性、遮音性能の少なくともいずれかを高めやすくなる。そのため、多孔質体は、基材にこれらのうちいずれかの性能が必要とされる用途において好適に使用される。
【0031】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであれば特に限定されないが、ポリビニルブチラールが好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタールを併用してもよい。
【0032】
上記ポリビニルアセタールのアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
上記ポリビニルアセタールは、水酸基量の好ましい下限が15モル%、好ましい上限が40モル%である。水酸基量がこの範囲内であると、可塑剤との相溶性が高くなる。
なお、上記アセタール化度及び水酸基量は、例えば、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0033】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより調製することができる。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られ、鹸化度70~99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。上記ポリビニルアルコールの鹸化度は、80~99.8モル%であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は500、好ましい上限は4000である。上記ポリビニルアルコールの重合度が500以上であると、得られる多孔質体の取り扱い性が優れるものとなる。上記ポリビニルアルコールの重合度が4000以下であると、多孔質体の成形が容易になる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は3600である。
【0034】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記可塑剤は特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。これらの中では、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。なお、液状可塑剤とは、常温(23℃)、常圧(1気圧)において、液体となる可塑剤である。
【0036】
上記一塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n-ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ-2-エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ-n-オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0037】
上記多塩基性有機酸エステルは特に限定されないが、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0038】
上記有機エステル可塑剤は特に限定されず、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6~8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
上記有機リン酸可塑剤は特に限定されず、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0039】
更に、上記可塑剤として、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(4GO)、ジヘキシルアジペート(DHA)を含有することが好ましく、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましく、特にトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を含有することがより好ましい。
【0040】
上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100質量部に対する好ましい下限が5質量部、好ましい上限が60質量部である。上記可塑剤の含有量がこの範囲内であると、遮音性、衝撃吸収性、制振性、及び賦形性の少なくともいずれかを高くしやすくなる。また、多孔質体から可塑剤がブリードアウトすることもない。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は20質量部、より好ましい上限は55質量部である。
なお、多くの合わせガラス用中間膜では、ポリビニルアセタールなどの熱可塑性樹脂100質量部に対する可塑剤の含有量が20~55質量部程度であることから、例えば、廃棄された合わせガラス用中間膜をそのまま、本発明の基材の原料として利用することもできる。
なお、上記熱可塑性樹脂及び可塑剤は、基材において主成分となることが好ましく、熱可塑性樹脂及び可塑剤の合計量は、基材全量基準で、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0041】
基材は、上記熱可塑性樹脂と可塑剤の他に、例えば、接着力調整剤、熱線吸収剤、紫外線遮蔽剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤等の添加剤を含有してもよい。また、得られる基材の外観を調整するために、カーボンブラック等の顔料や染料等を含有してもよい。
【0042】
多孔質体の連続気泡率は、例えば、10%以上であり、14%以上とすることが好ましく、20%以上とすることがより好ましく、30%以上であることが更に好ましく、40%以上であることがより更に好ましく、50%以上であることが特に好ましい。上記連続気泡率の上限は特に限定されないが、98%程度が実質的な上限である。
このように、連続気泡率を高くすることで、基材の衝撃吸収性、制振性、賦形性、遮音性能の少なくともいずれかを高めやすくなる。また、後述する第1~2の実施形態の多孔質体を得やすくなる。
なお、本明細書において連続気泡とは、多孔質体を形成する気泡がお互いにつながっているものを意味する。
また、連続気泡率は、寸法測定によって得られる多孔質体の見掛け体積に対する、多孔質体の外部にまで連結している気泡の容積割合で定義され、JIS K7138記載のピクノメータ法により測定することができる。
【0043】
多孔質体は、平均気泡径の好ましい下限が100μm、好ましい上限が1000μmである。上記平均気泡径のより好ましい下限は120μm、より好ましい上限は500μm、更に好ましい下限は200μmである。上記平均気泡径をこの範囲内とすることにより、基材の衝撃吸収性、制振性、賦形性、遮音性能の少なくともいずれかをより一層高めやすくなる。また、後述する第1~第2の実施形態の多孔質体を得やすくなる。
【0044】
多孔質体は、気泡の平均アスペクト比が2以下であることが好ましい。上記気泡の平均アスペクト比が2以下であることにより、基材の衝撃吸収性、制振性、賦形性、遮音性能の少なくともいずれかをより一層高めやすくなる。また、後述する第1~第2の実施形態の多孔質体を得やすくなる。上記気泡の平均アスペクト比は、1.5以下であることがより好ましい。
【0045】
なお、上記平均気泡径は、気泡の断面観察写真より気泡壁部と空隙部とを観察して、空隙部のサイズを測定する方法により測定することができる。
具体的には、まず、測定用の多孔質体サンプルを縦50mm、横50mmにカットして液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃で厚さ方向に平行な面に沿って切断するとよい。その後、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、製品名VHX-900)を用いて200倍の拡大写真を撮り、厚さ方向における長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡について気泡径を測定する。なお、多孔質体の厚みが2mm未満の場合には、サンプルを複数個用意するとよい。
上記操作を測定箇所を変えて5回繰り返し、観察された全ての気泡径の平均値を平均気泡径とする。なお、各気泡の気泡径は、観察された気泡に対して内接する内接円を描いた時の直径が最大となる内接円の直径とする。
【0046】
また、上記気泡の平均アスペクト比は、気泡の断面観察写真より空隙部の長径と短径とを測定してその比を計算する方法により測定することができる。
具体的には、平均気泡径を測定する際に、観察された各気泡に対して内接する楕円を描いた時の長径と短径を測定し、長径の長さを短径の長さで除してアスペクト比を求める。そして、観察された全ての気泡に対してアスペクト比を求め、得られたアスペクト比の平均値を求めることで平均アスペクト比を得ることができる。
【0047】
多孔質体は、見掛け密度が500kg/m3以下であることが好ましい。見掛け密度を500kg/m3以下とすることにより、優れた賦形性を発揮することができ、例えば、後述する第2の実施形態の多孔質体を得やすくなる。また、見掛け密度は、300kg/m3以下であることが好ましい。見掛け密度が300kg/m3以下であることにより、基材の衝撃吸収性、制振性、賦形性、低流動性などを高めやすくなる。そして、後述する第1~第2の実施形態の多孔質体を得やすくなる。上記見掛け密度は、260kg/m3以下であることがより好ましく、200kg/m3以下であることが更に好ましい。
また、上記見掛け密度の下限は特に限定されないが、上記見掛け密度は、50kg/m3以上であることが好ましい。見掛け密度が50kg/m3以上であると、伸長ひずみが後述する第2の実施形態で示す所定の範囲内に調整しやすくなって、賦形性が良好となり、後述する第2の実施形態の多孔質体を得やすくなる。賦形性を良好とし、また、後述する伸長ひずみをより良好な値とする観点からは、上記見掛け密度は60kg/m3以上であることがより好ましく、80kg/m3以上であることが更に好ましく、100kg/m3以上であることが特に好ましい。
なお、見掛け密度は、測定重量と寸法測定によって得られる見掛け体積とから計算する方法により測定可能である。
【0048】
また、多孔質体は、比重が0.3以下であることが好ましい。比重が0.3以下であることにより、より高い衝撃吸収性を発揮することができる。比重は、0.2以下であることがより好ましい。比重の下限は特に限定されないが、0.05程度が実質的な下限である。多孔質体は、比重をこのような範囲内とすることで、得られる多孔質体の衝撃吸収性が向上する。
なお、多孔質体における比重とは、水の密度に対する多孔質体の密度を指すのではなく、例えば発泡体であれば、発泡前の密度の比に対する発泡後の密度の比、即ち、「発泡後の密度/発泡前の密度」を意味する。具体的には、測定重量と寸法測定によって得られる見掛け体積とから、「発泡後の密度=発泡後の測定重量/発泡後の見掛け体積」、「発泡前の密度=発泡前の測定重量/発泡前の見掛け体積」として計算することで、「比重=発泡後の密度/発泡前の密度」を求めることができる。また、発泡前の測定重量及び発泡前の見掛け体積が不明である場合には、比重=1/発泡倍率として計算することもできる。
【0049】
本発明で使用する多孔質体の厚みは10mm以下であることが好ましい。多孔質体の厚みの上限が上記範囲内であれば、得られる多孔質体がせん断破断しにくくなる。本発明で使用する多孔質体の厚みは、50μm以上であることが好ましい。多孔質体の厚みの下限が上記好ましい範囲であれば、得られる多孔質体の衝撃吸収性、制振性、賦形性、遮音性能の少なくともいずれかをより一層高めやすくなる。また、多孔質体の厚みが上記範囲内であると、多孔質体を粘着テープの基材として好適に使用可能である。
【0050】
多孔質体は、架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタールを使用する場合、ポリビニルアセタールの側鎖に含まれる水酸基、アセチル基、アセタール基等と反応してポリビニルアセタール間を架橋することができる化合物を使用することが可能である。具体的には、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、ホウ酸化合物等が挙げられる。また、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)等の多官能(メタ)アクリレート化合物も架橋剤として用いることができる。
多孔質体において、架橋剤として多官能(メタ)アクリレート化合物を用いる場合には、光重合開始剤を併用することが好ましい。光重合開始剤を併用することにより、多孔質体を均一かつ確実に架橋させることができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン等の従来公知の化合物を用いることができる。
【0051】
本発明の粘着テープに使用する基材は上記したように多孔質体であることが好ましいが、多孔質体は、以下の第1~第2の実施形態の多孔質体のいずれかであることがより好ましい。
【0052】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の多孔質体は、ISO 16940に従って機械インピーダンス測定(MIM)により測定される0~50℃の範囲における1次反共振周波数の損失係数(以下、単に「損失係数」ともいう。)が0.2以上、かつ、0~30℃の範囲における2次反共振周波数が800Hz以下である。
上記損失係数が0.2以上であることにより、多孔質体は高い振動吸収性を発揮し、音のエネルギーを損失させて高い遮音性能を発揮することができる。上記損失係数は0.3以上であることが好ましい。上記2次反共振周波数が800Hz以下であることにより、被着体より発生する音を、人間の耳にノイズとして感じにくくさせることができる。
したがって、第1の実施形態の多孔質体は、高い遮音性能を発揮することができ、第1の実施形態の多孔質体を基材とする粘着テープは、基材を遮音材や防音材として使用する用途において好適である。
なお、1次反共振周波数の損失係数及び2次反共振周波数は、中央加振法により、測定可能であり、0~50℃の範囲における損失係数の最大値、0~30℃の範囲における2次反共振周波数の最大値として求める。そのとき、サンプルとしては、幅25mm、長さ305mm、厚み2mmのガラス板2枚の間に、多孔質体を両面テープ(積水化学工業株式会社製、#5782)にて固定した積層サンプルを用いる。なお、測定用に両面テープを貼る前に、多孔質体に予め両面テープが貼り付けてあるか、多孔質体が粘着剤層を有する場合には、両面テープが貼りつけられていない面または粘着剤層を有していない面にのみ両面テープ(積水化学工業株式会社製、#5782)を貼り付ける。
【0053】
上記損失係数及び2次反共振周波数は、例えば、多孔質体の発泡状態を調整することにより達成することができる。具体的には、上記した多孔質体の連続気泡率を20%以上とするとよく、また、連続気泡率をさらに高くすることで、高い遮音性を発揮しつつ、上記損失係数及び2次反共振周波数を好適な値に調整しやすくなる。
また、本実施形態では、上記のように熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタールを使用することが好ましいが、ポリビニルアセタールを使用することにより、上記した1次反共振周波数の損失係数及び2次反共振周波数を所定の範囲内に調整しやすくなる。さらに、平均気泡径、気泡の平均アスペクト比、見掛け密度などを上記のように所望の範囲内に調整したほうがよい。
【0054】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の多孔質体は、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有し、かつ多数の気泡を有する多孔質体であって、伸長ひずみが300%以上、かつ、50%圧縮応力が70kPa以下となるものである。第2の実施形態における多孔質体は、柔軟であり、かつ賦形性に優れたものとなる。したがって、型押しなどにより、粘着テープを種々の形状に賦形しやすくなる。
【0055】
本明細書において伸長ひずみとは、シート状の多孔質体に対して、1軸方向に伸長変形を加えたときに、多孔質体に加わった変形の程度を示す値を意味する。上記伸長ひずみが300%以上であることにより、多孔質体は、柔軟でありながらも、優れた耐衝撃性を発揮することができる。上記伸長ひずみは400%以上であることが好ましく、500%以上であることがより好ましい。上記伸長ひずみの上限は特に限定されないが、実質的には800%程度が上限である。
本明細書において50%圧縮応力とは、シート状の多孔質体の厚み方向に50%圧縮したときに、多孔質体にかかる応力を示す値を意味する。50%圧縮応力が70kPa以下であることにより、本実施形態の多孔質体は、柔軟となり、優れた賦形性を発揮することができる。上記50%圧縮応力は30kPa以下であることが好ましく、20kPa以下であることがより好ましい。上記50%圧縮応力の下限は特に限定されないが、実質的には5kPa程度が下限である。
なお、伸長ひずみ、及び50%圧縮応力は、JIS K 6767に準じる方法により測定することができる。
具体的には、JIS K 6251に規定するダンベル状1号形に打ち抜いたサンプルを用いて、万能試験機にて引張速度500mm/分で引張する方法により伸長ひずみを測定するとよい。また、一辺が50mmの正方形状に切り出したサンプルを積層厚さが25mm以上になるまで積層した積層サンプルを万能試験機にて圧縮速度10mm/分で圧縮する方法により50%圧縮応力を測定するとよい。
【0056】
上記伸長ひずみや50%圧縮応力は、多孔質体の発泡状態を調整することにより達成することができる。具体的には、多孔質体の連続気泡率を20%以上とすることが好ましい。連続気泡率を20%以上とすることにより、得られる多孔質体の50%圧縮応力を所定の範囲に調整することができ、極めて高い柔軟性を発揮させることができる。また、このような観点から連続気泡率は上記したように高いほうがよい。
また、上記したように見掛け密度などを所望の範囲に調整することでも、多孔質体の伸長ひずみなどを所定の範囲に調整しやすくなり、柔軟性と賦形性を付与することができる。さらには、本実施形態でも、平均気泡径、気泡の平均アスペクト比なども上記のように所望の範囲内に調整したほうがよい。
【0057】
本発明において、多孔質体を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記熱可塑性樹脂、可塑剤及び必要に応じて添加する添加剤に熱分解型発泡剤を配合して樹脂組成物を調製し、該樹脂組成物を発泡温度にまで加熱して熱分解型発泡剤を分解させる方法が好適である。また、多孔質体を架橋させる場合には、上記樹脂組成物に架橋剤を配合するとよい。さらに、架橋は、発泡前に行うことが好ましく、例えば、多孔質体の架橋を紫外線等の光を照射して行う場合、発泡するための加熱前に光照射を行うとよい。
【0058】
ここで、連続気泡率などを上記範囲とし、例えば、上記第1~第2の実施形態の多孔質体を得るためには、熱可塑性樹脂と可塑剤の選択に加えて、製造時における熱分解型発泡剤の種類と配合量、及び、発泡温度の設定が重要である。なかでも、発泡温度の設定は、高い連続気泡率を達成するために重要である。
発泡温度は、具体的には、180℃以上であることが好ましい。180℃以上の温度では、発泡時に上記樹脂組成物が充分に軟化して気泡同士が連通しやすくなるため、連続気泡が発生し易くなるものと考えられる。特に、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含有する樹脂組成物を使用することでこのような連続気泡率の上昇は認められることから、多孔質体が、ポリビニルアセタールと可塑剤とを含有することで連続気泡率を高くしやすくなる。
【0059】
上記熱分解型発泡剤としては、分解温度が120~240℃程度であるものであれば特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、上記連続気泡率をより高くできることから、発泡温度を180℃以上とし、かつ、上記熱分解型発泡剤の分解温度より発泡温度が高くなるように熱分解型発泡剤を選択することが好ましい。より具体的には、上記熱分解型発泡剤の分解温度に対して発泡温度が20℃以上高いものが好ましく、50℃以上高いものがより好ましく、80℃以上高いものが更に好ましい。
【0060】
上記熱分解型発泡剤としては、具体的には例えば、アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、尿素、炭酸水素ナトリウム、及び、これらの混合物等が挙げられる。
上記熱分解型発泡剤のうち市販のものとしては、例えば、セルマイクシリーズ(三協化成社製)やビニホールシリーズ、セルラーシリーズ、ネオセルボンシリーズ(以上、永和化成工業社製)等が挙げられる。
【0061】
上記樹脂組成物中の上記熱分解型発泡剤の配合量は特に限定されないが、上記熱可塑性樹脂100質量部に対する好ましい下限は2質量部、好ましい上限は20質量部である。上記熱分解型発泡剤の配合量がこの範囲内であれば、連続気泡率が10%以上の発泡体を製造しやすくなる。また、連続気泡率を高く(例えば、20%以上)しやすくする観点から、上記熱分解型発泡剤の配合量のより好ましい下限は4質量部、さらに好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は15質量部である。
【0062】
また、本発明において、基材が、熱可塑性樹脂と可塑剤を含有するものから構成され、かつ不織布である場合には、以下の第3の実施形態の不織布であることが好ましい。
【0063】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の不織布は、熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタールを使用したものであり、ポリビニルアセタールと可塑剤を含有する繊維からなるポリビニルアセタール不織布である。第3の実施形態の不織布は、目付が100~800g/m2であり、跳ね返り係数(跳ね返り高さ/落球高さ)が0.1以下となるものである。
本実施形態の不織布は、目付及び跳ね返り係数が上記範囲内とすることで、衝撃吸収性が高いものとなり、衝撃吸収性が必要とされる粘着テープにおいて使用するときに好適であり、より具体的には、基材を遮音材、衝撃吸収材、振動吸収材として使用するときに好ましい。
なお、跳ね返り係数とは、縦10cm、横10cm、厚さ4mmの不織布サンプルを縦10cm以上、横10cm以上、厚さ1cmの鉄板上に置き、一定の落球高さから不織布サンプルの中央に向かってJIS B 1501に準拠した1/2インチSUS玉を落したときの跳ね返り高さを測定して得られるものである。
【0064】
上記不織布サンプルは、測定しようとする不織布の厚みが4mm未満である場合には、厚さが4mm超となるまで厚さ方向に不織布を積み重ねた後に、厚さが4mmとなるよう削って作成するとよい。また、測定しようとする不織布の厚みが4mmを超える場合には、厚さが4mmとなるよう削って不織布サンプルを作成するとよい。正確に厚さ4mmに削るのが困難な場合は、平均厚み4mm±0.1mmまでは許容とする。上記不織布サンプルの厚みの調整には、適宜適切な機械装置にて行うとよい。
なお、上記跳ね返り係数の測定時の環境は、温度23℃、湿度50%Rhとする。
また、一定の落球高さとは、例えば、10cm、20cm、30cmのいずれかであり、本発明では、いずれか1つの場合に跳ね返り係数が所定の範囲となるとよいが、全ての場合に所定の範囲になるほうがよい。
【0065】
本実施形態の不織布に用いるポリビニルアセタール、可塑剤、添加剤等は、上述のものと同様のものを用いることができる。
不織布は、上記のように熱可塑性樹脂としてポリビニルアセタールを使用して、ポリビニルアセタールと可塑剤を含み、かつ不織布の目付、平均直径などを適宜調整することで、跳ね返り係数を0.1以下とすることが可能である。
【0066】
本実施形態の不織布の目付の好ましい下限は150g/m2、好ましい上限は660g/m2であり、より好ましい下限は200g/m2、より好ましい上限は500g/m2である。
また、本実施形態の不織布を構成する繊維の平均直径(平均繊維径)の好ましい下限は50μm、好ましい上限は2mmである。上記繊維の平均直径(平均繊維径)がこの範囲内であると、より高い衝撃吸収性を発揮することができる。上記繊維の平均直径(平均繊維径)のより好ましい下限は100μm、より好ましい上限は1mmである。
【0067】
本実施形態において、不織布を構成する繊維の平均直径(平均繊維径)は、不織布の厚みに対して1/2以下であることが好ましく、1/3以下であることがより好ましく、1/4以下であることが更に好ましい。また、不織布を構成する繊維の平均直径(平均繊維径)は、不織布の厚みに対して1/100以上であることが好ましく、1/50以上であることがより好ましく、1/10以上であることが更に好ましい。
不織布の厚みに対する不織布を構成する繊維の平均直径の比が上記好ましい値以下であると、より高い衝撃吸収性を発揮することができる。
【0068】
粘着テープの取扱性を向上させる観点からは、基材として使用する不織布の厚みの好ましい上限は10mmであり、更に好ましい上限は4mmであり、特に好ましい上限は0.5mmであり、最も好ましい上限は0.3mmである。また、厚みの好ましい下限は20μmである。厚みが20μm以上であると、不織布の衝撃吸収性がより一層向上する。本実施形態の不織布の厚みのより好ましい下限は50μm、更に好ましい下限は100μm、特に好ましい下限は150μm、最も好ましい下限は500μmである。
【0069】
第3の実施形態の不織布は、例えば、ポリビニルアセタール、可塑剤、添加剤等を含有する樹脂組成物を押出機によりストランド状に押し出した後、適当な長さにカットしたストランド状体を積層した積層体を、プレス機を用いて熱圧着することにより製造することができる。この際、ストランド状体の直径、長さや、熱圧縮条件を調整することにより、得られる不織布の目付を調整することができる。
【0070】
本発明の粘着テープの用途については、特に制限されないが、自動車や航空機、船舶等の車両用部材、建築部材、電子部品、カーペットの裏材等の生活部材、家庭用、業務用の電気製品等のあらゆる用途に用いることができる。中でも、車両、住宅、電子機器内部等において使用することが好ましく、車両用の部材に対して使用することがより好ましく、車両内装用として使用することがさらに好ましい。
【0071】
また、本発明では、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を被着体として使用することも好ましい。軟質ポリ塩化ビニル樹脂は、可塑剤を含有したポリ塩化ビニルのことを意味し、可塑剤の含有量は、通常、軟質ポリ塩化ビニル樹脂全体の5質量%以上であり、好ましくは10~80質量%、より好ましくは10~50質量%である。
軟質ポリ塩化ビニル樹脂中に含まれる可塑剤の種類は特に限定されず、例えば、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジn-オクチルフタレート(N-DOP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等のフタル酸エステル系可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、ブチルオレエート(BO)等の脂肪酸エステル系可塑剤など、通常の軟質ポリ塩化ビニル樹脂中に含まれるものが使用できる。
また、本発明の粘着テープは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂に対する粘着力も良好であることから、両面粘着テープとし、一方の面の被着体をポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂とし、もう一方の面の被着体を軟質ポリ塩化ビニル樹脂とすることも好適な使用態様となりうる。
【実施例0072】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
<アクリル系重合体の製造>
反応容器の内に、n-ブチルアクリレート100質量部及びアクリル酸11質量部を導入しモノマー成分を得た。該モノマー成分を酢酸エチルに溶解して、還流点において、重合開始剤としてラウロイルパーオキサイド0.1質量部を添加し、70℃で5時間還流させて、重量平均分子量が72万のアクリル系重合体の溶液を得た。
<粘着剤組成物及び粘着テープの製造>
得られたアクリル系重合体溶液に、アクリル系重合体溶液の不揮発分であるアクリル系重合体100質量部に対して、分子量600以下の成分の含有量が13質量%である重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(軟化点140)を6.3質量部、及び架橋剤として金属キレート系架橋剤であるアルミニウムキレートを0.054質量部となるように加えた。その後、均一に混合して粘着剤組成物を得た。
次いで、該粘着剤組成物を厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に塗布して、120℃で5分乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルムの両面に厚さ60μmの粘着剤層がそれぞれ積層された両面粘着テープを得た。
アクリル系重合体の重量平均分子量、粘着剤層のゲル分率、前記両面粘着テープについてのフタル酸エステルを含有する被着体(軟質ポリ塩化ビニルシート)に対する粘着力維持率(%)、反発保持力、及びポリプロピレン樹脂に対する粘着力を下記のとおり評価した。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例2~8、比較例1~9)
モノマーの組成を表1又は2のとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル系重合体を得た。次いで、粘着付与樹脂の種類及び配合量、架橋剤の種類及び配合量を表1又は2のとおり変更した以外は実施例1と同様にして両面粘着テープを得た。
該粘着テープについて、以下の示す方法でフタル酸エステルを含有する被着体(軟質ポリ塩化ビニルシート)に対する粘着力維持率(%)、反発保持力、及びポリプロピレン樹脂に対する粘着力を評価した。結果を表1及び2に示す。
なお、表1、2において使用した粘着剤付与樹脂、架橋剤の種類は以下のとおりである。
<粘着剤付与樹脂>
重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(ロジン系(低分子量カット))・・・軟化点140℃、分子量600以下の成分の含有量が13質量%
重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(ロジン系(通常品))・・・軟化点160℃、分子量600以下の成分の含有量が33質量%
テルペンフェノール系粘着付与樹脂・・・軟化点150℃
<架橋剤>
金属キレート系架橋剤・・アルミニウムキレート、綜研化学株式会社製「M-A5DT」
イソシアネート系架橋剤・・日本ポリウレタン社製「コロネートL」
エポキシ系架橋剤・・綜研化学株式会社社製「E-AX」
【0075】
[測定法、評価方法]
<(メタ)アクリル系重合体の分子量>
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、架橋前の(メタ)アクリル系重合体を測定試料とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算値として算出した。GPC測定は、東ソー株式会社製GPC装置、HLC-8220GPCにより測定した。
<粘着付与樹脂の軟化点>
JIS K2207に準拠して測定した。
【0076】
<ゲル分率>
両面粘着テープの粘着剤層からW1(g)を採取し、採取した粘着剤成分を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した際の不溶解分を200メッシュの金網で濾過した。金網上の残渣を110℃にて加熱乾燥し、得られた乾燥残渣の重量W2(g)を測定し、下記式によりゲル分率(架橋度)を算出した。
ゲル分率(質量%)=100×W2/W1
【0077】
<フタル酸エステルを含有する被着体(軟質ポリ塩化ビニルシート)に対する粘着力維持率(%)>
粘着力維持率は、以下の式にて算出した。
粘着力維持率(%)=100×(経時粘着力/初期粘着力)
(1)初期粘着力
各実施例、比較例の両面粘着テープの一方の面に対して、厚み23μmのPETフィルムを空気が入らないように貼付けた。次いで、該PETフィルムに貼り付けられた両面粘着テープのPETフィルムに貼り付けていない粘着剤層側を、室温(23℃)、相対湿度50%の環境下で、厚さ300μmの軟質ポリ塩化ビニルシート(可塑剤としてDINPを30質量%含有)の表面に、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、30mm/分の速度で貼り付けた。
この環境下で30分放置した後、JIS Z0237の方法に準じて、25mm幅における180度剥離強度を3mm/分の速度で測定し、これを初期粘着力(N/25mm)とした。
(2)経時粘着力
各実施例、比較例の両面粘着テープの一方の面に対して、厚み23μmのPETフィルムを空気が入らないように貼付けた。次いで、該PETフィルムに貼り付けられた両面粘着テープのPETフィルムに貼り付けていない粘着剤層側を、室温(23℃)、相対湿度50%の環境下で、厚さ300μmの軟質ポリ塩化ビニルシート(可塑剤としてDINPを30質量%含有)の表面に、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、30mm/分の速度で貼り付けた。その後、60℃の環境下で72時間放置し、次いで室温で30分間放置した後、JIS Z0237の方法に準じて、25mm幅における180度剥離強度を3mm/分の速度で測定し、これを経時粘着力(N/25mm)とした。
【0078】
<フタル酸エステルを含有する被着体に対する反発保持力>
図1に、反発保持力の評価方法の模式図を示す。
各実施例、比較例の両面粘着テープ11の一面を、厚さ300μmの軟質ポリ塩化ビニルシート12(可塑剤としてDINPを30質量%含有)の表面に2kgの圧着ゴムローラーを用いて30mm/分の速度で貼り付けて、両面粘着テープ付ポリ塩化ビニルシートを作製した。該両面粘着テープ付ポリ塩化ビニルシートを15mm×40mmに切断して、厚み5mmのポリプロピレン板13の上面の一部(10mm)から側面を経て下面の一部(25mm)に渡って、略コの字状になるように、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、30mm/分の速度で貼り付けた(
図1)。この状態で60℃、相対湿度90%の条件下で2週間静置し、ポリプロピレン板13の上記した上面の一部(10mm)又は下面の一部(25mm)で、軟質ポリ塩化ビニルシートの剥がれが生じるか否かを確認することにより、両面粘着テープの反発保持力を評価した。
軟質ポリ塩化ビニルシートの剥がれが生じなかったものをA、軟質ポリ塩化ビニルシートの剥がれは生じていないが、部分的にシートの浮き等が確認され粘着力が弱い部分が確認されたものをB、ポリ塩化ビニルシートの剥がれが生じたものをCと評価した。
【0079】
<ポリプロピレン樹脂に対する粘着力>
各実施例、比較例の両面粘着テープの一方の面に対して、厚み23μmのPETフィルムを空気が入らないように貼付けた。次いで、該PETフィルムに貼り付けられた両面粘着テープのPETフィルムに貼り付けていない粘着剤層側を、室温(23℃)、相対湿度50%の環境下で、厚さ300μmのポリプロピレン樹脂シートの表面に、2kgの圧着ゴムローラーを用いて、30mm/分の速度で貼り付けた。
この環境下で30分放置した後、JIS Z0237の方法に準じて、25mm幅における180度剥離強度を3mm/分の速度で測定し、これをポリプロピレン樹脂に対する粘着力(N/25mm)とした。
【0080】
【0081】
【0082】
(実施例9)
実施例1と同様にして、粘着剤組成物を得た。レーヨン成分を10±2質量%、パルプ繊維を86±3質量%含有したパルプ繊維不織布(厚さ30μm、目付け14g/m2)の両面に前記粘着剤組成物を塗布して、120℃で5分乾燥させ、不織布の両面に厚さ60μmの粘着剤層がそれぞれ積層された両面粘着テープを得た。
該粘着テープについて、不織布からの粘着剤離脱評価を行った。
【0083】
(実施例10)
レーヨン成分を含まないパルプ繊維不織布(厚さ30μm、目付け14g/m2)を用いた以外は、実施例9と同様にして、両面粘着テープを得た。
該粘着テープについて、以下に示す方法で不織布からの粘着剤離脱評価を行った。
【0084】
<不織布からの粘着剤層離脱評価>
試験板(軟質ポリ塩化ビニルシート)の一端に、幅25mm、長さ130mmに切断した実施例6又は7の両面粘着テープを貼り付け、1kgのローラーで往復圧着した。圧着後、80±2℃の温度下で1時間放置し、その後、試験片の下端に9.8±0.049Nの荷重がかかる重りを吊り下げ、4時間以内に重りの落下が生じるか否かを確認した。重りの落下が生じる場合は、粘着剤層が不織布から脱離したこととなる。
不織布からの粘着剤層離脱を以下の評価基準に基づいて評価した。
A・・粘着剤層が不織布から離脱しなかった。
B・・粘着剤層の不織布からの離脱が確認された。
【0085】
【0086】
実施例1~8の結果から明らかなように、特定種類のアクリル系重合体及び粘着付与樹脂を特定量含有する本発明の粘着剤組成物を用いた粘着テープは、軟質ポリ塩化ビニルシートに対する粘着力維持率、反発保持力が良好であった。さらに、実施例9~10の結果より、レーヨン成分を含有する不織布を基材として用いると、該基材からの粘着剤の脱離が生じにくいことが分かった。
これに対して、比較例1~9に示す本発明の要件を満足しない粘着剤組成物を用いた粘着テープは、軟質ポリ塩化ビニルシートに対する粘着力維持率及び反発保持力の一方又は両方が不十分であった。
また、実施例1~8で使用した粘着剤層に粘着付与樹脂を一定量含有する粘着テープは、ポリプロピレン樹脂に対しても良好な粘着力を有するものであった。一方、比較例5~7で使用した粘着付与樹脂を含まない粘着テープは、ポリプロピレン板から剥がれやすく、反発保持力の評価において良好な評価を得ることができなかった。
【0087】
<第1の実施形態の多孔質体を有する粘着テープ>
(実施例11)
(1)多孔質体の製造
ポリビニルブチラール(PVB1)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を40質量部、熱分解型発泡剤としてセルマイクCE(三協化成社製、分解温度208℃)を4質量部加えて樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を110℃にてミキシングロールで充分に混練した後、押出機により押出して、シート状体を得た。なお、PVB1は、水酸基の含有率34モル%、アセチル化度1.0モル%、ブチラール化度65モル%、平均重合度1650である。得られたシート状体を、オーブン中、220℃の発泡温度にて熱分解型発泡剤を分解させることにより、樹脂発泡体からなる多孔質体を得た。得られた多孔質体の厚みは4mmであった。
(2)粘着テープの製造
実施例1と同様の粘着剤組成物を、多孔質体(基材)の片面に塗布して、120℃で5分乾燥させ、基材の片面に厚さ60μmの粘着剤層が積層された片面粘着テープを得た。
【0088】
(実施例12)
熱分解型発泡剤の配合量を表4に示したようにした以外は実施例11と同様にして、厚み4mmの多孔質体を製造し、その多孔質体を用いて実施例11と同様に方法により片面粘着テープを製造した。
【0089】
(比較例10)
用いる粘着剤組成物を実施例1と同様の粘着剤組成物から、比較例4と同様の粘着剤組成物に変更した以外は実施例11と同様にして、厚み4mmの多孔質体及び片面粘着テープを製造した。
【0090】
(比較例11)
用いる粘着剤組成物を実施例1と同様の粘着剤組成物から、比較例4と同様の粘着剤組成物に変更した以外は実施例12と同様にして、厚み4mmの多孔質体及び片面粘着テープを製造した。
【0091】
実施例11、12及び比較例10、11で製造した多孔質体について、明細書記載の方法により、1次反共振周波数の損失係数及び2次反共振周波数を測定し、かつ、以下の評価基準に従って、遮音性能を評価した。その結果を表4に示すとおりである。
【0092】
(遮音性能の評価)
JIS A 1441に準拠する音響インテンシティ法により音響透過損失を測定した。測定温度は20℃、周波数範囲は100~10000Hzの1/3オクターブバンド毎とした。サンプルは、2mm厚のガラスで樹脂発泡体サンプル(厚み約4mm)を挟み込み、両面テープ(積水化学工業社製、#5782)にて固定した。その際、粘着剤層を有する面には両面テープを貼り付けず、粘着剤層を有しない面にのみ両面テープ(積水化学工業株式会社製、#5782)を貼り付けるようにした。サイズ(開口面)は、500mm×500mmであった。入射パワーは残響室内5点の平均音圧レベルより算出し、透過パワーは測定エリア(500mm×500mm)の5×5=25点の音響インテンシティにより算出した。
遮音性能について、以下の基準により評価した。
周波数-透過損失のグラフを作成し、低周波側の第一の極大値と隣り合う極小値との透過損失の差が充分に小さい場合を「A」と、透過損失の差が大きい場合を「B」と評価した。
【0093】
(耐可塑剤性評価)
以下の評価方法により、実施例11~12、比較例10~11の片面粘着テープを評価した。評価結果を表4に示す。
(試験体準備)
各実施例、比較例で得られた片面粘着テープを、幅25mm×長さ150mmに切り出し、JIS G4305に規定するSUS304(表面BA仕上げ)に、JIS Z0237に準じて2kgゴムローラーを10mm/秒の速度で1往復させ圧着した。
(初期粘着力)
上記試験体準備で得た片面粘着テープを、23℃、50%RHにて圧着から20分間放置した後、JIS Z0237に準じて、90度剥離試験を試験数3にて実施し、平均値を初期粘着力(N/25mm)とした。なお、剥離速度は300mm/分であった。
(経時粘着力)
上記試験体準備で得た試験体を60℃の雰囲気下で72時間放置し、ついで23℃50%RHにて30分間放置した後、JIS Z0237に準じ、90度剥離試験を試験数3にて実施し、平均値を経時粘着力(N/25mm)とした。
(粘着力維持率)
上記で得られた初期粘着力及び経時粘着力を用いて、以下の式により粘着力維持率(%)を算出した。
粘着力維持率(%)=100×(経時粘着力/初期粘着力)
実施例1と同様の粘着剤組成物を用いた片面粘着テープの粘着力維持率が、比較例4と同様の粘着剤組成物を用いた片面粘着テープの粘着力維持率に比較して、大幅に改善されていた場合をA、変化が無い場合をBと評価した。
【0094】
【0095】
<第2の実施形態の多孔質体を有する粘着テープ>
(実施例13)
(1)多孔質体の製造
ポリビニルブチラール(PVB2)100質量部に対して、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を40質量部、熱分解型発泡剤としてビニホールAC#3(永和化成工業社製、分解温度208℃)を3質量部、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSP)を0.8質量部加えて樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を110℃にてミキシングロールで充分に混練した後、押出機により押出して、シート状体を得た。なお、PVB2は、水酸基の含有率31モル%、アセチル化度0.7モル%、ブチラール化度68.3モル%、平均重合度1800である。
得られたシート状体を、オーブン中、230℃の発泡温度にて熱分解型発泡剤を分解させることにより、樹脂発泡体からなる厚み4mmの多孔質体を得た。
(2)粘着テープの製造
実施例1と同様の粘着剤組成物を、多孔質体(基材)の片面に塗布して、120℃で5分乾燥させ、基材の片面に厚さ60μmの粘着剤層が積層された片面粘着テープを得た。
【0096】
(実施例14)
熱分解型発泡剤の配合量を表5に示したようにした以外は実施例13と同様にして厚み4mmの多孔質体を製造し、その多孔質体を用いて実施例13と同様に片面粘着テープを製造した。
【0097】
(比較例12)
用いる粘着剤組成物を実施例1と同様の粘着剤組成物から、比較例4と同様の粘着剤組成物に変更した以外は実施例13と同様にして、厚み4mmの多孔質体及び片面粘着テープを製造した。
【0098】
(比較例13)
用いる粘着剤組成物を実施例1と同様の粘着剤組成物から、比較例4と同様の粘着剤組成物に変更した以外は実施例14と同様にして、厚み4mmの多孔質体及び片面粘着テープを製造した。
【0099】
実施例13、14及び比較例12、13で製造した多孔質体について、明細書記載の方法により、伸長ひずみ及び50%圧縮応力を測定した。また、以下の評価基準に従って、実施例13、14及び比較例12、13で得られた粘着テープについて賦形性、柔軟性を評価した。また、実施例11、12及び比較例10、11と同様の方法により耐可塑剤性を評価した。その結果を表5に示す。
【0100】
(賦形性の評価)
粘着テープを、ピッチ32mm、谷深さ9mmのポリカ製波板に波板の山部のみ接触するように乗せ、粘着テープが接触していない部分を谷部に押し付けるように延伸して貼り付けた。このとき基材に生じる破れや局所的な薄肉化の有無を観察し、賦形性について、以下の基準により評価した。
A:破れや薄肉化が見られない
B:破れ、もしくは薄肉化がみられた
【0101】
(柔軟性の評価)
波板形状に賦形した粘着テープの谷部に、直径1/2インチのSUS玉を1分間静置した。SUS玉を取り除いたときにSUS玉が沈み込んだ痕跡があるか否かを観察し、柔軟性について、以下の基準により評価した。
A:SUS玉の沈み込んだ痕跡が見られた
B:痕跡が確認できなかった
【0102】
【0103】
<第3の実施形態の不織布を有する粘着テープ>
(実施例15)
(1)不織布の製造
ポリビニルブチラール(PVB1)100質量部に対し、可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を40質量部加えて樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、ミキシングロールにて充分に混練した後、押出機を用いて直径1mmのストランド状体に押出した。
得られたストランド状体を長さ10cmにカットした後、熱圧着後の目付が400g/m2となるようにランダムに積層した。得られた積層体を、プレス機を用いて熱圧着することにより、ストランド状体の接触部を互いに熱融着させて不織布を得た。
得られた不織布を構成する繊維の平均直径(平均繊維径)は、ストランド状体の直径と同様に1mmであった。熱圧着では、プレス板間の間隔を4mm、プレス温度を130℃、プレス時間を3分間の条件とした。
(2)粘着テープの製造
実施例1と同様の粘着剤組成物を、不織布の片面に塗布して、120℃で5分乾燥させ、基材の片面に厚さ60μmの粘着剤層が積層された片面粘着テープを得た。
【0104】
(実施例16)
ストランド状体を、熱圧着後の目付が300g/m2となるように積層した以外は実施例12と同様にして不織布を製造し、その不織布を用いて実施例15と同様に片面粘着テープを得た。
【0105】
(比較例14)
用いる粘着剤組成物を実施例1と同様の粘着剤組成物から、比較例4と同様の粘着剤組成物に変更した以外は実施例15と同様にして、不織布及び片面粘着テープを製造した。
【0106】
(比較例15)
用いる粘着剤組成物を実施例1と同様の粘着剤組成物から、比較例4と同様の粘着剤組成物に変更した以外は実施例16と同様にして、不織布及び片面粘着テープを製造した。
【0107】
実施例15、16及び比較例14、15で製造した不織布について、明細書記載の方法により、各種物性、及び落球高さ10cm、20cm、30cmのときの跳ね返り高さ及び跳ね返り係数を測定した。また、実施例11、12及び比較例10、11と同様の方法により耐可塑剤性を評価した。その結果を表6に示す。
【0108】
重量平均分子量が55万~100万であるアクリル系重合体(X)100質量部、軟化点が140~160℃である粘着付与樹脂(Y)3~9質量部、及び架橋剤(Z)を含む粘着剤組成物であり、
前記アクリル系重合体(X)は、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a)を60質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)100質量部と、カルボキシル基含有モノマー(B)5~18質量部とを含むモノマー成分の重合体であり、
前記粘着付与樹脂(Y)がロジン系粘着付与樹脂であり、
前記粘着付与樹脂(Y)が、分子量600以下の成分の含有量が13質量%以下である、アクリル系粘着剤組成物。